説明

モータ及びそれを用いた送風装置

【課題】フレームやフレームハウジングを樹脂化しても、ステータやスリーブの取り付け保持を容易に、かつ確実に行なうことのできるモータ及びそれを用いた送風装置を提供することを目的とする。
【解決手段】コイルを巻装したステータ8と、ステータ8の外周に設けられ、ファンブレード5を備えたロータ15と、ロータ15を回転させる回転軸13を保持するスリーブ12と、スリーブ12を固定する樹脂製のフレームハウジング6とを備え、ステータ8を押し付けて固定するとともに、フレームハウジング6を押し付けてスリーブ12を固定する固定具14を設けたことを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば電子機器の筐体内部に実装されるCPUなどの発熱体の冷却装置に使用されるモータ及びそれを用いた送風装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来のモータとして、(特許文献1)に示すようなものがある。(特許文献1)に示されているモータでは、送風ファンの筐体であるフレーム及び送風ファンの回転軸を支持するフレームハウジングを構成するのに金属が用いられている。また他には、フレームを樹脂成形し、フレームハウジングのみ金属が用いられる場合もある。これらの場合には、金属を含むフレームハウジングは十分な強度を持つために、ステータはフレームハウジングの周囲に、フレームハウジングに対して圧入されていた。さらに、送風ファンの回転軸を支持するスリーブは、固定金具でフレームハウジング内の底部側に押さえつけられて固定されている。なお、(特許文献1)のモータは流体軸受であすが、流体軸受でなくてもフリー部をフレームハウジングの底部側に向けて固定する必要がある場合がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第3815028号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、このような構成では、フレームやフレームハウジングを金属製で構成する分だけモータ本体の重量は重くなるし、そのコストも高いものとなる。更に、フレームやフレームハウジングに金属を使用するためにフレームやフレームハウジングの加工に際し加工に時間がかかりコストが上乗せされてしまうという課題を有していた。
【0005】
そこで、本発明は上記課題に鑑みてなされたものであり、モータの軽量化や低コスト化のためにフレームやフレームハウジングを樹脂化し、フレームやフレームハウジングを樹脂化してもステータやスリーブの取り付け保持を容易に、かつ確実に行なうことのできるモータ及びそれを用いた送風装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
そこで本発明は上記課題を解決するためになされたものであり、コイルを巻装したステータと、ステータの外周に設けられたロータと、ロータの回転軸を保持するスリーブと、スリーブを内部に収納する樹脂製のフレームハウジングと、フレームハウジングの周囲に設けられ、ステータとスリーブとを固定する固定部材と、を備え、固定部材は、ステータをフレームハウジング底部方向に押し付けて固定するとともに、フレームハウジングを回転軸の中心方向に押し付け、フレームハウジングを介してスリーブをフレームハウジング底部方向に固定することを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
以上の構成により、本発明は、モータのフレームやフレームハウジングを樹脂化しても、その樹脂化したフレームハウジングを利用してステータやスリーブの取り付け保持を容易に、かつ確実に行なうことができ、そしてフレームやフレームハウジングを樹脂化したことでモータ本体の軽量化や低コスト化ができるという効果を有するものである。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】本実施形態における送風装置の分解図
【図2】(a)本実施形態におけるファンフレームに搭載されたステータを示す斜視図、(b)図2(a)のA−Aにおける断面図
【図3】本実施形態におけるステータの拡大図
【図4】図3のB−Bにおける断面図
【図5】本実施形態における送風装置の斜視断面図
【図6】本実施形態における送風装置の中心部の斜視断面図
【図7】(a)本実施形態における送風装置のフレームハウジングの斜視図、(b)図7(a)のC−Cにおける断面図
