説明

ミトコンドリア生合成に関与する遺伝子

本発明は、ミトコンドリア機能異常に関連する状態を処置し、予防しまたは寛解させる新規治療の開発の標的として好適な遺伝子およびポリペプチドを開示する。本発明はまた、当該状態を処置し、予防しまたは寛解させる方法、およびそのための医薬組成物にも関し、ミトコンドリア機能異常に関連する状態の処置への治療有用性を有する化合物を同定する方法にも関係する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
発明の背景
ミトコンドリアは、ATP産生に関与するだけでなく、熱産生、フリーラジカル産生、カルシウムホメオスタシスおよびアポトーシスにも寄与する、細胞質内小器官である。
【背景技術】
【0002】
ミトコンドリア機能異常は、神経変性疾患(Orth M, et al. (2001) Amer. Journal of Med. Gen. 106 (1):27)、心臓血管疾患(Ballinger CA (2005) Free Radical Biol. & Med. 38:1278)、糖尿病(Lowell BB, et al. (2005) Science 307(5708):384)、加齢(Dufour E, et al. (2004) Biochimica et Biophysica Acta 1658(1-2):122)および癌(Wallace DC (2005) Annual Review of Gen. 39:359)を含む広汎なヒトの障害に関連している。これらのヒト疾患のためのミトコンドリアを標的とする治療法が、多くの事例において示唆されている(Wallace 2005; McLeod CJ、et al. (2005) Trends in CV Med. 15 (3):118)(Schapira AH (2006) Lancet 368(9529):70)(Manczak M, et al. (2006) Human Mol. Gen. 15(9):1437)(Armstrong JS et al. (2006) Bioessays 28(3):253)。
【0003】
ミトコンドリア生合成を制御する分子メカニズムをより理解するため、そしてミトコンドリアの機能および生物学的活性の新規制御因子を同定するため、発明者らは、ショウジョウバエ S2細胞における非偏性ゲノムRNAiスクリーニングを含む、インビトロおよびインビボ両方でのアッセイを実施した。
【0004】
本明細書において、ミトコンドリア機能の制御における多様な生物学的プロセスとシグナル伝達経路の同定を開示する。また、本明細書において、全ゲノム規模のRNAiスクリーニングによって同定されたミトコンドリア機能のモジュレーターに関する解析を提供する。本発明者らは、ミトコンドリア生合成に関与し、ミトコンドリア機能異常に関連した状態にも関与する多様な新規遺伝子を見出した。本発明において、これらの遺伝子およびそれらによってコードされるタンパク質は、ミトコンドリア機能異常に関連した状態、例えば神経変性疾患、心臓血管疾患、糖尿病、加齢性障害および癌を処置し、予防しまたは寛解させるための治療の開発の標的となる薬剤として使用することができる。
【発明の概要】
【0005】
発明の概要
本願は、神経変性疾患(例えばパーキンソン病、アルツハイマー病、ハンチントン病)、心臓血管疾患、糖尿病、加齢性障害および癌を含むが、これらに限定されないミトコンドリア機能異常に関連した状態の処置、予防または寛解のための新規治療を開発する好適な標的としての、多様なショウジョウバエ遺伝子のヒトオーソログを開示する。したがって、1つの局面において、本発明は該状態の処置、予防または寛解に有用なモジュレーターを同定する方法であって:
(a) 表Iに記載のタンパク質から選択されるタンパク質の生物学的活性を調節し、そして/または当該タンパク質をコードする遺伝子の発現を調節する候補モジュレーターの能力をアッセイすることを含み、そしてさらに;
(b) 前記状態を有する動物モデルおよび/または対象の臨床試験におけるミトコンドリアクエン酸合成活性を調節する同定モジュレーターの能力をアッセイする
ことを含んでいてもよい方法に関する。
【0006】
他の局面において、本発明は、ミトコンドリア機能異常に関連した状態を処置し、予防しまたは寛解させる方法であって、それを必要とする対象に、有効量の表Iに記載のタンパク質から選択されるタンパク質のモジュレーター(ここで、当該モジュレーターは、例えば当該タンパク質の生物学的活性を阻害または促進する)を投与することを含む方法に関する。1つの局面において、モジュレーターは、対象の該タンパク質の生物学的活性を阻害し得る該タンパク質に対する抗体またはそのフラグメントを含む。
【0007】
他の局面において、モジュレーターは、表Iに記載のタンパク質から選択されるタンパク質をコードする遺伝子のRNA発現を阻害または促進する。さらなる局面において、モジュレーターは、該タンパク質をコードする遺伝子のRNA発現を阻害するように設計されている、アンチセンスオリゴヌクレオチド、三重らせんDNA、リボザイム、RNAおよびDNAアプタマー、siRNAおよび二本鎖もしくは一本鎖RNAから選択される何れか1種以上の物質を含む。
【0008】
他の局面において、本発明は、ミトコンドリア機能異常に関連した状態を処置し、予防しまたは寛解させる方法であって、それを必要とする対象に、有効量の表Iに記載のタンパク質から選択されるタンパク質のモジュレーターを含む医薬組成物を投与することを含んでなる方法に関する。多様な局面において、医薬組成物は、対象の該タンパク質の生物学的活性を阻害することができる該タンパク質に対する抗体またはそのフラグメント、および/または該タンパク質をコードする遺伝子のRNA発現を阻害するように設計されている、アンチセンスオリゴヌクレオチド、三重らせんDNA、リボザイム、RNAおよびDNAアプタマー、siRNAおよび二本鎖もしくは一本鎖RNAから選択される何れか1種以上の物質を含む。本発明において、1種以上の該タンパク質の1種以上のモジュレーターを同時に投与することができると理解される。
【0009】
他の局面において、本発明は、それを必要とする対象においてミトコンドリア機能異常に関連した状態の処置、予防または寛解に有効な量の表Iに記載のタンパク質から選択されるタンパク質のモジュレーターを含む医薬組成物に関する。1つの局面において、モジュレーターは、例えば該タンパク質の生物学的活性を阻害または促進することができる。さらなる局面において、モジュレーターは、該タンパク質に対する抗体(ここで、当該抗体は、例えば該タンパク質の生物学的活性を阻害し得る)またはそのフラグメントを含む。
【0010】
さらなる局面において、医薬組成物は、例えば該タンパク質をコードする遺伝子のRNA発現を阻害または促進し得るモジュレーターを含む。さらなる局面において、モジュレーターは、該タンパク質をコードする遺伝子のRNA発現を阻害するように設計されている、該タンパク質の核酸配列に向けたアンチセンスオリゴヌクレオチド、三重らせんDNA、リボザイム、RNAもしくはDNAアプタマー、siRNAまたは二本鎖もしくは一本鎖RNAから選択される何れか1種以上の物質を含む。
【0011】
他の局面において、本発明は、ミトコンドリア機能異常に関連した状態を有する対象が表Iに記載のタンパク質から選択されるタンパク質のモジュレーターによる処置の好適な候補であり得るかを診断する方法であって、当該対象由来の生物学的サンプル中の何れか1種以上の前記タンパク質レベルを検出することを含む方法(ここで、対照と比較して変化したレベルを有する対象がモジュレーター処置の好適な候補である)に関する。
【0012】
他の局面において、本発明は、ミトコンドリア機能異常に関連した状態を有する対象が表Iに記載のタンパク質から選択されるタンパク質のモジュレーターによる処置の好適な候補であり得るかを診断する方法であって、当該対象由来の生物学的サンプル中の何れか1種以上の前記タンパク質のメッセンジャーRNA(mRNA)のレベルをアッセイすることを含む方法(ここで、対照と比較して変化したレベルを有する対象がモジュレーター処置の好適な候補である)に関する。
【0013】
さらに他の局面において、ミトコンドリア機能異常に関連した状態を処置し、予防しまたは寛解させる方法であって:
(a) 対象の表Iに記載のタンパク質から選択されるタンパク質のmRNAおよび/またはタンパク質レベルをアッセイし;そして
(b) 対照と比較して変化したmRNAおよび/またはタンパク質レベルを有する対象に、当該状態の処置、予防または寛解に有効な量の該タンパク質のモジュレーターを投与すること
を含む方法を提供する。
【0014】
具体的な局面において、モジュレーターは、該タンパク質の生物学的活性または該タンパク質をコードする遺伝子の発現を阻害または促進する。
【0015】
さらに別の本発明の局面において:
(a) 生物学的サンプル中の表Iに記載のタンパク質から選択される何れか1種以上のタンパク質のmRNAレベルまたはタンパク質レベルの検出に必要な成分(キットは、例えば表Iに記載のタンパク質から選択される何れか1種以上のタンパク質をコードするポリヌクレオチドを含む);および
(b) 該タンパク質と相補的な配列のヌクレオチド;
(c) 何れか1種以上の該タンパク質もしくはそのフラグメント、または該タンパク質の何れか1種以上と結合する抗体もしくはそのフラグメント
を含むアッセイ方法および診断キットを提供する。
【0016】
好ましい局面において、かかるキットはまた、キット成分を使用するための方法を説明した指示書も含む。
【0017】
本発明はまた、ミトコンドリア機能異常に関連した状態の処置、予防または寛解用医薬の製造における、表Iに記載のタンパク質から選択されるタンパク質のモジュレーターの使用に関する。1つの局面において、モジュレーターは、該タンパク質の遺伝子発現を阻害するように設計されているアンチセンスオリゴヌクレオチド、三重らせんDNA、リボザイム、RNAアプタマー、siRNAおよび二本鎖もしくは一本鎖RNAから選択される何れか1種以上の物質を含む。さらなる局面において、モジュレーターは、該タンパク質に対する1種以上の抗体またはそのフラグメント(ここで、当該抗体またはそのフラグメントは、例えば該タンパク質の生物学的活性を阻害し得る)を含む。
【0018】
本発明はまた、医薬として使用するための表Iに記載のタンパク質から選択されるタンパク質のモジュレーターに関する。1つの局面において、モジュレーターは、該タンパク質の生物学的活性を阻害するように設計されているアンチセンスオリゴヌクレオチド、三重らせんDNA、リボザイム、RNAアプタマー、siRNAおよび二本鎖もしくは一本鎖RNAから選択される何れか1種以上の物質を含む。さらなる局面において、モジュレーターは、該タンパク質に対する1種以上の抗体またはそのフラグメント(ここで、当該抗体またはそのフラグメントは、例えば該タンパク質の生物学的活性を阻害し得る)を含む。
【0019】
本発明の他の対象、特徴、利点および局面は、以下の説明によって当業者に明らかとなる。しかし、本発明の好ましい局面を示す以下の説明および具体的な例示は、説明のみを目的としていることを理解するべきである。開示した発明の精神および範囲内での多様な変化および修飾が、以下の説明および本明細書の他の部分を読むと当業者に容易に理解される。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】全ゲノムRNAiスクリーニングのCS活性アッセイの開発。(a) CS RNAi後のCS活性の用量応答(n=48)。CS活性(Vmax/Ren)がRNAiで用量依存的に低下した。7種類の用量のCS dsRNAを用いた。CS1からCS7は、0.5、1、2、4、8、16、32μg/ml/10細胞であった。(b) S2細胞でのCS活性の安定性。CS活性をVmax比、すなわち吸収の時間変化(Vmax=dA/dt)として計算した。LacZ RNAiおよびCS RNAiでの細胞溶解物の412nmでの吸光度(OD)をy軸に示した。x軸は秒基準の時間を示し、データを46秒ごとに得た。(c) S2細胞でのCS活性の直線範囲(n=48)。y軸は全タンパク質濃度で標準化したCS活性(Vmax/ug)を示す。x軸は細胞溶解物の全タンパク質濃度(μg)を示す。μg単位でのタンパク質濃度を各データ点の隣に付す。x軸y軸共に対数スケールを適用する。(d) 選択した対象遺伝子のRNAi後のCS活性(Vmax/Ren) (n=48)。CS値は0.22である。p値を棒グラフの上に付す。*はp<0.05を示し、**はp<0.01を示す。aとdのエラーバーは標準誤差を示す。
【図2】全ゲノムRNAiスクリーニング。(a) 一次スクリーニング。Spotfire散布図は、一次スクリーニングのCS活性 (Vmax/Ren) のNZを示す。x軸およびy軸はレプリカbとレプリカaの1D標準化NZをそれぞれ意味し、対数スケールを提供する。各点はそれぞれのdsRNAを意味する。(b) 一次ヒットの確認スクリーニング。Spotfire散布図はヒットがLacZ対象に対するp値によって選択されたことを示す。CS活性に負に作用するヒット(RNAiによってクエン酸合成活性が上昇する)は、p<0.05であるとき選択された。CS活性に正に作用するヒット(RNAiによってCS活性が低下する)は、p<0.01であるとき選択された。x軸は6連でのLacZ対照に対するCS活性の平均倍率を意味する。y軸はヒットのp値を意味する。(c)LacZ RNAi対照の分布。確認スクリーニングでのLacZ RNAi対照を示した。(d) 分子機能による確認ヒットの分類。(e) 生物学的プロセスおよび経路による確認ヒットの分類。
【図3】HDAC1およびHDAC6はインビトロでミトコンドリア機能を調節する。(a)HADC1およびHDAC6 RNAiで処理したS2細胞でのCS活性(n=6)。LacZ RNAiはネガティブコントロールとして、そしてCS RNAiはポジティブコントロールとして作用する。(b) ウェスタンブロットによって示されるとおり、HDAC1タンパク質はトランスジェニックHDAC1 RNAiハエにおいて顕著に減少した。HDAC1 RNAi溶解物および対照同胞種は、HDAC1およびチューブリンに対する抗体でブロットされた。チューブリンレベルを負荷対照として用いた。(c) ウェスタンブロットによって示されるとおり、HDAC6タンパク質はトランスジェニックHDAC6 RNAiハエにおいて顕著に減少した。HDAC6 RNAi溶解物および対照同胞種は、HDAC6およびチューブリンに対する抗体でブロットされた。チューブリンレベルを負荷対照として用いた。(d) トランスジェニックHDAC1 RNAiハエおよび対照同胞種におけるCS活性(n=8)。(e) トランスジェニックHDAC6 RNAiハエおよび対照同胞種におけるCS活性(n=8)。(f) トランスジェニックHDAC1 RNAiハエおよび対照同胞種におけるCOX活性(n=8)。(g) トランスジェニックHDAC6 RNAiハエおよび対照同胞種におけるCOX活性(n=8)。*はp<0.05を示し、**はp<0.01を示し、***はP<0.001を示す。エラーバーは標準誤差を示す。
【図4】ヘテロ変異体のCS活性。(a) CS、(b) CG3249、(c) vimar、(d) Src42A、(e) Src42A、(f) klumpfuss、(g) smt3、(h) smt3、(i) barren、 (j) barren。各実験につき、n=8。*はp<0.05を示し、**はp<0.01を示す。エラーバーは標準誤差を示す。
【発明を実施するための形態】
【0021】
発明の詳細な説明
本明細書において言及されている全ての特許出願、特許および参考文献を、それらの全体について、参照により本明細書の一部とする。
【0022】
本発明の実施において、分子生物学、微生物学および組換えDNAの多くの常套の技術を使用する。これらの技術は周知であり、例えば、Current Protocols in Molecular Biology, Vols. I-III, Ausubel, Ed. (1997);Sambrook et al., Molecular Cloning: A Laboratory Manual, Second Edition, Cold Spring Harbor Laboratory Press, Cold Spring Harbor, NY (1989);DNA Cloning: A Practical Approach, Vols. I and II, Glover, Ed. (1985);Oligonucleotide Synthesis, Gait, Ed. (1984);Nucleic Acid Hybridization, Hames and Higgins, Eds. (1985);Transcription and Translation, Hames and Higgins, Eds. (1984);Animal Cell Culture, Freshney, Ed. (1986);Immobilized Cells and Enzyme, IRL Press (1986);Perbal, A Practical Guide to Molecular Cloning;the series, Meth Enzymol, Academic Press, Inc. (1984);Gene Transfer Vectors for Mammalian Cells, Miller and Calos, Eds., Cold Spring Harbor Laboratory Press, NY (1987);およびMethods in Enzymology, Vols. 154 and 155, Wu and Grossman, and Wu, Eds., respectively (1987)に説明されている。周知のショウジョウバエ−分子遺伝学的技術は、例えば、Drosophila, A Practical Approach, Robert, Ed., IRL Press, Washington DC (1986)に見出すことができる。
【0023】
ショウジョウバエ系統情報(flystock)は、Flybaseのデータベース、http://flybase.bio.indiana.eduに見出すことができる。
【0024】
本明細書および添付の特許請求の範囲において使用するとき、単数表現“a”、“an”および “the”は、文脈が明確に異なることを示していない限り、複数についての言及を含む。したがって、例えば「抗体」と記載したとき、これは1種以上の抗体および当該技術分野において既知の均等物などについての記載である。
【0025】
「核酸配列」は、本明細書において使用するとき、オリゴヌクレオチド、ヌクレオチドまたはポリヌクレオチド、およびそのフラグメントもしくは一部、ならびに一本鎖または二本鎖であってよいゲノムまたは合成起源のDNAまたはRNAを意味し、センスまたはアンチセンス鎖を意味する。
【0026】
用語「変性ヌクレオチド配列」は、(ポリペプチドをコードするレファレンスポリヌクレオチド分子と比較して)1個以上の変性コドンを含むヌクレオチド配列を意味する。変性コドンは、異なるヌクレオチドのトリプレットを含むが、同じアミノ酸残基をコードする。すなわちGAUとGACトリプレットは各々アスパラギン酸をコードする。変性配列に含まれるいくつかのポリヌクレオチドが変異アミノ酸を有することもあるが、当業者は、表Iに記載のタンパク質をコードするアミノ酸配列を参照して、かかる変異配列を容易に同定することができる。Stemmer, Nature, Vol. 370, No. 6488, 389-391 (1994);およびStemmer, Proc Natl Acad Sci U S A, Vol. 91, No. 22, 10747-10751 (1994)に記載のように、DNA組換えによって表Iに記載のタンパク質の変異体が創成されることもある。変異配列の機能性は、本明細書に記載のとおり、容易に試験することができる。
【0027】
「対立遺伝子多型」は、同じ染色体座を占める遺伝子の何れか2種以上の別の形態を意味する。対立遺伝子多型は変異によって天然で生じ、集団内の表現型多型を生じさせることがある。遺伝子変異はサイレント(コードするポリペプチドに変化がない)であり得るか、または別のアミノ酸配列を有するポリペプチドをコードすることもある。対立遺伝子多型なる用語は、本明細書において、遺伝子の対立遺伝子多型によってコードされるタンパク質を示すために使用されることもある。
【0028】
対立遺伝子多型は、異なる個体由来のcDNAまたはゲノムライブラリーを標準的な方法で探索して、クローン化することができる。表Iに記載のタンパク質をコードするDNA配列の対立遺伝子多型、ならびにサイレント変異を含むものおよび変異がアミノ酸配列変化を生じるものを含むその変異体は、本発明の範囲に含まれる。
【0029】
「スプライス変異体」は、遺伝子から転写されるRNAの別形態を意味する。スプライス変異は、転写RNA分子内または一般的ではないが別個に転写されたRNA分子間の別のスプライシング部位の使用によって天然に生じ、同じ遺伝子から転写された多様なmRNAが生じ得る。スプライス変異体は、異なるアミノ酸配列を有するポリペプチドをコードし得る。用語「スプライス変異体」は、本明細書において、ある遺伝子から転写されたmRNAのスプライス変異体によってコードされるタンパク質を示すために使用されることもある。
【0030】
用語「アンチセンス」は、本明細書において使用するとき、あるDNAまたはRNA配列と相補的なヌクレオチド配列を意味する。用語「アンチセンス鎖」は、「センス」鎖と相補的な核酸鎖を意味する。相補鎖を合成することができるウイルス性プロモーターに逆方向で目的の遺伝子をライゲーションすることを含む何れかに記載の方法によって、アンチセンス分子を製造することができる。細胞に導入すると、この転写鎖は細胞によって製造された天然配列と組み合わさって、二本鎖を形成する。この二本鎖はさらなる転写または翻訳を阻止する。「負」なる表現はアンチセンス鎖を表すために使用されることがあり、「正」はセンス鎖を表すために使用されることがある。
【0031】
「cDNA」は、mRNAの一部と相補的なDNAであり、一般に逆転写酵素を用いてmRNA調製物から合成される。
【0032】
本明細書において意図するアンチセンスオリゴヌクレオチド、三重らせんDNA、RNAアプタマー、リボザイム、siRNAおよび二本鎖もしくは一本鎖RNAは、選択したヌクレオチド配列が遺伝子発現の遺伝子特異的阻害を生じる核酸配列に関する。例えば、ヌクレオチド配列の知識を用いて、mRNAとの最も強いハイブリダイゼーションを与えるアンチセンス分子を設計することができる。同様に、特定のヌクレオチド遺伝子配列を認識して切断するリボザイムを合成することができる。Cech, JAMA, Vol. 260, No. 20, 3030-3034 (1988)参照。遺伝子発現の標的阻害に使用する分子を設計する技術は、当業者に周知である。
【0033】
本明細書に記載の個々のタンパク質/ポリペプチドは、ヒトまたは他の何れかの種由来の部分形態、アイソフォーム、変異体、前駆体、全長タンパク質、上記の何れかの配列もしくはフラグメントを含む融合タンパク質を含むが、これらに限定されないこれらのタンパク質の何れかまたは全ての形態を含む。当業者に理解されるタンパク質のホモログまたはオーソログは、この定義に含まれる。さらに、これらのタンパク質/ポリペプチドは、得られたポリペプチドが表Iから選択される配列の対応領域と少なくとも80〜90%、別の局面において、少なくとも95%、96%、97%、98%または99%同一である変異体を含んでいてもよい。配列の同一性は常套の方法で測定する。例えば、Altschul and Erickson, Bull Math Biol, Vol. 48, Nos. 5-6, 603-616 (1986);および Henikoff and Henikoff, Proc Natl Acad Sci U S A, Vol. 89, No. 22, 10915-10919 (1992)参照。簡潔には、ギャップ開始ペナルティ10、ギャップ伸長ペナルティ1およびHenikoff and Henikoff のマトリックスを採点する「BLOSUM62」を用いたアラインメントスコアを最適化するように2本のアミノ酸配列を整列させる。同一性の割合は、次のとおり計算する:
(同一性マッチの合計数)/(長い配列の長さ+2本の配列を整列させるために長い配列に導入したギャップ数)×100。
【0034】
タンパク質またはポリペプチドなる用語は、何れかの種の天然発生源、例えばゲノムDNAライブラリー、ならびに発現系を含む遺伝子操作した宿主細胞から単離したタンパク質、または例えば自動ペプチド合成装置を用いた化学合成もしくはかかる方法の組合せによって合成したタンパク質を意味するものとしても理解される。かかるポリペプチドの単離および製造手段は当該技術分野において周知である。
【0035】
「サンプル」なる用語は、本明細書において使用するとき、最も広い意味で使用される。対象由来の生物学的サンプルは、血液、尿、脳組織、初代細胞系、不死化細胞系またはタンパク質活性もしくは遺伝子発現をアッセイすることができる他の生物学的物質を含んでいてもよい。生物学的サンプルは、例えば血液、腫瘍、またはAffymetrixチップ、RT−PCRもしくは他の常套の方法のような常套のガラスチップマイクロアレー技術を用いて遺伝子発現プロファイリングのために全RNAを生成することができる他の標本を含んでいてもよい。
【0036】
本明細書において使用するとき、用語「抗体」は、無傷の分子ならびにそのフラグメント、例えばFab、F(ab’)およびFvを意味し、これは問題の抗原性決定基と結合することができる。特定のポリペプチドと結合する抗体は、免疫化抗原として目的の小ペプチドを含む無傷のポリペプチドまたはフラグメントを用いて製造することができる。動物を免疫化するために使用するポリペプチドまたはペプチドは、RNAの翻訳に由来し得るかまたは化学的に合成されてよく、担体タンパク質と結合させてもよい。ペプチドと化学的に結合する一般に使用される担体は、ウシ血清アルブミンおよびチログロブリンを含む。結合ペプチドを用いて動物、例えばマウス、ヤギ、ニワトリ、ラットまたはウサギを免疫化する。
【0037】
用語「ヒト化抗体」は、本明細書において使用するとき、元の結合能を残したままでよりヒト抗体に類似させるために非抗原結合領域においてアミノ酸が置換されている抗体分子を意味する。
【0038】
「表I」は、本明細書において使用するとき、次のものを意味する:
【表1】

