説明

モータユニット

【課題】装置の大型化や部品点数の増加を招くことのない逆転防止構造を備えたモータユニットを提供すること。
【解決手段】逆転防止構造を構成する付勢機構は、第一の歯車42に形成された第一のはす歯部422と、この第一のはす歯部422に噛合する第二の歯車44に形成された第二のはす歯部441と、第一の歯車42の回転に負荷を与える負荷付与手段50と、を有し、同期モータ10が逆転した際に、第一のはす歯部422と第二のはす歯部441のはす歯同士の噛合および負荷付与手段50の負荷によって発生するスラスト力により、第一の歯車42をその軸線方向における逆転防止部材43側に付勢する機構である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、モータユニットに関し、さらに詳しくは、駆動源である同期モータの逆転を防止する逆転防止構造を備えたモータユニットに関する。
【背景技術】
【0002】
下記特許文献1には、モータの逆転を防止するための逆転防止体(5)を備えた装置が記載されている。この装置において、逆転防止体は、弾性体(16)によって発生する摩擦力により歯車(14)と同じ方向に回転する。モータが逆転したときには、逆転防止体が逆転防止片(6)に当接する。この逆転防止体と逆転防止片の当接により、モータの逆転が阻止される。
【0003】
一方、下記特許文献2には、ウォーム(66)とそれに噛合するウォーム歯車(78a)を用いてモータの逆転を防止した装置が記載されている。この装置では、モータが逆転すると、ウォームとそれに噛合するウォーム歯車によってモータの出力軸(64)が軸線方向の一方側に移動する。出力軸が一方側に移動すると、出力軸に設けられた係止ピン(74)が係止片(76)に係合する。この係止ピンと係止片の係合により、モータの逆転が阻止される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】実開平6−41372号公報
【特許文献2】特開2002−266953号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、特許文献1のようなモータの逆転防止構造を採用した場合、弾性体のような摩擦力を発生させる付勢部材が別途必要になるため、部品点数の増加や装置の大型化を招いてしまう。また、特許文献2のようなモータの逆転防止構造を採用した場合、ロータにウォームや係止ピンといった逆転防止のための構成を設けたり、ロータを軸線方向に移動させたりする必要があるため、特許文献1と同様に装置の大型化を招いてしまう。
【0006】
上記問題に鑑みて、本発明が解決しようとする課題は、装置の大型化や部品点数の増加を招くことのない逆転防止構造を備えたモータユニットを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために本発明は、同期モータを駆動源とし、この同期モータの一定量以上の逆転を阻止し正転させる逆転防止構造を備えたモータユニットであって、前記逆転防止構造は、前記同期モータの動力が伝達され前記同期モータと平行な軸周りに回転するとともに、その軸線方向に移動可能である第一の歯車と、この第一の歯車における一方の軸線方向端面に面接触することによる摩擦力によって第一の歯車の回転方向に回転する逆転防止部材と、前記同期モータが逆転した際に、その逆転するモータの動力を受けた前記第一の歯車の回転方向に回転する前記逆転防止部材に当接し、前記同期モータのそれ以上の逆転を阻止する前記同期モータのロータに設けられた逆転防止当接部と、前記同期モータが逆転した際に、前記第一の歯車をその軸線方向における前記逆転防止部材側に付勢する付勢機構と、を備え、前記付勢機構は、前記第一の歯車に形成された第一のはす歯部と、この第一のはす歯部に噛合する第二の歯車に形成された第二のはす歯部と、前記第一の歯車の回転に負荷を与える負荷付与手段と、を有し、前記同期モータが逆転した際に、前記第一のはす歯部と前記第二のはす歯部のはす歯同士の噛合および前記負荷付与手段の負荷によって発生するスラスト力により、前記第一の歯車をその軸線方向における前記逆転防止部材側に付勢することを要旨とするものである。
【0008】
上記モータユニットでは、第一のはす歯部と第二のはす歯部のはす歯同士の噛合および負荷付与手段の負荷によって発生するスラスト力を利用して、第一の歯車を逆転防止部材側に付勢する。つまり、第一の歯車を逆転防止部材側に付勢する付勢部材などを別途設ける必要がない。したがって、部品点数の増加や装置の大型化を招くことのない逆転防止構造を備えたモータユニットとすることができる。
【0009】
この場合、前記第一の歯車の軸線方向端面と前記逆転防止部材との間には、グリスが介在されていればよい。
【0010】
このようにグリスを介して第一の歯車と逆転防止部材が面接触する構成とすれば、グリスの粘性によって逆転防止部材が第一の歯車にくっついた状態となる。つまり、当該グリスの粘性が作用する分、第一の歯車を付勢する付勢機構の付勢力、すなわち第一の歯車に生じるスラスト力を小さくすることができる。このようにスラスト力を小さくすることができれば、第一のはす歯部およびそれに噛合する第二のはす歯のねじれ角(傾斜角度)を小さくすることができるため、第一の歯車と第二の歯車との間における動力(回転動力)の伝達ロスが抑えられる。
【0011】
また、前記第一の歯車が有する前記第一のはす歯部またはそれ以外の歯部が、前記同期モータのロータと一体的に回転する歯車の歯部に直接噛合していればよい。
【0012】
このように第一の歯車の歯部が直接同期モータのロータと一体的に回転する歯車の歯部に噛合していれば、同期モータが逆転するとその動力が即座に第一の歯車に伝達されるため、すぐに逆転防止部材が回転する。したがって、逆転した同期モータを即座に正転させることができる。
【0013】
またこの場合、前記負荷付与手段は、前記第一の歯車の回転により回転する遠心ブレーキであればよい。
【0014】
遠心ブレーキは、回転速度が所定値以上でなければ機能しない。上記のように、第一の歯車の歯部が直接同期モータのロータと一体的に回転する歯車の歯部に噛合しているため、同期モータから第一の歯車までの減速比が小さい。したがって、遠心ブレーキを所定値以上の回転速度で回転させるための、第一の歯車から遠心ブレーキまでの増速機構が簡単となる。
【0015】
また、前記同期モータと前記第一の歯車は、回転方向が逆であればよい。
【0016】
上記のように、逆転防止部材は第一の歯車と同じ方向に回転する。したがって、例えば同期モータと第一の歯車の回転方向が同じであり、逆転防止当接部と逆転防止部材の角速度が近い場合、逆転防止当接部と逆転防止部材が当接するまで(正転に切り替わるまで)の時間が長くなる可能性がある。しかし、同期モータと第一の歯車の回転方向が逆であれば、同期モータが逆転した際、逆転防止当接部と逆転防止部材が即座に(一回転未満で)当接する。すなわち、すばやく同期モータを正転させることができる。
【0017】
また、前記同期モータの動力を被駆動体に伝達する一または複数の動力伝達部材を有する第一の伝達列と、前記第一の伝達列による動力の伝達を「継」状態もしくは「断」状態に切り替えるクラッチ手段と、前記同期モータの動力を前記クラッチ手段に伝達する、前記第一の歯車および前記第二の歯車を有する第二の伝達列と、前記第二の歯車をその軸線方向の一方側に付勢する付勢部材と、をさらに備え、前記モータの駆動時には、前記第二の歯車は、前記第一のはす歯部と前記第二のはす歯部のはす歯同士の噛合および前記負荷付与手段の負荷によって発生するスラスト力により、回転しつつ前記付勢部材の付勢力に抗して前記軸線方向の他方側に移動し、前記クラッチ手段を介して前記第一の伝達列による動力の伝達を「継」状態とする一方、前記モータが駆動状態から停止すると、前記第二の歯車は、前記付勢部材の付勢力により、前記負荷付与手段の負荷に逆らって回転しつつ前記軸線方向の一方側に移動し、前記クラッチ手段を介して前記第一の伝達列による動力の伝達を「継」状態とする構成であればよい。
