説明

メタルプレートコネクタ接合構造及びその施工方法並びにメタルプレートコネクタの製造方法

【課題】メタルプレートコネクタの浮き上がりを抑制することができるメタルプレートコネクタ接合構造及びその施工方法並びにメタルプレートコネクタの製造方法を提供する。
【解決手段】金属板の所定の複数個所を切り起こして形成した複数の爪部32を有するメタルプレートコネクタ3を、板材2,2同士の接合部22に跨って設置することにより板材2,2同士を接合するメタルプレートコネクタ接合構造1であって、爪部32が板材2の接合部22近傍に圧入しているとともに、メタルプレートコネクタ3は接着剤4によって板材2に接着している。メタルプレートコネクタ3の複数の爪部32の表面には、接着剤4の被膜41が予め形成されている。被膜41は、粘度を100mPa・s/20℃以上、250mPa・s/20℃以下に調整した接着剤4を容器に貯留し、この接着剤4に複数の爪部32を浸して取り出すことにより形成される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、メタルプレートコネクタを用いて木質系材料同士を接合するメタルプレートコネクタ接合構造及びその施工方法並びにメタルプレートコネクタの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
枠組壁工法等の木造建築物においては、構造部材相互の接合にメタルプレートコネクタを用いる場合がある。
メタルプレートコネクタは、構造用の木材や集成材相互の接合部において、該接合部近傍に爪部を圧入することにより、接合用釘の集合体として機能させるものであり、ステンレス板、鋼板等の金属板の複数個所をプレス成形機による周知のせん断、曲げ加工によって切り起こし、該切り起こし部を爪部として作用させるように構成されている。
【0003】
例えば、特許文献1には、圧入時における爪部の挿入抵抗を分散して位置ずれを防止するために、第1の切り起こし部の切り起こし長さを、第2の切り起こし部及び第3の切り起こし部の切り起こし長さより長く形成したメタルプレートコネクタが記載されている。
【0004】
【特許文献1】特公平6−78648号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
枠組壁工法等の木造建築物の構造部材には、輸入材が多く用いられており、国産材はあまり用いられていなかったが、近年、国産材を有効利用する動きが高まっている。しかし、国産材は、輸入材に比較して、含水率が高く強度のバラツキや低下が生じる傾向がある。そのため、メタルプレートコネクタを用いて国産材同士を接合した場合には、木材に爪部を圧入する際の圧入抵抗が小さくなり、その結果、爪部の引抜抵抗も小さくなり、メタルプレートコネクタの浮き上がりが生じてしまい、接合部の靭性が不足し、結果的に接合耐力が低下する傾向があった。
特許文献1に記載のメタルプレートコネクタは、圧入時における爪部の挿入抵抗の分散や、位置ずれの防止を期待することはできるが、接合部材に起因する接合耐力の低下については、更なる改善が望まれていた。
【0006】
本発明は、かかる問題を解決するためになされたものであり、メタルプレートコネクタの浮き上がりを抑制することができるメタルプレートコネクタ接合構造及びその施工方法並びにメタルプレートコネクタの製造方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、金属板の所定の複数個所を切り起こして形成した複数の爪部を有するメタルプレートコネクタを、木質系材料同士の接合部に跨って設置することにより前記木質系材料同士を接合するメタルプレートコネクタ接合構造であって、前記爪部が前記木質系材料の接合部近傍に圧入しているとともに、前記メタルプレートコネクタは接着剤によって前記木質系材料に接着していることを特徴とする。
【0008】
かかる構成によれば、前記爪部が前記木質系材料の接合部近傍に圧入しているとともに、前記メタルプレートコネクタは接着剤によって前記木質系材料に接着しているので、接着剤によって木質系材料からの爪部の引抜抵抗力を補うことができる。そのため、メタルプレートコネクタの浮き上がりが抑制され、接合部における靭性の低下及び接合耐力の低下を抑制することができる。
