説明

モータ

【課題】ブラシホルダに取り付けられたアースターミナルを接地部材としてのギヤケースに位置決めして簡単かつ確実に組み付けることができるモータを提供する。
【解決手段】ヨーク11と、ヨークに回転自在に保持されるアーマチュア軸17のコンミュテータ18に摺接する複数のブラシと、ブラシを出没自在に収納するブラシボックスを取り付けたブラシホルダ20と、ブラシに給電するためにブラシホルダに保持されるターミナルと、ターミナルに設けられたアースターミナル44と、ヨークの開口部に結合されるギヤケースとを備えたモータにおいて、アースターミナルの先端部44bを略U字状に折り曲げ形成すると共に、該略U字状の先端部をブラシホルダの底壁部22からギヤケースの筒部の周方向に突出させ、かつ、アースターミナルの略U字状の先端部をギヤケースの筒部の方向に形成した嵌合溝12eに嵌合して接触させた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、モータ軸のコンミュテータに摺接するブラシを出没自在に保持するブラシホルダを備えたモータに関する。
【背景技術】
【0002】
この種のモータとして、図14に示すものがある(例えば、特許文献1参照。)。このモータは、図14に示すように、ヨークの開口部(図示省略)を覆うカバー1を有している。このカバー1は、金属製のカバー本体2と、このカバー本体2に取り付けられる合成樹脂製のブラシホルダ3とで構成されている。このブラシホルダ3の天井壁部3aには、一対のターミナル4,5の基部4a,5aを保持する一対のターミナル保持部3b,3bを形成してある。また、ブラシホルダ3の天井壁部3a及び側壁部3cの内側には、一対のターミナル4,5を収容する一対のターミナル収容部(図示省略)を形成してある。
【0003】
さらに、一対のターミナル4,5の中途部にはブラシスプリング4b,5bを形成してあり、その先端部にはブラシ7,8をそれぞれ保持してある。また、一方のターミナル5の基部5aには、雑音防止用のアース端子片6を設けてある。このアース端子片6は、ブラシホルダ3の側壁部3cの外側に露出していて、接地部材としてのヨークの周壁部の内面に接触するようになっている。
【0004】
【特許文献1】特開2002−165424号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、前記従来のモータでは、ターミナル5のアース端子片6のばね力でブラシホルダ3がヨークの周壁部から外れてしまったり、組み付け誤差を防ぐためにアース端子片6を大きくする必要があった。これにより、モータの組み立て時に、ヨークの周壁部に干渉しないようにしなければならないため、自動組み立てが困難となっていた。
【0006】
そこで、本発明は、前記した課題を解決すべくなされたものであり、ブラシホルダに取り付けられたアースターミナルを接地部材としてのギヤケースに位置決めして簡単かつ確実に組み付けることができるモータを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
請求項1の発明は、ヨークと、このヨークに回転自在に保持されるアーマチュア軸のコンミテータに摺接する複数のブラシと、前記ブラシを出没自在に収納するブラシボックスを取り付けたブラシホルダと、前記ブラシに給電するために前記ブラシホルダに保持されるターミナルと、前記ターミナルに設けられたアースターミナルと、前記ヨークの開口部に結合されるギヤケースとを備えたモータにおいて、前記アースターミナルの先端部を略U字状に折り曲げ形成すると共に、該略U字状の先端部を前記ブラシホルダの底壁部から前記ギヤケースの筒部の周方向に突出させ、かつ、前記アースターミナルの略U字状の先端部を前記ギヤケースの筒部の方向に形成した嵌合溝に嵌合して接触させたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
以上説明したように、請求項1の発明によれば、アースターミナルの先端部を略U字状に折り曲げ形成すると共に、該略U字状の先端部をブラシホルダ本体の底壁部からギヤケースの筒部の方向に突出させ、かつ、アースターミナルの略U字状の先端部をギヤケースの筒部の方向に形成した嵌合溝に嵌合して接触させたことにより、ブラシホルダに取り付けられたアースターミナルを接地部材としてのギヤケースに位置決めして簡単かつ確実に組み付けることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
以下、本発明の一実施形態を図面に基づいて説明する。
【0010】
