説明

モータ駆動方法、装置、およびクレーン装置

【課題】インバータのコストアップを回避しつつ、燃料消費率の改善と環境負荷の低減(騒音・排気の抑制)を実現する。
【解決手段】発電機2が発生する電力をインバータ3によって所定の周波数の電力に変換しモータ4に供給する。制御装置6により全体の動作を制御する。制御装置6は、操作器5からの速度指令を受け、モータ目標回転数Nmtp までモータ4の回転数を変化させるために必要なエンジン1の回転数Nesp を1500〜1800rpmの範囲内で算出する。そして、エンジン1へ速度指令を送り、エンジン1の回転数をNesp に合わせ込むと同時に、インバータ3へモータ速度指令を送り、モータ4の回転数をNmtp に合わせ込む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、エンジンで発電機を駆動して電力を発生させ、この発電機が発生する電力によってモータを駆動するモータ駆動方法および装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、クレーンや車両などにおいては、ディーゼルエンジンで三相交流発電機を駆動して電力を発生させ、この発電機が発生する電力によって三相交流モータを駆動している。以下、このエンジンと発電機を用いたモータ駆動方式をエンジン駆動発電方式と呼ぶ。
【0003】
このエンジン駆動発電方式では、発電機が発生する電力の周波数を一定とするために、すなわちモータへ供給する電力の周波数を一定とするために、一定回転数でエンジンを駆動している(特許文献1参照)。例えば、モータへの供給電力の周波数を60Hzとする場合にはエンジンの回転数を1800rpmとし、50Hzとする場合には1500rpmとする。
【0004】
一般的な特徴として、ディーゼルエンジンの出力(PS)当たりの燃料消費率は、エンジンの回転数が低いほど少なくなる。例えば、回転数を2000rpmから1400rpmに下げることにより、ディーゼルエンジンの出力当たりの燃料消費率は5%程度改善される(図5(a)参照)。
また、ディーゼルエンジンの燃料消費率は、負荷率が75%より下がると悪くなり、50%では燃料消費率が10%程度悪くなる。
また、ディーゼルエンジンの出力は回転数が上がるほど大きくなり(図5(b)参照)、2000rpmから2200rpm付近で最大となる。2200rpmを過ぎると、トルクの急激な減少により出力が下がるのが普通であり、エンジンの回転数が上がるほど発生する騒音と排気量が増える性質を持つことが知られている。
【0005】
ここで、従来のエンジン駆動発電方式について考えてみるに、従来のエンジン駆動発電方式では、操作器からのモータへの速度指令が変化し、その速度指令に応ずる目標回転数が変化すると、その目標回転数までモータの回転数を変化させるために必要なエンジンの回転数(必要エンジン回転数)を算出し、この算出された必要エンジン回転数にエンジンの回転数を合わせ込み、これと同時に、速度指令に応ずる目標回転数にモータの回転数を合わせ込むように制御される。
【0006】
【特許文献1】特開2000−282897号公報
【特許文献2】特開2005−218225号公報
【非特許文献1】「マトリクスコンバータの実用化への技術を開発」、〔平成16年1月22日検索〕、インターネット<URL:http://www.fujielectric.co.jp/news/02121001/main.html>
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、このような従来技術では、エンジン回転数の変化に応じて発電機からの発電電力の周波数が大きく変動するため、発電電力を変換してモータへ供給するインバータも、発電電力の周波数変動に対応する必要があり、インバータのコストアップにつながるという問題点があった。
本発明はこのような課題を解決するためのものであり、インバータのコストアップを回避しつつ、燃料消費率の改善と環境負荷の低減(騒音・排気の抑制)を実現できるモータ駆動方法、装置、およびクレーン装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
