説明

ミラブルウレタンゴムの製造方法

【課題】 成形性に優れ、かつ良好な機械物性を有するミラブルウレタンゴムの製造方法を提供する。
【解決手段】 分子側鎖に少なくとも1個のエチレン性不飽和基を有するポリオールを含有してなるポリオール成分(a)とイソシアネート成分(b)との混合液を、60〜110℃の融点を有する熱可塑性樹脂フィルム(B)の面上または袋中で反応、硬化させてなるミラブルウレタン樹脂(A)に、加硫剤を加え、(B)を除去することなく溶融、混練して硬化させることを特徴とするミラブルウレタンゴムの製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ミラブルウレタンゴムの製造方法に関する。さらに詳しくは、ミラブルウレタン樹脂の製造時は架橋反応を起こすことがなく、該ミラブルウレタン樹脂に加硫剤を加えて後に架橋、硬化させる、ミラブルウレタンゴムの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、熱可塑性ポリウレタン樹脂は、無溶媒下で行われる塊状重合法で製造することができ、該塊状重合法としては、(1)ポリオール成分とイソシアネート成分の混合液を型に流し込み反応させるバッチ法、(2)ポリオール成分とイソシアネート成分を押出機に連続的に供給して押出機内で混合、反応させて棒状で取り出す押出法(例えば、特許文献1参照)が知られている。
一方、ゴムと同じように硫黄または過酸化物で架橋して成形できるポリウレタン樹脂としてミラブルウレタン樹脂が知られている。ミラブルウレタン樹脂は、エチレン性不飽和結合を導入した熱可塑性のポリウレタン樹脂であり、これに硫黄または過酸化物を混練後、押出機やプレス機により熱硬化させてミラブルウレタンゴム成形品が得られる。該成形品は、耐摩耗性や耐油性が良好なことから、紙搬送用のロールやベルト(例えば特許文献2参照)、および工業用シートに使用されている。
【0003】
【特許文献1】特開平11−181043号公報
【特許文献2】特開2001−122976号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、ミラブルウレタン樹脂を熱可塑性ポリウレタン樹脂の製造方法(塊状重合法)を用いて製造した場合、バッチ法(1)では流し込む型への離型剤塗布作業および得られるミラブルウレタン樹脂の脱型に少なからず時間を要するという問題があった。
また、押出法(2)ではイソシアネートの副反応で起こる架橋反応を抑えるために210〜240℃の高温で反応させるが、エチレン性不飽和結合を持つポリオール成分を反応させるとエチレン性不飽和結合に基づく架橋反応が起こるという問題があった。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意検討した結果、本発明に到達した。すなわち、本発明は、分子側鎖に少なくとも1個のエチレン性不飽和基を有するポリオールを含有してなるポリオール成分とイソシアネート成分との混合液を、60〜110℃の融点を有する熱可塑性樹脂フィルム(B)の面上または袋中で反応、硬化させてなるミラブルウレタン樹脂(A)に、加硫剤を加え、(B)を除去することなく溶融、混練して硬化させることを特徴とするミラブルウレタンゴムの製造方法;並びに、該製造方法で得られるミラブルウレタンゴムである。
【発明の効果】
【0006】
本発明のミラブルウレタンゴムの製造方法、および該製造方法で得られるミラブルウレタンゴムは、下記の効果を奏する。
(1)ミラブルウレタン樹脂製造時に不飽和結合に基づく架橋反応が起こらない。
(2)ミラブルウレタン樹脂およびミラブルウレタンゴム製造時の作業効率に優れる。
(3)ミラブルウレタンゴムは成形性に優れ、かつ良好な機械物性を有する。
【0007】
本発明におけるポリオール成分(a)には、分子側鎖に少なくとも1個のエチレン性不
飽和基を有するポリオール(a1)が含まれる。
(a1)としては、(a11)不飽和基含有低分子ポリオール[炭素数(以下Cと略記)4〜20]、(a12)該ポリオールのアルキレンオキシド(以下AOと略記)[および必要によりアリルグリシジルエーテル(以下AGEと略記)]付加物、(a13)2個以上の活性水素原子を含有する化合物のAGE(および必要によりAO)付加物およびこれらの混合物が挙げられる。
(a1)のうち、ミラブルウレタン樹脂(A)の耐熱性の観点から好ましいのは(a12)および/または(a13)である。
エチレン性不飽和基としては、アリル基および/または(メタ)アクリロイル基が挙げられ、耐水性の観点から好ましいのはアリル基である。
【0008】
上記不飽和基含有低分子ポリオール(a11)としては、C6〜20の脂肪族ポリオール、例えばグリセリン(以下GRと略記)モノアリルエーテル、トリメチロールプロパン(以下TMPと略記)モノアリルエーテル、ペンタエリスリトール(以下PEと略記)モノアリルエーテル、PEジアリルエーテル、GRモノ(メタ)アクリレート、TMPモノ(メタ)アクリレート等が挙げられ、耐水性の観点から好ましいのはGR−およびTMPモノアリルエーテルである。
【0009】