【表2】

【0039】
【表3】

【表4】

【0040】
【表5】

【表6】

【0041】
【表7】

【表8】

【0042】
【表9】

【表10】

【0043】
【表11】

【表12】

【0044】
【表13】

【表14】

【0045】
「治療上有効量」は、例えばミトコンドリア機能異常に関連した状態の処置、予防または寛解に十分な薬剤の量である。
【0046】
「トランスジェニック」生物は、本明細書において使用するとき、外来遺伝子物質がゲノムに挿入されている生物を意味する。本明細書において使用するとき、「トランスジェニックハエ」は、同一または別の生物由来のDNA配列がゲノムに無作為に挿入されている胚、幼虫、および成体形態のショウジョウバエを含む。キイロショウジョウバエが好ましいが、本発明においてショウジョウバエ属のあらゆるハエを用いることができると理解される。
【0047】
用語「ミトコンドリア機能異常に関連した状態」は、本明細書において使用するとき、神経変性疾患(例えばパーキンソン病、アルツハイマー病、ハンチントン病)、心臓血管疾患、糖尿病、加齢性障害、および癌を含むが、これらに限定されない。
【0048】
本明細書において使用するとき、「神経変性疾患」は、ハンチントン病、パーキンソン病、アルツハイマー病、ジストニア、認知症、多発性硬化症、筋萎縮性側索硬化症(ALS)およびクロイツフェルト・ヤコブ病を含むが、これらに限定されない。
【0049】
本明細書において使用するとき、「心臓血管疾患」は虚血性心臓疾患(例えば狭心症、心筋梗塞および慢性虚血性心臓疾患)、高血圧性心臓疾患、肺性心臓疾患、弁の心臓疾患(例えばリウマチ熱およびリウマチ性心臓疾患、心内膜炎、僧帽弁逸脱および大動脈弁梗塞)、先天性心臓疾患(例えば弁および血管閉塞性病変、心房または心室中隔欠損症、および動脈管開存症)、および心筋疾患(例えば心筋炎、鬱血性心筋障害、および肥大型心筋障害)を含むが、これらに限定されない。
【0050】
本明細書において使用するとき、「加齢性障害」は、加齢、特にミトコンドリアが関与する加齢プロセスに関連した状態を含み、(i) 反応性酸素種(ROS)生産の増加、(ii) ミトコンドリアDNA(mtDNA)損傷蓄積、および(iii) 進行性呼吸鎖機能異常の少なくとも1つによって特徴付けられる。「加齢性障害」は、失禁、糖尿病、骨および関節の障害(例えば骨粗鬆症)、卒中、認知症、機能的障害、心臓および呼吸の障害、および神経変性障害を含むが、これらに限定されない。
【0051】
本明細書において使用するとき、「癌」は、哺乳類の固形腫瘍および血液学的悪性腫瘍を含むが、これらに限定されない。「哺乳類の固形腫瘍」は、頭頸部癌、肺癌、中皮腫、縦隔癌、食道癌、胃癌、膵臓癌、肝胆道系癌、小腸癌、結腸癌、結直腸癌、直腸癌、肛門癌、腎臓癌、尿道癌、膀胱、前立腺、尿道癌、陰茎癌、睾丸癌、婦人臓器の癌、卵巣癌、乳癌、内分泌系癌、皮膚癌、脳を含む中枢神経系癌;軟組織および骨の肉腫;ならびに皮膚および眼内起源の黒色腫を含む。用語「血液学的悪性腫瘍」は、小児白血病およびリンパ腫、ホジキン病、リンパ球および皮膚起源のリンパ腫、急性および慢性白血病、形質細胞腫およびAIDSに関連した癌を含む。さらに、原発性、転移性および再発性癌のようなあらゆる進行段階の癌を処置することができる。多様な癌のタイプに関する情報は、例えばAmerican Cancer Societyまたは例えば、Wilson et al. (1991) Harrison’s Principles of Internal Medicine, 12th Edition, McGraw-Hill、Inc.から得ることができる。ヒトと動物両方の使用を意図する。
【0052】
本明細書において使用するとき、遺伝子導入の「異所性」なる表現は、組織もしくは細胞における、または通常発現されないとき、特定の発生段階での遺伝子導入の表現を意味する。
【0053】
本明細書において使用するとき、「表現型」は、遺伝子と環境の影響の両方によって決定される観察可能な身体的または生化学的特徴を意味する。
【0054】
本明細書において使用するとき、「対照ハエ」は、表現型の修飾について試験する変異を担持しないことを除き、本発明に記載の方法に用いたハエと同じ遺伝子型であるハエを意味する。
【0055】
本明細書において使用するとき、「mRNA転写の促進」は、対照レベルと比較して、表Iに記載のタンパク質、例えばヒトタンパク質をコードする天然内因性遺伝子から転写されるmRNAの量がより多いことを意味する。表Iに記載のタンパク質、例えばヒトタンパク質のmRNAレベルの促進は、ミトコンドリア機能異常に関連した状態を有さない対象のレベルと比較して、かかる状態を有する個体の組織または細胞に存在してよい。特に、当該状態を有する対象のレベルは、当該状態を有さないヒトの対応する組織において検出されるmRNAの量の少なくとも約2倍、好ましくは少なくとも約5倍、より好ましくは少なくとも約10倍、最も好ましくは少なくとも約100倍であり得る。最終的には、かかるmRNAレベルの上昇によって、健常人のレベルと比較して、該状態を有する個体のmRNAから翻訳されるタンパク質レベルの増加が導かれ得る。
【0056】
トランスジェニックショウジョウバエを含むトランスジェニック生物を得る方法は当業者に周知である。例えば、P因子介在形質転換のために一般に使用される文献は、Spradling, Drosophila: A practical approach, Roberts, Ed., 175-197, IRL Press, Oxford, UK (1986)である。EP因子技術は、内因性ショウジョウバエ遺伝子の転写を異所的に制御するために使用される酵母Gal4転写アクチベーターを用いたバイナリ系を意味する。この技術はBrand and Perrimon, Development, Vol. 118, No. 2, 401-415 (1993);および Rorth (1998), supraに記載されている。
【0057】
「宿主細胞」は、本明細書において使用するとき、何れかに記載の方法、例えばエレクトロポレーション、リン酸カルシウム沈殿、マイクロインジェクション、形質転換、ウイルス感染などによって細胞に導入した異種DNAを含む原核細胞および真核細胞を意味する。
【0058】
「異種」は、本明細書において使用するとき、「異なる天然起源」を意味するか、または非天然状態を意味する。例えば、宿主細胞が別の生物、特に別の種由来のDNAまたは遺伝子で形質転換されているとき、当該宿主細胞に対して、そして該遺伝子を担持する宿主細胞の子孫に対しても、当該遺伝子は異種である。同様に、異種は、同じ天然の起源細胞型に由来するヌクレオチド配列およびそれに挿入したものを意味するが、これは非天然状態、例えば異なるコピー数、または異なる制御因子の制御下に存在する。
【0059】
「ベクター」分子は、異種核酸が挿入されていてもよく、適切な宿主細胞に導入され得る核酸分子である。好ましくはベクターは、1個以上の複製起点と、組換えDNAを挿入することができる部位を1個以上有する。ベクターはしばしば、ベクターを有する細胞を有さないものから選択することができる簡便な手段を有しており、例えば薬剤耐性遺伝子をコードする。一般にベクターはプラスミド、ウイルス性ゲノムおよび(主に、酵母およびバクテリア中)「人工染色体」を含む。
【0060】
「プラスミド」は一般に、当業者に慣用されている標準的な命名慣行に従って、前に小文字のpを付けて、そして/または大文字および/または数字を続けて示す。本明細書に開示の開始プラスミドは、商業的に入手可能であるか、非限定的な基礎で公に利用可能であるか、または周知の公開されている手法を単純に適用して入手可能なプラスミドから構成することができる。本発明において使用することができる多くのプラスミドと他のクローニングおよび発現ベクターは、当業者に周知であり、容易に入手可能である。さらに、当業者は、本発明での使用に好適な他のプラスミドを容易に構成することができる。本発明のかかるプラスミドならびに他のベクターの特徴、構造および使用は、本明細書の記載から当業者に明らかである。
【0061】
用語「単離」は、該物質がその起源環境、例えば天然由来のものであるとき天然環境から取り出されていることを意味する。例えば、生きた動物に存在する天然由来のポリヌクレオチドまたはポリペプチドは単離されていないが、天然系に共に存在する物質のいくつかまたは全てから分離した同ポリヌクレオチドまたはポリペプチドは、その後天然系に再導入されたとしても、単離されている。かかるポリヌクレオチドはベクターの一部であってもよく、そして/またはかかるポリヌクレオチドは組成物の一部であってもよく、そして当該ベクターまたは組成物がその天然環境の一部ではないため、単離されている。
【0062】
本明細書において使用するとき、用語「転写制御配列」または「発現制御配列」は、イニシエーター配列、エンハンサー配列およびプロモーター配列のようなDNA配列を意味し、これらは作動可能に結合している核酸配列がコードするタンパク質の転写を誘導、抑制または他に記載の方法で制御する。これらは組織特異的であってよく、発生段階特異的であってもよい。
【0063】
「ヒト転写制御配列」は、各ヒト染色体で発見されるように、本発明の表Iに記載のポリペプチドをコードするヒト遺伝子に関連して通常見出される転写制御配列である。
【0064】
「非ヒト転写制御配列」は、ヒトゲノムに存在しない何れかの転写制御配列である。
【0065】
用語「ポリペプチド」は、本明細書において、用語「ポリペプチド(複数)」および「タンパク質」と交換可能なように使用される。
【0066】
本発明の表Iに記載のタンパク質の化学誘導体は、通常は分子の一部ではないさらなる化学基を含むポリペプチドである。かかる基によって、分子の溶解性、吸収性、生物学的半減期などを改善することができる。あるいは該基によって、分子の毒性を低下させ、分子の望ましくない副作用を阻止または軽減することなどができる。かかる効果を仲介することができる基は、例えばRemington’s Pharmaceutical Sciences, 16th Edition, Mack Publishing Co., Easton, PA (1980)に記載されている。
【0067】
表Iに記載のタンパク質またはその変異体を「調節」する物質、すなわち「表Iに記載のタンパク質から選択されるタンパク質のモジュレーター」の能力は、当該タンパク質および/またはその変異体の活性を阻害または促進し、そして/または該タンパク質または変異体をコードする遺伝子のRNA発現を阻害または促進する該物質の能力を含むが、これらに限定されない。かかる調節には、該タンパク質と相互作用する他のタンパク質、例えば関連制御タンパク質または該タンパク質によって修飾されるタンパク質の能力に作用することを含んでいてもよい。
【0068】
用語「アンタゴニスト」は、本明細書において使用するとき、ポリペプチド、例えば表Iに記載のポリペプチドまたはその変異体を直接的または間接的に調節することができる分子、すなわちモジュレーターであって、該ポリペプチドの生物学的活性を促進するものを意味する。アゴニストは、タンパク質、核酸、糖質または他の分子を含んでいてもよい。遺伝子転写またはタンパク質の生物学的活性を促進するモジュレーターは、転写を促進するか、または該タンパク質の生物学的特性もしくは活性を刺激するものである。
【0069】
用語「アンタゴニスト」または「阻害剤」は、本明細書において使用するとき、ポリペプチド、例えば表Iに記載のポリペプチドまたはその変異体を直接的または間接的に調節することができる分子、すなわちモジュレーターであって、該ポリペプチドの生物学的活性を阻止または阻害するものを意味する。アンタゴニストおよび阻害剤は、タンパク質、核酸、糖質または他の分子を含んでいてもよい。遺伝子発現またはタンパク質の生物学的活性を阻害するモジュレーターは、遺伝子発現または該タンパク質の生物学的活性を低下させるものである。
【0070】
本明細書で一般に言及されるとおり、「表Iに記載のタンパク質から選択されるタンパク質または遺伝子」は、ヒト形態のタンパク質または遺伝子を意味する。表Iのタンパク質と記載レベル未満の配列同一性を含むポリペプチドおよびスプライス多型もしくは対立遺伝子多型として生じるもの、またはわずかな欠失、保存的アミノ酸置換、変性コドンの置換などによって修飾されるものも本発明の範囲に含まれることが理解される。多様なアルゴリズムが当該技術分野において既知であり、公に開示されており、そしてホモロジーベースの同一性検索を実施するための多様な商業的に入手可能なソフトウェアが利用可能であり、本明細書に記載の多様なタンパク質を同定するために使用することができる。かかるソフトウェアの例は、FASTA (GCG Wisconsin Package)、Bic_SW (Compugen Bioccelerator)、BLASTN2、BLASTP2、BLASTD2 (NCBI)および Motifs (GCG)を含むが、これらに限定されない。BLAST アルゴリズムはAltschul、Stephen F., Thomas L. Madden, Alejandro A. Schaffer, Jinghui Zhang, Zheng Zhang, Webb Miller, and David J. Lipman (1997), “Gapped BLAST and PSI-BLAST: a new generation of proteindatabase search programs”, Nucleic Acids Res. 25:3389-3402に記載されている。好適なソフトウェアプログラムが例えばGuide to Human Genome Computing, 2nd edition, Bishop, Ed., Academic Press, San Diego, CA (1998); およびThe Internet and the New Biology: Tools for Genomic and Molecular Research, American Society for Microbiology, Peruski, Jr. and Harwood Peruski, Eds., Washington, DC (1997)に記載されている。
【0071】
本明細書において詳述するとおり、ゲノムワイドなRNA干渉スクリーニングをショウジョウバエ S2細胞において実施して、ミトコンドリア機能を調節することができる遺伝子を同定した。ミトコンドリア酵素であるクエン酸シンターゼ(CS)活性(ミトコンドリア酸化能の指標)をスクリーニングの一次読出(readout)として用いた。この研究は、高等真核生物における全ゲノムRNAiスクリーニングを用いて、ゲノムスケールでミトコンドリア生合成および機能の制御因子を探索する初めての試みである。さらに、ミトコンドリア機能の制御因子を系統的に調査するため、最初のCS活性を生化学的および機能的読出として使用して、それらを示す。
【0072】
CSはミトコンドリア酸化活性の一般的なマーカーとして広汎に使用されている。当該技術分野におけるミトコンドリア生合成の制御メカニズムの知識は、主としてPGC1−NRF経路に注視しているが;ヒトCSの近接プロモーターはこれらの転写因子のための結合部位を欠き、このことはCS遺伝子制御のための別経路を示唆している(Kraft CS, et al. (2006) American Journal of Phys. - Cell Phys. 290(4):C1119)。したがって、CS活性に作用するゲノムのゲノムワイドスクリーニングによって、ミトコンドリア生合成および機能の新規モジュレーターおよび経路を(すなわち、少なくともいくつかの例においてPGC1−NRF経路と独立して)発見することが期待される。
【0073】
非偏向全ゲノムRNAiスクリーニングをショウジョウバエ S2細胞で実施した。高効率のRNAi、低い遺伝子重複および大量の変異が知られているため、インビボ解析にショウジョウバエ系を選択した。さらに、ショウジョウバエは多様なミトコンドリア疾患の良好なモデル系として成功裏に利用されている(Sanchez-Martinez A. et al. (2006) Biochim Biophys Acta. 1757: 1190)。
【0074】
本明細書において詳細に記載しているとおり、ゲノムワイドのRNAiスクリーニングによってミトコンドリア関連機能、転写制御およびシグナル伝達経路における多数のヒットを同定した。生物学的意義をさらに調査するため、トランスジェニックハエおよびハエ変異体を用いてインビボで多数のヒットを解析した。本研究によって、HDAC6の新規機能が明らかとなり、そしてミトコンドリア機能の調節におけるHDAC1のためのインビボでの支持を提供する。ハエ変異体を用いて、ミトコンドリア機能の調節のインビボでのエビデンスは、AKAP、vimar、Src42A、klumpfuss、barrenおよび smt3を含む多くの既知および新規遺伝子について得られる。これらのヒットはPKAシグナル伝達経路、小GTPアーゼ介在シグナル伝達経路、RTKシグナル伝達経路、アポトーシス、有糸分列制御および刺激プロセスに関与している。
【0075】
多様な複合体、富化ミトコンドリア関連タンパク質、および多様な既知のミトコンドリア機能の制御因子の複数サブユニットの同定によって示されるとおり、該スクリーニングは極めて特異的であり、機能的に関連してる。
【0076】
ミトコンドリア生合成
ミトコンドリア生合成は、発生、代謝、栄養および環境刺激を統合する複雑なプロセスである。筋形成中 (Duguez S, et al. (2002) American Journal of Phys. - Endocr. & Metab. 282 (4):E802)、増殖ホルモン刺激 (Goglia F, et al. (1999) FEBS Letters 452(3):115)、低温または運動に対する応答として(Reznick RM, et al. (2006) Journal of Physiol. 574 (Pt 1):33)、ミトコンドリア増殖が必要である。ミトコンドリアは分裂、融合および位置変更によって絶えず、動的に変化している(Chen H, et al. (2005) Human Mol. Gen. 14 Spec No. 2:R283)(Okamoto K, et al. (2005) Ann. Review of Gen. 39:503)。
【0077】
PGC1α(ペルオキシソーム増殖因子活性化レセプターγコアクチベーター1)は、ミトコンドリア生合成について最初に同定された主な制御因子である(Puigserver P, et al. (1998) Cell 92(6):829)(Wu Z, et al. (1999) Cell 98(1):115)。ミトコンドリア生合成の最も特徴的な経路はPGC1−NRF(核呼吸因子)経路である。寒気および運動のような環境シグナルは、PGC−1ファミリー(PGC−1α、PGC−1β、およびPRC)の転写コアクチベーターの発現を誘導し、特定の転写因子(NRF−1、NRF−2およびERRα)を活性化して呼吸遺伝子、ならびにmtDNA転写および複製制御因子の発現を誘導する。(Wu 1999)(Lehman JJ, et al. (2000) Journal of Clin. Invest. 106(7):847)(Lin J, et al. (2002) JBC 277(3):1645)(Scarpulla RC (2002a) Biochimica et Biophysica Acta 1576(1-2):1)(Scarpulla RC (2002b) Gene 286(1):81)(Puigserver 1998)(Meirhaeghe A, et al. (2003) Biochem. Journal 373(Pt 1):155)(Mootha VK, et al. (2004) PNAS 101(17):6570)(Schreiber SN, et al. (2004) PNAS 101 (17):6472)(Reznick 2006)
【0078】
