説明

メラニン凝集ホルモン受容体−1アンタゴニストとしてのヒドロキシ置換チエノピリミジノン

本発明は、以下の式IAおよびIBの化合物(それらのプロドラッグおよび医薬的に許容される塩も含む)であって、MCHR1アンタゴニストとして有用であるものを提供する:


【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、チエノピリミジノン非塩基性メラニン凝集ホルモン受容体−1(MCHR1)アンタゴニスト、MCHR1アンタゴニストを含有する医薬組成物、そのようなMCHR1アンタゴニストの製法、並びにそのようなMCHR1を用いた糖尿病、肥満症、および関連疾患の治療方法に関する。
【背景技術】
【0002】
いくつかの系の薬理学的および遺伝学的証拠により、食物摂取および体重のモジュレーターとしてのメラニン凝集ホルモン受容体−1(以降「MCHR1」)の役割が裏付けられる。メラニン凝集ホルモン(MCH)の中枢投与は、ラットおよびマウスの両者において食物摂取および体重を増加させる。MCHの慢性的なICV注入は、マウスにおいて食物摂取の増大および最終的には肥満を引き起こす一方、MCHペプチドアンタゴニストの注入は、MCH−誘導性食物摂取を阻止し、食餌誘導性肥満マウスにおいて体重減少および摂食減少をもたらす。
【0003】
MCHペプチドと受容体の両方の発現は、栄養状態によって調節される。MCH mRNAは、食欲過剰の肥満マウス(ob/ob)、および絶食動物の両者において上方制御される。MCHペプチド遺伝子の標的破壊は、食欲の減退および痩せをもたらす。MCHR1遺伝子の破壊は、痩せ、代謝変化、および軽度の過食を伴った過剰運動を引き起こす。反対に、MCHペプチドの過剰発現は、過食症、肥満症および糖尿病をもたらす。小分子MCHR1アンタゴニストは、経口投与および腹腔内投与の両方の後に、げっ歯類の体重および摂食のモデルにおいて体重減少を引き起こすことが示されている。Eur. J. Pharmacol., 438:129-135 (2002); Nat. Med., 8:825-830 (2002); Eur. J. Pharmacol., 497:41-47 (2004).
【0004】
また、MCHR1は、急性実験的大腸炎およびおそらくヒトIBD(炎症性腸疾患)の病理発生においても、重要な役割を担っていることが報告されている。免疫中和は、TNBSによって誘発された大腸炎の効果的な治療であることが示されている。Kokkotou, E. et al., “Melanin-concentrating hormone as a mediator of intestinal inflammation”, PNAS, 105(30):10613-10618 (2008年7月29日)。
【0005】
また、MCHおよびMCHR1には、内分泌および行動反応を緊張させる働きがあるということも報告されている。ラットおよびマウスをMCHRアンタゴニストで処理すると、強い、抗うつおよび抗不安作用をもたらす(JPETDOI:10.1124/jpet.108.143362)。
【0006】
多くの非ペプチドMCHR1アンタゴニストが開示されている。各々についての属の範囲は、MCHR1アゴニストとしてのリガント認識に必要とされる基準に関する共通の認識を表している。MCHR1の特許公開による最近の概説によって、以下の記載によるこれらの構造の共通性が強調された[T.J. Kowalski, T.J. et al., Exp. Opin. Invest. Drugs, 13:1113-1122 (2004)]。これらの属のファルマコフォアモデルは、アンタゴニストリガンドの塩基性アミン中心と、受容体のアスパラギン酸123との間で推定される予め必要な静電相互作用を常に想定しており、おそらくそれは、MCHペプチドアゴニストのアルギニン14とMCHR1受容体のアスパラギン酸123の間の必須な相互作用を模倣すると考えられる[Ulven, T. et al., J. Med. Chem., 48:5684-5697 (2005)]。しかしながら、この塩基性アミンをMCHR1アンタゴニストに組み入れることにより、オフターゲットのイオンチャンネルおよび生体アミン受容体への結合の可能性が実質的に増大する。
【0007】
2007年4月26日に発行された米国特許公開第2007/0093509号 A1は、式A:
【化1】

[式中、
Aは、フェニルまたは単環式ヘテロアリールであり;
Dは、CHまたは直接の結合であり;
は、独立して、水素、ハロゲン、低級アルキル、低級シクロアルキル、CF、ORまたはSRから選択され;
は、水素または低級アルキルであり;
は、ヒドロキシルまたはG−D−Zであり;
nは、1〜3の整数であり;
は、水素、ハロゲン、低級アルキル、低級シクロアルキル、CF、SR、低級アルコキシ、低級シクロアルコキシ、CN、CONR、SOR、SO、NRCOR、NRCO、CO、ヘテロアリール、NRSO、またはCORであり;
Gは、O、SまたはCRであり;
は、直接の結合、低級アルキル、低級シクロアルキル、または4〜6員非塩基性のヘテロ環であり;
Zは、水素、ヒドロキシル、低級アルコキシ、低級シクロアルコキシ、OCONR、CN、CONR、SOR、SO、NRCOR、NRCO、CO、ヘテロアリール、NRSOまたはCORであり;
は、独立して、低級アルキルまたは低級シクロアルキルから選択され;並びに
は、独立して、水素、低級アルキルまたは低級シクロアルキルから選択され;ここで、2つのRおよびそれらが結合している原子は適宜、4〜7原子の環を形成してもよい]
の新規な、高親和性の選択的MCHR1アンタゴニストをシリーズで開示する。
【発明の概要】
【0008】
本発明は、驚くほど優れた、薬力学的プロフィール、薬物動態的プロフィール、および安全性プロフィールを有するMCHR1アンタゴニストに関する。それは、以下の式IAまたはIB:
【化2】

【化3】

の化合物(そのあらゆる立体異性体を含む)、またはそのプロドラッグもしくは医薬的に許容される塩である。式IAの好ましいプロドラッグは、アセテート、ピバレート、メチルカーボネート、ベンゾエート、ホスフェート、およびアミノ酸エステルからなる群より選択される、プロドラッグエステルまたはその塩の形態であるか;あるいは、ホスフェートアセタールおよびO−グルコシドからなる群より選択される、プロドラッグエーテルまたはその塩の形態である。
【0009】
いくつかの好ましいプロドラッグエステル基は、以下の式:
【化4】

[式中、Rは、H、アルキル、ベンジル、または
【化5】

(yは1〜4)である]
を有し、並びにプロドラッグエーテルは
【化6】

[式中、Rは、アルキルまたは水素であり、並びにRは、H、アルキル、またはベンジルである]
である。
【0010】
本発明の1つの態様において、以下の構造:
【化7】

【化8】

【化9】

【化10】

【化11】

を有する化合物(その立体異性体を含む)が提供されており、前記構造のいずれかの医薬的に許容される塩も含まれる。
【0011】
本発明の1つの態様において、以下の式IB:
【化12】

を有する化合物(その立体異性体を含む)、またはそのプロドラッグもしくは医薬的に許容される塩が提供されている。
【0012】
式IBの化合物の好ましいプロドラッグは、アセテート、ピバレート、メチルカーボネート、ベンゾエート、ホスフェート、およびアミノ酸エステルからなる群より選択される、エステルまたはその塩の形態であるか;あるいは、ホスフェートアセタールおよびO−グルコシドからなる群より選択される、プロドラッグエーテルまたはその塩の形態である。
【0013】
本発明の1つの態様において、式IBのプロドラッグエステルは、以下:
【化13−1】

[式中、Rは、H、アルキル、ベンジル、または
【化13−2】

(yは1〜4)である]
のいずれかであり、並びにプロドラッグエーテルは
【化14】

[式中、Rは、アルキルまたは水素であり、並びにRは、H、アルキル、またはベンジルである]
である。
【0014】
好ましい、式IBの化合物は以下の構造:
【化15】

【化16】

【化17】

【化18】

のいずれかの化合物(その立体異性体を含む)であるか、または前記構造のいずれかの医薬的に許容される塩であるかもしれない。
【0015】
本発明の1つの態様において、式IAまたはIBの化合物を少なくとも1つ含み:適宜、抗肥満薬;抗糖尿病薬、食欲抑制薬;コレステロール/脂質低下薬、およびHDL増加薬からなる群より選択される、別の治療剤を少なくとも1つ含んでもよく:また、一緒に、医薬的に許容される希釈剤または担体を少なくとも1つ含む医薬組成物が提供される。
【0016】
本発明の1つの態様において、式IAまたはIBの化合物を少なくとも1つ、並びに抗肥満薬;抗糖尿病薬、食欲抑制薬;コレステロール/脂質低下薬、およびHDL増加薬からなる群より選択される別の治療剤を少なくとも1つ含む、医薬的組み合わせが提供される。
【0017】
本発明の好ましい医薬的組み合わせには、式IAまたはIBの化合物あるいはそのプロドラッグまたはその塩、並びに抗糖尿病薬または抗肥満薬が含まれる。
【0018】
肥満症、糖尿病、不安症、うつ病、または炎症性腸疾患の治療に有用な薬剤の製造における、式IAまたはIBを有する化合物(またはそのプロドラッグ)の使用にも関する。
【0019】
本発明はさらに、以下の構造:
【化19】

【化20】

【化21】

【化22】

の1つを有する化合物に関する。
【0020】
本発明さらに、構造:
【化23】

のケトンを酵素的還元によって、構造:
【化24】

のアルコールにするプロセスであって;
該ケトンをケトレダクターゼ酵素と反応させて、該ケトンを該アルコールに変換する反応を特徴とするプロセスに関する。
【0021】
1つの好ましい態様において、ケトレダクターゼ酵素は、ケトレダクターゼ(KRED)−112またはケトレダクターゼ(KRED)−113であり、あるいはキャンディダ・ソノレンシス(Candidasonorensis)SC16117[ATCC(登録商標)#56511]から産生されるケトレダクターゼである。
【0022】
本発明の1つの態様において、式IA:
【化25】

の化合物の製法であって;
ケトレダクターゼ−112またはケトレダクターゼ−113あるいは微生物菌株キャンディダ・ソノレンシス(Candida sonorensis)SC16117[ATCC(登録商標)#56511]を用いて、構造:
【化26】

の化合物を酵素的に還元し、構造:
【化27】

の(R)−アルコールを形成させ;有機溶媒の存在下で、該(R)−アルコールを構造:
【化28】

の化合物と縮合して、式IAの化合物を形成することを特徴とする製法が提供される。
【0023】
(発明の詳細な説明)
(定義)
他に断りのない限り、単独または別の基の一部として本明細書で用いられる用語「低級アルキル」は、1から8個の炭素を含む直鎖および分枝鎖の両方の炭化水素を含み、単独または別の基の一部として本明細書で用いられ得る用語「アルキル」および「アルカ(alk)」は、ノルマル鎖(normal chain)中に1から20個の炭素、好ましくは1から10個の炭素、より好ましくは1から8個の炭素を含む直鎖および分枝鎖の両方の炭化水素、例えばメチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、t−ブチル、イソブチル、ペンチル、ヘキシル、イソヘキシル、ヘプチル、4,4−ジメチルペンチル、オクチル、2,2,4−トリメチルペンチル、ノニル、デシル、ウンデシル、ドデシル、その様々な分枝鎖異性体など、並びに、1から4個の置換基、例えばハロ(例えばF、Br、ClもしくはI)またはCF、アルキル、アルコキシ、アリール、アリールオキシ、アリール(アリール)もしくはジアリール、アリールアルキル、アリールアルキルオキシ、アルケニル、アルキニル、シクロアルキル、シクロアルケニル、シクロアルキルアルキル、シクロアルキルアルキルオキシ、ヒドロキシ、ヒドロキシアルキル、アシル、アルカノイル、ヘテロアリール、ヘテロアリールオキシ、シクロヘテロアルキル、アリールヘテロアリール、アリールアルコキシカルボニル、ヘテロアリールアルキル、ヘテロアリールアルコキシ、アリールオキシアルキル、アリールオキシアリール、アルキルアミド、アルカノイルアミノ、アリールカルボニルアミノ、ニトロ、シアノ、チオール、ハロアルキル、トリハロアルキルおよび/またはアルキルチオを含む基を包含する。
【0024】
他に断りのない限り、単独または別の基の一部として本明細書で用いられる用語「シクロアルキル」は、1から3個の環(そのいずれか1つは適宜、スピロ置換シクロアルキルであってよい)を含有する飽和または部分飽和(1または2個の二重結合を有する)環状炭化水素基(環を形成する計3から20個の炭素、好ましくは環を形成する計3から10個の炭素を含有し、単環式シクロアルキル、二環式シクロアルキルおよび三環式シクロアルキルなどが含まれる)を含み、これはアリールについて記載したように1または2個の芳香環に縮合していてよく、これにはシクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル、シクロヘプチル、シクロオクチル、シクロデシルおよびシクロドデシル、シクロヘキセニル、
【化29】

が挙げられ、その基のいずれも、1から4個の置換基、例えばハロゲン、アルキル、アルコキシ、ヒドロキシ、アリール、アリールオキシ、アリールアルキル、シクロアルキル、アルキルアミド、アルカノイルアミノ、オキソ、アシル、アリールカルボニルアミノ、ニトロ、シアノ、チオールおよび/またはアルキルチオ、並びに/あるいはいずれかのアルキル置換基で適宜置換され得る。
【0025】
単独または別の基の一部として本明細書で用いられる用語「ハロゲン」または「ハロ」は、塩素、臭素、フッ素、およびヨウ素、並びにCFを指し、塩素またはフッ素が好ましい。
【0026】
用語「金属イオン」は、アルカリ金属イオン(例えば、ナトリウム、カリウム、およびリチウム)、アルカリ土類金属イオン(例えば、マグネシウムおよびカルシウム)、並びに亜鉛およびアルミニウムを指す。
【0027】
用語「プロドラッグ」は、用語「プロドラッグエステル」および用語「プロドラッグエーテル」の両方を包含し、それらの医薬的に許容される塩も含むことができる。本明細書で用いられる用語「プロドラッグエステル」には、アセテート、ピバレート、メチルカーボネート、ベンゾエート、アミノ酸エステル、ホスフェートなどを製造する、当業者に公知の手順を用いて、本願化合物の1個以上のヒドロキシルを、アルキル、アルコキシ、もしくはアリール置換したアシル化剤もしくはリン酸化剤のいずれかと反応させることにより形成したエステルおよびカーボネートが含まれる。
【0028】
そのようなプロドラッグエステルの例には、以下:
【化30】

が含まれる。
【0029】
該用語「プロドラッグエーテル」には、ホスフェートアセタールおよびO−グルコシドの両方が含まれる。そのようなプロドラッグエーテルの代表的な例には、
【化31】

