説明

ムスカリン様アンタゴニスト

【課題】ムスカリン様アンタゴニストを提供すること。
【解決手段】式(I)に従うジ-N-置換ピペラジン化合物または1,4-置換ピペラジン化合物は、アルツハイマー病のような認識障害を処置するのに有用なムスカリン様アンタゴニストである。アセチルコリンエステラーゼインヒビターと上記の式を有する化合物との相乗的組み合わせがまた、開示される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
発明の分野
本発明は、認識障害の処置において有用であるジ-N-置換ピペラジンおよび1,4-ジ-置換ピペリジン、この化合物を含む薬学的組成物、この化合物を使用する処置方法に関し、そして、上記化合物とアセチルコリンエステラーゼインヒビターとの組み合わせの使用に関する。
【背景技術】
【0002】
発明の背景
アルツハイマー病および他の認識障害は、最近多くの注目を集めてきたが、これらの疾患に対する処置は依然として成功していない。Melchiorreら(J.Med.Chem.(1993),36,3734-3737)によると、m2ムスカリン様レセプターを選択的にアンタゴナイズする化合物は、特にm1ムスカリン様レセプターに関して、認識障害に対する活性を有するはずである。Baumgoldら(Eur.J.ofPharmacol.、251、(1994)315-317)は、高度に選択的なm2ムスカリン様アンタゴニストとして、3-α-クロロインペリアリン(3-α-chloroimperialine)を開示する。
【0003】
本発明は、ジ-N-置換ピペラジンおよび1,4-ジ-置換ピペリジンのクラスの発見を予期する。Logemannら(Brit.J.Pharmacol.(1961)、17、286-296)は、特定のジ-N-置換ピペラジンを記載するが、これらは本発明の創造的な化合物とは異なる。さらに、Logemannらの化合物は、認識障害に対する活性を有することを開示していない。
【0004】
特許文献1(1993年5月13日に公開された(Smith-KlineBeecham))は、とりわけエンドセリンレセプターアンタゴニストであり、以下の式(部分的に)であるインダン誘導体を開示する:
【0005】
【化1】

ここで:
R1は、-X(CH2)nArまたは-X(CH2)nR8であり;
R2は、HまたはArであり;
P1は、-X(CH2)nR8であり;
P2は、-X(CH2)nR8または-XR9Yであり;
R8は、H、アルキル、アルケニル、アルキニル、CO2H、CO2アルキル、またはCO2Arであり;
R9はアルキル、アルケニル、またはフェニルであり;
R10はH、アルキル(これは、CO2H、CO2アルキル、またはCO2(CH2)nArで置換され得る)、アルケニル、フェニル、OH、アルコキシ、S(O)qアルキル、S(O)qアルケニル、S(O)qアリール、NH2、NHアルキル、N(アルキル)2、F、Cl、Br、I、CF3、NHCHO、NHCOアルキル、-X(CH2)nR8、または-XR9Yであり;
Xは、(CH2)n、O、NH、Nアルキル、またはS(O)qであり;
Yは、CH3またはX(CH2)nArであり;
Arは、ピペリジニルおよびピペラジニルを含む置換されたまたは置換されていない、種々のヘテロ環式基および芳香族炭化水素基であり、これは以下の置換基を保有し得る;
Z1およびZ2は個々にH、アルキル、アルケニル、アルキニル、OH、アルコキシ、S(O)qアルキル、NH2、NHアルキル、N(アルキル)2、F、Cl、Br、I、CF3、NHCHO、NHCOアルキル、-X(CH2)nR8、フェニル、ベンジル、またはシクロアルキルであり;
Z3は、Z1または-XR9Yであり;
nは0または1〜6の整数であり、およびqは0、1、または2であり;
および、「アルキル」、「アルケニル」、「アルキニル」、または「フェニル」と称される基は全て置換され得る。
【0006】
(この特許で与えられるようなラジカルの定義は、同様の記号が使用され得るが、一般的に本発明に関係しない。)
【特許文献1】国際公開第WO93/08799号パンフレット
【発明の開示】
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の要旨
本発明は、以下の構造式を有する化合物(その立体異性体、あるいはその薬学的に受容可能な塩、エステルまたは溶媒和化合物を含む)に関し、
【0008】
【化2】

ここで:
Zは、N、CH、またはC−アルキルであり;
Xは、−O−、−S−、−SO−、−SO−、−CO−、−CH−、−CONR20−、−NR20−SO−、−NR20CO−、または−SO−NR20−であり;
Qは、−O−、−S−、−SO−、−SO−、または−CH−であり、
Rは、
【0009】
【化3】

およびR21は、水素、アルキル、アルケニル、シクロアルキル、シクロアルケニル、シクロアルキルアルキル、シクロアルケニルアルキル、フェニルアルキル、およびヒドロキシアルキルからなる群から独立して選択される;
は、シクロアルキル、1から3の独立的に選択されるR基によって置換されたシクロアルキル、シクロアルケニル、シクロアルキルアルキル、
【0010】
【化4】

(ここで、Rは、H、アルキル、アルケニル、SOまたはCORであり、ここで、Rは、アルキル、アルケニル、アリール、ヘテロアリール、またはシクロアルキル)であり、ただし、ZがCHまたはC−アルキルであるとき、Rは、R-置換-1-ピペリジニルのみであり;またはZがCHであるとき、Rはまた、アルコキシカルボニル、−N(R)(ヒドロキシアルキル)であり得、ここで、Rは、H、ヒドロキシアルキル、またはアルキル、あるいは−N(Rであり、ここで、2つのR基は、結合され得、アルキレン基を形成する;
、R、R、R、R22、R24、およびR25は、H、アルキル、ハロ、アルコキシ、ベンジルオキシ、ニトロまたはアミノアルキルによって置換されたベンジルオキシ、ポリハロアルキル、ニトロ、スルホニル、アミノ、アルキルアミノ、ホルミル、アルキルチオ、アシルオキシ、アルキルスルホニル、アリールスルホニル、アシル、アルコキシカルボニル、アルキルスルフィニル、−OCONH、−OCONH−アルキル、−OCON(アルキル)、−NHCOO−アルキル、−NHCO−アルキル、フェニル、ヒドロキシアルキル、および1-モルフォリニルからなる群から独立して選択される;
は、水素、低級アルキル、またはシクロプロピルであり;
20は、H、フェニル、またはアルキルである;そして
27およびR28は、H、アルキル、ヒドロキシアルキル、アルコキシアルキル、アリールアルキル、メルカプトアルキル、アルキルチオアルキル、およびカルボキシアルキルからなる群から独立して選択され、そしてさらにR27およびR28は、結合され得、アルキレン基を形成する;および
nは、0または1から3の整数である。
【0011】
本発明の別の局面は、薬学的受容可能なキャリアとの組合せにおいて、上記で定義される式Iの構造(それらの立体異性体、薬学的受容可能な塩、エステル、および溶媒和化合物を含む)を有する化合物を含む薬学的組成物である。
【0012】
本発明の別の局面は、アルツハイマー病のような認識障害および神経変性障害の処置において有用な薬学的組成物の調製のための、上記で定義される式Iの化合物(それらの立体異性体、薬学的受容可能な塩、エステル、および溶媒和化合物を含む)の使用である。
【0013】
本発明のなお別の局面は、薬学的受容可能な組成物を作成するための方法を含み、上記で定義される式Iの化合物(それらの立体異性体、薬学的受容可能な塩、エステル、および溶媒和化合物を含む)を薬学的受容可能なキャリアと混合する工程を包含する。
【0014】
本発明の別の局面は、認識障害または神経変性障害を処置するための方法であり、上記の障害に罹患している患者に上記で定義されるような式Iの化合物(それらの立体異性体、薬学的受容可能な塩、エステル、および溶媒和化合物を含む)の有効量をアセチルコリンエステラーゼインヒビターとの組合せで投与する工程を含む。
【0015】
本発明の別の局面は、上記で定義されるような式Iの化合物(それらの立体異性体、薬学的受容可能な塩、エステル、および溶媒和化合物を含む)をアセチルコリンエステラーゼインヒビターと組合せて、アルツハイマー病のような認識障害または神経変性障害を処置するための方法である。
【0016】
本発明の別の局面は、認識障害または神経変性障害を処置するための方法であり、上記の障害を罹患している患者に、上記で定義されるような式Iの化合物(それらの立体異性体、薬学的受容可能な塩、エステル、および溶媒和化合物を含む)の有効量の組合せを投与する工程を含み、この化合物は、アセチルコリンエステラーゼインヒビターと共に、アセチルコリン放出を増強する(および、好ましくはm2またはm4選択的ムスカリン様アンタゴニストである)ことが可能である。
【0017】
本発明の別の局面は、単一のパッケージ中の別々の容器において、認知障害の処置のために、組合せて使用するための薬学的化合物を含むキットであり、ここで、
1つの容器は、上記で定義されるような式Iの化合物(それらの立体異性体、薬学的受容可能な塩、エステル、および溶媒和化合物を含む)を含み、この化合物は薬学的に受容可能なキャリアにおいてアセチルコリン放出を増強する(および、好ましくはm2またはm4選択的ムスカリン様アンタゴニストである)ことが可能であり、および
第2の容器は薬学的受容可能なキャリアにおいてアセチルコリンインヒビターを含み、
この合わされた量は有効量である。
【0018】
本発明は、以下を提供する。
項目1.以下の構造式を有する化合物
【0019】
【化5】

