説明

メタノール水蒸気改質用触媒とその製造方法

【課題】高活性で耐熱性、耐久性に優れた銅系触媒及び該触媒をできるだけ簡単なプロセスで安価に製造する方法を提供すること。
【解決手段】式Al100−y−zCuTM(ただし、yは、10〜30原子%、zは、5〜20原子%であり、TMは、Cu以外の遷移金属の少なくとも1種)で示される準結晶又は関連結晶相のAl合金塊を粉砕することにより得られるAl合金粒子をアルカリ水溶液でリーチング処理する工程において、前記リーチング処理の条件を調整することによって、前記Al合金粒子の表面にAlの酸化物と遷移金属の酸化物とからなり、Cu微粒子を分散して含有している酸化物表面層を形成し、その後、前記リーチング処理したAl合金粒子を酸化性雰囲気中で加熱することによって、前記酸化物表面層中の前記Cu微粒子の一部又は全部を銅酸化物微粒子とした酸化物表面層を有するAl合金粒子によってなることを特徴とするメタノール水蒸気改質用触媒。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、メタノールを水蒸気改質して水素を製造するために用いられる銅系触媒とその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
銅系触媒はメタノール水蒸気改質、メタノール合成、水性ガスシフト反応(water−gas shift reaction)ならびに有機化合物の水素化や水素化分解反応などに対し広範に用いられている。しかし、一般に銅系触媒は耐熱・耐久性が非常に低いことから使用条件などが限定される場合が多い。
【0003】
Al合金微粒子を銅系触媒の担体として使用するものとして、Al−Cu系合金(Cu;5〜20at%,希土類元素,Fe,Mn,Pd,Co,V,Ag,Ptから選ばれる少なくとも1種の合金元素;4〜18at%)融液を急冷凝固により作製したリボン状素材を酸又はアルカリで溶出処理(leaching)して粉末状に分解し、その表層が無数のCu系超微粒子と無数の合金元素の超微粒子の混在相である、メタノールの水蒸気改質触媒の製造方法が知られている(特許文献1)。
【0004】
特許文献1では、Al合金の金属組織としては、Al過飽和固溶体単相組織、準結晶(quasi crystal)単相組織、微細Al結晶相と準結晶相との混相組織、微細Al結晶相と微細Al系金属間化合物相との混相組織、非晶質単相組織、非晶質相と微細Al結晶相との混相組織、非晶質相と微細Al結晶相と微細Al系金属間化合物相との混相組織などが挙げられている。
【0005】
また、Al−Pd(20〜30at%)合金、Al−Cu(18〜23at%)−Fe(13〜15at%)合金、Al−Cu(15〜20at%)−Co(15〜20at%)合金、Al−Ni(10〜15at%)−Co(15〜20at%)合金、Al−Pd(15〜30at%)−遷移金属(17at%以下)合金、Al−Pd(15〜30at%)−遷移金属(17at%以下)−B(10at%以下)合金、Al−V(13〜17at%)−Cu(15〜20at%)合金などの準結晶Al合金超微粒子がメタノール分解反応において高い活性を有することが知られている(特許文献2)。
【0006】
さらに、本発明者らは、AlとCu及びFe、Ru、Osから選ばれた少なくとも1種の金属原子を成分とする準結晶からなるAl合金インゴットを粉砕し、得られた合金粒子を水酸化ナトリウム水溶液でエッチングすることを特徴とするメタノール水蒸気改質用触媒の製造方法を開発した(特許文献3、非特許文献1,2,3)。
【0007】
【非特許文献1】Applied catalysis A:General 214(2001)237−241
【非特許文献2】Journal of Alloys and Compounds 342(2002)451−454
【非特許文献3】Journal of Alloys and Compounds 342(2002)473−476
【特許文献1】特開平7−265704(特許第3382343)号公報
【特許文献2】特開平7−126702号公報
【特許文献3】特開2001−276625号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
従来のいわゆる銅系触媒は、いずれも、銅の微粒子を酸化物や金属の表面に担持させ、触媒反応の活性サイトを担わせている。これらの触媒は高温(300℃)になると、銅の微粒子の焼結により粗大化し、銅の表面積が極端に減少することにより、活性が低下する。
【0009】
特許文献1(特開平7−265704号公報)記載の発明の触媒は、アルカリ水溶液として、NaOHを用いる場合には、NaOHの濃度は20〜30重量%で浸漬時間は1〜30分間でリボン状素材を分解したものであり、高温下における焼結による粗大化を希土類元素、遷移金属、貴金属等の超微粒子を均一に分散させることによって防いで耐熱性を高めているが、耐熱性は、いずれも300℃で頭打ちになっている。