【0009】
また、本発明は、前記したメタルプレートコネクタ接合構造の施工方法であって、前記金属板の前記木質系材料側の面及び前記爪部の少なくともいずれか一方に接着剤を塗布した前記メタルプレートコネクタを、前記木質系材料の接合部に跨って配置する工程と、前記メタルプレートコネクタを押圧して、前記木質系材料の接合部近傍に前記爪部を圧入する工程と、を含むことを特徴とする。
また、本発明は、前記したメタルプレートコネクタ接合構造の施工方法であって、前記木質系材料の接合部近傍に接着剤を塗布又は設置する工程と、前記メタルプレートコネクタを、前記木質系材料の接合部に跨った状態で、前記接着剤の上方に配置する工程と、前記メタルプレートコネクタを押圧して、前記木質系材料の接合部近傍に前記爪部を圧入する工程と、を含むことを特徴とする。
【0010】
かかる方法によれば、爪部を木質系部材に圧入する際に、メタルプレートコネクタと木質系材料との間に接着剤が介在することになるので、メタルプレートコネクタを木質系部材に容易に接着することができる。
【0011】
また、本発明に係るメタルプレートコネクタ接合構造の施工方法において、前記接着剤は、吸湿型接着剤であり、前記木質系材料の接合部近傍に前記爪部を圧入した後に、前記接着剤が前記木質系材料中の水分を吸湿するように構成してもよい。
【0012】
かかる方法によれば、木質系部材の内部に入り込んだ吸湿型接着剤が、木質系部材の内部の水分を吸収して硬化するので、木質系部材の内部において、吸湿型接着剤を容易かつ確実に硬化させることができる。
【0013】
また、本発明に係るメタルプレートコネクタ接合構造の施工方法において、前記接着剤は、熱硬化型接着剤であり、前記木質系材料の接合部近傍に前記爪部を圧入した後に、前記メタルプレートコネクタを加熱して、前記接着剤を硬化させる工程をさらに含むように構成してもよい。
【0014】
かかる方法によれば、金属製のメタルプレートコネクタを介して、木質系部材の内部に入り込んだ熱硬化型接着剤に熱を加えることができるので、熱硬化型接着剤を容易かつ確実に硬化させることができる。
【0015】
また、本発明は、メタルプレートコネクタ接合構造に用いるメタルプレートコネクタの製造方法であって、粘度を100mPa・s/20℃以上、250mPa・s/20℃以下に調整した前記接着剤を容器に貯留する工程と、前記容器に貯留した前記接着剤に前記メタルプレートコネクタの複数の爪部を浸して取り出すことにより、前記爪部の表面に前記接着剤の被膜を形成する工程と、を含むことを特徴とする。
【0016】
かかる方法によれば、粘度を100mPa・s/20℃以上、250mPa・s/20℃以下に調整した前記接着剤を容器に貯留し、前記容器に貯留した前記接着剤に前記メタルプレートコネクタの複数の爪部を浸して取り出すことにより、前記爪部の表面に前記接着剤の被膜を形成するので、複数の爪部に接着剤の被膜を容易に形成することができ、かつ、木質系材料の接合部にメタルプレートコネクタを圧入した際に、この接着剤の被膜の投錨効果によって木質系材料に強固に固着する。なお、接着剤の粘度が高すぎると、被膜の形成が困難になり、接着剤の粘度が低すぎると、木質系材料に爪部を圧入した際に、接着剤による投錨効果を得られない。
【0017】
また、前記接着剤は、前記容器内に設置されたスポンジ状の接着剤保持部材(以下、「スポンジ体」という。)に含浸されていてもよく、前記メタルプレートコネクタの複数の爪部を前記接着剤保持部材に挿入して引き抜くことにより、前記爪部の表面に前記接着剤の被膜を形成することもできる。
【0018】
このようにすれば、接着剤の蒸散を抑制することができるとともに、複数の爪部の表面に安定した膜厚の被膜を容易に形成することができる。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、メタルプレートコネクタの浮き上がりを抑制することができるメタルプレートコネクタ接合構造及びその施工方法並びにメタルプレートコネクタの製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本実施形態に係るメタルプレートコネクタ接合構造を示す構造図であり、(a)は正面図、(b)は(a)のI−I線断面図、である。