または、その立体異性体、あるいはその薬学的に受容可能な塩、エステルまたは溶媒和化合物であって、
ここで:
Zは、N、CH、またはC−アルキルであり;
Xは、−O−、−S−、−SO−、−SO−、−CO−、−CH−、−CONR20−、−NR20−SO−、−NR20CO−、または−SO−NR20−であり;
Qは、−O−、−S−、−SO−、−SO−、または−CH−であり、
Rは、
【0020】
【化6】

およびR21は、水素、アルキル、アルケニル、シクロアルキル、シクロアルケニル、シクロアルキルアルキル、シクロアルケニルアルキル、フェニルアルキル、およびヒドロキシアルキルからなる群から独立して選択される;
は、シクロアルキル、1から3の独立的に選択されるR基によって置換されたシクロアルキル、シクロアルケニル、シクロアルキルアルキル、
【0021】
【化7】

(ここで、Rは、H、アルキル、アルケニル、SOまたはCORであり、ここで、Rは、アルキル、アルケニル、アリール、ヘテロアリール、またはシクロアルキル)であり、ただし、ZがCHまたはC−アルキルであるとき、Rは、R-置換-1-ピペリジニルのみであり;またはZがCHであるとき、Rはまた、アルコキシカルボニル、−N(R)(ヒドロキシアルキル)であり得、ここで、Rは、H、ヒドロキシアルキル、またはアルキル、あるいは−N(Rであり、ここで、2つのR基は、結合され得、アルキレン基を形成する;
、R、R、R、R22、R24、およびR25は、H、アルキル、ハロ、アルコキシ、ベンジルオキシ、ニトロまたはアミノアルキルによって置換されたベンジルオキシ、ポリハロアルキル、ニトロ、スルホニル、アミノ、アルキルアミノ、ホルミル、アルキルチオ、アシルオキシ、アルキルスルホニル、アリールスルホニル、アシル、アルコキシカルボニル、アルキルスルフィニル、−OCONH、−OCONH−アルキル、−OCON(アルキル)、−NHCOO−アルキル、−NHCO−アルキル、フェニル、ヒドロキシアルキル、および1-モルフォリニルからなる群から独立して選択される;
は、水素、低級アルキル、またはシクロプロピルであり;
20は、H、フェニル、またはアルキルである;そして
27およびR28は、H、アルキル、ヒドロキシアルキル、アルコキシアルキル、アリールアルキル、メルカプトアルキル、アルキルチオアルキル、およびカルボキシアルキルからなる群から独立して選択され、そしてさらにR27およびR28は、結合され得、アルキレン基を形成する;および
nは、0または1から3の整数である。
【0022】

項目2.ZがNであり、Qが−CH−であり、かつnが0、1または2である、項目1に記載の化合物。
【0023】

項目3.Xが、O、SOまたはSOであり、そしてここで、Rは、
【0024】
【化8】

であり、ここで、RおよびRは、H、CH、ニトロ、NH、アセチルアミノ、またはメトキシである、項目1または2のいずれかに記載の化合物。
【0025】

項目4.Rが、H、シクロアルキル、シクロアルキルアルキルまたはアルキルであり、かつR21がHである、項目1、2または3のいずれかに記載の化合物。
【0026】

項目5.XがOまたはSOであり、Rがシクロヘキシルまたは1-ピペリジニルであり、そしてここで、少なくとも1つのR27およびR28がアルキルであり、かつ他がHまたはアルキルである、項目1、2、3または4のいずれかに記載の化合物。
【0027】

項目6.以下の式からなる群から選択される、項目1に記載の化合物であって:
【0028】
【化9−1】

【0029】
【化9−2】

ここで、ピペラジン環に結合されるメチル基は、(R)−コンホメーションである。
【0030】

項目7.項目1で定義されるような化合物を、薬学的に受容可能なキャリアと組み合わせて含む薬学的組成物。
【0031】

項目8.項目7で定義されるような薬学的組成物の調製プロセスであって、該プロセスは、項目1から6のいずれか1項に記載の化合物を薬学的に受容可能なキャリアと混合することを包含する。
【0032】

項目9.認識障害または神経変性障害を処置するための薬物の調製のための、項目1から6のいずれか1項に記載の化合物の使用。
【0033】

項目10.認識障害または神経変性障害を処置するためのキットであって、該キットは、組み合わせて使用される、薬学的化合物を含む、単一のパッケージ中の別個の容器を含み、ここで該容器の1つは、アセチルコリンの放出を増強する、項目1から6のいずれか1項に記載の化合物を含み、そして該別個の容器は、薬学的に受容可能なキャリアでありかつ有効量のそれらの組み合わせ量である、アセチルコリンエステラーゼインヒビター、該化合物、およびインヒビターを含む。
【0034】

項目11.認識障害または神経変性障害を処置するための方法であって、該方法は、該障害を罹患している患者に、項目1から6のいずれかに記載の化合物の有効量を、単一でまたはアセチルコリンエステラーゼインヒビターとの組み合わせで、投与する工程を包含する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0035】
好ましい実施態様の詳細な説明
式Iの化合物の特に好ましい基において、ZはNである。別の好ましい基において、nは1または2または特に0である。
【0036】
化合物の別の好ましい基において、XはSO、または特にOまたはSO2である。
【0037】
化合物のなお別の好ましい基において、R8はHまたはメチルである。
【0038】
化合物の別の好ましい基において、Rは以下の式:
【0039】
【化10】