【0010】
特許文献2(特開平7−126702号公報)記載の発明の触媒は、液体急冷法という作製法で、コストが高くて、材料の歩留まりが悪く、こうして得た相は不安定で高温で変化するので300℃程度までは活性があるが耐熱性はあまりよくない。また、この触媒はHCl水溶液でAlを溶出しているが多くの遷移金属も溶出してしまう。特許文献3(特開2001−276625号公報)記載の発明の触媒は、活性が高いものの、320℃以上になると活性が頭打ちになり、耐熱性は十分ではなかった。
【0011】
その後、本発明者らは、準結晶Al合金を前駆体とした粒子の表面にCuナノ粒子とCoナノ粒子が均一に分散して固着した複合粒子からなる高活性で耐熱性、耐久性の優れた触媒及びその製造方法を開発し、特許出願した(特願2003−60574)。
【0012】
また、準結晶Al合金粒子の表面に形成された超微粒子金属が他の金属元素と化合物触媒超微粒子を形成していることを特徴とする準結晶Al合金粒子を担体とする化合物触媒超微粒子を開発し、特許出願した(特願2003−88648)。
【0013】
多くの触媒反応は高温で起きるので、耐熱、耐久性が求められている。例えば、耐熱性が要求される燃料電池の触媒として使用される場合、特に、耐熱、耐久性が問題になっている。銅系触媒以外のものは、殆ど貴金属から構成され、コストの面では実用的ではない。
【0014】
本発明の目的は、これまでに開発された銅系触媒よりもさらに耐熱性、耐久性に優れた銅系触媒及び該触媒をできるだけ簡単なプロセスで安価に製造する方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明者等は、先に、AlCuFeやAlCuCo等の準結晶Al合金を粉砕してリーチング処理することにより得られたCu粒子と遷移金属粒子との複合微粒子からなる触媒がメタノールの水蒸気改質反応において高活性、高耐熱、耐久性を有すること、また、該触媒は該準結晶Al合金を粉砕及びアルカリ性溶液によりリーチング処理することにより容易に製造できることを見出した。
【0016】
Cuを含有する準結晶Al合金粒子にリーチング処理を施すことにより、粒子表面にできていたアルミナの薄膜を取り除くとともに、アルミニウムを溶出することにより表面に銅の微細な粒子を析出させることができる。メタノールの水蒸気改質反応において活性を表す指標であるグラム当たりのH生成量は、NaCO水溶液を用いてリーチング処理して得られたAlCuFe準結晶触媒では、360℃において最大で400ml/minにも達している。しかも、360℃まで温度上昇と共に水素発生量が増え続けており、従来のCu系触媒が有しない高い耐熱性を有している。
【0017】
水蒸気改質反応前後の試料の粉末X線回折では、銅又は酸化銅による明瞭な回折ピークが認められず、Cu粒子のシンタリング(sintering)が起きていなかったことを示唆している。図1に、本発明の触媒を製造する過程における触媒粒子の表面構造を概念的に示している。詳細な調査により、この触媒は、図1(A)の概念図に示されるように構成されることが明らかになった。リーチング処理に際してNaCO水溶液を用いた場合、Al合金準結晶1の表面がリーチング処理されると同時に表面に棉飴(cotton candy)状のネットワーク状の酸化物表面層2が生成した。
【0018】
この棉飴状のネットワーク状の酸化物表面層2はAlの酸化物や水酸化物とFeやCo酸化物から構成され、極めて高い表面積を有しており、その中に平均粒径が約5nmのCu粒子3が散在している。準結晶の界面上にも主にCu粒子を分散している。結果として、Cuナノ粒子は高分散、高密度に分布していて高い活性を示す。また、ネットワーク状酸化物表面層2はCu粒子3のシンタリングを防止し、高い耐熱性をもたらした。
【0019】
しかし、このネットワーク状酸化物表面層2は必ずしも安定なものではなく、高温で水蒸気環境下において分解又は転移する可能性があることが分かった。本発明者らは、準結晶Al合金を前駆体として用いて上記のように作製されたCu系触媒をさらに酸化性雰囲気中で加熱処理、すなわち、焼成を行なうことにより、ネットワーク状酸化物をより安定化し、高活性、高耐熱性のCu系触媒が得られることを見出した。
【0020】
すなわち、前記リーチング処理したAl合金粒子を酸化性雰囲気中で加熱することによって、棉飴状のネットワーク状の酸化物表面層が若干圧縮されるように変化して、図1(B)の概念図に示されるように、前記酸化物表面層2中の前記Cu微粒子3の一部又は全部は銅酸化物微粒子5となり、Al酸化物層4がAl合金準結晶1の表面に生成する。Al酸化物層4の上にFeやCoなどの遷移金属酸化物ナノ粒子6と、Cuの酸化物ナノ粒子5を分散した集積層が作られる。さらに、その上に、前記のネットワーク組織が残っている。
【0021】
