説明

メタノールからジメチルエーテルを製造するプロセス

メタノールからジメチルエーテルを製造するプロセスを開示する。このプロセスは、吸収カラムにおいて使用される吸収液が、DME分留カラムの底部の液体および/またはメタノール回収カラムの底部の廃水であることを特徴とする。このプロセスによって、装置のエネルギー消費を大幅に削減することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、メタノールからジメチルエーテルを製造する方法、さらに具体的には、流動化可能な触媒、可動性を有する触媒、または流動性を有する触媒を入れた反応器内にて、気相の状態でメタノールを脱水することによってジメチルエーテルを製造する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ジメチルエーテル(DME)は、一段階法および二段階法によって製造可能である。一段階法とは、合成ガスからDMEを一段階で合成する方法であり、二段階法とは、合成ガスからメタノールを合成し、次に脱水を介してDMEを調製する方法である。
【0003】
二段階法は、合成ガスからメタノールを合成するステップと、その後の酸の触媒作用でメタノールを脱水してDMEを調製するステップとの、2つのステップで実施される。DME合成の二段階法は、国内外において、DMEを製造するための主要なプロセスである。この二段階法は純度の高いメタノールを供給原料として使用する。また、二段階法には、脱水反応で発生する副生成物が比較的少ない、ジメチルエーテルが高純度である、成熟した手法である、装置が広い適応性を有する、および後処理が簡易であるという利点がある。二段階法は、メタノール工場でそのまま使用することも、あるいは、設置された施設を有するメタノール以外の工場で使用することも可能である。一般に、γAl/SiOを備えたZSM−5型分子篩が、国内外で脱水用触媒として使用されている。脱水温度は、0.5MPa〜0.8MPaの圧力下では280℃〜340℃に制御される。シングルパスによるメタノールの転化率は70%〜85%であり、DMEの選択性は98%を超える。
【0004】
中国特許出願公開第1180064号明細書には、DMEの製造方法が開示されている。この方法では、メタノールを供給原料として使用している。この脱水反応は、一度も使用していない触媒の存在下にて、比較的低温(100℃〜125℃)、常圧(0MPa〜0.05MPa、ゲージ圧)で実施されて、DMEガスが生成される。
【0005】
中国特許出願公開第1368493号明細書には、触媒を利用してメタノールを脱水することによってDMEを製造する方法が開示されている。この方法は、触媒を利用してメタノールを脱水することによってDMEを製造する方法に関連し、この脱水は、SO2+を含有する固体酸触媒の存在下にて実施される。触媒中におけるこのSO2+の含有量は、好ましくは2重量%〜25重量%である。好ましい触媒担体は、γ−Al、η−Al、およびSiOから選択されたものである。
【0006】
中国特許出願公開第1301686号明細書には、メタノールを脱水することによってDMEを製造する方法が開示されている。この方法において、触媒は、出発物質としてカオリンを使用し、硫酸によって変化を加えられたものであって、DMEを生成するためにメタノールの脱水反応にて使用される。
【0007】
米国特許出願公開第2004/0034255号明細書には、気相のメタノールの脱水反応に活性アルミナで触媒作用を及ぼすことによって、DMEを製造する方法が開示されている。この活性アルミナは、孔径が2.5nm〜8.0nmであり、NaOの含有量が0.07%未満である。
【0008】
上記の各方法は、メタノールの脱水反応に複合性の固体酸、酸によって変化を加えられたカオリン、活性アルミナなどで触媒作用を及ぼすことによって、DMEを製造することに主に関連している。また、これらの方法は、ファインケミカル向けのDMEの製造には主に固定床反応器を使用し、製造規模が小さく、かつ製造コストが比較的高い。
【0009】
さらに、メタノールの脱水反応は、強力な発熱反応であって、一般に、反応器として断熱性または連続熱交換性の固定床反応器が使用されるので、固定床の温度を制御することが困難である。
【0010】
現在、触媒を利用してメタノールを気相の状態で脱水してDMEを製造する技術的プロセスは、一般に以下のように行われる。供給原料用メタノールが、気化器または気化カラムを介して加熱されてすべて気化し、その後、反応器に送られて反応する。反応器からの反応生成物が冷却され、その後、DME精留カラムに送られて精留分離される。DME精留カラムの最上部からDME生成物が得られ、メタノールと水との混合物がDME精留カラムの底部から排出されてメタノール回収カラムに入り、精留分離される。メタノール回収カラムの最上部から得られたメタノールが、メタノールバッファタンクに戻されて、供給原料用メタノールと混合されて再気化する。さらに、メタノール回収カラムの底部から廃水が系外へ排出される。
【0011】
米国特許第5,037,511号明細書には、メタノールから純粋なDMEを製造する方法が開示されている。この方法では、メタノールが熱交換によって気化し、断熱性固定床反応器内で触媒を利用した脱水反応に供される。脱水反応生成物はDME精留カラムに入って精留され、高純度のDME生成物が生成される。カラムの最上部からの非凝縮性ガスは、供給原料用メタノールで洗浄されて放出される。反応器内には熱収集器が存在しないので、メタノールの脱水反応は、反応温度の範囲が広く、メタノールの転化率が低く、副生成物の発生量が比較的多い。精留カラムには塩基洗浄ラインおよび水洗浄ラインが備え付けられており、プロセスは相当複雑である。
【0012】
中国特許出願第ZL95113028.5号明細書には、メタノールからDMEを製造する方法が開示されている。該明細書の目的は、未処理のメタノールを供給原料として使用可能な、DMEの製造プロセスを提供することである。供給原料用メタノールの濃度は72%以上である。未処理の供給原料用メタノールは気化分離カラムにまず送られて、高沸点の物質および不純物が除去され、その後、多段階冷却型反応器内にて、複合性の固体酸触媒の存在下で触媒を利用した脱水反応に供される。メタノール蒸気は該多段階冷却型反応器に段階的に入るので、早い段階で脱水反応に供されるガスはそれだけ高温であり、遅い段階の、温度が比較的低いメタノール蒸気によって冷却可能である。そのため、温度上昇を避けることができ、転化率を上げるには有利に作用する。ただし、メタノール蒸気の熱容量が低いので、メタノール蒸気には、冷却媒体としては限られた機能しかない。反応温度は、冷却型反応器内では比較的高い。反応温度の範囲は、副生成物の生成量を上げるためには、さらに比較的広くなる。したがって、この方法のシングルパスによる転化率は低く、生成量は減少し、大規模に工業的に生成するには適していない。脱水生成物は充填されたDME精留カラムに入り、純度が90%〜99.99%のDME生成物が生成されるように、精留される。DME精留カラムの最上部からの非凝縮性ガスは、吸収カラムに入って洗浄される。HやCHなどの非凝縮性ガスは、吸収カラムの最上部から放出される。吸収カラム内で使用される吸収液については、詳述しない。
【0013】
供給原料用メタノールの気化に必要な大量のエネルギー消費を削減し、設備投資を節減するという目的で、中国特許出願第200410022020.5号明細書には、DMEを製造する別の方法が提案されている。この方法では、供給原料用メタノール気化カラムおよびメタノール回収カラムを、気化/除去カラムに組み込む。70%〜99.99%のメタノール含有量を有する供給原料用メタノールが、気化/除去カラムの最上部に入り、該カラム内で気化する。DME精留カラムの底部の液体は、気化/除去カラムの中央部に入り、該カラム内でメタノールおよび水が分離される。該気化/除去カラムは、供給原料用メタノールを気化させる機能と、メタノール水溶液を分離回収する機能との両方の機能を有する。この方法では、メタノール回収カラムおよび付属品に対する投資が不要になるばかりではなく、DME精留カラムの底部からの混合液体から、メタノールを回収するためのエネルギー消費を大きく削減する。ただし、この方法では、供給原料用メタノールがすべて気化カラムに入ってしまい、液相の負荷が大きすぎ、また、カラムの底部からの廃水のメタノール濃度を、実際に操作して低レベルに抑えることを保証するのは困難である。それゆえ、気化/除去カラムから来る少量のメタノールを含有する廃水を処理するために、一般に、もう一つの除去カラムが必要である。同時に、液相の負荷が重いので、気化/除去カラムは、カラムの直径を大きくすべきであり、その結果、投資は増加する。特に、供給原料用メタノールが低濃度である場合、カラムの最上部の気相におけるメタノールの濃度を調節することは不可能であり、該メタノールは大量の水を含有する。したがって、反応の平衡転化率が減少して、その結果、シングルパスによる生成物の収量を低下させる。
