説明

ミラー駆動装置

【課題】本発明は、ミラー駆動装置に係り、ミラーで反射した光を遮断し難くして、ミラーで反射する光を広範囲な角度に亘って走査することにある。
【解決手段】基板と、光を反射するミラーと、基板に対してミラーを支持する梁と、電磁力によりミラーを基板の上面よりも上方へ浮上させるミラー浮上制御機構と、ミラー浮上制御機構によりミラーが基板の上面よりも上方へ浮上されている際に、該ミラーを該基板に対して傾斜させるミラー傾斜制御機構と、を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ミラー駆動装置に係り、特に、ミラーで反射する光を広範囲な角度に亘って走査するうえで好適なミラー駆動装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ミラーで反射する光を走査するミラー駆動装置が知られている(例えば、特許文献1参照)。このミラー駆動装置は、基板に対してミラーを支持する梁構造を備えている。この梁構造は、基板に接続する蛇行した第1アクチュエータと、基板に対して第1アクチュエータを介して支持される可動フレームと、可動フレームに接続して可動フレームに対してミラーを支持する蛇行した第2アクチュエータと、を有している。かかる梁構造において、第1アクチュエータと第2アクチュエータとは、互いに90度異なる方向に延びている。可動フレームは、第1アクチュエータの駆動により基板表面に対して平行に延びた軸を中心にして揺動することで、基板に対して傾斜する。また、ミラーは、第2アクチュエータの駆動により可動フレームの表面に対して平行に延びる軸を中心にして揺動することで、可動フレームに対して傾斜する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2003−181800号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、上記のミラー駆動装置においては、ミラーの中心が上下動することはなく、ミラーが基板表面と同レベルの高さで保持されながら傾斜する。かかる梁構造では、基板に対するミラーの傾斜角度が過度(例えば、45度以上)に大きくなると、ミラーで反射した光が梁構造の一部(例えば、可動アクチュエータや基板)に遮断される事態が生じ得る。従って、上記のミラー駆動装置では、ミラーで反射する光を広範囲な角度に亘って走査することができない。
【0005】
本発明は、上述の点に鑑みてなされたものであり、ミラーで反射した光を遮断し難くして、ミラーで反射する光を広範囲な角度に亘って走査することが可能なミラー駆動装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の目的は、基板と、光を反射するミラーと、前記基板に対して前記ミラーを支持する梁と、電磁力により前記ミラーを前記基板の上面よりも上方へ浮上させるミラー浮上制御機構と、前記ミラー浮上制御機構により前記ミラーが前記基板の上面よりも上方へ浮上されている際に、該ミラーを該基板に対して傾斜させるミラー傾斜制御機構と、を備えるミラー駆動装置により達成される。
【0007】
この態様の発明において、基板に対して梁を介して支持されるミラーは、ミラー浮上制御機構による電磁力により基板の上面よりも上方へ浮上され、かかる浮上時にミラー傾斜制御機構により基板に対して傾斜される。ミラーの傾斜がミラーが基板の上面よりも上方へ浮上した状態で行われると、ミラーによる光の反射を基板の上面よりも上方で行うことが可能となるため、ミラーで反射した光が広範囲な角度に亘って基板や梁などに遮断され難くなる。従って、本発明によれば、ミラーで反射する光を広範囲な角度に亘って走査することができる。
【0008】
尚、上記したミラー駆動装置において、前記ミラー浮上制御機構は、前記ミラーに配設される磁石と、前記基板側に前記磁石に対向して配置され、電流が流れることにより前記磁石と反発する電磁力を発生する電磁石と、前記ミラーの前記基板に対する高さが所定値となるように前記電磁石に流れる電流を制御する電流制御手段と、を有することとしてもよい。
【0009】