が含まれる。
【0030】
上記のそれぞれの式において、RはアルキルまたはHであり、並びにRはH、アルキル、またはベンジルである。
【0031】
(塩および立体異性体)
プロドラッグの形態にある場合、本願化合物(化合物IAおよびIBを含む)は塩として存在することができ、それもまた本発明の範囲内である。医薬的に許容される(すなわち、無毒性で、生理学的に許容される)塩が好ましい。本願化合物が、例えば、少なくとも1つの塩基性中心を有する場合、それらは酸付加塩を形成することができる。これらは、例えば:
鉱酸(例えば硫酸、リン酸またはハロゲン化水素酸)などの強無機酸によってか;
1から4個の炭素原子のアルカンカルボン酸(例えば、無置換であるかまたは例えばクロロ酢酸のようなハロゲンにより置換されている酢酸)、飽和または不飽和のジカルボン酸(例えばシュウ酸、マロン酸、コハク酸、マレイン酸、フマル酸、フタル酸もしくはテレフタル酸)、ヒドロキシカルボン酸(例えばアスコルビン酸、グリコール酸、乳酸、リンゴ酸、酒石酸もしくはクエン酸)、アミノ酸(例えばアスパラギン酸、グルタミン酸、リジン、もしくはアルギニン)、または安息香酸といった有機カルボン酸によってか;あるいは
無置換であるか例えばハロゲンにより置換されている(C〜C)アルキルまたはアリールスルホン酸(例えばメチル−もしくはp−トルエン−スルホン酸)などの有機スルホン酸によって
形成される。対応する酸付加塩はまた、必要に応じ、さらなる塩基性中心を存在させて形成することができる。少なくとも1つの酸性基(例えばCOOH)を有する本願化合物もまた、塩基と塩を形成することができる。塩基との適切な塩は、例えば、アルカリ金属塩またはアルカリ土類金属塩などの金属塩(例えばナトリウム、カリウムまたはマグネシウム塩)、あるいはアンモニアまたはモルホリン、チオモルホリン、ピペリジン、ピロリジン、モノ、ジもしくはトリ−低級アルキルアミン(例えばエチル、tert−ブチル、ジエチル、ジイソプロピル、トリエチル、トリブチルもしくはジメチル−プロピルアミン)、またはモノ、ジもしくはトリヒドロキシ低級アルキルアミン(例えばモノ、ジもしくはトリエタノールアミン)などの有機アミンとの塩である。対応する内部塩がさらに形成されてもよい。医薬的な使用には適切でないが、例えば、本願化合物の遊離形またはそれらの医薬的に許容される塩の、単離または精製に用いることができる塩も含まれる。
【0032】
塩基性基を含む本願化合物の好ましい塩としては、一塩酸塩(monohydrochloride)、硫酸水素塩、メタンスルホン酸塩、リン酸塩、硝酸塩または酢酸塩が挙げられる。
【0033】
酸性基を含む本願化合物の好ましい塩としては、ナトリウム塩、カリウム塩およびマグネシウム塩、並びに医薬的に許容される有機アミン塩が挙げられる。
【0034】
本願化合物の全ての立体異性体は、混合物または純粋もしくは実質的に純粋な形態のいずれかで考慮される。本願化合物は、置換基のいずれか1つを含有するいずれかの炭素原子に、不斉中心を有することができる。従って、本願化合物は、エナンチオマーもしくはジアステレオマーの形態、またはそれらの混合物として存在することができる。該製造方法には、出発物質としてラセミ体、エナンチオマーまたはジアステレオマーを用いることができる。ジアステレオマーもしくはエナンチオマーの生成物を製造する場合、それらは、通常の方法、例えばクロマトグラフィーもしくは分別結晶により分離することができる。
【0035】
(医薬組成物および組み合わせ)
本発明のいくつかの実施態様では、少なくとも1つの本明細書に記載の化合物、および少なくとも1つの医薬的に許容される希釈剤または単体を含有する医薬組成物を提供する。本発明の医薬組成物は適宜、本明細書に記載の、抗肥満薬;抗糖尿病薬、抗うつ薬、抗不安薬、抗炎症薬、食欲抑制薬;コレステロール/脂質低下薬、およびHDL増加薬(HDL−raising agent)並びに他の治療剤からなる群より選択される少なくとも1つのさらなる治療剤を含んでよい。
【0036】
本発明はまた、少なくとも1つの本願化合物と、本明細書に記載の抗肥満薬;抗糖尿病薬、抗うつ薬、抗不安薬、抗炎症薬、食欲抑制薬;コレステロール/脂質低下薬、およびHDL増加薬並びに他の治療剤からなる群より選択される少なくとも1つのさらなる治療剤を含む、医薬の組み合わせを提供する。
【0037】
本発明の一実施態様によると、該抗糖尿病薬は、インスリン分泌促進薬、インスリン抵抗性改善薬(insulin sensitizer)、グルコキナーゼ阻害剤、グルココルチコイドアンタゴニスト、フルクトース1,6−ビスホスファターゼ阻害剤、AMPキナーゼ活性化剤、インクレチンモジュレーター、グルコシダーゼ阻害剤、アルドース還元酵素阻害剤、PPARγアゴニスト、PPARαアゴニスト、PPARδアンタゴニストもしくはアゴニスト、PPARα/γデュアルアゴニスト、11−β−HSD−1阻害剤、ジペプチジルペプチダーゼIV(DP4)阻害剤、SGLT2阻害剤(例えば、ダパグリフロジン)、インスリン、グルカゴン様ペプチド−1(GLP−1)、GLP−1アゴニスト、およびPTP−1B阻害剤からなる群より選択される。
【0038】
本発明の一実施態様によると、さらなる治療剤は抗肥満薬である。本願化合物と組み合わせて用いるのに適した抗肥満薬の例には、メラノコルチン受容体(MC4R)アゴニスト、カンナビノイド受容体モジュレーター、エンドカンナビノイド合成モジュレーター、GPR119アゴニスト、脂肪吸収阻害剤、成長ホルモン分泌促進因子受容体(GHSR)アンタゴニスト、ガラニン受容体モジュレーター、オレキシンアンタゴニスト、SGLT2阻害剤、DPP4阻害剤、トリプルモノアミン再取り込み阻害剤、CCKアゴニスト、GLP−1アゴニスト、および他のプレ−プログルカゴン−由来ペプチド;NPY1もしくはNPY5アンタゴニスト、NPY2およびNPY4モジュレーター、コルチコトロピン放出因子モジュレーター、ヒスタミン受容体−3(H3)モジュレーター、aP2阻害剤、PPARγモジュレーター、PPARλモジュレーター、アセチル−CoAカルボキシラーゼ(ACC)阻害剤、ステアロイルCoA不飽和酵素(SCD−1)阻害剤、11−β−HSD−1阻害剤、アディノペクチン受容体モジュレーター;β3アドレナリン作動性アゴニスト、甲状腺受容体βモジュレーター、リパーゼ阻害剤、セロトニン受容体アゴニスト、モノアミン再取り込み阻害剤もしくは放出剤、食欲低下薬、CNTF(毛様体神経栄養因子)、BDNF(脳由来神経栄養因子)、レプチンおよびレプチン受容体モジュレーター、カンナビノイド−1受容体インバースアゴニスト/ニュートラルアンタゴニスト、DGAT阻害剤、オピエートアンタゴニスト、並びにアミリン受容体モジュレーターが含まれる。
【0039】
好ましい抗肥満薬には、SGLT2阻害剤(例えば、米国特許第6,414,126号に記載されたもの)が含まれる。最も好ましい抗肥満薬には、ダパグリフロジンおよびリパーゼ阻害剤(例えば、オーリスタット)、またはモノアミン再取り込み阻害剤もしくは放出剤(例えば、フェンフルラミン、デクスフェンフルラミン、フルボキサミン、フルオキセチン、パロキセチン、セルトラリン、クロルフェンテルミン、クロホレックス、クロルテルミン、ピシロレキス、シブトラミン、デキサアンフェタミン、フェンテルミン、フェニルプロパノールアミンまたはマジンドール)が含まれる。
【0040】
(使用方法)
本発明の一実施態様では、治療上有効な量の少なくとも1つの本願化合物を単独で、あるいは本明細書に記載のものから選択される1つ以上のさらなる抗肥満薬と組み合わせて投与することを特徴とする、治療を必要とする患者における肥満症の治療方法を提供する。
【0041】
本発明の一実施態様では、治療上有効な量の少なくとも1つの本願化合物を単独で、あるいは本明細書に記載されている1つ以上のさらなる抗糖尿病薬と組み合わせて投与することを特徴とする、治療を必要とする患者における糖尿病、特にII型糖尿病の治療方法を提供する。
【0042】
本発明の一実施態様では、治療上有効な量の少なくとも1つの本願化合物を投与することを特徴とする、患者におけるうつ病の治療方法を提供する。
【0043】
本発明の一実施態様では、治療上有効な量の本願化合物を投与することを特徴とする、治療を必要とする患者における不安症の治療方法を提供する。
【0044】
本発明の一実施態様では、治療上有効な量の本願化合物を少なくとも1つ投与することを特徴とする、炎症性腸疾患の治療方法を提供する。
【0045】
(有用性)
本願化合物は、限定はされないが、代謝障害および摂食障害並びに代謝障害に関連する症状[例えば、肥満症、糖尿病、動脈硬化症、高血圧症、多嚢胞性卵巣疾患、循環器疾患、変形性関節症、皮膚科疾患、グルコース止血障害(impaired glucose hemostasis)、インスリン抵抗性、高コレステロール血症、高トリグリセリド血症、胆石症(choletithiasis)、脂質異常症の症状(dislipidemic conditions)、神経性過食症および心因性摂食障害];睡眠障害;並びに精神疾患[例えばうつ病、不安症、統合失調症、薬物乱用、認知亢進(cognition−enhancement)およびパーキンソン病]を含む、様々な症状および障害の治療のために、哺乳動物、好ましくはヒトに投与することができる。
【0046】
本願化合物は、アセチルコリンエステラーゼ阻害剤(例えば、タクリン)、ムスカリン受容体−1アゴニスト(例えば、ミラメリン)、ニコチンアゴニスト、グルタミン酸受容体(AMPAおよびNMDA)モジュレーター、および向知性薬(例えば、ピラセタム、レベチラセタム)のような認知増強薬(cognition−enhancing agent)の効果を高めるために用いることができる。本願化合物と組み合わせて用いるアルツハイマー病および認知障害のための適切な治療薬の例としては、ドネペジル、タクリン、レバスチグライン(revastigraine)、5HT6、γセクレターゼ阻害剤、βセクレターゼ阻害剤、SKチャネル遮断薬、Maxi−K遮断薬、およびKCNQ遮断薬が挙げられる。
【0047】
本願化合物は、パーキンソン病の治療に用いられる薬剤の効果を高めるために用いることができる。パーキンソン病の治療に用いられる薬剤の例としては:OMT阻害剤を伴うもしくは伴わないレバドパ(levadopa)、抗グルタミン酸薬(アマンタジン、リルゾール)、α−2アドレナリンアンタゴニスト(例えばイダゾキサン)、オピエートアンタゴニスト(例えばナルトレキソン)、他のドーパミンアゴニストまたはトランスポーターモジュレーター(例えばロピニロール、またはプラミペキソール)、あるいは神経栄養因子[例えばグリア由来神経栄養因子(GDNF)]が挙げられる。
【0048】
(剤形)
本願化合物は、経口剤形で投与することができる。該医薬組成物の剤形には、顆粒剤、粉末剤、錠剤、カプセル剤、シロップ剤、エマルジョン剤、懸濁剤などのような経口剤形、並びに、注射剤(例えば、皮下、静脈内、筋肉内および腹腔内注射剤)、点滴、外用剤形(例えば、点鼻薬製剤、経皮製剤、軟膏剤など)、および坐薬(例えば、直腸坐薬および膣坐薬)などのような非経口剤形が含まれる。
【0049】
これらの剤形は、製薬過程で通常用いられる公知の技術により製造することができる。具体的な製造方法は以下のとおりである。
【0050】
例えば、賦形剤(例えば、ラクトース、スクロース、デンプン、マンニトールなど)、崩壊剤(例えば、炭酸カルシウム、カルボキシメチルセルロースカルシウムなど)、結合剤(例えば、α−デンプン、アラビアゴム、カルボキシメチルセルロース、ポリビニルピロリドン、ヒドロキシプロピルセルロースなど)、および滑沢剤(例えば、タルク、ステアリン酸マグネシウム、ポリエチレングリコール6000など)を活性成分に添加し、得られた組成物を圧縮して、経口剤形を製造する。味の遮蔽または腸での崩壊もしくは徐放のために、必要であれば、圧縮した生成物を公知の技術によりコーティングする。用いることができるコーティング剤としては、例えば、エチルセルロース、ヒドロキシメチルセルロース、ポリオキシエチレングリコール、酢酸フタル酸セルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロースフタレート、およびEUDRAGIT(登録商標)(Rohm & Haas, Germany, メタクリル−アクリル共重合体)が挙げられる。
【0051】
注射剤は一般的に、以下の方法により製造することができる。活性成分を水性ベヒクル(例えば、蒸留水、生理食塩水、リンガー溶液など)または油性ベヒクル(例えば、オリーブ油、ゴマ油、綿実油、コーン油などのような植物油、もしくはプロピレングリコール)に、分散剤[例えば、Tween 80(Atlas Powder, U.S.A.)、HCO 60(日光ケミカルズ)、ポリエチレングリコール、カルボキシメチルセルロース、アルギン酸ナトリウムなど)、保存剤(例えば、p−ヒドロキシ安息香酸メチル、p−ヒドロキシ安息香酸プロピル、ベンジルアルコール、クロロブタノール、フェノールなど]、等張化剤(isotonizing agent)(例えば、塩化ナトリウム、グリセロール、ソルビトール、グルコース、転化糖など)および他の添加剤とともに溶解、懸濁、または乳化させる。必要に応じて、可溶化剤(例えば、サリチル酸ナトリウム、酢酸ナトリウムなど)、安定剤(例えば、ヒト血清アルブミン)、無痛化剤(例えば、塩化ベンザルコニウム、クロロプロカイン塩酸塩など)および他の添加剤もまた加えることができる。
【0052】
外用剤形は、活性成分を、固体、半固体もしくは液体組成物に加工することにより製造することができる。例えば、そのままか、あるいは賦形剤(例えば、ラクトース、マンニトール、デンプン、微結晶セルロース、スクロースなど)、増粘剤(例えば、天然ガム、セルロース誘導体、アクリルポリマーなど)などとの混合物のいずれかの形態の活性成分を粉末に加工して、固体組成物を製造する。液体組成物は、上記の注射剤と実質的に同様の方法で製造することができる。半固体組成物は、好ましくは含水(hydrous)もしくは油性のゲル形態または軟膏剤形態で提供される。これらの組成物は適宜、pH調整剤(例えば、炭酸、リン酸、クエン酸、塩酸、水酸化ナトリウムなど)、および保存剤(例えば、p−ヒドロキシ安息香酸エステル、クロロブタノール、塩化ベンザルコニウムなど)、その他の添加剤を含み得る。
【0053】
坐薬は、活性成分を、固体、半固体または液体にかかわらず、油性または水性の組成物に加工することにより製造することができる。用いることができる油脂性基材(oleaginous base)としては、例えば、高級脂肪酸グリセリド[例えば、カカオバター、Witepsols(Dinamit−Nobel)など]、中鎖脂肪酸[例えば、Migriols(Dinamit−Nobel)など]、植物油(例えば、ゴマ油、大豆油、綿実油など)などが挙げられる。水溶性基材としては、例えば、ポリエチレングリコール、プロピレングリコールなどが挙げられる。親水性基材としては、例えば、天然ガム、セルロース誘導体、ビニルポリマー、およびアクリルポリマーなどが挙げられる。
【0054】
(用量)
本発明の医薬組成物の用量は、それぞれの活性成分に推奨される用量を基準にして適切に決定され、また、レシピエント、レシピエントの年齢および体重、現在の臨床状態、投与時間、剤形、投与方法、および活性成分の組み合わせ、他の因子に応じて適切に選択することができる。例えば、大人に対するインスリン感度増強剤(sensitivity enhance)の用量は、0.01〜30mg/kg体重(好ましくは0.05〜10mg/kg体重、より好ましくは0.05〜5mg/kg体重)の範囲の臨床経口用量、または0.005〜10mg/kg体重(好ましくは0.01〜10mg/kg体重、より好ましくは0.01〜1mg/kg体重)の範囲の臨床非経口用量から選択することができる。組み合わせて用いるための異なる作用機序を有する他の活性成分もまた、それぞれの推奨される臨床用量範囲により選択される範囲で用いることができる。
【0055】
本発明の医薬組成物における活性成分の比率は、レシピエント、レシピエントの年齢および体重、現在の臨床状態、投与時間、剤形、投与方法、および活性成分の組み合わせ、他の因子に応じて適切に選択することができる。
【0056】
(医薬の組み合わせ)
本発明は、治療上有効な量の本願化合物のうち少なくとも1つを、単独でまたは医薬担体もしくは希釈剤と組み合わせて、活性成分として含有する医薬組成物をその範囲に含む。適宜、本願化合物を、単独で、前述の疾患の治療において有用な他の適切な治療薬:抗肥満薬;抗糖尿病薬、食欲抑制薬;コレステロール/脂質低下薬、HDL増加薬、認知増強薬、神経変性の治療に用いられる薬剤、呼吸器疾患の治療に用いられる薬剤、腸疾患の治療に用いられる薬剤、抗炎症薬;抗不安薬;抗うつ薬;抗高血圧薬;強心配糖体;および抗腫瘍薬などと組み合わせて用いることができる。
【0057】
本発明の医薬的組み合わせは、組み合わせで、あるいは医薬的に許容される担体、賦形剤、結合剤、希釈剤などともに、それぞれの活性成分を別々に混合して別々で製剤化することができる。活性成分を別々で製剤化する場合、それぞれの製剤を希釈剤などで即座に混合して投与することができるか、あるいは、それぞれを同じ患者に対して、同時にもしくは異なる時に独立に投与することもできる。したがって、そのような他の治療剤は、本発明のメラニン凝集ホルモン受容体(MCHR)アンタゴニストの投与の前に、同時に、または後に投与してもよい。
【0058】
本願化合物と組み合わせて用いるのに適した抗肥満薬の例としては、メラノコルチン受容体(MC4R)アゴニスト、カンナビノイド受容体モジュレーター、成長ホルモン分泌促進因子受容体(GHSR)アンタゴニスト、ガラニン受容体モジュレーター、オレキシンアンタゴニスト、CCKアゴニスト、GLP−1アゴニスト、および他のプレ−プログルカゴン−由来ペプチド:NPY1もしくはNPY5アンタゴニスト、NPY2およびNPY4モジュレーター、コルチコトロピン放出因子アゴニスト、ヒスタミン受容体−3(H3)モジュレーター、aP2阻害剤、PPARγモジュレーター、PPARλモジュレーター、アセチルCoAカルボキシラーゼ(ACC)阻害剤、11−β−HSD−1阻害剤、アディノペクチン受容体モジュレーター;β3アドレナリンアゴニスト、例えばAJ9677(武田/大日本)、L750355(Merck)、またはCP331648(Pfizer)あるいは米国特許第5,541,204号、第5,770,615号、第5,491,134号、第5,776,983号および第5,488,064号に開示の他の公知のβ3アゴニスト、甲状腺受容体βモジュレーター、例えばWO97/21993(U. Cal SF)、WO99/00353(KaroBio)およびWO00/039077(KaroBio)に開示の甲状腺受容体リガンド、リパーゼ阻害剤、例えばオーリスタットまたはATL−962(Alizyme)、セロトニン受容体アゴニスト[例えば、BVT−933(Biovitrum)またはロカルセリン(Arena)]、モノアミン再取り込み阻害剤もしくは放出剤、例えばフェンフルラミン、デクスフェンフルラミン、フルボキサミン、フルオキセチン、パロキセチン、セルトラリン、クロルフェンテルミン、クロホレックス(クロホレックス)、クロルテルミン(クロルテルミン)、ピシロレクス(ピシロレキス)、シブトラミン、デキサンフェタミン(dexamphetamine)、フェンテルミン、フェニルプロパノールアミンまたはマジンドール、食欲低下薬、例えばトピラメート(Johnson & Johnson)、CNTF(毛様体神経栄養因子)/アクソカイン(AXOKINE)(登録商標)(Regeneron)、BDNF(脳由来神経栄養因子)、レプチンおよびレプチン受容体モジュレーター、あるいはカンナビノイド−1受容体インバースアゴニスト/ニュートラルアンタゴニスト、例えばSR−141716(Sanofi)またはSLV−319(Solvay)、並びにWO2006/134317(A1)(Astra Zeneca)、WO2006/044775(A2)(Bayer)、WO2006/06019020(A1)(三共)、WO2006/082010(A1)(Roche)、WO2004/047755(A2)(日本たばこ、Tularik)、およびWO2005/0727401(A2)(Amgen、日本たばこ)などで記載されたDGAT阻害剤が挙げられる。
【0059】
本願化合物と組み合わせて用いるのに適した抗糖尿病薬の例としては:インスリン分泌促進薬またはインスリン抵抗性改善薬が挙げられ、それには、ビグアナイド、スルホニル尿素、グルコシダーゼ阻害剤、アルドース還元酵素阻害剤、PPARγアゴニスト(例えばチアゾリジンジオン)、PPARαアゴニスト(例えばフィブリン酸誘導体)、PPARδアンタゴニストもしくはアゴニスト、PPARα/γデュアルアゴニスト、11−β−HSD−1阻害剤、ジペプチジルペプチダーゼIV(DP4)阻害剤(サクサグリプチン、ビルダグリプチンおよびシタグリプチンなど)、SGLT2阻害剤[ダパグリフロジンおよびセルグリフロジン(serglifozin)など]、グリコーゲンホスホリラーゼ阻害剤、および/またはメリグリチニド、並びにインスリン、および/またはグルカゴン様ペプチド−1(GLP−1)、GLP−1アゴニスト、SIRT活性化薬(リスベラトロール)および/またはPTP−1B阻害剤(タンパク質チロシンホスファターゼ−1B阻害剤)が含まれ得る。
【0060】
該抗糖尿病薬は、経口抗高血糖薬、好ましくはメトホルミンまたはフェンホルミンのようなビグアナイド、またはその塩、好ましくはメトホルミンHClであり得る。該抗糖尿病薬がビグアナイドである場合、本願化合物は、ビグアナイドに対して約0.001:1〜約10:1、好ましくは約0.01:1〜約5:1の範囲内の重量比で用いられ得る。
【0061】
該抗糖尿病薬はまた、好ましくは、グリブリド(グリベンクラミドとしても知られる)、グリメピリド(米国特許第4,379,785号に開示)、グリピジド、グリクラジドまたはクロルプロパミドのようなスルホニル尿素、β−細胞のATP依存性チャネルに作用する他の公知のスルホニル尿素または他の抗高血糖薬であってもよく、グリブリドおよびグリピジドが好ましく、それらは同一または別個の経口剤形で投与され得る。該経口抗糖尿病薬はまた、アカルボース(米国特許第4,904,769号に開示)またはミグリトール(米国特許第4,639,436号に開示)のようなグルコシダーゼ阻害剤であってもよく、それらは同一または別個の経口剤形で投与され得る。
【0062】
本願化合物は、チアゾリジンジオン経口抗糖尿病薬のようなPPARγアゴニスト、または他のインスリン抵抗性改善薬(NIDDM患者においてインスリン感受性効果を有する)、例えばロシグリタゾン(SKB)、ピオグリタゾン(武田)、三菱のMCC−555(米国特許第5,594,016号に開示)、Glaxo−WellcomeのGL−262570、エングリタゾン(CP−68722,Pfizer)もしくはダルグリタゾン(CP−86325,Pfizer)、イサグリタゾン(MIT/J&J)、JTT−501(JPNT/P&U)、L−895645(Merck)、R−119702(三共/WL)、NN−2344(Dr. Reddy/NN)、またはYM−440(山之内)と組み合わせて用いてもよく、ロシグリタゾンおよびピオグリタゾンが好ましい。
【0063】
本願化合物はまた、PPARα/γデュアルアゴニスト、例えばMK−767/KRP−297[Merck/キョーリン;Yajima, K. et al., Am. J. Physiol. Endocrinol. Metab., 284:E966-E971 (2003)に記載]、AZ−242[テサグリタザル;Astra−Zeneca;Ljung, B. et al., J. Lipid Res., 43:1855-1863 (2002)に記載];マルグリタザー(muraglitazar);または米国特許第6,414,002号に記載の化合物とともに用いてもよい。
【0064】
本願化合物は、抗高脂血症薬、または動脈硬化症の治療に用いる薬剤と組み合わせて用いてもよい。抗高脂血症薬(hypolipidemic agent)の例はHMG CoA還元酵素阻害剤であり、これには、限定はされないが、米国特許第3,983,140号に開示のメバスタチンと関連化合物、米国特許第4,231,938号に開示のロバスタチン(メビノリン)と関連化合物、米国特許第4,346,227号に開示のようなプラバスタチンと関連化合物、米国特許第4,448,784号および第4,450,171号に開示のシンバスタチンと関連化合物が含まれる。本明細書で用いられ得る他のHMG CoA還元酵素阻害剤としては、限定はされないが、米国特許第5,354,772号に開示のフルバスタチン、米国特許第5,006,530号および第5,177,080号に開示のセリバスタチン、米国特許第4,681,893号、第5,273,995号、第5,385,929号および第5,686,104号に開示のアトルバスタチン、米国特許第5,011,930号に開示のピタバスタチン[日産/三共のニスバスタチン(NK−104)またはイタバスタチン(itavastatin)]、米国特許第5,260,440号に開示の塩野義−Astra/Zeneca ロスバスタチン[visastatin(ZD−4522)]、および米国特許第5,753,675号に開示の関連するスタチン化合物、米国特許第4,613,610号に開示のメバロノラクトン誘導体のピラゾールアナログ、PCT出願WO86/03488に開示のメバロノラクトン誘導体のインデンアナログ、米国特許第4,647,576号に開示の6−[2−(置換−ピロール−1−イル)−アルキル)ピラン−2−オンとその誘導体、SearleのSC−45355(3−置換ペンタン二酸誘導体)ジクロロアセテート、PCT出願WO86/07054に開示のメバロノラクトンのイミダゾールアナログ、フランス特許第2,596,393号に開示の3−カルボキシ−2−ヒドロキシ−プロパン−ホスホン酸誘導体、欧州特許出願第0221025号に開示の2,3−二置換ピロール、フランおよびチオフェン誘導体、米国特許第4,686,237号に開示のメバロノラクトンのナフチルアナログ、米国特許第4,499,289号に開示のようなオクタヒドロナフタレン、欧州特許出願第0142146 A2号に開示のメビノリン(ロバスタチン)のケトアナログ、並びに米国特許第5,506,219号および第5,691,322号に開示のキノリンおよびピリジン誘導体が挙げられる。さらに、本明細書における使用に適しており、HMG CoA還元酵素の阻害に有用なホスフィン酸化合物は、GB 2205837に開示されている。
【0065】
本願における使用に適したスクアレン合成酵素阻害剤としては、限定はされないが、米国特許第5,712,396号に開示のα−ホスホノ−スルホネート、Biller et al., J. Med. Chem., 31, 1869-1871 (1998) により開示のもの(イソプレノイド(ホスフィニル−メチル)ホスホネートを含む)、並びに、例えば米国特許第4,871,721号および第4,924,024号および Biller S.A. et al., Curr. Pharm. Des., 2:1-40 (1996) に開示の他の公知のスクアレン合成酵素阻害剤が挙げられる。
【0066】
さらに、本明細書における使用に適した他のスクアレン合成酵素阻害剤として、Ortiz de Montellano, P. et al., J. Med. Chem., 20:243-249 (1977)により開示のテルペノイドピロホスフェート、Corey et al., J. Am. Chem. Soc., 98:1291-1293 (1976)により開示のファルネシルジホスフェートアナログAおよびプレスクアレンピロホスフェート(PSQ−PP)アナログ、McClard, R.W. et al., J. Am. Chem. Soc., 109:5544 (1987)により報告されたホスフィニルホスホネート、およびCapson, T.L., Ph.D., dissertation, Dept. Med. Chem., Univ. Utah, Abstract, Table of Contents, pp. 16, 17, 40-43, 48-51, Summary (June 1987) により報告されたシクロプロパンが挙げられる。
【0067】
本明細書における使用に適した他の抗高脂血症薬として、限定はされないが、フィブリン酸誘導体、例えばフェノフィブラート、ゲムフィブロジル、クロフィブラート、ベザフィブラート、シプロフィブラート、クリノフィブラートなど、プロブコールおよび米国特許第3,674,836号に開示の関連化合物(プロブコールおよびゲムフィブロジルが好ましい)、胆汁酸捕捉剤(sequestrant)、例えばコレスチラミン、コレスチポールおよびDEAE−セファデックス[SECHOLEX(登録商標), Policexide]およびコレスタゲル(cholestagel)(三共/Geltex)、並びにLIPOSTABIL(登録商標)(Rhone−Poulenc)、EISAI(登録商標)E−5050(N−置換エタノールアミン誘導体)、イマニキシル(HOE−402)、テトラヒドロリプスタチン(THL)、イスチグマスタニルホスホリルコリン(istigmastanylphosphorylcholine)(SPC, Roche)、アミノシクロデキストリン(田辺製薬)、味の素AJ−814(アズレン誘導体)、メリナミド(住友)、Sandoz 58−035、American Cyanamid CL−277,082およびCL−283,546(二置換ウレア誘導体)、ニコチン酸(ナイアシン)、アシピモックス、アシフラン、ネオマイシン、p−アミノサリチル酸、アスピリン、米国特許第4,759,923号に開示のようなポリ(ジアリルメチルアミン)誘導体、四級アミンポリ(ジアリルジメチルアンモニウムクロリド)および米国特許第4,027,009号に開示のようなイオネン、並びに他の公知の血清コレステロール低下薬が挙げられる。
【0068】
他の抗高脂血症薬は、例えば、Drugs of the Future, 24:9-15 (1999), (Avasimibe); Nicolosi et al., “The ACAT inhibitor, Cl-1011 is effective in the prevention and regression of aortic fatty streak area in hamsters”, Atherosclerosis (Shannon, Irel.), 137(1):77-85 (1998); Ghiselli, G., “The pharmacological profile of FCE 27677: a novel ACAT inhibitor with potent hypolipidemic activity mediated by selective suppression of the hepatic secretion of ApoB100-containing lipoprotein”, Cardiovasc. Drug Rev., 16(1):16-30 (1998); Smith, C. et al., “RP 73163: a bioavailable alkylsulfinyl-diphenylimidazole ACAT inhibitor”, Bioorg. Med. Chem. Lett., 6(1):47-50 (1996); Krause, B.R. et al., Chapter 6: “ACAT Inhibitors: Physiologic Mechanisms for Hypolipidemic and Anti-Atherosclerotic Activities in Experimental Animals”, Inflammation: Mediators and Pathways, CRC Press, Inc., publ., Ruffolo, Jr., R.R. et al., eds., pp. 173-198 (1995); Sliskovic et al., “ACAT inhibitors: potential anti-atherosclerotic agents”, Curr. Med. Chem., 1(3):204-225 (1994); Stout et al., “Inhibitors of acyl-CoA:cholesterol O-acyl transferase (ACAT) as hypocholesterolemic agents. 6. The first water-soluble ACAT inhibitor with lipid-regulating activity. Inhibitors of acyl-CoA:cholesterol acyltransferase (ACAT). 7. Development of a series of substituted N- phenyl -N'-[(1-phenylcyclopentyl)-methyl]ureas with enhanced hypocholesterolemic activity”, Chemtracts: Org. Chem., 8(6):359-362 (1995) に開示のもの、またはTS−962(大正製薬株式会社)、並びにF−1394、CS−505、F−12511、HL−004、K−10085およびYIC−C8−434などといったACAT阻害剤(抗アテローム性動脈硬化活性も有する)であってよい。
【0069】
抗高脂血症薬は、MD−700(大正製薬株式会社)およびLY295427(Eli Lilly)のようなLDL受容体活性の上方制御剤であり得る。該抗高脂血症薬は、コレステロール吸収阻害剤、好ましくはSchering−PloughのSCH48461(エゼチミブ)並びにAtherosclerosis, 115:45-63 (1995)およびJ. Med. Chem., 41:973 (1998) に開示のものであり得る。
【0070】
他の脂質薬(lipid agent)または脂質調節薬は、コレステリル転送タンパク阻害剤(CETP)、例えば、PfizerのCP−529,414、並びにWO/0038722とEP818448(Bayer)およびEP992496に開示のもの、およびPharmaciaのSC−744とSC−795、並びにCETi−1およびJTT−705であり得る。
【0071】
該抗高脂血症薬は、Drugs of the Future, 24:425-430 (1999) に開示のような回腸Na/胆汁酸共輸送体阻害剤であり得る。本発明の組み合わせで用いられ得るATPクエン酸リアーゼ阻害剤としては、例えば米国特許第5,447,954号に開示のものが挙げられ得る。
【0072】
他の脂質薬としてはまた、WO00/30665に開示のようなフィトエストロゲン化合物(単離された大豆タンパク質、大豆タンパク質濃縮物または大豆粉を含む)、並びに、イソフラボン(ゲニステイン、ダイゼイン、グリシテインもしくはエコールなど)、またはWO00/015201に開示のフィトステロール、フィトスタノールもしくはトコトリエノール);EP 675714に開示のようなβ−ラクタムコレステロール吸収阻害剤;HDL上方制御剤、例えばLXRアゴニスト、PPARα−アゴニストおよび/またはFXRアゴニスト;EP 1022272に開示のようなLDL異化促進剤;DE 19622222に開示のようなナトリウム−プロトン交換阻害剤;米国特許第5,698,527号およびGB 2304106に開示のようなLDL受容体インデューサーまたはステロイド配糖体;WO 94/15592に開示の、β−カロテン、アスコルビン酸、α−トコフェロールまたはレチノール並びにビタミンCのような抗酸化剤、および葉酸、葉酸塩(folate)、ビタミンB6、ビタミンB12およびビタミンEなどの抗ホモシステイン剤;WO 97/35576に開示のイソニアジド;WO 97/48701に開示のコレステロール吸収阻害剤、HMG−CoA合成酵素阻害剤、またはラノステロールデメチラーゼ阻害剤;脂質異常症の治療のためのPPARδアゴニスト;あるいはWO 2000/050574に開示のステロール調節エレメント結合タンパク質−I(SREBP−1)、例えば、セラミドのようなスフィンゴ脂質、または中性スフィンゴミエリナーゼ(neutral sphingomyelenase)(N−SMase)もしくはそのフラグメントが挙げられる。好ましい抗高脂血症薬はプラバスタチン、ロバスタチン、シンバスタチン、アトルバスタチン、フルバスタチン、ピタバスタチン、ロスバスタチン、およびエゼチミブ並びにナイアシンおよび/またはコレスタゲル(cholestagel)である。
【0073】
本願化合物は、抗高血圧薬と組み合わせて用いてもよい。本願化合物と組み合わせて用いるのに適した抗高血圧薬の例としては、βアドレナリン遮断薬、カルシウムチャネル遮断薬[L−型および/またはT−型;例えば、ジルチアゼム、ベラパミル、ニフェジピン、アムロジピンおよびミベフラジル(mybefradil)]、利尿薬[例えば、クロロチアジド、ヒドロクロロチアジド、フルメチアジド、ヒドロフルメチアジド、ベンドロフルメチアジド、メチルクロロチアジド、トリクロルメチアジド、ポリチアジド、ベンゾチアジド、エタクリン酸トリクリナフェン、クロルタリドン、フロセミド、ムソリミン(musolimine)、ブメタニド、トリアムトレン(triamtrenene)、アミロライド、スピノロラクトン]、レニン阻害剤、ACE阻害剤[例えば、カプトプリル、ゾフェノプリル、フォシノプリル、エナラプリル、セラノプリル(ceranopril)、シラゾプリル(cilazopril)、デラプリル、ペントプリル、キナプリル、ラミプリル、リシノプリル]、AT−1受容体アンタゴニスト(例えば、ロサルタン、イルベサルタン、バルサルタン)、ET受容体アンタゴニスト[例えば、シタクスセンタン、アトルセンタン(atrsentan)および米国特許第5,612,359号および第6,043,265号に開示の化合物]、デュアルET/AIIアンタゴニスト(例えば、WO 00/01389に開示の化合物)、中性エンドペプチダーゼ(NEP)阻害剤、バソペプシダーゼ(vasopepsidase)阻害剤(デュアルNEP−ACE阻害剤)(例えば、オマパトリラトおよびゲモパトリラト)、および硝酸薬(nitrate)が挙げられる。
【0074】
MCHR1アンタゴニストは、肥満に関連する他の疾患(睡眠障害など)の治療に有用でもあり得る。従って、本発明に記載の化合物は、睡眠障害の治療のための治療薬(therapeutics)と組み合わせて用いることができる。本願化合物と組み合わせて用いられる睡眠障害の治療のための適切な治療薬の例としては、メラトニンアナログ、メラトニン受容体アンタゴニスト、ML 1 Bアゴニスト、GABA受容体モジュレーター;NMDA受容体モジュレーター、ヒスタミン−3(H3)受容体モジュレーター、ドーパミンアゴニストおよびオレキシン受容体モジュレーターが挙げられる。
【0075】
MCHR1アンタゴニストは、薬物乱用または嗜癖障害を軽減または改善し得る。従って、カンナビノイド受容体モジュレーターと嗜癖障害の治療に用いられる薬剤との組み合わせは、必要用量を減らし得るか、あるいは現在の嗜癖障害治療薬の効果を向上させ得る。薬物乱用または嗜癖障害の治療に用いられる薬剤の例は:選択的セロトニン再取り込み阻害剤(SSRI)、メサドン、ブプレノルフィン、ニコチンおよびブプロピオンである。
【0076】
MCHR1アンタゴニストは、不安症またはうつ病を軽減し得る;従って、本発明に記載の化合物は、抗不安薬または抗うつ薬と組み合わせて用いられ得る。本願化合物と組み合わせて用いるのに適した抗不安薬の例としては、ベンゾジアゼピン(例えば、ジアゼパム、ロラゼパム、オキサゼパム、アルプラゾラム、クロルジアゼポキシド、クロナゼパム、クロラゼプ酸、ハラゼパムおよびプラゼパム)、5HT1A受容体アゴニスト(例えば、ブスピロン、フレシノキサン、ゲピロンおよびイプサピロン)、およびコルチコトロピン放出因子(CRF)アンタゴニストが挙げられる。
【0077】
本願化合物と組み合わせて用いるのに適した抗うつ薬の類の例としては、ノルエピネフリン再取り込み阻害剤(第三級アミンおよび第二級アミンの三環系)、選択的セロトニン再取り込み阻害剤(SSRI)(フルオキセチン、フルボキサミン、パロキセチンおよびセルトラリン)、モノアミンオキシダーゼ阻害剤(MAOI)(イソカルボキサジド、フェネルジン、トラニルシプロミン、セレギリン)、可逆的モノアミンオキシダーゼ阻害剤(RIMA)(モクロベミド)、セロトニンおよびノルエピネフリン再取り込み阻害剤(SNRI)(ベンラファキシン)、コルチコトロピン放出因子(CRF)受容体アンタゴニスト、α−アドレノセプターアンタゴニスト、および非定型抗うつ薬(ブプロピオン、リチウム、ネファゾドン、トラゾドンおよびビロキサジン)が挙げられる。
【0078】
MCHR1アンタゴニストと通常の抗精神病薬の組み合わせはまた、精神病または躁病の治療において、症状の軽減を強め得る。さらに、そのような組み合わせは、迅速な症状の軽減を可能にし、抗精神病薬を用いた長期的な治療の必要性を減少させ得る。そのような組み合わせはまた、有効な抗精神病薬の必要用量を減少させ、結果的に、長期的な抗精神病治療の典型的な運動機能障害の発現の可能性を減少させ得る。
【0079】
本願化合物と組み合わせて用いるのに適した抗精神病薬の例としては、フェノチアジン(クロルプロマジン、メソリダジン、チオリダジン、アセトフェナジン、フルフェナジン、ペルフェナジンおよびトリフルオペラジン)、チオキサンチン(クロルプロチキセン、チオチキセン)、ヘテロ環ジベンゾアゼピン[クロザピン、オランゼピン(olanzepine)およびアリピプラゾール]、ブチロフェノン(ハロペリドール)、ジフェニルブチルピペリジン(ピモジド)およびインドロン(indolone)[モリンドロン(molindolone)]などの抗精神病薬の類が挙げられる。本願化合物との組み合わせにおいて治療価値の可能性を有する他の抗精神病薬としては、ロキサピン、スルピリドおよびリスペリドンが挙げられる。
【0080】
本願化合物と通常の抗精神病薬との組み合わせはまた、躁病についての上記のとおり、統合失調症の治療に対する治療効果を高め得る。ここで用いられる統合失調症には、妄想型、解体型、緊張型、非定型型(undifferentiated)および残遺型統合失調症、統合失調症様障害、統合失調感情障害、妄想性障害、短期の精神病障害および特定されない精神障害が含まれる。本願化合物と組み合わせて用いるのに適した抗精神病薬の例としては、上記の抗精神病薬、並びにドーパミン受容体アンタゴニスト、ムスカリン受容体アゴニスト、5HT2A受容体アンタゴニストおよび5HT2A/ドーパミン受容体アンタゴニストもしくは部分的アゴニスト(例えば、オランゼピン、アリピプラゾール、リスペリドン、ジプラシドン)が挙げられる。
【0081】
(製造方法)
スキーム1で要約されるように、式1Aおよび1Bの構造で表される本願化合物は、有機溶媒(例えば、熱EtOH、または好ましくは、融解したフェノール)中で、式2の化合物と式3の化合物を縮合させることで、1回のステップで本願化合物を生成することができる。
【化32】