(ここで、R5およびR6は、H、CH3、ニトロ、NH2、アセチルアミノ、またはメトキシであり)特に4-メトキシフェニルであり;Xは好ましくはO、SO、またはSO2であり、R3およびR4はHであり、R1はH、シクロアルキル、シクロアルキルアルキル、またはアルキルであり、およびR21はHである。
【0040】
化合物の別の好ましい基において、R3およびR4はHであり、R1はH、シクロアルキル、またはアルキルであり、およびR21はHである。R1は好ましくはH、CH3、またはシクロヘキシルメチルであり、R2はシクロヘキシルである。
【0041】
化合物の別の好ましい基において、R3およびR4はHであり、XはO、SO、SO2またはであり、R1はH、シクロアルキル、またはアルキルであり、およびR21はHである。R1は好ましくはHまたはCH3である。
【0042】
化合物の別の好ましい基において、R27およびR28の少なくとも1つはアルキルである。詳細には、R27およびR28の少なくとも1つはアルキルであり、そして他はHまたはアルキルであり;より好ましくはR27およびR28の1つはメチルであり、他は水素である。
【0043】
化合物の別の好ましい基において、Rは4-メトキシフェニルである。
【0044】
式Iの化合物の特に好ましい基において:
Rは、ニトロ基もしくは特にメトキシ基(これらの基の各々は、好ましくは4-位にある)、または特には2-ピリミジニル基で置換され得るフェニル基であり;
Xは、S、SO、または特にSO2またはOであり;
Qは、Oまたは特にCH2であり;
nは、1または2または特に0であり;
R1はH、およびR21はシクロヘキシルメチルであり;
R27およびR28は、CH3または特にHであり;
ZはNであり;および
R2は、シクロヘキシルまたは1-ピペリジニルである。
【0045】
記載されている場所を除外して、他の以下の定義が本明細書および請求の範囲を通して適用される。これらの定義は、用語が、それ自体により使用されるかまたは他の用語との組合せで使用されるかのいずれかて適用される。例えば、「アルキル」の定義は、「アルキル」だけでなく、「アルコキシ」、「ポリハロアルキル」などの「アルキル」部分にも適用される。
【0046】
アルキルは、1〜20炭素原子、好ましくは1〜8炭素原子を有する直鎖または分枝飽和炭化水素鎖を意味する。「低級アルキル」基は1〜6炭素原子、好ましくは1〜4炭素原子を有する。
【0047】
アルケニルは、少なくとも1つの炭素-炭素二重結合を有するが、二重結合から除去された少なくとも1つの炭素原子の遊離原子価を有さない、3〜15炭素原子、より好ましくは3〜12炭素原子の直鎖または分枝炭化水素鎖を意味する。
【0048】
シクロアルキルは、3〜12炭素原子を有する飽和炭素環式環を意味する。
【0049】
シクロアルケニルは、5〜8炭素原子および少なくとも1つの炭素-炭素二重結合カルボキシル環(環の中で)を意味する。
【0050】
アシルは、カルボキシル酸のラジカルを意味し、そして従って、式アルキル-CO-、アリル-CO-、アラルキル-CO-、シクロアルキル-CO-の群を含み、ここで、種々の炭化水素ラジカルはこの節で定義される通りである。
【0051】
ハロは、フルオロ、クロロ、ブロモ、ヨードを意味する。
【0052】
アリールは、フェニルまたはナフチルを意味し、このそれぞれは、ハロ基、アルキル基、ヒドロキシル基、アルコキシ基、フェノキシ基、アミノ基、アルキルアミノ基およびジアルキルアミノ基から選択される1〜3のRC基と置換され得る。好ましいアリール基は、フェニル基、置換フェニル基、1-ナフチル基、2-ナフチル基、およびインダニル基である。
【0053】
ヘテロアリールは、炭素環式構造を妨害する少なくとも1つのO、S、および/またはNを有し、および芳香族特性を提供するための十分量のパイ電子を有する環式基を意味する。芳香族ヘテロ環式基は、好ましくは2〜14、特に3〜9炭素原子(例えば、2-、3-、もしくは4-ピリジル、2-もしくは3-フリル、2-もしくは3-チエニル、2-、4-、もしくは5-チアゾリル、2-、4-、もしくは5-イミダゾリル、4-、5-、もしくは特に2-ピリミジニル、2-ピラジニル、3-もしくは4-ピリダジニル、3-、5-、もしくは6-[1,2,4-トリアジニル]、3-もしくは5-[1,2,4-チアジアゾリル]、2-、3-、4-、5-、6-、もしくは7-ベンゾフラニル、2-、3-、4-、5-、6-、もしくは7-インドリル、3-、4-、もしくは5-ピラゾリル、または2-、4-、もしくは5-オキサゾリルなど)を有する。好ましいヘテロアリール基は、2-、3-、または4-ピリジル、2-または3-フリル、2-または3-チエニル、2-、4-、または5-イミダゾリル、および7-インドリルを含む。
【0054】
ポリハロは、用語「ポリハロ」により修飾される基での少なくとも2つのハロ原子の置換を示す。
【0055】
スルホニルは、式-SO2-の基を意味する。
【0056】
スルフィニルは、式-SO-の基を意味する。
【0057】
アルキレンは、1〜20炭素原子、好ましくは1〜8炭素原子、および2遊離原子価を有する直鎖または分枝飽和炭化水素鎖を意味し、これは本発明の目的のために、アルキレン基が2〜20炭素原子を有する場合、同じ炭素原子上にない。好ましいアルキレン基は、式-(CH)(2−20)-のメチレン基またはポリメチレン基である。
【0058】
1つ以上構造式に存在する(例えば、R2が-N(R9)2である場合、R9)ラジカルまたは基の各々は、ラジカルまたは基についての定義全体から個々に選択され得る。
【0059】
本発明の化合物は、以下の基:
【0060】
【化11】

が結合している原子に非対称的に置換された炭素原子に基づく少なくとも2つの立体異性体配置で存在する。RおよびR21が同一でない場合、またはXがSOである場合、またはR27およびR28の少なくとも1つが水素でない場合、さらなる立体異性体が存在し得る。式Iの可能な立体異性体は、本発明の範囲内である。
【0061】
式Iの化合物は、非溶媒和形態ならびに溶媒和形態で存在し得、水和形態を含む。一般には、水またはエタノールなどの薬学的に受容可能な溶媒と共に溶媒和している形態は、本発明の目的のための非溶媒和形態と等価である。
【0062】
式Iの化合物は、有機酸または無機酸と共に薬学的に受容可能な塩を形成し得る。塩形成の適切な酸の例は、当業者に周知の塩酸、硫酸、リン酸、酢酸、クエン酸、マロン酸、サリチル酸、リンゴ酸、フマル酸、コハク酸、アスコルビン酸、マレイン酸、メタンスルホン酸、ならびに他の無機酸およびカルボキシル酸である。塩は遊離塩基形態と十分な量の所望の酸を接触されることにより調製され、従来の方法により生成される。遊離塩基形態は、塩を適切な希釈塩基水(例えば、水酸化ナトリウム希釈水、炭酸カリウム希釈水、アンモニア希釈水、または重炭酸ナトリウム希釈水)と処理することにより再生され得る。遊離塩基は、特定の物理的特性(例えば、極性溶媒中の溶解性)において対応する塩といくらか異なるが、塩は、他に、本発明の目的についての対応する遊離塩基と等価である。
【0063】
式Iの化合物およびその塩は、標準的な方法により調製され得る。以下のスキームの方法が好ましい;出発物質のいずれもが既知であるか、または標準的な方法により調製され得、そして式中のラジカル(他の状態でなければ)は式Iで与えられる意味を有する(但し、R2はまた、式Iに従うR2基で置換される(例えば、スキームの終わりに)窒素保護基であり得る)。
【0064】
スキームA:
【0065】
【化12】