【0018】
第一のはす歯部と第二のはす歯部との噛合および負荷付与手段によって、第一の歯車にはスラスト力が生じる。したがって第二の歯車にもその反対のスラスト力が生じる。上記構成は、その第二の歯車に生じるスラスト力を利用して、モータの動力を被駆動体まで伝達するか否かを切り替えるためのクラッチ手段を「継」「断」するものである。すなわち、上記構成によれば、第一のはす歯部と第二のはす歯部との噛合および負荷付与手段によって逆転防止構造を動作させるだけでなく、第一の伝達列を「継」「断」するクラッチ手段をも動作させることができる。
【0019】
またこの場合、固定軸に回転自在に支持された前記同期モータのロータは、前記第一の歯車が有する駆動側歯部に噛合する第一のロータ歯車を有し、前記第一の伝達列は、前記固定軸に回転自在に支持されその軸線方向に移動可能な第二のロータ歯車を有し、この第二のロータ歯車が前記ロータ側の第一の位置に位置するときには、前記第一のロータ歯車と前記第二のロータ歯車が係合し、前記ロータの回転によって両ロータ歯車が一体的に回転する一方、前記第二のロータ歯車が前記ロータから離れた側の第二の位置に位置するときには、前記ロータの回転が前記第二のロータ歯車に伝達されない構成であればよい。
【0020】
かかる構成とすれば、ロータを軸線方向に移動させることなく、モータの動力が第二のロータ歯車(第一の伝達列)に伝達されるか否かを切り替えることができる。
【0021】
また、前記第二の歯車は、前記第二のはす歯部と、前記負荷付与手段を駆動させる動力伝達部材に噛合される歯部であって前記第二のはす歯部と同じ軸周りに回転する前記第二のはす歯部よりも小径の従動側歯部と、が一体的に形成された複合歯車であればよい。
【0022】
かかる構成とすれば、第二の歯車が軸線方向に移動しても、第二の歯車の従動側歯部と第一の歯車の第一のはす歯部が干渉しない。
【発明の効果】
【0023】
本発明にかかるモータユニットは、第一のはす歯部と第二のはす歯部のはす歯同士の噛合および負荷付与手段の負荷によって発生するスラスト力により、第一の歯車が逆転防止部材側される構造であるため、部品点数の増加や装置の大型化を招くことがない。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】本実施形態にかかるモータユニットの全体(ケースを取り外した状態)を示した図である。
【図2】図1に示したモータユニットの動力系統(第一の伝達列および第二の伝達列)を上方から見た図である。
【図3】図1に示したモータユニットの伝達列(図2に示したA−A線)に沿って切断した断面図(ハッチングは省略)である。
【図4】図1に示したモータユニットの分解図であって、モータユニットが備える第一の歯車、逆転防止部材、第一ロータ歯車、および第二のロータ歯車などの構造を説明するための図である。
【図5】図1に示したモータユニットの分解図であって、第一のロータ歯車に第一の歯車が噛合し、第一の歯車に第二の歯車が噛合した状態を(抜き出して)示した図である。
【図6】図1に示したモータユニットが備える逆転防止構造の機能を説明するための模式図である。
【図7】図1に示したモータユニットが有する第一のロータ歯車および第二のロータ歯車を分解して示した図である。
【図8】図1に示したモータユニットの第一の伝達列を一方向から見た図である(ケースおよび下モータ歯車以外の第二の伝達列の構成などは削除してある)。
【図9】図1に示したモータユニットの第一の伝達列を図8とは異なる方向から見た図である(ケースおよび下モータ歯車以外の第二の伝達列の構成などは削除してある)。
【図10】図1に示したモータユニットが備える遊星歯車機構を分解して上方から見た図である。
【図11】図1に示したモータユニットが備える遊星歯車機構を分解して下方から見た図である。
【図12】図1に示したモータユニットの第二の伝達列を一方向から見た図である(ケースおよび第一の伝達列の構成などは削除してある)。
【図13】図1に示したモータユニットの第二の伝達列を図12とは異なる方向から見た図である(ケースおよび第一の伝達列の構成などは削除してある)。
【図14】本実施形態にかかるモータユニットが有する負荷付与手段におけるドラムの回転速度とブレーキ力の関係を示した図である。
【図15】本実施形態にかかるモータユニットの動力系統を説明するための系統図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、本発明の実施形態について詳細に説明する。なお、以下の説明における上下とは、図1における上下をいうものとする。また、「原位置」とは、同期モータ10が駆動していない状態における各構成部材の位置をいう。
【0026】
(逆転防止構造)
本実施形態にかかるモータユニット1は、同期モータ10(例えば二相のAC同期モータ)を駆動源とするユニットであり、同期モータ10の一定量以上の逆転(誤った方向の回転)を阻止し正転(正しい方向に回転)させる逆転防止構造を備える。この逆転防止構造は、第一の歯車42と、逆転防止部材43と、逆転防止当接部411と、付勢機構と、を備える。
【0027】
第一の歯車42は、同期モータ10の動力が伝達され同期モータ10と平行な軸周りに回転する歯車である。本実施形態では、第一の歯車42は、第一のはす歯部422および駆動側歯部421を有する複合歯車である。第一のはす歯部422は、歯すじが螺旋状である「はす歯」に形成された部分であり、付勢機構を構成する一要素である。駆動側歯部421は、ロータ11と一体的に回転する第一のはす歯部422より大径の平歯車部である。駆動側歯部421は、第一のロータ歯車41と噛合している。したがって、第一の歯車42は、第一のロータ歯車41の回転に伴って同期モータ10の回転方向とは逆方向に回転する。
【0028】
この第一の歯車42は、ベース84に固定された第一の歯車支持軸85に回転自在かつ軸線方向に移動可能となるように支持されている。図3に示すように、第一の歯車42が所定位置に組み込まれると、第一の歯車42の上端面はケース80を構成する上ケース81の内底面に近接した状態となる。すなわち、第一の歯車42の軸線方向上向きの移動は、上ケース81によって規制される。なお、後述するように、モータユニット1が洗濯機の排水口を開閉する弁体を駆動させるアクチュエータとして用いられる場合には、モータユニット1は第一の歯車支持軸85の軸線方向が鉛直方向で、逆転防止部材43が第一の歯車41より上方つまり図1の上方向が下向きとなるように洗濯機に取り付けられる。
【0029】
逆転防止部材43は、第一の歯車42(駆動側歯部421)の下面に配された板状の部材であり、円形の本体部431と、その本体部431から外向きに突出した当接部432と、回転阻止部433と、を有する。この逆転防止部材43は、本体部431の中心で第一の歯車支持軸85に回転自在かつ軸線方向に移動可能となるように支持されている。逆転防止部材43の当接部432は、同期モータ10が逆転した際、逆転防止当接部411に当接する部分である。回転阻止部433は、同期モータ10が正転した際、ストッパ部841に当接する部分である。この逆転防止部材43の上面と、第一の歯車42の下面の間にはグリスが介在されている。本実施形態では、逆転防止部材43の本体部431の上面には、環状の凹部4311が形成されており、この凹部内にグリスが保持されている。
【0030】
逆転防止当接部411は、同期モータ10のロータ11に形成された突起であり、第一のロータ歯車41の下方に位置する。すなわち、ロータ11が回転すると、その回転軸を中心として逆転防止当接部411は回転する。本実施形態では、周方向に180度間隔で二つの逆転防止当接部411が形成されている。この逆転防止当接部411は、同期モータ10が逆転した際、上記逆転防止部材43の当接部432に当接する。
