説明

モータ駆動用インバータ制御回路およびそれを用いた電気掃除機

【課題】商用電源と蓄電池を併用する場合においても、小型で安価な構成の効率の高いインバータ制御回路を提供することを目的とする。
【解決手段】インバータ制御回路は商用電源1を入力とし、交流電圧を整流する全波整流用ダイオードブリッジ3と、全波整流用ダイオードブリッジ3に接続され整流された電圧を昇圧する昇圧回路6と、昇圧回路6の入力側に蓄電池4を有し、商用電源1または蓄電池4のいずれか一方を電源として使用するための切換え手段と、直流電力から交流電力に変換するインバータ9と、インバータ9を制御しPWM制御またはPAM制御でモータ10を駆動する制御手段12とを備え、制御手段12は、商用電源1を電源として使用する場合は、PWM制御でモータ10を駆動し、蓄電池4を電源として使用する場合は、PAM制御でモータ10を駆動させる構成とした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、負荷例えばモータを駆動させるために、直流を交流に変換させるインバータ制御回路に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、この種のインバータ制御回路では例えば、特許文献1のように蓄電池を備えたものがある。図3に示すようにこの種の蓄電式の装置は、負荷としてはモータを備えており、このモータはダイオードで構成されるブリッジ回路を備えたコンバータ部と、インバータ部とを備えた電力変換回路を介して主電源線に接続されている。一方、蓄電池は、上記電力変換回路のコンバータ部とは別に設けられ、ダイオードで構成されるブリッジ回路を備えたコンバータ部を介して商用電源に接続され、使用状況に応じて商用電源と蓄電池を切り換えてモータを駆動している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平6−137651号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、前記従来の構成においては、使用状況に応じて蓄電池や商用電源を切り換えたり、蓄電池の充電を効率良く行なうことについては述べられているが、商用電源を使用する場合と、蓄電池を使用する場合において、回路効率を向上させるためのインバータの制御方法については言及されていない。
【0005】
また、蓄電池を電源としてモータを駆動する場合に商用電源と同等の電源電圧を得ようとすると、バッテリーが大きくなったり、バッテリーのコスト増につながるという課題を有していた。
【0006】
また、バッテリーの容量を小さくした場合は、バッテリーの電圧を昇圧して交流電源と同等の電圧にすることは可能であるが、昇圧する電圧値が大きく、昇圧回路部の損失が大きくなり、回路効率が低下するという課題を有していた。
【0007】
本願発明は、前記従来の課題を解決するもので、蓄電池を電源としてモータを駆動する場合においても、蓄電池の容量を大きくすることなく、回路効率を高めることができるインバータ制御回路を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記従来の課題を解決するために、本発明のインバータ制御回路は商用電源を入力とし、交流電圧を整流する全波整流回路と、全波整流回路に接続され整流された電圧を平滑、昇圧する昇圧回路と、昇圧回路の入力側に蓄電池を有し、商用電源または蓄電池のいずれか一方を電源として使用するための切換え手段と、複数個のスイッチング素子を有し直流電力から交流電力に変換するインバータと、インバータを制御しPWM制御またはPAM制御でモータを駆動する制御手段とを備え、制御手段は、商用電源を電源として使用する場合は、PWM制御でモータを駆動し、蓄電池を電源として使用する場合は、PAM制御でモータを駆動する構成とした。
【0009】
これにより蓄電池を使用してモータを駆動する場合においても蓄電池の容量を大きくす
ることなく、回路効率を高めることができ、また蓄電池の小型化も図ることができる。
【発明の効果】
【0010】
本発明のインバータ制御回路は、商用電源または、蓄電池を電源としてモータを駆動することができ、蓄電池の容量を大きくすることなく、蓄電池を使用する場合においても回路効率の良い、高効率のモータ駆動用インバータ制御回路を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明の第1の実施の形態におけるインバータ制御回路の回路構成図
【図2】同、インバータ制御回路の商用電源と蓄電池を切り換えるための回路構成図
