説明

メディアミル装置

【課題】処理後の製品流体にシール部の摩耗粉などが混入することがなく、しかも、仮にシール部が破損したとしても、メディアなどが混入することもなく、外部から容易に破損状況を確認することができ、メンテナンスが容易で、構造がシンプルなシール部を持つメディアミル装置を提供する。
【解決手段】筒状のケーシング20と、ケーシング20の内部に回転自在に配置された撹拌ロータ22と、撹拌ロータ22とケーシングとの間に装着され、ケーシングの内部を密封するメカニカルシール28と、を有するメディアミル装置2であって、メカニカルシールがケーシングの内部とケーシングの外部とを遮断する位置に装着して成る。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、流体の分散、流体と粒子の分散、あるいは流体に含まれる粒子の破砕などを行うためのメディアミル装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年の電子部品の小型化に伴い、その素体であるセラミックの微粒子(微粉砕)化が望まれている。セラミックの微粒子化を行うことができるメディアミル装置として、いくつかの提案がなされている。
【0003】
たとえば、特許文献1では、図9に示すメディアミル装置2’が知られている。このメディアミル装置2’では、筒状ケーシング20’の内部に回転自在に配置された軸方向に延びる回転軸21’を有する。この回転軸21’の基端212’には、駆動装置26’が連結してある。また、回転軸21’の先端214’側には、撹拌翼24’が装着してあり、撹拌翼24’の基端側には、スクリーン25’が装着してある。
【0004】
回転軸21’とスクリーン25’との間には、吐出流路35’が形成してあり、ケーシング20’の内部のメディア領域B’で処理された流体が、スクリーン25’を通して、吐出流路35’に入り込むようになっている。メディア領域B’には、メディア34’が充填してあり、回転軸21’を回転させることによりメディア34’がメディア領域の内部で動き回り、そこに位置する流体の分散処理あるいは破砕処理を行うようになっている。
【0005】
回転軸21’の基端212’の外周位置に、回転するスクリーン25’と、ケーシング20’の駆動側エンドプレート(固定側)202’との間で、メディア領域B’と吐出流路35’とを密封するシール部28’が装着してある。
【0006】
しかしながら、図9に示す特許文献1のメディアミル装置2’には、次に示すような問題があった。
【0007】
すなわち、シール部28’が、メディア領域B’と吐出流路35’との間に具備してあるために、このシール部28’が破損した場合に、ビーズ球などで構成してあるメディア34’が、吐出流路35’の中に入り込み、吐出流路35’を流れる製品流体の品質を著しく損なうおそれがある。
【0008】
また、シール部28’が、メディア領域B’と吐出流路35’との間に具備してあるために、このシール部28’が破損しなくとも、シール部の摩耗粉が、吐出流路35’を流れる製品流体に混じり込み、コンタミネーションとなるおそれがある。
【0009】
さらに、シール部28’が、メディア領域B’と吐出流路35’との間に具備してあるために、ケーシング20’の外部からシール部28’を観察することができず、製品流体にメディア34’などが混入するなどの重大事故が起きて初めて判明するなどの不都合がある。
【0010】
さらにまた、シール部28’が、メディア領域B’と吐出流路35’との間に具備してあるために、シール部28’の構造が複雑になると共に、そのメンテナンスが煩雑である。
【0011】
なお、シール部が破損する原因としては、スクリーン25’の目詰まりによるメディア領域B’の内部圧力の上昇、シール部28’の劣化、シール部28’へのメディア24’の噛み込みなどがある。
【特許文献1】登録実用新案第3006047号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
本発明は、このような実状に鑑みてなされ、その目的は、処理後の製品流体にシール部の摩耗粉などが混入することがなく、しかも、仮にシール部が破損したとしても、メディアなどが混入することもなく、外部から容易に破損状況を確認することができ、メンテナンスが容易で、構造がシンプルなシール部を持つメディアミル装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記目的を達成するために、本発明に係るメディアミル装置は、
筒状のケーシングと、
