説明

ミネラルウール、絶縁製品及び製造方法

本発明は、繊維を含む生理学的媒体中に溶解することのできるミネラルウールに関し、繊維のその化学的組成は重量%で、SiO35〜75%、Al0〜12%、CaO0〜30%、MgO0〜20%、NaO0〜3%、KO0〜10、B0〜10、Fe0〜5、P0〜3の限定された範囲の構成成分を含み、前記ミネラルウールは、少なくとも1つの燐化合物をも含む。本発明は、燐化合物が、燐原子が直接に若しくは酸素原子を介して、少なくとも1つの炭素原子に結合されている分子であることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【発明の開示】
【0001】
本発明は、人工ミネラルウールの分野に関する。本発明は、より特別には、断熱及び/又は遮音材料に組み込まれることを意図したガラスウールに関する。
【0002】
ミネラルウールは、直径及び/又は長さに関する一定の幾何学的判定基準が認められると、呼吸により体内へ、特に肺へ、時々は、はるか肺胞に取り入れられることがある。体へのあり得る蓄積に結び付く任意の潜在的病原性リスクを防止するために、繊維が低い「生物抵抗性」(即ち、体から容易に迅速に除去できること)を有することを確かめることが必要になってきた。繊維の化学的組成は、生理学的媒体中の溶解速度に重要な役割を果たすことから、体から迅速に除去されるこの能力に影響する主なパラメーターである。生理学的媒体中への高溶解速度を有するミネラルウール(「生溶解性(biosoluble)ミネラルウール」)は、それゆえ、先行技術において開発され、説明されてきた。
【0003】
しかしながら、主に困難なことは、特に最終製品の良好な作業性、特に湿潤環境下での老化中の機械的強度及び機械的強度の安定性を保持しながら、生理学的媒体中への繊維の溶解速度を増加させることである。後者の点は特に重要で扱いにくい、というのは、湿潤強度と生溶解性は共に、主として酸性媒体中で溶解する能力に共に関連することから、多くの面で両立しないからである。
【0004】
湿潤強度に関する要請は、数多くの応用で、特に建築要素を製造するために使用されるガラスウールの分野で、特別に、ミネラルウールが対向する2枚の金属(例えば、鋼若しくはアルミニウム)間の断熱芯を構成する、「サンドイッチ」パネルで、急激に厳しくなってきている。これらの建築要素は、屋根や屋根外装、壁外装や外部壁外装、壁、仕切り壁、建屋内部に位置する天井に主に使用される。それらが被り得る多様な機械的応力を考慮すると、非常に良好な圧縮強度、断烈強度、せん断強度特性が要求される。更に、周囲湿気に晒されるこれら製品の機械的強度及び特に断烈強度は、長期に亘りあまりにも顕著に低下しないことが重要である。これら種々の要請は、特に標準案prEN 14509「自己支持性2重外装金属対向断熱サンドイッチパネル-工場生産品-仕様」で特定されている。
【0005】
特許出願WO 93/21636は、湿潤環境下での老化抵抗性が、繊維表面へのアンモニア或いはアルカリ金属燐酸塩若しくは燐酸水素塩被覆の沈着に基づき改善されるタイプのミネラルウールを記載している。しかしながら、この解決は不利益がないわけではない。事実、そのような燐化合物は、被覆されないものと比べて老化前の繊維製品の機械的強度、特に圧縮強度及び断烈強度に顕著な減少をもたらすようである。湿潤環境下での老化特性の改善におそらく由来する、これら化合物により発揮された酸性が、他方で、結合剤のポリマー化段階中での、繊維と樹脂系サイジング組成物(「結合剤」)との間の接着に不利となるからであろう。
【0006】
したがって、本発明の1つの目的は、これら不利益を除去し、老化前の良好な機械的強度(特に、圧縮強度及び断烈強度について)を保持しながら、生理学的媒体に溶解するミネラルウールの湿潤環境下での老化抵抗性を改善することである。
【0007】
本発明の1つの主題は、その化学組成が、重量%で、下記の範囲の構成成分を含む繊維を含む生理学的媒体中に溶解することのできるミネラルウールである。
【0008】
SiO35〜75
Al0〜12
CaO 0〜30
MgO 0〜20
Na 0〜20
0〜10
0〜10
Fe0〜5
0〜3
