説明

メタロセン触媒の調製法

【課題】メタロセン触媒の調製法
【解決手段】シリカ担持触媒の調製法。アルモキサン共触媒を含浸させた、但し共触媒の少なくとも半分がシリカの内部細孔容量内に配置された、シリカ粒子を含んでなる担体物質を、メタロセン触媒の芳香族溶媒中分散液と接触させる。この分散液と担体を、メタロセンが反応性を有してアルモキサン含浸シリカ粒子の上に担持され且つ内に含浸されうる十分な期間、約10℃またはそれ以下の温度で混合する。この担持触媒を芳香族溶媒から回収し、そして芳香族炭化水素で、更に続いて連続的にパラフィン系炭化水素溶媒で約10℃またはそれ以下の温度下に洗浄する。この洗浄した触媒を粘稠な鉱油に分散させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エチレン性不飽和化合物の重合に有用な担持メタロセン触媒系、更に特に大きい細孔のシリカ担体を一体化した担持メタロセン触媒の製造法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
エチレン性不飽和モノマ−の重合に使用するための多くの触媒系はメタロセンに基づいている。メタロセンは一般にπ結合を通して遷移金属に配位する1つまたはそれ以上の(置換または未置換であってよい)シクロペンタジエニル(Cp)基を一体化した配位化合物として特徴付けることができる。あるメタロセン化合物を活性化剤または共触媒、例えばメチルアルミノキサン(MAO)及び随時アルキル化/捕捉剤、例えばトリアルキルアルミニウム化合物と組み合わせた時、非常に活性な重合触媒が生成する。この技術では種々のメタロセンが公知である。例えばウェルボ−ン(Welborn)の下記文献に記述されているように、それらは単環式(1つのシクロペンタジエニル基)、2環式(式1で示すような2つのシクロペンタジエニル基)、または3環式(3つのシクロペンタジエニル基)が中心遷移金属に配位したものを含む。
【特許文献1】米国特許第5324800号明細書
【0003】
特にオレフィンの重合における高触媒活性に対しては、均一または担持されてないメタロセン触媒が知られている。ポリマ−が固体粒子として生成する重合条件では、これらの均一(可溶性)触媒は反応器壁及び撹拌機上にポリマ−の沈着物を生成し、これが反応器内容物の冷却に必要な効率よい熱交換を妨害するのでしばしばこれを取り除かねばならず、またこれが装置の可動部分の過度な摩耗をもたらす。更に、そのような均一触媒で生成する固体粒子は、望ましくない低暈密度の粒子モルフォロジ−を示し、結果としてそれを反応器中で循環させるのが難しくなり、生産量が限定され、且つ反応器外部への取り出しが困難となる。
【0004】
これらの難点を解決するために、いくつかの担持メタロセン化合物が提案された。ウェルボ−ンらにおいて開示されるように、典型的な担体は無機酸化物、例えばシリカ、アルミナ、またはポリマ−物質、例えばポリエチレンを含む。
【0005】
担持されたまたはされてないいずれかのメタロセン化合物は、更に立体規則性触媒に関して特徴付けられ、アルファオレフィン、例えばプロピレンの重合において、最も普通にはアイソタクチックポリプロピレン及びシンジオタクチックポリプロピレンである結晶性の立体規則性ポリマ−を生成する。一般に立体特異性メタロセン触媒は少なくとも1つのキラル中心を持ち、配位子構造(普通シクロペンタジエニルに基づく)は立体配座的に制限されている。Cp型配位子は配座を変化させる性質を持つので、Cp配位子の少なくとも1つを適当に置換させて、立体剛直性(stereorigidity)の手段を付与することが普通である。そのような立体特異性メタロセンは、一般式の架橋されてない2環式化合物、下記するようにアイソ特異性メタロセンとして特徴付けられる一般式
(Cp)2 MeQn (1)
の2環式配位化合物、及び下記するようにシンジオ特異性メタロセンで特徴付けられる一般式
CpCp'MeQn (2)
のジシクロペンタジエニル化合物を含むことができる。上記の式において、Meは遷移金属元素を示し、Cp及びCp'はそれぞれ置換されていてもいなくてもよいシクロペンタジエニル基を示し、但しCp'はCpと異なり、Qはアルキルまたは他のヒドロカルビル或いはハロゲン基であり、そしてnは1−3の範囲の数である。このような場合、立体剛直性は、例えばラザビ(Razavi)の下記文献に記述されているように2つのシクロペンタジエニル残基間に立体障害をもたらす置換基を介して付与できる。
【特許文献2】米国特許第5243002号明細書
【0006】
別にシクロペンタジエニル基はメタロセン環間の架橋構造で与えられる立体配座的に制限された関係で存在する(上の式(1)及び(2)では示してない)。(同一のまたは異なる)2つのシクロペンタジエニル残基がジメチルシリレン基のようないわゆる架橋基で共有結合的に結合しているメタロセン化合物を用いることは時に有利である。この架橋基は、2つのシクロペンタジエニル残基の回転を制限し、多くの場合に触媒性能を改善する。そのような架橋基を含むメタロセンは、しばしば立体剛直として言及される。架橋メタロセンは通常2つのシクロペンタジエニル基(または置換されたシクロペンタジエニル基)を一体化するが、ヘテロ原子芳香族基に架橋された1つのシクロペンタジエニル基(両者が遷移金属に配位)を一体化した架橋メタロセンも技術的に公知である。例えばカニッヒ(Canich)の下記文献はジメチルシリル架橋シクロペンタジエニル−アニリノまたは他のヘテロ原子配位子構造を開示している。
【特許文献3】米国特許第5026798号明細書
【0007】
この場合、アニリノ基の窒素原子並びにシクロペンタジエニル基が遷移金属に配位する。他の一般的な架橋基は、CR12 、CR12 CR23 、SiR12 、SiR12 SiR12 を含む。但しRi 置換基はHまたはC1 −C20ヒドロカルビル基から独立に選択できる。別の架橋基は、窒素、燐、硼素またはアルミニウムも含むことができる。
【0008】
前述したように、アイソ特異性及びシンジオ特異性メタロセン触媒は、モノマ−の立体特異性伝播の重合に有用である。シンジオタクティシティー及びアイソタクティシティーの立体特異的構造の関係は、種々のモノマーからの立体規則性ポリマーの生成中に包含される。立体特異性の伝播は、エチレン性不飽和モノマー、例えば直鎖、分岐鎖、または環式鎖であってよいC3 −C20アルファオレフィン、例えば1−ジエン例えば1、3−ブタジエン、置換ビニル化合物例えばビニル芳香族例えばスチレン、または塩化ビニル、ビニルエーテル例えばアルキルビニルエーテル例えばイソブチルビニルエーテル、または更にアリールビニルエーテルの重合においても当てはまる。立体特異性ポリマーの伝播は、多分アイソタクティックまたはシンジオタクティック構造のポリプロピレンの製造において最も重要である。
【0009】
アイソタクティックポリプロピレンの構造は、連続するモノマー単位の第3級炭素原子に結合するメチル基がポリマーの主鎖を通る仮定的(hypothetical)面の同一側にある、例えばメチル基がすべてその面の上または下にあるものとして記述することができる。フィッシャ−の投影式を用いれば、アイソタクティックポリプロピレンの立体化学的連鎖は次のように記述できる。
【0010】
【化1】

【0011】
式3において、各垂直なセグメントは、ポリマー主鎖の同一側のメチル基を示す。アイソタクティックポリプロピレンの場合、挿入されるポリプロピレン単位の多くは、隣のプロピレン単位に関して同一の相対的立体配座を有する。この構造を記述する他の方法はNMRを使用するものである。上述したようなアイソタクティック連鎖のボベイ(Bovey)のNMR命名法は、・・・mmmm・・・である。ここに各「m」は、2つの隣のモノマー単位間に対称鏡面が存在する「メソ」ダイアッド、或いはポリマ−鎖面の同一側の連続的なメチル基対を表す。技術的に公知のように、鎖構造のいずれかの変位または反転はアイソタクティシティーの程度及び結果としてポリマ−の結晶性を低下させる。
【0012】
アイソタクティック構造と反対に、シンジオタクティックポリプロピレンポリマーは、主鎖中の連続するモノマー単位の第3級炭素原子に結合するメチル基がポリマーの面に対して交互の側にあるものである。シンジオタクティックポリプロピレンの場合、挿入されるポリプロピレン単位の多くは、隣のプロピレン単位に関して反対の相対的立体配座を有する。フィッシャーの投影式を用いれば、シンジオタクティックポリプロピレンは、ラセミのダイアッドで示すことができる。即ちシンジオタクティック連鎖rrrは次のように記述できる。
【0013】
【化2】

【0014】
上述したようなシンジオタクティック連鎖のボベイのNMR命名法は、・・・rrrr・・・である。ここに各「r」は、連続するメチル基対がポリマー鎖面の反対側にある「ラセミ」ダイアッドを表す。同様に、鎖構造のいずれかの変位または反転はシンジオタクティシティ−の程度及び結果としてポリマーの結晶性を低下させる。上述の例における垂直なセグメントは、シンジオタクティックまたはアイソタクティックポリプロピレンの場合のメチル基を示す。他の末端基、例えばポリ1−ブテンの場合のエチル基、ポリ塩化ビニルの場合の塩素、ポリスチレンの場合のフェニル基なども、同様にアイソタクティックまたはシンジオタクティックのいずれかとして記述できる。
【0015】
プロピレン単位が多かれ少なかれランダムな立体配座で挿入されるポリプロピレン樹脂も得られる。そのような物質はアタックティックとして言及され、これらのポリマーは通常のX線回折(XRD)で決定されるような結晶性、示差走査型熱量計による溶融熱、または密度に欠陥を持つ。そのようなアタクティックポリマーは、ある結晶性を有するポリマ−よりも炭化水素溶媒に可溶性の傾向がある。十分に高い程度のシンジオタクティシティーを持つシンジオタクティックポリマー及び十分に高い程度のアイソタクティシティーを持つアイソタクティックポリマーは準結晶性である。同様にこれは同業者には公知のいずれかの技術、例えばXRD、DSC、または密度の測定によって知ることができる。
【0016】
