説明

メチル化カテキンの効率的製造方法

【課題】 メチル化カテキンを始めとするアルキル化カテキンまたはその塩、ならびに有用な中間体を合成する方法を提供すること。
【解決手段】 没食子酸のメタ位またはパラ位のフェノール性水酸基を選択的にアルキル化し、残りのフェノール性水酸基を保護した安息香酸誘導体を製造し、これをフェノール性水酸基を保護したカテキン類と反応させた後に、適切に脱保護することにより、様々なアルキル化カテキン、例えば次式:
【化50】


で表される化合物を合成する方法が開示される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、多様な生理活性を持つカテキン誘導体またはその塩の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
アトピー性皮膚炎を始めとした炎症に対して使用されるステロイド類は、対症療法的に使用されるのみであり、かつ極めて重篤な副作用を有することも良く知られている。現在のところステロイド類に代わる新規な薬物は知られておらず、その開発は急務の課題となっている。メチル化カテキンが抗アレルギー作用を示すことが知られているが(特許文献1)、これは茶葉から単離された物質であり、大量に単離および精製することは困難である。そのため、現在のところ、その量的確保が最大の技術的問題点となっている。またメチル化カテキンには、メチル基の位置に由来する様々な位置異性体の存在が知られているが、その確保が困難であるため詳細な生物活性試験も行うことが困難である。また、メチル化カテキンを始めとするアルキル化カテキン及びその合成中間体は、花粉症を始めとしたアレルギー疾患の新規な治療薬の開発に結びつくことが期待され、その合成法が確立されれば、学術的な意義のみでなく、医療上の貢献度、さらには経済的な波及効果も多大なものとなることが予測される。
【特許文献1】特開2005−60277
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
本発明は、メチル化カテキンを始めとするアルキル化カテキンまたはその塩、ならびに有用な中間体を合成する方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明者らは、フェノール性水酸基への保護基導入による保護カテキン類の合成、アシル化、脱保護反応を効果的に利用して、様々なアルキル化カテキンの異性体を純粋に合成する新規な方法を開発し、アルキル化カテキンまたはその塩の量的確保を可能にした。
【0005】
即ち、本発明は、次式(VI):
【化8】

(式中、Rはメチル、エチルまたはプロピルを表す)
のいずれかで表されるアルキル化カテキンまたはその塩を製造する方法であって、
(a)非プロトン性溶媒中で、次式(I):
【化9】

(式中、R1 は水素原子あるいは水酸基を表す)
のいずれかで表される化合物と、次式(II)
【化10】

(式中、R2 はスルホニル基、アシル基、アルキル基、シリル基を表し、LはCl、Brまたはトリフラートを表す)
で表される化合物とを塩基存在下で反応させて、次式(III)
【化11】

(式中、R1 は水素原子、水酸基あるいは保護された水酸基を表し、R2 はそれぞれ同じであっても異なってもよくスルホニル基、アシル基、アルキル基、シリル基を表す)
のいずれかで表される化合物を形成し;
(b)非プロトン性溶媒中で、式(III)の化合物と、次式(IV):
【化12】

(式中、Rはメチル、エチルまたはプロピルを表し、R3 はそれぞれ同じであっても異なってもよくスルホニル基、アシル基、シリル基を表す)
のいずれかで表される化合物とを、縮合剤存在下で反応させて、次式(V):
【化13】

(式中、Rはメチル、エチルまたはプロピルを表し、R1 は水素原子、水酸基あるいは保護された水酸基を表し、R2はそれぞれ同じであっても異なってもよくスルホニル基、アシル基、アルキル基、シリル基を表し, R3はそれぞれ同じであっても異なってもよくスルホニル基、アシル基、シリル基を表す)
のいずれかで表される化合物を形成し;そして
(c)式(V)の化合物を、プロトン性あるいは非プロトン性溶媒中で、酸性あるいは塩基性条件で反応させて式(VI)の化合物を得る、
の各工程を含む方法を提供する。
【0006】
別の観点においては、本発明は、上述の本発明の方法において有用な中間体である、次式(IV):
【化14】

(式中、Rはメチル、エチルまたはプロピルを表し、R3 はそれぞれ同じであっても異なってもよくスルホニル基、アシル基、シリル基を表す)
のいずれかで表される化合物を提供する。
【発明の効果】
【0007】
本発明は、抗アレルギー作用を示すカテキン誘導体の製造方法に関するものであり、本発明により様々なアルキル化カテキンの異性体を簡便かつ大量に合成可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
本発明の製造方法においては、出発物質として、次式(I):
【化15】