【図8】(a)本実施形態における送風装置の固定部材の斜視図、(b)図8(a)のD−Dにおける断面図
【発明を実施するための形態】
【0009】
請求項1に記載の発明は、コイルを巻装したステータと、ステータの外周に設けられたロータと、ロータの回転軸を保持するスリーブと、スリーブを内部に収納する樹脂製のフレームハウジングと、フレームハウジングの周囲に設けられ、ステータとスリーブとを固定する固定部材と、を備え、固定部材は、ステータをフレームハウジング底部方向に押し付けて固定するとともに、フレームハウジングを回転軸の中心方向に押し付け、フレームハウジングを介してスリーブをフレームハウジング底部方向に固定することを特徴とするモータであって、モータのフレームやフレームハウジングを樹脂化しても、その樹脂化したフレームハウジングを利用してステータやスリーブの取り付け保持を容易に行なうことができ、そしてモータ本体の軽量化や低コスト化ができる。
【0010】
請求項2に記載の発明は、固定部材は、リング状の薄板でその内辺側において傾斜部を有していることを特徴とする請求項1に記載のモータであって、この形状を有することで固定部材はフレームハウジングに取り付けやすくかつ一度取り付けると抜けにくくなるので確実にフレームハウジングに固定させることができる一方、固定部材を押し込むことでフレームハウジングの一部を回転軸の中心方向へ押し込めることが容易になる。
【0011】
請求項3に記載の発明は、固定部材の内周の径Pは、フレームハウジング先端の外径をQとした時に、P<Qであることを特徴とする請求項2に記載のモータであって、固定部材はフレームハウジングの側壁を内側に押し込むことができ、押し込まれたフレームハウジングの内側側壁がスリーブを覆うようにでき、スリーブは確実に固定保持されることができる。さらにこの設定により、固定部材はフレームハウジングの側壁の反発力を受けて、フレームハウジングの外側でステータを固定しながら固定部材自身をも固定保持することができる。
【0012】
請求項4に記載の発明は、フレームハウジングは、その一端側に回転軸方向に延びるスリットを設けたことを特徴とする請求項1に記載のモータであって、スリットを設けることで固定部材はスリットがあるところのフレームハウジングの側壁を内側に押し込みやすくし、押し込まれたフレームハウジングの内側側壁がスリーブを覆うようにでき、スリーブは確実に固定保持されることができ、固定部材自身もフレームハウジング外壁に固定保持しやすくすることができる。
【0013】
請求項5に記載の発明は、スリットの長さZは、フレームハウジングの長さをX、スリーブの長さをYとした時に、Z>X−Yであることを特徴とする請求項4に記載のモータであって、このように設定することで、固定部材はスリットがあるところのフレームハウジングの側壁を内側に押し込みやすくし、押し込まれたフレームハウジングの内側側壁がスリーブを覆うようにでき、スリーブは確実に固定保持されることができる。
【0014】
請求項6に記載の発明は、請求項1に記載のモータを備えたことを特徴とする送風装置であって、モータのフレームやフレームハウジングを樹脂化しても、その樹脂化したフレームハウジングを利用してステータやスリーブの取り付け保持を容易に行なうことができ、そしてモータを含む送風装置の軽量化や低コスト化ができる。
【0015】
以下、本発明の実施形態について図面を参照して説明する。
【0016】
(実施形態)
本実施形態では、本発明のモータ及びそれを用いた送風装置を発熱備品の冷却に使用する場合について説明する。
【0017】
以下、本発明の実施形態について、図面を用いて説明する。
【0018】
図1は、本発明の実施形態における送風装置の分解図である。図1に示すように、送風装置1のファンケース2は、下部に位置するファンフレーム2aとその上部に位置するファンカバー2bにより構成されている。ここで、ファンフレーム2aは、樹脂成型やアルミニウム合金のダイカスト成型などにより底面と側面が一体的に形成される。その一方の側面に吸気した空気を排気する排気口3が配設されており、その底面には吸気口4が配設されている。また、ファンカバー2bは、アルミニウムやステンレス鋼などの金属材料の打ち抜き成形や樹脂成形によりプレート状に成形されており、その中央部に空気を吸気する略円形状の吸気口4が配設されている。送風装置1の軽量化や低コスト化のためにファンフレーム2aは樹脂成形で作られることが多い。
【0019】
