説明

メモリーカード用コネクタ

【課題】長さl1、幅w1、厚さt1の比較的大型のメモリーカードと、長さl2、幅w2、厚さt2の比較的小型のメモリーカードが、l1>l2、l2≧w1>w2、t1≧t2の関係にある2種類のメモリーカードをそれぞれ同一方向からハウジング本体の対応するカード収容凹部へ挿入して接続するメモリーカード用コネクタにおいて、比較的大型のメモリーカードを収容するカード収容凹部へ比較的小型のメモリーカードを誤挿入しても確実に取り出すことができるメモリーカード用コネクタを提供する。
【解決手段】比較的大型のメモリーカードを挿入するカード収容凹部を、幅w1の方向に沿って比較的大型のメモリーカードを収容する横長長方形の輪郭に形成し、誤って比較的小型のメモリーカードを誤挿入しても、カード収容凹部の奥行きより長く、完全に挿入されないので、カード収容凹部から確実に取り出すことができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、携帯電話機、デジタルカメラ等の携帯電子機器に搭載されるメモリーカード用コネクタに関し、特に、2種類の大きさのメモリーカードを同方向から挿入して接続するメモリーカード用コネクタに関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、携帯電話機、ゲーム機、デジタルカメラ等の携帯電子機器には、使用者の個人情報等が記憶された情報管理用のメモリーカードと、カメラで撮像した画像などの種々の情報を記憶する記録用のメモリーカードとを接続することが要望され、携帯電子機器に搭載するコネクタとして、2種類のメモリーカードをそれぞれ同時に接続可能なメモリーカード用コネクタが知られている。
【0003】
このメモリーカード用コネクタは、2種類のメモリーカードを挿入するために、それぞれ独立した2種類のカード収容凹部がハウジング本体に形成されるが、コネクタを実装するプリント配線基板側の実装面積が拡大しないように、プリント配線基板の実装面と平行となる2種類のカード収容凹部をハウジング本体の上下の2段に分けて形成したメモリーカード用コネクタが知られている(特許文献1)。
【0004】
この特許文献1に記載のメモリーカード用コネクタは、上下2段に分けられた各カード収容凹部の開口が、ハウジング本体の直交する側面にそれぞれ開口し、2種類のメモリーカードを互いに直交する方向から挿入させ、接続する直角方向挿入型のメモリーカード用コネクタとなっている。
【0005】
一方、ハウジング本体の一側面に、2種類のカード収容凹部を開口させ、携帯電子機器の一方向から2種類のメモリーカードを挿入可能とした同方向挿入型のメモリーカード用コネクタも知られている。
【0006】
この同方向挿入型のメモリーカード用コネクタは、半導体フロッピーディスクカード(Solid State Floppy Disk Card、以下スマートメディアカードという)とSD(Secure Digital)カードの2種類のメモリーカードをそれぞれの外形に合わせたカード収容凹部へ挿入するものであり、比較的大型のスマートメディアカードの厚さは、比較的小型のSDカードの厚さより薄いために、スマートメディアカードを挿入するカード収容凹部へ小型のSDカードを挿入することはできず、また、スマートメディアカードも、開口幅が狭いSDカードを挿入するカード収容凹部へ挿入することができない構造となっていた。
【0007】
従って、ハウジング本体の同一面に、2種類のカード収容凹部開口が開口していても、他側のメモリーカードを誤挿入することがなかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2005−173943号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
従来の直角方向挿入型のメモリーカード用コネクタは、コネクタを搭載する携帯電子機器へ、直交する2方向から2種類のメモリーカードを挿入可能とするためにその構造が複雑化し、また、使用者にとっても、メモリーカード毎にカードを挿入する開口を探す必要があり、使い勝手が悪いという問題があった。
【0010】