【0031】
付勢機構は、同期モータ10が逆転した際、第一の歯車42を下方(逆転防止部材43側)に付勢する構成であり、第一のはす歯部422と、第二のはす歯部441と、第一の歯車42の回転に負荷を与える負荷付与手段50と、を有する。
【0032】
上述したように、第一のはす歯部422は、複合歯車である第一の歯車42に形成されたはす歯の部分である。第二のはす歯部441は、第一のはす歯部422に噛合する第二の歯車44に形成されたはす歯の部分である。第二の歯車44は、第二のはす歯部441と、この第二のはす歯部441より小径の平歯車部である従動側歯部442(ウォームホイール部)を有する複合歯車であり、ベース84に固定された第二の歯車支持軸86に回転自在かつ軸線方向に移動可能となるように支持されている。
【0033】
負荷付与手段50は、ウォーム(ギヤ)部51と、いわゆる遠心ブレーキである負荷部52と、を有する。ウォーム部51は、第二の歯車44の出力側歯車部と噛合している。出力側歯車部とウォーム部51とは、増速歯車機構を構成する。よって、第二の歯車44の回転は増速されてウォーム部51に伝達される。
【0034】
遠心ブレーキである負荷部52は、ウォーム部の先端に固定された回転する円板上で径方向に移動可能に設けられたおもりが、遠心力によって径方向内向きに付勢された付勢力に抗して径方向外向きに移動し、回転速度が一定以上になるとケース80に固定されるドラム83の内周面と接触するというものである。回転速度が大きくなるほどおもりにかかる遠心力が大きくなり、おもりとドラム83の摩擦による回転を停止させようとするブレーキ力も大きくなるという構成を備える。具体的には、図14に示すように、ドラム83の回転速度が増加し、おもりとドラム83が接触してから急激に回転を停止させようとするブレーキ力が大きくなる構成である。
【0035】
このように構成される負荷付与手段50は、第二の歯車44が回転することによって回転し、第二の歯車44の回転に負荷を与える。第二の歯車44の第二のはす歯部441には、第一の歯車42の第一のはす歯部422が噛合しているから、第一の歯車42の回転にも負荷を与える。つまり、第一の歯車42にはその回転方向と反対方向の負荷が掛かり、かつ、その第一のはす歯部422は第二のはす歯部441と噛合しているから、第一の歯車42にはスラスト力が発生する。なお、このスラスト力は、同期モータ10が逆転したときに軸線方向下向き(図3および図5においてXで示す方向)となり、同期モータ10が正転した際に軸線方向上向きとなるように設定されている(第一のはす歯部422および第二のはす歯部441のはす歯の向きが設定されている)。すなわち、付勢機構は、同期モータ10が逆転したときに、第一のはす歯部422と第二のはす歯部441のはす歯同士の噛合および負荷付与手段50の負荷によって第一歯車に発生するスラスト力により、第一の歯車42を逆転防止部材43側(軸線方向下向き(X方向))に付勢する。
【0036】
以上の構成を備える逆手防止構造は、次のように機能する。同期モータ10が逆転したとき、上記のように、第二のはす歯部441のはす歯同士の噛合および負荷付与手段50の負荷によって、第一の歯車42は軸線方向下向きに付勢される。すなわち、第一の歯車42は、逆転防止部材43に押圧されたような状態となり、第一の歯車42の下面(一方の軸線方向端面)と逆転防止部材43の上面が面接触する。この面接触することによる摩擦力、および、両者の間に介在されたグリスの粘性により、逆転防止部材43は、第一の歯車42と同じ方向に回転する。本実施形態では、第一の歯車42の駆動側歯部421は第一のロータ歯車41に噛合しているから、第一の歯車42およびそれとともに回転する逆転防止部材43は同期モータ10の回転と逆方向に回転する(図6(a)参照)。かかる方向に回転した逆転防止部材43の当接部432は、同期モータ10の逆転防止当接部411の外縁の回転軌跡Tに重なる位置まで移動(同期モータ10に近づく方向に回転)し、同期モータ10の逆転防止当接部411に当接する(図6(b)参照)。この当接したときの衝撃によって、同期モータ10の回転は正転に修正される。このような逆転防止構造の働きにより、同期モータ10の逆転が正転に修正される。
【0037】
同期モータ10の回転が正転に切り替わると、第一のロータ歯車41に噛合した駆動側歯部421を有する第一の歯車42の回転方向も切り替わる(正転する)。第一の歯車42の回転方向が切り替わると、第一の歯車42には軸線方向上向きのスラスト力が生じる。これにより第一の歯車42と逆転防止部材43が離れると、第一の歯車42は独立して(逆転防止部材43とは別個に)回転する。ただし、グリスの粘性などにより、逆転防止部材43が第一の歯車42にくっついた状態で第一の歯車42と同じ方向に回転(正転)することもある。ベース84には、このように正転する逆転防止部材43の回転阻止部433の回転軌跡に入り込む位置にストッパ部841が起立形成されている。すなわち、逆転防止部材43が正転すると、このストッパ部841に回転阻止部433が当接し、逆転防止部材43の回転が阻止される(図6(c)参照)。これにより、正転する第一の歯車42とともに逆転防止部材43が回転し続けることが防止され、当接部432が逆転防止当接部411の外縁の回転軌跡T内に入り込むことはない。第一の歯車42と逆転防止部材43との間には、グリスが介在されているため、逆転防止部材43が正転する第一の歯車42の抵抗となることはない。
【0038】
なお、同期モータ10が正転したとき、例えば当接部432が逆転防止当接部411の外縁の回転軌跡T内に入り込んでいた場合など、逆転防止部材43の当接部432が逆転防止当接部411に当接することが考えられるが、この場合には回転する逆転防止当接部411によって逆転防止部材43の当接部432が弾かれ、両者が接触しない状態まで逆転防止部材43が回転するから、同期モータ10の駆動(ロータ11の回転)に影響を与えることはない。
【0039】
(逆転防止構造以外の構成)
このような逆転防止構造を備えるモータユニット1は、被駆動体90を駆動させるモータアクチュエータである。以下、かかるモータアクチュエータとしての構成について説明する。図15に示すように、モータユニット1の動力系統は、同期モータ10の動力を被駆動体90に伝達する出力系統(第一の伝達列)と、クラッチ手段を動作させるクラッチ作動系統(第二の伝達列)とからなる。クラッチ手段は、出力系統による動力の伝達を「継」状態もしくは「断」状態に切り替える。つまり、クラッチ手段が「継」状態であれば、同期モータ10の動力は出力系統を通じて被駆動体90に伝達される。クラッチ手段が「断」状態であれば、出力系統は遮断され、同期モータ10の動力は被駆動体90に伝達されない。本実施形態では、このようにクラッチ手段を動作させる(第一の伝達列による動力の伝達を「継」状態とする)ためのクラッチ作動系統の動力として、被駆動体90を駆動させるための同期モータ10の動力の一部を利用するものである。
【0040】
モータユニットは、駆動源である同期モータ10の動力を被駆動体90に伝達する第一の伝達列と、第一の伝達列による動力の伝達を「継」状態もしくは「断」状態に切り替えるクラッチ手段と、同期モータ10の動力をクラッチ手段に伝達する第二の伝達列と、負荷付与手段50と、を備える。これらは上ケース81および下ケースから構成されるケース80内に収容されている(ただしプーリおよびワイヤを除く)。
【0041】
