説明

モジュール実装棚及びこれを有するアレイアンテナ装置

【課題】従来のアレイアンテナの場合、モジュールを交換する際に、複雑に入り組んだ多数の信号ケーブルをモジュールから取り外す必要があり、交換に時間を要した。また、ケーブルを工具を用いて取り外す空間が必要なため、実装密度に限界があった。
【解決手段】棚板23上に、アンテナ素子24を有する複数のモジュール25のみでなく、モジュール信号分配器26と制御基板27を固定し配線して、モジュール実装棚2を形成する。モジュール実装棚2をアンテナ筐体1内部に複数個挿入し着脱可能に取り付けた後、ケーブルを接続する。この結果、容易にモジュール実装棚2を引き出して交換・整備できるため、整備時間を短縮できる。また、ケーブルを取り外す空間を削減し高密度実装できる。更に、発熱したモジュールを液冷又は空冷する場合には、モジュール実装棚に簡素な冷却構造を形成することにより、標準化およびコスト低減できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、複数のアンテナ素子を有するモジュールをアレイ状に配設したアレイアンテナ装置の実装及び整備に関する。特に、モジュールを交換・整備し、モジュール内部から発生する熱を冷却する構造を備えたフェイズドアレイアンテナ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、この種のアレイアンテナ装置は、開口面に複数のアンテナ素子がアレイ状に配設され、各アンテナ素子には、それぞれ入出力信号の増幅及び切り替えを行う電子部品を有するモジュールと、信号を伝える信号ケーブルが接続されている。各モジュールに接続された複数の信号ケーブルはグループ分けされ、モジュール付近に配置され信号を分配する信号分配器に接続される。更に複数の信号分配器はグループ分けされ、1つの信号分配器グループは信号ケーブルを介して他の信号分配器に接続され合成される。この結果、ツリー状の複雑な回路が構成される。
【0003】
特に、電波信号がSバンド以上の高周波数帯域である場合には、開口面にアレイ状に配設された複数のアンテナ素子の配列間隔は電波の波長に依存するため、配列間隔が狭くなり、近接して配列される。従って、高密度な実装が要求され、ツリー状回路の複雑な信号ケーブルをアレイアンテナ装置内の限られたスペースに実装し、かつ各モジュールを交換・整備する必要がある。このような高周波電波は主に、小型、軽量化が要求される航空機、小型車載局などに搭載されるアンテナ装置に使用されている。
【0004】
例えば、特許文献1では、複数のアンテナ素子を所定位相差をもって信号分配器に接続して、アンテナフレーム内に実装することにより分配器ユニットを形成している。各分配器ユニットは、他の信号分配器と信号ケーブルを介して接続され合成されて、アンテナフレームに実装されている。この結果、分配器ユニットの数量やその配置などの変更により、開口面積、周波数特性および放射特性を容易に変更できる。更に、異種周波数、異偏波及び異間隔アンテナ素子を有する分配器ユニットを選択し組み合わせて配置することにより、様々な電気特性を設計変更により容易に得ることができる回路構成ユニット化されたフェイズドアレイアンテナが記載されている。
【0005】
また、特許文献2には、電子部品を内蔵するモジュールの発熱を液冷却する場合において、内部に冷媒流路を配管した縦及び横フレームを有する格子状のシャーシに、複数のモジュールを装着して放熱板を設けたブロックを挿入する。内部に冷媒が流れる縦及び横フレームと、内部に冷媒の封入されたブロックの放熱板とを接触させて冷却することにより、冷却性能及び整備性を向上できる電子機器が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平9−260930号公報(第1−14頁、第1図)
【特許文献2】特開2007−250752号公報(第1−9頁、第2図)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献1に開示された回路構成ユニット化されたフェイズドアレイアンテナによれば、異種周波数、異偏波及び異間隔アンテナ素子を有する分配器ユニットを組み合わせて配置することにより、様々な電気特性を設計変更により容易に得ることができるものの、モジュールの交換・整備性については考慮されていなかった。また、モジュールが内蔵する電子部品が発熱したときに、冷却できない問題点があった。
