説明

モータアクチュエータ

【課題】モータアクチュエータにおいて、出力軸の回転方向が異なる場合でも検出誤差の発生傾向を同じにする。
【解決手段】ロータリセンサ3は、そのセンサ端子3b,3c,3dの厚さ中心を中心にしてセンサ部3aの保持部3e,3fを対称の形状に形成し、制御開始時における出力軸の回転方向に応じて反転設置できるようにする。出力軸の回転方向が逆になる箇所に設置される2つのモータアクチュエータは、ロータリセンサ3を互いに反転設置することで、ロータリセンサ3を同じ条件に統一して使用でき、2つのモータアクチュエータが同期制御するときの同期誤差を抑制できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はモータアクチュエータに関し、特に自動車用空調装置における空気流路の開閉または切り替えを行うドアを駆動するためのモータアクチュエータに関する。
【背景技術】
【0002】
自動車用空調装置では、空気流路を開閉するドアがいくつか設けられている。たとえば車室内に外気を導入したり車室内の空気を循環したりするための内外気切換え用のドア、エバポレータによって冷やされた空気とヒータコアによって加熱された空気とを混合して車室内の空気を所定の温度にするための混合用のドアがある。また、吹き出し口における配風モードを設定するためのモード選択用のドアがある。これらのドアには、それぞれモータアクチュエータが設けられており、それらドアの開度を制御することにより、車室内への吹き出し温度や吹き出し風量が調整され、吹き出し口が選択される。
【0003】
このような用途に用いられるモータアクチュエータは、一般に、モータ、減速ギヤ群を備え、上下のケースによって収容されている。モータアクチュエータは、さらに、必要に応じて、減速ギヤ群の最終段に設けられた出力ギヤの回転位置を検出して制御装置にフィードバックするようにしたロータリセンサを備えているものがある。
【0004】
このロータリセンサは、基板上に円弧状の抵抗回路パターンを印刷により形成し、その表面を円周方向に可動電極が摺動するロータリポテンショメータの構成を有している。可動電極がモータアクチュエータの出力軸の回転軸に連動して移動するようにリンクさせることで、出力軸の回転位置が検出される。すなわち、ロータリセンサは、抵抗回路パターンの両端に設けた2つの固定電極に基準電圧を印加すると、可動電極に出力軸の回転位置に対応した電圧が出力されるので、その電圧を出力軸の回転位置信号として制御装置にフィードバックする。制御装置は、そのロータリセンサからフィードバックされた回転位置信号に基づいてモータアクチュエータの回転を制御し、ドアの開度を制御する。
【0005】
モータアクチュエータは、出力ギヤの回転軸の一方が出力軸として使用され、ケースを貫通して外部に突出されている。出力ギヤの他方の回転軸側には、ロータリセンサが配置されていて、出力軸の回転位置を検出している。モータアクチュエータの出力軸には、ドアを開閉駆動するためのリンクに係合されるアームが設けられる。
【0006】
モータアクチュエータは、これが適用される自動車用空調装置の取り付け部位によって、回転開始の基準位置が逆になることがある。たとえば、モータアクチュエータがドアの回動軸をその一端側から時計回り方向に回転駆動するとドアが開放方向に駆動される構成において、回動軸の他端側からの駆動にする場合には、回動軸を反時計回り方向に回転駆動する必要がある。このように、モータアクチュエータをドアの回動軸のどちら側に配置するかは、自動車用空調装置のレイアウトによって決められる。
【0007】
また、運転席と助手席とで独立して温度調整が可能な自動車用空調装置では、温度調整用のドアが隣接して2つ設けられている。それらのドアは、回動軸が同軸上に配置されていて、それらの外側にモータアクチュエータが設置されている。この場合、当然ながら、一方のモータアクチュエータと他方のモータアクチュエータとは、互いに逆方向に各回動軸を回転駆動することになり、ロータリセンサの可動電極も、互いに逆方向に回転移動することになる。このとき、ドアが閉鎖しているときのロータリセンサの可動電極の位置は、一方のモータアクチュエータでは、2つの固定電極の一方の側に位置し、他方のモータアクチュエータでは、他方の固定電極の側に位置している。すなわち、ドアが開放開始するときのロータリセンサの可動電極の移動開始基準位置が2つのモータアクチュエータでそれぞれ異なっている。そのため、たとえば出力軸の可動範囲の中点位置を検出しようとした場合、一方のモータアクチュエータのロータリセンサは、その公差範囲のプラス側にずれて検出し、他方のモータアクチュエータのロータリセンサは、その公差範囲のマイナス側にずれて検出する。その結果、各ロータリセンサは、それぞれ公差の範囲内で検出しているものの、自動車用空調装置でみると、運転席と助手席との間の検出誤差は、これら単独での検出誤差の2倍になっていることになる。