第一の伝達列は、同期モータ10の動力を被駆動体90まで伝達する出力系統を構成する。かかる第一の伝達列は、第二のロータ歯車21と、第二のロータ歯車21に噛合する入力側歯車22と、クラッチ手段が「継」の状態のとき入力側歯車22の回転に伴って回転する出力側歯車23と、出力側歯車23に噛合する複合歯車と、複合歯車に噛合するカム歯車と、カム歯車と一体的に回転するプーリと、プーリの回転によって巻き上げられるワイヤと、を有する。なお、入力側歯車22および出力側歯車23は、詳細を後述するクラッチ手段(遊星歯車列に基づく差動歯車機構)を構成する歯車でもある。
【0042】
第二のロータ歯車21は、同期モータ10と同軸線上で回転可能かつ軸線方向に移動可能に支持された平歯車である。ロータ11と一体的に回転する第一のロータ歯車41の上(回転軸の先端側)に支持されている。また、第二のロータ歯車21は、コイルばね28で軸線方向上向きに付勢されている。第二のロータ歯車21の下面には、第二のロータ歯車21がロータ11側(下側)に位置するときには第一のロータ歯車41の下係合部412と係合する上係合部212が形成されている。なお、この下係合部412と上係合部212が係合した状態における第二のロータ歯車21の位置を第一の位置と称する。下係合部412と上係合部212が係合していない状態における第二のロータ歯車21の位置を第二の位置と称する。
【0043】
第二のロータ歯車21には、入力側歯車22が噛合している。入力側歯車22は、遊星歯車列を構成する一の歯車であっていわゆる太陽歯車である。入力側歯車22は、相対的に大径の大径歯部221と相対的に小径の小径歯部222とを有する。入力側歯車22の大径歯部221が第二のロータ歯車21と噛合しており、第二のロータ歯車21の回転に伴って入力側歯車22が回転する。また、入力側歯車22の上面には、被ロック突起233が形成されている。かかる被ロック突起233には、後述する扇形レバー60の入力側歯車ロック突起62が作用する。
【0044】
同期モータ10の動力は第二のロータ歯車21を介して、出力側歯車23に伝達される。本実施形態における出力側歯車23には、遊星歯車列を構成する歯車である、三つの遊星歯車231および遊星支持歯車232が該当する。遊星歯車231は、遊星支持歯車232の上端面から突出して周方向等間隔に設けられた三つの遊星歯車支持軸にそれぞれが回転自在に支持されている。遊星歯車支持軸の上端には、抜け止めリング233が固定され、遊星歯車231の脱落が防止されている。遊星支持歯車232は、遊星歯車231が取り付けられた面とは反対側に歯車部2321を有する。遊星歯車231は、入力側歯車22の小径歯部222と噛合している。詳細は後述するが、クラッチ手段が「継」状態にある場合、入力側歯車22の回転に伴って遊星歯車231は入力側歯車22の小径歯部222の周りを公転する。かかる遊星歯車231の公転に伴って、遊星歯車231を支持している遊星支持歯車232が回転する。このようにして、入力側歯車22から出力側歯車23へ動力が伝達される。
【0045】
遊星支持歯車232(出力側歯車23)には、複合歯車24が噛合している。詳しくは、複合歯車24は、相対的に小径の小径歯部241および相対的に大径の大径歯部242を有し、この大径歯部242が遊星支持歯車232の歯車部2321と噛合している。これにより、遊星支持歯車232の回転に伴って複合歯車24が回転する。
【0046】
複合歯車24には、カム歯車25が噛合している。詳しくは、カム歯車25の歯車部251が、複合歯車24の小径歯部241に噛合している。これにより、複合歯車24の回転に伴ってカム歯車25が回転する。外周に歯車部251が形成された部分の上端面には、カム溝252が形成されている。かかるカム溝252には扇形レバー60が係合している。かかる構成ならびにその作用については後述する。
【0047】
カム歯車25には、プーリ26が固定されている。カム歯車25と一体的にプーリ26が回転するものであれば、その固定方法は特に限定されない。これにより、カム歯車25の回転に伴ってプーリ26が回転する。また、プーリ26は、ケース外側に露出している。また、プーリ26の外周には、ワイヤ溝261が形成されている。
【0048】
プーリ26には、ワイヤ27の一端が固定されている。ワイヤ27の脱落を確実に防止することができるものであれば、その固定方法は特に限定されない。プーリ26がワイヤ27を引き込む方向に回転すると、ワイヤ27はプーリ26のワイヤ溝261にはまり込むように巻き上げられる。ワイヤ27の他端側には、被駆動体90(例えば排水口を開閉する弁体)が固定されており、被駆動体90には、常に原位置(弁体が閉となる位置)に戻ろうとする方向、つまりワイヤ27を引き出す方向の負荷が作用している。ワイヤ27がプーリ26に巻き上げられることによって、被駆動体90が所定の動作を行う。つまり、ワイヤ27がプーリ26に巻き上げられることにより、同期モータ10の動力が第一の伝達列を介して被駆動体90まで伝達されることになる。なお、被駆動体90を正確に動作させるため、ワイヤ27は伸縮性のない材料で形成されている。
【0049】
クラッチ手段は、第一の伝達列による動力の伝達(出力系統)を「継」状態もしくは「断」状態に切り替える役割を果たす。本実施形態におけるクラッチ手段の動作は、入力側歯車22(太陽歯車)、出力側歯車23(遊星歯車231および遊星支持歯車232)、および、固定歯車31(リング歯車)を有する遊星歯車列(図10および図11参照)に基づく差動歯車機構を利用したものである。
【0050】
既に説明したように、入力側歯車22は、第二のロータ歯車21に噛合し、第二のロータ歯車21の回転に伴って回転する。入力側歯車22の小径歯部222には、周方向等間隔に配された三つの遊星歯車231が噛合している。遊星歯車231は、遊星支持歯車232上に支持されている。遊星支持歯車232は、遊星歯車231の公転に伴って回転する。
【0051】
遊星歯車列を構成するリング歯車である固定歯車31は、外歯部311および内歯部312を有する。固定歯車31の外歯部311は、入力側歯車22の大径歯部221の下側に位置し、後述する第二の伝達列を構成する一の歯車であるロック歯車47と噛合している。つまり、ロック歯車47の回転が阻止されている場合、固定歯車31の回転は阻止される。固定歯車31の内歯部312は、三つの遊星歯車231と噛合している。
【0052】
かかる構成を備えるクラッチ手段において、遊星歯車231が公転し、遊星支持歯車232が回転するか否かは、固定歯車31の回転が阻止されているか否かによって決まる。固定歯車31の回転が阻止されている場合、入力側歯車22が回転すると、固定歯車31の内歯部312が動くことはないから、かかる内歯部312に沿って入力側歯車22の小径歯部222に噛合する遊星歯車231が公転し、遊星支持歯車232が回転する。一方、固定歯車31の回転が阻止されていない場合、入力側歯車22が回転し、遊星歯車231が公転しようとしても、固定歯車31が空回りするため、遊星支持歯車232が回転することはない。
【0053】
つまり、固定歯車31の回転が阻止されていれば、第一の伝達列が「継」状態となり、固定歯車31の回転が阻止されていなければ、第一の伝達列が「断」状態となる。クラッチ手段によって第一の伝達列が「継」状態、すなわち出力系統が「継」状態にあれば、同期モータ10の動力は、第一の伝達列を介して被駆動体90まで伝達される。一方、クラッチ手段によって第一の伝達列が「断」状態、すなわち出力系統が「断」状態にあれば、同期モータ10の動力はクラッチ手段で切断(入力側歯車22と出力側歯車23との間で切断)され、被駆動体90まで伝達されることはない。
【0054】
第二の伝達列は、同期モータ10の動力をクラッチ手段まで伝達するクラッチ作動系統を構成する。第二の伝達列は、第一のロータ歯車41と、第一のロータ歯車41に噛合する第一の歯車42と、第一の歯車42に噛合する第二の歯車44と、第二の歯車44が軸線方向下向きに移動すると押し下げられるロックレバー45と、押し下げられたロックレバー45によってロックされるロック歯車47と、を有する。
