説明

モータ駆動装置およびそれを用いた電気掃除機

【課題】小型軽量、低コストな構成で電源環境によらないモータ駆動装置を実現すること。
【解決手段】モータ駆動装置20は、外部からの交流電源1を入力し任意の周波数の電力に変換し外部接続されたモータ8を駆動するインバータ回路22と、インバータ回路22の入出力側に接続された蓄電池14と、モータ8の駆動時には、蓄電池14の電力もしくは外部交流電源1の電力を用いてインバータ回路22によりモータ8を駆動すると共に、蓄電池14の充電時には、インバータ回路22の出力の内の1相に直流電力を出力し、その直流電力を用いて蓄電池14の充電を行う制御機能を有した制御手段15とを有することにより、小型、軽量、低コストで、電源環境によらないモータ駆動装置20を実現することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、交流電源、もしくは蓄電池の直流電源からの電力を所望の周波数の交流に変換し、負荷としてモータの駆動を行うモータ駆動装置、およびそれを用いた電気掃除機に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来の外部交流電源からの電力で電動機を駆動すると共に、内部に備えた蓄電池の電力によっても電動機を駆動する機能を有した装置として、発電機の出力をインバータにより交流に変換し圧縮機モータを駆動すると共に、内部の蓄電池を発電機の出力により充電回路を用いて充電し、発電機の出力が低下した場合には蓄電池の電力を用いて圧縮機モータを駆動することにより安定した冷凍能力を実現した冷凍車用冷凍装置が考案されている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
この冷凍車用冷凍装置においては、インバータの整流回路とスイッチング回路の間に充電回路と蓄電池からなる蓄電池ユニットが設けられ、充電時には、充電回路により蓄電池に定電圧を供給し充電を行っている。
【0004】
また、停電時において僅かな停止も許されない場合や、停電時において非常用動力として立上げされる交流電動機を駆動する場合に、バックアップ電源として蓄電池を搭載し、停電発生時には蓄電池で蓄積された電力を用いて交流電動機を駆動する交流電動機駆動装置が提案されている(例えば、特許文献2参照)。
【0005】
この交流電動機駆動装置においては、交流電源に接続された充電器および充電制御回路が備えられ、それを用いて蓄電池を充電すると共に、停電発生時には、蓄電池に充電された電力を昇圧チョッパにより昇圧し、インバータを経由して交流電動機に給電して交流電動機を運転可能としている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2001−56170号公報
【特許文献2】特開2010−154650号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
このようなモータ駆動装置においては、非常電源としての蓄電池を充電するときには、外部電源からの電力を降圧チョッパ回路などにより充電可能な電圧に制御すると共に、蓄電池に流れる電流を充電可能な電流に制御する機能を有した充電回路が必要であった。この充電回路は、降圧するためのコイル、スイッチング素子、制御ICなどから構成されるが、コスト、サイズ共に大きく、装置全体としてのコストアップ、大型化の大きな要因となるものであった。
【0008】
本願発明は、かかる点に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、蓄電池を搭載し、停電発生時や外部電源の入力電力が低下した場合には、蓄電池で蓄積された電力を用いてモータを駆動するモータ駆動装置において、蓄電池の充電をモータ駆動装置に備えられたインバータを利用して行うことにより、小型、軽量、低コストで、電源環境によらないモータ駆動装置、およびそれを用いた電気掃除機を実現することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明に係るモータ駆動装置は、直流の外部電源を入力とし外部電源の電力を任意の周波数の電力に変換し外部接続されたモータを駆動するインバータ回路と、インバータ回路の入出力側に接続された蓄電池と、モータの駆動時には、蓄電池の電力もしくは外部電源の電力を用いてインバータ回路によりモータを駆動すると共に、蓄電池の充電時にはインバータ回路の出力の内の1相に直流電力を出力し、その直流電力を用いて蓄電池の充電を行う制御機能を有した制御手段とを有したものである。
【0010】
このことにより、直流の外部電源を入力とし、小型、軽量、低コストの回路で構成された電源環境に強いモータ駆動装置が実現される。
【発明の効果】
【0011】