前記ケーシングの内部に回転自在に配置された撹拌ロータと、
前記撹拌ロータと前記ケーシングとの間に装着され、前記ケーシングの内部を密封するシール部と、を有するメディアミル装置であって、
前記シール部が、前記ケーシングの内部と、前記ケーシングの外部とを遮断する位置に装着してあることを特徴とする。
【0014】
本発明に係るメディアミル装置では、シール部が、前記ケーシングの内部と、前記ケーシングの外部とを遮断する位置に装着してあるので、仮にシール部が破損したとしても、ケーシング内部のメディア領域内の流体は、ケーシング外部に漏洩するのみである。このため、製品流体にメディア領域内のメディアが混入することがなく、製品流体の品質を下げることがない。また、シール部がケーシングの外部から見える位置に装着してあるために、シール部の破損状況を、外部から容易に確認することができる。また、シール部がケーシング外部から見える位置に装着してあるので、シール部のメンテナンスも容易である。
【0015】
さらに、本発明では、シール部が、前記ケーシングの内部と、前記ケーシングの外部とを遮断する位置に装着してあり、処理後の製品流体には接触しない位置にあるため、処理後の製品流体にシール部の摩耗粉などが混入することがない。すなわち、処理後の製品流体のコンタミネーションが少なくなる。
【0016】
しかも本発明では、シール部の構造をシンプルにすることができる。シール部の構造をシンプルにすることができれば、部品点数が少なくなり、シール部の信頼性が向上すると共に、部品の軽量化に寄与する。
【0017】
好ましくは、前記ケーシング内で前記撹拌ロータの外周に、スクリーンが装着してあり、前記ケーシング内の流体は、当該スクリーンを通して、前記撹拌ロータの内部に軸方向に沿って形成してある吐出流路に流れ込むようになっている。スクリーンを通すことにより、メディア領域内のメディアが、吐出流路内に入り込むことがなくなり、高品質の製品流体を得ることができる。
【0018】
好ましくは、前記撹拌ロータの内部に軸方向に沿って形成してある吐出流路が、前記ロータの回転軸の軸芯を含む位置に形成してある。この吐出流路は、ロータの回転軸に沿って、ケーシングの内部からケーシングの外部まで伸びている。したがって、スクリーンやロータの回転軸が破損しない限り、メディア領域内のメディアが吐出流路の内部に入り込むことはない。
【0019】
好ましくは、前記ケーシング内で前記撹拌ロータの先端側外周に、スクリーンが装着してあり、
前記ケーシングにおける前記シール部の近くに、前記ケーシング外部からのケーシング内部への流体入口が形成してある。
【0020】
このような構成にすることで、ケーシング内部のメディア領域では、シール部からスクリーンへ向けて、ロータの外周で軸方向に沿った被処理流体の流れが形成され、メディアをシール部側へ偏らせる流れを防止できる。その結果、メディアの噛み込みによるシール部の破損を防止でき、シール部の寿命を向上させることができる。
【0021】
好ましくは、前記撹拌ロータは、前記ケーシングの一方の端部からケーシング内部に入り込み、ケーシングの他方の端部近くまで伸びている。このような構成によれば、撹拌効率を向上させることができる。
【0022】
あるいは、前記撹拌ロータは、前記ケーシングの一方の端部からケーシング内部に入り込み、ケーシングの他方の端部から突き出ている。このような構成によれば、撹拌ロータを、ケーシングの軸方向両端部で、軸受により保持することができ、ロータの回転によるロータの回転ぶれを効果的に防止することができる。
【0023】
好ましくは、前記撹拌ロータは、前記ケーシングの軸方向外部において、駆動装置により回転駆動される。駆動装置としては、特に限定されないが、モータ、ベルト、ギアなどを例示することができる。
【0024】
好ましくは、前記ケーシングにおける駆動装置側の端部には、前記撹拌ロータの外周に固定してある回転スリーブが、前記シール部を介して接触してある。このような構成によれば、シール部を、ケーシングの内部と、ケーシングの外部とを遮断する位置に装着しやすい。
【0025】
好ましくは、前記シール部が、回転リングと固定リングとを含むメカニカルシールである。メカニカルシールとしては、特に限定されず、ベローズと回転リングと固定リングとの組み合わせ、回転リングまたは固定リングをスプリングにより押し付ける構造、メカニカルシールの内部にバッファ流体を送り込む構造、メカニカルシール内部にエア圧力を送り込み、圧力制御する構造などが例示される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0026】