前記ミネラルウールは、更に、燐原子が、直接に、若しくは酸素原子を介して、少なくとも1つの炭素原子に結合している分子である、少なくとも1つの燐化合物を含む。
【0009】
好ましくは、夫々の燐化合物は、燐原子が、少なくとも1つの炭素原子に直接若しくは酸素原子を介して結合している1つの分子である。
【0010】
燐化合物は、ミネラル繊維の少なくとも1部の表面に沈積され、それゆえガラス繊維自体の化学的組成の1部を構成してはいない。
【0011】
燐化合物は、単一の分子即ち唯1つの燐原子を含むものであってよい。
【0012】
本発明による燐化合物は、それから、単一の燐原子が、直接に酸素原子だけに或いは水素原子だけに結合している即ち、酸素原子を介してのみ少なくとも1つの炭素原子に結合していることを特徴とするものであってよい。それは、例えば、モノ-、ジ-、或いはトリ-燐酸エステル若しくは置換されない亜燐酸或いはジ亜燐酸エステルであり、これらエステルの炭素系基は、アルキル、アリール、アルケニル、アルキニル、アシル若しくはヒドロキシアルキル化合物であり、場合によってはオリゴマー若しくはポリマー性であっても、及び/又はN、O若しくはSから選択される1以上のヘテロ原子を含んでいてもよい。
【0013】
本発明による燐化合物は、また、単一の燐原子が、直接に少なくとも1つの炭素原子に結合していることを特徴とするものであってよい。それは、少なくとも部分的に置換された亜燐酸或いはジ亜燐酸或いはエステルである。(即ち、燐原子に結合した少なくとも一つの水素原子は、炭素系置換基により置換されている。)これら化合物の種々の炭素系基は、アルキル、アリール、アシル、アルケニル、アルキニル、若しくはヒドロキシアルキル化合物であり、場合によってはオリゴマー若しくはポリマー性であっても、及び/又はN、O若しくはSから選択される1以上のヘテロ原子を含んでいてもよい。
【0014】
しかしながら、本発明による燐化合物は、好ましくは、共有結合により共に結合した、前記のような数種の同一であるか或いは異なる単位化合物から成る分子である。燐化合物は、それから、好ましくはオリゴマー或いはポリマーであり、その構造は、反復構成単位として表されてもよい。これら構成単位の数は、有利には、2〜100、特に2〜50、若しくは2〜10でさえある。複数個の燐原子を含む1つの分子の場合には、燐原子が炭素原子と結合しているという鍵となる条件は、大多数の燐原子はこの条件を満たすことを意味しているものとして理解されねばならず、大分子においては、燐原子のほんの少しの部分がこの条件を満たさないという事実が、技術的問題が解決される方法を実質的に変え得ないということが理解される。
【0015】
したがって、燐原子の多数が(或いは全部でさえ)、酸素原子により共に結合している化合物、例えば、燐酸或いは亜燐酸ポリエステル型化合物であってもよい。
【0016】
しかしながら、燐原子の多数が(或いは全部でさえ)、炭素系基を介して共に結合している化合物が、より有利である。燐化合物はそれから、好ましくは、少なくとも1つの炭素原子を含む基により共に結合している大部分の燐原子を含み、炭素原子は、少なくとも1つの燐原子に酸素原子を介して直接に結合していてもよい。このような好ましい化合物は、以下の一般式(1)により表されてもよい。
【化4】

【0017】
ここで、nは、1〜100、好ましくは1〜50、特に2〜10であり、置換基R乃至Rは、同一であるか異なり、主に炭素系基であり、好ましくは、場合によって、分岐アルキル、アリール、アルケニル、アルキニル、アシル若しくはヒドロキシアルキル型であり、場合によってはオリゴマー若しくはポリマー性であっても、及び/又はN、O、S若しくはPから選択される1以上のヘテロ原子を含んでいてもよい。これら置換基の少なくとも1つは、特に置換基Rは、主鎖の燐原子に結合された酸素原子を含むことが好ましい。
【0018】
2個の置換基が、主鎖の燐原子に結合する酸素原子を含むならば、燐化合物は有利には、下記の一般式(2)の亜燐酸ポリエステル型オリゴマー若しくはポリマーである。
【化5】

【0019】
すべての置換基が、主鎖の燐原子に結合する酸素原子を含むときは、好ましい燐化合物の別のファミリーは、下記の一般式(3)の燐酸ポリ酸或いはポリエステル型オリゴマー若しくはポリマーから構成される。
【化6】

【0020】