以上のように本発明によれば、小型、軽量、低コストの回路で構成され、電源環境に強いモータ駆動装置、およびそれを用いた電気掃除機が実現される。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の実施の形態1に係るモータ駆動装置の全体構成を示す回路構成図
【図2】同、モータ駆動装置の制御手段の動作を示すフローチャート
【図3】同、モータ駆動装置におけるインバータ回路でのモータ駆動時のスイッチングの推移を示す状態図
【図4】同、モータ駆動装置におけるインバータ回路での蓄電池充電時のスイッチングの推移を示す状態図
【図5】本発明の実施の形態2に係るモータ駆動装置の全体構成を示す回路構成図
【図6】同、モータ駆動装置におけるインバータ回路でのモータ駆動時のスイッチングの推移を示す状態図
【図7】同、モータ駆動装置におけるインバータ回路での蓄電池充電時のスイッチングの推移を示す状態図
【図8】本発明の実施の形態3に係る電気掃除機の主要構成を示す構成図
【発明を実施するための形態】
【0013】
第1の発明は、直流の外部電源を入力とし外部電源の電力を任意の周波数の電力に変換し外部接続されたモータを駆動するインバータ回路と、インバータ回路の入出力側に接続された蓄電池と、モータの駆動時には、蓄電池の電力もしくは外部電源の電力を用いてインバータ回路によりモータを駆動すると共に、蓄電池の充電時にはインバータ回路の出力の内の1相に直流電力を出力し、その直流電力を用いて蓄電池の充電を行う制御機能を有した制御手段とを備えたものである。
このことにより、直流の外部電源を入力とし、小型、軽量、低コストの回路で構成された電源環境に強いモータ駆動装置が実現される。
【0014】
第2の発明は、交流の外部電源を入力とし外部電源の電力を直流に変換するコンバータと、コンバータの出力する電力を入力とし任意の周波数の電力に変換し外部接続されたモータを駆動するインバータ回路と、インバータ回路の入出力側に接続された蓄電池と、モータの駆動時には、蓄電池の電力もしくは外部電源の電力を用いてインバータ回路によりモータを駆動すると共に、蓄電池の充電時には、インバータ回路の出力の内の1相に直流電力を出力し、その直流電力を用いて蓄電池の充電を行う制御機能を有した制御手段とを備えたものである。
このことにより、交流の外部電源を入力とし、小型、軽量、低コストの回路で構成された電源環境に強いモータ駆動装置が実現される。
【0015】
第3の発明は、特に、第1または第2の発明のインバータ回路は、直列に接続されたスイッチング素子2個を1相分として3相分のスイッチング素子を備え、モータの駆動時には、3相分のスイッチング素子をスイッチングすることにより3相の任意の周波数の電力を出力し3相のモータを駆動し、蓄電池の充電時には、インバータ回路の3相分のスイッチング素子の内、1相分のスイッチング素子のみスイッチングを行うことにより直流電力を出力する制御を行う制御手段とを有したものである。
このことにより、小型、軽量、低コストの回路で構成され、3相モータを駆動する機能を有した電源環境に強いモータ駆動装置が実現される。
【0016】
第4の発明は、特に、第1または第2の発明のインバータ回路は、スイッチング素子2個を1相分として2相分のスイッチング素子を備え、前記制御手段は、前記モータの駆動時には、2相分のスイッチング素子をスイッチングすることにより2相の任意の周波数の電力を出力して2相のモータを駆動し、前記蓄電池の充電時には、前記インバータ回路の2相分のスイッチング素子の内、1相分のスイッチング素子のみスイッチングを行うことにより直流電力を出力する制御を行うことを特徴としたものである。
このことにより、小型、軽量、低コストの回路で構成され、2相モータを駆動する機能を有した電源環境に強いモータ駆動装置が実現される。
【0017】
第5の発明は、特に、第3または第4の発明において、蓄電池とインバータ回路の入力側の間には第1のスイッチが備えられ、蓄電池とインバータ回路の出力側の間には第2のスイッチが備えられ、制御手段は、蓄電池の電力でモータを駆動するときに第1のスイッチをオンとし、外部電源から電力で蓄電池を充電するときに第2のスイッチをオンとする制御を行う制御手段とを有したものである。
このことにより、小型、軽量、低コストの回路で構成され、モータ駆動と蓄電池充電が容易に切り替え可能な電源環境に強いモータ駆動装置が実現される。
【0018】
第6の発明は、特に、第1〜第4のいずれか1つの発明において、インバータ回路の入力側には、入力部の電圧を検出する電圧検出手段を備え、検出された電圧が所定の値以下の場合、蓄電池の電力でモータを駆動すると共に、検出された電圧が所定の値以上の場合、外部電源の電力でモータを駆動、もしくは蓄電池を充電する制御を行う制御手段とを備えたものである。
このことにより、小型、軽量、低コストの回路で構成され、外部電源駆動と、蓄電池駆動が自動的に切り替わる安全性に優れた電源環境に強いモータ駆動装置が実現される。