ポリマーが高立体規則性ポリマーとアタクティックポリマーの混合物として得られるのが普通である。このような場合には、可溶性試験、例えばアタクティックポリマーの存在量を示すキシレンまたは沸騰ヘプタンに可溶な重量画分を知る試験を行うことがしばしば有用である。多くの場合、アタクティックポリマーはその立体規則性ポリマーよりも可溶性であり、従って炭化水素に可溶な重量画分は存在するアタクティックポリマー量の間接的な指標となる。種々の他の立体規則性または偽立体規則性ポリマー構造、例えばヘミアイソタクティックまたはステレオアイソブロック構造が知られているけれど、興味のある基本的な立体規則性ポリマーの立体配置は、主にアタクティック及び主にシンジオタクティックのポリマーである。
【0017】
アイソタクティックポリオレフィンを生成する触媒は下記文献に開示されている。
【特許文献4】米国特許第4794096号明細書
【特許文献5】米国特許第4975403号明細書
【0018】
これらの特許は、オレフィンを重合させてアイソタクティックポリマーを生成し、特に高度にアイソタクティックなポリプロピレンの製造に有用であるキラルで立体剛直なメタロセン触媒を開示する。例えば上述の特許文献4(米国特許第4794096号明細書)に開示されるように、メタロセン配位子における立体剛直性はシクロペンタジエニル基間に延びる構造的架橋によって付与される。特にこの特許には、式
R''(C5 (R')42 HfQp (5)
で特徴付けられる立体規則性ハフニウムメタロセンが開示されている。式(5)において、(C5 (R')4 )はシクロペンタジエニルまたは置換シクロペンタジエニル基であり、R'は独立に水素または炭素数1−20のヒドロカルビル基であり、そしてR''はシクロペンタジエニル環間に延びる構造的架橋である。Qはハロゲンまたは炭素数1−20の炭化水素基、例えばアルキル、アリール、アルケニル、アルキルアリール、またはアリールアルキルであり、そしてpは2である。
【0019】
シンジオタクティックポリプロピレンまたは他のシンジオタクティックポリオレフィンを生成する触媒及びそのような触媒の製造法は下記のエウェン(Ewen)らの特許文献6及びシャムショウム(Shamshoum)らの特許文献7に開示されている。
【特許文献6】米国特許第4892851号明細書
【特許文献7】米国特許第5807800号明細書
【0020】
これらの触媒も架橋された立体剛直なメタロセン触媒であるが、この場合触媒は化学的に異なったシクロペンタジエニル基間に延びる構造的架橋を有し、式
R''(CpRn )(CpR'm )MeQk (6)
で特徴付けられる。式(6)において、Cpはシクロペンタジエニルまたは置換シクロペンタジエニル環であり、R及びR'は炭素数1−20のヒドロカルビル基を表す。R''は触媒に立体剛直性を与える環間の構造的架橋である。Meは遷移金属であり、そしてQはヒドロカルビル基またはハロゲンである。R'm は(CpR'm )が(CpRn )と立体的に異なる置換シクロペンタジエニル環であるように選択される。式(6)においてnは0−4で変化する(0はヒドロカルビル基のないこと、即ちシクロペンタジエニル環には架橋置換基以外更なる置換基のないことを示す)。mは1−4で変化し、kは0−3である。立体的に異なるシクロペンタジエニル環はアイソタクティックポリマーよりもむしろ主にシンジオタクティックポリマーを生成する。
【0021】
シンジオ特異性メタロセンは、そのアイソ特異性メタロセンと同じように、共触媒と組合わせて使用される。1つの特に有用な種類の共触媒は、アルモキサン、例えばメチルアルモキサンまたは変性アルキルアルミノキサン化合物の形を取り得る有機アルミニウム化合物に基づく。アルモキサン(アルミノキサンとも言及される)は、交互のアルミニウム及び酸素原子からなる鎖を含むオリゴマーまたはポリマー状アルミニウムオキシ化合物である。但しこの場合アルミニウムは置換基、好ましくはアルキル基を有する。アルミノキサンの正確な構造は知られていないが、一般に環式アルモキサンは一般式−(Al(R)−O−)m で表され、また直鎖化合物はR2 Al−O−(Al(R)−O)m −AlR2 で表わされると考えられている。但し式中、Rはそれぞれ独立にC1 −C10ヒドロカルビル、好ましくはアルキル、またはハライドであり、mは1−約50、好ましくは少なくとも4の整数である。アルモキサンは典型的にはアルキル基の他にハライドまたはアルコキシド基を含んでいてもよいアルミニウムアルキルと水との反応生成物である。いくつかの異なるアルミニウムアルキル化合物、例えばトリメチルアルミニウム及びトリイソブチルアルミニウムを水と反応させると、いわゆる変性されたまたは混合のアルモキサンが生成する。好適なアルモキサンはメチルアルモキサン及び少量の他の高級アルキル基、例えばイソブチルで変性されたメチルアルモキサンである。アルモキサンは一般に出発のアルミニウムアルキル化合物(単数または複数)を実質的な量より少量で含む。他の共触媒は、トリアルキルアルミニウム、例えばトリエチルアルミニウム(TEAL)またはトリイソブチルアルミニウム(TIBAL)或いはこれらの混合物である。上記特許文献6(第'851号特許)にはメチルアルモキサン及びトリエチルアルミニウム(TEAL)が特に開示されている。
【0022】
異なったシクロペンタジエニル基を有する架橋メタロセン配位子は、6、6−ジメチルフルベンと置換シクロペンタジエン例えばフルオレンまたは置換フルオレン誘導体との反応によるイソプロピリデン架橋構造で特徴付けられる配位子を得ることに由来し得る。好ましくはこの配位子構造は上記特許文献7(米国特許第5807800号明細書)の式9で示されるように、イソプロピリデン(シクロペンタジエニルフルオレニル)構造で示されるような左右対称性(bilateral symmmetry)を有するものとして特徴付けられる。シャムショウムらの上記特許文献7(第'800号特許)に記述されるように、配位子構造の左右対称性は一般に架橋構造及び遷移金属原子を通って延びる対称面を表す破線に関するバランスのとれた配向によって示される。
【0023】
ウェルボーンの上述の特許文献1(米国特許第5324800号明細書)に開示されるように、担持触媒はメタロセンを適当な触媒担体上に沈着させることにより、可溶性メタロセンを不均一の触媒に転化することで調製できる。他の担持触媒は、両方ともウェルボーンの下記特許文献8及び特許文献9、スガ(Suga)らの特許文献10、マツモト(matsumoto)の特許文献11、ラザビの特許文献11及びシャムショウムらの上記特許文献7(米国特許第5807800号明細書)に開示されている。
【特許文献8】米国特許第4701432号明細書
【特許文献9】米国特許第4808561号明細書
【特許文献10】米国特許第5308811号明細書
【特許文献11】米国特許第5444134号明細書
【特許文献12】米国特許第5719241号明細書
【0024】
ウェルボ−ンの特許文献8(第'432号特許)に開示されているように、担体はいかなる担体、例えばタルク、無機酸化物、または樹脂担体物質、例えばポリオレフィンであってもよい。特定の無機酸化物は、シリカ及びアルミナを含み、これらは単独でまたは他の無機酸化物、例えばマグネシア、チタニア、ジルコニアなどと組合わせて使用される。非メタロセン遷移金属化合物、例えば四塩化チタンも、担持触媒成分に導入できる。担体として使用される無機酸化物は、30−600ミクロン、好ましくは30−100ミクロンの範囲の平均粒子寸法(size)、50−1000平方メートル/グラム、好ましくは100−400平方メートル/グラムの表面積、0.5−3.5cc/g、好ましくは約0.5−2cc/gの細孔容積を有するものとして特徴付けられる。一般に、粒子の寸法、表面積、細孔容積、及び表面水酸基数は、ウェルボーンの方法に対し臨界的でないといわれる。シリカはしばしば選択できる担体物質である。特にウェルボーンには、ビス(シクロペンタジエニル)ジルコニウムジクロリド(架橋されてないメタロセン)が乾燥窒素下、600℃で脱水された且つダビソン(Davison)952として示される高表面積シリカに担持された触媒が開示されている。ウェルボーンの特許文献9(特許第'561号)は、メタロセン及びアルモキサンを担体物質と組み合わせて反応させることにより生成させた不均一触媒を開示している。ウェルボーンの特許文献9(特許第'561号)の担体は、ウェルボーンの特許文献8(特許第'432号)の担体として同様に記述されている。担持メタロセン触媒を含む種々の他の触媒系は、スガらの特許文献10及びマツモトの特許文献11に開示されている。両特許において、担体は種々の高表面積の無機酸化物または粘土様物質として特徴付けられる。スガらの特許では、担体物質は粘土鉱物、イオン交換した層状化合物、珪藻土、ケイ酸塩、またはゼオライトとして示されている。スガが説明するように、高表面積の担体物質は少なくとも20オングストロームの半径を有する細孔容積を有すべきである。特に粘土及び粘土鉱物、例えばモンモリロナイトは、スガに開示され、好適である。スガの触媒成分は、担体物質、メタロセン、及び有機アルミニウム化合物、例えばトリエチルアルミニウム、トリメチルアルミニウム、種々のアルキルアルミニウムクロリド、アルコキシド、もしくはハイドライド、またはアルモキサン、例えばメチルアルモキサン、エチルアルモキサンなどを混合することによって調製される。これらの3つの成分はいずれの順序で混合してもよく、または同時に接触させてもよい。同様にマツモトの特許は、担体が無機酸化物担体、例えばSiO2 、Al23 、MgO、ZrO2 、TiO2 、Fe23 、B22 、CaO、ZnO、BaO、ThO2 及びこれらの混合物、例えばシリカアルミナ、ゼオライト、フェライト、及びガラス繊維であってよい担持触媒を開示している。他の担体は、MgCl2 、Mg(OEt)2 、及びポリマー、例えばポリスチレン、ポリエチレン、ポリプロピレン、置換ポリスチレン、及びポリアリーレート、澱粉、及びカーボンを含む。この担体は、1−1000m2 /g、好ましくは50−500m2 /gの表面積、0.1−5cm3 /g、好ましくは0.3−3cm3 /gの細孔容積、及び20−100ミクロンの粒子寸法を有する。
【0025】
