説明

ヨーレート補正装置、及びその方法

【課題】ヨーレートセンサによって検出されるヨーレートを補正することのできるヨーレート補正装置、及びその方法を提供する。
【解決手段】自車両の走行方向の画像を撮像する撮像手段と、画像における自車両の旋回時の消失点を第1の消失点として検出し、当該画像における自車両の直進時の消失点を第2の消失点として検出する消失点検出手段と、第1の消失点と第2の消失点との画像上の水平方向の間隔に基づき、自車両のヨーレートを推定ヨーレートとして推定する推定手段と、自車両のヨーレートを検出する検出手段と、推定ヨーレートに基づきヨーレートを補正した補正ヨーレートを算出する補正手段とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、検出されたヨーレートを補正するヨーレート補正装置に関し、より特定的には、自動車などの移動体に搭載されるヨーレート補正装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、自動車などの移動体には、走行車線を逸脱する可能性が生じたときに、警報を発する車線逸脱警報装置や、逸脱しない方向に操舵トルクを発生させる車線維持制御装置などが搭載されている。このような車線逸脱警報装置、或いは車線維持制御装置などでは、自車両が走行車線を逸脱する可能性を判断するために自車両の重心を鉛直方向に通る軸周りの走行車線方向に対する回転角、所謂ヨー角を検出する装置が搭載されている。そして、このように自車両のヨー角を検出する装置として、例えば、特許文献1に記載の車両姿勢検出装置(以下、従来技術と称する)が一例として挙げられる。
【0003】
上記従来技術では、車両の前方を撮像した画像に基づいて走行路を検出し、検出した走行路に基づいて上記ヨー角を検出する。そして、撮像した画像に基づいて検出したヨー角にばらつきが生じたときには、自車両の重心を鉛直方向に通る軸周りの回転角速度、所謂ヨーレートの積分値を用いて、ばらつきの生じたヨー角を補正する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平10−111136号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記従来技術では、以下に述べるような課題を有する。すなわち、上記従来技術では、前述のヨーレートを用いてヨー角を補正する。しかし、ヨーレートを検出するセンサ(以下、ヨーレートセンサと称する)は、周囲の温度変化に起因して、検出するヨーレートに温度ドリフトとよばれる定常偏差が生じてしまう。
【0006】
そして、温度ドリフトが生じたヨーレートセンサによって検出されたヨーレートで補正されたヨー角に基づいて、上述した車線逸脱警報装置を動作させると、例えば、警報を発するタイミングにばらつき生じてしまい、誤警報を発してしまう場合がある。また、温度ドリフトが生じたヨーレートセンサによって検出されたヨーレートで補正されたヨー角に基づいて上述した車線維持制御装置を動作させると、例えば、上述したように発生させる操舵トルクにばらつきが生じてしまい、適切な車線維持制御をすることができなくなる。
【0007】
そこで、本発明は、ヨーレートセンサによって検出されるヨーレートを補正することのできるヨーレート補正装置、及びその方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、上記目的を達成するために、次に示す特徴を有する。
第1の発明は、自車両の走行方向の画像を撮像する撮像手段と、画像における自車両の旋回時の消失点を第1の消失点として検出し、当該画像における自車両の直進時の消失点を第2の消失点として検出する消失点検出手段と、第1の消失点と第2の消失点との画像上の水平方向の間隔に基づき、自車両のヨーレートを推定ヨーレートとして推定する推定手段と、自車両のヨーレートを検出する検出手段と、
推定ヨーレートに基づきヨーレートを補正した補正ヨーレートを算出する補正手段とを備える、ヨーレート補正装置。
【0009】
第2の発明は、上記第1の発明に従属する発明であって、補正手段は、推定ヨーレートとヨーレートとの差を差分ヨーレートとして算出する差分算出手段と、予め定められた期間において算出された差分ヨーレートを平滑化した平滑化ヨーレートを算出する平滑化手段と、ヨーレートと平滑化ヨーレートとの差を補正ヨーレートとして算出する補正ヨーレート算出手段とを含む。
【0010】
