説明

メモリカード用ソケット

【課題】データ伝送の高速化を図りながらも、安定したデータ伝送を可能にするメモリカード用ソケットを提供する。
【解決手段】前面にカード挿入口が開口した角筒状に形成され、メモリカードが挿抜される金属シェル5と、メモリカードの一表面に並設された複数のI/O接触面に各別に接触可能な複数本のコンタクト3が絶縁性の合成樹脂からなる保持部13に保持され、金属シェル5の後部内に装着されたコンタクトブロック12とを備え、コンタクトブロック12の各コンタクト3の一端側に設けられ、実装相手の配線基板に形成された信号用導電パターンに接合される端子部3cが、金属シェル5の後部から導出されてなるメモリカード用ソケットであって、金属シェル5に、配線基板の安定電位となる導電パターンに接合して電気的に接続可能な3つの基板接続部40を設けている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えばSDメモリカード(登録商標)などのメモリカードを挿抜自在に接続するためのメモリカード用ソケットに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、SDメモリカード(登録商標)などのメモリカードが、各種のデジタル機器(例えば、デジタルカメラやデジタルビデオカメラなど)に広く用いられている。近年、これらのメモリカードにおいて、高精細な静止画や動画など大容量のコンテンツを読み書きするために、メモリカードの更なる大容量化およびデータ伝送の高速化が要求されている。
【0003】
このようなメモリカードを挿抜自在に接続するためのメモリカード用ソケットとしては、例えば、図27に示すように、ステンレス製の金属板によって形成され、メモリカード用ソケットを実装する配線基板側に位置する下側シェル(ベースシェル)1と、下側シェル1と同様にステンレス製の金属板によって形成され、下側シェル1の一表面側に被着することで前面にカード挿入口5aが開口する角筒状の金属シェル5を下側シェル1とで構成する上側シェル(カバーシェル)2と、メモリカードの一表面に並設された複数のI/O接触面(図示せず)に各別に接触可能な複数本(図示例では、9本)のコンタクト3が絶縁性の合成樹脂からなる保持部13に保持され、金属シェル5の後部内に装着されたコンタクトブロック12と、金属シェル5の前部側で下側シェル1におけるメモリカードの挿抜方向に直交する左右方向の両側縁からメモリカード用ソケットを実装する配線基板(図示せず)側に連続一体に突設された2つの接続部4とを備えたものが提案されている(例えば、特許文献1参照)。なお、接続部4は、上記配線基板に設けられた保持孔(図示せず)に挿入されて、上記配線基板のグランドに電気的に接続される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2009−16313号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、メモリカードのデータ伝送の高速化を図るために、データ伝送のクロック周波数を高めることが考えられるが、データ伝送のクロック周波数を高めると、クロック周波数の高調波成分が影響し、データ伝送時に発生するノイズが大きくなる傾向にある。そのため、メモリカードの動作時に、読み出しエラーや書き込みエラーなどが発生し、安定したデータ伝送ができなくなる可能性がある。
【0006】
上述のメモリカード用ソケットは、メモリカードのデータ伝送時に発生するノイズを、下側シェル1に連続一体に突設された各接続部4から上記配線基板のグランドに逃がすことができる。しかしながら、上述のメモリカード用ソケットでも、メモリカードの大容量化およびデータ伝送の高速化に伴い、ノイズが大きくなる傾向にある。
【0007】
本発明は上記の事由に鑑みて為されたものであり、その目的は、データ伝送の高速化を図りながらも、安定したデータ伝送を可能にするメモリカード用ソケットを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明のメモリカード用ソケットは、前面にカード挿入口が開口した角筒状に形成され、メモリカードが挿抜される金属シェルと、前記メモリカードの一表面に並設された複数のI/O接触面に各別に接触可能な複数本のコンタクトが絶縁性の合成樹脂からなる保持部に保持され、前記金属シェルの後部内に装着されたコンタクトブロックとを備え、前記コンタクトブロックの前記各コンタクトの一端側に設けられ、実装相手の配線基板に形成された信号用導電パターンに接合される端子部が、前記金属シェルの後部から導出されてなるメモリカード用ソケットであって、前記金属シェルに、前記配線基板の安定電位となる導電パターンに接合して電気的に接続可能な少なくとも3つの基板接続部が設けられてなることを特徴とする。
