説明

モデリング装置、磁気共鳴イメージング装置、モデリング方法、およびプログラム

【課題】フィッティングを高い精度で行うことができるフィッティング装置、および磁気共鳴イメージング装置を提供する。
【解決手段】再構成画像Irの微分画像Idを作成することによって、脳梁CCの輪郭OLを強調した後、微分画像Idに確率アトラスPAを乗算することによって、脳梁CCが抽出された脳梁画像Iccを作成する。その後、アフィン変換によって、輪郭モデルM1を脳梁CCの前端部Fの輪郭OFに位置合わせするとともに、輪郭モデルM2を脳梁CCの尾端部Tの輪郭OTに位置合わせし、アフィン変換された輪郭モデルM1およびM2を変形する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、モデル化を行うモデリング装置、磁気共鳴イメージング装置、モデリング方法、およびプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
患者の特徴部分をモデル化する方法として、対象とする特徴部分を点と線でモデル化するASM(Active Shape Model)法が知られている(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2007-249280号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ASM法を用いて患者の脳の特徴部分をモデル化する場合、脳の特徴部分の基準となる基準データを用意し、脳の特徴部分の基準データを、患者の脳の特徴部位に対してフィッティングする必要がある。フィッティングの方法としては、例えば、患者の脳の微分画像に基づいて、基準データを特徴部位にフィッティングする方法がある。しかし、微分画像に基づいてフィッティングを行うと、特徴部位の付近に大きな微分値が存在する場合、フィッティングがうまくできないことがある。
【0005】
本発明は、上記の事情に鑑み、フィッティングを高い精度で行うことができるモデリング装置、磁気共鳴イメージング装置、モデリング方法、およびプログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の問題を解決する本発明のモデリング装置は、
複数の部位を含む画像の中の所定の部位の輪郭を強調する輪郭強調手段と、
前記所定の部位の輪郭が強調された前記画像の中から、前記所定の部位を抽出する抽出手段と、
抽出された前記所定の部位の特徴部分と、前記所定の部位の特徴部分のモデルとのフィッティングを行うフィッティング手段と、
を有する。
また、本発明のモデリング方法は、
複数の部位を含む画像の中の所定の部位の輪郭を強調する輪郭強調ステップと、
前記所定の部位の輪郭が強調された前記画像の中から、前記所定の部位を抽出する抽出ステップと、
抽出された前記所定の部位の特徴部分と、前記所定の部位の特徴部分のモデルとのフィッティングを行うフィッティングステップと、
を有する。
また、本発明のプログラムは、
複数の部位を含む画像の中の所定の部位の輪郭を強調する輪郭強調処理と、
前記所定の部位の輪郭が強調された前記画像の中から、前記所定の部位を抽出する抽出処理と、
抽出された前記所定の部位の特徴部分と、前記所定の部位の特徴部分のモデルとのフィッティングを行うフィッティング処理と、
を計算機に実行させるためのプログラムである。
【発明の効果】
【0007】
本発明は、所定の部位の輪郭が強調された画像の中から、輪郭が強調された所定の部位を抽出した後にフィッティングを行っている。したがって、所定の部位の周囲のデータを除外してフィッティングが行われるので、抽出された所定の部位の特徴部分と、特徴部分のモデルとを、より正確にフィッティングすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】本発明の第1の実施形態の磁気共鳴イメージング装置1の概略図である。
【図2】MRI装置1の動作フローを示す図である。
【図3】再構成された画像の一例を示す図である。
