説明

ヤーン用組成物、改善された特性を有するヤーン及びこれらのヤーンの使用

本発明は、ヤーン、ファイバー又はフィラメントの特性、特に耐摩耗性を改善するためにこれらのヤーン、ファイバー又はフィラメント上に付着させることができるヤーン、ファイバー又はフィラメント用組成物に関する。本発明はまた、これらのヤーン、ファイバー又はフィラメントの製造方法、及びこれらのヤーン、ファイバー又はフィラメントを含むロープ、並びにそれらの使用にも関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ヤーン、ファイバー又はフィラメントの特性、特に耐摩耗性を改善するためにこれらのヤーン、ファイバー又はフィラメント上に付着させることができるヤーン、ファイバー又はフィラメント用組成物に関する。本発明はまた、これらのヤーン、ファイバー又はフィラメントの製造方法、及びこれらのヤーン、ファイバー又はフィラメントを含むロープ、並びにそれらの使用にも関する。
【背景技術】
【0002】
ロープ(cordes)、ケーブル(cordages)及び紐(filins)は、海関係の分野、登山関係の分野等のような多くの分野において用いられている。これらは例えばボートや船舶、例えばレジャー用の船(帆船)を係留するために用いることができる。
【0003】
これらのロープ、ケーブル及び紐は、使用時に例えば潮(海水)の動き、使用者によるロープの操作等のせいで高い機械的応力を受ける。例えば、(船舶類)係留用ロープは潮及びボートの動きに応じて様々な引張作用に付される。これにより、特にファイバーとロープとの間で摩擦が生じ、ファイバーの摩耗を引き起こす。その結果としてこれらのロープ、ケーブル及び紐の急速な摩滅がもたらされ、テナシティの低下及び場合により破断がもたらされる。
【0004】
従って、これらのロープ、ケーブル及び紐の寿命を、特にこれらのロープ、ケーブル及び紐のファイバーの耐摩耗性を向上させることによって、改善する研究が行われている。
【0005】
ロープやケーブルを作ることが意図されるファイバーにこのファイバーの摩耗を減らすために塗布される組成物が知られている。これはGoulston Technologies社よりLurol NR-6025(登録商標)の商品名で販売されている。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、例えばロープやケーブルに用いることが意図されるヤーン、ファイバー又はフィラメントに付着させることができる組成物を提供するものであり、本発明のヤーン、ファイバー又はフィラメントは非常に良好な耐摩耗性を示す。
【課題を解決するための手段】
【0007】
第1の主題に従えば、本発明は、
(a)ポリエチレン及びポリプロピレンより成る群から選択されるポリオレフィン、
(b)ポリオルガノシロキサン、
(c)10〜24個の炭素原子を有するα−オレフィン及び不飽和ジカルボン酸から得られるコポリマーのエステル
を含み、ヤーン、ファイバー又はフィラメントに付着させることができる組成物に関する。
【0008】
第2の主題に従えば、本発明は、本発明の組成物で処理されたヤーン、ファイバー又はフィラメントに関する。
【0009】
第3の主題では、本発明は、これらのヤーン、ファイバー又はフィラメントの製造方法であって、次の工程:
(1)ヤーンの構成材料を紡糸する工程、
(2)随意にヤーンを延伸する工程、
(3)随意にヤーンを加工する(texturer)工程
を含み、該方法の間に前記組成物を用いてヤーンを処理する、前記方法に関する。
【0010】
第4の主題では、本発明は、本発明のヤーン、ファイバー又はフィラメントから得られるロープ、ケーブル又は紐、及び船舶類の係留若しくは停泊又は登山の分野におけるそれらの使用に関する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
本発明の組成物は、化合物(a)としてポリエチレン及びポリプロピレンより成る群から選択されるポリオレフィンを含む。この化合物(a)は、ポリエチレンワックスであるのが有利である。特にこのポリエチレンワックスは酸化されていることができる。
