説明

モータ駆動制御回路及びそれを用いたモータ装置

モータドライバを構成する素子をより安全な動作領域で動作させることができるモータ駆動制御回路を提供する。このモータ駆動制御回路6は、基準電圧電源23の電圧制限基準電圧と端子SIGのモータの回転数を制御する回転数制御電圧の低い方と、モータ2の駆動電流を検出するインピーダンス素子12からのピーク電圧と、を比較する回転制御増幅器13と、この電圧制限基準電圧と実質的に等しい電圧とピーク電圧とを比較する回転制限比較器24と、回転制御増幅器13の出力電圧に応じてモータからの回転位置検出信号を増幅する合成回路17と、この出力と三角波電圧とを比較してPWM信号を出力するPWM出力比較器18と、このPWM信号のオン期間から回転制限比較器24の出力期間を除去してモータ2を駆動するモータドライバ7を制御するモータドライバ制御回路20と、を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、PWM(Pulse Width Modulation)制御方式のモータ駆動制御回路及びそれを用いたモータ装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来のPWM制御方式のモータ駆動制御回路を用いたモータ装置を図4に示す。同図に示すモータ装置101は、モータ102と、モータ102を駆動するモータドライバ107と、モータドライバ107を制御するモータ駆動制御回路106と、を備える。
【0003】
モータ102は、回転子109と、回転子109の回転を制御するU相、V相、W相のコイルLU、LV、LWと、回転子109の位置(位相)を検出するホール素子H、H、Hと、回転子109の回転数を検出する回転数カウンタ104と、から構成される。モータドライバ107は、3個の電源側出力トランジスタTUU、TVU、TWUと3個の接地側出力トランジスタTUL、TVL、TWLとから構成される。モータ駆動制御回路106は、モータ102の駆動電流を電圧に変換する電流検出抵抗112と、この電圧を受けて後述するPWM信号のオン期間のピーク電圧を保持するピークホールド回路114と、このピーク電圧と基準電圧電源123の電圧制限基準電圧と信号入力端子SIGの回転数制御電圧とを入力し、電圧制限基準電圧及び回転数制御電圧の低い方とピーク電圧とを比較する回転制御増幅器113と、回転制御増幅器113の出力に接続される、例えば0.01μF程度の発振防止用コンデンサ122と、ホール素子H、H、Hのホール信号を入力して増幅出力するホールアンプ116と、その出力を入力し、それぞれについて一定位相(例えば30°)進め、回転制御増幅器113の出力電圧に応じた増幅度で増幅して出力する合成回路117と、三角波を発生出力する三角波発生器119と、図6に示すように合成回路117の出力である極性判別信号UHL、VHL、WHLと三角波とを比較してPWM信号UPWM、VPWM、WPWMを出力するPWM出力比較器118と、PWM信号に基づく制御信号をモータドライバ107に出力するモータドライバ制御回路120と、から構成される。
【0004】
モータ102の回転数カウンタ104は、その検出出力をCPUよりなるモータ制御指令部(図示せず)に入力している。CPUは、所望のモータ回転数に対応する指令信号(回転数制御電圧)をモータ駆動制御回路106の信号入力端子SIGに出力する。もし、回転数カウンタ104の検出出力が所望のモータ回転数より低くなった場合、CPUは所望のモータ回転数になるよう回転数制御電圧を高くする。そうすると、回転制御増幅器113は、回転数制御電圧がピーク電圧よりも高くなるため、その出力電圧が上昇する。したがって、合成回路117は、増幅度が上がって極性判別信号UHL、VHL、WHLの振幅が大きくなり、PWM出力比較器118は、オン期間の大きいデューティ比のPWM信号UPWM、VPWM、WPWMを生成し、モータドライバ制御回路120よりこのPWM信号に基づく制御信号をモータドライバ107に出力する。その結果、モータドライバ107がモータ102のU相、V相、W相のコイルL、L、Lに流す駆動電流が増加するので、モータ102の回転数は高くなる。そして、この駆動電流は電流検出抵抗112で電圧に変換され、そのピーク電圧が上述のように信号入力端子SIGの回転数制御電圧と比較される。このループ動作を繰り返し、その結果、検出電圧のピーク電圧が回転数制御電圧と一致すると安定する。
【0005】