【0008】
また、特許文献2に開示された電子機器によれば、ブロックに装着された複数のモジュールを冷却でき、モジュールの整備性も向上している。しかし、複数のモジュールのみをブロック(グループ)化しているため、モジュールを交換・整備する際に、接続されている信号ケーブルが膨大かつ複雑に入り組んでしまい、信号ケーブルをモジュールから取り外す作業に時間を要していた。また、内部に冷媒流路を配管した縦及び横フレームを有する格子状のシャーシと、内部に冷媒の封入された放熱板を有するブロックなどの冷却部品が必要となり、冷却の構造が複雑で高価となる問題点があった。
【0009】
本発明は、上述の問題点を解決する為になされたものであり、高周波帯域に適した高密度実装が可能であると共に、簡単なケーブル配線作業のみを実施することにより短時間でモジュールを交換・整備でき、更に冷却の構造も簡素化できる、アレイアンテナ装置を得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明に係わるアレイアンテナ装置においては、モジュール実装棚の棚板上に、アンテナ素子を接続した複数のモジュールのみでなく、制御基板と第1の信号分配器とを固定し、分配ケーブルを配線して一群のモジュール実装棚を形成する。このモジュール実装棚をアンテナフレーム内に複数個挿入し着脱可能に取り付けた後、第2の信号分配器、その他電子装置とケーブルを介して接続してアレイアンテナ装置を構成する。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、従来は信号ケーブルの配線が複雑なためにモジュールの交換・整備が困難だった開口面中央部においても、容易に固定部品及び信号ケーブルを取り外しモジュール実装棚を引き出しできる。取り外した後に、モジュール実装棚の棚板上に固定されたモジュール等の部品を容易に交換できるため、作業時間を短縮でき、整備性が向上する。また、ケーブルを取り外すための工具を使用する空間を削減でき、高密度実装が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】この発明の実施の形態1に係るアレイアンテナ装置の構成を示す斜視図。
【図2】この発明の実施の形態1に係るアレイアンテナ装置の空冷方式を示す斜視図。
【図3】この発明の実施の形態1に係るアレイアンテナ装置の電気ブロック図。
【図4】この発明の実施の形態1に係るモジュール実装棚の空冷構造を示す斜視図。
【図5】この発明の実施の形態2に係るアレイアンテナ装置の液例方式を示す斜視図。
【図6】この発明の実施の形態2に係るモジュール実装棚の液冷構造を示す斜視図。
【図7】この発明の実施の形態3に係るアレイアンテナ装置の構成を示す斜視図。
【図8】この発明の実施の形態4に係る背面アクセス整備の構成を示す斜視図。
【発明を実施するための形態】
【0013】
実施の形態1.
本実施の形態は、アンテナ装置の背面側スペースが制限されているため、アンテナ開口面側(アンテナ前面側)からアクセスし、アレイアンテナ装置内部からモジュール実装棚を水平に引き出すことにより、モジュール実装棚上に固定されたモジュール等の部品を交換・整備する場合である。また、各モジュールが内蔵する電子部品が発熱するため、これを冷却する方式として空冷を採用している。図1は、本実施の形態1に係るアレイアンテナ装置の構成図であり、図1を用いて全体構成を説明する。アレイアンテナ装置は主に、アンテナ筐体1と、アンテナ筐体1の内部に着脱可能な状態で水平に収納される複数のモジュール実装棚2と、アンテナ筐体1の背面後方の離れた位置に配設された筐体信号分配器6、電源装置9、制御装置10、及び給電装置11と、これらを接続するケーブルを備えている。
【0014】
