説明

モリブデンケイ化物タイプの加熱エレメントの製造方法

【課題】本質的にモリブデンケイ化物及びこの基本材料の合金を含有し、そしてその表面にアルミニウムオキシドを形成する加熱エレメント製造方法の提供。
【解決手段】シリコン、及びモリブデン化合物の混合物をアルミニウム化合物と混合することにより、実質的にMo(Si1−xAl及びAlを含む材料を製造することを特徴とし、シリコン及びモリブデン化合物はいずれも、Mo(Si1−yAlを含み、そしてAl又はAl(OH)から成るアルミニウム化合物のいずれかと混合され、所望によりSiO、Si、及びMoの1種以上と、あるいは又MoO及びAlそしてSi及び/又はSiOを含むシリコン及びモリブデン化合物と混合され、投入成分は共に少なくとも98%に対応する純度を有する。混合物は発熱性の反応を起こし、そして/又は焼結される。(x:0.4〜0.6の範囲)

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はモリブデンケイ化物タイプの加熱エレメントの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
モリブデンケイ化物タイプの電気抵抗エレメントは、スエーデン特許明細書0003512−1、および0004329−9に記載されている。0003512−1の特許明細書に従えば、加熱エレメントの抵抗体材料は、ペスト(pest)の形成が、そこで本質的に起こらないようにする程度に、アルミニウムが含まれているMo(Si1−XAlを含んでいる。
【0003】
このような材料は、400〜600℃の範囲の温度で操作されるとき、ペストが形成されないか、またはほんの僅かの量のペストしか形成されないことが見出されている。ペストは、MoSiとOからのMoOの形成のために形成される。
【0004】
何故ペストの形成が著しく減少、又は除去されるかという理由は、エレメントの表面上の、Alの、又はAlが豊富な層の形成によるものである。
【0005】
他の特許明細書0004329−9は、エレメントを高温で運転するとき、モリブデンケイ化物、およびこの基本材料の合金から本質的に成る有用な加熱エレメントが、この予想耐用年数を増大させるという方法を教えている。
【0006】
この特許明細書に従えば、加熱エレメントは、加熱エレメントの表面上に、酸化アルミニウムの層を安定に保ち、徐々に成長させるに十分な量のアルミニウムが含有されているからである。
【0007】
ひとつの好ましい態様に従えば、加熱エレメント材料は、Mo(Si1−XAlを含んでおり、xは0.2〜0.6の範囲にある。
【0008】
アルミニウムを含む、モリブデンケイ化物タイプの材料は、低温および高温の両方で、改善された腐食特性を有していることが見出されている。
【0009】
このような材料は、しばしばMoSi粉末をアルミノシリケートのような、酸化性の原材料と混合することによって作られる。原材料がベントナイトクレーの場合には、いわゆる溶解相焼結の方向に寄与する比較的低い融点が得られ、これはMoSiと、容積で15〜20パーセントに対応する割合のアルミニウムシリケートを含んでいる、密度の高い材料を結果として与えている。
【0010】
主に、SiOを含むベントナイトクレーは、Mo(Si1−XAlを含んでいる加熱エレメントの製造に用いることが出来る。Al−合金化されたケイ化物との焼結の際には、そこで化学交換反応が起こり、ここにおいて、SiよりもAlに対する酸素のより大きい結合性は、ケイ化物のAl放出、そして酸化相による吸い込みの結果として、アルミニウムシリケートのSi放出を、そしてケイ化物の入り込みをもたらす。この交換反応はまた、複合材料の焼結特性を改善する方向に役立っている。最終材料は、Alを実質的に使い尽くすMo(Si1−XAlを含んでおり、そしてそこでは、オキシド相は全ての本質的な要素中にAlを含んでいる。
【0011】
標準の製造の手順として、モリブデン、シリコン、およびアルミニウムを粉末状で混合すること、そして粉末混合物を通常遮蔽ガス雰囲気中で焼成することを含む。この結果として、Mo(Si1−yAlのケーキ状の物質が得られ、前記の交換反応の結果としての上の式中のyは、xよりも大きい。反応は発熱性である。その後、ケーキを破砕し、そして通常1〜20μmのオーダーの微小粒子サイズに粉砕する。この粉末を、湿式セラミック材料を形成するような、ベントナイトクレーと混合する。この材料を、その直径がその後の加熱エレメントの直径に対応するように、棒状の形に押し出し、そして乾燥する。この材料はその後、ベントナイト成分の溶融温度を超える温度で焼成される。
【0012】
しかしながら、この種のエレメントについては欠点がある。問題は、エレメントの表面上に形成する酸化物、すなわちAlが、時々、言い換えれば繰り返しの作業中にエレメントの表面から緩んで、はがれ落ち、あるいは剥げてひらひらと落ちてくることである。