ここで、モータ102に過負荷がかかった時(以下、異常時)、例えばモータ102がコピー機の紙送りのアクチュエータとして用いられている場合に紙がつまった時などには、回転数カウンタ104の検出回転数が低くなることから、CPUはモータ102の回転数を高くするために、検出回転数に応じて回転数制御電圧を高くする。しかし、モータ102の回転数は高くならないために、その回転数制御電圧は過大に上昇する。そして、基準電圧電源123の電圧制限基準電圧を超えると、この電圧制限基準電圧の方が低くなるのでピーク電圧と比較されるようになる。こうして、回転数制御電圧が過大に上昇した場合に、モータドライバ107がモータ102のU相、V相、W相のコイルL、L、Lに流す駆動電流が増加し過ぎて素子が破壊されるのを防止するのである(例えば特許文献1)。
【0006】
【特許文献1】特開2003−111481号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上述したように、CPUからの回転数制御電圧が過大に上昇し基準電圧電源123の電圧制限基準電圧を超えると、回転制御増幅器113において電圧制限基準電圧が回転数制御電圧に代わってピーク電圧と比較されることとなる。ところが、回転制御増幅器113の出力には0.01μF程度の発振防止用のコンデンサ122が接続されていることから、その出力が遅延し合成回路117において反映されるのに時間を要し、さらにPWM出力比較器118の出力、そして最終出力であるモータ102の回転数に反映されるのに時間を要する。
【0008】
図5は電流検出抵抗112によって検出される異常時の電圧波形を示している。同図の電圧Eは、基準電圧電源123の電圧制限基準電圧であり、この電圧以下がモータドライバ107を構成する素子が破壊されない領域、すなわち素子の安全動作領域である。上述した回転制御増幅器113の出力の遅延によりPWM出力比較器118に入力する極性判別信号UHL、VHL、WHLの振幅は余分な大きさを含んだものとなり、PWM出力比較器118からはデューティ比に余分なオン期間を含んだPWM信号UPWM、VPWM、WPWMが出力され、モータドライバ107は余分な駆動電流を流すことになる。このように、従来のモータ装置にあっては、素子の安全動作領域を超えてモータドライバ107が動作する期間(図5中の例えば点A−Bに示す期間)が生じている。また、この期間に消費される電力は無駄な電力となるものである。
【0009】
この対策として、予め発振防止用のコンデンサ122に起因する遅延時間による余分な電圧を予測して基準電圧電源123の電圧制限基準電圧を低めに設定することも考えられる。しかし、異常時における負荷は一定ではないので、電流検出抵抗112によって検出される電圧のピーク値は例えば図5における電圧Cや電圧Dのように変化する。したがって、この対策を実際に用いるのは難しい。
【0010】
本発明は、係る事由に鑑みてなされたものであり、その目的は、モータドライバを構成する素子をより安全な動作領域で動作させることができるモータ駆動制御回路を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記目的を達成するために、本発明の望ましい実施形態に係るモータ駆動制御回路は、モータの駆動電流を検出するインピーダンス素子に発生する電圧のピーク電圧と電圧制限基準電圧とモータの回転数を制御する回転数制御電圧とを入力し、電圧制限基準電圧及び回転数制御電圧の低い方とピーク電圧とを比較する回転制御増幅器と、前記電圧制限基準電圧と実質的に等しい電圧と前記ピーク電圧とを入力して比較する回転制限比較器と、回転制御増幅器の出力電圧に応じてモータの回転位置検出信号を増幅する合成回路と、合成回路の出力と三角波発生器の三角波電圧とを比較してPWM信号を出力するPWM出力比較器と、このPWM信号と回転制限比較器の出力信号を入力し、PWM信号のオン期間から回転制限比較器の出力期間を除去してモータを駆動するモータドライバを制御するモータドライバ制御回路と、を備える。
【0012】
このモータ駆動制御回路は、望ましくは、回転制御増幅器、回転制限比較器、PWM出力比較器及びモータドライバ制御回路を半導体基板に集積してなる。
【0013】
本発明の望ましい実施形態に係るモータ装置は、上述のモータ駆動制御回路と、このモータ駆動制御回路によって制御されるモータドライバと、モータドライバによって駆動されるモータと、を備える。
【発明の効果】
【0014】
