説明

メッキ厚算出プログラム、メッキ厚算出装置およびメッキ厚算出方法

【課題】最適なメッキ厚を短時間で算出することを課題とする。
【解決手段】メッキ処理、研磨処理、過研磨処理の順に実行される半導体集積回路の製造処理の中で、過研磨処理により削り取られる導電体の削取導電体厚を過研磨処理時の研磨時間および研磨速度を用いて算出し、研磨処理後の基板上の配線溝以外の箇所に残存することが予想される残存導電体厚が、削取導電体厚以下となるまで、メッキ処理によって基板上にメッキされる導電体のメッキ厚を変更して、残存導電体厚を得るためにメッキ処理から前記研磨処理に至るシミュレーションを繰り返し実行する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、半導体集積回路の製造工程をシミュレーションしてウェハに堆積させる最適な導電体厚を算出するメッキ厚算出プログラム、メッキ厚算出装置およびメッキ厚算出方法に関する。
【背景技術】
【0002】
一般的な半導体集積回路の製造処理では、図7に示すように、まず、バリアメタルで覆われたウェハに対して配線パターンを照射する露光処理を行い、照射された配線パターンに基づいて配線溝を作成するエッジング処理を行う。次に、ウェハ上全体に銅を堆積させて銅メッキ膜を生成するメッキ処理を行った後に、所定の箇所にバリアメタルが現れるまで銅メッキ膜を削り取る研磨処理を行う。そして、配線溝以外の箇所に堆積している余分な銅メッキ膜を削り取る過研磨処理を行う。
【0003】
ところで、図8に示すように、配線溝以外の箇所に銅メッキ膜が残存している状態(いわゆる、銅残り)が過研磨処理後に発生していると製品に配線ショートが発生し、歩留まりが悪くなることがある。そのため、ユーザによって設定された製造条件で製造が行われた際に銅残りが発生するか否かが製造前に評価される。ここで、仮に、銅残りが発生する場合には、例えば、銅メッキ膜厚を厚くする製造条件の修正を行い、メッキ処理後の銅メッキ膜の高低差を少なくすることで、結果的に銅残りが発生しないようにしている。
【0004】
なお、特許文献1、2および非特許文献1〜3には、半導体集積回路の製造処理をシミュレーションして研磨結果を予測するための技術が開示されている。
【0005】
【特許文献1】特開2004−40004号公報
【特許文献2】特開2003−224098号公報
【非特許文献1】Jianfeng Luo、他3名、「A Layout Dependent Full-Chip Copper Electroplating Topography」、International Conference on Computer-Aided Design、2005年
【非特許文献2】T.Tugbawa、「Chip-Scale Modeling of Pattern Dependencies in Copper Chemical Mechanical Polishing Process」、PhD thesis、Massachusetts Institute of Technology、2002年
【非特許文献3】D.Fukuda、他3名、「Full-Chip CMP Simulation System」、International Conference on Planarization/CMP Technology、2007年
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、特許文献1、2および非特許文献1〜3に開示された従来技術には、最適な銅メッキ膜厚を算出するために長時間を要するという課題があった。すなわち、特許文献1、2および非特許文献1〜3に開示された従来技術では、銅メッキ膜厚を修正するたびに、メッキ工程から過研磨工程が完了するまでの製造処理のシミュレーションを繰り返し実行する必要があるので、銅残りが発生しない銅メッキ膜厚を算出するために長時間を要するという課題があった。
【0007】