【0082】
式2の化合物は、式4の化合物をジメチルホルムアミドジメチルアセタールと加熱することによって、WO2003/033476(本明細書でその全てを援用)で記載されているように製造することができる。
【0083】
式4の化合物の製造は、WO1998/49899に記載されており、それは本明細書で参照によって全て援用される。
【0084】
式3のアニリンは、EtOH、MeOHなどの溶媒中または酢酸エチル−アルコール共溶媒中、触媒(例えば、Pd/C)を用いる触媒的水素化で、式5aまたは5bのニトロ芳香族を還元させることによって製造してもよい(スキーム1)。
【0085】
あるいは、Rがシクロアルキル環であり、点線並びにRおよびRが存在しない、式5bの化合物は;例えばケトレダクターゼ[例えば、ケトレダクターゼ(KRED)112またはケトレダクターゼ(KRED)113(Biocatalytics,Inc.)]を用いる、ケトン8の酵素的還元によってか、または例えばキャンディダ・ソノレンシス(Candida sonorensis)SC16117[ATCC(登録商標)#56511]を用いる、アルコール5bを生成するための、ケトン8の微生物変換によって、製造することができる。
【0086】
あるいは、溶媒(例えば、EtOAc)中、SnClで式5aまたは5bの化合物を還元することによって、式3のアニリンを生成することができる。
【0087】
がシクロアルキル環であり、点線並びにRおよびRが存在しない、式5bの化合物は;最も簡単な方法であるが、溶媒(例えば、DMF)中、塩基(例えば、CsCOまたはKCO)の存在下で、式(7)に図示したような適したアルキル化剤(例えば、α−ハロケトン)を用いて、6のアルキル化を伴う連続的なアルキル化および連続的還元をし、続いて中間ケトン8の還元によって、式6の化合物から製造することができる。還元は、アキラル条件下で、溶媒(例えば、EtOH)中、試薬(例えば、NaBH)を用い、続いて分割するか、あるいは、キラル条件下で、酵素またはキラル試薬を用いて、当業者によく知られた手順で行うことによって達成できる。
【0088】
あるいは、Rが存在せず、点線で示された置換炭素環並びにRおよびRが存在する、式5aの化合物は;溶媒(例えば、反応が進むにつれてpHを中和するために十分なNaHPOを含む85%MeCN/H0)中、式9のエポキシドと式6の化合物のアルカリ金属塩(NaまたはK)を熱またはマイクロ波を用いて、100〜180℃で加熱することによって直接製造することができる。
【0089】
式9のエポキシドは、市販品として入手可能であるか、または当業者によく知られた手順を用いて容易に製造できる。
【0090】
当該発明は、以下に詳しく記載する具体的な態様の用語を用いて上記で説明したものの、そのような態様は本発明の一般的な思想を図示するために提供されるのであって、本発明はそのような態様に限定されないことが理解される。いずれの物質、製法、または化学式における、特定の修飾およびバリエーションも、当業者には、本願における真の精神および範囲から逸脱することなく、容易に明らかであるし;また、そのような修飾およびバリエーションは添付の特許請求の範囲に基づいて熟考されるべきである。
【0091】
(略語)
本明細書で用いられる略語は以下:
Ph=フェニル
Bn=ベンジル
t−Bu=第三級ブチル
Me=メチル
Et=エチル
TMS=トリメチルシリル
TBS=tert−ブチルジメチルシリル
THF=テトラヒドロフラン
EtO=ジエチルエーテル
EtOAc=酢酸エチル
DMF=ジメチルホルムアミド
MeOH=メタノール
EtOH=エタノール
i−PrOH=イソプロパノール
HOAcまたはAcOH=酢酸
TFA=トリフルオロ酢酸
i−PRNEt=ジイソプロピルエチルアミン
EtN=トリエチルアミン
DMAP=4−ジメチルアミノピリジン
NaBH=水素化ホウ素ナトリウム
n−BuLi=n−ブチルリチウム
Pd/C=パラジウム炭素
KOH=水酸化カリウム
NaOH=水酸化ナトリウム
LiOH=水酸化リチウム
CO=炭酸カリウム
NaHCO=炭酸水素ナトリウム
Ar=アルゴン
=窒素
min=分
hまたはhr=時間
L=リットル
mL=ミリリットル
μL=マイクロリットル
g=グラム
mg=ミリグラム
mol=モル
mmol=ミリモル
meq=ミリ当量
RT=室温
satまたはsat’d=飽和
aq.=水性
TLC=薄層クロマトグラフィー
HPLC=高速液体クロマトグラフィー
LC/MS=高速液体クロマトグラフィー/質量分析
MSまたはMass Spec=質量分析
NMR=核磁気共鳴
mp=融点
【発明を実施するための形態】
【0092】
(実施例)
以下の実施例は、本発明の好ましい態様のいくつかを例示するためのものであって、限定するためのものではない。
【0093】
可能であれば、モジュラー収束近似(convergent approach)を利用して、適したアニリンの合成、生理活性チエノピリミドンを生成するためのホルムアミドとの縮合、そしてアルコール部位をプロドラッグに変換するための生成を伴う以下の実施例を製造した。
【0094】
(実施例1)
【化33】