ミトコンドリア生合成について同定された他の主な制御因子は、CaMKIV(カルシウム/カルモジュリン依存プロテインキナーゼIV)、AMPK(AMP−活性化プロテインキナーゼ)およびNO(一酸化窒素)であり、これらはPGC1α−NRF経路によってミトコンドリア生合成を制御していると考えられている(Reznick 2006)。CaMKIVは筋細胞のミトコンドリア生合成において正の制御因子であることが示された(Wu H, et al. (2002) Science 296(5566):349)。AMPKは慢性エネルギー欠乏に応答するミトコンドリア生合成の主な制御因子である(Zong H, et al. (2002) PNAS 99(25):15983)(Hardie DG (2004) Medicine & Science in Sports & Exercise 36(1):28)(Kahn BB, et al. (2005) Cell Metab. 1(1):15)(Hardie DG, et al. (2006) Physiology 21:48)。eNOS(内皮一酸化窒素シンターゼ)によって生産されるNOは、PGC1αによってミトコンドリア生合成を制御することが示されている(Nisoli E, et al. (2003) Science 299(5608):89)(Nisoli E, et al. (2004b) PNAS 101 (47):16507)。NOはグアニルシクラーゼを活性化して2次メッセンジャーであるcGMP(環状GMP)を製造する内因性シグナル伝達分子である(Moncada S, et al. (1991) Pharmaco. Reviews 43(2):109)(Alderton WK, et al. (2001) Biochem. Journal 357(Pt 3):593)。
【0079】
さらにPGC1αは、レチノイン酸レセプター(RxR)、甲状腺レセプター(TR)、ペルオキシソーム増殖因子活性化レセプター(PPAR)を含む核ホルモンレセプターとも結合する(Knutti D, et al. (2001) Trends in Endocrin. & Metab. 12(8):360)(Puigserver P, et al. (2003) Endocrine Reviews 24(1):78)。したがって、PGC−1αは別のレセプターを共に活性化することによる、さらなる機能を有し得る。ミトコンドリアの存在量および形態がPGC1αノックアウトマウス由来の褐色脂肪細胞および肝臓において正常であるが、これらのマウス由来の肝細胞はホルモン誘導性糖新生に欠損を有し、低い(17%減少した)O消費速度を有するという事実によって示唆されるとおり、ミトコンドリア生合成のPGC1α独立経路が存在し得ることは注目すべきである(Lin J, et al. (2004) Cell 119(1):121)。
【0080】
本明細書に記載の標的ポリペプチドのヒトホモログの核酸分子は、例えば標的遺伝子制御において有用な標的遺伝子アンチセンス分子として、および/または標的遺伝子核酸配列の増幅反応のアンチセンスプライマーとして作用し得る。さらに、かかる配列は、陰電子制御に使用することができるリボザイムおよび/または三重らせん配列の一部として、またはsiRNAまたは一本鎖もしくは二本鎖RNAの標的として使用することができる。さらに、かかる分子は本明細書に記載の診断キットの成分として使用することができる。
【0081】
同定した遺伝子が正常または野生型遺伝子である場合、この遺伝子を用いて遺伝子の変異対立遺伝子を単離することができる。かかる単離は、遺伝学的基礎を有すると知られているか、または予期されるプロセスおよび障害において好ましい。変異対立遺伝子は、ミトコンドリア機能異常に関連した状態に寄与する遺伝子型を有することが知られているか、または予期される個体から単離することができる。変異対立遺伝子または変異対立遺伝子産物は本明細書に記載の診断アッセイ系において利用することができる。
【0082】
変異遺伝子のcDNAは、当業者に周知の技術、例えばPCRを用いて単離することができる。この場合、変異対立遺伝子を担持すると予測される個体において発現されることが既知であるか、または予測される組織から単離したmRNAと、オリゴdTオリゴヌクレオチドとをハイブリダイズし、逆転写酵素で新規鎖を伸長して、第1のcDNA鎖を合成することができる。正常遺伝子の5’末端に特異的にハイブリダイズするオリゴヌクレオチドを用いて、第2の相補鎖(cDNA)を合成する。これら2つのプライマーを用いて、PCRによって該生成物を増幅し、好適なベクターにクローン化し、当業者に周知の方法によるDNA配列解析に付す。変異遺伝子のDNA配列を正常遺伝子のものと比較して、変異遺伝子産物の機能の消滅または変化に関与する変異を確認することができる。
【0083】
あるいは、ゲノムまたはcDNAライブラリーを構成して、変異対立遺伝子を担持すると予期されるか、または知られている個体の目的の遺伝子を発現していると知られているか、または予期される組織由来のDNAまたはRNAをそれぞれ用いて、スクリーニングすることができる。正常遺伝子または何れかの好適なそのフラグメントを標識化して、ライブラリーの対応する変異対立遺伝子を同定するプローブとして使用することができる。この遺伝子を含むクローンは、当該技術分野において日常的に実施されている方法によって精製して、上記の配列解析に供することができる。
【0084】
さらに、発現ライブラリーは、変異対立遺伝子を担持することが予測されるか、または知られている個体の目的の遺伝子を発現していると知られているか、または予期される組織から単離したDNAまたはそれから合成したcDNAを用いて、構成することができる。この方法において、推定変異組織によって産生される遺伝子産物が発現し、正常な遺伝子産物に対する抗体と併用する下記の標準的な抗体スクリーニング技術を用いて、スクリーニングされ得る。スクリーニング技術は、例えばAntibodies: A Laboratory Manual, Harlow and Lane, Eds., Cold Spring Harbor Press, Cold Spring Harbor, NY (1988)参照。変異によって、例えばミスセンス変異の結果として異なる機能を有する発現遺伝子産物が得られるとき、抗体のポリクローナルセットが変異遺伝子産物と交叉反応する可能性がある。かかる標識化抗体との反応によって検出されるライブラリークローンは、上記のとおり精製して、配列解析に供することができる。
【0085】
本発明の医薬組成物は、核酸レベルで表Iに記載のタンパク質またはその変異体の発現を阻害する物質を含んでいてもよい。かかる分子は、かかるタンパク質をコードする核酸の適切なヌクレオチド配列に関係するリボザイム、アンチセンスオリゴヌクレオチド、三重らせんDNA、RNAアプタマー、siRNAおよび/または二本鎖もしくは一本鎖RNAを含む。これらの阻害分子は、過剰な負担または実験を行うことなく、当業者によって常套の技術を用いて製造される。例えば、本明細書に記載のポリペプチドをコードする遺伝子の制御領域、すなわちプロモーター、エンハンサーおよびイントロンに対するアンチセンス分子、DNAまたはRNAを設計することによって、遺伝子発現の修飾、例えば阻害が得られる。例えば、転写開始位置、例えば開始位置の−10から+10の位置に由来するオリゴヌクレオチドを用いることができる。しかし、mRNAに最も強くハイブリダイズするものを創成するために、全遺伝子領域を用いてアンチセンス分子を設計することができ、かかる好適なアンチセンスオリゴヌクレオチドは当業者に慣用されている標準的なアッセイ法によって製造され、同定され得る。
【0086】
同様に、「三重らせん」塩基対形成方法論を用いて、遺伝子発現を阻害することができる。ポリメラーゼ、転写因子または制御分子の結合に十分にオープンな二重らせんの能力の阻害を引き起こす、三重らせん対形成は有用である。近年の三重らせんDNAを用いた治療進歩は文献に記載されている。 Gee et al., Molecular and Immunologic Approaches, Huber and Carr, Eds., Futura Publishing Co., Mt. Kisco, NY (1994)参照。これらの分子は、転写産物とリボソームとを結合させないことによって、mRNAの翻訳を阻止するようにも設計され得る。
【0087】
酵素的RNA分子であるリボザイムを用いて、RNAの特定の切断を触媒することにより遺伝子発現を阻害することもできる。リボザイム作用のメカニズムは、リボザイム分子と相補的標的RNAとの配列特異的ハイブリダイゼーション、次いでエンドヌクレアーゼ的切断を含む。使用することができる例は、遺伝子配列のエンドヌクレアーゼ的切断を特異的かつ効果的に切断するように設計され得る遺伝子光学的「ハンマーヘッド」型または「ヘアピン」型リボザイム分子を含む。何れかの潜在的RNA標的内の特異的リボザイム切断部位は、次の配列:GUA、GUUおよびGUCを含むリボザイム切断部位の標的分子をスキャンすることによって、当初は同定される。同定した後、オリゴヌクレオチドをオープン不可能にすることができる2次的構造的特徴について、切断部位を含む標的遺伝子の領域に対応する15〜20リボヌクレオチドの短RNA配列を評価することができる。リボヌクレアーゼ保護アッセイを用いて相補的オリゴヌクレオチドとのハイブリダイゼーションに対するアクセシビリティーを試験して、候補標的の安定性を評価することもできる。
【0088】
リボザイム法は、細胞をリボザイムに曝露するか、または細胞内でのかかる小RNリボザイム分子の発現を誘導することを含む。Grassi and Marini, Ann Med, Vol. 28, No. 6, 499-510 (1996);および Gibson, Cancer Metastasis Rev, Vol. 15, No. 3, 287-299 (1996)参照。本明細書に記載の少なくとも1種の遺伝子に対応するmRNAを標的とするハンマーヘッドリボザイムおよびヘパリンリボザイムの細胞内発現を利用して、遺伝子によってコードされるタンパク質を阻害することができる。
【0089】
リボザイム配列を組み込んだRNAオリゴヌクレオチドの形態でリボザイムを細胞に直接送達するか、または所望のリボザイムRNAをコードする発現ベクターとしてリボザイムを細胞に導入することができる。リボザイムはmRNAの切断に触媒的に有効な十分な数で、インビボで日常的に発現されており、それによって細胞のmRNA存在量が変化する。Cotten and Birnstiel, EMBO J, Vol. 8, No. 12, 3861-3866 (1989)参照。特に、常套周知の法則によって設計され、例えば標準的なホスホロアミダイト化学によって合成されたDNA配列をコードするリボザイムは、tRNAをコードする遺伝子のアンチコドン幹およびループにおける制限酵素部位にライゲートされ得て、次いでこれは当該技術分野において慣用的な方法によって目的の細胞に形質転換し、該細胞中で発現され得る。好ましくは、誘導プロモーター、例えばグルココルチコイドまたはテトラサイクリン応答因子をこの構成に導入して、リボザイム発現を選択的に制御することもできる。十分に供給するための使用には、顕著に構成的に活性なプロモーターを使用することができる。サイズが小さく、転写率が高く、異なる組織種において普遍的に発現するため、tDNA遺伝子、すなわちtRNAをコードする遺伝子は、本発明において有用である。
【0090】
したがって、事実上あらゆるmRNA配列を切断するようにリボザイムは通常設計されており、制御可能な触媒的に有効量のリボザイムが発現されるように、かかるリボザイム配列をコードするDNAで細胞を形質転換することができる。したがって、事実上あらゆるRNA種の細胞内存在量が修飾または変化され得る。
【0091】
リボザイム配列をアンチセンスヌクレオチドについて記載の方法と実質的に同じ方法で修飾することができ、例えばリボザイム配列は修飾塩基基を含んでいてもよい。
【0092】
RNAアプタマーを細胞に導入するかまたは発現させて、RNA存在量または活性を変化させることができる。RNAアプタマーは、翻訳を特異的に阻害することができるTat および RevRNAのようなタンパク質の特異的RNAリガンドである[Good et al., Gene Ther, Vol. 4, No. 1, 45-54 (1997) 参照]。
【0093】
常套の二本鎖または一本鎖RNA技術を用いて、遺伝子発現の遺伝子特異的阻害を行うこともできる。かかる技術はWO 99/32619(その全体において出典明示により本明細書の一部とする)に記載されている。さらに、siRNA技術も遺伝子発現を阻害する方法として有用であると示されている。 Cullen, Nat Immunol, Vol. 3, No. 7, 597-599 (2002);および Martinez et al., Cell, Vol. 110, No. 5, 563-574 (2002)参照。
【0094】
本発明のアンチセンス分子、三重らせんDNA、RNAアプタマー、dsRNA、ssRNA、siRNAおよびリボザイムは、核酸分子の合成のための当該技術分野において既知の何れかに記載の方法によって製造され得る。これには固相ホスホロアミダイト化学合成のようなオリゴヌクレオチドを化学的に合成する技術が含まれる。あるいは、本明細書に記載のポリペプチドの遺伝子をコードするDNA配列のインビトロおよびインビボ転写によって、RNA分子を製造することができる。かかるDNA配列はT7またはSP6のような好適なRNAポリメラーゼプロモーターを有する広汎なベクターに組み込むことができる。あるいは、cDNAは、合成アンチセンスRNAを構成的または誘導可能なように細胞系、細胞または組織に導入することができるように構成する。
【0095】
ベクターは多様な利用可能な方法によって細胞または組織に導入され得て、インビボ、インビトロまたはエクスビボで使用され得る。エクスビボ治療のために、ベクターは、患者から採取した幹細胞に導入されて、同じ患者に自家移植するためにクローン的に増殖させることができる。トランスフェクションによる送達およびリポソーム注射による送達は、当該技術分野において周知の方法を用いて実施することができる。
【0096】
本明細書に記載のタンパク質のmRNAレベルの検出は、表Iに記載のポリペプチドをコードする単離ヌクレオチド配列と高ストリンジェント条件下、例えば0.1×SSPEまたはSSC、0.1% SDS、65℃でハイブリダイズする少なくとも約20ヌクレオチド長さの単離ヌクレオチド配列と、生物学的サンプルを接触させるか、または生物学的サンプル由来の単離RNAもしくはDNA分子を接触させることを含んでいてもよい。ハイブリダイゼーション条件は、高ストリンジェントまたは高ストリンジェント未満であってよい。核酸分子がデオキシオリゴヌクレオチド(オリゴ)である場合、高ストリンジェント条件は、例えば6×SSC/0.05%ピロリン酸ナトリウム中37℃(14塩基オリゴ)、48℃(17塩基オリゴ)、55℃(20塩基オリゴ)および60℃(23塩基オリゴ)で洗浄することを意味してよい。多様な組成の核酸についてのかかるストリンジェント条件の好適な範囲は、Krause and Aaronson, Methods Enzymol, Vol. 200, 546-556 (1991) および上述の Maniatis et al.に記載されている。
【0097】
いくつかの場合において、機能異常に関連した遺伝子の変異形態の検出は、過小発現、過剰発現、または遺伝子の位置的もしくは時間的発現の変化によって惹起される疾患または疾患の受容性の診断を追加または定義することができる診断ツールを提供する。遺伝子に変異を担持する個体は、多様な技術によってDNAレベルで検出され得る。
【0098】
診断用核酸、特にmRNAは、対象の細胞、例えば血液、尿、唾液、生検組織、または剖検材料から得られる。ゲノムDNAを診断に直接使用することができ、あるいは解析前にPCRもしくは他の増幅技術を用いて酵素的に増幅することができる。RNAとcDNAは同様に使用され得る。欠失および挿入は、正常な遺伝子型との比較において、増幅生成物のサイズの変化によって検出することができる。点変異は、表Iに記載のポリペプチドまたはその変異体をコードする標識化ヌクレオチド配列と増幅したDNAをハイブリダイズさせることによって同定することができる。RNアーゼ消化または融点の差によって完全にマッチした配列とミスマッチ二本鎖を区別することができる。DNA配列の差は、変性剤の存在下もしくは非存在下、ゲル中DNAフラグメントの電気泳動移動度の変化によって、または直接DNA配列を決定して、検出することもできる。例えば、Myers, Larin and Maniatis, Science, Vol. 230, No. 4731, 1242-1246 (1985)参照。特定の位置での配列の変化は、RNアーゼおよびS1保護のようなヌクレアーゼ保護アッセイまたは化学的切断法によっても明らかとなり得る。Cotton et al., Proc Natl Acad Sci U S A, Vol. 85, 4397-4401 (1985)参照。さらに、表Iに記載のポリペプチドをコードするヌクレオチド配列またはかかるヌクレオチド配列の変異体もしくはフラグメントを含むオリゴヌクレオチドプローブのアレイを構成して、例えば遺伝的変異の効果的なスクリーニングを実施することができる。アレイ技術方法は周知であり、一般に適用可能であり、遺伝子発現、遺伝的連鎖および遺伝的変異性を含む分子遺伝的特徴における多様な課題を解決するために使用することができる。例えば、Chee et al., Science, Vol. 274, No. 5287, 610-613 (1996)参照。
【0099】
診断的アッセイは、本明細書に記載の方法によって表Iに記載のポリペプチドの遺伝子における変異の検出を通じて、疾患に対する受容性を診断または測定する方法を提供する。さらに、かかる疾患は、ポリペプチドまたはmRNAのレベルが異常に低下または上昇している対象に由来するサンプルから測定することを含む方法によって、診断され得る。発現の低下または上昇は、ポリヌクレオチドの定量のための当該技術分野において周知の方法の何れか、例えば核酸増幅、例えばPCR、RT−PCR、RNアーゼ保護、ノーザンブロッティングおよび他のハイブリダイゼーション法を用いて、RNAレベルで測定され得る。宿主由来のサンプル中のタンパク質、例えば本発明のポリペプチドのレベルを測定するために使用され得るアッセイ技術は、当業者に周知である。かかるアッセイ法は、ラジオイムノアッセイ、競合的結合アッセイ、ウェスタンブロット分析およびELISAアッセイを含む。
【0100】
本発明はまた、mRNAレベル(またはタンパク質レベル)を検出するための診断キットであって:
(a) 表Iに記載のポリペプチドのポリヌクレオチドまたはそのフラグメント;
(b) (a)のものと相補的な配列のヌクレオチド;
(c) (a)のポリヌクレオチドによってコードされる本発明の表Iのポリペプチド;
(d) (c)のポリペプチドに対する抗体;
(e) (a)のものと相補的な配列のRNAi
を含むキットも開示する。
【0101】
何れかのかかるキットにおいて、(a)、(b)、(c)、(d)または(e)の何れかの物質は、実質的な成分を含んでいてよいことが理解される。かかるキットは疾患または疾患に対する受容性、特にミトコンドリア機能異常に関連した状態を診断するために使用される。
【0102】
罹患個体と非罹患個体のcDNAまたはゲノム配列の差も測定することができる。罹患個体のいくつかまたは全てに変異が観察されるが、正常個体では観察されないとき、当該変異は疾患の原因であり得る。
【0103】
遺伝子治療
他の局面において、正常な生物学的活動、例えば正常なミトコンドリア生合成を遺伝子治療によって促進するために、表Iに記載のポリペプチドをコードする配列を含む核酸またはその機能的誘導体を投与することができる。遺伝子治療は核酸を対象に投与することによって実施する治療を意味する。本発明のこの局面において、核酸は、例えば正常なミトコンドリア生合成を促進して治療効果を仲介するコード化タンパク質を製造する。
【0104】
遺伝子治療のために当該技術分野において利用可能な何れかに記載の方法を本発明において使用することができる。例示的方法は下記に記載されている。
【0105】
