説明

ヤットコ用ロット及びヤットコ、これらを用いたヤットコ柱の低強度化方法及び既製杭の埋設方法

【課題】プレボーリング工法で既製杭を埋設する際に杭頭レベルから地表面の間の杭孔内に形成されるヤットコ柱を容易に低強度化できる方法と装置を提供する。
【解決手段】回転キャップ11を既製杭26の上端部に取り付け、未硬化の硬化性充填物24が充填されている杭孔17内の所定の深さまで立て込んで行く。既製杭26を所定の深さまで立て込んだら、オーガーを逆回転させ、回転キャップ11を既製杭26から取り外し、1m程度引き上げる。ヤットコ19下端のロット1に設けた吐出口5より希釈溶液としてのベントナイト液を吐出し、攪拌翼15で杭孔17内上部の未硬化の硬化性充填物24と混合しながら、ヤットコ19を引き上げて行く。吐出を開始した深さより上部に充填されている硬化性充填物24とベントナイト液を攪拌混合することで、硬化物であるヤットコ柱23を低強度化させる。ヤットコ柱23の低強度化により根切り作業が容易となる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プレボーリング工法で既製杭を埋設する際に用いるヤットコ用ロットとヤットコに関し、特に、ヤットコ柱を低強度化させるための手段を備えたヤットコ用ロットとヤットコ、ならびに、これらを用いたヤットコ柱の低強度化方法及び既製杭の埋設方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、ビルディング等の建築構造物を構築する際には、これを支持するため地中に既製杭を埋設し一体形成することが行われている。既製杭を埋設する工法の一つにプレボーリング工法があり、ヤットコを用いて中空コンクリート杭等の既製杭を埋設する。
【0003】
これは、一般的な建築構造物には地下階が存在したり、地下階が存在しない場合でもパイルキャップや地中梁を形成する関係から、ほとんどの場合、施工地盤面より下に杭頭レベルを設定する必要があるからである。
【0004】
一方、プレボーリング工法の施工管理では、ヤットコを用いて既製杭を埋設する際に発生する杭周固定液と掘削土砂との混合物(ソイルセメント)のオーバーフロー物を地表面で採取して供試体を作成して強度管理を行うことが行われている。このため、通常、杭頭レベルから地表面の間の杭孔内にはソイルセメントが強固に固化したヤットコ柱が形成される。
【0005】
既製杭の杭頭部はフーチング等に接続するための処理が必要であり、そのため根切り作業をしなければならないが、上記ヤットコ柱が存在すると根切り作業がスムーズに進められなくなったり、産業廃棄物処理となるためコスト高となる。したがって、杭孔内に形成される強固に固化したヤットコ柱を未然に防ぎ、根切り作業を阻害しないようにする必要があった。
【0006】
根切り工事を簡易にする方法として、特許第2555838号公報(特許文献1)に記載されるものがある。これは、ソイルセメント柱列孔下部の根入れ部には普通強度のセメントミルクを、ソイルセメント柱列孔上部の根切り部には低強度のセメントミルクを注入する方法である。
【0007】
また、フーチングに接続するための既製杭の杭頭部の処理方法として、特開2001−336147号公報(特許文献2)に記載されるものがある。これは、既製杭の杭頭部に回転キャップを取り付けて既製杭を下降させた後、既製杭の中空部内に回転キャップに取り付けたノズルから薄め液を吐出させ、既製杭の中空部内に充填された硬化性材料の濃度を薄くし、固化強度を低下させる杭頭処理方法である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特許第2555838号公報
【特許文献2】特開2001−336147号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