第3の発明は、上記第2の発明に従属する発明であって、平滑化手段は、カルマンフィルタを用いて差分ヨーレートを平滑化する。
【0011】
第4の発明は、上記第2の発明に従属する発明であって、平滑化手段は、差分ヨーレートを加重平均した平滑化ヨーレートを算出する。
【0012】
第5の発明は、自車両の走行方向の画像を撮像する撮像ステップと、画像における自車両の旋回時の消失点を第1の消失点として検出し、当該画像における自車両の直進時の消失点を第2の消失点として検出する消失点検出ステップと、第1の消失点と第2の消失点との画像上の水平方向の間隔に基づき、自車両のヨーレートを推定ヨーレートとして推定する推定ステップと、自車両のヨーレートを検出する検出ステップと、推定ヨーレートに基づきヨーレートを補正した補正ヨーレートを算出する補正ステップとを備える、ヨーレート補正方法。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、ヨーレートセンサによって検出されるヨーレートを補正することのできるヨーレート補正装置、及びその方法を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明に係るヨーレート補正装置の概略構成を示すブロック図
【図2A】カメラの搭載箇所の一例を示す図
【図2B】カメラの搭載箇所の一例を示す図
【図3】撮像画像の一例を示す図
【図4】走行路を走行している自車両を示す平面図
【図5】本発明に係る処理部の処理の一例を示すフローチャート
【発明を実施するための形態】
【0015】
(第1の実施形態)
図1は、本発明の第1の実施形態に係るヨーレート補正装置1の概略構成を示すブロック図である。本実施形態に係るヨーレート補正装置1は、カメラ10と、ヨーレート検出部11と、速度検出部12とを備える。また、カメラ10は、処理部101を含む。尚、本実施形態の説明では、ヨーレート補正装置1が自車両に搭載されているものとする。
【0016】
カメラ10は、典型的には、CCD(Charge Coupled Device)カメラやCMOS(Complementary Metal Oxide Semiconductor)カメラなどである。図2A、及び図2Bは、カメラ10の自車両における搭載箇所と、撮像範囲との一例をそれぞれ示す図である。図2Aは走行中の自車両を鉛直方向に見下ろした図であり、図2Bは、図2Aに示す自車両の右側面図である。カメラ10は、図2A、及び図2Bに例としてそれぞれ示すように、自車両の走行方向を撮像可能に自車両のルームミラーに取り付けられる。カメラ10の撮像範囲は、図2A、及び図2Bにそれぞれ示すように自車両の走行路の左右の区画線を少なくとも含む。
【0017】
カメラ10は、図2A、及び図2Bにそれぞれ示すように自車両の走行方向を逐次撮像(例えば、24分の1秒(1フレーム)毎に撮像)し、撮像した画像(以下、撮像画像と称する)を後述する処理部101で処理することにより、自車両が走行している走行車線に関する値を検出する。カメラ10が処理部101で検出する値については後述する。
【0018】
尚、図2A、及び図2Bにそれぞれ示すカメラ10の搭載箇所は、一例であって、カメラ10によって撮像された撮像画像に左右の区画線が少なくとも含まれ、後述するように処理部101で区画線を検出できるのであれば、自車両のどのような箇所に搭載されていてもよい。
【0019】
ヨーレート検出部11は、自車両の重心を鉛直方向に通る軸周りの回転角速度、すなわち、ヨーレートを少なくとも検出できる所謂ジャイロセンサである。ヨーレート検出部11は、自車両のヨーレートを逐次検出し、検出したヨーレートを示すヨーレート情報を逐次生成する。
【0020】
速度検出部12は、典型的には、自車両のタイヤなどの回転運動をタコジェネレータで変換した電圧に基づいて自車両の走行速度を逐次検出するセンサである。速度検出部12は、自車両の走行速度を逐次検出し、検出した走行速度を示す速度情報を逐次生成する。
【0021】
次に、カメラ10に含まれる処理部101について説明する。処理部101は、典型的には、CPU(Central Processing Unit)、ROM(Read Only Memory)、及びRAM(Random Access Memory)などで主に構成される演算回路である。処理部101は、ヨーレート検出部11によってヨーレート情報が生成される度に、生成されたヨーレート情報を取得する。そして、処理部101は、カメラ10で撮像した撮像画像に基づいて算出したヨーレート補正値を用いて、取得したヨーレート情報によって示されるヨーレートを補正する。