化合物のこれら最後の2つの型に対して、鎖長nは、1〜100、好ましくは1〜50、特に2〜10であり、置換基R及びR乃至Rは、同一であるか異なり、主に炭素系基であり、好ましくは、場合によっては、分岐アルキル、アリール、アルケニル、アルキニル、アシル若しくはヒドロキシアルキル型であり、場合によってはオリゴマー若しくはポリマー性であっても、及び/又はN、O、S若しくはPから選択される1以上のヘテロ原子を含んでいてもよい。夫々の置換基中の炭素原子の数は、有利には1〜15、特に2〜10である。炭素原子数が多いと、温度上昇時の大量の炭素系残留物を生成する不利益が事実上あり、一方、あまりに炭素原子数があまりにも少ないと、加水分解し易い結果となり得る。置換基R乃至Rは、水素原子若しくは燐酸に対する中和塩基であってもよい。
【0021】
鎖長が1に等しいときは、R及びR基は、一緒に共有結合して環分子を形成することも可能である。nが1より大であるときは、いくつかのR、R及びR基は、一緒に共有結合してもよい。それゆえ、好ましい燐化合物は、ロジア(Rhodia)により登録商標アムガードCT或いはCU(AMGARD CT,CU)により販売される製品である。それは、CAS番号夫々41203-81-0及び42595-45-9である2種の環状亜燐酸エステルの混合物である。最初のものは、式(2)で、n=1、すべてのR及びR基は、メチル基であり、R及びR基は、一緒に結合して炭素原子6個を有する単一のアルキル基を形成している、亜燐酸エステルである。第2のものは、同じ型のエステルであるが、n=2、すべてのR基は、メチル基であり、2個のR基は、夫々R及びR基に結合して、2個のCアルキル基を形成している。
【0022】
これまで直鎖或いは環状鎖として表されたオリゴマー若しくはポリマー燐化合物は、網状に架橋してもよいし、例えば、これらの置換基がポリオール乃至はポリ酸であるときは、種々の主な炭素系置換基はそれ自身が少なくとも1つの他の燐原子に結合することができる。
【0023】
後者の化合物は、特に、亜燐酸及び燐酸夫々である酸又はエステルと、ポリオール(特に、ジオール)、ポリ酸(特に、2価酸)若しくは他のエポキシ化合物との間のエステル化反応或いはエステル交換反応により得られてもよい。この範囲内で、糖蜜(砂糖精製時の副産物)は、低価格であるために、ポリオール若しくはジオールの出資源として特に魅力的である。本発明による燐化合物は、糖蜜と燐酸或いは亜燐酸或いはエステルとの間の反応により得られることができ、この反応は、繊維上に2つの製品を同時噴霧することにより実行することさえもできるようである。燐系スターチも使用し得る。
【0024】
本発明のミネラルウールは、有利には前記したような数種の燐化合物の混合物を含んでもよい。
【0025】
「有機燐化合物」ということができる、これら化合物に共通する点は、燐鎖自身内に炭素系化合物が存在することである。それらに結合した炭素系化合物を有さない先行技術に記載された燐系化合物と比べると、科学的理論により束縛されることを望むものではないが、本発明による化合物の酸緩衝機能は、長期に亘りより拡散して現れ、樹脂の硬化時には繊維と樹脂系結合剤との間の接着性をより少なく劣化させる。かくて、本発明の範囲内で得られる老化前のより良い機械的特性が説明される。
【0026】
本発明による燐化合物は、好ましくは、0.05%、特に0.1%以上で、5%、特に3%以下の量である。この量は、繊維の全質量に対する燐化合物の質量に対応する。
【0027】
これらの型の化合物中の燐の質量を考慮すると、繊維の質量に対する燐原子の質量含量は、有利には、0.0005〜1%、特に0.01%、特に0.1%以上で、0.5%以下である。
【0028】
上記燐化合物は、親水性であるという欠点を有するが、最終製品の水分吸収を制限することを目的として、これら化合物に対する防水剤若しくはサイジング剤を添加することが有利であり得る。シリコン-タイプ(ポリシロキサン)防水剤が特に評価される。添加量は、好ましくは、0.01%〜1%、特に、0.05%〜0.2重量%である。
【0029】
本発明の範囲内の特に好ましい繊維組成は、以下の重量%の範囲の以下の構成成分を含む。
【0030】
SiO45〜75
Al0〜10
CaO 0〜15
MgO 0〜15
Na 12〜20