また、上記したミラー駆動装置において、前記ミラー浮上制御機構は、前記基板側に配設される磁石と、前記ミラーに前記磁石に対向して配置され、前記梁を介して電流が流れることにより前記磁石と反発する電磁力を発生する電磁コイルと、前記ミラーの前記基板に対する高さが所定値となるように前記電磁コイルに流れる電流を制御する電流制御手段と、を有することとしてもよい。
【0010】
また、上記したミラー駆動装置において、前記ミラー浮上制御機構は、前記基板側に配設され、電流が流れることにより電磁力を発生する電磁石と、前記ミラーに配設され、前記梁を介して電流が流れることにより電磁力を発生する電磁コイルと、前記ミラーの前記基板に対する高さが所定値となるように前記電磁石及び前記電磁コイルに流れる電流を制御する電流制御手段と、を有することとしてもよい。
【0011】
また、上記したミラー駆動装置において、前記ミラー傾斜制御機構は、前記ミラーに配設される磁石と、前記基板側に前記磁石に対向して配置され、電流が流れることにより前記磁石と反発する電磁力を発生する電磁石と、前記ミラーを前記基板に対して傾斜させるべき傾斜角度に応じて前記電磁石に流れる電流を制御する電流制御手段と、を有することとしてもよい。
【0012】
更に、上記したミラー駆動装置において、前記梁は、前記ミラーの前記基板に対する高さが前記所定値となり得るほどに変形可能であることとするのが好適である。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、ミラーで反射した光を遮断し難くして、ミラーで反射する光を広範囲な角度に亘って走査することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の第1実施例であるミラー駆動装置の上面図である。
【図2】本発明の第1実施例であるミラー駆動装置を図1に示すIII−IIIで切断した際の断面図である。
【図3】本発明の第1実施例であるミラー駆動装置の動作を説明するための図である。
【図4】ミラーへの入射光とミラーからの反射光との関係を表した図である。
【図5】本発明の第2実施例であるミラー駆動装置の上面図である。
【図6】本発明の第2実施例であるミラー駆動装置を図5に示すIV−IVで切断した際の断面図である。
【図7】本発明の第2実施例であるミラー駆動装置の動作を説明するための図である。
【図8】本発明の変形例であるミラー駆動装置の上面図である。
【図9】本発明の変形例であるミラー駆動装置を図8に示すV−Vで切断した際の断面図である。
【図10】本発明の変形例であるミラー駆動装置の動作を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、図面を用いて、本発明に係るミラー駆動装置の具体的な実施の形態について説明する。
【実施例1】
【0016】
図1は、本発明の第1実施例であるミラー駆動装置10の上面図を示す。また、図2は、本実施例のミラー駆動装置10を図1に示すIII−IIIで切断した際の断面図を示す。本実施例のミラー駆動装置10は、ミラーを用いて光(例えばレーザー光)を走査するミラースキャナであり、センサなどに用いられる。
【0017】
ミラー駆動装置10は、半導体からなる基板12と、光を反射する平板状のミラー14と、基板12に対してミラー14を支持する梁16と、を備えている。基板12は、四角形状に空いた孔20を有する枠状に形成されている。ミラー14は、四角形状に形成されており、基板12に空いた孔20の大きさ(面積)よりも小さな大きさ(面積)を有している。ミラー14は、基板12に空いた孔20内の略中央に配置される。
【0018】
梁16は、図1に示す如くクランク状に形成されており、ミラー14を基板12に支持するうえで複数(図1では4つ)設けられている。各梁16はそれぞれ、一端が基板12の孔20を囲む側壁に接続され、かつ、他端がミラー14の側壁に接続されている。梁16の他端が接続するミラー14の側壁は、その梁16の一端が接続する基板12の側壁に対向するミラー14の側壁ではなく、その対向する側壁とは法線が直交する側壁である。梁16は、ミラー14の基板12に対する高さが所定値に達するまでミラー14が基板12に対して上方(図2において上側)へ浮くのを許容し、かつ、その高さが所定値に達した状態でそのミラー14が基板12に対して所定角度まで傾斜するのを許容するように撓む(変形する)ことが可能である。このため、ミラー14は、梁16の変形により、基板12に対して、基板12の上面よりも上方へ浮上することが可能であると共に、傾斜することが可能である。
