説明

メタルシートバタフライ弁

【課題】流通面積の減少を招くことなくスムースな止水性を得る。
【解決手段】弁箱1の内面に薄肉弾性金属材製円筒状弁箱シート6を設け、その弁箱シート6に弁体3を接離させるメタルシートバタフライ弁Vである。弁箱シート6は、その両端部7全周が断面U字状となって、弁箱内面の凹部4に収納される。この収納によって、弁箱シートの設置による弁箱内面への突出量を極力少なくすることができ、流通面積の減少を招くことがない。両端部7がU字状となっていると、弁箱シート6のほぼ中央に弁体3が当接した際(閉弁した際)、その当接力に対し、不静定梁のように、U字状端部から中央部を弁箱中心に向かって凸状に湾曲させるモーメント力が作用し、そのモーメント力は弁体との当接力が高まって、止水性は高いものとなる。Oリング8によって、凹部4内への止水を行ない、凹部4両端の弾性ゴム9によって弁箱の変形吸収及び閉弁時の当接力の緩和を図る。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、弁箱の変形による漏水を防止したメタルシートバタフライ弁に関するものである。
【従来技術】
【0002】
メタルシートバタフライ弁は、弁箱弁座(弁箱シート)及び弁体弁座(弁体シート)を共に金属シートで構成しているため、弁開閉に伴うその弁座(シート)の耐久性が高い。このため、メンテナンス面では有利な弁である。
しかし、通常のメタルシートバタフライ弁は、弁箱に弁箱シートを一体に設けているため、外力などによって弁箱が変形すると、弁箱シートも変形し、その変形によって、止水性や操作性が劣化する。このため、弁箱の変形が起こり易い場所、例えば、地中内に埋設する弁としては使用されていないのが実情である。
【0003】
このような実情の下、弁箱と弁箱シートを切り離した構造のメタルシートバタフライ弁が提案されている。この弁の弁箱シートの支持構造は、弁箱シートの両端をストッパで支持すると共に弁箱シートと弁箱内面の間にOリング等の弾性体を介在し、弁箱の変形に対しては弁箱シートと弁箱内面との間隙の存在によって弁箱シートは変形せず、このため、弁箱シートは、弁体シートと整合性を維持して水密に当接し、漏水が生じることがなく、変形によって弁体が拘束されることもない。としている(特許文献1 段落0007、同0014 図3参照)。因みに、Oリングは、前記間隙への水流入防止用シール材としており、このシールによってその間隙を介した水の下流側への流通を防止する(同特許文献1 段落0009)。
【特許文献1】特開2002−31252号公報
【0004】
また、上記技術を改良したものとして、上記ストッパを支持リングとするとともにその支持リングと弁箱シートの端を水密に溶接等して上記弁箱シートと弁箱内面との間隙を水密にしたものもある。このものは、閉弁時、弁箱シートが撓んで弁体の当接を許容する(特許文献2 図4参照)。
【特許文献2】特開2003−185033号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記両メタルシートバタフライ弁の弁箱シートは、筒軸方向平板状のため、弁体の当接による撓みは単純梁の態様を呈して、その撓み度合はその材質のみに左右される。このため、撓み度合に基づく弁体との当接による止水性は、材質に依存することとなって、弁箱シートには、そのスムースな当接(止水性)を得るために、勢い、高価な材料を使用することとなる。
また、上記弁箱シートはいずれも弁箱内面に突出するストッパ又は支持リングによって支持されているため、それら及び弁箱シートが弁箱内に突出して、流通面積の減少を招いている。
【0006】
この発明は、スムースな止水性を得ることを第1の課題、流通面積の減少を極力少なくすることを第2の課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記第1の課題を達成するために、この発明は、弁箱シートを、その両端部全周を外側に湾曲させると共に相互に相手側に向かって湾曲させた断面U字状としたのである。
両端部がU字状となっていると、弁箱シートのほぼ中央に弁体が当接した際(閉弁した際)、その当接力に対し、両端固定の不静定梁のように、U字状端部から中央部を弁箱中心に向かって弁箱シートを凸状に湾曲させるモーメント力が作用し、そのモーメント力は弁体との当接力を高める。このような作用がなされることにより、止水性は高いものとなるとともに、弁箱シートの凹部への後退によって当接力の緩和が図られるため、止水性が高い割には、弁棒の回転トルクは少なくてすむ。
