説明

モールド剥離装置

【課題】シート状のモールドに形成されている微細な転写パターンを被成型品に転写した後、被成型品に貼り付いているシート状モールドを被成型品から剥がすモールド剥離装置において、装置の構成を簡素化する。
【解決手段】転写装置5から離れた箇所に位置しお互いがくっついているモールドMAと被成型品Wとのうちの被成型品Wを保持する被成型品保持体19と、被成型品保持体19で保持された被成型品Wに貼り付いているモールドMAが巻き掛けられ被成型品保持体19に対して移動することで、被成型品WからモールドMAを剥がす剥離ローラ23とを有するモールド剥離装置7である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、モールド剥離装置に係り、特に、シート状のモールドに形成されている微細な転写パターンを被成型品に転写することによって被成型品に貼り付いているシート状モールドを、被成型品から剥がすものに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、電子線描画法などで石英基板等に超微細な転写パターンを形成して型を作製し、被成型品に前記型を所定の圧力で押圧して、当該型に形成された転写パターンを転写するナノインプリント技術が研究開発されている(たとえば、非特許文献1参照)。
【0003】
ナノオーダーの微細なパターン(転写パターン)を低コストで成型する方法としてリソグラフィ技術を用いたインプリント法が考案されている。この成型法は大別して熱インプリント法とUVインプリント法とに分類される。
【0004】
熱インプリント法では、型を基板に押圧し、熱可塑性ポリマからなる樹脂(熱可塑性樹脂)が十分に流動可能となる温度になるまで加熱して微細パターンに樹脂を流入させたのち、型と樹脂をガラス転移温度以下になるまで冷却し、基板に転写された微細パターンを固化したのち型を引き離す。
【0005】
UVインプリント法では、光を透過できる透明な型を使用し、UV硬化性液に型を押しつけてUV放射光を加える。適当な時間放射光を加えて液を硬化させ微細パターンを転写したのち型を引き離す。
【0006】
上記転写の他の態様として、型に形成されている転写パターンを一旦シート状の材料に転写し、転写パターンが転写されたシート状の材料をモールド(シート状モールド)として使用し、シート状モールドの転写パターンを被成型品に転写することがある。
【0007】
そして、シート状のモールドに形成されている微細な転写パターンを被成型品に転写することによって被成型品に貼り付いているシート状モールドを、ローラを用いて被成型品から剥がす装置として、たとえば、特許文献1(図9等)に示すものが知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2010−105314号公報
【非特許文献】
【0009】
【非特許文献1】Precision Engineering Journal of the International Societies for Precision Engineering and Nanotechnology 25(2001) 192-199
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
ところで、特許文献1に示す従来の装置では、転写とシート状モールドの剥がしとが、同じ装置でなされているので、装置の構成が煩雑になるという問題がある。
【0011】
すなわち、転写がなされる空間にローラを設置して、このローラを、シート状モールドの剥がしをするために移動する必要があり、限られた空間に、ローラ等の部品を配置しなければならず、装置の構成が煩雑化する。
【0012】
本発明は、上記問題点に鑑みてなされたものであり、シート状のモールドに形成されている微細な転写パターンを被成型品に転写した後、被成型品に貼り付いているシート状モールドを被成型品から剥がすモールド剥離装置において、装置の構成を簡素化することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
請求項1に記載の発明は、シート状のモールドに形成されている微細な転写パターンを平板状の被成型品に転写した後、前記被成型品に貼り付いている前記モールドを前記被成型品から剥がすモールド剥離装置において、前記転写がなされる転写箇所から離れた箇所に位置し、お互いがくっついている前記モールドと前記被成型品とのうちの前記被成型品を保持する被成型品保持体と、前記被成型品保持体で保持された前記被成型品に貼り付いている前記モールドが巻き掛けられ、前記被成型品保持体に対して移動することで、前記被成型品から前記モールドを剥がす剥離ローラとを有するモールド剥離装置である。
【0014】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載のモールド剥離装置において、前記転写がなされる転写箇所と前記被成型品保持体との間で前記モールドを保持するモールド保持部を有するモールド剥離装置である。
【0015】
請求項3に記載の発明は、請求項1または請求項2に記載のモールド剥離装置において、
前記モールドの張力を調整する張力調整部を有するモールド剥離装置である。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、シート状のモールドに形成されている微細な転写パターンを被成型品に転写した後、被成型品に貼り付いているシート状モールドを被成型品から剥がすモールド剥離装置において、装置の構成を従来よりも簡素化することができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】転写システムの概略構成を示す正面図である。
【図2】図1におけるII−II矢視図である。
【図3】図1におけるIII−III矢視図である。
【図4】図1におけるIV−IV矢視図である。
【図5】モールド剥離装置の動作を示す図である。
【図6】モールド剥離装置の動作を示す図である。
【図7】モールド剥離装置の動作を示す図である。
【図8】張力調整部の概要を示す図である。
【図9】転写の概要を示す図である。
【図10】変形例に係るモールド引き剥がし装置の概要を示す図であり、図1に対応した図である。