【0019】
第7の発明は、特に、第2〜第5のいずれか1つの発明において、コンバータの外部電源からの入力側には、入力の電圧を検出する電圧検出手段を備え、検出された電圧が所定の値以下の場合、蓄電池の電力でモータを駆動すると共に、検出された電圧が所定の値以上の場合、外部電源からの電力でモータを駆動、もしくは蓄電池を充電する制御を行う制御手段を備えたものである。
このことにより、小型、軽量、低コストの回路で構成され、交流電源入力で機能するモータ駆動装置において、外部電源駆動と蓄電池駆動が自動的に切り替わる安全性に優れた電源環境に強いモータ駆動装置が実現される。
【0020】
第8の発明は、特に、第1〜第7のいずれか1つの発明において、インバータ回路の入力側に接続された昇圧回路を備え、蓄電池の出力は昇圧回路の入力側に接続されたものである。
このことにより、小型、軽量、低コストの回路で構成され、電源環境によらずにモータ駆動電圧を確保できるモータ駆動装置が実現される。
【0021】
第9の発明は、特に、第8の発明において、昇圧回路の入力側には、入力部の電圧を検
出する電圧検出手段を備え、検出された電圧が所定の値以下の場合、蓄電池の電力でモータを駆動すると共に、検出された電圧が所定の値以上の場合、外部電源の電力でモータを駆動、もしくは蓄電池を充電する制御を行う制御手段とを備えたものである。
このことにより、小型、軽量、低コストの回路で構成され、電源環境によらずにモータ駆動電圧を確保でき、自動的に外部電源と蓄電池電源が切り替わる安全性に優れたモータ駆動装置が実現される。
【0022】
第10の発明は、特に、第2〜第9のいずれか1つの発明において、外部電源からの入力側には第3のスイッチが備えられ、前記制御手段は、前記外部電源からの電力でモータを駆動、もしくは蓄電池を充電するときに第3のスイッチをオンとすることを特徴としたものである。
このことにより、小型、軽量、低コストの回路で構成され、電源環境によらずにモータ駆動電圧を確保でき、自動的に外部電源と蓄電池電源が切り替わる安全性に優れたモータ駆動装置が実現される。
【0023】
第11の発明は、ファンモータの駆動装置が、第1〜第10のいずれか1つの発明のモータ駆動装置により構成されたことを特徴としたものである。
このことにより、電源環境によらず、外部交流電源によっても、内部蓄電池の電力によってもファンモータを安定して駆動し掃除機機能が得られる、小型、低コストの電気掃除機が実現されるものである。
【0024】
以下、本発明の実施の形態を図面を参照しながら説明する。なお、この実施の形態によって本発明が限定されるものではない。
【0025】
(実施の形態1)
図1は、本発明の第1の実施の形態に係るモータ駆動装置20の全体構成を示す回路構成図である。
交流電源1より与えられる交流電力は、交流電力の電圧を検出する交流電圧検出手段19、および交流電源の接続をオンオフする交流側スイッチ18を通して全波整流用のダイオードブリッジで構成される整流回路9により直流に変換される。
【0026】
この整流回路9により変換された直流電力は、昇圧コイル10、昇圧用スイッチング素子12、ダイオード11、平滑コンデンサ13とから構成される一般的な昇圧チョッパ方式回路である昇圧回路21により昇圧される。例えば、交流電源1の入力がAC100Vの場合、整流回路9の出力は約0V〜140Vの変動電圧となるが、昇圧回路21により例えば、140V〜300V程度の任意の平滑された直流電圧に昇圧させることができる。
【0027】
この昇圧回路21により昇圧された直流電力は、スイッチング素子2a〜7aおよび、それに並列に接続されたダイオード2b〜7bにより構成されるスイッチング回路2〜7から構成されるインバータ回路22に入力される。インバータ回路22においては、任意の周波数の交流に変換され、上アーム側のスイッチング回路2、4、6と下アーム側のスイッチング回路3、5、7の相互接続点に接続されたモータ8に供給される。このことにより、モータ8を任意の回転数で駆動することができる。
【0028】
制御手段15は、モータ8が所望の回転数で回転するような交流電力をインバータ回路22が出力するように、スイッチング素子2a〜7aのスイッチングを制御する。スイッチングの方法としては、素子の駆動パルスの時間幅により出力電圧を制御する、一般的なパルス幅変調(PWM)方式が用いられる。
【0029】
さらに、モータ駆動装置20内には、蓄電池14が備えられ、その一端は整流回路9と昇圧回路21の接続点に放電スイッチ16を通して接続される。また、さらに他の一端には、インバータ回路22からモータ8に接続された3相の電力線の内の1相の電力線に、充電スイッチ17を通して接続される。
【0030】