すなわち、本発明は、(1)式Al100−y−zCuTM(ただし、yは、10〜30原子%、zは、5〜20原子%であり、TMは、Cu以外の遷移金属の少なくとも1種)で示される準結晶又は関連結晶相のAl合金塊を粉砕することにより得られるAl合金粒子をアルカリ水溶液でリーチング処理する工程において、前記リーチング処理の条件を調整することによって、前記Al合金粒子の表面にAlの酸化物と遷移金属の酸化物とからなり、Cu微粒子を分散して含有している酸化物表面層を形成し、その後、前記リーチング処理したAl合金粒子を酸化性雰囲気中で加熱することによって、前記酸化物表面層中の前記Cu微粒子の一部又は全部を銅酸化物微粒子とした酸化物表面層を有するAl合金粒子によってなることを特徴とするメタノール水蒸気改質用触媒、である。
【0022】
また、本発明は、(2)前記リーチング処理後に酸化性雰囲気中で加熱処理することによって得られる表面酸化物層中の銅酸化物がCuO又はCu(TMAl1−x(0<x≦1.0)スピネル化合物であることを特徴とする上記(1)のメタノール水蒸気改質用触媒、である。
【0023】
また、本発明は、(3)前記リーチング処理後に酸化性雰囲気中で加熱処理することによって得られる表面酸化物層の中で前記Al合金粒子の界面近傍にCu及び遷移金属(TM)の酸化物からなる集積層が形成されていることを特徴とする上記(1)又は(2)のメタノール水蒸気改質用触媒、である。
【0024】
また、本発明は、(4)TMがFe,Ru,Os,Co,Rh,Irの群から選ばれる少なくとも1種であることを特徴とする上記(1)から(3)のいずれかのメタノール水蒸気改質用触媒、である。
【0025】
また、本発明は、(5)TMがMn,Re,Cr,Mo,W,V,Nb,Taの群から選ばれる少なくとも1種であることを特徴とする上記(1)から(3)のいずれかのメタノール水蒸気改質用触媒、である。
【0026】
また、本発明は、(6)前記(2)のCuO又はCu(FeAl1−x(0<x≦1.0)スピネル化合物を還元することによって形成された粒径が10nm以下のナノCu粒子がFe、Alまたはこれらの混合物に囲まれた組織からなる表面層を有することを特徴とするメタノール水蒸気改質用触媒、である。
【0027】
また、本発明は、(7)式Al100−y−zCuTM(ただし、yは、10−30原子%、zは、5〜20原子%であり、TMは、Cu以外の遷移金属の少なくとも1種)で示される準結晶又は関連結晶相のAl合金塊を粉砕することにより得られるAl合金粒子をアルカリ水溶液でリーチング処理する工程において、前記リーチング処理の条件を調整することによって、前記Al合金粒子の表面に、Alの酸化物と遷移金属の酸化物とからなり、Cu微粒子を分散して含有している酸化物表面層を形成し、その後、前記リーチング処理したAl合金粒子を酸化性雰囲気中で加熱することによって、前記酸化物表面層中の前記Cu微粒子の一部又は全部を銅酸化物微粒子とした酸化物表面層を有するAl合金粒子とすることを特徴とするメタノール水蒸気改質用触媒の製造方法、である。
【0028】
また、本発明は、(8)上記リーチング処理後に酸化性雰囲気中で加熱処理することによって得られる表面酸化物層中の銅酸化物がCuO又はCu(FeAl1−x(0<x≦1.0)スピネル化合物であることを特徴とする上記(7)のメタノール水蒸気改質用触媒の製造方法、である。
【0029】
また、本発明は、(9)アルカリ水溶液が温度範囲40〜90℃であることを特徴とする上記(7)のメタノール水蒸気改質用触媒の製造方法、である。
【0030】
また、本発明は、(10)アルカリ水溶液が濃度範囲2から15重量%の水酸化ナトリウム(NaOH)、炭酸ナトリウム(NaCO)又は炭酸水素ナトリウム(NaHCO)水溶液であることを特徴とする上記(7)のメタノール水蒸気改質用触媒の製造方法、である。
【0031】
また、本発明は、(11)アルカリ水溶液リーチング処理によるAl合金粉末からの溶出量が0.5〜40重量%であることを特徴とする上記(7)のメタノール水蒸気改質用触媒の製造方法、である。
【0032】
また、本発明は、(12)上記(8)のCuO又はCu(TMAl1−x(0<x≦1.0)スピネル化合物を水素雰囲気中で還元処理することによって粒径が10nm以下のナノCu粒子がFe、Alまたはこれらの混合物に囲まれた組織からなる表面層を形成することを特徴とするメタノール水蒸気改質用触媒の製造方法、である。
【0033】
通常、メタノールの水蒸気改質において、温度が高くなると分子が活発になり、活性も高くなり水素の発生量も多くなるが、さらに高温になり時間が経つと焼結により触媒活性は一般的には、劣化する。しかし、本発明の触媒の触媒活性は400℃以上になっても、直線的に活性が高くなる特長がある。
【0034】
本発明の方法により得られる銅系触媒がメタノールの水蒸気改質触媒として耐熱性が著しく向上する理由は明確ではないが、TM元素としてFeを用いた場合、一応下記のように推測される。