【0055】
第一のロータ歯車41は、同期モータ10のロータ11と一体的に形成された平歯車である。上述した第二のロータ歯車21の下(同期モータ10の本体側)に設けられている。第一のロータ歯車41の上面には、上述した第二のロータ歯車21の下面に形成された上係合部212と係合する下係合部412が形成されている。後述する扇形レバー60の傾斜カムによって第二のロータ歯車21がロータ11側に移動し、第二のロータ歯車21の上係合部212と第一のロータ歯車41の下係合部412とが係合した状態(第二のロータ歯車21が第一の位置)にあるとき、第二のロータ歯車21と第一のロータ歯車41は一体的に回転する。すなわち、同期モータ10の動力が第二のロータ歯車21にも伝達される。
【0056】
第一のロータ歯車41には、第一の歯車42が噛合している。第一の歯車42は、第一の歯車支持軸85に回転自在、かつ、軸線方向に移動可能に支持されており、駆動側歯部421とこの駆動側歯部421よりも相対的に小径の第一のはす歯部422とを有する。第一のはす歯部422は、上述したように「はす歯」に形成された部分である。第一の歯車42は、その駆動側歯部421が第一のロータ歯車41と噛合している。したがって、第一の歯車42は、第一のロータ歯車41の回転に伴って回転する。
【0057】
第一の歯車42には、第二の歯車44が噛合している。第二の歯車44は、相対的に大径の第二のはす歯部441と、相対的に小径の従動側歯部442を有する。第二の歯車44は、第二の歯車支持軸86に回転自在かつ軸線方向に移動可能に支持されている。上述したように、第二のはす歯部441は「はす歯」に形成された部分である。従動側歯部442は、負荷付与手段50が有するウォーム部51と噛合するいわゆるウォームホイール部である。なお、従動側歯部442ははす歯であってもよいし、平歯車であってもよい。
【0058】
第二の歯車44は、その第二のはす歯部441が、第一の歯車42の第一のはす歯部422と噛合している。したがって、第二の歯車44は、第一の歯車42の回転に伴って回転する。同期モータ10が正転したとき、第二の歯車44には、負荷付与手段50により、その回転方向と反対方向の負荷が掛かるため、軸線方向下向きのスラスト力が発生する。よって、第一の歯車42が回転すると、第二の歯車44は回転しつつ軸線方向下向きに移動する。
【0059】
ロックレバー45は、平板状の部材であり、第二の歯車44の下に配されている。詳しくは、軸線方向に移動可能な状態で、第二の歯車44と同じ第二の歯車支持軸86に支持されている。ロックレバー45には、図示されない凹部が形成されており、この凹部が下ケース82の側壁の内側に軸線方向に沿って形成された図示されない凸部に係合されている。かかる凸部と凹部の係合により、ロックレバー45は、回転が阻止されるとともに軸線方向に移動可能な状態で第二の歯車支持軸86に支持されている。ロックレバー45の一方の端部には、他の部分に比べて肉厚に形成されたロック部451が形成されている。ロックレバー45の下には、ロックレバー45を上向きに付勢する付勢部材46(コイルばね)が配されている。この付勢部材46により、通常時(同期モータ10が駆動していないとき)には、ロックレバー45はロック歯車47の被ロック部471より上に位置する。また、ロックレバー45の上には第二の歯車44が配されているため、第二の歯車44も軸線方向上向きに付勢された状態にある。付勢部材46の付勢力は、第一の歯車42の回転に伴って第二の歯車44が回転する際に、第二の歯車44に発生する軸線方向下向きのスラスト力より小さい。つまり、第二の歯車44が回転すると、付勢部材46の付勢力に抗して、第二の歯車44は軸線方向下向きに移動する。第二の歯車44が軸線方向下向きに移動すると、その下にあるロックレバー45も下向きに移動する。下向きに移動したロックレバー45のロック部451は、ロック歯車47の被ロック部471と略同じ高さに位置する。
【0060】
ロック歯車47は、被ロック部471と、その被ロック部471が形成された平板上のロック歯部472とを有する。被ロック部471は、円形の平板から外向きに突出するように形成されている。ロックレバー45が下向きに移動すると、ロックレバー45のロック部451とロック歯車47の被ロック部471とが向かい合うように位置するため、ロック歯車47の回転が所定位置(ロック部451と被ロック部471とが当接する位置)で阻止される。一方、ロック歯部472は、固定歯車31の外歯部311と噛合している。したがって、ロック歯車47の回転が阻止されると、それに噛合する固定歯車31の回転も阻止される。なお、本実施形態では、ロック歯車47は遠心ブレーキであるブレーキ部473を有する。ブレーキ部473は、ロック歯車47の回転を妨げる方向に負荷を掛け、ロック歯車47が必要以上に高速で回転しないようにする。かかるブレーキ部473の作用については後述する。
【0061】
ウォーム部51は、いわゆるウォーム(ギヤ)部である。第二の歯車44の軸線方向と直交する方向に延びるウォーム部51は、従動側歯部442(ウォームホイール部)と噛合している。ウォーム部51は一条であり、従動側歯部442とウォーム部51とは、増速歯車機構を構成する(従動側歯部442が一歯分回転するとウォーム部51が一回転する)。よって、第二の歯車44の回転は増速されてウォーム部51に伝達される。
【0062】
複合歯車24の上には、扇形レバー60が配されている。扇形レバー60は、複合歯車24が回転自在に支持された軸と同じ軸に回転自在に支持されている。扇形レバー60の下面には、係合突起61が形成されている。かかる係合突起61は、カム歯車25の上面に形成されたカム溝252に係合している。また、同じく扇形レバー60の下面からは、第二のロータ歯車ロック突起62と図示されない傾斜カムが形成されている。かかる係合突起61、カム溝252、第二のロータ歯車ロック突起62、および、傾斜カムの詳細については省略するが、各部材の機能は次の通りである。カム溝252に係合する係合突起61によってカム歯車25の動作に連動して扇形レバー60が動く。扇形レバー60が所定位置まで動く(ワイヤ27を所定位置まで巻き上げる)と、第二のロータ歯車ロック突起62が第二のロータ歯車21の被ロック突起211に作用し、第二のロータ歯車21の回転を阻止する。これと同時に傾斜カムによって軸線方向下向きに押さえつけられていた第二のロータ歯車21が解放され、コイルばねによって軸線方向上向きに移動する(第二のロータ歯車21が第二の位置に位置する)。これにより、第二のロータ歯車21の上係合部212と、第一のロータ歯車41の下係合部412の係合が解かれる。つまり、同期モータ10の動力が第二のロータ歯車21に伝達されない状態となる。(後述の動作説明参照)。
【0063】
(モータユニットの動作)
以上の構成を備えるモータユニット1の通常動作について説明する。以下の説明では、原位置にある被駆動体90に対し同期モータ10の動力を伝達する1)動力伝達動作と、同期モータ10の動力の伝達を遮断し被駆動体90を原位置に戻す2)動力遮断動作に分けて説明する。
【0064】
1)動力伝達動作
被駆動体90が原位置にある状態(ワイヤ27がプーリ26に巻き上げられていない状態、すなわち、同期モータ10の動力が被駆動体90に作用していない状態)から同期モータ10を一方に駆動させる(正転させる)と、第二のロータ歯車21および第一のロータ歯車41が回転する。このとき、同期モータ10が逆転した場合には、上述した逆転防止構造が働き、即座に同期モータ10は正転する。同期モータ10が駆動すると、第一のロータ歯車41の回転により、その第一のロータ歯車41に噛合する駆動側歯部421を有する第一の歯車42が回転する。
【0065】