A.2−ブロモ−1−シクロプロピルエタノン
【化34】

Calverley, M.J. et al., Tetrahedron Lett., 43:4609 (1987) によって記載された手順に従い、Br(21.72mL、422mmol)を、1−シクロプロピルエタノン(35.44g、421mmol)のMeOH溶液(250mL)に0℃で5分かけて加えた。得られた濃い橙色の溶液を10℃未満で50分間攪拌して、脱色が起こった。氷浴を除去した後、混合液を20℃でさらに0.5時間攪拌して、すぐに30mLの水を加えた。さらに15分間攪拌した後、反応液を90mLの水で希釈し、200mLのEtOで4回抽出した。有機層を合わせて、連続的に1MのNaCO(150ml)および食塩水(100ml)で洗浄し、無水MgSOで乾燥した。濾過して、ロータリーエバポレーターを用いて濃縮した後、粗生成物を無色の油状物として得た。13mmHgで連続蒸留して、40.9gの2−ブロモ−1−シクロプロピルエタノンを無色の油状物として得た(沸点58〜62℃)。1H NMR (500 MHz, CDCl3) δ ppm 0.95-1.03 (m, 2H), 1.08-1.15 (m, 2H), 2.13-2.21 (m, 1H), 4.00 (s, 2H).
【0095】
B.1−シクロプロピル−2−(2−メトキシ−4−ニトロフェノキシ)エタノン
【化35】

4−ニトログアヤコールカリウム塩水和物(31.7g、153mmol)およびパートAで得た2−ブロモ−1−シクロプロピルエタノン(29.4g、180mmol)の、橙色のDMF懸濁液(310mL)を80℃で1時間加熱した。LC−MS分析は、生成物への変換が完了したことを示した。生じた黄色の反応混合液を水(932ml)で希釈し、4時間撹拌し、混合液を20℃に冷却した。連続して濾過して、黄色の濾過ケーキを得て、150mLのH0で3回洗浄し、空気乾燥して、34.6gの1−シクロプロピル−2−(2−メトキシ−4−ニトロフェノキシ)エタノンを淡黄色の固形物として得た(融点112〜113℃)。1H NMR (400 MHz, CDCl3): δ ppm 0.95-1.03 (m, 2H), 1.13-1.18 (m, 2H), 2.15-2.23 (m, 1H), 3.95 (s, 3H), 4.86 (s, 2H), 6.73 (d, J = 8.7 Hz, 1H), 7.75 (d, J = 2.7 Hz, 1H), 7.82 (dd, J = 8.7, 2.7 Hz, 1H). 13C NMR (100 MHz, CDCl3) δ ppm 205.2, 152.7, 149.1, 117.3, 111.6, 106.9, 73.5, 56.3, 17.1, 12.0. HPLC:5.8分 保持時間、98.7%API;ZORBAX(登録商標)カラム SB C18 4.6×75mm;流速2.5ml/分;グラジエント溶媒系=100%A:0%B〜0%A:100%Bを8分間(溶媒A:10%MeOH−90%H0=0.2%HPO;溶媒B:90%MeOH−10%H0+0.2%HPO);220nmで検出。LC/MS: m/e 252.3 (M+H);4分グラジエント;2.35分 保持。
【0096】
C.(R)−1−シクロプロピル−2−(2−メトキシ−4−ニトロフェノキシ)エタノール[パートCの(R)−アルコール]
【化36】

C.製造(1)
パートBで得た1−シクロプロピル−2−(2−メトキシ−4−ニトロフェノキシ)エタノン(34.6g、138mmol)の、黄色のEtOH懸濁液(356mL)に、0℃でNaBH(3.1g、82mmol)を15分かけて加えた。氷浴を除去した後、反応液をさらに35分間攪拌している間、温度が20℃を超えないようにした。この期間の間、色は連続的に、濃い黄色の色相へ変わった。氷浴を用いて攪拌反応液を〜10℃に冷却し、HOAc(12mL、210mmol)をゆっくりと注意深く添加し、Hガスの放出速度を最小化した。0.5時間攪拌した後、気体放出が止まり、黄色の懸濁液をロータリーエバポレーターで減圧濃縮して、〜300mLのEtOHを除去した。濾過して、H0で洗浄し、空気乾燥して、淡黄色の固形物(28.7g)を得た。連続的にさらに濾液を濃縮し、ほとんどのEtOHを除去したところ、より沈殿の形成が多く生じ、その後、前述のように濾過して、4.9gの目的生成物をさらに得た。2つのフラクションを合わせて、33.6gのラセミ体の1−シクロプロピル−2−(2−メトキシ−4−ニトロフェノキシ)エタノールを得た。
【0097】
ラセミ体の1−シクロプロピル−2−(2−メトキシ−4−ニトロフェノキシ)エタノール(45.1g、mmol)の2/1 MeCN/i−PrOH溶液(451mL)を、キラルSFC条件下、CHIRALPAK(登録商標)AD−H(3×25cm、5μm)カラムを用いて、キラルクロマトグラフィー分離によって分離した。クロマトグラフィー条件は、130mL/分の流速、35℃で、100バールで維持したBPR圧で、234nmで検出した波長で、85/15のCO/i−PrOH混合を移動溶媒として用いた。0.7mLインジェクションはそれぞれ、7分のランタイムを必要とした。Rエナンチオマーのキラル純度は、分析SFC条件を用いるSFC/UV面積%に基づいて、234nmで測定して99.9%以上であった。ロータリーエバポレーターを用いて、残った溶離液を減圧下で濃縮して、(R)−1−シクロプロピル−2−(2−メトキシ−4−ニトロフェノキシ)エタノールを黄色の油状物として得た。連続的に150mLのEtOH中に溶解し、再濃縮して、表題化合物を黄色の油状物の形で得た。それを凝固させて、高減圧下で終夜、乾燥して、淡黄色の固形物を得た(20.9g)。融点77℃。1H NMR (400 MHz, CDCl3): δ ppm 0.30-0.37 (m, 1H), 0.42-0.50 (m, 1H), 0.55-0.69 (m, 2H), 0.97-1.08 (m, 1H), 2.40-2.70 (bs, 1H), 3.41 (ddd, J = 8.3, 8.3, 2.7 Hz, 1H), 3.93 (s, 3H), 4.10 (dd, J = 9.3, 8.0 Hz, 1H), 4.23 (dd, J = 9.3, 2.7 Hz, 1H), 6.95 (d, J = 8.8 Hz, 1H), 7.74 (d, J = 2.2 Hz, 1H), 7.89 (dd, J = 8.8, 2.2 Hz, 1H). 13C NMR (100 MHz, CDCl3) ppm 153.7, 149.2, 141.7, 117.6, 111.5, 106.7, 74.4, 73.5, 56.2, 13.4, 2.7, 2.0. HPLC:6.26分 保持時間、98.7% API;ZORBAX(登録商標) カラム SB C18 4.6×75mm;流速2.5ml/分;グラジエント溶媒系=100%A:0%B〜0%A:100%Bを8分間(溶媒A:10%MeOH−90%H0=0.2%HPO;溶媒B:90%MeOH−10%H0+0.2%HPO);220nmで検出。LC/MS: m/e = 254.3 (M+H).
【0098】
キラルHPLC:HPLCクロマトグラフィーによって光学純度を35℃、CHIRALPAK(登録商標)AD−H、25×4.6mm ID;5μmカラム、移動相が80/20のCO/イソプロパノール混合、100バール、2mL/分の流速の条件を用いて評価した。これらの条件下で、目的のRエナンチオマーが7分で溶離し、続いてSエナンチオマーが8.5分で溶離した。
【0099】
C.製造(2)
【化37】

Biocatalytics,Inc.から市販品として入手可能な2つのケトレダクターゼ(すなわち、KRED−112およびKRED−113)を用いて、パートBのケトンを還元して、対応するパートCの(R)−アルコールを得た。反応は30℃、100mMのリン酸緩衝液中、pH7.5で行い、4〜10mg/mLの基質および2〜5mg/mLの酵素を投入した。イソプロパノールおよびNADPを用いて、還元プロセスに必要な補助因子NADPHを再生させた。この還元に必要な再生補助因子NADPHの再生にあたって、グルコースデヒドロゲナーゼ、NADPおよびグルコースも用いた。逆相およびキラルHPLC方法のいずれも、基質および生成物濃度並びに生成物のエナンチオマー過剰の測定のために確立された方法である。
【0100】
2つのケトレダクターゼであるKRED112およびKRED113は、目的のパートCの(R)−アルコールに関して、収率97〜99%および99.5%エナンチオマー過剰であった。結果を以下の表に示す:
【表1】

【0101】
上記の手順を用いて、Julich Enzyme Inc.の2つのケトレダクターゼ(すなわち、ADHキットパート5/9およびADHキットパート6/9)から、(S)−アルコールを、収率44〜48%および100%エナンチオマー過剰で得た。
【0102】
(HPLC方法)
エナンチオマー過剰の測定のための逆相キラルHPLCは:
カラム:CHIRALPAK(登録商標) IC 5μm、250×4.6mm
溶媒:溶媒AおよびBのグラジエント
A:0.05%TFAの水−メタノール溶液(80:20)
B:0.05%TFAのアセトニトリル−メタノール溶液(80:20)
出発 30%B、25分 55%B、30分 100%B、40分 100%B
合計時間 40分、流速:0.5ml/分、室温
UV検出240および340nm.02.22
【0103】
保持時間は:
(S)−アルコール保持時間:26.74分
(R)−アルコール保持時間:24.9分
パートBのケトンピーク:32.74分
【0104】
C.製造(3):選択的酵素還元プロセス
キャンディダ・ソノレンシス(Candida sonorensis)(SC16117)を使用した、パートBのケトンの還元:
キャンディダ・ソノレンシス(Candida sonorensis)(SC16117)[ATCC(登録商標)#56511]を用いて、パートBのケトンを還元して、対応するパートCの(R)−アルコールを得た。培養物を48時間、28℃で、2%グルコース、2%麦芽エキス、1%酵母エキス、および0.5%ペプトンを含む培地に生育させた。細胞を遠心分離により回収して、細胞を50mMのリン酸カリウム緩衝液中、細胞濃度10%(w/v)、pH7.0で懸濁した。細胞を5mg/mLの基質、50mg/mLグルコース、5mg/mLのNADPおよび5単位(unit)グルコースデヒドロゲナーゼで補充し、この還元に必要なNADPHを再生させた。反応は、28℃で24時間、行った。生成物濃度および生成物のエナンチオマー過剰は、HPLCで測定した。
【0105】
キャンディダ・ソノレンシス(Candida sonorensis)SC16117[ATCC(登録商標)#56511]を用いて、目的の(R)−アルコールが、収率67%、97%エナンチオマー過剰で生成した。キャンディダ・ソノレンシス(Candida sonorensis)SC16117からのケトレダクターゼ酵素を精製して、細胞抽出物と均一化した。精製したタンパク質は、パートBのケトンを、100%エナンチオマー過剰で、対応するパートCの(R)−アルコールに還元した。グルコース、グルコースデヒドロゲナーゼおよびNADPを用いて、還元プロセスに必要な補助因子NADPHを再生した。
【0106】
D.(R)−2−(4−アミノ−2−メトキシフェノキシ)−1−シクロプロピルエタノール
【化38】