【図11】別の変形例に係るモールド引き剥がし装置の概要を示す図であり、図1に対応した図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
転写システム1は、図1等で示すように、シート状モールド移送位置決め装置3と転写装置5と、モールド剥離装置(剥離装置)7とを備えて構成されている。
【0019】
なお、以下、説明の便宜のために、水平な一方向をX軸方向とし、水平な他の一方向であってX軸方向に直交する方向をY軸方向とし、X軸方向とY軸方向とに直交する鉛直な方向をZ軸方向とする。
【0020】
シート状モールド移送位置決め装置3は、モールド原反設置装置9とモールド巻き取り装置11とを備えて構成されており、シート状のモールドMAを所定の箇所(たとえばモールド原反設置装置9とモールド巻き取り装置11との間)で平板状にして、この平板状のシート状モールドMAを所定の方向(たとえば、図1の右側から左側に向かう方向)に移送して位置決めする装置である。
【0021】
転写装置5は、シート状モールドMAに形成されている微細な転写パターンMB(図9参照)を被成型品Wに転写するための装置である。
【0022】
剥離装置(シート状モールド分離装置)7は、転写装置5による転写がされて被成型品(転写後被成型品)Wに貼り付いているシート状モールドMAを被成型品Wから剥がす(分離する)ための装置である。
【0023】
転写装置5と剥離装置7とは、モールド原反設置装置9とモールド巻き取り装置11との間に設けられている。転写装置5と剥離装置7とは、お互いが、X軸方向で離れて設けられており、転写装置5が、シート状モールド移送位置決め装置3のシート状モールドMAの移送方向における上流側(モールド原反設置装置9側)に位置しており、剥離装置7が、シート状モールド移送位置決め装置3のシート状モールドMAの移送方向における下流側(モールド巻き取り装置11側)に位置している。
【0024】
平板状のシート状モールドMAの移送位置決めは、平板状のシート状モールドMAの微細な転写パターンMB(図9参照)を、転写装置5を用いて平板状の被成型品Wに転写をするとき、この転写の準備のために、また、この転写によって被成型品Wに貼り付いているシート状モールドMAを、モールド剥離装置7を用いてシート状モールドMAから剥がすとき、この剥がしの準備のために、なされるものである。
【0025】
シート状モールド移送位置決め装置3についてさらに詳しく説明する。
【0026】
シート状モールド移送位置決め装置3は、モールド原反MCを設置するモールド原反設置装置9(繰り出しローラ)と、このモールド原反設置装置に設置されているモールド原反から繰り出している(延出している)シート状モールドMAを巻き取るモールド巻き取り装置11(巻き取りローラ)とシート状モールド位置検出装置(図示せず)とを備えて構成されている。
【0027】
そして、前述したように、モールド原反設置装置9とモールド巻き取り装置11との間で、シート状モールドMAが延出し、ほぼ平板状になっている。この平板状になっているシート状モールドMAの幅方向はY軸方向と一致しており、長手方向は、たとえば、X軸方向やX軸に対して斜めの方向と一致しており、厚さ方向はZ軸方向やZ軸に対して斜めの方向と一致している。なお、モールド原反設置装置9、モールド巻き取り装置11は、たとえば、図示しないブラケットを介して、剥離装置7の基台13に一体的に設けられている。
【0028】
モールド原反設置装置9とモールド巻き取り装置11との間で、平板状になっているシート状モールドMAには、張力付与手段15により、この長手方向で所定の張力がかかっている。これによって、シート状モールドMAが、平板状の形態を保つようになっている。微細な転写パターンMBは、図1等では図示してはいないが、平板状のシート状モールドMAの下面に形成されている。
【0029】
モールド原反(反物状のモールド)MCは、転写装置5での転写に使用される前のロール状のモールドである。モールド原反MCは、シート状のモールドMAを、円柱状の芯材17の外周に、この外周の周方向とシート状のモールドMAの長手方向とがお互いに一致するようにして巻き重ね、円筒状もしくは円柱状に形成されている。
【0030】
モールド巻き取り装置11で巻き取られた巻き取り済みモールドMDは、転写装置5での転写に使用され剥離装置7で被成型品Wから剥がされたモールドであり、モールド原反MCと同様にしてロール状になっている。
【0031】
モールド原反設置装置9に設置されているモールド原反MCは、この中心軸(Y軸方向に延びている軸)C1を回転中心にして回転するようになっている。モールド巻き取り装置11で巻き取られる巻き取り済みモールドMDも、この中心軸(Y軸方向に延びている軸)C2を回転中心にして回転するようになっている。
【0032】
シート状モールド移送位置決め装置3によるモールド原反設置装置9とモールド巻き取り装置11との間に存在している平板状のシート状モールドMAの移送位置決めは、平板状のシート状モールドMAをモールド巻き取り装置11で所定の長さだけ巻き取ることによって行われるようになっている。
【0033】
シート状モールド移送位置決め装置3による1回の移送距離は、たとえば、微細な転写パターンMBが形成されている領域のピッチ、もしくは、転写装置5のX軸方向における中心と剥離装置7(詳しくは後述する被成型品保持体19)のX軸方向における中心との間の距離(X軸方向における距離)と等しくなっている。
【0034】
また、シート状モールド移送位置決め装置3による移送がされるときおよびされた後は、張力付与手段15によって、モールド原反設置装置9とモールド巻き取り装置11との間で延出しているシート状モールドMAは、所定の張力を保った状態でその位置がほぼ維持されるようになっている。
【0035】
張力付与手段15について例を掲げて詳しく説明すると、モールド原反設置装置9に設置されているモールド原反MCは、パウダークラッチ等のトルク制御クラッチを介してモータ等のアクチュエータの回転出力軸に連結されて、回転するようになっている。モールド巻き取り装置11で巻き取られるシート状モールド(巻き取り済みモールド)MDは、サーボモータ等のアクチュエータの回転出力軸にされて、回転するようになっている。
【0036】