モータ8を駆動する電力は、交流電源1からの電力を使用することも可能であると共に、蓄電池14からの電力を使用することも可能な構成となっている。交流電源1からの電力を使用する場合には、交流側スイッチ18がオン、放電スイッチ16がオフと設定され、蓄電池14からの電力を使用する場合には、交流側スイッチ18がオフ、放電スイッチ16がオンと設定される。
【0031】
このことにより、交流電源1からの電力を使用する場合には、交流電源1からの電力が昇圧回路21の入力端に供給され、蓄電池14からの電力を使用する場合には、蓄電池14の電力が昇圧回路21の入力端に供給されることにより、モータ8を駆動する構成となっている。制御手段15は、この使用する電力の切り替えを交流側スイッチ18、放電スイッチ16を制御することにより行う。
【0032】
さらに、充電の際には交流側スイッチ18がオン、放電スイッチ16がオフ、充電スイッチ17がオンと設定される。それにより、交流電源1からの電力が昇圧回路21を通してインバータ回路22に入力され、インバータ回路22の3相出力の内、1相から出力される直流電力が、蓄電池14に供給され充電が行われる。
【0033】
次に、制御手段15における動作モードの切り替え制御機能について説明する。図2は、本実施の形態1に係るモータ駆動装置の制御手段15の動作を示すフローチャートである。このモータ駆動装置においては、モータを駆動するモード、もしくは蓄電池を充電するモードを有する。ユーザの操作によりモータが駆動される場合以外は、蓄電池14を充電するモードに設定される。
【0034】
ステップS101においてモードが判断されると、モータ駆動モードの場合には、ステップS102において、交流電力の電圧を検出する交流電圧検出手段19により検出された交流電圧の値を入力し、交流電圧の値が所定の電圧値(電圧A)を超えている場合には、外部電源から電力が供給されていると判断され、逆に所定の電圧値(電圧A)以下の場合には、外部電源から電力が供給されていないと判断される。この所定の電圧値は、モータを駆動することが可能な最低電圧値に設定される。
【0035】
外部電源から電力が供給されていると判断された場合には、ステップ104において、交流側スイッチ18がオン、放電スイッチ16がオフ、充電スイッチ17がオフと設定される。これにより、交流電源1からの電力が昇圧回路21の入力端に供給され、さらにインバータ回路22に供給されることにより、モータ8を駆動する構成となる。
【0036】
逆に、外部電源から電力が供給されていないと判断された場合には、ステップ105において、交流側スイッチ18がオフ、放電スイッチ16がオン、充電スイッチ17がオフと設定される。これにより、蓄電池14の電力が昇圧回路21の入力端に供給され、さらにインバータ回路22に供給されることにより、モータ8を駆動する構成となる。その後、ステップ106においてインバータ回路22から3相交流を出力するようにスイッチング素子2a〜7aを制御することにより、モータ駆動を行う。
【0037】
一方、ステップS101においてモードが判断され、蓄電池充電モードの場合には、ステップS107において、交流側スイッチ18がオン、放電スイッチ16がオフ、充電スイッチ17がオンと設定される。これにより、交流電源1からの電力が昇圧回路21の入
力端に供給され、さらにインバータ回路22に供給され、さらにインバータ回路22の3相出力の内、1相から出力される直流電力が、蓄電池14に供給される構成となる。その後、ステップ108においてインバータ回路22から直流電力を出力するようにスイッチング素子2a〜7aを制御することにより、蓄電池14の充電を行う。
【0038】
図3は、本発明の第1の実施の形態に係るモータ駆動装置20のインバータ回路22のモータ駆動時のスイッチングの推移を示す状態図である。モータ8を駆動するインバータ回路22が3相交流を出力するように、スイッチング素子2a〜7aのスイッチングが、制御手段15により制御される。スイッチング手法としては、パルス幅により出力電圧を制御するPWM(Pulse Width Modulation)方式により行う。PWM方式におけるキャリア波としては、周期がTc、振幅がVcの三角波が使用され、出力する交流の3相電圧との比較によりスイッチング素子2a〜7aのスイッチングタイミングを決定する。
【0039】
インバータ回路22の3相交流をU相、V相、W相の3相とした時に、U相の出力電圧に対し、対応したスイッチング素子2a、3aは、図3のように時刻t0〜t5の間はスイッチング素子2aがオン、スイッチング素子3aがオフとなるようにスイッチングされる。これにより、出力すべきU相の出力電圧と平均電圧で同じとなる電圧が、インバータ回路22の3相交流出力の内の1相であるU相から出力される。同様に、V相の出力電圧に対し、対応したスイッチング素子4a、5aは、図3のように時刻t1〜t4の間はスイッチング素子4aがオン、スイッチング素子5aがオフとなるようにスイッチングされる。