【0009】
このメモリカード用ソケットにおいて、前記基板接続部は、前記金属シェルの隅部に設けられてなることが好ましい。
【0010】
このメモリカード用ソケットにおいて、前記金属シェルにおける前記配線基板との対向面となる一面の中央部に、少なくとも1つの前記基板接続部を設けてなることが好ましい。
【0011】
このメモリカード用ソケットにおいて、前記金属シェルの前部側の2つの隅部および前記金属シェルの後部側の一方の隅部に、前記基板接続部を設けてなることが好ましい。
【0012】
このメモリカード用ソケットにおいて、前記金属シェルの前部側の2つの隅部および前記金属シェルの後端縁の近傍に、前記基板接続部を設けてなることが好ましい。
【0013】
このメモリカード用ソケットにおいて、前記金属シェルの前部側の2つの隅部および前記金属シェルにおける前記配線基板との対向面となる一面の中央部に、前記基板接続部を設けてなることが好ましい。
【0014】
このメモリカード用ソケットにおいて、前記金属シェルの後部側の2つの隅部および前記金属シェルの前端縁の近傍に、前記基板接続部を設けてなることが好ましい。
【0015】
このメモリカード用ソケットにおいて、前記金属シェルの後部側の2つの隅部および前記金属シェルにおける前記配線基板との対向面となる一面の中央部に、前記基板接続部を設けてなることが好ましい。
【0016】
このメモリカード用ソケットにおいて、前記基板接続部は、前記金属シェルの4つの隅部に設けられてなることが好ましい。
【0017】
このメモリカード用ソケットにおいて、前記基板接続部は、前記金属シェルの一部を切り起こすことにより形成された切り起こし片であることが好ましい。
【0018】
このメモリカード用ソケットにおいて、前記基板接続部は、前記金属シェルの一部をしぼり加工することによって形成された突起部であることが好ましい。
【0019】
このメモリカード用ソケットにおいて、前記基板接続部は、前記金属シェルの一部に金属膜を被着して形成された導体層であることが好ましい。
【0020】
このメモリカード用ソケットにおいて、前記切り起こし片は、前記金属シェルにおけるメモリカードの挿抜方向に直交する左右方向の側面部で前記金属シェルから前記メモリカードの挿抜方向および前記金属シェルの左右方向に直交する方向へ延設されてなることが好ましい。
【0021】
このメモリカード用ソケットにおいて、前記金属シェルは、第1の金属板により形成され、前記配線基板側に位置する下側シェルと、第2の金属板により形成され、下側シェルの一表面側に被着された上側シェルとで構成され、前記切り起こし片が、後方に突設されてなることが好ましい。
【0022】
このメモリカード用ソケットにおいて、前記切り起こし片は、前記金属シェルの左右方向の両側部から突設されてなることが好ましい。
【0023】
このメモリカード用ソケットにおいて、前記切り起こし片は、前記上側シェルの後端縁の近傍から突設されてなることが好ましい。
【0024】
このメモリカード用ソケットにおいて、前記切り起こし片は、前記上側シェルにおいて、前記メモリカードの挿抜方向に直交する左右方向の両側縁から突設されてなることが好ましい。
【0025】
このメモリカード用ソケットにおいて、前記突起部は、前記金属シェルにおける前記配線基板との対向面となる一面の隅部に形成されてなることが好ましい。
【0026】
このメモリカード用ソケットにおいて、前記基板接続部は、前記金属シェルに接続される端子片であって、前記金属シェルの後方へ突出してなることが好ましい。
【0027】
このメモリカード用ソケットにおいて、前記基板接続部は、前記金属シェルの両側部に接続される端子片であって、前記メモリカードの挿抜方向および前記金属シェルの左右方向に直交する方向へ突設してなることが好ましい。
【0028】
このメモリカード用ソケットにおいて、前記基板接続部は、前記金属シェルに溶接もしくは接着して形成されてなることが好ましい。
【0029】
このメモリカード用ソケットにおいて、前記基板接続部は、前記金属シェルの左右方向の両側部に圧接して形成されてなることが好ましい。
【0030】
このメモリカード用ソケットにおいて、前記基板接続部は、前記金属シェルの被嵌合部に嵌合して形成されてなることが好ましい。
【発明の効果】
【0031】