そこで、メッキ厚算出プログラム、メッキ厚算出装置およびメッキ厚算出方法は、上述した従来技術の課題を解決するためになされたものであり、最適なメッキ厚を短時間で算出することが可能なメッキ厚算出プログラム、メッキ厚算出装置およびメッキ厚算出方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上述した課題を解決し、目的を達成するため、開示のメッキ厚算出プログラムは、メッキ処理、研磨処理、過研磨処理の順に実行される半導体集積回路の製造処理の中で、前記過研磨処理により削り取られる導電体の削取導電体厚を当該過研磨処理時の研磨時間および研磨速度を用いて算出する削取導電体厚算出手順と、前記研磨処理後の基板上の配線溝以外の箇所に残存することが予想される残存導電体厚が、前記削取導電体厚算出手順により算出された削取導電体厚以下となるまで、前記メッキ処理によって基板上にメッキされる導電体のメッキ厚を変更して、前記残存導電体厚を得るために前記メッキ処理から前記研磨処理に至るシミュレーションを繰り返し実行するシミュレーション実行手順とをコンピュータに実行させることを要する。
【0009】
また、開示のメッキ厚算出装置は、メッキ処理、研磨処理、過研磨処理の順に実行される半導体集積回路の製造処理の中で、前記過研磨処理により削り取られる導電体の削取導電体厚を当該過研磨処理時の研磨時間および研磨速度を用いて算出する削取導電体厚算出部と、前記研磨処理後の基板上の配線溝以外の箇所に残存することが予想される残存導電体厚が、前記削取導電体厚算出部により算出された削取導電体厚以下となるまで、前記メッキ処理によって基板上にメッキされる導電体のメッキ厚を変更して、前記残存導電体厚を得るために前記メッキ処理から前記研磨処理に至るシミュレーションを繰り返し実行するシミュレーション実行部とを有することを要する。
【0010】
また、開示のメッキ厚算出方法は、メッキ処理、研磨処理、過研磨処理の順に実行される半導体集積回路の製造処理の中で、前記過研磨処理により削り取られる導電体の削取導電体厚を当該過研磨処理時の研磨時間および研磨速度を用いて算出する削取導電体厚算出ステップと、前記研磨処理後の基板上の配線溝以外の箇所に残存することが予想される残存導電体厚が、前記削取導電体厚算出ステップにより算出された削取導電体厚以下となるまで、前記メッキ処理によって基板上にメッキされる導電体のメッキ厚を変更して、前記残存導電体厚を得るために前記メッキ処理から前記研磨処理に至るシミュレーションを繰り返し実行するシミュレーション実行ステップとを含むことを要する。
【発明の効果】
【0011】
開示のメッキ厚算出プログラム、メッキ厚算出装置およびメッキ厚算出方法によれば、最適なメッキ厚を短時間で算出することが可能である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下に添付図面を参照して、この発明に係るメッキ厚算出プログラム、メッキ厚算出装置およびメッキ厚算出方法の実施例を詳細に説明する。なお、以下では、この発明が適用された銅メッキ膜厚算出装置を実施例として説明する。
【実施例1】
【0013】
以下の実施例1では、実施例1に係る銅メッキ膜厚算出装置の概要、銅メッキ膜厚算出装置の構成、銅メッキ膜厚算出装置による処理の流れを順に説明し、最後に実施例1の効果を説明する。
【0014】
[実施例1に係る銅メッキ膜厚算出装置の概要]
まず、図1を用いて実施例1に係る銅メッキ膜厚算出装置を説明する。図1は、実施例1に係る銅メッキ膜厚算出装置の概要を説明するための図である。
【0015】
実施例1に係る銅メッキ膜厚算出装置は、過研磨処理により削り取られる削取メッキ膜厚を過研磨処理時の研磨時間および研磨速度を用いて算出する。そして、実施例1に係る銅メッキ膜厚算出装置は、研磨処理後の基板上の配線溝以外の箇所に残存することが予想される残存メッキ膜厚(図1の(A)参照)が、削取メッキ膜厚(図1の(B)参照)以下となるまで、メッキ処理によって基板上にメッキされる銅メッキ厚を変更して、残存銅メッキ膜厚を得るためにメッキ処理から研磨処理に至るシミュレーションを繰り返し実行する。
【0016】
このようなことから、実施例1に係る銅メッキ膜厚算出装置は、最適な銅メッキ膜厚を短時間で算出することが可能である。言い換えると、実施例1に係る銅メッキ膜厚算出装置は、過研磨処理のシミュレーションを行わずに銅残りが発生するか否かを判定するので、最適な銅メッキ膜厚を短時間で算出することが可能である。
【0017】
[銅メッキ膜厚算出装置の構成]
次に、図2を用いて、図1で説明した銅メッキ膜厚算出装置の構成を説明する。図2は、銅メッキ膜厚算出装置の構成を示すブロック図である。図2に示すように、銅メッキ膜厚算出装置10は、入力部11と、出力部12と、記憶部20と、処理部30とを有する。