【0012】
本発明の特定的な具体例に従えば、この化合物(a)は110〜150℃の範囲、好ましくは120〜150℃の範囲の融点を示すポリエチレンワックスである。
【0013】
化合物(a)は、150℃において1000〜5000mPa・sの範囲の粘度を示すポリエチレンワックスであるのが有利である。
【0014】
前記組成物は、化合物(b)としてポリオルガノシロキサンを含む。この化合物(b)は、20℃において100〜1000mPa・sの範囲の粘度を示すシリコーンオイルであるのが好ましい。このポリオルガノシロキサンは、例えばポリメチルシロキサン又はポリメチルフェニルシロキサンであることができる。
【0015】
本発明の組成物は、化合物(c)として10〜24個の炭素原子を有するα−オレフィン及び不飽和ジカルボン酸から得られるコポリマーのエステルを含む。
【0016】
このエステルは、10〜24個の炭素原子を有するα−オレフィン及び不飽和ジカルボン酸から得られるコポリマーをヒドロキシル化化合物を用いてエステル化することによって得ることができる。また、前記コポリマーの調製の際にモノマーを添加することによって前記エステルを得ることもできる。
【0017】
化合物(c)を調製するために用いられるα−オレフィンは、12〜18個の炭素原子を有するのが好ましい。化合物(c)を調製するために用いることができるジカルボン酸としては、マレイン酸、フマル酸、イタコン酸及びシトラコン酸を挙げることができる。このジカルボン酸は、マレイン酸及びフマル酸から選択するのが好ましい。
【0018】
前記コポリマーの粘度は、40℃において測定して100〜1000mPa・sの範囲であるのが有利であり、250〜400mPa・sの範囲であるのが好ましい。
【0019】
本発明の特定的な具体例に従えば、前記組成物は、
・組成物の化合物(a)、(b)及び(c)の総重量に対して化合物(a)x%=10〜50重量%、
・組成物の化合物(a)、(b)及び(c)の総重量に対して化合物(c)y%=10〜50重量%、
・組成物の化合物(a)、(b)及び(c)の総重量に対して化合物(b)z%=100−(x+y)重量%
を含む。
【0020】
xが20〜40%の範囲であり且つyが20〜40%の範囲であるのが有利である。
【0021】
本発明の組成物は、組成物を製造するための既知の任意の方法に従って調製することができる。
【0022】
組成物を製造する前の化合物(a)は、エマルションの形にあることができる。エマルションの調製の際には、乳化剤を用いることができる。乳化剤の例としては、10〜20個の炭素原子を有する脂肪アルコール{この脂肪アルコールは、エトキシル化され、2〜10個のエトキシレート(EO)を含むものである}から成る乳化剤を挙げることができる。
【0023】
組成物を製造する前の化合物(b)は、エマルションの形にあることができる。このエマルションは「水中油」タイプのエマルションであることができる。化合物(b)は、エマルションの重量に対して10〜60重量%を占めるのが有利である。エマルションの調製の際には、乳化剤を用いることができる。好適であり得る乳化剤の例としては、10〜20個の炭素原子を有し且つ2〜10個のエトキシレート(EO)を含むエトキシル化脂肪アルコールを挙げることができる。
【0024】
本発明の組成物は、液体中の溶液の形、エマルションの形又は分散体の形にあることができる。
【0025】
前記組成物は、例えば有機溶媒中の溶液の形にあることができる。
【0026】
前記組成物はまた、液体中のエマルションの形にあることもでき、この液体は水であるのが有利である。この組成物がエマルションの形にある場合には、組成物の調製の際に乳化剤を用いることができる。
【0027】
組成物が水中のエマルションの形にある場合、これは化合物(a)、(b)及び(c)、乳化剤並びに水を含むのが一般的である。組成物中の水以外の部分は、化合物(a)、(b)及び(c)10〜70重量%並びに乳化剤30〜90重量%を含むのが一般的である。化合物(a)、(b)及び(c)のそれぞれの割合は、上記のものと同じである。