そして、モールド原反設置装置9とモールド巻き取り装置11との間で延出している平板状のシート状モールドMAを移送する場合には、制御装置21の制御の下、モールド原反設置装置9のモータを逆回転させておき(平板状のシート状モールドMAをモールド原反設置装置9で巻き取るようにモールド原反MCのモータの回転出力軸を回転させておき)、パウダークラッチのトルクを所定の値T1にしておき、モールド巻き取り装置11のサーボモータの回転出力軸を、平板状のシート状モールドMAを巻き取る方向に所定のトルクT2で所定の回転角度だけ回転する。
【0037】
この場合において、モールド原反設置装置9に設置されているモールド原反MCの半径を「R1」とし、モールド巻き取り装置11における巻き取り済みモールドMDの半径を「R2」とすると、「T1/R1<T2/R2」になっている。これにより、所定の張力F1(F1=T1/R2−T1/R1)を保って、モールド原反設置装置9とモールド巻き取り装置11との間で延出している平板状のシート状モールドMAが、モールド巻き取り装置11側に移送されるようになっている。
【0038】
シート状モールド移送位置決め装置3による平板状のシート状モールドMAの移送がされておらず、平板状のシート状モールドMAがその位置を維持している状態では、モールド巻き取り装置11のサーボモータの回転出力軸は、所定の保持トルクで停止している。また、モールド原反設置装置9のモータとパウダークラッチとで、平板状のシート状モールドMAが所定の張力を得ている。
【0039】
モールド原反設置装置9とモールド巻き取り装置11との間で延出している平板状のシート状モールドMAの移送距離の決定(移送位置決め)は、図示しないシート状モールド位置検出装置(図示しないシート状モールド位置検出部)を用いてなされるようになっている。
【0040】
シート状モールド位置検出装置は、シート状モールドMAの所定部位(たとえば、図示しないアイマーク)を図示しないセンサで検出するようになっている。すなわち、シート状モールドの位置決めは、シート状モールド移送位置決め装置3でのシート状モールドの移送がなされているとき、上記センサでの検出結果に応じて、制御装置21の制御の下、移送位置決め装置3によるシート状モールドMAの移送を停止し、なされるように構成されている。
【0041】
ここで、図9を用いて、UVインプリント法による転写装置5を用いた転写について説明する。
【0042】
シート状モールドMAの微細な転写パターンMBは、たとえば、多数の微細な凹凸で形成されており、高さやピッチが可視光線の波長程度かもしくは可視光線の波長よりも僅かに大きいか僅かに小さくなっており、シート状モールドMAの厚さ方向の一方の面に形成されている。すなわち、平板状のシート状モールドMAのたとえば下面に微細な転写パターンMBが形成されている。
【0043】
UVインプリント法では、たとえば、転写装置5を用い、図9(a)で示す矢印の方向にシート状モールドMAを移動し、図9(b)に示すように、シート状モールドMAで被成型品Wを小さい力で押圧し、紫外線を照射し、紫外線硬化樹脂W2を硬化させる。これにより、被成型品W(紫外線硬化樹脂W2)に微細な転写パターンが転写される。なお、被成型品は、平板状の基材(ガラスやシリコン等で構成されている基材)W1の厚さ方向の一方の面(たとえば上面)に、紫外線硬化樹脂W2の薄膜を設けて形成されている。
【0044】
この後、剥離装置7を用いて、シート状モールドMA被成型品Wから離すと、図9(c)に示すように、被成型品W(紫外線硬化樹脂W2)に形成された微細な転写パターン(シート状モールドMAの転写パターンMBとは反転しているパターン)が現れる。
【0045】
この後、他の装置を用い、図示しない残膜をアッシング等で除去し、図9(c)に示す状態において、紫外線硬化樹脂W2をマスキング部材にして、エッチングによって基材W1に微細な転写パターンを形成し、この後、硬化した紫外線硬化樹脂W2をたとえば溶剤で取り除けば、図9(d)に示すように、基材W1への微細な転写パターンの転写が完了する。
【0046】
なお、上記説明は、UVインプリント法を例に掲げて説明したが、転写装置5に被成型品Wを加熱しまた冷却する装置を付加し、転写装置5を熱インプリント法を行う装置としてもよい。
【0047】
転写装置5について詳しく説明する。
【0048】
転写装置5は、上述したように、平板状のシート状モールドMAに形成されている微細な転写パターンMBを被成型品(被転写品)Wに、平板状のシート状モールドMAと被成型品Wを押圧して転写する装置である。
【0049】
被成型品Wは、たとえば矩形な平板状に形成されており、縦方向はX軸方向と一致しており、幅方向がY軸方向と一致し、厚さ方向がZ軸方向と一致するようにして、転写装置5に設置されるようになっている。
【0050】
シート状モールド移送位置決め装置3によるシート状モールドMAの移送位置決め(停止)がされたときには、シート状モールドMAの厚さ方向がZ軸方向になって、シート状モールドMAが転写装置5に設置された被成型品Wよりも僅かに上方に位置している。また、平面視において、微細な転写パターンMBと転写装置5に設置された被成型品Wの微細な転写パターンが形成される部位とが、Z軸方向から見てお互いに重なっている。シート状モールドMAの幅と被成型品Wの幅とは、お互いがほぼ等しくなっている。
【0051】
シート状モールドMAと被成型品WとをZ軸方向で押圧等することによって転写装置5での転写がなされる。この転写がなされた直後(剥離装置7による剥離がされる前)は、シート状モールドMAの下面と被成型品Wの上面とがお互いに接触し、被成型品Wにシート状モールドMAが貼り付いている(図9(b)等を参照)。そして、シート状モールドMAの下側に被成型品Wが位置している。
【0052】
次に、剥離装置7について詳しく説明する。
【0053】
モールド剥離装置7は、前述したように、シート状のモールドMAに形成されている微細な転写パターンMBを、たとえば転写装置5を用いて平板状の被成型品Wに転写した後、この転写によって被成型品Wに貼り付いているシート状モールドMAを被成型品Wから剥がす装置である。
【0054】
モールド剥離装置7は、被成型品保持体19と剥離ローラ23とを備えて構成されている。
【0055】
被成型品保持体19は、転写がなされる転写箇所(転写装置5)から、たとえばX軸方向に離れた箇所に位置しており、お互いがくっついているシート状モールドMAと被成型品Wとのうちの被成型品Wを保持するものである。
【0056】