そして、そのファンフレーム2aとファンカバー2bとに挟まれて収容されるようにファンブレード5が配置される。ファンブレード5が高速で回転すると、ファンカバー2bの中央部に配設された吸気口4と、ファンフレーム2aの底面に配設された吸気口4とから、空気が吸気される。吸気された空気がファンブレード5の回転運動によりファンケース2の内部でファンブレード5の遠心方向へと風向きが変えられる。従って、吸気された空気の大部分はファンフレーム2aやファンカバー2bの内壁にぶつかりながら、その内壁に沿ってファンブレード5の回転方向と同一の方向へそれらの空気が送られて排気口3から排気される。
【0020】
送風装置1におけるそれぞれの配置について、図2を用いて詳細に説明する。図2(a)は本実施形態におけるファンフレームに搭載されたステータを示す図、図2(b)は図2(a)のA−Aにおける断面図である。
【0021】
送風装置1には、ファンフレーム2aに形成されたフレームハウジング6が設けられている(詳細は後述する)。そのフレームハウジング6の外周に沿って、送風装置1を制御する回路基板7が設けられ、その回路基板7に接続するように上部には、ステータ8が設けられている。
【0022】
そのステータ8の外周には、ステータ8を覆うようにファンブレード5を設けたロータが設けられている。
【0023】
図2に示すように、フレームハウジング6に沿って、ファンフレーム2aの底面側から、回路基板7、ステータ8の順に配置され、ロータの内周にはロータマグネットが設けられ、ロータの回転軸は、フレームハウジング6によって軸支されている。ロータの回転によってファンブレード5が回転する。
【0024】
ここで、ステータ8及びその周辺の構成の1例について説明する。図3は本実施形態におけるステータの拡大図、図4は図3のB−Bにおける断面図である。
【0025】
ステータ8は、磁性材料からなる金属板を回転軸の軸方向に積層して形成されたもので、各ティース部8aには電着塗装などによって絶縁層が形成され、この絶縁層を介してコイル9が巻装されている。このように絶縁層を構成することによって絶縁層の厚みが薄く形成することができ、巻装するコイル9の長さが短くできるのでモータの効率を向上させることができる。なお、絶縁部材としては絶縁層の代わりに絶縁材で構成しても良い(例えば図5)が、絶縁層のほうが上述した効果が得られる。
【0026】
ステータ8には回路基板7を固定する接続ピンであるピン11を保持するピンホルダ10が備えられる。ピンホルダ10はピン受け部10a、当接部10b、爪部10cを備える。ピン11はピンホルダ10の四隅に設けられたピン受け部10aに設けられたピン受け穴10dに圧入される。四隅のピン受け部10a間は回路基板7と当接する当接部10bによって接続されている。本実施形態においては当接部10bの回路基板7側には凹凸が設けられ、凸部が回路基板7と当接し、少なくともピン受け部10a及びその周囲は凹部であって回路基板7には当接しないようになっている。このように凹凸を形成することによって、ピン受け部10a及び当接部10bの凹部と回路基板7との間には隙間が生じ、その隙間でコイル9の端部をピンに絡ませて半田付けすることにより、コイル9とピン11との接続を簡単に行うことができる。ピン受け部10aのファンカバー2b側には爪部10cが設けられ、当接部10b及び爪部10cによってステータ8を挟み込むことによって、ピンホルダ10とステータ8を固定している。
【0027】
ピンホルダ10の材料は例えば樹脂であるが、これに限定されるものではない。本実施形態においては成型された樹脂によってピンホルダ10を構成している。本実施形態においては、ファンブレード5の回転軸方向のピン受け部10aの長さは3〜5mm程度であり、ピン受け部10a間の長さ、すなわち当接部10bの長さは6〜8mm程度である。本実施形態では4つのピン受け部10aの高さ及び4つの当接部10bの長さはそれぞれ均一としているが、必ずしもそうである必要はない。
【0028】
また、ピン11は金属からなり、本実施形態においてはめっき処理を施している。断面は略正方形であり一辺を0.2〜0.8mmとし、長さは4〜5mmとしている。ピン受け穴10dの直径は、例えばピン11の断面の対角線が0.55mmのときに対角線の長さよりも少し小さくなるよう0.5mmなどに設定され、ピン11をピン受け穴10dに圧入することによってピンホルダ10とピン11はしっかり固定される。コイル9の端部はピン11に絡ませることでピン11に電気的接続及び固定保持され、図4に示すようにピン11は回路基板7に設けられた貫通孔で固定され、半田付けによってピン11と回路基板7との電気的接続及び固定保持をすることができる。なお、図3においては4つのピン受け穴10dのうち1つにピン11が圧入されていないが、4つのピン受け穴10dすべてにピン11を圧入しても良い。