【0019】
ミラー14には、永久磁石22が配設されている。永久磁石22は、ミラー14の下面(図2において下側)の略中央に取り付けられている。永久磁石22は、ミラー14が基板12に対して浮く方向(すなわち上下方向)に磁化されている。
【0020】
ミラー14の下方には、第1の電磁石24が配設されている。第1の電磁石24は、基板12に対して固定されており、ミラー14下面の永久磁石22に対向するように配置されている。第1の電磁石24は、コントローラ30に電気的に接続されている。第1の電磁石24は、コントローラ30の指示により電流が流れることにより磁界を発生し、永久磁石22との間で反発する電磁力を発生する。永久磁石22と第1の電磁石24との間で電磁力が発生すると、ミラー14側の永久磁石22が基板12側の第1の電磁石24から離れるように反発することで、ミラー14が基板12に対して上方へ移動する。
【0021】
ミラー14の側方には、第2の電磁石26が配設されている。第2の電磁石26は、複数設けられており、基板12に対して固定されている。第2の電磁石26は、ミラー14を挟んで対を形成するように配置されている。対となる2つの第2の電磁石26は、ミラー14が傾斜すべき方向に沿ってミラー14を挟んで対向している。第2の電磁石26は、コントローラ30に電気的に接続されている。第2の電磁石26は、コントローラ30の指示により電流が流れることにより磁界を発生し、永久磁石22との間で電磁力を発生する。また、対となる2つの第2の電磁石26は、ミラー14が基板12に対して傾斜するように永久磁石22との間で電磁力を発生する。
【0022】
コントローラ30には、ミラー14の基板12に対する高さを検出するためのセンサが電気的に接続されている。このセンサは、例えば、梁16に配設される半導体ピエゾ抵抗による歪ゲージであって、梁16の撓み量に応じた信号をコントローラ30へ向けて出力する。コントローラ30は、このセンサの出力信号に基づいて、梁16の撓み量を算出し、ミラー14の基板12に対する高さを検出する。
【0023】
次に、図3及び図4を参照して、本実施例のミラー駆動装置10の動作について説明する。図3は、本実施例のミラー駆動装置10の動作を説明するための図を示す。尚、図3(A)にはミラー14の浮上前の状況を表す断面図を、図3(B)にはミラー14の浮上後の状況を表す断面図を、また、図3(C)にはミラー14が浮上後に傾斜する状況を表す断面図を、それぞれ示す。更に、図4は、ミラー14への入射光とミラー14からの反射光との関係を表した図を示す。
【0024】
第1の電磁石24及び第2の電磁石26に電流が流れていない場合は、図3(A)に示す如く、ミラー14が基板12の上面付近で水平に保持されている。コントローラ30は、ミラー14を所望の角度に傾斜させるのに、第1の電磁石24及び第2の電磁石26に電流を流通させる。第1の電磁石24に電流が流れると、第1の電磁石24の周囲に磁界が発生することで、その第1の電磁石24とミラー14下面の永久磁石22との間で反発する電磁力が発生する。かかる電磁力が発生すると、図3(B)に示す如く、永久磁石22が第1の電磁石24から離れるように反発することで、永久磁石22が配設されたミラー14が、梁16に支持されながら、基板12に対して上方へ移動し、基板12の上面よりも上方へ浮上する。
【0025】
コントローラ30は、第1の電磁石24に電流を流通させる場合、ミラー14の基板12に対する高さをフィードバック制御する。具体的には、上記したセンサの出力信号に基づいてミラー14の基板12に対する高さを検出し、そして、その検出したミラー14の基板12に対する高さに基づいて、その高さが予め定められた所定値になるように第1の電磁石24に流通させる電流を制御する。このため、ミラー14は、基板12に対して所定の高さまで浮上する。