パートCで得た(R)−1−シクロプロピル−2−(2−メトキシ−4−ニトロフェノキシ)エタノール(20.90g、83mmol)のEtOH溶液(546ml)に、5%Pd/C、乾燥塩基、デグッサ(Degussa)タイプ50%含水(3.0g、0.705mmol)を加えた。懸濁液を20℃で2.5時間、水素化したところ(1気圧、H、バルーン)、LC/MS分析は反応が完了したことを示した。反応混合液をセライト(登録商標)パッドに通して濾過した後、EtOHでケーキを連続的に洗浄して、濾液をロータリーエバポレーターで減圧濃縮し、(R)−2−(4−アミノ−2−メトキシフェノキシ)−1−シクロプロピルエタノールを褐色の固形物として得た(融点71℃、18.34g、100%)。1H NMR (400 MHz, CDCl3): δ ppm 0.18-0.27 (m, 1H), 0.38-0.43 (m, 1H), 0.45-0.61 (m, 2H), 0.82-0.92 (m, 1H), 3.21 (ddd, J = 8.8, 8.8, 2.6 Hz, 1H), 3.80 (s, 3H), 3.86 (dd, J = 10.1, 8.8 Hz, 1H), 4.09 (dd, J = 10.1, 2.6 Hz, 1H), 6.21 (dd, J = 8.3, 2.7 Hz, 1H). 6.29 (d, J = 2.7 Hz, 1H), 6.78 (d, J = 8.3 Hz, 1H). 13C NMR (100 MHz, CDCl3) δ ppm 151.2, 142.1, 140.8, 118.7, 106.9, 100.5, 76.5, 74.4, 55.7, 12.9, 2.5, 1.6. HPLC:6.28分 保持時間、98.5% API;ZORBAX(登録商標) カラム SB C18 4.6×75mm;流速2.5ml/分;グラジエント溶媒系=100%A:0%B〜0%A:100%Bを8分間(溶媒A:10%MeOH−90%H0=0.2%HPO;溶媒B:90%MeOH−10%H0+0.2%HPO);220nmで検出。 LC/MS: m/e 224.5 (M+H);4分グラジエント。
【0107】
E.(E)−メチル 5−(4−クロロフェニル)−3−(2−(ジメチルアミノ)ビニル)チオフェン−2−カルボキシレート
【化39】

市販品として入手可能な、メチル 3−アミノ−5−(4−クロロフェニル)チオフェン−2−カルボキシレート(75g、279mmol)のEtOH混合液(450mL)に、1,1−ジメトキシ−N,N−ジメチルメタンアミン(56mL、420mmol)を加えた。攪拌した反応混合液を環流で加熱したところ、30分以内に、懸濁液は清澄な溶液になった。LC/MS分析が示したのは、4時間後に反応が完了したことである。混合液を室温に冷却し、次いでロータリーエバポレーターを用いて減圧濃縮して、黄緑色の油状物を得た。EtO(100mL)の添加後、種晶を加え、それにあたって混合液を撹拌した。攪拌を継続した結果、沈殿が急速に形成し、それを濾過により回収した。終夜減圧下で乾燥した後、74.9gの淡黄色の固形物を得た。濾液を濃縮して、さらに4.5gを得て、合わせて79.4g(収率88%)のメチル 5−(4−クロロフェニル)−3−(2−(ジメチルアミノ)ビニル)チオフェン−2−カルボキシレートを得た。 1H NMR (400 MHz, CDCl3): δ ppm 3.06 (s, 3H), 3.08 (s, 3H), 3.81 (s, 3H), 6.98 (s, 1H), 7.33-7.38 (m, 2H), 7.51-7.56 (m, 2H), 7.68 (s, 1H). 13C NMR (100 MHz, CDCl3) δ ppm 163.2, 159.1, 156.0, 145.7, 134.4, 132.2, 129.1, 126.9, 122.3, 112.4, 51.4, 40.2, 34.3. HPLC:6.14分 保持時間、85.1% API;ZORBAX(登録商標) カラム SB C18 4.6×75mm;流速2.5ml/分;グラジエント溶媒系=100%A:0%B〜0%A:100%Bを8分間(溶媒A:10%MeOH−90%H0=0.2%HPO;溶媒B:90%MeOH−10%H0+0.2%HPO);220nmで検出。 LC/MS: m/e 323.3 (M+H);4分グラジエント。
【0108】
F.(R)−6−(4−クロロフェニル)−3−(4−(2−シクロプロピル−2−ヒドロキシエトキシ)−3−メトキシフェニル)−チエノ[3,2−d]ピリミジン−4(3H)−オン
【化40】

パートEで製造したメチル 5−(4−クロロフェニル)−3−((ジメチルアミノ)メチレンアミノ)チオフェン−2−カルボキシレート(85g、263mmol)、パートDで製造したアニリン(52g、233mmol)、およびフェノール(230g、2444mmol)の混合物を130℃で30分間、加熱した。生じた黒色の粘着性シロップを室温に冷却し、EtO(300mL)で希釈した。生じた混合物を室温で20分間攪拌し、次いで濾過した。濾過ケーキをEtO(600mL)で洗浄した後のHPLC分析は、生成物が6%のフェノールを含むことを示した。なお、生成物の一部は黒色の濾液に留まった。濾過ケーキをCHCl(200mL)中に溶解し、橙色の溶液が生成し、EtO(400mL)で希釈した後に攪拌して、沈殿が生じた。生じた固形物を濾過により回収し、40℃の乾燥器で乾燥し、目的の表題化合物をオフホワイトの固形物として得た(81g、収率74.2%)。融点178〜179℃。1H NMR (400 MHz, DMSO-d6) δ ppm 0.29 - 0.45 (m, 4 H), 0.91 - 1.01 (m, 1 H), 3.34 - 3.39 (m, 1 H), 3.79 (s, 3 H), 3.96 - 4.05 (m, 2 H), 7.04 (dd, 1 H), 7.13 (d, J=8.2 Hz, 1 H), 7.19 (s, 1 H), 7.58 (d, J=8.8 Hz, 2 H), 7.92 (d, J=8.2 Hz, 2 H), 7.97 (s, 1 H), 8.40 (s, 1 H). 13C NMR (100 MHz, DMSO-d6) δ ppm 1.33, 1.66, 14.11, 55.79, 71.16, 73.18, 111.86, 112.81, 119.61, 121.71, 122.04, 127.84, 129.27, 129.68, 131.22, 134.27, 148.61, 148.99, 149.48, 149.78, 156.09, 157.40. HPLC:8.29分 保持時間、>99% API;ZORBAX(登録商標) カラム SB C18 4.6×75mm;流速2.5ml/分;グラジエント溶媒系=100%A:0%B〜0%A:100%Bを8分間(溶媒A:10%MeOH−90%H0=0.2%HPO;溶媒B:90%MeOH−10%H0+0.2%HPO);220nmで検出。LC/MS: m/e 469.3 (M+H);4分グラジエント。
【0109】
キラルHPLC:HPLCクロマトグラフィーによって光学純度を25℃、CHIRALPAK(登録商標)OD、250×4.6mm ID;10μmカラム、移動相が40%ヘプタンを含む60%イソプロパノール、3mL/分の流速の条件を用いて評価した。これらの条件下で、目的のRエナンチオマーが13.2分で溶離し、続いてSエナンチオマーが19.7分で溶離した。
【0110】
(実施例2)
6−(4−クロロフェニル)−3−(4−((3,3−ジフルオロ−1−ヒドロキシシクロブチル)メトキシ)−3−メトキシフェニル)チエノ[3,2−d]ピリミジン−4(3H)−オン
【化41】

A.3,3−ジフルオロ−N,N−ジメチルシクロブタンカルボキサミド
【化42】

シュウ酸クロリド(21.74mL、248mmol)を、3,3−ジフルオロシクロブタンカルボン酸[26g、191mmol;以下に記載されているように製造:Elend, D. et al., Syn. Comm., 35:657 (2005)]のCHCl(500mL)およびDMF(0.5mL)溶液に0℃で滴下して加えた。反応混合液を室温にし、室温で1時間攪拌し、ロータリーエバポレーターを用いて約50mmHgの室温で減圧濃縮した。生じた残渣にTHF(300mL)を加えた後、攪拌溶液を0℃に冷却し、MeNH(478mL、955mmol)のTHF溶液(2M)を添加した。反応混合液を室温で0.5時間攪拌した後、混合液をエーテルおよび5%NaCO水で分液処理した。有機層をMgSOで乾燥し、室温で減圧濃縮した。残渣をCHClおよび水で分けた後、有機層をMgSOで乾燥し、室温で減圧濃縮し、3,3−ジフルオロ−N,N−ジメチルシクロブタンカルボキサミドを褐色の半固形物として得た(24g、147mmol、収率77%)。それをそのまま次の工程で用いた。 1H NMR (400 MHz, CDCl3) δ ppm 2.82 - 3.13 (9 H, m), 2.62 - 2.79 (2 H, m).
【0111】
B.1−(3,3−ジフルオロシクロブチル)−N,N−ジメチルメタンアミン
【化43】

パートAで製造した3,3−ジフルオロ−N,N−ジメチルシクロブタンカルボキサミド(24g、147mmol)のTHF溶液(500mL)を、水素化アルミニウムリチウム(7.5g、198mmol)のTHF攪拌懸濁液(500mL)に0℃で加えた。混合物を室温にした。反応混合液を室温で18時間攪拌した後、NaOH(10mL、6N)および水(5mL)を5℃で攪拌しながら、ゆっくり加えて、クエンチした。反応混合液を室温で0.5時間攪拌し、NaSOで乾燥し、濾過した。vigreuxカラムを用いて、ほとんどのTHFを注意深く蒸留して、濾液を約30mLに濃縮した。残った物質をわずかに減圧した条件下(約100〜200mmHg)で蒸留したところ、フラクション(20mL、沸点70〜90℃)にはTHFの混入した表題化合物が含まれていた。残ったTHFを注意深く、窒素の穏やかなストリームでパージして、1−(3,3−ジフルオロシクロブチル)−N,N−ジメチルメタンアミンを得た(12g、80mmol、収率54.7%)。 1H NMR (400 MHz, CDCl3) δ ppm 2.46 - 2.94 (2 H, m), 2.38 (2 H, d, J=6.55 Hz), 2.16 - 2.28 (9 H, m).
【0112】
C.1−(3,3−ジフルオロシクロブチル)−N,N−ジメチルメタンアミンオキシド水和物
【化44】

以下を参照: Cope, A.C. et al., Org. Syn. Coll., IV:612-615; Doering et al., J. Am. Chem. Soc., 89(17):4534 (1967).
【0113】
30%H水(18mL)を、パートBで製造した1−(3,3−ジフルオロシクロブチル)−N,N−ジメチルメタンアミン(12g、80mmol)のメタノール攪拌溶液(100mL)に、5〜22℃で2時間、滴下して加えた。室温で20時間攪拌した後、さらなる30%H(18mL)を加えた。3時間後、Pdブラックスラリー(150mg)の水溶液(3mL)を攪拌した反応混合液に冷却槽で、温度が5〜25℃で維持できるように少量ずつ加えた。反応混合液を室温で1時間、攪拌し、O放出が止まった。濾過した後、濾液を減圧中で濃縮して、1−(3,3−ジフルオロシクロブチル)−N,N−ジメチルメタンアミンオキシド水和物を濃い、無色の油状物として得た(15g、半固形物)。1H NMR (400 MHz, CD3OD) δppm 3.47 (2 H, d, J=5.29 Hz), 3.16 (6 H, s), 2.75 - 2.92 (3 H, m), 2.42 - 2.58 (2 H, m).
【0114】
D.1,1−ジフルオロ−3−メチレンシクロブタン
【化45】

サンプルからほとんどの水を除去するために、パートCで製造した1−(3,3−ジフルオロシクロブチル)−N,N−ジメチルメタンアミン オキシド水和物 (15g、 91mmol)を、−78℃に冷却した受け入れ(receiving)フラスコを有する蒸留装置を用いて、減圧下(10mm)、100℃で加熱した。水を除去して、温度を徐々に165℃に上げた。約1時間後、ほどんどの出発物質が熱分解した(少量の濃い褐色物質が、蒸留フラスコに残った)。次いで、受け入れフラスコの内容物を、連続的に5%HCl水(3×3mL)および飽和NaHCO(5mL)で洗浄した。有機層(オレフィン)をNaSOで濾過し、1,1−ジフルオロ−3−メチレンシクロブタン(5.5g、52.8mmol、収率58.2%)を無色の油状物として得た。1H NMR (400 MHz, CDCl3) δppm 5.10 (2 H, quin, J=2.52 Hz), 2.77 - 3.57 (4 H, m).
【0115】
E.5,5−ジフルオロ−1−オキサスピロ[2.3]ヘキサン
【化46】

メタクロロ過安息香酸(74.6g、303mmol)を、パートDで製造した1,1−ジフルオロ−3−メチレンシクロブタン(21.0g、202mmol)のCHCl攪拌溶液(600mL)に室温で少量ずつ加えた。添加の間、反応混合液を水浴で冷却した。約1時間後、氷水混合物を用いてさらに冷却して、わずかな発熱を生じるのが開始した。反応混合液を3時間かけて室温にした。室温で16時間攪拌した後、さらなるm−CPBA(10g)を加えた。反応混合液を室温で24時間攪拌し、冷蔵庫に4℃で終夜貯蔵し、いくらかの酸が沈殿した。濾過した後、濾液を10%NaCOで洗浄した。有機層を乾燥し(NaSO)、Vigreuxカラムを用いて約170mLに濃縮した。この物質を約10mm、−78℃トラップ(traps)(損失を最小にするために、2つのトラップを連続して使用)でフラッシュ蒸留した。vigreuxカラムを用いて、留出物を約50mLの体積に濃縮して、NMRによれば、3:1の混合でCHCl:5,5−ジフルオロ−1−オキサスピロ[2.3]ヘキサンを得た(80g、200mmol、収率99%)。この物質は、さらなる精製をせずに次の工程で用いた。1H NMR (400 MHz, CDCl3 δ ppm 2.91 - 3.16 (4 H, m), 2.88 (2 H, s).
【0116】
F.3,3−ジフルオロ−1−((2−メトキシ−4−ニトロフェノキシ)メチル)シクロブタノール
【化47】

5,5−ジフルオロ−1−オキサスピロ[2.3]ヘキサン+3当量のCHCl(22.52g、0.06mol)、パートEで製造したカリウム 2−メトキシ−4−ニトロフェノラート(12.43g、0.060mol)、およびNaHPO・H0(7.45g、0.054mol)を混合した50mLのMeCN−水(85:15)を、スチールボム(steelbomb)中で3.5時間、130℃で加熱した。反応混合液をEtOAcで希釈し、5%NaCOで洗浄し、乾燥し(MgSO)、濃縮した。粗生成物を約150mLのMTBEから再結晶して、3,3−ジフルオロ−1−((2−メトキシ−4−ニトロフェノキシ)メチル)シクロ−ブタノールを淡黄色の固形物として得た(11.2g、0.039mol、収率64.5%)。母液を約50mLに濃縮して、さらに1.2gのわずかに不純な目的生成物を得た。1H NMR (400 MHz, CDCl3) δ ppm 7.89 (1 H, dd, J=8.94, 2.64 Hz), 7.76 (1 H, d, J=2.77 Hz), 6.95 (1 H, d, J=9.06 Hz), 4.16 (2 H, s), 3.94 (3 H, s), 3.36 (1 H, s), 2.73 - 2.92 (4 H, m).
【0117】
G.1−((4−アミノ−2−メトキシフェノキシ)メチル)−3,3−ジフルオロシクロブタノール
【化48】

パートFで製造した3,3−ジフルオロ−1−((2−メトキシ−4−ニトロフェノキシ)メチル)シクロブタノール(32.0g、111mmol)および10%Pd/C(2.0g、1.879mmol)を混合した700mLのMeOH溶液を、H下50psiで1.5時間、攪拌した。濾過した後、濾液を濃縮し、1−((4−アミノ−2−メトキシフェノキシ)メチル)−3,3−ジフルオロシクロブタノール(28.9g、111mmol、一定収率)を淡い紫色の固形物として得た。 1H NMR (400 MHz, CD3OD) δ ppm 6.68 (1 H, d, J=8.56 Hz), 6.35 (1 H, d, J=2.52 Hz), 6.16 (1 H, dd, J=8.31, 2.52 Hz), 4.77 (3 H, br. s.), 3.78 (2 H, s), 3.68 (3 H, s), 2.68 - 2.82 (2 H, m), 2.38 - 2.56 (2 H, m).
【0118】
H.6−(4−クロロフェニル)−3−(4−((3,3−ジフルオロ−1−ヒドロキシシクロブチル)メトキシ)−3−メトキシフェニル)チエノ[3,2−d]ピリミジン−4(3H)−オン
【化49】

攪拌した、実施例1のパートEで製造した(E)−メチル 5−(4−クロロフェニル)−3−((ジメチルアミノ)メチレン−アミノ)チオフェン−2−カルボキシレート(33.9g、105mmol)およびパートGで製造した1−((4−アミノ−2−メトキシ−フェノキシ)メチル)−3,3−ジフルオロシクロブタノール(27.2g、105mmol)の混合物並びにフェノール(200g)を、135〜140℃で45分間、加熱し、その間の反応をLCによってモニターした。混合液をメタノール(700mL)で希釈し、室温で15分間攪拌し、室温で終夜静置した。沈殿生成物を濾過により単離し、冷メタノールで洗浄し、減圧下で乾燥し、6−(4−クロロフェニル)−3−(4−((3,3−ジフルオロ−1−ヒドロキシシクロブチル)メトキシ)−3−メトキシフェニル)チエノ[3,2−d]ピリミジン−4(3H)−オンを白色の固形物として得た(37g、73.3mmol、収率69.8%)。母液をEtOおよびヘキサンで希釈し、より多くの固形物を沈殿させ、それをMeOHでトリチュレートし、1.8gの目的性生物を第2の収穫として得た。融点198〜199℃。1H NMR (400 MHz, CDCl3) δ ppm 8.14 (1 H, s), 7.66 (2 H, d, J=8.56 Hz), 7.54 (1 H, s), 7.45 (2 H, d, J=8.56 Hz), 7.08 (1 H, d, J=8.56 Hz), 6.99 (1 H, d, J=2.27 Hz), 6.95 (1 H, dd, J=8.31, 2.27 Hz), 4.14 (2 H, s), 3.89 (3 H, s), 2.72 - 2.93 (4 H, m). 13C NMR (126 MHz, CDCl3) δ ppm 157.3, 156.7, 151.8, 150.4, 148.60 (1 C, s), 148.0, 135.7, 131.4, 131.4, 129.4, 127.6, 123.1, 120. 8, 119.4, 115.7, 117.6 (dd, J=282, 269. Hz), 111.4, 75.5, 64.6 (dd, J=18, 8 Hz), 56.0, 46.0 (t, J=22.89 Hz).
【0119】
(実施例3〜11)
実施例1および2の化合物のプロドラッグを、溶解度および曝露を改善するために製造した。標準的な条件を用いて、それぞれの、アルコールのアミノ酸エステルを産生した。二塩基酸(例えば、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、およびグルタル酸)の、それぞれの半エステルの製造を実施例7および11に例示する。実施例3および8は、リン酸モノエステルの製造を例示する。
【0120】
(実施例3)
(R)−2−(4−(6−(4−クロロフェニル)−4−オキソチエノ[3,2−d]ピリミジン−3(4H)−イル)−2−メトキシフェノキシ)−1−シクロプロピルエチル ジハイドロジェン ホスフェート
【化50】

