説明

メンブレンスイッチ用基材フィルム

【課題】メンブレンスイッチの電極を形成する銀ペースト及びメンブレンスイッチ基材フィルムとコネクタとを接続するモールド樹脂それぞれとの接着性に優れるメンブレンスイッチ用基材フィルムを提供する。
【解決手段】芳香族ポリエステルを主成分とする二軸配向ポリエステルフィルムの少なくとも片面に非架橋型ウレタン樹脂を含む塗布層が設けられたメンブレンスイッチ用基材フィルム。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はメンブレンスイッチ用基材フィルムに関し、さらに詳しくはメンブレンスイッチの電極を形成する銀ペースト及びメンブレンスイッチ基材フィルムとコネクタとを接続するモールド樹脂それぞれとの接着性に優れるメンブレンスイッチ用基材フィルムに関する。
【背景技術】
【0002】
メンブレンスイッチとは、スペーサを介在した2つの基材フィルムの対向する面に、各々相対する接点(電極)を配置してなるものであり、押下することで導電、絶縁のスイッチ作用が容易にできるものである。また、メンブレンスイッチを他の電子部品と接続させるために、メンブレンスイッチをコネクタに接続させる使用形態が知られている。近年、電卓、パーソナルコンピューター等のキーボードスイッチ、テレビ、VTR等の各種リモートコントロールのパネルスイッチ等としてメンブンスイッチが多用されている。このメンブレンスイッチは押下の繰り返しによりスイッチ作用を行うものであるため、その基材フィルムには耐永久変形性が要求される。従来、メンブレンスイッチの基材フィルムとして、その耐永久変形性、電極との密着性、印刷との接着性等の理由からポリエチレンテレフタレート(以下「PET」と省略する場合がある)フィルムが用いられている。
【0003】
また最近のカーオーディオ、カーエアコンのタッチパネル化、あるいはカーナビゲーションシステム等の普及による車内でのリモートコントロールスイッチの使用により、メンブレンスイッチの基材フィルムに対して高温下での永久変形性が要求されるようになり、例えば特開昭62−082620号公報(特許文献1)に見られるように基材フィルムをPETフィルムよりガラス転移点の高いポリエチレンナフタレンジカルボキシレート(以下「PEN」と省略する場合がある)フィルムにすることが提案されている。
【0004】
メンブレンスイッチが誤動作なく作動するためには、基材フィルムと電極を構成する銀ペーストとが密接に接着されていること、またメンブレンスイッチ基材フィルムとコネクタとを接続するモールド樹脂とが密接に接着されていることが重要である。そこで基材フィルムとの接着性を向上させる特殊な接着剤を添加した銀ペーストやモールド樹脂が使用されていたが、汎用性に欠けるため非常に高いコストがかかるという問題があり、汎用されている銀ペースト、モールド樹脂それぞれと高い接着性を有するポリエステルフィルムが求められている。
【0005】
接着性を有するポリエステルフィルム自体は、磁性層、印刷層などといった各種機能層との接着性を高めるべく、従来より種々の易接着層が提案されている。そのうちウレタン系樹脂を用いた易接着層として、例えば磁性層を塗布する際の耐溶剤性および接着性を向上させる目的で分子内にブロックしたイソシアネート基を有する親水性自己架橋型ポリウレタン組成物を含み加熱硬化せしめた被覆層を有する易接着性ポリエステルフィルム(特許文献2)、耐溶剤性、耐ブロッキング性を有し、特に紫外線硬化インキなどのラジカル重合樹脂に対する接着性に優れた塗膜層として不飽和二重結合を有する熱硬化ポリウレタン薄膜を設けてなる易接着性ポリエステルフィルム(特許文献3)、シリコーン硬化物層に対し優れた接着性と加熱処理時の寸法安定性を有する塗膜層として、不飽和二重結合を有する熱硬化ポリウレタン薄膜を設けてなるシリコーン易接着性PENフィルム(特許文献4)が開示されている。しかしながら、いずれもメンブレンスイッチと異なる用途における異なる相手材との接着性及び耐溶剤性に関する技術であり、メンブレンスイッチの基材フィルムとして適用した場合に、相手材である銀ペースト、モールド樹脂それぞれと高い接着性を有するポリエステルフィルムが望まれているのが現状である。
【0006】
【特許文献1】特開昭62−082620号公報
【特許文献2】特開昭61−145232号公報
【特許文献3】特開平01−218832号公報
【特許文献4】特開平11−020107号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の目的は、かかる従来技術の課題を解消し、メンブレンスイッチの電極を形成する銀ペースト及びメンブレンスイッチ基材フィルムとコネクタとを接続するモールド樹脂それぞれとの接着性に優れるメンブレンスイッチ用基材フィルムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、前記課題を解決するために鋭意検討した結果、芳香族ポリエステルを主成分とする二軸配向ポリエステルフィルムの少なくとも片面に非架橋型ウレタン樹脂を含む塗布層を設けることにより、電極を形成する銀ペースト及びコネクタと接続させるモールド樹脂それぞれとポリエステルフィルムとの接着性が向上し、また押下の繰り返し動作を受けても電極やモールド部材との高い接着性が維持されることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0009】