0〜10
0〜10
Fe0〜5
0〜3。
【0031】
シリカ(SiO)は、ガラスネットワーク形成成分である。量があまりにも多いと、適正にガラスを溶融し、均質化し、清澄化する粘度よりも高くなりすぎ、一方量があまりにも少ないと、ガラスを熱的に不安定にし(冷却時あまりにも簡単に失透する)、化学的に不安定にする(あまりにも湿分攻撃を受けやすい)。シリカ含量は、有利には、50%若しくは55%若しくは60%以上で、70%以下である。
【0032】
アルミナ(Al)も、ガラスの粘度を顕著に増加することのできるネットワーク形成成分である。量があまりにも多いと、肺胞液での溶解性に悪い影響を与える。その量が少ないと、湿潤強度が大いに減少する。これら種々の理由で、アルミナ含量は、有利には、1%以上で、5%特に3%以下である。
【0033】
アルカリ土類金属酸化物、主に石灰(CaO)とマグネシア(MgO)は、ガラスの高温粘度を減らすことができ、それゆえ、気体若しくは固体混入物をなくし、ガラス製造での加工段階を容易にする。アルカリ金属酸化物に対して置換することによって、それらは、ガラスの湿潤強度を著しく改善するが、他方失透を助長し、繊維化段階を困難にする。カルシウム含量は、それゆえ有利には5%、特に7%以上で、10%以下である。マグネシアについては、その含量は、好ましくは10%、若しくは5%以下で、1%以上である。他の酸化バリウム(BaO)若しくは酸化ストロンチウム(SrO)のようなアルカリ土類金属酸化物は、本発明によるミネラルウールに存在してもよい。しかしながら、それらの高コストを考慮すれば、有利には存在しない。(原材料の不可避的不純物に由来する痕跡分は別である。)
アルカリ金属酸化物、主に、酸化ナトリウム(NaO)及び酸化カリウム(KO)は、特にガラスの高温粘度を減らし、失透に対する抵抗性を増加することに有益である。しかしながら、それらは、湿潤環境下での老化に対する抵抗性には有害であることが判明した。酸化ナトリウム(NaO)含量は、その結果、好ましくは18%以下で、14%以上である。酸化カリウム(KO)含量は、主に原材料の入手しやすさの理由で、有利には、5%、若しくは2%、若しくは1%以下である。
【0034】
硼素酸化物(B)は、ガラスの粘度を下げ、繊維の生溶解性を改善するために重要である。更に、その存在は、特にその放射成分においてその熱伝導係数を下げることにより、ミネラルウールの断熱特性を改善する傾向にある。更に、その高コストと高温における揮発性、有害な放出物を生み出し、製造現場に煙処理プラントを設置する必要性を考慮すると、硼素酸化物含量は、好ましくは8%、特に6%、若しくは5%以下である。ある具体例では、零含量が好ましい。
【0035】
酸化鉄含量は、ガラス着色の役割とガラス失透能力から、5%より小である。高鉄含量は、「ロックウール」型のミネラルウールに非常に高温での抵抗性を付与することを可能にするが、内部遠心技術による繊維化を困難にし、ある場合には不可能にさえする。酸化鉄含量は、好ましくは、3%若しくは1%以下である。
【0036】
燐酸(P)は、特に、生溶解性に対する有利な作用のために、有利には使用されてもよい。
【0037】
本発明による繊維は、また、3質量%若しくは2質量%若しくは1質量%を超えない他の酸化物を含んでもよい。これら酸化物の中には、この種工業に使用される天然若しくは人工バッチ材料(例えば、カレットと呼ばれるリサイクルガラス)から一般に生み出される不純物である(中でも最も普通なのは、TiO、MnO、BaO等)。ZrOのような不純物もまた炉建造に使用される耐火材料に由来する化学的成分がガラスに部分的に溶解することにより一般に持ち込まれる。また、ある種の不純物は、ガラス精製に使用される化合物に由来する。特に、非常に一般的に使用される硫黄酸化物SOが挙げられる。BaO、SrOのようなアルカリ土類金属酸化物及び/又はLiOのようなアルカリ金属酸化物も、本発明によれば、繊維に自発的に含まれてもよい。しかしながら、それらの高コストを考慮すれば、本発明による繊維はそれらを含まないことが好ましい。これら種々の酸化物は、それらの低含量のゆえに、本発明による繊維が呈した問題に対応する方法を変えるような如何なる特別な機能も果たさない。
【0038】