【0018】
このうち、入力部11は、各種の情報の入力を受付ける。具体的には、入力部11は、キーボードなどを備えて構成され、例えば、配線パターンを含んだチップデータや、銅メッキ膜厚の初期膜厚、膜厚範囲、研磨時間、研磨速度などのユーザによって設定された製造条件を受け付けて記憶部20に格納する。また、出力部12は、各種の情報を出力する。具体的には、出力部12は、モニタなどを備えて構成され、例えば、銅メッキ膜厚などを表示出力する。
【0019】
記憶部20は、処理部30による各種処理に必要なデータおよびプログラムを格納する。特に、記憶部20は、製造条件記憶部21を有する。製造条件記憶部21は、半導体集積回路の製造に予定されている製造条件を記憶する。具体的には、製造条件記憶部21は、配線パターン、銅メッキ膜厚、研磨時間、研磨速度などの製造条件を記憶する。
【0020】
処理部30は、制御プログラム、各種の処理手順などを規定したプログラムおよび所要データを格納するための内部メモリを有し、これらによって種々の処理を実行する。特に、残存膜厚算出部31と、削取膜厚算出部32と、銅メッキ膜厚算出部33とを有する。なお、残存膜厚算出部31および銅メッキ膜厚算出部33は、ミュレーション実行部ともいう。また、削取膜厚算出部32は、削取導電体厚算出部ともいう。
【0021】
残存膜厚算出部31は、メッキ処理から研磨処理に至るシミュレーションを実行して、残存導電体厚を算出する。具体的には、残存膜厚算出部31は、製造条件記憶部21に記憶されている配線パターンをメッシュ分割し、メッシュの面積に対する配線溝の面積の割合を示した銅密度や、配線溝の外周長の総計を示した周囲配線長を算出して、研磨結果予測用の入力データを作成する。
【0022】
続いて、残存膜厚算出部31は、製造条件記憶部21に記憶されている銅メッキ膜厚をメッキ処理によって堆積させる銅メッキ膜厚の目標値に設定し、メッキ処理のシミュレーションを実行して、堆積銅メッキ膜厚をメッシュごとに算出する。そして、残存膜厚算出部31は、堆積銅メッキ膜厚、メッシュの配置レイアウト、研磨処理の研磨速度などを用いて研磨処理のシミュレーションを実行して、残存銅メッキ膜厚をメッシュごとに算出する。
【0023】
削取膜厚算出部32は、過研磨処理時の研磨時間および研磨速度を用いて削取銅メッキ膜厚を算出する。具体的には、残存膜厚算出部31は、入力部11を介して入力された過研磨処理の研磨時間および研磨速度を積算して、削取銅メッキ膜厚を算出する。なお、削取膜厚算出部32は、実際の研磨処理を行うときに起こり得る研磨速度のばらつきを加味して削取銅メッキ膜厚を算出するようにしてもよい。また、実際の過研磨処理を行った後に銅残りが発生しないようするために、過研磨処理で削り取られる銅メッキ膜厚を少なく見積もるためのマージンを設定するようにしてもよい。
【0024】
銅メッキ膜厚算出部33は、残存銅メッキ膜厚が、削取銅メッキ膜厚以下となるまで、前記メッキ処理によってウェハ上にメッキされる銅メッキ厚を変更して、残存膜厚算出部31にメッキ処理から研磨処理に至るシミュレーションを繰り返し実行させる。
【0025】
具体的には、銅メッキ膜厚算出部33は、残存膜厚算出部31によって算出された残存銅メッキ膜厚の最大値と、削取銅メッキ膜厚とを比較する。ここで、銅メッキ膜厚算出部33は、残存銅メッキ膜厚の最大値が削取銅メッキ膜厚を上回っている場合には現に記憶されている銅メッキ膜厚よりも厚い銅メッキ膜厚に製造条件記憶部21に記憶されている銅メッキ膜厚を更新する。
【0026】
つまり、銅メッキ膜厚算出部33は、ユーザによって設定された初期膜厚ではメッキ処理後の銅メッキ膜の高低差が大きすぎて過研磨処理後に銅残りが発生する可能性があるため、結果的に銅残りが発生しないように銅メッキ膜厚をより厚くさせる。なお、銅メッキ膜厚算出部33は、銅メッキ膜厚の更新を行うと膜厚範囲の上限を上回る場合には、ユーザによって設定された製造条件では最適な銅メッキ膜厚を算出することができないことを示したエラーを出力するようにしてもよい。
【0027】