すなわち本発明によれば、本発明の目的は、芳香族ポリエステルを主成分とする二軸配向ポリエステルフィルムの少なくとも片面に非架橋型ウレタン樹脂を含む塗布層が設けられたメンブレンスイッチ用基材フィルムによって達成される。
【0010】
また、本発明のメンブレンスイッチ用基材フィルムは、その好ましい態様として、塗布層が、結晶配向が完了する前のポリエステルフィルムの少なくとも片面に非架橋型ウレタン樹脂を含む水分散性または水性塗布液を塗布し、次いで乾燥、延伸、熱処理させて設けられたものであること、非架橋型ウレタン樹脂が非架橋型脂環族ウレタン樹脂であること、非架橋型脂環族ウレタン樹脂を構成するポリイソシアネート成分が、ジシクロヘキシルメタン−4,4’−ジイソシアネート及びイソホロンジイソシアネートからなる群から選ばれる少なくとも1種であること、芳香族ポリエステルがポリエチレンナフタレンジカルボキシレートであること、二軸配向ポリエステルフィルムのヤング率がMD方向、TD方向それぞれ5000MPa以上7000MPa以下であること、150℃×30分における二軸配向ポリエステルフィルムの熱収縮率がMD方向、TD方向それぞれ0%以上1.2%以下であること、二軸配向ポリエステルフィルムの密度が1.345g/cm以上1.370g/cm以下であり、二軸配向ポリエステルフィルム厚み方向の屈折率が1.490以上1.530以下であること、二軸配向ポリエステルフィルムの固有粘度が0.47dl/g以上0.90dl/g以下であることの少なくともいずれか一つを具備するものも好ましい態様として包含する。
【0011】
さらに本発明のメンブレンスイッチ用基材フィルムは自動車の車内で好適に使用することができ、さらに詳細には自動車内の各座席の座面内部に複数個埋め込まれた状態で、座席の上に乗員が着座したことを検知するセンサーとして使用することができる。
【発明の効果】
【0012】
本発明のメンブレンスイッチ用基材フィルムは、汎用の銀ペーストやモールド樹脂との接着性に優れ、信頼性の高い回路の設計が可能となる。また、メンブレンスイッチ用基材フィルムの具体例として自動車の車内で好適シート用センサーとして用いることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、本発明を詳しく説明する。
<芳香族ポリエステル>
本発明の二軸配向ポリエステルフィルムは主成分として芳香族ポリエステルを含む。ここで本発明における「主成分」とは、二軸配向ポリエステルフィルムの重量を基準として90重量%以上、好ましくは95重量%以上、さらに好ましくは99重量%以上を占める成分を主成分という。
【0014】
かかる芳香族ポリエステルは、芳香族ジカルボン酸またはそのエステル形成性誘導体とジオールまたはそのエステル形成性誘導体とから合成される。芳香族ジカルボン酸成分としては、例えばテレフタル酸、イソフタル酸、ナフタレンジカルボン酸、4,4’−ジフェニルジカルボン酸が例示され、ジオール成分として、例えばエチレングリコール、1,3−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、1,6−ヘキサンジオールが例示される。本発明の芳香族ポリエステルは、具体的にはポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンイソフタレート、ポリトリメチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリ(1,4−シクロヘキシレンジメチレンテレフタレート)、ポリエチレンナフタレンジカルボキシレート、ポリトリメチレンナフタレートが例示され、特に力学的物性、耐熱性、耐永久変形性等の点からポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレンジカルボキシレートが好ましく、さらに高温下での永久変形性の点でポリエチレンナフタレンジカルボキシレートが最も好ましい。芳香族ポリエステルは、単独重合体、第三成分を共重合した共重合体、あるいは混合体のいずれであってもよい。
【0015】
芳香族ポリエステルがポリエチレンナフタレンジカルボキシレートである場合、主たるジカルボン酸成分としてナフタレンジカルボン酸が用いられ、主たるジオール成分としてエチレングリコールが用いられる。ナフタレンジカルボン酸は、2,6−ナフタレンジカルボン酸、2,7−ナフタレンジカルボン酸、1,5−ナフタレンジカルボン酸を挙げることができ、これらの中で2,6−ナフタレンジカルボン酸が好ましい。ここで「主たる」とは、芳香族ポリエステルを構成する全繰返し単位の少なくとも80モル%、好ましくは少なくとも90モル%、特に好ましくは少なくとも95モル%を意味する。
【0016】