【0040】
W相の出力電圧に対し、対応したスイッチング素子6a、7aは、図3のように時刻t2〜t3の間はスイッチング素子6aがオン、スイッチング素子7aがオフとなるようにスイッチングされる。これにより、3相交流出力がインバータ回路22より出力され、さらに接続されたモータ8を駆動する。
【0041】
図4は、本発明の第1の実施の形態に係るモータ駆動装置20のインバータ回路22の蓄電池充電時のスイッチングの推移を示す状態図である。インバータ回路22の3相交流出力をU相、V相、W相の3相とし、スイッチング素子2a、3aに対応した相をU相、スイッチング素子4a、5aに対応した相をV相、スイッチング素子6a、7aに対応した相をW相とした時に、充電時には、インバータ回路22のV相の出力が、オン設定された充電スイッチ17を通して蓄電池14に供給される。そのために、U相に対応したスイッチング素子2a、3aをスイッチングすることにより、モータ8のインダクタンスを利用し電圧を降下させる。これにより、インバータ回路22により降圧チョッパ回路を構成することによる充電電圧制御が可能となる。
【0042】
インバータ回路22のU相、V相、W相の3相交流出力の内、U相に対応したスイッチング素子2a、3aのみスイッチングを行う。蓄電池14を充電するための充電電圧に対し、スイッチング素子2a、3aは、図4のように時刻t6〜t7の間はスイッチング素子2aがオン、スイッチング素子3aがオフとなるようにスイッチングされる。
【0043】
同じキャリア周期内での他の区間においては、それとは逆のスイッチング素子2aがオフ、スイッチング素子3aがオンとなるようにスイッチングされる。他のV相、W相に対応したスイッチング素子4a〜7aは、常時オフに設定される。
【0044】
これにより、出力すべき充電電圧と平均電圧で同じとなる電圧が、インバータ回路22の3相交流出力の内のU相とは別の相であるV相、もしくはW相から出力される。本実施例においては、V相からの出力がオンと設定された充電スイッチ17を通して蓄電池14
に供給される。蓄電池14を充電するための充電電圧値は、蓄電池14に対し最適な電圧値に設定され、所定の充電電流を実現するための電圧値に設定されてもよいことは言うまでもない。
【0045】
このように、本実施の形態1におけるモータ駆動装置においては、交流電源1より与えられる交流電力は、整流回路9により直流電力に変換され、昇圧回路21により昇圧された後、インバータ回路22に入力され、任意の周波数の交流に変換され、接続されたモータ8に供給されることにより、モータ8が任意の回転数で駆動される。
【0046】
さらに、モータ駆動装置20内に備えられた蓄電池14の電力は、放電スイッチ16を通して昇圧回路21に出力され、インバータ回路22に供給されることにより、蓄電池の電力によってもモータ8が駆動される。また、蓄電池14は、インバータ回路22からモータ8に接続された3相の電力線の内の1相の電力線に出力される直流電力により充電される。
【0047】
このことにより、小型、低コストの回路で外部交流電源によっても、内部蓄電池の電力によっても3相のモータを安定して駆動することができるモータ駆動装置が実現されるものである。
【0048】
(実施の形態2)
図5は、本発明の第2の実施の形態に係るモータ駆動装置47の全体構成を示す回路構成図である。このモータ駆動装置47により駆動されるモータ40としては、2相のSR(Switched Reluctance)モータなどが使用される。SRモータの駆動装置は、各相のスイッチング回路が独立したインバータ回路48で構成される。
【0049】
交流電源31より与えられる交流電力は、全波整流用のダイオードブリッジで構成される整流回路41により直流に変換される。この整流回路41により変換された直流電力は、平滑コンデンサ42が接続された直流部を介して、スイッチング素子32a〜35a、それに並列に接続されたダイオード32b〜35bとからなるスイッチング回路32〜35、さらに直流部の端子間にスイッチング素子32a〜35aと直列に接続されたダイオード36〜39とから構成されるインバータ回路48に入力される。
【0050】
モータ40は2つの巻線(X相、Y相)を有し、インバータ回路48は、それに対応した2組のスイッチング回路から構成される。インバータ回路48においては、入力された直流電力は任意の周波数のパルス電流に変換され、スイッチング素子32a〜35aとダイオード36〜39の相互接続点に接続されたモータ40に供給されることにより、モータ40を任意の回転数で駆動することができる。
【0051】
さらに、モータ駆動装置47内には蓄電池43が備えられ、その一端は整流回路41とインバータ回路22の接続点に、放電スイッチ45とダイオード54を通してダイオード54のカソード端で接続される。また、さらに他の一端には、インバータ回路48からモータ40に接続された2相の電力線4本の内の1本の電力線に、充電スイッチ46を通して接続される。