【0022】
処理部101の処理について、より詳細に説明する。図3は、自車両が図3に示す曲線路を走行しているときにカメラ10で撮像した撮像画像を示す図である。
【0023】
処理部101は、カメラ10で撮像画像が撮像されると、まず、自車両が走行している走行車線の左右の区画線を撮像画像から検出する。左右の区画線を検出すると、処理部101は、検出した区画線の消失点を検出する。
【0024】
ここで、本実施形態に係る処理部101が消失点を検出する手法について説明する。本実施形態に係る処理部101が検出する消失点には、第1の消失点F1、及び第2の消失点F2の2つがある。本実施形態に係る処理部101は、これらの2つの消失点の内、第1の消失点F1から検出する。本実施形態に係る処理部101は、第1の消失点F1を検出するために、まず、走行している曲線路の曲率半径の方向に沿った直線の内、後述するように図3に一例として示す直線L1を検出する。直線L1を検出すると、処理部101は、直線L1と左右の区画線との交点(図3に示す一例では、走行路面と左右の区画線との境界線の内、それぞれの区画線の左側の境界線と直線L1との交点)を検出する。処理部101は、直線L1と左右の区画線との交点を検出すると、検出した交点を通るこれらの区画線の接線を、図3に一例として示すように直線a1、及び直線a2としてそれぞれ検出する。そして、処理部101は、検出した直線a1、及び直線a2の交点を第1の消失点F1として検出する。
【0025】
処理部101が、直線a1、及び直線a2の交点を第1の消失点F1とするのは、直線L1と左右の区画線との交点における接線の傾きで走行路に描画されている直線の左右の区画線を仮に想定した場合に、当該区画線が撮像画像上で消失する点が、この交点であると考えられるからである。
【0026】
尚、本実施形態に係る処理部101が撮像画像において直線a1〜直線a2を検出するには、まず、上述したように、直線L1を検出しなければならない。ここで、撮像画像上における直線L1は、上述したように自車両が走行している曲線路の曲率半径の方向に沿った直線の1つであるため、厳密には図3に一例として示すように撮像画像上において傾きを有する直線となる。しかしながら、自車両が走行する曲線路の曲率半径は相対的に大きく、図3に示すように、撮像画像の下端から予め定められた垂直方向の間隔(以下、垂直間隔と称する)をおいた水平方向の画素列で示される直線L2で近似できる。したがって、図3を用いた上述の説明では、説明の便宜のため、図3に一例として示す直線L1と左右の区画線との交点におけるそれぞれの区画線の接線を直線a1、及び直線a2とするものとして説明したが、第1の実施形態に係る処理部101は、直線a1〜直線a2を検出するために、直線L1を近似した図3に一例として示す直線L2を、直線L1としてまず検出した後、直線a1、及び直線a2をそれぞれ検出するものとする。
【0027】
また、処理部101が第1の消失点F1を検出するための直線a1、及び直線a2を検出するときの境界線は、認識した左右の区画線と走行路面との撮像画像における境界線の内、それぞれの区画線の左側の境界線、或いはそれぞれの区画線の右側の境界線であってもよいし、左側の区画線の左側の境界線と右側の区画線の右側の境界線とのそれぞれであってもよい。
【0028】
処理部101は、第1の消失点F1を検出すると、次に、第2の消失点F2を検出する。ここで、本実施形態における第2の消失点F2について説明する。本実施形態における第2の消失点F2とは、自車両が平坦な直線路を走行しているときの左右の区画線が撮像画像上で消失する点のことである。そして、このような点は、撮像画像において常に自車両の正面方向の略同じ位置に存在すると考えられる。したがって、本実施形態では、第2の消失点F2の位置を撮像画像上で予め定めておき、処理部101は、このように撮像画像上で位置を予め定めた第2の消失点F2を検出するものとする。
【0029】
自車両のヨーレートYは、自車両の走行速度をV、走行路の曲率半径をRとすると、Y=V/Rで算出できる。そこで、本実施形態に係る処理部101は、速度検出部12から取得する速度情報によって示される走行速度V、及び第1の消失点F1と第2の消失点F2との水平方向の間に存在する画素数Xに基づいて推定した曲率半径Rに基づいて、自車両のヨーレートをヨーレート推定値Yeとして算出して推定する。