担体として使用される種々の無機酸化物のうちシリカは、いろいろな形でメタロセン触媒に対する担体物質として広く開示されている。上述のラザビの特許文献12(米国特許第5719241号明細書)は、広範な無機酸化物及び樹脂担体物質を開示しているけれども、好適な担体を、表面積約200−600m2 /g及び細孔容積0.5−3ml /gを持つシリカとして述べている。特に表面積322m2 /gを有するグレ−ス(Grace)'952として示される担体が開示されている。ラザビに開示されるように担持メタロセンを製造する場合には、シリカを真空下に3時間乾燥して水を除去し、次いでこれをトルエンに懸濁させ、そこでメチルアルモキサンと還流温度で3時間反応させる。そしてシリカをトルエンで3回洗浄して未反応のアルモキサンを除去し、その後2つのメタロセンの溶液を添加し、混合物を1時間撹拌する。次いで上澄液を取り、メタロセンを含む固体担体をトルエンで洗浄し、次いで真空下に乾燥する。ダビソンD−948またはダビソンD−952として示されるシリカも通常のメタロセン担体として使用できる。例えばジェジェロヲ(Jejelowo)の下記文献は、担持共触媒と組み合わせて使用される種々の架橋されてないメタロセンに対する担体として、脱水したダビソンD−948の使用を開示している。
【特許文献13】米国特許第5466649号明細書
【0026】
ウェルヒ(Welch)らの下記文献は、架橋されたまたはされてないメタロセンに対する担体として使用するための、一酸化炭素、水、及び水酸基で処理したシリカを開示している。
【特許文献14】米国特許第5498581号明細書
【0027】
特に平均粒子寸法50ミクロンのシリカであるダビソンD−948が開示されている。他のシリカに基づく担体は、ジェジェロヲの下記特許文献14、チャン(Chang)の下記特許文献15、及びアルト(Alt)の下記特許文献16に開示されている。
【特許文献14】米国特許第5281679号明細書
【特許文献15】米国特許第5238892号明細書
【特許文献16】米国特許第5399636号明細書
【0028】
このチャン及びジェジェロヲの特許は、水約9.7重量%を含む非晶性シリカゲルとして特徴付けられるダビソンD−948として示されるシリカ担体の使用を開示している。チャン及びジェジェロヲの特許に記述されているように、アルモキサンはアルキルアルミニウム量を、高程度のオリゴマー化でアルモキサンに転化させるのを保証するために脱水してないシリカゲルとアルキルアルミニウムを直接反応させることにより、シリカゲルの表面上で直接生成せしめられる。水を含浸させたゲルは、ジェジェロヲの特許の場合表面積10−700m2 /g、細孔容積約0.5−3cm3 /g、及び吸収された含水量約10−50重量%及びチャンの特許の場合含水量約6−20重量%を持つものとして特徴付けられる。シリカに対する平均粒子寸法は、チェンで0.3−100ミクロン及びジェジェロヲで約10−100ミクロンである。アルモキサンシリカゲル成分を生成させた後、この湿ったスラリ−にメタロセンを添加することができる。
【0029】
他の担持触媒系は、シャムショウムらの下記文献に開示されている。
【特許文献17】欧州特許第EPO819706A1号公報
【0030】
ここでは、上述したようなシリカ担体をアルモキサン例えばメチルアルモキサンで予備処理し、次いでシンジオ特異性メタロセンをMAO処理したシリカ上に付加する。この担持されたメタロセンは有機アルミニウム共触媒、例えば前述したようなモノアルキルまたはジアルキルアルミニウムハライド、又はトリアルキルアルミニウム例えばトリメチルアルミニウム、トリエチルアルミニウム、またはトリイソブチルアルミニウム(TIBAL)を含む有機アルミニウム共触媒と組み合わせて使用される。特許文献17(EPO819706A1号公報)に開示される担持触媒において、シリカ担体は、最初に乾燥させ、非極性溶媒中にスラリーとし、次いでメチルアルモキサンと溶媒中で接触させた高表面積で小細孔寸法のシリカである。次いでメタロセンを非極性溶媒、特にアルモキサンに対する溶媒として使用したものと同じものに溶解させる。続いてこのアルモキサンで処理したシリカに担持された固体メタロセンを溶媒から回収し、乾燥し、そして鉱油のような担体液体に導入する。シャムショウムのEPA特許出願は、トリアルキルアルミニウムまたは他のアルミニウム共触媒中の触媒の熟成時間を減じるために使用できる予備重合工程も開示している。
【0031】
更に架橋されたメタロセン触媒を一体化した他の担持触媒系は、シャムショウムらの下記文献に開示されている。
【特許文献18】米国特許第5968864号明細書
【0032】
ここでは、触媒効率は、シリカのような担体を無極性溶媒例えばトルエン中においてアルモキサンで処理し、そして低温、好ましくは0〜−20℃下にメタロセンの溶液と接触させる調製法によって改良される。次いで得られた固体をヘキサンで洗浄し、夜通し室温で乾燥している。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0033】
本発明によれば、メタロセン及び共触媒成分を粒状シリカ担体に関して適応させ、鉱油スラリ−として単離し且つ長期間貯蔵でき、次いで反応器の汚染や望ましくないポリマーの微細化と関連する問題を軽減しまたは排除しつつ、立体規則性ポリマーの製造に使用しうる担持触媒系を与える、シリカ担持メタロセン触媒の調製法が提供される。得られる担持触媒は良好な活性を与え、この活性は本方法を用いてアイソ特異性またはシンジオ特異性担持触媒を製造する時に維持できる。
【課題を解決するための手段】
【0034】
本発明を行う場合、共触媒の少なくとも半分をシリカの内部細孔容積内に配置して有するアルモキサン共触媒を含浸させたシリカ粒子を含んでなる粒状触媒担体物質が提供される。この担体物質をメタロセンの芳香族炭化水素溶媒中分散液と接触させる。メタロセン溶媒分散液とアルモキサン含有担体を、約10℃またはそれ以下の温度で、メタロセンをアルモキサン含浸シリカ粒子上に反応性を持って担持させ且つ該粒子内に含浸せしめるのに十分な期間混合する。典型的には数分ないし数時間で変化しうるこの混合期間の後、担持触媒を芳香族溶媒から回収し、次いで随時芳香族炭化水素で、続いて連続してパラフィン系炭化水素溶媒で洗浄して、実質的な量の芳香族溶媒を担持触媒から除去する。これらの洗浄工程は約10℃またはそれ以下の低温で行われる。更に洗浄した触媒を、パラフィン系炭化水素溶媒の粘度より実質的に大きい粘度の粘稠な鉱油に分散させる。典型的には、鉱油はASTM D445で測定して、40℃で少なくとも65センチストークスの粘度を有する。これは低温条件において普通高々1センチポイズであるパラフィン系炭化水素溶媒の粘度と対比できる。洗浄した触媒を乾燥する工程は必要なく、従って典型的には洗浄した触媒は分散の時点で実質的な残存量のパラフィン系炭化水素溶媒を含んでいるであろう。好ましくは担持触媒を芳香族溶媒から回収した後及びパラフィン系炭化水素溶媒で洗浄する前に、更なる洗浄工程を芳香族溶媒で行い、担持されてないメタロセンを担持触媒から除去する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0035】
本発明の更なる観点においては、10〜100ミクロンの範囲内の粒子寸法及び200〜400オングストロ−ムの範囲内の平均有効細孔直径を有する球形のシリカ粒子を含んでなる、粒状触媒担体が提供される。典型的にはシリカは、適度に脱水する期間、上昇した温度で乾燥されるであろう。しばしば穏やかな加熱処理、例えば100〜160℃で十分であるが、それより高温も使用できる。次いでシリカ担体を芳香族担体液体中でアルモキサン共触媒と接触させる。即ち担体、担体液体、及びアルモキサン共触媒の混合物を、アルモキサンの少なくとも半分をシリカ担体内の内部に配置して有するべくアルモキサンをシリカ担体上に固定するための期間、上昇した温度に加熱する。例えば混合物を1時間ないし数時間の範囲の期間、約100℃またはそれ以上の還流条件下に加熱することができる。次いで混合物を冷却し、アルモキサン含有担体を担体液体から分離する。次いでアルモキサン含有担体物質を芳香族炭化水素溶媒で洗浄して、アルモキサンの実質的にすべてが担体に固定されるように、過剰の担持されてないまたは遊離のアルモキサン(またはアルミニウムアルキル残部)を除去する。次いでアルモキサン含有担体物質を約10℃またはそれ以下の低温まで冷却し、そして約10℃またはそれ以下の温度でメタロセンの芳香族溶媒中分散液を上述したように混合しながら添加して、メタロセンを反応性を有して担体上に担持せしめ且つアルモキサン含浸シリカ粒子内に含浸せしめる。続いて担持触媒を回収し、上述したように約10℃またはそれ以下の低温で、低粘度のパラフィン系炭化水素溶媒で洗浄し、そして粘稠な鉱油に分散させる。別法では触媒を鉱油で洗浄し、パラフィン系炭化水素溶媒を使用しない。このように調製したポリオレフィン触媒は、優れた性能、例えば高活性を有する。
【0036】
本発明は、担持メタロセンの製造法を含む。これは一般に低温下に行われ、メタロセン触媒をアルモキサン含有担体上に沈着させ、得られた担持メタロセンを直接鉱油担体中に分散させる。そのような担持触媒はエチレン、プロピレン、及びそれより高級のオレフィンの単独重合、またはエチレン/プロピレンコポリマ−の製造のような共重合に使用するのが適当である。本方法は、メタロセンとアルモキサンを一般に室温条件で添加し、そして用いる添加順序とは無関係に最終触媒粒子を長期間乾燥して揮発性物質を除去するという上述のウェルボ−ンの特許に開示されているような従来法と対比できる。同様にアルモキサンを最初に添加し、担体と還流温度で混合する、上述のラザビの特許第'241号に開示されているような方法でも、最終担持触媒を真空下に乾燥する。これらの従来法と対比して、本発明はアルモキサンがシリカ担体に固定されるが、典型的には約−20−10℃の範囲内の低温条件下にメタロセン担持反応を行い、次いで触媒を炭化水素で洗浄し、この洗浄した触媒を中間の乾燥工程なしに粘稠な鉱油に直接分散せしめる。触媒の洗浄と鉱油への分散は、大気温度以下の条件で行われる。
【0037】