また、従来の同方向挿入型のメモリーカード用コネクタは、2種類の比較的大型のメモリーカードの厚さが、比較的小型のメモリーカードより薄ければ、大型のメモリーカードを収容するカード収容凹部の開口の高さを小型のメモリーカードの厚さより狭くすることにより、上述の通り、誤挿入を防止できるが、大型のメモリーカードの厚さが小型のメモリーカードの厚さ以上である場合には、誤挿入を防止できない。
【0011】
例えば、2種類のメモリーカードが、長方形板状の長手方向の長さl1、幅w1、厚さt1の情報管理用のメモリーカードである図10(a)に示すSIM(Subscriber Identity Module)カード50と、長方形板状の長手方向の長さl2、幅w2、厚さt2の記録用のメモリーカードである同図(b)に示すMicroSD(Secure Digital)カード60である場合には、両者は、l1>l2、l2≧w1>w2、t1≧t2の関係となっている。
【0012】
従って、SIMカード50をその長手方向に沿って挿入して収容するSIMカード収容凹部の開口は、横幅w1、高さt1よりわずかに大きい長方形輪郭となり、横幅w1より狭く、厚さがt1以下のt2であるMicroSDカード60は、誤ってSIMカード収容凹部へ挿入可能となり、奥行きが長さl1よりわずかに短いだけのSIMカード収容凹部内に、挿入方向の長さがl1>l2の関係にあるMicroSDカード60が完全に誤挿入されると、SIMカード収容凹部から取り出せないという問題が生じる。
【0013】
従って、携帯電子機器の構造や使い勝手から、同方向挿入型のメモリーカード用コネクタが望まれているが、同方向挿入型のメモリーカード用コネクタに適用できる2種類のメモリーカードは、その種類が限られていた。
【0014】
本発明は、このような従来の問題点を考慮してなされたものであり、2種類の大きさのメモリーカードを同一方向から挿入可能とするメモリーカード用コネクタで、他側のメモリーカードを収容するカード収容凹部へ、メモリーカードを誤挿入しても、確実に取り出すことができるメモリーカード用コネクタを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0015】
上述の目的を達成するため、請求項1のメモリーカード用コネクタは、長方形板状の長手方向の長さl1、幅w1、厚さt1の第1メモリーカードを収容する第1カード収容凹部と、長方形板状の長手方向の長さl2、幅w2、厚さt2の第2メモリーカードを収容する第2カード収容凹部とが、互いに平行に鉛直方向の2段に分けて、ハウジング本体に形成され、第1カード収容凹部と第2カード収容凹部がハウジング本体の同一側面側に開口し、同一方向から挿入されるl1>l2、l2≧w1>w2、t1≧t2の関係にある大小2種類の第1メモリーカードと第2メモリーカードの各電極に、それぞれ第1収容凹部内に臨む第1コンタクトと第2収容凹部内に臨む第2コンタクトが電気接続するメモリーカード用コネクタであって、第1カード収容凹部を、ハウジング本体の開口からの奥行きが幅w1より短く、幅w1の方向に沿って挿入される第1メモリーカードを収容する横長長方形の輪郭に形成し、第1コンタクトを、第1カード収容凹部に横長に収容される第1メモリーカードの電極の部位に臨ませるとともに、第2カード収容凹部を、ハウジング本体の開口からの奥行きが長さl2より短く、長さl2の方向に沿って挿入される第2メモリーカードを収容する縦長長方形の輪郭に形成し、第2コンタクトを、第2カード収容凹部に縦長に収容される第2メモリーカードの電極の部位に臨ませることを特徴とする。
【0016】
第1カード収容凹部のハウジング本体の開口からの奥行きは、第1メモリーカードの幅w1より短いので、第1カード収容凹部に収容した第1メモリーカードを取り出し可能であり、また、第1カード収容凹部へ、第2メモリーカードをその長手方向に沿って誤って挿入しても、第2メモリーカードの長手方向の長さl2は、少なくとも第1カード収容凹部の奥行きより長く、第1カード収容凹部から取り出すことができる。
【0017】
請求項2のメモリーカード用コネクタは、第1カード収容凹部の開口から奥行きに向かって、第1カード収容凹部の内方に傾斜する少なくとも一対の板バネ傾斜片が、第1カード収容凹部の内底面若しくは内頂面を基端として片持ち支持され、一対の板バネ傾斜片は、第1カード収容凹部の開口から奥行きに向かうカード挿入方向に対して、互いに異なる方向から交差する向きで片持ち支持されていることを特徴とする。