【0026】
また、第2の電磁石26に電流が流れると、第2の電磁石26の周囲に磁界が発生することで、その第2の電磁石26とミラー14下面の永久磁石22との間で電磁力が発生する。対となる2つの第2の電磁石26それぞれで発生した電磁力が永久磁石22に作用すると、図3(C)に示す如く、永久磁石22が配設されたミラー14が、梁16に支持されながら、基板12に対して傾斜する。
【0027】
図4に示す如く基板12表面に対して直交する光がミラー14に入射するものとすると、その入射光はミラー14表面で反射されて反射光として進行する。入射光に対して反射光が進行する方向は、ミラー14の基板12に対する傾斜角度に応じたものとなる。ミラー14が基板12に対して傾斜する度合いが低いときすなわちミラー14の基板12に対する傾斜角度が鋭角であるときは、反射光と入射光とがなす角度は鋭角である。一方、ミラー14が基板12に対して傾斜する度合いが高いときすなわちミラー14の基板12に対する傾斜角度が鈍角であるときは、反射光と入射光とがなす角度は鈍角である。ミラー駆動装置10において光を走査することのできる範囲(光走査角度)は、ミラー14が基板12に対して傾斜可能な範囲(角度)に限られる。
【0028】
コントローラ30は、ミラー14の基板12に対する傾斜角度が所望の角度となるように第2の電磁石26に流通させる電流を制御する。このため、ミラー14は、基板12に対して所望の角度を保って傾斜する。
【0029】
上述の如くミラー14が基板12に対して所定の高さに浮上しかつ所望の角度を保って傾斜する状況で、光がミラー14に入射すると、その光はミラー14の基板12に対する傾斜角度に応じた方向へ反射されて進行する。
【0030】
本実施例のミラー駆動装置10において、ミラー14の基板12に対する傾斜は、図3(C)に示す如く、そのミラー14が基板12の上面よりも上方へ浮上した状態で行われる。かかる構造においては、ミラー14が光を反射する面を基板12の上面よりも上方に位置させることができ、ミラー14による光の反射を基板12の上面よりも上方で行うことができる。
【0031】
このため、ミラー14に入射した光をミラー14周辺に存在する基板12や梁16に遮断されることなく反射させるうえで、入射光と反射光との角度が90度未満に制限されるのが回避され、入射光と反射光とが90度以上の角度をなすことが許容されるので、ミラー14で反射した光が広範囲な角度に亘って、ミラー14周辺に存在する基板12や梁16に遮断され難くなる。従って、本実施例のミラー駆動装置10によれば、ミラー14で反射する光を広範な角度に亘って走査することができ、180度以上の光走査角度を実現することができる。
【0032】
尚、上記の第1実施例においては、永久磁石22、第1の電磁石24、及びコントローラ30が特許請求の範囲に記載した「ミラー浮上制御機構」に、永久磁石22、第2の電磁石26、及びコントローラ30が特許請求の範囲に記載した「ミラー傾斜制御機構」に、コントローラ30がミラー14の基板12に対する高さが予め定められた所定値になるように第1の電磁石24に流通させる電流を制御することが特許請求の範囲の請求項2に記載した「電流制御手段」に、コントローラ30がミラー14の基板12に対する傾斜角度が所望の角度となるように第2の電磁石26に流通させる電流を制御することが特許請求の範囲の請求項5に記載した「電流制御手段」に、それぞれ相当している。
【実施例2】
【0033】
上記した第1実施例では、永久磁石22をミラー14に配設しかつ第1の電磁石24を基板12側に配設する。これに対して、本発明の第2実施例においては、ミラー14に電磁コイルを配設しかつ基板12側に永久磁石22を配設することとしている。
【0034】
図5は、本発明の第2実施例であるミラー駆動装置100の上面図を示す。また、図6は、本実施例のミラー駆動装置100を図5に示すIV−IVで切断した際の断面図を示す。尚、図5及び図6において、上記した図1及び図2に示す構成と同一の構成部分については、同一の符号を付してその説明を省略又は簡略する。