図1は本発明の一実施形態のモータを示す斜視図、図2は同モータのヨークを取り外した状態を示す斜視図、図3は同ヨークを取り外した状態を一部断面で示す部分側面図、図4は同モータのギヤケースカバーに支持されたブラシホルダを底面側から見た斜視図、図5は同ブラシホルダを正面斜め上方から見た斜視図、図6は同ブラシホルダを背面側から見た斜視図、図7は同ブラシホルダの正面図、図8は同ブラシホルダの分解斜視図、図9は同ブラシホルダの要部の拡大斜視図、図10は同ブラシホルダに配置されるブラシとチョークコイルとターミナルの関係を示す拡大斜視図、図11は同ブラシホルダのブラシホルダ本体を正面斜め上方から見た斜視図、図12は同ブラシホルダ本体の平面図、図13は同ブラシホルダ本体の一対のチョークコイル保持部を正面斜め上方から状態から見た斜視図である。
【0011】
図1及び図2に示すように、モータ10は、図示しないアーマチュアを収納した有底で円筒状のヨーク(モータケース)11と、このヨーク11の開口部の周りのフランジ部11aが図示しないビスを介して円筒部12aの開口部12bの周りのフランジ部12cに締結固定され、内部にアーマチュアのアーマチュア軸(モータ軸)17に形成したウォームと該ウォームに噛合するウォームホイールから成る減速機構(図示省略)を収納したギヤケース12と、このギヤケース12の側壁部12dの先端に側壁部13bの開口端の環状凹部13cを嵌め込むようにして該ギヤケース12の側壁部12dに図示しないビスを介して締結固定されるギヤケースカバー13とを備えている。そして、図4及び図5に示すように、ギヤケースカバー13の天板部13aの内面に一体突出形成された雄コネクタ部13dにブラシホルダ20の雌コネクタ部27を着脱自在に嵌め込んである。これにより、図2に示すように、ブラシホルダ20は、モータ10を組み立てる際に、ギヤケース12の円筒部12a内の所定位置に位置決めされて組み付けられるようになっている。
【0012】
図2,図4〜図8に示すように、ブラシホルダ20は、アーマチュア軸17のコンミュテータ18に電源を供給する給電用の一対のブラシ33,33及び接地用(アース用)のブラシ35をそれぞれ出没自在に収納する3つのブラシボックス31,31,32を取り付けた金属製で円環板状のステー30と、このステー30を底壁部22に取り付けると共に、周壁部25の内側に給電用の一対のブラシ33,33にそれぞれ接続される電磁ノイズ低減用のチョークコイル40を収納する略半円筒状で一対のチョークコイル保持部28,28を突設した合成樹脂製のブラシホルダ本体21と、一端部42aが各チョークコイル40の他端部40bに接続されて一対のブラシ33,33に電源を供給する給電用の一対のターミナル42,42と、接地用のブラシ35に接続される接地用(アース用)のターミナル43と、この接地用のターミナル43の中途部43cにスポット溶接され、該中途部43cより下方に突出するアースターミナル44とを備えている。
【0013】
図4,図5,図7〜図9に示すように、ステー30の中央にはアーマチュア軸17のコンミュテータ18を貫通させる円形の貫通孔30aを形成してある。この貫通孔30aを挾むようにしてステー30の上面30bには、各ブラシボックス31,32を放射状にそれぞれ取り付けてあり、この各ブラシボックス31,32内に各ブラシ33,35を出没自在に収納してある。また、各ブラシ33,35は付勢手段としての圧縮コイルバネ38によりコンミュテータ18に接触するように押圧付勢されている。尚、ステー30の給電用のブラシボックス31と接地用のブラシボックス32が取り付けられる外周縁30c側には凹状の切欠き部30d,30eをそれぞれ形成してある。また、ステー30の外周縁30cはブラシホルダ本体21の周壁部25の内周面25aに複数形成された各上下一対の係止爪25b,25c間に保持されている。
【0014】
図4〜図9及び図11〜図13に示すように、ブラシホルダ本体21の底壁部22は半円環板状に形成してあり、その上面22aに給電用の一対のターミナル42,42を配索する一対の収納凹部23,23と接地用のターミナル43を配索する収納溝部24をそれぞれ形成してある。各収納凹部23の両側には各ターミナル42を保持する一対の係止爪23a,23aを一体突出形成してある。また、収納溝部24の両側には一対の係止爪24a,24aを複数対形成してあると共に、収納溝部24の周壁部25寄りの位置には、アースターミナル44が貫通する貫通孔24bを形成してある。
【0015】
図4〜図8に示すように、ブラシホルダ本体21の周壁部25は半円環板状の底壁部22の両側から少し突出した円弧状になっている。この周壁部25の下部には矩形の開口部26を形成してあると共に、該開口部26の下側の底壁部22には雌コネクタ部27を一体突出形成してある。