【図4】脳梁CCの輪郭OLが強調された画像を示す一例である。
【図5】確率アトラスの一例を示す図である。
【図6】微分画像Idに確率アトラスPAを乗算することによって得られる脳梁画像Iccを示す図である。
【図7】2つの輪郭モデルを概略的に示す図である。
【図8】輪郭モデルM1をアフィン変換する前後の様子を示す図である。
【図9】輪郭モデルM1を変形する前後の様子を示す図である。
【図10】輪郭モデルM2をアフィン変換する前後の様子を示す図である。
【図11】輪郭モデルM2を変形する前後の様子を示す図である。
【図12】設定されたスライスの一例を示す図である。
【図13】第2の実施形態において、微分画像Id(図4参照)から脳梁CCを抽出するために使用されるアトラスを示す概略図である。
【図14】重付け確率アトラスWIを微分画像Id(図4参照)に乗算することによって得られる脳梁画像Icc’を示す図である。
【図15】第3の実施形態において、微分画像Id(図4参照)から脳梁CCを抽出するために使用されるアトラスを示す概略図である。
【図16】微分確率アトラスDIを微分画像Id(図4参照)に乗算することによって得られる脳梁画像Icc’’を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の実施形態について説明するが、本発明は、以下の実施形態に限定されることはない。
【0010】
(1)第1の実施形態
図1は、本発明の第1の実施形態の磁気共鳴イメージング装置1の概略図である。
【0011】
磁気共鳴イメージング装置(以下、MRI(Magnetic Resonance Imaging)装置と呼ぶ)1は、コイルアセンブリ2と、テーブル3と、受信コイル4と、制御装置5と、入力装置6と、表示装置7とを有している。
【0012】
コイルアセンブリ2は、被検体8が収容されるボア21と、超伝導コイル22と、勾配コイル23と、送信コイル24とを有している。超伝導コイル22は静磁場B0を印加し、勾配コイル23は勾配パルスを印加し、送信コイル24はRFパルスを送信する。
【0013】
テーブル3は、クレードル31を有している。クレードル31は、z方向および−z方向に移動するように構成されている。クレードル31がz方向に移動することによって、被検体8がボア21に搬送される。クレードル31が−z方向に移動することによって、ボア21に搬送された被検体8は、ボア21から搬出される。
【0014】
受信コイル4は、被検体8の頭部8aに取り付けられている。受信コイル4が受信したMR(Magnetic Resonance)信号は、制御装置5に伝送される。
【0015】
制御装置5は、コイル制御手段51〜スライス設定手段58を有している。
【0016】
コイル制御手段51は、パルスシーケンスが実行されるように、勾配コイル23および送信コイル24を制御する。
【0017】
再構成手段52は、受信コイル4が受信したMR(Magnetic Resonance)信号に基づいて、画像を再構成する。
【0018】
輪郭強調手段53は、再構成手段52によって再構成された画像の中の所定の部位の輪郭を強調する。
【0019】
抽出手段54は、所定の部位の輪郭が強調された後の画像(図4参照)の中から、輪郭が強調された所定の部位(例えば、脳梁)を抽出する。
【0020】
メモリ55は、後述する確率アトラスPA(図5参照)および輪郭モデルM1およびM2(図7参照)を記憶する。
【0021】
フィッティング手段56は、抽出手段54によって抽出された所定の部位の特徴部分と、輪郭モデルM1およびM2とのフィッティングを行う。このため、フィッティング手段56は、アフィン変換手段561および変形手段562を有している。
【0022】
アフィン変換手段561は、輪郭モデルM1およびM2を、抽出手段54によって抽出された所定の部位の特徴部分に基づいてアフィン変換する。
【0023】
変形手段562は、アフィン変換された輪郭モデルM1およびM2を、抽出された前記所定の部位の特徴部分に基づいて変形する。
【0024】