本発明のメモリカード用ソケットにおいては、データ伝送の高速化を図りながらも、安定したデータ伝送ができるという効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【図1】本実施形態のメモリカード用ソケットを示し、(a)は表面側から見た斜視図、(b)は裏面側から見た斜視図である。
【図2】(a)は同上のメモリカード用ソケットの要部斜視図、(b)は他の構成例の要部斜視図である。
【図3】(a)は同上のメモリカード用ソケットの要部斜視図、(b)は他の構成例の要部斜視図である。
【図4】(a)は同上のメモリカード用ソケットの基板接続部の配置例を示す概略平面図、(b)は他の配置例を示す概略平面図である。
【図5】(a)は同上のメモリカード用ソケットの基板接続部の配置例を示す概略平面図、(b)は他の配置例を示す概略平面図である。
【図6】(a)は同上のメモリカード用ソケットの基板接続部の配置例を示す概略平面図、(b)は他の配置例を示す概略平面図である。
【図7】同上のメモリカード用ソケットの基板接続部の配置例を示す概略平面図である。
【図8】同上のメモリカード用ソケットの基板接続部の配置例を示す概略平面図である。
【図9】同上のメモリカード用ソケットの基板接続部の配置例を示す概略平面図である。
【図10】同上のメモリカード用ソケットの他の構成例を示し、(a)は斜視図、(b)は要部拡大図である。
【図11】同上のメモリカード用ソケットの他の構成例を示し、(a)は斜視図、(b)は要部拡大図である。
【図12】同上のメモリカード用ソケットの他の構成例を示し、(a)は斜視図、(b)は要部拡大図である。
【図13】同上のメモリカード用ソケットの他の構成例を示し、(a)は斜視図、(b)は要部拡大図である。
【図14】同上のメモリカード用ソケットの他の構成例を示し、(a)は斜視図、(b)は要部拡大図である。
【図15】同上のメモリカード用ソケットの他の構成例を示し、(a)は斜視図、(b)は要部拡大図である。
【図16】同上のメモリカード用ソケットの他の構成例を示し、(a)は斜視図、(b)は要部拡大図である。
【図17】同上のメモリカード用ソケットの他の構成例を示し、(a)は斜視図、(b)は要部拡大図である。
【図18】同上のメモリカード用ソケットの他の構成例を示す平面図である。
【図19】同上のメモリカード用ソケットの他の構成例を示し、(a)は斜視図、(b)および(c)は要部拡大図である。
【図20】同上のメモリカード用ソケットの他の構成例を示し、(a)は斜視図、(b)および(c)は要部拡大図である。
【図21】同上のメモリカード用ソケットの他の構成例を示し、(a)は斜視図、(b)および(c)は要部拡大図である。
【図22】同上のメモリカード用ソケットの他の構成例を示し、(a)は斜視図、(b)は要部拡大図である。
【図23】同上のメモリカード用ソケットの他の構成例を示し、(a)は斜視図、(b)および(c)は要部拡大図である。
【図24】同上のメモリカード用ソケットの他の構成例を示す斜視図である。
【図25】同上のメモリカード用ソケットのコンタクトに、正弦波信号を入力した場合におけるノイズ電圧の分布図である。
【図26】同上のメモリカード用ソケットのコンタクトに、正弦波信号を入力した場合におけるノイズ電圧の他の分布図である。
【図27】従来例のメモリカード用ソケットを示し、(a)は表面側から見た斜視図、(b)は裏面側から見た斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0033】
本実施形態のメモリカード用ソケットを、図1〜図3を参照しながら説明する。
【0034】
本実施形態のメモリカード用ソケットは、図1に示すように、前面(図1では、右上部)にカード挿入口が開口した角筒状に形成され、メモリカードが挿抜される金属シェル5と、メモリカードの一表面に並設された複数のI/O接触面(図示せず)に各別に接触可能な複数本(図示例では、9本)のコンタクト3が絶縁性の合成樹脂からなる保持部13に保持され、金属シェル5の後部(図1では、左下部)内に装着されたコンタクトブロック12とを備え、金属シェル5には、メモリカード用ソケットを実装する実装相手の配線基板(図示せず)のグランド(安定電位である導電パターン)に接合して電気的に接続可能な3つの基板接続部40を設けている。なお、金属シェル5には、基板接続部40を3つ設けているが、基板接続部40の数は3つ以上であればよい。
【0035】