本発明に従って製造される担持触媒は、いくつかの重要な特徴を提供する。担体物質へのメタロセンの負荷及びアルモキサンの負荷は、所望の程度に制御できる。このことは、アルモキサン/シリカ比をメタロセン成分の性質に依存して変化し得る値に制御することが望ましい本発明に使用するのに好適なシリカ担体の場合に特に重要である。特に立体特異性メタロセンの場合、アルモキサン/シリカ比は、メタロセンの活性化、ポリマー微細物、重合工程中の汚染、及びオレフィンポリマーから製造される最終生成物において時に「フィッシュ・アイ」として言及される不完全さに関して、最終触媒の有効な特性に対して所望の比になるように調節される。更に好適な立体特異性メタロセン及びシリカ担体以外のメタロセン及び担体物質に対して、本発明は、比較的低温で且つ従来法において通常実施されるような中間的乾燥工程なしに担持触媒を粘稠な鉱油分散液中に直接分散させることで、メタロセンのアルモキサン含有担体への負荷が達成できる方法を提供する。得られる触媒系は一般に高活性で、使用前の貯蔵中、触媒を特に冷貯蔵している時、活性の低下は極めて僅かであり、即ち長「貯蔵安定性」を有する。
【0038】
更に本触媒は、エドワー(Edwar)・シャムショウムらの下記文献の出願「オレフィンのシンジオタクティック伝播法」に開示されているような熟成法に従って、アルキルアルミニウム化合物、例えばトリイソブチルアルミニウム(TIBAL)を用いて熟成することにより活性が高められる。
概述すると、触媒の活性は、鉱油中において有機アルミニウム化合物、特にTIBAL中の担持メタロセンを夜通し(約12時間)またはそれ以上の期間、例えば1または2日、次の方法で熟成することによって高められる。特別な熟成法は、等部の担持メタロセン及び等部のTIBALを鉱油スラリー中で接触させ、次いで重合前に室温25℃で夜通し(約12時間)放置することを含む。シンジオ特異性触媒またはアイソ特異性触媒の典型的なマスターバッチは、担持メタロセン(メタロセンと担体)180mg、鉱油8.3ml、及びTIBAL180mgの、ヘキサン中25重量%の濃度のスラリーから製造できる。夜通しの熟成工程後各プロピレン重合に対しては、マスタースラリーの1.0ml部分を使用する。熟成法の更なる記述に関しては、全体が参考文献として本明細書に引用される特許文献19(米国特許願第09/086080号)を参照されたい。
【特許文献19】米国特許願第09/086080号(1998年5月28日付)
【0039】
本発明で用いる粒状シリカ担体は、一般に20下記文献60ミクロン、好ましくは20〜30ミクロンの範囲内の平均直径とアルモキサン及びメタロセンの両方に内部担体を提供する細孔容量を有する球状のシリカ粒子を含んでなる。シリカ担体の好適な形は、一般に時に粒子を通って完全に延びる軸くぼみ(depression)を有して、粒子に「環状(toroidal)」形を提供する球状のシリカ粒子が特徴である。この性質のシリカ担体は、フジ・シリシア(Fuji Sylisia)社からP−10の名で入手できる。このシリカ担体P−10は、約22〜25ミクロンの平均直径と1.4ミリメートル/gの細孔容積を有する。メタロセン触媒とアルモキサン共触媒は、外側の表面に対比されるシリカの細孔表面内に主に担持される。即ちシリカ粒子の外側に担持されるメタロセンの量は、少量の画分で、普通シリカ担体上に見出だされる全メタロセンの高々10重量%に満たない。言い換えれば、メタロセンの50%以上の画分及び好ましくは少なくとも90重量%は、シリカ担体の内部細孔容積内に含まれる。ゲルの欠点の減少に関して特徴付けられる改良されたポリマーは、比較的高表面積で、小さい粒子寸法の球形シリカ粒子に担持された触媒に対して観察される。本出願人の発明は理論によって制限されないが、本発明で使用される球形のシリカ粒子は、重合工程中に非常に破砕されると推定される。球形シリカ粒子の破砕は、重合工程中、モノマー挿入機構に対するより多くの遷移金属点を露呈するばかりでなく、究極的にはかなりの数のゲルの欠点(defect)に帰結しないような寸法までシリカ粒子を減じる。即ち環状シリカ粒子は、最初約20〜21ミクロンの平均粒子寸法を有し、アルモキサン負荷反応後に多分24ミクロンまで増大するが、究極的には重合工程中に約5ミクロンまたはそれ以下、普通約3ミクロンまたはそれ以下の寸法まで破砕されると思われる。付随してゲルの欠点がかなり減ぜられる。本発明を行うのに使用できる球形のシリカ粒子は図1、2、及び3で概略的に且つ非常に理想化された形で示される。
【0040】
図1に示すように、一般的に球形のシリカ粒子12は、シリカ粒子が球形の環状の形であるように中心の内腔が特徴である。図1の前立面から見た時、シリカ粒子は一般にドーナツに似ており、従って「環状型」形を持つとして言及される。図2に示すように、側立面から見た時には、中心の内腔は見えず、シリカ粒子12は一般に固体の球形に一致するように見える。図3は図1に対応する図であり、中心の内腔が触媒粒子16を完全に通って延びておらず、その代わりにくぼみ側から見た時シリカ粒子が依然「環状」形を連想させるような深いくぼみ17を形成する「環状」形を示す。他の適当なシリカ担体も、本発明を行う場合に使用できる。それらは、担体の細孔容積内に内部付着物を与えるために1ミリメートル/g以上の細孔容積を有することで特徴付けられねばならない。
【0041】
前述したように、本発明は、メタロセン触媒前駆体をアルモキサン含有担体物質上へ負荷し、次いで鉱油担体液体に分散させる方法、並びに特にある種のシリカ担体に当てはまるアルモキサンを担体物質へ負荷する好適な方法を提供する。しかしながら、本発明は、特にシリカ担体を用いる用途に好適ではあるけれども、例えば上述したラザビの特許文献12(米国特許第5719241号明細書)に開示されているような他の担体物質、即ちポリオレフィン、例えばポエチレンまたはポリプロピレン、ポリスチレン、及びシリカ以外の無機酸化物、例えばアルミナ、マグネシア、チタニア、及び他の無機酸化物を含む担体物質に対しても行うことができる。ラザビに開示されているようなタルク、及び上述のスガらの特許に開示されているような粘土及び粘土鉱物も担体物質として使用できる。ゼオライト及びガラス繊維、更には上述したマツモトの特許に開示されている他の無機酸化物、例えばFe23 、B22 、CaO、ZnO、BaO、ThO2 、MgCO3 、及びMg(OEt)2 も本発明において使用できるが、それらは普通、好適なシリカ担体よりも望ましくないであろう。本発明を行う場合に使用できる担体物質は、全体が参考文献として本明細書に引用されるラザビの特許文献12(米国特許第5719241号明細書)、スガらの特許文献10(米国特許第5308811号明細書)及びマツモトの特許文献11(米国特許第5444134号明細書)に開示されている。
本発明で使用されるメタロセンは、オレフィン重合法において有用と知られているメタロセン化合物を含み、且つ上述したウェルボーンの特許文献1(米国特許第5324800号明細書)及びラザビらの特許文献12(米国特許第5719241号明細書)に開示されるような単環式、2環式、または3環式部分を含む。本発明で使用されるメタロセンは、立体特異性メタロセン化合物、特にアイソ特異性及びシンジオ特異性メタロセンを含む。下に議論するように、アルモキサンの負荷及びメタロセンの含量に関して異なる因子がアイソ特異性及びシンジオ特異性担持メタロセンの生成に適用でき、本発明はアルモキサン及びメタロセン負荷の比較的狭い範囲内における厳密な制御を容易に提供する。
【0042】
本発明で使用するのに好適な立体剛直性メタロセンは、中心遷移金属に配位した少なくとも1つのシクロペンタジエニル環に少なくとも1つの適当な置換基を有する配位子構造を組み入れたメタロセンとして特徴付けられる。シクロペンタジエニル環の少なくとも1つは、置換され、そして遷移金属に関して、他のシクロペンタジエニル基の配向と立体的に異なる配向を提供する。即ち、これらのシクロペンタジエニル基の両方は、配位する遷移金属原子に対して立体剛直的関係を与えて実質的に環構造の回転を妨害する互いの関係にある。立体的に異なる環構造はあるアイソ特異性メタロセンの場合におけるように化学的に同一でも或いはシンジオ特異性メタロセンの場合におけるように化学的に異なっていてもよい。しかしながら、2つの化学的に同一のシクロペンタジエニル基が配位子構造に含まれる時、それらはラセミビス(インデニル)構造の場合のように立体的に異なっていなければならず、むしろメソビス(インデニル)配位子構造の場合のように遷移金属に対して立体的に同じでなければならない。
【0043】
架橋されたアイソ特異性メタロセンは、次の式
R''(C5 (R')4 )MeQp (7)
[式中、各(C5 (R')4 )は置換シクロペンタジエニル環であり、各R'は同一でも異なってもよく且つ水素または炭素数1−20のヒドロカルビル基であり、R''は該触媒に立体剛直性を与える2つの(C5 (R')4 )環間の構造的架橋であり、但し2つの(C5 (R')4 )環はMeに対してラセミ配置であり、そしてR″は炭素数1−4の置換または未置換アルキレン基、ケイ素ヒドロカルビル基、ゲルマニウムヒドロカルビル基、燐ヒドロカルビル基、窒素ヒドロカルビル基、硼素ヒドロカルビル基、及びアルミニウムヒドロカルビル基からなる群から選択され、Meは元素周期律表第4b、5b、または6b族の金属であり、各Qは炭素数1−20のヒドロカルビル基またはハロゲンであり、各Qは炭素数1−20のヒドロカルビル基またはハロゲンであり、そして0≦p≦3である]で定義されるキラルで立体剛直性のメタロセンとして特徴付けられる。
【0044】
特に好適な種類のアイソ特異性メタロセンは、ラセミビス(インデニル)配位子構造に基づく。このインデニル基は置換されていても、いなくてもよく、芳香族インデニル基並びに飽和インデニル基、例えば置換または未置換のテトラヒドロインデニル基を含む。本発明で使用するのに適当なアイソ特異性メタロセンの特別な例は、イソプロピリデンビス−(2、3−ジメチルシクロペンタジエニル)ジルコニウムジメチル、イソプロピリデンビス(テトラメチルシクロペンタジエニル)ジルコニウムジメチル、及びラセミ−イソプロピリデンビス(2、4−ジメチルシクロペンタジエニル)ジルコニウムジメチル、エチレンビス(インデニル)ジルコニウムジメチル、及びその対応するジクロリドを含む。他のメタロセンはエチレンビス(2−メチルインデニル)ジルコニウムジクロリド、ジメチルシリル(2−メチルインデニル)ジルコニウムジクロリド、ジフェニルシリルビス(2−メチルインデニル)ジルコニウムジクロリド、ジメチルシリルビス(2−メチル−4、5−ベンゾインデニル)ジルコニウムジクロリド、ジフェニルシリルビス(2−メチル−4−フェニル−インデニル)ジルコニウムジクロリド、及びジエチルシリルビス(2−メチル−4−フェニル−インデニル)ジルコニウムジクロリド、ベンゾインデニルメタロセンを含む。