剥離ローラ23も、転写がなされる転写箇所(転写装置5)から、たとえばX軸方向に離れた箇所に位置している。また、剥離ローラ23には、被成型品保持体19で保持された被成型品Wに貼り付いているシート状モールドMAが巻き掛けられるようになっている。そして、シート状モールドMAが巻き掛けられている剥離ローラ23が、被成型品保持体19(被成型品W)に対して移動することで、被成型品Wからシート状モールドMAが剥離されるようになっている。
【0057】
また、モールド剥離装置7には、モールド保持部25と張力調整部27とが設けられている。モールド保持部25は、転写装置5と被成型品保持体19との間でシート状モールドMAを保持するものである。張力調整部27は、剥離ローラ23もしくはモールド保持部25とモールド巻き取り装置11との間で延伸しているシート状モールドMAの張力を調整するものである。
【0058】
詳しく説明すると、張力調整部27は、剥離ローラ23を用いた被成型品Wからのシート状モールドMAの剥がしによって(引き剥がしをしているとき)平板状のシート状モールドMAの形態(たとえば、モールド保持部25とモールド巻き取り装置11との間に存在している平板状のシート状モールドMAの延伸の経路長)が変化しても、シート状のモールドMAが弛んだり、シート状のモールドMAが張力過多によって切断されないように、平板状のシート状モールドMAの張力をほぼ一定に調整するものである。
【0059】
張力調整部27により、平板状のシート状モールドMAの形態にかかわらず、平板状のシート状モールドMAの張力をほぼ一定に調整するので、平板状のシート状モールドMAから被成型品Wを剥がすときに、シート状モールドMAが弛んだり切れてしまうことを防止することができる。
【0060】
ここで、剥離装置7についてさらに詳しく説明する。
【0061】
剥離装置7は、前述したように、基台13を備えて構成されている。被成型品保持体19は、X軸方向で基台13の中央部に設けられている。
【0062】
また、被成型品保持体19は、被成型品保持体支持体29の上部で被成型品保持体支持体29に一体的に設けられている。被成型品保持体支持体29(被成型品保持体19)は、リニアガイドベアリング31を介してブラケット(基台13に一体的に設けられているブラケット)33に支持されており、基台13に対してZ軸方向で移動自在になっている。
【0063】
また、制御装置21の制御の下、サーボモータ35等のアクチュエータで被成型品保持体19(被成型品保持体支持体29)がZ軸方向で移動位置決め自在になっている。被成型品保持体19の上面は、矩形状に形成されて水平に展開しており、縦方向がX軸方向と一致し、幅方向がY軸方向と一致している。
【0064】
被成型品保持体19が上端に位置している場合には、被成型品保持体19の上面は、基台13の上端から僅かに上方に突出し、被成型品保持体19が下端に位置している場合には、被成型品保持体19が基台13の内部に位置するようになっている。
【0065】
転写装置5で転写がされて下面に被成型品Wが貼り付いているシート状モールドMAは、制御装置21の制御の下、シート状モールド移送位置決め装置3によって、転写装置5から下流側(モールド剥離装置7側)に所定の距離だけ移送されて位置決めされるようになっている。
【0066】
このシート状モールド移送位置決め装置3による移送位置決めがなされることによって、転写によりシート状モールドMAが貼り付いている被成型品Wが、被成型品保持体19の上方(ほぼ真上)に位置するようになっている。
【0067】
このように、シート状モールドMAに貼り付いている被成型品Wが被成型品保持体19の上方に位置している状態では、シート状モールドMAや被成型品Wの幅方向と被成型品保持体19の幅方向とがお互いに一致している。
【0068】
また、被成型品保持体19の上面の幅方向の寸法は、被成型品Wの幅方向の寸法とほぼ等しいか大きくなっており、被成型品保持体19の上面の縦方向の寸法は、被成型品Wの縦方向の寸法とほぼ等しいか僅かに大きくなっている。
【0069】
そして、シート状モールドMAに貼り付いている被成型品Wが被成型品保持体19の上方に位置している状態を、Z軸方向から見ると、たとえば、Wが被成型品保持体19の上面(被成型品保持体19)の内側に存在している。
【0070】
また、被成型品保持体19の上面には真空吸着用の複数の溝37が設けられている。そして、シート状モールドMAに貼り付いている被成型品Wが被成型品保持体19の上方に位置し、しかも、被成型品保持体19が上端に位置している状態では、シート状モールドMAに貼り付いている被成型品Wの下面が、被成型品保持体19の上面に面接触し、制御装置21の制御の下、真空吸着によって被成型品保持体19がシート状モールドMAに貼り付いている被成型品Wを保持するようになっている。
【0071】
被成型品保持体19が下端に位置している状態では、被成型品保持体19はシート状モールドMAやシート状モールドMAに貼り付いている被成型品Wから離れるようになっている。
【0072】
なお、すでに理解されるように、被成型品Wは、X軸方向で所定の間隔をあけてシート状モールドMAに貼り付くようになっている。したがって、シート状モールドMAでは、被成型品Wが貼り付いていない部位(シート状モールドMAのみの部位)が存在している。
【0073】
剥離ローラ23は、たとえば、下側ローラ39と上側ローラ41との2本のローラで構成されている。下側ローラ39は、円柱状もしくは円筒状に形成されており、軸C5がY軸方向に延びてローラ支持体43に回転自在(軸C5を中心にして回転自在)に支持されている。
【0074】
また、下側ローラ39の下端は、上端に位置している被成型品保持体19の上面よりも僅かに上方に位置している。すなわち、下側ローラ39と上端に位置している被成型品保持体19の上面との間は、Z軸方向で、シート状モールドMAの厚さと被成型品Wの厚さとの合計値だけ、もしくは、上記合計値よりもごく僅かに大きい値だけ、間隔があいている。
【0075】
また、下側ローラ39の幅方向の寸法(Y軸方向の寸法)は、シート状モールドMAの幅よりも大きくなっており、Y軸方向では、下側ローラ39の中心とシート状モールドMAの中心とがお互いに一致している。
【0076】
上側ローラ41は、たとえば、下側ローラ39と同形状に形成されており、軸C4がY軸方向に延びて下側ローラ39の上方で下側ローラ39から離れローラ支持体43に回転自在(軸C4を中心にして回転自在)に支持されている。また、下側ローラ39と上側ローラ41とは、Y軸方向とX軸方向とでは、たとえばお互いが同じところに位置している。