【図2】メタルプレートコネクタの斜視図である。
【図3】吸湿型の接着剤を用いた場合のメタルプレートコネクタ接合構造の施工方法を説明するための断面図であり、(a)は圧入前、(b)は圧入後の状態を示している。
【図4】熱硬化型の接着剤を用いた場合のメタルプレートコネクタ接合構造の施工方法を説明するための断面図であり、(a)は圧入前、(b)は圧入中、(c)は圧入後の状態を示している。
【図5】接着テープ型の接着剤を用いた場合のメタルプレートコネクタ接合構造の施工方法を説明するための断面図であり、(a)は圧入前、(b)は圧入中、(c)は圧入後の状態を示している。
【図6】メタルプレートコネクタの製造手順を説明するための図面であり、(a)は、接着剤が含浸されたスポンジ体を容器に収容した状態を示す断面図、(b)は、メタルプレートコネクタの爪部をスポンジ体に挿入した状態を示す断面図、(c)は、スポンジ体から引き抜いた爪部の表面に被膜が形成された状態を示す断面図、である。
【図7】粘度の高い接着剤を用いた比較例に係るメタルプレートコネクタの製造方法を説明するための図面であり、(a)は、スポンジ体から爪部を引き抜いた状態を示す断面図、(b)は、メタルプレートコネクタの爪部に被膜が形成された状態を表す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
本発明の実施形態に係るメタルプレートコネクタ接合構造及びその施工方法について図面を参照して詳細に説明する。説明において、同一の要素には同一の符号を付し、重複する説明は省略する。
【0022】
図1、図2に示すように、本実施形態に係るメタルプレートコネクタ接合構造1は、例えば木造建築物の構造材を構成する板材2,2同士を、メタルプレートコネクタ3を用いて面的に接合する構造である。
メタルプレートコネクタ接合構造1は、一対の板材2,2と、この板材2,2の端部21,21同士を付き合せて形成した接合部22に跨がって設置したメタルプレートコネクタ3,3と、板材2とメタルプレートコネクタ3との間に介在する接着剤4と、を備えている。
【0023】
板材2は、例えば枠組壁工法の枠組材や建物の屋根を支えるトラス構造体などを構成する構造材である。板材2は、無垢材あるいは集成材などの木質系材料で構成されている。
板材2としては、輸入材を用いてもよいし、国産材を用いてもよい。
【0024】
メタルプレートコネクタ3は、板材2同士を面的に接合する金属製の部材であり、板材2の接合部22に跨って設置されている。また、メタルプレートコネクタ3は、図1(b)に示すように、板材2の接合部22の両側に1つずつ設置されている。つまり、メタルプレートコネクタ3は、板材2の接合部22を両側から挟持している。
メタルプレートコネクタ3は、図2に示すように、例えばステンレス板などの金属板からなるプレート部31と、このプレート部31の所定の複数個所を三角形状に切り起こして形成した複数の爪部32と、を有している。また、プレート部31の爪部32を切り起こした部分には、三角形状の孔部33が形成されている。
【0025】
複数の爪部32は、板材2に食い込む部分であり、プレート部31の表面に起立して形成されている。また、各爪部32は、本実施形態では先端が尖った三角形状を呈している。爪部32は、例えばプレス成形機などによって金属板に対して三角形の2辺に相当する部分に切れ目を入れて、切れ目の内側部分を押圧して折り曲げて切り起こすことによって形成されている。
なお、爪部32の形状、高さ、配置等は、板材2に圧入可能であれば特に限定されるものではなく、自由に設定すればよい。
【0026】
接着剤4は、メタルプレートコネクタ3と板材2の間に介在して、メタルプレートコネクタ3の表面、より詳しくは、プレート部31の板材2側の面31aと爪部32の表面を、板材2に接着する機能を有している。
接着剤4としては、様々な形態のものを用いることができ、例えば、熱硬化型接着剤、ホットメルト型接着剤、吸湿型接着剤、水和型接着剤、気乾型接着剤、導電型接着剤、感圧(粘着)型接着剤、接着テープ型接着剤などが利用できる。
【0027】