本発明の望ましい実施形態に係るモータ駆動制御回路及びそれを用いたモータ装置は、回転制御増幅器と並列的に回転制限比較器を設けているので、モータドライバを構成する素子をより安全な動作領域で動作させることができ、しかも無駄な電力消費を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明の実施形態に係るモータ装置の全体構成図である。
【図2】同上のモータドライバ制御回路の動作波形図である。
【図3】同上の電流検出抵抗により検出された電圧の波形図である。
【図4】従来のモータ装置の全体構成図である。
【図5】同上の電流検出抵抗により検出された電圧の波形図である。
【図6】PWM出力比較器の入力及び出力の波形図である。
【符号の説明】
【0016】
1 モータ駆動制御装置 2 モータ 4 回転数カウンタ 6 モータ駆動制御回路 7 モータドライバ 12 電流検出抵抗(インピーダンス素子) 13 回転制御増幅器 14 ピークホールド回路 16 ホールアンプ 17 合成回路 18 PWM出力比較器 19 三角波発生器 20 モータドライバ制御回路 22 発振防止用コンデンサ 23、25 基準電圧電源 24 回転制限比較器H、H、H ホール素子
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下、本願発明を実施するための最良の形態であるPWM制御方式のモータ駆動制御回路及びそれを用いたモータ装置を、図1に基づいて説明する。図1に示すモータ装置1は、モータ2と、モータ2を駆動するモータドライバ7と、モータドライバ7を制御するモータ駆動制御回路6と、を備える。
【0018】
モータ2は、永久磁石で構成された回転子9と、回転子9の回転を制御するY結線されたU相、V相、W相のコイルLU、LV、LWと、回転子9の位置(位相)を検出して回転位置検出信号(ホール信号)を出力するホール素子H、H、Hと、モータ2(回転子9)の回転数を検出する回転数カウンタ4と、から構成される。ホール素子H、H、Hの回転位置検出信号(ホール信号)は、それぞれU相、V相、W相における差動の正弦波H、H、H、H、H、Hであり、各相の間の位相差は120°である。また、回転数カウンタ4の検出出力はCPUよりなるモータ制御指令部(図示せず)に入力されており、CPUは、この検出出力に基づいてモータ2を所望の回転数にするための回転数制御電圧を生成し、モータ駆動制御回路6の信号入力端子SIGに出力する。
【0019】
モータドライバ7は、N型MOSトランジスタである3個の電源側出力トランジスタTUU、TVU、TWUと3個の接地側出力トランジスタTUL、TVL、TWLとから構成される。電源側出力トランジスタTUUのソースと接地側出力トランジスタTULのドレインとがモータ2のU相のコイルLUに、電源側トランジスタTVUのソースと接地側出力トランジスタTVLのドレインとがモータ2のV相のコイルLVに、電源側トランジスタTWUのソースと接地側出力トランジスタTWLのドレインとがモータ2のW相のコイルLWに、それぞれ接続されている。また、電源側出力トランジスタTUU、TVU、TWUのドレインはモータ駆動用電源VMに接続され、接地側トランジスタTUL、TVL、TWLのソースは、後述するインピーダンス素子である電流検出抵抗12を介してグランドに接続されている。そして、これらの出力トランジスタTUU、TVU、TWU、TUL、TVL、TWLのゲートには、後述するモータドライバ制御回路20のPWM信号出力が入力されている。モータ2のU相のコイルLUからV相のコイルLVに電流を流すときには、モータドライバ制御回路20からのPWM出力を受けて電源側出力トランジスタTUUと接地側出力トランジスタTVLとがオンになる。また、V相のコイルLVからW相のコイルLWに電流を流すときには、電源側出力トランジスタTVUと接地側出力トランジスタTWLとがオンになる。また、W相のコイルLWからU相のコイルLUに電流を流すときには、電源側出力トランジスタTWUと接地側出力トランジスタTULとがオンになる。このように、モータドライバ制御回路20のPWM出力を受けて電源側出力トランジスタと接地側出力トランジスタがスイッチングされ、それに基づくオン・オフのデューティ比の変化により、モータ2へ供給する電流量を変化させてその回転数を制御する。
【0020】