また、弁箱に外力が働いて、弁箱が変形しても、弁箱シートは、そのU字状両端部がその間を狭めるように撓んでその変形を吸収するため、変形し難い。仮に、変形しても、弁体との当接時には、そのU字状両端部の撓みによって、その変形を補うように弁箱シートが撓んで、止水性を確保する。
【0008】
つぎに、第2の課題を達成するために、この発明は、弁箱内面に凹部を形成してその中に弁箱シートを収納することとしたのである。
このようにすれば、弁箱シートの設置による弁箱内面への突出量を極力少なくすることができる。
【発明の効果】
【0009】
この発明は、以上のように、弁箱シートのU字状端部の存在により、弁体との当接力を有効に得ることができるため、上記従来技術に比べれば、弁箱シートに高価な材料を使用する必要もなく、スムースな止水作用を得ることができる。また、弁箱シートを弁箱の凹部に収納したので、流通面積の減少を極力少なくすることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
この発明の実施形態としては、弁箱の内面に薄肉弾性金属材からなる円筒状弁箱シートを設け、その弁箱シートに弁体を接離して弁開閉するメタルシートバタフライ弁において、前記弁箱シートの両端部全周を外側に湾曲させると共に相互に相手側に向かって湾曲させた断面U字状とし、その弁箱シートを前記U字状端部が外側となるように前記弁箱内面に設けた構成を採用することができる。
【0011】
この構成において、弁箱内面全周に弁箱シートを収納する凹部を形成し、その凹部にU字状端部が奥側となるように弁箱シートを収納して、弁箱シートの設置による弁箱内面への突出量を極力少なくすることが好ましい。
また、弁体の当接により、弁箱シートはその両端部が弁箱内面に圧接して弁箱シート内への浸水を防止するが、その端部と弁箱内面との間には弾性シール材を介在してその浸水を確実に防ぐことが好ましい。弁箱シートを凹部に収納した場合には、弁箱シート両端部側面と凹部側面との間に弾性シール材を介在させる。
【0012】
上記弁箱シートの端部と弁箱内面との間にそれぞれ弾性ゴムを介在して、弁箱シートの弁体との当接力の緩和を図るとともに、外力等によって弁箱が変形した際のその変形を吸収するようにすることができる。このとき、止水性及び変形吸収性を考慮して、その弾性ゴムの弾性強度(弾性率)を適宜に決定する。
弁箱シートを凹部に収納した場合には、弁箱シートの端部と凹部の底面の間にそれぞれ弾性ゴムを介在する。
【0013】
この構成において、弁体の閉弁方向において前側の弾性ゴムを後側の弾性ゴムよりその弾性強度を低くしたもの(軟らかくしたもの)とすれば、弁体が弁箱シートに摺動当接して閉弁する際、その当接力(弁箱シートからの反発力)が徐々に高くなって閉弁されるため、その閉弁作用がスムースとなる。
また、その弾性ゴムの間にその両者を位置決めする仕切り壁を形成すれば、一方の弾性ゴムの作用が他の弾性ゴムの作用に影響されにくくなって、両弾性ゴムが個別にそれぞれ上記変形吸収などの作用を行なって、その作用が確実になされる。
【実施例】
【0014】
一実施例を図1及び図2に示し、この実施例は、埋設水道管Dに介設されるメタルシートバタフライ弁Vであって、弁箱1の中央に弁棒2が水密に貫通し、その弁棒2にバタフライ形弁体3が設けられている。この弁体3の周囲には金属製の弁体シート3aが設けられている。
弁箱1内面の中央部全周には凹部4が形成され、その凹部4は両端に全周に亘る溝5を有している。この凹部4に弁箱シート6が収納されている。
【0015】
弁箱シート6は、弁体3の圧接に対し、適度な弾性を有する薄肉弾性金属材、例えば、ステンレス鋼等の鋼材からなり、その両端部7全周を外側に湾曲させると共に相互に相手側に向かって湾曲させた断面U字状としており、そのU字状端部7が奥側となるように凹部4に収納されている。
弁箱シート6の両端部7と凹部4側面との間にはOリング8が介在されて、このOリング8によって凹部4内への浸水が確実に防がれる。
【0016】
また、弁箱シート6の両端部7が望む凹部4の溝5には全周に亘る弾性ゴム9、9がそれぞれ納められおり、この弾性ゴム9によって、弁箱シート6の弁体3との当接力の緩和及び弁箱1の変形吸収を図る。このとき、その弾性ゴム9の弾性強度は、弁箱シート6と弁体3の当接による止水性を考慮して適宜に決定し、弁体の閉弁方向において前側の弾性ゴム9を後側の弾性ゴム9よりその弾性強度を低くする。この実施例では、図1において、下側は左側の弾性ゴム9が前側となり、上側は右側の弾性ゴム9が前側となるため、一つの弾性ゴム9を周囲中心分割線を境にしてその弾性強度を変えたものとなっている。
なお、弾性ゴム9は、溝5の内面に機械接合したり、焼付けを含む接着接合したり、又は、弁箱シート端部7に、同様な機械接合したり、焼付けを含む接着接合する。