【0045】
架橋されたシンジオ特異性メタロセンは、左右対称性を示し且つ式
R''(Cpan )(Cpb R'm )MeQp (8)
[式中、Cpa は置換シクロペンタジエニル環であり、Cpb は未置換または置換シクロペンタジエニル環であり、各Rは同一でも異なってもよく且つ炭素数1−20のヒドロカルビル基であり、各R'mは同一でも異なってもよく且つ炭素数1−20のヒドロカルビル基であり、R''は触媒に立体剛直性を与えるシクロペンタジエニル環間の構造的架橋であり且つ炭素数1−4の置換または未置換アルキレン基、ケイ素ヒドロカルビル基、ゲルマニウムヒドロカルビル基、燐ヒドロカルビル基、窒素ヒドロカルビル基、硼素ヒドロカルビル基、及びアルミニウムヒドロカルビル基からなる群から選択され、Meは元素周期律表第4b、5b、または6b族の金属であり、各Qは炭素数1−20のヒドロカルビル基またはハロゲンであり、0≦p≦3、0≦m≦4、1≦n≦4である。なおR'm は(Cpb R'm )が(Cpan )と異なる環であるように選択される]
で定義されるメタロセンにより特徴付けることができる。本発明で用いられる架橋したシンジオ特異性メタロセンは、イソブチリデン(シクロペンタジエニル−1−フルオレニル)ジルコニウムジメチル、イソペンチリデン(シクロペンタジエニル−1−フルオレニル)ジルコニウムジメチル、イソプロピリデン(シクロペンタジエニル)(2、7−ジ−tert−ブチルフルオレニル)ジルコニウムジメチル、イソプロピリデン(シクロペンタジエニル−1−フルオレニル)ジルコニウムジメチル、ジフェニルメチレン(シクロペンタジエニル−1−フルオレニル)ジルコニウムジメチル及び対応するジクロリドまたはメチルクロリドを含む。
【0046】
特許文献7(米国特許第5807800号明細書)を参照して前述したように、架橋したメタロセン配位子構造の左右対称性は、一般的に架橋構造と遷移金属原子を通って延びる対称面を表す破線に関しバランスのとれた配向で示される。左右対称の概念は、本発明に有用であるメタロセン構造を示すのに有用である。しかしながら左右対称性を欠く他のメタロセン化合物は、金属の回りの立体的環境が、遷移金属の2つの配位点が反対のエナンシオ面を選択的に有するようなものである限りにおいて、使用することができる。この点を例示するために、MePhC−シクロペンタジエニルフルオレニルジルコニウムジクロリドを考えてみよう。このメタロセンは非対称の架橋のために左右対称性に欠けるが、本発明で使用するのに適当であろう。同様に、Me2 C(2−Me−Cp)(Flu)ZrCl2 も左右対称性に欠けるけれどもシンジオ特異性触媒を与える。遷移金属触媒前駆体の鍵となる必要条件は、反応点がオレフィンの挿入に対して反対のエナンシオ面選択性を有するということである。これを視覚的に以下に示すことができる。メタロセン触媒前駆体の反対のエナンシオ面選択性は、金属の回りの配列によって確立される。但し、R2 及びR3 は基R6 及びR7 よりも立体的に大きい、或いは逆にR6 及びR7 はR2 及びR3 よりも立体的に大きい。Me2CpFluZrCl2 の場合、R2 及びR3 は水素原子であり、R6 及びR7 は水素より明らかに大きいヒドロカルビル基である。
【0047】
【化3】

【0048】
普通本発明で使用されるメタロセンの場合、Meはチタン、ジルコニウム、ハフニウム、またはバナジウムであり、Qは好ましくはメチルまたはハロゲン、好ましくは塩素であり、そしてkは普通2であるが、金属原子の価数と共に変化しうる。ヒドロカルビル基の例は、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、イソブチル、アミル、イソアミル、ヘキシル、ヘプチル、オクチル、ノニル、デシル、セチル、フェニルなどを含む。他のヒドロカルビル基は、他のアルキル、アリール、アルケニル、アルキルアリール、またはアリールアルキル基を含む。酸化状態が使用中または貯蔵中に安定でないメタロセン(例えば第5族に基づくメタロセン)の場合、良好な触媒性能を維持するためには、ハロゲン化物質、例えば四塩化炭素、クロロホルムなどを使用することがしばしば有用である。
【0049】
シンジオ特異性及びアイソ特異性触媒に対して異なる負荷因子は好適であるが、最初にアルモキサン、次いでメタロセンを担体物質に付加させるための同一で一般的な方法は、アイソ特異性及びシンジオ特異性メタロセン並びに他のメタロセンに対して適用できる。本発明は、特別なメタロセンに関してではなく、次のように一般的に記述することができる。粒状シリカ担体を乾燥して実質的な量の、その含水を除去する。この乾燥工程は夜通し(約12時間)、約100−160℃の温度で窒素下に行うことができる。シリカは、300℃での燃焼時の重量損失量(LOI)が4%以下、好ましくは2%以下、最も好ましくは約0.1−1.5重量%の範囲内である時点まで乾燥される。次いで乾燥したシリカをトルエンまたは他の同様の芳香族炭化水素溶媒にスラリーとする。アルモキサン、他のアルモキサンも使用できるが、好ましくはメチルアルモキサン(MAO)のトルエン(または他の芳香族溶媒)中溶液が使用でき、次いでこれをシリカ/トルエン混合物へ添加し、そしてシリカ及びMAOを一緒に混合するにつれて、得られたスラリーを約100℃またはそれ以上の温度まで加熱し、次いで数時間の加熱する。例示すると、トルエンを芳香族溶媒として使用する場合、MAO/シリカ/トルエン混合物をトルエンの還流温度、約115℃に約4時間加熱することができる。ついでMAOが担体に固定された、得られる生成物を、数時間にわたって大気温度、約25℃まで冷却し、次いでMAOの担持された粒状シリカが混合または他の撹拌なしに溶液から沈降するようにして沈降せしめられる。液体部分を傾斜により除去し、粒状物質を濾別し、数回トルエンで洗浄して、担体に固定されてない過剰なアルモキサンまたは他のアルミニウム化合物を除去する。典型的な場合この工程部分では、室温で2−4回のトルエン洗浄が行われよう。
【0050】
この時点において、アルモキサン含有担体は約10℃またはそれ以下の冷トルエンと混合される。典型的には、この段階及び続く段階での温度は0−10℃の範囲内である。実質的により低い温度が使用できるが、しばしば不必要である。この温度において、トルエンまたは他の芳香族溶媒に再び低温で分散させたメタロセンをMAO/シリカスラリ−に添加し、得られた混合物をある期間撹拌して、メタロセンをアルモキサンを有する担体物質に反応性のあるように担持させる。メタロセンの担体との反応の主たる部分は最初の数分間で起こるけれど、普通
担体及びメタロセンの混合を1時間またはそれ以上維持することは望ましいであろう。混合時間は所望により数時間までの範囲であってよい。
【0051】
担体の反応の完結時に、固体物質を液体から濾過し、次いで典型的には0−10℃の冷トルエン溶液で洗浄し、濾過し、再び約10℃またはそれ以下の温度で数回ヘキサンのようなパラフィン系炭化水素溶媒で洗浄する。担体物質上のトルエン量を、典型的には数%以下の低量まで実質的に減じるために、3回の連続的なヘキサン洗浄を行うことができる。この段階において、濾液中の担持触媒に冷鉱油を添加して、触媒の鉱油中分散液を生成させる。上述したように中間の乾燥工程は必要なく、従って得られる鉱油の分散液は少量のヘキサンまたは他のパラフィン系溶媒及び更にそれより少量のトルエンまたは他の芳香族溶媒を含むであろう。しかしながら乾燥工程を、鉱油の添加直前に行ってもよい。
【0052】
鉱油は、重合反応に使用する時、担持触媒を穏やかな撹拌で分散懸濁液に保つために十分な粘度を有すべきである。勿論鉱油は、パラフィン系炭化水素溶媒の粘度よりも実質的に大きい粘度を有するであろう。典型的には10℃においてパラフィン系鉱油は約10センチストークまたはそれ以上の粘度を有し、一方パラフィン系炭化水素溶媒は10℃において約1センチストークまたはそれ以下の粘度を有するであろう。最終の液体分散剤は、担持触媒からトルエンを洗い落とすのに用いた少量の、より揮発性のパラフィン系溶媒及び更にそれより少量の芳香族溶媒自体を含むであろう。典型的には、上述した残存パラフィン系及び芳香族溶媒は鉱油の約1−15重量%で存在するであろうし、ヘキサンまたは他のパラフィン系溶媒約0.1−13重量%またはそれ以下及びトルエンまたは他の芳香族溶媒2重量%以下であろう。随時油は、脱気または不活性ガスの吹き込みで残存パラフィン系及び芳香族溶媒を除去してもよい。先に示したように、本発明はアルモキサン共触媒及びメタロセンを広範な種類の担体上に一体化するために使用しうる。
【0053】
上述したようなシリカ担体の特徴は、アルモキサンを主として担体の細孔容量内に、普通少量部分だけ担体粒子の外表面に付着させる。次いでメタロセンをアルモキサン上に適用して、アルモキサンが担体の細孔壁上にライニングを形成し、メタロセンがアルモキサンのライニングと接触し、一般にその上層を形成する形を提供する。担体の外表面上では少量のアルモキサンが担体粒子を包囲する中間殻を形成し、メタロセンがアルモキサンを覆う外側の殻を形成する。アルモキサン担持反応に続くトルエンまたは他の芳香族溶媒での処理は担体上に固定されてない過剰のアルモキサンを除去し、かくしてアルモキサンは後に適用されるメタロセンと一緒になって重合反応中に担体から遊離しなくせしめられる。同様の配慮は続いて適用されるメタロセンにも当てはまる。上述したようにメタロセンは、担体の細孔空間に入り、有機アルミニウム共触媒を包囲する外殻として外表面上に担持される。過剰なメタロセンは、重合反応中に担体粒子が壊れるので、重合反応中容易に除去され、付随して重合反応器内の汚染物となる。従って新しく担持した触媒の、トルエンまたは他の芳香族溶媒を用いる最初の冷温洗浄により過剰なメタロセンを外表面からばかりでなく、担体の細孔空間からも除去し、実質的にすべてのメタロセンが担体に固定されている最終生成物を製造する。残存トルエンによるメタロセンの脱着を避けるために、続いてヘキサンまたは他の炭化水素で冷洗浄することにより、メタロセン脱着に対して優位な溶媒を除去する。