(式中、R1 は水素原子あるいは水酸基を表す)
のいずれかで表される化合物を用いる。
【0009】
このような一般式(I)で表される化合物としては、下記の式で表されるエピカテキン、エピガロカテキン、(+)-カテキン、(-)-ガロカテキンのような化合物が挙げられ、いずれも市販されている。
【化16】

【0010】
本発明の製造方法の工程(a)は、カテキン類にノシル (Ns) 基等の保護基を導入することにより、フェノール性水酸基が保護されたカテキン誘導体へと誘導する反応である。工程(a)では、式(I)の化合物を次式(II):
【化17】

(式中、R2 はスルホニル基、アシル基、アルキル基、シリル基を表し、LはCl、Brまたはトリフラートを表す)
で表される化合物と反応させる。反応は、非プロトン性溶媒中で塩基の存在下で行う。
【0011】
上記式中、R2としては、例えば、メタンスルホニル基、トリフルオロメタンスルホニル基、ベンゼンスルホニル基、トルエンスルホニル基、ニトロベンゼンスルホニル基、アセチル基、トリクロロアセチル基、トリフルオロアセチル基、ベンゾイル基、ピバロイル基、直鎖または分枝鎖のC1-4アルキル基、トリメチルシリル基、トリエチルシリル基、t-ブチルジメチルシリル基、t-ブチルジフェニルシリル基などが挙げられる。
【0012】
このような一般式(II)で表される化合物として特に好ましいものは下記の化合物である。
【化18】

【0013】
非プロトン性溶媒としては、アセトニトリル、塩化メチレン、トルエン、THF等が挙げられる。非プロトン性溶媒中の一般式(I)で表される化合物の濃度は、好ましくは0.01−1.0Mであり、これに一般式(II)で表される化合物を、一般式(I)で表される化合物が持つフェノール性水酸基に対してほぼ化学量論量加えることが好ましい。
【0014】
塩基としては、トリエチルアミン、ジイソプロピルエチルアミン等の有機塩基や炭酸カリウム等の無機塩基を用いることができる。溶媒中の塩基の濃度は通常0.001−1.0M、好ましくは0.01−0.1Mである。反応温度は通常-78℃−100℃、好ましくは-20℃−60℃で行われる。
【0015】
工程(a)における、式(I)の化合物と式(II)の化合物との反応により、次式(III):
【化19】

(式中、R1 は水素原子、水酸基あるいは保護された水酸基を表し、R2 はそれぞれ同じであっても異なってもよくスルホニル基、アシル基、アルキル基、シリル基を表す)
のいずれかで表される、フェノール性水酸基が保護されたカテキン誘導体が形成される。
【0016】
このような一般式(III)で表される化合物としては、例えば下記のような化合物が挙げられる。
【化20】

【0017】
次に、本発明の製造方法の工程(b)では、式(III)の化合物と、次式(IV):
【化21】

(式中、Rはメチル、エチルまたはプロピルを表し、R3 はそれぞれ同じであっても異なってもよくスルホニル基、アシル基、シリル基を表す)
のいずれかで表される安息香酸誘導体とを反応させる。反応は、非プロトン性溶媒中で縮合剤存在下で行う。
【0018】
上記式中、R3としては、例えば、メタンスルホニル基、トリフルオロメタンスルホニル基、ベンゼンスルホニル基、トルエンスルホニル基、ニトロベンゼンスルホニル基、アセチル基、トリクロロアセチル基、トリフルオロアセチル基、ベンゾイル基、ピバロイル基、トリメチルシリル基、トリエチルシリル基、t-ブチルジメチルシリル基、t-ブチルジフェニルシリル基などが挙げられる。
【0019】
一般式(IV)で表される化合物としては、例えば下記のような化合物が挙げられる。
【化22】

【0020】
このような一般式(IV)で表される化合物は、後述する方法にしたがって没食子酸から合成することができる。
【0021】
非プロトン性溶媒としては、アセトニトリル、塩化メチレン、トルエン、THF等が挙げられる。非プロトン性溶媒中の一般式(III)で表される化合物の濃度は好ましくは0.01−1.0 Mである。
【0022】
縮合剤としては、DCC、WSCI・HCl、HOBT等を用いることができる。溶媒中の酸の濃度は通常0.001−1.0M、好ましくは0.01−0.1Mである。反応温度は通常 0−100℃、好ましくは20−60℃で行われる。
【0023】
工程(b)における式(III)の化合物と、式(IV)の反応により、次式(V):
【化23】