【図3】従来の蓄電池を備えたインバータ制御回路の構成図
【発明を実施するための形態】
【0012】
第1の発明は、商用電源を入力とし、交流電圧を整流する全波整流回路と、前記全波整流回路に接続され整流された電圧を平滑、昇圧する昇圧回路と、前記昇圧回路の入力側に蓄電池を有し、前記商用電源または前記蓄電池のいずれか一方を電源として使用するための切換え手段と、複数個のスイッチング素子を有し直流電力から交流電力に変換するインバータと、前記インバータを制御しPWM制御またはPAM制御でモータを駆動する制御手段とを備え、前記制御手段は、前記商用電源を電源として使用する場合は、PWM制御でモータを駆動し、前記蓄電池を電源として使用する場合は、PAM制御でモータを駆動することを特徴としている。これにより、蓄電池の容量を大きくすることなく、蓄電池を使用する場合においても回路効率の良い、高効率のモータ駆動用インバータ制御回路を実現することが可能となる。
【0013】
第2の発明は、電気掃除機のファンモータの駆動回路が、請求項1記載のインバータ制御回路により構成されたことを特徴としている。これにより、小型で効率の良い電気掃除機を提供することが可能となる。
【0014】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照しながら説明する。なお、この実施の形態によって本発明が限定されるものではない。
【0015】
(実施の形態1)
図1は、モータ駆動用インバータ制御回路を例とした本実施の形態1の主要回路構成を示すものであり、電力変換回路、インバータ回路を示す。商用電源1より与えられる交流電力は、リレー2がオンしている場合は、全波整流用ダイオードブリッジ3で直流に交換される。4は蓄電池であり、5は蓄電池4を使用する際に商用電源1と蓄電池4を切り換えるリレー5である。商用電源1を使用する場合は、リレー2をオンし、リレー5をオフしておき、蓄電池を使用する場合は、リレー5をオンし、リレー2をオフにして使用する。
【0016】
6は昇圧回路であり、7は直流電圧検出部である。8は平滑用の電解コンデンサである。直流電力は、スイッチング素子および、それに並列に接続されたダイオードにより構成されるインバータ9の上アーム側のスイッチング回路と、下アーム側のスイッチング回路による直列回路を3相分有し、これら直列回路における上アームと下アームの相互接続点が、負荷であるモータ10に接続された回路に供給される。
【0017】
制御手段12は、モータ10が所望の回転数で回転するような交流電力を回路が出力するように、インバータ9のスイッチング素子のスイッチングを制御する。また、磁極検知用の位置センサ11を設置し、位置センサ11からの信号を基に、制御手段12から駆動信号を発生させている。また、制御手段12は、昇圧回路6により所望の直流電圧値とな
るように、スイッチング素子6bのスイッチングを制御している。
【0018】
以上のように構成されたモータ駆動装置において、以下その動作、作用を説明する。まずリレー2がオン、リレー5がオフの時の状態で商用電源1を使用する場合について説明する。商用電源1から供給される交流電力を全波整流用ダイオードブリッジ3は全波整流して昇圧回路6に直流電圧を入力している。
【0019】
昇圧回路6はインダクタンス6aと、スイッチング素子6b、ダイオード6cを備えており、スイッチング素子6bをオンすることにより、インダクタンス6aの出力側の電路を短絡してインダクタンス6aに直流電流を流し、エネルギーをインダクタンス6aに蓄えた後、スイッチング素子6bをオフすることで、インダクタンス6aに発生した電圧を入力直流電圧に加算して平滑用電解コンデンサ8に充電させ、入力直流電圧を昇圧している。
【0020】
制御手段12は直流電圧検出部7で検出した直流電圧検出信号S2が所定の値となるように、スイッチング素子6bをスイッチング信号S1により制御する。インバータ9は、昇圧回路6から供給される直流電圧をパルス幅変調することにより、任意の周波数の交流に変換し、モータ10に供給される。
【0021】
モータ10はインバータ9から供給された交流電力の周波数及び電流に応じて任意の回転数及びトルクで回転しファン等の負荷を駆動する。また、制御手段12は、磁極検知用の位置センサ11から得られる回転信号S3によりモータ10の回転速度を検出し、所定の回転速度となるようにインバータ9のスイッチング素子に対して駆動信号S4を出力する。このインバータ駆動信号S4は、インバータ9のスイッチング素子をオンオフする信号で、パルス幅変調信号により変調されており、この変調度によりインバータ9の出力電圧または、出力電流を制御する(PWM制御)。