【0016】
また、図4〜図9及び図11〜図13に示すように、ブラシホルダ本体21の周壁部25の内周面25aの開口部26に対向する位置(一端側)には、電磁ノイズ低減用のチョークコイル40を収納する略半円筒状で一対のチョークコイル保持部28,28をそれぞれ一体突出形成してある。この各チョークコイル保持部28の底壁28aにはブラシホルダ本体21の周壁部25の開口部26と連通する開口部28bを形成してある。また、図11〜図13に示すように、各チョークコイル保持部28の下端部は断面略半円形に形成されていると共にその下端部から上端部に向かって断面多角形に形成されている。これは、チョークコイル保持部28が下端部から上端部に向かってチョークコイル40に接触するように、断面多角形の各辺はチョークコイル40の外径に対して接線となるように、各チョークコイル保持部28の断面略半円形の下端部から上端部に向かって連続的に変化している。さらに、図9及び図11〜図13に示すように、各チョークコイル保持部28の外側の側壁28dの上端には各チョークコイル40の一端部40aを保持する係止凹部28eを形成してある。さらに、図11〜図13に示すように、各チョークコイル保持部28の底壁28aは各チョークコイル40を載置させる半円形状の棚部になっている。
【0017】
また、図4〜図9及び図11〜図13に示すように、ブラシホルダ本体21の周壁部25の内周面25aの他端側には、サーキットブレーカ37を収納する凹状のブレーカ保持部29を形成してある。図5〜図8に示すように、サーキットブレーカ37の上側の端子37aには、一端部36aが接地用のブラシ35に接続されたピグテール線(リード線)36の他端部36bをスポット溶接により接合してある。また、サーキットブレーカ37の下側の端子37bには、接地用のターミナル43の一端部43aをスポット溶接により接合してある。さらに、図6に示すように、接地用のターミナル43の他端部43bはブラシホルダ本体21の雌コネクタ部27内に突出している。
【0018】
図2,図5,図8〜図10に示すように、各チョークコイル40は巻回部40c内に円柱状のマグネット41を接着等により固着してあり、その一端部40aには一端部34aが給電用のブラシ33に接続されたピグテール線(リード線)34の他端部34bを加締め板39の加締めにより接合してある。また、この各チョークコイル40は、比較的高い周波数の電流を阻止し、直流又は比較的低い周波数の電流だけを通過させることを目的とした電磁ノイズ低減用のコイルである。
【0019】
図6,図8〜図12に示すように、給電用の各ターミナル42の一端部42aは段差状に折り曲げ形成してあり、その中央にスリット状の接続孔42bを形成してある。また、給電用の各ターミナル42の中途部42cは垂直に起立していて、ブラシホルダ本体21の底壁部22の各収納凹部23の孔部23bを通って雌コネクタ部27の裏側に延びている。そして、図6に示すように、給電用の各ターミナル42の他端部42dはブラシホルダ本体21の雌コネクタ部27内に突出している。この組み付けの際に、ブラシホルダ本体21の周壁部25の開口部26内に、各チョークコイル40の他端部40bと給電用の各ターミナル42の一端部42aをそれぞれ露出するように配索し、該各ターミナル42の一端部42aの接続孔42bに各チョークコイル40の他端部40bを貫通させた後で、これら両端部をスポット溶接により接合するようになっている。
【0020】
また、図8,図11,図12に示すように、アースターミナル44の基端部44aは接地用のターミナル43の中途部43cにスポット溶接により接合されている。このアースターミナル44の先端部44bは略U字状に折り曲げ形成されている。この略U字状の先端部44bは、図3,図4,図7に示すように、ブラシホルダ本体21の底壁部22から接地部材としてのギヤケース12の円筒部(筒部)12aの周方向に沿う方向に突出している。そして、図3に示すように、アースターミナル44の略U字状の先端部44bは、ギヤケース12の円筒部12aの周方向に沿う方向に形成された嵌合溝12eに嵌合されて接触するようになっている。
【0021】