【0054】
上述したように本発明は、有機アルミニウム化合物及び後にメタロセンを担体粒子の細孔空間の内部に担持する約10−100ミクロンの範囲の平均粒子寸法を有するシリカ担体に特に適用できる。下に記述するように、アルモキサンの担体上の相対量は、好適な具体例の場合、出発反応混合物において担体物質1部に対しアルモキサン0.6−2.0部の重量比を与える量で存在するが、その量はアイソ特異性またはシンジオ特異性メタロセンのいずれが含まれるかに依存してこの範囲内で変化させうる。アイソ特異性またはシンジオ特異性に対して好適なアルモキサン比は、担体物質1部に対して出発反応混合物中アルモキサン0.5−1.5部である。メタロセンの負荷は普通MAO/担体物質の約0.1−6重量%で変化し、最適な負荷は1.0−1.5重量%であろう。活性はメタロセンの負荷と共に増大するように見えるが、これは約1.0−2.0重量%の負荷で頭打ちとなり、この範囲以上の負荷ではあったとしても活性の向上は非常に小さい。
【0055】
シンジオ特異性またはアイソ特異性メタロセンのいずれの場合にも、上述した典型的な従来法に優れるいくつかの実質的な改善が本発明の実施で観察される。触媒活性はアイソ特異性及びシンジオ特異性メタロセンの両方に対して実質的に高く、従来法で製造した触媒の活性よりも2倍ほど向上している。本シンジオ特異性及びアイソ特異性触媒は、TIBAL熟成法に従った場合活性の向上を示した。本発明で調製した触媒によって製造した重合体生成物は、より高い暈密度を有し、典型的にはアイソ特異性メタロセンに対して約15−20%の範囲内で増加する。アイソ特異性及びシンジオ特異性触媒の両方に対して、通常介在する乾燥工程を行わないで鉱油中に分散させた触媒の貯蔵安定性(shelf life)は、通常の技術で調製した触媒よりも非常に長い。改良された棚寿命は3か月またはそれ以上が特徴であり、これに対して通常の技術により調製した触媒に対する貯蔵安定性は数週間程度である。
【0056】
本発明の関わる実験的検討は、3つの架橋したアイソ特異性及び2つの架橋したシンジオ特異性触媒を用いて行った。アイソ特異性触媒はラセミ体ジメチルシリルビス (2−メチル−4−フェニル−インデニル)ジルコニウムジクロリド(ここでは触媒1として言及)、ラセミ体ジメチルシリルビス(2−メチル−インデニル)ジルコニウムジクロリド(触媒2)、及びラセミ体ジメチルシリルビス(2−メチル−4、5−ベンゾインデニル)ジルコニウムジクロリド(触媒3)を含むすべて置換されたラセミ体ビス(インデニル)ジルコニウムジクロリドであった。本発明をシンジオ特異性触媒で説明するためには、次のメタロセンを使用した:ジフェニルメチレン(シクロペンタジエニル)(フルオレニル)ジルコニムジクロリド(触媒4)。本発明が広い分子量分布の樹脂の製造に有用であることを例示するために、ジフェニルメチレン(シクロペンタジエニル)(フルオレニル)ジルコニウムジクロリド1.6重量%及びイソプロピリデン(シクロペンタジエニル)(2、7−ジ−tert-ブチルフルオレニル)ジルコニウムジクロリド0.4重量%を含む触媒(触媒5)を調製した。これらのアイソ特異性及びシンジオ特異性メタロセンを、本発明の方法によりMAO/シリカに担持させ、また室温またはそれ以上の温度で行われ且つ触媒成分を常法で乾燥する標準的な技術に従っても担持した。一般に標準的技術で製造した担持アイソ特異性触媒は、本発明に従って調製した触媒のポリマ−約8000−13500g/触媒g/時に対して、ポリマー約3000−6000g/触媒g/時の範囲の活性を示した。従来法の触媒から製造したポリマーの暈密度は約0.3−0.36g/mlであり、一方本発明の触媒で製造したポリマーの暈密度は0.35−0.4g/mlの範囲であった。更に本発明によれば、貯蔵安定性は約2週間から12週間またはそれ以上まで向上した。最後に本発明に従って調製した触媒は、従来法の技術で調製した自己発火性の固体と対比して、非自己発火性スラリーとして貯蔵できた。
【0057】
次の実施例は上述の触媒1、2、3、4、及び5に基づくシリカ担持メタロセンを製造する本発明の実施を例示する。
シンジオタクチックプロピレン(sPP)重合の一般的方法
重合は800ppmで作動する磁気駆動型ピッチド・ブレード撹拌機を備えた4リットルのオートクレーブ・エンジニアズ・ジッパークレーブ(Autoclave Engineers Zipperclave)反応器で行った。反応器はジャケットが付いていて、重合温度を設定温度60℃の1℃以内に維持した。乾燥し且つ脱酸素した反応器に、液体プロピレン750g及び水素41.2ミリモルを大気条件(25℃)下に仕込んだ。ステンレス鋼シリンダーに、触媒/油スラリー(触媒含有量36mg)をトリイソブチルアルミニウム109mgと共に添加した。触媒/共触媒を約3分間予め接触させ、次いでこの反応器中に更なるプロピレン750g部分をフラッシュした。反応器を約3分間にわたって60℃まで加熱し、次いで反応を60分間行わせた。この反応器の内容物を迅速に取り出し、ポリマーを換気している容器内で夜通し乾燥させた。
【0058】
アイソタクチックプロピレン(miPP)重合の一般的方法
重合は800ppmで作動する磁気駆動型ピッチドブレード撹拌機を備えた4リットルのオートクレーブ・エンギニアズ・ジッパークレーブ反応器で行った。反応器はジャケットが付いていて、重合温度を設定温度60℃の1℃以内に維持した。乾燥し且つ脱酸素した反応器に、液体プロピレン750g及び水素10ミリモルを大気条件(25℃)下に仕込んだ。ステンレス鋼シリンダーに、触媒/油スラリー(触媒含有量36mg)をトリエチルアルミニウム72mgと共に添加した。触媒/共触媒を約3分間予め接触させ、次いでこの反応器中に更なるプロピレン750g部分をフラッシュした。反応器を約3分間にわたって67℃まで加熱し、次いで反応を60分間行わせた。この反応器の内容物を迅速に取り出し、ポリマーを換気している容器内で夜通し乾燥させた。
暈密度の測定 暈密度の測定は、ポリマー粉末を含む100mlのメスシリンダーの取り出した内容物を秤量することによって行った。
【0059】
メルト・フロー・インデックスの測定
ポリマーのメルト・フローは、物質2.16kgを用い、チニウス(Tinius)−オルセン(Olsen)押出しプラストメーターにより230℃で記録した。ポリマー粉末は2、6−ジ−tert−ブチル−4−メチルフェノール(BHT)約1mgで安定化させたものであった。
【0060】
メチルアルミノキサン担持シリカの調製
シリカゲル(フジ・シリシア、P−10)を、炉において150℃で18時間乾燥し、次いで貯蔵のためにグローブボックスヘ移した。乾燥したシリカ15gを、凝縮器を取り付けたグローブボックス中の1リットル3つ口丸底フラスコに入れた。フラスコを密閉し、グローブボックスから取り出し、僅かに正の窒素圧下にシュレンク・マニホールドに取り付けた。これに乾燥、脱酸素したトルエン150mlを加えた。このスラリーを短期間撹拌し、トルエン中30重量%MAO41mlを添加した。反応混合物を115℃まで加熱し、磁気撹拌機を用いて4時間還流させた。次いでスラリーを室温まで冷却し、沈降させた。トルエンの上澄液をカヌーレで除去し、湿った生成物を、連続的にトルエン150mlずつで3回、次いで乾燥、脱酸素ヘキサン150mlずつで3回洗浄した。次いでシリカ上のMAOを真空下に乾燥して、白色の固体を得た。この事例の場合、MAOのシリカ上での乾燥は異なる触媒の実験室的評価における簡便性を提供する。
【実施例】
【0061】
実施例1
miPP触媒の製造
P−10シリカ上MAO5gを、トルエン30mlと共に100mlの丸底フラスコに添加し、フラスコを15℃まで冷却した。ラセミ体Me2 Si(2−Me−4−PhInd)2 ZrCl2 (65mg)を20mlのウィートン(Wheaton)薬瓶中のトルエン10mlへスラリーとした。このメタロセンスラリーをシリカ上MAOの撹拌溶液に添加した。メタロセンの移動はトルエンの第2の10ml部分を用いて行った。メタロセン及びMAO/シリカを15℃において1時間反応させた。固体を沈降させ、上澄液をカヌーレで除去した。湿った担持触媒をトルエン50mlで1回洗浄し、再び固体を沈降させ、上澄液をカヌーレで除去した。湿った担持触媒を、0℃下にヘキサン50mlずつで連続的に3回洗浄した。ヘキサンの3回目の傾斜後、湿った触媒スラリーを鉱油45gで希釈した。miPP担持触媒を8.2%の固体スラリーとして単離した。
【0062】
実施例2
miPP触媒の製造
P−10シリカ上MAO4gを、トルエン30mlと共に100mlの丸底フラスコに添加し、フラスコを0℃まで冷却した。ラセミ体Me2 Si(2−Me−4、5−BzInd)2 ZrCl2 (60mg)を20mlのウィートン薬瓶中のトルエン10mlへスラリーとした。このメタロセンスラリーをシリカ上MAOの撹拌溶液に添加した。メタロセンの移動はトルエンの第2の10ml部分を用いて行った。メタロセン及びMAO/シリカを0℃において1時間反応させた。固体を沈降させ、上澄液をカヌーレで除去した。湿った担持触媒をヘキサン50mlずつで連続的に3回洗浄した。ヘキサンの3回目の傾斜後、湿った触媒スラリーを鉱油45gで希釈した。miPP担持触媒を7.0%の固体スラリーとして単離した。
【0063】
実施例3
miPP触媒の製造
P−10シリカ上MAO4.8gを、トルエン30mlと共に100mlの丸底フラスコに添加し、フラスコを0℃まで冷却した。ラセミ体Me2 Si(2−MeInd)2 ZrCl2 (71mg)を20mlのウィートン薬瓶中のトルエン10mlへスラリーとした。このメタロセンスラリーをシリカ上MAOの撹拌溶液に添加した。メタロセンの移動はトルエンの第2の10ml部分を用いて行った。メタロセン及びMAO/シリカを0℃において1時間反応させた。固体を沈降させ、上澄液をカヌーレで除去した。湿った担持触媒をトルエン50mlで1回洗浄し、再び固体を沈降させ、上澄液をカヌーレで除去した。湿った担持触媒を、0℃下にヘキサン50mlずつで連続的に3回洗浄した。ヘキサンの3回目の傾斜後、湿った触媒スラリーを鉱油45gで希釈した。miPP担持触媒を7.5%の固体スラリーとして単離した。