特徴点決定手段57は、モデル化された所定の部位の輪郭の特徴点を決定する。
【0025】
スライス設定手段58は、特徴点決定手段57が決定した特徴点に基づいて、スライスを設定する。
【0026】
尚、コイル制御手段51〜スライス設定手段58は、各手段を実行するためのプログラムを制御装置5にインストールすることにより実現されている。ただし、プログラムを用いずに、ハードウェアのみで実現してもよい。
【0027】
入力装置6は、オペレータ9の操作に応じて、種々の命令を制御装置5に入力する。
【0028】
表示装置7は、種々の情報を表示する。
【0029】
MRI装置1は、上記のように構成されている。次に、MRI装置1の動作について説明する。
【0030】
図2は、MRI装置1の動作フローの一例を示す図である。
【0031】
ステップS1において、オペレータ9は入力装置6を操作して、制御装置5に撮影命令を入力する。制御装置5のコイル制御手段51(図1参照)は、撮影命令に応答して、被検体8の頭部8aが撮影されるように、勾配コイル23および送信コイル24を制御する。受信コイル4は、被検体8からのMR信号を受信する。受信したMR信号は、再構成手段52(図1参照)に伝送され、画像が再構成される。
【0032】
図3は、再構成された画像を概略的に示す図である。
【0033】
図3には、被検体8の頭部8aの再構成画像Ir(サジタル断面)が概略的に示されている。再構成画像Irの中央部分には、脳梁CCが存在している。画像が再構成された後、ステップS2に進む。
【0034】
ステップS2では、輪郭強調手段53(図1参照)が、図3に示すサジタル画像の脳梁CCの輪郭を強調する処理を実行する。
【0035】
図4は、脳梁CCの輪郭OLが強調された画像を示す一例である。
【0036】
第1の実施形態では、後述するステップS4において、輪郭モデルM1およびM2(図7参照)を、脳梁CCの輪郭OLにフィッティングする処理が行われるので(図8〜図11参照)、その前処理として、ステップS2では、脳梁CCの輪郭OLを強調する処理が行われる。第1の実施形態では、再構成画像Ir(図3参照)の微分画像Idを作成することによって、脳梁CCの輪郭OLを強調している。微分画像Idでは、MR信号の信号値が急激に変化する部分が強調して描出される。脳梁CCの輪郭OLは信号値が急激に変化するので、脳梁CCの輪郭OLは強調して描出される。図4では、脳梁CCの輪郭OLが、脳梁CCの内側の部分よりも白く描出されており、脳梁CCの輪郭OLが強調されていることが分かる。したがって、再構成画像Ir(図3参照)よりも、脳梁CCの輪郭OLが強調されている微分画像Id(図4参照)を用いた方が、輪郭モデルM1およびM2(図7参照)と脳梁CCの輪郭OLとのフィッティングを容易に行うことができる。ただし、微分画像Idに基づいてフィッティングを行うと、脳梁CCの近くに大きな微分値が存在する場合、フィッティングがうまくできないことがある。微分画像Idを参照すると、脳梁CCの周囲に、微分値の大きい画素(白く描出されている画素)が存在する。したがって、微分画像Idに基づいてフィッティングを行うと、脳梁CCの周囲に存在する微分値の大きい画素によって、高い精度でフィッティングを行うことができない恐れがある。そこで、第1の実施形態では、フィッティングの精度を高めるために、後述するステップS4においてフィッティング処理を行う前に、微分画像Idの中から、輪郭OLが強調された脳梁CCを抽出する。脳梁CCを抽出するために、微分画像Idを作成した後、ステップS3に進む。
【0037】
ステップS3では、抽出手段54(図1参照)が、微分画像Idの中から、輪郭OLが強調された脳梁CCを抽出する。抽出手段54は、脳梁CCを抽出するために、確率アトラスを使用する。確率アトラスは、微分画像Idの各画素が脳梁CCに属している確率を画素値で表す画像データであり、メモリ55(図1参照)に記憶されている。抽出手段54は、メモリ55から、確率アトラスを読み出す。
【0038】
図5は、確率アトラスの一例を示す図である。
【0039】