【0028】
本発明の特定的な具体例に従えば、前記組成物には、化合物(a)、(b)及び(c)に加えて、サイジング用組成物をも含ませることができる。
【0029】
本発明にとって好適なサイジング用組成物は、ポリマー紡糸の分野、特にポリアミド又はポリエステル紡糸の分野において従来から用いられているすべてのサイジング剤である。サイジング用組成物は通常、オイル又は水性エマルションである。
【0030】
本発明の組成物にはまた、化合物(a)、(b)及び(c)並びに随意としてのサイジング用組成物以外の化合物、例えばサイジング用組成物中に従来から用いられている界面活性剤、帯電防止剤をも含ませることができる。
【0031】
本発明は、第2の主題において、上記の組成物で処理されたヤーン、ファイバー又はフィラメントに関する。
【0032】
本発明のヤーン、ファイバー又はフィラメントは、天然のもの、人工のもの及び/又は合成によるものであることができる。これらはまた、いくつかの起源のものであることもできる。例として、ポリアミド及び綿のファイバーの紡糸ヤーンを挙げることができる。
【0033】
本発明のヤーン、ファイバー又はフィラメントは、熱可塑性ポリマーをベースとするのが有利である。本発明において好適な熱可塑性(コ)ポリマーの例としては、ポリオレフィン、ポリエステル、ポリ(アルキレンオキシド)、ポリオキシアルキレン、ポリハロアルキレン、ポリ(アルキレンフタレート若しくはテレフタレート)、ポリ(フェニル若しくはフェニレン)、ポリ(フェニレンオキシド若しくはスルフィド)、ポリ(ビニルアセテート)、ポリ(ビニルアルコール)、ポリ(ビニルハライド)、ポリ(ビニリデンハライド)、ポリビニルニトリル、ポリアミド、ポリイミド、ポリカーボネート、ポリシロキサン、アクリル酸若しくはメタクリル酸のポリマー、ポリアクリレート若しくはポリメタクリレート、セルロース及びその誘導体のような天然ポリマー、合成エラストマーのような合成ポリマー、又は上記のポリマー中に含まれるモノマーのいずれかと同一の少なくとも1種のモノマーを含む熱可塑性コポリマー、並びにこれらのすべての(コ)ポリマーのブレンド及び/又はアロイを挙げることができる。
【0034】
本発明のその他の好ましい熱可塑性ポリマーとしては、脂肪族ポリアミドのような半結晶質若しくは非晶質ポリアミド、半芳香族ポリアミド及びより一般的に芳香族若しくは脂肪族飽和二酸と脂肪族若しくは芳香族飽和ジ(第1アミン)との重縮合によって得られる線状ポリアミド、ラクタム若しくはアミノ酸の縮合によって得られるポリアミド、又はこれらの各種モノマーの混合物の縮合によって得られる線状ポリアミドを挙げることができる。
【0035】
より特定的には、これらのコポリアミドは、例えばポリ(ヘキサメチレンアジパミド)、テレフタル酸及び/若しくはイソフタル酸から得られるポリフタルアミド(例えば商品名Amodelの下で販売されているポリアミド)、又はアジピン酸、ヘキサメチレンジアミン及びカプロラクタムから得られるコポリアミドであることができる。
【0036】
前記熱可塑性ポリマーは、ポリ(エチレンテレフタレート)(PET)、ポリ(プロピレンテレフタレート)(PPT)、ポリ(ブチレンテレフタレート)(PBT)のようなポリエステル、又はそれらのコポリマー若しくはブレンドであるのが有利である。
【0037】
さらにより一層好ましくは、前記熱可塑性ポリマーは、ポリアミド6、ポリアミド6,6、ポリアミド4、ポリアミド11、ポリアミド12、ポリアミド4,6、ポリアミド6,10、ポリアミド6,12、ポリアミド6,36及びポリアミド12,12、それらのコポリマー及びブレンドから成る(コ)ポリアミドの群から選択される。
【0038】
本発明のヤーン、ファイバー又はフィラメントは、熱可塑性ポリマー又は熱可塑性コポリマーのブレンドをベースとすることができる。
【0039】
本発明のヤーン、ファイバー又はフィラメントには、補強用充填剤、難燃剤、UV安定剤、熱安定剤、二酸化チタンのような艶消剤(matifiants)、生物活性物質等の添加剤を含ませることができる。
【0040】