ポリオールのAO(および必要によりAGE)付加物(a12)におけるAOとしては、C2〜12、例えばエチレンオキシド(以下EOと略記)、プロピレンオキシド(以下POと略記)、1,2−、1,3−および2,3−ブチレンオキシド(以下BOと略記)、テトラヒドロフラン(THF)、置換AO[C5〜12のα−オレフィンのエポキシ化物、スチレンオキシドおよびエピハロヒドリン(エピクロルヒドリンおよびエピブロモヒドリン等]等が挙げられる。
【0010】
2個以上の活性水素原子を含有する化合物のAGE(および必要によりAO)付加物(a13)における、2個以上の活性水素原子を含有する化合物としては、C2以上かつ数平均分子量[以下Mnと略記。測定はゲルパーミエイションクロマトグラフィー(GPC)法による。]400以下の、下記(i)低分子ポリオール、(ii)多価フェノールおよび(iii)低分子アミン、並びにそれらのAO(上記のもの)付加物等が挙げられる。
【0011】
(i)低分子ポリオール
C2〜20またはそれ以上の2価アルコール、例えばC2〜12の脂肪族2価アルコール[(ジ)アルキレングリコール、例えばエチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、1
,2−、2,3−、1,3−およ
び1,4−ブタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、ネオペンチルグリコールおよび3−メチルペンタンジオール(以下それぞれEG、DEG、PG、DPG、BD、HD、NPGおよびMPDと略記)、ドデカンジオール等]、C6〜10の脂環含有2価アルコール[1,4−シクロヘキサンジオール、シクロヘキサンジメタノール等]、C8〜20の芳香脂肪族2価アルコール[キシリレングリコール、ビス(ヒドロキシエチル)ベンゼン等];3価〜8価またはそれ以上の多価アルコール、例えば(シクロ)アルカンポリオールおよびそれらの分子内もしくは分子間脱水物[GR、TMP、PE、ソルビトール(以下SOと略記)およびジペンタエリスリトール(以下DPEと略記)、1,2
,6−ヘキサントリオール、エリスリトール、シクロヘキサントリオール、マンニトール、キシリトール、ソルビタン、ジGRその他のポリGR等]、糖類およびその誘導体[例えばショ糖、グルコース、フラクトース、マンノース、ラクトース、およびグリコシド(メチルグルコシド等)]等。
【0012】
(ii)多価フェノール
C6〜18の2価フェノール、例えば単環2価フェノ ール(ハイドロキノン、カテコ
ール、レゾルシノール、ウルシオール等)、ビスフェノール(ビスフェノールA、−F、−C、−B、−ADおよび−S、ジヒドロキシビフェニル、4,4’−ジヒドロキシジフェニル−2,2−ブタン等)、および縮合多環2価フェノール[ジヒドロキシナフタレン(1,5−ジヒドロキシナフタレン等)、ビナフトール等];並びに3価〜8価またはそれ以上の多価フェノール、例えば単環多価フェノール(ピロガロール、フロログルシノール、および1価もしくは2価フェノール(フェノール、クレゾール、キシレノール、レゾルシノール等)のアルデヒドもしくはケトン(ホルムアルデヒド、グルタールアルデヒド、グリオキザール、アセトン)低縮合物(フェノールもしくはクレゾールノボラック樹脂、レゾールの中間体、フェノールとグリオキザールもしくはグルタールアルデヒドの縮合反応によって得られるポリフェノール、およびレゾルシンとアセトンの縮合反応によって得られるポリフェノール)等。
【0013】
(iii)低分子アミン
アンモニア;C2〜20の脂肪族モノまたはポリアミン[C2〜20のアルカノールアミン(モノ−、ジ−およびトリエタノールアミン、イソプロパノールアミン等)、C1〜20のアルキルアミン(n−ブチルアミン、オクチルアミン等)、C2〜6のアルキレンジアミン(エチレンジアミン、プロピレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン等)、C4〜20のポリアルキレンポリアミン(アルキレン基のCが2〜6のジアルキレントリアミン〜ヘキサアルキレンヘプタミン、例えば、ジエチレントリアミンおよびトリエチレンテトラミン)];C6〜20の芳香族モノまたはポリアミン(アニリン、フェニレンジアミン、トリレンジアミン、キシリレンジアミン、ジエチルトルエンジアミン、メチレンジアニリン、ジフェニルエーテルジアミン等)、C4〜20の脂環含有モノまたはポリアミン(シクロヘキシルアミン、イソホロンジアミン、シクロヘキシレンジアミン、ジシクロヘキシルメタンジアミン等)、C4〜20の複素環含有アミン(ピペラジン、アミノエチルピペラジン等)等。
【0014】
(a12)および(a13)のMnは、ミラブルウレタン樹脂(A)の耐熱性およびイソシアネート成分(b)との反応性の観点から好ましくは300〜6,000、さらに好ましくは500〜5,000である。
【0015】
ポリオール(a1)の不飽和基濃度は、後述するミラブルウレタンゴムの機械強度およびゴム弾性、柔軟性の観点から好ましくは1×10-4〜80×10-4当量/g、さらに好ましくは2×10-4〜60×10-4当量/gである。
【0016】
本発明におけるポリオール成分(a)には、さらに上記(a11)〜(a13)以外の高分子ポリオールおよび低分子ポリオールを含有させることができる。