(式中、Rはメチル、エチルまたはプロピルを表し、R1 は水素原子、水酸基あるいは保護された水酸基を表し、R2はそれぞれ同じであっても異なってもよくスルホニル基、アシル基、アルキル基、シリル基を表し, R3はそれぞれ同じであっても異なってもよくスルホニル基、アシル基、シリル基を表す)
のいずれかで表される化合物が得られる。
【0024】
このような一般式(V)で表される化合物としては、例えば、下記のような化合物が挙げられる。
【化24】

【0025】
次に、本発明の製造方法の工程(C)においては、一般式(V)で表される化合物から、ノシル (Ns) 基等の脱保護によりアルキル化カテキンに導く反応である。反応は非プロトン性溶媒中で行う。非プロトン性溶媒としては、アセトニトリル、塩化メチレン、トルエン、THF、DMSO 等が挙げられる。非プロトン性溶媒中の一般式(V)で表される化合物の濃度は好ましくは0.01−0.1Mである。
【0026】
この反応は通常の脱保護条件下で、例えばチオール類の存在下で行う。チオール類としては、チオフェノールやチオグリコール酸が挙げられる。これらは反応物(一般式(V)で表される化合物)の各水酸基に対して1当量以上用いることが好ましい。反応温度は通常0−100℃、好ましくは20−60℃である。
【0027】
本発明の製造方法は、上記の工程(a)−(c)を主反応として含むことを特徴とするが、これら反応の前後や最終生成物(アルキル化カテキン)を生成するまでの間に、公知の反応や精製工程を適宜加えてもよい。そのような反応として、(A)カルボキシル基の保護、(B)カルボキシル基の脱保護反応等が挙げられる。これらの反応は本発明の特徴的な部分ではなく、一般的な方法に従って行えばよく、以下その一般的方法を挙げるが、これらに限定されない。
(A)カルボキシル基の保護は、塩基性条件(トリアルキルアミンやK2CO3等の無機塩の存在下)の非プロトン性溶媒中や、DCC、WSCI・HCl等の縮合剤存在下で行うのが一般的である。
(B)カルボキシル基の脱保護反応は、保護基にもよるが、保護基がシリル基やアルキル基等の場合には酸性条件下、ベンジル基やアリル基等ではPd触媒存在下(例えば、Pd触媒を加えた水素ガス存在下で行う又はスルフィン酸イオン存在下で行うのが一般的である。
【0028】
本発明の別の観点においては、本発明の方法にしたがってアルキル化カテキンを合成するために有用な中間体が提供される。
【0029】
次式:
【化25】

(RおよびR3は上で定義したとおりである)
で表される分子は、没食子酸をアリルアルコールおよびカルボジイミドと反応させて没食子酸アリルエステルとし、これをLi2CO3 (炭酸リチウム) 等の弱い塩基存在下、プロトン性または非プロトン性溶媒中で、ヨウ化メチルや (MeO)2SO2 (ジメチル硫酸)などのアルキル化剤を反応させ、カルボニル基のパラ位の一カ所のみを選択的にアルキル化した後に、エステルの加水分解およびフェノール性水酸基の保護を行うことにより合成することができる。
【0030】
次式:
【化26】

(RおよびR3は上で定義したとおりである)
で表される分子は、没食子酸アリルエステルをプロトン性または非プロトン性の溶媒、例えば水中で、NaOH などの塩基存在下、Na2B4O7・10H2Oやフェニルホウ酸を用いて、互いにオルト位にある2つのフェノール性水酸基を一時的にホウ酸エステルとして保護し、次に、残りの1つのフェノール性水酸基のみを (MeO)2SO2 (ジメチル硫酸)などのアルキル化剤を用いて、選択的にアルキル化した後に、エステルの加水分解およびフェノール性水酸基の保護を行うことにより合成することができる。
【実施例】
【0031】
以下に実施例を挙げ、本発明をさらに詳しく説明する。ただし、本発明はこれに限定されるものではない。
【0032】
実施例1 ((2S, 3S)-5, 7, 3', 4', 5'-ペンタ (2-ニトロベンゼンスルホキシ)フラバン-3-オール (2) の合成
【化27】