ヤーンの表面に存在させる本発明の組成物は、ヤーンの重量に対して1〜5重量%を占めるのが有利である。
【0041】
本発明のヤーンの全体カウント(番手)は、ヤーンの通常のカウント範囲全体から選択することができ、例えば200dtex(デシテックス)〜3000dtexの範囲であることができる。本発明の特定的な具体例に従えば、本発明のヤーン、ファイバー又はフィラメントは、700〜2500dtexの範囲の全体カウントを示すヤーンである。
【0042】
本発明のヤーンのストランドカウントは、ヤーンについての通常のカウント範囲全体から選択することができる。このストランドカウントは、0.3dtex又はそれより大きいのが一般的である。これは通常は、直径が大きいモノフィラメントの場合の800μmの直径の相当dtexより小さい。本発明の特定的な具体例に従えば、本発明のヤーン、ファイバー又はフィラメントは、3〜9dtexの範囲のストランドカウントを示すヤーンである。
【0043】
本発明はまた、次の工程を含むヤーン、ファイバー又はフィラメントの製造方法にも関する。
(1)ヤーンの構成材料を紡糸し、
(2)随意にヤーンを延伸し、
(3)随意にヤーンを加工し(texturer)、
(4)プロセスの間に上記の組成物を用いてヤーンを処理する。
【0044】
紡糸工程(1)は、当業者に周知の任意の方法に従って実施される。
【0045】
ヤーンの材料が熱可塑性ポリマーである場合、工程(1)はポリマーを溶融紡糸する工程であるのが有利である。
【0046】
本発明のヤーン、ファイバー又はフィラメントは、延伸に付すことができる。かくして、このヤーンは、任意の既知の方法に従う紡糸方法に沿って、ヤーンに与えることが望まれる配向及び機械的特徴に応じて望まれる程度まで、延伸することができる。また、最後の巻取り速度に応じて、単純に予備延伸することもでき、紡糸配向することもできる。ヤーンは、直接得ることもでき、もしも有用又は必要であるならば巻取り張力を調節するためにロール上に取り出すこともできる。工程(2)は、紡糸と一体で行なってもよく、そのようにしなくてもよい。
【0047】
巻取り速度は400〜8000m/分の範囲であるのが一般的であり、600〜5000m/分の範囲であるのが有利であり、600〜2000m/分の範囲であるのが好ましい。
【0048】
加工工程(3)は、当業者に周知の任意の方法に従って実施することができる。
【0049】
前記処理工程は、随意としての延伸工程の前又は後に実施することができる。この処理工程はまた、随意としての加工工程(3)の前又は後に実施することができる。
【0050】
この処理は、ロールコーティングや紡糸仕上げ装置(gudulettes)のような標準的技術に従って実施することができる。標準的技術の限定を意図しない例としては、原料ファイバーを、ロールを用いて、噴霧若しくは気化、浸漬によって、パジング技術によって及び合成ファイバーの処理のためのテキスタイル産業において用いられている任意の方法によって、処理する技術を挙げることができる。この処理は、ヤーンの製造における様々な工程において実施することができる。これらはとりわけ、従来潤滑剤が添加されていたすべての工程である。かくして、巻取りの前に紡績機の底部において添加剤を適用することができる。また、「ファイバー」プロセスの場合には、延伸、捲縮(frisage)又は乾燥工程の前、間又は後等に添加剤を適用することもできる。
【0051】
場合により、ヤーンへのグラフトコポリマーの接着を促進するために、ヤーンを当業者に周知の方法に従う第1の予備処理(前処理)に付すのがさらに有利なことがある。さらに、本発明の処理の前又は後に、ヤーンを例えば放射線照射等のようなその他の化学的又は物理的処理に付すことも構想可能であろう。
【0052】
本発明の組成物で処理されたヤーン、ファイバー又はフィラメントは、非常に良好な耐摩耗性を示す。
【0053】
第4の主題において、本発明は、本発明のヤーン、ファイバー又はフィラメントを少なくとも部分的に含むロープ、ケーブル又は紐に関する。
【0054】
本発明のロープ、ケーブル又は紐は、ボート、船舶、浮き桟橋若しくはポンツーン(pontons)の係留若しくは停泊手段、又は停泊、ナビゲーション若しくは位置決定(reperage)用の浮標(ブイ)に用いることができる。