【0077】
そして、モールド原反設置装置9に設置されたモールド原反MCから繰り出したシート状モールドMAが、下側ローラ39に巻き掛けられ、続いて、上側ローラ41に巻き掛けられ、張力調整部27のローラ45に巻き掛けられて、モールド巻き取り装置11で巻き取られるようになっている。
【0078】
シート状モールドMAは、下流側(モールド巻き取り装置11側)で下側ローラ39に巻き掛けられており、また、シート状モールドMAは、上流側(モールド原反設置装置9側)で上側ローラ41に巻き掛けられている。
【0079】
これにより、Y軸方向から見ると、図1等で示すように、下側ローラ39と上側ローラ41とに巻き掛けられているシート状モールドMAは、「S」字状もしくは、逆「S」字状になっている。
【0080】
モールド原反設置装置9と下側ローラ39との間では、シート状モールドMAはX軸方向とY軸方向とに展開しており、Y軸方向から見ると直線状になっている。また、シート状モールドMAは、張力調整部27のローラ45の下側でローラ45に巻き掛けられており、上側ローラ41と張力調整部27のローラ45との間および張力調整部27のローラ45とモールド巻き取り装置11との間では、シート状モールドMAは、幅方向がY軸方向になり長手方向が斜めになって、Y軸方向から見ると「V」字状になっている。
【0081】
ところで、ローラ支持体43は、リニアガイドベアリング47を介して、ローラベース体49に支持されており、X軸方向でローラベース体49に対して移動自在になっている。ローラベース体49は、図示しないブラケットを介して基台13に一体的に設けられている。
【0082】
また、ローラ支持体43は、サーボモータ51等のアクチュエータにより、制御装置21の制御の下、X軸方向で移動位置決め自在になっている。そして、下側ローラ39と上側ローラ41とが、X軸方向に所定の速度で移動し位置決めされるようになっている。
【0083】
下側ローラ39と上側ローラ41とが最も下流側に位置しているとき、下側ローラ39と上側ローラ41とは、被成型品保持体19よりも下流側であって張力調整部27のローラよりも上流側に存在している。下側ローラ39と上側ローラ41とが最も上流側に位置しているとき、下側ローラ39と上側ローラ41とは、被成型品保持体19よりも上流側であってモールド保持部25よりも下流側に存在している。
【0084】
ローラ支持体43は、被成型品保持体19や基台13から離れて被成型品保持体19や基台13の上方に位置している。ローラベース体49は、ローラ支持体43の上方に位置している。
【0085】
ローラベース体49の端部(転写装置5側の端部)には、モールド保持部25を構成する上側クランプ体53が設けられている。また、基台13の上部であって基台13の端部(転写装置5側の端部)には、モールド保持部25を構成する下側クランプ体55が一体的に設けられている。
【0086】
図2に示すように、上側クランプ体53には、ガイドバー57が一体的に設けられている。ガイドバー57は、上側クランプ体53の上方で上側クランプ体53から起立している。また、ガイドバー57は、ローラベース体49に一体的に設けられているガイドベアリング59に係合している。これにより、上側クランプ体53が、ローラベース体49(基台13)に対してZ軸方向で移動自在になっている。
【0087】
また、上側クランプ体53は、上側クランプ体53の上部に設けられたシリンダ(たとえばエアーシリンダ)61等のアクチュエータで、制御装置21の制御の下、Z軸方向で移動するようになっている。なお、エアーシンンダ61は、このシリンダ部が、ローラベース体49に一体的に設けられており、ピストンロッドの先端部が、上側クランプ体53に一体的に係合している。
【0088】
上側クランプ体53の下面は、たとえば矩形な平面状に形成されており、上側クランプ体53の下面の幅方向がX軸方向となり、下面の長手方向がY軸方向になっている。上側クランプ体53の下面の長手方向の寸法は、シート状モールドMAの幅よりも大きくなっており、Y軸方向で、シート状モールドMAの中心の位置と上側クランプ体53の下面の中心の位置とがお互いに一致している。
【0089】
下側クランプ体55の上面は、たとえば、上側クランプ体53の下面と同じ形状で同じ大きさに形成されており、Z軸方向から見た場合、上側クランプ体53の下面と下側クランプ体55の上面とはお互いが重なっている。
【0090】
下側クランプ体55の上面は、Z軸方向では、モールド原反設置装置9との間で水平に延伸しているシート状モールドMAから僅かに離れて(被成型品Wの厚さよりも僅かに大きい値だけ離れて)、シート状モールドMAの下側に位置している。
【0091】
上側クランプ体53が上端に位置しているときには、上側クランプ体53が、モールド原反設置装置9との間で水平に延伸しているシート状モールドMAから離れてシート状モールドMAの上方に位置し、下側クランプ体55が、モールド原反設置装置9との間で水平に延伸しているシート状モールドMAから離れてシート状モールドMAの下方に位置している。
【0092】
一方、上側クランプ体53が上端から下方に移動することで、上側クランプ体53と下側クランプ体55とで、モールド原反設置装置9との間で水平に延伸しているシート状モールドMAを挟んで保持するようになっている。
【0093】
上側クランプ体53と下側クランプ体55とでシート状モールドMAを挟んで保持している状態では、下側クランプ体55の上面が、シート状モールドMA(被成型品Wが貼り付いていない部位)の下面に接触し、上側クランプ体53の下面が、シート状モールドMAの上面に接触している。なお、シート状モールドMAを挟んだとき、モールド保持部25で保持される(上側クランプ体53と下側クランプ体55とで把持される)シート状モールドMAの部位等が、僅かに下側に移動するのであるが、この移動は僅かであるので、シート状モールドMAの張力がほとんど変化することはなく、シート状モールドMA等が変形してしまう等の不具合が発生することは無い。
【0094】
ところで、転写によって被成型品Wに貼り付いているシート状モールドMAの被成型品Wからの剥離は、詳しくは次のようにしてなされる。
【0095】