続いて、銅メッキ膜厚算出部33は、製造条件記憶部21に記憶されている銅メッキ膜厚が更新されるたびに、更新された銅メッキ膜厚をメッキ処理によって堆積させる銅メッキ膜厚の目標値に再設定する。そして、銅メッキ膜厚算出部33は、残存膜厚算出部31にメッキ処理および研磨処理のシミュレーションを実行させて残存銅メッキ膜厚を繰り返し算出させる。その後、銅メッキ膜厚算出部33は、残存銅メッキ膜厚が削取銅メッキ膜厚以下になると、製造条件記憶部21に記憶されている銅メッキ膜厚を最適な銅メッキ膜厚として出力部12を介して出力する。なお、銅メッキ膜厚算出部33は、実際のメッキ処理を行うときに起こり得る銅メッキ膜厚の成膜ばらつきを用いて銅メッキ膜厚を補正して出力ようにしてもよい。
【0028】
[銅メッキ膜厚算出装置による処理]
次に、図3を用いて、銅メッキ膜厚算出装置10による処理を説明する。図3は、銅メッキ膜厚算出装置による処理の流れを示すフローチャート図である。図3に示すように、残存膜厚算出部31は、製造条件の入力を受け付けると(ステップS101肯定)、研磨結果予測用の入力データを作成する(ステップS102)。続いて、残存膜厚算出部31は、ユーザによって設定された銅メッキ膜厚の初期膜厚をメッキ処理によって堆積させる銅メッキ膜厚の目標値に設定し(ステップS103)、メッキ処理のシミュレーションを実行して堆積銅メッキ膜厚を算出する(ステップS104)。
【0029】
続いて、残存膜厚算出部31は、研磨処理のシミュレーションを実行して残存銅メッキ膜厚を算出し(ステップS105)、削取膜厚算出部32は、過研磨処理の研磨時間および研磨速度を用いて削取銅メッキ膜厚を算出する(ステップS106)。続いて、銅メッキ膜厚算出部33は、残存銅メッキ膜厚と、削取銅メッキ膜厚とを比較する(ステップS107)。
【0030】
ここで、残存銅メッキ膜厚が削取銅メッキ膜厚を上回っている場合には(ステップS107肯定)、銅メッキ膜厚算出部33は、製造条件記憶部21に記憶されている銅メッキ膜厚を厚い銅メッキ膜厚に更新する(ステップS108)。そして、銅メッキ膜厚算出部33は、銅メッキ膜厚が更新されるたびに、銅メッキ膜厚の目標値を再設定し(ステップS103)、残存膜厚算出部31に堆積銅メッキ膜厚の算出(ステップS104)、残存銅メッキ膜厚の算出(ステップS105)を繰り返し実行させる。
【0031】
その後、銅メッキ膜厚算出部33は、残存銅メッキ膜厚が削取銅メッキ膜厚以下になると(ステップS107否定)、製造条件記憶部21に記憶されている銅メッキ膜厚を最適な銅メッキ膜厚として出力して(ステップS109)、処理を終了する。
【0032】
[実施例1の効果]
上記したように、実施例1によれば、最適な銅メッキ膜厚を短時間で算出することが可能である。例えば、実施例1に係る銅メッキ膜厚算出装置10は、銅メッキ膜厚が修正されるたびに、メッキ処理および研磨処理だけをシミュレーションすればよいので、最適な銅メッキ膜厚を短時間で算出することが可能である。
【0033】
また、実施例1によれば、製造時に起こり得る研磨速度のばらつきが加味された研磨速度を用いて削取銅メッキ膜厚を算出するので、確実に銅残りが発生しない銅メッキ膜厚を短時間で算出することが可能である。
【実施例2】
【0034】
ところで、銅メッキ膜厚が厚すぎると研磨処理に長時間を要し、製造時のスループットが悪くことがある。そこで、実施例2では、銅残りが発生せず、製造時のスループットが良い銅メッキ膜厚を算出する場合を説明する。なお、以下の実施例2では、実施例2に係る銅メッキ膜厚算出装置の構成、銅メッキ膜厚算出装置による処理の流れ、銅メッキ膜厚算出装置による処理の一例を順に説明し、最後に実施例2の効果を説明する。
【0035】
[銅メッキ膜厚算出装置の構成]
実施例2に係る銅メッキ膜厚算出装置10は、実施例1に係る銅メッキ膜厚算出装置10と以下に説明する点が異なる。すなわち、銅メッキ膜厚算出部33は、残存銅メッキ膜厚の最大値が削取銅メッキ膜厚以下で予め設定される所定の数値範囲に収まるまで、メッキ処理によって基板上にメッキされる導電体のメッキ厚を変更して、残存膜厚算出部31にメッキ処理から研磨処理に至るシミュレーションを繰り返し実行させる。
【0036】
具体的には、銅メッキ膜厚算出部33は、削取膜厚算出部32によって算出された削取銅メッキ膜厚以下で予め設定される所定の数値範囲を残存銅メッキ膜厚の目標範囲に算出する。そして、銅メッキ膜厚算出部33は、残存膜厚算出部31によって算出された残存銅メッキ膜厚の最大値と、目標範囲とを比較する。ここで、銅メッキ膜厚算出部33は、残存銅メッキ膜厚の最大値が目標範囲を上回っている場合には、現に記憶されている銅メッキ膜厚よりも厚い銅メッキ膜厚に製造条件記憶部21に記憶されている銅メッキ膜厚を更新する。