【0064】
実施例4
sPP触媒の調製
P−10シリカ上MAO5gを、トルエン50mlと共に100mlの丸底フラスコに添加した。ジフェニルメチレン(シクロペンタジエニル)(フルオレニル)ジルコニウムジクロリド(80mg)及びイソプロピリデン(シクロペンタジエニル)(2、7−ビス−tert−ブチルフルオレニル)ジルコニウムジクロリド(20mg)を20mlのウィートン薬瓶中のトルエン10mlへスラリーとした。このメタロセンスラリーをシリカ上MAOの撹拌溶液に添加した。メタロセン及びMAO/シリカを1時間反応させた。固体を沈降させ、上澄液をガラスフリットで濾過し除去した。湿った担持触媒をガラスフリットの上で、トルエン50ml部分で1回、続いて0℃下にヘキサン50mlずつで連続的に3回洗浄した。ヘキサンの3回目の濾過後、湿った触媒スラリーを真空下に2時間乾燥し、鉱油43gで希釈した。sPP担持触媒を9.5%固体スラリーとして単離した。
【0065】
対照実施例1
miPP触媒の製造
P−10シリカ上MAO5gを、トルエン100mlと共に200mlの丸底フラスコに添加し、フラスコを0℃まで冷却した。ラセミ体Me2 Si(2−MeInd)2 ZrCl2 (100mg)をシリカ上MAOの撹拌溶液に添加した。メタロセン及びMAO/シリカを0℃において1時間反応させた。固体を沈降させ、上澄液をカヌーレで除去した。湿った担持触媒をヘキサン100mlで連続的に3回洗浄し、再び固体を沈降させ、上澄液をカヌーレで除去した。湿った担持触媒を、トルエン100mlずつで連続的に10回、次いでヘキサン100mlずつで更に3回洗浄した。次いで触媒を30分間真空乾燥した。
【0066】
対照実施例2
sPP触媒の調製
P−10シリカ上MAO5gを、トルエン50mlと共に500mlの丸底フラスコに添加し、フラスコを0℃まで冷却した。ジフェニルメチレン(シクロペンタジエニル)(フルオレニル)ジルコニウムジクロリド(100mg)をトルエン中にスラリーとした。このメタロセンスラリーをシリカ上MAOの撹拌溶液に添加した。メタロセン及びMAO/シリカを1時間反応させた。固体を沈降させ、上澄液をカヌーレで除去した。湿った担持触媒を、ヘキサン50−100mlずつで連続的に3回洗浄した。ヘキサンの3回目の濾過後、湿った触媒スラリーを真空下に1時間乾燥した。
【0067】
重合結果を表1に要約する。ここに記述する改変法は触媒活性の実質的な向上をもたらす(実施例1と対照実施例1を参照)。
【0068】
【表1】

【0069】
触媒の貯蔵安定性は本発明を用いることにより驚くほど改良された。例えば下記の図7において、2つの触媒の活性を、標準的なmiPP条件下に測定した。これらの結果は、乾燥した触媒が触媒活性の減少に至る触媒不活性化の傾向があり、且つ本発明で製造された触媒が標準的な乾燥を含む触媒工程のものよりも非常に長い期間高活性の観察される優れた貯蔵安定性を示すということを示唆している。
【0070】
図7は、縦軸に触媒活性(CA)をg/g/時の単位で示し、一方横軸に本発明に従って及び標準的な従来法に従って処方したアイソ特異性メタロセン触媒に対する触媒の日齢(A)を示す。本発明による担持触媒に対して曲線7aで示してあるように、触媒活性は400日までの期間にわたって適度にしか低下しなかった。曲線7aは、曲線7bで示すような通常の担持法のものが示す触媒活性の急速な低下よりも著しい改善を示している。
【0071】
以上本発明の特別な具体例を記述してきたけれど、その改変が同業者にとって連想できるものであり、またすべてのそのような改変が特許請求の範囲内に包含されるものであることは理解されよう。
【0072】
本発明の特徴及び態様は以下の通りである。
1、(a)アルモキサン共触媒を含浸させた、但し該共触媒の少なくとも半分がシリカ粒子の内部細孔容量内に配置された、該シリカ粒子を含んでなる粒状触媒担体物質を準備し、
(b)2つの立体的に似ていないシクロペンタジエニル環構造が中心遷移金属原子に配位して一体化する立体特異性メタロセンの、芳香族炭化水素溶媒中分散液を準備し、但し該シクロペンタジエニル環構造の少なくとも1つは他のシクロペンタジエニル基の該遷移金属原子に関する配向と立体的に異なる該遷移金属原子に関する配向を与える置換シクロペンタジエニル基であり、そして該シクロペンタジエニル基の両方が該配位する遷移金属原子に対して立体剛直性の関係を与えて該環構造の回転を妨害する互いの関係にあり、
(c)該メタロセン溶媒分散液と該アルモキサン含浸シリカ粒子とを、該メタロセンが反応性を有して該アルモキサン含浸シリカ粒子上に担持且つ内に含浸され且つシリカ担持触媒を生成するのに十分な期間、約10℃またはそれ以下の温度で混合し、
(d)該担持触媒を該芳香族溶媒から取り出し、
(e)該担持触媒を、約10℃またはそれ以下の温度においてパラフィン系炭化水素溶媒で洗浄し、そして
(f)該洗浄した触媒を、該パラフィン系炭化水素溶媒の粘度より大きい粘度を有する粘稠な鉱油に分散させる、
ことを含んでなる、担持メタロセン触媒の調製法。
【0073】
2、洗浄した触媒が、該粘稠な鉱油中分散液の時点で残存量の該パラフィン系炭化水素溶媒を含む、上記1の方法。
【0074】
3、該担持触媒の、該パラフィン系炭化水素溶媒での洗浄が、該担持触媒上の残存芳香族溶媒を、該担持触媒の高々50重量%の値まで減じるのに効果的である、上記2の方法。
【0075】
4、該粘稠な鉱油が少なくとも10センチスト−クスの粘度を有する、上記1の方法。
【0076】
5、該パラフィン系炭化水素溶媒が高々2センチスト−クスの粘度を有する、
上記4の方法。
【0077】
6、工程(d)に続いて且つ工程(e)の前に、回収した担持メタロセン触媒を芳香族溶媒で洗浄して、該担持メタロセン触媒から、担持されていないメタロセンを除去し、次いで該担持触媒を工程(e)に従って洗浄する、上記1の方法。
【0078】
7、該シリカ担体物質が20−60ミクロンの範囲内の平均粒子寸法を有する球形のシリカ粒子を含んでなる、上記1の方法。
【0079】
8、該球形のシリカ粒子が200−400オングストロ−ムの範囲内の平均有効細孔直径を有する、上記7の方法。
【0080】
9、上記1の(a)における該アルモキサンと該シリカの重量比が約0.6−2.0の範囲内に有る、上記8の方法。
【0081】
10、該立体特異性メタロセンが、式
R''(Cpan )(Cpb R'm )MeQp
[式中、Cpa は置換シクロペンタジエニル環であり、Cpb は未置換または置換シクロペンタジエニル環であり、各Rは同一でも異なってもよく且つ炭素数1−20のヒドロカルビル基であり、各R'mは同一でも異なってもよく且つ炭素数1−20のヒドロカルビル基であり、R''はメタロセンに立体剛直性を与えるシクロペンタジエニル環間の構造的架橋であり且つ炭素数1−4のアルキレン基、ケイ素ヒドロカルビル基、ゲルマニウムヒドロカルビル基、燐ヒドロカルビル基、窒素ヒドロカルビル基、硼素ヒドロカルビル基、及びアルミニウムヒドロカルビル基からなる群から選択され、Meは元素周期律表第4b、5b、または6b族の金属であり、各Qは炭素数1−20のヒドロカルビル基またはハロゲンであり、0≦p≦3、0≦m≦4、1≦n≦4である、なおR'm は(Cpb R'm )が(Cpan )と立体的に異なる環であるように選択される]
で特徴付けられるシンジオ特異性メタロセンである、上記1の方法。
【0082】
11、(Cpan )が置換または未置換フルオレニル基を形成するようにRが選択される、上記10の方法。
【0083】
12、Meがチタニウム、ジルコニウム、ハフニウム、またはバナジウムである、上記11の方法。
【0084】
13、R''がメチレン、エチレン、有機シリル、置換メチレン、または置換エチレン基である、上記12の方法。
【0085】
14、(Cpan )が左右対称の置換または未置換フルオレニル基を形成するようにRが選択され、そして(Cpb R'm )が左右対称のアルキル置換または未置換シクロペンタジエニル基を形成するようにR'が選択される、上記13の方法。
【0086】
15、R''(Cpan )(Cpb R'm )がイソプロピリデン(シクロペンタジエニル−1−2、7−ジ−tert−ブチルフルオレニル)配位子またはジフェニルメチレン(シクロペンタジエニル−1−フルオレニル)配位子を形成す
る、上記14の方法。
【0087】
16、該立体特異性メタロセンが、イソプロピリデン(シクロペンタジエニル−1−2、7−ジ−tert−ブチルフルオレニル)ジルコニウムジクロリド及びジフェニルメチレン(シクロペンタジエニル−1−フルオレニル)ジルコニウムジクロリド並びにこれらの混合物からなる群から選択される、上記10の方法。
【0088】
17、該立体特異性メタロセンが、式
R''(C5 (R')42 MeQp
[式中、各(C5 (R')4 )は置換シクロペンタジエニル環であり、各R'は同一でも異なってもよく且つ水素または炭素数1−20のヒドロカルビル基であり、R''は該メタロセンに立体剛直性を与える2つの(C5 (R')4 )環間の構造的架橋であり、但し2つ(C5 (R')4 )の環はMeに対してラセミ配置であり、そしてR″は炭素数1−4のアルキレン基、ケイ素ヒドロカルビル基、ゲルマニウムヒドロカルビル基、燐ヒドロカルビル基、窒素ヒドロカルビル基、硼素ヒドロカルビル基、及びアルミニウムヒドロカルビル基からなる群から選択され、Meは元素周期律表第4b、5b、または6b族の金属であり、各Qは炭素数1−20のヒドロカルビル基またはハロゲンであり、各Qは炭素数1−20のヒドロカルビル基またはハロゲンであり、そして0≦p≦3]
で特徴付けられるアイソ特異的立体剛直性メタロセンである、上記1の方法。
【0089】
18、(C5 (R')4 )基が置換または未置換インデニル基である、上記17の方法。
【0090】
19、該インデニル基がそれぞれ近位で置換されている、上記18の方法。
【0091】
20、Meがチタニウム、ジルコニウム、ハフニウム、またはバナジウムである、上記18の方法。
【0092】
21、R''がメチレン、エチレン、有機シリル、置換メチレン、または置換エチレン基である、上記20の方法。