好ましい局面において、該治療は表Iに記載の何れかのポリペプチドをコードする核酸を含む。一般に、核酸は、好適な宿主中の表Iに記載のタンパク質またはそのフラグメントもしくはキメラタンパク質またはその変異体を発現する発現ベクターの一部である。特に、かかる核酸は表Iのタンパク質をコードするコード領域と作動可能に結合したプロモーターを有しており、該プロモーターは誘導的または構成的であり、所望により組織特異的である。別の具体的な局面において、核酸分子を用いて、表Iのいずれかの配列または他の所望の配列をコードするタンパク質の隣にゲノムの所望の位置で同種組換えを促進する領域がならび、従って特定のタンパク質をコードする核酸の染色体内発現を提供する。Koller and Smithies, Proc Natl Acad Sci U S A, Vol. 86, No. 22, 8932-8935 (1989); and Zijlstra et al., Nature, Vol. 342, No. 6248, 435-438 (1989)参照。
【0106】
患者への核酸の送達は直接であってよく、この場合は該患者を直接核酸または核酸担持ベクターに曝すか、または間接的である場合、まずインビトロで細胞を核酸で形質転換して、次いで患者に移植する。これら2つのアプローチは、それぞれインビボまたはエクスビボ遺伝子治療として知られている。
【0107】
具体的な局面において、核酸はインビボで直接投与され、発現してコード化生成物を製造する。これは当該技術分野において既知の多様な方法の何れか、例えば適切な核酸発現ベクターの一部として構成して細胞内に、例えば失活または弱毒化レトロウイルスまたは他のウイルス性ベクターを用いて感染させて(例えば米国特許第4,980,286号および上記他のもの参照)、あるいは素のDNAを直接注射して、あるいはマイクロ粒子衝撃、例えば遺伝子銃; Biolistic, Dupontを用いて、あるいは脂質もしくは細胞表面レセプターもしくはトランスフェクト剤でコーティングするか、リポソーム、マイクロ粒子もしくはマイクロカプセルに充填するか、または核に侵入することが知られているペプチドと結合して投与して、レセプターを特異的に発現する細胞型を標的として使用され得るレセプター介在性エンドサイトーシスの対象となるリガンドに結合して投与することによって(例えば米国特許第5,166,320号; 第5,728,399号; 第5,874,297号および第6,030,954号参照。これら全てを全体において、出典明示により本明細書の一部とする)実施することができる。他の局面において、リガンドがエンドソームを阻止する融合ウイルス性ペプチドを含み、核酸がリソソーム分解しない核酸−リガンド複合体を形成することができる。さらに他の局面において、特異的レセプターを標的とすることによって細胞特異的取り込みおよび発現のために、核酸はインビボで標的とされ得る。例えば、PCT公開公報WO 92/06180; WO 92/22635; WO 92/20316; WO 93/14188 およびWO 93/20221参照。あるいは、核酸を細胞内に導入し、同種組換えによって発現のために宿主細胞DNAに組み込むことができる。例えば、米国特許第5,413,923号; 第5,416,260号および第5,574,205号; およびZijlstra et al. (1989), supra参照。
【0108】
具体的な局面において、表Iのポリペプチドをコードする核酸を含むウイルスベクターを使用する。例えば、レトロウイルスベクターを使用することができる。例えば、米国特許第5,219,740号; 第5,604,090号および第5,834,182号参照。これらのレトロウイルスベクターは、ウイルスゲノムのパッケージングと宿主細胞DNAへの融合に必要ではないレトロウイルス配列が欠失するように修飾されている。遺伝子治療に使用される表Iのポリペプチドの核酸は、患者への遺伝子の送達を容易にするベクターにクローン化される。
【0109】
アデノウイルスは遺伝子治療に使用することができる他のウイルスベクターである。アデノウイルスは、呼吸器上皮に遺伝子を送達するための特に魅力的なビヒクルである。アデノウイルスは天然では、呼吸器上皮に感染して軽度の疾患を引き起こす。アデノウイルス利用送達系の他の標的は、肝臓、中枢神経系、内皮細胞および筋肉である。アデノウイルスは非分裂細胞に感染することができるという利点を有する。アデノウイルス利用遺伝子治療を実施する方法は、例えば米国特許第5,824,544号; 第5,868,040号; 第5,871,722号; 第5,880,102号; 第5,882,877号; 第5,885,808号; 第5,932,210号; 第5,981,225号; 第5,994,106号; 第5,994,132号; 第5,994,134号; 第6,001,557号および第6,033,8843号に記載されている(これら全てを、それらの全体において出典明示により本明細書の一部とする)。
【0110】
遺伝子治療でのアデノ随伴ウイルス(AAV)の使用も提案される。AAVを作成し、利用する方法は例えば米国特許第5,173,414号; 第5,252,479号; 第5,552,311号; 第5,658,785号; 第5,763,416号; 第5,773,289号; 第5,843,742号; 第5,869,040号; 第5,942,496号および第5,948,675号に記載されている(これら全てを、それらの全体において出典明示により本明細書の一部とする)。
【0111】
遺伝子治療の他のアプローチは、エレクトロポレーション、リポフェクション、リン酸カルシウム介在性トランスフェクションまたはウイルス感染のような方法によって、組織培養物中の細胞に遺伝子を転移することを含む。通常、かかる転移方法には選択可能なマーカーの細胞への転移が含まれる。取り上げられ、転移遺伝子を発現している細胞を単離するため、該細胞を選択下に置く。これらの細胞を患者に送達する。
【0112】
当該技術分野において既知の多様な方法によって、得られた組換え細胞を患者に送達することができる。好ましい局面において、上皮細胞を例えば皮下注射することができる。他の局面において、組換え皮膚細胞を皮膚移植片として患者に適用することができる。組換え血液細胞、例えば造血幹細胞または前駆細胞は、好ましくは静脈内に投与される。使用のために予測される細胞の量は、所望の効果、患者の状態等に依存し、当業者によって決定され得る。
【0113】
遺伝子治療のために核酸を導入することができる細胞は、何れかの所望の、利用可能な細胞型を含み、上皮細胞、内皮細胞、角化細胞、繊維芽細胞、筋細胞、肝細胞;Tリンパ球、Bリンパ球、単球、マクロファージ、好中球、好酸球、巨核求、顆粒球のような血球;多様な幹細胞または前駆細胞、特に造血幹細胞または前駆細胞、例えば骨髄、臍帯血、末梢血、胎児肝臓などから得られるものを含むが、これらに限定されない。
【0114】
好ましい局面において、遺伝子治療に使用する細胞は患者にとって自己である。
【0115】
遺伝子治療に組換え細胞が使用される局面において、表Iに記載のポリペプチドの核酸が、該細胞またはその子孫によって発現されるように細胞に導入され、治療効果のために該組換え細胞をインビボで投与する。具体的な局面において、幹細胞または前駆細胞を使用する。本発明のこの局面に関して、インビトロで単離し、維持することができる何れかの幹細胞および/または前駆細胞を潜在的に使用することができる。かかる幹細胞は、造血幹細胞(HSC)、皮膚および腸内膜のような上皮組織の幹細胞、胚心筋細胞、肝臓幹細胞(例えばWO 94/08598参照)および神経幹細胞を含むが、これらに限定されない。Stemple and Anderson, Cell, Vol. 71, No. 6, 973-985 (1992)参照。
【0116】
上皮幹細胞(ESC)または角化細胞は、皮膚および腸内膜のような組織から既知の方法で得ることができる。Rheinwald, Methods Cell Biol, Vol. 21A, 229-254 (1980)参照。皮膚のように層状の上皮組織において、胚層(基底膜に最も近い層)内での幹細胞の有糸分列によって更新が生じる。腸内膜の幹細胞はこの組織の速やかな更新速度を提供する。患者またはドナーの皮膚または腸内膜から得たESCまたは角化細胞を組織培養で増殖することができる。Pittelkow and Scott, Mayo Clin Proc, Vol. 61, No. 10, 771-777 (1986)参照。ESCがドナーから得られるとき、宿主対移植片応答を抑制する方法、例えば中度の免疫抑制を促進するための照射、薬剤または抗体の投与を用いてもよい。
【0117】
本発明において、HSCに関して、HSCのインビトロでの単離、増殖および維持を提供する何れかの技術を用いることができる。これを実施し得る技術は:
(a) 将来的な宿主またはドナーから単離した骨髄細胞から、HSC培養物の単離および確立;または
(b) 同種または異種であり得る予め確立した長期HSC培養物の使用
を含む。
【0118】
好ましくは非自己HSCは、将来的な宿主/患者の移植免疫応答を抑制する方法と共に使用される。本発明の具体的な局面において、後腸骨稜から針吸引によってヒト骨髄細胞を得ることができる。例えば、Kodo, Gale and Saxon, J Clin Invest, Vol. 73, No. 5, 1377-1384 (1984)参照。本発明の好ましい局面において、HSCは顕著に富化されるか、または実質的に純粋な形態で製造される。この富化は長期培養前、中または後に実施することができ、当該技術分野において既知の何れかに記載の方法で実施され得る。骨髄細胞の長期培養は、例えば修飾Dexter細胞培養技術[Dexter et al., J Cell Physiol, Vol. 91, No. 3, 335-344 (1977)参照]または Witlock-Witte 培養技術を用いて確立および維持することができる。Witlock and Witte, Proc Natl Acad Sci U S A, Vol. 79, No. 11, 3608-3612 (1982)参照。
【0119】
具体的な局面において、遺伝子治療のために導入される核酸は、適切な転写のインデューサーの存在または非存在を制御することにより核酸の発現が制御可能であるように、コード領域と作動可能に結合した誘導プロモーターを含む。
【0120】
医薬組成物
本発明のさらなる局面は、上記何れかの治療効果のために、薬学的に許容される担体、賦形剤または希釈剤と共に医薬組成物を投与することに関する。かかる医薬組成物は、例えば表Iに記載のポリペプチド、該ポリペプチドに対する抗体、模倣物、アゴニスト、アンタゴニスト、阻害剤または表Iに記載のポリペプチドもしくはその遺伝子の機能の他の阻害剤を含んでいてもよい。該組成物は単独で、または食塩水、緩衝化食塩水、デキストロースおよび水を含むがこれらに限定されない何れかの滅菌生体適合性医薬担体中で投与することができる安定化化合物のような少なくとも1種の他の薬剤と組み合わせて投与され得る。該組成物を単独で、または他の薬剤、医薬またはホルモンと組み合わせて投与してもよい。
【0121】
さらに、上記何れかの治療タンパク質、アンタゴニスト、抗体、アゴニスト、アンチセンス配列または他のモジュレーターを、他の適切な治療剤と共に投与することができる。組合せ治療に使用する適切な薬剤の選択は、常套の医学的原則に準じて当業者が行うことができる。治療剤の組合せはミトコンドリア生合成の以上に関連した病的状態の処置、予防または寛解に相乗的に作用し得る。このアプローチを用いて、より低い用量の各薬剤で治療効果を得ることができ、したがって有害な副作用が生じる可能性を減少させることができる。表Iに記載のヒトポリペプチドおよび該ポリペプチドをコードする遺伝子およびその変異体のアンタゴニスト、アゴニストおよび他のモジュレーターを、当該技術分野において一般に既知の方法を用いて製造することができる。
【0122】
本発明に含まれる医薬組成物は、経口、静脈内、筋肉内、関節内、動脈内、髄内、鞘内、心室内、経皮、皮下、腹腔内、鼻腔内、経腸、局所、舌下または直腸を含むがこれらに限定されない多様な経路によって投与され得る。
【0123】
これらの医薬組成物は有効成分に加え、薬学的に使用され得る製剤への有効成分の処理を容易にする賦形剤および助剤を含む、好適な薬学的に許容される担体を含んでいてもよい。製剤および投与技術についてRemington’s Pharmaceutical Sciences (Maack Publishing Co., Easton, PA)の最新版に更に詳細に記載されている。
【0124】
経口投与用医薬組成物は、経口投与に適切な投与量で当該技術分野において周知の薬学的に許容される担体を用いて製剤することができる。かかる担体は、患者に摂取されるように、錠剤、ピル、糖衣錠、カプセル剤、液剤、ゲル、シロップ、スラリー、懸濁液などの医薬組成物に製剤することができる。
【0125】
経口用医薬製剤は、活性化合物と固体賦形剤を混合し、所望により得られた混合物を摩砕し、顆粒混合物を処理し、所望により適切な助剤を加えた後、錠剤または糖衣錠コアを得ることができる。好適な賦形剤は、糖質またはタンパク質増量剤、例えばラクトース、ショ糖、マンニトールまたはソルビトールを含む糖;トウモロコシ、コムギ、コメ、ジャガイモまたは他の植物由来のデンプン;メチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロースまたはカルボキシメチルセルロースナトリウムのようなセルロース類;アラビアゴムおよびトラガカントを含むゴム;およびゼラチンおよびコラーゲンのようなタンパク質である。所望により、架橋ポリビニルピロリドン、寒天、アルギン酸またはその塩、例えばアルギン酸ナトリウムのような崩壊剤または可溶化剤を加えてもよい。
【0126】
糖衣錠コアは、アラビアゴム、タルク、ポリビニルピロリドン、カーボポールゲル、ポリエチレングリコールおよび/または二酸化チタン、ラッカー液および適切な有機溶媒または溶媒混合物を含んでいてもよい濃縮糖溶液のような好適なコーティングと共に使用され得る。製品の同定または活性化合物の量、すなわち用量を特徴付けるため、着色剤または顔料を錠剤または糖衣錠コーティングに加えてもよい。
【0127】
経口的に使用可能な医薬製剤は、ゼラチン製の押し込み式カプセル剤、ならびにゼラチン製の軟密封カプセル剤とグリセロールまたはソルビトールのようなコーティングを含む。押し込み式カプセル剤は有効成分と増量剤または結合剤、例えばラクトースまたはデンプン;滑沢剤、例えばタルクまたはステアリン酸マグネシウム;および所望により安定化剤を含み得る。軟カプセル剤において、活性化合物は、安定化剤の存在下または非存在下、脂肪油、液体または液体ポリエチレングリコールのような好適な液体中に溶解または懸濁することができる。
【0128】
非経腸投与に好適な医薬製剤は、水溶液、好ましくは生理的に適合性のバッファー、例えばHanks液、Ringer液または緩衝化生理食塩水中に製剤することができる。水性注射懸濁液は、カルボキシメチルセルロースナトリウム、ソルビトールまたはデキストランのような懸濁液の粘度を上昇させる物質を含み得る。さらに、適切な油性注射懸濁液として活性化合物の懸濁液を製造することができる。好適な親油性溶媒またはビヒクルは、脂肪油、例えばゴマ油;または合成脂肪酸エステル、例えばオレイン酸エチルまたはトリグリセリド、またはリポソームを含む。非脂質ポリカチオンアミノポリマーを送達に使用することができる。所望により懸濁液は好適な安定化剤または化合物の溶解度を向上させて高濃度溶液とすることができる薬剤を含んでいてもよい。
【0129】
局所または経鼻投与のために、浸透する特定の障壁に適切な浸透剤を製剤に用いる。かかる浸透剤は当該技術分野において一般に知られている。
【0130】
本発明の医薬組成物は、当該技術分野において既知の方法で、例えば常套の混合、溶解、造粒、糖衣、摩砕、乳化、カプセル充填、封入または凍結乾燥プロセスによって製造することができる。
【0131】
該医薬組成物は、塩として提供されてもよく、塩は多様な酸、例えば塩酸、硫酸、酢酸、乳酸、酒石酸、リンゴ酸、コハク酸などと形成することができる。塩は対応する遊離塩基形態よりも水または他のプロトン性溶媒に溶解しやすい傾向がある。多くの場合、好ましい製剤は、次の何れかまたは全て:1〜50mMヒスチジン、0.1〜2%ショ糖および2〜7%マンニトール、pH範囲4.5〜5.5を含み得る、使用の前にバッファーと組み合わせる凍結乾燥粉末であり得る。
【0132】
医薬組成物を製造した後、これを適切な容器に入れて適用される状態の処置のためにラベルを付すことができる。かかるラベルは、投与量、頻度および方法を含む。
【0133】
本発明の使用に好適な医薬組成物は、意図した目的を達成するために有効な量で有効成分を含む組成物を含む。有効量の決定は、十分に当業者の能力の範囲内である。
【0134】
何れかの化合物について、治療上有効量は、まず例えば新生物細胞の細胞培養アッセイ、または動物モデル、通常マウス、ウサギ、イヌまたはブタにおいて見積もることができる。動物モデルを用いて適切な濃度範囲と投与経路を決定することもできる。次にかかる情報を用いて、ヒトに有用な用量および投与経路を決定することができる。
【0135】
治療上有効量は症状または状態を緩解させる有効成分の量を意味する。例えば集団の50%に治療上有効な用量(ED50)と集団の50%に致死の用量(LD50)を決定するための、細胞培養または実験動物における標準的な薬学的手順により、治療効果および毒性を決定することができる。治療効果と毒性の間の用量比は治療指数であり、LD50/ED50比として表現することができる。大きな治療指標を呈する医薬組成物が好ましい。細胞培養アッセイおよび動物試験から得たデータを、ヒトに使用する投与量の製剤に使用する。かかる組成物に含まれる投与量は、好ましくは毒性がほとんどまたは全くないED50を含む循環濃度の範囲にある。投与量は使用する投与形態、患者の感受性および投与経路に依存して、この範囲内で変化し得る。
【0136】
正確な投与量は実施者によって、処置を必要とする対象に関連する要因から決定される。十分なレベルの活性部分が得られるように、または所望の効果が持続するように投与量と投与が調節される。考慮され得る要因は、疾患状態の重症度、対象の一般的健康、年齢、体重および対象の性別、食事、投与の時間および頻度、薬剤の組合せ、応答感受性および治療に対する耐容性/応答を含む。長期作用型医薬組成物は、3〜4日毎、1週間に1回または2週間に1回、半減期および特定の製剤のクリアランス速度に依存して投与され得る。
【0137】
通常の投与量は0.1〜100,000mg、全用量約1gまでで、投与経路に依存して変化し得る。特定の用量および送達方法の指標は、文献から得られ、当該技術分野の実施者に一般に利用可能である。当業者は、タンパク質またはその阻害剤とは異なるヌクレオチドのための製剤を使用する。同様に、ポリヌクレオチドまたはポリペプチドの送達は特定の細胞、状態、位置などに特異的である。タンパク質の経口投与に適した医薬製剤は、例えば米国特許第5,008,114号; 第5,505,962号; 第5,641,515号; 第5,681,811号; 第5,700,486号; 第5,766,633号; 第5,792,451号; 第5,853,748号; 第5,972,387号; 第5,976,569号および第6,051,561号に記載されている。
【0138】
抗体
本発明のさらなる局面は、ミトコンドリア機能異常に関連した状態を処置し、予防しまたは寛解させる方法であって、それを必要とする対象に、有効量の表Iに記載のタンパク質から選択されるタンパク質および/またはその変異体のモジュレーターを投与することを含む方法に関する。1つの局面において、モジュレーターは該タンパク質に対する1種以上の抗体、その変異体またはフラグメント(ここで、該抗体またはそのフラグメントは当該対象の該タンパク質または変異体の生物学的活性を阻害し得る)を含んでいてよい。
【0139】
ポリクローナルおよびモノクローナル抗体製造のための標準的な技術を用いて、抗体を製造するための免疫源として表Iのタンパク質を使用することができる。全長ポリペプチドまたはタンパク質を使用するか、あるいは本発明は免疫源として使用するための抗原性ペプチドフラグメントを提供する。表Iのタンパク質の抗原性ペプチドまたはエピトープは、表Iの何れかのタンパク質のアミノ酸配列の少なくとも8(好ましくは10、15、20または30)アミノ酸残基を含み、該ペプチドに対する抗体が該タンパク質と特異的な免疫複合体を形成するようなタンパク質のエピトープを含む。
【0140】
抗原性ペプチドに含まれる好ましいエピトープは、タンパク質の表面に位置する領域、例えば親水性領域である。疎水性プロットまたは同様の解析を用いて、親水性領域を同定することができる。
【0141】