以下、本発明を、図面に示す実施形態に基づき説明する。
図1はメディアミル装置が組み込まれたスラリー調製システムの全体概要を示す概略図、
図2は本発明の一実施形態に係るメディアミル装置の概略断面図、
図3Aは図2に示すメディアミル装置の撹拌翼を説明する一部断面概略側面図、
図3Bは図2に示すメディアミル装置のスクリーンを説明する概略側面図、
図4は駆動装置の一例を示す概略図、
図5は本発明の他の実施形態に係るメディアミル装置の概略断面図、
図6〜図8は本発明の他の実施形態に係るメディアミル装置のシール部の詳細を示す要部断面図、
図9は従来技術に係るメディアミル装置の概略断面図である。
第1実施形態
【0027】
本実施形態では、まず、スラリー調製システムの全体概要を説明した後、該システムに組み込まれて使用される本発明の一実施形態に係るメディアミル装置を説明する。
【0028】
図1に示すように、本実施形態に係るスラリー調製システム100は、本発明の一実施形態に係るメディアミル装置2と、該装置2へスラリーを供給するタンク4と、該タンク4中のスラリーを装置2に導入する供給配管6と、装置2中のスラリーをタンク4に戻す戻し配管8とを、有する。
【0029】
タンク4には、スラリーを構成する被分散物(粉砕物)、分散媒および結合剤などが仕込まれており、これらを撹拌・混合するための、撹拌翼(図示省略)を持つロータ(図示省略)が回転駆動自在に設けられている。供給配管6には、ポンプPが装着されている。
【0030】
図2に示すように、本発明の一実施形態に係るメディアミル装置2は、軸方向に沿って延びる筒状のケーシング20を有する。ケーシング20における第1端壁202の近傍には、タンク4(図1参照)中のスラリーが導入される供給配管6(図1参照)と接続されるスラリー導入口(流体入口)206がケーシング20の外周位置に形成してある。
【0031】
ケーシング20の内部には、ロータ22がケーシング20の軸芯Aに沿って配置されている。ロータ22は、内部が軸方向に沿って中空になっている回転軸21と、回転軸21の先端側に取り付けてある回転スクリーン25と、ケーシング20の内部で回転軸21の外周に固定してある撹拌翼24とを有する。撹拌翼24と、ケーシング20の円筒壁の内壁との間に、メディア領域Bが形成されている。
【0032】
メディア領域Bには、多数のメディアとしてのビーズ34が収容してある。ビーズの粒径は、処理すべき流体の種類、処理の内容などに応じて決定され、通常、0.03〜2.0μmである。ビーズ34の材質は、特に限定されないが、例えばジルコニアなどである。ビーズ34の充填率は、メディア領域Bの容積の85〜95%程度、好ましくは90〜92%程度とする。
【0033】
ロータ22における回転軸21の基端212は、ケーシング20の軸方向外部において、ロータリージョイント42に接続してあり、そのロータリージョイント42には、回転しない吐出口44が接続してある。ロータリージョイント42は、回転する回転軸21の基端と、回転しない吐出口44とを連結し、回転軸21の内部に軸芯Aに沿って軸芯Aを含む位置に形成してある吐出流路35と吐出口44とを連絡する。
【0034】
図4に示すように、回転軸21の基端212は、ケーシング20の軸方向の外部において、一対以上の軸受46で回転自在に保持してあり、その間に位置する回転軸21の外周に従動側ギア266が固定してある。従動側ギア266は、ベルトなどにより駆動側ギア264と連結してあり、駆動側ギア264は、モータ262により回転駆動されるようになっている。この実施形態では、モータ262,ギア264,266およびベルト(図示省略)が駆動装置26を構成している。
【0035】
駆動装置26により、回転軸21が回転駆動されることによって、回転軸21に具備された撹拌翼24および回転スクリーン25も、回転軸21と共に回転し、ロータ22の全体が、ケーシング20に対して相対的に回転する。
【0036】
ケーシング20の内部において、回転軸21の外周には、撹拌翼24が固定してある。撹拌翼24の外周には、図3Aに示すように、撹拌ピン24aが円周方向および軸方向に所定間隔で形成してある。また、撹拌翼24の先端側には、スリット242が、周方向に所定間隔で軸方向に沿って形成してある。
【0037】
スリット242は、メディア領域Bにおいてビーズ34と共に撹拌されて分散処理あるいは粉砕処理された処理液を、スクリーン25へと導く。
【0038】
なお、スリット242は、開閉自在な形式であってもよい。開閉自在とすることで、スラリーが所定の分散度に達するまではスリットを閉じておき、その後、開放することで、所定の分散度に達したスラリーを、スクリーン25を通して吐出流路35へと導くことが可能となる。