第一の歯車42が回転すると、第一の歯車42の第一のはす歯部422と噛合する第二のはす歯部441を有する第二の歯車44が回転する。この第二の歯車44は、その従動側歯部442(ウォームホイール部)に、負荷付与手段50のウォーム部51が噛合しており、第二の歯車44の回転によって負荷付与手段50の負荷部52も回転する。負荷部52が回転し、その速度が大きくなると、回転を停止させようとする方向に負荷(トルク)が生ずる。かかる負荷は、ウォーム部51から従動側歯部442を有する第二の歯車44およびそれに噛合する第一の歯車42に伝達される。このようにして、第一の歯車42および第二の歯車44は、その回転方向とは反対の負荷を受ける。
【0066】
上述のように、第一の歯車42と第二の歯車44の間の動力の伝達は、「はす歯」の噛合によるものである。したがって、負荷付与手段50から回転方向とは反対の負荷を受けた第二の歯車44は、第一の歯車42の回転により、軸線方向下向きのスラスト力を受ける。つまり、第二の歯車44は、「はす歯」の噛合および回転方向とは反対の負荷により、回転しながら軸線方向下向きに移動する。また、上述したように、第一の歯車42は軸線方向上向きのスラスト力を受ける。
【0067】
また、本実施形態では、第二の歯車44と負荷付与手段50の噛合も「はす歯」によるものであるため、第二の歯車44に対し大きな軸線方向下向きのスラスト力が発生する。つまり、負荷部52によって発生した負荷は、ウォーム部51と従動側歯部442の噛合によって第二の歯車44に伝達されるものであるため、当該負荷の伝達による軸線方向下向きのスラスト力も第二の歯車44に発生する。
【0068】
第二の歯車44が軸線方向下向きに移動すると、その下に配されたロックレバー45が付勢部材46の付勢力に抗して軸線方向下向きに移動する。このようにしてロックレバー45が押し下げられると、ロックレバー45に設けられたロック部451は、ロック歯車47の被ロック部471と略同じ高さで、ロック歯車47の周方向で対向するように位置する。したがって、この状態になると、ロック歯車47の回転はロックレバー45のロック部451によって妨げられる。つまり、ロック歯車47の回転が阻止された状態となる。
【0069】
ロック歯車47は、そのロック歯部472が、クラッチ手段の遊星歯車列を構成する固定歯車31の外歯部311に噛合している。したがって、ロック歯車47の回転が阻止されると、固定歯車31の回転も阻止される。これにより、クラッチ手段によって第一の伝達列による動力の伝達が「継」状態となり、同期モータ10の動力が第一の伝達列を介して被駆動体90まで伝達可能な状態となる。このように、第二の歯車44は、その軸線方向下向きに移動することで、クラッチ手段を介して、第一の伝達列による動力の伝達を「継」状態とする。
【0070】
一方、同期モータ10の駆動によって第一のロータ歯車41とともに回転する第二のロータ歯車21は、遊星歯車列を構成する入力側歯車22(太陽歯車)の大径歯部221と噛合している。したがって、第二のロータ歯車21の回転に伴い、入力側歯車22が回転する。
【0071】
入力側歯車22の小径歯部222の外側には、出力側歯車23を構成する三つの遊星歯車231が噛合している。周方向に等間隔に並んだ遊星歯車231の外側には、固定歯車31の内歯部312が噛合している。上述のように、固定歯車31は、ロック歯車47によって回転が阻止された状態にある。したがって、入力側歯車22が回転すると、その小径歯部222の周りを遊星歯車231が公転する。遊星歯車231が公転すると、遊星歯車231を支持する遊星支持歯車232が回転する。つまり、入力側歯車22の回転動力が、全て出力側歯車23に伝達される。
【0072】
なお、仮に、固定歯車31の回転が阻止された状態にない場合に入力側歯車22が回転すると、遊星歯車231を介して固定歯車31が空回りする。遊星支持歯車232以降の動力伝達列には、伝達列自体の負荷や、被駆動体90にかかる負荷が存在するため、入力側歯車22の回転動力が全て固定歯車31側に伝達されてしまうからである。このように本実施形態では、遊星歯車列を利用した差動歯車機構により、クラッチ手段による第一の伝達列の「継」状態と「断」状態を切り替えている。
【0073】
遊星支持歯車232の歯車部2321には、複合歯車24の大径歯部242が噛合している。したがって、遊星支持歯車232の回転に伴い、複合歯車24が回転する。
【0074】
複合歯車24の小径歯部241には、カム歯車25の歯車部251が噛合している。したがって、複合歯車24の回転に伴い、カム歯車25が回転する。
【0075】
カム歯車25が回転すると、カム歯車25の上端に固定されたプーリ26が回転する。プーリ26が回転すると、プーリ26に固定されたワイヤ27がワイヤ溝261に沿って巻き上げられる。ワイヤ27の先端には、被駆動体90が固定されているため、被駆動体90はワイヤ27に引き上げられるように動作する。例えば、被駆動体90が洗濯機の排水口を開閉する弁体である場合には、ワイヤ27によって弁体が引き上げられることで排水口が開放され、排水が開始される。
【0076】
このように、同期モータ10の回転動力は、第一の伝達列を介して被駆動体90に伝達される。第一の伝達列はクラッチ手段によって「継」状態とされるが、そのクラッチ手段を「継」状態とする動力にも同期モータ10の回転動力の一部が利用される。
【0077】
なお、プーリ26によるワイヤ27の巻き上げは次のように停止する。カム歯車25が所定位置まで回転すると(ワイヤ27が所定量巻き上げられると)、カム溝252に係合する係合突起61を有する扇形レバー60がカム歯車25から離れる方向に回動する。このように扇形レバー60が回動すると、扇形レバー60が有する入力側歯車ロック突起62が、入力側歯車22の被ロック突起223に周方向から当接する。これにより、入力側歯車22の回転が阻止された状態となる。また、扇形レバー60の傾斜カムによって軸線方向下向きに押さえつけられていた第二のロータ歯車21が解放され、コイルばねによって軸線方向上向きに移動する(第二のロータ歯車21が第二の位置に位置する)。これにより、第二のロータ歯車21の上係合部212と、第一のロータ歯車41の下係合部412の係合が解かれ、同期モータ10の動力が第二のロータ歯車21に伝達されない状態となる。入力側歯車22の回転が停止すると、第一の伝達列を構成する各部材の動作も停止する。すなわち、プーリ26によるワイヤ27の巻き上げが停止し、当該巻き上げ位置でプーリ26が保持された状態(被駆動体90が洗濯機の排水口を開閉する弁体である場合には、排水口の開放が維持される状態)となる。このように、排水口の開放が維持された状態では、同期モータ10は駆動し続けているが、その動力は第二のロータ歯車21(第一の伝達列)に伝わらない状態である。したがって、同期モータ10にかかる負荷が小さく、消費電力を低減できる。
【0078】
このようにして、被駆動体90に対し同期モータ10の動力を伝達する動力伝達動作が完了する。
【0079】
2)動力遮断動作
上記動力伝達動作が完了した状態から被駆動体90を原位置に戻す場合、同期モータ10の駆動を停止(同期モータ10への通電を停止)する。そうすると、第一のロータ歯車41、第一の歯車42の回転が停止するため、第二の歯車44の回転も停止する。第二の歯車44の回転が停止すると、「はす歯」の噛合および負荷付与手段50が与える負荷によって生じていた、第二の歯車44に対する軸線方向下向きのスラスト力が消滅する。第二の歯車44は、その下に配されたロックレバー45とともに付勢部材46によって軸線方向上向きに付勢されているから、当該スラスト力が消滅すると第二の歯車44は回転しながら軸線方向上向きに移動し、原位置に戻る。当然ロックレバー45も当該方向に移動し、原位置に戻る。なお、付勢部材46による第二の歯車44を原位置に戻そうとする力は小さいから、第二の歯車44および負荷部52の回転速度は低く、負荷部52のおもりはドラム83に接触しない。そのため、負荷付与手段50によって第二の歯車44に作用する負荷の大きさは大きくならず、第二の歯車44がスムーズに原位置に戻る。