【0008】
これに対し、出力軸の軸出し方向を両側に設定可能にしたモータアクチュエータが知られている(たとえば、特許文献1参照。)。運転席側のドアと助手席側のドアとで軸出し方向の異なるモータアクチュエータを用いることにより、ロータリセンサの可動電極が移動開始する基準位置を統一できるため、両者の検出誤差も同じ傾向にでき、したがって、両者間の制御誤差を小さくできる。また、別の方法として、ロータリセンサ自身の精度を向上させる方法がある。これにより、可動電極が抵抗回路パターンの両端に設置されたいずれの固定電極側から移動開始しても、ほぼ同じような特性にすることは可能である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2005−69292号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかしながら、出力軸の軸出し方向を両側に設定可能なモータアクチュエータでは、太い主軸の周りを囲うようにロータリセンサを設置する必要があり、ロータリセンサが大型化してコストがかかるという問題点があった。また、ロータリセンサの精度を向上させる場合でも、たとえば抵抗回路パターンのトリミングが必要になるなどの工数が増える分、コスト上昇が避けられないという問題点があった。
【0011】
本発明はこのような点に鑑みてなされたものであり、出力軸の回転方向が異なる場合でも実質的なコスト上昇を招くことなく検出誤差の発生傾向を同じにできるモータアクチュエータを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明では上記の課題を解決するために、モータと、減速ギヤ群と、前記減速ギヤ群の出力ギヤに同軸配置された出力軸の回転位置を検出するロータリセンサとを対向配置の第1および第2のケースに収容したモータアクチュエータにおいて、前記ロータリセンサは、前記出力ギヤの前記出力軸とは反対側に形成された回転軸によって内部の可動電極が回動駆動されるセンサ部と、前記センサ部の周囲に設けられて前記第1および第2のケースにより挟持される保持部と、前記センサ部の面に平行に延びていて前記センサ部に電気的に接続されるとともに前記第1および第2のケースにより挟持されるセンサ端子とを有し、前記保持部は、前記センサ端子の厚さ中心を中心にして対称の形状に形成されていることを特徴とするモータアクチュエータが提供される。
【0013】
このようなモータアクチュエータによれば、ロータリセンサの保持部がセンサ端子の厚さ中心を中心にして対称の形状に形成されていることにより、反転した状態でもロータリセンサを設置可能となる。これにより、出力軸の回転方向に応じてロータリセンサを反転して設置できるので、出力軸の回転方向に関係なくロータリセンサの回転開始の基準位置を統一させることができ、検出誤差の発生傾向を同じにすることができる。
【発明の効果】
【0014】
上記構成のモータアクチュエータは、ロータリセンサを裏表対称形状にして内部で反転して使用できる構成にしたので、回転方向を逆にしても、ロータリセンサの可動電極が移動開始する基準位置を統一できるため、検出誤差を統一でき、しかも、複数使用したときの同期誤差を抑制できるという利点がある。また、出力軸を両方向に出す構成ではないので、ロータリセンサが大型化することはない。さらに、検出誤差を精度で押さえ込む必要がないので、単品精度を向上させるためのコストがかかることもない。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明の実施の形態に係るモータアクチュエータの構成例を示す分解斜視図である。
【図2】ロータリセンサの詳細を示す図であって、(A)はその平面図、(B)は右側面図、(C)は底面図、(D)は正面図である。