次に、図3を参照して、メタルプレートコネクタ接合構造1の施工方法について説明する。 図3は、吸湿型の接着剤を用いた場合のメタルプレートコネクタ接合構造の施工方法を説明するための断面図であり、(a)は圧入前、(b)は圧入後の状態を示している。
【0028】
初めに、図3(a)に示すように、台座Dの上に、一対の板材2,2の端部21同士を付き合せた状態で設置する。これにより、接合部22が構成される。
【0029】
次に、メタルプレートコネクタ3のプレート部31の板材2側の表面31aと爪部32の表面に、接着剤4を塗布する。なお、ここでは、接着剤4として吸湿型接着剤を塗布することとし、メタルプレートコネクタ3は乾燥状態にしておくものとする。
接着剤4を塗布する方法としては、図示は省略するが、例えばスプレーガンを用いて接着剤4をメタルプレートコネクタ3に吹き付ける方法や、接着剤4を刷毛やローラで塗る方法などが挙げられる。
【0030】
次に、接着剤4を塗布したメタルプレートコネクタ3を、接合部22に跨るように配置し、そのさらに上方にプレス装置Pを配置する。
【0031】
そして、図3(b)に示すように、プレス装置Pを作動させて、メタルプレートコネクタ3に押圧力を均一に印加して、メタルプレートコネクタ3の複数の爪部32を、一対の板材2,2の接続部22の近傍に圧入する。
このとき、爪部32の表面に付着している接着剤4が、爪部32とともに板材2の内部に入り込むこととなる。また、プレート部31の板材2側の表面31aと板材2の表面との間に接着剤4が介在することとなる。
【0032】
板材2の表面や内部に接触した吸湿型の接着剤4は、板材2の水分と反応して硬化する。これにより、爪部32の表面と板材2の内部、及び、プレート部31の板材2側の表面31aと板材2の表面、が接着剤4によって接着されることとなる。
【0033】
そして、図示は省略するが、板材2の反対側の面についても、同様の手順により、メタルプレートコネクタ3を設置する。これにより、メタルプレートコネクタ接合構造1(図1参照)が完成する。
【0034】
次に、図4を参照して、メタルプレートコネクタ接合構造1の他の施工方法について説明する。図4は、熱硬化型の接着剤を用いた場合のメタルプレートコネクタ接合構造の施工方法を説明するための断面図であり、(a)は圧入前、(b)は圧入中、(c)は圧入後の状態を示している。
【0035】
初めに、図4(a)に示すように、台座Dの上に、一対の板材2,2の端部21同士を付き合せた状態で設置する。これにより、接合部22が構成される。
【0036】
次に、一対の板材2,2の接合部22の近傍の表面であって、メタルプレートコネクタ3が設置される範囲に、接着剤4を塗布する。なお、ここでは、接着剤4として熱硬化型接着剤を塗布することとする。
接着剤4を塗布する方法としては、図示は省略するが、例えば接着剤4の塗布範囲以外の部分にマスキング処理を施した板材2の表面にスプレーガンを用いて接着剤4を吹き付ける方法や、接着剤4を刷毛やローラで塗る方法などが挙げられる。
【0037】
次に、接着剤4を塗布した板材2,2の上方に、メタルプレートコネクタ3を接合部22に跨るように配置し、そのさらに上方にプレス装置Pを配置する。なお、このプレス装置Pには、加熱装置P1が設けられている。
【0038】
そして、図4(b)(c)に示すように、プレス装置Pを作動させて、メタルプレートコネクタ3に押圧力を均一に印加して、メタルプレートコネクタ3の複数の爪部32を、一対の板材2,2の接続部22の近傍に圧入する。
このとき、爪部32の表面に付着している接着剤4が、爪部32とともに板材2の内部に入り込むこととなる。また、プレート部31の板材2側の表面31aと板材2の表面との間に接着剤4が介在することとなる。
【0039】
次に、プレス装置Pがメタルプレートコネクタ3に接触した状態で、加熱装置P1を作動することにより、メタルプレートコネクタ3を介して熱硬化型の接着剤4を加熱する。これにより、接着剤4が硬化して、爪部32の表面と板材2の内部、及び、プレート部31の板材2側の表面31aと板材2の表面、が接着剤4によって接着される。
【0040】
次に、図示は省略するが、板材2の反対側の面についても、同様の手順により、メタルプレートコネクタ3を設置する。これにより、メタルプレートコネクタ接合構造1(図1参照)が完成する。
【0041】