【0013】
剥離する酸化物は、アルミニウムの継続される酸化に対し、その保護能力を乏しくしてしまい、これはエレメントの外側の表面をさらに早く痩せさせてしまう。更に、酸化物の剥離は、このようなエレメントを有するオーブン中で加熱処理された製品の、出来栄えや外観を著しく害するという危険と共に、エレメントが取り付けられているオーブンを汚染してしまう。従って、これは加熱の工程において、このようなエレメントの使用が制限されてしまう。
【0014】
この問題は、各々の二つのスエーデン特許明細書0201042−9及び0201043−7に教示の答えに従って解決される。
【0015】
スエーデン特許明細書0201042−9は、モリブデンケイ化物及びこの基本材料の合金を、実質的に含有する加熱エレメントの製造方法を教示している。この方法は、モリブデンアルミノケイ化物(Mo(Si1−yAl)を、SiOが少なくとも98%の純度である、SiOと混合するによって、主にMo(Si1−xAl、そしてAlを含む材料を製造することにより特徴付けられている。
【0016】
スエーデン特許明細書0201043−7は、これに対応する材料の製造法を教示しており、ここではベントナイトクレーが用いられ、シリコンジオキシド及びアルミニウムオキシドに加えられる。ベントナイトクレーは、2000ppmよりも少ない不純物含有量を示す。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0017】
驚くべきことに、室温と、高温例えば1500℃の間の繰り返しの運転の後、剥離することのない酸化物が、低い不純物質の精度(consistency)で得られるということが見出されたのである。本発明は、モリブデンケイ化物材料を構成しているこのような純粋なアルミニウム−オキシドが、上に与えられたものよりも、他の物質及び化合物を用いて、部分的に開始することによって、有利に製造することが出来ると言う洞察力に基礎を置いているのである。
【0018】
本発明の、モリブデンケイ化物及びその合金を本質的に含有する加熱エレメントの製造方法は、シリコン、及びモリブデン化合物の混合物を、アルミニウム化合物と混合することによって、本質的にMo(Si1−xAl及びAlを含む物質の製造工程を含むものである。
【0019】
本発明に従えば、シリコン及びモリブデンの化合物は、Mo(Si1−yAlを含み、そしてAl又はAl(OH)から成るアルミニウム化合物のいずれかと混合され、そして所望により一種又はそれ以上のSiO、Si及びMoOの化合物と混合される。
【0020】
第二の態様に従えば、シリコン及びモリブデンの化合物はMoO、及びAl、そしてSi、及び/又はSiOを含む。
【0021】
発明に従えば、投入する構成材料は共に、少なくとも98%の純度を有している。
【0022】
本発明の好ましい態様に従えば、投入構成材料は、少なくとも99%の純度を有している。
【0023】
混合物は、発熱性の反応を引き起こし、そして/又は焼結することによって、その結果交換反応が行われ、Mo(Si1−xAl化合物、及びAlを形成し、ここでxは0.4〜0.6の範囲になるようにされる。
【0024】
この方法によって、エレメント材料、即ち酸化アルミニウム構造物が得られ、そしてそのアルミニウムオキシドの層は、この文献の最初に問題として記載した、剥がれやフレークを生ずることは無いのである。
【0025】
一つの好ましい態様に従えば、xは0.45〜0.55の範囲にある。
【0026】
一つの好ましい態様に従えば、SiOは、シリケートに含まれており、シリケート中の残りの物質として、モリブデンのケイ化物は前記の物質又は複数の物質と合金を作ることは出来ないという性質を有し、そしてモリブデンケイ化物の結晶格子の対称性は保持されているというそのような特性を有している。
【0027】
材料物質Mo(Si1−xAlの中で、結晶格子の対称性を変化させることなく、モリブデンを部分的にRe、W、又はNbで置き換えることが可能である。
【0028】
モリブデンを、ほぼ1/3に相当する量で、タングステン(W)と置き換えることが出来る。
【0029】
一つの好ましい態様に従えば、1つ又はそれ以上の以下のような焼結助剤、MGO、CaO、SiO、及びYを混合物に添加することが出来る。
【0030】
かくして本発明は、前置きで述べた問題点を解決するものであり、そして本発明のエレメントは、処理された材料に損傷を与えることなく、有利にオーブン中に用いることが可能となるのである。
【0031】
本発明は、添付の請求の範囲の中で種々の変化を行うことが出来るものであって、先に記載の態様に限定すると考えるものではない。