【0018】
メモリーカードを、第1カード収容凹部の開口から奥行きに向かうカード挿入方向に沿って挿入すると、片持ち支持された板バネ傾斜片は、その基端側の内底面若しくは内頂面に向かって押し下げられ、第1カード収容凹部内に支障なくメモリーカードが収容される。また、メモリーカードを、第1カード収容凹部のカード挿入方向に対して交差する斜めに挿入すると、カード挿入方向に対して互いに異なる方向から交差する向きで片持ち支持された一対の板バネ傾斜片のいずれかの板バネ傾斜片の側方に、メモリーカードの先端が当接し、第1カード収容地凹部内に挿入できない。従って、第1カード収容凹部へ誤挿入する可能性のある第2メモリーカードは、カードの長手方向と第1カード収容凹部のカード挿入方向とがほぼ一致する向きで挿入された場合にのみ、第1カード収容部へ挿入可能であり、第1カード収容凹部の開口から一部が突出するので、確実に取り出すことができる。
【0019】
また、第1カード収容凹部内に正しく収容された第1メモリーカードは、一対の板バネ傾斜片によって、対向する内頂面若しくは内底面側に付勢されるので、第1カート収容凹部内でがたつかずに収容される。
【0020】
また、第1コンタクトが、一対の板バネ傾斜片が形成される内底面若しくは内頂面の対向面に配設されている場合には、第1メモリーカードの各電極は、一対の板バネ傾斜片により第1コンタクト側に付勢され、電極とコンタクト間に所定の接触圧が得られ、両者が確実に電気接続する。
【0021】
請求項3のメモリーカード用コネクタは、第1カード収容凹部が、絶縁プレートのコの字状凸部で囲われた凹部と、前記凹部を覆うように前記絶縁プレートに取り付けられた金属カバーとの間に形成され、一対の板バネ傾斜片は、細長帯状の短手方向の一辺の基端を残して金属板から切り欠かれた帯状片が、基端で凹部に向かって斜めに折り曲げられ、金属カバーに片持ち支持されることを特徴とする。
【0022】
一対の板バネ傾斜片は、第1カード収容凹部を形成する金属カバーを利用し、金属カバーから切り起こすプレス工程だけの簡単な加工で形成される。
【0023】
請求項4のメモリーカード用コネクタは、第1カード収容凹部の内奥面に、鉛直方向に沿った凹溝が凹設されていることを特徴とする。
【0024】
メモリーカードを、第1カード収容凹部のカード挿入方向に対して交差する斜めに挿入すると、メモリーカードの先端側角部が内奥面の凹溝に係合するとともに、メモリーカードの側面が第1カード収容凹部の内側面に当接し、斜めの姿勢では、第1カード収容地凹部内に挿入できない。従って、第1カード収容凹部へ誤挿入する可能性のある第2メモリーカードは、カードの長手方向と第1カード収容凹部のカード挿入方向とがほぼ一致する向きで挿入された場合にのみ、第1カード収容部へ挿入可能であり、第1カード収容凹部の開口から一部が突出し、確実に取り出すことができる。
【0025】
請求項5のメモリーカード用コネクタは、第1メモリーカードがSIMカードであり、第2メモリーカードがmicroSDカードであることを特徴とする。
【0026】
長方形板状の長手方向の長さl1、幅w1、厚さt1のSIMカードと、長方形板状の長手方向の長さl2、幅w2、厚さt2のmicroSDカードとは、l1>l2、l2≧w1>w2、t1≧t2の関係にあり、長手方向で挿入するmicroSDカードは、誤ってSIMカードを収容する第1カード収容凹部へ挿入しても、確実に取り出すことができる。
【発明の効果】
【0027】
請求項1の発明によれば、2種類のメモリーカードを同一方向から挿入するメモリーカード用コネクタであって、比較的大型の第1メモリーカードを収容する第1カード収容凹部に比較的小型の第2メモリーカードを誤挿入可能であっても、第2メモリーカードの長手方向の一側が第1カード収容凹部の開口から突出するので、必ず取り出すことができる。
【0028】
請求項2の発明によれば、第2メモリーカードを第1カード収容凹部内に斜めに挿入することができないので、その一部が第1カード収容凹部の開口から突出し、確実に取り出すことができる。
【0029】
また、第1カード収容凹部内に正しく収容された第1メモリーカードは、第1カート収容凹部内でがたつかずに収容され、第1コンタクトが、一対の板バネ傾斜片が形成される内底面若しくは内頂面の対向面に配設されている場合には、第1メモリーカードの各電極と対向する第1コンタクトは、所定の接触圧で確実に電気接続する。