高分子ポリオールとしては、Mn1,000〜8,000、例えば前記(i)低分子ポリオール、(ii)多価フェノールおよび(iii)低分子アミンのAO(前記のもの)および/またはラクトン(C4〜15)付加物、および(i)とポリカルボン酸の(重)縮合物(ポリエステルポリオール)等のポリオールが挙げられる。これらの高分子ポリオールは、単独で、または併用して使用することができる。
【0017】
上記ラクトン(C4〜15)としては、例えばδ−バレロラクトン 、β−メチル−δ−バレロラクトン 、ε−カプロラクトン 、α−メチル−ε−カプロラクトン 、β−メチル−ε−カプロラクトン 、γ−メチル−ε−カプロラクトン 、β,δ−ジメチル−ε−カプロラクトン 、3,3,5−トリメチル−ε−カプロラクトン 、エナントラクトン、ドデカノラクトン等が挙げられる。
【0018】
上記ポリカルボン酸としては、ジカルボン酸〔脂肪族ジカルボン酸[C2〜30、例え
ばシュウ酸、コハク酸、アジピン酸、セバシン酸、ドデセニルコハク酸、アゼライン酸、セバシン酸、ドデカンジカルボン酸、オクタデカンジカルボン酸、マレイン酸、フマール酸、ダイマー酸、アルケニルコハク酸(ドデセニルコハク酸、ペンタデセニルコハク酸、オクタデセニルコハク酸等)、アルキルコハク酸(デシルコハク酸、ドデシルコハク酸、オクタデシルコハク酸等)]、芳香族ジカルボン酸(C8〜20、例えばフタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、ナフタレンジカルボン酸)]等〕;3価またはそれ以上のポリカルボン酸[脂肪族トリカルボン酸(C6〜20、例えばトリカルバリル酸、ヘキサントリカルボン酸)、芳香族トリ−およびテトラカルボン酸(C9〜12、例えばトリメリット酸、ピロメリット酸)等]等が挙げられる。
【0019】
低分子ポリオールとしては、前記(i)および、前記(i)、(ii)および(iii)のAO(前記のもの)および/またはラクトン(前記のもの)付加物、および前記ポリエステルポリオール等のポリオール(Mn1,000未満)が挙げられる。これらの低分子ポリオールは、単独で、または併用して使用することができる。
【0020】
ポリオール成分(a)中の(a1)の割合は、後述するミラブルウレタンゴムの機械強度およびゴム弾性、柔軟性の観点から好ましくは5〜95重量%、さらに好ましくは10〜90重量%である。
【0021】
イソシアネート成分(b)には、以下のポリ(n=2〜3、好ましくは2)イソシアネートが含まれる。
(b1)芳香族ポリイソシアネート
C(イソシアネート基中の炭素を除く、以下同様。)6〜20、例えばトリレンジイソシアネート(ジイソシアネートは以下においてDIと略記)(TDI)、4,4’−および/または2,4’−ジフェニルメタンDI(MDI)、ナフチレンDI(NDI);
(b2)芳香脂肪族ポリイソシアネート
C8〜15、例えばジエチルベンゼンDI、m−および/またはp−キシリレンDI(XDI)、α,α,α’,α’−テトラメチルキシリレンDI(TMXDI);
(b3)脂肪族ポリイソシアネート
C2〜18、例えばエチレンDI、テトラメチレンDI、ヘキサメチレンDI(HDI)、ドデカメチレンDI、2,2,4−トリメチルヘキサンDI、リジンDI、2,6−ジイソシアナトメチルカプロエート、ビス(2−イソシアナトエチル)フマレート、ビス(2−イソシアナトエチル)カーボネート;
(b4)脂環式ポリイソシアネート
C4〜15、例えばイソホロンDI(IPDI)、ジシクロヘキシルメタン−4,4’−DI(水添MDI)、シクロヘキサンDI、メチルシクロヘキサンDI(水添TDI)、ビス(2−イソシアネートエチル)4−シクロヘキセン−1,2−ジカルボキシレート;
(b5)上記ポリイソシアネートの変性(カーボジイミド変性、ウレトジオン変性、ウレトイミン変性、ウレア変性、ビューレット変性、イソシアヌレート変性等)物。
これらのうち耐熱性および耐水性の観点から好ましいのは、芳香族ポリイソシアネートおよび脂環式ポリイソシアネート、さらに好ましいのは芳香族DIおよび脂環式DI、とくに好ましいのはTDI、4,4’−および/または2,4’−MDI、IPDIおよび水添MDIである。
【0022】
ミラブルウレタン樹脂(A)の製造に際して、イソシアネート成分(b)とポリオール成分(a)との反応割合[NCO/OH当量比]は、後述するミラブルウレタンゴムの機械強度および成形性の観点から好ましくは0.8/1〜1.0/1、さらに好ましくは0.9/1〜0.98/1である。該反応割合は、最終的な反応割合であり、後述する製造方法(ワンショット法またはプレポリマー法)の違いで通常変わることはない。
【0023】
ミラブルウレタン樹脂(A)の製造方法としては、通常用いられる方法(ワンショット法、プレポリマー法等)が挙げられ、これらのうち、(A)の品質のばらつきが少ない観点から好ましいのはプレポリマー法である。次にプレポリマー法による製造方法を例示する。
まず、ポリオール成分(a)の一部とイソシアネート成分(b)を、好ましくは1.2/1〜10.0/1のNCO/OH当量比にて、70〜150℃で常法によりウレタン化反応させてイソシアネート基両末端プレポリマーを得る。該プレポリマー中のイソシアネート基含有量[NCO含量(重量%)]は、ミラブルウレタン樹脂の高分子量化および分子量分布の安定化の観点から好ましくは2〜15%、さらに好ましくは3〜10%である。