まず、被成型品保持体19が下降し、上側クランプ体53が上昇し、剥離ローラ23が下流側の端部に位置している状態(図5(a)参照)で、シート状モールド移送位置決め装置3で、シート状モールドMAを移送位置決めし、転写によってシート状モールドMAに貼り付いている被成型品Wを被成型品保持体19の真上に位置させる。
【0096】
続いて、被成型品保持体19を上昇させて上端に位置させ、被成型品保持体19で被成型品Wを保持し、上側クランプ体53を下降させて、モールド保持部25でシート状モールドMAを保持する(図5(b)参照)。続いて、剥離ローラ23(ローラ支持体43)を上流側に所定の速度で、上流側の端部まで移動する(図6参照)。
【0097】
これらの動作をすることにより、ローラ支持体43の移動に同期して剥離ローラ23(下側ローラ39,上側ローラ41)が回転しつつ、被成型品Wからのシート状モールドMAの剥離(剥がし)がなされるようになっている。すなわち、剥離ローラ23とシート状モールドMAとの間で滑りが無い状態で、剥がしが完了した部位と剥がしが未完了な部位との直線状の境界(シート状モールドMAの幅方向に延伸している境界)が、シート状モールドMAの長手方向の一端部から他端部に向かって(たとえば図1の左から右に向かって)移動し、この移動が完了したときに剥離が終了するようになっている。
【0098】
ところで、上記説明では、1本のエアーシリンダ61を、上側クランプ体53の中央部(Y軸方向の中央部)に設けて、上側クランプ体53を移動し、シート状モールドMAの保持をしているが、エアーシリンダ61に加えて、補助シンンダ(たとえば、エアーシリンダ)63を設けてあってもよい(図2参照)。
【0099】
補助シリンダ63は、たとえば、2本等の複数本設けられており、Y軸方向で、エアーシリンダ61から所定の距離だけ離れてエアーシリンダ61に対して対称に配置されている。
【0100】
補助シリンダ63は、上側クランプ体53の上方に位置しており、シリンダ部がローラベース体49に一体的に設けられている。また、補助シリンダ63のシリンダロッドは、シリンダ部から下方に延出しているが、上側クランプ体53には接続されておらず、上側クランプ体53に対して、接触しもしくは離反自在になっている。
【0101】
そして、エアーシリンダ61のピストンロッドが上昇して上側クランプ体53が上昇端に位置している場合には、補助シリンダ63のピストンロッドが上昇して上昇端に位置し、補助シリンダ63のピストンロッドと上側クランプ体53とがお互いが離れている(図2参照)。
【0102】
一方、エアーシリンダ61のピストンロッドを下降して、上側クランプ体53を下降し、シート状モールドMAを把持した状態で、補助シリンダ63のピストンロッドを下降するとと、補助シリンダ63のピストンロッドの下端が上側クランプ体53に接触し、上側クランプ体53を下方に押すようになっている。
【0103】
これにより、上側クランプ体53の幅方向(Y軸方向)のほぼ全長にわたり、均一な押圧力で、シート状モールドMAを把持することができる。
【0104】
また、上記説明では、下側クランプ体55を固定し上側クランプ体53を移動してシート状モールドMAを把持しているが、上側クランプ体53を固定し下側クランプ体55を移動してシート状モールドMAを把持してもよいし、上側クランプ体53と下側クランプ体55との両方を移動してシート状モールドMAを把持してもよい。なお、下側クランプ体55を移動する場合、下側クランプ体55を被成型品保持体支持体29に一体的に設けて移動させてもよい。
【0105】
ここで、張力調整部(モールド長調整装置)27についてさらに詳しく説明する。
【0106】
張力調整部27は、ベース部材65に一体的に支持されてZ軸方向に延びているガイドバー67と、ガイドバー67にリニアガイドベアリング(図示せず)を介して係合し上下方向に移動自在になっている軸受け部材69と、この軸受け部材69にY軸方向の延びている軸C3を回転中心にして回転自在に設けられているローラ45とを備えて構成されている。ベース部材65は、たとえば、図示しないブラケットを介して基台13に一体的に設けられている。
【0107】
ローラ45は、前述したように、剥離ローラ23とモールド原反巻き取り装置11との間に存在している。ローラ45は、たとえば、上側ローラ41やモールド原反巻き取り装置11の巻き取りモールドMDよりも下方に位置しており、ローラ45の下側に、シート状モールドMAが巻き掛けられている。なお、ローラ45の幅(Y軸方向の寸法)は、シート状モールドMAの幅よりも大きくなっており、Y軸方向で、ローラ45の中心とシート状モールドMAの中心とがお互いに一致している。
【0108】
張力調整部27には、付勢手段71が設けられている。付勢手段71は、ローラ45に巻き掛けられている平板状のシート状モールドMAに張力を与える方向(図1や図2等では下方向)で、平板状のシート状モールドMAに適正な張力を与えるように、ローラ45をたとえば下方に付勢するものである。
【0109】
具体的には、付勢手段71は、エアーシリンダ73と、このエアーシリンダ73に供給される空気圧を制御する空気圧制御機器(たとえば、レギュレータ75と方向制御弁77)とを備えて構成されている。
【0110】
エアーシリンダ73は、ローラ45のたとえば下方に位置しており、エアーシリンダ73のシリンダ部が、ベース部材65に一体的に設けられており、エアーシリンダ73のピストンロッドがシリンダ部の上方に突出し、ピストンロッドの先端部が、軸受け部材69に接続されている。
【0111】
また、エアーシリンダ73のロッド側(上側)の内部空間は、圧縮空気圧源79に直接的に接続されており、エアーシリンダ73のヘッド側(下側)の内部空間は、レギュレータ75や方向制御弁77を介して圧縮空気圧源79に接続されている。
【0112】
そして、制御装置21の制御の下、方向制御弁77を切り替えることで、付勢手段71による付勢力を変えることができるようになっている。なお、エアーシリンダ73のロッド側の内部空間とエアーシリンダ73のヘッド側の内部空間とのそれぞれは、リリーフバルブ(図示せず)を介して大気に通じており、各内部空間内の空気圧が上昇し過ぎることが防止されるようになっている。
【0113】
さらに説明すると、方向制御弁77のソレノイドSolbをOFFしている状態(図8に示す状態)では、エアーシリンダ73のロッド側の内部空間とエアーシリンダ73のヘッド側の内部空間とに、同じ圧力の圧縮空気が供給されている。また、ピストンロッドが設けられていることにより、エアーシリンダ73のロッド側の内部空間の面積がエアーシリンダ73のヘッド側の内部空間の面積よりも小さくなっている。