上述の通り、特許文献1には根切り工事を簡易にする方法が記載されているが、普通強度のセメントミルクと低強度のセメントミルクの2種類を用意する必要があり、手間がかかりコスト高となる。また、既製杭を埋設施工した際に発生するソイルセメントの強度管理が行えない。
【0010】
一方、特許文献2には硬化性材料の濃度を薄くして固化強度を低下させる杭頭処理方法が記載されているが、該硬化性材料は既製杭の中空部内に充填されたものであるからして、この方法では杭孔内に形成される強固に固化したヤットコ柱を未然に防ぐことができず、円滑な根切り作業ができない。
【0011】
本発明は、上記背景における上記課題に鑑みてなされたものであり、プレボーリング工法で既製杭を埋設する際に杭頭レベルから地表面の間の杭孔内に形成される強固に固化したヤットコ柱を未然に防ぐべく、低強度のヤットコ柱を効率よく形成する方法と装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明者らは、上記目的を達成すべく鋭意検討した結果、既製杭を杭孔内に埋設する際に使うヤットコを改造し、該ヤットコで既製杭を杭孔内に埋設した後ヤットコを引き上げる段階で、既に杭孔内に充填されている硬化性充填物(ソイルセメント)の低強度化を図れば効率よく低強度のヤットコ柱を形成することができることを見出し、発明を完成させた。
【0013】
すなわち、請求項1に係る発明は、既製杭を杭孔に埋設するのに使用するロッド式ヤットコの回転キャップの直上部に接続されるロットであり、前記ロットには吐出液の通路となる中空軸部と該吐出液を杭孔内の横方向に吐出させるための逆止弁を備えた1〜複数個の吐出孔が設けられており、前記中空軸部の下端部は閉塞されていることを特徴とする。
【0014】
回転キャップは従来のものと同じであるが、本発明では、ロットの一部を改造して、希釈水や希釈溶液等の吐出液が杭孔内の横方向に吐出できるよう、1〜複数個の吐出孔を設けている。これによって、ヤットコで既製杭を埋設する工程の中で低強度のヤットコ柱を簡便に形成できるので、効率的である。
【0015】
吐出口には逆止弁が設けられており、これによって、外部からの硬化性充填物の逆流を防いでいる。
【0016】
ロット中空軸部の下端部は閉塞してあり、吐出液が下方に流れないようにしてある。これによって、吐出口から吐出液を杭孔内の横方向に効率よく吐出できる。
【0017】
吐出口の形状、寸法、数等の設け方は、杭孔内の硬化性充填物に行き渡るよう設けられておれば、特に限定されない。横方向の対面に一対、もしくは、該対を縦方向に二箇所設けるのが一般的である。
【0018】
請求項2に係る発明は、請求項1に係るヤットコ用ロットにおいて、上記吐出孔と同じ高さまたは吐出孔より下方のロット外面に、前記吐出孔より吐出した吐出液を攪拌するための攪拌翼が取り付けられていることを特徴とするものである。
【0019】
攪拌翼を回転させながら吐出液を吐出することによって、吐出液と杭孔内に既に充填されている硬化性充填物(ソイルセメント)が十分混合されるので、低強度のヤットコ柱を均一に形成することができる。
【0020】
攪拌翼は吐出口と同じ高さまたは吐出口より少し下に設けられていることが好ましい。具体的には0〜50cm下である。攪拌翼の形状、寸法、数等は特に限定されない。従来のヤットコのロットに取り付けられているものでよい。
【0021】
請求項3に係る発明は、上記請求項1または2に係るヤットコ用ロットを組み込んだヤットコに関するものであり、埋設する既製杭の杭頭部を把持する杭把持部を有する回転キャップと、該回転キャップの直上部に接続される請求項1または請求項2に記載のヤットコ用ロットと、該ロットの上部に接続され中空軸部を有する1〜複数個のロットとを備えたヤットコであって、該ヤットコの上部には、これら回転キャップとロットを正逆自在に回転させるための駆動部と吐出液の供給部とが設けられていることを特徴とする。