このように、本実施形態に係るメタルプレートコネクタ接合構造1によれば、複数の爪部32が板材2の接合部22近傍に圧入しているとともに、プレート部31の板材2側の表面31a及び爪部32は接着剤4によって板材2に接着しているので、接着剤4によって板材2からの爪部32の引抜抵抗力を補うことができる。そのため、接合部22に荷重が作用した際に、メタルプレートコネクタ3の浮き上がりが抑制され、接合部22における靭性の低下及び接合耐力の低下を抑制することができる。
そのため、輸入材に比較して、含水率が高く強度のバラツキや低下が生じる傾向がある国産の杉材などを使用した場合でも、接合部22の強度を安定させることができ、国産材の使用の促進を図ることができる。
【0042】
また、本実施形態に係るメタルプレートコネクタ接合構造1の施工方法によれば、爪部32を板材2に圧入する際に、接着剤4が爪部32とともに板材2の内部に入り込むので、爪部32を板材2の内部に容易に接着することができる。
【0043】
また、吸湿型の接着剤4を用いたメタルプレートコネクタ接合構造1の施工方法によれば、板材2の内部に入り込んだ吸湿型の接着剤4が、板材2の内部の水分を吸収して硬化するので、板材2の内部において、吸湿型の接着剤4を容易かつ確実に硬化させることができる。
また、メタルプレートコネクタ3に吸湿型の接着剤4を塗布するので、メタルプレートコネクタ3を板材2に圧入する前に接着剤4が吸湿してしまうことがなく、施工管理(接着剤4の管理)が容易である。
【0044】
また、熱硬化型の接着剤4を用いたメタルプレートコネクタ接合構造1の施工方法によれば、板材2の内部に入り込んだ熱硬化型の接着剤4に、金属製のメタルプレートコネクタ3を介して熱を加えることができるので、熱硬化型の接着剤4を容易かつ確実に硬化させることができる。
【0045】
以上、本発明の好適な実施形態について、図面を参照して説明したが、本発明はこの実施形態に限定されるものではなく、本発明の主旨を逸脱しない範囲で適宜変更することができる。
【0046】
例えば、本実施形態では、板材2及びメタルプレートコネクタ3のいずれか一方に、接着剤4を塗布したが、これに限られるものではなく、板材2及びメタルプレートコネクタ3の両方に塗布してもよい。
【0047】
また、本実施形態では、熱硬化型の接着剤4を用いたメタルプレートコネクタ接合構造1の施工方法において、加熱装置P1を備えたプレス装置Pを用いることとしたが、加熱装置P1は、プレス装置Pと別体に設けてもよい。
【0048】
また、接着剤4として、ホットメルト型接着剤、水和型接着剤、気乾型接着剤、導電型接着剤、感圧(粘着)型接着剤、接着テープ型接着剤などを選択した場合には、それぞれの接着剤にあった施工方法を採用すればよい。
【0049】
ここで、接着剤4として、接着テープ型の接着剤(接着テープ5)を用いた場合のメタルプレートコネクタ接合構造の施工方法について、図5を参照して説明する。
図5は、接着テープ型の接着剤を用いた場合のメタルプレートコネクタ接合構造の施工方法を説明するための断面図であり、(a)は圧入前、(b)は圧入中、(c)は圧入後の状態を示している。
【0050】
初めに、図5(a)に示すように、台座Dの上に、一対の板材2,2の端部21同士を付き合せた状態で設置する。これにより、接合部22が構成される。
【0051】
次に、一対の板材2,2の接合部22の近傍の表面であって、メタルプレートコネクタ3が設置される範囲に、接着テープ5を設置する。
接着テープ5は、基材の両面に接着剤層を形成したいわゆる両面テープである。
【0052】
次に、接着テープ5を設置した板材2,2の上方に、メタルプレートコネクタ3を接合部22に跨るように配置し、そのさらに上方にプレス装置Pを配置する。
【0053】
そして、図5(b)(c)に示すように、プレス装置Pを作動させて、メタルプレートコネクタ3に押圧力を均一に印加して、メタルプレートコネクタ3の複数の爪部32を、一対の板材2,2の接続部22の近傍に圧入する。
このとき、図5(b)に示すように、爪部32が、接着テープ5を突き破って(貫通して)板材2に貫入する。これにより、プレート部31の板材2側の表面31aと板材2とが、接着テープ5によって接着されることとなる。
【0054】