【0014】
中国特許出願第ZL200410022020.5号明細書における気化/除去カラムに重い負荷がかかるという欠点を解消するために、中国特許出願公開第1919819号明細書には、新規なDMEの製造プロセスが開示されている。該プロセスでは、メタノール材料の一部が、メタノール精留回収カラムの逆流液として、メタノール精留回収カラムの最上部に入り、メタノール材料の残りの部分がメタノール予備ヒータに入って、反応によって形成される混合ガスと熱交換し、メタノール精留回収カラムの最上部のガスとともにメタノール過熱器に入り、その後、冷却管反応器に入って反応する。このプロセスは、異なる供給原料用メタノールに応じて、メタノールの気化を柔軟に調節でき、メタノール精留回収カラムに対する熱的負荷を低減する。ただし、このプロセスは、依然として断熱性固定床反応器を採用しているので、反応温度が比較的高く、生成される副生成物も比較的多い。
【0015】
中国特許出願公開第1830934号明細書には、メタノールからDMEを製造する方法が開示されている。この方法では、一体型熱交換カランドリアを備えた固定床反応器を使用する。メタノールガスを使用して、該熱交換カランドリア内の反応熱の一部を取り除く。こうすることによって、固定床反応器内の反応温度が比較的高いという問題がある程度解消される。供給原料用メタノールは、まずアルコール洗浄カラムに入り、DME精留カラムから反応副生成物として来る非凝縮性排ガスを洗浄分離し、その後、メタノールカラムに入って気化する。気化したメタノールは、上記反応器の一体型熱交換カランドリアに入って過熱され、その後、反応器の最上部から触媒床に入って反応する。熱交換後、反応生成物は、気相の状態で上記DME精留カラムに入って精留される。この方法では、反応熱の一部が使用され、反応温度の上昇および反応副生成物の生成が低減される。ただし、熱収集媒体は気相のメタノールであるから、ガスの顕熱によってのみ熱を取り除いても、効果は限られている。このように、反応器の温度の制御およびエネルギー消費量の削減による効果は、大したものではない。
【0016】
まとめると、既存の各種DME製造方法の1つの特徴は、メタノール回収カラムによって回収するメタノールを含む、供給原料用メタノールにある。メタノールが気化するために必要な熱は、常に、気化器、気化カラム、メタノール回収カラム、または反応生成物から得られており、メタノールの脱水反応から直接得られているわけではない。したがって、該反応は、温度の上昇が大きく、副生成物の生成量が多い。一方で、反応器内のメタノールの脱水反応温度を制御するために、既存の方法では、気相のメタノールは、例えばメタノールガスが冷却型反応器に注入される直接的熱交換式、または一体型熱交換カランドリアにおいて採用されているような間接的熱交換式の冷却媒体として使用されている。ただし、熱収集媒体は気相のメタノールであるから、ガスの顕熱によってのみ熱を取り除いても、効果は限られている。したがって、反応器の温度の制御およびエネルギー消費量の削減による効果は、大したものではない。
【0017】
既存のDME製造方法のもう一つの特徴は、供給原料用メタノールが、アルコール洗浄カラムまたは吸収カラムにおいて洗浄液または吸収液として使用されることにある。気体/液体分離器の最上部またはDME精留カラムの最上部から放出された非凝縮性ガスには、少量のメタノールおよびDMEが混入しており、これらは、既存の方法では供給原料用メタノールを用いて吸収される。ただし、メタノールに対するDMEの溶解度は低い。それゆえ、アルコール洗浄カラムまたは吸収カラムに供給する大量の供給原料用メタノールが必要となり、吸収効率が低くなる。DME生成の規模をスケールアップする際には、メタノールおよびDMEが反応生成物中の大量の非凝縮性ガスに混入しているので、大量のメタノールが洗浄および吸収のために必要となる。この結果、アルコール洗浄カラムおよび吸収カラムに対して大きな液相の負荷が発生し、カラム直径は大きくなり、設備投資が増加する。
【発明の概要】
【0018】
本発明の目的は、新規なDMEの製造プロセスを提供することである。該プロセスは、流動床型反応器を用いたDMEの製造に特に適した製造プロセスであり、触媒を用いてメタノールを脱水することによるDMEの生成から得られる反応熱をすべて利用できる可能性を有し、放出される非凝縮性ガス中のメタノールの含有量を低減させ、DMEの大規模な工業生産に対して求められる要求を満たすことができる。
【0019】
本発明は、以下のステップを備える、メタノールからジメチルエーテルを製造する方法を提供する。
【0020】
供給原料用メタノールを触媒流動化反応器に供給して触媒に接触させ、脱水反応を実施して脱水反応物流(脱水反応ストリーム、dehydrated reaction stream)を発生させ、
さらに、該脱水反応物流を気体/固体分離器に通して触媒から分離し、炭素が付着した触媒および脱水反応生成物を得、
炭素が付着した該触媒の一部またはすべてを再生器に供給してコークスを燃焼させ、連続的または断続的に再生を行い、さらに、再生された触媒を該反応器に戻して該供給原料用メタノールに接触させて反応させ、
吸収カラムおよびDME精留カラム、ならびに必要に応じてメタノール回収カラムを備えた分離装置に、該脱水反応生成物を供給し、主にDMEからなる生成物流をDME精留カラムの上部において得、DMEおよび/またはメタノールが混入している非凝縮性ガスを該DME精留カラムの最上部において得、該非凝縮性ガスを該吸収カラムに供給して、混入しているDMEおよび/またはメタノールを吸収液で吸収し、該DME精留カラムの底部の液体は実質的に未転化のメタノールおよび水からなり、該DME精留カラムの底部の液体を必要に応じて該メタノール回収カラムによって分離して、該メタノール回収カラムの上部においてメタノールを得、さらに、該メタノール回収カラムの底部において廃水を得、かつ、
該吸収カラムにおいて使用される該吸収液は、該DME精留カラムの底部の液体、および/または該メタノール回収カラムの底部からの廃水である。
【0021】
本発明における上記方法を用いれば、床部の反応温度を効率的に制御し、メタノールのDMEへの連続的な転化を保証することができる。メタノールの転化率は、一般に80%を超える。DMEの選択性率は、98%よりも高い。エネルギー消費は、大幅に削減され得る。
【0022】
本発明における上記供給原料用メタノールのメタノール含有量は、5重量%〜100重量%、好ましくは50重量%〜100重量%、より好ましくは90重量%〜100重量%であり、該メタノールには少量の不純物、例えば水が含まれている。供給原料用メタノールは、例えば天然ガス、石炭、オイルサンド、石油、および/またはその他の任意の原料から得られたメタノールなどの種々の化石燃料を原料として、気化および合成によって生成される未処理のメタノールである。供給原料用メタノールは、反応生成物またはその他の熱源との熱交換後の液相または気相の状態で供給されてもよい。
【0023】
上記触媒は、Y型ゼオライトおよび必要に応じてその他の分子篩を含有してもよく、無機酸化物および粘土は含有しなくてもよい。この場合、Y型ゼオライトに対するその他の分子篩の重量比は、0〜10である。この触媒は、好ましくは、無機酸化物、粘土、Y型ゼオライト、および必要に応じてその他の分子篩を含有する。この場合、Y型ゼオライトに対するその他の分子篩の重量比は0〜10であり、その他の分子篩およびY型ゼオライトの総量が、上記触媒の10重量%〜80重量%を占めている。
【0024】
上記Y型ゼオライトは、Y型ゼオライトおよびその誘導体、または変化を加えられたゼオライトなどがその例としてあげられ、Y、HY、REY、REHY、USY、REUSY、およびこれらの混合物からなる群より選択される。
【0025】
上記その他の分子篩は、メソ細孔性のゼオライト、β型ゼオライト、およびSAPO型分子篩から選択された1つ以上の分子篩である。
【0026】
上記メソ細孔性のゼオライトには、(希土類で変化を加えられた)ZRP系列のゼオライト、(鉄で変化を加えられた)ZSP系列のゼオライト、ZSM系列のゼオライト、およびこれらの誘導体、または変化を加えられたゼオライトが含まれる。ZRPのさらに詳細な記述は、米国特許第5,232,675号明細書を参照すればよい。上記ZSM系列のゼオライトは、ZSM−5、ZSM−11、ZSM−12、ZSM−22、ZSM−23、ZSM−35、ZSM38、ZSM−48、および同様の構造を有するその他のゼオライトからなる群より選択される。ZSM−5のさらに詳細な記述は、米国特許第3,702,886号明細書を参照すればよい。
【0027】
より好ましい触媒は、Y型ゼオライト、メソ細孔性のゼオライト、無機酸化物、および粘土を含有する。この場合、Y型ゼオライトに対するメソ細孔性のゼオライトの重量比は0.1〜10であり、メソ細孔性のゼオライトおよびY型ゼオライトの総重量が、上記触媒の総重量の10%〜80%を占めている。
【0028】