A.ビス(2−(トリメチルシリル)エチル) ジイソプロピルホスホラミダイト
【化51】

温度プローブおよび滴下ロートを備えた三首フラスコ(250mL)中に入れたジイソプロピルホスホラミド(diisopropylphosphoramidous)ジクロリド(10.8g50.78mmol)のEtO溶液(53mL)をN下、0から−2℃で冷却した。2−(トリメチルシリル)エタノール(12.6g;106.55mmol)およびEtN(15.4g;152.19mmol)のEtO溶液(84mL)を、27〜28分かけて、攪拌したジイソプロピルホスホラミド ジクロリド溶液に滴下して加えた。穏やかな発熱(+1〜2℃)を伴って、濃い白色の懸濁液が形成した。20℃で終夜攪拌した後、混合液を濾過した。残ったケーキを2回、それぞれ30mLのEtOで洗浄した。濾液を合わせて、2×100mLの飽和NaHCO水で洗浄し、続いて40mLの食塩水で洗浄した。MgSOで乾燥した後、室温で減圧濃縮し、ビス(2−(トリメチルシリル)エチル) ジイソプロピルホスホラミダイトを清澄な無色の液状物として得た(18.12g;49.56mmol;収率97.60%)。1H NMR δ (400 MHz, CDCl3): 3.90-3.78 (m, 4H), 3.77-3.68 (m, 2H), 1.31 (d, J= 6.6 Hz, 12H), 1.17-1.12 (m, 4H), 0.15 (s, 18H). 13C NMR δ (100 MHz, CDCl3): 60.7 (2, d, JC-P = 19.1 Hz, 2C), 42.7 (1, d, JC-P = 12.7 Hz, 2C), 24.6 (3, d, JC-P = 7.6 Hz, 4C), 20.1 (2, d, JC-P = 7.6 Hz, 2C), -1.4 (3, 6C). 31P NMR δ (162 MHz, CDCl3): 143.5 (s). LC/MS: m/e (M+H);4分 グラジエント; 分保持。
【0121】
B.(R)−2−(4−(6−(4−クロロフェニル)−4−オキソチエノ[3,2−d]ピリミジン−3(4H)−イル)−2−メトキシフェノキシ)−1−シクロプロピルエチル ビス(2−(トリメチルシリル)エチル)ホスフェート
【化52】

還流冷却器および温度プローブを備え、Nでフラッシュした、3首丸底フラスコ(250mL)に、(R)−6−(4−クロロフェニル)−3−(4−(2−シクロプロピル−2−ヒドロキシエトキシ)−3−メトキシフェニル)−チエノ[3,2−d]ピリミジン−4(3H)−オン(6.33g;13.50mmol)(実施例1で製造)、1H−1,2,4−トリアゾール(1.89g;27.02mmol)、および無水CHCl(65mL)を20℃で加えた。得られた濃い白い懸濁液に、パートAで製造したビス(2−(トリメチルシリル)エチル) ジイソプロピルホスホラミダイト(9.8g;26.80mmol)を加えた。攪拌反応液をN下で、18時間、加熱還流した(内部:40℃)。18.25時間後(17.5時間後に、HPLCは明確な変換を示した)、反応混合液を−3から−4℃に冷却した。連続してH(8.8mL;100.14mmol)を滴下添加したところ、高い発熱が起こり、それは添加を止めない限り鎮まらなかった。注意すべきことは、発熱は添加の最初の1.3〜1.5mLの間にのみ生じ;残りのHを添加する15分ほどは、発熱が全く起こらなかったことである。添加の完了後、反応液を2時間、0〜5℃で攪拌したところ;HPLC分析は、反応が完了し、またかなりきれいであることを示した(〜92.9〜93AP)。反応液を、12〜15分かけて冷Na水(60mL、1N)の滴下添加によりクエンチした。注意すべきことは、冷却槽が必要なのは、最初の15〜20mLのクエンチが発熱を生じ、結果的に温度が上昇して17〜18℃になるからであり;他の添加は吸熱性であった。反応混合液を20分間、10〜15℃で攪拌し、相を分離した(有機層において、ペルオキシドは検出されなかった)。有機層を連続的に、HCl(70mL、1N)、H0(65mL)、および食塩水(50mL)で洗浄して、MgSO(4.5g)で乾燥した。濾過により乾燥剤を除去した後、ロータリーエバポレーターを用いて25トルおよび30℃以下の浴で、体積を約30mLに減少させた。残渣を、65mLのMTBE中に再び溶解し;〜30〜35mLに再濃縮して、わずかに曇った残渣が生じた。さらなるMTBE(35mL)およびヘキサン(45mL)を15mLずつ用いて希釈し、固形物が生成した。40mLに濃縮する間、回旋によって白い半透明の粒子が形成するのを促進した。残渣を乾固するまでさらに濃縮して、MTBEが混入した白色の固形物を得た(24.5g)。固形物を40mLのヘキサン溶液中で滴定したところ、かなり均一な懸濁液であると考えられ、それをさらに、40mLヘキサン+5mLのMTBEで希釈し、濾過により回収した。ケーキを2回、それぞれ21mLの、95:5のヘキサン/MTBEで洗浄し、真空吸引フィルターで1時間、空気乾燥した。室温の減圧下で乾燥した後、(R)−2−(4−(6−(4−クロロフェニル)−4−オキソチエノ[3,2−d]ピリミジン−3(4H)−イル)−2−メトキシフェノキシ)−1−シクロプロピルエチルビス(2−(トリメチルシリル)エチル)ホスフェート(9.64g;12.86mmol;収率95.30%)を純粋な白い結晶生成物として得た(96.64AP)。1H NMR δ (400 MHz, CDCl3): 8.10 (s, 1H), 7.64 (d, J= 8.8 Hz, 2H), 7.51 (s, 1H), 7.42 (d, J= 8.8 Hz, 2H), 7.05 (d, J= 8.8 Hz, 1H), 6.94 (d, J= 2.7 Hz, 1H), 6.90 (dd, J= 8.8, 2.7 Hz, 1H), 4.31-4.20 (m, 2H), 4.21-4.08 (m, 4H), 4.08-4.00 (m, 1H), 3.85 (s, 3H), 1.30-1.18 (m, 1H), 1.13-1.04 (m, 4H), 0.70-0.60 (m, 3H), 0.47-0.38 (m, 1H), 0.02 (2s, 18 H). 13C NMR δ (C100 MHz, DCl3): 157.4, 156.8, 151.7, 150.3, 149.1, 148.2, 135.7, 131.6, 130.5, 129.5, 127.7, 123.2, 120.1, 119.2, 114.3, 111.4, 81.1 (d, JC-P = 5.1 Hz), 71.8 (d, JC-P = 5.1 Hz), 66.1 (d, JC-P = 6.4 Hz, 2C), 56.2, 19.6 (2d, JC-P = 6.4 Hz), 13.1 (d, JC-P = 5.1 Hz), 3.6, 3.0, -1.5 . 31P NMR δ (162 MHz, CDCl3): -1.11 (m, JP-H = 7.4 Hz). HPLC:96.64% API. MS (エレクトロスプレー、+イオン) m/z 749, 751.
【0122】
C.(R)−2−(4−(6−(4−クロロフェニル)−4−オキソチエノ[3,2−d]ピリミジン−3(4H)−イル)−2−メトキシフェノキシ)−1−シクロプロピルエチル ジハイドロジェン ホスフェート
【化53】

メカニカル攪拌機、温度入り口(temperature inlet)、窒素/真空スイッチ入り口(inlet)、滴下ロート、および還流冷却器を備えた500mLのCHEMGLASS(登録商標)ジャケット反応器(jacketed reactor)(グリコール)の中で、パートBで得た(R)−2−(4−(6−(4−クロロフェニル)−4−オキソチエノ[3,2−d]ピリミジン−3(4H)−イル)−2−メトキシフェノキシ)−1−シクロプロピル−エチル ビス(2−(トリメチルシリル)エチル)ホスフェート(35.27g、47.06mmol)および無水CHCl(315mL)の混合を、20℃で攪拌し、溶解を完了させた(そのときの内部温度は−2℃まで下がっていた)。温度がいったん安定したら、TFA(30.2mL;399.40mmol)を攪拌溶液に滴下して加え、結果的に温度が1.6℃上昇した。反応温度を−0.5℃および1℃(内部)の間で維持しながら一定分量を定期的に取り除いて、HPLC分析により反応の進行をモニターした。TFA添加が完了したすぐ後の組成物のHPLC分析が示したのは、9.29%の出発ビスエステル、44.78%のモノ脱保護(monodeprotection)、42.2%の目的生成物、1.21%の(R)−6−(4−クロロフェニル)−3−(4−(2−シクロプロピル−2−ヒドロキシエトキシ)−3−メトキシフェニル)−チエノ[3,2−d]ピリミジン−4(3H)−オン、および1.25%の主要な副生物。64分後、組成物は、0.0%の出発エステル、0.62%のモノ脱保護、94.36%の目的生成物、1.52%の(R)−6−(4−クロロフェニル)−3−(4−(2−シクロプロピル−2−ヒドロキシエトキシ)−3−メトキシフェニル)−チエノ[3,2−d]ピリミジン−4(3H)−オン、および2.69%の主要な副生物。95分後、反応液を−3℃に冷却し、MeOH(28.5mL)を5分かけて添加した。30分間攪拌した後、反応液を50mmHgおよび15℃で濃縮して、残った体積を〜134mLにした。溶液温度を19℃に上げて、120mLのMTBEをゆっくり添加した(約12分)。〜30mLを添加した後に播種が始まったものの、白色の沈殿形成が開始する前に、約42〜45mLのMTBEを加えた。19〜20℃で2時間攪拌した後、固形物を濾過により回収した。反応器および濾過ケーキのいずれもを、120mLのMTBE/CHCl(2.5:1 v/v)で2回洗浄した。砂のように白い(sandy white)/オフホワイト物質を真空吸引で15分間空気乾燥し、45℃の真空乾燥器で終夜乾燥し、25.58gの粗生成物を得た。F NMRによるといくらかのTFAを含むこの物質は、粗生成物(24.3g)のTHF(200mL)および水(16mL)の溶液をCHEMGLASS(登録商標)ジャケット反応器中で攪拌しながら、55〜57℃で加熱することにより再結晶化して、溶解を完了した。溶液をさらに15分間、60℃で加熱し、10分かけて45℃に冷却し、アセトン(50mL)を約5分かけて加えた(添加の間は、温度を44℃より高く維持した)。添加の完了後、かすかに曇った溶液に、先に結晶化した生成物を播種した。いったん急速な結晶化が始まると、添加の間の温度を42.5℃より高く維持しながら、さらなるアセトン(245mL)を30分かけて加えた。得られた濃いスラリーを22℃(ジャケット)で、約60分冷却し、20〜21℃で90分間攪拌し、固形物を濾過により回収した。反応器および濾過ケーキの両方を、最初は120mLのアセトン/THF(3:1 v/v)で、次いでアセトン(110mL)で洗浄した。真空吸引で40分間空気乾燥した後、固形物を50℃で18時間、真空乾燥器中で乾燥して、18.96gの(R)−2−(4−(6−(4−クロロフェニル)−4−オキソチエノ[3,2−d]ピリミジン−3(4H)−イル)−2−メトキシフェノキシ)−1−シクロプロピルエチル ジハイドロジェン ホスフェートを得た(99.2%ee、収率73%で純度99.4%)。融点166℃。1H NMR (500 MHz, DMSO-d6) δ ppm 0.41 (m, 2H), 0.52 (m, 2H), 1.26 (m, 1H), 3.82 (m, 1H), 4.20 (d, 2H, J = 4.29 Hz), 3.80 (s, 3H),7.06 (dd, 1H, J = 8,57, J = 2.34 Hz), 7.15 (d, 1H, J = 8.57Hz), 7.22 (d, 1H, J = 2.34 Hz), 7.58 (d, 2H, J = 8.57 Hz), 7.93 (2H, J = 8.57 Hz), 7.98 (s, 1H), 8.40 (s, 1H). 13H NMR (126 MHz, DMSO-d6) δ ppm 2.4, 3.1, 13.1, 56.0, 71.0, 77.9, 112.2, 113.1, 119.8, 121.9, 122.1, 128.0, 129.4, 130.1, 131.3, 134.4, 148.4, 149.1, 149.6, 149.9, 156.2, 157.5. 31P NMR δ (162 MHz, DMSO-d6): -0.75. HPLC:95.4% API; 0.69%. LC/MS: m/e 549.1 (M+H); 4分 グラジエント。高分解能質量分析:C2423、ClPS計算値:549.06522;実験値:549.06531。
【0123】
キラルHPLC:光学純度をHPLCクロマトグラフィーにより20℃で評価し、以下を用いた:CHIRALCEL(登録商標)OJ−RH、150×4.6mm ID;5μmカラムであり、移動相は0.1% リン酸を含む100 % メタノール、流速は0.5 mL/分。これらの条件下で、Sエナンチオマーは8分で溶離し、続いて目的のRエナンチオマーが10分で溶離した。
【0124】
(実施例4)
(S)−((R)−2−(4−(6−(4−クロロフェニル)−4−オキソチエノ[3,2−d]ピリミジン−3(4H)−イル)−2−メトキシフェノキシ)−1−シクロプロピルエチル) 2−アミノ−3−メチルブタノアート
【化54】

実施例1に記載された(R)−6−(4−クロロフェニル)−3−(4−(2−シクロプロピル−2−ヒドロキシエトキシ)−3−メトキシフェニル)−チエノ[3,2−d]ピリミジン−4(3H)−オン(1.3g、2.33mmol)、ジイソプロピルカルボジイミド(0.88g、6.99mmol)、4−ジメチルアミノピリジン(142mg、1.16mmol)、およびN−(t−ブトキシカルボニル)−L−バリン(1.52g、6.99mmol)を混合したCHCl溶液(10mL)を室温で19時間、攪拌した。LCMS分析によって、出発アルコールは全く残っていなかった。懸濁液をCHClで希釈し、NaHCO水で洗浄した。水層をCHClで抽出した後、有機層を合わせて、水および食塩水で連続的に洗浄し、NaSOで乾燥し、濾過し、濾液を減圧下で濃縮した。残渣をフラッシュクロマトグラフィーで精製し(シリカゲル、EtOAC/ヘキサン0〜40%グラジエント)、表題化合物を白色の固形物として得た(1.12g)。1H NMR (CDCl3) δ 0.41-0.46 (m, 1H), 0.49-0.53 (m, 1H), 0.58-0.63 (m, 1H), 0.64-0.68 (m, 1H), 0.925 (d, J = 7Hz), 3H), 0.99 (d, J = 7Hz), 1.16-1.19 (m, 1H), 1.44 (s, 9H), 2.19-2.23 (m, 1H), 3.86 (s, 3H), 4.23-4.32 (m, 3H), 4.67-4.71 (m, 1H), 5.06 (d, J = 2Hz, 1H), 6.92-6.95 (m, 2H), 7.04 (d, J = 2Hz, 1H), 7.26 (s, 2H), 7.45 (d, J= 2Hz), 7.54 (s, 1H), 7.66 (d, J= 2Hz, 2H), 8.16 (s, 1H). LCMS (ES): m/z 669 [M+H].
【0125】
【化55】

パートAで得たBOCバリンエステル(1.12g、1.67mmol)を、1:2のTFA/CHCl混合液(17mL)に溶解した。1時間後、20℃でHPLC分析を行ったところ、反応は完了し、その後すぐに揮発物を減圧下で除去した。CHCl中に溶解した残渣をNaHCO/NaCO水で2回洗浄し、続いて食塩水で洗浄し、次いでNaSOで乾燥した。濃縮して、900mg(94%)の表題化合物を得た。フラッシュクロマトグラフィー(シリカゲル、MeOH/CHCl、0〜10%グラジエント)によってさらなる精製をして、表題化合物を白色の固形物として得た(0.87g)。1H NMR (CDCl3) δ 0.41-0.45 (m, 1H), 0.50-0.54 (m, 1H), 0.58-0.63 (m, 1H), 0.64-0.67 (m, 1H), 0.94 (d, J = 7Hz), 3H), 1.01 (d, J = 7Hz), 1.16-1.19 (m, 1H), 2.07-2.10 (m, 1H), 3.36 (d, J=1Hz, 1H), 3.87 (s, 3H), 4.24-4.31 (m, 2H), 4.68-4.72 (m, 1H), 6.92-6.95 (m, 2H), 7.03 (d, J = 2Hz, 1H), 7.26 (s, 2H), 7.44 (d, J= 2Hz), 7.53 (s, 1H), 7.66 (d, J= 2Hz, 2H), 8.14 (s, 1H). LCMS (ES): m/z 569 [M+H]+.
【0126】
(実施例5)
(R)−2−(4−(6−(4−クロロフェニル)−4−オキソチエノ[3,2−d]ピリミジン−3(4H)−イル)−2−メトキシ−フェノキシ)−1−シクロプロピルエチル 2−アミノアセテート、塩酸塩
【化56】