【0039】
スリット242の内側には、スクリーン25が配置してある。スクリーン25は、円筒状のメッシュでも良いが、本実施形態では、図3Bに示すように、軸方向に沿って延びるスリット252が周方向に断続的に形成してある円筒チューブで構成してある。ロータ22の先端でもあるスクリーン25の先端には、端壁254が装着してあり、そこからは、流体が吐出流路35へは入らないようになっている。端壁254は、ケーシング20の第2端壁204の近くに配置してあり、ロータ22の一部となっている。この実施形態では、ロータ22の先端は、第2端壁204を突き破らない位置にある。
【0040】
スクリーン25に形成してあるスリット252を通して、メディア領域Bにて処理済の流体が吐出流路35の内部に入り込むことが可能になっている。
【0041】
スリット252の幅D2は、ビーズ34の外径に対して、好ましくは、ビーズ外径の2/3以下の幅である。この幅D2が広すぎると、ビーズ34まで吐出流路35の内部に入り込むおそれがあることから好ましくなく、狭すぎると、処理済の流体が吐出流路35の内部に入り込みにくくなる傾向にある。
【0042】
本実施形態では、図2に示すように、ケーシング20の駆動側端部において、第1端壁202の内周部と、回転軸21に固定してあるスリーブ40の外周部との間に、メカニカルシール(シール部)28が装着してある。このメカニカルシール28は、回転軸21と共に回転するスリーブ40に固定してある回転リング282と、第1端壁202に固定してある固定リング284とを有する。これらのリング282,284は、例えばタングステンカーバイト、シリコンカーバイトなどの超鋼材、あるいは超鋼材とカーボンとの組み合わせなどで構成される。
【0043】
このメカニカルシール28は、ケーシング20の内部に形成してあるメディア領域Bと、ケーシング20の外部とを密封する位置に装着してある。しかも、このメカニカルシール28は、回転体であるロータ22と固定体であるケーシング20との間に装着してある。
【0044】
次に、本実施形態に係るメディアミル装置2の作用について説明する。
図1に示すように、まず、タンク4に、被分散物と分散媒と結合剤を所定量仕込み、攪拌翼を具備するロータを回転駆動させ、被分散物を分散媒および結合剤中に分散させ、スラリーを調製する。
【0045】
被分散物をある程度分散した後、ポンプPを起動し、タンク4中のスラリーを供給配管6を介して、図2〜図4に示すメディアミル装置2のケーシング20のスラリー導入口206から、ケーシング20内部のメディア領域Bへと導入させる。
【0046】
メディアミル装置2のケーシング20内部のメディア領域Bには、メディアとしてのビーズ34が予め充填してある。このため、駆動装置26を駆動させることによりロータ22を回転させると、撹拌翼24と、ケーシング20内部の円筒壁との間のメディア領域Bで、ビーズ34同士が激しくぶつかり合う。従って、メディア領域Bに導入されたスラリーは、互いにぶつかり合うビーズ34によって剪断力を付与され、ビーズ34とともに掻き混ぜられながら、メディア領域Bをロータ22の基端側から先端側へ向けて送られる。これにより、スラリー中の被分散物が分散媒および結合剤中に均一に分散する。
【0047】
本実施形態では、撹拌翼24の最外周での周速が、好ましくは6〜15m/分程度となるように、ロータ22の回転速度が制御される。
【0048】
本実施形態では、図1に示すタンク4内に貯留されたスラリーを、再度、メディアミル装置2の導入口206へと導き、循環させてもよい。このようにスラリーを循環させることにより、何度も、メディアミル装置2に導入されるから、繰り返し剪断力を受ける。これにより、被分散物は、スラリー中に均一に分散される。
【0049】
本実施形態では、メディアミル装置2におけるスラリーの粉砕処理温度を、好ましくは45℃以下に設定するために、タンク4には、温度調節装置(図示省略)が具備してあることが望ましい。温度調節装置としては、特に限定されず、ヒータ、冷却装置、熱交換機などが例示される。所定の温度範囲に制御するために、スラリー温度を検出する温度センサ(図示省略)も具備してあることが望ましい。
【0050】