(1)リーチング処理によりAl合金粒子の表面にAlやFeの酸化物の中に平均粒径が約15〜50nmのCu粒子が散在し、極めて高い表面積を有している棉飴状ネットワーク状の酸化物(擬似Al)が生成する。この状態の触媒活性は低い。
【0035】
(2)この棉飴状ネットワーク状の酸化物の安定化が酸化性雰囲気での焼成によって進むことによりリーチング処理後、遷移金属元素の酸化物又はAl内に残存したCu原子が表面に引き出されてCuOとして現れる。つまり、酸化処理により新たにナノCuO粒子が形成されるために、結果としてCuナノ粒子は高分散、高密度に分布していて高い活性を示すものと考えられる。この際に600℃以上の高温で酸化すると、Cu(TMAl1−x(0<x≦1.0)スピネル化合物が形成される。
【0036】
(3)さらに、このCu(TMAl1−x(0<x≦1.0)スピネル化合物は比較的低温の240℃程度においても簡単に還元され、粒径が10nm程度以下の極めて小さいナノCu粒子がFe、Alまたはこれらの混合物に囲まれた組織の表面層が形成される。結果としてCuナノ粒子は高分散、高密度に分布していて高い活性を示す。また、ネットワーク状酸化物はCu粒子のシンタリングを防止し、高い耐熱性をもたらすと考えられる。
【0037】
(4)この組織を400℃以上の温度で還元すると、元のCuとFeとが混在するような組織になる。これに伴って、活性が小さくなる。この時点でのCuとFeとの非固溶関係は重要な役割を果たしている。
【0038】
焼成処理における酸化の効果を確認するために、一旦酸化性雰囲気中で焼成した触媒を水素雰囲気中にて熱処理を行った。結果的に水素雰囲気中で400℃以上の温度で還元熱処理した触媒は、元のCu,Feが混在する組織になり、その活性は空気中で熱処理した触媒の30%までに低下した。この活性の程度はリーチング処理したままのものよりもかなり低くなった。また、この還元処理した触媒は、CuとFeとが共存するゆえに、還元されていても、一定の大きさの小さな粒子として存在するので、再度空気中で焼成を行なうと、酸化によりCu(TMAl1−x(0<x≦1.0)のような均一な構造になり、触媒活性がほぼ回復する。つまり、可逆的な反応が起きている。この結果から、焼成による活性の増大は酸化に由来することが明らかである。同様な結果はω−AlCuFe及びAlCuCo準結晶においても見られる。
【発明の効果】
【0039】
以上の説明から明らかなように、準結晶又は関連結晶相のAl合金塊を粉砕することにより得られるAl合金粉末を前駆体としてアルカリ水溶液リーチング処理して得られるAl合金粒子の表面にCuナノ粒子と遷移金属のナノ粒子が均一に分散して固着した複合粒子からなるCu系触媒を、さらに酸化性雰囲気で焼成処理した触媒は焼成しないものに比べて2倍以上の高活性であるとともに、耐熱性に優れ、耐久性を有する。また、本発明の触媒は、通常の溶解鋳造法により製造したインゴットの粉砕及びリーチング処理及び酸化性雰囲気中での熱処理により容易に製造されるので、簡単なプロセスで安価に製造できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0040】
本発明の触媒は、アルミニウムと銅を主成分とするAl合金を前駆体とする。このAl合金の第一のグループは、AlCuTM(TM=Fe,Ru,Os,Co,Rh,Ir)で示される準結晶及び関連結晶相合金である。第二のグループは、AlCuTM(TM=Mn,Re,Cr,Mo,W,V,Nb,Ta)で示される準結晶の関連結晶相合金である。これらのAl合金の組成は原子%で、銅が10〜30%、TM元素が5〜20%が好ましい。アルミニウムは、50〜85%、より好ましくは60〜80%である。
【0041】
Al合金の銅含有量が10原子%より少ないと、触媒を担うCu粒子が少ないので、高活性が期待できない。また、30原子%より多いと、Cuによるシンタリングが起き易くなるので好ましくない。
【0042】
第一のグループのTM元素は、準結晶又は準結晶の関連結晶相を形成する元素であり、Al合金粒子の表面に酸化物粒子を形成する。関連結晶相とは、準結晶単相ではなく、準結晶相以外に近似結晶やその他の結晶相を含む混相組織を意味する。例えば、準結晶の組成に近いAl70Cu20Fe10という結晶化合物(通常ω相と呼ばれている)のようなAl−Cu系金属間化合物においても触媒活性が大きく向上する。
【0043】
第二のグループのAl合金のTM元素は、準結晶の親類である近似結晶のような複雑な3元化合物が形成され、準結晶と同じように脆い性質を示す。また、第二のグループのAl合金は液体急冷を施すと準結晶になる。TM元素は、Cuと殆ど非固溶系の合金となっている。
【0044】
