説明

モータ装置

【課題】複数の機構を1つのモータで動かすモータ装置において、所望シート位置への再生時間を短縮することを目的とする。
【解決手段】本発明のモータ装置10は、車両用シート20のスライド機構21と前方上下機構22及び後方上下機構23とリクライニング機構24を動作するモータ11と、このモータ11の駆動を制御するシートECU12とで構成されており、シートECU12にメモリを設けることで、車両用シート20の現在位置及び記憶位置を記憶し比較を行うことで、各機構の動作方向を検出しモータ11の回転方向と一致する機構を動作させることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、1つのモータの正転又は逆転により、車両用シートの前後位置と車両用シートの前後における上下位置と背もたれの角度の合計8つの動作を行うモータの制御に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、車両用シートに使用されるモータとして、例えば、特許文献1に記載する「パワーシート調節装置」が提案されている。
【0003】
この特許文献1のパワーシート調節装置では、シートの前後位置を調節するスライド機構と、シートの前方側上下位置を調節する前方側上下機構と、シートの後方側上下位置を調節する後方側上下機構と、シートの背もたれ角度を調節するリクライニング装置と、正逆両方向に回転可能な単一モータを備え、それぞれ独立に又は複数の気候を同時に作動可能に構成されている。
【0004】
上記のように構成することで、1つのモータで複数の機構を作動することが可能となるため、低コストで利便性の高い車両用シートを実現している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平08−188073号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、上記に示す構造では、1つのモータで複数の機構を動かす場合において、モータの回転方向と各機構の動作方向が一致していなければ、複数の機構を同時に動かすことができない構造となっている。そのため、モータの回転方向と動作方向が一致する機構を検出する回転検出器を設けなければならない。この回転検出器は、パルス信号によりモータの回転方向と動作方向が一致する機構を検出するものであり、シートポジションを変更する度に、モータの回転方向と動作方向が一致する機構を検出する必要があるため、シートポジションを変更する際に時間を要していた。
【0007】
そこで、本発明は上記に示す課題を解決するためになされたものであり、複数の機構を1つのモータで動かすモータ装置において、所望シート位置への再生時間を短縮することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記に示す課題を解決するために本発明のモータ装置は、車両用シートのスライド機構と前方上下機構及び後方上下機構とリクライニング機構を動作するモータと、このモータの駆動を制御するシートECUとで構成されており、シートECUにメモリを設けることで、車両用シートの現在位置及び現在位置の1つ前の位置を記憶し比較を行い、各機構の動作方向を検出しモータの回転方向と一致する機構を動作させることを技術的特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
請求項1記載のモータ装置によれば、モータの回転方向と各機構の動作方向が一致する機構を短時間で検出でき、モータの回転方向と一致する機構を同時に動作させることが可能となるため、所望のシート位置への再生時間を短縮することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明のモータ装置を備える車両用シートの側面図を示す図である。
【図2】本発明のモータ装置を示す図である。
【図3】メモリの現在位置と記憶位置を示す図である。
【図4】モータ装置の動作手順を示す図である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下に、本発明の実施形態について図面を用いて説明する。本実施例ではモータ装置10を車両用シート20に適用した例を説明する。
【0012】
まず、車両用シート20の構成について図1を参照して説明する。
車両用シート20は、図1に示すように、乗員が着座するシートクッション及び乗員の背もたれとなるシートバックから成る座席の前後位置を調節するスライド機構21と、座席の前方における上下位置を調節する前方上下機構22と、座席の後方における上下位置を調節する後方上下機構23と、座席の背もたれの角度を調節するリクライニング機構24と、乗員の操作により各機構を動作しシートポジションの変更を指示するスイッチ25を備える。ここで、各機構は、後述するモータ11が駆動することで、車両用シート20を前後に移動したり、車両用シート20前方及び後方を上下に昇降したり、リクライニングの角度を変更することが可能である。
【0013】
次に、本発明のモータ装置10について説明する。
モータ装置10は、図2に示すように、車両用シート20のスライド機構21と前方上下機構22及び後方上下機構23とリクライニング機構24の各機構を動作するモータ11と、このモータ11の駆動の制御を行うシートECU12で構成される。
【0014】
モータ11は、図2に示すように、車両用シート20のシートクッション又はシートバックに設けられ、車両用シート20に備えるスイッチ25が操作されることによって正転、停止、逆転を行い、各機構を動作する。また、モータ11の回転方向と各機構の動作方向が一致するものがあれば、複数の機構を同時に動作することが可能な構造とする。
【0015】
シートECU12は、車両用シート20のシートポジションの変更を指示するスイッチ25を操作することによって生じるシート作動指令信号に基づいて、モータ11の駆動を制御するものであって、シートポジションの変更を指示するスイッチ25の回路に組み込まれる。また、このシートECU12は、各機構の現在位置及び現在位置の1つ前の位置(以下、記憶位置)を記憶するメモリ13が設けられる。このメモリ13は、図3に示すように、各機構の現在位置及び記憶位置を記憶することで、モータ11の回転方向と一致する各機構の動作方向を検出することが可能となる。
【0016】
続いて、本実施例に係るモータ装置10の動作について図3及び図4を参照し説明する。
車両用シート20は、車両のエンジンがかかると同時にシートECU12により現在のスライド位置と前方上下位置と後方上下位置とリクライニング角度をそれぞれ記憶する。
【0017】
乗員が車両用シート20に着座しスイッチ25の操作を行うことにより車両用シート20は、シートポジションを変更する。ここで、乗員が車両用シート20のスイッチ25を操作することで、モータ11の回転方向が決定し、シートECU12に情報が伝達する。
【0018】
モータ11の回転方向を検出したシートECU12は、各機構の動作方向を検出するためメモリ13からエンジン始動時に記憶した記憶位置を呼び出して、モータ11の回転方向と一致する機構の比較を行い、各機構の動作方向の検出を行う。ここで、各機構の動作方向を検出したシートECU12は、モータ11の回転方向と一致する複数の機構を同時に動作して車両用シート20を所望のシート位置へ移動させることにより車両用シート20の再生時間を短縮することができる。
【符号の説明】
【0019】
10 モータ装置
11 モータ
12 シートECU
13 メモリ
20 車両用シート
21 スライド機構
22 前方上下機構
23 後方上下機構
24 リクライニング機構
25 スイッチ


【特許請求の範囲】
【請求項1】
乗員が着座する座席の前後位置を調節するスライド機構と、前記座席の前方において上下位置を調節する前方上下機構と、前記座席の後方において上下位置を調節する後方上下機構と、前記座席の背もたれの角度を調節するリクライニング機構を備える車両用シートの各機構の動作を行うモータと、
該モータの正転と停止と逆転の駆動を制御するシートECUとで構成されるモータ装置であって、
前記シートECUに各機構の現在位置及び記憶位置を記憶するメモリを設けることを特徴とするモータ装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2012−46157(P2012−46157A)
【公開日】平成24年3月8日(2012.3.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−194417(P2010−194417)
【出願日】平成22年8月31日(2010.8.31)
【出願人】(000143639)株式会社今仙電機製作所 (258)
【Fターム(参考)】