上記無機酸化物は、アルミナ、シリカ、非結晶のシリカアルミナ、およびこれらの混合物からなる群より選択される。上記粘土は、カオリンおよび/またはハロイサイトである。
【0029】
上記脱水反応は、1Pa〜1500kPa、好ましくは1kPa〜1000kPa、より好ましくは1〜900kPaの圧力(本明細書中の圧力はすべてゲージ圧で表している)下において100℃〜550℃、好ましくは150℃〜380℃の温度で、上記供給原料用メタノールに対する上記触媒の重量比が0.001〜50、好ましくは0.005〜40、重量空間速度が0.01h−1〜100h−1、好ましくは0.1h−1〜50h−1にて実施される。
【0030】
コークスの燃焼に供される、炭素が付着した触媒の比率は、炭素が付着した触媒の総重量を基準にすると0.5%〜100%である。炭素が付着した上記触媒の一部が再生器に入ってコークスの燃焼によって再生される際に、残存する該炭素が付着した触媒は反応器に戻り、コークスの燃焼に供される該炭素が付着した触媒の該一部は、炭素が付着した触媒の総重量に対して0.5%〜99%を占めている。
【0031】
上記再生は、一段階からなる再生または二段階からなる再生であり、上記再生された触媒は、部分的に再生された触媒(つまり半再生された触媒)および/または完全に再生された触媒である。
【0032】
Y型ゼオライトを含有する上記触媒は、一度も使用されていない触媒、再生された触媒、半再生された触媒、再生されるための触媒、およびこれらの組み合わせ、からなる群より選択される。
【0033】
上記触媒流動化反応器は、流動床、ライザー、降下輸送ライン反応器、ライザーと流動床との複合型反応器、ライザーと降下輸送ラインとの複合型反応器、2つ以上のライザー同士の複合型反応器、2つ以上の流動床同士の複合型反応器、および2つ以上の降下輸送ライン同士の複合型反応器からなる群より選択される。これらの各反応器は2つ以上の反応領域(ゾーン)に分割されていてもよい。該ライザーは、好ましくは、等直径型ライザー、等速型ライザー、および各種直径可変型ライザーから選択された1つ以上のライザーである。該流動床は、好ましくは、固定流動床、粒子流動床、通気床、乱流床、高速床、輸送床、および濃密相流動床から選択された1つ以上の流動床である。好適な反応器は流動床、より好ましくは濃密相流動床である。
【0034】
上記再生された触媒は、冷却されなくてもよく、あるいは100℃〜650℃まで冷却された後に反応器に戻されてもよい。この冷却は、直接的熱交換によって実施されても、間接的熱交換によって実施されてもよい。この直接的熱交換は、上記再生された触媒を、該触媒より低い温度の空気または蒸気に直接接触させて行うものである。この空気は、空気圧縮機で圧縮された後に再生器に供給される空気の、一部またはすべてである。すなわち、再生された触媒の一部から得られる高温の熱エネルギーが、再生器に入る空気を予備加熱するために用いられる。直接的熱交換体は、流動床またはライザーにおいて具現化される。冷却された触媒は、サイクロン分離器内で分離された後、N、O、およびCOなどの不純物ガスを除去するために、高温の蒸気で除去され、そしてアルコールの触媒転化反応器に供給される。間接的熱交換は、熱交換体を使用するものであって、高温の触媒が該熱交換体のシェルを通過し、飽和水またはその他の熱交換媒体が該熱交換体の管を通過する。
【0035】
1つの好適な実施形態によれば、上記供給原料用メタノールは、触媒流動化反応器に供給されて上記触媒に接触させられる前に、上記反応器内の反応物流および触媒、ならびに/または上記再生器内の触媒と間接的に熱交換する。
【0036】
1つの好適な実施形態によれば、上記分離装置は、吸収カラム、DME精留カラム、およびメタノール回収カラムを備え、上記DME精留カラムの底部における液体の99.9体積%〜90体積%が、上記メタノール回収カラムに供給され、該DME精留カラムの底部における液体の0.1体積%〜10体積%が、吸収液として吸収カラムに供給される。
【0037】
1つの好適な実施形態によれば、上記分離装置は、気体/液体分離器をさらに備え、上記脱水反応生成物および/または吸収カラムの底部の液体は、該気体/液体分離器に供給され、気体/液体分離の後に液相部および気相部が得られ、該液相部は上記DME精留カラムに供給され、該気相部は上記吸収カラムに供給される。
【0038】
1つの好適な実施形態によれば、上記DME精留カラムは、充填カラムまたはプレートカラムである。該DME精留カラムは、0.1MPa〜1.5MPa、好ましくは0.5MPa〜1.2MPaの圧力下で運転される。該DME精留カラムは、カラムの最上部の温度が20℃〜90℃、カラムの底部の温度が100℃〜220℃において運転される。該DME精留カラムの理論的なプレート枚数は、10〜35である。該DME精留カラムの導入口は、該カラムの上側から数えて4枚目のプレートと16枚目のプレートとの間の位置にある。該DME精留カラムのDMEのための排出口は、該カラムの上側から数えて1枚目のプレートと5枚目のプレートとの間の位置にある。
【0039】
1つの好適な実施形態によれば、上記メタノール回収カラムは、充填カラムまたはプレートカラムである。該メタノール回収カラムは、0.01MPa〜0.6MPa、好ましくは0.1MPa〜0.5MPaの圧力下で運転される。該メタノール回収カラムは、カラムの最上部の温度が65℃〜170℃、カラムの底部の温度が100℃〜220℃において運転される。該メタノール回収カラムの理論的なプレート枚数は、10〜35である。該メタノール回収カラムの導入口は、該カラムの上側から数えて4枚目のプレートと16枚目のプレートとの間の位置にある。該メタノール回収カラムのメタノール蒸気のための排出口は、該カラムの上側から数えて1枚目のプレートと5枚目のプレートとの間の位置にある。
【0040】
1つの好適な実施形態によれば、上記吸収/回収カラムは、充填カラムまたはプレートカラムである。該吸収/回収カラムは、0.1MPa〜1.5MPa、好ましくは0.5MPa〜1.2MPaの圧力下で運転される。該吸収/回収カラムは、30℃〜70℃の温度で運転される。該吸収/回収カラムの理論的なプレート枚数は、1〜15である。該吸収/回収カラムの導入口は、該カラムの中ほど下寄り(middle-lower)の位置にある。
【図面の簡単な説明】
【0041】
【図1】本発明における、メタノールからDMEを生成する簡易プロセスチャートである。
【図2】本発明の一実施形態における、詳細なプロセスチャートである。
【図3】本発明の一実施形態における、詳細なプロセスチャートである。
【図4】常圧、25℃でのメタノール水溶液中における、DMEの溶解度を示すチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0042】
以下に、図面を参照しながら、本発明の好適な実施形態について詳細に説明する。後述の例は、単に例証するためのものであって、本発明の範囲を限定するものと理解すべきではない。本発明の範囲は、請求項および当該請求項に相当するものによってのみ規定される。開示された実施形態に加えられる各種の変更および修正は、当業者にとって明らかであって、その精神および範囲から逸脱することなく実施され得る。
【0043】
本発明の簡易プロセスチャートを、図1に示す。図1中では、再生器が101で示され、メタノール脱水反応器が102で示されている。
【0044】
再生器101からの高温の触媒は、ライン111を介して反応器102に供給される。この高温の触媒は、反応器102に入る前に、熱交換体104で冷却される。供給原料用メタノールは、熱交換体105における熱交換後に、ライン121を介して反応器102に供給され、ライン111から来る上記高温の触媒と接触して、メタノールの脱水反応を行う。この反応が完了した後、主にDMEからなる、形成された反応生成物は、触媒から分離され、反応器102を出てライン122を通り、分離装置103に供給される。分離装置内では、反応生成物が、主にDMEからなる気体生成物と主にメタノールからなる液体生成物とにさらに分離される。この気体生成物は、該装置を出てライン131を通り、タンクフォーム(図示せず)に供給される。分離された液体メタノールは、ライン132を介して供給原料系(図示せず)に戻されて、再利用される。分離された触媒の一部は、ライン124を介してメタノール脱水反応器102に戻されて使用され、別の一部は、ライン123を介して再生器に戻されて、再生後に繰り返し使用される。
【0045】
本発明のプロセスを、図2および図3を参照しながらさらに説明するが、この説明は本発明を限定するものではない。
【0046】