各コンタクト3は、図1(b)に示すように、金属シェル5の左右方向(メモリカードの挿抜方向に直交する方向)に並んで離間されており、一端側に金属膜を被着して形成された上記I/O接触面に接触する各接触片3bが形成され、他端側に上記配線基板に形成された信号用導電パターン(図示せず)に接続可能な各端子部3cが金属シェル5の後部から前方に導出されている。なお、各コンタクト3は、例えば銅合金により形成されている。
【0036】
基板接続部40は、図1(b)に示すように、金属シェル5の前部側(図1(b)では、右上部)で金属シェル5の左右方向の両側面からメモリカード用ソケットを実装する配線基板側(図1(b)では、上面側)に1つずつ突設し、金属シェル5における上記配線基板との対向面となる一面で、各コンタクト3の各接触片3bの先端部よりもメモリカード用ソケットの上記カード挿入口側(図1(b)では、右上側)の中央部に1つ配設してある。
【0037】
基板接続部40の形状は、図3(a)に示すように、下側シェル1の左右方向の側面から左右方向に直交する方向へ突設され、上記配線基板に設けられた保持孔(図示せず)に挿入し、上記配線基板のグランドに接合して電気的に接続可能となっている。ここにおいて、基板接続部40は、図3(a)の例に限らず、例えば図3(b)に示すように、下側シェル1の上記側面から下側シェル1の左右方向の外側へ突設され、下側シェル1側の上記配線基板の一面に形成された上記配線基板の安定電位となる導電パターン(グランド)に接合させて電気的に接続させてもよい。
【0038】
金属シェル5は、図2(a)に示すように、ステンレス製の金属板(第1の金属板)を折曲して形成され、上記配線基板側に位置する下側シェル1と、下側シェル1と同様にステンレス製の金属板(第2の金属板)を折曲して形成され、下側シェル1の一表面側に被着する上側シェル2とで構成される。ここにおいて、下側シェル1は金属シェル5の前後方向に直交する断面がコ字状であり、上側シェル2は矩形板状に形成されており、下側シェル1と上側シェル2との突き合わせ部位(コ字状の下側シェル1の側壁の先端縁と矩形板状の上側シェル2の左右方向の端部との突き合わせ部位)14aがレーザ溶接により接合されている。したがって、下側シェル1と上側シェル2とが同電位となる。つまり、下側シェル1から上記配線基板側に連続一体で突設された各基板接続部40を上記配線基板に設けられた上記保持孔に挿入し、各基板接続部40を上記配線基板のグランドに接合して電気的に接続すれば、下側シェル1と上側シェル2とで構成される金属シェル5が上記配線基板のグランドに接地される。その結果、各コンタクト3への静電気や外来ノイズを防ぎ、且つ、各コンタクト3から外部への輻射ノイズを低減することができる。ここにおいて、下側シェル1と上側シェル2との形状は、図2(a)に例示した形状に限らず、例えば図2(b)に示すように、どちらも金属シェル5の前後方向に直交する断面がコ字状として、下側シェル1と上側シェル2との突き合わせ部位(コ字状の下側シェル1の側壁の先端縁とコ字状の上側シェル2の側壁の先端縁との突き合わせ部位)14bをレーザ溶接により接合してもよい。
【0039】
メモリカード用ソケットの基板接続部40の他の配置例としては、例えば図4〜図9それぞれに示した例がある。
【0040】
図4(a)に示す例では、基板接続部40を、金属シェル5の前部側(図4では、平面視において下側)で下側シェル1における金属シェル5の左右方向の両端部それぞれに1つずつ配設し、金属シェル5の後部側(図4では、平面視において上側)で下側シェル1における後端縁の近傍に1つ配設してある。
【0041】
また、図4(b)に示した例では、基板接続部40を、金属シェル5の前部側で下側シェル1における前端縁の近傍に1つ配設し、金属シェル5の後部側で下側シェル1の左右方向の両端部それぞれに1つずつ配設してある。したがって、基板接続部40が、下側シェル1の中央部を囲むように配設されているため、例えば、メモリカードに内蔵された制御ICなどのノイズ源となりうる部分から発生するノイズを各基板接続部40から上記配線基板のグランドに逃がしやすくなる。
【0042】
図5(a)に示す例では、基板接続部40を、金属シェル5の前部側で金属シェル5の両隅部それぞれに1つずつ配設し、金属シェル5の後部側で金属シェル5の一方の隅部に1つ配設してある。
【0043】
