説明

メンテナンス用スプレー容器およびファイバースコープ

【課題】ファイバースコープにおいて送気・送水通路の開口端部に付着した付着物を、噴出ガスにより除去する。
【解決手段】ファイバースコープは、軸方向に通路が形成された細長い可撓性の管体と、前記通路を通じて内視または処理操作を行うための操作部2と、この操作部に形成された装着凹部21と、この装着凹部に装着可能なアダプター8と、このアダプター8に装着可能なスプレーノズル33を有するスプレー容器7とを備えている。スプレー容器7をアダプター8の方向に押入すると、スプレー容器7の弁機構が開き、圧縮ガスが、アダプター8の通気孔45および操作部2のガス流路23を通じて、前記管体の先端部から噴出する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、消化器などの動物または人体内病患部の観察、処理などに使用されるファイバースコープ、およびこのファイバースコープの可撓性管体のノズル部に付着した付着物を除去する上で有用なメンテナンス用スプレー容器に関する。
【背景技術】
【0002】
ファイバースコープは、通常、軸方向に通路が形成された細長い可撓性の管体と、この管体に取付けられ、前記通路を通じて内視または処理操作を行う操作部から構成されている。そして、前記管体には、オプティカルファイバーの他、送気・送水通路や、吸引・鉗子用通路などの通路が形成されている。
【0003】
そして、ファイバースコープにより、胃内等の観察や種々の処理を行うと、管体のうち送気・送水通路の開口端(ノズル部)の内部や周辺に、血液や、胃液、粘膜などの体液、蛋白質などの付着物が侵入して付着し、ファイバースコープ使用後には凝固して、前記ノズルが目詰まりを起こし、使用ができなくなる。そのため、従来より、ファイバースコープの使用後には、ファイバースコープを吊り下げて、前記管体を垂下させ、前記ノズル内から体液などの付着物を自然流出させている。
【0004】
しかし、この方法では、体液など付着物の排出に長時間を要するだけでなく、完全に体液などを排出させることができない。しかも、一部の付着物がノズル部内に付着して残存し、そのまま凝固するので、送気・送水通路による円滑な流通が妨げられる。また、送気・送水通路の開口端に細い針状物を挿入して、凝固物を除去することも可能であるが、前記通路が内径0.1〜0.3mm程度の細孔であるため、凝固物を除去するのが困難であるだけでなく、針状物の先端で前記通路の内壁を破損する場合がある。また、前記通路を損傷させると、高価な送気・送水通路のノズル部(端部材)と交換する必要がある。
【0005】
一方、圧縮ガスを充填したスプレー容器のノズルを、ノズル部とは反対側に位置する送気・送水通路の他方の開口端部に挿入し、ノズル部から噴出ガスを噴出させることにより前記送気・送水通路のノズル部に付着した付着物を除去することも考えられる。しかし、送気・送水通路の一方の端部(ノズル部)は管体の先端部に位置し、他方の端部(スプレーノズルの挿入部)は操作部から延出したチューブ状のライトガイド部の端部に位置する。なお、ライトガイド部にはライトガイドと送気・送水通路とが併設されている。また、操作部には、ライトガイド部内の送気・送水通路と管体内の送気・送水通路とを、閉止操作により連通させるための通気孔が形成されている。そのため、ノズル部に付着した付着物を除去するためには、操作部の通気孔を塞ぐことにより、ライトガイド部内の送気・送水通路と管体内の送気・送水通路とを連通させるための操作と、スプレー容器のノズルにライトガイド部のスプレーノズル挿入部を挿入して押圧する操作とを同時に行う必要がある。そのため、2人の作業員を必要とすると共に、付着物の除去作業が極めて煩雑である。
【0006】
このような問題を解決するため、本発明者は、圧縮ガスを充填した容器に送気・送水口を挿嵌させるためのスプレーノズル又は補助ノズルと、送気・送水口に併設されたファイバースコープのライトガイドに対する差込み案内部を設けたファイバースコープ用スプレー容器を提案した(実公平3−40250号公報(特許文献1)、実公平3−41682号公報(特許文献2)参照)。このようなスプレー容器を用いると、ガスが前記操作部の送気孔から漏出するのを阻止するため、前記送気・送水通路と連通する操作部の通気孔を指で閉止した後、ライトガイドの端部を押し下げて前記スプレーノズルなどを押圧するという簡単な操作で、スプレー容器内の圧縮ガスを送気・送水通路に送気できる。そのため、前記通路を破損することなく、ファイバースコープの送気・送水路の開口端に付着残存する体液などの付着物を、1人で除去できる。
【0007】