【0022】
本発明のヤットコでは、上記ヤットコ用ロット以外の装備は、従来のものと同じでよい。本発明のヤットコ用ロット以外の接続ロットは、既製杭を埋設する深さとロットの長さに応じて、適宜1〜複数個が接続して使われる。
【0023】
このように、本発明のヤットコは、従来から用いられているヤットコのロットの一部に本発明のロットを組み込んだものでよく、従来のヤットコをそのまま使用でき、効率的である。
【0024】
請求項4に係る発明は、杭孔内に埋設された既製杭の上方に硬化性充填物によって形成されるヤットコ柱の低強度化方法であって、杭孔内に埋設された既製杭より上方に充填された未硬化の硬化性充填物中の低強度化したい所定範囲の深さで請求項3に記載のヤットコを適宜上下反復させ、上記吐出孔から希釈水または希釈溶液を吐出して前記所定範囲の深さの前記硬化性充填物と混合し、該所定範囲の深さの硬化性充填物の硬化強度を低下させてヤットコ柱の少なくとも一部を低強度化することを特徴とする。
【0025】
本発明で言うヤットコ柱とは、埋設した既製杭の杭頭レベルから地表面までの杭孔内に形成される強固なソイルセメント柱である。本発明のこの方法では、杭孔内に埋設された既製杭より地表面までの上方であれば、低強度化したい杭孔の所定範囲の深さを任意に設定できる。
【0026】
この低強度化は根切り作業の容易性と関連するので、前記所定範囲の深さは、通常、根切りする範囲の深さである。なお、埋設した既製杭の部分は、地盤への支持構造上、杭周固定液(ソイルセメント)が強固に固化されている必要があるので、硬化性充填物を低強度化する範囲は、埋設した既製杭の杭頭レベルの1m程度より上の部分であることが好ましい。
【0027】
また、本発明で言う硬化性充填物とは、セメントミルク等の杭周固定液に掘削土砂が混ざったソイルセメントである。この硬化性充填物は、希釈水または希釈溶液と混合する時点で未硬化でなければならない。硬化していたり、硬化が始まっていると混合できなくなる。
【0028】
低強度化する程度は、ヤットコ柱によって、根切り作業が阻害されない程度の弱強度で硬化していれば、特に限定されない。概して、0.1〜0.5N/mm2程度である。低強度化は、本発明のヤットコ用ロットの吐出口から希釈水または希釈溶液を吐出し、未硬化の硬化性充填物と混合されることによりなされる。
【0029】
吐出は、0.1〜6.0MPa程度の圧力でなされる。希釈溶液としては2〜20%程度の濃度のベントナイト溶液等が挙げられる。前記混合は、本発明のヤットコを回転させながら低強度化したい所定範囲の深さで該ヤットコの本発明のヤットコ用ロットを適宜上下反復させることによりなされる。混合を十分に行うために、該ヤットコ用ロットに、攪拌翼が設けられていることが好ましい。
【0030】
上記吐出及び混合は、通常、本発明のヤットコにより既製杭を埋設した後、該ヤットコを地上に引き上げる際になされる。この場合は、ヤットコ(ヤットコ用ロット)は上下反復せず、上方に引き上げられるのみである。
【0031】
この他、従来のヤットコで既製杭を埋設した後、一旦該ヤットコを地上に引き上げ、本発明のヤットコ用ロットを取り付けて本発明のヤットコにした後、該ヤットコを未硬化の硬化性充填物が充填されている杭孔内に挿入し、該ヤットコの挿入時もしくは該ヤットコの引き上げ時もしくは該ヤットコを上下反復させて上記吐出及び混合を行ってもよい。
【0032】
請求項5に係る発明は、プレボーリング工法による既製杭の埋設方法であって、請求項3に記載のヤットコの回転キャップを埋設杭に取り付けて、該埋設杭を未硬化の硬化性充填物が充填されている杭孔内の所定の深さに埋設し、その後、前記回転キャップを埋設杭から取り外しヤットコを引き上げる際に、所定の深さに達した時点で上記請求項1または請求項2に記載のヤットコ用ロットの上記吐出孔から希釈水または希釈溶液を吐出して、これらと前記硬化性充填物とを混合しながら前記ヤットコを引き上げ、吐出を開始した前記所定の深さより上部に充填されている硬化性充填物(ヤットコ柱)の硬化強度を低下させて硬化させることを特徴とする。