【図3】モータアクチュエータ内におけるロータリセンサの設置状態を示す図であって、(A)はロータリセンサの第1の設置状態を示し、(B)はロータリセンサの第2の設置状態を示している。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の実施の形態について、自動車用空調装置にて温度調整を独立して行うことができる2つのドアをそれぞれ制御駆動するモータアクチュエータに適用した場合を例に図面を参照して詳細に説明する。
【0017】
図1は本発明の実施の形態に係るモータアクチュエータの構成例を示す分解斜視図、図2はロータリセンサの詳細を示す図であって、(A)はその平面図、(B)は右側面図、(C)は底面図、(D)は正面図であり、図3はモータアクチュエータ内におけるロータリセンサの設置状態を示す図であって、(A)はロータリセンサの第1の設置状態を示し、(B)はロータリセンサの第2の設置状態を示している。
【0018】
モータアクチュエータは、図1に示したように、主として、モータ1と、減速ギヤ群2と、ロータリセンサ3と、これらを収容するための対向配置の上ケース4および下ケース5とを備えている。
【0019】
モータ1は、1対の給電端子1a,1bを有し、その給電端子1a,1bには、導電片6a,6bの一端が接続される。この導電片6a,6bの他端は、コネクタハウジング4b,5a内に収容され、アクチェータコネクタ端子を構成している。
【0020】
減速ギヤ群2は、モータ1の出力軸1cに取り付けられるウォーム2aと、これに順次噛み合うよう構成された中間ギヤ2b,2cおよび出力ギヤ2dとを有している。出力ギヤ2dは、出力軸7と一体に形成されており、その出力軸7は、上ケース4の出力孔4aを貫通して外部に露出される。
【0021】
ロータリセンサ3は、出力ギヤ2dの直下に配置され、出力ギヤ2dの回転に連動して内部の可動電極が回転駆動され、出力ギヤ2dの回転位置、すなわち出力軸7の回転位置を検出する。ロータリセンサ3は、図2に示したように、円形の形状を有するセンサ部3aと、そのセンサ部3aの面に平行に延びていてセンサ部3aに電気的に接続される3本のセンサ端子3b,3c,3dとを有している。このロータリセンサ3のセンサ端子3b,3c,3dの先端部は、導電片6a,6bと同様、コネクタハウジング4b,5aに収容され、アクチェータコネクタ端子を構成する。
【0022】
ロータリセンサ3は、そのセンサ部3aの外周部に2つの保持部3e,3fが形成されている。保持部3e,3fは、ロータリセンサ3の長手方向中心線に対してセンサ部3aの対称となる位置に形成されており、それぞれには、センサ部3aの面に垂直な方向に貫通したガイド孔が形成されている。ロータリセンサ3の保持部3e,3fは、センサ部3aの厚さ方向における高さ中心がセンサ端子3b,3c,3dの高さ中心と一致するように形成されている。すなわち、図2の(D)に示したように、保持部3e,3fは、全体の高さをHとした場合、センサ端子3b,3c,3dの中心位置からそれぞれH/2の高さになるよう形成している。
【0023】
ロータリセンサ3は、また、そのセンサ部3aの中心に、嵌合孔3gが形成されている。この嵌合孔3gは、出力軸7と同軸であって出力軸7とは反対側にて出力ギヤ2dと一体に形成された図示しない回転軸が嵌入されて、センサ部3aに内蔵された図示しない可動電極が回転駆動される部分である。この嵌合孔3gは、小判型の形状になっていて、これに回転軸を嵌入するときの回転方向の位置決めおよびその回転軸との間での回転止めの作用をしている。
【0024】
このロータリセンサ3は、上ケース4および下ケース5により、センサ部3aの2つの保持部3e,3fとセンサ端子3b,3c,3dとの3箇所を挟持することによって所定位置に設置されて保持される。すなわち、下ケース5は、センサ部3aの保持部3e,3fを載置する円柱部5bが立設され、その円柱部5bの上端面には、保持部3e,3fのガイド孔に通す位置決めピン5cが立設されている。上ケース4は、図示はしないが、下ケース5の円柱部5bに対応する位置に円柱部5bに載置されたセンサ部3aの保持部3e,3fを押さえる部分が垂設されている。これにより、ロータリセンサ3のセンサ部3aは、上ケース4および下ケース5によって所定位置に位置決めされた状態で挟持されて保持される。ロータリセンサ3は、また、そのセンサ端子3b,3c,3dがコネクタハウジング4b,5aの基部により挟持されることによって保持される。特に、コネクタハウジング5aの基部に溝を形成してそこにセンサ端子3b,3c,3dを設置し、そのセンサ端子3b,3c,3dをコネクタハウジング4bの基部で押さえることにより、センサ端子3b,3c,3dは、所定位置に保持される。