【特許請求の範囲】
【請求項1】
加熱エレメントを製造する方法であって、モリブデンのケイ化物、及びこの基本材料の合金を本質的に含有し、その表面にアルミニウムオキシドを形成するものであって、シリコン及びモリブデン化合物の混合物を、アルミニウム化合物と混合することによって、実質的にMo(Si1−xAl及びAlを含む材料を製造することを特徴とする方法であり;ここにおいて、シリコン及びモリブデン化合物はいずれも、Mo(Si1−yAlを含み、そしてAl又はAl(OH)から成るアルミニウム化合物のいずれかと混合され、そしてあるいはSiO、Si、及びMoOの1種又はそれ以上の化合物と、あるいは又MoO及びAl、そしてSi、及び/又はSiOを含むシリコン及びモリブデン化合物の混合物の形で混合され;ここにおいて投入成分は共に少なくとも98%に対応する純度を有し;そしてここにおいて混合物は発熱性の反応を起こされ、そして/又は焼結され、その結果交換反応を起こし、化合物Mo(Si1−xAl及びAlを形成し、xが0.4〜0.6の範囲にある方法。
【請求項2】
前記のSiOはシリケート中に含まれ、ここでシリケート中の残存物質が、モリブデンケイ化物が前記の物質又は複数の物質と合金を作ることが不可能であるような性質を、そしてモリブデンケイ化物の結晶格子の対称性が保持されている、そのような特性を有していることを特徴とする請求項1に従う方法。
【請求項3】
xが0.45〜0.55の範囲にあることを特徴とする、請求項1又は2に従う方法。
【請求項4】
前記の混合物中に、以下の焼結助剤、MgO、CaO、SiO及びYの1種又はそれ以上を添加することを特徴とする、請求項1、2又は3に従う方法。
【請求項5】
Mo(Si1−xAl材料中のモリブデンを部分的に、Re、又はW、又はNbで置換することを特徴とする、請求項1、2、3又は4に従う方法。
【請求項6】
おおよそ1/3に対応する量で、モリブデンをWで置き換えることを特徴とする、請求項5に従う方法。
【請求項7】
投入構成材料が、少なくとも99%の純度を有することを特徴とする、前記請求項の任意の1項に従う方法。


【公開番号】特開2011−57548(P2011−57548A)
【公開日】平成23年3月24日(2011.3.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−215060(P2010−215060)
【出願日】平成22年9月27日(2010.9.27)
【分割の表示】特願2003−583975(P2003−583975)の分割
【原出願日】平成15年4月4日(2003.4.4)
【出願人】(505277521)サンドビック インテレクチュアル プロパティー アクティエボラーグ (284)
【Fターム(参考)】