【0033】
この発明は、上記請求項4に示される発明の一実施形態の発明である。この発明では、上記請求項3に係る本発明のヤットコを用いることで、既製杭のヤットコによる埋設工程で硬化性充填物(ヤットコ柱)の低強度化が図れるので効率的である。これによって、次の根切り作業が容易となる。
【発明の効果】
【0034】
本発明によれば、プレボーリング工法で既製杭を埋設する際に杭頭レベルから地表面の間の杭孔内に形成される強固に固化したヤットコ柱を未然に防ぐことができ、以降の根切り作業がスムーズに行える。また、従来から使用されているヤットコを使用でき、既製杭の埋設工程の中で処理できるので効率的である。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【図1】回転キャップの直上部に接続された本発明のヤットコ用ロットの一例を示す正面図である。
【図2】図1に対応するヤットコ用ロットの一部断面図(吐出口部分については直交方向の断面)である。
【図3】本発明の既製杭の埋設方法における施工手順を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0036】
以下、図面を参照しつつ、本発明をより具体的に説明する。
【0037】
図1は回転キャップ11の直上部に接続された本発明のヤットコ用ロット1の一例を示したもので、図2はその一部断面図(吐出口部分については直交方向の断面)である。
【0038】
本発明のヤットコ用ロット1は、後述する図3で説明するように、既製杭をロッド式ヤットコにより杭孔に埋設する際に使用される回転キャップ11の直上部に接続されるロット1であり、吐出液10の通路となる中空軸部9の下端部は閉塞してある(図中、符号7がその閉塞部を示す)。
【0039】
本実施形態において、回転キャップ11は従来のものと同様のものであり、回転キャップ本体12の側面下部に鍵状の切欠きによる杭把持部13が形成され、既製杭の頭部に設けられた突起等に係止し、回転力を伝えられるようになっている。図では杭把持部13を1箇所のみ記載しているが、2以上、複数形成される。
【0040】
回転キャップ11の上面には、ジョイント凸部3が形成されており、ヤットコ用ロット1の中空軸部9下端内面に位置するジョイント凹部4に嵌合させ、固定用のピン(図示せず)を中空軸部9の外面からジョイント用ピン穴14を貫通させ、ジョイント凸部3に形成した凹溝8に係合させることで、回転キャップ11とヤットコ用ロット1を着脱可能に固定している。
【0041】
ヤットコ用ロット1とその上方に接続させるロット(後述する図3のロット22参照)の間も同様の接続機構となっており、それにより複数のロットを継ぎ足してヤットコ(後述する図3のヤットコ1参照)が形成される。図中、符号2が上方のロットを継ぎ足すためのジョイント凸部である。
【0042】
このヤットコ用ロット1の側面には、逆止弁6を備えた1〜複数個の吐出孔5が設けられており、上述のように中空軸部9の下端部を閉塞してあることで、上方から供給された吐出液10が杭孔内の横方向に吐出されるようになっている。
【0043】
すなわち、逆止弁6によって外部からの硬化性充填物の逆流を防ぎ、またロット中空軸部9の下端部は閉塞して、吐出液10が下方に流れないようにしてあることにより、吐出口5から吐出液10を杭孔内の横方向に効率よく吐出できるようになっている。
【0044】
このような構成により、ヤットコで既製杭を埋設する最後の工程において、根切り部(後述する図3(f)の根切り部29参照)に形成されるヤットコ柱の低強度化が可能となる。
【0045】
