説明

モジュール内蔵型カード

【課題】電子部品として表示素子を内蔵し、この表示素子の表示部を外部から目視可能とし、製造が容易なモジュール内蔵型カードを提供する。
【解決手段】本発明のモジュール内蔵型カード10は、表示素子12を有するモジュール13と、このモジュール13を被覆する接着層14と、この接着層14を介してモジュール13を挟む一対の第一基材15および第二基材16とを備え、表示素子12の表示部12aは透明な粘着層17を介して第一基材15に固定され、第一基材15は透明であり、接着層14は着色されていることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ICチップなどの電子部品を備えたモジュールを内蔵するモジュール内蔵型カードに関し、特に、電子部品として表示素子を内蔵し、この表示素子の表示部を外部から目視可能なモジュール内蔵型カードに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ICチップ、ダイオードなどの電子部品を備えたモジュールを内蔵するICカードなどのカードにおいて、カードに内蔵された電子部品を目視可能にするために、図2に示すようなカード100が提案されている。
このカード100は、モジュール101と、このモジュール101を被覆する透明な接着剤からなる接着層102と、この接着層102を介してモジュール101を挟む一対の基材103,104とから構成されている(例えば、特許文献1参照)。
このカード100では、内蔵されたモジュール101を外部から目視可能とするために、透明な接着層102と、透明な基材103,104との組み合わせが不可欠であった。
【特許文献1】特表2005−531126号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
ところで、図2に示すようなカード100は、接着剤を介してモジュール101と、基材103,104とを重ね合わせて形成されるため、内部に気泡や異物が混入したり、接着層102に接着斑が生じることがある。
カード100は、接着層102および基材103,104が透明であるので、内部に混入した気泡や異物、または、接着層102の接着斑が外部から見えてしまうため、外観の不良により良品率が低下するという問題があった。
また、気泡や異物の混入、接着斑などの不良を解決するために、カード形成時に真空脱泡などの手法も用いられるが、この手法は手間が掛かる上に、非常にコストが掛かるという問題があった。
【0004】
また、近年、電子部品として表示素子を内蔵し、この表示素子の表示部を外部から目視可能としたモジュール内蔵型のカードが求められているが、上述のような気泡や異物の混入などの問題から、表示部を目視可能なカードは容易に得られなかった。
【0005】
本発明は、前記事情に鑑みてなされたもので、電子部品として表示素子を内蔵し、この表示素子の表示部を外部から目視可能とし、製造が容易なモジュール内蔵型カードを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明のモジュール内蔵型カードは、表示素子を有するモジュールと、該モジュールを被覆する接着層と、該接着層を介して前記モジュールを挟む一対の基材と、を備えたモジュール内蔵型カードであって、前記表示素子の表示部は透明な粘着層を介して前記基材に固定され、前記一対の基材のうち少なくとも前記表示部側の基材は透明であり、前記接着層は着色されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
本発明のモジュール内蔵型カードは、表示素子を有するモジュールと、該モジュールを被覆する接着層と、該接着層を介して前記モジュールを挟む一対の基材と、を備えたモジュール内蔵型カードであって、前記表示素子の表示部は透明な粘着層を介して前記基材に固定され、前記一対の基材のうち少なくとも前記表示部側の基材は透明であり、前記接着層は着色されているので、基材の表示部と重なっている部分のみが透明となっており、この部分が表示窓部となっているため、基材の外面側から表示部を目視できる。また、表示素子の表示部は、粘着層によって基材に固定されているので、粘着層と、表示部および基材との間に気泡や異物が混入しないとともに、接着斑が生じることもない。さらに、接着層は、着色され、しかも一対の基材の間において、上記の表示窓部を除いた領域に存在しているので、接着層に混入した気泡や異物、または、接着層に生じた接着斑を目立たなくすることができる。したがって、外観の不良により、モジュール内蔵型カードの良品率が低下するのを抑制することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