次に、該プレポリマーと上記ポリオール成分(a)の残部を混合して、60〜110℃の融点を有する熱可塑性樹脂フィルム(B)の面上または袋中にてウレタン化反応させ[反応割合は前記の最終的な反応割合となるように反応させる。]、硬化炉にて、好ましくは50〜100℃、さらに好ましくは60〜90℃で、0.5〜10時間硬化させることによりミラブルウレタン樹脂(A)を得る。熱可塑性樹脂フィルム(B)の面上で反応、硬化させる方法には、該フィルムを成形型の上型、下型の内面に貼り付けてミラブルウレタン樹脂(A)を成形する方法も含まれる。
【0024】
(B)の融点は、60〜110℃、好ましくは70〜100℃である。(B)の融点が60未満ではウレタン化反応熱で(B)が融けてしまい、110℃を超えるとミラブルウレタンゴムの製造時に(B)が融け残りミラブルウレタンゴムの成形性および機械物性が悪化する。
【0025】
(B)としては、ポリオレフィン樹脂〔ポリエチレン[高密度ポリエチレン(以下HDPEと略記)、低密度ポリエチレン(以下LDPEと略記)、直鎖状低密度ポリエチレン(以下LLDPEと略記)等]、ポリプロピレン等〕、ポリスチレン樹脂、アクリル樹脂(例えば、ポリメチルメタクリレート等)、ポリエステル樹脂(ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート等)、ポリアミド樹脂(ナイロン6、ナイロン11、ナイロン12、ナイロン66等)、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン樹脂(以下ABS樹脂と略記)、エチレン−酢酸ビニル共重合樹脂(以下EVAと略記)、塩素化ポリオレフィン樹脂(ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン等)およびポリブタジエン樹脂(以下PBDと略記)[1,4−および/または1,2−ポリブタジエン樹脂]等が挙げられる。
これらのうち、後述のミラブルウレタンゴム製造時の加硫剤と反応してミラブルウレタンゴムのマトリックスに取り込まれ、機械物性に寄与するとの観点から好ましいのは不飽和結合を有するもの、さらに好ましいのはPBD、特に好ましいのは1,2−PBDである。
【0026】
ミラブルウレタン樹脂(A)の重量に基づく熱可塑性樹脂フィルム(B)の割合は、使用前のフィルム強度および後述するミラブルウレタンゴムの耐熱性の観点から好ましくは0.01〜10%、さらに好ましくは0.2〜8%、とくに好ましくは0.1〜5%である。
【0027】
(B)中にはフィルムの粘着性抑制およびフィルムの強度向上の観点から、必要により滑剤および充填剤を含有させることができる。滑剤としては、脂肪酸アミド[飽和脂肪酸アミド(C4〜30、例えばステアリン酸アミド、ラウリル酸アミド)、不飽和脂肪酸アミド(C4〜30、例えばオレイン酸アミド、リノール酸アミド)等]、脂肪酸アルカリ金属塩[飽和脂肪酸(C4〜30、例えばステアリン酸、ラウリル酸)および不飽和脂肪酸(C4〜30、例えばオレイン酸、リノール酸)のアルカリ金属(例えば、カルシウム、マグネシウム、亜鉛)塩等]等が挙げられる。
充填剤としては、カーボンブラック、タルク、炭酸カルシウム、無水ケイ酸、含水ケイ酸およびクレー等が挙げられる。
(B)の重量に基づくらの使用量は、滑剤は通常10%以下、好ましくは0.1〜5%
、充填剤は通常10%以下、好ましくは0.1〜5%である。
【0028】
ミラブルウレタン樹脂(A)の製造に際しては、必要により種々のウレタン化反応触媒を使用することができる。
該触媒としては、3級アミン[C6〜20、例えばトリエチルアミン、トリエチレンジアミン、ビス(ジメチルアミノエチル)エーテル、N−メチルモルホリン、ジメチルアミノメチルフェノール、N−メチル−N−ジメチルアミノエチルピペラジン、ピリジン等]およびこれらの酸ブロック化合物、カルボン酸(C2〜20)の金属塩(酢酸ナトリウム、オクチル酸鉛、オクチル酸亜鉛、オクチル酸鉄、オクチル酸ビスマス、ナフテン酸鉄、ナフテン酸コバルト、スタナスオクトエート、ジブチルチンジラウレート等)、アルカリ金属またはアルカリ土類金属のアルコキシドまたはフェノキシド(C1〜12、例えばナトリウムメトキシド、ナトリウムフェノキシド)、4級アンモニウム塩(C4〜12、例えばテトラエチルヒドロキシルアンモニウム)、イミダゾール化合物(C3〜12、例えばイミダゾール、2−エチル−4−メチルイミダゾール)、キレート金属塩(C5〜20、例えばアセチルアセトン亜鉛、アセチルアセトン鉄)、およびスズ、アンチモン等の金属を含有する有機金属化合物(C3〜30、例えばテトラフェニルスズ、トリブチルアンチモンオキサイド)等が挙げられる。これらの触媒は、単独で、または併用して使用することができる。
ウレタン化反応触媒の使用量は、(A)の重量に基づいて通常5%以下、好ましくは0.001〜3%である。
【0029】
本発明のミラブルウレタンゴムは、ミラブルウレタン樹脂(A)と加硫剤、または該ミラブルウレタン樹脂(A)、加硫剤にさらに必要により高分子弾性体を加え混練してなるものである。