また、吐出孔5より下方のロット外面には、吐出孔5より吐出した吐出液10を攪拌するための攪拌翼15が取付具16を介して取り付けられており、攪拌翼15を回転させながら吐出液10を吐出することによって、吐出液10と杭孔内に既に充填されている硬化性充填物(ソイルセメント)が十分混合されるので、低強度のヤットコ柱を均一に形成することができる。
【0046】
攪拌翼15の形状、寸法、数等は特に限定されず、従来のヤットコのロットに取り付けられているものを用いことができるが、低強度のヤットコ柱を均一に形成する上では、攪拌翼15は吐出口5と同じ高さまたは50cm程度までの範囲で吐出口5より下方に設けることが好ましい。
【0047】
吐出口5と攪拌翼15とがこのような位置関係にあることにより、吐出口5から吐出された吐出液10と杭孔内の硬化性充填物とが攪拌翼15の水平方向の回転により効果的に攪拌混合される。この回転は、後述の図3に示すヤットコの上部にある駆動部20(オーガ駆動装置)によりヤットコ用ロット1が回転することによりなされる。
【0048】
図3は本発明の既製杭の埋設方法における施工の様子を示したものであり、以下のような手順で施工を行う。
【0049】
(1) 杭立て込み挿入(図3(a)、(b)参照)
プレボーリングにより掘削し、硬化性充填材を充填した杭孔17に、既製杭26を立て込む。
【0050】
既製杭26の立込み前のオーガー等による杭孔17の掘削およびセメントミルク等の硬化性充填材24の充填、根固め液28による根固め部27の造成などは、従来と特に変わるところはない。
【0051】
回転キャップ11の直上部に接続された本発明のヤットコ用ロット1を備えた本発明のヤットコ19の回転キャップ11を既製杭26の上端部に取り付け、既製杭26を未硬化の硬化性充填物24が充填されている杭孔17内の所定の深さまで立て込んで行く。
【0052】
回転キャップ11の既製杭26の上端部への取り付けは、ヤットコ19先端の回転キャップ11の杭把持部(切欠部)13と既製杭26の杭頭部に設けられた係止金具25とを係合させることによって行う。
【0053】
下端のロット1の上方には、通常のロット22が複数本接続されている。
【0054】
(2) 逆転で回転キャップを外し、ヤットコを引き上げる(図3(c)、(d)参照)
埋設杭である既製杭26を所定の深さまで立て込んだら、次に、オーガーを逆回転させ、回転キャップ11を既製杭26から取り外し、既製杭26を残してヤットコ19を1m程度引き上げる。引き上げ高さは、ロット22に目盛等の印を付しておけば、容易にわかる。
【0055】
ヤットコ19を約1m引き上げたところで、後述のベントナイト液の吐出を開始するのは、埋設した既製杭26の周囲に充填されている硬化性充填物24の強度を低下させないようにするためである。
【0056】
(3) ベントナイト液を送り、攪拌しながら引き上げる(図3(e)参照)
オーガーの駆動部20に位置する吐出液供給口30から希釈溶液としてのベントナイト液を送り込み、ヤットコ19下端のヤットコ用ロット1の吐出口5よりベントナイト液を吐出し、攪拌翼15で杭孔17内上部の未硬化の硬化性充填物24と混合しながら、ヤットコ19を引き上げて行く。
【0057】
吐出口5より少し下に取り付けられている攪拌翼15でベントナイト液と未硬化の硬化性充填物24
とを攪拌混合しながら、回転キャップ11が地上に達するまでヤットコ19を引き上げる。ベントナイト液の吐出は、吐出口5が地上に達するまで行う。
【0058】
(4) ヤットコ柱の自硬性を抑え、根切り作業を行う(図3(f)参照)
吐出を開始した深さより上部に充填されている硬化性充填物24と希釈溶液としてのベントナイト液を攪拌混合することで、硬化物であるヤットコ柱23(埋設した既製杭26の杭頭レベルから地表面18までの杭孔17内に形成されるソイルセメント柱)を低強度化させることができる。
【0059】
図3(f)における符号29で示される点線の範囲が根切り部であり、ヤットコ柱23の低強度化により根切り作業が容易となる。