【0037】
一方では、銅メッキ膜厚算出部33は、残存銅メッキ膜厚の最大値が目標範囲を下回っている場合には、現に記憶されている銅メッキ膜厚よりも薄い銅メッキ膜厚に製造条件記憶部21に記憶されている銅メッキ膜厚を更新する。つまり、銅メッキ膜厚算出部33は、ユーザによって設定された銅メッキ膜厚では銅メッキ膜厚が厚すぎて研磨処理に長時間を要し、実際に製造を行ったときのスループットが悪くなる可能性があるため、銅メッキ膜厚をより薄くさせる。なお、銅メッキ膜厚算出部33は、銅メッキ膜厚の更新を行うと膜厚範囲の下限を下回る場合には、ユーザによって設定された製造条件では最適な銅メッキ膜厚を算出することができないことを示したエラーを出力するようにしてもよい。
【0038】
続いて、銅メッキ膜厚算出部33は、製造条件記憶部21に記憶されている銅メッキ膜厚が更新されるたびに、更新された銅メッキ膜厚をメッキ処理によって堆積させる銅メッキ膜厚の目標値に再設定する。そして、銅メッキ膜厚算出部33は、残存膜厚算出部31にメッキ処理および研磨処理のシミュレーションを実行させて残存銅メッキ膜厚を繰り返し算出させる。その後、銅メッキ膜厚算出部33は、残存銅メッキ膜厚が目標範囲に収まると、製造条件記憶部21に記憶されている銅メッキ膜厚を最適な銅メッキ膜厚として出力部12を介して出力する。
【0039】
[銅メッキ膜厚算出装置による処理]
次に、図4を用いて、実施例2に係る銅メッキ膜厚算出装置10による処理を説明する。図4は、実施例2に係る銅メッキ膜厚算出装置による処理の流れを示すフローチャート図である。なお、以下では、実施例1に係る銅メッキ膜厚算出装置10による処理の流れと異なる点について詳細に説明する。
【0040】
図4に示すように、削取膜厚算出部32によって削取銅メッキ膜厚が算出されると(ステップS206)、銅メッキ膜厚算出部33は、残存銅メッキ膜厚の目標範囲を決定する(ステップS207)。続いて、銅メッキ膜厚算出部33は、残存銅メッキ膜厚の最大値と、目標範囲とを比較する(ステップS208およびステップS210)。
【0041】
ここで、残存銅メッキ膜厚の最大値が目標範囲を上回っている場合には(ステップS208肯定)、銅メッキ膜厚算出部33は、銅メッキ膜厚算出部33は、製造条件記憶部21に記憶されている銅メッキ膜厚を厚い銅メッキ膜厚に更新する(ステップS209)。一方では、残存銅メッキ膜厚の最大値が目標範囲を下回っている場合には(ステップS210肯定)銅メッキ膜厚算出部33は、製造条件記憶部21に記憶されている銅メッキ膜厚を薄い銅メッキ膜厚に更新する(ステップS211)。
【0042】
そして、銅メッキ膜厚算出部33は、銅メッキ膜厚が更新されるたびに、銅メッキ膜厚の目標値を再設定し(ステップS203)、残存膜厚算出部31に堆積銅メッキ膜厚の算出(ステップS204)、残存銅メッキ膜厚の算出(ステップS205)を繰り返し実行させる。その後、銅メッキ膜厚算出部33は、残存銅メッキ膜厚が目標範囲に収まると(ステップS210否定)、製造条件記憶部21に記憶されている銅メッキ膜厚を最適な銅メッキ膜厚として出力して(ステップS212)、処理を終了する。
【0043】
[銅メッキ膜厚算出装置による処理の一例]
次に、図5を用いて、銅メッキ膜厚算出装置10による処理の一例を説明する。図5は、銅メッキ膜厚算出装置による処理の一例を説明するための図である。なお、以下の例では、表面がバリアメタルで覆われた「8.5cm x 8.5cm」のウェハ表面に半導体集積回路を生成し、配線パターンを「10μm」ごとにメッシュ分割する場合を想定している。また、銅メッキ膜厚の初期膜厚「1500nm」、膜厚範囲「1000〜1800nm」、過研磨処理の研磨時間「30秒(0.5分)」、過研磨処理の研磨速度「500nm/分」、研磨速度のばらつき「±50nm/分」、マージン「50nm」、成膜ばらつき「50nm」を含む各種製造条件を示したパラメータおよび配線パターンを含んだチップデータがユーザによって入力されているものとする。
【0044】
まず、残存膜厚算出部31は、配線パターンをメッシュ分割し、図5(A)の(1)に示すように、メッシュごとに、メッシュの位置を特定するための位置情報(x、y)、銅密度(dens)、周囲配線長(edge)を求める。なお「lay」は、多重の積層構造を形成する半導体集積回路の製造工程の中で、どの層を製造しているのかを特定するための情報である。