加硫剤としては、通常ゴムの加硫に用いられるものでよく、イオウ、塩化イオウ、有機過酸化物(C4〜24、例えばベンゾイルパーオキシド、ジクミルパーオキシド、メチルエチルケトンパーオキシド、ラウリルパーオキシド、シクロヘキサノンパーオキシド、t−ブチルパーベンゾエート、t−ブチルヒドロパーオキシド、t−ブチルベンゼンパーオキシド、クメンヒドロパーオキシド、t−ブチルパーオクトエート)、オキシム(C6〜20、例えばp−キノンジオキシム、p,p’−ジベンゾイルキノンジオキシム)、金属酸化物(マグネシア、リサージ等)、アルキルフェノール樹脂〔商品名「タッキロール201」[田岡化学工業(株)製]等〕、ポリチオール化合物[TMPトリチオグリコレート、TMPトリ(3−メルカプトプロピオネート)、グリコールジメルカプトプロピオネート、グリコールジメルカプトアセテート、PEテトラチオグリコレート、ジPEヘキサ(3−メルカプトプロピオネート)等]、ポリアミン化合物(アルデヒド−アミン縮合物、グアニジン化合物等)、アゾ化合物(アゾビスイソブチロニトリル、2−t−ブチルアゾ−2−シアノ−4−メチルペンタン、4−t−ブチルアゾ−4−シアノ−吉草酸等)等が挙げられる。これらの加硫剤は1種または2種以上を適宜組み合わせて用いることができる。
これらの加硫剤のうちで好ましいのは、取り扱いの容易さ等の観点から、硫黄、硫黄と他の加硫剤との併用および過酸化物、さらに好ましいのは硫黄である。
加硫剤の使用量は、(A)の重量に基づいて通常0.1〜10%、好ましくは0.5〜8%である。
【0030】
高分子弾性体としては、天然ゴム、合成ゴム[スチレンブタジエンゴム(SBR)、ブタジエンゴム(BR)、イソプレンゴム、ブチルゴム、クロロプレンゴム(CR)、アクリロニトリル−ブタジエンゴム(NBR)、エチレン−プロピレン−ジエンゴム、ブチルゴム等]およびそれらの再生ゴム等が挙げられる。
【0031】
上記高分子弾性体のうち、ミラブルウレタン樹脂(A)との相溶性の観点から好ましい
のは、溶解度パラメーター(Fedors法による溶解度パラメーター。以下SP値と略記。)が8.4以上の合成ゴムであり、さらに好ましいのは、SBR、CR、およびNBRである。
ここにおいて、SP値とは、下記のとおり凝集エネルギー密度と分子容の比の平方根で表されるものである。

[SP]=(△E/V)1/2

式中、△Eは凝集エネルギー密度、Vは分子容を表す。Robert F.Fedor
sらにより計算されたSP値は、例えば、Polymer engineering a
nd science 第14巻、147〜154頁に記載されている。
高分子弾性体の使用量は、(A)の重量に基づいて通常60%以下、ミラブルウレタンゴムの押出成形性の観点から好ましくは1〜50%である。
【0032】
本発明のミラブルウレタンゴムには、本発明の効果を阻害しない範囲で、必要により、上記充填剤、顔料、軟化剤、加硫促進剤、加硫促進助剤、ファクチス、老化防止剤および脱水剤からなる群から選ばれる1種または2種以上のゴム用添加剤を含有させることができる。
【0033】
顔料としては、無機顔料(酸化チタン、ベンガラ、黄鉛、硫化カドミウム、群青等)、および有機顔料(アゾ系、フタロシアニン系、キナクリドン系、ジオキサジン系等)等;軟化剤としては、潤滑油、脂肪酸油、鉱物油(パラフィン系オイル、ナフテン系オイル、芳香族系オイル、石油アスファルト等)、タール系軟化剤(タール、クマロン−インデン樹脂等)、エステル系軟化剤(フタル酸誘導体オイル、アジピン酸誘導体オイル、安息香酸誘導体オイル、セバシン酸誘導体オイル、マレイン酸誘導体オイル、フマル酸誘導体オイル、トリメリット酸誘導体オイル、クエン酸誘導体オイル、オレイン酸誘導体オイル、リシノール酸誘導体オイル、ステアリン酸誘導体オイル、リン酸誘導体オイル、グリコール酸誘導体オイル等)、合成樹脂系軟化剤(フェノール−ホルムアルデヒド樹脂、キシレン−ホルムアルデヒド樹脂、ポリエステル樹脂、エポキシ樹脂等)等;
【0034】
加硫促進剤としては、グアニジン化合物(ジフェニルグアニジン、ジオルソトリルグアニジン等)、チアゾール化合物(2−メルカプトベンゾチアゾール、ジベンゾチアジルジスルフィド等)、チウラム化合物(テトラメチルチウラムジスルフィド、テトラエチルチウラムジスルフィド、テトラメチルチウラムモノスルフィド、ジペンタメチレンチウラムテトラスルフィド等)、スルフェンアミド化合物(N−シクロヘキシル−2−ベンゾチアゾールスルフェンアミド、N−t−ブチル−2−ベンゾチアゾールスルフェンアミド等)、金属化合物(ジブチルジチオカルバミン酸亜鉛、2−メルカプトベンゾチアゾール亜鉛塩、ジベンゾチアジルジスルフィド塩化亜鉛錯体等)等;
加硫促進助剤としては、C8〜24の脂肪酸およびその誘導体(ステアリン酸、オレイン酸、ラウリル酸、ステアリン酸亜鉛等)、金属酸化物(酸化亜鉛等)、金属塩(炭酸亜鉛等)等;
【0035】
ファクチスとしては、黒サブ、白サブ、あめサブおよび無硫黄ファクチス等;
老化防止剤としては、アミン(N−フェニル−α−ナフチルアミン、N−フェニル−β−ナフチルアミン、N−フェニル−N’−イソプロピル−p−フェニレンジアミン、2,2,4−トリメチル−1,2−ジヒドロキノリン等)、アミンケトン(ジフェニルアミンとアセトンの反応物等)、前記ヒンダードフェノール化合物、ジチオカルバミン酸塩(ジブチルジチオカルバミン酸ニッケル等)等;
脱水剤としては、酸化カルシウム、硫酸カルシウム(半水石膏)、塩化カルシウム、モレキュラーシーブ等、が挙げられる。