【産業上の利用可能性】
【0060】
本発明は、プレボーリング工法で既製杭を埋設する際に、埋設した既製杭の杭頭レベルから地表面までの杭孔内に形成されるヤットコ柱を低強度化し、根切り作業を容易とすることができる。
【符号の説明】
【0061】
1…ヤットコ用ロット、
2…ジョイント凸部、
3…ジョイント凸部、
4…ジョイント凹部、
5…吐出口、
6…逆止弁、
7…閉塞部、
8…凹溝、
9…中空軸部、
10…吐出液、
11…回転キャップ、
12…回転キャップ本体、
13…杭把持部(切欠部)、
14…ジョイントピン用穴、
15…攪拌翼、
16…攪拌翼取付具、
17…杭孔、
18…地表面、
19…ヤットコ、
20…駆動部、
21…油圧スイベル、
22…ロット、
23…低強度化したヤットコ柱、
24…硬化性充填物、
25…係止金具、
26…既製杭、
27…根固め部、
28…根固め液、
29…根切り部、
30…吐出液供給部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
既製杭を杭孔に埋設するのに使用するロッド式ヤットコの回転キャップの直上部に接続されるロットであり、前記ロットには吐出液の通路となる中空軸部と該吐出液を杭孔内の横方向に吐出させるための逆止弁を備えた1〜複数個の吐出孔が設けられており、前記中空軸部の下端部は閉塞されていることを特徴とするヤットコ用ロット。
【請求項2】
上記吐出孔と同じ高さまたは吐出孔より下方のロット外面に、前記吐出孔より吐出した吐出液を攪拌するための攪拌翼が取り付けられていることを特徴とする請求項1に記載のヤットコ用ロット。
【請求項3】
埋設する既製杭の杭頭部を把持する杭把持部を有する回転キャップと、該回転キャップの直上部に接続される請求項1または請求項2に記載のヤットコ用ロットと、該ロットの上部に接続され中空軸部を有する1〜複数個のロットとを備えたヤットコであって、該ヤットコの上部には、これら回転キャップとロットを正逆自在に回転させるための駆動部と吐出液の供給部とが設けられていることを特徴とするヤットコ。
【請求項4】
杭孔内に埋設された既製杭の上方に硬化性充填物によって形成されるヤットコ柱の低強度化方法であって、杭孔内に埋設された既製杭より上方に充填された未硬化の硬化性充填物中の低強度化したい所定範囲の深さで請求項3に記載のヤットコを適宜上下反復させ、上記吐出孔から希釈水または希釈溶液を吐出して前記所定範囲の深さの前記硬化性充填物と混合し、該所定範囲の深さの硬化性充填物の硬化強度を低下させてヤットコ柱の少なくとも一部を低強度化することを特徴とするヤットコ柱の低強度化方法。
【請求項5】
プレボーリング工法による既製杭の埋設方法であって、請求項3に記載のヤットコの回転キャップを埋設杭に取り付けて、該埋設杭を未硬化の硬化性充填物が充填されている杭孔内の所定の深さに埋設し、その後、前記回転キャップを埋設杭から取り外しヤットコを引き上げる際に、所定の深さに達した時点で上記請求項1または請求項2に記載のヤットコ用ロットの上記吐出孔から希釈水または希釈溶液を吐出して、これらと前記硬化性充填物とを混合しながら前記ヤットコを引き上げ、吐出を開始した前記所定の深さより上部に充填されている硬化性充填物の硬化強度を低下させて硬化させることを特徴とする既製杭の埋設方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2011−21351(P2011−21351A)
【公開日】平成23年2月3日(2011.2.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−165916(P2009−165916)
【出願日】平成21年7月14日(2009.7.14)
【出願人】(597058664)株式会社トーヨーアサノ (24)
【Fターム(参考)】