また、図5(b)に示した例では、基板接続部40を、金属シェル5の前部側で金属シェル5の一方の隅部に1つ配設し、金属シェル5の後部側で金属シェル5の両隅部それぞれに1つずつ配設してある。ここにおいて、図5(a)および図5(b)に例示した基板接続部40の配置例のように、金属シェル5の隅部に各基板接続部40を設けることで、下側シェル1だけでなく、例えば、上側シェル2から上記配線基板側に連続一体で突出した基板接続部40を設けることにより、上側シェル2も上記配線基板のグランドに接合して電気的に接続することができる。また、下側シェル1における上記配線基板側の中央部に放熱部として機能させる金属膜を被着することにより、メモリカード動作時に発生する熱の放熱性を向上させることができる。また、下側シェル1の中央部に放熱用の部品を配置することも可能である。
【0044】
図6(a)に示す例では、基板接続部40を、下側シェル1における上記配線基板との対向面となる一面の中央部に1つ設け、金属シェル5の前部側で金属シェル5の両隅部それぞれに1つずつ配設してある。
【0045】
また、図6(b)に示した例では、基板接続部40を、金属シェル5の後部側で金属シェル5の両隅部それぞれに1つずつ配設し、下側シェル1における上記一面の中央部に1つ配設してある。ここにおいて、図6(a)および図6(b)に例示した基板接続部40の配置例のように、基板接続部40を、下側シェル1における上記一面の中央部に1つ設けることによって、例えば、メモリカードに内蔵された制御ICから発生するノイズを下側シェル1における上記一面の中央部に設けられた基板接続部40から上記配線基板のグランドに逃がすことができる。したがって、データ伝送時に発生するノイズを抑制することができる。
【0046】
図7に示す例では、基板接続部40を、金属シェル5の前部側で金属シェル5の両隅部それぞれに1つずつ配設し、下側シェル1の後端縁の近傍に1つ配設してある。
【0047】
また、図8に示す例では、基板接続部40を、金属シェル5の後部側で金属シェル5の両隅部それぞれに1つずつ配設し、金属シェル5の前端縁の近傍に1つ配設してある。したがって、基板接続部40が、金属シェル5の中央部を囲むように配設されているため、例えば、メモリカードに内蔵された制御ICなどのノイズ源となりうる部分から発生するノイズを各基板接続部40から上記配線基板のグランドに逃がしやすくなる。
【0048】
図9に示す例では、基板接続部40を、金属シェル5の4つの隅部に配設してある。したがって、例えば、メモリカードに内蔵された制御ICなどのノイズ源となりうる部分から発生するノイズを、図8よりも上記配線基板のグランドに逃がしやすくなる。
【0049】
また、メモリカード用ソケットの基板接続部40の他の形状としては、例えば図10〜図23それぞれに示した例がある。
【0050】
図10における各基板接続部40は、金属シェル5を切り起こすことにより形成された切り起こし片であって、上記切り起こし片が、金属シェル5の左右方向の側面部から上記配線基板側へ延設してある。
【0051】
また、図11における切り起こし片である各基板接続部40は、下側シェル1の後端縁から後方(図11では、左下部)へ突設し、突設した基板接続部40の先端部が上記配線基板側へ折り曲げてある。ここにおいて、図10および図11に例示した切り起こし片である基板接続部40は、金属シェル5を切り起こすことにより形成されるため、基板接続部40を形成することが容易となり、また、部品を追加することがないため、コストを低減することができる。さらに、切り起こし片である基板接続部40を上記配線基板の上記保持孔に挿入し、半田にて上記配線基板の上記保持孔の内周面に形成された安定電位となる導電パターン(グランド)に接合することによって、実装強度を高くすることができる。
【0052】
図12における切り起こし片である各基板接続部40は、下側シェル1の後端縁から後方へ突設してある。したがって、各基板接続部40を各端子部3cと同様に半田などにより上記配線基板の一面に形成された上記配線基板の安定電位となる上記導電パターンに接合させることができる。
【0053】
図13における切り起こし片である各基板接続部40は、金属シェル5の後部側で上側シェル2の後端縁から上記配線基板側へ突設してある。したがって、各基板接続部40を上記配線基板の上記保持孔に挿入し、半田にて上記配線基板の上記保持孔の内周面に形成された安定電位となる導電パターン(グランド)に接合することによって、上側シェル2を上記配線基板のグランドに電気的に接続することができる。
【0054】
図14における切り起こし片である各基板接続部40は、金属シェル5の後部側で上側シェル2の後端縁から上記配線基板側へ突設し、突設した基板接続部40の先端部が後方へ折り曲げてある。したがって、各基板接続部40を各端子部3cと同様に半田などにより上記配線基板の一面に形成された上記配線基板の安定電位となる上記導電パターンに接合させることができ、且つ、上側シェル2を上記配線基板のグランドに電気的に接続することができる。