【0045】
続いて、残存膜厚算出部31は、図5(A)の(2)に示すように、メッキ処理のシミュレーションを実行し、堆積銅メッキ膜厚(epc:Electro-Chemical Platingのシミュレーション値)を算出する。なお、ここでいう堆積銅メッキ膜厚は、配線溝の最下部から銅メッキ膜の頂点までの高さを平均した値である。
【0046】
続いて、残存膜厚算出部31は、図5(A)の(3)に示すように、いずれかのメッシュの残存銅メッキ膜厚が「0」になるまで(言い換えると、所定の箇所にバリアメタルが現れたと予測されるまで)研磨処理のシミュレーションを実行し、残存銅メッキ膜厚(cmp:Chemical mechanical Polishingシミュレーション値)を算出する。なお、ここでいう残存銅メッキ膜厚は、バリアメタルから銅メッキ膜の頂点までの高さを平均した値である。
【0047】
続いて、削取膜厚算出部32は、過研磨処理の研磨速度から研磨速度のばらつきを差し引いた値に対して過研磨処理の研磨時間を乗算し、乗算結果からマージンを差し引くことで削取銅メッキ膜厚を算出する。つまり、削取銅メッキ膜厚は、(500−50)*0.5−50=175(nm)となる。
【0048】
続いて、銅メッキ膜厚算出部33は、「175nm」から「150nm」までを残存銅メッキ膜厚の目標範囲に決定する。ここで、銅メッキ膜厚算出部33は、残存銅メッキ膜厚の最大値「228nm」が目標範囲を上回っているので、製造条件記憶部21に記憶されている銅メッキ膜厚を厚い銅メッキ膜厚、例えば、膜厚範囲の最大値「1800nm」に一致するように更新する。
【0049】
続いて、残存膜厚算出部31は、図5(B)に示すように、メッキ処理および研磨処理のシミュレーションを再び実行して、堆積銅メッキ膜厚および残存銅メッキ膜厚を再度算出する。ここで、銅メッキ膜厚算出部33は、残存銅メッキ膜厚の最大値「112nm」が目標範囲を下回っているので、薄い銅メッキ膜厚、例えば、記憶されていた銅メッキ膜厚「1500nm」と次に記憶されていた銅メッキ膜厚「1800」との中間値「1650nm」に一致するように製造条件記憶部21に記憶されている銅メッキ膜厚を更新する。なお、残存膜厚算出部31は、仮に、残存銅メッキ膜厚の最大値が目標範囲を上回っていた場合には、さらに厚い銅メッキ膜厚に更新すると銅メッキ膜厚が膜厚範囲の上限以上になってしまうので、最適な銅メッキ膜厚を算出することができないことを示したエラーを出力する。
【0050】
続いて、残存膜厚算出部31は、図5(C)に示すように、再設定された銅メッキ膜厚を用いて、堆積銅メッキ膜厚および残存銅メッキ膜厚を再度算出する。ここで、銅メッキ膜厚算出部33は、残存銅メッキ膜厚の最大値「158nm」が目標範囲に収まっているので、成膜ばらつき「50nm」を用いて銅メッキ膜厚「1650nm」を「1700nm」に補正して出力する。
【0051】
[実施例2の効果]
上記したように、実施例2によれば、銅残りが発生せず、製造時のスループットが良い銅メッキ膜厚を短時間で算出することが可能である。
【実施例3】
【0052】
さて、これまで実施例1および2について説明したが、本発明は上述した実施例以外にも、種々の異なる形態にて実施されてよいものである。そこで、以下では、実施例3として、他の実施例を説明する。
【0053】
例えば、実施例2では、二分法を用いて算出される銅メッキ膜厚に一致するように製造条件記憶部21に記憶されている銅メッキ膜厚を更新する場合を説明したが、これに限定されるものではなく、所定の数値(例えば、100nm)を増減させるようにしてもよい。
【0054】
また、上記文書中や図面中で示した処理手順、制御手順、具体的名称、各種のデータやパラメータを含む情報(例えば、図5に示したパラメータ)については、特記する場合を除いて任意に変更することができる。
【0055】
また、図示した各装置の各構成要素は機能概念的なものであり、必ずしも物理的に図示の如く構成されていることを要しない。すなわち、各装置の分散・統合の具体的形態は図示のものに限られず、その全部または一部を、各種の負荷や使用状況などに応じて、任意の単位で機能的または物理的に分散・統合して構成することができる。例えば、図2に示した残存膜厚算出部31と、銅メッキ膜厚算出部33とを統合して構成することができる。
【0056】