次に、図示は省略するが、板材2の反対側の面についても、同様の手順により、メタルプレートコネクタ3を設置する。これにより、メタルプレートコネクタ接合構造1(図1参照)が完成する。
【0055】
このように、接着テープ型の接着剤を用いたメタルプレートコネクタ接合構造の施工方法によれば、爪部32の引抜抵抗力と接着テープ5の付着抵抗力によって、メタルプレートコネクタ3の浮き上がりを抑制することができる。
【0056】
つぎに、メタルプレートコネクタ3の製造方法、換言すれば、メタルプレートコネクタ3の爪部32に接着剤4の被膜を形成する方法について、図6乃至図7を参照して詳細に説明する。
図6は、メタルプレートコネクタの製造手順を説明するための図面であり、(a)は、接着剤が含浸されたスポンジ体を容器に収容した状態を示す断面図、(b)は、メタルプレートコネクタの爪部をスポンジ体に挿入した状態を示す断面図、(c)は、スポンジ体から引き抜いた爪部の表面に被膜が形成された状態を示す断面図、である。
図7は、粘度の高い接着剤を用いた比較例に係るメタルプレートコネクタの製造方法を説明するための図面であり、(a)は、スポンジ体から爪部を引き抜いた状態を示す断面図、(b)は、メタルプレートコネクタの爪部に被膜が形成された状態を表す斜視図である。
【0057】
まず、メタルプレートコネクタ3の製造方法を開発するに到った経緯を説明する。
メタルプレートコネクタ3の複数の爪部32に接着剤4の被膜41(図6(c)参照)を予め形成する方法としては、様々な方法が考えられるが、安易に行うと、接着強度の安定性を失ったり、作業性を悪くする傾向がある。
例えば、接着剤4を噴霧(スプレー)して被膜41を形成する場合、メタルプレートコネクタ3の表面には複数の爪部32が立設されているので、噴霧する方向が偏ると被膜41の膜厚が不均一になり、接着強度の安定性が損なわれる。また、接着剤の粘度によっては、接着剤4が糸を引いて絡まったり、膜厚が多すぎたり少なすぎたりしてしまうことがあった。また、爪部32を切り起こした孔部33から接着剤4がはみ出してしまうことがあった。
そこで、発明者らは、鋭意研究の結果、メタルプレートコネクタ3の複数の爪部32に、接着剤4の被膜41を安定した膜厚で容易に形成することができるメタルプレートコネクタ3の製造方法を開発した。以下、メタルプレートコネクタ3の製造方法について説明する。
【0058】
はじめに、図6(a)に示すように、上部が開口した容器5に、接着剤保持部材となるスポンジ体6を設置するとともに、粘度が100mPa・s/20℃以上、250mPa・s/20℃以下(150±50mPa・s/20℃)となるように調整された接着剤4を貯留して、スポンジ体6に接着剤4を含浸させる。
なお、このような粘度を有する接着剤4としては、例えば、メチルエチルケトンを主溶剤とするコニシ株式会社の「VR2」などがある。
【0059】
また、メタルプレートコネクタ3の背面31b(爪部32と反対側の面)には、作業者が把持する把持部34を設置する。把持部34は、例えば図示しない磁性体(マグネット)、吸盤、などの取付手段を用いて取り付けられている。
磁性体の一例としては、スイッチ操作によって磁力のON/OFFを切り換え可能なマグネット装置を用いることができる。このような把持部34によれば、磁力のON/OFFを切り換えることによって、メタルプレートコネクタ3の把持と開放を行うことができる。
【0060】
つぎに、図6(b)に示すように、メタルプレートコネクタ3の複数の爪部32を、接着剤4を含浸したスポンジ体6に挿入する。このとき、メタルプレートコネクタ3のプレート部31の表面31aは、スポンジ体6に接触しないようにするのが好ましい。なぜなら、プレート部31の表面31aに接着剤4が付着すると、メタルプレートコネクタ3を板材2の接合部22に設置したときに、孔部33から接着剤4がはみ出して、接着剤4の塗布量が安定せず、また、完成したメタルプレートコネクタ接合構造1の表面が汚れてしまうことがあるからである。
【0061】
つぎに、図6(c)に示すように、メタルプレートコネクタ3をスポンジ体6から離間するように(上方に)移動させることにより、スポンジ体6から複数の爪部32を引き抜く(取り出す)。このとき、爪部32の表面に接着剤4が略一定の膜厚で付着する。この接着剤4から有機溶剤が揮発して、乾燥状態あるいは半乾き状態となることにより、爪部32の表面に被膜41が形成される。これにより、爪部32に接着剤4の被膜41が形成されたメタルプレートコネクタ3が完成する。