本実施形態に係るメディアミル装置2では、シール部であるメカニカルシール28が、ケーシング20の内部と、ケーシング20の外部とを遮断する位置に装着してあるので、仮にメカニカルシール28が破損したとしても、ケーシング20内部のメディア領域B内の流体は、ケーシング20の外部に漏洩するのみである。このため、吐出流路35および吐出口44を通して流出される製品流体にメディア領域B内のビーズ34が混入することがなく、製品流体の品質を下げることがない。また、メカニカルシール28がケーシング20の外部から見える位置に装着してあるために、メカニカルシール28の破損状況を、外部から容易に確認することができる。また、メカニカルシール28がケーシング20の外部から見える位置に装着してあるので、メカニカルシール28のメンテナンスも容易である。
【0051】
さらに、本実施形態では、メカニカルシール28が、ケーシング20の内部と、ケーシング20の外部とを遮断する位置に装着してあり、吐出流路35内の処理後の製品流体には接触しない位置にあるため、処理後の製品流体にメカニカルシール28の摩耗粉などが混入することがない。すなわち、処理後の製品流体のコンタミネーションが少なくなる。
【0052】
しかも本実施形態では、メカニカルシール28の構造をシンプルにすることができる。メカニカルシール28の構造をシンプルにすることができれば、部品点数が少なくなり、シール部の信頼性が向上すると共に、部品の軽量化に寄与する。
【0053】
さらに本実施形態では、ケーシング20内で撹拌ロータ22の先端側外周に、スクリーン25が装着してあり、ケーシング20におけるメカニカルシール28の近くに、スラリー導入口206が形成してある。このため、ケーシング20内部のメディア領域Bでは、メカニカルシール28からスクリーン25へ向けて、ロータ22の外周で軸方向に沿った被処理流体の流れが形成され、ビーズ34をメカニカルシール28側へ偏らせる流れを防止できる。その結果、ビーズ34の噛み込みによるメカニカルシール28の破損を防止でき、メカニカルシール28の寿命を向上させることができる。
第2実施形態
【0054】
本実施形態では、図5に示すように、スクリーン25の先端を保持している端壁254の軸芯中央部に、先端回転軸256が形成してある。この先端回転軸256は、ケーシング20の第2端壁204の中心孔を、ケーシング20の外部に突き出ている。第2端壁204は、ケーシング20において、第1端壁202の軸方向の反対側端部(反駆動側)に位置する。
【0055】
第2端壁204の外側には、アダプタ48が装着してあり、その内周に装着してある軸受50により、先端回転軸256を回転自在に保持している。先端回転軸256と第2端壁204との隙間は、メカニカルシール52により密封してある。
【0056】
本実施形態では、その他の構成は、前記第1実施形態と同様であり、その第1実施形態と同様な作用効果を奏すると共に、さらに、次に示す作用効果を奏する。
【0057】
すなわち、本実施形態では、撹拌ロータ22を、ケーシング20の軸方向両端部で、軸受46、50により保持することができ、ロータ22の回転によるロータ22の回転ぶれを効果的に防止することができる。
第3実施形態
【0058】
図6〜図8に示すように、本発明において、メカニカルシール28a〜28cの構造は、特に限定されず、種々に改変することができる。すなわち、図6に示すメカニカルシール28aでは、第1端壁202に取付リング288を固定し、それにベローズ286を介して、固定側リテーナ285を取り付け、そのリテーナ285に固定リング284aを取り付けてある。また、回転軸21には、回転スリーブ40aを固定し、その回転スリーブ40aに、回転リング282aを固定してある。
【0059】
また、図7に示すメカニカルシール28bでは、第1端壁202に取付リテーナ285bを固定し、それに固定リング284bを取り付ける。また、回転軸21の回転スリーブ40bには、ベローズ286bを介して、回転側リテーナ287を取り付け、そのリテーナ287に回転リング282bを取り付けてある。
【0060】
図8に示すメカニカルシール28cでは、第1端壁202に取付リング288cを固定し、それに固定側リテーナ285cを取り付け、そのリテーナ285cに固定リング284cを取り付けてある。また、回転軸21には、回転スリーブ40cを固定し、その回転スリーブ40cに、回転リング282cを固定してある。リテーナ285と取付リング288cとの間には、圧力室290が形成してあり、圧力室290には、エア入口292から所定圧力のエアが入り込むようになっている。圧力室290内に入り込むエア圧力を調整することで、接触するリング282cおよび284cの間の接触圧力を調整可能になっている。
【0061】
なお、本発明は、上述した実施形態に限定されるものではなく、本発明の範囲内で種々に改変することができる。