非固溶とは、固体状態では元素同士が溶け合わないことである。これは、上記の合金触媒に重要な役割を果たすと考えられる。つまり、アルカリ水溶液によるリーチング処理に際して、Alだけが溶け出し、残りのCuとTM元素は非固溶のためにそれぞれのナノ粒子が形成されることになる。また、非固溶のために、Cuナノ粒子が遷移金属元素ナノ粒子に囲まれた時、Cu原子が遷移金属元素ナノ粒子中を拡散することはできない。このような効果は、上記の合金系が高温においても高い触媒活性を示す一要因である。
【0045】
本発明において、触媒製造の原料に用いられるAl合金前駆体のうち、特に準結晶Al合金は、準結晶自身の脆さで表面積の大きな微細な1次粒子を簡単に得ることができる。準結晶Al合金は、周期性を持たず、結晶にはない10回対称を持つ、正10角形(2次元)準結晶の構造を有する。これらの組成の準結晶は安定相として知られているので、融点が1020℃付近まで達し、融点まで準結晶構造を維持するものである。それゆえ、800℃程度の高温で熱処理すれば準結晶相の成長により三つの元素から構成される″準結晶″の単相性がよいものが得られる。
【0046】
準結晶相は周期性を持たず、特定なすべり面がないので、転位の運動による塑性変形は起りにくく、脆いという性質をもっている。触媒として用いる場合、充分な活性を得るには高表面積であることが必要であるため、準結晶は粉砕加工性に優れ、容易にミクロンオーダーまで粉砕され、高表面積を達成することができることが必要である。
【0047】
本発明の耐熱銅系触媒の前駆体となるAl合金は、当該組成比の純金属を通常の溶解鋳造法、例えばアーク溶解などにより溶解し、鋳造することによりインゴットとして得られる。さらに、このインゴットは真空中や不活性雰囲気中で酸化を防ぎながら700〜850℃程度の温度範囲で熱処理を行い、結晶相の均一化を図ることができる。
【0048】
本発明の触媒製造方法では、まず、得られたAl合金のインゴットを触媒として表面積を増加させるために粉砕する。粉砕は例えば、インゴットを砕いた合金を瑪瑙乳鉢に装入し、遊星型ボールミルにて行なう。その際に得られる粒子の粒径の分布範囲は約1μm〜100μm、好ましくは5μm〜50μmである。
【0049】
本発明の複合微粒子触媒は、こうして得られた粒子にリーチング処理を施すことにより製造される。リーチング処理に使う処理液は塩基性でアルミニウムと反応する水酸化ナトリウム(NaOH)、炭酸ナトリウム(NaCO)又は炭酸水素ナトリウム(NaHCO)等のアルカリ水溶液を用いるが、一般的に使用される高濃度のNaOH水溶液でリーチを行なうと溶出作用が強すぎてしまい、Cuナノ粒子と遷移金属元素のナノ粒子が均一に分散した触媒層の形成が困難となるので、特に、中・弱塩基性の炭酸ナトリウム(NaCO)又は炭酸水素ナトリウム(NaHCO)水溶液を用いることが好ましい。アルカリ水溶液の濃度が高いと合金粒子のかなりの量のAlが溶出してしまい、粒子表面に固着した微粒子の割合が圧倒的に多くなり好ましくない。これらのアルカリ水溶液のアルカリ化合物の濃度範囲は2〜15重量%程度が好ましい。2重量%未満ではリーチが充分に進行せず、また、15重量%を超えると反応が早くなりリーチの制御が困難であり、好ましくない。
【0050】
これらの低濃度のアルカリ水溶液を使用してリーチング処理することによりAl合金粒子表面に形成されていたアルミナの薄膜を取り除くとともに、合金粒子の表面下のかなり薄い層からアルミニウムを溶出する。リーチング処理温度は0〜90℃の範囲であればよく、高温ほど溶出速度は速くなり、比表面積も増大するので40℃以上で行なうことが好ましい。低濃度のアルカリ水溶液によるリーチング処理によるAl溶出量は約0.5〜40重量%程度が好ましい。0.5重量%未満ではAlの溶出が不十分で表面積が小さくなり、また、40重量%を超えると準結晶構造が壊れて触媒の安定性が低下するので、好ましくない。より好ましくは、3〜25重量%である。
【0051】
このリーチング処理により粒子表面に銅の微細な粒子(Cuナノ粒子)を析出させることができる。リーチング処理を行なうことにより、Al合金粒子の表面にCuナノ粒子と遷移金属元素のナノ粒子が均一に分散して固着した複合粒子が得られる。得られた複合微粒子の粉末を濾過し、よく洗浄した後、乾燥する。
【0052】
得られた複合微粒子の比表面積は約5〜40m/g程度である。基本的にリーチング処理による1次粒子のサイズの変化は殆どないので、表面積の増大はAl合金粒子の表面に生成されたネットワーク状の微細構造に由来する。上記のとおり、低濃度のアルカリ水溶液によるリーチング処理によれば、Al合金粒子の表面から約200nmの深さの領域だけが溶け出して、Al合金粒子のコアのそのままの存在が触媒の安定性に重要な役割を果たす。したがって、この程度の表面積にも関わらず、高い触媒活性を示すことになる。
【0053】
触媒活性を担うのは、Al合金粒子表面に析出したナノ金属粒子であり、Al合金粒子は担体として機能する。AlCuFe準結晶では、FeはFeあるいはFe酸化物のナノ粒子として存在する。Fe又はその酸化物もCuに対して固溶体として溶け込まない性質をもっているので、Cu原子の拡散によるシンタリングを防ぐ効果がある。