確率アトラスPAは、複数の画素によって構成されている。確率アトラスPAは、例えば、複数人の被検体から得られた脳梁の解剖学的データに基づいて決定される。図5では、確率アトラスPAの画素の色が白ければ白いほど、微分画像Idの対応する画素が脳梁CCに属している確率が高いことを意味する。
【0040】
抽出手段54は、微分画像Id(図4参照)に確率アトラスPAを乗算する。
【0041】
図6は、微分画像Idに確率アトラスPAを乗算することによって得られる脳梁画像Iccを示す図である。
【0042】
脳梁画像Iccを作成することによって、脳梁CCの周囲に微分値の大きい画素が存在しても、このような画素は、脳梁画像Iccから排除される。脳梁画像Iccは、後述するステップS4において、脳梁CCの前端部Fの輪郭OFと、脳梁CCの尾端部Tの輪郭OTとをモデル化する際に使用されるものである。脳梁CCを抽出した後、ステップS4に進む。
【0043】
ステップS4では、脳梁画像Iccに基づいて、脳梁CCの前端部Fの輪郭OFと、脳梁CCの尾端部Tの輪郭OTとのモデル化が行われる。このモデル化は、2つの輪郭モデルを用いて行われる。以下に、これらの2つの輪郭モデルについて説明する。
【0044】
図7は、2つの輪郭モデルを概略的に示す図である。
【0045】
図7(a)は、脳梁CCの前端部Fの輪郭OFをモデル化するための輪郭モデルM1であり、図7(b)は、脳梁CCの尾端部Tの輪郭OTをモデル化するための輪郭モデルM2である。2つの輪郭モデルM1およびM2は、点と曲線とによって表されたモデルである。輪郭モデルM1は、5つの点P11〜P15と、4つの曲線L11〜L14とによって表されており、輪郭モデルM2は、5つの点P21〜P25と、4つの曲線L21〜L24とによって表されている。輪郭モデルM1およびM2は、メモリ55に記憶されている。
【0046】
ステップS4では、輪郭モデルM1を脳梁CCの前端部Fの輪郭OFにフィッティングすることにより、輪郭OFをモデル化し、更に、輪郭モデルM2を脳梁CCの尾端部Tの輪郭OTにフィッティングすることにより、輪郭OTをモデル化している。ステップS4は、輪郭モデルM1およびM2のフィッティングを行うために、3つのサブステップS41、S42、およびS43を有している(図2参照)。以下に、各サブステップS41、S42、およびS43について説明する。
【0047】
サブステップS41では、アフィン変換手段561(図1参照)が、メモリ55から、輪郭モデルM1を読み出し、輪郭モデルM1を、脳梁画像Iccにおける脳梁CCの前端部Fの輪郭OFに対して位置決めするためのアフィン変換を行う。
【0048】
図8(a)は、輪郭モデルM1を脳梁画像Iccの脳梁CCに対してアフィン変換する前の様子を示す図、図8(b)は、輪郭モデルM1を脳梁画像Iccの脳梁CCにアフィン変換した後の様子を示す図である。
【0049】
アフィン変換手段561は、アフィン変換によって、輪郭モデルM1を、脳梁画像Iccにおける脳梁CCの前端部Fの輪郭OFに対して位置合わせする。図8(a)および(b)を比較すると、アフィン変換によって、輪郭モデルM1が、脳梁CCの前端部Fの輪郭OFに対して位置合わせされていることが分かる。また、第1の実施形態では、脳梁画像Iccを用いて輪郭モデルM1を位置合わせしている。したがって、脳梁CCの周囲に微分値の大きい画素が存在しても、このような画素は、脳梁画像Iccから排除されるので、輪郭モデルM1を、脳梁CCの前端部Fの輪郭OFに確実に位置合わせすることができる。
【0050】
尚、輪郭モデルM1は、脳梁CCの前端部Fの輪郭OFをモデル化するためのものである。したがって、輪郭モデルM1が、脳梁CCの前端部Fとは異なる部分(例えば、脳梁CCの尾端部T)に位置合わせされてしまうと、脳梁CCの前端部Fの輪郭OFを正しくモデル化することができない。そこで、第1の実施形態では、輪郭モデルM1の5つの点P11〜P15のX座標の値がX=X1を超えないという制約条件の下で、輪郭モデルM1をアフィン変換している。このような制約条件の下で輪郭モデルM1をアフィン変換することによって、輪郭モデルM1を、脳梁CCの前端部Fの輪郭OFに、より確実に位置合わせすることができる。