しかし、前記スプレー容器を用いる場合、ライトガイドの端部がファイバースコープの操作部から隔たった位置にある。そのため、前記容器内の圧縮ガスをファイバースコープの管体の送気・送水通路の開口端から噴出させるためには、一方の手で前記通気孔を閉止し、他方の手でライトガイドの端部をスプレー容器の内方へ押し下げる操作が必要がある。すなわち、付着物の除去操作には両手を使う必要があり、操作性が十分とはいえない。
【0008】
このような問題は、送気・送水通路の開口端にカン石が析出又は堆積する場合にも生じる。すなわち、送気・送水路を通じてライトガイドユニットから管体の送気・送水通路へ水、特に硬水を供給して、光ファイバーの先端部に取り付けられたレンズを洗浄する場合、送気・送水通路の開口端にカン石が析出又は堆積し、円滑な流通を妨げる。
【特許文献1】実公平3−40250号公報
【特許文献2】実公平3−41682号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
従って、本発明の目的は、管体に形成された流路の開口端部(ノズル部)に付着した付着物を、簡単な操作で確実に除去できるファイバースコープ及びメンテナンス用として有用なスプレー容器を提供することにある。
【0010】
本発明の他の目的は、管体に形成された送気・送水通路の開口端部(ノズル部)に付着した付着物を、圧縮ガス供給手段と操作部との相対的な押入操作により確実かつ簡単に除去できるファイバースコープおよびスプレー容器を提供することにある。
【0011】
本発明のさらに他の目的は、管体の送気・送水通路の開口端部(ノズル部)の付着物を、片手だけの簡単な操作で容易に除去できるファイバースコープ及びスプレー容器を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明者は、前記目的を達成するため鋭意検討の結果、内視または処理操作を行うための操作部に、細長い可撓性の管体の通路に圧縮ガスを供給するための圧縮ガス供給手段を着脱可能に装着すると、片手の操作だけで管体の先端部に付着した付着物を容易に除去できることを見いだし、本発明を完成した。
【0013】
すなわち、本発明のファイバースコープは、軸方向に通路が形成された細長い可撓性の管体と、この管体に取付けられ、前記通路を通じて内視または処理操作を行うための操作部とを有するファイバースコープであって、前記操作部に、前記通路に圧縮ガスを供給する圧縮ガス供給手段を着脱可能に装着できる装着手段が形成されている。
【0014】
前記装着手段は、圧縮ガス供給手段に対して装着可能なアダプターと、操作部に形成され、かつ前記アダプターが装着可能な装着部とで構成すると共に、前記アダプターに圧縮ガス供給手段と通気可能な通気孔を形成し、前記操作部に、前記アダプターの通気孔及び管体の通路と通気可能な流路を形成してもよい。なお、アダプターは、圧縮ガス供給手段と操作部との間に介在すればよく、操作部の装着部に取付けてもよく、圧縮ガス供給手段に取付けてもよい。前記圧縮ガス供給手段は、管体の通路に流体を噴出できればよく、通常、圧縮ガスが充填されたスプレー容器を用いる場合が多い。
【0015】
本発明のファイバースコープでは、操作部に形成された装着手段に圧縮ガス供給手段を装着することにより、圧縮ガスを管体に形成された送気・送水通路の通路に供給し、通路の開口端(ノズル部)から外部に噴出させることができる。すなわち、従来のように、操作部からライトガイドと併設して延びる送気・送水管の流路と、前記操作部からノズル部に延びる送気・送水通路とを、操作部の通気孔の閉止操作により連通させることなく、装着手段に装着した圧縮ガス供給手段から圧縮流体を供給するという簡単な操作で、前記開口端の内部または周辺部に残留、付着した体液などを確実に除去できる。
【0016】
また、前記圧縮ガス供給手段が前記装着手段に着脱可能であるため、ファイバースコープを消化器などの観察、処理などに使用する際には、前記圧縮ガス供給手段を装着することなく、ファイバースコープを観察、処理などに利用できる。一方、ファイバースコープの管体の通路の開口端部に付着した体液等を除去する場合には、前記圧縮ガス供給手段を前記装着手段に装着して、付着物を除去できる。
【0017】
本発明のスプレー容器は、ファイバースコープの管体の先端部に付着した付着物を噴出する流体により除去し、清浄化する上で有用である。このスプレー容器は、圧縮ガスが充填された圧力容器と、この圧力容器の内方へ進入可能なスプレーノズルと、このスプレーノズルの内方への進入に伴なって圧力容器の内部の圧縮ガスを前記スプレーノズルから噴出させるための弁機構と、ファイバースコープの管体の操作部に装着可能なアダプターとを備えているスプレー容器であって、前記アダプターが、前記操作部に形成された流路を介して、スプレーノズルと前記管体の通路とを連通するための通気孔を備えている。前記操作部の流路は、ガス(空気)用サブ流路、水用サブ流路又は双方のサブ流路で構成してもよい。