【0022】
次にリレー2がオフ、リレー5がオンの時の状態で蓄電池4を使用する場合について説明する。蓄電池4を使用する場合においても商用電源1と同様に昇圧回路6により直流の電圧を昇圧するが、インバータ9のスイッチング素子のオンとオフの時間比を一定とし、昇圧回路6で直流電圧の大きさを制御することでモータ10の速度制御を行なうようにする(PAM制御)。
【0023】
これにより、インバータ9のスイッチング素子のスイッチング損失がPWM制御に比べて低減させることが可能となる。例えばPWM制御の場合は、商用電源に100Vacを使用し、昇圧する直流電圧値を150Vdcとしてモータを駆動する場合、商用電源の場合は昇圧する値も小さく、昇圧回路のスイッチング素子やダイオードなどの損失も小さいが、蓄電池を使用し30Vdcなど比較的小容量の蓄電池を使用する場合は、直流電圧値を150Vdcに昇圧しなければならなくなり、昇圧回路の損失も大きくなってしまう。
【0024】
そこで蓄電池の場合にPAM制御を行なうことで、インバータのスイッチング損失を低減して、回路全体の効率を落とすことなくモータを駆動することが可能となる。また大容量の電池を使用することなく、また小容量の電池を使用した場合も回路効率を落とすことなく使用できるため、小型化、低コストが実現でき、小容量の蓄電池でもモータを駆動させる時間を長くすることが可能となる。
【0025】
次に、図2において電気掃除機に本実施の形態のモータ駆動用インバータ制御回路が搭載された場合の商用電源1と蓄電池4を切り換える動作を説明する。13は電気掃除機を運転するための運転スイッチであり、14は商用電源1か蓄電池4のどちらを使用するかを設定する切り替えスイッチである。利用者が商用電源1を使用して電気掃除機を運転す
る場合は、切り換えスイッチ14で商用電源を設定する。制御手段12はリレー2をオンし、リレー5をオフする。そして、運転スイッチ13をオンして電気掃除機を運転する。蓄電池4を使用する場合も同様に、切り換えスイッチ14と運転スイッチ13を使用して、電気掃除機を運転する。
【0026】
尚、本実施の形態では商用電源1と蓄電池4を使用する際に利用者がスイッチを押して電源の切り換えを行なっているが、入力電圧を検出して電気掃除機が商用電源につながれているかどうかを判断し、つながっている場合は商用電源で電気掃除機の運転を行い、つながっていない場合は蓄電池で電気掃除機を運転するようにして、切り換えスイッチを削除しても良い。
【0027】
尚、商用電源と蓄電池を切り換える手段としてリレーを用いたが、FET等の損失の低い半導体素子を用いても良いものである。
【産業上の利用可能性】
【0028】
以上のように、本発明にかかるモータ駆動用インバータ制御回路は、商用電源と蓄電池を併用する場合のインバータ制御回路に用いられ、低コスト化、小型化、高効率の特徴が必要なインバータ制御回路について有用である。
【符号の説明】
【0029】
1 商用電源
2 リレー
3 全波整流用ダイオードブリッジ
4 蓄電池
5 リレー
6 昇圧回路
7 直流電圧検出部
8 平滑用電解コンデンサ
9 インバータ
10 モータ
11 位置センサ
12 制御手段

【特許請求の範囲】
【請求項1】
商用電源を入力とし、交流電圧を整流する全波整流回路と、前記全波整流回路に接続され整流された電圧を平滑、昇圧する昇圧回路と、前記昇圧回路の入力側に蓄電池を有し、前記商用電源または前記蓄電池のいずれか一方を電源として使用するための切換え手段と、複数個のスイッチング素子を有し直流電力から交流電力に変換するインバータと、前記インバータを制御しPWM制御またはPAM制御でモータを駆動する制御手段とを備え、前記制御手段は、前記商用電源を電源として使用する場合は、PWM制御でモータを駆動し、前記蓄電池を電源として使用する場合は、PAM制御でモータを駆動することを特徴とするモータ駆動用インバータ制御回路。
【請求項2】
モータを駆動する制御回路が請求項1記載のインバータ制御回路により構成されたことを特徴とする電気掃除機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2013−46539(P2013−46539A)
【公開日】平成25年3月4日(2013.3.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−184406(P2011−184406)
【出願日】平成23年8月26日(2011.8.26)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】