このような目的を達成するために、本発明にかかるモータ駆動方法は、エンジンで三相交流発電機を駆動して電力を発生させ、この三相交流発電機が発生する電力によってモータを駆動するモータ駆動方法において、三相交流発電機が発生する電力を所定の周波数の電力に変換しモータに供給する周波数変換工程と、モータの回転数を操作器からの速度指令に応ずる目標回転数まで変化させるために必要なエンジンの必要回転数を、1500〜1800rpmの範囲内で算出する必要エンジン回転数算出工程と、エンジンの回転数を必要エンジン回転数に、モータの回転数を目標回転数に合わせ込む回転数制御工程とを備えている。
【0009】
この際、必要エンジン回転数算出工程で、1500〜1800rpmの範囲内で予め設けられている複数の異なるエンジン回転数のうちのいずれか1つを必要エンジン回転数として選択するようにしてもよい。
【0010】
また、本発明にかかるモータ駆動装置は、エンジンで三相交流発電機を駆動して電力を発生させ、この三相交流発電機が発生する電力によってモータを駆動するモータ駆動装置において、三相交流発電機が発生する電力を所定の周波数の電力に変換しモータに供給する周波数変換手段と、モータの回転数を操作器からの速度指令に応ずる目標回転数まで変化させるために必要なエンジンの必要エンジン回転数を、1500〜1800rpmの範囲内で算出する必要エンジン回転数算出手段と、エンジンの回転数を必要エンジン回転数に、モータの回転数を目標回転数に合わせ込む回転数制御手段とを備えている。
【0011】
この際、必要エンジン回転数算出手段で、1500〜1800rpmの範囲内で予め設けられている複数の異なるエンジン回転数のうちのいずれか1つを必要エンジン回転数として選択するようにしてもよい。
【0012】
また、本発明にかかるクレーン装置は、エンジンで三相交流発電機を駆動して三相交流発電した電力によりモータを駆動して荷物の積み降ろしを行うクレーン装置において、三相交流発電機が発生する電力を所定の周波数の電力に変換しモータに供給する周波数変換手段と、モータの回転数を操作器からのクレーン操作指令に応ずる目標回転数まで変化させるために必要なエンジンの必要エンジン回転数を、1500〜1800rpmの範囲内で算出する必要エンジン回転数算出手段と、エンジンの回転数を必要エンジン回転数に、モータの回転数を目標回転数に合わせ込む回転数制御手段とを備えている。
【0013】
この際、必要エンジン回転数算出手段で、1500〜1800rpmの範囲内で予め設けられている複数の異なるエンジン回転数のうちのいずれか1つを必要エンジン回転数として選択するようにしてもよい。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、50/60Hz共用の汎用インバータで発電電力の周波数変動に対応することができ、インバータのコストアップを回避しつつ、燃料消費率の改善と環境負荷の低減(騒音・排気の抑制)を実現することができる。最新の実験結果としては、300KWクラスのディーゼルエンジンを使ったクレーン装置において、エンジン回転速度を1500〜1800rpmの範囲で可変制御することにより、1800rpmに固定した場合と比較して10〜20%の燃料消費を改善でき、騒音も低下させることができた。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
次に、本発明の実施の形態について図面を参照して説明する。
〔実施の形態1〕
図1は本発明に係るモータ駆動方法の実施に用いるモータ駆動装置の一例を示すブロック構成図である。同図において、1はクレーンや車両などに搭載されたディーゼルエンジン、2はエンジン1によって駆動される三相交流発電機、3は発電機2が発生する三相交流電力を所定の周波数(例えば、50Hz)の三相交流電力に変換するインバータ、4はインバータによって変換された所定の周波数の三相交流電力によって駆動される三相交流モータ(動力用モータ)である。
【0016】
このモータ駆動装置100(100A)には、操作器5からのモータ4への速度指令を入力とし、全体の動作を制御する制御装置6が設けられている。また、このモータ駆動装置100Aにおいて、インバータ3は交流−直流変換部3−1と直流−交流変換部3−2とを備え、交流−直流−交流変換方式で発電機2からの電力を所定の周波数の電力に変換する(周波数変換手段)。インバータ3は、交流−直流変換部3−1で交流を直流に変換し、直流−交流変換部3−2で直流を交流に変換するので、入力周波数(発電機2からの電力の周波数)の変動に対する出力周波数(モータ4への電力の周波数)の安定度が高い。本実施の形態では、インバータ3として、50/60Hz共用の汎用インバータが用いられる。