-20 °C で 1 (100 mg, 0.327 mmol) に CH3CN 5 mL、Et3N (453 μl, 3.27 mmol)、2-ニトロベンゼン スルホニルクロリド(362 mg, 1.63 mmol) を加え、-20 °Cで 1 時間攪拌した。飽和 NH4Cl 水溶液を加えた後、EtOAc で三回抽出し、有機層を Na2SO4 で乾燥、減圧下濃縮した。その後、カラムクロマトグラフィー (CH2Cl2) により精製し、無色固体の 2 (377 mg, 94%) を得た。
1H NMR (500 MHz, CDCl3) δ 7.72-8.09 (m, 20H), 7.18 (s, 2H), 6.60 (d, 1H, J = 2.6 Hz), 6.58 (d, 1H, J = 2.6 Hz), 5.03 (s, 1H), 4.26-4.33 (m, 1H), 3.10 (dd, 1H, J = 2.3, 17.5 Hz), 2.99 (dd, 1H, J = 3.3, 17.1 Hz).
【0033】
実施例2 3,4,5-トリヒドロキシ安息香酸アリルエステル (4) の合成
【化28】

55 °C で 3 (50.0 g, 266 mmol) に アリルアルコール 200 mL、WSCI・HCl (61.2 g) を加え、60 °C で 4 時間攪拌した。2M HCl を加えた後、EtOAc で三回抽出し、有機層を Na2SO4 で乾燥、減圧下濃縮した。その後、再結晶 (EtOAc) により精製し、無色結晶の 4 (47.8 g, 87%) を得た。
1H NMR (270 MHz, acetone-d6) δ 7.13 (s, 2H), 5.97-6.11 (m, 1H), 5.37 (dq, 1H, J = 1.8, 17.1 Hz), 5.22 (dq, 1H, J = 1.5, 10.6 Hz), 4.71 (dt, 2H, J = 1.8, 5.5 Hz).
【0034】
実施例3 3,5-ジヒドロキシ-4-メトキシ安息香酸アリルエステル (5) の合成
【化29】

50 °C で 4 (1.50 g, 7.15 mmol) にDMF 20 mL、Li2CO3 (1.32 g, 17.9 mmol)、ヨウ化メチル(1.11 ml, 17.9 mmol) を加え、50 °C で 20 時間攪拌した。2M HCl を加えた後、Na2SO4 で乾燥、減圧下濃縮した。その後、カラムクロマトグラフィー (CH2Cl2 : MeOH = 99 : 1 から 97 : 3) により精製し、黄色油状の 5 (1.83 g, 68%) を得た。
1H NMR (500 MHz, CDCl3) δ 7.26 (s, 2H), 5.97-6.05 (m, 1H), 5.40 (dq, 1H, J = 1.4, 17.2 Hz), 5.22 (dq, 1H, J = 1.2, 10.4 Hz), 4.79 (dt, 1H, J = 1.8, 5.5 Hz), 3.97 (s, 3H).
【0035】
実施例4 3,5-ビス(2-ニトロベンゼンスルホキシ)-4-メトキシ安息香酸アリルエステル (6)の合成
【化30】

0 °C で 5 (400 mg, 1.79 mmol) にCH3CN 4 mL、Et3N (1.12 ml, 8.04 mmol)、2-ニトロベンゼンスルホニルクロリド(872 mg, 3.93 mmol) を加え、0 °C で 1.5 時間攪拌した。2M HCl を加えた後 Na2SO4 で乾燥、減圧下濃縮した。その後、カラムクロマトグラフィー (CH2Cl2) により精製し、緑色固体の 6 を得た。
1H NMR (270 MHz, acetone-d6) δ 7.92-8.19 (m, 8H), 7.78 (s, 2H), 5.95-6.09 (m, 1H), 5.36 (dq, 1H, J = 1.5, 17.3 Hz), 5.27 (dq, 1H, J = 1.3, 10.6 Hz), 4.78 (dt, 1H, J = 1.6, 5.5 Hz), 3.72 (s, 3H).
【0036】
実施例5 3,5-ビス(2-ニトロベンゼンスルホキシ)-4-メトキシ安息香酸 (7) の合成
【化31】