本発明の別の主題は、本発明によるミネラルウールを得る方法であり、繊維形成段階と、その後の、特に、溶液の噴霧若しくは含浸により、少なくとも1つの燐化合物を前記繊維表面に導入する段階を含む。
【0039】
本発明のまた別の主題は、本発明による少なくとも1つのミネラルウールを含む断熱及び/又は遮音製品であり、特に、ミネラルウールが対向する2枚の金属(例えば、鋼或いはアルミニウム)間の断熱芯を構成する、特に「サンドイッチ」型建築要素であり、これらは場合によっては内壁、外壁、屋根若しくは天井の建築に使用される自己支持型の建築要素である。
【0040】
本発明による断熱製品の密度は、好ましくは40〜150kg/mである。(この密度は、ミネラルウールを考慮していない。)
本発明の最後の主題は、その化学組成が、重量%で、下記の範囲の構成成分を含む繊維を含むミネラルウールの湿潤環境での老化後の機械的特性を改善することを目的とする、燐原子が直接に若しくは酸素原子を介して、少なくとも1つの炭素原子に結合されている少なくとも1つの分子の使用である。
【0041】
SiO35〜75
Al0〜12
CaO 0〜30
MgO 0〜20
Na 0〜20
0〜10
0〜10
Fe0〜5
0〜3。
【0042】
本発明によるガラス繊維により与えられる利点は、本発明を制限することなく、本発明を実証する以下の実施例により、より良く評価されるであろう。
【0043】
その化学的組成(重量%で表された)が表1で表される溶融ガラス塊は、主エネルギー原として、ガラス浴に浸された電極を使用してガラスバッチを溶融する方法により得られた。
【表1】

【0044】
この溶融ガラス塊は、その後溶融ガラスを受けるチャンバーを形成するバスケットと多数の穴により貫通された周辺帯金を含むスピナーを使って、内部遠心法により繊維に変換された。スピナーが垂直軸の周りを回転されたために、溶融ガラスは、遠心力の作用のもと排出され、穴から逃れた材料は繊維化ガス流の助けにより単繊維に細められた。
【0045】
サイズ剤噴霧リングは、スピナーの下に置かれ、形成されたばかりのガラスウール上に、均一にサイズ組成物を散布した。サイズ組成物は、繊維に噴霧される前に水で希釈された主にフェノール-ホルムアルデヒド樹脂及び尿素樹脂をベースとしている。他の型のサイズ組成物特にホルムアルデヒドを含まないようなものも単独若しくは混合物で、もちろん使用し得る。それらは、例えば、
-グリシジルエーテル型及び非揮発性アミン硬化剤からなるエポキシ樹脂系組成物(出願EP-A-0369848記載)で、イミダゾール、イミダゾリン及びそれらの混合物から選択される促進剤をも含んでもよい。;
-多塩基性カルボン酸及びポリオールを含む組成物、好ましくは、燐含有有機酸型のアルカリ金属塩触媒で結合されたもの(出願EP-A-0990727記載);
-カルボン酸官能基及び/又はβ-ヒドロキシアルキルアミド官能基を組み込んだ1以上の化合物を含む組成物、(出願WO-A-93/36368記載);
-カルボン酸及びアルカノールアミン若しくはカルボン酸及びアルカノールアミンから前以って合成された樹脂及びカルボン酸基を含むポリマーを組み込んだ組成物(出願EP-A-1164163記載);
-無水物とアミンを、無水物がアミン中に実質的に溶解し、及び/又はそれと反応するまで反応条件下混合すること、その後水を加え反応を終了させることからなる2段階で調整されるサイジング組成物(出願EP-A-1170265記載);
-第1の無水物を有するアミンとそれとは異なる第2の無水物とのポリマーを含まない反応製品を含む樹脂を含む組成物(出願EP-A-1086932記載)
-少なくとも1つのポリカルボン酸と少なくとも1つのポリアミンを含む組成物;
-カルボン酸と米国出願2005/038193記載のようなアルコール官能基を含むモノマーとの共重合体を含む組成物;
-例えば、特許WO2005/87837も若しくはus6706808記載のようなポリオールとポリ酸若しくはマレイン酸のようなポリ酸無水物を含む組成物
であってよい。
【0046】