【0036】
ミラブルウレタンゴムの全重量に基づく上記ゴム用添加剤全体の使用量は、通常100%以下、好ましくは0.01〜60%である。
各ゴム用添加剤の使用量は、充填剤は、通常60%以下、好ましくは5〜50%;顔料は、通常5%以下、好ましくは0.1〜2%;軟化剤は、通常20%以下、好ましくは3〜10%;加硫促進剤、加硫促進助剤、ファクチス、老化防止剤および脱水剤は、それぞれ通常5%以下、好ましくは0.1〜3%である。
【0037】
本発明のミラブルウレタンゴムは、例えばバンバリーミキサーまたはニーダーを用いて、ミラブルウレタン樹脂(A)、および必要により高分子弾性体、上記ゴム用添加剤の一部(軟化剤、加硫促進助剤、老化防止剤等)等を混練後の温度が80〜120℃になるように混練した後、加硫剤および必要により加硫促進剤、残りのゴム用添加剤、およびその他の添加剤(脱水剤等)をロール上で外観が均一になるまで混練し、押出成形またはプレス成形することにより得られる。
成形温度は加硫剤の種類により設定されるが、加硫時間の短縮およびミラブルウレタンゴムの機械強度の観点から好ましくは140〜200℃である。
【0038】
以下実施例により本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。なお、以下において部は重量部、%は重量%を表す
【0039】
以下の実施例および比較例で使用した原料の組成、記号は次の通りである。
ポリアルキレンポリオール(1):ポリテトラメチレングリコール(Mn1,000)
ポリアルキレンポリオール(2):ビスフェノールAのPO付加物(Mn2,000)
ポリエステルポリオール (1):ポリカプロラクトン(Mn2,000)[商品名「プラクセル220」、ダイセル化学工業(株)製]
吸着剤:合成珪酸マグネシウム[商品名「キョーワード600」、協和化学工業(株)製]
触媒 (1):オクチル酸鉛
PBDフィルム(B−1):厚さ0.04mm、幅500mm、長さ800m mの1,2−PBDフィルム製袋(融点90℃)[商品名「M ELBAG−M」、JSRトレーディング(株)製]
PBDフィルム(B−2):厚さ0.04mm、幅500mm、長さ800m mの1,2−PBDフィルム製袋(融点68℃)[商品名「M ELBAG−SS」、JSRトレーディング(株)製]
LDPEフィルム(B−3):LDPEペレット(融点106℃)[商品名「U
BEポリエチレンJ2516」、宇部丸善ポリエチレン(株) 製]を0.04mmのフィルムにし、幅500mm、長さ8 00mmの袋状にした成形品
LLDPEフィルム(B−4):LLDPEペレット(融点122℃)[商品名
「スミカセン−L FS240」、住友化学(株)製]を0. 04mmのフィルムにし、幅500mm、長さ800mmの 袋状にした成形品
高分子弾性体(1):SBR[商品名「JSR SL552」、JSR(株)製]
充填剤 (1):カーボンブラック[商品名「旭#50」、旭カーボン(株)
製]
加硫促進助剤(1):ステアリン酸
(2):酸化亜鉛
軟化剤 (1):芳香族系鉱物油[商品名「ダイナプロセスオイルAC−
460」、出光興産(株)製]
(2):ジプロピレングリコールジベンゾエート[商品名「アデ
カサイザーPN6120」、旭電化工業(株)製]
加硫剤 (1):硫黄
加硫促進剤 (1):ジベンゾチアジルジスルフィド
(2):2−メルカプトベンゾチアゾール
【0040】
製造例1
ポリアルキレンポリオール(1)5,000部とIPDI2,050部を120℃で3時間反応させてNCO含量が5.0%のプレポリマー(b−1)を得た。
【0041】
製造例2
ポリアルキレンポリオール(2)5,000部とIPDI2,050部を120℃で3時間反応させてNCO含量が8.0%のプレポリマー(b−2)を得た。
【0042】
製造例3
ポリエステルポリオール(1)5,000部とIPDI2,050部を120℃で3時間反応させてNCO含量が8.0%のプレポリマー(b−3)を得た。
【0043】
製造例4
ポリアルキレンポリオール(1)5,000部と4,4’−MDI2,350部を80℃で3時間反応させてNCO含量が5.0%のプレポリマー(b−4)を得た。
【0044】
製造例5
ポリアルキレンポリオール(2)5,000部と4,4’−MDI2,390部を80℃で3時間反応させてNCO含量が8.0%のプレポリマー(b−5)を得た。
【0045】
製造例6
十分に乾燥した耐圧反応容器にGRモノアリルエーテル262部、水酸化カリウム0.2部を仕込み、密閉した後、100℃で減圧脱水を行い、水分0.05%以下であることを確認した。減圧下、容器内温度を95℃まで冷却してから、PO738部を90〜100℃の範囲で釜下から導入し、2時間、90〜100℃で反応させた。70℃まで冷却した後、反応容器上部から窒素を吹き込み、気相酸素濃度0%の雰囲気下、1%の水を加えて撹拌、混合した。次いで吸着剤5部を加えて70〜80℃で撹拌混合して水酸化カリウム触媒を吸着処理し、窒素加圧下(気相酸素濃度0%)でろ過した。2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェノール(酸化防止剤)0.5部を添加し、気相酸素濃度0%で加熱して95〜105℃範囲とし、その後減圧脱水した。水分が0.05%になった時点で直ちに冷却し、水酸基価224.4mgKOH/g(以下数値のみを示す。)の不飽和基含有ポリオール(a1−1)を得た。