芳香族ポリエステルが共重合体の場合、共重合成分として分子内に2つのエステル形成性官能基を有する化合物を用いることができる。このような化合物として例えば、蓚酸、アジピン酸、フタル酸、セバシン酸、ドデカンジカルボン酸、イソフタル酸、テレフタル酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸、2,7−ナフタレンジカルボン酸、1,5−ナフタレンジカルボン酸、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸、4,4’−ジフェニルジカルボン酸、フェニルインダンジカルボン酸、テトラリンジカルボン酸、デカリンジカルボン酸、ジフェニルエーテルジカルボン酸等の如きジカルボン酸;p−オキシ安息香酸、p−オキシエトキシ安息香酸等の如きオキシカルボン酸;或いはトリメチレングリコール、テトラメチレングリコール、ヘキサメチレングリコール、シクロヘキサンメチレングリコール、ネオペンチルグリコール、ビスフェノールスルホンのエチレンオキサイド付加物、ビスフェノールAのエチレンオキサイド付加物、ジエチレングリコール、ポリエチレンオキシドグリコール等の如き2価アルコール類等を用いることができる。これらの共重合成分は1種であっても、2種以上を併用してもよい。これらの共重合成分の中で、酸成分としてはイソフタル酸、テレフタル酸、4,4’−ジフェニルジカルボン酸、2,7−ナフタレンジカルボン酸、p―オキシ安息香酸を、グリコール成分としてはジエチレングリコール、トリメチレングリコール、ヘキサメチレングリコール、ネオペンチルグリコール、ビスフェノールスルホンのエチレンオキサイド付加物を好ましい例として挙げることができる。かかる共重合成分は芳香族ポリエステルを構成する全繰返し単位の20モル%以下であることが好ましく、更に好ましくは10モル%以下、特に好ましくは5モル%以下である。
【0017】
また、芳香族ポリエステルは、例えば安息香酸、メトキシポリアルキレングリコールなどの一官能性化合物によって末端の水酸基および/またはカルボキシル基の一部または全部を封鎖したものであってもよく、或いは例えば極少量のグリセリン、ペンタエリスリトール等の如き三官能以上のエステル形成性化合物で実質的に線状のポリマーが得られる範囲内で共重合したものであってもよい。
【0018】
本発明の二軸配向ポリエステルフィルムは、芳香族ポリエステルの単独重合体または共重合体を主成分とするが、他のポリエステルとの混合体であってもよい。混合体の場合、全ポリマー成分中のエチレンテレフタレート単位またはエチレンナフタレンジカルボキシレート単位が、全繰り返し構造単位の80モル%以上であることが好ましく、さらに好ましくは90モル%以上、特に好ましくは95モル%以上である。特にエチレンナフタレンジカルボキシレート単位が上記範囲であることによって、ポリエチレンナフタレンジカルボキシレート本来の特性を極端に失うことがなく、高温下での永久変形性を確保できる。
【0019】
芳香族ポリエステルに混合できる他のポリエステルとしては、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンイソフタレート、ポリエチレンナフタレンジカルボキシレート、ポリトリメチレンテレフタレート、ポリエチレン4,4’−テトラメチレンジフェニルジカルボキシレート、ポリエチレン−2,7−ナフタレンジカルボキシレート、ポリトリメチレン−2,6−ナフタレンジカルボキシレート、ポリネオペンチレン−2,6−ナフタレンジカルボキシレート、ポリ(ビス(4−エチレンオキシフェニル)スルホン)−2,6−ナフタレンジカルボキシレート等のポリエステルを挙げることができ、これらの中でポリエチレンイソフタレート、ポリトリメチレンテレフタレート、ポリトリメチレン−2,6−ナフタレンジカルボキシレート、ポリ(ビス(4−エチレンオキシフェニル)スルホン)−2,6−ナフタレンジカルボキシレートが好ましい。これらの他のポリエステルは1種であっても2種以上を併用してもよい。
【0020】
本発明の芳香族ポリエステルは、一般に知られたポリエステル組成物の製造方法によって製造できる。例えば、ジカルボン酸とグリコールとの反応で直接低重合度ポリエステルを得、或いはジカルボン酸の低級アルキルエステルとグリコールとをエステル交換反応で低重合度ポリエステルを得、この低重合度ポリエステルを重合触媒の存在下で更に重合させてポリエステルを得る方法で製造することができる。
【0021】
エステル交換反応に用いるエステル交換触媒としては、例えばナトリウム、カリウム、マグネシウム、カルシウム、亜鉛、ストロンチウム、チタン、ジルコニウム、マンガン、コバルトを含む化合物の一種または二種以上を挙げることができる。また、重合触媒としては、三酸化アンチモン、五酸化アンチモンのようなアンチモン化合物、二酸化ゲルマニウムで代表されるようなゲルマニウム化合物、テトラエチルチタネート、テトラプロピルチタネート、テトラフェニルチタネートまたはこれらの部分加水分解物、蓚酸チタニルアンモニウム、蓚酸チタニルカリウム、チタントリスアセチルアセトネートのようなチタン化合物を挙げることができる。
【0022】
エステル交換反応を経由して重合を行う場合は、重合反応前にエステル交換触媒を失活させる目的でトリメチルホスフェート、トリエチルホスフェート、トリ−n−ブチルホスフェート、正リン酸等のリン化合物を添加することができる。
【0023】
なお、芳香族ポリエステルは溶融重合後これをチップ化し、加熱減圧下または窒素などの不活性気流中において固相重合することもできる。固相重合を行うことで、二軸配向フィルムの耐加水分解特性がさらに良好になる。
【0024】