スキームAにおいて、Qは-O-、-S-、または-CH2-であり得る。工程(a)において、L1およびL2は、反応の間に除去され得る基である。L2は好ましくは、例えば、ハロゲン原子(特に、臭素またはフッ素)のような脱離基であり、L1は好ましくは、アルカリ金属(例えば、ナトリウムまたはカリウム)である。反応は、好ましくは無水である不活化有機溶媒(例えば、DMSO、DMF、またはジメトキシエタンのような極性エーテル)中で行われ得る。
【0066】
XがOまたはSである場合、X基に起因する反応物は、XH基および水素化アルカリ金属を含有する親化合物の反応により、インサイチュで、不活化有機溶媒中で、調製され得る。
【0067】
工程(b)は、不活性有機溶媒中での還元剤(例えば、水素化アルミニウム(例えば、水素化リチウムアルミニウム)または水素化ホウ素(例えば、水素化ホウ素ナトリウム))を用いる、カルボニル基からヒドロキシメチレン基への還元を含む。水素化アルミニウムを使用する場合、溶媒は無水であり、そして好ましくはTHFのようなエーテル溶媒であるべきである;水素化ホウ素を使用する場合、溶媒は低級アルカノール(特にメタノールもしくはエタノール)、またはTHF、DHF、もしくはDMSOが使用され得、これらは全て無水または水性である。工程(c)は、水酸基を脱離基L3(スルホネートエステル基(例えば、SO-(低級アルキル)基)、またはハロゲン原子(特に臭素またはヨウ素)と共に)に変換することを含む。この変換は、塩化スルホニル(例えば、メタン-、エタン-、または4-トルエン-スルホニルクロリド)、および有機塩基(例えば、ピリジンまたはトリエチルアミンのような三級アミン)と共に;またはハロゲン化剤(例えば、SOCl2もしくはPBr3)と共に、所望の場合得られたブロミドとの置換を伴って、ヨーダイドが必要なときに、ヨーダイドにより行われ得る。
【0068】
工程(d)は、反応基L3(例えば、Cl)の、ピペリジンまたはピペラジンと式Iの所望の生成物を形成するためのアミノ化を含む。この反応は、ピペリジンもしくはピペラジンと共にまたは有機溶媒中で手際よく行われ得、そして所望の場合、酸結合剤が使用され得る。過剰量のピペリジンまたはピペラジンが、共に酸結合剤および有機溶媒として使用され得る。ピペラジンが使用される場合、その第二の窒素原子が反応液中で遊離酸を結合し得、そして過剰の酸結合剤は必要ではない。
【0069】
工程(e)は、塩基性触媒(例えば、ピペリジンのようなアミン)の存在下での反応物の濃縮により実施され得る。これらの環境の下で、過剰量の触媒が溶媒として使用され得る。あるいは、反応は、LDA(リチウムジイソプロピルアミド)またはリチウムHMDS(リチウムヘキサメチルジシラザン)のような強塩基触媒の存在下で行われ得る、これは好ましくはTHFまたはジエチルエーテルのような不活化無水有機溶媒中で、低い温度(例えば、-78℃〜0℃)で添加される。次いでアルデヒドを伴う反応は、低い温度、室温、または中程度に上昇した温度(例えば、-78〜+60℃、好ましくは約0〜+30℃)で、不活化雰囲気(例えば、窒素)下で行われ得る。アルデヒドR21A-CHOが、R21基を導入するために使用される場合、R21AはR21よりも1つ炭素原子が少なく、従って、R21A-CH2はR21である。次いで以下の式:
【0070】
【化13】

の中間カルビノールは脱水(例えば、酸と直接、または塩基と共に水酸基を脱離基(例えば、ハライドまたはスルホネート)へ変換した後)され得、そして得られた化合物は水素化され得、そして得られた二重結合を有する化合物は、式A6の化合物に水素化(例えば、水素またはPd/Cのような触媒と共に)され得る。水酸化がまたカルボニル基を還元する場合、次いで以下の工程(f)の還元が除去され得る。
【0071】
次いで工程(f)は上記の工程(b)(還元)および工程(c)(ヒドロキシ基の脱離基L3への変換)により、そして工程(g)は上記の工程(d)の方法により実施され得る。
【0072】
21に加えてR基を導入することを所望するならば、工程(f)および(g)が行われる前に工程(e)が繰り返され得る。
【0073】
スキームAにおける式A5および式A7の化合物の別の調製方法は、式A4の化合物と共に、式A2またはA6の化合物の縮合、続いて生成する縮合化合物(例えば、イミン)の還元を、好ましくは同じ工程に含む。縮合は、緩和なルイス酸(またはプロトン性酸)および脱水剤として作用する化合物(複数または単数)の存在下で行われ得る。緩和なルイス酸は、都合良くには、四チタン(低級アルコキシド)、特にTi(O-2-Pr)4であり、これは市販されており、良好な結果を与える。次いで、得られる縮合化合物を(例えば、イミン)、緩和な還元剤(例えば、水素化ホウ素ナトリウム)、しかし、好ましくはルイス酸またはプロトン性酸、特にシアノ水素化ホウ素ナトリウムに対して反応性でない物で還元し得る。あるいは、反応は、酢酸の下で、ルイス酸および還元剤の両方として、トリアセトキシホウ化水素ナトリウムと共に行われ得る。
【0074】
縮合および還元を、不活化有機溶媒、好ましくは塩素化炭化水素(例えば、1,2-ジクロロエタンまたは特に塩化メチレン)の存在下で行う。
スキームB:
【0075】
【化14】

スキームBにおいて、Qは-O-または-S-である。工程(a)において式B1(ここでRAはRまたは好ましくはHである)の化合物は、式L4.(CH2)n.CH2.CO2Hの酸または2-炭素原子の置換基R1および/またはR21を有するこのような酸の反応誘導体と反応する。ここで、L4は塩素原子またはホウ素原子のような反応基である。反応誘導体は、好ましくは酸クロライドであるが、ブロミドまたは無水物であり得る。反応は、フリーデルクラフト条件下で、触媒および不活性有機溶媒と共に行われ;触媒は例えば無水塩化アルミニウムまたは三フッ化ホウ素であり、そして溶媒は好ましくはニトロベンゼンである。反応は代表的には低い温度(例えば、0〜20℃)で始められ、そして穏やかに上昇する温度(例えば、30〜100℃)で続けられる。
【0076】
R21基(ここで、R21は水素以外である)が、上記のスキームAの下で記載されるように、工程(b)において導入され得る。RA基が水素である場合、R基は、出発物質の式RL4の化合物との反応により、工程(c)において導入され得る。ここで、L4は脱離基(例えば、スルホネートエステル基であるが、好ましくはハロゲン、特にはClまたはBrである)である。反応は、好ましくは強無機塩基(例えば、水素化または水酸化ナトリウムもしくはカリウム)および不活性有機溶媒(例えば、無水DMSO、DMF、またはジメトキシエタンのような極性エーテル)の存在下で有機溶媒中で行われる。次いで工程(d)および(e)は、上記スキームAの下で、本明細書中の工程(b)、(c)、および(d)に記載されるように行われ得る。
スキームC:
【0077】
【化15】

スキームCにおいて、QはOまたはSである。工程(a)において、R基は、出発物質の式RL4の化合物との反応により誘導される。ここで、L4は、上記のスキームBの工程(c)の下で記載されるように、脱離基である。次いで残る工程(b)から(g)はスキームAのそれぞれ工程(b)から(g)の上記のプロセスに従って行われ得る。
スキームD
【0078】
【化16】