【0018】
本発明のスプレー容器では、スプレーノズルを圧力容器の内方へ進入させると、弁機構により圧力容器の内部の圧縮ガスが前記スプレーノズルから噴出する。一方、操作部に装着可能なアダプターの通気孔により、前記操作部の流路を介して、スプレーノズルと前記管体の通路とが連通するので、スプレーノズルからの圧縮流体は、管体の通路に至り、通路の開口端から噴出する。
【発明の効果】
【0019】
本発明のファイバースコープおよびスプレー容器によれば、装着手段に装着された圧縮ガス供給手段から圧縮ガスを噴出させることにより、管体に形成された送気・送水通路などの通路の開口端部などの付着物を、簡単な操作で確実に除去できる。また、スプレー容器で構成された圧縮ガス供給手段と操作部との相対的な押入操作により、前記付着物を確実かつ簡単に除去できる。特に、片手だけの操作で圧縮ガスを噴出できるので、簡単な操作で付着物を容易に除去でき、細孔の通路の目詰まりを長期間に亘り確実に防止できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
以下に添付図面に基づいて本発明の一実施例を説明する。
【0021】
図1〜図4は本発明のファイバースコープの一実施例を示し、図1はその使用状態を示す概略図、図2はファイバースコープの管体を示す概略断面図、図3は操作部における装着機構を示す断面図、図4は装着手段を構成するアダプターを示す断面図である。
【0022】
このファイバースコープ1は、軸方向に通路が形成された細長い可撓性の管体3と、この管体3に取付けられた操作部2とを有している。前記管体3には、図2に示されるように、オプティカルファイバー10のほか、送気・送水通路11、鉗子通路12、吸引通路13およびその他の通路14a,14bが形成されており、前記通路11〜13,14a,14bは管体3の端面9で開口している。
【0023】
図1に示されるように、把持部2aを有する操作部2からは、前記オプティカルファイバー10に光を送るためのライトガイド部4が延出していると共に、操作部2は、前記通路11〜13,14a,14bを通じて内視または処理操作を行うため、可撓性管体3の少なくとも先端部の方向を回動操作などにより制御するための操作部材6、及び把持部2aに設けられ、鉗子装置から延びる管と接続するための鉗子口5を備えている。
【0024】
前記ライトガイド部4には、ライトガイドと、前記管体3の送気・送水通路11と通じる流路が形成された送気・送水管(図示せず)が併設されている。すなわち、操作部2からは、一方の方向に前記可撓性管体3が延出し、他方の方向にライトガイド部4が延出しており、操作部2において、管体3の送気・送水通路11と、ライトガイド部4の送気・送水管(図示せず)の流路は連通可能である。なお、ライトガイド部4の端部で開口する送気・送水口からは、送気・送水管の流路および管体3の送気・送水通路11を通じて、胃などの消化器官などに、気体及び/又は水などの液体が供給可能である。
【0025】
そして、図3に示されるように、前記操作部2の装着部位2bには、圧縮ガス供給手段としてのスプレー容器7のスプレーノズル33が着脱可能に装着できる装着部、及び前記スプレー容器7からの圧縮流体を前記可撓性管体3の送気・送水通路11に供給するためのガス流路23が形成されている。この例では、装着手段としての装着部は、操作部2の装着部位2bに形成された装着凹部21と、この装着凹部に対して着脱可能なアダプター8とで構成され、このアダプター8には、スプレー容器7が着脱可能である。
【0026】
なお、前記アダプター8の孔42及び装着部位2bのガス流路23を介して、前記可撓性管体3の送気・送水通路11とライトガイド部4の送気・送水管の流路は連通可能である。また、スプレーノズル33からの噴出ガスがライトガイド部4の送気・送水管に流入するのを規制し、噴出ガスを可撓性管体3の送気・送水通路11に有効に流入させるため、ライトガイド部4の送気・送水管のうち、アダプター8側の流路には、規制手段としての逆止弁(図示せず)が設けられている。
【0027】
さらに、装着凹部21は、従来のファイバースコープの操作部のうち、ライトガイド部の送気・送水管と可撓性管体の送気・送水通路とを、閉止操作により連通させるための通気孔に対応する部位に形成されている。
【0028】
より詳細には、前記スプレー容器7を構成する圧力容器(容器本体)の一方の端部には、内方域においてキャップ状に膨出した筒状膨出部32と、この膨出部の周囲に形成されたリング状凹部34とを有する口金31が取り付けられており、前記膨出部32の中央部からは、一方の先端部が開口し、他方の端部が閉塞するともに、閉塞側の側壁に、圧縮ガスを前記開口部へ導くための孔41が穿設された筒状のスプレーノズル33が貫通して突出している。