【0030】
請求項3の発明によれば、一対の板バネ傾斜片を、第1カード収容凹部を形成する金属カバーを利用して簡単な加工で形成することができる。
【0031】
また、第1カード収容凹部に収容される第1メモリーカードは、板バネ傾斜片により絶縁プレートの凹部の方向に付勢されるので、第1メモリーカードの各電極は、絶縁プレートの凹部に臨む第1コンタクトと、所定の接触圧で確実に電気接続する。
【0032】
請求項4の発明によれば、第2メモリーカードを第1カード収容凹部内に斜めに挿入することができないので、その一部が第1カード収容凹部の開口から突出し、確実に取り出すことができる。
【0033】
請求項5の発明によれば、microSDカードは、その外形や電極の位置によって、カードの長手方向に挿入することが案内されているので、第1カード収容凹部へその短手方向に沿って挿入することがなく、誤ってSIMカードを収容する第1カード収容凹部へ挿入しても、確実に取り出すことができる。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【図1】本発明の一実施の形態に係るメモリーカード用コネクタ1へ、SIMカード50とmicroSDカード60を接続した状態を示す斜視図である。
【図2】金属カバー5の斜視図である。
【図3】6本のL字コンタクト3と8本の細長帯状コンタクト4が片持ち支持された絶縁プレート2の斜視図である。
【図4】SIMカード50のカード挿入方向に直交する方向に沿って切断したメモリーカード用コネクタ1の縦断面図である。
【図5】下カード収容凹部7の横断面図である。
【図6】下カード収容凹部7の要部斜視図である。
【図7】下カード収容凹部7へmicroSDカード60を斜めに挿入した状態を示す斜視図である。
【図8】下カード収容凹部7へmicroSDカード60をカード挿入方向に沿って誤挿入した状態を示すメモリーカード用コネクタ1の斜視図である。
【図9】第2実施の形態に係るメモリーカード用コネクタ30の下カード収容凹部31へmicroSDカード60を斜めに挿入する状態を示す横断面図である。
【図10】2種類のメモリーカードを示し、(a)は、SIMカード50、(b)は、microSDカード60の平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0035】
以下、本発明の一実施の形態に係るメモリーカード用コネクタ1を、図1乃至図8を用いて説明する。本実施の形態の説明では、図4に図示する各方向を上下左右方向と、図4の紙面に直交する奥行き方向を後方と、同手前方向を前方としてメモリーカード用コネクタ1の各部を説明する。
【0036】
このメモリーカード用コネクタ1に挿入して接続する2種類のメモリーカードは、前述したSIMカード50とmicroSDカード60であり、図10(a)に示すように、SIMカード50は、長手方向の長さl1、幅w1、厚さt1の長方形板状のメモリーカードであり、microSDカード60は、同図(b)に示すように、長手方向の長さl2、幅w2、厚さt2の長方形板状のメモリーカードである。両者は、l1>l2、l2≧w1>w2、t1≧t2の関係にあり、メモリーカード用コネクタ1は、図1に示すように、比較的大型のSIMカード50と比較的小型のmicroSDカード60を、前方から後方の同一方向に挿入可能となっている。
【0037】
メモリーカード用コネクタ1は、絶縁プレート2と、絶縁プレート2にそれぞれ片持ち支持された6本のL字コンタクト3及び8本の細長帯状コンタクト4と、一対のスイッチコンタクト10と、絶縁プレート2の周囲を覆う金属カバー5とからなっている。
【0038】
絶縁プレート2は、絶縁プラスチックにより外形が長方形薄板状に形成され、その上面に、MicroSDカード60の長手方向の2側面と短手方向の1側面を囲う上枠部2aと、下面に、SIMカード50の短手方向の2側面と長手方向の1側面を囲う下枠部2bとが、それぞれ前方に向かって開口するコの字状に一体に形成されている。メモリーカード用コネクタ1のハウジング本体は、このように形成された絶縁プレート2と、長方形薄板状の絶縁プレート2の前面と後面を除く周囲を覆うように、図2に示す角筒状に折り曲げ形成された金属カバー5とから構成される。