【0035】
ミラー14の下方には、永久磁石102が配設されている。永久磁石102は、ミラー14が基板12に対して浮く方向(すなわち上下方向)に磁化されている。
【0036】
ミラー14には、電磁コイル104が配設されている。電磁コイル104は、ミラー14の表面に取り付けられている。電磁コイル104の両端は、梁16に配設された配線を介して、基板12に取り付けられた電極106,108に接続されている。電極106,108には、コントローラ110が電気的に接続されている。電磁コイル104は、コントローラ110の指示により電極106,108や配線等を通じて電流が流れることにより磁界を発生し、永久磁石102との間で反発する電磁力を発生する。永久磁石102と電磁コイル104との間で電磁力が発生すると、ミラー14側の電磁コイル104が基板12側の永久磁石102から離れるように反発することで、ミラー14が基板12に対して上方へ移動する。
【0037】
ミラー14の側方には、上記した第2の電磁石26と同様の機能を有する電磁石(図5及び図6では図示せず)が配設されている。この電磁石は、複数設けられており、基板12に対して固定されている。この電磁石は、ミラー14を挟んで対を形成するように配置されている。これら対となる2つの電磁石は、ミラー14が傾斜すべき方向に沿ってミラー14を挟んで対向している。この電磁石は、コントローラ110に電気的に接続されており、コントローラ110の指示により電流が流れることにより磁界を発生し、電磁コイル104との間で電磁力を発生する。また、これら対となる2つの電磁石は、ミラー14が基板12に対して傾斜するように電磁コイル104との間で電磁力を発生する。
【0038】
コントローラ110には、ミラー14の基板12に対する高さを検出するためのセンサが電気的に接続されている。このセンサは、例えば、梁16に配設される半導体ピエゾ抵抗による歪ゲージであって、梁16の撓み量に応じた信号をコントローラ110へ向けて出力する。コントローラ110は、このセンサの出力信号に基づいて、梁16の撓み量を算出し、ミラー14の基板12に対する高さを検出する。
【0039】
次に、図7を参照して、本実施例のミラー駆動装置100の動作について説明する。図7は、本実施例のミラー駆動装置100の動作を説明するための図を示す。尚、図7(A)にはミラー14の浮上前の状況を表す断面図を、図7(B)にはミラー14の浮上後の状況を表す断面図を、また、図7(C)にはミラー14が浮上後に傾斜する状況を表す断面図を、それぞれ示す。
【0040】
電磁コイル104及びミラー14側方の電磁石に電流が流れていない場合は、図7(A)に示す如く、ミラー14が基板12の上面付近で水平に保持されている。コントローラ110は、ミラー14を所望の角度に傾斜させるのに、電磁コイル104及びミラー14側方の電磁石に電流を流通させる。電磁コイル104に電流が流れると、電磁コイル104の周囲に磁界が発生することで、そのミラー14側の電磁コイル104と基板12側の永久磁石102との間で反発する電磁力が発生する。かかる電磁力が発生すると、図7(B)に示す如く、電磁コイル104が永久磁石102から離れるように反発することで、電磁コイル104が配設されたミラー14が、梁16に支持されながら、基板12に対して上方へ移動し、基板12の上面よりも上方へ浮上する。
【0041】
コントローラ110は、電磁コイル104に電流を流通させる場合、ミラー14の基板12に対する高さをフィードバック制御する。具体的には、上記したセンサの出力信号に基づいてミラー14の基板12に対する高さを検出し、そして、その検出したミラー14の基板12に対する高さに基づいて、その高さが予め定められた所定値になるように電磁コイル104に流通させる電流を制御する。このため、ミラー14は、基板12に対して所定の高さまで浮上する。
【0042】
また、ミラー14側方の電磁石に電流が流れると、その電磁石の周囲に磁界が発生することで、その電磁石とミラー14側の電磁コイル104との間で電磁力が発生する。対となる2つの電磁石それぞれで発生した電磁力が電磁コイル104に作用すると、図7(C)に示す如く、電磁コイル104が配設されたミラー14が、梁16に支持されながら、基板12に対して傾斜する。