【0029】
次に、ファンブレード5を回転させる回転軸13を保持するスリーブ12とフレームハウジング6について図を用いて説明する。図5は本実施形態における送風装置の斜視断面図、図6は本実施形態における送風装置の中心部の斜視断面図でロータ15を取り外した図、図7(a)は本実施形態における送風装置のフレームハウジングの斜視図、図7(b)は図7(a)のC−Cにおける断面図、図8(a)は本実施形態における送風装置の固定部材の斜視図、図8(b)は図8(a)のD−Dにおける断面図である。ここでは、図3、4とは異なり、ピンホルダを備えず、絶縁部材であるインシュレータがその役割を担っている。
【0030】
本実施形態では、送風装置1の回転軸13は流体軸受であるスリーブ12によって保持されている。流体軸受は液体や空気の薄い膜を介して回転軸を保持するものであって、回転軸が高速で回転する場合や高負荷であった場合に利用される。回転部に流体軸受を採用することでほとんど摩擦無しで長寿命や低騒音を達成することができる。もちろん、本願発明は、流体軸受方式のモータに限られるものではない。
【0031】
図5および図6に示すように、ファンフレーム2aに突出形成された凹状のフレームハウジング6の周囲にはコイルが巻かれたステータ8が設置されている。ステータ8は、磁性材料からなる金属板を回転軸13の軸方向に積層して形成されている。そのステータ8の外周には、ステータ8を覆うようにファンブレード5を設けたロータ15が設けられている。
【0032】
ロータ15の内周にはマグネット16が設けられ、ロータ15の回転軸13はフレームハウジング6によって軸支されている。フレームハウジング6と回転軸13の間には軸受の作用を行なうスリーブ12が取り付けられている。ロータ15の回転によってファンブレード5が回転し、送風動作が行なわれることとなる。
【0033】
軽量化と低コスト化のためにファンフレーム2aとフレームハウジング6はガラス入りのポリブチレンテレフタレートなどの樹脂の一体成形で作られている。なお、一体成形でなく、別々の成形物で組み合わせても良い。
【0034】
ステータ8はそれ自身が確実に固定されていないとファンの動作により振動などが発生することがあるので、ステータ8をステータ位置決め段差部6bに向けてすなわちフレームハウジング6の底部方向に向けて押し付けることが必要になる。なお、フレームハウジング6の底部方向とは、図5の下側であり、ステータ8よりも回路基板7側である。
【0035】
また、軸受の役目を果たすスリーブ12もフレームハウジング6内で固定されず遊びがあるとスリーブ12や回転軸13の寿命が極端に低下してしまうので、スリーブ12をフレームハウジング6の底部方向に向けて押し付けて固定することが必要になる。
【0036】
しかし、ファンフレーム2aとフレームハウジング6は樹脂製であるので、それらの強度不足のためにフレームハウジング6にステータ8やスリーブ12を圧入して固定することは難しく、無理に圧入してしまうと樹脂製のフレームハウジング6にダメージを与えることとなる。
【0037】
そこで、フレームハウジング6にステータ8やスリーブ12を容易に固定保持する本実施形態の構成について詳細に説明する。
【0038】
図6に示すように、フレームハウジング6の凹部にスリーブ12が挿入されている。そして、フレームハウジング6の外周部に設けたステータ位置決め段差部6bに向けてフレームハウジング6の外側にステータ8が挿入されている。フレームハウジング6にステータ8とスリーブ12が挿入された後に、固定具14がフレームハウジング6の底部方向に向けて押し付けられる。
【0039】
なお、固定具14は絶縁部材またはステータ8に形成された絶縁膜などを介してステータ8を押さえつけても良いし、ファンフレーム2aとフレームハウジング6は樹脂製であるので何も介さず直接押し付けても良い。
【0040】
また、フレームハウジング6の外周部に設けたステータ位置決め段差部6bについては、このステータ位置決め段差部6bを設けず、代わりに別部材を用いて構成しても良いし、要するにステータ8をフレームハウジング6の外周部に固定できれば良い。
【0041】