【0062】
このように、粘度が100mPa・s/20℃以上、250mPa・s/20℃以下となるように調整された接着剤4に、メタルプレートコネクタ3の複数の爪部32を同時に浸漬して引き抜くことにより、各爪部32の表面に一定の膜厚で接着剤4を付着(残存)させることができる。そのため、この接着剤4が乾燥して形成された被膜41の厚さの安定性が向上する。
なお、接着剤4に、メタルプレートコネクタ3の複数の爪部32を同時に浸漬して取り出す工程は、ロボットハンドなどの専用の装置を用いて機械化することができる。また、スポンジ体6を用いずに、接着剤4をバットなどに貯留する場合は、ロボットハンドなどの専用の装置を用いてメタルプレートコネクタ3を接着剤4の液面に対して垂直に(爪部32の起立方向に沿って)持ち上げるようにすると、被膜41の厚さを均一に形成することができる。
【0063】
また、粘度が調整された接着剤4をスポンジ体6に含浸させるので、接着剤4の蒸散が軽減され、粘度の変化が抑制されるので、複数のメタルプレートコネクタ3に対して接着剤4を安定して塗布することが可能となる。
【0064】
また、このような方法で製造されたメタルプレートコネクタ3によれば、板材2の接合部22に設置した際に、接着剤4(被膜41)による投錨効果(アンカー効果)によって、接着剤4(被膜41)を有していないメタルプレートコネクタ3を用いた場合よりも、板材2同士を強固に連結することができる。
【実施例】
【0065】
つぎに、接着剤4の粘度を変えて行ったメタルプレートコネクタ3の製造実験について説明する。
実施例1は、粘度が100mPa・s/20℃以上、250mPa・s/20℃以下(150±50mPa・s/20℃)となるように調整されたコニシ株式会社の接着剤「VR2」を用いて、図6(a)乃至図6(c)に示す手順で実験を行った。
【0066】
比較例1は、粘度が3000mPa・s/20℃以上、6000mPa・s/20℃以下(4500±1500mPa・s/20℃)となるように調整されたコニシ株式会社の接着剤「KHY25」を用いて、図6(a)乃至図6(c)に示す手順で実験を行った。
【0067】
比較例2は、粘度が20mPa・s/20℃以上、40mPa・s/20℃以下(30±10mPa・s/20℃)となるように調整されたコニシ株式会社の接着剤「KV610」を用いて、図6(a)乃至図6(c)に示す手順で実験を行った。
【0068】
実施例1によれば、図6(c)に示すように、複数の爪部32の表面に略均一な膜厚の被膜41が形成された。
【0069】
これに対して、本実施形態で用いた接着剤4よりも粘度の高い接着剤を用いた比較例1の場合は、図7(a)に示すように、スポンジ体6にメタルプレートコネクタ3の複数の爪部32を挿入して引き抜くと、爪部32に付着した接着剤400が糸状に伸びて、被膜401とスポンジ体6との間に糸状部402が形成されてしまった。また、被膜401の膜厚も不均一であった。
【0070】
このようなメタルプレートコネクタ3は、図7(b)に示すように、糸状部402が複数の爪部32に絡まってしまうため、安定的に製造することができない。また、仮に、糸状部402が固まってから切り取るようにする場合は、手間と時間が掛かるため、歩留まりが悪化し、コストが増大してしまう。
【0071】
一方、図示は省略するが、本実施形態で用いた接着剤4よりも粘度の低い接着剤を用いた比較例2の場合は、糸状部402(図7(a)参照)は形成されなかったが、爪部32の表面に形成された被膜41の膜厚が実施例1に比較して薄くなった。
【0072】
つぎに、実施例1の方法で製造したメタルプレートコネクタ3と、接着剤の被膜を形成していないメタルプレートコネクタとを用いて、図1に示すようなメタルプレートコネクタ接合構造1を作成した。
【0073】
そして、図示しない引張試験器を用いて、板材2の両端を互いに離間する方向に引っ張る引張型せん断試験を行った。負荷の方法は、単調加力荷重方式とし、荷重速度は2mm/minとして、2枚の板材2の相対変位が20〜25mmになるまで行った。