【0055】
と言うのも、本発明のヤーン、ファイバー又はフィラメントは、高い耐摩耗性を示し、これらのヤーンを用いて得られたロープは、特にこれらのロープが水中に繰返し浸漬される場合に、低い摩滅及び長い寿命を示すからである。
【0056】
本発明のロープ、ケーブル又は紐は、登山の分野においても用いることができる。登山の分野においては、ロープが高い機械的応力を受ける。登山用ロープにおいては、本発明のヤーン、ファイバー又はフィラメントをロープの鞘ではなくて中心部に存在させるのが有利であり、これは一般的に編んだヤーンの形にある。
【0057】
本発明のヤーン、ファイバー又はフィラメントはまた、漁網や安全網のような網に用いることもできる。これらはまた、安全ベルトのようなベルトに用いることもできる。
【実施例】
【0058】
本発明のその他の詳細や利点は、以下に単に指標として与えた実施例を見ればより一層はっきりわかるであろう。
【0059】
ヤーン、ファイバー又はフィラメントの耐摩耗性の試験
【0060】
ヤーンの耐摩耗性を測定するために用いられる標準試験は、ASTM法D6611−00である。試験の際に用いられる標準の条件は、以下の通りである:
・被検ヤーンの巻付け:3回り(巻付け角度1080°)
・被検ヤーンの動き幅(ストローク):6cm
・モーター速度:70回転/分
・重しによりヤーンに加えた張力:445cN
【0061】
この試験は、前記標準法に従い、該標準法に記載された乾式及び湿式条件下において実施する。また、この試験は、水中に浸漬して次いで空気中で乾燥させたロープをシミュレートするヤーンの処理後にも標準法の乾式条件下において実施する。この処理を以下に説明する。
【0062】
水中に浸漬して次いで空気中で乾燥させたロープをシミュレートするヤーンの処理
【0063】
ヤーンを周囲温度において蒸留水中に10分間浸漬する(その内の1分間はヤーンの撹拌下とする)。このヤーンを次いで綿布帛上に置き、空気中で周囲温度において24時間乾燥させる。
【0064】
ヤーン上に付着した組成物の量の測定方法
【0065】
ヤーン上に存在する組成物を、ソックスレータイプの装置で、30〜50℃の範囲の沸点を示す石油エーテルを用いて、抽出する。この抽出はサイクル性のものであり、そのサイクル時間は6〜10分間の範囲とする。抽出時間は1時間とする。サンプルの重量対溶媒の重量の比は1/10〜1/20の範囲とする。サンプル重量は2〜10gの範囲である。
【0066】
例1
【0067】
Rhodia Industrial Yarns AG社より商品名T371の下で販売されているポリアミド6製のヤーン(1400f210:210のフィラメント、全体カウント1400dtex)を、回転ロール上に通す(ヤーンをロールの長手方向軸に対して垂直に入れる)ことによって処理する。このロールは、下記の表1に記載した通りの組成物を含有させた浴中に一部浸漬してある。ロール上のヤーンの通過は、慣用の方法に従って実施する。ヤーンの全体通過速度は450m/分とする。このヤーンはロールに対して誘導される。この誘導は、ヤーン上への組成物の付着を最適化するために、ロールの長手方向軸の方向に沿って往復運動で行う。
【0068】
【表1】

【0069】
組成物1:Goulston Technologies社より販売されているLurol NR-6025(登録商標)を水中に25重量%含むエマルション。
【0070】
組成物2(百分率は組成物の総重量に対する重量で表わされる):以下のものを含むエマルション:
・融点140℃の酸化ポリエチレンワックス(化合物(a))9%
・13個の炭素原子を有し且つ6個のエトキシレート(EO)を含むエトキシル化脂肪アルコールタイプの乳化剤2.6%(この乳化剤は、組成物調製前の上記ポリエチレンワックスのエマルションから由来するものである)
・20℃において350mPa・sの粘度を示すシリコーンオイル(化合物(b))6.5%(これは、組成物調製前のこのシリコーンオイルの「水中油」エマルションから由来するものであり、このエマルションは、13個の炭素原子を有し且つ6個のエトキシレート(EO)を含むエトキシル化脂肪アルコールタイプの乳化剤10重量%を含む)