【0039】
金属カバー5は、絶縁プレート2の前方から装着され、前面に沿って折り曲げられたストッパー片5aが絶縁プレート2の前面に当接する位置で、左右の側面から内側に切り起こされた切り起こし片5bが絶縁プレート2の両側面の凹溝に嵌入して、絶縁プレート2に固定される。金属カバー5を絶縁プレート2に固定することにより、上枠部2aで囲われる絶縁プレート2の上面と金属カバー5との間にMicroSDカード60を収容する上カード収容凹部6が、下枠部2bで囲われる絶縁プレート2の下面と金属カバー5との間にSIMカード50を収容する下カード収容凹部7が、絶縁プレート2を介した上下二段に形成される。
【0040】
金属カバー5の下面は、下カード収容凹部7の内底面となり、図2に示すように、その前方の開口寄りの位置には、互いに左右方向に所定の間隔を隔てて、前後方向に対して交差する方向に、4枚の板バネ傾斜片5c、5dが上方に向けて切り起こされている。このうち、2枚の板バネ傾斜片5cは、金属カバー5の下面から、前方の一辺を残して左後方に向かって細長コの字状に切り欠かれ、前方の一辺を基端とし斜め上方に折り曲げて形成される。また、残る2枚の板バネ傾斜片5dも、金属カバー5の下面から、前方の一辺を残して右後方に向かって細長コの字状に切り欠かれ、前方の一辺を基端として斜め上方に折り曲げて形成される。従って、4枚の板バネ傾斜片5c、5dは、いずれも後方に向かって下カード収容凹部7の内方に傾斜するとともに、その内の一組の板バネ傾斜片5c、5dは、前後方向のカード挿入方向に対して、互いに異なる方向から交差するように、それぞれ金属カバー5に片持ち支持されるものとなっている。
【0041】
金属カバー5と絶縁プレート2の間に形成される下カード収容凹部7は、前方からその短手方向に沿って挿入するSIMカード50を収容するため、横幅と高さがそれぞれl1、t1よりそれぞれわずかに長い横長の輪郭で前方に開口し、開口から内奥面までの奥行きはSIMカード50の幅w1より短い長さとなっている。
【0042】
6本の各L字コンタクト3は、幅広で下面が突曲面となった凸面接触部3aと、凸面接触部3aの左側から後方へ引き出されるL字状の脚部3bとが、りん青銅からなる導電性薄肉金属板を鉛直方向に打ち抜いて形成される。図3に示すように、絶縁プレート2の上カード収容凹部6を避けた左側には、前後方向に沿って長方形の輪郭の第1コンタクト収容孔2cが2列に分けて形成され、インサート成形により、互いに絶縁して絶縁プレート2に片持ち支持される6本の各L字コンタクト3は、3本毎に各第1コンタクト収容孔2cに脚部3bの中間から凸面接触部3aが右方に突出している。
【0043】
片持ち支持される脚部3bとその自由端側の凸面接触部3aは、固定端から下方に傾斜するようにプレストレスが付与され、凸面接触部3aが第1コンタクト収容孔2cの下方で下カード収容凹部7内に突出した状態で、先端の位置決め片3cが第1コンタクト収容孔2cの周縁に上方から当接し、位置決めされる。凸面接触部3aの前方下面側は、後方に向かって下方に傾斜する傾斜面となり、後方に向かって挿入されるSIMカード50が凸面接触部3a当接すると、脚部3bが撓み、上方の第1コンタクト収容孔2c内に退避する。図10(a)に示すように、SIMカード50の6個の電極51は、その上面の前方寄りに3行2列のマトリックス状に分散して露出し、各L字コンタクト3の凸面接触部3aは、横長で収容されるSIMカード50の各電極51の露出位置に対応して下カード収容凹部7内に突出している。
【0044】
金属カバー5の上面と絶縁プレート2の間に形成される上カード収容凹部6は、前方からその長手方向に沿って挿入するMicroSDカード60を収容するため、横幅と高さがそれぞれw2、t2よりそれぞれわずかに長い横長の輪郭で前方に開口し、開口から内奥面までの奥行きはMicroSDカード60の長手方向の長さl2より短い長さとなっている。図10(b)に示すように、MicroSDカード60の8個の電極61は、その下面の先端側一辺に沿って直線状に露出するので、長手方向に沿って挿入され、上カード収容凹部6に縦長で収容されるMicroSDカード60の各電極61にそれぞれ接続する8本の細長帯状コンタクト4が絶縁プレート2に取り付けられている。
【0045】