【0043】
コントローラ110は、ミラー14の基板12に対する傾斜角度が所望の角度となるようにミラー14側方の電磁石に流通させる電流を制御する。このため、ミラー14は、基板12に対して所望の角度を保って傾斜する。
【0044】
上述の如くミラー14が基板12に対して所定の高さに浮上しかつ所望の角度を保って傾斜する状況で、光がミラー14に入射すると、その光はミラー14の基板12に対する傾斜角度に応じた方向へ反射されて進行する。
【0045】
本実施例のミラー駆動装置100においても、ミラー14の基板12に対する傾斜は、図7(C)に示す如く、そのミラー14が基板12の上面よりも上方へ浮上した状態で行われる。かかる構造においては、ミラー14が光を反射する面を基板12の上面よりも上方に位置させることができ、ミラー14による光の反射を基板12の上面よりも上方で行うことができる。
【0046】
このため、ミラー14に入射した光をミラー14周辺に存在する基板12や梁16に遮断されることなく反射させるうえで、入射光と反射光との角度が90度未満に制限されるのが回避され、入射光と反射光とが90度以上の角度をなすことが許容されるので、ミラー14で反射した光が広範囲な角度に亘って、ミラー14周辺に存在する基板12や梁16に遮断され難くなる。従って、本実施例のミラー駆動装置100においても、ミラー14で反射する光を広範な角度に亘って走査することができ、180度以上の光走査角度を実現することができる。
【0047】
尚、上記の第2実施例においては、永久磁石102、電磁コイル104、及びコントローラ110が特許請求の範囲に記載した「ミラー浮上制御機構」に、電磁コイル104、ミラー14側方の電磁石、及びコントローラ110が特許請求の範囲に記載した「ミラー傾斜制御機構」に、コントローラ110がミラー14の基板12に対する高さが予め定められた所定値になるように電磁コイル104に流通させる電流を制御することが特許請求の範囲の請求項3に記載した「電流制御手段」に、コントローラ110がミラー14の基板12に対する傾斜角度が所望の角度となるようにミラー14側方の電磁石に流通させる電流を制御することが特許請求の範囲の請求項5に記載した「電流制御手段」に、それぞれ相当している。
【0048】
尚、上記の第1及び第2実施例においては、ミラー14を基板12の上面よりも上方へ浮上させるのに、ミラー14側又は基板12側に永久磁石22,102を配設することとしたが、本発明はこれに限定されるものではなく、基板12側に電磁石24を配設した第1実施例とミラー14側に電磁コイル104を配設した第2実施例とを組み合わせることで、ミラー14側及び基板12側の双方に永久磁石22,102を配設することなく、ミラー14を基板12の上面よりも上方へ浮上させる構造を実現することとしてもよい(図8及び図9参照)。
【0049】
すなわち、本変形例のミラー駆動装置200においては、ミラー14の下方に、第1の電磁石24が配設されている。第1の電磁石24は、基板12に対して固定されている。第1の電磁石24は、コントローラ202に電気的に接続されている。また、ミラー14には、電磁コイル104が配設されている。電磁コイル104は、ミラー14の表面に取り付けられている。電磁コイル104の両端は、梁16に配設された配線を介して、基板12に取り付けられた電極106,108に接続されている。電極106,108には、コントローラ202が電気的に接続されている。
【0050】
第1の電磁石24は、コントローラ202の指示により電流が流れることにより磁界を発生する。また、電磁コイル104は、コントローラ202の指示により電極106,108や配線等を通じて電流が流れることにより磁界を発生する。第1の電磁石24及び電磁コイル104が共に磁界を発生すると、両者の間で反発する電磁力を発生する。第1の電磁石24と電磁コイル104との間で電磁力が発生すると、ミラー14側の電磁コイル104が基板12側の第1の電磁石24から離れるように反発することで、ミラー14が基板12に対して上方へ移動する。