【0017】
図2に制御装置6の機能ブロック図を示す。以下、制御装置6の機能を交えながら、本実施の形態特有の動作について説明する。
操作器5からのモータ4への速度指令はモータ目標回転数Nmtp として制御装置6へ与えられる。制御装置6は、操作器5からのモータ4への速度指令が変化し、モータ目標回転数Nmtp が変化すると、そのモータ目標回転数Nmtp までモータ4の回転数を変化させるために必要な動力(必要動力)を算出する(ブロックBL1)。
【0018】
そして、制御装置6は、ブロックBL1で算出した必要動力を発生するために必要なエンジン1の回転数(必要エンジン回転数)Nesp を算出し(ブロックBL2:必要エンジン回転数算出手段)、現在のエンジン1の回転数(現在エンジン回転数)Nepv と比較する(ブロックBL3)。
【0019】
この際、制御装置6は、必要エンジン回転数Nesp を1500〜1800rpmの範囲内から算出する。なお、モータ目標回転数Nmtp に対応する必要エンジン回転数Nesp が1500〜1800rpmの範囲を越える場合、この範囲内であって、かつモータ目標回転数Nmtp に対応する必要エンジン回転数Nesp に最も近い値に、必要エンジン回転数Nesp を補正すればよい。この際、必要エンジン回転数Nesp としては、上記のように1500〜1800rpmの範囲内で連続する値のいずれかを用いてもよく、1500〜1800rpmの範囲内で予め設けられている複数の異なるエンジン回転数のうちのいずれか1つを選択してもよい。
【0020】
特に、本実施の形態にかかるモータ駆動方法および装置をクレーンに適用する場合、荷物の巻上げ、巻下げ、吊支、架台の走行や横行などの各クレーン操作について、荷物の重量ごとに必要エンジン回転数を1500〜1800rpmの範囲内で予め個別に設定しておき、入力されたクレーン操作に応じて対応する必要エンジン回転数を選択すればよい。これら必要エンジン回転数は、制御装置6内のメモリにテーブルとして登録しておいてもよく、所定の数式に基づき算出してもよい。
【0021】
〔Nepv>Nespの場合〕
現在エンジン回転数Nepv が必要エンジン回転数Nesp よりも高い場合(Nepv>Nesp)、制御装置6は、現在エンジン回転数Nepv と必要エンジン回転数Nesp との差ΔNe=Nepv−Nespをエンジン回転数下げ指令(エンジン速度指令)としてエンジン1へ出力すると同時に(ブロックBL4)、操作器5からの速度指令に応ずるモータ目標回転数Nmtp をモータ指令回転数Nmsp (モータ速度指令)として直ちにインバータ3へ出力する(ブロックBL5)。これにより、エンジン1からの現在エンジン回転数Nepv のフィードバックを受けながら、制御装置6がエンジン1の回転数を必要エンジン回転数Nesp に合わせ込む。また、モータ4からの現在モータ回転数Nmpv のフィードバックを受けながら、インバータ3がモータ4の回転数をモータ指令回転数Nmsp (=Nmtp )に合わせ込む(回転数制御手段)。
【0022】
〔Nepv<Nespの場合〕
現在エンジン回転数Nepv が必要エンジン回転数Nesp よりも低い場合(Nepv<Nespの場合)、制御装置6は、必要エンジン回転数Nesp と現在エンジン回転数Nepv との差ΔNe=Nesp−Nepvをエンジン回転数上げ指令(エンジン速度指令)としてエンジン1へ出力する(ブロックBL6)。これにより、エンジン1からの現在エンジン回転数Nepv のフィードバックを受けながら、制御装置6がエンジン1の回転数を必要エンジン回転数Nesp に合わせ込む(回転数制御手段)。
【0023】
また、現在エンジン回転数Nepv が必要エンジン回転数Nesp よりも低い場合、制御装置6は、現在エンジン回転数Nepv と必要エンジン回転数Nesp とが等しくなるまで(ブロックBL7)、操作器5からの速度指令に応ずるモータ目標回転数Nmtp を保留しておき、現在エンジン回転数Nepv で達成可能なモータ4の回転数(最大モータ回転数)Nmax をモータ指令回転数Nmsp (モータ速度指令)としてインバータ3へ出力する(ブロックBL8)。そして、現在エンジン回転数Nepv と必要エンジン回転数Nesp とが等しくなれば、モータ目標回転数Nmtp をモータ指令回転数Nmsp (モータ速度指令)としてインバータ3へ出力する(ブロックBL5)。これにより、モータ4からの現在モータ回転数Nmpv のフィードバックを受けながら、インバータ3がモータ4の回転数をモータ目標回転数Nmtp に徐々に合わせ込んで行く(回転数制御手段)。