以上実施形態のモータ10によれば、図3,図4,図7に示すように、アースターミナル44の先端部44bを略U字状に折り曲げ形成すると共に、該略U字状の先端部44bをブラシホルダ20のブラシホルダ本体21の底壁部22からギヤケース12の円筒部12aの周方向に沿う方向に突出させ、かつ、アースターミナル44の略U字状の先端部44bをギヤケース12の円筒部12aの周方向に沿う方向に形成した嵌合溝12eに嵌合して接触させたことにより、ブラシホルダ20に取り付けられたアースターミナル44をギヤケース12の円筒部12aの嵌合溝12eに位置決めして簡単かつ確実に組み付けることができる。即ち、アースターミナル44の略U字状の先端部44bは、ギヤケース12の円筒部12aの嵌合溝12e内に楔状に挿入されて嵌合されるので、多少の組み立て位置に狂いがあっても自然と修正されて嵌合され、嵌合溝12eに接触する。このため、ブラシホルダ20がギヤケース12の円筒部12aの取付位置に簡単かつ確実に位置決めされて組み付けられる。その結果、アースターミナル44が突設するブラシホルダ20を備えたモータ10の自動組み立てが可能となる。
【0022】
また、モータ10の組み立ての際に、アースターミナル44の略U字状の先端部44bのばね力がギヤケース12の円筒部12aの内周面に直交する方向に反力として働くことがないため、ブラシホルダ20とギヤケース12との組み立てが容易となる。さらに、アースターミナル44の略U字状の先端部44bの変形ストローク確保のために長めに設計した該アースターミナル44のギヤケース12の円筒部12aへの干渉回避を留意することが不要となる。即ち、鉛直方向にアースターミナル44の略U字状の先端部44bがギヤケース12の円筒部12aの嵌合溝12e内に挿入できる過重だけを考慮すればよい。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】本発明の一実施形態のモータを示す斜視図である。
【図2】上記モータのヨークを取り外した状態を示す斜視図である。
【図3】上記モータのヨークを取り外した状態を一部断面で示す部分側面図である。
【図4】上記モータのギヤケースカバーに支持されたブラシホルダを底面側から見た斜視図である。
【図5】上記ブラシホルダを正面斜め上方から見た斜視図である。
【図6】上記ブラシホルダを背面側から見た斜視図である。
【図7】上記ブラシホルダの正面図である。
【図8】上記ブラシホルダの分解斜視図である。
【図9】上記ブラシホルダの要部の拡大斜視図である。
【図10】上記ブラシホルダに配置されるブラシとチョークコイルとターミナルの関係を示す拡大斜視図である。
【図11】上記ブラシホルダのブラシホルダ本体を正面斜め上方から見た斜視図である。
【図12】上記ブラシホルダ本体の平面図である。
【図13】上記ブラシホルダ本体の一対のチョークコイル保持部を正面斜め上方から状態から見た斜視図である。
【図14】従来のモータのブラシホルダとアースターミナルの分解斜視図である。
【符号の説明】
【0024】
10 モータ
11 ヨーク
11a フランジ部(開口部)
12 ギヤケース
12a 円筒部(筒部)
12e 嵌合溝
17 アーマチュア軸
18 コンミュテータ
20 ブラシホルダ
21 ブラシホルダ本体
22 底壁部
25 周壁部
28,28 一対のチョークコイル保持部
28b 開口部
30 ステー
31,32 ブラシボックス
33,33 給電用の一対のブラシ
35 接地用のブラシ
40 チョークコイル
40b 他端部
42,42 給電用の一対のターミナル
42a 一端部
43 接地用のターミナル
44 アースターミナル
44b 先端部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ヨークと、このヨークに回転自在に保持されるアーマチュア軸のコンミテータに摺接する複数のブラシと、前記ブラシを出没自在に収納するブラシボックスを取り付けたブラシホルダと、前記ブラシに給電するために前記ブラシホルダに保持されるターミナルと、前記ターミナルに設けられたアースターミナルと、前記ヨークの開口部に結合されるギヤケースとを備えたモータにおいて、
前記アースターミナルの先端部を略U字状に折り曲げ形成すると共に、該略U字状の先端部を前記ブラシホルダの底壁部から前記ギヤケースの筒部の周方向に突出させ、かつ、前記アースターミナルの略U字状の先端部を前記ギヤケースの筒部の方向に形成した嵌合溝に嵌合して接触させたことを特徴とするモータ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【公開番号】特開2008−252973(P2008−252973A)
【公開日】平成20年10月16日(2008.10.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−87524(P2007−87524)
【出願日】平成19年3月29日(2007.3.29)
【出願人】(000144027)株式会社ミツバ (2,083)
【Fターム(参考)】