6 (954 mg, 1.60 mmol) に THF 32 mL、テトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム (92.0 mg, 0.0800 mmol) を加えた。その後、p-トルエンスルフィン酸ナトリウム (343 mg, 1.92 mmol)、H2O 16 mL を加え、1 時間攪拌した。CH2Cl2 と 飽和 NaHCO3 を加えた後、H2O で三回抽出し、2M HCl を加えた後、CH2Cl2 で三回抽出し、有機層を Na2SO4 で乾燥、減圧下濃縮し、黄色結晶の 7 (743 mg, 82% for 2 steps) を得た。
1H NMR (500 MHz, CDCl3) δ 7.94-8.18 (m, 8H), 7.78 (s, 2H), 3.72 (s, 3H).
【0037】
実施例6 4,5-ジヒドロキシ-3-メトキシ安息香酸アリルエステル (8) の合成
【化32】

4 (300 mg, 1.43 mmol) に H2O 20 mL、Na2B4O7・10H2O (1.40 g, 3.67 mmol) を加え、1 時間攪拌した。その後、(MeO)2SO2 (523 μl, 5.53 mmol)、6.5M NaOH (872 μL) を滴下し 12 時間撹拌した。その後、濃硫酸を用いて pH 2.0 とし室温にて 1 時間撹拌する。反応液に水を加え CHCl3 で三回抽出し、有機層を Na2SO4 で乾燥後、減圧下濃縮し、白色結晶の 8 (320 mg, 85%) を得た。
1H NMR (270 MHz, acetone-d6) δ 7.23 (d, 1H, J = 1.3 Hz), 7.16 (d, 1H, J = 2.0 Hz), 5.98-6.10 (m, 1H), 5.36 (dq, 1H, J = 1.5, 17.1 Hz), 5.21 (dq, 1H, J = 1.4, 10.4 Hz), 4.73 (dt, 1H, J = 1.6, 5.5 Hz), 3.87 (s, 3H).
【0038】
実施例7 4,5-ビス(2-ニトロベンゼンスルホキシ)-3-メトキシ安息香酸アリルエステル (9)の合成
【化33】

0 °C で、8 (3.50 g, 15.6 mmol) に CH3CN 35 mL、Et3N (9.8 ml, 70.3 mmol)、2-ニトロベンゼンスルホニルクロリド (7.62 mg, 34.3 mmol) を加え、0 °C で 1.5 時間攪拌した。2M HCl を加えた後、CH2Cl2 で三回抽出し、有機層を Na2SO4 で乾燥し、無色固体の 9 を得た。
1H NMR (270 MHz, acetone-d6) δ 7.95-8.14 (m, 8H), 7.69 (d, 1H, J = 2.0 Hz), 7.49 (d, 1H, J = 1.3 Hz), 5.97-6.12 (m, 1H), 5.39 (dq, 1H, J = 1.6, 17.3 Hz), 5.28 (dq, 1H, J = 1.3, 10.6 Hz), 4.82 (dt, 1H, J = 1.6, 5.5 Hz), 3.74 (s, 3H).
【0039】
実施例8 4,5-ビス(2-ニトロベンゼンスルホキシ)-3-メトキシ安息香酸 (10) の合成
【化34】

9 (4.00 g, 6.71 mmol) にTHF 33 mL、テトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム (375 mg, 0.335 mmol) を加えた。その後 p-トルエンスルフィン酸ナトリウム (1.5 g, 8.05 mmol)、H2O 16mL を加え、1 時間攪拌した。CH2Cl2 と 飽和 NaHCO3 を加えた後、H2O で三回抽出し、2M HCl を加えた後、CH2Cl2 で三回抽出し、有機層を Na2SO4 で乾燥、減圧下濃縮し、黄色結晶の 10 (3.53 g, 95% for 2 steps) を得た。
1H NMR (270 MHz, アセトン) δ 7.90-8.13 (m, 8H), 7.68 (d, 1H, J = 2.0 Hz), 7.52 (d, 1H, J = 2.0 Hz), 3.72 (s, 3H).
【0040】
実施例9 5,7,3',4',5',3",4"-ヘプタノシル-5"-メチルエピガロカテキンガレート (11) の合成
【化35】