【0080】
ロックレバー45が付勢部材46によって上向きに移動すると、ロックレバー45のロック部451の高さ方向位置は、ロック歯車47の被ロック部471の高さ方向位置より高くなる。具体的には、ロック部451と被ロック部471とは周方向で重ならないように位置する。したがって、ロック歯車47の回転が阻止された状態は解消され、ロック歯車47は自在に回転することができる状態となる。つまり、クラッチ手段(遊星歯車列)の固定歯車31が自在に回転することができる状態、すなわちクラッチ手段が「断」状態となる。このように、第二の歯車44は、その軸線方向上向きに移動することで、クラッチ手段を介して、第一の伝達列による動力の伝達を「断」状態とする。
【0081】
被駆動体90は、自身に作用する外部負荷により、常に原位置に戻ろうとしている。例えば、被駆動体90が洗濯機の排水口を開閉する弁体であって、モータユニット1の駆動により排水口を開放する方向に弁体を動作させる場合には、弁体は常に排水口を閉鎖する方向に付勢されている。したがって、固定歯車31が自在に回転することができるクラッチ手段が「断」状態となると、被駆動体90にかかる負荷は、第一の伝達列を逆行するようにして出力側歯車23(遊星支持歯車232)まで伝達される。このようにして伝達された被駆動体90にかかる負荷に基づくエネルギは、クラッチ手段が「断」状態となっているため、出力側歯車23の空転によって出力(消費)される。これにより、被駆動体90は原位置に戻る。
【0082】
さらに、カム歯車25が原位置に戻ると、カム溝252に係合する係合突起61を有する扇形レバー60がカム歯車25に近づく方向に回動する。このように扇形レバー60が回動すると、扇形レバー60が有する入力側歯車ロック突起62が、入力側歯車22の被ロック突起223から離れる。これにより、入力側歯車22の回転が許容された状態となる。また、コイルばねで軸線方向上向きに付勢されていた第二のロータ歯車21は、傾斜カムに押さえつけられ、軸線方向下向きに移動する(第二のロータ歯車21が第一の位置に位置する)。これにより、第二のロータ歯車21の上係合部212と、第一のロータ歯車41の下係合部412が係合し、同期モータ10の動力が第二のロータ歯車21にも伝達される状態となる。
【0083】
この際、ロック歯車47のブレーキ部473は、被駆動体90が原位置に戻ろうとする動作にブレーキをかけ、第一の伝達列にかかる衝撃をやわらげる。そのため、第一の伝達列を構成する動力伝達部材の破損を防ぐことができる。また、被駆動体90が原位置に戻る際、度当たりに衝突する衝撃音(被駆動体90が、洗濯機の排水口を開閉する弁体である場合には、かかる弁体が排水口の周囲に衝突する衝撃音)を低減することができる。
【0084】
このように、同期モータ10を停止すれば、付勢部材46の作用によって遊星歯車列を構成する固定歯車31のロックが解除され、クラッチ手段が第一の伝達列を「断」状態とする。これにより、被駆動体90は原位置に戻る。
【0085】
(本実施形態の効果)
以上説明した本実施形態にかかるモータユニット1によれば、次のような作用効果が奏される。本実施形態にかかるモータユニット1では、第一のはす歯部422と第二のはす歯部441のはす歯同士の噛合および負荷付与手段50の負荷によって発生するスラスト力を利用して、第一の歯車42を逆転防止部材43側(下側)に付勢する。つまり、第一の歯車42を逆転防止部材43側に付勢する付勢部材などを別途設ける必要がない。したがって、部品点数の増加や装置の大型化を招くことのない逆転防止構造を備えたモータユニット1とすることができる。
【0086】
また、第一のはす歯部422と第二のはす歯部441との噛合および負荷付与手段50によって、第一の歯車42にはスラスト力が生じる。したがって第二の歯車44にもその反対のスラスト力が生じる。本実施形態では、その第二の歯車44に生じるスラスト力を利用して、同期モータ10の動力を被駆動体90まで伝達するか否かを切り替えるためのクラッチ手段を「継」「断」するものである。
【0087】
すなわち、本実施形態にかかるモータユニット1では、第一のはす歯部422と第二のはす歯部441との噛合および負荷付与手段50によって、逆転防止構造を動作させるとともに、第一の伝達列を「継」「断」するクラッチ手段をも動作させることができる。このように、モータユニット1は、はす歯の噛合および負荷付与手段50によって第一の歯車42およびそれに噛合する第二の歯車44に発生するスラスト力を、逆転防止構造を機能させることに利用しただけでなく、クラッチ手段を動作させることに利用した点で優れるものである。
【0088】
また、本実施形態では、第一の歯車42の軸線方向端面(下面)と逆転防止部材43(上面)との間には、グリスが介在されているため、グリスの粘性によって逆転防止部材43が第一の歯車42にくっついた状態となる。さらに、逆転防止部材43が第一の歯車42にくっついた状態になると、第一の歯車42を付勢する付勢機構の付勢力がなくても、グリスの粘性によって逆転防止部材43は第一の歯車42と同じ方向に回転する。つまり、第一の歯車42を付勢する付勢機構の付勢力は、第一の歯車42を逆転防止部材43側に移動させることで逆転防止部材43が第一の歯車42にくっついた状態にする力があればよい。このようなグリスの粘性が作用していれば、第一の歯車42を付勢する付勢機構の付勢力、すなわち第一の歯車42に生じるスラスト力を小さくすることができる。このようにスラスト力を小さくすることができれば、第一のはす歯部422およびそれに噛合する第二のはす歯のねじれ角(傾斜角度)を小さくすることができるため、第一の歯車42と第二の歯車44との間における動力(回転動力)の伝達ロスが抑えられる。
【0089】
また、本実施形態では、第一の歯車42が有する駆動側歯部421は、同期モータ10の第一のロータ歯車41と直接噛合している。したがって、同期モータ10が逆転するとその動力が即座に第一の歯車42に伝達されるため、すぐに逆転防止部材43が回転する。したがって、逆転した同期モータ10を即座に正転させることができる。また、同期モータ10の回転速度が低い状態で逆転防止部材43の当接部432が逆転防止当接部411の回転軌跡Tに重なる位置まで移動するため、逆転防止部材43の当接部432および逆転防止当接部411にかかる力が小さく、これらの部材を小さくすることができる。
【0090】
また、本実施形態では、負荷付与手段50として、第一の歯車42の回転により回転する遠心ブレーキを採用している。上述したように、かかる遠心ブレーキは、負荷部52の回転速度が所定値以上でなければ全く機能しない。これに対し、本実施形態にかかるモータユニット1では、第一の歯車42の駆動側歯部421が同期モータ10の第一のロータ歯車41と直接噛合しているめ、同期モータ10から第一の歯車42までの減速比が小さい。したがって、遠心ブレーキ(負荷部52)を所定値以上の回転速度で回転させるための、第一の歯車42から遠心ブレーキまでの増速機構が簡単である(複数段の増速機構を構築し、遠心ブレーキの回転速度を上げたりする必要がない)。例えば、本実施形態のように、ウォームホイール部(従動側歯部442)とウォーム部51の噛合によって、第一の歯車42から遠心ブレーキまでの増速機構を構成することができる。
【0091】
また、本実施形態では、同期モータ10と第一の歯車42の回転方向が逆である。例えば同期モータ10と第一の歯車42の回転方向が同じであり、逆転防止当接部411と逆転防止部材43の角速度が近い場合、逆転防止当接部411と逆転防止部材43が当接するまで(正転に切り替わるまで)の時間が長くなる可能性がある。しかし、同期モータ10と第一の歯車42の回転方向が逆であれば、同期モータ10が逆転した際、逆転防止当接部411と逆転防止部材43が即座に(一回転未満で)当接する。すなわち、すばやく同期モータ10を正転させることができる。