図2に示すように、70重量%〜99.99重量%のメタノール濃度を有する供給原料用メタノールが、メタノール予備ヒータ11に供給されて、形成された反応混合物と熱交換し、その後、メタノール気化器6に供給されて気化する。メタノール気化器は、水平型構造または垂直型構造を有し、0.1MPa〜1.5MPaの圧力下にて65℃〜160℃の温度で運転される。メタノール気化器の上部には飽和メタノール蒸気があり、メタノール気化器の下部には飽和メタノール液がある。気化器6の最上部からのメタノールガスは、メタノール過熱用熱交換体5を通過して130℃〜240℃、好ましくは180℃〜220℃の温度にまで加熱され、その底部から流動床型反応器2に入り、触媒を利用した脱水反応が行われる。反応器2内の触媒は、非活性化された後、再生器1に送られて0.1MPa〜1.5MPaの圧力下にて、再生温度が450℃〜750℃、好ましくは550℃〜700℃、空間速度が0.1h−1〜10h−1で再生される。反応器内の触媒の非活性化速度に応じて、この触媒の一部またはすべてが連続的または断続的に再生されればよい。反応生成物は、反応器2の最上部から収集され、メタノール過熱用熱交換体5、メタノール予備ヒータ11、および未処理DME予備ヒータ12を通過し、気体/液体分離器7に入る。気体と液体とを分離した後、液体部分はDME精留カラム9の中央部に入り、気体部分は吸収カラム8に入る。反応で生じた非凝縮性ガスに混入しているメタノール、DMEなどは、吸収カラム内の吸収液17によって吸収され、気体/液体分離器7に戻る。H、CHなどの比較的軽い成分16は、吸収カラム8の最上部から放出される。DME精留カラム9に入る液体反応生成物は精留分離されて、精留カラムの上部で適切なDME生成物18が収集される。また、精留カラムの最上部で得られた非凝縮性ガスは、吸収カラム8に供給される。カラム9の底部の液体は、主に、反応において生成された未転化のメタノールおよび水(供給原料に含有されている水を含む)からなる。このカラムの底部の液体は、その大半、例えば99.9%〜90%、好ましくは99%〜92%、より好ましくは99%〜95%が、メタノール回収カラム10に供給されて、メタノールが回収される。カラムの底部にある液体のうちのわずかな量、例えば0.1%〜10%、好ましくは1%〜8%、より好ましくは1%〜5%が、吸収液17として吸収カラム8に戻る。メタノール流19は、メタノール回収カラム10の上部で収集されて、供給原料系(図示せず)に戻る。カラムの底部にある液体の廃水20は、廃水処理系(図示せず)に送られる。
【0047】
DME生成の規模をスケールアップする際には、設備投資を節減し、DME精留カラムの負荷を低減するために、図3に図示された本発明の製造設備を使用してもよい。具体的には、反応生成物が反応器2の最上部から収集され、メタノール過熱用熱交換体5およびメタノール予備ヒータ11を通り、飽和気体および飽和液体の二相の形態で、DME精留カラム9の中央部に入り、精留分離されて、精留カラムの上部で適切なDME生成物18が収集される。精留カラム最上部で得られる非凝縮性ガスは、吸収カラム8に供給される。最上部から得られた非凝縮性ガスに混入しているメタノール、DMEなどは、吸収カラム8内の吸収液17によって吸収されて、DME精留カラム9の中央部に戻る。H、CHなどの比較的軽い成分16は、吸収カラム8の最上部から放出される。
【0048】
メタノールの脱水反応は、強力な発熱反応である。その温度上昇は、脱水反応の平衡転化率を上昇させるには不利である。分子篩触媒の場合、比較的高い反応速度および安定性が得られるように、反応は240℃〜350℃の温度で実施されるべきである。温度が高すぎると、副生成物の生成量が増加し、その結果、反応の選択性が低下する。したがって、高い反応転化率および高い選択性を保証できるように、一旦適切な反応温度に到達したら、反応熱を排出し、触媒床の温度上昇を制御し、触媒床の温度の一様性を維持することが必要である。本発明における流動床型反応器中の液体および触媒の粒子の運動によって、触媒床は優れた熱伝達性質を有する。床部内側の温度は一様であって、しかも制御がしやすい。したがって、該流動床型反応器は、強力な発熱反応、例えば、触媒を利用したメタノールの脱水反応に、特に適している。その流動床型反応器には、コイル管型もしくはU字管型の内部熱収集器、または外部熱収集器を設けてもよい。その熱収集媒体は、メタノール気化器6から来る飽和メタノール液、および/またはメタノールポンプから来る熱交換を受けたもしくは熱交換を受けていない不飽和低温メタノール液である。飽和メタノール液および/または不飽和低温メタノール液は、内部熱収集器または外部熱収集器において気化して熱を取り除いた後、メタノール気化器に戻る。反応とともに、触媒床の温度が徐々に上昇するが、発生する熱は内部熱収集器または外部熱収集器内でメタノール液によって取り除かれ、温度上昇は効果的に制御され、反応温度が最適な反応温度の範囲で安定化し、副反応が効果的に避けられる。熱収集器におけるメタノールの気化は、反応熱を直接消費する。メタノール気化器6に戻ったメタノール気体/液体の混合物を分離した後、メタノール蒸気が供給原料として供給されて反応し、飽和液体が熱を循環式に収集することが可能になる。これが、本発明における、メタノール液を利用して熱を取り除くための独創的な設計である。この方法によって、メタノール気化器のエネルギー消費を削減することができ、また、反応熱を徹底的に利用して、温度を制御するという目的を達成することができる。さらに、メタノール気化器から来る飽和メタノール液および/またはメタノールポンプから来る熱交換を受けたもしくは熱交換を受けていない不飽和低温メタノール液も、再生器の熱収集媒体として使用してもよい。コークスの燃焼によって発生する熱を再生器内で触媒が利用することによって、メタノール気化器に対する熱的負荷をさらに削減することができる。ただし、再生器内でメタノールを熱収集媒体として利用することについては、安全性に対するリスクが伴うので、実施するのであれば、さらなる詳細な設計が必要である。
【0049】
上述のように、供給原料用メタノールを気化させる機能と反応器および/または再生器から熱を直接収集する能力とを両方有する、本発明におけるメタノール気化器を使用すれば、飽和水を用いて反応器および/または再生器から熱を収集する場合に必要な飽和蒸気ドラムが不必要になるばかりではなく、メタノール気化を用いて反応熱またはコークスの燃焼熱を取り除くことによって、メタノールを急激に気化させることによるエネルギー消費を削減することもできる。
【0050】
上記DME精留カラムは、充填カラムまたはプレートカラムである。該DME精留カラムは、0.1MPa〜1.5MPa、好ましくは0.5MPa〜1.2MPaの圧力下で運転される。該DME精留カラムは、カラムの最上部の温度が20℃〜90℃、カラムの底部の温度が100℃〜220℃のもとで運転される。該DME精留カラムの理論的なプレート枚数は10〜35である。該DME精留カラムの導入口は、カラムの上側から数えて4枚目のプレートと16枚目のプレートとの間の位置にある。該DME精留カラムにおけるDMEのための排出口は、カラムの上側から数えて1枚目のプレートと5枚目のプレートとの間の位置にある。生成されたDMEの純度は、90%〜99.99%である。該DME精留カラムには、カラムの最上部に冷却器が設けられていてもよい。冷却凝縮後に、一部分は還流し、残りは生成物としてカラムを出る。カラムの最上部の質量逆流比(mass reflux ratio)は、(0.1−5):1である。少量のDMEおよびその他の炭化水素成分は、吸収カラムの最上部から供給される。
【0051】
上記メタノール回収カラムは、充填カラムまたはプレートカラムである。該メタノール回収カラムは、0.01MPa〜0.6MPa、好ましくは0.1MPa〜0.5MPaの圧力下で運転される。該メタノール回収カラムは、カラムの最上部の温度が65℃〜170℃、カラムの底部の温度が100℃〜220℃のもとで運転される。メタノール濃度は、カラムの底部で100ppm未満である。該メタノール回収カラムの理論的なプレート枚数は10〜35である。該メタノール回収カラムの導入口は、カラムの上側から数えて4枚目のプレートと16枚目のプレートとの間の位置にある。該メタノール回収カラムのメタノール蒸気のための排出口は、カラムの上側から数えて1枚目のプレートと5枚目のプレートとの間の位置にある。該メタノール回収カラムには、カラムの最上部に冷却器が設けられていてもよい。冷却凝縮後に、一部分は還流し、残りは生成物としてカラムを出る。カラムの最上部の質量逆流比は(0.1−5):1である。
【0052】
上記吸収カラムは、充填カラムまたはプレートカラムである。該吸収カラムは、0.1MPa〜1.5MPa、好ましくは0.5MPa〜1.2MPaの圧力下で運転される。該吸収カラムは、30℃〜70℃の温度で運転される。該吸収カラムの理論的なプレート枚数は1〜15である。該吸収カラムの導入口は、カラムの中ほど下寄り(middle-lower)の位置にある。吸収液は、DME精留カラムの冷却されたカラムの底部の液体および/またはメタノール回収カラムの底部からの廃水である。Cheng Weiguo and Hu Juanは、Applications and development of DME, URBAN GAS, 2006, 375 (5): 3-14において、表1に示すように、DMEがもっとも高い溶解度を示す液体は水であると記載している。