・α−オレフィン及びマレイン酸とフマル酸との混合物から得られるコポリマーのエステル9%(前記コポリマーは、ASTM法D−445に従って測定して40℃において340mPa・sの粘度を示す)
・5〜30個のエトキシレート(EO)を含む水和ひまし油タイプの乳化剤9%
・6〜20個の炭素原子を有し且つ10個のエトキシレート(EO)を含むエトキシル化脂肪族アミンタイプの乳化剤9%
・脱イオン水54.9%。
このエマルションは、ヤーンに塗布する前に1/1の比で蒸留水で希釈される。
【0071】
本発明に従って処理されたヤーンは、未処理ヤーンや従来技術に従って処理されたヤーンと比較して、乾式条件下でも、湿式条件下でも、水中へのロープの浸漬をシミュレートする処理の後の乾式条件下でも、非常に良好な耐摩耗性を示す。
【0072】
例2及び3
【0073】
例2については商品名T771(1400f210:210のフィラメント、全体カウント1400dtex)、例3については商品名T371(1880f280:280のフィラメント、全体カウント1880dtex)の商品名でRhodia Industrial Yarns AG社より販売されているポリアミド6製のヤーンを、互いに向き合うように配置された2つの紡糸仕上げ装置(gudulettes)を用いてこのヤーンに以下に記載したような組成物3を塗布することによって処理する。ヤーンの全体通過速度は425m/分とする。このヤーンを次いでボビンに巻き取る。
【0074】
【表2】

* 8本のヤーンに対してヤーン1本当たり6回測定した平均
**5本のヤーンに対してヤーン1本当たり6回測定した平均
【0075】
組成物3(百分率は組成物の総重量に対する重量で表わされる):以下のものを含むエマルション:
・融点140℃の酸化ポリエチレンワックス(化合物(a))5%
・13個の炭素原子を有し且つ6個のエトキシレート(EO)を含むエトキシル化脂肪アルコールタイプの乳化剤1.3%(この乳化剤は、組成物調製前の上記ポリエチレンワックスのエマルションから由来するものである)
・20℃において350mPa・sの粘度を示すシリコーンオイル(化合物(b))3.4%(これは、組成物調製前のこのシリコーンオイルの「水中油」エマルションから由来するものであり、このエマルションは、13個の炭素原子を有し且つ6個のエトキシレート(EO)を含むエトキシル化脂肪アルコールタイプの乳化剤10重量%を含む)
・α−オレフィン及びマレイン酸とフマル酸との混合物から得られるコポリマーのエステル5%(前記コポリマーは、ASTM法D−445に従って測定して40℃において340mPa・sの粘度を示す)
・5〜30個のエトキシレート(EO)を含む水和ひまし油タイプの乳化剤5.3%
・6〜20個の炭素原子を有し且つ10個のエトキシレート(EO)を含むエトキシル化脂肪族アミンタイプの乳化剤5%
・脱イオン水75%。
【0076】
本発明に従って処理されたヤーンは、未処理ヤーンや従来技術に従って処理されたヤーンと比較して、乾式条件下でも、水中へのロープの浸漬をシミュレートする処理の後の乾式条件下でも、非常に良好な耐摩耗性を示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
次の化合物:
(a)ポリエチレン及びポリプロピレンより成る群から選択されるポリオレフィン、
(b)ポリオルガノシロキサン、
(c)10〜24個の炭素原子を有するα−オレフィン及び不飽和ジカルボン酸から得られるコポリマーのエステル
を含む組成物。
【請求項2】
前記化合物(a)がポリエチレンワックスであることを特徴とする、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
前記化合物(a)が110〜150℃の範囲、好ましくは120〜150℃の範囲の融点を示すポリエチレンワックスであることを特徴とする、請求項1又は2に記載の組成物。
【請求項4】