【0024】
本実施の形態において、現在エンジン回転数Nepv が必要エンジン回転数Nesp よりも低い場合、エンジン1の回転数が必要エンジン回転数Nesp になるまでにタイムラグが発生し、短時間のあいだ電力が不足し、モータ4の回転数をモータ目標回転数Nmtp まで即座に上昇させることができない。そこで、本実施の形態では、現在エンジン回転数Nepv で達成可能な最大モータ回転数Nmax を算出し、エンジン1の回転数が必要エンジン回転数Nesp になるまで、その算出した最大モータ回転数Nmax をインバータ3へのモータ指令回転数Nmsp として用いている。
【0025】
なお、最近の電子制御式エンジンでは、その回転数変化の時間は短くて、人間の感覚的には殆ど問題ない。すなわち、エンジン1を電子制御式エンジンとした場合、その回転数が必要エンジン回転数Nesp になるまでのタイムラグは僅かであり、人間の感覚的には殆ど問題ない。本実施の形態では、タイムラグがある程度発生するものとして、現在エンジン回転数Nepv が必要エンジン回転数Nesp よりも低い場合、操作器5からの速度指令に応ずるモータ目標回転数Nmtp を保留するものとしたが、タイムラグが極僅かであれば、モータ目標回転数Nmtp をインバータ3へのモータ指令回転数Nmsp として即座に用いるようにしてもよい。
【0026】
〔Nepv=Nespの場合〕
現在エンジン回転数Nepv が必要エンジン回転数Nesp と等しい場合(Nepv=Nespの場合)、制御装置6は、現在エンジン回転数Nepv と必要エンジン回転数Nesp との差ΔNe=0をエンジン回転現状維持指令(エンジン速度指令)としてエンジン1へ出力すると同時に(ブロックBL9)、操作器5からの速度指令に応ずるモータ目標回転数Nmtp をモータ指令回転数Nmsp (モータ速度指令)として直ちにインバータ3へ出力する(ブロックBL5)。
【0027】
〔発電電圧制御〕
制御装置5は、発電機2からインバータ3への発電電圧及び電流を監視し、発電機2における発電電圧を一定となるように制御する(ブロックBL10)。エンジン1の回転数が低下すると、そのままでは発電機2の発電電圧も降下する。そこで、本実施の形態では、エンジン1の回転数が低下しても発電機2の発電電圧が降下しないように、すなわち発電機2の発電電圧が一定となるように、制御装置5から発電電圧制御指令を送って発電機2の界磁を制御する。なお、この発電電圧制御機能は、発電機2自身に備えてもよく、このような場合には、制御装置5からの制御信号および制御装置5への電圧・電量検出信号は不要となる。
【0028】
以上の説明から分かるように、このモータ駆動装置100Aでは、エンジン1の回転数が一定回転数(例えば、1800/1500rpm)を保つように制御されるのではなく、必要なときに必要なだけの動力を発生することができる回転数(ここでは1500〜1800rpmの範囲の回転数)に制御されるので、負荷の大小に拘わらず負荷率をほぼ一定とすることができ、軽負荷時のエンジン回転数を負荷率を保ったままでできるだけ下げることが可能となり、燃料消費率の改善と環境負荷の低減(騒音・排気の抑制)を実現することができるようなる。
【0029】
この際、三相交流発電機の場合、1800rpmでは60Hzの交流電力が得られ、1500rpmでは50Hzの交流電力が得られる。したがって、1500〜1800rpmの範囲で回転数を制御すれば、得られる交流電力の周波数は50〜60Hzの間に制御される。このため、50/60Hz共用の汎用インバータで発電電力の周波数変動50〜60Hzに対応することができ、インバータのコストアップを回避できる。
【0030】
〔実施の形態2〕
実施の形態1では、現在エンジン回転数Nepv が必要エンジン回転数Nesp よりも低い場合、エンジン1の回転数が必要エンジン回転数Nesp になるまでにタイムラグが発生し、短時間のあいだ電力が不足し、「モータ4の回転数をモータ目標回転数Nmtp まで即座に上昇させることができない」というレスポンス不良が発生する。