【0053】
【表1】

【0054】
DME精留カラムにおけるカラムの底部の液体は、メタノールと水との混合液体であって、かつ高純度の供給原料用メタノールと比較すると、メタノールおよびDMEガスに対して高い溶解度を有する。常圧下で25℃のメタノール水溶液におけるDMEの溶解度を複数のメタノール濃度について算出して、図4にプロットする。アルコール洗浄カラム/吸収カラムに、DME精留カラムの冷却されたカラムの底部の液体またはメタノール回収カラムの底部からの廃水を吸収液として使用することは、供給原料用メタノールを吸収液として使用することと比較すると、一方では吸収液の供給量を大幅に削減でき、他方では、供給原料用メタノールを吸収液として使用することによって起きる、供給原料中に混入しているDME生成物およびその他の不純物の問題を回避することができることがわかる。
【0055】
本発明における、メタノールからDMEを製造する方法を用いれば、床部の反応温度が効果的に制御可能であり、メタノールからDMEへの連続的な転化が保証される。本発明の一実施形態では、メタノールの転化率が80%以上であり、DMEの選択率が98%以上である。本発明の別の実施形態では、メタノールの転化率が85%以上であり、DMEの選択率が99%以上である。
【0056】
〔実施例〕
実施例1〜4を、試験的な固定流動床を使った実験装置にて実施した。実施例5〜6を、工業的実験装置にて実施した。また、実施例7〜8は、一般的な化学工学用ASPEN PLUS 12.1の計算結果に基づいたものである。メタノール反応器は、すべてが流動床型反応器であった。実施例において使用された供給原料用メタノール(Beijing Chemical Works社製)の性質を表2に示す。
【0057】
【表2】

【0058】
〔実施例1〕
本実施例において使用した触媒は、名称がMTD−1であり、触媒の総重量に対して30重量%のUSYゼオライトおよび5重量%のZSM−5ゼオライトを含有し、残量が担体である。
【0059】
ガス状の供給原料用メタノールを流動床型反応器に供給し、MTD−1触媒に接触させ、280℃の温度および0.1MPa(ゲージ圧)の圧力下で、供給原料用メタノールに対する触媒の重量比(触媒/アルコール比)が2.5および重量空間速度(WHSV)が3.0h−1のもとで反応させた。反応物流を分離して、炭素が付着した触媒および生成物流を生成した。生成物流をさらに分離して、目的とする生成物であるDMEを得た。生成物の分布を図3に示す。未反応のメタノールを流動床型反応器に戻した。炭素が付着した触媒を2つに分割して、コークスの燃焼によって再生するために50重量%を再生器に送り、残りの50重量%を、内部循環系を介して流動床型反応器に戻した。
【0060】
炭素が付着した触媒の50重量%を再生した。その後、再生された触媒を180℃まで冷却して、再利用するために流動床に戻した。
【0061】
〔実施例2〕
本実施例において使用した触媒は、名称がMTD−2であり、触媒の総重量に対して35重量%のUSYゼオライトを含有し、残量が担体である。
【0062】
液状の供給原料用メタノールを流動床型反応器に供給し、MTD−2触媒に接触させ、380℃の温度および0.1MPa(ゲージ圧)の圧力下で、供給原料用メタノールに対する触媒の重量比(触媒/アルコール比)が40および重量空間速度(WHSV)が50h−1のもとで反応させた。反応物流を分離して、炭素が付着した触媒および生成物流を生成した。生成物流をさらに分離して、目的とする生成物であるDMEを得た。生成物の分布を図3に示す。余ったメタノールを流動床型反応器に戻した。炭素が付着した触媒の全量を、コークスの燃焼によって再生するために再生器に送った。
【0063】
炭素が付着した触媒の全量を再生した。その後、再生された触媒を410℃まで冷却して、再利用するために流動床に戻した。
【0064】
〔実施例3〕
本実施例において使用した触媒は、名称がMTD−3であり、触媒の総重量に対して30重量%のUSYゼオライトおよび5重量%のβゼオライトを含有し、残量が担体である。
【0065】
液状の供給原料用メタノールを流動床型反応器に供給し、MTD−3触媒に接触させ、150℃の温度および0.1MPa(ゲージ圧)の圧力下で、供給原料用メタノールに対する触媒の重量比(触媒/アルコール比)が6および重量空間速度(WHSV)が0.1h−1のもとで反応させた。反応物流を分離して、炭素が付着した触媒および生成物流を生成した。生成物流をさらに分離して、目的とする生成物であるDMEを得た。生成物の分布を図3に示す。余ったメタノールを流動床型反応器に戻した。炭素が付着した触媒を2つに分割して、コークスの燃焼によって再生するために25重量%を再生器に送り、残りの75重量%を、内部循環系を介して流動床型反応器に戻した。
【0066】
炭素が付着した触媒の25重量%を再生した。その後、再生された触媒を280℃まで冷却して、再利用するために流動床に戻した。
【0067】
〔実施例4〕
本実施例において使用した触媒は、名称がMTD−4であり、触媒の総重量に対して30重量%のUSYゼオライトおよび5重量%のSAPOゼオライトを含有し、残量が担体である。
【0068】
液状の供給原料用メタノールを流動床型反応器に供給し、MTD−4触媒に接触させ、250℃の温度および0.1MPa(ゲージ圧)の圧力下で、供給原料用メタノールに対する触媒の重量比(触媒/アルコール比)が20および重量空間速度(WHSV)が10h−1のもとで反応させた。反応物流を分離して、炭素が付着した触媒および生成物流を生成した。生成物流をさらに分離して、目的とする生成物であるDMEを得た。生成物の分布を図3に示す。余ったメタノールを流動床型反応器に戻した。炭素が付着した触媒を、2つに分割して、コークスの燃焼によって再生するために50重量%を再生器に送り、残りの50重量%を、内部循環系を介して流動床型反応器に戻した。
【0069】
炭素が付着した触媒の50重量%を再生した。その後、再生された触媒を340℃まで冷却し、再利用するために流動床に戻した。
【0070】
【表3】

【0071】
〔実施例5〕
DMEの製造プロセスのプロセスチャートを、図2に示す。
【0072】
DMEの製造規模は50,000トン/年であった。流動床型反応器の圧力は1.0MPa(ゲージ圧)であった。供給原料用メタノールは、純度が99%の工業用メタノールであった。
【0073】
13の供給原料用メタノールを、メタノール気化器6に10663kg/hの供給速度で供給した。このうち、一度も使用していないメタノールが8783kg/h、再利用したメタノールが1880kg/hであった。1.15MPa(ゲージ圧)の蒸気によって2000KWの熱供給を受けて、メタノール気化器6を、154℃の温度および1.5MPa(ゲージ圧)の圧力下で運転した。飽和メタノール蒸気を、気化器の最上部から収集し、熱交換体5に供給して209℃まで過熱し、その後流動床型反応器に供給した。
【0074】
メタノール気化器6の底部からの飽和メタノール液を、内部熱収集器または外部熱収集器の熱収集管に30000kg/hの速度で送り、メタノールの気化潜熱を利用して1.5MPaのメタノール蒸気を3020kg/hの速度で生成した。メタノール蒸気および飽和メタノール液をメタノール気化器に戻して、反応器から約800KWのメタノールの脱水反応熱を取り除いた。反応温度は260℃〜280℃の範囲で制御可能であった。
【0075】
メタノールの脱水反応生成物が、流動床型反応器2の排出口にて得られた。具体的には、6308kg/hのDME蒸気、1880kg/hのメタノール蒸気、2469kg/hの蒸気、および6kg/hの非凝縮性ガスであった。280℃の温度を有する反応生成物が熱交換体5に入り、供給されたメタノール蒸気と熱交換を行って230℃の温度に達した。その後、該反応生成物は、メタノール予備ヒータ11および未処理DME予備ヒータ12に入り、さらに冷却されて約40℃の温度になり、その後、気体/液体分離器7に入って、1.0MPa(ゲージ圧)の運転圧力で気体/液体分離を受けた。このようにして、液相および気相を得た。液相は、純度が約55%の、未処理のDMEの液体であった。気相には、H、CO、CH、COなどの非凝縮性ガス、飽和DME、およびメタノール蒸気が含まれていた。24kg/hの気相物質が吸収カラム8に入り、気相状態にあるDMEは、DME精留カラムの底部からの200kg/hのメタノールと水との混合液体で吸収された。吸収後の液体は、気体/液体分離器7に戻された。吸収後の約4kg/hの排ガスは、減圧されて点火塔に排気された。
【0076】
気体/液体分離器7からの液相の未処理のDMEを、DME精留カラム9に注入して精留した。18における最上部逆流量と生成量との比は1.1であった。また、18において生成されたDME生成物は6310kg/hであって、DMEの含有量は≧99.9%であった。DMEカラムの最上部からの非凝縮性ガス、DME蒸気、およびメタノール蒸気は、吸収カラム8に32kg/hで戻り、吸収された。1500KWの熱を供給するために、DME精留カラム9の再沸器は1.1MPa(ゲージ圧)の蒸気を必要とした。