【図面の簡単な説明】
【0062】
【図1】図1はメディアミル装置が組み込まれたスラリー調製システムの全体概要を示す概略図である。
【図2】図2は本発明の一実施形態に係るメディアミル装置の概略断面図である。
【図3A】図3Aは図2に示すメディアミル装置の撹拌翼を説明する一部断面概略側面図である。
【図3B】図3Bは図2に示すメディアミル装置のスクリーンを説明する概略側面図である。
【図4】図4は駆動装置の一例を示す概略図である。
【図5】図5は本発明の他の実施形態に係るメディアミル装置の概略断面図である。
【図6】図6は本発明の他の実施形態に係るメディアミル装置のシール部の詳細を示す要部断面図である。
【図7】図7は本発明の他の実施形態に係るメディアミル装置のシール部の詳細を示す要部断面図である。
【図8】図8は本発明の他の実施形態に係るメディアミル装置のシール部の詳細を示す要部断面図である。
【図9】図9は従来技術に係るメディアミル装置の概略断面図である。
【符号の説明】
【0063】
100… スラリー調製システム
2… メディアミル装置
4… タンク
6… 供給配管
8… 戻し配管
20… ケーシング
202… 第1端壁
204… 第2端壁
206… スラリー導入口(流体入口)
21… 回転軸
22… ロータ
24… 撹拌翼
24a… 撹拌ピン
242… スリット
25… スクリーン
252… スリット
26… 駆動装置
28、28a〜28c… メカニカルシール(シール部)
34… ビーズ(粉砕メディア)
35… 吐出流路

【特許請求の範囲】
【請求項1】
筒状のケーシングと、
前記ケーシングの内部に回転自在に配置された撹拌ロータと、
前記撹拌ロータと前記ケーシングとの間に装着され、前記ケーシングの内部を密封するシール部と、を有するメディアミル装置であって、
前記シール部が、前記ケーシングの内部と、前記ケーシングの外部とを遮断する位置に装着してある
ことを特徴とするメディアミル装置。
【請求項2】
前記ケーシング内で前記撹拌ロータの外周に、スクリーンが装着してあり、前記ケーシング内の流体は、当該スクリーンを通して、前記撹拌ロータの内部に軸方向に沿って形成してある吐出流路に流れ込むようになっている請求項1に記載のメディアミル装置。
【請求項3】
前記撹拌ロータの内部に軸方向に沿って形成してある吐出流路が、前記ロータの回転軸の軸芯を含む位置に形成してある請求項2に記載のメディアミル装置。
【請求項4】
前記ケーシング内で前記撹拌ロータの先端側外周に、スクリーンが装着してあり、
前記ケーシングにおける前記シール部の近くに、前記ケーシング外部からのケーシング内部への流体入口が形成してある請求項2または3に記載のメディアミル装置。
【請求項5】
前記撹拌ロータは、前記ケーシングの一方の端部からケーシング内部に入り込み、ケーシングの他方の端部近くまで伸びている請求項1〜4のいずれかに記載のメディアミル装置。
【請求項6】
前記撹拌ロータは、前記ケーシングの一方の端部からケーシング内部に入り込み、ケーシングの他方の端部から突き出ている請求項1〜4のいずれかに記載のメディアミル装置。
【請求項7】
前記撹拌ロータは、前記ケーシングの軸方向外部において、駆動装置により回転駆動される請求項1〜6のいずれかに記載のメディアミル装置。
【請求項8】
前記ケーシングにおける駆動装置側の端部には、前記撹拌ロータの外周に固定してある回転スリーブが、前記シール部を介して接触してある請求項7に記載のメディアミル装置。
【請求項9】
前記シール部が、回転リングと固定リングとを含むメカニカルシールである請求項1〜8のいずれかに記載のメディアミル装置。

【図1】
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【図2】
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【図3A】
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【図3B】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2006−346629(P2006−346629A)
【公開日】平成18年12月28日(2006.12.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−178338(P2005−178338)
【出願日】平成17年6月17日(2005.6.17)
【出願人】(000003067)TDK株式会社 (7,238)
【Fターム(参考)】