【0054】
上記のように作製された準結晶Al合金を用いたCu系触媒をさらに酸化性雰囲気、例えば空気中で焼成を行なうことにより、ネットワーク状酸化物をより安定化し、高活性、高耐熱性のCu系触媒が得られる。この際の加熱条件は、温度300〜700℃、加熱時間4〜24時間が好ましい。加熱温度を700℃より高くしたり、24時間を超えて加熱したりしても効果はさほど変わらない。加熱温度が300℃未満か、加熱時間が4時間未満では十分な効果が得られない。得られる触媒はナノスケールのAlの酸化物からなるウール(wool)状組織及びその中に高分散しているCuナノ粒子から構成されている。この際に600℃以上の高温で酸化するとCu(TMAl1−x(0<x≦1.0)スピネル化合物が形成される。さらに、これを200〜300℃程度の水素雰囲気中で還元処理することによって粒径が10nm以下のナノCu粒子がFe、Alまたはこれらの混合物に囲まれた組織からなる表面層が形成され触媒活性が高くなる。
【0055】
本発明の複合微粒子は、必要に応じて成形して触媒として使用する。複合微粒子は担体に担持して使用することもできる。本発明の触媒を用いる反応装置の形式は特に制限されず、固定床流通式反応装置や流動床反応装置に用いられ、気相反応のみならず液相反応にも使用することができる。
【実施例】
【0056】
次に、実施例により本発明をさらに具体的に説明する。
実施例1及び比較例1
Al−Cu−Fe準結晶/5wt%NaCOリーチング処理
Al:4.29g、Cu:4.01g、Fe:1.69gを秤量し、水冷した銅ハース内に入れ、アルゴン雰囲気下でアーク溶解し、Al63Cu25Fe12のインゴット10gを得た。これをアルミナの鉢にて1mm以下の粉末に粉砕して石英管に真空封入し、800℃で24時間熱処理した。熱処理後石英管から取り出し、さらに、遊星ボールミルで粉砕した。得られた粒子の粒径分布範囲は0.1μm〜100μmであった。
【0057】
得られた粒子を5wt%のNaCO(炭酸ナトリウム)水溶液で室温において4時間リーチング処理した。これを濾過した後、よく水洗し、乾燥した。溶出量は約4重量%であった。これにより、準結晶Al合金粒子の表面にCuナノ粒子が均一に分散して固着した複合粒子が得られた。比表面積は約30m/gであった。このままの複合粒子を比較例1とした。この複合粒子をアルミナるつぼに入れて電気炉内に設置し、10℃の昇温速度で600℃まで温度を上げ、空気中600℃で24時間保持して、徐冷することにより焼成した。
【0058】
得られた粒子の比表面積は17m/gであった。図2に、本発明の触媒粒子の粉末X線回折パターンを示す。反応前後の試料の粉末X線回折では、銅あるいは酸化銅による明瞭な回折ピークが認められず、Cuのシンタリングが起きていなかったことを示唆している。粉末X線の結果からCu(CuO)の粒径を見積もって約10〜20nmであった。また、図3に、本発明の触媒粒子の透過電子顕微鏡観察像を示す。図4に比較のために、焼成処理前のAl合金粒子と表面の酸化物層の界面の透過電子顕微鏡観察像を示す。
【0059】
図3から分かるように、焼成により界面の組織が大きく変化することが明らかとなった。図4に示すように、焼成前では、準結晶のすぐ表面に約200nmの厚さの棉飴状のAl酸化物層が存在し、その中に多くのCuナノ粒子を分散している。これは準結晶の高表面積、高活性の原因になる。しかし、600℃での焼成は図3に示すように準結晶の表面および棉飴状のAl酸化物層の間にさらにAlおよびCuOとFeの酸化物ナノ粒子からなる集積層が新たに形成する。このような層状組織が準結晶触媒に高い熱安定性をもたらすと考えられる。
【0060】
<触媒活性試験>
上記の方法で得られた触媒0.6gを秤量し、固定床流通式反応装置で常圧、反応温度240〜400℃に設定し、水/メタノールのモル比1.5の混合液を流通させた。発生ガスをガスクロマトグラフィーにより分析し、水素発生速度により触媒の活性評価をした。なお、得られた複合粒子を、触媒評価前に240℃にて水素雰囲気中で還元を行い、活性が最も高い状態として評価した。
【0061】
図5に、得られた複合粒子の触媒活性試験結果の水素生成速度(黒四角印)をリーチング処理したままの比較例1(黒丸印)と対比して示す。空気中の焼成により240〜360℃の全温度域に亘って触媒の活性が大きく改善され、水素の生成速度が40%以上増加している。活性を表すグラム当たりH生成量は360℃で最大で560ml/minにも達している。しかも、360℃まで温度上昇と共に水素発生量が増え続けており、Cu系触媒にして高い耐熱性を有している。比較的に高い温度の360℃においても、水素生成速度が増えていることは高い耐熱性を実証しているといえる。
【0062】
実施例2及び比較例2
Al−Cu−Co準結晶/5wt%NaCOリーチング処理