【0029】
また、スプレーノズル33はスプレー容器7の内方へ進入可能に配設されており、スプレーノズル33がスプレー容器7の内方へ進入するのに伴なって、圧縮ガスを前記スプレーノズル33から噴出させるため、スプレー容器7は弁機構を備えている。すなわち、前記スプレー容器7内には、一方の端部にリング状鍔部を有し、他方の端部にスプレーノズル33用の貫通孔が形成されている第1の筒状弁部材36と、この第1の筒状弁部材36を軸方向に進退動可能に収容すると共に、前記第1の筒状弁部材36を貫通して延びるスプレーノズル33を底部で固定可能な第2の筒状弁部材37とを備えた弁機構35が配設されている。
【0030】
この弁機構において、第2の筒状弁部材37の一方の端部は前記リング状鍔部と当接可能であり、前記膨出部32の内壁と、第1の筒状弁部材36の鍔部との間のスプレーノズル33には、膨出部32の貫通部をシールするためのパッキン39が配設されていると共に、第1の筒状弁部材36の底部には、スプレーノズル33の貫通部をシールするため、O−リング40が被嵌されている。さらに、前記第1の筒状弁部材36とスプレーノズル33との間には、スプレーノズル33を軸方向の外方へ付勢するためのコイルバネ38が配設されている。
【0031】
このような弁機構を利用すると、第2の筒状弁部材37の端面が、コイルバネ38の付勢力により、第1の筒状弁部材36のリング状鍔部に圧接される。そのため、コイルバネ38の付勢力に抗してスプレーノズル33を容器7の内方へ押圧すると、スプレーノズル33と共に第2の筒状弁部材37が内方へ移動し、第1の筒状弁部材36のリング状鍔部と、第2の筒状弁部材37の端面との間に流路が形成される。そのため、容器7に充填された圧縮ガスは、前記流路、前記孔41を通じて筒状スプレーノズル33内に導入され、スプレーノズル33の先端開口部から噴出する。また、前記押圧を解除すると、前記バネ38の付勢力により、スプレーノズル33と共に第2の筒状弁部材37が軸方向の外方に移動し、第2の筒状弁部材37の端部が第1の筒状弁部材36のリング状鍔部に圧接されるので、圧縮ガスの噴出は停止する。
【0032】
なお、スプレー容器7の圧力容器に充填する圧縮ガスとしては、フロンガス、フロン代替ガス、窒素、空気などが挙げられる。また、容器7内には、圧縮ガスと共に、消毒液、洗浄液などを充填していてもよい。
【0033】
前記スプレー容器7が装着可能なアダプター8は、図3及び図4に示されるように、容器7の口金31のリング状凹部34において摺動可能な円筒部を有する径大な基部52と、この基部52から延出する径小の先端装着部53とを有している。前記アダプター8には、スプレーノズル33からの噴出流体を前記装着部位2bのガス流路23へ導くため、前記基部52の端面から軸方向に延び先端装着部53の側部で開口するT字状の孔42が形成されている。
【0034】
すなわち、この孔42は、基部52の端部に形成され、スプレー容器7の膨出部32が部分的に装着可能な凹部43と、この凹部43から軸方向に延び、前記スプレーノズル33の端面と接触し、スプレーノズル33の外方への移動を規制するための内壁47を有する孔部44と、この孔部から軸方向に延びて、先端装着部53の中央部に至ると共に、スプレーノズル33の外径よりも孔径の小さな断面円状の通路45と、この通路の延出方向と直交して両側方に延び、先端装着部53の側部で開口する側部孔46とで構成されている。この例では、通路45と側部孔46とで圧縮ガス供給手段と通気可能な通気孔が構成されている。このようなアダプターは合成樹脂などの成形加工の容易な種々の材料で形成できる。
【0035】
そして、前記アダプター8をスプレー容器7に装着すると、図3に示されるように、容器7の口金31のリング状凹部34と、アダプター8の基部52の端面との間、前記容器7の膨出部32と基部52の装着凹部43の壁面との間には、アダプター8に対してスプレー容器7を押入可能とするため、空間が形成される。すなわち、容器7のスプレーノズル33の先端から膨出部32までの寸法は、スプレーノズル33の当接内壁を有する孔部44の深さよりも長く、かつ装着凹部43と孔部44の深さの総和よりも短く形成されている。また、容器7のスプレーノズル33の先端からリング状凹部34の底面までの寸法は、装着凹部43と孔部44の深さの総和よりも長く形成されている。
【0036】
一方、スプレーノズル33の先端開口壁は、孔部44の内壁47と当接しており、スプレーノズル33の移動を規制している。そのため、スプレー容器7のスプレーノズル33をアダプター8の孔42に挿入し、スプレー容器7とアダプター8とを相対的に押圧すると、スプレーノズル33がスプレー容器7の内方へ進入し、圧縮ガスがスプレーノズル33及び孔42を経て、先端装着部53の側部孔46から噴出する。