【0046】
製造例7
製造例6において、GRモノアリルエーテル262部をDPG133部、およびPO738部をAGE226部とPO641部の混合物に代えたこと以外は製造例6と同様にして、水酸基価112.2の不飽和基含有ポリオール(a1−2)を得た。
【0047】
製造例8
製造例6において、GRモノアリルエーテル262部をDPG133部に代えて行い、さらにPO738部をAGE113部に代えて90〜100℃の範囲で釜下から導入し、2時間、90〜100℃で反応させた。次にEO317部とPO437部の混合物を、90〜100℃の範囲で釜下から導入し、2時間、90〜100℃で反応させた。その後は製造例6と同様にして、水酸基価112.2の不飽和基含有ポリオール(a1−3)を得た。
【0048】
製造例9
撹拌装置を備えた反応容器に不飽和基含有ポリオール(a1−1)270部、ポリアルキレンポリオール(1)67部、および触媒(1)2部を仕込んで撹拌、混合し、70℃に加熱した。次に70℃に温度調整したプレポリマー(b−1)1,000部を加え(NCO/OH当量比=0.98/1)、撹拌した後、直ちにPBDフィルム(B−1)(袋)中に流し込み、密閉とした後に80℃で10時間反応させてミラブルウレタン樹脂(A−1)を得た。(A−1)の重量に基づく(B−1)の割合は2.2%であった。
【0049】
製造例10
製造例9において、不飽和基含有ポリオール(a1−1)270部、ポリアルキレンポリオール(1)67部に代えて、不飽和基含有ポリオール(a1−2)304部、ポリアルキレンポリオール(1)304部、およびPBDフィルム(B−1)に代えて、LDPEフィルム(B−3)(袋)を用いた(NCO/OH当量比=0.98/1)こと以外は製造例9と同様に行い、ミラブルウレタン樹脂(A−2)を得た。(A−2)の重量に基づく(B−3)の割合は1.8%であった。
【0050】
製造例11
製造例9において、不飽和基含有ポリオール(a1−1)270部、ポリアルキレンポリオール(1)67部およびプレポリマー(b−1)1,000部に代えて、不飽和基含有ポリオール(a1−3)970部およびプレポリマー(b−2)1,000部を用いた(NCO/OH当量比=0.98/1)こと以外は製造例9と同様に行い、ミラブルウレタン樹脂(A−3)を得た。
(A−3)の重量に基づく(B−1)の割合は1.5%であった。
【0051】
製造例12
製造例9において、不飽和基含有ポリオール(a1−1)270部、ポリアルキレンポリオール(1)67部およびプレポリマー(b−1)1,000部に代えて、TMPモノアリルエーテル296部およびプレポリマー(b−3)1,000部を用いた(NCO/OH当量比=0.98/1)こと以外は製造例9と同様に行い、ミラブルウレタン樹脂(A−4)を得た。
(A−4)の重量に基づく(B−1)の割合は2.3%であった。
【0052】
製造例13
撹拌装置を備えた反応容器に不飽和基含有ポリオール(a1−1)54.5部、ポリアルキレンポリオール(1)13.5部、および触媒(1)0.04部を仕込んで撹拌、混合し、60℃に加熱した。次に60℃に温度調整したプレポリマー(b−1)201.9部にPBDフィルム(B−2)(袋)中に流し込み、密閉とした後に60℃で10時間反応させてミラブルウレタン樹脂(A−5)を得た。(A−5)の重量に基づく(B−2)の割合は10%であった。
【0053】
製造例14
製造例9において、不飽和基含有ポリオール(a1−1)270部、ポリアルキレンポリオール(1)67部、プレポリマー(b−1)1,000部および触媒2部に代えて、不飽和基含有ポリオール(a1−2)3,040部、ポリアルキレンポリオール(1)3,040部、プレポリマー(b−4)10,000部および触媒20部を用いた(NCO/OH当量比=0.98/1)こと以外は製造例9と同様に行い、ミラブルウレタン樹脂(A−6)を得た。(A−6)の重量に基づく(B−1)の割合は0.2%であった。
【0054】
製造例15
製造例9において、不飽和基含有ポリオール(a1−1)270部、ポリアルキレンポリオール(1)67部およびプレポリマー(b−1)1,000部に代えて、TMPモノアリルエーテル296部およびプレポリマー(b−5)1,000部を用いた(NCO/OH当量比=0.98/1)こと以外は製造例9と同様に行い、ミラブルウレタン樹脂(A−7)を得た。
(A−7)の重量に基づく(B−1)の割合は2.2%であった。
【0055】
比較製造例1
製造例9において、PBDフィルム(B−1)をLLDPEフィルム(B−4)(袋)に代えたこと以外は製造例9と同様に行い、ミラブルウレタン樹脂(比A−1)を得た。(比A−1)の重量に基づく(B−4)の割合は2.2%であった。
【0056】
比較製造例2
撹拌装置を備えた混合容器にポリアルキレンポリオール(1)270部、ポリアルキレンポリオール(1)67部、および触媒(1)2部からなるポリオール成分を仕込み、窒素置換後、撹拌しながら70℃に加熱した。別の混合容器にプレポリマー(b−1)1,000部を入れ、窒素置換後、撹拌しながら70℃に加熱した。次に2つの混合容器からポンプを使い、ミキサー部を通して2軸押出機に、プレポリマー(b−1)とポリオール成分中のポリオールのNCO/OH当量比が0.98/1となるように混合液を連続的に供給した。2軸押出機の温度は210℃として、押出機よりミラブルウレタン樹脂(比A−2)をシート状に押出した。