Al:4.514g、Cu:2.453g、Co:3.033gを秤量し、水冷した銅ハース内に入れ、アルゴン雰囲気下でアーク溶解し、そのまま銅ハース内で冷却してAl65Cu15Co20のインゴット10gを得た。これをアルミナの鉢にて1mm以下の粉末に粉砕して石英管に真空封入し、800℃で24時間熱処理した。熱処理後に石英管から取り出し、さらに、遊星ボールミルで粉砕した。得られた粒子の粒径分布範囲は1μm〜100μmであった。
【0063】
得られたAl−Cu−Co準結晶合金粒子を5wt%のNaCO水溶液で室温において4時間リーチング処理した。これを濾過した後、よく水洗し、乾燥した。溶出量は3.6重量%であった。これにより、準結晶Al合金粒子の表面にCuナノ粒子とCoナノ粒子が均一に分散して固着した複合粒子が得られた。比表面積は約30m/gであった。このままの複合粒子を比較例2とした。
【0064】
この複合粒子をアルミナるつぼに入れて電気炉内に設置し、10℃の昇温速度で600℃まで温度を上げ、空気中600℃で24時間保持して、徐冷することにより焼成した。得られた粒子の比表面積は15m/gであった。粉末X線の結果からCu(CuO)の粒径を見積もって約10〜20nmであった。
【0065】
実施例1と同様に触媒活性試験を行った。図6に、得られた複合粒子の触媒活性試験結果の水素生成速度(黒四角印)をリーチング処理したままの比較例2(黒丸印)と対比して示す。空気中の焼成により240〜360℃の全温度域に亘って触媒の活性が実施例1のAl−Cu−Fe準結晶合金の場合よりもさらに大きく改善され、水素の生成速度が40%以上増加した。比較的に高い温度の360℃においても、水素生成速度が増えていることは高い耐熱性を実証しているといえる。
【0066】
実施例3及び比較例3
実施例1及び比較例1で用いた5wt%NaCO水溶液を同濃度のNaOH水溶液に代えてリーチング処理溶液とした以外は実施例1及び比較例1と同じ条件で処理した。
【0067】
実施例4及び比較例4
Al合金粒子をAl63Cu25Fe12準結晶に代えてAl70Cu20Fe10(ω)相合金粒子とした以外は実施例3及び比較例3と同じ条件で処理した。
【0068】
図7に、実施例3及び4で得られた複合粒子の触媒活性試験結果の水素生成速度(実施例3;黒四角印、実施例4;白丸印)をリーチング処理したままのもの(比較例3;黒丸印、比較例4;黒三角印)と対比して示す。空気中の焼成により240〜360℃の全温度域に亘って触媒の活性が大きく改善され、水素の生成速度が40%以上増加している。比較的に高い温度の360℃においても、水素生成速度が増えていることは高い耐熱性を実証しているといえる
【0069】
実施例5及び比較例5
実施例1及び比較例1で用いた5wt%NaCO水溶液を50℃に加熱してリーチング処理溶液とした以外は実施例1及び比較例1と同じ条件で処理した。図8に、実施例5で得られた複合粒子の触媒活性試験結果の水素生成速度(実施例5;黒三角印)を実施例1(黒四角印)、比較例1(黒丸印)と対比して示す。リーチング処理溶液の温度を50℃に高めることにより、活性が飛躍的に増大することとなった。図8に示すように、360℃において活性が900ml/g分を超えている。特に、低温(240℃)においても、200ml/g分という高い触媒活性を示しており、高温だけでなく、低温においても通常の銅触媒に比べても高い活性を有している。
【0070】
図9に、実施例5及び比較例5の試料の320℃における触媒寿命のテスト結果を示す。実施例5及び比較例5ともに時間とともに触媒活性が減少していく傾向があるが、50時間を超えたところでは、活性減少がかなり緩やかになった。実施例5では高い活性が維持され、50時間経っても460ml/g分という高活性を保っている。
【産業上の利用可能性】
【0071】
本発明の触媒は、従来の触媒に比較して著しく高活性であるとともに、耐熱性に優れ、耐久性を有するので、メタノールを水蒸気改質して水素を製造するために用いられる銅系触媒として非常に有用である。
【図面の簡単な説明】
【0072】
【図1】図1は、本発明の触媒を製造する過程における触媒粒子の表面構造を示す概念図である。
【図2】図2は、本発明の実施例1で得られた触媒粒子の粉末X線回折パターンを示すグラフである。
【図3】図3は、本発明の実施例1で得られた触媒粒子の電子顕微鏡観察像を示す図面代用写真である。
【図4】図4は、本発明の実施例1において酸化性雰囲気で熱処理する前の触媒粒子の電子顕微鏡観察像を示す図面代用写真である。
【図5】図5は、実施例1及び比較例1の触媒活性試験の結果を示すグラフである。
【図6】図6は、実施例2及び比較例2の触媒活性試験の結果を示すグラフである。
【図7】図7は、実施例3、4及び比較例3、4の触媒活性試験の結果を示すグラフである。
【図8】図8は、実施例5、実施例1及び比較例1の触媒活性試験の結果を示すグラフである。