【0037】
一方、前記アダプター8が装着される装着部位2bには、図3に示されるように、アダプター8の先端装着部53が嵌合により着脱可能に装着される前記装着凹部21が形成され、この装着凹部の内壁のうち前記アダプター8の側部孔46と対応する部位には、前記ガス流路23と連通可能なリング状空間22が形成されている。さらに、装着凹部21においてアダプター8とのシール性を確保するため、アダプター8の先端装着部53のうち、側方に開口した前記側部孔46の両側部にはそれぞれO−リング48,49が配設され、先端装着部53の先端部には周方向に環状凸部を有する筒状パッキン50が被嵌されている。
【0038】
このようにファイバースコープおよびスプレー容器を用いると、前記アダプター8の装着凹部43にスプレー容器7を装着し、容器7とアダプター8とを相対的に押圧するだけで、スプレー容器7内の圧縮ガスを、スプレーノズル33、アダプター8の通路45、側部孔46およびガス流路23を経て、送気・送水通路11に導き、可撓性管体3の端面9から外部に噴出させることができる。そのため、可撓性管体3の送気・送水通路11の開口端またはその周辺部に付着した体液などの付着物を噴出ガスにより除去できる。一方、前記押圧操作を解除することにより、圧縮ガスの噴出を停止できる。
【0039】
特に、従来の操作部の通気孔に対応する部位に、アダプター8が装着可能な装着凹部21が形成されていると共に、ファイバースコープ1の操作部2に、スプレー容器7を装着するアダプター8が設けられているので、通気孔の閉止操作をすることなく、スプレー容器7を前記アダプター8に装着し、操作部2に対してスプレー容器7を相対的に押付けるだけで、圧縮ガスを管体3の送気・送水通路11に供給し、前記通路の開口端(ノズル部)から噴出させることができる。そのため、前記送気・送水通路11の開口端とその周辺部に付着した体液などの付着物を、片手の簡単な操作で確実に除去できる。また、前記圧縮ガス供給手段としてのスプレー容器7が前記装着部に脱着可能であるので、ファイバースコープ1を消化器などの観察、処理に使用する際には、前記スプレー容器7をアダプター8から外すことにより、操作性を損なうことなくファイバースコープにより内視、処理操作を行うことができる。
【0040】
なお、アダプター8は、噴出ガスによる付着物の除去が必要でない場合には、装着凹部21から取り外すことができると共に、アダプター8の端面に露出した凹部43をキャップなどで被嵌し、装着凹部21に装着していてもよい。
【0041】
図5は操作部における他の装着機構を示す断面図である。なお、前記実施例と共通する要素には、同一の符号を付して説明する。
【0042】
この例において、前記実施例と同様に構成されたスプレー容器7にはアダプター101が固着して取り付けられ、このアダプター101は操作部の装着部位120に形成された装着凹部122に装着可能である。
【0043】
より詳細には、前記装着部位120に装着されるアダプター101は、スプレー容器7のスプレーノズル33と一体化したボタン状基部102と、このボタン状基部からスプレーノズル33の軸方向に延びる径小の先端装着部104とを有しており、基部102のうち先端装着部104側にはフランジ部103が形成されている。このフランジ部103は、ケーシング105内に摺動可能に配設され、このケーシング105の内壁によりスプレー容器7側への移動が規制されている。
【0044】
さらに、ケーシング105内には、前記フランジ部103を外方へ付勢するため、スプレー容器7のコイルスプリング38よりも付勢力の大きなスプリング106が配設されている。そのため、スプレー容器7を装着部位120側に押圧すると、前記スプレー容器7のコイルスプリング38によりスプレー容器7の弁機構が開き、圧縮ガスがスプレーノズル33に導入される。また、スプレー容器7と共にボタン状基部102をアダプター101のスプリング106の付勢力に抗してケーシング105方向へさらに押入すると、先端装着部104が装着部位120の装着凹部122内に進入する。
【0045】
また、前記先端装着部104には、前記ケーシング105の外壁と接触し、ケーシング105が装着凹部122側へ移動するのを規制するためリング状凸部108が形成されていると共に、このリング状凸部に隣接して、ケーシング105側に傾斜した傾斜面を有するO−リング109と、このO−リングが装着され、かつ前記装着凹部122に摺接可能な環状凸部110が形成されている。
【0046】
さらに、前記先端装着部104のうち、前記環状凸部110から外方側に離れた部位には、前記スプレーノズル33側に開口した傘状の軟質パッキン111が取り付けられ、先端部には筒状パッキン112が取り付けられている。