モータ駆動制御回路6は、モータ2の駆動電流を電圧に変換する前述のインピダンス素子である電流検出抵抗12と、この電圧を受けてPWM信号のオン期間のピーク電圧を保持するピークホールド回路14と、このピーク電圧と基準電圧電源23の電圧制限基準電圧と信号入力端子SIGの回転数制御電圧とを入力し、電圧制限基準電圧及び回転数制御電圧の低い方とピーク電圧とを比較する回転制御増幅器13と、基準電圧電源23と実質的に等しい基準電圧電源25の電圧とピーク電圧とを入力して比較する回転制限比較器24と、回転制御増幅器13の出力に接続される発振防止用コンデンサ22と、ホール素子H、H、Hの回転位置検出信号を入力して増幅出力するホールアンプ16と、その出力を入力し、それぞれについて一定位相進め、回転制御増幅器13の電圧に応じて増幅して極性判別信号UHL、VHL、WHLを出力する合成回路17と、三角波を発生出力する三角波発生器19と、この三角波と極性判別信号UHL、VHL、WHLとを比較してPWM信号UPWM、VPWM、WPWMを出力するPWM出力比較器18と、回転制限比較器24の出力信号とPWM出力比較器18のPWM信号UPWM、VPWM、WPWMとからモータドライバ7を制御する信号を出力するモータドライバ制御回路20と、を備える。
【0021】
電流検出抵抗12には、PWM信号のオン期間に駆動電流が流れ、PWM信号のオフ期間にはモータドライバ7の各トランジスタがオフしているので駆動電流は流れない。また、電流検出抵抗12には、U相、V相、W相のオン期間の駆動電流が全て流れ、それぞれの位相によって変動する。ピークホールド回路14は、PWM信号のオン期間に電流検出抵抗12が検出した電圧のピーク電圧をPWM信号のオフの期間保持するが、徐々に放電して一定の時定数で電圧が下がるようにしている。
【0022】
回転制御増幅器13は、1つの反転入力端子と、2つの非反転入力端子を有し、ピークホールド回路14のピーク電圧が反転入力端子に、基準電圧電源23の電圧制限基準電圧と信号入力端子SIGの回転数制御電圧とが2つの非反転入力端子に、それぞれ入力され、上述のように、電圧制限基準電圧及び回転数制御電圧の低い方とピーク電圧とが比較される。また、回転制御増幅器13の出力に接続される発振防止用コンデンサ22は、回転制御増幅器13、合成回路17、PWM出力比較器18、モータドライバ制御回路20、モータドライバ7、電流検出抵抗12、ピークホールド回路14で構成するループにおいて発振を防止するために位相補償をするコンデンサであり、例えば0.01μF程度の容量値である。
【0023】
回転制限比較器24は、ピークホールド回路14のピーク電圧が非反転入力端子に、基準電圧電源23と実質的に等しい基準電圧電源25の電圧が反転入力端子に、それぞれ入力される。ここで、重要なことは、回転制限比較器24の出力には、回転制御増幅器13の出力に接続されるコンデンサ22のように大きな容量値のコンデンサが接続されておらず、しかもその出力は直接モータドライバ制御回路20に入力されていることである。すなわち、回転制限比較器24の出力は、後述のように異常時(モータ2に過負荷がかかった時)にモータドライバ制御回路20において、発振防止用コンデンサ22による遅延に起因するPWM信号の余分なオン期間を除去するために用いるのである。したがって、基準電圧電源25の電圧は、このモータドライバ制御回路20の所望の動作を実現できるのであれば基準電圧電源23の電圧と完全に同一である必要はない。
【0024】
ホールアンプ16は、ホール素子Hの回転位置検出信号(ホール信号)H、Hを非反転入力端子、反転入力端子にそれぞれ受けるU相用の差動アンプと、ホール素子Hの回転位置検出信号H、Hを非反転入力端子、反転入力端子にそれぞれ受けるV相用の差動アンプと、ホール素子Hの回転位置検出信号H、Hを非反転入力端子、反転入力端子にそれぞれ受けるW相用の差動アンプと、から構成される。これらの差動アンプは、それぞれの回転位置検出信号の差動電圧を一定増幅率で増幅して出力する。
【0025】
合成回路17は、ホールアンプ16のU相用、V相用、W相用の差動アンプの回転位置検出信号出力を入力し、回転制御増幅器13の出力電圧に応じて増幅して極性判別信号UHL、VHL、WHLを出力する。この増幅度の調整は、合成回路17内の差動増幅器(図示せず)の電流源を回転制御増幅器の出力電圧で調整することによって行う。また、それぞれの入力信号について一定位相(例えば30°)進めるのは、モータ2の回転子9を最も効率的よく回転させるためのタイミングで磁場を加えるためである。
【0026】