【0051】
ミラー14の側方には、上記した第2の電磁石26と同様の機能を有する電磁石(図8及び図9では図示せず)が配設されている。この電磁石は、複数設けられており、基板12に対して固定されている。この電磁石は、ミラー14を挟んで対を形成するように配置されている。これら対となる2つの電磁石は、ミラー14が傾斜すべき方向に沿ってミラー14を挟んで対向している。この電磁石は、コントローラ202に電気的に接続されており、コントローラ202の指示により電流が流れることにより磁界を発生し、電磁コイル104との間で電磁力を発生する。また、これら対となる2つの電磁石は、ミラー14が基板12に対して傾斜するように電磁コイル104との間で電磁力を発生する。
【0052】
コントローラ202には、ミラー14の基板12に対する高さを検出するためのセンサが電気的に接続されている。このセンサは、例えば、梁16に配設される半導体ピエゾ抵抗による歪ゲージであって、梁16の撓み量に応じた信号をコントローラ202へ向けて出力する。コントローラ202は、このセンサの出力信号に基づいて、梁16の撓み量を算出し、ミラー14の基板12に対する高さを検出する。
【0053】
本変形例のミラー駆動装置200において,第1の電磁石24、電磁コイル104、及びミラー14側方の電磁石に電流が流れていない場合は、図10(A)に示す如く、ミラー14が基板12の上面付近で水平に保持されている。コントローラ202は、ミラー14を所望の角度に傾斜させるのに、第1の電磁石24、電磁コイル104、及びミラー14側方の電磁石に電流を流通させる。第1の電磁石24に電流が流れかつ電磁コイル104に電流が流れると、第1の電磁石24の周囲及び電磁コイル104の周囲に共に磁界が発生することで、基板12側の第1の電磁石24とミラー14側の電磁コイル104との間で反発する電磁力が発生する。かかる電磁力が発生すると、図10(B)に示す如く、電磁コイル104が第1の電磁石24から離れるように反発することで、電磁コイル104が配設されたミラー14が、梁16に支持されながら、基板12に対して上方へ移動し、基板12の上面よりも上方へ浮上する。
【0054】
コントローラ202は、電磁コイル104に電流を流通させる場合、ミラー14の基板12に対する高さをフィードバック制御する。具体的には、上記したセンサの出力信号に基づいてミラー14の基板12に対する高さを検出し、そして、その検出したミラー14の基板12に対する高さに基づいて、その高さが予め定められた所定値になるように電磁コイル104に流通させる電流を制御する。このため、ミラー14は、基板12に対して所定の高さまで浮上する。
【0055】
また、ミラー14側方の電磁石に電流が流れると、その電磁石の周囲に磁界が発生することで、その電磁石とミラー14側の電磁コイル104との間で電磁力が発生する。対となる2つの電磁石それぞれで発生した電磁力が電磁コイル104に作用すると、図10(C)に示す如く、電磁コイル104が配設されたミラー14が、梁16に支持されながら、基板12に対して傾斜する。
【0056】
コントローラ202は、ミラー14の基板12に対する傾斜角度が所望の角度となるようにミラー14側方の電磁石に流通させる電流を制御する。このため、ミラー14は、基板12に対して所望の角度を保って傾斜する。
【0057】
上述の如くミラー14が基板12に対して所定の高さに浮上しかつ所望の角度を保って傾斜する状況で、光がミラー14に入射すると、その光はミラー14の基板12に対する傾斜角度に応じた方向へ反射されて進行する。
【0058】
本変形例のミラー駆動装置200においても、ミラー14の基板12に対する傾斜は、図10(C)に示す如く、そのミラー14が基板12の上面よりも上方へ浮上した状態で行われる。かかる構造においては、ミラー14が光を反射する面を基板12の上面よりも上方に位置させることができ、ミラー14による光の反射を基板12の上面よりも上方で行うことができる。このため、ミラー14に入射した光をミラー14周辺に存在する基板12や梁16に遮断されることなく反射させるうえで、入射光と反射光との角度が90度未満に制限されるのが回避され、入射光と反射光とが90度以上の角度をなすことが許容されるので、ミラー14で反射した光が広範囲な角度に亘って、ミラー14周辺に存在する基板12や梁16に遮断され難くなる。従って、本変形例のミラー駆動装置200においても、ミラー14で反射する光を広範な角度に亘って走査することができ、180度以上の光走査角度を実現することができる。