工程(a)のプロセス(還元性のアミノ化)を、スキームAの代替的縮合/還元プロセスに従って行い得る(式A5およびA7の化合物の調製のための代替的方法として上に記載される)。L5の基は、好ましくは塩素原子、または特に臭素原子もしくはヨウ素原子である。式D2の生成物は、次いで、不活性無水有機溶媒中でアルキルリチウム試薬(例えば、n-BuLiまたはt-BuLi)と反応し得、L5の基をLiで置換し、そして得られる有機金属化合物は、アルデヒドRCHOと反応し得、式D3の化合物を生成する。次いで、D3におけるベンジルヒドロキシ(benzylichydroxy)基を、例えばトリアルキルシラン(好ましくはEt3SiH)および強酸(好ましくはトリフルオロ酢酸)で還元し得る。式D4の生成物がR1またはR21基を含む場合、この基は式D1の化合物中に誘導され得る。
【0079】
このプロセスにおけるR2基は、好ましくは窒素保護基(例えば、ベンジルオキシカルボニル(CBZ)または特にt-ブチルオキシカルボニル(BOC)基)である。このような保護基は、式Iの下、上記のR2基と置換され得る。アミド化基のような保護基は、加水分解により除去され得る;例えば、BOC保護基は、トリフルオロ酢酸またはEtOAc中のHClにより除去され得る。次いで所望のR2基が(1つ以上の工程で)導入され得る;例えば、1-ピペリジニル基またはN-Ry-1-ピペリジニル基が、以下の式の化合物で、還元濃縮により導入され得、続いて加水分解により、BOC保護基が除去される。
【0080】
【化17】

還元濃縮および加水分解の両方が、上記のように行われ得る。次いで、任意のさらなる置換基Ry(ここで、Ryは上で定義されたとおりである)が、新しい遊離窒素原子上に導入され得る。例えば、アミドは、酸クロライド(Ryがアシル基の場合、Ry.Clである)を用いる濃縮により(必要ならば塩基の存在下で)または酸自体(R’がアシル基の場合、Ry.OHである)を用いる濃縮により、1-ヒドロキシ-ベンゾトリアゾール、1-(3-ジメチルアミノプロピル)-3-エチルカルボジイミド、およびN-メチル-モルフォリンの存在下で形成される。
【0081】
スキームA、B,C、またはDのプロセスが行われた後、得られた式Iの化合物(ここで、QはSを示す)は、QがSOまたはSO2を示す化合物に酸化され得る;酸化剤は、過剰に使用される強酸(例えば、メタンスルホン酸)の存在下で、好ましくは過酢酸、3-クロロペル安息香酸または過ホウ酸のような過酸である。QがSである化合物がスルホキシドに(またはスルホキシドからスルホンに)酸化されている場合、酸化剤の約1当量が使用されるはずである;QがSである化合物がスルホンに酸化されている場合、酸化剤の約2当量(好ましくは少なくとも2当量)が使用されるべきである。
【0082】
薬学的活性
式Iの化合物は、選択的なm2および/またはm4ムスカリン様アンタゴナイズ活性を示す。これはアルツハイマー病および老人性痴呆のような認識障害を処置するための薬学的活性と関連している。
【0083】
式Iの化合物は、m1、m2およびm4ムスカリン様アンタゴニスト活性を示すように設計された試験手順において薬学的活性を示す。この化合物は、薬学的治療用量において非毒性である。以下に試験手順を記載する。
【0084】
ムスカリン様結合活性
目的の化合物を、クローン化ヒトm1、m2、およびm4ムスカリン様レセプターサブタイプへの結合を阻害する能力について試験する。これらの研究におけるレセプターの供給源は、レセプターサブタイプの各々を発現した、安定にトランスフェクトされたCHO細胞株由来の膜であった。増殖の後、細胞をペレット化し、そして続いて、10mMNa/Kの冷リン酸緩衝液(pH7.4)(緩衝液B)50体積中のPolytronを用いてホモジナイズした。ホモジネートを、40,000×gで20分間、4℃で遠心分離した。得られた上清を捨て、そしてペレットを20mg湿潤組織/mlの最終濃度で、緩衝液Bに再懸濁した。これらの膜を、下記の結合アッセイに使用するまで、-80℃で保存した。
【0085】
クローン化されたヒトムスカリン様レセプターへの結合を、3H-キヌクリジルベンジレート(QNB)(Watsonら、1986)を用いて行った。簡潔に述べると、膜(m1、m2、およびm4含有膜についてのタンパク質アッセイの、それぞれ約8、20、および14μg)を3H-QNB(最終濃度100〜200pM)を用いてインキュベートし、そして25℃において90分間、2mlの最終容量中の非標識化薬物の濃度を増加させた。非特異的結合を、アトロピン1μMの存在下でアッセイした。Skatron濾過装置を使用して、GF/Bガラス繊維フィルター上で吸引濾過を行うことによってインキュベーションを終結させ、そしてフィルターを10mMNa/Kの冷リン酸緩衝液(pH7.4)で洗浄した。シンチレーションカクテルをフィルターに添加し、そしてバイアルを一晩インキュベートした。結合した放射性リガンドを、液体シンチレーションカウンター(50%の効率)で定量した。得られたデータを、EBDAコンピュータプログラム(McPherson、1985)を用いて、IC50値(すなわち、結合を50%まで阻害するのに必要とされる化合物の濃度)について分析した。次いで、親和性値(Ki)を、以下の式(ChengおよびPrusoff、1973)を用いて決定した;
【0086】
【化18】