本発明のモジュール内蔵型カードの最良の形態について説明する。
なお、この形態は、発明の趣旨をより良く理解させるために具体的に説明するものであり、特に指定のない限り、本発明を限定するものではない。
【0009】
図1は、本発明に係るモジュール内蔵型カードの一実施形態を示す概略図であり、(a)は平面図、(b)は(a)のA−A線に沿う断面図である。
図1中、符号10はモジュール内蔵型カード、11はベース基材、12は表示素子、13はモジュール、14は接着層、15は第一基材、16は第二基材、17は粘着層をそれぞれ示している。
この実施形態のモジュール内蔵型カード10は、表示素子12を有するモジュール13と、このモジュール13を被覆する接着層14と、この接着層14を介してモジュール13を挟む一対の第一基材15および第二基材16とから概略構成されている。
また、モジュール13は、ベース基材11と、ベース基材11に実装され、表示部12aを有する表示素子12とから概略構成されている。
【0010】
また、表示素子12の表示部12aは、透明な粘着層17を介して第一基材15のモジュール13と対向する面(以下、「内面」と言う。)15aに接着、固定されている。
また、接着層14は、着色剤を含む接着剤からなり、着色されている。
さらに、第一基材15および第二基材16は、透明な基材からなる。
このように、表示素子12の表示部12aは、透明な粘着層17を介して、透明な第一基材15の内面15aに固定されているので、第一基材15の外面15b側から目視可能となっている。
【0011】
ベース基材11としては、少なくとも表層部には、ガラス繊維、アルミナ繊維などの無機繊維からなる織布、不織布、マット、紙などまたはこれらを組み合わせたもの、ポリエステル繊維、ポリアミド繊維などの有機繊維からなる織布、不織布、マット、紙などまたはこれらを組み合わせたものや、あるいはこれらに樹脂ワニスを含浸させて成形した複合基材や、ポリアミド系樹脂基材、ポリエステル系樹脂基材、ポリオレフィン系樹脂基材、ポリイミド系樹脂基材、エチレン−ビニルアルコール共重合体基材、ポリビニルアルコール系樹脂基材、ポリ塩化ビニル系樹脂基材、ポリ塩化ビニリデン系樹脂基材、ポリスチレン系樹脂基材、ポリカーボネート系樹脂基材、アクリロニトリルブタジエンスチレン共重合系樹脂基材、ポリエーテルスルホン系樹脂基材などのプラスチック基材や、あるいはこれらにマット処理、コロナ放電処理、プラズマ処理、紫外線照射処理、電子線照射処理、フレームプラズマ処理、オゾン処理、または各種易接着処理などの表面処理を施したものなどの公知のものから選択して用いられる。これらの中でも、ポリエチレンテレフタレートまたはポリイミドからなる電気絶縁性のフィルムまたはシートが好適に用いられる。
【0012】
表示素子12としては、電気泳動型ディスプレイなどの電圧印加による粒子移動系の電子ペーパー、液晶ディスプレイ(LCD)、エレクトロクロミックデバイス(ECD)、エレクトロルミネッセンス(EL)、発光ダイオード(LED)などが用いられる。
【0013】
接着層14をなす接着剤としては、使用前は液状であり、加熱、紫外線照射、電子線照射などの外的条件を加えることにより硬化する接着剤が用いられる。このような接着剤としては、熱硬化性樹脂、紫外線硬化性樹脂、電子線硬化性樹脂などが挙げられる。また、外的条件を加えなくても主剤と硬化剤の反応によって硬化する2液硬化型接着剤も用いられる。
熱硬化型樹脂としては、例えば、フェノール樹脂、エポキシ樹脂、ポリウレタン硬化型樹脂、尿素樹脂、メラミン樹脂、アクリル系反応樹脂などが挙げられる。
【0014】
紫外線硬化性樹脂としては、紫外線硬化性アクリル樹脂、紫外線硬化性ウレタンアクリレート樹脂、紫外線硬化性ポリエステルアクリレート樹脂、紫外線硬化性ポリウレタン樹脂、紫外線硬化性エポキシアクリレート樹脂、紫外線硬化性イミドアクリレート樹脂などが挙げられる。