1個以上の別個に発現された遺伝子エピトープを特異的に認識することができる抗体を製造する方法が本明細書に記載されている。かかる抗体はポリクローナル抗体、モノクローナル抗体(mAb)、ヒト化もしくはキメラ抗体、一本鎖抗体、Fabフラグメント、F(ab’)フラグメント、Fab発現ライブラリーによって製造されるフラグメント、抗イディオタイプ(抗Id)抗体および上記何れかのエピトープ結合フラグメントを含むが、これらに限定されない。かかる抗体は、例えば生物学的サンプル中の標的タンパク質の検出において、あるいは該タンパク質の生物学的活性の阻害方法として使用され得る。したがって、かかる抗体は疾患処置方法の一部として有用であってよく、そして/または例えば表Iに記載のポリペプチドの異常なレベルまたはこれらのポリペプチドの異常な形態の存在について患者を試験することができる診断技術の一部として使用され得る。
【0142】
表Iに記載のポリペプチドまたはその変異体に対する抗体を製造するために、これらのポリペプチドまたはその一部を注射して多様な宿主動物を免疫化することができる。かかる宿主動物は、例えばウサギ、マウス、ヤギ、ニワトリおよびラットなどを含むが、これらに限定されない。宿主種に依存して、免疫学的応答を上昇させるため、多様なアジュバント、例えばフロイント(完全または不完全);ミネラルゲル、例えば水酸化アルミニウム;界面活性剤、例えばリゾレシチン、プルロニックポリオール、ポリアニオン、ペプチド、油性エマルジョン、キーホールリンペットヘモシアニンおよびジニトロフェノール;および潜在的に有用なヒトアジュバント、例えばカルメット・ゲラン桿菌(BCG)およびコリネバクテリウム・パルバムを用いることができるが、これらに限定されない。
【0143】
本明細書において使用するとき、抗体なる用語は免疫グロブリン分子および免疫グロブリン分子の免疫学的に活性な部分、すなわち抗原と特異的に結合する抗原結合部位を含む分子およびそのフラグメントを意味する。抗体は常套の技術を用いて断片化されていてよく、全抗体について本明細書に記載のものと同じ方法でフラグメントを有用性についてスクリーニングすることができる。免疫グロブリン分子の免疫学的に活性な部分の例は、抗体をペプシンのような酵素で処理して製造することができるF(ab)およびF(ab’)フラグメントを含む。本発明はポリクローナル抗体およびモノクローナル抗体を提供する。
【0144】
ポリクローナル抗体は標的遺伝子産物のような抗原またはその抗原性機能性誘導体で免疫化した動物の血清由来の抗体分子の異種集団である。ポリクローナル抗体のために、上記のようなアジュバントを補った表Iに記載のポリペプチドまたはその一部で、上記のような宿主動物を免疫化してもよい。
【0145】
特定の抗原に対する抗体の均一な群であるモノクローナル抗体は、培養連続細胞系による抗体分子の製造のための何れかの技術によって得られる。これは、ハイブリドーマ技術[Kohler and Milstein, Nature, Vol. 256, No. 5517, 495-497 (1975) および米国特許第4,376,110号参照]; ヒトB−細胞ハイブリドーマ技術[Kosbor et al., Immunol Today, Vol. 4, 72 (1983) および Cole et al., Proc Natl Acad Sci U S A, Vol. 80, 2026-2030 (1983)参照]; およびEBV−ハイブリドーマ技術を含むが、これらに限定されない。Cole et al., Monoclonal Antibodies And Cancer Therapy, Alan R. Liss, Inc., 77-969 (1985)参照。かかる抗体はIgG、IgM、IgE、IgA、IgDおよびその何れかのサブクラスを含む免疫グロブリン群の何れかであり得る。本発明のmAbを製造するハイブリドーマをインビトロまたはインビボで培養してもよい。本発明において、インビボで高力価のmAbを製造することが好ましい。
【0146】
ポリクローナル抗体は、上記のとおり、免疫源として本発明のポリペプチドで好適な対照を免疫化して製造することができる。免疫化対象の抗体力価は、不動化ポリペプチドを用いた酵素結合免疫吸着アッセイ(ELISA)のような標準的な技術によって、時間とともにモニターされ得る。所望により、抗体分子を哺乳類(例えば血液)から単離し、さらにタンパク質Aクロマトグラフィーのような周知の技術によって精製して、IgGフラクションを得ることができる。免疫後適切な時間で、例えば特定の抗体力価が最も高いとき、対象から抗体産生細胞を得て、ハイブリドーマ技術(元はKohler and Milstein (1975) Nature 256:495 497に記載)、ヒトB細胞ハイブリドーマ技術(Kozbor et al. (1983) Immunol. Today 4:72)、EBVハイブリドーマ技術(Cole et al. (1985), Monoclonal Antibodies and CancerTherapy, Alan R. Liss, Inc., pp. 77 96)またはトリオーマ技術を用いてモノクローナル抗体を製造することができる。ハイブリドーマを製造する技術は、周知である(例えば、一般にCurrent Protocols in Immunology (1994) Coligan et al. (eds.) John Wiley & Sons, Inc., New York, NY参照)。本発明のハイブリドーマ細胞産生モノクローナル抗体は、目的のポリペプチドと結合する抗体について、例えば標準的なELISAアッセイを用いて、ハイブリドーマ培養物の上清をスクリーニングして検出される。
【0147】
モノクローナル抗体分泌ハイブリドーマの製造に代えて、組換えコンビナトリアル免疫グロブリンライブラリー(例えば抗体ファージディスプレイライブラリー)を目的のポリペプチドでスクリーニングして、本発明のポリペプチドに対するモノクローナル抗体を同定し、単離することができる。ファージディスプレイライブラリーを製造し、スクリーニングするためのキットは商業的に入手可能である(例えば、Pharmacia Recombinant Phage Antibody System, Catalog No. 27 9400 01; およびStratagene SurfZAP(商標)Phage Display Kit, Catalog No. 240612)。さらに、抗体ディスプレイライブラリーの製造およびスクリーニングに使用に特に適した方法および薬剤の例は、例えば米国特許第5,223,409号; PCT公開公報第WO 92/18619号; PCT公開公報第WO 91/17271号; PCT 公開公報第WO 92/20791号; PCT 公開公報第WO 92/15679号号; PCT公開公報第WO 93/01288号; PCT公開公報第WO 92/01047号; PCT公開公報第WO 92/09690号; PCT公開公報第WO 90/02809号; Fuchs et al. (1991) Bio/Technology 9:1370 1372; Hay et al. (1992) Hum. Antibod. Hybridomas 3:81 85; Huse et al. (1989) Science 246:1275 1281; Griffiths et al. (1993) EMBO J. 12:725 734に記載されている。
【0148】
さらに、キメラおよびヒト化モノクローナル抗体のような、標準的な組換えDNA技術を用いて製造することのできる、ヒトおよび非ヒト部分の両方を含む組換え抗体も本発明の範囲に含まれる。キメラ抗体は、異なる部分が別の動物種由来である分子、例えばマウスmAbに由来する可変領域とヒト免疫グロブリン定常領域を有するものである(例えば、Cabilly et al., 米国特許第4,816,567号; およびBoss et al., 米国特許第4,816397号参照、それらを全体において出典明示により本明細書の一部とする)。ヒト化抗体は、非ヒト種由来の1個以上の相補性決定領域(CDR)と、ヒト免疫グロブリン分子由来のフレームワーク領域を有する非ヒト種由来の抗体分子である(例えば、Queen, 米国特許第5,585,089号参照、その全体について出典明示により本明細書の一部とする)。かかるキメラおよびヒト化モノクローナル抗体は、当該技術分野において既知の組換えDNA技術によって、例えばPCT公開公報第WO 87/02671号; 欧州特許出願184,187; 欧州特許出願171,496; 欧州特許出願173,494; PCT公開公報第WO 86/01533号; 米国特許第4,816,567号; 欧州特許出願125,023; Better et al. (1988) Science 240:1041 1043; Liu et al. (1987) Proc. Natl. Acad. Sci. USA 84:3439 3443; Liu et al. (1987) J. Immunol. 139:3521 3526; Sun et al. (1987) Proc. Natl. Acad. Sci. USA 84:214 218; Nishimura et al. (1987) Canc. Res. 47:999 1005; Wood et al. (1985) Nature 314:446 449; および Shaw et al. (1988) J. Natl. Cancer Inst. 80:1553 1559); Morrison (1985) Science 229:1202 1207; Oi et al. (1986) Bio/Techniques 4:214; 米国特許5,225,539; Jones et al. (1986) Nature 321:552 525; Verhoeyan et al. (1988) Science 239:1534; およびBeidler et al. (1988) J. Immunol. 141:4053 4060に記載の方法を用いて製造することができる。
【0149】
ヒト患者の治療処置のためには、完全ヒト抗体が特に望ましい。内因性免疫グロブリン重鎖と軽鎖遺伝子を発現することができないが、ヒト重鎖と軽鎖遺伝子を発現することができるトランスジェニックマウスを用いて、かかる抗体を製造することができる。トランスジェニックマウスは、選択した抗原、例えば本発明のポリペプチドの全体または一部を用いて、通常の方法で免疫化される。常套のハイブリドーマ技術を用いて、該抗原に対するモノクローナル抗体を得てもよい。トランスジェニックマウスが有するヒト免疫グロブリン導入遺伝子はB細胞分化中に再編成され、続いてクラススイッチと体細胞変異が生じる。したがって、かかる技術を用いて、治療上有用なIgG、IgAおよびIgE抗体を製造することができる。ヒト抗体を製造するための技術についての概略は、Lonberg and Huszar (1995, Int. Rev. Immunol. 13:65-93)を参照されたい。ヒト抗体およびヒトモノクローナル抗体を製造するための技術の詳細な説明およびかかる抗体を製造するためのプロトコルについては、例えば、米国特許5,625,126; 米国特許5,633,425; 米国特許5,569,825; 米国特許5,661,016; および米国特許5,545,806を参照されたい。さらに、 Abgenix, Inc. (Freemont, CA)のような企業と契約して、上記と同様の技術を用いて選択した抗原に対するヒト抗体を得ることができる。
【0150】
選択したエピトープを認識する完全ヒト抗体は、「誘導選択法(guided selection)」と称される技術を用いて製造することができる。このアプローチにおいて、選択された非ヒトモノクローナル抗体、例えばマウス抗体を用いて、同じエピトープを認識する完全ヒト抗体の選択を誘導する(Jespers et al. (1994) Bio/technology 12:899 903)。
【0151】
本発明のポリペプチドに対する抗体(例えばモノクローナル抗体)を用いて、親和性クロマトグラフィーまたは免疫沈降のような標準的な技術によってポリペプチドを単離することができる。さらに、ポリペプチドの存在量および発現パターンを評価するために、かかる抗体を用いてタンパク質を検出することができる(例えば細胞溶解物または細胞上清中)。抗体を診断的に使用して、臨床的試験手段の一部として、例えば所定の処置レジメンの効果を測定するために組織中のタンパク質レベルをモニターすることができる。抗体と検出可能な物質を結合させて、検出を容易にすることもできる。検出可能な物質の例は、多様な酵素、補欠分子族、蛍光物質、発光物質、生物発光物質および放射性物質を含む。好適な酵素の例は、ホースラディッシュペルオキシダーゼ、アルカリホスファターゼ、ベータガラクトシダーゼまたはアセチルコリンステラーゼを含み;好適な補欠分子族複合体の例は、ストレプトアビジン/ビオチン、およびアビジン/ビオチンを含み;好適な蛍光物質の例は、ウンベリフェロン、フルオレセイン、フルオレセインイソチオシアネート、ローダミン、ジクロロトリアジニルアミンフルオレセイン、塩化ダンシルまたはフィコエリスリンを含み;発光物質の例は、ルミノールを含み;生物発光物質の例は、ルシフェラーゼ、ルシフェリンおよびエクオリンを含み、好適な放射活性物質の例は125I、131I、35SまたはHを含む。
【0152】
あるいは、一本鎖抗体を製造するための技術[米国特許第4,946,778号; Bird、Science, Vol. 242, 423-426 (1988); Huston et al., Proc Natl Acad Sci U S A, Vol. 85, No. 16, 5879-5883 (1988); およびWard et al., Nature, Vol. 334, 544-546 (1989)]を採用して、異なった形で発現される遺伝子、一本鎖抗体を製造することができる。一本鎖抗体は、Fv領域の重鎖と軽鎖フラグメントをアミノ酸架橋によって結合して、一本鎖ポリペプチドを得ることによって形成される。
【0153】
特定のエピトープを認識する抗体フラグメントは、既知の技術によって製造してもよい。例えば、かかるフラグメントは抗体分子をペプシンで消化して製造することができるF(ab’)フラグメント、およびF(ab’)フラグメントのジスルフィド結合を還元して製造することができるFabフラグメントを含むが、これに限定されない。あるいは、Fab発現ライブラリーを構成して、所望の特異性を有するモノクローナルFabフラグメントを迅速かつ容易に同定することができる [Huse et al., Science, Vol. 246, No. 4935, 1275-1281 (1989)参照]。
【0154】
本明細書において理解されるとおり、本発明の抗体は好ましくは、生物学的サンプル中の表Iに記載のタンパク質またはその抗原性変異体レベルを検出する診断キットにおいて、またミトコンドリア機能異常に関連した状態を有する対象が表Iから選択されるタンパク質のモジュレーターによる処置の好適な候補であり得るかを診断する方法において、使用され得る。好ましくは、該検出工程は、適切な組織細胞、例えば生物学的サンプルと、表Iに記載のポリペプチドまたはそのフラグメントもしくは変異体と特異的に結合する抗体とを接触させて、適切な組織、細胞またはサンプル中の該抗体とポリペプチドとの特異的結合を検出することを含み、ここで、ポリペプチドとの特異的結合の検出が表Iに記載のポリペプチドまたはそのフラグメントの存在の指標である。
【0155】
検出が容易であるため、特に好ましいものは多様な変形(その全てが本発明に含まれることを意図する)が存在するサンドイッチアッセイである。例えば、典型的なフォワードアッセイにおいて、未標識化抗体を固体基質に不動化し、試験するサンプルを結合分子と接触させる。抗体−抗原二成分複合体の形成に十分な時間のための適切なインキュベーション期間の後。この点で、検出可能なシグナルを誘導することができるレポーター分子で標識化された2次抗体を加え、抗体抗原標識化抗体の三元複合体の形成に十分な時間インキュベートする。未反応物質を洗い流し、シグナルの観察によって抗原の存在を測定するか、または既知量の抗原を含む対照サンプルとの比較によって定量してもよい。フォワードアッセイの変形は、サンプルと抗体を同時に結合抗体に加える同時アッセイか、または標識化抗体と試験サンプルを混合し、インキュベートして、未標識表面結合抗体に加える逆アッセイを含む。これらの技術は当業者に周知であり、軽微な変更の可能性が容易に理解される。本明細書において使用するとき、「サンドイッチアッセイ」は、two-site技術を基礎としたあらゆる変形を含む。本発明のイムノアッセイについての唯一の限定要素は、標識化抗体が表Iに記載のポリペプチド、またはそのフラグメントもしくは変異体に特異的な抗体であるということである。
【0156】
このタイプのアッセイにおいて最も一般的に使用されるレポーター分子は、酵素、フルオロフォア含有分子または放射性核種含有分子である。酵素イムノアッセイの場合、酵素は、通常グルタルアルデヒドまたは過ヨウ素酸塩によって2次抗体と結合する。しかし、容易に理解されるとおり、多様なライゲーション技術が存在し、これらは当業者に周知である。一般に使用される酵素は、ホースラディッシュペルオキシダーゼ、グルコースオキシダーゼ、β−ガラクトシダーゼおよびアルカリホスファターゼなどを含む。特定の酵素と共に使用する物質は、対応する酵素による加水分解によって検出可能な色の変化を生じる物質から一般に選択される。例えば、アルカリホスファターゼ複合体との使用にはp−ニトロフェニルホスフェートが好適であり:ペルオキシダーゼ複合体には1,2−フェニレンジアミンまたはトルイジンが一般に使用される。また、上記化学基質よりも蛍光物質が得られる蛍光発生基質を使用することもできる。3次複合体に適切な基質を含む溶液を加える。2次抗体と結合した酵素と該基質を反応させて、通常分光学的にさらに定量することができる定性的に視覚化されたシグナルを得て、血清サンプル中に存在する表Iのポリペプチドまたはその変異体の量を評価する。
【0157】
あるいは、フルオレセインおよびローダミンのような蛍光化合物を抗体と化学的に、それらの結合能を変化させることなく結合させることができる。特定の波長の光での照射によって活性化されるとき、該蛍光色素標識化抗体は光エネルギーを吸収して、分子を励起状態に誘導し、特徴的なより長い波長で光を放出する。放出は光学顕微鏡によって視覚的に検出可能な特徴的な色彩を呈する。免疫蛍光およびEIA技術はいずれも十分に当該技術分野において確立されており、本方法に特に好ましい。しかし、ラジオアイソトープ、化学発光または生物発光分子のような他のレポーター分子を使用してもよい。必要な用途に適合させるために該方法をどのように変更するかは、当業者に容易に理解される。
【0158】
融合タンパク質
本発明はキメラタンパク質または融合タンパク質を提供する。本明細書において使用するとき、「キメラタンパク質」または「融合タンパク質」は、異種ポリペプチド(すなわち、本発明のポリペプチドと同一ではないポリペプチド)と作動可能に結合した本発明のポリペプチドの全体または(好ましくは生物学的に活性な)一部を含む。融合タンパク質において、用語「作動可能に結合」は、本発明のポリペプチドと異種ポリペプチドが互いにフレーム内で融合していることを意味する。異種ポリペプチドは、本発明のポリペプチドのN末端またはC末端と融合することができる。
【0159】
有用な融合タンパク質の1つは、本発明のポリペプチドがGST配列のC末端と融合しているGST融合タンパク質である。かかる融合タンパク質は、本発明の組換えポリペプチドの精製に有用であり得る。
【0160】
他の態様において、融合タンパク質は、N末端で異種シグナル配列を含む。例えば、本発明のポリペプチドの天然シグナル配列を取り出し、他のタンパク質由来のシグナル配列で置換することができる。例えば、バキュロウイルスエンベロープタンパク質のgp67分泌配列は、異種シグナル配列として使用することができる(Current Protocols in Molecular Biology, Ausubel et al., eds., John Wiley & Sons, 1992)。真核生物異種シグナル配列の他の例は、メリチンおよびヒト胎盤アルカリホスファターゼの分泌配列を含む (Stratagene; La Jolla, California)。さらに別の例において、有用な原核性異種シグナル配列は、phoA分泌シグナル(Sambrook et al., supra)およびタンパク質A分泌シグナル(Pharmacia Biotech; Piscataway, New Jersey)を含む。