【0047】
なお、スプレーノズル33からの圧縮ガスを可撓性管体の送気・送水通路に供給するため、前記ボタン状基部102から先端装着部104の方向に向かって、前記スプレーノズル33の孔と連通する通気孔113が軸方向に形成され、この通気孔は先端装着部104の傘状の軟質パッキン111と筒状パッキン112との間の側壁で開口している。
【0048】
一方、前記装着部位120は、壁面から突出し、先端部から側部外方へ延びる鍔部を有するリング状部材121と、このリング状部材の内方域に形成された前記装着凹部122とで構成されている。前記リング状部材121の鍔部は、アダプター101の前記ケーシング105を被嵌する軟質キャップ107の係合端部と係合可能である。
【0049】
さらに、前記アダプター101の通気孔113の開口部に対応する装着凹部122の壁面には、可撓性管体の送気・送水通路11及びライトガイド部の送気・送水管の流路130と連通する連通空間123が形成されている。
【0050】
このようなアダプター101及びこのアダプターを備えたスプレー容器7では、装着凹部122に装着されたアダプター101の通気孔は、従来のファイバースコープの操作部の通気孔と同様の機能を有する。そのため、通気孔の閉止操作をすることなく、装着凹部122として形成された通気孔にスプレー容器7を装着し、押入という簡単な操作で圧縮ガスを可撓性管体の送気・送水路の先端部から噴出させることができる。また、前記スプリング106の緩衝作用により、スプレー容器7に過度の押圧力を作用させることなく、圧縮ガスを可撓性管体の送気・送水通路11の先端部から噴出させることができる。
【0051】
前記操作部の流路は、ライトガイドユニットの送気・送水手段からの送気・送水管に対応して少なくとも1つのサブ流路で構成してもよい。すなわち、操作部の流路は、ライトガイドユニットの送気・送水手段から延びる送気管と送水管に対してそれぞれ連通可能なガス用サブ流路と水用サブ流路とで構成してもよい。さらに、可撓性管体の送気・送水通路は、前記ガス用サブ流路と水用サブ流路とに対してそれぞれ連通可能なガス用サブ通路と水用サブ通路とで構成してもよく、可撓性管体のガス用サブ通路と水用サブ通路は、通路の途中部で合流し、可撓性管体の先端部に装着された端部材に延びる前記送気・送水通路を形成してもよい。
【0052】
図6は操作部におけるさらに他の装着機構を示す断面図であり、図7は図6のアダプターを示す断面図である。
【0053】
この例において、アダプター201は、孔の形状を除き、図4に示すアダプター8と同様な形状を有している。すなわち、孔202は、凹部43、この凹部から軸方向に延びる孔部44、この孔部から軸方向に延びる通路203、この通路の延出方向に対して直交する両側方に延び、前記通路203の途中部の両側部で開口する第1の側部孔204、および前記通路203の延出方向に対して直交する両側方に延び、アダプター201の先端部の両側部で開口する第2の側部孔205で構成されている。
【0054】
第1の側部孔204は、操作部2のリング状凹部22を介してガス流路23(ガス用サブ流路として)と通気可能であり、第2の側部孔205は、操作部2のリング状凹部206を介して水流路207(水用サブ流路として)と通水可能である。前記ガス流路23および水流路207は、それぞれ、可撓性管体に形成されたガス用サブ通路(図示せず)および水用サブ通路(図示せず)に至っている。さらに、ガス用サブ通路および水用サブ通路は、可撓性管体の途中部で合流し、通路の開口端(ノズル部)に延びる送気・送水通路(流体用流路)を形成している。
【0055】
従って、スプレー容器7をアダプター201の装着凹部21に装着し、スプレー容器7とアダプター201とを相対的に押圧すると、スプレー容器7内の圧縮ガスは、スプレーノズル33,アダプター201の孔202,操作部2のガス流路23および水流路207,およびガス用サブ通路および水用サブ通路を通じて、可撓性管体3の送気・送水通路に至り、圧縮ガスが可撓性管体3の端部から噴出する。
【0056】
水用通路207を有するアダプター201をスプレー容器7と組み合わせて使用すると、可撓性管体の光ファイバーの端部に装着されたレンズを水、特に硬水で洗浄する場合、大きな利点をもたらす。すなわち、ファイバースコープを用いる観察又は処理操作、レンズの洗浄操作(すなわち、ライトガイド部の水供給手段から水供給管,操作部2の水流路207,水用サブ通路を通じて可撓性管体の送気・送水通路へ水を供給することによりレンズを洗浄する操作)、流体を自然に流出させるため管体を吊り下げる操作を繰返し行なうと、可撓性管体の送気・送水通路の開口端部に、水に起因するスケール(カン石)が析出又は堆積する。本発明では、噴出するジェットガスにより、体液による付着物だけでなく水によるスケール(カン石)を可撓性管体3の端部から効率よく除去できる。