【0055】
図15における切り起こし片である各基板接続部40は、金属シェル5の後部側で上側シェル2における金属シェル5の左右方向の側端縁から上記配線基板側へ突設してある。したがって、各基板接続部40を上記配線基板の上記保持孔に挿入し、半田にて上記配線基板の上記保持孔の内周面に形成された安定電位となる導電パターン(グランド)に接合することによって、上側シェル2を上記配線基板のグランドに電気的に接続することができる。また、図13よりも各基板接続部40が各端子部3cから離れた位置にあるため、半田などによる接合がしやすくなる。
【0056】
図16における切り起こし片である各基板接続部40は、下側シェル1の左右方向(下側シェル1における金属シェル5の左右方向)の側面部を切り起こすことによって形成され、下側シェル1における上記側面部から上記配線基板側へ突設してある。したがって、各基板接続部40を上記配線基板の上記保持孔に挿入し、半田にて上記配線基板の上記保持孔の内周面に形成された安定電位となる導電パターン(グランド)に接合することによって、下側シェル1を上記配線基板のグランドに電気的に接続することができる。
【0057】
図17における各基板接続部40は、下側シェル1における上記配線基板との対向面となる一面をしぼり加工することによって形成された突起部である。ここにおいて、図17に例示したメモリカード用ソケットは、突起部である基板接続部40を上記配線基板に設けられた上記保持孔に挿入し、基板接続部40を半田にて上記配線基板のグランドに接合する際、上記配線基板に設けられた上記保持孔が基板接続部40によって塞がるので、下側シェル1とは反対側の上記配線基板の一表面側から下側シェル1側への半田フラックスの侵入を防ぐことができ、且つ、上記配線基板への実装強度を高くすることができる。
【0058】
図18における各基板接続部40は、下側シェル1における上記配線基板との対向面となる一表面の一部に金属膜を被着して形成された導体層である。ここにおいて、図18に例示したメモリカード用ソケットは、放熱部として機能させる導体層である基板接続部40を設けることによって、メモリカード動作時に発生する熱の放熱性を向上させることができ、且つ、上記配線基板への実装強度を高くすることができる。
【0059】
図19における各基板接続部40は、金属シェル5の後部側で下側シェル1の後端縁から突設された接続片1rに接続される端子片であって、接続された端子片が上記配線基板側へ突出してある。したがって、各基板接続部40を金属シェル5の後部側で下側シェル1の後端縁から突設された接続片1rに接続することが可能である。
【0060】
図20における各基板接続部40は、下側シェル1の左右方向の両側部に接続される端子片であって、接続された端子片が上記配線基板側へ突設してある。したがって、各基板接続部40を下側シェル1の左右方向の両側部に接続することが可能である。
【0061】
図21における各基板接続部40は、金属シェル5の後部側で下側シェル1の左右方向の側面部に溶接もしくは導電性接着剤などによって接着して形成される端子片である。したがって、各基板接続部40を金属シェル5の後部側で下側シェル1の左右方向の側面部に溶接もしくは導電性接着剤などによって接着することが可能である。
【0062】
図22における各基板接続部40は、金属シェル5の後部側で下側シェル1の左右方向の両側部に設けられた被圧接部1pに圧接して形成される端子片である。したがって、各基板接続部40を金属シェル5の後部側で下側シェル1の左右方向の両側部に設けられた被圧接部1pに圧接することが可能である。
【0063】
図23における各基板接続部40は、金属シェル5の後部側で下側シェル1の左右方向の側面部に設けられた被嵌合部1qに嵌合して形成される嵌合部である。したがって、各基板接続部40を金属シェル5の後部側で下側シェル1の左右方向の側面部に設けられた被嵌合部1qに嵌合することが可能である。
【0064】
ここで、上述の図10に示すようなメモリカード用ソケットに関して、金属シェル5におけるノイズ電圧の分布を測定した結果を図25および図26に示す。ここにおいて、金属シェル5におけるノイズ電圧の分布を測定する方法としては、上述のメモリカード用ソケットにSDメモリカードを挿入した状態で、上述のメモリカード用ソケットのコンタクト3に正弦波信号(例えば、周波数100MHz)を入力し、金属シェル5およびこの金属シェル5の周囲に発生する電磁界を検出するアンテナでノイズ電圧の分布を測定した。また、メモリカード用ソケットは、図25および図26に示す一点鎖線の位置に配置してある。