【0077】
DME精留カラム9の底部の液体は、メタノール含有量が約40%のメタノール水溶液であった。このメタノール水溶液のうち、200kg/hを吸収カラム8に送る吸収液として使用し、残りの4349kg/hをメタノール回収カラム10に供給した。1880kg/hのメタノール物質(2kg/hの水を含有する)19を、再利用するためにカラムの最上部から回収した。メタノール回収カラムから出る2467kg/hのプロセス廃水を水冷器で冷却した後、廃水処理系に送った。
【0078】
上記DME精留カラムは、プレートカラムであった。該DME精留カラムを、1.1MPaの圧力下で、カラムの最上部の温度が50℃、カラムの底部の温度が158℃のもとで運転した。該DME精留カラムの理論的なプレート枚数は25であった。該DME精留カラムの導入口は、カラムの上側から数えて14枚目のプレートにあった。該DME精留カラムのDMEのための排出口は、カラムの上側から数えて1枚目のプレートにあった。該DME精留カラムには、カラムの最上部に冷却器が設けられていた。カラムの最上部の質量逆流比は1.1:1であった。
【0079】
上記メタノール回収カラムは、プレートカラムであった。該メタノール回収カラムを、0.2MPaの圧力下で、カラムの最上部の温度が75℃、カラムの底部の温度が114℃のもとで運転した。該メタノール回収カラムの理論的なプレート枚数は25であった。該メタノール回収カラムの導入口は、カラムの上側から数えて14枚目のプレートにあった。該メタノール回収カラムのメタノール蒸気のための排出口は、カラムの上側から数えて1枚目のプレートにあった。該メタノール回収カラムには、カラムの最上部に冷却器が設けられていた。カラムの最上部の質量逆流比は2:1であった。
【0080】
上記吸収カラムは、充填カラムであった。該吸収カラムを1.0MPaの圧力下で運転した。該吸収カラムを40℃の温度で運転した。該吸収カラムの理論的なプレート枚数は6であった。該吸収カラムの導入口は、カラムの中ほど下寄り(middle-lower)の位置にあった。
【0081】
〔実施例6〕
DMEの製造プロセスのプロセスチャートを、図2に示す。
【0082】
DMEの製造規模は100,000トン/年であった。流動床型反応器の圧力は0.8MPa(ゲージ圧)であった。供給原料用メタノールは、純度が90%の工業用メタノールであった。
【0083】
13の供給原料用メタノールは23260kg/hであった。このうち、一度も使用していないメタノールが17567kg/h、水が1933kg/h、再利用したメタノールが3760kg/hであった。メタノール気化器6の熱的負荷は5705KWであった。また、メタノール気化器6を、158℃の温度および1.5MPa(ゲージ圧)の圧力下で運転した。メタノール蒸気を、熱交換体5に供給して200℃まで過熱し、その後流動床型反応器に供給した。
【0084】
メタノール気化器6の底部からの飽和メタノール液を、内部熱収集器または外部熱収集器の熱収集管に50000kg/hの速度で送り、メタノールの気化潜熱を利用して1.5MPaのメタノール蒸気を4500kg/hの速度で生成した。メタノール蒸気および飽和メタノール液をメタノール気化器に戻して、反応器から約1200KWのメタノールの脱水反応熱を取り除いた。反応温度は250℃〜280℃の範囲で制御可能であった。
【0085】
メタノールの脱水反応生成物が、流動床型反応器2の排出口にて得られた。具体的には、12618kg/hのDME蒸気、3760kg/hのメタノール蒸気、6871kg/hの蒸気、および11kg/hの非凝縮性ガスであった。280℃の温度を有する反応生成物が熱交換体5に入り、供給されたメタノール蒸気と熱交換を行って240℃の温度に達した。その後、該反応生成物は、メタノール予備ヒータ11および未処理DME予備ヒータ12に入り、さらに冷却されて約40℃の温度になり、その後、気体/液体分離器7に入って、1.0MPa(ゲージ圧)の運転圧力で気体/液体分離を受けた。このようにして、液相および気相を得た。気相には、H、CO、CH、COなどの非凝縮性ガス、飽和DME、およびメタノール蒸気が含まれていた。14kg/hの気相物質が吸収カラム8に入り、気相状態にあるDMEは、DME精留カラムの底部からの200kg/hのメタノールと水との混合液体で吸収された。吸収後の液体は、気体/液体分離器7に戻された。吸収後の約6kg/hの排ガスは、減圧されて点火塔に排気された。
【0086】
気体/液体分離器7からの液相の未処理のDMEを、DME精留カラム9に注入して精留した。18における最上部逆流量と生成量との比は3であった。また、18において生成されたDME生成物は12630kg/hであり、DMEの含有量は≧99.9%であった。DMEカラムの最上部からの非凝縮性ガス、DME蒸気、およびメタノール蒸気は、吸収カラム8に85kg/hで戻り、吸収された。1812KWの熱を供給するために、DME精留カラム9の再沸器は1.1MPa(ゲージ圧)の蒸気を必要とした。
【0087】
DME精留カラム9の底部の液体は、メタノール含有量が約40%のメタノール水溶液であった。このメタノール水溶液のうち、200kg/hを吸収カラム8に送る吸収液として使用し、残りの10624kg/hをメタノール回収カラム10に供給した。3765kg/hのメタノール物質(5kg/hの水を含有する)19を、再利用するためにカラムの最上部から回収した。メタノール回収カラムから出る6859kg/hのプロセス廃水を、水冷器で冷却した後、廃水処理系に送った。
【0088】
上記DME精留カラムはプレートカラムであった。該DME精留カラムを、1.1MPaの圧力下で、カラムの最上部の温度が50℃、カラムの底部の温度が160℃のもとで運転した。該DME精留カラムの理論的なプレート枚数は30であった。該DME精留カラムの導入口は、カラムの上側から数えて11枚目のプレートにあった。該DME精留カラムのDMEのための排出口は、カラムの上側から数えて1枚目のプレートにあった。該DME精留カラムには、カラムの最上部に冷却器が設けられていた。カラムの最上部の質量逆流比は3:1であった。
【0089】
上記メタノール回収カラムはプレートカラムであった。該メタノール回収カラムを、0.2MPaの圧力下で、カラムの最上部の温度が75℃、カラムの底部の温度が114℃のもとで運転した。該メタノール回収カラムの理論的なプレート枚数は30であった。該メタノール回収カラムの導入口は、カラムの上側から数えて11枚目のプレートにあった。該メタノール回収カラムのメタノール蒸気のための排出口は、カラムの上側から数えて1枚目のプレートにあった。該メタノール回収カラムには、カラムの最上部に冷却器が設けられていた。カラムの最上部の質量逆流比は3:1であった。
【0090】
上記吸収カラムは充填カラムであった。該吸収カラムを1.0MPaの圧力下で運転した。該吸収カラムを40℃の温度で運転した。該吸収カラムの理論的なプレート枚数は6であった。該吸収カラムの導入口は、カラムの中ほど下寄り(middle-lower)の位置にあった。
【0091】
〔実施例7〕
DMEの製造プロセスのプロセスチャートを、図2に示す。
【0092】
DMEの製造規模は1,000,000トン/年であった。流動床型反応器の圧力は0.8MPa(ゲージ圧)であった。供給原料用メタノールは、純度が90%の工業用メタノールであった。
【0093】
13の供給原料用メタノールは232600kg/hであった。このうち、一度も使用していないメタノールが175670kg/h、水が19330kg/h、再利用したメタノールが37600kg/hであった。メタノール気化器6の熱的負荷は47740KWであった。また、メタノール気化器6を、158℃の温度、1.5MPa(ゲージ圧)の圧力下で運転した。飽和メタノール蒸気を、熱交換体5に供給して200℃まで過熱し、その後流動床型反応器に供給した。
【0094】
メタノール気化器6の底部からの飽和メタノール液を、内部熱収集器または外部熱収集器の熱収集管に500000kg/hの速度で送り、メタノールの気化潜熱を利用して1.5MPaのメタノール蒸気を45000kg/hの速度で生成した。メタノール蒸気および飽和メタノール液をメタノール気化器に戻して、反応器から約15000KWのメタノールの脱水反応熱を取り除いた。反応温度は250℃〜280℃の範囲で制御可能であった。
【0095】