実施例1に記載された(R)−6−(4−クロロフェニル)−3−(4−(2−シクロプロピル−2−ヒドロキシエトキシ)−3−メトキシフェニル)−チエノ[3,2−d]ピリミジン−4(3H)−オン(300mg、0.640mmol)、2−(tert−ブトキシカルボニルアミノ)酢酸(168mg、0.960mmol)、およびDMAP(65mg、0.532mmol)を混合したCHCl溶液(20mL)に、ジイソプロピルカルボジイミド(150μL、0.963mmol)を25℃で滴下して加えた。生じた混合物を2時間、25℃で攪拌した。蒸発させ、次いでフラッシュクロマトグラフィー(120g、0%〜100%EtOAc−ヘキサン)を行い、目的のN−Bocグリシンエステルを無色の、15mol%のジイソプロピルウレアを含む固形物として得た(477mg、0.762mmol、収率119%)。HPLC方法:グラジエント溶媒系は100%A:0%B〜0%A:100%B(A=90%H0/10%MeOH+0.2%HPO;B=90%MeOH/10%H0+0.2%HPO)、4分間;220nmで検出。YMC S3 ODS 4.6×50mm Ballisticカラム;保持時間=3.61分、100%。
【0127】
さらなる精製をせずに、N−Bocグリシンエステル(379mg、0.605mmol)を4N HClのジオキサン溶液(10mL、40.0mmol)中に加えた。3時間攪拌した後、混合液をMeOH(5mL)で希釈し、濾過した。濾過ケーキをEtO(50mL)で洗浄し、表題化合物のHCl塩をオフホワイトの固形物として得た(291mg、0.52mmol、収率85%)。融点218〜220℃。1H NMR (DMSO-d6, 400 MHz): δ 0.38-0.48 (m, 1H), 0.49-0.64 (m, 3H), 1.18-1.30 (m, 1H), 3.3-3.42 (m, 2H), 3.77 (s, 3H), 3.78-4.0 (m, 2H), 4.2-4.32 (m, 2H), 4.65-4.74 (m, 1H), 7.06 (dd, J = 8.85, 2.64 Hz, 1H), 7.15 (d, J = 8.8 Hz, 1H), 7.22 (d, J = 2.2 Hz, 1H), 7.58 (d, J = 8.35 Hz, 2H), 7.93 (d, J = 8.8 Hz, 2H), 7.99 (s, 1H). LC-MS: 526.1 [M + H]+. HPLC:SunFire C18 3.5 μM、4.6×150mm、10分かけて10%〜100% および次の5分かけて100〜100%;流速=1mL/分;溶媒A=0.05%TFAのH0溶液:CHCN(95:5)、溶媒B=0.05%TFAのH0:CHCN(5:95)溶液。保持時間= 7.46分、純度>99%。
【0128】
(実施例6)
(S)−((R)−2−(4−(6−(4−クロロフェニル)−4−オキソチエノ[3,2−d]ピリミジン−3(4H)−イル)−2−メトキシフェノキシ)−1−シクロプロピルエチル) 2−アミノプロパノアート、塩酸塩
【化57】

表題化合物を、実施例5に記載されたのと類似の方法で製造したが、ただしBoc−グリシンの代わりにBoc−L−アラニンを用いた。1H NMR (メタノール-d4, 400 MHz): δ 0.45-0.58 (m, 2H), 0.6-0.75 (m, 2H), 1.22-1.34 (m, 1H), 1.58 (d, J = 7.5 Hz, 3H), 3.87 (s, 3H), 4.07 (br q, J = 7.0 Hz, 2H), 4.35-4.42 (m, 2H), 4.72-4.80 (m, 1H), 7.04 (dd, J = 8.6, 2.4 Hz, 1H), 7.14-7.20 (m, 2H), 7.52 (d, J = 8.35 Hz, 2H), 7.73 (s, 1H), 7.83 (d, J = 8.35 Hz, 2H), 8.39 (s, 1H). LC-MS: 540.4 [M + H]+. HPLC:SunFire C18 3.5 μM、4.6×150 mm、10分かけて10%〜100%および次の5分かけて100〜100%;流速=1mL/分;溶媒A=0.05%TFAのH0:CHCN(95:5)溶液、溶媒B=0.05%TFAのH0:CHCN(5:95)溶液。保持時間=7.62分、純度=98.7%(検出I)。
【0129】
(実施例7)
(R)−5−(2−(4−(6−(4−クロロフェニル)−4−オキソチエノ[3,2−d]ピリミジン−3(4H)−イル)−2−メトキシフェノキシ)−1−シクロプロピルエトキシ)−5−オキソペンタン酸
【化58】

グルタル酸無水物(73.0mg、0.640mmol)、実施例1で製造した(R)−6−(4−クロロフェニル)−3−(4−(2−シクロプロピル−2−ヒドロキシエトキシ)−3−メトキシフェニル)チエノ[3,2−d]ピリミジン−4(3H)−オン(60mg、0.128mmol)、および4−ピロリジノピリジン(18.96mg、0.128mmol)を混合したCHCl溶液(4mL)を40℃で25時間攪拌した。LC−MSは、約35%が変換したことを示した。さらなる量のグルタル酸無水物(130mg)および4−ピロリジノピリジン(20mg)を加えた。40℃でさらに16時間、攪拌した後、HPLCによれば変換が完了した。混合液を室温に冷却し、CHCl(10mL)で希釈し、1NのHCl、食塩水で洗浄し、乾燥し(NaSO)、濾過し、蒸発させて、白色の固形物を得た。それを、プレパラティブHPLCによって精製し[PHENOMENEX(登録商標) Luna Axia 5μ C18 30×100mm;10分グラジエントで、40%A:60%B〜0%A:100%B(A=90%H0/10%MeOH+0.1%TFA);(B=90%MeOH/10%H0+0.1%TFA);220nmで検出]、不純な表題化合物を白色の固形物として得た(58mg、78%)。生成物をさらにCHCNシステムを用いるプレパラティブHPLCによって精製し[PHENOMENEX(登録商標) Luna Axia 5μ C18 30×100mm;10分グラジエントで、40%A:60%B〜0%A:100%B(A=90%H0/10%CHCN+0.1%TFA);(B=90%CHCN/10%H0+0.1%TFA);220nmで検出]、表題化合物を白色の固形物として得た(40mg、0.069mmol、収率53.6%)。1H NMR (CDCl3, 400 MHz): δ 0.33-0.43 (m, 1H), 0.45-0.55 (m, 1H), 0.55-0.68 (m, 2H), 1.06-1.18 (m, 1H), 1.85-1.95 (m, 2H), 2.30-2.45 (m, 4H), 3.86 (s, 3H), 4.23-4.35 (m, 2H), 4.64-4.73 (m, 1H), 6.87-6.96 (m, 2H), 7.03 (d, J = 7.9 Hz, 2H), 7.44 (d, J = 8.35 Hz, 2H), 7.53 (s, 1H), 7.65 (d, J = 8.35 Hz, 2H), 8.24 (s, 1H). LC-MS, [M + H]+ = 583.5. HPLC方法:グラジエント溶媒系が、100%A:0%B〜0%A:100%B(A=90%H0/10%MeOH+0.2%HPO;B=90%MeOH/10%H0+0.2%HPO)、4分間;220nmで検出。YMC S3 ODS 4.6×50mm Ballisticカラム;保持時間=4.35分。
【0130】
(実施例8)
1−((4−(6−(4−クロロフェニル)−4−オキソチエノ[3,2−d]ピリミジン−3(4H)−イル)−2−メトキシフェノキシ)メチル)−3,3−ジフルオロシクロブチル ジハイドロジェン ホスフェート
【化59】

A.ジベンジル 1−((4−(6−(4−クロロフェニル)−4−オキソチエノ[3,2−d]ピリミジン−3(4H)−イル)−2−メトキシフェノキシ)メチル)−3,3−ジフルオロシクロブチル ホスフェート
【化60】

実施例2に記載された6−(4−クロロフェニル)−3−(4−((3,3−ジフルオロ−1−ヒドロキシシクロブチル)メトキシ)−3−メトキシフェニル)チエノ[3,2−d]ピリミジン−4(3H)−オン(1.01g、2.000mmol)、ジベンジル ジイソプロピルホスホラミダイト(2.073g、6.00mmol)および1H−1,2,4−トリアゾール(0.414g、6.00mmol)を混合した1,2−ジクロロエタン溶液(30mL)を還流温度で加熱した。1時間後、混合液を室温に冷却し、その後すぐに、2mLの50%Hを加えた。15分間室温で攪拌した後、混合液をCHClで希釈し、水、5%チオ硫酸ナトリウム水、および水で連続的に洗浄した。有機層をMgSOで乾燥し、濃縮し、粗生成物をフラッシュクロマトグラフィーして(シリカゲル/ヘキサン−EtOAc 100:0〜0:100グラジエント)、ジベンジル 1−((4−(6−(4−クロロフェニル)−4−オキソチエノ[3,2−d]ピリミジン−3(4H)−イル)−2−メトキシフェノキシ)メチル)−3,3−ジフルオロシクロブチル ホスフェートを得た(1.3g、1.699mmol、収率85%)。1H NMR (400 MHz, クロロホルム-d)δppm 8.10 (1 H, s), 7.66 (2 H, d, J=8.56 Hz), 7.54 (1 H, s), 7.45 (2 H, d, J=8.56 Hz), 7.28 - 7.40 (10 H, m), 6.95 (1 H, d, J=8.56 Hz), 6.92 (1 H, d, J=2.27 Hz), 6.87 (1 H, dd, J=8.31, 2.27 Hz), 5.08 (4 H, dd, J=7.81, 1.26 Hz), 4.32 (2 H, s), 3.76 (3 H, s), 2.89 - 3.30 (4 H, m).
【0131】
B.1−((4−(6−(4−クロロフェニル)−4−オキソチエノ[3,2−d]ピリミジン−3(4H)−イル)−2−メトキシフェノキシ)メチル)−3,3−ジフルオロシクロブチル ジハイドロジェン ホスフェート
【化61】

パートAで製造したジベンジル 1−((4−(6−(4−クロロフェニル)−4−オキソチエノ[3,2−d]ピリミジン−3(4H)−イル)−2−メトキシフェノキシ)メチル)−3,3−ジフルオロシクロブチル ホスフェート(1.3g、1.699mmol)を5mLの純粋なTFAに溶解した。室温で3時間後、反応液を濃縮し、ロータリーエバポレーターを用いてMeOHから再び濃縮した(3×)。残渣をEtOHからトリチュレートし、白色の固形物1−((4−(6−(4−クロロフェニル)−4−オキソチエノ−[3,2−d]ピリミジン−3(4H)−イル)−2−メトキシフェノキシ)メチル)−3,3−ジフルオロシクロブチル ジハイドロジェン ホスフェートを得た(0.985g、1.684mmol、収率99%)。融点219℃。1H NMR (400 MHz, DMSO-d6) δ 8.40 (1 H, s), 7.98 (1 H, s), 7.92 (2 H, d, J=8.3 Hz), 7.57 (2 H, d, J=8.3 Hz), 7.23 (1 H, d, J=1.8 Hz), 7.15 (1 H, d, J=8.8 Hz), 7.07 (1 H, d, J=8.1 Hz), 4.27 (2 H, s), 3.79 (3 H, s), 3.21 (2 H, q, J=14.4 Hz), 2.94 - 3.10 (2 H, m). 13C NMR (126 MHz, CDCl3) δ ppm 157.41, 156.05, 149.81, 149.42, 149.30, 148.08, 131.2, 130.63, 129.27, 127.83, 122.0, 121.72, 119.73, 118.21 (t, J=270.9 Hz), 114.1, 112.28, 72.2 (m), 69.32 (ddd, J=18.5, 12.0, 6.9 Hz), 56.0, 44.32 (m)LCMS: 585 (M+H).
【0132】
(実施例9)
1−((4−(6−(4−クロロフェニル)−4−オキソチエノ[3,2−d]ピリミジン−3(4H)−イル)−2−メトキシフェノキシ)メチル)−3,3−ジフルオロシクロブチル 2−アミノアセテート
【化62】

1−(3−ジメチルアミノプロピル)−3−エチルカルボジイミド塩酸塩(3.80g、19.80mmol)を、実施例2で製造した6−(4−クロロフェニル)−3−(4−((3,3−ジフルオロ−1−ヒドロキシシクロブチル)−メトキシ)−3−メトキシフェニル)チエノ[3,2−d]ピリミジン−4(3H)−オン(2.0g、3.96mmol)、Boc−グリシン(3.47g、19.80mmol)および4−(ピロリジン−1−イル)ピリジン(2.94g、19.80mmol)を混合したCHCl溶液(50mL)に加えた。混合液を15分間攪拌しながら還流し、CHClで希釈し、冷10%HSO水および飽和NaHCOで連続的に洗浄した。有機層を乾燥し(MgSO)、濃縮し、白色の固形物を得た(3.8g)。CHCl(30mL)中に溶解した後、TFA(15mL)を添加し、溶液を室温で15分間そのままにした。反応混合液を次いで濃縮し、CHClおよび5%NaCO水溶液で分液処理した。有機層を乾燥し(MgSO)、減圧濃縮した。粗生成物をフラッシュクロマトグラフィーして(シリカゲル/CHCl−iPrOH100:0〜80:20グラジエント)、1−((4−(6−(4−クロロフェニル)−4−オキソチエノ[3,2−d]ピリミジン−3(4H)−イル)−2−メトキシフェノキシ)メチル)−3,3−ジフルオロシクロブチル 2−アミノアセテートを得た(2.2g)。1H NMR (400 MHz, クロロホルム-d) δ ppm 8.13 (1 H, s), 7.66 (2 H, d, J=8.56 Hz), 7.53 (1 H, s), 7.45 (2 H, d, J=8.56 Hz), 7.03 (1 H, d, J=8.56 Hz), 6.97 (1 H, d, J=2.52 Hz), 6.92 (1 H, dd, J=8.31, 2.27 Hz), 4.44 (2 H, s), 3.88 (3 H, s), 3.43 (2 H, s), 3.06 - 3.36 (2 H, m), 2.85 - 3.07 (2 H, m). LCMS: 562 (M+H).
【0133】
(実施例10)
(S)−1−((4−(6−(4−クロロフェニル)−4−オキソチエノ[3,2−d]ピリミジン−3(4H)−イル)−2−メトキシフェノキシ)メチル)−3,3−ジフルオロシクロブチル 2−アミノプロパノアート、塩酸塩
【化63】

A.(S)−1−((4−(6−(4−クロロフェニル)−4−オキソチエノ[3,2−d]ピリミジン−3(4H)−イル)−2−メトキシフェノキシ)メチル)−3,3−ジフルオロシクロブチル 2−(tert−ブトキシカルボニルアミノ)−プロパノアート
【化64】

Boc−アラニン(94mg、0.495mmol)、実施例2の6−(4−クロロフェニル)−3−(4−((3,3−ジフルオロ−1−ヒドロキシシクロブチル)メトキシ)−3−メトキシフェニル)チエノ[3,2−d]ピリミジン−4(3H)−オン(50mg、0.099mmol)、4−ピロリジノピリデン(14.68mg、0.099mmol)、およびN,N’−ジイソプロピルカルボジイミド(0.077mL、0.495mmol)を混合したCHCl溶液(4mL)を、40℃の密封管で18時間攪拌した。室温に冷却後、揮発物を減圧下で除去し、粗生成物をグラジエントクロマトグラフィーして(シリカゲル/EtOAc/ヘキサン0〜30%)、(S)−1−((4−(6−(4−クロロフェニル)−4−オキソチエノ[3,2−d]ピリミジン−3(4H)−イル)−2−メトキシフェノキシ)メチル)−3,3−ジフルオロシクロブチル 2−(tert−ブトキシカルボニルアミノ)プロパノアートをオフホワイトの固形物として得た(59mg、0.087mmol、収率88%)。1H NMR (400 MHz, CDCl3) δ ppm 8.13 (1 H, s), 7.66 (2 H, d), 7.54 (1 H, s), 7.46 (2 H, d), 6.87 - 7.06 (3 H, m), 4.96 (1 H, br. s.), 4.34 - 4.48 (2 H, m), 4.20 - 4.34 (1 H, m), 3.87 (3 H, s), 3.09 - 3.24 (2 H, m), 2.97 (2 H, ブロード s.), 1.45 (9 H, s), 1.38 (3 H, d, J=7.30 Hz). LC-MS : 2.72分 677 (M+H). Luna 5u C18 30×4.6mm ID、流速=4ml/分、グラジエント=0%A〜100%Bを2分、A=90%H0/10%MeOH/0.1%TFA、B=10%H0/90%MeOH/0.1%TFA)。
【0134】
B.(S)−1−((4−(6−(4−クロロフェニル)−4−オキソチエノ[3,2−d]ピリミジン−3(4H)−イル)−2−メトキシフェノキシ)メチル)−3,3−ジフルオロシクロブチル 2−アミノプロパノアート、塩酸塩
【化65】

パートAの(S)−1−((4−(6−(4−クロロフェニル)−4−オキソチエノ[3,2−d]ピリミジン−3(4H)−イル)−2−メトキシフェノキシ)メチル)−3,3−ジフルオロシクロブチル 2−(tert−ブトキシカルボニルアミノ)−プロパノアート(59mg、0.087mmol)を混合した25%TFA/CHCl溶液(4mL)を室温で30分間、攪拌した。揮発物を減圧下で除去した後、粗生成物をprep−HPLCにより精製した[PHENOMENEX(登録商標)Axia、Luna 5ミクロン 30×100mm、流速=40ml/分、グラジエント=0%A〜100%Bを10分、A=90%H0/10%MeOH/0.1%TFA、B=10%H0/90%MeOH/0.1%TFA]。目的のフラクションを濃縮して、高減圧下で乾燥して、飽和NaHCO水(6ml)を添加して、CHClで抽出した(2×10ml)。CHCl層を合わせて、NaSOで乾燥し、濃縮し、CHCl(2ml)中に溶解させて1.0MのHCl(0.079mL、0.079mmol)/MeOH(2ml)を−30℃で添加することによって、遊離塩基(42mg、0.073mmol)をHCl塩に変換した。HCl塩を次いで濃縮し、高減圧下で乾燥して、(S)−1−((4−(6−(4−クロロフェニル)−4−オキソチエノ[3,2−d]ピリミジン−3(4H)−イル)−2−メトキシフェノキシ)メチル)−3,3−ジフルオロシクロブチル 2−アミノプロパノアート(41.94mg、0.073mmol、収率83%)を白色の固形物として得た。1H NMR (400 MHz, MeOD) δ ppm 8.27 (1 H, s), 7.73 (2 H, d), 7.63 (1 H, s), 7.43 (2 H, d), 7.02 - 7.15 (2 H, m), 6.94 (1 H, dd, J=8.56, 2.52 Hz), 4.41 (2 H, d, J=3.02 Hz), 3.91 - 4.02 (1 H, m), 3.78 (3 H, s), 2.87 - 3.18 (4 H, m), 1.44 (3 H, d, J=7.30 Hz). LC-MS : 2.33分 576 (M+H). Luna 5u C18 30×4.6mm ID、流速=4ml/分、グラジエント=0%A〜100%Bを2分、A=90%H0/10%MeOH/0.1%TFA、B=10%H0/90%MeOH/0.1%TFA。
【0135】
(実施例11)
5−(1−((4−(6−(4−クロロフェニル)−4−オキソチエノ[3,2−d]ピリミジン−3(4H)−イル)−2−メトキシフェノキシ)メチル)−3,3−ジフルオロシクロブトキシ)−5−オキソペンタン酸、ナトリウム塩
【化66】