次に、モジュール実装棚2の構成を説明する。モジュール実装棚2は、アンテナ筐体1内部に、開口面側から水平に挿入され電気的に接続された後に、着脱可能に固定される。このために、モジュール実装棚2には、アンテナフレーム3の内部側面に設けられた複数のガイド4に接しつつ移動するしゅう動部品21と、モジュール実装棚2をアンテナ筐体1に水平に挿入した後に固定するための固定部品22が設けられている。モジュール実装棚2には、その棚板23上に、アンテナ素子24がそれぞれ接続された複数のモジュール25、モジュール信号分配器26、制御基板27がそれぞれ固定されている。棚板23の材料は、例えば強度を有しかつ軽量なアルミ合金である。モジュール25には、例えば、アンテナ素子、マイクロ波スイッチ、移相器、受信系の低雑音増幅器、送信系の高出力増幅器等のマイクロ波回路や、配線基板等の機能を有した電子部品が内蔵されている。複数のモジュール25は、モジュール信号分配器26及び基制御基板27と複数のモジュール分配ケーブル28を介して接続している。
【0015】
次に、アンテナ筐体1の構成を説明する。アンテナ筐体1はアンテナフレーム3と、複数のガイド4を有している。アンテナフレーム3は、アンテナ筐体1の枠体であり、内部に複数のモジュール実装棚2を水平方向に収納している。ガイド4は、アンテナフレーム3の内部側面に取り付けられ、モジュール実装棚2のしゅう動部品21と接しつつ、モジュール実装棚2を水平方向に保持している。
【0016】
次に、アレイアンテナ装置背面部の構成を説明する。アレイアンテナ装置の背面部には、内蔵した電子部品が発熱しているモジュール25を通過した冷却空気を排出するための冷却空気ダクトエリア5が配置される。冷却空気ダクトエリア5の後方には筐体信号分配器6が配設されており、各モジュール実装棚2上に取り付けられたモジュール信号分配器26は、筐体信号分配器6と筐体分配ケーブル7を介して接続される。また、各モジュール実装棚2に取り付けられた制御基板27には、電源・制御ケーブル8が接続される。筐体分配ケーブル7及び電源・制御ケーブル8は、冷却空気ダクトエリア5において配線を引き回しされる。電源・制御ケーブル8は冷却空気ダクトエリア5の後方に配設された電源装置9及び制御装置10に接続され、筐体分配ケーブル7は冷却空気ダクトエリア5の後方に配設された給電装置11に接続される。
【0017】
次に、図2を用いて、本実施の形態における空冷方式の構成を説明する。アンテナ筐体1の背面に位置して、冷却空気ダクトエリア5の側面を囲むように冷却空気ダクト12を設ける。冷却空気ダクト12の上方に位置する天井面にはブロア13を設ける。従って、冷却空気は、図2に矢印で示すように、アレイ開口面から流入し、モジュール実装棚2を通過して複数の発熱したモジュール25を冷却する。その後、冷却空気は、冷却空気ダクト12に流れ込み、天側に位置するブロア13に吸い込まれ外部に排出される。
【0018】
図3には、本実施の形態1に係るアレイアンテナ装置の電気ブロック図と各構成品を示す。図に基づき信号の流れを、まず、送信する場合について説明する。入出力信号を送受信する給電装置11が送信した信号は、アンテナ筐体1の後方に配設された筐体信号分配器6が、筐体分配ケーブル7を介して各モジュール実装棚2が有するモジュール信号分配器26へそれぞれ信号分配する。各モジュール実装棚2において、信号はモジュール信号分配器26へ送られた後、更に、モジュール分配ケーブル28を介して、複数のモジュール25へ信号分配される。送信信号は、各モジュール25にて増幅された後、接続している各アンテナ素子24から放射される。
【0019】
次に、制御信号、電源の流れを説明する。各アンテナ素子24の位相や振幅を制御する制御装置10から送信される制御信号及び電源装置9から供給された電源は、電源・制御ケーブル8を介して、各モジュール実装棚2に固定された制御基板27に供給され、制御基板27において信号分配された後、各モジュール25に供給される。
【0020】
次に、受信する場合の信号の流れを説明する。各アンテナ素子24が受信した信号は、送信とは逆の経路を通過して、各モジュール実装棚2が有するモジュール信号分配器26にて合成され、更に筐体信号分配器6において最終的に合成される。
【0021】