【0051】
ただし、脳梁CCの形状は個人差があるので、輪郭モデルM1をアフィン変換しただけでは、輪郭モデルM1と脳梁CCの前端部Fの輪郭OFとのフィッティングの精度が十分に得られないことがある。そこで、第1の実施形態では、アフィン変換した後の輪郭モデルM1を、脳梁CCの前端部Fに基づいて変形する。この変形を行うために、サブステップS42に進む。
【0052】
サブステップS42では、変形手段562(図1参照)が、アフィン変換した後の輪郭モデルM1を、脳梁CCの前端部Fに基づいて変形する。
【0053】
図9(a)は、アフィン変換した後の輪郭モデルM1を、脳梁CCの前端部Fに基づいて変形する前の様子を示す図、図9(b)は、アフィン変換した後の輪郭モデルM1を、脳梁CCの前端部Fに基づいて変形した後の様子を示す図である。
【0054】
図9から、変形処理によって、輪郭モデルM1が、脳梁CCの前端部Fの輪郭OFに対して精度よくフィッティングしていることが分かる。
【0055】
輪郭モデルM1のフィッティングが終了した後、サブステップS43に進む。
【0056】
サブステップS43では、輪郭モデルM1およびM2の両方のモデルについて、フィッティングが終了したか否かが判断される。上記の説明では、輪郭モデルM1のフィッティングは終了したが、輪郭モデルM2のフィッティングはまだ終了していないので、サブステップS41に戻る。
【0057】
サブステップS41では、アフィン変換手段561が、メモリ55から、輪郭モデルM2を読み出し、輪郭モデルM2を脳梁CCの尾端部Tの輪郭OTに対して位置決めするためのアフィン変換を行う。
【0058】
図10(a)は、輪郭モデルM2をアフィン変換する前の様子を示す図、図10(b)は、輪郭モデルM2をアフィン変換した後の様子を示す図である。
【0059】
アフィン変換手段561は、アフィン変換によって、輪郭モデルM2を脳梁CCの尾端部Tの輪郭OTに対して位置合わせする。図10(a)および(b)を比較すると、アフィン変換によって、輪郭モデルM2が、脳梁CCの尾端部Tの輪郭OTに対して位置合わせされていることが分かる。また、第1の実施形態では、脳梁画像Iccを用いて輪郭モデルM2を位置合わせしている。したがって、脳梁CCの周囲に微分値の大きい画素が存在しても、このような画素は、脳梁画像Iccから排除されるので、輪郭モデルM2を、脳梁CCの尾端部Tの輪郭OTに確実に位置合わせすることができる。
【0060】
尚、輪郭モデルM2は、脳梁CCの尾端部Tの輪郭OTをモデル化するためのものである。したがって、輪郭モデルM2が、脳梁CCの尾端部Tとは異なる部分(例えば、脳梁CCの前端部F)に位置合わせされてしまうと、脳梁CCの尾端部Tの輪郭OTを正しくモデル化することができない。そこで、第1の実施形態では、輪郭モデルM2の5つの点P21〜P25のX座標の値がX=X1よりも小さくならないという制約条件の下で、輪郭モデルM2をアフィン変換している。このような制約条件の下で輪郭モデルM2をアフィン変換することによって、輪郭モデルM2を、脳梁CCの尾端部Tの輪郭OTに、より確実に位置合わせすることができる。
【0061】
輪郭モデルM2をアフィン変換した後、サブステップS42に進む。
【0062】
サブステップS42では、変形手段562(図1参照)が、アフィン変換した後の輪郭モデルM2を、脳梁CCの尾端部Tに基づいて変形する。
【0063】
図11(a)は、アフィン変換した後の輪郭モデルM2を、脳梁CCの尾端部Tに基づいて変形する前の様子を示す図、図11(b)は、アフィン変換した後の輪郭モデルM2を、脳梁CCの尾端部Tに基づいて変形した後の様子を示す図である。
【0064】
図11から、変形処理によって、輪郭モデルM2が、脳梁CCの尾端部Tの輪郭OTに対して精度よくフィッティングしていることが分かる。
【0065】
輪郭モデルM2を、脳梁CCの尾端部Tの輪郭OTにフィッティングさせた後、サブステップS43に進む。