本発明の芳香族ポリエステルの固有粘度は0.50dl/g以上0.95dl/g以下であることが好ましい。さらに好ましくは0.52dl/g以上0.90dl/g以下である。固有粘度が下限に満たない場合、溶融押出し後のフィルムが脆くなり、フィルムの製膜時の破断が発生し易くなる。また、メンブレンスイッチの加工工程においてフィルムの割れが発生しやすくなることがある。また、芳香族ポリエステルの固有粘度が上限を超えると、ポリマーの固有粘度をかなり高くする必要があり、通常の合成手法では重合に長時間を要し生産性が悪くなる。また二軸配向フィルムに製膜した後の芳香族ポリエステルの固有粘度は0.47dl/g以上0.90dl/g以下であることが好ましく、さらに好ましくは0.50dl/g以上0.85g/dl以下である。フィルム製膜後の芳香族ポリエステルの固有粘度が下限に満たない場合、フィルムが脆くなり、フィルムを裁断した後の端面にバリが発生し、時にはバリの一部分から亀裂が入ることがある。なお、固有粘度はo−クロロフェノールを溶媒として用いて、35℃で測定した値(単位:dl/g)である。
【0025】
<塗布層>
本発明のメンブレンスイッチ用基材フィルムは、芳香族ポリエステルを主成分とする二軸配向ポリエステルフィルムの少なくとも片面に、非架橋型ウレタン樹脂を含む塗布層が設けられる層構成からなる。かかる非架橋型ウレタン樹脂は、ジイソシアネートとヒドロキシル基含有飽和化合物とを反応させて得られる。ここで非架橋型ウレタン樹脂とは、熱可塑性ウレタン樹脂も含め、ウレタン樹脂内に架橋点を有さないウレタン樹脂を指す。
【0026】
ジイソシアネートの例としては、m−フェニレンジイソシアネート、p−フェニレンジイソシアネート、1−メチル−2,4−フェニレンジイソシアネート、1−メチル−2,6−フェニレンジイソシアネート、ナフタレン−1,5−ジイソシアネート、ジフェニルメタン−4,4’−ジイソシアネート、3、3’−ジメチルビフェニル−4、4’−ジイソシアネート、3、3’−ジメトキシビフェニル−4、4’−ジイソシアネートなどの芳香族ジイソシアネート;テトラメチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、トリメチルヘキサンジイソシアネートなどの脂肪族ジイソシアネート;キシリレンジイソシアネートなどの芳香族環を有する脂肪族ジイソシアネート;並びにシクロヘキサン−1,2−ジイソシアネート、シクロヘキサン−1,3−ジイソシアネート、シクロヘキサン−1,4−ジイソシアネート、1−メチルシクロヘキサン−2,4−ジイソシアネート、1−エチルシクロヘキサン−2,4−ジイソシアネート、4,5−ジメチルシクロヘキサン−1,3−ジイソシアネート、1,2−ジメチルシクロヘキサン−ω,ω’−ジイソシアネート、1,4−ジメチルシクロヘキサン−ω,ω’−ジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート(IPDI)、ジシクロヘキシルメタン−4,4’−ジイソシアネート(HMDI)、ジシクロヘキシルメチルメタン−4,4’−ジイソシアネート、ジシクロヘキシルジメチルメタン−4,4’−ジイソシアネート、2,2’−ジメチルジシクロヘキシルメタン−4,4’−ジイソシアネート、3,3’−ジメチルジシクロヘキシルメタン−4,4’−ジイソシアネート、3,3’−5,5’−テトラメチルジシクロヘキシルメタン−4,4’−ジイソシアネートなどの脂環族ジイソシアネートが挙げられ、これらの1種、又は2種以上の組み合わせで使用できる。これらのジイソシアネートの中でも、メンブレンスイッチ用基材フィルムと接着させる相手材である銀ペースト、モールド樹脂それぞれとの接着性がより高い点で脂環族ジイソシアネートが好ましく、該脂環族ジイソシアネートの中でも特に接着性が高いことからイソホロンジイソシアネート(IPDI)、ジシクロヘキシルメタン−4,4’−ジイソシアネート(HMDI)が好ましい。最も好ましくはジシクロヘキシルメタン−4,4’−ジイソシアネート(HMDI)である。
【0027】
ヒドロキシル基含有飽和化合物として、例えばエチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、ブチレングリコール、ヘキサメチレングリコール、ネオペンチルグリコール、1,4−シクロヘキサンジメタノール等の一分子中に水酸基を2個有する低分子量グリコ−ル;ポリエチレングリコール、ポリオキシプロピレングリコール、ポリ(エチレン/プロピレン)グリコール、ポリテトラメチレングリコール等のポリエーテル系の高分子量グリコ−ル;エチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、ブチレングリコール、ヘキサメチレングリコール、ネオペンチルグリコール等をジオールとし、またアジピン酸、アゼライン酸、セバチン酸、イソフタル酸、テレフタル酸等をジカルボン酸として重縮合させて得られるポリエステル系の高分子量グリコ−ル;その他、ポリカプロラクトン、ポリβ−メチル−δ−バレロラクトン等のラクトン系開環重合体、カ−ボネート結合を有するポリカ−ボネート類、アクリル系ポリオール、ひまし油等が挙げられる。これらのヒドロキシル基含有飽和化合物の中でも、低分子量グリコ−ル、ポリエステル系の高分子量グリコ−ルが好ましい。
【0028】