メタノールの脱水反応生成物が、流動床型反応器2の排出口にて得られた。具体的には、126176kg/hのDME蒸気、37600kg/hのメタノール蒸気、68714kg/hの蒸気、および110kg/hの非凝縮性ガスであった。280℃の温度を有する反応生成物が熱交換体5およびメタノール予備ヒータ11に入り、供給されたメタノール蒸気および供給原料用メタノールと熱交換を行って、それぞれ240℃および148℃に達した。該反応生成物はさらに冷却されて約40℃の温度になり、その後、気体/液体分離器7に入って、1.1MPa(ゲージ圧)の運転圧力で気体/液体分離を受けた。このようにして、液相および気相を得た。気相には、H、CO、CH、COなどの非凝縮性ガス、飽和DME、およびメタノール蒸気が含まれていた。136kg/hの気相物質が吸収カラム8に入り、気相状態にあるDMEは、DME精留カラムの底部からの1500kg/hのメタノールと水との混合液体で吸収された。吸収後の液体は、気体/液体分離器7に戻された。吸収後の約59kg/hの排ガスは、減圧されて点火塔に排気された。
【0096】
気体/液体分離器7からの液相の未処理のDMEを、DME精留カラム9に注入して精留した。18における最上部逆流量と生成量との比は2.5であった。また、18において生成されたDME生成物は126255kg/hであり、DMEの含有量は≧99.9%であった。DMEカラムの最上部からの非凝縮性ガス、DME蒸気、およびメタノール蒸気は、吸収カラム8に845kg/hで戻り、吸収された。35820KWの熱を供給するために、DME精留カラム9の再沸器は1.1MPa(ゲージ圧)の蒸気を必要とした。
【0097】
DME精留カラム9の底部の液体は、メタノール含有量が約35%のメタノール水溶液であった。このメタノール水溶液のうち、1500kg/hを吸収カラム8に送る吸収液として使用し、残りの106286kg/hをメタノール回収カラム10に供給した。37620kg/hのメタノール物質(20kg/hの水を含有する)19を、再利用するためにカラムの最上部から回収した。メタノール回収カラムから出る68666kg/hのプロセス廃水を、水冷器で冷却した後、廃水処理系に送った。
【0098】
上記DME精留カラムはプレートカラムであった。該DME精留カラムを、1.1MPaの圧力下で、カラムの最上部の温度が50℃、カラムの底部の温度が158℃のもとで運転した。該DME精留カラムの理論的なプレート枚数は35であった。該DME精留カラムの導入口は、カラムの上側から数えて10枚目のプレートにあった。該DME精留カラムのDMEのための排出口は、カラムの上側から数えて1枚目のプレートにあった。該DME精留カラムには、カラムの最上部に冷却器が設けられていた。カラムの最上部の質量逆流比は2.5:1であった。
【0099】
上記メタノール回収カラムはプレートカラムであった。該メタノール回収カラムを、0.2MPaの圧力下で、カラムの最上部の温度が75℃、カラムの底部の温度が114℃のもとで運転した。該メタノール回収カラムの理論的なプレート枚数は35であった。該メタノール回収カラムの導入口は、カラムの上側から数えて10枚目のプレートにあった。該メタノール回収カラムのメタノール蒸気のための排出口は、カラムの上側から数えて1枚目のプレートにあった。該メタノール回収カラムには、カラムの最上部に冷却器が設けられていた。カラムの最上部の質量逆流比は1.8:1であった。
【0100】
上記吸収カラムは充填カラムであった。該吸収カラムを、1.0MPaの圧力下で運転した。該吸収カラムを、40℃の温度で運転した。該吸収カラムの理論的なプレート枚数は6であった。該吸収カラムの導入口は、カラムの中ほど下寄り(middle-lower)の位置にあった。
【0101】
〔実施例8〕
DMEの製造プロセスのプロセスチャートを、図3に示す。
【0102】
DMEの製造規模は1,000,000トン/年であった。流動床型反応器の圧力は1.2MPa(ゲージ圧)であった。供給原料用メタノールは、純度が90%の工業用メタノールであった。
【0103】
運転条件を実施例7とほぼ同じにした。メタノールの脱水反応生成物が、流動床型反応器2の排出口にて得られた。具体的には、126176kg/hのDME蒸気、37600kg/hのメタノール蒸気、68714kg/hの蒸気、および110kg/hの非凝縮性ガスであった。280℃の温度を有する反応生成物が熱交換体5およびメタノール予備ヒータ11に入り、供給されたメタノール蒸気および供給原料用メタノールと熱交換を行って、それぞれ240℃および148℃に達した。該反応生成物は、その後、DME精留カラム9に気体および液体の二相の形態で直接入り、精留された。18における最上部逆流量と生成量との比は3.5であった。また、18において生成されたDME生成物は126210kg/hであり、DMEの含有量は≧99.9%であった。DMEカラムの最上部からの非凝縮性ガス、DME蒸気、およびメタノール蒸気は、吸収カラム8に1839kg/hで戻り、吸収された。気相状態にあるDMEは、DME精留カラムの底部からの2500kg/hのメタノール水溶液で吸収された。この吸収後の液体は、DME精留カラム9に戻された。吸収後の約72kg/hの排ガスは、減圧されて点火塔に排気された。18810KWの熱を供給するために、DME精留カラム9の再沸器は1.1MPa(ゲージ圧)の蒸気を必要とした。
【0104】
DME精留カラム9の底部の液体は、メタノール含有量が約35%のメタノール水溶液であった。このメタノール水溶液のうち、2500kg/hを吸収カラム8に送る吸収液として使用し、残りの106303kg/hをメタノール回収カラム10に供給した。37640kg/hのメタノール物質(50kg/hの水を含有する)19を、再利用するためにカラムの最上部から回収した。メタノール回収カラムから出る68663kg/hのプロセス廃水を、水冷器で冷却した後、廃水処理系に送った。
【0105】
上記DME精留カラムはプレートカラムであった。該DME精留カラムを、1.1MPaの圧力下で、カラムの最上部の温度が50℃、カラムの底部の温度が160℃のもとで運転した。該DME精留カラムの理論的なプレート枚数は35であった。該DME精留カラムの導入口は、カラムの上側から数えて11枚目のプレートにあった。該DME精留カラムのDMEのための排出口は、カラムの上側から数えて1枚目のプレートにあった。該DME精留カラムには、カラムの最上部に冷却器が設けられていた。カラムの最上部の質量逆流比は3.6:1であった。
【0106】
上記メタノール回収カラムはプレートカラムであった。該メタノール回収カラムを、0.2MPaの圧力下で、カラムの最上部の温度が75℃、カラムの底部の温度が114℃のもとで運転した。該メタノール回収カラムの理論的なプレート枚数は35であった。該メタノール回収カラムの導入口は、カラムの上側から数えて11枚目のプレートにあった。該メタノール回収カラムのメタノール蒸気のための排出口は、カラムの上側から数えて1枚目のプレートにあった。該メタノール回収カラムには、カラムの最上部に冷却器が設けられていた。カラムの最上部の質量逆流比は1.8:1であった。
【0107】
上記吸収カラムは充填カラムであった。該吸収カラムを、1.0MPaの圧力下で運転した。該吸収カラムを、40℃の温度で運転した。該吸収カラムの理論的なプレート枚数は6であった。該吸収カラムの導入口は、カラムの中ほど下寄り(middle-lower)の位置にあった。
【0108】
〔比較例1〜3〕
比較例1〜3は、反応器の内部熱収集器または外部熱収集器において、熱を飽和水の蒸発によって取り除いたこと以外は、実施例5〜7と同様に実施した。比較例1〜3の結果、メタノール気化器に対する熱的負荷は、それぞれ2800kw、6905kw、および62740kwであった。本発明の方法によれば、反応熱をメタノール気化熱で取り除くことによって、供給原料用メタノールの気化器6のエネルギー消費を、約20%〜30%削減することができる。さらに、飽和蒸気ドラムを設置するためのコストなどの相対的なコストが不要になる。これらの効果は注目すべきものであった。
【0109】
〔比較例4〜6〕
比較例4〜6は、吸収カラム8において、供給原料用メタノールを吸収液として使用したこと以外は、実施例5〜7と同様に実施した。比較例4〜6の結果、必要な供給原料用メタノールの流量は、それぞれ850kg/h、920kg/h、および8500kg/hであった。また、放出された非凝縮性ガスは、約10%〜20%のメタノールガスを依然含有していた。さらに、メタノール回収カラムの底部からの廃水を吸収液として使用すれば、必要な供給原料用メタノールの流量は、100kg/h、120kg/h、および1120kg/hとなった。DME精留カラムの底部からのメタノール水溶液またはメタノール回収カラムの底部からの廃水を吸収液として使用することによって、吸収液の流量は1/7〜1/8に減少した。こうすることによって、吸収カラム装置に対する投資が節約できる。放出された非凝縮性ガスは、メタノールおよびDMEガスをほとんど含有していなかった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
供給原料用メタノールを触媒流動化反応器に供給して触媒に接触させ、脱水反応を実施して脱水反応物流を発生させ、さらに、該脱水反応物流を気体/固体分離器に通して該触媒から分離し、炭素が付着した触媒および脱水反応生成物を得、