【0161】
さらに別の態様において、融合タンパク質は、本発明のポリペプチドの全体または一部が免疫グロブリンタンパク質ファミリーのメンバーに由来する配列と融合している免疫グロブリン融合タンパク質である。本発明の免疫グロブリン融合タンパク質は、医薬組成物に組み込んでもよく、対象に投与してリガンド(溶解性または膜結合)と細胞表面のタンパク質(レセプター)の相互作用を阻害して、インビボでシグナル伝達を抑制する。免疫グロブリン融合タンパク質を用いて、本発明のポリペプチドの同種リガンドの生物学的利用能に作用させることができる。リガンド/受容体相互作用の阻害は、増殖性および分化障害の処置と、細胞生存の調節(例えば促進または阻害)の両方に、治療上有用であり得る。さらに、本発明の免疫グロブリ融合タンパク質は、対象の本発明のポリペプチドに対する抗体を製造するための、リガンドを精製するための、そしてスクリーニングアッセイにおいてレセプターとリガンドの相互作用を阻害する分子を同定するための免疫源として使用することができる。
【0162】
本発明のキメラタンパク質および融合タンパク質は、標準的な組換えDNA技術によって製造することができる。他の態様において、融合遺伝子は自動DNA合成装置を含む常套の技術によって合成することができる。あるいは、キメラ遺伝子配列を製造するためにアニールおよび再増幅することができる2種間の連続的遺伝子フラグメント間の相補的オーバーハングを誘導するアンカープライマーを用いて、遺伝子フラグメントのPCR増幅を実施する(例えばAusubel et al., supra参照)。さらに、既に融合部分(例えばGSTポリペプチド)をコードした多くの発現ベクターが商業的に入手可能である。本発明のポリペプチドをコードする核酸は、かかる発現ベクターにクローン化して、フレーム中で融合部分を本発明のポリペプチドと結合することができる。
【0163】
RNAi
本発明は、低分子干渉リボ核酸配列(siRNA)、ならびに細胞または哺乳動物の表Iのタンパク質をコードする遺伝子または遺伝子群の発現をsiRNAによって阻害するための組成物および方法を提供する。本発明はまた、ミトコンドリア生合成を調節するタンパク質(例えば表Iのタンパク質)をコードする遺伝子または遺伝子群の異常な発現によって引き起こされるか、または該遺伝子群が不可欠なメンバーである経路の異常なシグナル伝達によって引き起こされる哺乳動物の病的状態および疾患を、siRNAによって処置するための組成物および方法を提供する。siRNAは、RNA干渉(RNAi)として知られたプロセスによるmRNAの配列特異的分解に関する。
【0164】
本発明のsiRNAは、30ヌクレオチド長未満、一般に19〜24ヌクレオチド長未満の領域を有するRNA鎖(アンチセンス鎖)を含み、表Iのタンパク質をコードする遺伝子または遺伝子群のmRNA転写産物の少なくとも一部と実質的に相補的である。これらのsiRNAの使用によって、例えばミトコンドリア生合成に関与する遺伝子群のmRNAの標的化分解が可能となる。
【0165】
本発明のsiRNA分子は、RNA干渉(「RNAi」)を仲介する。用語「RNAi」は当該技術分野において周知であり、標的遺伝子と相補的な領域を有するsiRNAによって細胞の1個以上の標的遺伝子を阻害することを意味すると、一般に理解される。RNAiを仲介する能力について、siRNAを試験するための多様なアッセイが当該技術分野において知られている(例えばElbashir et al., Methods 26 (2002), 199-213参照)。遺伝子発現に対する本発明のsiRNAの効果は、典型的に、本発明のRNA分子で処理しない細胞と比較して、少なくとも10%、33%、50%、90%、95%または99%標的遺伝子の発現を阻害する。
【0166】
本発明の「siRNA」または「低分子干渉リボ核酸」は当該技術分野において既知の意味を有し、下記局面を含む。siRNAは、生理的条件下で相補領域とハイブリダイズしている2本のリボヌクレオチド鎖から成る。該鎖は分離されるが、ある態様において分子リンカーによって結合し得る。個々のリボヌクレオチドは非修飾天然由来のリボヌクレオチド、非修飾天然由来のデオキシリボヌクレオチドであり得るが、本明細書に記載のとおりに化学的に修飾し、合成してもよい。
【0167】
本発明のsiRNA分子は、標的遺伝子のmRNA領域と実質的に同一である二本鎖領域を含む。標的遺伝子の対応する配列と100%同一の領域が好ましい。この状態を「完全相補的」と称する。しかし、標的とするmRNAの領域の長さに依存して標的遺伝子の対応領域と比較して、該領域は1、2または3個のミスマッチを有していてもよく、それ自体完全に相補的でなくともよい。ある態様において、本発明のRNA分子は1個の所定の遺伝子を特異的に標的とする。所望のmRNAのみを標的とするため、siRNA剤は標的mRNAと100%ホモロジーを有していてよく、該細胞または生物に存在するあらゆる他の遺伝子群とは少なくとも2個のミスマッチヌクレオチドを有し得る。特定の標的配列の発現を効果的に阻害するために十分な配列同一性を有するsiRNAを解析し、同定する方法は、当該技術分野において既知である。当該技術分野において既知の配列比較およびアラインメントアルゴリズムによって(Gribskov and Devereux, Sequence Analysis Primer, Stockton Press, 1991および当該文献に記載の文献参照)、例えばBESTFITソフトウェアプログラムに備えられたSmith-Watermanによって、既定パラメーター (例えばUniversity of Wisconsin Genetic Computing Group)を用いて、ヌクレオチド配列間の差異率を計算して、配列同一性を最適化することができる。
【0168】
RNAi剤の効果に影響する他の要因は、標的遺伝子の標的領域である。RNAi剤による阻害に効果的な標的遺伝子の領域は、実験によって決定することができる。好適なmRNA標的領域はコーディング領域である。5’−UTR、3’−UTRおよびスプライス部位のような非翻訳領域も好適である。例えば、Elbashir S.M. et al, 2001 EMBO J., 20, 6877-6888に記載のトランスフェクションアッセイをこの目的で実施することができる。多様な他の好適なアッセイおよび方法が当該技術分野において存在し、当業者に周知である。
【0169】
本発明の標的に相補的なsiRNAの領域の長さは、10〜100ヌクレオチド、12〜25ヌクレオチド、14〜22ヌクレオチド、または15、16、17もしくは18ヌクレオチドであってよい。対応する標的領域とのミスマッチが存在するとき、相補領域の長さは一般に、いくらか長い必要がある。
【0170】
siRNAは、オーバーハング末端(標的に相補的であり得るか、もしくは相補的ではない)、または標的遺伝子ではなく、それ自身に相補的なさらなるヌクレオチドを有し得るので、各々、別々のsiRNA鎖の全長は、10〜100ヌクレオチド、15〜49ヌクレオチド、17〜30ヌクレオチドまたは19〜25ヌクレオチドであり得る。
【0171】
“各鎖は、49ヌクレオチドまたはそれ未満である”なる句は、鎖の3’もしくは5’末端に付加され得るすべての修飾もしくは非修飾ヌクレオチドを含むが、すべての化学的部分を含まない、鎖中の連続したヌクレオチドの総数を意味する。鎖中に挿入された短い化学的部分は計算されず、2個の別々の鎖を結合するように設計された化学的リンカーは、連続したヌクレオチドを構成するとは考えられない。
【0172】
“5’末端または3’末端の少なくとも1つにおける、1〜6個のヌクレオチドオーバーハング”なる句は、生理学的な条件下で、2個の別々の鎖から形成される相補的なsiRNAの構造を意味する。末端ヌクレオチドがsiRNAの二本鎖領域の一部であるとき、siRNAは、平滑末端であると考えられる。1個またはそれ以上のヌクレオチドが末端で対をなさないとき、オーバーハングが形成される。オーバーハング長は、オーバーハングヌクレオチドの数により測定される。オーバーハングヌクレオチドは、いずれかの鎖の5’末端もしくは3’末端のいずれかに存在し得る。
【0173】
本発明によるsiRNAは、少なくとも一方の鎖中に少なくとも1個の修飾ヌクレオチドを含むことにより、経口送達のために適当なインビボでの高い安定性を提供する。したがって、本発明によるsiRNAは、少なくとも1個の修飾もしくは非天然リボヌクレオチドを含む。多くの既知の化学的修飾に関する長編記載は、国際公開されたPCT特許出願WO 200370918に開示されているので、本明細書では再び繰り返さない。経口送達のための適当な修飾は、より特に、実施例および本明細書に記載している。適当な修飾は、糖部分への修飾(すなわち、糖部分の2’位、例えば、2’-O-(2-メトキシエチル)もしくは2’-MOE)(Martin et al., Helv. Chim. Acta、1995、78、486-504)すなわち、アルコキシアルコキシ基)または塩基部分への修飾(すなわち、代わりのヌクレオチド鎖で他の特定の塩基と塩基対を形成する能力を維持する、非天然もしくは修飾塩基)を含むが、これらに限定されない。他の修飾は、ホスホエステル基を置換すること(隣接するリボヌクレオチドを、例えば、ホスホロチオエート、キラルホスホロチオエートまたはホスホロジチオエートと結合させること)を含む、いわゆる‘骨格’修飾を含むが、これらに限定されない。最後に、本明細書中でときどき3’キャップまたは5’キャップと呼ぶ末端修飾は、重要であり得る。キャップは、当業者に既知のより複雑な化学からなり得る。
【0174】
1つの態様では、本発明は、遺伝子もしくは表Iのタンパク質をコードする遺伝子の発現を阻害するための二本鎖リボ核酸(dsRNA)分子を提供する。dsRNAは、互いに相補的な少なくとも2つの配列を含む。dsRNAは、第1配列を含むセンス鎖および第2配列を含むアンチセンス鎖を含む。アンチセンス鎖は、遺伝子もしくは表Iのタンパク質をコードする遺伝子をコードするmRNAの少なくとも一部に実質的に相補的なヌクレオチド配列を含み、相補的な領域は、30ヌクレオチド長未満、一般には、19-24ヌクレオチド長である。dsRNAを、遺伝子もしくは表Iのタンパク質をコードする遺伝子を発現する細胞と接触させると、少なくとも40%まで該遺伝子の発現を阻害する。
【0175】
他の態様において、本発明は、本発明のdsRNAの一方を含む細胞を提供する。細胞は、一般に、ほ乳類細胞、例えば、ヒト細胞である。
【0176】
他の態様において、本発明は、生物、一般にはヒト対象内で、遺伝子もしくはミトコンドリア生合成に関与する遺伝子(例えば、表Iのタンパク質を発現する遺伝子)の発現を阻害するための医薬組成物を提供し、該医薬組成物は、1個またはそれ以上の本発明のdsRNAおよび薬学的に許容される担体または送達ビヒクルを含む。
【0177】
他の態様において、本発明は、細胞内において、遺伝子もしくはミトコンドリア生合成に関与する遺伝子(例えば、表Iのタンパク質を発現する遺伝子)の発現を阻害するための方法を提供し、該方法は、下記の工程を含む:
【0178】
(a) 細胞に二本鎖リボ核酸(dsRNA)を導入すること(ここで、該dsRNAは、互いに相補的な少なくとも2つの配列を含む)。dsRNAは、第1配列を含むセンス鎖および第2配列を含むアンチセンス鎖を含む。アンチセンス鎖は、遺伝子もしくはミトコンドリア生合成に関与する遺伝子(例えば、表Iのタンパク質を発現する遺伝子)をコードするmRNAの少なくとも一部に実質的に相補的な相補性領域を含み、ここで、相補的な領域は、30ヌクレオチド長未満、一般には、19-24ヌクレオチド長であり、dsRNAを、遺伝子もしくはミトコンドリア生合成に関与する遺伝子(例えば、表Iのタンパク質を発現する遺伝子)を発現する細胞と接触させると、少なくとも40%まで該遺伝子の発現を阻害し;そして、
【0179】
(b) 工程(a)で産生した細胞を、遺伝子もしくはミトコンドリア生合成に関与する遺伝子(例えば、表Iのタンパク質を発現する遺伝子)のmRNA転写産物の分解を得るのに十分な時間維持し、それにより、該遺伝子の細胞内での発現を阻害すること。
【0180】
他の態様において、本発明は、細胞内において、遺伝子もしくはミトコンドリア生合成に関与する遺伝子(例えば、表Iのタンパク質を発現する遺伝子)の発現を阻害するためのベクターを提供し、該ベクターは、本発明のsiRNAのうちの1つの少なくとも一方の鎖をコードするヌクレオチド配列に操作可能に結合した制御配列を含む。
【0181】
本発明の阻害性核酸化合物は、商業的に入手可能な自動化DNA合成機、例えば、Applied Biosystems (Foster City、CA)モデル380B、392もしくは394 DNA/RNA合成機、または同様の装置で、慣用的な手段により合成し得る。ホスホラミダイト化学を使用し得る。本発明の阻害性核酸化合物はまた、修飾されていてもよく、例えば、多くの参照に記載されたヌクレアーゼ耐性骨格、例えば、ホスホロチオエート、ホスホロジチオエート、ホスホロアミデートなどを使用し得る。阻害性核酸の長さは、生物学的活性が阻害されるのを保証するのに十分でなければならない。したがって、例えば、アンチセンスオリゴヌクレオチドの場合には、特定の結合が望む標的ポリヌクレオチドでのみ生じ、他の偶発的部位では生じないことを保証するのに十分な大きさでなければならない。長さの上限は、約30-40ヌクレオチド長以上のオリゴマーを合成し、精製する不便さおよび費用、短いオリゴヌクレオチドよりも長いヌクレオチドのミスマッチに関するより大きな耐性などを含むいくつかの因子により決定される。好ましくは、本発明のアンチセンスオリゴヌクレオチドは、約15〜40ヌクレオチドの範囲の長さを有する。より好ましくは、オリゴヌクレオチド部分は、約18〜25ヌクレオチドの範囲の長さを有する。
【0182】
二本鎖RNA、すなわち、センス-アンチセンスRNA(また、低分子干渉RNA(siRNA)を呼ばれる)は、また、遺伝子に関する核酸もしくはミトコンドリア生合成に関与する遺伝子(例えば、表Iのタンパク質を発現する遺伝子)の発現を阻害するために使用し得る。RNA干渉は、外因性、低分子二本鎖RNAを投与する方法であり、そこでは、一方の鎖が標的mRNAのコード領域に相当する(Elbashir et al.(2001) Nature 411: 494)。細胞への導入時に、siRNA分子は、外因性二本鎖RNAの分解および外因性メッセンジャーRNAを含む、同一の配列を有する一本鎖RNAの分解を生じる。したがって、siRNAは、該技術が触媒機構を介して作用すると考えられているので、伝統的なアンチセンスRNA方法論よりも有効かつ効果的であり得る。好ましいsiRNA分子は、典型的には、19〜25ヌクレオチド長、好ましくは、約21ヌクレオチド長である。siRNAをT細胞に標的化するための有効な戦略は、例えば、物理的もしくは化学的トランスフェクションを用いた形質導入を含む。
【0183】
あるいは、siRNAは、例えば、機能的siRNAまたはその前駆体の転写を可能にするさまざまなPolIIIプロモーター発現カセットを用いて、細胞内で発現させ得る。例えば、Scherr et al. (2003) Curr. Med. Chem. 10(3):245; Turki et al. (2002) Hum. Gene Ther. 13(18):2197; Cornell et al. (2003) Nat. Struct. Biol. 10(2):91を参照のこと。本発明はまた、RNA干渉(RNAi)を仲介することができる他の低分子RNA、例えば、マイクロRNA(miRNA)および低分子ヘアピン型RNA(shRNA)を含む。
【実施例】
【0184】
実施例
実施例1: 全ゲノムRNAiスクリーニング
細胞に基づくアッセイを、ミトコンドリアクエン酸合成酵素(CS)活性を読み出しとして用いたRNAiスクリーニングのために開発した。CSは、クレブス回路(TCA回路)での第1反応を触媒し、アセチル-CoAおよびオキサロ酢酸をクエン酸に変換する。CS活性は、ミトコンドリア酸化活性のための一般的なマーカーである。CS活性とミトコンドリアDNA (mtDNA)量は、筋肉において正の相関関係を有することが示されている(Wang、H., et al. (1999) European Journal of Applied Physiology & Occupational Physiology 80: 22) (Moyes、C. D., et al. (1997) American Journal of Physiology 272:C1345)。ミトコンドリア機能マーカーとして、CS活性は、ミトコンドリア機能と生理学的に関連した読み出しである。CS活性の測定は、動力学的に、エンドポイント読み出しよりもより高度な正確性を保証する。
【0185】
CS活性がハイスループットRNAiスクリーニングのために適用可能か否かを決定するために、最初、S2細胞で、CSがRNAiにより調節され得るか否かを調べた。CS活性は、用量依存的な方法で、CS遺伝子に対するdsRNAにより高度に減少した(図1a)。CSアッセイの安定性および直線性を試験した。CS酵素活性は、アッセイ条件下で、少なくとも644秒間安定であった(図1b)。この時間ウィンドウは、384サンプル中の15読み出しのために(1μ ウェルプレート)、およびVmaxを計算するために十分であった。また、ライセートの全タンパク質量0.16μg〜20μgを用いると、CS活性の十分な直線範囲が存在した。CSアッセイのダイナミックレンジは、ハイスループットスクリーニングのために十分である(図1c)。最後に、スクリーニングのためのポジティブコントロールを発見し、アッセイウィンドウを予測するために、以前報告されたミトコンドリア制御因子を評価した。CSは、ミトコンドリア機能のための一般的なマーカーとして広く使用されているが、その制御に関してはほとんど知られていない(Kraft 2006)。HDAC1(Rpd3)のコファクターであるSin3Aは、ショウジョウバエ細胞において、ミトコンドリア重量を負に制御することが報告された(Pile、L. A., et al. (2003) JBC 278: 37840)。次いで、Rpd3およびSin3Aを、CS活性におけるそれらの効果に関して試験した。Rpd3 RNAiによるCS活性の12%の増加、およびSin3A RNAiによる6%の増加が検出された(図1d)。同時に、CS活性を試験し、ハイスループットスクリーニングに適用した。
【0186】
これらの研究のために使用したdsRNAコレクションは、Ambion、Incから入手した。このコレクションは、各ウェル中でdsRNA濃度を標準化し、ヒトホモログを有するすべてのハエ遺伝子を含む、ショウジョウバエゲノムからの13,071個の注釈付き遺伝子を示す。それを、もとの96ウェルプレートから384プレートまで再編成した。全体のコレクションは、36個の384ウェルプレートからなる。RNAiは、72個のプレートで行った(36個のプレートをデュプリケートで)。各ウェルは、50ng/μlの濃度で、5μlのdsRNAを有する。スクリーニング前に、5μlのdsRNAを、50ng/μlで、各々の空のウェルに入れた(各プレート4回の複製で)。対照CS dsRNAは、Megascript RNAiキット(Ambion、cat#1626)を用いて、Heidelberg Fly Array (Hild、M., et al. (2003) Genome Biology 5: R3)により収集したcDNA (HFA18328)から合成した。細胞増殖および生存におけるRNAi仲介遺伝子ノックダウン効果を標準化するために、ウミシイタケルシフェラーゼレポーター構築体を有する安定な細胞株を実験で使用し、ウミシイタケルシフェラーゼ活性を、クエン酸合成酵素活性を標準化するために使用した。ウミシイタケルシフェラーゼレポーター遺伝子は、phRL-CMVプラスミド中のCMVプロモーターの除去後のhsp70遺伝子に由来する基本的プロモーターにより発現させる。
【0187】