従って、より低いKi値は、より高い結合親和性を示す。
【0087】
上の手順は当該分野において公知であり、そして詳細に記載された刊行物の対象である。
【0088】
m2レセプターに結合する化合物について選択性の程度を決定するために、m1レセプターに対するKi値を、m2レセプターに対するKi値で割った。より高い比は、m2ムスカリン様レセプターの結合に対するより高い選択性を示す。
【0089】
微量透析方法
以下の手順を使用し、化合物がm2アンタゴニストとして機能することを示す。
【0090】
外科手術:これらの研究のために、雄のSprague-Dawleyラット(250g〜350g)をペントバルビタールナトリウム(54mg/kg、ip)で麻酔し、そしてKopf脳定位固定装置上に配置した。頭蓋骨を露出させ、そしてブレグマの前方0.2mmおよび側方3.0mmの位置で硬膜まで貫通穿孔した。これらの座標で、ガイドカニューレを、穿孔された開口部を通して硬膜の外部エッジに配置し、垂直に2.5mmの深さまで降ろし、そして歯科用セメントで骨ねじ(bonescrew)に耐久的に固定した。外科手術後、ラットにアンピシリン(40mg/kg、ip)を与え、そしてラットを個別に改造ケージに収容した。微量透析手順に着手する前に、約3〜7日の回復期間を与えた。
【0091】
微量透析:インビボ微量透析を行うために使用したすべての機器および器械を、Bioanalytical Systems, Inc.(BAS)から入手した。微量透析手順は、細い針状の灌流可能なプローブ(CMA/12.3mm×0.5mm)をガイドカニューレを通してガイドの端部を越えて線条体中に3mmの深さに挿入することを必要とした。このプローブをあらかじめ、微量注入ポンプ(CMA-/100)にチューブで連結した。ラットを捕らえてつなぎとめ、そしてプローブ挿入後、敷わら材料(littermaterial)ならびに食餌および水の摂取口(access)を備えた、大きく、透明なプレキシガラス製ボウル中に置いた。pH 7.4の、5.5mMのグルコース、0.2mMのL-アスコルビン酸および1μMのネオスチグミンブロマイドを含有するリンガー緩衝液(NaCl147mM; KCl 3.0mM; CaCl2 1.2mM; MgCl2 1.0mM)で、プローブを2μl/分で灌流した。安定なベースライン読みとりを達成するために、画分の採取前に90分間微量透析を行った。低温コレクター(CMA/170または200)を用いて、画分(20μl)を3時間にわたり10分間隔で得た。4〜5つのベースライン画分を得た後、試験されるべき薬物または薬物の組合せを動物に投与した。採取完了時、ラットをそれぞれ剖検して、プローブ配置の正確さを決定した。
【0092】
アセチルコリン(ACh)分析:微量透析液の採取したサンプル中のACh濃度を、HPLC/電気化学的検出を使用して決定した。高分子分析用HPLCカラム(BAS,MF-6150)にサンプルを自動注入(Waters 712 Refrigerated Sample Processor)し、そして50mM Na2HPO4(pH8.5)で溶出した。細菌増殖を防ぐために、Kathon CG 試薬(0.005%)(BAS)を移動相に含ませた。次いで、分離したAChおよびコリンを含む分析カラムからの溶出液を直ちに、カラム出口に取り付けた固定酵素反応器カートリッジ(BAS、MF-6151)に通した。この反応器は、高分子骨格に共有結合したアセチルコリンエステラーゼおよびコリンオキシダーゼの両方を含んでいた。AChおよびコリンに対するこれらの酵素の作用の結果、化学量論的収量の過酸化水素を得た。過酸化水素は、白金電極を備えたWaters460検出器を用い、500ミリボルトの作用電圧で電気化学的に検出された。ミクロチャンネル IEEEボードを備えたIBM Model 70コンピューターを用い、データ取り込みを行った。「Maxima」クロマトグラフィーソフトウエア(WatersCorporation)を用い、ピークの積分および定量を達成した。サンプル当たりの総走査時間は、1 ml/分の流速で11分であった。アセチルコリンおよびコリンに対する保持時間は、それぞれ6.5分および7.8分であった。クロマトグラフィーの間、検出器の感度の起こり得る変化をモニターしそして校正するために、各サンプル列(queue)の最初、中間および最後に、ACh標準物を含ませた。
【0093】
AChレベルの増加は、シナプス前m2レセプター拮抗作用と一致する。
【0094】
試験結果
本発明はまた、アセチルコリンエステラーゼインヒビターと組み合わせたムスカリン様アンタゴニスト(例えば、スコポラミンまたはQNB)のようなACh放出を増強し得る任意の化合物の投与により、同様の相乗的な結果を達成することに関する。好ましくは、ACh放出増強化合物は、m2選択性ムスカリン様アンタゴニスト(すなわち、1より大きい(m1のKi)/(m2のKi)比を有するもの)またはm4選択性ムスカリン様アンタゴニスト(すなわち、1より大きい(m1のKi)/(m4のKi)比を有するもの)のいずれかである。本発明の局面を実行するためのm2またはm4選択性ムスカリン様アンタゴニストは、3-α-クロロインペリアリン、AF-DX116、AF-DX 384、BIBN 99(これらの最後の3つの化合物は、Boehringer-Ingleheimから入手可能)、トリピトラミン、およびヒンバシンを含むが、これらに限定されない。
【0095】
以下の表に報告されるこの試験は、特に5、9、10、14、および15の番号の化合物がm1/m2およびm4/m2比の有用な値を有し、そして認識障害の処置に役立つ特性を有するはずである。
【0096】
【化19】

表2:腹腔投与を行った意識のあるラット線条体からのアセチルコリン(ACh)の放出における本発明の化合物の効果
【0097】
【化20】

注釈:
(1)コントロール;第一のベースラインを与える。
(2)コントロール;第二のベースラインを与える。
(3)コントロール;第三のベースラインを与える。
(4)化合物は50分で注射された。
【0098】
式Iの特に好ましい化合物は、以下の式、およびそれらの酸付加塩を含む:
【0099】
【化21】

そしてまた、以下の式の化合物およびそれらの酸付加塩:
【0100】
【化22】

これらの全ての化合物において、ピペラジン環に結合したメチル基(存在する場合)は、(R)-コンホメーションである。
【0101】
薬学的組成物は、ACh放出を増強し得る式Iの化合物から、薬学的に受容可能な不活性キャリアと共にそれらを投与することにより、調製され得る。アセチルコリンエステラーゼインヒビターは、より良い、しばしば相乗的でもある効果を提供するためのこのような薬学的組成物の任意の構成物として使用され得る。薬学的に受容可能なキャリアは固体または液体のいずれでもよい。固体形態調製物として、粉剤、錠剤、分散可能な顆粒剤、カプセル、カシェーおよび坐薬が挙げられる。固体キャリアは1つ以上の物質(これらの物質はまた、希釈剤、香料、可溶化剤、潤滑剤、懸濁剤、結合剤または錠剤分解剤として作用し得る)であり得;それはまたカプセル化材料でもあり得る。
【0102】
液体形態調製物として、溶液、懸濁液および乳濁液が挙げられる。一例として、非経口注射のための水または水-プロピレングリコール溶液が挙げられ得る。
【0103】
経口または非経口投与のいずれかのために使用直前に液体形態調製物に変換されることが意図される固体形態調製物もまた含まれる。このような液体形態として、溶液、懸濁液および乳濁液が挙げられる。これらの特別な固体形態調製物は、単位用量形態で最も簡便に提供され、そして従って、1回分の液体投薬単位を提供するために使用される。
【0104】
本発明はまた、別の送達システム(経皮送達を含むが、必ずしもこれに限定されない)を意図する。経皮組成物はクリーム、ローションおよび/または乳濁液の形態を取り得、そしてこの目的についての当該分野における従来技術のように、マトリックスタイプまたはリザーバータイプの経皮パッチに含まれ得る。
【0105】
好ましくは、薬学的調製物は単位投薬形態である。このような形態では、調製物は適量の活性成分を含有する単位用量に再分割(subdivide)される。単位投薬形態はパッケージされた調製物であり得る。このパッケージは、個別量の調製物(例えば、バイアルまたはアンプル中にパッケージされた錠剤、カプセルおよび粉剤)を含有する。単位投薬形態はまた、カプセル、カシェーまたは錠剤自体
であり得るか、または、パッケージされた形態の、適切な数のこれらのうちの任意のものであってもよい。
【0106】
単位用量調製物中の活性化合物の量は、特定の施用および活性成分の効能および意図される処置に従い、1mg〜100mgで変化し得るか、または調整し得る。これは約0.001mg/kg〜約20mg/kgの用量に相当し、1日当たり1回から3回の投与に分割され得る。所望であれば、この組成物はまた他の治療剤を含んでもよい。
【0107】
投薬量は、患者の必要度、処置される状態の重篤度および投与される特定の化合物に依存して変化し得る。特定の状況に対する適切な投薬量の決定は、医療分野の技術の範囲内である。簡便のために、1日当たりの総投薬量は分割され得、そして1日にわたって分割量を投与され得るか、または連続的送達を提供する手段によって投与され得る。
【0108】
式Iの化合物またはACh放出を増強し得る化合物をアセチルコリンエステラーゼインヒビターと組合せて使用して認識障害を処置する場合、これら2つの活性成分は同時にもしくは連続的に共投与(co-administer)され得る。あるいは式Iの化合物またはACh放出を増強し得る化合物とアセチルコリンエステラーゼインヒビターとを薬学的に受容可能なキャリア中に含む単一の薬学的組成物を投与し得る。この組合せの成分は、個々にまたは一緒に、任意の従来の経口または非経口投薬形態(例えば、カプセル、錠剤、粉剤、カシェー、懸濁液、溶液、坐薬、鼻腔スプレーなど)で投与され得る。アセチルコリンエステラーゼインヒビターの投薬量は、0.001〜100mg/kg体重の範囲であり得る。
【0109】
本明細書中に開示された発明は、以下の実施例によって例示されるが、開示の範囲を制限すると解釈されるべきでない。別の機構の経路および類似構造は当業者に明白であり得る。
【実施例】
【0110】
実施例1:
工程A
【0111】
【化23】