【0052】
モータ40を駆動する電力は、交流電源31からの電力を使用することも可能であると共に、蓄電池43からの電力を使用することも可能な構成となっている。交流電源31からの電力を使用する場合には、放電スイッチ45、充電スイッチ46がオフと設定され、蓄電池43からの電力を使用する場合には、放電スイッチ45がオン、充電スイッチ46がオフと設定される。このことにより、交流電源31からの電力を使用する場合には、交流電源31からの電力がインバータ回路22の入力端に供給され、蓄電池43からの電力
を使用する場合には、蓄電池43の電力がインバータ回路22の入力端に供給されることにより、モータ40を駆動する構成となっている。制御手段44は、この使用する電力の切り替えを放電スイッチ45、充電スイッチ46を制御することにより行うものである。
【0053】
さらに、充電の際には、放電スイッチ45がオフ、充電スイッチ46がオンと設定される。それにより、交流電源31からの電力がインバータ回路48に入力され、インバータ回路48の2相出力の内、1相から出力される直流電力が、蓄電池43に供給され充電が行われる。
【0054】
さらに、インバータ回路48の入力端には電圧検出手段49が備えられ、直流部の電圧が検出される。この電圧の値が所定の電圧値を超えている場合には、交流電源31から電力が供給されていると判断され、逆に所定の電圧値以下の場合には、交流電源から電力が供給されていないと判断される。この所定の電圧値は、モータを駆動することが可能な最低電圧値に設定される。
【0055】
交流電源から電力が供給されていると判断された場合には、放電スイッチ45がオフ、充電スイッチ46がオフと設定される。これにより、交流電源31からの電力がインバータ回路48の入力端に供給されることにより、モータ40を駆動する構成となる。さらに充電の際には、放電スイッチ45がオフ、充電スイッチ46がオンと設定されることにより、交流電源31からの電力がインバータ回路48の入力端に供給されることにより、蓄電池43を充電する構成となる。
【0056】
逆に、交流電源から電力が供給されていないと判断された場合には、放電スイッチ45がオン、充電スイッチ46がオフと設定される。これにより、蓄電池43の電力がインバータ回路22に供給されることにより、モータ40を駆動する構成となる。
【0057】
制御手段44は、モータ40が所望の回転数で回転するような電力をインバータ回路48が出力するように、スイッチング素子32a〜35aのスイッチングを制御する。スイッチングの方法としては、モータ40の回転角度に同期してモータ電流が流れるように素子の駆動パルスを発生させる方法により制御する。
【0058】
図6は、本発明の第2の実施の形態に係るモータ駆動装置47のインバータ回路48のモータ駆動時のスイッチングの推移を示す状態図である。モータ40を駆動するインバータ回路48が2相の電力を出力するように、スイッチング素子32a〜35aが行われる。例えば、時刻t20〜t21の区間においては、スイッチング素子32a、33aが所定の通流率でスイッチングされ、時刻t22〜t23の区間においては、スイッチング素子34a、35aが所定の通流率でスイッチングされる。これにより、モータ40の2相の巻線(X相巻線、Y相巻線)には、交互に一定周期で電流が流れ、それによりモータ40がその周期に合わせて駆動される。この制御は、制御手段44により制御される。
【0059】
図7は、本発明の第2の実施の形態に係るモータ駆動装置47のインバータ回路48の蓄電池充電時のスイッチングの推移を示す状態図である。充電時には、インバータ回路48のX相の一端の出力が、オン設定された充電スイッチ46を通して蓄電池43に供給される。そのために、X相に対応したスイッチング素子32aをスイッチングすることにより、モータ40のインダクタンスを利用し電圧を降下させる。これにより、インバータ回路48により降圧チョッパ回路を構成することによる充電電圧制御が可能となる。
【0060】
インバータ回路48のX相、Y相の2相出力の内、X相に対応したスイッチング素子32aのみスイッチングを行う。蓄電池43を充電するための充電電圧に対し、スイッチング素子32aは、図7のように時刻t10〜t11の間はスイッチング素子32aがオン
となるようにスイッチングされる。また、時刻t11〜t12の間はスイッチング素子32aがオフとなるように設定される。他のスイッチング素子33a〜35aは、常時オフに設定される。
【0061】
これにより、出力すべき充電電圧と平均電圧で同じとなる電圧が、インバータ回路48の出力の内のX相の一端から出力され、所定の充電電流が供給される。さらに、オン設定された充電スイッチ46を通して蓄電池43に供給される。蓄電池43を充電するための充電電圧値は、蓄電池43に対し最適な電圧値に設定され、所定の充電電流を実現するための電圧値に設定されてもよいことは言うまでもない。