【0065】
図25は、各基板接続部40を上記配線基板のグランドに接地しない場合におけるノイズ電圧の分布を示し、金属シェル5の中心付近のノイズ電圧が、82.7[dBμV]〜87.0[dBμV]であった。一方、図26は、各基板接続部40を上記配線基板のグランドに接地した場合におけるノイズ電圧の分布を示し、金属シェル5の中心付近のノイズ電圧が、71.8[dBμV]〜78.3[dBμV]であった。したがって、図25と図26との金属シェル5の中心付近のノイズ電圧を比較すると、各基板接続部40を上記配線基板のグランドに接地させることにより、金属シェル5の中心付近のノイズ電圧が8.7[dBμV]〜10.9[dBμV]の範囲で低減しており、ノイズを抑制する効果が得られていることが分かる。
【0066】
メモリカードのデータ伝送の高速化を図るために、データ伝送のクロック周波数を高めると、クロック周波数の高調波成分が影響し、データ伝送時に発生するノイズが大きくなるが、上述のメモリカード用ソケットは、メモリカードのデータ伝送時に発生するノイズを、金属シェル5の各基板接続部40から、上記配線基板のグランドに逃がして、データ伝送時に発生するノイズを抑制することができる。したがって、金属シェル5に設けられた3つの基板接続部40を、上記配線基板のグランドに接合して電気的に接続することにより、各コンタクト3への静電気や外来ノイズを防ぎ、且つ、各コンタクト3から外部への輻射ノイズを低減することができる。つまり、メモリカードのデータ伝送時に発生するノイズを上記配線基板のグランドに逃がすことができ、データ伝送の高速化を図りながらも、安定したデータ伝送が可能となる。
【0067】
また、上述のメモリカード用ソケットの構成は、図1に例示した構成に限らず、例えば図24に示すように、各コンタクト3の各端子部3cが、金属シェル5の後部から後方に導出して上記配線基板側に折り曲げられ、基板接続部40が、下側シェル1の左右方向の両側面から上記配線基板側へ突設されたものであってもよい。なお、図1に示したメモリカード用ソケットと、図24に示したメモリカード用ソケットとでは、各コンタクト3の各端子部3cが、金属シェル5の後部から導出して折り曲げられる方向が異なる。
【0068】
以上説明した本実施形態のメモリカード用ソケットは、データ伝送の高速化を図りながらも、安定したデータ伝送ができる。
【符号の説明】
【0069】
1 下側シェル
1q 被嵌合部
2 上側シェル
3 コンタクト
3b 接触片
3c 端子部
5 金属シェル
12 コンタクトブロック
13 保持部
40 基板接続部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
前面にカード挿入口が開口した角筒状に形成され、メモリカードが挿抜される金属シェルと、前記メモリカードの一表面に並設された複数のI/O接触面に各別に接触可能な複数本のコンタクトが絶縁性の合成樹脂からなる保持部に保持され、前記金属シェルの後部内に装着されたコンタクトブロックとを備え、前記コンタクトブロックの前記各コンタクトの一端側に設けられ、実装相手の配線基板に形成された信号用導電パターンに接合される端子部が、前記金属シェルの後部から導出されてなるメモリカード用ソケットであって、前記金属シェルに、前記配線基板の安定電位となる導電パターンに接合して電気的に接続可能な少なくとも3つの基板接続部が設けられてなることを特徴とするメモリカード用ソケット。
【請求項2】
前記基板接続部は、前記金属シェルの隅部に設けられてなることを特徴とする請求項1記載のメモリカード用ソケット。
【請求項3】
前記金属シェルにおける前記配線基板との対向面となる一面の中央部に、少なくとも1つの前記基板接続部を設けてなることを特徴とする請求項1記載のメモリカード用ソケット。
【請求項4】
前記金属シェルの前部側の2つの隅部および前記金属シェルの後部側の一方の隅部に、前記基板接続部を設けてなることを特徴とする請求項2記載のメモリカード用ソケット。
【請求項5】
前記金属シェルの前部側の2つの隅部および前記金属シェルの後端縁の近傍に、前記基板接続部を設けてなることを特徴とする請求項1記載のメモリカード用ソケット。
【請求項6】
前記金属シェルの前部側の2つの隅部および前記金属シェルにおける前記配線基板との対向面となる一面の中央部に、前記基板接続部を設けてなることを特徴とする請求項1記載のメモリカード用ソケット。
【請求項7】