2 (700 mg, 0.568 mmol) に CH3CN 3 mL、10 (628 mg, 1.14 mmol)、WSCI・HCl (327 mg, 1.70 mmol)、DMAP (13.9 mg, 0.114 mmol) を加え、室温で 16 時間攪拌した。飽和 NH4Cl 水溶液を加えた後、CH2Cl2 で三回抽出し、飽和 NaHCO3 水溶液を加えた後、CH2Cl2 で三回抽出し、有機層を Na2SO4 で乾燥、減圧下濃縮した。その後、カラムクロマトグラフィー (CH2Cl2 : n-ヘキサン = 3 : 1) により精製し、無色固体の 11 (925 mg, 92%) を得た。
1H NMR (270 MHz, acetone-d6) δ 7.80-8.14 (m, 28H), 7.54 (s, 2H), 7.34 (d, 1H, J = 2.0 Hz), 7.23 (d, 1H, J = 2.0 Hz), 6.97 (d, 1H, J = 2.6 Hz), 6.66 (d, 1H, J = 2.0 Hz), 5.73-5.78 (m, 1H), 5.65 (s, 1H), 3.59 (s, 3H), 3.30 (dd, 1H, J = 4.3, 17.5 Hz), 3.23 (dd, 1H, J = 3.3, 17.1 Hz).
【0041】
実施例10 3"-メチルエピガロカテキンガレート (3''-Me-EGCG) (12) の合成
【化36】

0 °C で Cs2CO3 (3.61 g, 11.3 mmol) に CH3CN 6 mL、PhSH (1.16 ml, 11.3 mmol)を加えた。その後 11 (800 mg, 0.452 mmol)を加え、室温で 3.5 時間攪拌した。飽和 NH4Cl 水溶液を加えた後、EtOAc で三回抽出し、有機層を Na2SO4 で乾燥、減圧下濃縮した。その後、カラムクロマトグラフィー (CH2Cl2 : MeOH = 100 : 0 から 93 : 7) により精製し、無色固体の 12 (174 mg, 81%) を得た。
1H NMR (270 MHz, CD3OD) : δ 7.05 (d, 1H, J = 2.0 Hz), 7.01 (d, 1H, J = 2.0 Hz), 6.50 (s, 2H), 6.00-5.90 (m, 2H), 5.49 (brs, 1H), 4.99 (brs, 1H), 3.81 (s, 3H), 2.99 (dd, 1H, J = 17.5, 4.3 Hz), 2.86 (dd, 1H, J = 17.5, 3.0 Hz).
【0042】
実施例11
実施例9において10の代わりに7(実施例5で合成)を用い、実施例10と同様に脱保護して、4''-Me-EGCG(13)を得た。
【化37】

1H NMR (270 MHz, CD3OD) : δ 6.91 (s, 2H), 6.49 (s, 2H), 5.95 (s, 2H), 5.53 (brs, 1H), 4.97 (brs, 1H), 3.81 (s, 3H), 2.99 (dd, 1H, J = 17.1, 4.6 Hz), 2.86 (dd, 1H, J = 17.1, 2.6 Hz).
【0043】
実施例12
実施例1、9および10と同様にして、ガロカテキンから3''-Me-GCG(14)および4''-Me-GCG(15)を得た。
【化38】

1H NMR (270 MHz, CD3OD) : δ 7.06 (d, 1H, J = 2.0 Hz), 6.99 (d, 1H, J = 2.0 Hz), 6.42 (s, 2H), 6.00-5.90 (m, 2H), 5.30 (dd, 1H, J = 6.3, 5.9 Hz), 4.98 (d, 1H, J = 5.9 Hz), 3.81 (s, 3H), 2.89 (dd, 1H, J = 16.2, 4.9 Hz), 2.69 (dd, 1H, J = 16.2, 6.3 Hz).
【化39】

1H NMR (270 MHz, CD3OD) : δ 6.94 (s, 2H), 6.39 (s, 2H), 5.94 (s, 2H), 5.37 (dd, 1H, J = 5.6, 5.3 Hz), 5.03 (d, 1H, J = 5.3 Hz), 3.83 (s, 3H), 2.76-2.73 (m, 2H).
【0044】
実施例13
実施例1、9および10と同様にして、エピカテキンから3''-Me-ECG(16)および4''-Me-ECG(17)を得た。
【化40】