【0062】
このように、本実施の形態2におけるモータ駆動装置においては、交流電源31より与えられる交流電力は、整流回路41により直流電力に変換され、インバータ回路48に入力され、任意の周波数の電力に変換され、接続されたモータ40に供給される。このことにより、モータ40が任意の回転数で駆動される。さらに、モータ駆動装置47内に備えられた蓄電池43の電力は、放電スイッチ45、ダイオード54を通してインバータ回路48に供給されることにより、蓄電池43の電力によってもモータ40が駆動される。
【0063】
また、蓄電池43は、インバータ回路48からモータ40に接続された2相の電力線の内の1相の電力線に出力される直流電力により充電される。このことにより、小型、低コストの回路で外部交流電源によっても、内部蓄電池の電力によっても2相のモータを安定して駆動することができるモータ駆動装置が実現されるものである。
【0064】
尚、上記実施の形態2における、制御手段15、および制御手段44は、マイコンのようなソフトウェア論理で動作するもので実現されてもよいし、ハードウェア論理回路により実現されても良いことはいうまでもない。
【0065】
(実施の形態3)
図8は、本発明の第3の実施の形態に係る電気掃除機の詳細構成を示す構成図である。この電気掃除機内には、ファンモータ50と、それを駆動するためのモータ駆動装置51と、その内部に設けられた蓄電池52が備えられる。
【0066】
そして交流電源ケーブル53から供給される交流電力により、モータ駆動装置51がファンモータ50を駆動することによりファンが回転し、掃除機の吸引機能を実現する。さらに、交流電源ケーブル53から交流電力が供給されない場合には、内部に備えられた蓄電池52の電力を用いて、ファンモータ50を駆動しファンが回転する。さらに、蓄電池52の充電は、交流電源ケーブル53から与えられる交流電力を内部のモータ駆動装置51により直流電力に変換することにより実現される。
【0067】
このように、本実施の形態3における電気掃除機においては、交流電源ケーブル53より与えられる交流電力が、モータ駆動装置51により任意の周波数の電力に変換され、接続されたファンモータ50を駆動し、掃除機能を実現する。さらに、蓄電池52の電力によってもファンモータ50が駆動されるので、外部から電源が供給されない場合でも掃除機能が実現される。さらに、モータ駆動装置51内のインバータ回路により蓄電池52が充電されるので、外部交流電源によっても、内部蓄電池の電力によっても掃除機機能を得られる、小型、低コストの電気掃除機が実現されるものである。
【産業上の利用可能性】
【0068】
以上説明したように本発明は、モータを駆動するモータ駆動装置に関し、特に外部電源によっても、内部の蓄電池によっても動作させることができ、さらに小型、軽量、低コストを実現するモータ駆動装置に関して有用である。また、それを用いた電気掃除機に関し
て有用である。
【符号の説明】
【0069】
1 交流電源
2 スイッチング回路
2a スイッチング素子
3 スイッチング回路
3a スイッチング素子
4 スイッチング回路
4a スイッチング素子
5 スイッチング回路
5a スイッチング素子
6 スイッチング回路
6a スイッチング素子
7 スイッチング回路
7a スイッチング素子
8 モータ
9 整流回路
10 昇圧コイル
11 ダイオード
12 昇圧用スイッチング素子
13 平滑コンデンサ
14 蓄電池
15 制御手段
20 モータ駆動装置
22 インバータ回路
31 交流電源
32 スイッチング回路
32a スイッチング素子
33 スイッチング回路
33a スイッチング素子
34 スイッチング回路
34a スイッチング素子
35 スイッチング回路
35a スイッチング素子
40 モータ
41 整流回路
42 平滑コンデンサ
43 蓄電池
44 制御手段
47 モータ駆動装置
48 インバータ回路
50 ファンモータ
51 モータ駆動装置
52 蓄電池
54 ダイオード

【特許請求の範囲】
【請求項1】
直流の外部電源を入力とし前記外部電源の電力を任意の周波数の電力に変換し外部接続されたモータを駆動するインバータ回路と、前記インバータ回路の入出力側に接続された蓄電池と、前記モータの駆動時には、前記蓄電池の電力もしくは前記外部電源の電力を用いて前記インバータ回路によりモータを駆動すると共に、前記蓄電池の充電時には、前記インバータ回路の出力の内の1相に直流電力を出力し、その直流電力を用いて前記蓄電池の充電を行う制御機能を有した制御手段とを備えたことを特徴とするモータ駆動装置。
【請求項2】