【0066】
サブステップS43では、輪郭モデルM1およびM2の両方のモデルについて、フィッティングが終了したか否かが判断される。図11(b)に示すように、輪郭モデルM1およびM2の両方についてフィッティングが終了しているので、輪郭モデルM1およびM2の両方のモデルについて、フィッティングが終了したと判断される。輪郭モデルM1およびM2を脳梁CCにフィッティングさせることによって、脳梁CCの前端部Fの輪郭OFと、脳梁CCの尾端部Tの輪郭OTとをモデル化することができる。フィッティングが終了した後、ステップS5に進む。
【0067】
ステップS5では、特徴点決定手段57(図1参照)が、モデル化された脳梁CCの前端部Fの輪郭OFの特徴点と、尾端部Tの輪郭OTの特徴点とを抽出する。第1の実施形態では、脳梁CCの前端部Fの輪郭OFについては、輪郭モデルM1の点P12が特徴点として決定され、脳梁CCの尾端部Tの輪郭OTについては、輪郭モデルM2の点P23が特徴点として決定される(図11(b)参照)。2つの特徴点P12およびP23を決定した後、ステップS6に進む。
【0068】
ステップS6では、スライス設定手段58(図1参照)が、特徴点P12およびP23に基づいて、スライスを設定する。
【0069】
図12は、設定されたスライスの一例を示す図である。
【0070】
第1の実施形態では、スライス設定手段58は、特徴点P12およびP23を通過するスライスSrを設定し、このスライスSrを基準にして、等間隔に並ぶn枚のスライスS1〜Snを設定する。
【0071】
スライスが設定されたら、ステップS7に進み、設定されたスライスに基づいて、被検体8が撮影される。
【0072】
第1の実施形態では、微分画像Id(図4参照)から、確率アトラスPA(図5参照)を使って脳梁画像Icc(図6参照)を作成し、脳梁画像Iccに基づいて、輪郭モデルM1およびM2のアフィン変換を行っている。したがって、脳梁CCの周囲に微分値の大きい画素が存在しても、このような画素は、脳梁画像Iccから排除されるので、輪郭モデルM1およびM2を、脳梁CCの所望の部分に確実に位置合わせすることができる。
【0073】
尚、第1の実施形態では、脳梁CCの輪郭OLを強調するために、再構成画像Ir(図3参照)の微分画像Id(図4参照)を作成している。しかし、脳梁CCの輪郭OLを強調することができるのであれば、微分画像Idを作成する以外の方法を用いてもよい。
【0074】
また、第1の実施形態では、X座標の値がX=X1を超えないという制約条件の下で、輪郭モデルM1およびM2をアフィン変換している(図8および図10参照)。しかし、輪郭モデルM1およびM2を適切に位置決めすることができるのであれば、このような制約条件は不要である。
【0075】
また、第1の実施形態では、輪郭モデルM1およびM2をフィッティングするために、輪郭モデルM1およびM2をアフィン変換し、アフィン変換された輪郭モデルM1およびM2を変形しているが、別の方法でフィッティングを行ってもよい。
【0076】
更に、第1の実施形態では、輪郭モデルM1の点P12と、輪郭モデルM2の点P23を特徴点として決定しているが、別の点を特徴点として決定してもよい。
【0077】
(2)第2の実施形態
第1の実施形態では、ステップS3(図2参照)において、微分画像Id(図4参照)から脳梁CCを抽出するために、確率アトラスPA(図5参照)を使っている。しかし、確率アトラスPAとは別のアトラスを使って、脳梁CCを抽出してもよい。第2の実施形態では、確率アトラスPAとは別のアトラスを使って、脳梁CCを抽出する方法について説明する。
【0078】
図13は、第2の実施形態において、微分画像Id(図4参照)から脳梁CCを抽出するために使用されるアトラスを示す概略図である。
【0079】
図13に示すアトラスは、確率アトラスPA(図5参照)の各画素が表す確率に、各画素の位置に応じた重付けが付加されることにより得られる重付け確率アトラスWIである。重付け確率アトラスWIは、脳梁CCの上側Uに近い画素ほど、脳梁CCに属する確率が低く、脳梁CCの下側Lに近い画素ほど、脳梁CCに属する確率が高くなるように、重付けされている。