【0030】
本実施形態に係る処理部101がヨーレート推定値Yeを算出する手法について説明する。図4は、図3に一例として示した曲線路を走行しているときの自車両を鉛直方向から見下ろした平面図である。図4には、図3に一例として示した撮像画像における直線a1、直線a2、直線L1、及び直線L2に相当する直線をそれぞれ同一の参照符号を付して示している。また、図4に示す曲線L3は、走行路の車線幅の中心を示す中心線であり、Rは、当該中心線の曲率半径であり、Sは、予め定められた検出距離である。本実施形態では、図4に示すように、自車両の走行路の車線幅の中心を示す中心線の曲率半径を曲率半径Rとする。また、図4に示す直線b1は、自車両の中心を前後方向に通る直線である。尚、図4に示す中心線L3に相当する中心線は、図3にも同一の参照符号を付して一例として示している。
【0031】
まず、第1の消失点F1と第2の消失点F2との水平方向の間に存在する画素数Xに基づいて曲率半径Rを推定する手法について説明する。図4から明らかなように、曲率半径Rと検出距離Sとの間には、R・sinφ=Sの関係が成り立つ。一方、図3に一例として示すように第1の消失点F1と第2の消失点F2との撮像画像における水平方向の間に存在する画素数Xは、カメラ10の水平画角をθ、水平画素数をPとすると、X=φ・(P/θ)で示される。これは、カメラ10の水平方向の画角1°あたりの画素数がP/θで示されることから明らかである。
【0032】
そして、前述のR・sinφ=Sを変形してR=S/sinφとし、前述のX=φ・(P/θ)を変形したφ=X/(P/θ)を代入すると、曲率半径Rは、R=S/sin(X/(P/θ))の計算をして推定することができる。さらに、ヨーレート推定値Ye=V/RにR=S/sin(X/(P/θ))を代入することによりヨーレート推定値Yeは、Ye=V/(S/sin(X/(P/θ)))の計算をして推定することができる。このように、本実施形態では、ヨーレート推定値Yeを、自車両の走行速度Vと撮像画像に基づいて検出する画素数Xとに基づいて算出して推定できる。
【0033】
尚、上述したR・sinφ=Sの関係が成立するには、自車両が走行している曲線路の曲率半径の方向に沿った直線の中から、図4に示すように自車両の走行車線の中心を示す中心線L3と検出距離Sとの交点を通る直線を前述の直線L1としなければならない。そして、上述したように本実施形態では直線L1を撮像画像上で近似した直線L2を用いて第1の消失点F1を検出する。したがって、撮像画像上における直線L2の位置、すなわち、前述の垂直間隔は、図4に示す検出距離Sを撮像画像上の間隔に対応する間隔として予め定める必要がある。尚、図4に示す検出距離Sに対応する垂直間隔は、図3に同一の参照符号を付して一例として示している。
【0034】
本実施形態に係る処理部101は、ヨーレート推定値Yeを算出すると、ヨーレート検出部11によって生成されたヨーレート情報によって示されるヨーレートYとヨーレート推定値Yeとの差ΔYを算出する。そして、処理部101は、予め定められた期間におけるΔYの平均値を、ヨーレート検出部11によって検出されるヨーレートYに生じている定常偏差として算出する。本実施形態では、この定常偏差(ΔYの平均値)をヨーレート補正値ΔYaとし、処理部101が、ヨーレート検出部11によって生成されたヨーレート情報で示されるヨーレートYと、このように算出したヨーレート補正値ΔYaとの差分を算出することにより、ヨーレートYを補正する。処理部101は、補正したヨーレートYを算出すると、補正したヨーレートYを示す補正ヨーレート情報を生成する。
【0035】
以上が、本実施形態に係る処理部101の説明である。次に、図5に示すフローチャートを参照しながら、本実施形態に係る処理部101の処理の流れを説明する。
【0036】
処理部101は、自車両のイグニッションスイッチ、或いはアクセサリスイッチがオンにされたときに、図5のフローチャートに示す処理を開始する。
【0037】