交流の外部電源を入力とし前記外部電源の電力を直流に変換するコンバータと、前記コンバータの出力する電力を入力とし任意の周波数の電力に変換し外部接続されたモータを駆動するインバータ回路と、前記インバータ回路の入出力側に接続された蓄電池と、前記モータの駆動時には、前記蓄電池の電力もしくは外部電源の電力を用いて前記インバータ回路によりモータを駆動すると共に、前記蓄電池の充電時には、前記インバータ回路の出力の内の1相に直流電力を出力し、その直流電力を用いて前記蓄電池の充電を行う制御機能を有した制御手段とを備えたことを特徴とするモータ駆動装置。
【請求項3】
前記インバータ回路は、直列に接続されたスイッチング素子2個を1相分として3相分のスイッチング素子を備え、前記制御手段は、前記モータの駆動時には、3相分のスイッチング素子をスイッチングすることにより3相の任意の周波数の電力を出力して3相のモータを駆動し、前記蓄電池の充電時には、前記インバータ回路の3相分のスイッチング素子の内、1相分のスイッチング素子のみスイッチングを行うことにより直流電力を出力する制御を行うことを特徴とする請求項1または2に記載のモータ駆動装置。
【請求項4】
前記インバータ回路は、スイッチング素子2個を1相分として2相分のスイッチング素子を備え、前記制御手段は、前記モータの駆動時には、2相分のスイッチング素子をスイッチングすることにより2相の任意の周波数の電力を出力して2相のモータを駆動し、前記蓄電池の充電時には、前記インバータ回路の2相分のスイッチング素子の内、1相分のスイッチング素子のみスイッチングを行うことにより直流電力を出力する制御を行うことを特徴とする請求項1または2に記載のモータ駆動装置。
【請求項5】
前記蓄電池と前記インバータ回路の入力側の間には第1のスイッチが備えられ、前記蓄電池と前記インバータ回路の出力側の間には第2のスイッチが備えられ、前記制御手段は、前記蓄電池の電力でモータを駆動するときに第1のスイッチをオンとし、前記外部電源から電力で蓄電池を充電するときに第2のスイッチをオンとすることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載のモータ駆動装置。
【請求項6】
前記インバータ回路の入力側には、入力部の電圧を検出する電圧検出手段を備え、検出された電圧が所定の値以下の場合、前記蓄電池の電力でモータを駆動すると共に、検出された電圧が前記所定の値以上の場合、前記外部電源の電力でモータを駆動、もしくは蓄電池を充電する制御を行う制御手段を備えたことを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載のモータ駆動装置。
【請求項7】
前記コンバータの外部電源からの入力側には、入力の電圧を検出する電圧検出手段を備え、検出された電圧が所定の値以下の場合、前記蓄電池の電力でモータを駆動すると共に、検出された電圧が前記所定の値以上の場合、前記外部電源からの電力でモータを駆動、もしくは蓄電池を充電する制御を行う制御手段を備えたことを特徴とする請求項2〜5のいずれか1項に記載のモータ駆動装置。
【請求項8】
前記インバータ回路の入力側に接続された昇圧回路を備え、前記蓄電池の出力は昇圧回路
の入力側に接続されたことを特徴とする請求項1〜7記載のいずれか1項に記載のモータ駆動装置。
【請求項9】
前記昇圧回路の入力側には、入力部の電圧を検出する電圧検出手段を備え、検出された電圧が所定の値以下の場合、前記蓄電池の電力でモータを駆動すると共に、検出された電圧が前記所定の値以上の場合、前記外部電源の電力でモータを駆動、もしくは蓄電池を充電する制御を行う制御手段を備えたことを特徴とする請求項8に記載のモータ駆動装置。
【請求項10】
前記外部電源からの入力側には第3のスイッチが備えられ、前記制御手段は、前記外部電源からの電力でモータを駆動、もしくは蓄電池を充電するときに第3のスイッチをオンとすることを特徴とする請求項2〜9のいずれか1項に記載のモータ駆動装置。
【請求項11】
ファンモータの駆動装置が、請求項1〜10のいずれか1つのモータ駆動装置により構成されたことを特徴とする電気掃除機。

【図1】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図2】
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【図8】
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【公開番号】特開2013−93988(P2013−93988A)
【公開日】平成25年5月16日(2013.5.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−234867(P2011−234867)
【出願日】平成23年10月26日(2011.10.26)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】