【0080】
第2の実施形態では、重付け確率アトラスWIを微分画像Id(図4参照)に乗算することによって、微分画像Idから脳梁CCを抽出している。
【0081】
図14は、重付け確率アトラスWIを微分画像Id(図4参照)に乗算することによって得られる脳梁画像Icc’を示す図である。
【0082】
重付け確率アトラスWIは、脳梁CCの上側Uに近い画素ほど、脳梁CCに属する確率が低く、脳梁CCの下側Lに近い画素ほど、脳梁CCに属する確率が高くなるように、重付けされている。したがって、脳梁CCの下側Lに位置している輪郭OFおよびOTを、脳梁CCの上側Uに位置している輪郭よりも強調することができる。このため、脳梁画像Icc’を用いて輪郭モデルM1およびM2をアフィン変換することによって、輪郭モデルM1およびM2を、脳梁CCの下側Lに位置している輪郭OFおよびOTに、より高い精度で位置決めすることができる。
【0083】
(3)第3の実施形態
第3の実施形態では、確率アトラスPAおよび重付け確率アトラスWIとは別のアトラスを使って、微分画像Id(図4参照)から脳梁CCを抽出する方法について説明する。
【0084】
図15は、第3の実施形態において、微分画像Id(図4参照)から脳梁CCを抽出するために使用されるアトラスを示す概略図である。
【0085】
図15に示すアトラスは、図13に示す重付け確率アトラスWIにおける確率の分布を表す関数を微分することにより求められた導関数の各画素の位置における値の分布を表すアトラス(以下、「微分確率アトラス」と呼ぶ)DIである。微分確率アトラスDIは、重付け確率アトラスWIと比較すると、脳梁CCの上側Uに近い画素の画素値が更に小さくなっている(画素が暗くなっている)。
【0086】
第3の実施形態では、微分確率アトラスDIを、微分画像Id(図4参照)に乗算することによって、微分画像Idから脳梁CCを抽出している。
【0087】
図16は、微分確率アトラスDIを微分画像Id(図4参照)に乗算することによって得られる脳梁画像Icc’’を示す図である。
【0088】
微分確率アトラスDIにおける脳梁CCの上側Uの画素(図15参照)は、重付け確率アトラスWIにおける脳梁CCの上側の画素(図13参照)よりも、画素値が小さくなっている(即ち、画素が暗く表示されている)。したがって、微分確率アトラスDIを用いて得られた脳梁画像Icc’’は、脳梁CCの下側Lに位置する輪郭OFおよびOTを更に強調することができる。このため、脳梁画像Icc’’を用いて輪郭モデルM1およびM2をアフィン変換することによって、輪郭モデルM1およびM2を、脳梁CCの下側Lに位置している輪郭OFおよびOTに、より高い精度で位置決めすることができる。
【0089】
尚、第1〜第3の実施形態では、脳梁CCの輪郭をモデル化するために輪郭モデルM1およびM2が使用されている。しかし、輪郭モデルM1およびM2とは異なる輪郭モデルを使用してモデル化を行ってもよい。例えば、輪郭モデルM1は5つの点P11〜P15を有しており、輪郭モデルM2は5つの点P21〜P25を有しているが、輪郭モデルは、必ずしも5つの点を有している必要は無く、4つ以下の点を有していてもよく、あるいは6つ以上の点を有していてもよい。
【0090】
更に、第1〜第3の実施形態では、脳梁CCに対して輪郭モデルM1およびM2をフィッティングする例が示されているが、本発明は、脳梁CC以外の部位に対して輪郭モデルをフィッティングする場合にも適用することができる。
【符号の説明】
【0091】
1 MRI装置
2 コイルアセンブリ
3 テーブル
4 受信コイル
5 制御装置
6 入力装置
7 表示装置
8 被検体
9 オペレータ
21 ボア
22 超伝導コイル
23 勾配コイル
24 送信コイル
31 クレードル
51 コイル制御手段
52 再構成手段
53 輪郭強調手段
54 抽出手段
55 メモリ
56 フィッティング手段
57 特徴点決定手段
58 スライス設定手段
561 アフィン変換手段