【0114】
したがって、図8に示す状態では、ローラ45が上昇し、シート状モールドMAに張力を付与することができないことになる。しかし、ローラ45の質量(重量)により、実際には、下降しようとする力がローラ45に働き、シート状モールドMAの張力を付与することができるのである。
【0115】
なお、方向制御弁77のソレノイドSolbをONしている状態では、エアーシリンダ73のヘッド側の内部空間に供給される空気圧が、レギュレータ75により、空気圧源79の空気圧よりも小さくなっているので、下降するためのより大きな力がローラ45に働くのである。
【0116】
方向制御弁77の切り替えは、シート状モールドMAの張力の変化の幅を極力小さくするためにされるものである。たとえば、シート状モールドMAの張力を検出可能な張力検出部を設け、この張力検出部の検出結果に応じて、方向制御弁77の切り替え、シート状モールドMAの張力の変化の幅を極力小さくすることができるのである。
【0117】
張力検出部による張力の検出は、たとえば、ローラ45の軸受けの発生する荷重を検出するロードセル(図示せず)を用いてなされる。また、方向制御弁77の切り替えは、ロードセルで検出した荷重が所定の閾値よりも大きいときには、方向制御弁77のソレノイドSolbをOFFし、ロードセルで検出した荷重が所定の閾値よりも小さいときには、方向制御弁77のソレノイドSolbをONするようにしてなされる。
【0118】
なお、上記説明では、エアーシリンダ73の下側の内部空間に供給される空気の圧力を2段階で変更しているが、3段階以上の複数の段階で変更してもよいし、無段階で連続的に変更してもよい。
【0119】
また、張力検出部の検出結果に応じて、下側ローラ39と上側ローラ41との移動速度(シート状モールドMAを剥がすときのローラ支持体43の移動速度)を適宜変更してもよい。
【0120】
すなわち、張力検出部で検出したシート状モールドMAの張力が小さくなったときには、下側ローラ39と上側ローラ41との移動速度を速くし、張力検出部で検出したシート状モールドの張力が大きくなるにしたがって、下側ローラ39と上側ローラ41との移動速度を次第に遅くして、シート状モールドMAに過度の張力がかかることを防止しつつ、被成型品Wに転写された転写パターンを傷付けることなく効率良くシート状モールドMAの引き剥がしをするようにしてもよい。
【0121】
シート状モールド移送位置決め装置3によれば、張力調整部27が、ローラ45とエアーシリンダ73とを備えて構成されているので、複雑な制御をすることなく、簡素な構成で、平板状のシート状モールドMAの張力をほぼ一定に調整することができる。
【0122】
また、エアーシリンダ73に供給されている圧縮空気は、圧縮性を備えた気体であるので、何らかの要因で、平板状のシート状モールドMAの形態が急激に変化した場合であっても、その急激な変化に対応して張力を調整することができる。したがって、平板状のシート状モールドMAで急激な形態の変化があっても、シート状モールドMAが切断等してしまうことを防止することができる。
【0123】
ここで、転写システム1の動作を説明する。
【0124】
まず、初期状態として、モールド原反設置装置9に設置されているモールド原反MCとモールド巻き取り装置11の巻き取り済みモールドMDとの間で、所定の張力をもって、シート状モールドMAが延伸しており、この延伸しているシート状モールドは、剥離ローラ23(下側ローラ39,上側ローラ41)と張力調整部27のローラ45とに巻き掛けられているものとする。
【0125】
また、転写装置5には、転写がされる前の被成型品Wが設置されて転写の準備が整っているものとする。剥離装置7では、被成型品保持体19が下降しており、上側クランプ体53が上昇しており、剥離ローラ23(下側ローラ39,上側ローラ41)が、被成型品保持体19の下流に位置しているものとする。
【0126】
上記初期状態において、まず、転写装置5で転写をすると、この転写によって、被成型品Wとシート状モールドMAとがお互いに貼り付く。
【0127】
転写装置5による転写後、シート状モールド移送位置決め装置3でシート状モールドMAを下流側に移送位置決めし、シート状モールドMAの下面に貼り付いている被成型品Wを、被成型品Wの真上に位置させる(図5(a)参照)。
【0128】
続いて、転写装置5に次の転写をするための被成型品Wを設置すると共に、剥離装置7の被成型品保持体19を上昇させて、被成型品保持体19で被成型品Wを保持し、上側クランプ体53を下降してシート状モールドMAを保持する(図5(b)参照)。上側クランプ体53と下側クランプ体55とでシート状モールドMAを保持した後、転写装置5による次の転写を行う。
【0129】
続いて、剥離ローラ23(下側ローラ39,上側ローラ41)を上流側に移動し、被成型品Wからシート状モールドMAを剥がす(図6(a)、(b)参照)。
【0130】
続いて、被成型品保持体19を下降して被成型品保持体19による被成型品Wの保持を止め、被成型品Wを被成型品保持体19から取り除き、上側クランプ体53を上昇してモールド保持部25によるシート状モールドMAの保持を止め、剥離ローラ23(下側ローラ39,上側ローラ41)を被成型品保持体19の下流まで戻す。
【0131】
続いて、同様にして、次の被成型品Wのシート状モールドMAからの剥がしを行う。
【0132】
このようにして動作することで、モールド原反設置装置9とモールド巻き取り装置11との間で延伸しているシート状モールドMAを用いて、複数の被成型品Wに1枚ずつ次々に転写がなされる、また、複数の被成型品Wが1枚ずつシート状モールドMAから次々に剥離される。すなわち、ロール・ツウ・ロール(Roll to Roll)で転写と剥がしとがなされる。
【0133】
転写システム1の剥離装置7によれば、転写装置5から離れた別の場所で、被成型品Wに貼り付いているシート状モールドMAを被成型品Wから剥がすので、装置の構成を簡素化することができる。
【0134】
すなわち、被成型品保持体19や剥離ローラ23等が転写装置5から離れているので、被成型品保持体19や剥離ローラ23等が転写装置5と干渉することがなく、被成型品保持体19や剥離ローラ23等の設置スペースの自由度が広がり、装置の構成が簡素化される。