4.2g(29mmoles)の5-フルオロインダノンおよび5.05g(31mmoles)のベンゼンスルフィネートナトリウムを、乾燥DMSO(20mL)中で合わせた。混合物を約120℃で48時間加熱し、室温まで冷却し、そして氷冷水(300mL)に注いだ。生成した沈殿物を濾過し、そして100mLの乾燥エーテルで粉末化し、次いで再度濾過し、そして真空内で乾燥し、茶色の粉末として1.57g(20%の収量)の所望のスルホンを得た。これを次の反応に直接使用した。
【0112】
工程B
【0113】
【化24】

1.07g(3.9mmoles)の5-フェニルスルホニルインダノンを、室温で乾燥THF(20mL)中で得た。THF(3.9mL)中のリチウムアルミニウムヒドリドの1M溶液をゆっくり添加した。得られた混合物を1時間室温で撹拌し、そして2Mの水酸化ナトリウム溶液で、次いで水で注意深くクエンチした。固体炭酸カリウムを添加し、そして混合物を塩が顆粒状の沈殿を形成するまで撹拌した。これを濾過し、そしてエーテルで洗浄し、そして有機溶媒を蒸発し、0.998gの所望のアルコール(92%)を得た。これは十分純粋であり、次の工程に使用した。
【0114】
工程C
【0115】
【化25】

0.700g(2.55mL)の出発インダニルアルコールを、手際よく塩化チオニル(2mL)中で得、そして得られた混合物を、室温で1時間撹拌した。揮発性物質をロータリーエバポレーターで除去し、そして粗クロライドを、N−ヒドロキシエチル-ピペラジン(0.94mL、3当量)を用いてDMF(5mL)中で得た。この混合物を約60℃で16時間加熱し、室温まで冷却し、そして氷冷水(100mL)中に注いだ。粗生成物を塩化メチレンで抽出し、有機層を乾燥および蒸発し、そして残渣をシリカゲル上のカラムクロマトグラフィーにより生成した。カラムを5%メタノールを含む酢酸エチル、そして5%メタノールおよび2%トリエチルアミンを含む酢酸エチルで溶出し、所望の生成物を得た。
【0116】
実施例2
【0117】
【化26】

6-ヒドロキシ-4-クロマノン、1:
5℃のレゾルシノール(11.0g)のニトロベンゼン(120mL)溶液を、撹拌しながらβ-クロロプロピオニルクロライド(12.7g)で滴下方法で処理した。無水AlCl3(31g)を撹拌しながら分与方法(portionwise)で添加し、そして温度を15℃未満に維持した。15分後、混合物を40〜45℃に加熱して維持し、3時間以上撹拌した;次いでそれを室温まで冷却し、そして一晩静置させた。反応混合物を、撹拌しながら濃HCl(10mL)を含む粉砕した氷(200g)に注いだ。これをエーテルで抽出し、そして有機層を5%NaOHで抽出した。塩基層を濃HClで酸性にした。タール様固体を分離し、そして温水から再結晶化し、白色固体(m.p.138〜142℃)を得た。
【0118】
7-(4’-ニトロフェノキシ)-4-クロマノン、2:
6-ヒドロキシクロマノン(1.64g、10mmol)のDMF(10mL)溶液を、撹拌しながらNaH(10mmole、鉱油中60%)で処理した。30分後、それを4-フルオロニトロベンゼンのDMF溶液(5mL)で処理し、そして90℃で6時間撹拌した。冷却後これを氷水(75mL)で希釈し、次いでEtOAc(2×50mL)で抽出した。乾燥した有機層の蒸発により、ガム様の残渣を得た(1.9g)。この粗生成物を、さらなる精製を行わずに次の工程に使用した。
【0119】
1-シクロヘキシル-4-[7-[(4-ニトロフェニル)-オキシ]クロマン-4-イル]-ピペラジン、3:
EtOH(150mL)中の粗7-(4’-ニトロフェニルオキシ)-4-クロマノン(1.9g)を室温で一晩NaBH4(250mg)で還元した。粗生成物をシリカゲル(EtOAc:CH2Cl2、2:8)カラムを通して精製し、純粋な7-(4’-ニトロフェニルオキシ)-4-クロマノ−ル(550mg)を得た。この化合物(550mg)を、CH2Cl2(30mL)中のチオニルクロライド(0.28g)により0℃1時間で、そして次いで室温3時間で塩化物に変化した。操作により、粗4-クロロ-7-(4’-ニトロフェニルオキシ)-クロマン(500mg)を得た。これをN-シクロヘキシルピペラジン(0.9g)と共に130℃で1時間加熱した。次いで混合物を水(35mL)で希釈し、K2CO3で塩基性にし、そしてEtOAcで抽出した。乾燥有機層から蒸発により得られた残基を、TLC等級シリカゲル(35g)のカラムを通して精製した。所望の生成物を、アセトニトリルから再結晶化した(m.p.67〜68℃)。
【0120】
実施例3:
【0121】
【化27】

6-ヒドロキシテトラロン、4:
6-メトキシテトラロン(35mmol)およびAlBr3(75mmol)のトルエン(250mL)溶液を、油浴上で100℃で5〜6時間加熱した。溶液を室温まで冷却し、そして次いで1NHCl(200mL)および破砕した氷(500g)の混合物中に注いだ。これをEtOAc(300mL)と共に撹拌し、そして焼結ガラス漏斗を通して濾過した。濾過物を分液漏斗に移し、そして水層をEtOAc(2×100mL)で抽出した。有機層を合わせ、そしてMgSO4で乾燥し、濾過および蒸発し、固体の6-ヒドロキシテトラロンを得た。これをNMRおよびTLC(1:1ヘキサン:EtOAc)により純粋であった。
【0122】
6-[(2-ピリミジニル)オキシ]-テトラロン、5:
6-ヒドロキシテトラロン(31mmol)を乾燥DMF(50mL)中に溶解し、氷/水浴中で冷却し、そして窒素流で包括した(blanket)。NaH(鉱油中60%、31mmol)をゆっくり添加し、分与した。気体放出を止めた時点で2-クロロピリミジン(31mmol)を添加し、氷浴を除去し、そして溶液を100℃で1.5時間加熱した。次いでそれを室温まで冷却し、そして溶媒を真空下で除去した。残渣を水およびCH2Cl2(各々200mL)で処理した。有機層の蒸発により、フラッシュクロマトグラフィー(1:1ヘキサン:EtOAc)により精製された、6-[(2-ピリミジニル)オキシ]-テトラロンを有する粗物質を、黄色い粉末として得た。
【0123】
4-シクロヘキシル-1-ピペラジニル-[6-[(2-ピリミジニル)オキシ]]-1,2,3,4-テトラヒドロナフタレン、6:
6-[(2-ピリミジニル)オキシ]-テトラロン(3.2mmol)、N-シクロヘキシルピペラジン(3.2mmol)、およびTi(O-2-Pr)4(3.2mmol)を、CH2Cl2(10mL)に溶解した。この溶液を室温で20時間撹拌し、そして次いで、NaCNBH3(5mLEtOH中6.4mmol)でクエンチした。水(20mL)を添加し、得られた混合物を「セライト」のパッド(pad)を通して濾過し、そしてその残渣をCH2Cl2(10mL)ですすいだ。有機層をNa2SO4で乾燥し、そして蒸発して粗生成物をオイルとして得た。TLC等級シリカゲルおよび溶出液として100:3:1CH2Cl2:EtOH:NH4OHのカラムクロマトグラフィーによる精製は、純粋な生成物である4−シクロヘキシル-1-ピペリジニル-[6-[(2-ピリミジニル)オキシ]]-1,2,3,4-テトラヒドロナフタレンを生じた。これをEtOAcに溶解し、2当量のマレイン酸と共に加熱することにより、ジマレエート塩(m.p.179-181.5℃)に変換した。
【0124】
実施例4:
【0125】
【化28】