8本の細長帯状コンタクト4は、それぞれ図3に示すように、全体が細幅帯状に形成され、後方の先端に向かって上方に傾斜して支持される板バネ接触部4aと、板バネ接触部4aの前方に連結し、U字状に後方に引き出される脚部4bが、L字コンタクト3と同様に、りん青銅からなる導電性薄肉金属板を鉛直方向に打ち抜いて形成される。8本の細長帯状コンタクト4は、L字コンタクト3とともに絶縁プレート2にインサート成形されて絶縁プレート2に片持ち支持されるもので、上枠部2aで囲われる絶縁プレート2の上面に横長長方形の輪郭で形成される第2コンタクト収容孔2dの前縁で脚部4bを片持ち支持し、その先端側に連結する板バネ接触部4aを後方に向かって上方に傾斜させて、上カード収容凹部6内に突出させている。上カード収容凹部6内に突出する各板バネ接触部4aは、上カード収容凹部6にその長手方向に沿って挿入されるMicroSDカード60の下面の一辺に沿って直線状に露出する8個の電極61に弾性接触する。
【0046】
スイッチコンタクト10は、上カード収容凹部6へMicroSDカード60が挿入されたことを検知する為の一対の板バネ片であり、その自由端が上カード収容凹部6内で可動するように絶縁プレート2へ片持ち支持される。
【0047】
このように構成されたメモリーカード用コネクタ1に、図1に示すように、SIMカード50をその短手方向に沿って前方から下カード収容凹部7へ挿入すると、下カード収容凹部7の開口の横幅及び内壁面間の間隔は、SIMカード50の長手方向の長さl1よりわずかに長いだけであるので、SIMカード50は、下カード収容凹部7のカード挿入方向に沿った前後方向に案内されて挿入される。従って、前後方向に挿入されるSIMカード50は、下カード収容凹部7の内底面(金属カバー5の下面)に片持ち支持された4枚の板バネ傾斜片5c、5dのいずれともわずかな角度で交差するだけなので、SIMカード50の先端が、各板バネ傾斜片5c、5dの基端から乗り上げ、板バネ傾斜片5c、5dを下カード収容凹部7の内底面の方向に押し下げながら、下カード収容凹部7の内奥面に当接する位置まで挿入される。この挿入の間に、下カード収容凹部7の内頂面側から突出する6本のL字コンタクト3の各凸面接触部3aの傾斜面にSIMカード50が当接し、各凸面接触部3aは、第1コンタクト収容孔2c内に退避しながら、脚部3bが上方に撓み、SIMカード50の対応する各電極51に弾性接触する。
【0048】
このとき、内底面に片持ち支持された4枚の板バネ傾斜片5c、5dは、SIMカード50を下カード収容凹部7内で上方に付勢し、SIMカード50が下カード収容凹部7内でがたつきなく収容されると共に、各電極51を各凸面接触部3a側に付勢するので、両者が所定の接触圧でより確実に電気接続される。
【0049】
また、上述のSIMカード50の挿入に前後して、メモリーカード用コネクタ1の上カード収容凹部6に、更に、MicroSDカード60をその長手方向に沿って前方から挿入すると、上カード収容凹部6内で後方に向かって上方に傾斜する8本の細長帯状コンタクト4の各板バネ接触部4aにMicroSDカード60が当接し、各板バネ接触部4aは、第2コンタクト収容孔2d内の下方に撓みながら、MicroSDカード60の対応する各電極61に弾性接触する。これにより、同一方向から挿入されるSIMカード50とMicroSDカード60は、上下の2段に分けて収容され、各カード50、60の電極51、61が対応するコンタクト3、4に電気接続する。
【0050】
一方、上カード収容凹部6と下カード収容凹部7は、絶縁ハウジング2、5のいずれも前面に開口するので、比較的小型のMicroSDカード60を、SIMカード50を収容する下カード収容凹部7へ誤挿入することがある。MicroSDカード60は、図10(b)に示すように、その輪郭形状と後端に指で挟む凹段部62が形成されているので、凹段部62が形成された前端を持ってその長手方向に沿って下カード収容凹部7へ挿入することとなるが、下カード収容凹部7のカード挿入方向である前後方向に対して、図5、図7に示すように、斜めに挿入しようとすると、挿入方向に対して一組の板バネ傾斜片5c、5dのいずれか(図5では、5c)の側面にMicroSDカード60の先端が直角に近い角度で当接し、同じ姿勢では下カード収容凹部7内に挿入できない。従って、MicroSDカード60が斜めの姿勢のまま下カード収容凹部7内に収容され、取り出せなくなることがなく、また、操作者は、下カード収容凹部7へ挿入できないことによって、MicroSDカード60を誤挿入したことを認識し、正しい上カード収容凹部6へ挿入し直すことができる。