さらに、各装置にて行なわれる各処理機能は、その全部または任意の一部が、CPUおよび当該CPUにて解析実行されるプログラムにて実現され、あるいは、ワイヤードロジックによるハードウェアとして実現され得る。
【0057】
ところで、本発明はあらかじめ用意されたプログラムを銅メッキ膜厚算出装置10としてのコンピュータで実行することによって実現するようにしてもよい。そこで、以下では、図6を用いて、上記の実施例に示した銅メッキ膜厚算出装置10と同様の機能を有するメッキ厚算出プログラムを実行するコンピュータを一例として説明する。図6は、メッキ厚算出プログラムを実行するコンピュータを示す図である。
【0058】
図6に示すように、銅メッキ膜厚算出装置10としてのコンピュータ110は、入力部120、ROM130、CPU140、HDD150、RAM160および出力部170をバス180などで接続して構成される。
【0059】
ROM130には、上記の実施例1に示した銅メッキ膜厚算出装置10と同様の機能を発揮するメッキ厚算出プログラム、つまり、図6に示すように残存膜厚算出プログラム130aと、削取膜厚算出プログラム130bと、銅メッキ膜厚算出プログラム130cとが、あらかじめ記憶されている。なお、これらのプログラム130a〜プログラム130cについては、図2に示した銅メッキ膜厚算出装置10の各構成要素と同様、適宜統合または、分散してもよい。
【0060】
そして、CPU140がこれらのプログラム130a〜プログラム130cをROM130から読み出して実行することで、図6に示すように、プログラム130a〜プログラム130cは、残存膜厚算出プロセス140aと、削取膜厚算出プロセス140bと、銅メッキ膜厚算出プロセス140cとして機能するようになる。なお、プロセス140a〜プロセス140cは、図2に示した、残存膜厚算出部14aと、削取膜厚算出部14bと、銅メッキ膜厚算出部14cとにそれぞれ対応する。
【0061】
また、HDD150には、図6に示すように、製造条件データテーブル150aが設けられる。そして、CPU140は、製造条件データテーブル150から、製造条件データ160aを読み出してRAM160に格納し、RAM160に格納されたデータ160a〜データ160gに基づいて処理を実行する。なお、製造条件データ160は、図2に示した製造条件記憶部21に対応する。
【0062】
なお、上記した各プログラム130a〜プログラム130cについては、必ずしも最初からROM130に記憶させておく必要はなく、例えば、コンピュータ110に挿入されるフレキシブルディスク(FD)、CD−ROM、DVDディスク、光磁気ディスク、ICカードなどの「可搬用の物理媒体」、またはコンピュータ110の内外に備えられるHDDなどの「固定用の物理媒体」、さらには公衆回線、インターネット、LAN、WANなどを介してコンピュータ110に接続される「他のコンピュータ(またはサーバ)」などに各プログラムを記憶させておき、コンピュータ110がこれから各プログラムを読み出して実行するようにしてもよい。
【0063】
また、上記の実施例1において説明した銅メッキ膜厚算出装置により、以下のようなメッキ厚算出方法が実現される。すなわち、メッキ処理、研磨処理、過研磨処理の順に実行される半導体集積回路の製造処理の中で、前記過研磨処理により削り取られる導電体の削取導電体厚を当該過研磨処理時の研磨時間および研磨速度を用いて算出する削取導電体厚算出ステップと(図3のステップS106参照)、前記研磨処理後の基板上の配線溝以外の箇所に残存することが予想される残存導電体厚が、前記削取導電体厚算出ステップにより算出された削取導電体厚以下となるまで、前記メッキ処理によって基板上にメッキされる導電体のメッキ厚を変更して、前記残存導電体厚を得るために前記メッキ処理から前記研磨処理に至るシミュレーションを繰り返し実行するシミュレーション実行ステップ(図3のステップS103〜S105、S107、S108参照)とを含むメッキ厚算出方法が実現される。
【図面の簡単な説明】
【0064】
【図1】実施例1に係る銅メッキ膜厚算出装置の概要を説明するための図である。
【図2】銅メッキ膜厚算出装置の構成を示すブロック図である。
【図3】銅メッキ膜厚算出装置による処理の流れを示すフローチャート図である。
【図4】実施例2に係る銅メッキ膜厚算出装置による処理の流れを示すフローチャート図である。