本発明の非架橋型ウレタン樹脂は、上述のジイソシアネートとヒドロキシル基含有飽和化合物とを反応させて得られ、その中でもメンブレンスイッチ用基材フィルムと接着させる相手材である銀ペースト、モールド樹脂それぞれとの接着性がより高い点で脂環族ジイソシアネートとヒドロキシル基含有飽和化合物とを反応させて得られた脂環族ウレタン樹脂であることが好ましい。
【0029】
かかる非架橋型ウレタン樹脂には、さらにジメチロールプロピオン酸などの自己乳化剤、カルボキシル基を中和する中和剤としてアンモニア;トリメチルアミン、トリエチルアミン、トリエタノールアミン、トリブチルアミン、トリエタノールアミン、メチルジェタノールアミン、ジメチルエタノールアミン、ジエチルエタノールアミン等の如き第3級アミンが含まれていてもよい。
【0030】
本発明の非架橋型ウレタン樹脂は、ポリエステルフィルムに塗布層を形成する工程における環境汚染や防爆性の点から、水溶性もしくは水分散性の状態でフィルムに塗布されることが好ましい。かかる塗布液にはアニオン型界面活性剤、カチオン型界面活性剤、ノニオン型界面活性剤等の界面活性剤を必要量添加して用いることができる。界面活性剤としては水性塗布液の表面張力を40mN/m以下に低下でき、ポリエステルフィルムへの濡れ性を促進するものが好ましく、例えばポリオキシエチレン−脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、グリセリン脂肪酸エステル、脂肪酸金属石鹸、アルキル硫酸塩、アルキルスルホン酸塩、アルキルスルホコハク酸塩、第4級アンモニウムクロライド塩、アルキルアミン塩酸、ベタイン型界面活性剤等を挙げることができる。また塗布液には本発明の効果を消失させない範囲において、少量の有機溶剤、帯電防止剤、紫外線吸収剤、顔料、有機フィラー、無機フィラー、潤滑剤、ブロッキング防止剤等の添加剤を含有させてもよい。
【0031】
塗布層は、結晶配向が完了する前のポリエステルフィルムの少なくとも片面に、非架橋型ウレタン樹脂を含む水分散性または水性塗布液を塗布し、次いで乾燥、延伸、更に熱処理して設けることが好ましい。なお乾燥は、延伸製膜工程の熱を利用して行うものであってもよい。このようにフィルム製膜工程で塗布層を形成させることによって、フィルム内に塵や埃等を巻き込みにくく、また塗布層厚みを薄くすることができる。塗布量は走行中のフィルム1m2当り0.5〜50gが好ましい。
【0032】
塗工方法としては公知の方法が適用できる。例えば、ロールコート法、グラビアコート法、ロールブラッシュ法、スプレーコート法、エアーナイフ法、含浸法、カーテンコート法等を単独または組み合わせて適用するとよい。
【0033】
本発明における塗布層の厚みは0.001〜1μmの範囲が好ましく、更に好ましくは下限が0.01μm、上限が0.5μmである。塗布層の厚みをかかる範囲とすることにより、ポリエステルフィルムとの接着性が良好となり、易接着層塗布後のフィルムをロール状にまいたときにブロッキングが発生し難い。
【0034】
<二軸配向ポリエステルフィルム>
本発明のメンブレンスイッチ用基材フィルムは、芳香族ポリエステルを主成分とする二軸配向ポリエステルフィルムの少なくとも片面に、非架橋型ウレタン樹脂を含む塗布層が設けられる層構成からなる。本発明の二軸配向ポリエステルフィルムの厚みは12〜350μmの範囲であることが好ましく、フィルムの強度および可撓性の点からさらに好ましくは25〜250μm、特に好ましくは50〜200μmである。
【0035】
本発明の二軸配向ポリエステルフィルムには、課題を損なわない範囲内で、添加剤、例えば安定剤、滑剤、紫外線吸収剤、および難燃剤を含有させてもよい。ポリエステルフィルムに滑り性を付与するためには不活性粒子を少割合含有させることが好ましい。かかる不活性粒子としては、例えば球状シリカ、多孔質シリカ、炭酸カルシウム、アルミナ、二酸化チタン、カオリンクレー、硫酸バリウム、ゼオライトの如き無機粒子、或いはシリコン樹脂粒子、架橋ポリスチレン粒子の如き有機粒子を挙げることができる。無機粒子は粒径が均一であること等の理由で天然品よりも合成品であることが好ましい。フィルムに添加する不活性粒子は上記に例示した中から選ばれた単一成分でもよく、二成分あるいは三成分以上を含む多成分でもよい。上記の不活性粒子の平均粒径は0.05〜5.0μmの範囲であることが好ましく、0.1〜3.0μmであることがさらに好ましい。また、不活性微粒子の含有量は0.001〜1.0重量%であることが好ましく、0.03〜0.5重量%であることがさらに好ましい。不活性粒子の添加時期は、芳香族ポリエステルを製膜する迄の段階であれば特に制限はなく、例えば重合段階で添加してもよく、また製膜の際に添加してもよい。
【0036】
<ヤング率>
本発明の二軸配向ポリエステルフィルムは、直交する2方向、例えば長手方向(以下、連続製膜方向、縦方向、MD方向と称することがある)と幅方向(以下、横方向、TD方向と称することがある)のヤング率がそれぞれ5000MPa以上7000MPa以下であることが好ましい。ヤング率が下限未満であるとフィルムの剛性が不足し、メンブレンスイッチとしたときに繰り返し押下することによりフィルムが変形した後の回復が小さくなり、作動不良が発生することがある。また、ヤング率が上限を超えるとフィルムの裁断時にデラミが発生したり切粉が多く発生し易くなる。両方向のヤング率の差は特に限定されないが、1500MPa以下であることが好ましい。