電子線硬化性樹脂としては、電子線硬化性アクリル樹脂、電子線硬化性ウレタンアクリレート樹脂、電子線硬化性ポリエステルアクリレート樹脂、電子線硬化性ポリウレタン樹脂、電子線硬化性エポキシアクリレート樹脂、カチオン硬化型樹脂などが挙げられる。
2液硬化型接着剤としては、ポリエステル樹脂とポリイソシアネートプレポリマーの混合物、ポリエステルポリオールとポリイソシアネートとの混合物、ウレタンとポリイソシアネートとの混合物などが挙げられる。
【0015】
このような接着剤の具体例としては、主剤(商品名:アロンマイティAP−317A、東亞合成社製)と硬化剤(商品名:アロンマイティAP−317B、東亞合成社製)からなる2液混合型エポキシ系接着剤、主剤(商品名:MLT2900、イーテック社製)と硬化剤(商品名:G3021−B174、イーテック社製)からなる2液混合型ウレタン系接着剤などが挙げられる。
【0016】
接着層14に含まれる着色剤としては、公知の無機顔料、有機顔料、染料などが用いられる。この着色剤により、接着層14は任意の色に着色される。
【0017】
第一基材15および第二基材16としては、透明かつ光透過性に優れる基材が用いられ、例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)、グリコール変性ポリエチレンテレフタレート(PET−G)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリエチレンナフタレート(PEN)などのポリエステル樹脂からなる基材;ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)などのポリオレフィン樹脂からなる基材;ポリフッ化ビニル、ポリフッ化ビニリデン、ポリ4フッ化エチレンなどのポリフッ化エチレン系樹脂からなる基材;ナイロン6、ナイロン6,6などのポリアミド樹脂からなる基材;ポリ塩化ビニル(PVC)、エチレン−酢酸ビニル共重合体、ポリビニルアルコール、ビニロンなどのビニル重合体からなる基材;ポリメタクリル酸メチル、ポリメタクリル酸エチル、ポリアクリル酸エチル、ポリアクリル酸ブチルなどのアクリル系樹脂からなる基材;ポリスチレンからなる基材;;ポリカーボネート(PC)からなる基材;;ポリアリレートからなる基材;;ポリイミドからなる基材;上質紙、薄葉紙、グラシン紙、硫酸紙などの紙からなる基材などが用いられる。これらの基材の中でも、機械的強度、寸法安定性、耐溶剤性の点からポリエチレンテレフタレート(PET)、グリコール変性ポリエチレンテレフタレート(PET−G)、ポリエチレンナフタレート(PEN)などからなる基材が好ましく、透明性、加工適性、コストの点からポリエチレンテレフタレート(PET)またはグリコール変性ポリエチレンテレフタレート(PET−G)からなる基材がより好ましい。
また、第一基材15および第二基材16は、無色透明または有色透明のいずれであってもよいが、表示素子12の表示部12aに表示される情報を認識し易い点から、無色透明が好ましい。
【0018】
粘着層17をなす粘着剤としては、液体と固体の両方の性質を有し、常に濡れた状態にあり、流動性が低く、それ自体の形状を保持する粘着剤が用いられる。このような粘着剤としては、アクリル樹脂、ポリウレタン樹脂、エポキシ樹脂、ウレタン樹脂、天然ゴム系粘着剤、合成ゴム系粘着剤、ホットメルト粘着剤などが挙げられる。
粘着剤の具体例としては、フィルム両面テープ(商品名:No705、寺岡製作所社製)、両面テープ(商品名:TL−85F−12、リンテック社製)などが挙げられる。
【0019】
この実施形態のモジュール内蔵型カード10は、表示素子12を有するモジュール13と、このモジュール13を被覆する接着層14と、この接着層14を介してモジュール13を挟む一対の第一基材15および第二基材16とを備え、表示素子12の表示部12aは透明な粘着層17を介して第一基材15に固定され、第一基材15は透明であり、接着層14は着色されているので、第一基材15の表示部12と重なっている部分のみが透明となっており、この部分が表示窓部18となっているため、第一基材15の外面15b側から表示部12aを目視できる。また、表示素子12の表示部12aは、粘着層12によって第一基材15に固定されているので、粘着層12と、表示部12aおよび第一基材15との間に気泡や異物が混入しないとともに、接着斑が生じることもない。さらに、接着層14は、着色され、しかも第一基材15と第二基材16の間において、上記の表示窓部18を除いた領域に存在しているので、接着層14に混入した気泡や異物、または、接着層14に生じた接着斑を目立たなくすることができる。したがって、外観の不良により、モジュール内蔵型カード10の良品率が低下するのを抑制することができるとともに、カード内部の機密を守ることができる。