処理部101は、カメラ10で撮像された撮像画像から走行している車線の左右の区画線を検出し(ステップS101)、検出した左右の区画線に基づいて上述したように第1の消失点F1、及び第2の消失点F2を検出する(ステップS102)。第1の消失点F1、及び第2の消失点F2を検出すると、速度情報を取得し(ステップS103)、取得した速度情報で示される走行速度V、上述したように検出した画素数Xとに基づいてヨーレート推定値Yeを算出して推定する(ステップS104)。ヨーレート推定値Yeを算出すると、処理部101は、ヨーレート検出部11からヨーレート情報を取得し(ステップS105)、取得したヨーレート情報で示されるヨーレートYとヨーレート推定値Yeとの差分を前述のΔYとして算出する(ステップS106)。そして、処理部101は、予め定められた期間におけるΔYの平均値であるヨーレート補正値ΔYaを算出し(ステップS107)、ヨーレート検出部11から取得したヨーレート情報で示されるヨーレートYからヨーレート補正値ΔYaを引いて当該ヨーレートYを補正し(ステップS108)、補正したヨーレートYを示す補正ヨーレート情報を生成する(ステップS109)。補正ヨーレート情報を生成すると、処理部101は、ステップS101から処理を繰り返す。
【0038】
以上が、本実施形態に係るヨーレート補正装置1の説明である。本実施形態に係るヨーレート補正装置1によれば、例えば、ヨーレート検出部11によって検出されるヨーレートYに温度ドリフトが生じて定常的な偏差が生じていたとしても、この定常的な偏差がなくなるように補正したヨーレートYを示す補正ヨーレート情報を生成できる。また、本実施形態に係るヨーレート補正装置1によれば、撮像画像、及び走行速度Vに基づいてヨーレートを補正するので、自車両の走行中にも常に正確なヨーレートを示すことのできる補正ヨーレート情報を生成できる。
【0039】
また、ヨーレートを用いて自車両の走行している走行車線の左右の区画線を検出する装置において、本実施形態に係るヨーレート補正装置1で生成した補正ヨーレート情報で示されるヨーレートを用いることにより、左右の区画線の検出精度をさらに高めることができる。ここで、撮像画像から走行車線の左右の区画線を検出し、検出結果を用いて自車両が走行車線から逸脱する可能性があると判断されたときに逸脱しない方向に操舵トルクを発生させる車線維持制御装置、或いは自車両が走行車線から逸脱する可能性があることを報知する車線逸脱警報装置などが従来知られている。このような車線維持制御装置、或いは車線逸脱警報装置などで、本実施形態に係るヨーレート補正装置1で補正したヨーレートを用いて検出精度を高めた左右の区画線の検出結果を用いるようにすれば、車線維持制御をするときの精度を高めて搭乗者が感じる違和感を低減したり、誤って車線逸脱警報をする可能性を低減したりすることができる。
【0040】
尚、上述で説明した第1の実施形態では、第2の消失点F2の撮像画像における位置は、予め定められているものとした。しかしながら、他の一実施形態では、例えば、処理部101が、直線路を走行しているときの撮像画像における左右の区画線の接線をそれぞれ逐次検出し、これらの直線の交点の位置を学習しながら更新し、更新した位置を第2の消失点F2の位置として用いてもよい。この場合において、処理部101は、任意の周知の手法を用いて直線路を走行していると判断したときにのみ第2の消失点F2の位置を学習して更新するようにしてもよい。
【0041】
また、上述で説明した第1の実施形態では、第1の消失点F1の位置、及びヨーレート検出部11によって生成されるヨーレート情報で示されるヨーレートYをそのまま処理部101における計算に用いるものとした。しかしながら、他の一実施形態では、第1の消失点F1の位置、及びヨーレート検出部11によって生成されるヨーレート情報で示されるヨーレートYの少なくともいずれか一方を時間平均、カルマンフィルタ、又は加重平均等のいずれかの手法で平滑化した値を処理部101の計算に用いてもよい。
【0042】
また、上述で説明した第1の実施形態では、第1の消失点F1を検出するために、直線L1と左右の区画線との交点におけるそれぞれの区画線の接線を直線a1、及び直線a2として検出し、その交点を第1の消失点F1とするものとした。しかしながら、他の一実施形態では、例えば、撮像画像において検出した左右の区画線を近似した直線をハフ変換を用いて検出し、このように検出した直線を、それぞれ前述の直線a1、及び直線a2としてもよい。
【0043】
また、上述で説明した第1の実施形態において、区画線の検出、接線の検出、及び交点の検出など撮像画像から任意の情報を検出するためには、2値化処理、エッジ検出、及びソーベルフィルタなどの1以上の任意の周知の手法を組み合わせて用いてよい。
【0044】