フレームハウジング6上方に設けられたスリット6aにより、フレームハウジング6上方は内側へ撓ませることができる。これにより、固定具14をフレームハウジング6へ押し込むとともにフレームハウジング6を内側に撓ませ、スリーブ12をフレームハウジング6の一部で覆うように外側から固定保持することができる。
【0042】
また、固定具14は厚さおよそ1mm以下の薄いステンレス板でリング状に作られているので、この固定具14は一種の弾性部材の性質を持っている。本実施形態では固定具14の厚みは0.5mmとした。したがって、この固定具14がフレームハウジング6下方へ押し込まれていってステータ8を押し込んだ時点で、スリット6aをもつフレームハウジング6からの反発力で、固定具14そのものがフレームハウジング6に固定される。
【0043】
すなわち、弾力性のある固定具14でステータ8とスリーブ12の両者をフレームハウジング6に固定するとともに、固定具14自身の弾力性とスリット6aをもったフレームハウジング6の反発力によって固定具14自身も固定される。
【0044】
このように、モータのファンフレーム2aやフレームハウジング6を樹脂化し、樹脂材料の弾性性質を利用してステータ8やスリーブ12の取り付け保持を固定具14ひとつで容易に行なうことができる。
【0045】
次に、図7と図8を用いて本実施形態のスリット6aと固定具14について説明する。
【0046】
図7を用いてフレームハウジング6に設けたスリット6aについて説明する。ファンフレーム2aに突出形成された凹状のフレームハウジング6の外側にはステータ8を受ける段差であるステータ位置決め段差部6bが形成されている。一方、フレームハウジング6の上部(スリット6a以外の部分)にはスリーブ12を固定保持するために使用する数箇所のスリット6aが形成されている。スリット6aの幅はおよそ0.5〜1.5mm内で設定されるが、本実施形態では1mmとした。スリット6aの数はフレームハウジング6の1周当たり2〜6個程度あれば固定保持する機能を果たすが、適宜設計によって決定すれば良い。
【0047】
なお、本実施形態では周方向に90°間隔の4個とした。4個のスリット6aを対向するように形成したことで、フレームハウジング6の上部(スリット6a以外の部分)はスリーブ12を均一に押さえ込みやすくすることができる。
【0048】
また、図6においてフレームハウジング6の凹部の深さをX、スリーブ12の長さをYとした場合、スリット6aの深さZはZ>X−Yとなるように設定する。本実施形態では、スリット6aはZ=2mmで、スリーブ12の上面12aより下方0.5mmまで伸びている。
【0049】
このようにスリット6aがスリーブ12の上面12aより下方まで伸びるように形成されることで、固定具14はスリット6aがあるところのフレームハウジング6の側壁を内側に押し込みやすくし、押し込まれたフレームハウジング6の内側側壁がスリーブ12を覆うようにでき(押し込まれたフレームハウジング6の内壁がスリーブ12上部の角部に押し当てられる)、スリーブ12は確実に固定保持されることができる。
【0050】
次に、図8を用いてステータ8とスリーブ12を固定保持する固定具14について説明する。
【0051】
図8に示すように固定具14は薄いリング形状になっている。また、固定具14は好ましくは2つの面14a、14bを備えている。面14aと面14bとはθなる角度を有している。なお、θは20<θ<70°の範囲からなり、本実施形態ではθ=45°とした。フレームハウジング6やステータ8やスリーブ12の大きさ寸法により適宜決定すれば良い。また、面14aと面14bは平面とは限らず、湾曲した面の場合でも良い。
【0052】
すなわち、固定具14の上部側の内径(面14aがある部分に対応)は下部側の内径(面14bがある部分に対応)よりも小さくなっている。この形状により、フレームハウジング6(図6参照)の外側に容易に取り付けやすく、そして固定具14を押し込むことでフレームハウジング6を内側へ押し込めることができやすくなる。
【0053】
固定具14の上部側にある面14aはフレームハウジング押さえ部として働き、固定具14の下部側にある面14bはステータ押さえ部として働く。
【0054】
この形状を有することで固定具14はフレームハウジング6に取り付けやすくかつ一度取り付けると抜けにくくなるので確実にフレームハウジング6に固定させることができる一方、固定具14を押し込むことでフレームハウジング6の一部を回転軸13(図5参照)の中心方向へ押し込めることが容易になる。
【0055】
ここで、固定具14の面14aがある部分の内径をP、フレームハウジング6の先端の外径(図7参照)をQとした場合、P<Qになるように設定する。本実施形態では、上述した面14aと面14bとがなす角度θをもってP<Qに設定している。