本発明において、モジュールを交換・整備する方法として、不良と判明したモジュール実装棚をアンテナ筐体1から取り外し、良品と交換する場合について説明する。交換されたモジュール実装棚の不良品は、現地にて、或いは整備工場に運搬された後に、故障診断を実施する。その結果、特定のモジュールなどの部品が不良と判明した場合には、例えば不良と判明したモジュールを取り外し、良品と交換することにより整備又は修理される。
【0022】
更に不良と判明したモジュールを交換・整備する手順の詳細を次に説明する。まず、アンテナ筐体1の後方から筐体分配ケーブル7を各モジュール実装棚2に固定されたモジュール信号分配器26から取り外す。筐体分配ケーブル7は、モジュール信号分配器26で信号分配される前のため、ケーブル本数も少なく、また、筐体分配ケーブル7は冷却空気ダクトエリア5で引き回されるため、整備スペースも広くなっている。従って、筐体分配ケーブル7をモジュール信号分配器26から容易に取り外すことができる。次に、各モジュール実装棚2に取り付けられた制御基板27から電源・制御ケーブル8を取り外す。各モジュール25への電源・制御信号は、モジュール実装棚2に取り付けられた制御基板27にて分配されているため、制御・信号ケーブル24の本数は少なく、取り外しが容易である。
【0023】
その後、アレイアンテナ装置の開口面側(前方)から、アンテナフレーム3とモジュール実装棚2を固定している固定部品22を取り外し、モジュール実装棚2をアレイアンテナ装置の開口面側(前方)に引き出す。取り外したモジュール実装棚2を、予め準備しておいた良品と交換する。交換されたモジュール実装棚2の不良品は、その場で、或いは整備工場に運搬された後に、整備される。特定のモジュールが不良と判明し交換する際には、モジュール25に接続されているモジュール分配ケーブル28を取り外す。次に、モジュール25を固定しているモジュール固定ネジ29を取り外し、制御基板27からモジュール25を取り外して、予め準備しておいた良品のモジュール25と交換する。
【0024】
図4は、モジュール実装棚2に空冷用フィン14を設けた例を示す斜視図である。空冷用フィン14は、棚板23の底面に、モジュール実装棚2の引き出す方向に向けて設けられている。従って、図2に示すように、アンテナ筐体1の開口面から流入した冷却空気は冷却フィン14の側面に沿って抵抗無く流れ、冷却空気ダクトエリア5を通過し、ブロア13から吸い込まれ、外部へ排気される。なお、空冷用フィン14は、棚板23と分離して製作され、棚板23の底面に固定される。或いは、棚板23と一体化して製作して、空冷用フィン14を形成することも可能である。このように、モジュール実装棚2の棚板23に空冷用フィン14を比較的簡素な構造で形成できる。
【0025】
また、モジュール実装棚2を取り外し良品と交換する際に、電気的にも容易に接続・切断可能なように、棚板23上に、コネクタを設けることも好適である。このコネクタは、棚板23上において、モジュール信号分配器26及び制御基板27と接続される。モジュール実装棚2をアンテナ筐体1に取り付けた後に、当該コネクタは、筐体信号分配器6、電源装置9、制御装置10、及び給電装置11とケーブルを介して接続され、この接続を容易に接続・切断できる。この結果、モジュール実装棚2の交換時間が削減され、更に整備性が向上する。
【0026】
本実施の形態においては、従来は信号ケーブルの配線が複雑なためにモジュールの交換・整備が困難だった開口面中央部においても、ケーブルを取り外しモジュール実装棚を引き出すことにより、不良となったモジュール実装棚を良品と容易に交換できる。
【0027】
交換したモジュール実装棚を整備するために、不良と判明したモジュールを交換する際には、水平方向にモジュールが配列され固定されているため、接続されている複数のモジュール分配ケーブルを容易に取り外すことができ、作業時間が削減され整備性が著しく向上する。また、交換が必要な特定のモジュール以外のモジュールに接続されたモジュール分配ケーブルが、モジュール交換・整備時に邪魔にならないため、ケーブルを取り外すための工具スペースも少なくて済み、特に高周波数帯域の場合に要求される高密度実装及び小型化も可能となる。
【0028】
更に、モジュール実装棚の棚板に空冷用フィンを簡素な構造で設けることが可能なため、コストを削減できると共に、モジュール実装棚の冷却性能も向上できるという、優れた効果を奏する。
【0029】
実施の形態2.