これら出願若しくは特許EP-A-0369848,EP-A-0990727,WO-A-93/36368,EP-A-1164163,EP-A-1170265,EP-A-1086932,US 2005/038193,WO2005/87837,US6706808は、出願WO 04/007395,WO 2005/044750,WO 2005/121191,WO 04/094714,WO 04/011519.US 2003/224119,US 2003/224120と併記して、本出願の参照に組み入れる。
【0047】
アミノプラスト型樹脂(メラミン-ホルムアルデヒド若しくはウレア-ホルムアルデヒド)も、本発明の範囲内で使用されてもよい。
【0048】
燐化合物はサイジング組成物に加えられてもよいが、独立して、第2の噴霧リングを使って噴霧されてもよい。使用される種々の燐化合物は、下記のとおりであった。
【0049】
-比較例Aは、燐化合物を含まなかった。
【0050】
-燐酸2水素アンモニウムが、比較例B1に対して0.5%の量で、比較例B2に対しては1%の量。ミネラル繊維の老化抵抗性を改善するこの燐化合物の使用は、特に上記出願WO97/21636に記載されていた。
【0051】
-クラリアント社(Clariant Gmbh)により製造された「EXOLIT OP 550」という商標名を持つ難燃剤。燐酸ポリエステル形オリゴマーをベースとして、火災に対するポリウレタンの保護剤として特に使用される。本発明による実施例C1及びC2は、繊維合計量に対して、それを夫々1%及び3%含んだ。
【0052】
-アクゾ ノーベル社(Akzo Nobel)により販売された「FYROL PNX」という商標名を持つPを19%含む難燃剤。それは、式(3)の燐酸ポリエステル形オリゴマーであり、nは2〜20の間で変化し、R、R及びをRはエチル基であり、Rはエチレン基である。(CAS番号No.184538-58-7)本発明による実施例Dは、それを1%含んだ。
【0053】
-トリエチル フォスホノアセテート(TEPA、CAS番号No.867-13-70)、通常反応中間体として使用される。本発明による実施例Eは、それを1%含んだ。
【0054】
本発明による燐化合物の他の例の中には、ブッデンハイム社(Buddenheim)により販売されたBUDIT 341若しくは3118Fがある。登録商標アムガード(AMGARD)により販売される環状亜燐酸エステル混合物も、特に興味がある。この製品は、ポリステル系織物用の防火剤として使用され、EXOLIT OP 550製品より、オーブン温度で実際により高い安定性を有し、したがって、老化前のより良い機械的特性を獲得することを可能にする。そのP含量は、約20%である。
【0055】
このようにサイズされたミネラルウールは、ミネラルウールをコンベヤ表面上でフェルト若しくは板状に保持することのできる内部吸入箱を装備されたベルトコンベア上に集められた。コンベヤは、その後、オーブンを通過し、そこでサイズ剤樹脂の重縮合が起こった。製造された断熱製品は、密度約80kg/m3のパネルであった。
【0056】
以下の機械的試験が、製品製造後、任意の老化試験以前に、実施された。
【0057】
圧縮応力試験
標準NF EN 826によりなされた圧縮応力試験は、測定面積200*200mmで試料に負荷機械を使って圧縮応力を適用することに存した。圧縮応力は、10%の変形に対応する圧力(kPa)により与えられた。
【0058】
引裂応力試験
引裂応力試験が、標準NF EN 1607の原理によりなされた。引裂応力試験は、測定面積200*200mmで2枚の木板の間に挟みこまれ試料に、試料が破壊するまで、木板の表面の垂直軸に沿って引張り応力にさらすことに存した。
【0059】
表2は、これら種々の試験結果を含み、比較例Aを任意に100%として、それとの相対的パーセント割合で表現された当初(即ち、湿潤環境での老化試験以前)圧縮強度及び引裂強度を含む。
【表2】

【0060】
これらの結果は、先行技術で知られた無機燐酸塩の添加は、そのような燐酸塩含有水準が高い時でさえも、ミネラルウールの圧縮強度及び引裂強度を低下させることを明らかに示している。
【0061】
反対に、本発明による燐化合物の添加は、非被覆製品に対して、当初機械的強度の損失を最小化することを可能にし、驚くべきことに、それらの当初引裂強度を改善することを可能にしさえする。(例E)