【0025】
ロータリセンサ3は、センサ端子3b,3c,3dの厚さ中心を中心にしてセンサ部3aの保持部3e,3fが対称の形状に形成されていることにより、出力軸7の制御開始時の回転方向に応じて反転設置できるようになる。すなわち、図3の(A)に示した場合では、ロータリセンサ3は、センサ部3aの周囲にリブが形成されている面を上にして設置され、図3の(B)に示した場合では、センサ部3aの周囲にリブが形成されている面を下にして設置されている。たとえば、図3の(A)に示した構成のモータアクチュエータが運転席側の温度調整用のドアを制御駆動するとした場合、図3の(B)に示した構成のモータアクチュエータは、助手席側の温度調整用のドアを制御駆動することになる。
【0026】
これにより、運転席側のドアおよび助手席側のドアを開放開始するときのロータリセンサ3の可動電極が移動開始する基準位置が2つのモータアクチュエータでそれぞれ同じになるので、ロータリセンサ3を同じ条件に統一して使用できるようになる。したがって、運転席側と助手席側とで同じ空気調和温度に設定した場合、各モータアクチュエータのロータリセンサ3は、互いに同じ傾向の検出誤差を以てドアの位置を検出することになる。これにより、運転席側と助手席側とで、それぞれに独立した検出誤差はあるものの、それらの検出誤差の傾向は同じであるので、運転席側と助手席側との間での同期誤差が抑制される。
【0027】
なお、本実施の形態では、上ケース4および下ケース5によってロータリセンサ3を保持する部分として、ロータリセンサ3の長手方向中心線に対してセンサ部3aの周囲の対称位置に2つの保持部3e,3fを有しているが、これに限定されるものではない。たとえば、ロータリセンサ3の長手方向中心線上に1つの保持部を備えていてもよいし、ロータリセンサ3の長手方向中心線に対してセンサ部3aの周囲の対称位置に複数形成してもよい。
【符号の説明】
【0028】
1 モータ
1a,1b 給電端子
1c 出力軸
2 減速ギヤ群
2a ウォーム
2b,2c 中間ギヤ
2d 出力ギヤ
3 ロータリセンサ
3a センサ部
3b,3c,3d センサ端子
3e,3f 保持部
3g 嵌合孔
4 上ケース
4a 出力孔
4b コネクタハウジング
5 下ケース
5a コネクタハウジング
5b 円柱部
5c 位置決めピン
6a,6b 導電片
7 出力軸

【特許請求の範囲】
【請求項1】
モータと、減速ギヤ群と、前記減速ギヤ群の出力ギヤに同軸配置された出力軸の回転位置を検出するロータリセンサとを対向配置の第1および第2のケースに収容したモータアクチュエータにおいて、
前記ロータリセンサは、前記出力ギヤの前記出力軸とは反対側に形成された回転軸によって内部の可動電極が回動駆動されるセンサ部と、前記センサ部の周囲に設けられて前記第1および第2のケースにより挟持される保持部と、前記センサ部の面に平行に延びていて前記センサ部に電気的に接続されるとともに前記第1および第2のケースにより挟持されるセンサ端子とを有し、
前記保持部は、前記センサ端子の厚さ中心を中心にして対称の形状に形成されていることを特徴とするモータアクチュエータ。
【請求項2】
前記保持部は、前記センサ部の面に垂直な方向に貫通したガイド孔が形成され、
前記第1および第2のケースの一方には、前記保持部を挟持する部分に前記ガイド孔に通す位置決めピンが設けられていることを特徴とする請求項1記載のモータアクチュエータ。
【請求項3】
前記保持部は、前記ロータリセンサの長手方向中心線に対して対称となる前記センサ部の周囲の位置に2つ設けられていることを特徴とする請求項1記載のモータアクチュエータ。
【請求項4】
前記センサ端子は、前記第1および第2のケースと一体に形成されたコネクタハウジングによって挟持され、先端部がアクチェータコネクタ端子を構成していることを特徴とする請求項1記載のモータアクチュエータ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2013−5512(P2013−5512A)
【公開日】平成25年1月7日(2013.1.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−132025(P2011−132025)
【出願日】平成23年6月14日(2011.6.14)
【出願人】(000133652)株式会社テージーケー (280)
【Fターム(参考)】