本実施の形態は、実施の形態1で採用した空冷方式に替わり、液冷方式を採用する場合である。液冷用配管内部に冷却液として、防錆剤と不凍液(エチレングリコールなど)入りの混合液などを流し、モジュール実装棚2上の発熱したモジュール25を冷却するものである。図5は、本実施の形態2に係るアレイアンテナ装置の液冷方式の全体構成を示す斜視図である。図6は、本実施の形態におけるモジュール実装棚2の構成詳細を示す斜視図である。
【0030】
図6において、まず、モジュール実装棚2の構成を説明する。図に示すモジュール実装棚2において、発熱しているモジュール25を固定している領域付近を冷却液が通過するように、その棚板31内部に冷却液流路32を設ける。棚板31は、図に示すように、冷却液の流路となる溝を形成した溝付き棚板31bと、実施の形態1における棚板23と類似して複数のモジュール25、モジュール信号分配器26、制御基板27が固定され配線されている棚板31aを有する。溝付き棚板31bと棚板31aは、例えば接合された後に、内部の冷却液が漏れないように周囲をシールされて、冷却液流路32を有する棚板31を形成している。冷却液流路32の端部であり冷却液が流入する冷却液流入口32a及び冷却液が排出する冷却液排出口32bは、それぞれ冷却液カプラ33を有しているため、モジュール実装棚2内部の冷却液流路32とその外部に位置する冷却液配管51とは容易に着脱可能に接続されている。
【0031】
図5に示すように、冷却液配管51は、各モジュール実装棚2へ分岐して流入するために、冷却液分岐配管51aを有する。また、各モジュール実装棚2内部を流れて排出した後合流するために、冷却液合流配管51bを有する。従って、各モジュール実装棚2が有する冷却液流入口32aは、各々冷却液分岐配管51aと接続し、各モジュール実装棚2が有する冷却液排出口32aは、各々冷却液合流配管51bと接続している。その後、冷却液配管51は、冷却液ポンプ52と接続される。
【0032】
次に、このように構成された冷却液配管51内部を流れる冷却液の流れについて説明する。冷却液ポンプ52から供給された冷却液は、冷却液配管51内部を流れ、冷却液分岐配管51aを通過し、各モジュール実装棚2の冷却液流入口32aから、冷却液カプラ33を介して、冷却液流路32へ流入する。発熱しているモジュール25は、棚板31内部の冷却液流路32を流れる冷却液により冷却される。冷却液は、冷却液排出口32bから、冷却液カプラ33を介して、冷却液合流配管51b、冷却液配管51へと排出され、冷却液ポンプ52に戻る。
【0033】
不良と判明したモジュール実装棚2を取り外す際には、当該モジュール実装棚2の背面から冷却液分岐配管51a、冷却液合流配管51bをそれぞれ冷却液流入口32a、冷却液排出口32bが有する冷却液カプラ33から取り外し、モジュール実装棚2を引き出す。その他のモジュール交換・整備手順は、実施の形態1と同様である。
【0034】
本実施の形態においては、モジュール実装棚の棚板を、その内部に冷却水流路を設けて冷却板と兼用することにより、発熱した複数のモジュールの領域付近に、冷却液を流すことにより液冷却が可能となり、冷却性能が向上する。また、本アレイアンテナ装置に簡素な構造で冷却配管系を追加できるため、液冷方式のアレイアンテナ装置の低コスト化を実現できる。
【0035】
実施の形態3.
図7は、本実施の形態3に係るアレイアンテナ装置の構成を示す斜視図である。実施の形態1では、モジュール実装棚2をアンテナ筐体1の内部に水平方向に収納配置する構成とした。本実施の形態は、実施の形態1において、モジュール実装棚2をアンテナ筐体1の内部に鉛直方向に収納配置する構成としたものである。従って、アンテナ筐体1が有する複数のガイド4は、アンテナフレーム3の鉛直方向にモジュール実装棚2を収納するように設けられている。また、モジュール実装棚2には、棚板23を固定するカードロックリテイナ61(棚板固定部品)を取り付ける。
【0036】
モジュール実装棚2をアンテナフレーム3へ固定する際には、モジュール実装棚2に取り付けられたカードロックリテイナ61のネジを締め付けることにより、隣り合ったガイド4間の隙間を埋めて、モジュール実装棚2をガイド4に押し付けて固定する。
【0037】
不良と判明したモジュールを交換・整備するために、モジュール実装棚2を引き出す際には、カードロックリテイナ61のネジを緩めた後に引き出す。その他のモジュール交換・整備手順は実施形態1と同様である。
【0038】
以上のように、モジュール実装棚2をアンテナ筐体1に鉛直方向に配置して収納することにより、アンテナの開口面積、素子配列などに制約条件が有るために、モジュール実装棚2をアンテナ筐体1に対して、水平方向に配置できない場合であっても、実施の形態1と同様の効果を奏する。また、本実施の形態では、実施の形態1と同様に空冷する場合を示した。しかし、実施の形態2と同様に液冷する場合であっても、モジュール実装棚2をアンテナ筐体1に鉛直方向に収納配置することは可能であり、同様の効果を奏する。
【0039】
実施の形態4.