【0020】
なお、この実施形態では、第一基材15および第二基材16が透明なモジュール内蔵型カード10を例示したが、本発明のモジュール内蔵型カードはこれに限定されない。本発明のモジュール内蔵型カードにあっては、モジュールを挟む一対の基材のうち少なくとも表示素子の表示部側の基材が透明であればよい。
また、この実施形態では、モジュール13として表示素子12を有するものを備えたモジュール内蔵型カード10を例示したが、本発明のモジュール内蔵型カードはこれに限定されない。本発明のモジュール内蔵型カードにあっては、モジュールが表示素子以外にも、アンテナ、ICチップ、電池、ダイオードなどの電子部品を備えていてもよい。
【0021】
次に、図1を参照して、この実施形態のモジュール内蔵型カード10の製造方法について説明する。
まず、第一基材15の内面15aに、接着層14をなす、所定量の接着剤を塗布する。
次いで、第一基材15の内面15aの所定位置に、表示素子12の表示部12aの形状に応じて形成された、粘着層17をなす粘着剤を塗布または貼付する。
次いで、この粘着剤を介して、第一基材15の内面15aに、表示素子12の表示部12aを接着、固定することにより、モジュール13を第一基材15の内面15aの所定位置に配する。
次いで、第一基材15と第二基材16によってモジュール13、粘着剤および接着剤を挟むように、第二基材16を配した後、第一基材15の外面15b側および第二基材16の外面16a側から、第一基材15、第二基材16、モジュール13、粘着剤および接着剤から構成される積層体を加圧処理および接着剤を硬化させる処理たとえば加熱、紫外線照射、電子線照射、エージング〔放置して時間とともに硬化反応をさせていくこと〕することによって、接着剤が硬化して、前記の積層体が一体化してなるモジュール内蔵型カード10が得られる。
【0022】
この実施形態のモジュール内蔵型カード10の製造方法によれば、粘着剤を介して、表示素子12の表示部12aを第一基材15の内面15aに接着するので、粘着層12と、表示部12aおよび第一基材15との間に気泡や異物が混入しないとともに、接着斑が生じることもない。したがって、真空脱泡などの手法を用いることなく、外観に優れるモジュール内蔵型カード10が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】本発明に係るモジュール内蔵型カードの一実施形態を示す概略図であり、(a)は平面図、(b)は(a)のA−A線に沿う断面図である。
【図2】従来のモジュール内蔵型のカードを示す概略断面図である。
【符号の説明】
【0024】
10・・・モジュール内蔵型カード、11・・・ベース基材、12・・・表示素子、13・・・モジュール、14・・・接着層、15・・・第一基材、16・・・第二基材、17・・・粘着層。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
表示素子を有するモジュールと、該モジュールを被覆する接着層と、該接着層を介して前記モジュールを挟む一対の基材と、を備えたモジュール内蔵型カードであって、
前記表示素子の表示部は透明な粘着層を介して前記基材に固定され、前記一対の基材のうち少なくとも前記表示部側の基材は透明であり、前記接着層は着色されていることを特徴とするモジュール内蔵型カード。



【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2008−117273(P2008−117273A)
【公開日】平成20年5月22日(2008.5.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−301520(P2006−301520)
【出願日】平成18年11月7日(2006.11.7)
【出願人】(000110217)トッパン・フォームズ株式会社 (989)
【Fターム(参考)】