【0056】
このように設定することで、固定具14はスリット6aがあるところのフレームハウジング6の側壁を内側に押し込むことができ、押し込まれたフレームハウジング6の内側側壁がスリーブ12を覆うようにでき(押し込まれたフレームハウジング6の内壁がスリーブ12上部の角部に押し当てられる)、スリーブ12は確実に固定保持されることができる(図6参照)。
【0057】
さらにこの設定により、固定具14はスリット6aがあるところのフレームハウジング6の側壁の反発力をも受けて、フレームハウジング6の外側でステータ8を固定しながら固定具14自身をも固定保持することができる(図6参照)。
【0058】
以上のように、モータのファンフレーム2aやフレームハウジング6を樹脂化しても、その樹脂化したフレームハウジング6を利用してステータ8やスリーブ12の固定保持を固定具14ひとつで容易に、かつ確実に行なうことができ、そして、ファンフレーム2aやフレームハウジング6を樹脂化したことでモータ本体の軽量化や低コスト化ができる。
【0059】
本実施形態の送風装置は、筐体(図示せず)に設けられコイル9を巻装したステータ8と、ステータ8の外周に設けられ、ファンブレード5を備えたロータ15と、ロータ15を回転させる回転軸13を保持するスリーブ12と、スリーブ12を固定する樹脂製のフレームハウジング6とを備え、ステータ8を押し付けて固定するとともに、フレームハウジング6を押し付けてスリーブ12を固定する固定部材を設けている。
【0060】
これで、モータのファンフレーム2aやフレームハウジング6を樹脂化しても、その樹脂化したフレームハウジング6を利用してステータ8やスリーブ12の固定保持を固定具14ひとつで容易に行なうことができ、そして、その構成を用いることでモータを含む送風装置本体の軽量化や低コスト化ができる。
【産業上の利用可能性】
【0061】
本発明のモータ及びそれを用いた送風装置によれば、例えばノートPCなどの電子機器を冷却するモータ及びそれを用いた送風装置として有用である。
【符号の説明】
【0062】
1 送風装置
2 ファンケース
2a ファンフレーム
2b ファンカバー
3 排気口
4 吸気口
5 ファンブレード
6 フレームハウジング
6a スリット
6b ステータ位置決め段差部
7 回路基板
8 ステータ
9 コイル
10 ピンホルダ
11 ピン
12 スリーブ
13 回転軸
14 固定具
14a、14b 面
15 ロータ
16 マグネット

【特許請求の範囲】
【請求項1】
コイルを巻装したステータと、
前記ステータの外周に設けられたロータと、
前記ロータの回転軸を保持するスリーブと、
前記スリーブを内部に収納する樹脂製のフレームハウジングと、
前記フレームハウジングの周囲に設けられ、前記ステータと前記スリーブとを固定する固定部材と、を備え、
前記固定部材は、前記ステータを前記フレームハウジング底部方向に押し付けて固定するとともに、前記フレームハウジングを前記回転軸の中心方向に押し付け、前記フレームハウジングを介して前記スリーブを前記フレームハウジング底部方向に固定することを特徴とするモータ。
【請求項2】
前記固定部材は、リング状の薄板でその内辺側において傾斜部を有していることを特徴とする請求項1に記載のモータ。
【請求項3】
前記固定部材の内周の径Pは、前記フレームハウジング先端の外径をQとした時に、P<Qであることを特徴とする請求項2に記載のモータ。
【請求項4】
前記フレームハウジングは、その一端側に前記回転軸方向に延びるスリットを設けたことを特徴とする請求項1に記載のモータ。
【請求項5】
前記スリットの長さZは、前記フレームハウジングの長さをX、前記スリーブの長さをYとした時に、Z>X−Yであることを特徴とする請求項4に記載のモータ。
【請求項6】
請求項1に記載のモータを備えたことを特徴とする送風装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2013−48501(P2013−48501A)
【公開日】平成25年3月7日(2013.3.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−185494(P2011−185494)
【出願日】平成23年8月29日(2011.8.29)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】