グルタル酸無水物 (56.5mg、 0.495mmol)、実施例2の6−(4−クロロフェニル)−3−(4−((3,3−ジフルオロ−1−ヒドロキシシクロブチル)メトキシ)−3−メトキシフェニル)チエノ[3,2−d]ピリミジン−4(3H)−オン(50mg、0.099mmol)、および4−ピロリジノピリジン(14.68mg、0.099mmol)を混合したCHCl溶液(4mL)を40℃で18時間攪拌した。冷却して、揮発物を減圧下で除去した後、粗生成物をprep−HPLCにより精製した[PHENOMENEX(登録商標) Axia、Luna 5 ミクロン 30×100mm、流速=40ml/分、グラジエント=0%A〜100%Bを10分、溶媒A=90%H0/10%MeCN/.1% TFA、溶媒B=10%H0/90%MeCN/.1%TFA]。目的のフラクションを合わせて、濃縮して、高減圧下で乾燥して、純粋な遊離酸を得た(37mg、0.60mmol)。
【0136】
必要であれば、0.5MのNaHCO水(0.131mL、0.065mmol)を、酸(37mg、0.60mmol)を含むTHF溶液(2mL)に添加することにより、対応するナトリウム塩を生成することもできる。溶液を次いで濃縮し、高減圧下で乾燥して、ナトリウム 5−(1−((4−(6−(4−クロロフェニル)−4−オキソチエノ[3,2−d]ピリミジン−3(4H)−イル)−2−メトキシフェノキシ)メチル)−3,3−ジフルオロシクロブトキシ)−5−オキソペンタノアート(37.59mg、0.061mmol、収率61.3%)をオフホワイトの固形物として得た。1H NMR (400 MHz, MeOD) δ ppm 8.28 (1 H, s), 7.67 - 7.81 (2 H, m), 7.62 (1 H, s), 7.37 - 7.47 (2 H, m), 7.01 - 7.11 (2 H, m), 6.92 (1 H, dd, J=8.44, 2.39 Hz), 4.33 (2 H, s), 3.78 (3 H, s), 2.94 - 3.11 (2 H, m), 2.78 - 2.95 (2 H, m), 2.27 (2 H, t, J=7.55 Hz), 2.13 (2 H, t, J=7.43 Hz), 1.68 - 1.84 (2 H, m). LC-MS : 2.59分 619 (M+H). Luna 5u C18 30×4.6mm ID、流速=4ml/分、グラジエント=0%A〜100%Bを2分、A=90%H0/10%MeOH/0.1%TFA、B=10%H0/90%MeOH/0.1%TFA。
【0137】
(アッセイおよび生物学的評価)
本願化合物、すなわち本発明の化合物IAおよびIB、並びに化合物(2007年4月26日に発行された米国特許公開第2007/0093509号 A1の記載のように製造)は、それらのKまたはペプチドアゴニストとヒトメラニン凝集ホルモン受容体(MCHR1)の結合を拮抗する能力を測定するために、まずはインビトロ結合アッセイで分析した。
【0138】
(MCHR1活性を評価するための放射リガンド結合アッセイ)
変異型(E4Q、A5T)hMCHR1受容体を発現する、安定に導入されたHEK−293細胞からの細胞膜を、加圧型細胞破砕装置(dounce homogenization)および分画遠心によって作成した。MgCl(10mM)、EGTA(2mM)、およびBSA(0.1%)(結合緩衝液)を有するHEPES(25mM、pH7.4)の合計0.2mL中で90分間インキュベートした膜タンパク質(0.5〜1.0μg)を用いて結合実験を行った。競合結合アッセイについては、0.06〜0.1nM[Phe13、[125I]Tyr19]−MCHの存在下、標識していない試験分子の濃度を増大させて反応を行った。BSA(1%)を含む結合緩衝液(0.075mL)でプレコートした(pre−coated)96ウェル−GFC ユニフィルタープレート(Unifilter plate)で、すばやく減圧濾過することによって反応を終了し、TX−100(0.01%)を含むリン酸緩衝生理食塩水(0.4mL、pH 7.4)で3回洗浄した。フィルターを乾燥し、マイクロシント20(Microscint 20)(0.05mL)を各ウェルに加え、続いてトップカウント(TopCount)(登録商標)マイクロプレートシンチレーションカウンター(パッカード)でシンチレーション測定することによって、放射活性を定量化した。4つのパラメータのロジスティック方程式(logistic equation)を用いた非線形最小二乗法によって、阻害定数を決定した。
【0139】
値が20nm以下を示す化合物を選択して、チトクロムP450酵素を介在する、ラットのミクロソーム酸化的分解反応に対する代謝安定性をさらに分析した。10%以下の分解を示す化合物をラットPKモデルにおいてさらに評価して、経口バイオアベイラビリティおよびCNSアクセス能力(ability to access the CNS)を解析した。本願化合物IAおよびIB並びにaからfの化合物に関して、化合物(IAおよびIB並びにaからf)をプロドラッグ(この評価では、アミノ酸エステル、すなわちそれぞれバリンおよびグリシン)として投与しない限り、溶解度が吸収を激しく制限し、経口暴露を削減した。比較のインビボ研究のために、IA、c、d、およびeを含むサブセットではL−バリンエステルプロドラッグを用い;IB、a、b、およびfを含むサブセットではグリシンエステルプロドラッグを用いた。10mg/Kg用量のプロドラッグエステルをラットに経口投与した後の、さらなる評価のための判断基準は、0.2〜3の脳対血漿比および生物活性物質の3マイクロモル時間よりも大きい8時間AUC。この判断基準に適合した化合物のサブセットは、次に、4日間有効性モデルで評価し、それはプロドラッグエステルを若い成長期のオスラットに連日投与することを伴った。30mg/Kgまたはそれ未満で投与したとき、用量依存的に体重減少(5%を超える体重減少)をもたらす化合物は、ラット、イヌ、霊長類、およびヒトからの肝細胞を用いてさらに分析して、相対的なクリアランス速度を決定するとともに、どの種がヒトクリアランスに最もよく似ているかを確かめた。ヒトPKに関してイヌが最も適していることが確認されたので、イヌの半減期を用いて、活性化合物の臨床半減期を調べた。
試験化合物
【化67】

【化68】

【化69】

【化70】

【化71】

【化72】

【化73】

【化74】

【0140】
(MCHR1アンタゴニスト評価のためのフロー図)
【化75】

化合物IAおよびIB(本願化合物)と構造が類似しているにも関わらず、上で図示した化合物a〜fは全ての判断基準から外れた。
【0141】
本発明の化合物IAおよびIBのみが、これらのアッセイの選択的な判断基準を満足した。化合物fの場合、イヌおよびヒトのいずれについても、肝細胞クリアランスが非常に遅かった。後の、イヌにおける完全なPK研究では、イヌの半減期が200時間を超えることを示した。ヒト半減期がイヌのそれに近いこと踏まえると、ヒト半減期も同じように長く(イヌよりは長くないかもしれない)、化合物fを用いることは望ましくないと考えられる。というのも、半減期が1週間を超える化合物は、非常に複雑であり、また臨床研究において費用が増大するとともに安全性の問題も生じるからである。
【0142】
また、その後の研究で、ラットに対して1ヶ月間、30mg/Kgで化合物fを投与したところ、ラットは閉塞性の肝胆管病変(hepatic biliary lesion)に罹った。さらなる調査で、毒物は、インビボにおいて、化合物fの第三級カルボニル部位を含むアルキル鎖の酸化的ヒドロキシル化によって生じた代謝物であることが証明された。ラットに対して1ヶ月間、300mg/Kgにまで及ぶ投与量を投与した場合であっても、化合物IAおよび化合物IBでは、化合物fに類似する代謝変換が起こり得ないから、いずれも胆管病変形成が見られなかった。
【表2】

【0143】
化合物IAおよびIBは、ヒト肝細胞クリアランス速度においても、イヌのそれと類似しており、ところがイヌの半減期は20時間以下であった。結果的に、これらの2つの化合物で予想されるヒト半減期は20〜40時間である。してみると、化合物IAおよびIBは、驚くほど優れた、薬力学的プロフィール、薬物動態的プロフィール、および安全性プロフィールを示す。
【0144】
(プロドラッグの評価)
曝露(バイオアベイラビリティ)を高めるためのプロドラッグの相対的能力を、カニューレ処理したSPRAGUE DAWLEY(登録商標)(CD, Charles River Breeding Laboratory)ラットを用いて、8時間のPK試験により評価した。該化合物(親およびプロドラッグエステル)を、経口10mg/kgでの0.5%メチルセルロース、0.1%Tween 80/水の懸濁液として、2.0ml/kgで経口投与した。1、2、4および8時間の時点で血液サンプルを採取した。親の濃度を決定した後、8時間の試験に対するAUCを計算した。
【表3】

【0145】
(若い成長期のラットにおける、インビボのMCHR活性評価)
約240グラムの、オスのSPRAGUE DAWLEY(登録商標)(CD, Charles River Breeding Laboratory)ラットを、それぞれ、プラスチック・ケージにALPHADRI(登録商標)寝具とともに入れた。部屋は72°Fおよび湿度50%で維持し、1600時間で光を消す12/12明暗サイクルであった。ラットは、食物の選択を自由にさせる研究の開始前に、5日間、適当な状態に置いた。18%タンパク質、5%脂肪、および73%炭水化物を含む、通常の固形飼料[HARLAN TEKLAD(登録商標)、2018]、並びに20%タンパク質、40%脂肪、および40%炭水化物を含む高脂肪多糖食[Research Diets(D2327)]であって、ここで炭水化物は全てショ糖であり、脂肪は大豆およびココナツオイルである。研究によれば、ラットは、高脂肪のココナツオイルに対して高い嗜好性を示した。また、ラットは、高脂肪/多ショ糖食に対して高い嗜好性を示した(80%の嗜好性)。体重、両方の種類の食物の消費量、水の摂取量を毎日計測した。研究の間、水はいつでも自由に摂ることができる。食物消費量は1日のカロリー消費量として表され、その計算は、固形飼料のグラムに対してそのグラム当たりのKcal(3.5)を乗じたものおよび高脂肪多糖のグラムに対してそのグラム当たりのKcal(4.59)を乗じたものの和である。
【0146】
基線(baseline)体重は、研究の0日目の薬物処理前に測定した。基線食物消費量は、 最初の薬物処理前の3日間の平均を用いた。薬剤は毎日、1500時間に、経口投与によって2.0ml/Kgで第0日から開始し、毎日第4日まで続け;薬剤は3.0、10、および30mg/Kg経口で、0.5%メチルセルロース、0.1%Tween80水の懸濁液として投与した。全てのデータは、ANOVAおよびFishers PLSD統計学を用いて評価した。
【表4】

【0147】
(成熟した肥満ラットにおけるMCHRインビボ活性の評価)
オスのラット(Charles River Laboratories から入手し、体重は250〜300g)を単独で、12時間は明るく、12時間は暗くし、1pmで光を消すという周期で、プラスチック・ケージに収容した。動物の部屋は、72°Fおよび湿度50%で維持した。ラットに同時に入手できる2つの異なる食餌である、HARLAN TEKLAD(登録商標)ラット固形飼料(標準的な固形飼料)およびResearch Diets D12327(高脂肪、高炭水化物、大変美味な食餌)を与えることによって、ラットを肥満にした。Research Diets固形飼料には、40%植物性脂肪、40%炭水化物(ショ糖)、および20%タンパク質が含まれる。Harlan食餌には、5%脂肪(大豆油)、67%炭水化物(デンプン)、および22%タンパク質が含まれる。通常のHarlanラット食餌には3.4kcal/グラムの食餌が含まれ、Research Diet#12327には4.59kcal/グラムが含まれる。肥満症を引き起こさせるために、ラットは食餌を選択できる体制に10週間おいた。食餌を選択できる体制がいったん開始すると、研究の間、ラットはその状態で維持された。基線摂取(feeding)および体重を記録し、それを用いて動物をいくつかの処理群に分けた。食餌を選択できる体制の開始時の、ラットの平均体重は250グラムであった。慢性的な投与開始時のラットの平均体重は、661.7±6.3(平均±SEM)グラムであった。
【0148】
ラットに対して、暗周期が開始する1時間前に経口投与した。投与時に毎日、体重および食物消費量を測定した。食物消費量をKcal消費量に変換した。総Kcal消費量は、それぞれの食餌のKcal消費量(これは、それぞれの食餌消費グラムとKcal/グラムとの積によって決定)を加えることによって決定した。
【0149】
動物の自発運動活性は、Opto−M3システム(Columbus Instruments, Columbus, Ohio)を用いて、研究の第2日に測定した。この測定は、第2日の、間接的な熱量測定評価のすぐ後に行った。活性は夕方にモニターし、それは3pmに開始し、16時間続けた。経時的なフォトビーム(Photobeam)中断(break)は、60分ビン(bin)に崩壊した(collapsed)。
【0150】
呼吸商(RQ)および酸素消費量(vO)は、Oxymaxシステム(Columbus Instruments, Columbus, Ohio)を用いて、間接的な熱量測定によって測定した。測定は、研究の第2日および第15日に行った。ラットは、別々のチャンバー(chamber)に入れて投与がされた。各動物について、6回の測定を行い、測定の間隔は45分とした。測定は10:00AMに開始し、また1PMに暗周期を開始した。データは、体表面積に規格化した(kg0.75)。酸素消費量および呼吸商の統計的有意性は、反復測定ANOVA、続いて簡単な有効性分析を用いて分析した。エコーMRI(EchoMedical Systems, Houston, Texas)を用いて、身体組成を測定した。体脂肪率は、研究の第29日に測定した。体脂肪率の変化を測定し;統計的有意性はFischers PLSDによるposthoc比較(comparison)でANOVAを用いて決定した。
【表5】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
以下の式IA:
【化1】

の化合物(そのあらゆる立体異性体を含む)、またはそのプロドラッグもしくは医薬的に許容される塩。
【請求項2】
アセテート、ピバレート、メチルカーボネート、ベンゾエート、ホスフェート、およびアミノ酸エステルからなる群より選択される、プロドラッグエステルまたはその塩の形態であるか;あるいは、ホスフェートアセタールおよびO−グルコシドからなる群より選択される、プロドラッグエーテルまたはその塩の形態である、請求項1の化合物。
【請求項3】
プロドラッグエステルが
【化2】

[式中、Rは、H、アルキル、ベンジル、または
【化3】

(yは1〜4)である]
であり、並びにプロドラッグエーテルが
【化4】

[式中、Rは、アルキルまたは水素であり、並びにRは、H、アルキル、またはベンジルである]
である、請求項1の化合物。
【請求項4】
以下の構造:
【化5】

【化6】

【化7】

【化8】

【化9】

を有する請求項1の化合物(その立体異性体を含む)、または前記構造のいずれかの医薬的に許容される塩。
【請求項5】
以下の式IB:
【化10】

の化合物(そのあらゆる立体異性体を含む)、またはそのプロドラッグもしくは医薬的に許容される塩。
【請求項6】
アセテート、ピバレート、メチルカーボネート、ベンゾエート、ホスフェート、およびアミノ酸エステルからなる群より選択される、プロドラッグエステルまたはその塩の形態であるか;あるいは、ホスフェートアセタールおよびO−グルコシドからなる群より選択される、プロドラッグエーテルまたはその塩の形態である、請求項5の化合物。
【請求項7】
プロドラッグエステルが
【化11】

[式中、Rは、H、アルキル、ベンジル、または
【化12】

(yは1〜4)である]
であり、並びにプロドラッグエーテルが
【化13】

[式中、Rは、アルキルまたは水素であり、並びにRは、H、アルキル、またはベンジルである]
である、請求項6の化合物。
【請求項8】
以下の構造:
【化14】

【化15】

【化16】

【化17】

を有する請求項5の化合物(その立体異性体を含む)、または前記構造のいずれかの医薬的に許容される塩。
【請求項9】
請求項1または請求項5の化合物を少なくとも1つ含み、適宜、抗肥満薬;抗糖尿病薬、食欲抑制薬;コレステロール/脂質低下薬、およびHDL増加薬からなる群より選択される、別の治療剤を少なくとも1つ含み、また、一緒に、医薬的に許容される希釈剤または担体を少なくとも1つ含む、医薬組成物。
【請求項10】
請求項1または請求項5の化合物を少なくとも1つ含み、また抗肥満薬;抗糖尿病薬、食欲抑制薬;コレステロール/脂質低下薬、およびHDL増加薬からなる群より選択される、別の治療剤を少なくとも1つ含む、組み合わせ医薬。
【請求項11】
別の治療剤が抗糖尿病薬または抗肥満薬である、請求項10の組み合わせ医薬。
【請求項12】
肥満症、糖尿病、不安症、うつ病、または炎症性腸疾患の治療に有用な薬剤の製造における、請求項1または請求項5の化合物の使用。
【請求項13】
以下の構造:
【化18】

【化19】

【化20】

【化21】

の化合物。
【請求項14】
構造:
【化22】

のケトンを酵素的還元によって、構造:
【化23】

のアルコールにするプロセスであって;
該ケトンをケトレダクターゼ酵素と反応させて、該アルコールに変換する反応を特徴とするプロセス。
【請求項15】
ケトレダクターゼ酵素が、ケトレダクターゼ(KRED)−112またはケトレダクターゼ(KRED)−113であるか、あるいはキャンディダ・ソノレンシス(Candida sonorensis)SC16117[ATCC(登録商標)#56511]から産生されるケトレダクターゼである、請求項14のプロセス。
【請求項16】
式IA:
【化24】

の化合物の製法であって;
ケトレダクターゼ−112またはケトレダクターゼ−113あるいは微生物菌株キャンディダ・ソノレンシス(Candida sonorensis)SC16117[ATCC(登録商標)#56511]を用いて、構造:
【化25】

の化合物を酵素的に還元し、構造:
【化26】

の(R)−アルコールを形成させ;有機溶媒の存在下で、該(R)−アルコールを構造:
【化27】

の化合物と縮合して、式IAの化合物を形成することを特徴とする製法。

【公表番号】特表2011−521962(P2011−521962A)
【公表日】平成23年7月28日(2011.7.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−511814(P2011−511814)
【出願日】平成21年5月28日(2009.5.28)
【国際出願番号】PCT/US2009/045452
【国際公開番号】WO2009/146365
【国際公開日】平成21年12月3日(2009.12.3)
【出願人】(391015708)ブリストル−マイヤーズ スクイブ カンパニー (494)
【氏名又は名称原語表記】BRISTOL−MYERS SQUIBB COMPANY
【Fターム(参考)】