RNAi実験のために、S2細胞を集め、1×PBSで1回洗浄し、無血清培地に再懸濁した。10μlの無血清培地中の10,000細胞を、dsRNAを含む各ウェルに入れた。1時間のインキュベーション後、30μlの完全培地を各ウェルに加え、次いで、プレートを、ガス透過性シート(ABgene、#AB-0718)で密閉し、25℃でインキュベートした。RNAi処理の5日後、細胞を、2000rpmで2分間の回転により沈殿させ、培地を、Biomek FXを用いて除去し、プレートを密閉し、細胞を、使用まで-80℃で凍結した。各ウェルで、細胞ペレットを、60μlのウミシイタケ溶解バッファーで30分間、溶解した。20μlの細胞ライセートのアリコートを、CS活性アッセイのために使用し、20μlを、ルシフェラーゼアッセイのために使用した。
【0188】
全ゲノムスクリーニングおよび確認スクリーニングに関するCS活性を測定するために、細胞をウミシイタケ溶解バッファー(Promega E2820)で溶解し、アッセイを384ウェルプレート(Falcon、CAT#353962)で行った。吸光度を、プレートリーダー(PerkinElmer、Envision 2100)により、46秒ごとに15個の時間点で測定した。CS活性を、ウミシイタケルシフェラーゼ活性により標準化した。Vmax(SLOPE)およびR(RSQ)を、Excelで計算した。Vmax(分あたりミリOD)は、Rが0.97以上のときのみ許容された。あるいは、直線範囲におけるデータ点は、手動で再選択し、それが0.97以上になるまで、Rを再計算した。
【0189】
ウミシイタケルシフェラーゼ活性を測定するために、ウミシイタケルシフェラーゼ系(Promega E2820)を、第1スクリーニングのための最初の24プレートで使用した。Dual-Gloルシフェラーゼアッセイ系(Promega E2980)を、第1スクリーニングおよび確認スクリーニングのためにプレートの残りで使用した。実験は、製造者の指示にしたがって行った。ルシフェラーゼ活性は、プレートリーダー(PerkinElmer、Envision 2100)により測定した。
【0190】
各ウェルに関して第1スクリーニングデータを解析するために、CS活性のVmaxおよび相対発行量(RLU)として示したウミシイタケルシフェラーゼ活性の2つのデータ値が存在した。Vmax/RLU比は、各ウェルで計算した。Vmax/RLU値は、生データのlog変換後、二次元標準化スキームにより標準化した。第1次元標準化(first dimension normalization)(1D)は、スクリーニングした384ウェルプレートのプレート平均に基づいて為された。したがって、1D標準化値(x1Dとして示す)を計算するための式は、x1D=log(Vmax/RLU)/平均(log(Vmax/RLU))である。1D標準化後、第2次元標準化(second dimension normalization)(2D)を、異なるプレートからの各々のウェルのセットの平均に基づいて実施したが、プレート上の同じ相対的な位置、例えば、すべてのスクリーニングしたプレートのA1ウェルを共有した。2D標準化値(x2Dとして示す)を計算するための式は、x2D=x1D/平均(x1D)である。比較可能な異なるプレートおよびウェルのx2Dに関して、標準化したZスコア(NZ)を、x2Dごとに計算した。NZ2Dを計算するために使用する式は、NZ2D(x2D-平均(x2D))/MAD(x2D)である。MAD(x2D)は、xの中央絶対偏差値であり、1.4826×平均(|x2D-平均(x2D)|)に等しい。
【0191】
一次ヒットは、両リプリケートのNZスコアが2より大きいか、または-2よりも小さいときに選択した。1つのレプリカのみが3より大きいか、または-3よりも小さいNZを有するさらなるヒットをまた、再試験のために選択した。コレクションのおよそ6%である全部で821の一次ヒットを、第1スクリーニングから選択した(図2a)。それらの中から、ヒトホモログを有する821個の遺伝子のうち573個を、確認のために選択した。
【0192】
ヒットを検証するために、573のヒットのdsRNAを、最初に、384ウェルプレートにチェリーピッキングし、次いで、各ウェルに、50ng/μlのdsRNAを5μl用いて、6つのリプリケートプレートに、aliquot。検証スクリーニングは、細胞をRNAiの6日後に集めることを除いては同様に、全ゲノムスクリーニングとして行った。
【0193】
確認スクリーニングデータを解析するために、p値(t検定)を、LacZ RNAi対照との比較で計算した。CSアッセイの平均変動係数(CV)は、約3.5%であり、平均して、6つのリプリケートでの我々の確認アッセイは、p<0.05(t検定)を用いて、5%もしくはそれ以上の変化を検出できた。我々の確認アッセイの検出力は、平均CS活性の変化が7%より大きいとき、0.8よりも大きかった(t検定)。
【0194】
全153のヒットを、確認工程後に検証した。それらの中で、dsRNAがCS活性のアップレギュレーションを生じた76のヒットを、それらのp値が0.05未満であったので、選択した。LacZ対照を超えたそれらのCS活性の倍率変化は、1.15から2倍の範囲であった(図2b)。一方で、dsRNAがCS活性のダウンレギュレーションを生じたそれらのヒットに関して、77のヒットが0.01未満のそれらのp値を有し、対照を超えたそれらのCS活性の倍率変化は、0.13から0.8倍の範囲であった(図2b)。偽陽性を避けるために、0.05から0.01間のp値を有する3つのLacZ RNAi対照が存在したので、0.01のp値をカットオフとして選択した(図2c)。我々の実験条件下では、CS活性の変化は、15-20%ほど低く観察され、それは、CS活性の観察可能な変化についての以前の報告と一致している(Stump、C. S., et al. (2003) PNAS 100:7996)。
【0195】
実施例2: ヒットの解析および分類
全部で153のヒットが、全ゲノムRNAiスクリーニングから同定された(表I)。これらの遺伝子を、それらの関連するGene OntologyアノテーションまたはInterProタンパク質ドメインにより分類した(図2d)。ヒットは、ミトコンドリア関連機能、キナーゼおよびホスファターゼ、レセプターおよびシグナル伝達、プロテアソーム構成要素およびタンパク質分解、酵素、RNAプロセッシング、転写および翻訳制御因子を含む、広範な分子機能を包含していた。さらに、ミトコンドリア機能を制御する潜在的な経路を同定するために、これらのヒットを、それらの関連する生物学的プロセスおよび経路により分類した(図2e)。上位3つは、ミトコンドリア関連機能(17遺伝子)(表I)、転写制御(22遺伝子)(表I)、およびシグナル伝達経路(17遺伝子)(表I)に関連するヒットに分類される。さらに、いくつかのタンパク質複合体に関しては、複数のサブユニットが同定され、これは、スクリーニングの妥当性を示す。これらは、ピルビン酸デヒドロゲナーゼの2つのサブユニット、α-ケトグルタラートデヒドロゲナーゼの2つのサブユニット、ATPシンターゼの2つのサブユニット、NELF(負の伸長因子)複合体の3つのサブユニットおよびTFIIDの2つのサブユニット(表I)を含む。
【0196】
ミトコンドリア機能を有するヒット
RNAiスクリーニングにより同定したヒットの11%(17/153)は、ミトコンドリア機能を有するタンパク質をコードする(表I)。全ゲノム中のミトコンドリアタンパク質をコードする遺伝子が2-3%であるのと比較して、ミトコンドリアタンパク質は、当該スクリーニングで豊富であり、これは、当該RNAiスクリーニングの特異性を示す(Catalano、D., et al. (2006) BMC Bioinformatics 7:36)(Sardiello、M., et al. (2003) Nucleic Acids Research 31:322)。これらは、ピルビン酸デヒドロゲナーゼ(PDH)のE1β(CG11876)およびE3(CG7430)サブユニットならびにα-ケトグルタラートデヒドロゲナーゼのE1(Nc73EF)およびE3(CG7430)を含む。興味深いことにこれらの2つの酵素複合体は、同様の組成を有し、非常に類似した化学反応を触媒する。それらは、E1、E2およびE3サブユニットからなり、E3サブユニットを共有する。これらの2つの酵素複合体は、CoASHおよびNAD’を利用し、COおよびNADHを産生する。
【0197】
CSにより触媒される反応は、TCA回路における最初の律速過程であり、それは、基質利用性および産生阻害により制御される。PDHサブユニットに対するRNAiは、CS活性のアップレギュレーションを生じ、それは、CSの基質であるアセチル-CoAの減少により生じる補償によるものであり得る。同様に、ピルビン酸カルボキシラーゼのRNAi処理は、CS活性のアップレギュレーションを生じた(表I)。ピルビン酸カルボキシラーゼは、ピルビン酸のCSのための他の基質であるオキサロ酢酸への変換を触媒する。一方で、α-ケトグルタラートデヒドロゲナーゼに対するRNAiは、CS活性の減少を生じた。これは、生成物阻害によるものであり得る。α-ケトグルタラートデヒドロゲナーゼは、TCA回路におけるCS後、生化学的反応を触媒する。α-ケトグルタラートデヒドロゲナーゼの減少は、間接的に、CSの生成物であるクエン酸の蓄積を生じ、それは、順に、CS活性を阻害する。CS制御の両機構に関与する遺伝子の同定、基質利用性および生成物阻害は、スクリーニングが代謝中間体を介してCS活性を制御する酵素を明らかにするのに十分な感度であることを示す。
【0198】
実施例3: トランスジェニックハエおよびハエ突然変異体におけるヒットのさらなる解析
ハエでのCS活性およびシトクロームCオキシダーゼ(COX)活性を測定するために、ハエストックを、野生型株と交雑した。突然変異もしくはトランスジーンを有するか、または有さない同胞のハエを、それらのミトコンドリアCSおよび/またはCOX活性に関して比較した。ヘテロ接合性は、一般に、最大で50%までの遺伝子量を減少させることが予測されるので、このインビボ検証法は、律速量が野生型動物の50%を超える遺伝子のみを明らかにすることが期待される。
【0199】
これらは、アポトーシスおよび逆行性応答を誘導する機会を減らすこと、多くのホモ突然変異と関連する致死を避けること、およびスクリーニングから比較的多くのヒットを素早く解析することのような、ヘテロ動物を用いるいくつかの利点が存在する。個々のハエをホモジナイズし、ライセートのアリコートを、CS活性および全タンパク質濃度アッセイのために使用した。全タンパク質濃度は、CS活性を標準化するために使用した。8個体のハエを、各ハエの遺伝子型に関して解析し、8つの生物学的リプリケートを提供した。野生型株は、バランサーもしくはマーカーのさらなる対照として、平行して解析した。
【0200】
単一のハエでCS活性を測定するために、反応は、96ウェルプレートで行った(Costar、Cat. # 07-200-656)。単一のハエを、0.1% Triton X-100、1mM EDTA、および20mM HEPES (GIBCO、#15630-080、PH 7.2)を含む抽出バッファーで溶解した。個々のハエを、250μlの抽出バッファーを含むエッペンドルフチューブ内でホモジナイズし、上清を、96ウェルプレートのウェルに移した。8個体のハエを、各ハエの遺伝子型に関して解析し、8つの生物学的リプリケートを提供した。10μlのハエライセートを、CSアッセイの各反応のために使用した。全反応量は、50mM Tris pH 8.0 (USB、Cat. # 22638)中に0.1mM DTNB (Sigma、Cat. # D8130)、0.3mM アセチル-CoA (Roche、Cat. # 1585371)および1mM オキサロ酢酸(Sigma、Cat. # O4126)を含む、100μlであった。オキサロ酢酸は、必ず、測定の直前に加えた。吸光度は、分光計(Molecular Devices)の動力学モードを用いて、412nmで、15秒ごとに10分間測定した(25℃で)。CS活性は、全タンパク質濃度で標準化した(Bio-radタンパク質アッセイ試薬)。
【0201】
COX活性を測定するために、シトクロームCオキシダーゼアッセイキット(Sigma、cat # CYTO_COX1)を、96ウェルプレートフォーマットに適用した。CytC溶液は、5.4mg/mlで行った。2.7mg CytCごとに、10μlのDTT(0.1mM)を、550nm/565nmの吸光度の比が10以上になるまで、CytCを減少させるように加えた。50μlライセートおよび25μl CytCを、COX活性アッセイのために使用した。550nmでの吸光度は、6秒ごとに1分間得た。COX活性(Vmax)は、経時的な吸光度の減少速度として計算した。COX活性は、全タンパク質濃度により標準化した。同じ単一ハエライセート(ハエあたり250μlの抽出バッファー)を、CSアッセイ(10μl)、COXアッセイ(50μl)および全タンパク質濃度(3μl)を測定するために使用した。8つのリプリケート(リプリケートあたり一匹のハエ)を、各遺伝子型のために使用した。
【0202】
エピジェネティック制御におけるヒット
転写制御におけるそれらの機能を有するRNAiスクリーニングから同定した14%(22/153)のヒットが存在した(表I)。それらの中で、HDAC1をCS活性のネガティブモジュレーターとして、HDAC6をそのポジティブモジュレーターとして同定した。LacZ RNAi対照と比較して、CS活性は、HDAC1/Rpd3 RNAiで処理した細胞で50%まで増加し、HDAC6 RNAiで処理した細胞で20%まで減少した(図3a)。
【0203】
ミトコンドリア機能の制御におけるHDAC1およびHDAC6のインビボでの重要性を理解するために、トランスジェニックハエを、GAL4-UAS誘導下、HDAC1もしくはHDAC6 RNAi構築体を用いて作製した。これらのトランスジェニックハエは、チューブリン-Gal4誘導下、RNAiの全体的な誘導で、成虫になる前に致死であったが、mef-Gal4誘導下、RNAiの筋肉特異的な誘導で生存し、繁殖力があった。HDAC1およびHDAC6タンパク質レベルは、これらのトランスジェニックハエで高度に減少し、これは、標的遺伝子をノックダウンするRNAiの有効性を示す(図3b、c)。次いで、CS活性を、mef-Gal4誘導下、成体HDAC RNAiハエで測定した。HDACが他のミトコンドリア機能に影響を与えるか否かを理解するために、全酸化的リン酸化能力のマーカーであるシトクロームcオキシダーゼ(COX)の活性を、また、平行して解析した。
【0204】
HDAC1 RNAiトランスジェニックハエで、COX活性は、それらの同胞対照ハエと比較して41%増加し、これは、HDAC1がインビボでミトコンドリアCOX活性を負に調節することを示す(図3d、e)。しかしながら、CS活性の変化は、HDAC1 RNAiトランスジェニックハエで観察されなかった。これは、筋肉特異的なRNAiの誘導の限界によるものであり得る。筋肉におけるCS活性の小さな変化は、ハエ全体のライセートで解析されるとき、過小評価され得る。
【0205】
CSおよびCOXにおけるHDAC1のインビボで観察された効果の差異は、CSとCOX酵素複合体間の内因的な差異により説明され得る。COX複合体は、核ゲノムおよびミトコンドリアゲノムによりコードされる13個ものサブユニットを含むが、CSは、ホモダイマーとして作用する。COX複合体のサブユニットは、相乗的に働き、HDAC1 RNAiにより引き起こされる2個またはそれ以上のサブユニットにおける小さな変化(perturbations)がCOX活性に強い影響を与え得るかもしれないが、HDAC1 RNAiによるCSタンパク質における小さな影響は、容易に検出可能な大きな非線形的効果に翻訳されないかもしれないことが考えられる。確かに、HDAC1は、かなり多くのミトコンドリアタンパク質に影響を与えるように思われる。マイクロアレイ研究が、Sin3A(HDAC1のコファクター)RNAiで処理したショウジョウバエで行われ、ミトコンドリア過程に関与する多くの重要な遺伝子が影響を与えることが見出された(Pile、L. A., et al. (2003) JBC 278:37840)。これらの遺伝子の多くは、Sin3Aにより抑制された。
【0206】
HDAC6 RNAiトランスジェニックハエでは、それらの同胞対照と比較して、CS活性は19%減少し、COX活性は34%減少し、これは、HDAC6がインビボでミトコンドリア機能を正に調節することを示す(図3f、h)。HDAC6は、ミトコンドリア機能を有することが以前に報告されていないが、いくつかのHDAC6基質は、ミトコンドリア機能において役割を果たすことが知られている。HDAC6は、Hsp90デアセチラーゼとして機能し、グルココルチコイド受容体(GR)のhsp90依存性成熟のために必要である(Murphy, P. J., et al. (2005) Journal of Biological Chemistry 280:33792)(Kovacs, J. J., et al. (2005) Molecular Cell 18:601)。GRは、ミトコンドリアに局在し、COX活性を含むミトコンドリア生合成および機能を刺激することが示された(Psarra, A. M., et al. (2005) International Journal of Biochemistry & Cell Biology 37: 2544)(Scheller, K., et al. (2003) Experimental Physiology 88:129)(Weber、K., et al. (2002) Endocrinology 143:177)。HDAC6はまた、インビボおよびインビトロでα-チューブリンを脱アセチル化し(チューブリンタンパク質レベルに影響を与えることなしに)、微小管ネットワークを不安定にする(Kovacs, J. J., et al. (2005) Molecular Cell 18:601)(Zhang, Y., et al. (2003) EMBO Journal 22:1168)(Matsuyama, A., et al. (2002) EMBO Journal 21:6820)(Hubbert, C., et al. (2002) Nature 417:455)(Haggarty, S. J., et al. (2003) PNAS 100:4389)(Iwata, A., et al. (2005) JBC 280:40282)。
【0207】
ミトコンドリアは、機能するインタクト微小管ネットワークを必要とすることが知られている(Appaix, F., et al. (2003) Experimental Physiology 88:175)。観察されるHDAC6ミトコンドリア機能は、ミトコンドリアでのHDAC6基質の役割に関する以前の研究と一致する。
【0208】
本研究は、ミトコンドリア機能におけるHDAC1およびHDAC6のインビボ証拠を提供する。HDAC5が、ほ乳類細胞でミトコンドリア生合成を負に制御することが以前に示されていた(Czubryt, M. P., et al. (2003) PNAS 100: 1711)。HDAC7は、ミトコンドリア局在を有することが報告されている(Bakin, R. E., et al. (2004) JBC 279:51218)。HDAC1およびHDAC6以外のHDACのRNAiで処理した細胞におけるCS活性の顕著な変化は、観察されなかった。
【0209】
シグナル伝達経路におけるヒット
11%(153中、17)のヒットが、シグナル伝達経路におけるそれらの機能のために同定された(表I)。ミトコンドリア機能に関するシグナル伝達経路の効果の研究は、モデル生物に限定される。公に利用可能なハエ突然変異体の大規模コレクションを利用して、多くのヒットを、突然変異ハエにおけるそれらのミトコンドリア機能に関してさらに解析した。CSヘテロ変異体を、最初に、ポジティブコントロールとして試験した。CS活性は、それらの野生型同胞種と比較して、ヘテロCS突然変異体で39%減少した(図4a)。次いで、23個のヒットを、ヘテロバックグラウンドでのそれらの突然変異を用いて解析した。それらのうちの6個が、CG3249、vimar、Src42A、klumpfuss、smt3およびbarrenを含むCS活性における重要な効果を有することが示された(図4)。
【0210】