【産業上の利用可能性】
【0057】
なお、本発明のファイバースコープにおいて、圧縮ガス供給手段は、圧縮ガスを供給できるものであればよく、スプレー容器に限らず、開閉バルブや開閉コックなどの開閉手段を備えた圧力容器(ボンベなど)、コンプレッサなどであってもよい。
【0058】
圧縮ガス供給手段を装着するための装着手段は、圧縮ガス供給手段を脱着可能に装着できればよく、前記のようなアダプターなどに限らず、圧縮ガス供給手段の種類に応じて選択できる。例えば、開閉手段を備えた圧力容器では、圧力容器のホースの端部やノズルなどの接続端部を装着できればよく、コンプレッサなどでは、コンプレッサから延びるホースの接続端部を装着できればよい。
【0059】
前記装着手段は、圧縮ガス供給手段の接続端部に対して装着可能なアダプターと、前記操作部に形成され、かつ前記アダプターが装着可能な装着部(装着凹部)とで構成できる。圧縮ガス供給手段が、操作が簡単で携帯性に優れるスプレー容器である場合、前記アダプターを用いると、装着、押入という簡単な操作で、圧縮ガスの噴出により、管体の先端部を清浄化でき、送気・送水通路の目詰まりを確実に防止できる。
【0060】
前記アダプターは、圧縮ガス供給手段と操作部との間に介在すればよく、アダプターは操作部及び圧縮ガス供給手段のいずれか一方に着脱可能に又は固着して取付けてもよい。例えば、操作部の装着部位にアダプターを固着などにより取付けて装着部を構成し、前記アダプターに対して圧縮ガス供給手段を着脱可能に取り付けてもよい。逆に、アダプターを圧縮ガス供給手段に固着などにより取り付け、操作部に形成された装着部(装着凹部)に対して、前記アダプターを着脱可能に取り付けてもよい。
【0061】
また、図5に示す例において、スプレーノズル33とアダプター101が一体化しているが、アダプター101の基部102にスプレーノズル33に適合した装着凹部を形成し、この装着凹部にスプレーノズル33の先端部を着脱可能に装着してもよい。
【0062】
前記実施例において、アダプターには、圧縮ガス供給手段と通気可能なT字状などの通気孔が形成されているが、通気孔の開口部位は、圧縮ガス供給手段と通気可能である限り、アダプターの側部に限らず、先端部などであってもよい。また、前記操作部には、アダプターの通気孔及び管体の送気・送水通路と通気可能なガス流路が形成されていればよく、このガス流路は、図5に示される連通空間123のように、可撓性管体3の送気・送水通路11及び/又はライトガイド部4の送気・送水管の流路を構成してもよい。
【0063】
さらに、前記実施例では、従来の操作部の通気孔に対応する部位に、アダプターを装着するための装着部(装着凹部)を形成しているが、装着部は操作部である限り把持部2aなどの適所に形成することができる。
【0064】
圧縮ガス供給手段がスプレー容器である場合、装着手段は、軸方向外方への前記スプレーノズルの移動を規制すると共に、押圧に伴なって前記スプレーノズルを圧力容器の内方へ進入させるための規制手段を備えているのが好ましい。前記実施例において、前記規制手段はスプレーノズルの端面と面接触可能な内壁47で構成されているが、スプレーノズルの軸方向の外方への移動を規制する限り、スプレーノズルの軸部の側部に凹凸部を形成し、この凹凸部と係合可能な係合部により規制手段を構成してもよい。
【0065】
さらに、圧縮ガス供給手段からのガスが前記ライトガイド部の送気・送水管から噴出するのを規制するため、前記の例ではアダプター側の前記送気・送水管に逆弁を設けているが、このような規制手段は、送気・送水管の流路から前記アダプターの通気孔に至る流路に設ければよい。
【0066】
本発明のスプレー容器は、圧縮ガスが充填された圧力容器と、この圧力容器の内方へ進入可能なスプレーノズルと、このスプレーノズルから圧縮ガスを噴出させるための弁機構と、ファイバースコープの可撓性管体の操作部に装着可能なアダプターとを備えていればよい。前記弁機構は前記実施例の構造に限らず、圧力容器の内方への進入に伴なって圧力容器内の圧縮ガスをスプレーノズルから噴出させる機構であればよい。また、アダプターは、スプレーノズルと固着していてもよく、スプレーノズル及び/又はスプレー容器に対して着脱可能であってもよい。なお、前記のように、アダプターには、前記操作部に形成された流路を介して、スプレーノズルと前記可撓性管体の通路とを連通するための通気孔が形成されている。
【図面の簡単な説明】
【0067】
【図1】図1は本発明のファイバースコープの使用状態を示す概略図である。
【図2】図2は図1のファイバースコープの管体を示す概略断面図である。
【図3】図3は図1の操作部における装着機構を示す断面図である。