【0051】
また、下カード収容凹部7のカード挿入方向(前後方向)に沿って誤挿入したMicroSDカード60は、4枚の板バネ傾斜片5c、5dといずれともわずかな角度で交差するだけなので、MicroSDカード60の先端は、各板バネ傾斜片5c、5dの基端から乗り上げ、片持ち支持された板バネ傾斜片5c、5dを下カード収容凹部7の内底面(金属カバー5の下面)の方向に押し下げながら、その先端が下カード収容凹部7の内奥面に当接する位置までカード挿入方向に沿った後方に向かって挿入される。MicroSDカード60の先端を下カード収容凹部7の内奥面に当接するまで挿入しても、MicroSDカード60の長手方向の長さl2は、SIMカード50の横幅w1とl2≧w1の関係にあり、図8に示すように、SIMカード50の横幅w1より開口から内奥面までの奥行きが短い下カード収容凹部7の開口からMicroSDカード60の前端が突出して残り、誤挿入したMicroSDカード60を下カード収容凹部7から簡単に引き抜くことができる。
【0052】
上述の実施の形態では、MicroSDカード60は、その形状から操作者が長手方向に沿って挿入するように案内するので、下カード収容凹部7へ誤挿入する際にも、通常は自然に下カード収容凹部7の奥行き方向を長手方向として挿入するものであり、必ずその前端が下カード収容凹部7の開口から露出し、取り出し可能となる。更に、本実施の形態では、4枚の板バネ傾斜片5c、5dを設けることによって、奥行き方向に対して斜めの姿勢でのMicroSDカード60の挿入を禁止するので、MicroSDカード60を、下カード収容凹部7の奥行き方向を長手方向として挿入させ、下カード収容凹部7から確実に取り出すことができる。
【0053】
下カード収容凹部の奥行き方向に対して、斜めの姿勢でのMicroSDカード60の挿入を禁止する手段としては、上記4枚の板バネ傾斜片5c、5dに代えた他の構成を用いてもよい。図9は、斜めの姿勢でのMicroSDカード60の挿入を禁止する他の構成を有する本発明の第2実施の形態に係るメモリーカード用コネクタ30の横断面図である。
【0054】
このメモリーカード用コネクタ30は、横長にSIMカード50を収容する下カード収容凹部31の内奥面31aに、鉛直方向の多数の凹溝32を任意の間隔で凹設している。図示するように、カード挿入方向(前後方向)に対して下カード収容凹部31へ斜めの姿勢で誤挿入されるMicroSDカード60は、傾斜した先端の角部が内奥面31aまで到達すると、いずれかの凹溝32に係合するとともに、その角部の前端が下カード収容凹部31を構成する側壁31bに当接するので、MicroSDカード60の一部が下カード収容凹部31の開口から突出して残された状態で、挿入ができなくなる。これにより、操作者は、誤挿入に気付き、開口から突出する一部を摘み、MicroSDカード60を下カード収容凹部31から簡単に引き抜くことができる。
【0055】
この凹溝32を凹設して、MicroSDカード60の斜めの姿勢での挿入を禁止する構成は、上記第1実施の形態に係る板バネ傾斜片5c、5dによる禁止手段と併用することも可能であり、両者を併用することにより、より確実にMicroSDカード60を下カード収容凹部7、31のカード挿入方向に沿って挿入させることができる。
【0056】
上述の実施の形態では、絶縁ハウジングの上方に、MicroSDカード60を収容する上カード収容凹部6を、下方にSIMカード50を収容する下カード収容凹部7を形成しているが、絶縁ハウジングの同方向に両者が開口するものであれば、その配置は上下逆であってもよい。
【0057】
また、4枚の板バネ傾斜片5c、5dは、金属カバー5から切り起こして一体に形成しているので、メモリーカードの挿抜を繰り返しても疲労しにくい耐久性に優れたものとなっているが、必ずしも金属カバーから形成する必要はない。
【0058】
更に、2種類のメモリーカードは、上述のSIMカード50及びMicroSDカード60に限らず、両者の外形が上述のl1>l2、l2≧w1>w2、t1≧t2の関係にあれば、他のメモリーカードの組合せであってもよい。