【0031】
実施の形態2では、このレスポンス不良の解決策として、2次電池を利用する。図3に2次電池の利用例を示す。このモータ駆動装置100(100B)では、2次電池7の正極性端子を充電制御装置8を介してインバータ3内の交流−直流変換部3−1と直流−交流変換部3−2との接続ライン(直流変換部分)に接続している。これにより、現在エンジン回転数Nepv が必要エンジン回転数Nesp よりも低い場合に生じる電力不足に対し、2次電池7からの電流が充電制御装置8を介してインバータ3内の直流変換部分に流れ込み、エンジン1の回転数が必要エンジン回転数Nesp になるまでの電力の不足が補われる。
【0032】
この実施の形態2において、2次電池7からのインバータ3内の直流変換部分への放電は短時間発生するだけである。したがって、2次電池7として、容量的にあまり大きなものを必要としない。また、2次電池7への充電は、モータ4の定速回転時や減速時に余った電力で行うことができる。
【0033】
〔実施の形態3〕
クレーンや車両などには、動力用モータとして使用されるモータ4以外の補機として、モータ冷却ファンや照明灯,空調機などの機器がある。これらの補機も発電機2が発生する電力によって駆動する。この場合、インバータ3からのモータ4への電力を分岐して使用することも考えられるが、モータ4の負荷変動によってその電圧や周波数が変化してしまうことが考えられる。また、補機として、モータ4とは異なる相数や周波数の電力を必要とする場合もある。
【0034】
そこで、実施の形態3では、モータ4へ電力を送るインバータ(第1のインバータ)3とは別に、補機へ電力を送る第2のインバータを設ける。図4に第2のインバータを設けた例を示す。このモータ駆動装置100(100C)では、インバータ3とは別に補機用のインバータ9を設け、このインバータ9によって発電機2が発生する三相交流電力を所定の周波数(例えば、50Hz)の交流電力に変換するようにしている。そして、このインバータ9からの交流電力をモータ冷却ファン10や照明灯11,空調機12などの補機へ送るようにしている。また、インバータ3への制御電源としても使用するようにしている。なお、インバータ9は、インバータ3と同じく、交流−直流−交流変換方式で発電機2からの電力を所定の周波数の電力に変換する。
【0035】
この実施の形態3によれば、動力用モータとして使用されるモータ4とは独立して、補機への所定周波数の電力の供給を安定的に行うことが可能となる。また、補機への電力として、モータ4とは異なる相数や周波数の電力を供給することができる。
【0036】
クレーンなどの場合、今まではエンジンの回転数を下げるということは発電を止めることにつながり、特に夜間照明灯にも電力を供給している場合、照明の再点灯に時間がかかるため(水銀灯やナトリューム等の場合、再点灯に数分必要)、長時間作業が発生しない時であってもエンジンの回転数を下げることができなかった。本実施の形態では、これらの補機類の電力をインバータ3とは別の補機用のインバータ9から供給することで、エンジン1の回転数を下げて待機することが可能である。
【0037】
なお、実施の形態1,3(図1,図4)では、インバータ3により交流−直流−交流変換方式で発電機2からの電力を所定の周波数の電力に変換するようにしたが、インバータ3に代えてマトリクスコンバータを設け、交流−交流直接変換方式で発電機2からの電力を所定の周波数の電力に変換するようにしてもよい。また、図4に示した補機用のインバータ9についてもマトリクスインバータとし、交流−交流直接変換方式で周波数変換を行うようにしてもよい。マトリクスコンバータについては、非特許文献1などに示されているので、ここでの説明は省略する。
【0038】
また、上述した実施の形態1〜3では、エンジン1をディーゼルエンジンとしたが、ガソリンエンジンなど他の種類のエンジンでも同様にして適用することができ可能である。
また、上述した実施の形態1〜3では、発電機2を三相交流発電機とし、モータ4を三相交流モータとしたが、単相交流発電機や単相交流モータとするなど、各種の変形が自在である。また、搭載される装置も、車両やクレーンに限られるものではない。
【図面の簡単な説明】
【0039】
【図1】本発明に係るモータ駆動方法の実施に用いるモータ駆動装置の一例(実施の形態1)を示すブロック構成図である。