【図4】図4は図1のアダプターを示す断面図である。
【図5】図5は操作部における他の装着機構を示す断面図である。
【図6】図6は操作部におけるさらに他の装着機構を示す断面図である。
【図7】図7は図6のアダプターを示す断面図である。
【符号の説明】
【0068】
1…ファイバースコープ
2…操作部
3…管体
7…スプレー容器
8,101…アダプター
11…送気・送水通路
21,122…装着凹部
23…ガス流路
33…スプレーノズル
47…内壁(規制手段)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
圧縮ガスが充填された圧力容器と、この圧力容器の内方へ進入可能なスプレーノズルと、このスプレーノズルの内方への進入に伴なって圧力容器内の圧縮ガスを前記スプレーノズルから噴出させるための弁機構と、ファイバースコープの管体の操作部に形成された装着凹部に嵌合して装着可能な径小な先端装着部を有するアダプターとを備えているスプレー容器であって、前記アダプターが、前記操作部に形成された流路を介して、スプレーノズルと前記管体の軸方向に延びる通路とを連通し、かつ先端装着部の側部で開口した通気孔を備えているとともに、この通気孔と前記操作部の流路との間に、前記通気孔の開口部に隣接してリング状空間が介在しているスプレー容器。
【請求項2】
アダプターが、軸方向外方への前記スプレーノズルの移動を規制すると共に、押圧に伴なって前記スプレーノズルを圧力容器の内方へ進入させるための規制手段を備えている請求項1記載のスプレー容器。
【請求項3】
管体の通路が、ガス用サブ通路と水用サブ通路とで構成され、これらのサブ通路が管体の途中部で合流して管体の開口端に延びる通路を形成し、前記操作部の流路が、ライトガイド部から延びるガス供給管および管体のガス用サブ通路と連通可能なガス用サブ流路と、ライトガイド部から延びる水供給管および管体の水用サブ通路と連通可能な水用サブ流路とで構成されている請求項1記載のスプレー容器。
【請求項4】
軸方向に通路が形成された細長い可撓性の管体と、この管体に取付けられ、前記通路を通じて内視または処理操作を行うための操作部と、この操作部の装着凹部に装着されたアダプターと、このアダプターが装着可能であり、かつ前記通路に圧縮ガスを供給するスプレー容器とを有するファイバースコープであって、スプレー容器が、圧縮ガスが充填された圧力容器と、この圧力容器の内方へ進入可能なスプレーノズルと、このスプレーノズルの内方への進入に伴なって圧力容器内の圧縮ガスを前記スプレーノズルから噴出させるための弁機構とを備えており、前記アダプターが、前記操作部の装着凹部に嵌合して装着可能な径小な先端装着部を有しており、前記アダプターの先端装着部に側部で開口した通気孔が形成され、前記操作部に、前記アダプターの通気孔及び管体の通路と通気可能な流路が形成されており、前記先端装着部の通気孔と前記操作部の流路との間に、前記通気孔の開口部に隣接してリング状空間が介在しているファイバースコープ。
【請求項5】
アダプターが、軸方向外方への前記スプレーノズルの移動を規制すると共に、押圧に伴なって前記スプレーノズルを圧力容器の内方へ進入させるための規制手段を備えている請求項4記載のファイバースコープ。
【請求項6】
軸方向に送気・送水通路が形成された細長い可撓性の管体と、この管体に取付けられていると共に、スプレー容器のスプレーノズルが装着可能な装着手段を有する操作部と、前記送気・送水通路と通じて前記操作部から延出する送気・送水管とを備えたファイバースコープであって、前記装着手段が、前記スプレーノズルに対して装着可能なアダプターと、前記操作部に形成され、かつ前記アダプターが装着可能な装着凹部とで構成され、前記アダプターにスプレーノズルと通気可能な通気孔が形成され、前記操作部に、前記アダプターの通気孔及び管体の送気・送水通路と通気可能なガス流路が形成されていると共に、前記送気・送水管の流路から前記アダプターの通気孔に至る流路に、スプレーノズルからの噴出流体が前記送気・送水管の流路に流入するのを規制するための規制手段が設けられている請求項4記載のファイバースコープ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2006−175221(P2006−175221A)
【公開日】平成18年7月6日(2006.7.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−348314(P2005−348314)
【出願日】平成17年12月1日(2005.12.1)
【分割の表示】特願平7−348784の分割
【原出願日】平成7年12月18日(1995.12.18)
【出願人】(000126643)株式会社アダチ (1)
【Fターム(参考)】