【0017】
この実施例は以上の構成であり、図1鎖線で示すように、弁体3を弁箱1の中心軸方向(流れ方向)にすることによって開弁し、同図実線で示すように、弁体3を弁箱1の中心軸に対する直交方向に矢印のように回転させてその弁体シート3aを弁箱シート6に当接してメタルシートでもって閉弁する。
【0018】
この閉弁時、弁箱シート6の両端部7がU字状となっているため、弁箱シート6のほぼ中央に弁体3(弁体シート3a)が当接すると、その当接力に対し、弁箱シート6には、両端固定の不静定梁のように、図2矢印で示すように、U字状端部7から中央部を弁箱1中心に向かって凸状に湾曲させるモーメント力が作用し、そのモーメント力は弁体3との当接力を高める。このため、止水性は高いものとなる。
また、弁箱1に外力が働いて、弁箱1が変形しても、弁箱シート6は、そのU字状両端部7がその間を狭めるように撓んでその変形を吸収する。仮に、変形しても、弁体3との当接時には、そのU字状両端部7の撓みによって、その変形を補うように弁箱シート6が撓んで、止水性を確保する。
【0019】
さらに、弁体3の閉弁方向において前側の弾性ゴム9を後側の弾性ゴム9よりその弾性強度を低くしているので、弁体3が弁箱シート6に摺動当接して閉弁する際、その当接力が、低いところから徐々に高くなって閉弁されるため、その閉弁作用がスムースである。
また、その両弾性ゴム9、9の間は、溝5、5に挟まれた弁箱部分がその両者を位置決めする仕切り壁10となっており、このため、この仕切り壁10によって、一方の弾性ゴム9の作用が他の弾性ゴム9の作用に影響されにくくなって、両弾性ゴム9が個別にそれぞれ上記変形吸収などの作用を行なって、その作用が確実になされる。
【0020】
上記実施例は、凹部4内に弁箱シート6を収納したが、凹部4を形成しない場合には、上記特許文献1に示すようにストッパにより、弁箱1内面の所要位置に弁箱シート6を支持するようにする。このとき、Oリング8はそのストッパと端部7の間に、弾性ゴム9は端部7と弁箱内面の間に、それぞれ介在することができる。また、仕切り壁10も、仕切り部材を弁箱内面に固定することによって設けることもできる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】一実施例の切断平面図
【図2】図1の要部拡大図
【符号の説明】
【0022】
D 水道管
V メタルシートバタフライ弁
1 弁箱
2 弁軸
3 弁体
3a 弁体シート(弁体弁座)
4 凹部
5 溝
6 弁箱シート(弁箱弁座)
7 弁箱シートのU字状端部
8 Oリング
9 弾性ゴム
10 仕切り壁

【特許請求の範囲】
【請求項1】
弁箱1の内面に薄肉弾性金属材からなる円筒状弁箱シート6を設け、その弁箱シート6に弁体3を接離させて弁開閉するメタルシートバタフライ弁Vにおいて、
上記弁箱シート6の両端部7全周を外側に湾曲させると共に相互に相手側に向かって湾曲させた断面U字状とし、その弁箱シート6を前記U字状端部7が外側となるように前記弁箱1内面に設けたことを特徴とするメタルシートバタフライ弁。
【請求項2】
上記弁箱1内面全周に前記弁箱シート6を収納する凹部4を形成し、その凹部4に前記U字状端部7が奥側となるように弁箱シート6を収納したことを特徴とする請求項1に記載のメタルシートバタフライ弁。
【請求項3】
上記弁箱シート両端部7側面と上記凹部4側面との間に弾性シール材8を介在したことを特徴とする請求項2に記載のメタルシートバタフライ弁。
【請求項4】
上記弁箱シート6の両端部7と凹部4の底面の間にそれぞれ弾性ゴム9を介在したことを特徴とする請求項2又は3に記載のメタルシートバタフライ弁。
【請求項5】
弁体3の閉弁方向において前側の上記弾性ゴム9を後側の弾性ゴム9よりその弾性強度を低くしたことを特徴とする請求項4に記載のメタルシートバタフライ弁。
【請求項6】
上記両弾性ゴム9、9の間にその両者を位置決めする仕切り壁10を形成したことを特徴とする請求項4又は5に記載のメタルシートバタフライ弁。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2006−132743(P2006−132743A)
【公開日】平成18年5月25日(2006.5.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−325278(P2004−325278)
【出願日】平成16年11月9日(2004.11.9)
【出願人】(000142595)株式会社栗本鐵工所 (566)
【Fターム(参考)】