【産業上の利用可能性】
【0059】
本発明は、2種類の大きさのメモリーカードを同方向からそれぞれ別の収容凹部へ挿入するメモリーカード用コネクタに適している。
【符号の説明】
【0060】
1 メモリーカード用コネクタ
2 絶縁プレート(ハウジング本体)
2b 下枠部(コの字状凸部)
3 L字コンタクト(第1コンタクト)
4 細長帯状コンタクト(第2コンタクト)
5 金属カバー(ハウジング本体)
5c 板バネ傾斜片
5d 板バネ傾斜片
6 上カード収容凹部(第2カード収容凹部)
7 下カード収容凹部(第1カード収容凹部)
30 メモリーカード用コネクタ
31 下カード収容凹部(第1カード収容凹部)
31a 下カード収容凹部の内奥面
32 凹溝
50 SIMカード(第1メモリーカード)
51 第1メモリーカードの電極
60 SDカード(第2メモリーカード)
61 第2メモリーカードの電極

【特許請求の範囲】
【請求項1】
長方形板状の長手方向の長さl1、幅w1、厚さt1の第1メモリーカードを収容する第1カード収容凹部と、長方形板状の長手方向の長さl2、幅w2、厚さt2の第2メモリーカードを収容する第2カード収容凹部とが、互いに平行に鉛直方向の2段に分けて、ハウジング本体に形成され、
第1カード収容凹部と第2カード収容凹部がハウジング本体の同一側面側に開口し、同一方向から挿入されるl1>l2、l2≧w1>w2、t1≧t2の関係にある大小2種類の第1メモリーカードと第2メモリーカードの各電極に、それぞれ第1収容凹部内に臨む第1コンタクトと第2収容凹部内に臨む第2コンタクトが電気接続するメモリーカード用コネクタであって、
第1カード収容凹部を、ハウジング本体の開口からの奥行きが幅w1より短く、幅w1の方向に沿って挿入される第1メモリーカードを収容する横長長方形の輪郭に形成し、第1コンタクトを、第1カード収容凹部に横長に収容される第1メモリーカードの電極の部位に臨ませるとともに、
第2カード収容凹部を、ハウジング本体の開口からの奥行きが長さl2より短く、長さl2の方向に沿って挿入される第2メモリーカードを収容する縦長長方形の輪郭に形成し、第2コンタクトを、第2カード収容凹部に縦長に収容される第2メモリーカードの電極の部位に臨ませることを特徴とするメモリーカード用コネクタ。
【請求項2】
第1カード収容凹部の開口から奥行きに向かって、第1カード収容凹部の内方に傾斜する少なくとも一対の板バネ傾斜片が、第1カード収容凹部の内底面若しくは内頂面を基端として片持ち支持され、
前記一対の板バネ傾斜片は、第1カード収容凹部の開口から奥行きに向かうカード挿入方向に対して、互いに異なる方向から交差する向きで片持ち支持されていることを特徴とする請求項1に記載のメモリーカード用コネクタ。
【請求項3】
第1カード収容凹部は、絶縁プレートのコの字状凸部で囲われた凹部と、前記凹部を覆うように前記絶縁プレートに取り付けられた金属カバーとの間に形成され、
一対の板バネ傾斜片は、細長帯状の短手方向の一辺の基端を残して金属板から切り欠かれた帯状片が、基端で凹部に向かって斜めに折り曲げられ、金属カバーに片持ち支持されることを特徴とする請求項2に記載のメモリーカード用コネクタ。
【請求項4】
第1カード収容凹部の内奥面に、鉛直方向に沿った凹溝が凹設されていること特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれか1項に記載のメモリーカード用コネクタ。
【請求項5】
第1メモリーカードが、SIMカードであり、第2メモリーカードがmicroSDカードである請求項1乃至請求項4のいずれか1項に記載のメモリーカード用コネクタ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2010−212122(P2010−212122A)
【公開日】平成22年9月24日(2010.9.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−57639(P2009−57639)
【出願日】平成21年3月11日(2009.3.11)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.フロッピー
2.FLOPPY
【出願人】(000102500)SMK株式会社 (528)
【Fターム(参考)】