前記化合物(b)が20℃において100〜1000mPa・sの範囲の粘度を示すシリコーンオイルであることを特徴とする、請求項1〜3のいずれかに記載の組成物。
【請求項5】
組成物の化合物(a)、(b)及び(c)の総重量に対して化合物(a)x%=10〜50重量%、
組成物の化合物(a)、(b)及び(c)の総重量に対して化合物(c)y%=10〜50重量%、
組成物の化合物(a)、(b)及び(c)の総重量に対して化合物(b)z%=100−(x+y)重量%
を含むことを特徴とする、請求項1〜4のいずれかに記載の組成物。
【請求項6】
xが20〜40%の範囲であり且つyが20〜40%の範囲であることを特徴とする、請求項5に記載の組成物。
【請求項7】
サイジング用組成物を追加的に含むことを特徴とする、請求項1〜6のいずれかに記載の組成物。
【請求項8】
液体中のエマルションの形にあることを特徴とする、請求項1〜7のいずれかに記載の組成物。
【請求項9】
前記液体が水であることを特徴とする、請求項8に記載の組成物。
【請求項10】
請求項1〜9のいずれかに記載の組成物を用いて処理されたことを特徴とする、ヤーン、ファイバー又はフィラメント。
【請求項11】
熱可塑性ポリマーをベースとすることを特徴とする、請求項10に記載のヤーン、ファイバー又はフィラメント。
【請求項12】
ポリエステル又はポリアミドをベースとすることを特徴とする、請求項11に記載のヤーン、ファイバー又はフィラメント。
【請求項13】
ヤーンの表面に存在させる組成物がヤーンの重量に対して1〜5%を占めることを特徴とする、請求項10〜12のいずれかに記載のヤーン、ファイバー又はフィラメント。
【請求項14】
700〜2500dtexの範囲の全体カウントを示すヤーンであることを特徴とする、ことを特徴とする、請求項10〜13のいずれかに記載のヤーン、ファイバー又はフィラメント。
【請求項15】
3〜9dtexの範囲のストランドカウントを示すヤーンであることを特徴とする、請求項10〜14のいずれかに記載のヤーン、ファイバー又はフィラメント。
【請求項16】
次の工程:
(1)ヤーンの構成材料を紡糸する工程、
(2)随意にヤーンを延伸する工程、
(3)随意にヤーンを加工する工程
を含む、請求項10〜15のいずれかに記載のヤーン、ファイバー又はフィラメントの製造方法であって、プロセスの間に請求項1〜9のいずれかに記載の組成物を用いてヤーンを処理することを特徴とする、前記製造方法。
【請求項17】
前記材料が熱可塑性ポリマーであること、及び工程(1)がポリマーの溶融紡糸であることを特徴とする、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
前記処理工程を工程(2)及び(3)の後に実施することを特徴とする、請求項16又は17に記載の方法。
【請求項19】
前記処理工程を工程(2)及び(3)の前に実施することを特徴とする、請求項16又は17に記載の方法
【請求項20】
請求項10〜15のいずれかに記載のヤーン、ファイバー若しくはフィラメント、又は請求項16〜19のいずれかに記載の方法によって得られたヤーン、ファイバー若しくはフィラメントを少なくとも含むことを特徴とする、ロープ、ケーブル又は紐。
【請求項21】
ボート、船舶、浮き桟橋若しくはポンツーンの係留若しくは停泊手段、又は停泊、ナビゲーション若しくは位置決定用の浮標における請求項20に記載のロープの使用。
【請求項22】
登山の分野における請求項20に記載のロープの使用。

【公表番号】特表2007−533791(P2007−533791A)
【公表日】平成19年11月22日(2007.11.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−550068(P2006−550068)
【出願日】平成17年1月20日(2005.1.20)
【国際出願番号】PCT/EP2005/000667
【国際公開番号】WO2005/075559
【国際公開日】平成17年8月18日(2005.8.18)
【出願人】(504128460)ロディア インダストリアル ヤーンズ アーゲー (4)
【Fターム(参考)】