実施の形態1は、アレイアンテナ装置背面側のスペースが制限されているため、アンテナ開口面側(アンテナ前面側)からアクセスして整備する場合だった。これに対し、本実施の形態は、アンテナ開口面側からはアクセスが難しいため、アンテナ背面側の後方からアクセスしてモジュール実装棚を引き出し、不良モジュールを交換・整備する場合である。また、実施の形態1と同様に空冷方式の場合について、説明する。
【0040】
図8は、本実施の形態4において、アレイアンテナ装置の背面側からアクセスしてモジュール実装棚2を整備する場合の構成を示す背面側から見た斜視図であり、これを用いて構成を説明する。モジュール実装棚2は、アンテナ筐体1内部に設けられた複数のガイド4と接触して保持されており、その背面側に設けられた固定部品81を介して、アンテナ筐体1に取り付けられている。固定部品81は、例えばその先端部にネジを有しアンテナ筐体1の背面側にネジ止めするための部品である。アンテナ背面側に設けられた冷却空気ダクトエリア5を利用して、このスペースにモジュール実装棚2を引き出し、取り外すために必要なエリアである取り外しスペース71を確保する。この取り外しスペース71において、筐体分配ケーブル72、電源・制御ケーブル73を引き回す。また、図に示すように、当該取り外しスペース71の外部後方に、筐体信号分配器6、電源装置9、制御装置10、給電装置11を配設する。或いは、モジュール実装棚2の取り外しスペース71の外部側面方向に、筐体信号分配器6、電源装置9、制御装置10、給電装置11を配設しても好適である。
【0041】
次に、不良と判明したモジュール25の交換・整備要領を説明する。まず、アンテナ背面側からアレイアンテナ装置にアクセスし、不良と判明したモジュール実装棚2からモジュール信号分配器26に接続された筐体分配ケーブル72と、制御基板27に接続された電源・制御ケーブル73とを取り外す。その後、固定部品81を取り外し、モジュール実装棚2を引き出し、取り外しスペース71において良品と交換する。交換されたモジュール実装棚の不良品は、例えば整備工場に運搬された後に、不良と判明したモジュールを取り外し良品のモジュールと交換することにより整備される。
【0042】
本実施の形態の構成を採用すると、開口面側からはアクセスが難しい場合であっても、アレイアンテナ装置の構成を大きく設計変更せずに、アンテナ背面側からアクセスしてモジュール実装棚を引き出し、不良と判明したモジュール等の部品を交換・整備することが可能であり、作業性が著しく向上し、作業時間を削減できる。また、アンテナ開口面側からは電波を送信・受信するため、必ずアレイアンテナ装置を停止してアクセスする必要が有るのに対して、背面からアクセスする場合にはアレイアンテナ装置を停止しなくてもアクセスし作業が可能であるため、作業効率が向上する。
【0043】
以上、本発明は、発熱したモジュールを液冷する場合も、空冷する場合でも、モジュール実装棚に簡素な構造で、冷却構造を設けることができる。また、開口面側からアクセスして整備するばかりでなく、背面側からアクセスして整備することも、容易な設計変更により可能であるため、設計の流用、標準化ができ、コストを低減する効果を奏する。
【符号の説明】
【0044】
1 アンテナ筐体、2 モジュール実装棚、3 アンテナフレーム、
4 ガイド、5 冷却空気ダクトエリア、6 筐体信号分配器 (第2の信号部分配器)、7 筐体分配ケーブル(ケーブル)、8 電源・制御ケーブル(ケーブル)、
9 電源装置、10 制御装置、11 給電装置、
12 冷却空気ダクト、13 ブロア、14 空冷用フィン
21 しゅう動部品、22 固定部品、23 棚板、24 アンテナ素子、
25 モジュール、26 モジュール信号分配器 (第1の信号部分配器)、