1H NMR (270 MHz, CD3OD) : δ 7.06 (d, 1H, J = 2.0 Hz), 7.01 (d, 1H, J = 2.0 Hz), 6.95 (d, 1H, J = 2.0 Hz), 6.80 (d, 1H, J = 7.9, 2.0 Hz), 6.69 (d, 1H, J = 8.6 Hz), 6.00-5.90 (m, 2H), 5.50 (brs, 1H), 5.05 (brs, 1H), 3.81 (s, 3H), 3.00 (dd, 1H, J = 17.5, 4.3 Hz), 2.87 (dd, 1H, J = 17.5, 2.3 Hz).
【化41】

1H NMR (270 MHz, CD3OD) : δ 6.92 (d, 1H, J = 2.0 Hz), 6.91 (s, 3H), 6.79 (dd, 1H, J = 7.9, 2.0 Hz), 6.69 (d, 1H, J = 7.9 Hz), 5.96 (s, 2H), 5.50-5.40 (m, 1H), 5.03 (brs, 1H), 3.82 (s, 3H), 2.91 (dd, 1H, J = 17.5, 4.3 Hz), 2.75 (dd, 1H, J = 17.5, 3.0 Hz).
【0045】
実施例14
実施例1において、エピガロカテキン(1)の代わりにカテキンを用いて、18を合成した。
【化42】

1H NMR (500 MHz, CDCl3) δ 8.01 - 8.07 (m, 4H), 7.71 - 7.91 (m, 12H), 7.23 - 7.33 (m, 3H), 6.74 (d, J = 2.5 Hz, 1H), 6.57 (d, J = 2.5 Hz, 1H), 4.83 (d, J = 7.3 Hz, 1H), 3.98 (m, 1H), 2.98 (dd, J = 5.0, 17.0 Hz, 1H), 2.80 (dd, J = 8.0 ,17.0 Hz, 1H).
次に、実施例9と同様にして、ただし10の代わりに7を用いて、19を合成した。
【化43】

1H NMR (270 MHz, アセトン) δ 7.74 - 8.05 (m, 24H), 7.62 (s, 2H), 7.31 (s, 1H), 7.29 (d, J = 1.9 Hz, 1H), 7.06 (d, J = 1.9 Hz, 1H), 6.73 (d, J = 2.5 Hz, 1H), 6.62 (d, J = 2.5 Hz, 1H), 3.78 (s, 3H), 3.10 (dd, J = 5.0, 17.0 Hz, 1H), 2.77 (dd, J = 5.4, 17.0 Hz, 1H) .
次に、実施例10と同様にして脱保護して、4''-Me-CG(20)を合成した。
【化44】

1H NMR (270 MHz, CD3OD) : δ 6.92 (s, 2H), 6.83 (s, 1H), 6.71 (d, 2H, J = 1.4 Hz), 5.96 (d, 1H, 5.0 Hz), 5.92 (d, 1H, 5.0 Hz), 5.40-5.35 (m, 1H), 5.04 (d, 1H, J = 5.9 Hz), 3.83 (s, 3H), 2.85 (dd, 1H, J = 16.5, 5.1 Hz), 2.75 (dd, 1H, J = 16.5, 5.1 Hz).
【0046】
実施例15
実施例14と同様にして、カテキンおよび10から3''-Me-CG(21)を得た。
【化45】

1H NMR (270 MHz, CD3OD) : δ 7.05 (d, 1H, J = 2.0 Hz), 6.99 (d, 1H, J = 2.0 Hz), 6.85 (s, 1H), 6.73 (s, 2H), 5.95 (d, 1H, J = 2.0 Hz), 5.92 (d, 1H, J = 2.0 Hz), 5.35-5.25 (m, 1H), 5.02 (d, 1H, J = 6.6 Hz), 3.81 (s, 3H), 2.92 (dd, 1H, J = 16.5, 5.3 Hz), 2.70 (dd, 1H, J = 16.5, 6.6 Hz).
【0047】
実施例16
実施例3、4および5と同様にして、ただしヨウ化メチルの代わりにヨウ化エチルを用いて、22を得た。
【化46】

1H NMR (500 MHz, CDCl3) δ 8.13 - 8.15 (m, 2H), 7.94 - 8.05 (m, 6H), 7.80 (s, 2H), 4.06 (q, J = 7.0 Hz, 2H), 0.99 (t, J = 6.8 Hz, 3H).
次に、実施例9および10と同様にして、18および22から4"-Et-CG(23)を合成した。
【化47】