前記金属シェルの後部側の2つの隅部および前記金属シェルの前端縁の近傍に、前記基板接続部を設けてなることを特徴とする請求項1記載のメモリカード用ソケット。
【請求項8】
前記金属シェルの後部側の2つの隅部および前記金属シェルにおける前記配線基板との対向面となる一面の中央部に、前記基板接続部を設けてなることを特徴とする請求項1記載のメモリカード用ソケット。
【請求項9】
前記基板接続部は、前記金属シェルの4つの隅部に設けられてなることを特徴とする請求項2記載のメモリカード用ソケット。
【請求項10】
前記基板接続部は、前記金属シェルの一部を切り起こすことにより形成された切り起こし片であることを特徴とする請求項1ないし請求項9のいずれか1項に記載のメモリカード用ソケット。
【請求項11】
前記基板接続部は、前記金属シェルの一部をしぼり加工することによって形成された突起部であることを特徴とする請求項1ないし請求項9のいずれか1項に記載のメモリカード用ソケット。
【請求項12】
前記基板接続部は、前記金属シェルの一部に金属膜を被着して形成された導体層であることを特徴とする請求項1ないし請求項9のいずれか1項に記載のメモリカード用ソケット。
【請求項13】
前記切り起こし片は、前記金属シェルにおけるメモリカードの挿抜方向に直交する左右方向の側面部で前記金属シェルから前記メモリカードの挿抜方向および前記金属シェルの左右方向に直交する方向へ延設されてなることを特徴とする請求項10記載のメモリカード用ソケット。
【請求項14】
前記金属シェルは、第1の金属板により形成され、前記配線基板側に位置する下側シェルと、第2の金属板により形成され、下側シェルの一表面側に被着された上側シェルとで構成され、前記切り起こし片が、後方に突設されてなることを特徴とする請求項10記載のメモリカード用ソケット。
【請求項15】
前記切り起こし片は、前記金属シェルの左右方向の両側部から突設されてなることを特徴とする請求項10記載のメモリカード用ソケット。
【請求項16】
前記切り起こし片は、前記上側シェルの後端縁の近傍から突設されてなることを特徴とする請求項14記載のメモリカード用ソケット。
【請求項17】
前記切り起こし片は、前記上側シェルにおいて、前記メモリカードの挿抜方向に直交する左右方向の両側縁から突設されてなることを特徴とする請求項14記載のメモリカード用ソケット。
【請求項18】
前記突起部は、前記金属シェルにおける前記配線基板との対向面となる一面の隅部に形成されてなることを特徴とする請求項11記載のメモリカード用ソケット。
【請求項19】
前記基板接続部は、前記金属シェルに接続される端子片であって、前記金属シェルの後方へ突出してなることを特徴とする請求項1ないし請求項9のいずれか1項に記載のメモリカード用ソケット。
【請求項20】
前記基板接続部は、前記金属シェルの両側部に接続される端子片であって、前記メモリカードの挿抜方向および前記金属シェルの左右方向に直交する方向へ突設してなることを特徴とする請求項1ないし請求項9のいずれか1項に記載のメモリカード用ソケット。
【請求項21】
前記基板接続部は、前記金属シェルに溶接もしくは接着して形成されてなることを特徴とする請求項1ないし請求項9のいずれか1項に記載のメモリカード用ソケット。
【請求項22】
前記基板接続部は、前記金属シェルの左右方向の両側部に圧接して形成されてなることを特徴とする請求項1ないし請求項9のいずれか1項に記載のメモリカード用ソケット。
【請求項23】
前記基板接続部は、前記金属シェルの被嵌合部に嵌合して形成されてなることを特徴とする請求項1ないし請求項9のいずれか1項に記載のメモリカード用ソケット。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図27】
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【図25】
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【図26】
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【公開番号】特開2011−204599(P2011−204599A)
【公開日】平成23年10月13日(2011.10.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−73038(P2010−73038)
【出願日】平成22年3月26日(2010.3.26)
【出願人】(000005832)パナソニック電工株式会社 (17,916)
【Fターム(参考)】