【図2】このモータ駆動装置における制御装置の機能ブロック図である。
【図3】レスポンス不良の解決策として2次電池を利用した例(実施の形態2)を示すブロック構成図である。
【図4】補機用のインバータを設けた例(実施の形態3)を示すブロック構成図である。
【図5】エンジン回転数と燃料消費率との関係およびエンジン回転数と出力馬力との関係を示す図である。
【符号の説明】
【0040】
1…ディーゼルエンジン(エンジン)、2…三相交流発電機(発電機)、3…インバータ、3−1…交流−直流変換部、3−2…直流−交流変換部、4…三相交流モータ(モータ)、5…操作器、6…制御装置、7…2次電池、8…充電制御装置、9…補機用のインバータ、10…モータ冷却ファン、11…照明灯、12…空調機、100(100A、100B、100C)…モータ駆動装置。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
エンジンで三相交流発電機を駆動して電力を発生させ、この三相交流発電機が発生する電力によってモータを駆動するモータ駆動方法において、
前記三相交流発電機が発生する電力を所定の周波数の電力に変換し前記モータに供給する周波数変換工程と、
前記モータの回転数を操作器からの速度指令に応ずる目標回転数まで変化させるために必要な前記エンジンの必要回転数を、1500〜1800rpmの範囲内で算出する必要エンジン回転数算出工程と、
前記エンジンの回転数を前記必要エンジン回転数に、前記モータの回転数を前記目標回転数に合わせ込む回転数制御工程と
を備えたことを特徴とするモータ駆動方法。
【請求項2】
請求項1に記載のモータ駆動方法において、
前記必要エンジン回転数算出工程は、1500〜1800rpmの範囲内で予め設けられている複数の異なるエンジン回転数のうちのいずれか1つを前記必要エンジン回転数として選択することを特徴とするモータ駆動方法。
【請求項3】
エンジンで三相交流発電機を駆動して電力を発生させ、この三相交流発電機が発生する電力によってモータを駆動するモータ駆動装置において、
前記三相交流発電機が発生する電力を所定の周波数の電力に変換し前記モータに供給する周波数変換手段と、
前記モータの回転数を操作器からの速度指令に応ずる目標回転数まで変化させるために必要な前記エンジンの必要エンジン回転数を、1500〜1800rpmの範囲内で算出する必要エンジン回転数算出手段と、
前記エンジンの回転数を前記必要エンジン回転数に、前記モータの回転数を前記目標回転数に合わせ込む回転数制御手段と
を備えたことを特徴とするモータ駆動装置。
【請求項4】
請求項3に記載のモータ駆動装置において、
前記必要エンジン回転数算出手段は、1500〜1800rpmの範囲内で予め設けられている複数の異なるエンジン回転数のうちのいずれか1つを前記必要エンジン回転数として選択することを特徴とするモータ駆動装置。
【請求項5】
エンジンで三相交流発電機を駆動して発電した電力によりモータを駆動して荷物の積み降ろしを行うクレーン装置において、
前記三相交流発電機が発生する電力を所定の周波数の電力に変換し前記モータに供給する周波数変換手段と、
前記モータの回転数を操作器からのクレーン操作指令に応ずる目標回転数まで変化させるために必要な前記エンジンの必要エンジン回転数を、1500〜1800rpmの範囲内で算出する必要エンジン回転数算出手段と、
前記エンジンの回転数を前記必要エンジン回転数に、前記モータの回転数を前記目標回転数に合わせ込む回転数制御手段と
を備えたことを特徴とするクレーン装置。
【請求項6】
請求項5に記載のクレーン装置において、
前記必要エンジン回転数算出手段は、1500〜1800rpmの範囲内で予め設けられている複数の異なるエンジン回転数のうちのいずれか1つを前記必要エンジン回転数として選択することを特徴とするクレーン装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2008−253114(P2008−253114A)
【公開日】平成20年10月16日(2008.10.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−94849(P2007−94849)
【出願日】平成19年3月30日(2007.3.30)
【出願人】(000005902)三井造船株式会社 (1,723)
【Fターム(参考)】