該炭素が付着した触媒の一部またはすべてを再生器に供給してコークスを燃焼させ、連続的または断続的に再生を行い、さらに、再生された触媒を該反応器に戻して該供給原料用メタノールに接触させて反応させ、
吸収カラムおよびDME精留カラム、ならびに必要に応じてメタノール回収カラムを備えた分離装置に、該脱水反応生成物を供給し、主にDMEからなる生成物流をDME精留カラムの上部において得、DMEおよび/またはメタノールが混入している非凝縮性ガスを該DME精留カラムの最上部において得、該非凝縮性ガスを該吸収カラムに供給して、混入しているDMEおよび/またはメタノールを吸収液で吸収し、該DME精留カラムの底部の液体は実質的に未転化のメタノールおよび水からなり、該DME精留カラムの底部の液体を必要に応じて該メタノール回収カラムによって分離して、該メタノール回収カラムの上部においてメタノールを得、さらに、該メタノール回収カラムの底部において廃水を得、かつ、
該吸収カラムにおいて使用される該吸収液は、該DME精留カラムの底部の液体および/または該メタノール回収カラムの底部からの廃水である、
ステップを備える、メタノールからジメチルエーテルを製造する方法。
【請求項2】
上記供給原料用メタノールのメタノール含有量が、5重量%〜100重量%である、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
上記触媒が、Y型ゼオライトおよび必要に応じてその他の分子篩を含有し、無機酸化物および粘土を含有しない、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
上記触媒が、無機酸化物、粘土、Y型ゼオライト、および必要に応じてその他の分子篩を含有する、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
上記その他の分子篩が、メソ細孔性のゼオライト、β型ゼオライト、およびSAPO型分子篩から選択された1つ以上の分子篩である、請求項3または4に記載の方法。
【請求項6】
Y型ゼオライトに対するその他の分子篩の重量比が、0〜10である、請求項3または4に記載の方法。
【請求項7】
上記Y型ゼオライトが、Y、HY、REY、REHY、USY、REUSY、およびこれらの混合物からなる群より選択される、請求項1、3、または4に記載の方法。
【請求項8】
上記メソ細孔性のゼオライトが、ZRP系列のゼオライト、ZSP系列のゼオライト、ZSM系列のゼオライト、およびこれらの誘導体、または変化を加えられたゼオライトを含んでいる、請求項5に記載の方法。
【請求項9】
上記無機酸化物が、アルミナ、シリカ、非結晶のシリカアルミナ、およびこれらの混合物からなる群より選択され、上記粘土が、カオリンおよび/またはハロイサイトである、請求項3または4に記載の方法。
【請求項10】
上記脱水反応が、1kPa〜1000kPaの圧力下において100℃〜550℃の温度で、上記供給原料用メタノールに対する上記触媒の重量比が0.001〜50、重量空間速度が0.01h−1〜100h−1にて実施される、請求項1に記載の方法。
【請求項11】
コークスの燃焼に供される、上記炭素が付着した触媒の比率が、該炭素が付着した触媒の総重量に対して0.5%〜100%である、請求項1に記載の方法。
【請求項12】
上記炭素が付着した触媒の一部が再生器に入ってコークスの燃焼によって再生されるときに、残存する該炭素が付着した触媒は、上記反応器に戻り、コークスの燃焼に供される該炭素が付着した触媒の該一部は、該炭素が付着した触媒の総重量に対して0.5%〜99%を占めている、請求項1または11に記載の方法。
【請求項13】
上記再生が、一段階からなる再生または二段階からなる再生であり、上記再生された触媒が、部分的におよび/または完全に再生された触媒である、請求項1に記載の方法。
【請求項14】
Y型ゼオライトを含有する上記触媒が、一度も使用されていない触媒、再生された触媒、半再生された触媒、再生されるための触媒、およびこれらの組み合わせ、からなる群より選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項15】
上記触媒流動化反応器が、流動床、ライザー、降下輸送ライン反応器、ライザーと流動床との複合型反応器、ライザーと降下輸送ラインとの複合型反応器、2つ以上のライザー同士の複合型反応器、2つ以上の流動床同士の複合型反応器、および2つ以上の降下輸送ライン同士の複合型反応器からなる群より選択され、各反応器は2つ以上の反応領域に分割されている、請求項1に記載の方法。
【請求項16】
上記再生された触媒が、直接的熱交換または間接的熱交換によって100℃〜650℃にまで冷却され、その後、反応器に戻される、請求項1に記載の方法。
【請求項17】
上記直接的熱交換は、上記再生された触媒を、該触媒よりも低い温度の空気または蒸気に直接接触させて行うものであって、直接的熱交換体が流動床またはライザーにおいて具現化されており、
上記間接的熱交換は、熱交換体を使用するものであって、高温の触媒が該熱交換体のシェルを通過し、飽和水またはその他の熱交換媒体が該熱交換体の管を通過する、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
上記供給原料用メタノールが、液相の状態または気相の状態である、請求項1に記載の方法。
【請求項19】
上記供給原料用メタノールが、上記触媒流動化反応器に供給されて上記触媒に接触する前に、上記反応器内の上記反応物流および上記触媒、ならびに/または上記再生器内の上記触媒と間接的に熱交換する、請求項1に記載の方法。
【請求項20】
上記分離装置が、吸収カラム、DME精留カラム、およびメタノール回収カラムを備え、
上記DME精留カラムの底部における液体の99.9体積%〜90体積%が、上記メタノール回収カラムに供給され、
該DME精留カラムの底部における液体の0.1体積%〜10体積%が、上記吸収液として上記吸収カラムに供給される、請求項1に記載の方法。
【請求項21】
上記分離装置が、気体/液体分離器をさらに備え、
上記脱水反応生成物および/または吸収カラムの底部の液体が、該気体/液体分離器に供給され、
気体/液体分離の後に液相部および気相部が得られ、
該液相部が上記DME精留カラムに供給され、該気相部が上記吸収カラムに供給される、請求項1に記載の方法。
【請求項22】
上記DME精留カラムが、充填カラムまたはプレートカラムであり、
上記メタノール回収カラムが、充填カラムまたはプレートカラムであり、
上記吸収カラムが、充填カラムまたはプレートカラムである、請求項1に記載の方法。
【請求項23】
上記DME精留カラムが、0.1MPa〜1.5MPaの圧力下で、カラムの最上部の温度が20℃〜90℃、カラムの底部の温度が100℃〜220℃において運転され、
該DME精留カラムの理論的なプレート枚数が、10〜35であり、
該DME精留カラムの導入口が、該カラムの上側から数えて4枚目のプレートと16枚目のプレートとの間の位置にあり、
該DME精留カラムのDMEのための排出口が、該カラムの上側から数えて1枚目のプレートと5枚目のプレートとの間の位置にある、請求項22に記載の方法。
【請求項24】
上記メタノール回収カラムが、0.01MPa〜0.6MPaの圧力下で、カラムの最上部の温度が65℃〜170℃、カラムの底部の温度が100℃〜220℃において運転され、
該メタノール回収カラムの理論的なプレート枚数が、10〜35であり、
該メタノール回収カラムの導入口が、該カラムの上側から数えて4枚目のプレートと16枚目のプレートとの間の位置にあり、
該メタノール回収カラムのメタノール蒸気のための排出口が、該カラムの上側から数えて1枚目のプレートと5枚目のプレートとの間の位置にある、請求項22に記載の方法。
【請求項25】
上記吸収カラムが、0.1MPa〜1.5MPaの圧力下にて30℃〜70℃の温度で運転され、
該吸収カラムの理論的なプレート枚数が、1〜15であり、
該吸収カラムの導入口が、該カラムの中ほど下寄りの位置にある、請求項22に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公表番号】特表2011−519351(P2011−519351A)
【公表日】平成23年7月7日(2011.7.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−501081(P2011−501081)
【出願日】平成20年3月26日(2008.3.26)
【国際出願番号】PCT/CN2008/000601
【国際公開番号】WO2009/117851
【国際公開日】平成21年10月1日(2009.10.1)
【出願人】(503191287)中国石油化工股▲ふん▼有限公司 (35)
【出願人】(509059424)中国石油化工股▲ふん▼有限公司石油化工科学研究院 (14)
【Fターム(参考)】