前記例A(比較例)、B1(比較例)、C1、C2及びDに対応するミネラル繊維組成を有するサンドイッチパネルが、標準案prEN 14509「自己支持性2重外装金属対向断熱サンドイッチパネル-工場生産品-仕様」に記載された湿潤環境での老化試験後に、引裂強度試験を受けた。サンドイッチパネルは、65℃で100%の相対湿度の環境の部屋に28日間置かれたが、老化後の引裂強度損失は、60%を超えることはなかった。表3は、引裂強度損失(パーセント割合)の形で結果を記載した。
【表3】

【0062】
2つのミネラルウールが、標準NF EN 1609による、水に部分的に浸漬する試験を受けたが、1つは、例C1によるものであり、他方は、シリコンが、(この場合ダウ コーニング1581の商標名で販売されるポリジメチルシロキサンの水溶液が0.1重量%レベル)は同じ例に注入されたものである。
【0063】
シリコンが存在しないと、水分の取り込みは、1.47kg/m2であったが、シリコンが存在すると、0.4kg/m2に落ちた。圧縮強度及び引裂強度結果(湿潤環境での老化試験以前及び以後)は、他方では、シリコンの存在により影響されてはいない。
【0064】
したがって、本発明によるミネラル繊維の使用は、老化に関して、優秀な結果を得ることを可能にする。燐化合物のないミネラルウールの改善が目覚しかったが、他方では、先行技術から知られた無機燐化合物により被覆されたミネラルウールについては、明らかな改善は観察されなかった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
その化学組成が、重量%で、
SiO35〜75
Al0〜12
CaO 0〜30
MgO 0〜20
Na 0〜20
0〜10
0〜10
Fe0〜5
0〜3
の範囲の構成成分を含む繊維を含む、生理学的媒体中に溶解することのできるミネラルウールであって、前記ミネラルウールは、更に、少なくとも1つの燐化合物を含み、その1つの燐化合物が、燐原子が、直接に若しくは酸素原子を介して、少なくとも1つの炭素原子に結合している分子であることを特徴とするミネラルウール。
【請求項2】
請求項1記載のミネラルウールであって、a)厳密に酸素原子を介して、少なくとも1つの炭素原子に結合している単一の燐原子を含む分子;b)少なくとも1つの炭素原子に直接結合している単一の燐原子を含む分子から選択される少なくとも1つの燐化合物を含むミネラルウール。
【請求項3】
請求項1又は2記載のミネラルウールであって、モノ-、ジ-、或いはトリ-燐酸エステル若しくは置換されていない亜燐酸或いはジ亜燐酸エステルであって、前記エステルの炭素系基は、アルキル、アリール、アルケニル、アルキニル、アシル若しくはヒドロキシアルキル化合物であり、場合によっては、オリゴマー若しくはポリマー性であっても、及び/又はN、O若しくはSから選択される1以上のヘテロ原子を含んでいてもよいところのものから選択される少なくとも1つの燐化合物(a)を含む、ミネラルウール。
【請求項4】
請求項2記載のミネラルウールであって、少なくとも部分的に置換された亜燐酸若しくは、次亜燐酸或いはエステルであって、化合物の種々の炭素系基が、アルキル、アリール、アルケニル、アルキニル、アシル若しくはヒドロキシアルキル化合物であり、場合によっては、オリゴマー若しくはポリマー性であっても、及び/又はN、O若しくはSから選択される1以上のヘテロ原子を含んでいてもよいところのものから選択される少なくとも1つの燐化合物(b)を含むミネラルウール。
【請求項5】
請求項1記載のミネラルウールであって、共有結合により共に結合される、同一であるか異なる、請求項2乃至4記載の(a)型乃至(b)型の数種の化合物から構成される分子である少なくとも1つの燐化合物を含むミネラルウール。
【請求項6】
請求項1乃至5項の何れか1項記載のミネラルウールであって、オリゴマー若しくはポリマー分子であり、その構成単位の数が、優先的に、2〜100、特に2〜50、若しくは2〜10でさえある少なくとも1つの燐化合物を含むミネラルウール。
【請求項7】
請求項5又は6記載のミネラルウールであって、炭素系基を介して共に結合する燐原子を主として含む、少なくとも1つの燐化合物を含むミネラルウール。
【請求項8】
請求項1乃至7項の何れか1項記載のミネラルウールであって、下記の一般式(1)により表わされ得る少なくとも1つの燐化合物を含むミネラルウール。