【0037】
<熱収縮率>
本発明の二軸配向ポリエステルフィルムは、150℃の温度で30分間加熱処理したときの熱収縮率がMD方向、TD方向それぞれ0%以上1.2%以下であることが好ましく、より好ましくはMD方向、TD方向それぞれ0.01%以上1.0%以下である。150℃の温度で30分間加熱処理したときの熱収縮率が上限を超えると寸法変化が大きくなり、メンブレンスイッチとした時にスイッチ作動の精度が悪くなる他、フィルムの平面性が悪くなることがある。一方熱収縮率が下限に満たない場合、フィルムが膨張して同様にスイッチ作動の精度が悪くなる他、フィルムの平面性が悪くなることがある。また、MD方向とTD方向の熱収縮率の差は、平面性の悪化を防止するため絶対値で0.6%以下であることが好ましい。
【0038】
<密度>
本発明の二軸配向ポリエステルフィルムは、密度が1.345g/cm3以上1.370g/cm3以下であることが好ましく、さらに好ましくは1.350g/cm3以上1.365g/cm3以下である。フィルム密度が下限に満たない場合、メンブレンスイッチとしたときに繰り返し押下することによりフィルムが変形した後の回復が小さくなり、作動不良が発生することがある。またフィルム密度が上限を超える場合、結晶性が高くなりすぎてフィルムの靭性が失われるなどメンブレンスイッチ用としては好ましくないフィルムとなることがある。
【0039】
<フィルム厚み方向の屈折率>
本発明の二軸配向ポリエステルフィルムは、フィルム厚み方向の屈折率が1.490以上1.530以下であることが好ましく、さらに好ましくは1.495以上1.520以下である。フィルム厚み方向の屈折率が下限に満たない場合、フィルムがデラミネーションを起こし易く、引っ掻きによる傷が凹凸(ギザギザ)を有する傷となるため、白く目立つようになることがある。また、フィルム厚み方向の屈折率が上限を超えるとフィルムの厚み斑が大きくなり、フィルム表面にシワ(フルート)が発生し易くなることがある。
【0040】
<表面粗さ>
本発明の基材フィルムは、少なくとも片面のフィルム表面粗さ(Ra)が5nm以上であることが好ましく、より好ましくは7nm以上である。フィルム表面粗さ(Ra)が下限に満たない場合、フィルムの滑り性が悪く、フィルムをロールに巻き取る際、フィルム同士のブロッキングの発生、フィルム走行時の搬送ロール等でのスクラッチの発生等により、フィルム欠点が多発することがある。また、表面粗さの上限はフィルムの設計上1000nm以下であることが好ましい。かかる表面粗さは二軸配向ポリエステルフィルム自体の表面粗さ、塗布層面の表面粗さのいずれであってもよい。
【0041】
<フィルム製膜方法>
本発明の二軸配向ポリエステルフィルムは、通常の溶融押出法により得た未延伸フィルムを二軸延伸し熱固定することで製造することができる。
【0042】
本発明の二軸配向ポリエステルフィルムは、十分に乾燥させた芳香族ポリエステルをTm〜(Tm+70)℃の温度でTダイを通じて溶融押出し、フィルム状溶融物を冷却ロール(キャスティンクドラム)上で急冷して未延伸フィルムとし、次いで該未延伸フィルムを逐次または同時二軸延伸し、熱固定する方法で製造することができる。二軸延伸は逐次二軸延伸が好ましく、未延伸フィルムを縦方向に延伸し、次いでステンターにて横方向に延伸し、その後(Tg+60)〜(Tm−10)℃の温度で緊張下又は制限収縮下で10〜30秒熱固定するのが好ましい。縦方向および横方向の延伸条件は、ポリエステルのTg以上170℃以下の温度範囲で2.5〜5.5倍の範囲の延伸倍率で行うことが好ましい。ヤング率、熱収、nzなどの範囲を達成するために、さらに好ましい延伸倍率は2.5〜4.0倍である。ここで、Tgは芳香族ポリエステルのガラス転移温度、Tmは芳香族ポリエステルの融点を表わす。また同時二軸延伸方法を用いる場合は、上記の延伸温度、延伸倍率、熱固定温度等を適用することができる。
【0043】
塗布層は逐次延伸の場合、一方向に延伸した1軸配向フィルムに、水性塗液を塗布し、次いで乾燥後、もう一方に延伸し、更に熱固定することで得られる。なお乾燥は、延伸製膜工程の熱を利用して行うものであってもよい。塗布量は走行中のフィルム1m2当り0.5〜50gが好ましい。塗布層の塗工方法としては公知の方法が適用でき、例えば、ロールコート法、グラビアコート法、ロールブラッシュ法、スプレーコート法、エアーナイフ法、含浸法、カーテンコート法等を単独または組み合わせて適用するとよい。
【0044】
<メンブレンスイッチ用基材フィルム>
このようにして得られた、芳香族ポリエステルを主成分とする二軸配向ポリエステルフィルムの少なくとも片面に非架橋型ウレタン樹脂を含む塗布層が設けられたフィルムは、メンブレンスイッチの電極を形成する銀ペースト及びメンブレンスイッチの基材フィルム上にコネクタをモールドする際のモールド樹脂との接着性に優れることから、メンブレンスイッチ用基材フィルムとして好適に用いられる。
【0045】
電極を形成する銀ペーストは、電極形成用として通常市販されている、主成分として銀を含み、樹脂からなるバインダー成分が少量加えられたものを使用することができる。かかる銀ペーストは、基材フィルムの塗布層面に印刷を施し、その後140〜170℃で30分〜60分間加熱固化させることによって形成される。また、基材フィルム上にコネクタをモールドさせるモールド樹脂は、半導体の封止材料として使用される、エポキシ系樹脂を主成分とする一般的なモールド樹脂であれば特に限定されない。