【0057】
比較製造例3
製造例9において、不飽和基含有ポリオール(a1−1)270部、ポリアルキレンポリオール(1)67部、プレポリマー(b−1)1,000部およびPBDフィルム(B−1)に代えて、TMPモノアリルエーテル296部、プレポリマー(b−5)1,000部、LLDPEフィルム(B−4)に代えたこと以外は製造例9と同様に行い、ミラブルウレタン樹脂(比A−3)を得た。(比A−3)の重量に基づく(B−4)の割合は2.2%であった。
【0058】
比較製造例4
比較製造例2において、プレポリマー(b−1)1,000部に代えて、プレポリマー(b−4)1,000部を用いたこと以外は比較製造例2と同様に行い、ミラブルウレタン樹脂(比A−4)を得た。
【0059】
実施例1〜9
表1の組成に従って、配合成分のうちの<混練成分1>をバンバリーミキサーで10分間混練した。次に、<混練成分2>を加え、2本混練ロールで10分間混練した。混練物は、押出成形機を用いて断面がタテ20mm×ヨコ20mmの棒状に押出した後、160℃で10分間加熱してミラブルウレタンゴム(1)〜(9)を得た。
【0060】
比較例1〜4
表1の組成に従って、実施例1〜9と同様にして、ミラブルウレタンゴム(比1)〜(比4)を得た。
【0061】
実施例1〜9および比較例1〜4の各成形品について、押出成形性、断面状態を測定した。結果を表1に示す。試験法は以下のとおりである。
<試験法>
(1)押出成形性
ASTM D2230−96(2002)e1(B評価)に準じ、ガーベダイ(該ASTMで用いられる評価用口金。該口金から押し出される押出成形品について押出成形性が評価される。)押出成形品について、押出成形性を下記の基準で評価した。
<評価基準>
次の[1]、[2]の項目について上記ASTMに記載された評価基準に従った。
すなわち、[1]の評価結果と[2]の評価結果を順番に記載し、例えば、[1]と[2]のいずれかが優秀であれば評価は「10A」、[1]と[2]のいずれかが劣悪であれば評価は「1E」と記載する。
[1]30°エッジ部分の鋭さ並びに連続性
1(悪)〜10(良)の10段階で評価。
[2]表面の平滑性
A(良)〜E(悪)の5段階評価。
(2)断面状態
ミラブルウレタンゴム押出成形品を長さ方向に切断し、ミラブルウレタンゴム中にフィルムの融け残りがあるか目視で確認した。断面状態を下記の基準で評価した。
<評価基準>
○:フィルムの融け残りなし
×:フィルムの融け残りあり
(3)機械強度(引張強さ、伸び)
JIS K6251:2004記載の「加硫ゴム及び熱可塑性ゴム−引張特性の求め方」に従い、2mm厚にプレス成形したシートから3号ダンベル試験片を打ち抜き、測定した。
【0062】
【表1】

【0063】
実施例の結果から、本発明の製造方法で得られるミラブルウレタンゴムは、ミラブルウレタン樹脂製造時の架橋反応が起こらないために成形性に優れ、また、フィルムの融け残りがなく良好な機械物性を示し、とくに(B)としてPBDを用いたものがさらに優れた機械物性を示し、高分子弾性体を加えたものはさらに優れた成形性を示すことがわかる。
【産業上の利用可能性】
【0064】
本発明のミラブルウレタンゴムの製造方法は作業効率に優れ、得られるミラブルウレタンゴムは成形性に優れ、良好な機械物性を有することから、工業用ロール(紙搬送用ロール等)、工業用ベルト(搬送用ベルト等)、工業用シート(廃棄物処分場遮水シート等)等、の幅広い用途に好適に使用できる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
分子側鎖に少なくとも1個のエチレン性不飽和基を有するポリオールを含有してなるポリオール成分(a)とイソシアネート成分(b)との混合液を、60〜110℃の融点を有する熱可塑性樹脂フィルム(B)の面上または袋中で反応、硬化させてなるミラブルウレタン樹脂(A)に、加硫剤を加え、(B)を除去することなく溶融、混練して硬化させることを特徴とするミラブルウレタンゴムの製造方法。
【請求項2】
(A)の重量に基づく(B)の割合が、0.01〜10%である請求項1記載の製造方法。
【請求項3】
さらに、高分子弾性体を加えて溶融、混練
して硬化させることを特徴とする請求項1または2記載の製造方法。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか記載の製造方法で得られるミラブルウレタンゴム。
【請求項5】
請求項4記載のミラブルウレタンゴムからなる工業用ロール、ベルトまたはシート。

【公開番号】特開2008−179812(P2008−179812A)
【公開日】平成20年8月7日(2008.8.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−338029(P2007−338029)
【出願日】平成19年12月27日(2007.12.27)
【出願人】(000002288)三洋化成工業株式会社 (1,719)
【Fターム(参考)】