【0059】
また、上記の第1及び第2実施例においては、梁16をクランク状に形成することとしたが、本発明はこれに限定されるものではなく、曲線状に形成することとしてもよい。ただし、その曲線状に形成される梁16は、ミラー14の基板12に対する高さが所定値に達するまでミラー14が基板12に対して上方(図2において上側)へ浮くのを許容し、かつ、その高さが所定値に達した状態でそのミラー14が基板12に対して所定角度まで傾斜するのを許容するように撓む(変形する)ことが可能であることが必要である。
【符号の説明】
【0060】
10,100,200 ミラー駆動装置
12 基板
14 ミラー
16 梁
22,102 永久磁石
24 第1の電磁石
26 第2の電磁石
30,110,202 コントローラ
104 電磁コイル


【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板と、
光を反射するミラーと、
前記基板に対して前記ミラーを支持する梁と、
電磁力により前記ミラーを前記基板の上面よりも上方へ浮上させるミラー浮上制御機構と、
前記ミラー浮上制御機構により前記ミラーが前記基板の上面よりも上方へ浮上されている際に、該ミラーを該基板に対して傾斜させるミラー傾斜制御機構と、
を備えることを特徴とするミラー駆動装置。
【請求項2】
前記ミラー浮上制御機構は、
前記ミラーに配設される磁石と、
前記基板側に前記磁石に対向して配置され、電流が流れることにより前記磁石と反発する電磁力を発生する電磁石と、
前記ミラーの前記基板に対する高さが所定値となるように前記電磁石に流れる電流を制御する電流制御手段と、
を有することを特徴とする請求項1記載のミラー駆動装置。
【請求項3】
前記ミラー浮上制御機構は、
前記基板側に配設される磁石と、
前記ミラーに前記磁石に対向して配置され、前記梁を介して電流が流れることにより前記磁石と反発する電磁力を発生する電磁コイルと、
前記ミラーの前記基板に対する高さが所定値となるように前記電磁コイルに流れる電流を制御する電流制御手段と、
を有することを特徴とする請求項1記載のミラー駆動装置。
【請求項4】
前記ミラー浮上制御機構は、
前記基板側に配設され、電流が流れることにより電磁力を発生する電磁石と、
前記ミラーに配設され、前記梁を介して電流が流れることにより電磁力を発生する電磁コイルと、
前記ミラーの前記基板に対する高さが所定値となるように前記電磁石及び前記電磁コイルに流れる電流を制御する電流制御手段と、
を有することを特徴とする請求項1記載のミラー駆動装置。
【請求項5】
前記ミラー傾斜制御機構は、
前記ミラーに配設される磁石と、
前記基板側に前記磁石に対向して配置され、電流が流れることにより前記磁石と反発する電磁力を発生する電磁石と、
前記ミラーを前記基板に対して傾斜させるべき傾斜角度に応じて前記電磁石に流れる電流を制御する電流制御手段と、
を有することを特徴とする請求項1記載のミラー駆動装置。
【請求項6】
前記梁は、前記ミラーの前記基板に対する高さが前記所定値となり得るほどに変形可能であることを特徴とする請求項1記載のミラー駆動装置。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2012−68309(P2012−68309A)
【公開日】平成24年4月5日(2012.4.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−210931(P2010−210931)
【出願日】平成22年9月21日(2010.9.21)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】