【0092】
また、本実施形態では、第一の歯車42の軸線方向上向きの移動は、上ケース81によって規制される構造である。しかし、上ケース81の成形誤差や変形、その他の部材の組立誤差などにより組立が困難になるおそれがあることから、上ケース81と第一の歯車42の端面との間には、これらの誤差等を考慮したクリアランスが設定されるため、このクリアランスが設定された分、第一の歯車42が逆転防止部材43から離れる方向に移動するおそれがある。しかし、本実施形態にかかるモータユニット1は、上記付勢機構によって確実に第一の歯車42を逆転防止部材43側に付勢することができる。
【0093】
また、本実施形態では、第二のロータ歯車21がロータ11側の第一の位置に位置するときには、第一のロータ歯車41と第二のロータ歯車21が係合し、ロータ11の回転によって両ロータ歯車41,21が一体的に回転する一方、第二のロータ歯車21がロータ11から離れた側の第二の位置に位置するときには、ロータ11の回転が第二のロータ歯車21に伝達されない構成である。したがって、ロータ11を軸線方向に移動させることなく、モータの動力が第二のロータ歯車21(第一の伝達列)に伝達されるか否かを切り替えることができる。
【0094】
また、本実施形態では、第二の歯車44は、第二のはす歯部441と、負荷付与手段50を駆動させる動力伝達部材に噛合される歯部であって第二のはす歯部441と同じ軸周りに回転する第二のはす歯部441よりも小径の従動側歯部442と、が一体的に形成された複合歯車である。そのため、第二の歯車44が軸線方向に移動しても、第二の歯車44の従動側歯部442と第一の歯車42の第一のはす歯部422が干渉しない。
【0095】
以上、本発明の実施の形態について詳細に説明したが、本発明は上記実施の形態に何ら限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の改変が可能である。
【0096】
例えば、上記実施形態では、負荷部50に遠心ブレーキを用いたが、負荷部50はウォーム部51の回転速度が大きくなるとブレーキ力が大きくなる構成であればよい。例えば、ウォーム部51の先端にマグネットを固定して、このマグネットの周囲にコイルを配置した発電機によってブレーキ力を得てもよい。
【符号の説明】
【0097】
1 モータユニット
10 同期モータ
11 ロータ
21 第二のロータ歯車
41 第一のロータ歯車
411 逆転防止当接部
412 下係合部
42 第一の歯車
421 駆動側歯部
422 第一のはす歯部
43 逆転防止部材
44 第二の歯車
441 第二のはす歯部
442 従動側歯部
50 負荷付与手段

【特許請求の範囲】
【請求項1】
同期モータを駆動源とし、この同期モータの一定量以上の逆転を阻止し正転させる逆転防止構造を備えたモータユニットであって、
前記逆転防止構造は、
前記同期モータの動力が伝達され前記同期モータと平行な軸周りに回転するとともに、その軸線方向に移動可能である第一の歯車と、
この第一の歯車における一方の軸線方向端面に面接触することによる摩擦力によって第一の歯車の回転方向に回転する逆転防止部材と、
前記同期モータが逆転した際に、その逆転するモータの動力を受けた前記第一の歯車の回転方向に回転する前記逆転防止部材に当接し、前記同期モータのそれ以上の逆転を阻止する前記同期モータのロータに設けられた逆転防止当接部と、
前記同期モータが逆転した際に、前記第一の歯車をその軸線方向における前記逆転防止部材側に付勢する付勢機構と、を備え、
前記付勢機構は、
前記第一の歯車に形成された第一のはす歯部と、
この第一のはす歯部に噛合する第二の歯車に形成された第二のはす歯部と、
前記第一の歯車の回転に負荷を与える負荷付与手段と、を有し、
前記同期モータが逆転した際に、前記第一のはす歯部と前記第二のはす歯部のはす歯同士の噛合および前記負荷付与手段の負荷によって発生するスラスト力により、前記第一の歯車をその軸線方向における前記逆転防止部材側に付勢することを特徴とするモータユニット。
【請求項2】
前記第一の歯車の軸線方向端面と前記逆転防止部材との間には、グリスが介在されていることを特徴とする請求項1に記載のモータユニット。
【請求項3】
前記第一の歯車が有する前記第一のはす歯部またはそれ以外の歯部が、前記同期モータのロータと一体的に回転する歯車の歯部に直接噛合していることを特徴とする請求項1または請求項2に記載のモータユニット。
【請求項4】
前記負荷付与手段は、前記第一の歯車の回転により回転する遠心ブレーキであることを特徴とする請求項3に記載のモータユニット。
【請求項5】
前記同期モータと前記第一の歯車は、回転方向が逆であることを特徴とする請求項1から請求項4のいずれか一項に記載のモータユニット。
【請求項6】
前記同期モータの動力を被駆動体に伝達する一または複数の動力伝達部材を有する第一の伝達列と、
前記第一の伝達列による動力の伝達を「継」状態もしくは「断」状態に切り替えるクラッチ手段と、
前記同期モータの動力を前記クラッチ手段に伝達する、前記第一の歯車および前記第二の歯車を有する第二の伝達列と、
前記第二の歯車をその軸線方向の一方側に付勢する付勢部材と、をさらに備え、
前記モータの駆動時には、前記第二の歯車は、前記第一のはす歯部と前記第二のはす歯部のはす歯同士の噛合および前記負荷付与手段の負荷によって発生するスラスト力により、回転しつつ前記付勢部材の付勢力に抗して前記軸線方向の他方側に移動し、前記クラッチ手段を介して前記第一の伝達列による動力の伝達を「継」状態とする一方、
前記モータが駆動状態から停止すると、前記第二の歯車は、前記付勢部材の付勢力により、前記負荷付与手段の負荷に逆らって回転しつつ前記軸線方向の一方側に移動し、前記クラッチ手段を介して前記第一の伝達列による動力の伝達を「断」状態とすることを特徴とする請求項1から請求項5のいずれか一項に記載のモータユニット。
【請求項7】
固定軸に回転自在に支持された前記同期モータのロータは、前記第一の歯車が有する駆動側歯部に噛合する第一のロータ歯車を有し、
前記第一の伝達列は、前記固定軸に回転自在に支持されその軸線方向に移動可能な第二のロータ歯車を有し、
この第二のロータ歯車が前記ロータ側の第一の位置に位置するときには、前記第一のロータ歯車と前記第二のロータ歯車が係合し、前記ロータの回転によって両ロータ歯車が一体的に回転する一方、
前記第二のロータ歯車が前記ロータから離れた側の第二の位置に位置するときには、前記ロータの回転が前記第二のロータ歯車に伝達されないことを特徴とする請求項6に記載のモータユニット。
【請求項8】
前記第二の歯車は、前記第二のはす歯部と、前記負荷付与手段を駆動させる動力伝達部材に噛合される歯部であって前記第二のはす歯部と同じ軸周りに回転する前記第二のはす歯部よりも小径の従動側歯部と、が一体的に形成された複合歯車であることを特徴とする請求項6または請求項7に記載のモータユニット。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate

【図13】
image rotate

【図14】
image rotate

【図15】
image rotate


【公開番号】特開2013−31240(P2013−31240A)
【公開日】平成25年2月7日(2013.2.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−163820(P2011−163820)
【出願日】平成23年7月27日(2011.7.27)
【出願人】(000002233)日本電産サンキョー株式会社 (1,337)
【Fターム(参考)】