562 変形手段

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の部位を含む画像の中の所定の部位の輪郭を強調する輪郭強調手段と、
前記所定の部位の輪郭が強調された前記画像の中から、前記所定の部位を抽出する抽出手段と、
抽出された前記所定の部位の特徴部分と、前記所定の部位の特徴部分のモデルとのフィッティングを行うフィッティング手段と、
を有するモデリング装置。
【請求項2】
前記抽出手段は、
前記所定の部位の輪郭が強調された前記画像の各画素が前記所定の部位に属する確率を表す確率アトラスを用いて、前記所定の部位を抽出する、請求項1に記載のモデリング装置。
【請求項3】
前記確率アトラスは、前記所定の部位の輪郭が強調された前記画像の画素に対応する画素を有している、請求項2に記載のモデリング装置。
【請求項4】
前記輪郭抽出手段は、
前記確率アトラスに重付けが付加されることにより得られる重付け確率アトラスを用いて、前記所定の部位を抽出する、請求項3に記載のモデリング装置。
【請求項5】
前記重付け確率アトラスは、
前記確率アトラスの各画素が表す確率に、前記各画素の位置に応じた重付けが付加されている、請求項4に記載のモデリング装置。
【請求項6】
前記輪郭抽出手段は、
前記重付け確率アトラスの微分を用いて前記所定の部位を抽出する、請求項4又は5に記載のモデリング装置。
【請求項7】
前記フィッティング手段は、
前記特徴部分のモデルを、抽出された前記所定の部位の特徴部分に基づいてアフィン変換するアフィン変換手段と、
アフィン変換された前記特徴部分のモデルを、抽出された前記所定の部位の特徴部分に基づいて変形する変形手段と、
を有する、請求項1〜6のうちのいずれか一項に記載のモデリング装置。
【請求項8】
前記特徴部分のモデルは、複数の点を有しており、
前記アフィン変換手段は、
前記特徴部分のモデルの複数の点の座標値を限定する制約条件に従って、前記特徴部分のモデルをアフィン変換する、請求項7に記載のモデリング装置。
【請求項9】
前記所定の部位は、脳梁であり、
前記所定の部位の特徴部分は、脳梁の前端部の輪郭および/又は脳梁の尾端部の輪郭である、請求項1〜8のうちのいずれか一項に記載のモデリング装置。
【請求項10】
請求項1〜9のうちのいずれか一項に記載のモデリング装置を有する磁気共鳴イメージング装置。
【請求項11】
複数の部位を含む画像の中の所定の部位の輪郭を強調する輪郭強調ステップと、
前記所定の部位の輪郭が強調された前記画像の中から、前記所定の部位を抽出する抽出ステップと、
抽出された前記所定の部位の特徴部分と、前記所定の部位の特徴部分のモデルとのフィッティングを行うフィッティングステップと、
を有するモデリング方法。
【請求項12】
複数の部位を含む画像の中の所定の部位の輪郭を強調する輪郭強調処理と、
前記所定の部位の輪郭が強調された前記画像の中から、前記所定の部位を抽出する抽出処理と、
抽出された前記所定の部位の特徴部分と、前記所定の部位の特徴部分のモデルとのフィッティングを行うフィッティング処理と、
を計算機に実行させるためのプログラム。

【図1】
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【図2】
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【図7】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【公開番号】特開2010−253176(P2010−253176A)
【公開日】平成22年11月11日(2010.11.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−109345(P2009−109345)
【出願日】平成21年4月28日(2009.4.28)
【出願人】(300019238)ジーイー・メディカル・システムズ・グローバル・テクノロジー・カンパニー・エルエルシー (1,125)
【Fターム(参考)】