【0046】
本発明の基材フィルムの中でも、芳香族ポリエステルとしてポリエチレンナフタレンジカルボキシレートを用いた場合、ヤング率、高温で熱収縮率に優れることから、特に高温下での永久変形性が求められる自動車の車内で用いられるメンブレンスイッチ用基材フィルムとして好適に用いることができる。自動車車内用のメンブレンスイッチとして、例えば自動車内の各座席の座面内部に複数個埋め込まれた状態で、座席の上に乗員が着座したことを検知するシートセンサーとして用いることができる。
【実施例】
【0047】
以下、実施例により本発明を詳述するが、本発明はこれらの実施例のみに限定されるものではない。なお、各特性値は以下の方法で測定した。また、実施例中の部および%は、特に断らない限り、それぞれ重量部および重量%を意味する。
【0048】
(1)ヤング率
オリエンテック社製テンシロンUCT−100型を用いて、温度20℃、湿度50%に調節された室内において、フィルムを試料幅10mm、長さ15cmに切り、長さ方向を測定方向として、チャック間100mm、引張速度10mm/分、チャート速度500mm/分で引張り、得られる荷重―伸び曲線の立ち上り部の接線よりヤング率を計算する。なお、MD方向のヤング率とはフィルムの縦方向を測定方向としたものであり、MD方向のヤング率とはフィルムの横方向を測定方向としたものである。各ヤング率は10回測定し、その平均値を用いた。
【0049】
(2)熱収縮率
温度150℃に設定されたオーブン中に、フィルムのMD方向およびTD方向がマーキングされ、あらかじめ正確な長さを測定した長さ30cm四方のフィルムを無荷重で入れ、30分間保持処理した後取り出し、室温に戻してからその寸法の変化を読み取る。熱処理前の長さ(L0 )と熱処理による寸法変化量(ΔL)より、次式(1)からMD方向、TD向の熱収縮率をそれぞれ求めた。
熱収縮率(%)=ΔL/L0×100 ・・・(1)
【0050】
(3)密度
硝酸カルシウム水溶液を溶媒として用いた密度勾配間中、25℃で浮沈法により測定した値である。
【0051】
(4)フィルム厚み方向の屈折率
アッベの屈折率計((株)アタゴ製)を使用して、25℃にてNa−D線を用いてフィルム厚み方向の屈折率を求めた。フィルムサンプルは表面、裏面の両面について測定し、その平均値をフィルム厚み方向の屈折率(nz)とする。
【0052】
(5)固有粘度
o−クロロフェノールを溶媒として用い、25℃で測定した値(単位:dl/g)である。
【0053】
(6)易接着性(対銀ペースト)
二軸配向ポリエステルフィルムの塗布層面に、銀ペースト(商品名:EN4277,日立化成工業(株)製)(厚み10μm)を印刷し、150℃、30分にて加熱固化させた。その後、碁盤目のクロスカット(1mm2のマス目を100個)を施し、その上に24mm幅のセロハンテープ(ニチバン社製)を貼り付け、180°の剥離角度で剥がした。剥離面の観察結果より、下記基準にて評価を行った。
剥離面積が15%未満 ……○
剥離面積が15%以上30%未満 ……△
剥離面積が30%を超えるもの ……×
【0054】
(7)易接着性(対モールド樹脂)
二軸配向ポリエステルフィルムの塗布層面に、モールド樹脂(主成分はナフタレンノボラック型エポキシ樹脂で、無機充填材として球状シリカフィラーを84重量%添加したもの)を塗布した。その後、碁盤目のクロスカット(1mm2のマス目を100個)を施し、その上に24mm幅のセロハンテープ(ニチバン社製)を貼り付け、180°の剥離角度で剥がした。剥離面の観察結果より、下記基準にて評価を行った。
剥離面積が15%未満 ……◎
剥離面積が15%以上30%未満 ……○
剥離面積が30%以上40%未満 ……△
剥離面積が40%を超えるもの ……×
【0055】
[実施例1]
2,6−ナフタレンジカルボン酸ジメチル100重量部、エチレングリコール60重量部、エステル交換触媒として酢酸マンガン四水塩0.03重量部、滑剤として平均粒径0.5μmの炭酸カルシウム粒子をポリエステル組成物の重量を基準として0.25重量%、平均粒径0.2μmの球状シリカ粒子を0.06重量%および平均粒径0.1μmの球状シリカ粒子を0.1重量%含有するように添加して、常法に従ってエステル交換反応をさせた。ついで、三酸化アンチモン0.024重量部を添加し、引き続き高温、高真空下で常法にて重合反応を行い、固有粘度0.60dl/gのポリエチレン−2,6−ナフタレンジカルボキシレート(PEN Tg=121℃)を得た。このPENポリマーを175℃で5時間乾燥させた後、押出機に供給し、溶融温度300℃で溶融し、ダイスリットより押出した後、表面温度55℃に設定したキャスティングドラム上で冷却固化させて未延伸フィルムを作成した。
【0056】
この未延伸フィルムを140℃にて縦方向(長手方向)に3.1倍延伸し、一軸延伸フィルムを得た。その後、キスコート法にてフィルム両面に水性塗布液A(固形分濃度2%)を塗布し、ついで135℃で横方向(幅方向)に3.4倍に逐次二軸延伸した。さらに245℃にて熱固定処理し、その後240℃で幅方向に2%収縮させながら再熱処理を行い、125μmの二軸配向ポリエステルフィルムを得てロールに巻き取った。