PKA(cAMP-依存性プロテインキナーゼ)経路における2つの遺伝子であるCG3249およびPKAを、スクリーニングで同定した(表I)。CS活性は、CG3249ヘテロ変異体で8%減少した。CG3249は、A-キナーゼアンカータンパク質(AKAP)のホモロジーをコードする。ミトコンドリア機能を制御するAKAPの役割は、以前に報告されている(Horbinski, C., et al. (2005) フリーラジカル Biology & Medicine 38:2)(Livigni, A., et al. (2006) Molecular Biology of the Cell 17:263)。AKAPはPKAをミトコンドリアにアンカーし、アポトーシス促進タンパク質BADのPKA依存性リン酸化を増大させ、細胞生存を促進することが示された(Affaitati, A., et al. (2003) JBC 278:4286)(Harada, H., et al. (1999) Molecular Cell 3:413)。AKAPは、PTPD1/Src複合体をミトコンドリアに標的化し、トコンドリア基質タンパク質のSrc依存性チロシンリン酸化を促進することが示された(Livigni 2006)(Cardone, L., et al. (2004) Molecular & Cellular Biology 24:4613)。CG3249ヘテロ変異体は、減少したCS活性を有することが示され、これは、ミトコンドリア機能の制御におけるAKAPの正の役割を支持する。
【0211】
低分子GTPase仲介シグナル伝達経路における3つの遺伝子を同定した(表I)。CS活性における顕著な30%の増加が、vimarヘテロ変異体で観察された(図4c)。vimarのヒトホモログは、RAP1を活性化するグアニン交換因子(GEF)である、RAP1GDS1である。RAP1は、アクチン細胞骨格の制御に関与する、低分子Gタンパク質である(Bos, J. L. (2005) Current Opinion in Cell Biology 17:123)。多くのGEFがRAP1のために同定されている(Bos 2005)。RAP1-GEFsの1つの型であるEpacは、ミトコンドリアに局在し、PKA非依存的な方法で、cAMPの直接結合により、RAP1を活性化することが観察された(Wang, Z., et al. (2006) Molecular & Cellular Biology 26:213)(Qiao, J., et al. (2002) JBC 277:26581)。ここで、他のRAP1GEFを、ミトコンドリア機能を調節するものとして同定し、これは、ミトコンドリアにおけるRAP1の役割を支持する。
【0212】
チロシンキナーゼであるSrc42Aをまた、ミトコンドリア機能におけるその役割に関してハエ突然変異体で解析した。CS活性は、2つの異なるヘテロSrc42A突然変異体で、7%および18%増加した(図4d、e)。Src42Aは、ショウジョウバエで、脊椎動物Srcの最も近縁をコードする。Srcキナーゼの9つのメンバーを脊椎動物で発見し、2つのSrcキナーゼ(Src42AおよびSrc64)のみをショウジョウバエで同定した(Takahashi, F., et al. (1996) Genes & Development 10:1645)(Simon, M. A., et al. (1985) Cell 42:831)。それらは、ショウジョウバエで、JUNキナーゼ(JNK)活性を制御するのに冗長な機能を有する(Tateno, M., et al. (2000) Science 287:324)(Takahashi, M., et al. (2005) Development 132:2547)。Src42Aはまた、RTK(受容体チロシンキナーゼ)シグナル伝達を負に制御することが示された(Lu, X., et al. (1999) Developmental Biology 208:233)。ミトコンドリア局在におけるSrcキナーゼの最初の証拠は、ラット脳で見出された(Salvi, M., et al. (2002) Biochimica et Biophysica Acta 1589:181)。他の研究は、c-Srcがシトクロームcオキシダーゼをリン酸化し、活性化することを示した(Miyazaki, T., et al. (2003) Journal of Cell Biology 160:709)(Miyazaki, T., et al (2004) JBC 279:17660)。ショウジョウバエでのc-Srcのホモログは、Src64である(Simon, M. A., et al. (1983) Nature 302:837)。我々の実験条件下では、Src42Aは、CS活性を負に干渉するように見え、これは、ミトコンドリア機能の制御におけるSrcキナーゼの役割を支持する。
【0213】
アポトーシス経路における2つの遺伝子、klumpfussおよびthread/DIAP1を、スクリーニングから同定した。CS活性は、klumpfussヘテロ変異体で8%減少した(図4f)。klumpfussの機能は、EGFR (Epiermal Growth factor receptor)/dRAS1シグナル伝達経路により仲介される細胞生存シグナルのダウンレギュレーションにより、プログラム細胞死を促進することが示された(Rusconi, J. C., et al. (2004) Mechanisms of Development 121:537)。本明細書に記載したデータは、アポトーシス経路とミトコンドリア機能間のクロストークを示す。
【0214】
他の生物学的プロセスにおけるヒット
CS活性は、2つの異なるsmt3ヘテロ変異体で顕著に増加した(17%および6%)(図4g、h)。smt3は、SUMO(低分子ユビキチン関連修飾)タンパク質のショウジョウバエメンバーをコードする。4つのSUMOアイソフォーム(SUMO1−4)がほ乳類で見出され、1つのSUMOがショウジョウバエで見出されている。SUMO修飾は、種々の標的を有するように見え、タンパク質安定化、タンパク質標的化および他の過程で重要な役割を果たす(Dohmen, R. J. et al. (2004) Biochimica et Biophysica Acta 1695:113)。SUMOタンパク質は、ユビキチン系のそれと非常に類似した機構により他のタンパク質に結合する。SUMOは、最初に、SUMO活性化酵素(E1)により活性化され、次いで、結合酵素(E2)に移送され、基質認識SUMOリガーゼ(E3)と結合した後、E2がさまざまな基質タンパク質にSUMOを結合させる(Dohmen 2004)。
【0215】
SUMOのために同定された最初のミトコンドリア標的は、ミトコンドリア分裂において機能するDRP1であり、そのショウジョウバエオーソログshibireがまた、我々のスクリーニングにおいて同定された(表I)。DRP1は、SUMO1と共局在し、ほ乳類細胞でスモ化することが示された(Harder, Z., et al. (2004) Current Biology 14:340)。ここで、CS活性は、smt3ヘテロ変異体で増加し、これは、ミトコンドリアタンパク質修飾におけるスモ化のさらなる支持を提供する。
【0216】
細胞周期制御における3つのヒットをRNAiスクリーニングから同定し、分裂制御における機能を同定した(表I)。CS活性は、2つの異なるbarrenヘテロ変異体で、4%および9%増加した(図4i、j)。barrenは、染色体凝集のために必要な複合体であるコンデンシンのサブユニットをコードする(Legagneux, V., et al. (2004) Biology of the Cell 96:201)(Hirano, T., et al. (1997) Cell 89:511)。barrenは、最初に、ショウジョウバエで特徴付けられ、ヘテロbarren突然変異体は、PNS神経の重篤な欠損を有する胚性致死であった(Kania, A., et al. (1995) Genetics 139:1663)(Bhat, M. A., et al. (1996) Cell 87:1103)。増殖によりミトコンドリアにシグナルが伝わり、エネルギー産生と増殖を協調させることが可能である。低いグルコースおよびATPレベルは、細胞周期停止を生じ、p53経路による細胞生存を促進することが示された(Jones, R. G., et al. (2005) Molecular Cell 18:283)。低エネルギー細胞周期チェックポイントは、細胞分裂のさらなる周期にコミットする前に、ミトコンドリアの代謝活性をモニターすることが提案された(McBride, H. M., et al. (2006) Current Biology 16:R551)。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ミトコンドリア機能異常に関連した状態を処置し、予防しまたは寛解させる方法であって、それを必要とする対象に、有効量の表Iに記載のタンパク質から選択されるタンパク質のモジュレーターを投与することを含む方法。
【請求項2】
状態が神経変性疾患である、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
状態が糖尿病である、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
状態が加齢性障害である、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
状態が癌である、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
モジュレーターが対象の該タンパク質の生物学的活性を阻害する、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
モジュレーターが該タンパク質に結合する1種以上の抗体またはそのフラグメントを含み、当該1種以上の抗体またはそのフラグメントが対象の該タンパク質の生物学的活性を阻害する、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
モジュレーターが対象の該タンパク質の生物学的活性を促進する、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
モジュレーターが対象の該タンパク質をコードする遺伝子の発現を阻害する、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
モジュレーターがアンチセンスオリゴヌクレオチド、三重らせんDNA、リボザイム、RNAアプタマー、siRNA、二本鎖RNAおよび一本鎖RNAから選択される1種以上の物質を含む、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
モジュレーターが対象の該タンパク質をコードする遺伝子の発現を促進する、請求項1に記載の方法。
【請求項12】
ミトコンドリア機能異常に関連した状態を処置し、予防しまたは寛解させる方法であって、それを必要とする対象に、有効量の表1に記載のタンパク質から選択されるタンパク質のモジュレーターを含む医薬組成物を投与することを含んでなる方法。
【請求項13】
状態が神経変性疾患である、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
状態が糖尿病である、請求項12に記載の方法。
【請求項15】
状態が加齢性障害である、請求項12に記載の方法。
【請求項16】
状態が癌である、請求項12に記載の方法。
【請求項17】
モジュレーターが対象の該タンパク質の生物学的活性を阻害する、請求項12に記載の方法。
【請求項18】
モジュレーターが該タンパク質に結合する1種以上の抗体またはそのフラグメントを含み、当該1種以上の抗体またはそのフラグメントが対象の該タンパク質の生物学的活性を阻害する、請求項12に記載の方法。
【請求項19】
モジュレーターが対象の該タンパク質の生物学的活性を促進する、請求項18に記載の方法。
【請求項20】
モジュレーターが対象の該タンパク質をコードする遺伝子の発現を阻害する、請求項18に記載の方法。
【請求項21】
モジュレーターがアンチセンスオリゴヌクレオチド、三重らせんDNA、リボザイム、RNAアプタマー、siRNA、二本鎖RNAおよび一本鎖RNAから選択される1種以上の物質を含む、請求項20に記載の方法。
【請求項22】
モジュレーターが対象の該タンパク質をコードする遺伝子の発現を促進する、請求項12に記載の方法。
【請求項23】
ミトコンドリア機能異常に関連した状態の処置、予防または寛解に有用なモジュレーターを同定する方法であって、表Iに記載のタンパク質から選択されるタンパク質の生物学的活性を調節する候補モジュレーターの能力をアッセイすることを含む方法。
【請求項24】
該状態のインビトロモデルまたはインビボモデルにおいて観察される病理効果を反転させる同定モジュレーターの能力をアッセイすることをさらに含む、請求項23に記載の方法。
【請求項25】
該状態を有する対象の臨床試験において観察される病理効果を反転させる同定モジュレーターの能力をアッセイすることをさらに含む、請求項23に記載の方法。
【請求項26】
状態が神経変性疾患である、請求項23に記載の方法。
【請求項27】
状態が糖尿病である、請求項23に記載の方法。
【請求項28】
状態が加齢性障害である、請求項23に記載の方法。
【請求項29】
状態が癌である、請求項23に記載の方法。
【請求項30】
ミトコンドリア機能異常に関連した状態の処置、予防または寛解に有用なモジュレーターを同定する方法であって、表Iに記載のタンパク質から選択されるタンパク質の遺伝子発現を調節する候補モジュレーターの能力をアッセイすることを含む方法。
【請求項31】
該状態のインビトロモデルまたはインビボモデルにおいて観察される病理効果を反転させる候補モジュレーターの能力をアッセイすることをさらに含む、請求項30に記載の方法。
【請求項32】
該状態を有する対象の臨床試験において観察される病理効果を反転させる同定した阻害モジュレーターの能力をアッセイすることをさらに含む、請求項30に記載の方法。
【請求項33】
状態が神経変性疾患である、請求項30に記載の方法。
【請求項34】
状態が糖尿病である、請求項30に記載の方法。
【請求項35】
状態が加齢性障害である、請求項30に記載の方法。
【請求項36】
状態が癌である、請求項30に記載の方法。
【請求項37】
それを必要とする対象におけるミトコンドリア機能異常に関連した状態の処置、予防または寛解に有効な量の、表Iに記載のタンパク質から選択されるタンパク質のモジュレーターを含む医薬組成物。
【請求項38】
状態が神経変性疾患である、請求項37に記載の方法。
【請求項39】
状態が糖尿病である、請求項37に記載の方法。
【請求項40】
状態が加齢性障害である、請求項37に記載の方法。
【請求項41】
状態が癌である、請求項37に記載の方法。
【請求項42】
モジュレーターが該タンパク質の生物学的活性を阻害する、請求項37の医薬組成物。
【請求項43】
モジュレーターが該タンパク質と結合する1種以上の抗体またはそのフラグメントを含む、請求項37の医薬組成物。
【請求項44】
モジュレーターが該タンパク質の生物学的活性を促進する、請求項37の医薬組成物。
【請求項45】
モジュレーターが該タンパク質の遺伝子発現を阻害する、請求項37の医薬組成物。
【請求項46】
モジュレーターがアンチセンスオリゴヌクレオチド、三重らせんDNA、リボザイム、RNAアプタマー、siRNA、二本鎖RNAおよび一本鎖RNAから選択される1種以上の物質を含む、請求項45の医薬組成物。
【請求項47】
モジュレーターが該タンパク質の遺伝子発現を促進する、請求項37の医薬組成物。
【請求項48】
ミトコンドリア機能異常に関連した状態を有する対象が表Iに記載のタンパク質から選択されるタンパク質のモジュレーターによる処置の好適な候補であり得るかを診断する方法であって、当該対象由来の生物学的サンプル中の何れか1種以上の前記タンパク質を翻訳によって提供するmRNAのレベルをアッセイすることを含む方法(ここで、対照と比較して変化したmRNAレベルを有する対象がモジュレーター処置の好適な候補である)。
【請求項49】
ミトコンドリア機能異常に関連した状態を有する対象が表Iに記載のタンパク質から選択されるタンパク質のモジュレーターによる処置の好適な候補であり得るかを診断する方法であって、当該対象由来の生物学的サンプル中の何れか1種以上の前記タンパク質レベルをアッセイすることを含む方法(ここで、対照と比較して変化したmRNAレベルを有する対象がモジュレーター処置の好適な候補である)。
【請求項50】
ミトコンドリア機能異常に関連した状態を処置し、予防しまたは寛解させる方法であって:
(a) 対象由来の生物学的サンプル中の表Iに記載のタンパク質から選択されるタンパク質をコードするmRNAのレベルをアッセイし;そして
(b) 対照と比較して該タンパク質のmRNAのレベルが変化している対象に、状態の病理効果の処置、予防または寛解に十分な量の該タンパク質に対するモジュレーターを投与すること
を含む方法。
【請求項51】
状態が神経変性疾患である、請求項50に記載の方法。
【請求項52】
状態が糖尿病である、請求項50に記載の方法。
【請求項53】
状態が加齢性障害である、請求項50に記載の方法。
【請求項54】
状態が癌である、請求項50に記載の方法。
【請求項55】
モジュレーターが該タンパク質の遺伝子発現を促進する、請求項50に記載の方法。
【請求項56】
モジュレーターが該タンパク質の遺伝子発現を阻害する、請求項50に記載の方法。
【請求項57】
ミトコンドリア機能異常に関連した状態を処置し、予防しまたは寛解させる方法であって:
(a) 対象由来の生物学的サンプル中の表Iに記載のタンパク質から選択されるタンパク質レベルをアッセイし;そして
(b) 対照と比較して該タンパク質レベルが変化している対象に、状態の病理効果の処置、予防または寛解に十分な量の該タンパク質に対するモジュレーターを投与すること
を含む方法。
【請求項58】
状態が神経変性疾患である、請求項57に記載の方法。
【請求項59】
状態が糖尿病である、請求項57に記載の方法。
【請求項60】
状態が加齢性障害である、請求項57に記載の方法。
【請求項61】
状態が癌である、請求項57に記載の方法。
【請求項62】
モジュレーターが該タンパク質の生物学的活性を促進する、請求項57に記載の方法。
【請求項63】
モジュレーターが該タンパク質の生物学的活性を阻害する、請求項57に記載の方法。
【請求項64】
生物学的サンプル中の表Iに記載のタンパク質から選択されるタンパク質のmRNAを検出するための診断キットであって:
(a) 表Iに記載のポリペプチドをコードするポリヌクレオチドまたはそのフラグメント;
(b) (a)のものと相補的な配列のヌクレオチド;
(c) (a)のポリヌクレオチドによってコードされる本発明の表Iのポリペプチド;
(d) (c)のポリペプチドに対する抗体;
(e) (a)のものと相補的な配列のRNAi
(ここで、成分(a)、(b)、(c)、(d)または(e)は実質的な成分を含んでいてよい)
を含むキット。
【請求項65】
生物学的サンプル中の表Iに記載のタンパク質から選択されるタンパク質レベルを検出するための診断キットであって:
(a) 表Iに記載のポリペプチドのポリヌクレオチドまたはそのフラグメント;
(b) (a)のものと相補的な配列のヌクレオチド;
(c) (a)のポリヌクレオチドによってコードされる本発明の表Iのポリペプチド;
(d) (c)のポリペプチドに対する抗体;
(e) (a)のものと相補的な配列のRNAi
(ここで、成分(a)、(b)、(c)、(d)または(e)は実質的な成分を含んでいてよい)
を含むキット。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公表番号】特表2010−518148(P2010−518148A)
【公表日】平成22年5月27日(2010.5.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−549419(P2009−549419)
【出願日】平成20年2月14日(2008.2.14)
【国際出願番号】PCT/EP2008/051814
【国際公開番号】WO2008/098995
【国際公開日】平成20年8月21日(2008.8.21)
【出願人】(504389991)ノバルティス アーゲー (806)
【Fターム(参考)】