PWM出力比較器18は、三角波発生器19の三角波を反転入力端子に、合成回路17のU相の極性判別信号UHLを非反転入力端子に、それぞれ入力して比較するU相用の比較器と、三角波を反転入力端子に、V相の極性判別信号VHLを非反転入力端子に、それぞれ入力して比較するV相用の比較器と、三角波を反転入力端子に、W相の極性判別信号WHLを非反転入力端子に、それぞれ入力して比較するW相用の比較器と、から構成される。したがって、位相差が120°のU相、V相、W相の極性判別信号UHL、VHL、WHLのそれぞれについて、三角波よりも電圧が高い期間がハイレベルのオン期間となるPWM信号UPWM、VPWM、WPWMが出力される。
【0027】
モータドライバ制御回路20は、PWM出力比較器18のPWM信号(入力PWM)(UPWM、VPWM、WPWM)を入力し、上述したように、モータドライバ7の電源側出力トランジスタと接地側の出力トランジスタのスイッチングを制御するPWM信号を出力する。また、モータドライバ制御回路20は回転制限比較器24の出力信号(RL)を入力し、異常時の場合、図2の波形図に示すように、発振防止用コンデンサ22による遅延に起因するPWM信号の余分なオン期間を除去するために、PWM信号のオン期間から回転制限比較器24のパルス出力期間が差し引かれて出力される(出力PWM)。なお、異常時でない場合は、回転制限比較器24のパルス出力はないので、オン期間がそのままのPWM信号がモータドライバ7に出力される。
【0028】
次に、モータ2の回転数を変化させる場合の動作を説明する。モータ2の回転数を高くする場合は、CPUから信号入力端子SIGに入力される回転数制御電圧が高くなる。そうすると、回転制御増幅器13において、回転数制御電圧がピークホールド回路14のピーク電圧よりも高くなるため、その出力電圧は上昇する。そして、合成回路17から出力される極性判別信号UHL、VHL、WHLの振幅は大きくなり、PWM出力比較器18ではオン期間の大きいデューティ比のPWM信号が生成され、モータドライバ制御回路20を介してモータドライバ7に出力される。その結果、モータドライバ7がモータ2のU相、V相、W相のコイルL、L、Lに流す駆動電流が増加するので、モータ2の回転数は高くなる。そして、この駆動電流は電流検出抵抗12で電圧に変換され、そのピーク電圧がまた回転数制御電圧と比較される。この動作のループを繰り返し、その結果、ピーク電圧が回転数制御電圧と一致すると安定する。
【0029】
逆に、モータ2の回転数を低くする場合は、CPUから信号入力端子SIGに入力される回転数制御電圧が低くなる。そうすると、モータ2の回転数を高くする場合とは逆に回転制御増幅器13、合成回路17、PWM出力比較器18が動作
し、その結果、モータドライバ7がモータ2のU相、V相、W相のコイルL、L、Lに流す駆動電流が減少するので、モータ2の回転数は低くなる。そして、上述と同様のループを繰り返し、その結果、ピーク電圧が回転数制御電圧と一致すると安定する。
【0030】
異常時(モータ2に過負荷がかかった時)には、回転数カウンタ4で検出される回転数が少なくなることから、モータ2の回転数を高くするために、CPUはモータ駆動制御回路6の信号入力端子SIGに出力する回転数制御電圧を高くする。しかし、モータ2の回転数は高くならないために、その回転数制御電圧は過大に上昇する。そして、回転制御増幅器13では、基準電圧電源23の電圧制限基準電圧を超えると、この電圧制限基準電圧が回転数制御電圧に代わってピーク電圧と比較されることとなる。そして、電圧制限基準電圧とピークホールド回路14のピーク電圧の比較結果が回転制御増幅器13から出力され、合成回路17の出力、さらにPWM出力比較器18の出力、そして最終出力であるモータ2の回転数に反映される。このように、回転数制御電圧が過大に上昇した場合に、モータドライバ7がモータ2のU相、V相、W相のコイルL、L、Lに流す駆動電流が増加し過ぎて素子が破壊されるのを防止するのである。
【0031】
この回転制御増幅器13の動作と並行して、回転制限比較器24では、回転数制御電圧が過大に上昇し、それに伴ってピークホールド回路14のピーク電圧が基準電圧電源25の電圧を超えるとその出力はハイレベルに変化してモータドライバ制御回路20に入力される。一方、発振防止用コンデンサ22が接続された回転制御増幅器13の出力信号が遅延することにより、PWM出力比較器18に入力する極性判別信号UHL、VHL、WHLの振幅は余分な大きさを含んだものとなり、PWM出力比較器18からデューティ比に余分なオン期間を含んだPWM信号がモータドライバ制御回路20に出力される。モータドライバ制御回路20では、図2の波形図に示すように、PWM信号のオン期間から回転制限比較器24の出力期間(ハイレベル期間)を差し引くことにより、PWM信号の余分なオン期間を除去する。そして、PWM信号がオフになると、モータドライバ7及び電流検出抵抗12を介してピークホールド回路14のピーク電圧が下がるので回転制限比較器24の出力はローレベルに戻る。