5-((2-ピリミジニル)オキシ)インダノン:
5-ヒドロキシインダノン(3.2g、21.6mmol)を、N2吸引口および還流コンデンサーを取り付けた3首フラスコ内で、乾燥DMF(20mL)中に溶解した。この系をN2で包括し、そして鉱油(860mg)中の60%NaHをゆっくりと添加し、そして0℃で静置した。次いで2-クロロピリミシン(2.5g)を添加し、氷浴を油浴と交換し、そして溶液を100℃で3時間加熱した。次いでこれを、真空下でのDMFの除去の前に、室温まで冷却した。この残渣に水(50mL)を添加し、混合物をCH2Cl2(50mL)で抽出し、そして水層をさらにCH2Cl2で二回抽出した。有機層を1NNaOH(50mL)で抽出して未反応のフェノールを除去し、次いでNa2SO4で乾燥し、そして暗茶色の固体(3.6g)にまで蒸発した。この固体をEtOAcで抽出した;不溶性沈殿を濾過除去した。濾液を前述のように乾燥し、NMRおよびTLC(1:1 ヘキサン:EtOAc)により純粋である生成物を生成した。
【0126】
2-(2-(シクロヘキシルメチル)-3H-1-オキソ-インデン-5-イル)ピリミジン、8:
酢酸(0.2mL)、続いてシクロヘキサンカルボキシアルデヒド(918mg、8.2mmol)および5-[(2-ピリミジニル)オキシ]-インダノン、(1.85g、8.2mmol)(上記の5と同じ経路により合成された)を、ピペリジン(0.25mL)に、0℃で添加した。この混合物を100℃で25分間加熱した。メタノール(20mL)をこの熱い溶液に添加し、冷却後、真空下で濃縮した。残渣を水およびCH2Cl2(各々20mL)で処理し、そして有機層をNa2SO4で乾燥した。溶媒の蒸発により、粗生成物を、暗茶色のオイルとして得た。1:1 ヘキサン:酢酸エチルでのフラッシュクロマトグラフィーによる精製により、純粋なエノン、を得た。
【0127】
2-(2-(シクロヘキシルメチル)-2,3-ジヒドロ-1-オキソ-インダン-5-イル)ピリミジン:
エノンを、Parr装置で45分間、10%Pd-C触媒(100mg)により飽和ケトンに完全に還元した。触媒を濾過除去し、飽和ケトンを得た。
【0128】
ケトンの代替的還元(一般的手順)
ケトン(1当量)をEtOHに溶解し、そしてNaBH4(0.75当量)を添加する。これを室温で撹拌し、そしてケトンが全て見えなくなり(約2〜4時間)、および反応が完結するまでTLC(1:1 ヘキサン:EtOAc)によりモニターする。次いでEtOHを真空下で除去し、そして残渣を等量のCH2Cl2および水で処理する。有機層をNa2SO4で乾燥し、そして溶媒を蒸発させて粗アルコールを得、これを精製することなく直接使用した。
【0129】
アルコールからクロライドへの変換(一般的手順)
アルコール(1当量)をCH2Cl2に溶解し、そして氷水浴中で冷却する。次いで塩化チオニル(1.2当量)を添加し、そして溶液をCaSO4乾燥管下で撹拌し、そしてアルコールが見えなくなるまでTLC(ヘキサン中25%EtOAc)によりモニターする。等量の水を添加し、そして混合物を固体NaHCO3によりpH8まで塩基性化する。水層をCH2Cl2で抽出する。有機抽出物を合わせ、乾燥そして蒸発し、粗クロライドを得、これをさらなる精製をしないで使用した。
【0130】
2-[[1-(4-シクロヘキシル-1-ピペラジニル)-2-(シクロヘキシルメチル)-2,3-ジヒドロ-1H-インデン-5-イル]オキシ]ピリミジン、9:
クロライド(1当量)およびシクロヘキシルピペラジンをCH3CNに溶解し、2時間還流し、そして次いで室温まで冷却した。水を添加し、そして混合物をEtOAc(4×)で抽出した。有機抽出物を乾燥しそして蒸発し、粗生成物を得た。これをTLC等級シリカゲルおよび溶出液としてEtOAcを使用して、カラムクロマトグラフィーにより精製した。
【0131】
2-[[1-(4-シクロヘキシル-1-ピペラジニル)-2-(シクロヘキシルメチル)-2,3-ジヒドロ-1H-イデン-5-イル]オキシ]ピリミジンジマレートは、ジアステレオマーの混合物(割合は未知である、m.p.150〜154℃)であった。
【0132】
実施例5
【0133】
【化29】

アルコール(0.4g)を、塩化チオニル(20mL)で、周辺温度で3時間処置した。塩化チオニルを真空下で除去し、粗生成物をピペリジノピペリジン(1.22g)で処置し、そして反応混合物を一晩130℃で加熱した。この時間の終わりに、反応混合物を周辺温度まで冷却し、ジクロロメタンで希釈し、そして10%水酸化ナトリウム溶液で洗浄した。粗生成物をシリカゲル(トリエチルアミン:酢酸エチル 1:20)で精製し、所望の生成物(0.05g)を得た。
C26H35N2O3SについてのHRMS:計算値:455.2368;実測値:455.2373。
【0134】
実施例6
2-[[1-(4-シクロヘキシル-1-ピペラジニル)-2-(シクロヘキシルメチル)-2,3-ジヒドロ-1H-インデン-5-イル]オキシ]ピリミジン、9:x
【0135】
【化30】

クロライド(0.6g、2.0mmol)(実施例5のプロセスの第1の粗生成物由来)、DMF(10mL)、ヨウ化ナトリウム(1.8g)、トリエチルアミン(0.21g)、およびピペラジン(0.38g、2.0mmol)を一晩50℃で加熱し、そしてさらに2時間70℃で撹拌した。次いで、反応混合物を室温まで冷却し、そして酢酸エチルで希釈した。この溶液を10%Na2CO3、水、およびブラインで洗浄し、そして次いで濃縮して2つのジアステレオマーの混合物を得た。酢酸エチルを使用して、シリカゲル上でクロマトグラフィーにより分離を行った;ジアステレオマーのRf:異性体A(化合物14、表1)=0.3、および異性体B(化合物15、表1)=0.4。
【0136】
表において記載されるまたは表のすぐ後の式により列挙されるさらなる化合物は、類似の方法により調製され得る。
【0137】
本発明の多数の実施態様が本明細書中で記載され、実施態様は、本明細書の組成物およびプロセスを利用する他の実施態様を提供するために改変され得ることが明らかである。従って、本発明の範囲は、前述の明細書で規定される別の実施態様および改変が含まれ;そして本発明は、実施例の方法により本明細書中に示される特定の実施態様に限られないことが理解される。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
本明細書に記載の化合物。

【公開番号】特開2009−40778(P2009−40778A)
【公開日】平成21年2月26日(2009.2.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−194199(P2008−194199)
【出願日】平成20年7月28日(2008.7.28)
【分割の表示】特願平10−504196の分割
【原出願日】平成9年6月26日(1997.6.26)
【出願人】(596129215)シェーリング コーポレイション (785)
【氏名又は名称原語表記】Schering Corporation
【Fターム(参考)】