【0093】
22、該アイソ特異性メタロセンがラセミ体ジメチルシリル(2−メチル−4−フェニルインデニル)2 ジルコニウムジクロリド、ラセミ体ジメチルシリル(2−メチル−4−インデニル)2 ジルコニウムジクロリド、及びラセミ体ジメチルシリル(2−メチル−4、5−ベンゾインデニル)2 ジルコニウムジクロリド、及びこれらの混合物からなる群から選択される、上記21の方法。
【0094】
23、
(a)20−60ミクロンの範囲内の平均粒子寸法及び200−400オングストロームの範囲内の平均有効細孔直径を有する球形シリカ粒子を含んでなる粒状触媒担体物質を準備し、
(b)該粒状担体物質を芳香族担体液体中アルモキサン共触媒と接触させ、
(c)担体、担体液体、及びアルモキサン共触媒の該混合物を、該アルモキサンを該粒状担体物質上に固定する、但し該共触媒の少なくとも半分を該シリカ粒子の内部細孔容量内に配置するのに十分な期間、上昇した温度に加熱し、
(d)該混合物を冷却し且つ該アルモキサン含有担体物質を該担体液体から分離し、
(e)該アルモキサン含有担体物質を芳香族溶媒で洗浄して過剰のアルモキサンを除去し、
(f)該アルモキサン含有担体物質を約10℃またはそれ以下の低温まで冷却し、そしてこの低温において該担体物質に、2つの立体的に似ていないシクロペンタジエニル環構造が中心遷移金属原子に配位して一体化する立体特異性メタロセンの、芳香族炭化水素溶媒中分散液を添加し、但し該シクロペンタジエニル環構造の少なくとも1つは他のシクロペンタジエニル基の該遷移金属原子に関する配向と立体的に異なる該遷移金属原子に関する配向を与える置換シクロペンタジエニル基であり、そして該シクロペンタジエニル基の両方が該配位する遷移金属原子に対して立体剛直性の関係を与えて該環構造の回転を妨害する互いの関係にあり、
(g)該メタロセン溶媒分散液及び該アルモキサン含浸シリカ粒子を、該メタロセンが反応性を有して該アルモキサン含浸シリカ粒子上に担持且つ内に含浸され且つシリカ担持触媒を生成するのに十分な期間、約10℃またはそれ以下の温度で混合し、
(h)得られた担持メタロセン触媒を該芳香族溶媒から回収し、
(i)該担持触媒を約10℃またはそれ以下の低温においてパラフィン系炭化水素溶媒で洗浄し、そして
(j)該担持メタロセン触媒を、該パラフィン系炭化水素溶媒の粘度より実質的に大きい粘度を有する粘稠な鉱油に分散させる、
ことを含んでなる、担持メタロセン触媒の調製法。
【0095】
24、工程(h)に続いて且つ工程(i)の前に、回収した担持メタロセン触媒を芳香族溶媒で洗浄して、該担持メタロセン触媒から担持されていないメタロセンを除去し、次いで該担持触媒を工程(i)に従って洗浄する、上記23の方法。
【0096】
25、該アルモキサンと該シリカの重量比が約0.6−2.0の範囲内である、上記23の方法。
【0097】
26、該立体特異性メタロセンが、式
R''(Cpan )(Cpb R'm )MeQp
[式中、Cpa は置換シクロペンタジエニル環であり、Cpb は未置換または置換シクロペンタジエニル環であり、各Rは同一でも異なってもよく且つ炭素数1−20のヒドロカルビル基であり、各R'は同一でも異なってもよく且つ炭素数1−20のヒドロカルビル基であり、R''はメタロセンに立体剛直性を与えるシクロペンタジエニル環間の構造的架橋であり且つ炭素数1−4のアルキレン基、ケイ素ヒドロカルビル基、ゲルマニウムヒドロカルビル基、燐ヒドロカルビル基、窒素ヒドロカルビル基、硼素ヒドロカルビル基、及びアルミニウムヒドロカルビル基からなる群から選択され、Meは元素周期律表第4b、5b、または6b族の金属であり、各Qは炭素数1−20のヒドロカルビル基またはハロゲンであり、0≦p≦3、0≦m≦4、1≦n≦4、なおR'm は(Cpb R'm )が(Cpan )と立体的に異なる環であるように選択される]
で特徴付けられるシンジオ特異性メタロセンである、上記23の方法。
【0098】
27、該アルモキサンと該シリカの重量比が約0.6−2.0の範囲内である、上記26の方法。
【0099】
28、該担体上の該メタロセンの濃度が0.1−6重量%の範囲内である、上記27の方法。
【0100】
29、該立体特異性メタロセンが、式
R''(C5 (R')42 MeQp
[式中、各(C5 (R')4 )は置換シクロペンタジエニル環であり、各R'は同一でも異なってもよく且つ水素または炭素数1−20のヒドロカルビル基であり、R''は該メタロセンに立体剛直性を与える2つの(C5 (R')4 )環間の構造的架橋であり、但し2つ(C5 (R')4 )の環はMeに対してラセミ配置であり、そしてR〃 は炭素数1−4のアルキレン基、ケイ素ヒドロカルビル基、ゲルマニウムヒドロカルビル基、燐ヒドロカルビル基、窒素ヒドロカルビル基、硼素ヒドロカルビル基、及びアルミニウムヒドロカルビル基からなる群から選択され、Meは元素周期律表第4b、5b、または6b族の金属であり、各Qは炭素数1−20のヒドロカルビル基またはハロゲンであり、各Qは炭素数1−20のヒドロカルビル基またはハロゲであり、そして0≦p≦3]
で特徴付けられるキラルな立体剛直性メタロセンである、上記27の方法。
【0101】
30、該アルモキサンと該粒状シリカ担体の重量比が約0.6−2.0の範囲内である、上記29の方法。
【0102】
31、該担体上の該メタロセンの濃度が0.1−6重量%の範囲内である、上記30の方法。
【図面の簡単な説明】
【0103】
【図1】本発明を行う際に使用できる一般的に球形の触媒粒子の理想化された描写を示す前立面図。
【図2】図1の触媒粒子の横断側立面図。
【図3】図1及び2の触媒粒子に相当する触媒粒子の変化された形の理想化された描写の前立面図。
【図4】図1に理想的に描写された担体粒子に一般的に一致する触媒担体粒子の写真。
【図5】図2に理想的に描写された担体粒子に一般的に一致する触媒担体粒子の写真。
【図6】図3に理想的に描写された担体粒子に一般的に一致する触媒担体粒子の写真。
【図7】触媒の活性と触媒の日齢の関係を示すグラフ。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)アルモキサン共触媒を含浸させた、但し該共触媒の少なくとも半分がシリカ粒子の内部細孔容量内に配置された、該シリカ粒子を含んでなる粒状触媒担体物質を準備し、
(b)2つの立体的に似ていないシクロペンタジエニル環構造が中心遷移金属原子に配位して一体化する立体特異性メタロセンの、芳香族炭化水素溶媒中分散液を準備し、但し該シクロペンタジエニル環構造の少なくとも1つは他のシクロペンタジエニル基の該遷移金属原子に関する配向と立体的に異なる該遷移金属原子に関する配向を与える置換シクロペンタジエニル基であり、そして該シクロペンタジエニル基の両方が該配位する遷移金属原子に対して立体剛直性の関係を与えて該環構造の回転を妨害する互いの関係にあり、
(c)該メタロセン溶媒分散液と該アルモキサン含浸シリカ粒子とを、該メタロセンが反応性を有して該アルモキサン含浸シリカ粒子上に担持且つ内に含浸され且つシリカ担持触媒を生成するのに十分な期間、約10℃またはそれ以下の温度で混合し、
(d)該担持触媒を該芳香族溶媒から取り出し、
(e)該担持触媒を、約10℃またはそれ以下の温度においてパラフィン系炭化水素溶媒で洗浄し、そして
(f)該洗浄した触媒を、該パラフィン系炭化水素溶媒の粘度より大きい粘度を有する粘稠な鉱油に分散させる、
ことを含んでなる、担持メタロセン触媒の調製法。
【請求項2】
(a)20−60ミクロンの範囲内の平均粒子寸法及び200〜400オングストロ−ムの範囲内の平均有効細孔直径を有する球形シリカ粒子を含んでなる粒状触媒担体物質を準備し、
(b)該粒状担体物質を芳香族担体液体中アルモキサン共触媒と接触させ、
(c)担体、担体液体、及びアルモキサン共触媒の該混合物を、該アルモキサンを該粒状担体物質上に固定する、但し該共触媒の少なくとも半分を該シリカ粒子の内部細孔容量内に配置するのに十分な期間、上昇した温度に加熱し、
(d)該混合物を冷却し且つ該アルモキサン含有担体物質を該担体液体から分離し、
(e)該アルモキサン含有担体物質を芳香族溶媒で洗浄して過剰のアルモキサンを除去し、
(f)該アルモキサン含有担体物質を約10℃またはそれ以下の低温まで冷却し、そしてこの低温において該担体物質に、2つの立体的に似ていないシクロペンタジエニル環構造が中心遷移金属原子に配位して一体化する立体特異性メタロセンの、芳香族炭化水素溶媒中分散液を添加し、但し該シクロペンタジエニル環構造の少なくとも1つは他のシクロペンタジエニル基の該遷移金属原子に関する配向と立体的に異なる該遷移金属原子に関する配向を与える置換シクロペンタジエニル基であり、そして該シクロペンタジエニル基の両方が該配位する遷移金属原子に対して立体剛直性の関係を与えて該環構造の回転を妨害する互いの関係にあり、
(g)該メタロセン溶媒分散液及び該アルモキサン含浸シリカ粒子を、該メタロセンが反応性を有して該アルモキサン含浸シリカ粒子上に担持且つ内に含浸され且つシリカ担持触媒を生成するのに十分な期間、約10℃またはそれ以下の温度で混合し、
(h)得られた担持メタロセン触媒を該芳香族溶媒から回収し、
(i)該担持触媒を約10℃またはそれ以下の低温においてパラフィン系炭化水素溶媒で洗浄し、そして
(j)該担持メタロセン触媒を、該パラフィン系炭化水素溶媒の粘度より実質的に大きい粘度を有する粘稠な鉱油に分散させる、
ことを含んでなる、担持メタロセン触媒の調製法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2009−1829(P2009−1829A)
【公開日】平成21年1月8日(2009.1.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−255998(P2008−255998)
【出願日】平成20年10月1日(2008.10.1)
【分割の表示】特願2002−31048(P2002−31048)の分割
【原出願日】平成14年2月7日(2002.2.7)
【出願人】(391024559)フイナ・テクノロジー・インコーポレーテツド (98)
【氏名又は名称原語表記】FINA TECHNOLOGY, INCORPORATED
【Fターム(参考)】