【0032】
図3は電流検出抵抗12によって検出されるモータ装置1の異常時の電圧波形を示している。同図の電圧Eは基準電圧電源23の電圧制限基準電圧であり、この電圧以下がモータドライバ7を構成する素子が破壊されない領域、すなわち素子の安全動作領域である。電流検出抵抗12の検出電圧はほぼ電圧E以下にあり、上述した図5の電圧波形の点A−Bに示す期間のように検出電圧が電圧Eを大きく超える期間は存在しない。
【0033】
以上の説明より明らかなように、モータ装置1は、モータ駆動制御回路6に回転制御増幅器13と並列的に回転制限比較器24を設けているので、回転制御増幅器13の出力の遅延による余分な駆動電流を抑制することができ、モータドライバを構成する素子をより安全な動作領域で動作させることが可能になる。また、このモータ駆動制御回路6のうち、少なくとも回転制御増幅器13と、回転制限比較器24と、合成回路17と、PWM出力比較器18と、モータドライバ制御回路20と、を半導体基板に集積して1つの半導体装置とすることでモータ装置1を小型化することができる。
【0034】
なお、本願発明は、上述した実施形態に限られることなく、請求の範囲に記載した事項の範囲内でのあらゆる設計変更が可能である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
モータの駆動電流をから検出するインピーダンス素子に発生する電圧のピーク電圧と電圧制限基準電圧とモータの回転数を制御する回転数制御電圧とを入力し、電圧制限基準電圧及び回転数制御電圧の低い方とピーク電圧とを比較する回転制御増幅器と、 前記電圧制限基準電圧と実質的に等しい電圧と前記ピーク電圧とを入力して比較する回転制限比較器と、 回転制御増幅器の出力電圧に応じてモータの回転位置検出信号を増幅する合成回路と、 合成回路の出力と三角波発生器の三角波電圧とを比較してPWM信号を出力するPWM出力比較器と、 このPWM信号と回転制限比較器の出力信号を入力し、PWM信号のオン期間から回転制限比較器の出力期間を除去してモータを駆動するモータドライバを制御するモータドライバ制御回路と、 を備えることを特徴とするモータ駆動制御回路。
【請求項2】
請求項1に記載のモータ駆動制御回路において、 回転制御増幅器、回転制限比較器、PWM出力比較器及びモータドライバ制御回路を半導体基板に集積してなることを特徴とするモータ駆動制御回路。
【請求項3】
請求項1又は請求項2に記載のモータ駆動制御回路と、このモータ駆動制御回路によって制御されるモータドライバと、モータドライバによって駆動されるモータと、を備えることを特徴とするモータ装置。

【図1】
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【図2】
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【図4】
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【図6】
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【図3】
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【図5】
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【国際公開番号】WO2005/071827
【国際公開日】平成17年8月4日(2005.8.4)
【発行日】平成19年9月6日(2007.9.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−517325(P2005−517325)
【国際出願番号】PCT/JP2005/001152
【国際出願日】平成17年1月27日(2005.1.27)
【出願人】(000116024)ローム株式会社 (3,539)
【Fターム(参考)】