【化1】

ここで、nは、1〜100、好ましくは1〜50、特に2〜10であり、置換基R乃至Rは、同一であるか異なり、主に炭素系基であり、場合によって、好ましくは、分岐アルキル、アリール、アルケニル、アルキニル、アシル若しくはヒドロキシアルキル化合物であり、場合によっては、オリゴマー若しくはポリマー性であっても、及び/又はN、O、S若しくはPから選択される1以上のヘテロ原子を含んでいてもよい。
【請求項9】
請求項1乃至8項の何れか1項記載のミネラルウールであって、下記の一般式(2)の亜燐酸ポリエステル型オリゴマー若しくはポリマーである少なくとも1つの燐化合物を含むミネラルウール。
【化2】

ここで、鎖長nは、1〜100、好ましくは1〜50、特に2〜10であり、置換基R及びR乃至Rは、同一であるか異なり、主に炭素系基であり、場合によって、好ましくは、分岐アルキル、アリール、アルケニル、アルキニル、アシル若しくはヒドロキシアルキル型であり、場合によっては、オリゴマー若しくはポリマー性であっても、及び/又はN、O、S若しくはPから選択される1以上のヘテロ原子を含んでいてもよい。
【請求項10】
請求項8項記載のミネラルウールであって、下記の一般式(3)の燐酸ポリ酸或いはポリエステル型のオリゴマー若しくはポリマーである少なくとも1つの燐化合物を含むミネラルウール。
【化3】

ここで、鎖長nは、1〜100、好ましくは1〜50、特に2〜10であり、置換基R乃至Rは、同一であるか異なり、主に炭素系基であり、場合によって、好ましくは、分岐アルキル、アリール、アルケニル、アルキニル、アシル若しくはヒドロキシアルキル型であり、場合によっては、オリゴマー若しくはポリマー性であっても、及び/又はN、O、S若しくはPから選択される1以上のヘテロ原子を含んでいてもよい。
【請求項11】
請求項4乃至10項の何れか1項記載のミネラルウールであって、亜燐酸或いは燐酸夫々である、酸或いはエステルと、ポリオール(特に、ジオール)、ポリ酸(特に、2価酸)或いはエポキシ化合物との間のエステル化若しくはエステル交換反応により得られる少なくとも1つの燐化合物を含むミネラルウール。
【請求項12】
請求項1乃至11項の何れか1項記載のミネラルウールであって、糖蜜と燐酸、亜燐酸若しくはエステルとの間の反応により得られる少なくとも1つの燐化合物を含むミネラルウール。
【請求項13】
請求項1乃至12項の何れか1項記載のミネラルウールであって、燐原子の質量により表現された含有量が、繊維の合計質量の0.0005%〜1%であり、特に0.01%より大きく、特に0.5%より少ないミネラルウール。
【請求項14】
請求項1乃至13項の何れか1項記載のミネラルウールを得る方法であって、繊維形成段階と、その後の、特に溶液の噴霧若しくは含浸により、前記繊維表面に少なくとも1つの燐化合物を導入する段階を含む、ミネラルウールを得る方法。
【請求項15】
請求項1乃至13項の何れか1項記載の少なくとも1つのミネラルウールを含む断熱及び/又は遮音製品。
【請求項16】
請求項1乃至13項の何れか1項記載のミネラルウールを、2個の対向する金属間の断熱芯として含む「サンドイッチ」型建築要素。
【請求項17】
その化学組成が、重量%で、
SiO35〜75
Al0〜12
CaO 0〜30
MgO 0〜20
Na 0〜20
0〜10
0〜10
Fe0〜5
0〜3
の範囲の構成成分を含む繊維を含むミネラルウールの、湿潤環境での老化後の機械的特性を改善することを目的とする、燐原子が直接に若しくは酸素原子を介して、少なくとも1つの炭素原子に結合している、少なくとも1つの分子の使用。

【公表番号】特表2008−534421(P2008−534421A)
【公表日】平成20年8月28日(2008.8.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−503564(P2008−503564)
【出願日】平成18年3月31日(2006.3.31)
【国際出願番号】PCT/FR2006/050283
【国際公開番号】WO2006/103377
【国際公開日】平成18年10月5日(2006.10.5)
【出願人】(501085706)サン−ゴバン・イソベール (46)
【Fターム(参考)】