【図9】図9は、実施例5及び比較例5の触媒活性寿命試験の結果を示すグラフである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
式Al100−y−zCuTM(ただし、yは、10〜30原子%、zは、5〜20原子%であり、TMは、Cu以外の遷移金属の少なくとも1種)で示される準結晶又は関連結晶相のAl合金塊を粉砕することにより得られるAl合金粒子をアルカリ水溶液でリーチング処理する工程において、前記リーチング処理の条件を調整することによって、前記Al合金粒子の表面にAlの酸化物と遷移金属の酸化物とからなり、Cu微粒子を分散して含有している酸化物表面層を形成し、その後、前記リーチング処理したAl合金粒子を酸化性雰囲気中で加熱することによって、前記酸化物表面層中の前記Cu微粒子の一部又は全部を銅酸化物微粒子とした酸化物表面層を有するAl合金粒子によってなることを特徴とするメタノール水蒸気改質用触媒。
【請求項2】
前記リーチング処理後に酸化性雰囲気中で加熱処理することによって得られる表面酸化物層中の銅酸化物がCuO又はCu(TMAl1−x(0<x≦1.0)スピネル化合物であることを特徴とする請求項1記載のメタノール水蒸気改質用触媒。
【請求項3】
前記リーチング処理後に酸化性雰囲気中で加熱処理することによって得られる表面酸化物層の中で前記Al合金粒子の界面近傍にCu及び遷移金属(TM)の酸化物からなる集積層が形成されていることを特徴とする請求項1又は請求項2記載のメタノール水蒸気改質用触媒。
【請求項4】
TMがFe,Ru,Os,Co,Rh,Irの群から選ばれる少なくとも1種であることを特徴とする請求項1又は2記載のメタノール水蒸気改質用触媒。
【請求項5】
TMがMn,Re,Cr,Mo,W,V,Nb,Taの群から選ばれる少なくとも1種である、ことを特徴とする請求項1又は2記載のメタノール水蒸気改質用触媒。
【請求項6】
請求項2記載のCuO又はCu(TMAl1−x(0<x≦1.0)スピネル化合物を還元することによって形成された粒径が10nm以下のナノCu粒子がFe、Alまたはこれらの混合物に囲まれた組織からなる表面層を有することを特徴とするメタノール水蒸気改質用触媒。
【請求項7】
式Al100−y−zCuTM(ただし、yは、10〜30原子%、zは、5〜20原子%であり、TMは、Cu以外の遷移金属の少なくとも1種)で示される準結晶又は関連結晶相のAl合金塊を粉砕することにより得られるAl合金粒子をアルカリ水溶液でリーチング処理する工程において、前記リーチング処理の条件を調整することによって、前記Al合金粒子の表面に、Alの酸化物と遷移金属の酸化物とからなり、Cu微粒子を分散して含有している酸化物表面層を形成し、その後、前記リーチング処理したAl合金粒子を酸化性雰囲気中で加熱することによって、前記酸化物表面層中の前記Cu微粒子の一部又は全部を銅酸化物微粒子とした酸化物表面層を有するAl合金粒子とすることを特徴とするメタノール水蒸気改質用触媒の製造方法。
【請求項8】
前記リーチング処理後に酸化性雰囲気中で加熱処理することによって得られる表面酸化物層中の銅酸化物がCuO又はCu(TMAl1−x(0<x≦1.0)スピネル化合物であることを特徴とする請求項7記載のメタノール水蒸気改質用触媒の製造方法。
【請求項9】
アルカリ水溶液が温度範囲40〜90℃であることを特徴とする請求項7記載のメタノール水蒸気改質用触媒の製造方法。
【請求項10】
アルカリ水溶液が濃度範囲2から15重量%の水酸化ナトリウム(NaOH)、炭酸ナトリウム(NaCO)又は炭酸水素ナトリウム(NaHCO)水溶液であることを特徴とする請求項7記載のメタノール水蒸気改質用触媒の製造方法。
【請求項11】
アルカリ水溶液リーチング処理によるAl合金粉末からの溶出量が0.5〜40重量%であることを特徴とする請求項7記載のメタノール水蒸気改質用触媒の製造方法。
【請求項12】
請求項8記載のCuO又はCu(TMAl1−x(0<x≦1.0)スピネル化合物を水素雰囲気中で還元処理することによって粒径が10nm以下のナノCu粒子がFe、Alまたはこれらの混合物に囲まれた組織からなる表面層を形成することを特徴とするメタノール水蒸気改質用触媒の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【国際公開番号】WO2005/009612
【国際公開日】平成17年2月3日(2005.2.3)
【発行日】平成19年9月27日(2007.9.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−512071(P2005−512071)
【国際出願番号】PCT/JP2004/010738
【国際出願日】平成16年7月28日(2004.7.28)
【出願人】(503360115)独立行政法人科学技術振興機構 (1,734)
【出願人】(301023238)独立行政法人物質・材料研究機構 (1,333)
【Fターム(参考)】