27 制御基板、28 モジュール分配ケーブル(分配ケーブル)、
29 モジュール固定ネジ、
31 棚板、32 冷却液流路、33 冷却液カプラ、
51 冷却液配管、52 冷却液ポンプ、
61 カードロックリテイナ(棚板固定部品)、
71 取り外しスペース、72 筐体分配ケーブル(ケーブル)、
73 電源・制御ケーブル(ケーブル)、81 固定部品。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
棚板と、
アンテナ素子を有し前記棚板上に並設された複数のモジュールと、
前記棚板上に固定され、前記複数のモジュールと分配ケーブルを介して接続される第1の信号分配器及び制御基板と
を備えたモジュール実装棚。
【請求項2】
複数のアンテナ素子が開口面にアレイ状に配設され高周波電波を送受信するアレイアンテナ装置であって、
棚板、前記アンテナ素子を有し前記棚板上に並設された複数のモジュール、前記棚板上に固定され、前記複数のモジュールと分配ケーブルを介して接続される第1の信号分配器及び制御基板、を有する複数のモジュール実装棚と、
枠体であるアンテナフレーム、前記アンテナフレーム内部に設けられ前記複数のモジュール実装棚を保持する複数のガイド、を有するアンテナ筐体と、
前記複数のモジュール実装棚の前記第1の信号分配器とケーブルを介して接続される第2の信号分配器と、
前記複数のモジュール実装棚の前記制御基板とケーブルを介して接続される制御電源装置と、
前記第2の信号分配器とケーブルを介して接続される給電装置とを備え、
前記複数のモジュール実装棚が前記アンテナ筐体に開口面側から水平方向に着脱可能に取り付けられることを特徴とするアレイアンテナ装置。
【請求項3】
前記アンテナ筐体の背面後方に配設された冷却空気ダクトエリアを囲んで設けた冷却空気ダクトと、
前記冷却空気ダクトの天方向に設けたブロアと
を備えたことを特徴とする請求項2に記載のアレイアンテナ装置。
【請求項4】
前記棚板の内部に冷却液流路を具備したこと
を特徴とする請求項1に記載のモジュール実装棚。
【請求項5】
前記複数のモジュール実装棚は、前記棚板の内部に冷却液流路をそれぞれ具備するものとし、
前記複数のモジュール実装棚内の前記冷却液流路のそれぞれの入口部分に接続する冷却液分岐配管、前記複数のモジュール実装棚内の前記冷却液流路のそれぞれの出口部分に接続する冷却液合流配管、を有する冷却液配管と、
前記冷却液配管へ冷却液を供給する冷却液ポンプと
を更に備えたことを特徴とする請求項2に記載のアレイアンテナ装置。
【請求項6】
前記複数のモジュール実装棚が前記アンテナ筐体に開口面側から鉛直方向に着脱可能に取り付けられること
を特徴とする請求項2、請求項3又は請求項5のいずれかに記載のアレイアンテナ装置。
【請求項7】
前記アンテナ筐体の背面後方に設けた前記複数のモジュール実装棚を取り外すスペースの外部に、前記第2の信号分配器、前記制御電源装置、及び前記給電装置を配設し、
前記複数のモジュール実装棚が前記アンテナ筐体に背面側から水平方向又は鉛直方向に着脱可能に取り付けられること
を特徴とする請求項2、請求項3又は請求項5のいずれかに記載のアレイアンテナ装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2011−259148(P2011−259148A)
【公開日】平成23年12月22日(2011.12.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−131127(P2010−131127)
【出願日】平成22年6月8日(2010.6.8)
【出願人】(000006013)三菱電機株式会社 (33,312)
【Fターム(参考)】