また、上述で説明した第1の実施形態では、撮像画像における区画線に基づいて第1の消失点F1、及び第2の消失点F2をそれぞれ検出するものとした。しかしながら、他の一実施形態では、撮像画像における路側物(例えば、ガードレール、標識、及び看板など)の動きベクトルを自車両の旋回時、及び直進時においてそれぞれ任意の周知の手法で検出し、その交点に基づいて検出した消失点を用いてもよい。この場合、旋回時に検出した消失点を第1の消失点F1とし、直進時に検出した消失点を第2の消失点F2とする。
【0045】
また、上述で説明した第1の実施形態では、第2の消失点F2を平坦な直線路を走行しているときの左右の区画線が撮像画像上で消失する点として予め定めるものとした。しかしながら、他の一実施形態では、本発明に係るヨーレート補正装置を搭載する自車両の生産工程において第2の消失点F2の位置を調節して定めてもよい。すなわち、第2の消失点F2を較正(キャリブレーション)して予め定めてもよい。より詳細には、本発明に係るヨーレート補正装置を搭載する自車両の生産工程において、当該ヨーレート補正装置に対して予め定められた位置に設置した目標物をカメラ10で撮像した撮像画像上における位置(ターゲット位置)が、第2の消失点F2の位置となるように調節して定めてもよい。
【0046】
以上、本発明を詳細に説明してきたが、上述の説明はあらゆる点において本発明の一例にすぎず、その範囲を限定しようとするものではない。本発明の範囲を逸脱することなく種々の改良や変形を行うことができることは言うまでもない。
【産業上の利用可能性】
【0047】
本発明によれば、誤差の生じているヨーレートを補正できるヨーレート補正装置を提供でき、例えば、自動車などの移動体に搭載されるヨーレート補正装置などに利用できる。
【符号の説明】
【0048】
1 ヨーレート補正装置
10 カメラ
11 ヨーレート検出部
12 速度検出部
101 処理部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
自車両の走行方向の画像を撮像する撮像手段と、
前記画像における前記自車両の旋回時の消失点を第1の消失点として検出し、当該画像における前記自車両の直進時の消失点を第2の消失点として検出する消失点検出手段と、
前記第1の消失点と前記第2の消失点との前記画像上の水平方向の間隔に基づき、前記自車両のヨーレートを推定ヨーレートとして推定する推定手段と、
前記自車両のヨーレートを検出する検出手段と、
前記推定ヨーレートに基づき前記ヨーレートを補正した補正ヨーレートを算出する補正手段とを備える、ヨーレート補正装置。
【請求項2】
前記補正手段は、
前記推定ヨーレートと前記ヨーレートとの差を差分ヨーレートとして算出する差分算出手段と、
予め定められた期間において算出された前記差分ヨーレートを平滑化した平滑化ヨーレートを算出する平滑化手段と、
前記ヨーレートと前記平滑化ヨーレートとの差を前記補正ヨーレートとして算出する補正ヨーレート算出手段とを含む、請求項1に記載のヨーレート補正装置。
【請求項3】
前記平滑化手段は、カルマンフィルタを用いて前記差分ヨーレートを平滑化する、請求項2に記載のヨーレート補正装置。
【請求項4】
前記平滑化手段は、前記差分ヨーレートを加重平均した前記平滑化ヨーレートを算出する、請求項2に記載のヨーレート補正装置。
【請求項5】
自車両の走行方向の画像を撮像する撮像ステップと、
前記画像における前記自車両の旋回時の消失点を第1の消失点として検出し、当該画像における前記自車両の直進時の消失点を第2の消失点として検出する消失点検出ステップと、
前記第1の消失点と前記第2の消失点との前記画像上の水平方向の間隔に基づき、前記自車両のヨーレートを推定ヨーレートとして推定する推定ステップと、
前記自車両のヨーレートを検出する検出ステップと、
前記推定ヨーレートに基づき前記ヨーレートを補正した補正ヨーレートを算出する補正ステップとを備える、ヨーレート補正方法。

【図1】
image rotate

【図2A】
image rotate

【図2B】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate


【公開番号】特開2011−169728(P2011−169728A)
【公開日】平成23年9月1日(2011.9.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−33478(P2010−33478)
【出願日】平成22年2月18日(2010.2.18)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】