【0057】
塗布液Aは、ポリウレタン系樹脂 100重量部(イソシアネート成分として4、4’−ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート(HMDI)、ポリオール成分としてテレフタル酸、イソフタル酸、ヘキサメチレングリコール、1,4シクロヘキサンジメタノール)に対し、鎖延長剤としてジメチロールプロピオン酸を3重量部、中和剤としてトリエチルアミンを4重量部混合したものである。得られたフィルムの特性を表1に示す。
【0058】
[実施例2]
未延伸フィルムを140℃にて縦方向(長手方向)に4.8倍延伸した後、135℃で横方向(幅方向)に4.6倍に逐次二軸延伸した以外は実施例1と同様にして125μmの二軸配向ポリエステルフィルムを得た。得られたフィルムの特性を表1に示す。
【0059】
[実施例3]
塗布層を形成する水性塗布液として、塗布液Aに代えてイソシアネート成分が芳香族ジイソシアネートであるウレタン樹脂(三洋化成工業株式会社製「ユープレンUXA−3005」)を含有する水性塗布液B(固形分濃度2%)を用いた以外は実施例1と同様にして125μmの二軸配向ポリエステルフィルムを得た。得られたフィルムの特性を表1に示す。
【0060】
[比較例1]
一軸延伸フィルムへの水性塗布液Aの塗布工程を除いた以外は実施例1と同様にして125μmの二軸配向ポリエステルフィルムを得た。得られたフィルムの特性を表1に示す。
【0061】
[比較例2]
得られた一軸延伸フィルム両面に、キスコート法にて水性塗布液D(固形分濃度3%)を塗布した以外は実施例1と同様にして125μmの二軸配向ポリエステルフィルムを得た。塗布液Dは、メチルメタクリレート60モル%/ブチルアクリレート40モル%で構成されているアクリル共重合体90重量部に、ポリオキシエチレンラウリルエーテル(n=7)10重量部を混合したものである。得られたフィルムの特性を表1に示す。
【0062】
【表1】

【産業上の利用可能性】
【0063】
本発明のメンブレンスイッチ用基材フィルムは、汎用の銀ペーストやモールド樹脂との接着性に優れ、信頼性の高い回路の設計が可能となる。また、メンブレンスイッチ用基材フィルムの具体例として自動車の車内で好適シート用センサーとして用いることができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
芳香族ポリエステルを主成分とする二軸配向ポリエステルフィルムの少なくとも片面に非架橋型ウレタン樹脂を含む塗布層が設けられたメンブレンスイッチ用基材フィルム。
【請求項2】
塗布層が、結晶配向が完了する前のポリエステルフィルムの少なくとも片面に非架橋型ウレタン樹脂を含む水分散性または水性塗布液を塗布し、次いで乾燥、延伸、熱処理させて設けられたものである請求項1に記載のメンブレンスイッチ用基材フィルム。
【請求項3】
非架橋型ウレタン樹脂が非架橋型脂環族ウレタン樹脂である請求項1または2に記載のメンブレンスイッチ用基材フィルム。
【請求項4】
非架橋型脂環族ウレタン樹脂を構成するポリイソシアネート成分が、ジシクロヘキシルメタン−4,4’−ジイソシアネート及びイソホロンジイソシアネートからなる群から選ばれる少なくとも1種である請求項3に記載のメンブレンスイッチ用基材フィルム。
【請求項5】
芳香族ポリエステルがポリエチレンナフタレンジカルボキシレートである請求項1〜4のいずれかに記載のメンブレンスイッチ用基材フィルム。
【請求項6】
二軸配向ポリエステルフィルムのヤング率がMD方向、TD方向それぞれ5000MPa以上7000MPa以下である請求項1〜5のいずれかに記載のメンブレンスイッチ用基材フィルム。
【請求項7】
150℃×30分における二軸配向ポリエステルフィルムの熱収縮率がMD方向、TD方向それぞれ0%以上1.2%以下である請求項1〜6のいずれかに記載のメンブレンスイッチ用基材フィルム。
【請求項8】
二軸配向ポリエステルフィルムの密度が1.345g/cm以上1.370g/cm以下であり、二軸配向ポリエステルフィルム厚み方向の屈折率が1.490以上1.530以下である請求項1〜7のいずれかに記載のメンブレンスイッチ用基材フィルム。
【請求項9】
二軸配向ポリエステルフィルムの固有粘度が0.47dl/g以上0.90dl/g以下である請求項1〜8のいずれかに記載のメンブレンスイッチ用基材フィルム。
【請求項10】
自動車の車内で用いられる請求項1〜9のいずれかに記載のメンブレンスイッチ用基材フィルム。
【請求項11】
メンブレンスイッチが、自動車内の各座席の座面内部に複数個埋め込まれた状態で、座席の上に乗員が着座したことを検知するセンサーとして用いられる請求項10に記載のメンブレンスイッチ用基材フィルム。

【公開番号】特開2007−204582(P2007−204582A)
【公開日】平成19年8月16日(2007.8.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−24309(P2006−24309)
【出願日】平成18年2月1日(2006.2.1)
【出願人】(301020226)帝人デュポンフィルム株式会社 (517)
【Fターム(参考)】