【0074】
ちなみに、メタルプレートコネクタ3の寸法は、長さ160mm×幅70mm×厚さ1mmの正方形であり、爪部32の本数は80本である。各板材2の寸法は、接合部より左右それぞれ長さ400mm×幅89mm×厚さ38mmである。板材2の材質は、杉板である。メタルプレートコネクタ3は、板材2の両面に取り付けられている。また、メタルプレートコネクタ3は、2枚の板材2に跨って均等に(1/2ずつ)取り付けられている。
【0075】
その結果、実施例1は、接着剤の被膜を形成していないメタルプレートコネクタを用いた場合を上回る引張耐力を得ることができた。これは、実施例1の投錨効果が原因であると考えられる。
【符号の説明】
【0076】
1 メタルプレートコネクタ接合構造
2 板材
22 接合部
3 メタルプレートコネクタ
31 プレート部
32 爪部
4 接着剤

【特許請求の範囲】
【請求項1】
金属板の所定の複数個所を切り起こして形成した複数の爪部を有するメタルプレートコネクタを、木質系材料同士の接合部に跨って設置することにより前記木質系材料同士を接合するメタルプレートコネクタ接合構造であって、
前記爪部が前記木質系材料の接合部近傍に圧入しているとともに、前記メタルプレートコネクタは接着剤によって前記木質系材料に接着していることを特徴とするメタルプレートコネクタ接合構造。
【請求項2】
請求項1に記載のメタルプレートコネクタ接合構造の施工方法であって、
前記金属板の前記木質系材料側の面及び前記爪部の少なくともいずれか一方に接着剤を塗布した前記メタルプレートコネクタを、前記木質系材料の接合部に跨って配置する工程と、
前記メタルプレートコネクタを押圧して、前記木質系材料の接合部近傍に前記爪部を圧入する工程と、を含むことを特徴とするメタルプレートコネクタ接合構造の施工方法。
【請求項3】
請求項1に記載のメタルプレートコネクタ接合構造の施工方法であって、
前記木質系材料の接合部近傍に接着剤を塗布又は設置する工程と、
前記メタルプレートコネクタを、前記木質系材料の接合部に跨った状態で、前記接着剤の上方に配置する工程と、
前記メタルプレートコネクタを押圧して、前記木質系材料の接合部近傍に前記爪部を圧入する工程と、を含むことを特徴とするメタルプレートコネクタ接合構造の施工方法。
【請求項4】
前記接着剤は、吸湿型接着剤であり、
前記木質系材料の接合部近傍に前記爪部を圧入した後に、前記接着剤が前記木質系材料中の水分を吸湿することで硬化することを特徴とする請求項2又は請求項3に記載のメタルプレートコネクタ接合構造の施工方法。
【請求項5】
前記接着剤は、熱硬化型接着剤であり、
前記木質系材料の接合部近傍に前記爪部を圧入した後に、前記メタルプレートコネクタを加熱して、前記接着剤を硬化させる工程をさらに含むことを特徴とする請求項2又は請求項3に記載のメタルプレートコネクタ接合構造の施工方法。
【請求項6】
請求項1に記載のメタルプレートコネクタ接合構造に用いるメタルプレートコネクタの製造方法であって、
粘度を100mPa・s/20℃以上、250mPa・s/20℃以下に調整した前記接着剤を容器に貯留する工程と、
前記容器に貯留した前記接着剤に前記メタルプレートコネクタの複数の爪部を浸して取り出すことにより、前記爪部の表面に前記接着剤の被膜を形成する工程と、を含むことを特徴とするメタルプレートコネクタの製造方法。
【請求項7】
前記接着剤は、前記容器内に設置されたスポンジ状の接着剤保持部材に含浸されており、前記メタルプレートコネクタの複数の爪部を前記接着剤保持部材に挿入して引き抜くことにより、前記爪部の表面に前記接着剤の被膜を形成することを特徴とする請求項6に記載のメタルプレートコネクタの製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2011−241975(P2011−241975A)
【公開日】平成23年12月1日(2011.12.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−248095(P2010−248095)
【出願日】平成22年11月5日(2010.11.5)
【出願人】(000174884)三井ホーム株式会社 (87)
【Fターム(参考)】