【0135】
また、転写システム1の剥離装置7によれば、シート状モールドMAを被成型品Wから剥がすときに、微細な粉塵等が僅かに発生したとしても、この発生した粉塵が転写装置5まで到達することが無く、微細な粉塵が転写に悪影響を与えることがなく、正確な転写をすることができる。
【0136】
また、転写システム1の剥離装置7によれば、転写とシート状モールドMAの被成型品Wからの剥しとを別の場所で行うので、転写とシート状モールドMAの被成型品Wからの剥しとを同時に並行して行うことがき、転写に要する時間を短縮することができる。
【0137】
さらに、剥離装置7によれば、剥離ローラ23による剥がし角度(被成型品保持体19に保持されている被成型品Wの上面と、下側ローラ39に巻き掛けられているシート状モールドMAとの交差角度)が一定であるので、ほぼ一定の力で被成型品Wからのシート状モールドMAの剥がしをすることができ、剥がしによって、被成型品Wに転写された転写パターンが損傷してしまうことを防止することができる。
【0138】
また、剥離装置7によれば、モールド保持部25が設けられているので、剥離ローラ23による剥がし(シート状モールドMAの被成型品Wからの剥がし)が終わったときであっても、シート状モールドMAのX軸方向での位置ずれ(特に転写装置5での位置ずれ)を防止することができる。
【0139】
すなわち、図6(a)で示すように、下側ローラ39と上側ローラ41とでシート状モールドMAを剥がしている状態では、シート状モールドMAが被成型品Wに貼り付いているとともに被成型品Wが被成型品保持体19に保持されているので、たとえば、上側クランプ体53と下側クランプ体55とによるシート状モールドMAの保持がなくても、下側ローラ39と上側ローラ41とがシート状モールドMAにおよぼす力で、転写装置5側に存在しているシート状モールドMAの位置がずれてしまうことはない。
【0140】
これに対して、図6(b)で示すように、下側ローラ39と上側ローラ41とによるシート状モールドMAの剥がしが終了した状態(下側ローラ39と上側ローラ41とが被成型品保持体19から離れて被成型品保持体19の上流側に位置している状態)状態や剥がし終える直前の状態では、上側クランプ体53と下側クランプ体55とによるシート状モールドMAの保持がないと、下側ローラ39と上側ローラ41とがシート状モールドMAにおよぼす力で、転写装置5側に存在しているシート状モールドMAがずれてしまう。
【0141】
しかし、剥離装置7では、上側クランプ体53と下側クランプ体55とでシート状モールドMAを保持しているので、転写装置5でのシート状モールドMAの位置ずれを防止することができる。
【0142】
ところで、図10で示すように、上側ローラ41とローラ45との間にガイドローラ81を設け、ローラ45とモールド巻き取り装置11との間にガイドローラ83を設けてもよい。なお、各ガイドローラ81,83は、Y軸方向に延びた軸C6,C7中心にして回転自在になっている。
【0143】
各ガイドローラ81,83にはシート状モールドMAが巻き掛けられており、ガイドローラ81とローラ45との間およびローラ45とガイドローラ83との間では、シート状モールドMAが、剥離ローラ23の位置や巻き取り済みモールドMDの外径の変化にかかわらず常にZ軸方向に延伸している。つまり、ローラ45の下側でシート状モールドMAの巻き掛け角度が常に180°になっている。
【0144】
これにより、張力調整部27のローラ45によるシート状モールドMAの張力の調整をしやすくなる。
【0145】
また、上記説明では、下側ローラ39と上側ローラ41とが、ローラ支持体43の移動に従って、回転するようになっているが、下側ローラ39、上側ローラ41の少なくともいずれかを、サーボモータ等のアクチュエータで、ローラ支持体43の移動に同期して回転するような構成にしてもよい。
【0146】
また、巻き取り済みモールドMDを用いて、被成型品Wに貼り付いているシート状モールドMAを直接剥がすように構成してもよい。
【0147】
すなわち、図11で示すように、巻き取り済みモールドMDをY軸方向の延びた軸C8を中心にして回転させると共に、X軸方向で左から右に移動しつつ、シート状モールドMAを剥がす構成であってもよい。なお、巻き取り済みモールドMDは、Z軸方向でも移動位置決め自在になっているものとする。
【符号の説明】
【0148】
5 転写箇所(転写装置)
7 モールド剥離装置
19 被成型品保持体
23 剥離ローラ
25 モールド保持部
27 張力調整部
39 下側ローラ
41 上側ローラ
53 上側クランプ体
55 下側クランプ体
MA シート状モールド
MB 転写パターン
W 被成型品

【特許請求の範囲】
【請求項1】
シート状のモールドに形成されている微細な転写パターンを平板状の被成型品に転写した後、前記被成型品に貼り付いている前記モールドを前記被成型品から剥がすモールド剥離装置において、
前記転写がなされる転写箇所から離れた箇所に位置し、お互いがくっついている前記モールドと前記被成型品とのうちの前記被成型品を保持する被成型品保持体と、
前記被成型品保持体で保持された前記被成型品に貼り付いている前記モールドが巻き掛けられ、前記被成型品保持体に対して移動することで、前記被成型品から前記モールドを剥がす剥離ローラと、
を有することを特徴とするモールド剥離装置。
【請求項2】
請求項1に記載のモールド剥離装置において、
前記転写がなされる転写箇所と前記被成型品保持体との間で前記モールドを保持するモールド保持部を有することを特徴とするモールド剥離装置。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載のモールド剥離装置において、
前記モールドの張力を調整する張力調整部を有することを特徴とするモールド剥離装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2012−81618(P2012−81618A)
【公開日】平成24年4月26日(2012.4.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−228499(P2010−228499)
【出願日】平成22年10月8日(2010.10.8)
【出願人】(000003458)東芝機械株式会社 (843)
【Fターム(参考)】