【図5】銅メッキ膜厚算出装置による処理の一例を説明するための図である。
【図6】メッキ厚算出プログラムを実行するコンピュータを示す図である。
【図7】背景技術を説明するための図である。
【図8】背景技術を説明するための図である。
【符号の説明】
【0065】
10 パターン抽出装置
11 入力部
12 出力部
20 記憶部
21 製造条件記憶部
30 処理部
31 残存膜厚算出部
32 削取膜厚算出部
33 銅メッキ膜厚算出部
110 コンピュータ
120 入力部
130 ROM(Read Only Memory)
130a 残存膜厚算出プログラム
130b 削取膜厚算出プログラム
130c 銅メッキ膜厚算出プログラム
140 CPU(Central Processing Unit)
140a 残存膜厚算出プロセス
140b 削取膜厚算出プロセス
140c 銅メッキ膜厚算出プロセス
150 HDD(Hard disk drive)
150a 製造条件データテーブル
160 RAM(Random Access Memory)
160a 製造条件データ
170 出力部
180 バス

【特許請求の範囲】
【請求項1】
メッキ処理、研磨処理、過研磨処理の順に実行される半導体集積回路の製造処理の中で、前記過研磨処理により削り取られる導電体の削取導電体厚を当該過研磨処理時の研磨時間および研磨速度を用いて算出する削取導電体厚算出手順と、
前記研磨処理後の基板上の配線溝以外の箇所に残存することが予想される残存導電体厚が、前記削取導電体厚算出手順により算出された削取導電体厚以下となるまで、前記メッキ処理によって基板上にメッキされる導電体のメッキ厚を変更して、前記残存導電体厚を得るために前記メッキ処理から前記研磨処理に至るシミュレーションを繰り返し実行するシミュレーション実行手順と、
をコンピュータに実行させるメッキ厚算出プログラム。
【請求項2】
前記削取導電体厚算出手順は、製造時に起こりえる研磨速度のばらつきが加味された研磨速度を用いて前記削取導電体厚を算出する請求項1に記載のメッキ厚算出プログラム。
【請求項3】
前記シミュレーション実行手順は、前記残存導電体厚の最大値が前記削取導電体厚以下で予め設定される所定の数値範囲に収まるまで、前記メッキ処理によって基板上にメッキされる導電体のメッキ厚を変更して、前記残存導電体厚を得るために前記メッキ処理から前記研磨処理に至るシミュレーションを繰り返し実行する請求項1または2に記載のメッキ厚算出プログラム。
【請求項4】
メッキ処理、研磨処理、過研磨処理の順に実行される半導体集積回路の製造処理の中で、前記過研磨処理により削り取られる導電体の削取導電体厚を当該過研磨処理時の研磨時間および研磨速度を用いて算出する削取導電体厚算出部と、
前記研磨処理後の基板上の配線溝以外の箇所に残存することが予想される残存導電体厚が、前記削取導電体厚算出部により算出された削取導電体厚以下となるまで、前記メッキ処理によって基板上にメッキされる導電体のメッキ厚を変更して、前記残存導電体厚を得るために前記メッキ処理から前記研磨処理に至るシミュレーションを繰り返し実行するシミュレーション実行部と、
を有するメッキ厚算出装置。
【請求項5】
メッキ処理、研磨処理、過研磨処理の順に実行される半導体集積回路の製造処理の中で、前記過研磨処理により削り取られる導電体の削取導電体厚を当該過研磨処理時の研磨時間および研磨速度を用いて算出する削取導電体厚算出ステップと、
前記研磨処理後の基板上の配線溝以外の箇所に残存することが予想される残存導電体厚が、前記削取導電体厚算出ステップにより算出された削取導電体厚以下となるまで、前記メッキ処理によって基板上にメッキされる導電体のメッキ厚を変更して、前記残存導電体厚を得るために前記メッキ処理から前記研磨処理に至るシミュレーションを繰り返し実行するシミュレーション実行ステップと、
を含むメッキ厚算出方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2010−45316(P2010−45316A)
【公開日】平成22年2月25日(2010.2.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−210120(P2008−210120)
【出願日】平成20年8月18日(2008.8.18)
【出願人】(000005223)富士通株式会社 (25,993)
【Fターム(参考)】