1H NMR (270 MHz, CD3OD) δ 6.93 (s, 2H), 6.83 (s, 1H), 6.71 (d, J = 1.4 Hz, 2H), 5.93 (dd, J = 5.0, 17.0 Hz, 2H), 5.36 (dd, J = 5.4 Hz, 5.9 Hz, 1H), 5.04 (d, J = 5.9 Hz, 1H), 4.10 (q, J = 7.0 Hz, 2H), 2.85 (dd, J = 5.1, 16.5 Hz, 1H), 2.70 (dd, J = 5.0, 16.5 Hz, 1H), 1.29 (t, J = 7.0 Hz, 3H).
【0048】
実施例17
実施例3、4および5と同様にして、ただしヨウ化メチルの代わりにヨウ化プロピルを用いて、24を得た。
【化48】

1H NMR (270 MHz, アセトン) δ 7.93 - 8.15 (m, 8H), 7.73 (s, 2H), 3.95 (t, J = 6.5 Hz, 2H), 1.38 (sextet, J = 7.3 Hz, 2H), 0.99 (t, J = 7.3 Hz, 3H).
次に、実施例9および10と同様にして、18および24から4"-Pr-CG(25)を合成した。
【化49】

1H NMR (270 MHz, アセトン) δ 8.24 (s, 1H), 8.13 (s, 1H), 8.06 (s, 1H), 7.91 (s, 1H), 7.79 (s, 1H), 6.97 (s, 2H), 6.88 (s, 1H), 6.75 (s, 2H) 6.02(d, J = 1.9 Hz, 1H), 5.94 (d, J = 2.7 Hz, 2H), 5.36 (d, J = 5.4 Hz, 1H), 5.11 (d, J = 5.4 Hz, 1H), 4.01 (t, J = 6.5 Hz, 2H), 2.86 (dd, J = 5.1, 16.5 Hz, 1H), 2.74 (dd, J = 5.1, 16.5 Hz, 1H), 1.70 (sixtet, J = 6.8 Hz, 2H), 0.91 (t, J = 7.3 Hz, 3H).

【特許請求の範囲】
【請求項1】
次式(VI):
【化1】

(式中、Rはメチル、エチルまたはプロピルを表す)
のいずれかで表されるアルキル化カテキンまたはその塩を製造する方法であって、
(a)非プロトン性溶媒中で、次式(I):
【化2】

(式中、R1 は水素原子あるいは水酸基を表す)
のいずれかで表される化合物と、次式(II)
【化3】

(式中、R2 はスルホニル基、アシル基、アルキル基、シリル基を表し、LはCl、Brまたはトリフラートを表す)
で表される化合物とを塩基存在下で反応させて、次式(III)
【化4】

(式中、R1 は水素原子、水酸基あるいは保護された水酸基を表し、R2 はそれぞれ同じであっても異なってもよくスルホニル基、アシル基、アルキル基、シリル基を表す)
のいずれかで表される化合物を形成し;
(b)非プロトン性溶媒中で、式(III)の化合物と、次式(IV):
【化5】

(式中、Rはメチル、エチルまたはプロピルを表し、R3 はそれぞれ同じであっても異なってもよくスルホニル基、アシル基、シリル基を表す)
のいずれかで表される化合物とを、縮合剤存在下で反応させて、次式(V):
【化6】

(式中、Rはメチル、エチルまたはプロピルを表し、R1 は水素原子、水酸基あるいは保護された水酸基を表し、R2はそれぞれ同じであっても異なってもよくスルホニル基、アシル基、アルキル基、シリル基を表し, R3はそれぞれ同じであっても異なってもよくスルホニル基、アシル基、シリル基を表す)
のいずれかで表される化合物を形成し;そして
(c)式(V)の化合物を、プロトン性あるいは非プロトン性溶媒中で、酸性あるいは塩基性条件で反応させて式(VI)の化合物を得る、
の各工程を含む方法。
【請求項2】
次式(IV):
【化7】

(式中、Rはメチル、エチルまたはプロピルを表し、R3 はそれぞれ同じであっても異なってもよくスルホニル基、アシル基、シリル基を表す)
のいずれかで表される化合物。

【公開番号】特開2009−227621(P2009−227621A)
【公開日】平成21年10月8日(2009.10.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−76383(P2008−76383)
【出願日】平成20年3月24日(2008.3.24)
【出願人】(507219686)静岡県公立大学法人 (63)
【Fターム(参考)】