ラインヘッド及び画像形成装置
【課題】 画像形成装置の複雑化や大型化を招くことなく、例えばタンデム型の場合における色ずれを防止したラインヘッドと、これを備えた画像形成装置を提供する。
【解決手段】 素子基板2上に、複数の有機EL素子3を配列してなる発光素子3A列と、有機EL素子を駆動させる駆動制御手段の少なくとも一部とを一体形成したラインヘッド1である。素子基板2上に、位置合わせ用マーク6を形成している。
【解決手段】 素子基板2上に、複数の有機EL素子3を配列してなる発光素子3A列と、有機EL素子を駆動させる駆動制御手段の少なくとも一部とを一体形成したラインヘッド1である。素子基板2上に、位置合わせ用マーク6を形成している。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、画像形成装置において露光手段として用いられるラインヘッドと、これを備えた画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、高速高画質のプリンタ(画像形成装置)として、一般にレーザプリンタと呼ばれるレーザスキャナ方式のものが知られている。ところが、近年では高速高画質化が益々要求されるとともに、プリンタ自体の小型化も要求されるようになってきている。
このような要求に応えるものとして、LEDプリンタヘッドを使用したタンデム型のカラー電子写真プリンタが提供されている。このプリンターでは、レーザプリンタで用いられているポリゴンミラーのような回転機構部が無いため、さらなる高速化や小型化が可能になっている。
【0003】
しかしながら、このLEDプリンタヘッドは、支持基板上に複数のLEDチップアレイを固着したものであり、したがって固着したLEDチップアレイ間で位置ずれが生ずるおそれがある。特にタンデム型のカラー電子写真プリンタでは、通常前記のLEDプリンタヘッドを4つ使用するが、これらLEDプリンタヘッドに前記の位置ずれがある場合、結果的に色ずれを生じてしまうといった問題がある。
【0004】
このような背景のもとに、記録した画像から画像ずれを検知する検知手段を備え、この検知手段で得られたデータを基にして修正を加えるようにした、カラー画像形成装置が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【特許文献1】特開平10−104909号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、このように画像ずれを検知する検知手段を備えるのでは、装置が複雑化してコスト高を招いてしまい、さらに小型化を妨げる一因にもなってしまう。
本発明は前記事情に鑑みてなされたもので、その目的とするところは、画像形成装置の複雑化や大型化を招くことなく、例えばタンデム型の場合における色ずれを防止したラインヘッドと、これを備えた画像形成装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明のラインヘッドは、素子基板上に、複数のEL素子を配列してなる発光素子列と、前記EL素子を駆動させる駆動制御手段の少なくとも一部とを一体形成したラインヘッドであって、前記素子基板上に、位置合わせ用マークを形成したことを特徴としている。
このラインヘッドによれば、素子基板上に直接発光素子列を形成しているので、支持基板上にチップアレイを固着する場合と異なり発光素子間での位置ずれが無く、さらに、素子基板上に位置合わせマークも直接形成されているので、該位置合わせマークと前記発光素子との間での位置ずれも無い。したがって、特にタンデム型のカラー画像形成装置において4つのラインヘッドを用いる場合にも、前記位置合わせマークを用いてそれぞれの相対位置を合わせることにより、各ラインヘッドの発光素子が前記位置合わせマークを基準に位置合わせされるようになり、したがって色ずれが防止される。また、ラインヘッドを一つしか用いない場合であっても、通常はこれを画像形成装置に組み込む際、結像レンズや感光ドラムとの間で位置合わせ(光軸合わせ)を行う必要があるが、その場合にも、前記の位置合わせマークを用いることで、容易にしかも精度良く位置あわせを行うことが可能になる。
【0007】
また、前記ラインヘッドにおいては、前記位置合わせマークが、フォトリソグラフィー技術によって形成されてなるのが好ましい。
このようにすれば、位置合わせマークをより精度良く形成することが可能になるとともに、EL素子や駆動素子の構成要素の形成をフォトリソグラフィー技術で行う際、前記構成要素用の材料によって同じ工程で位置合わせマークを形成することが可能になる。
【0008】
また、前記ラインヘッドにおいては、前記位置合わせマークが、EL材料によって形成されてなるのが好ましく、その場合に、このEL材料は液滴吐出法によって所定位置に配されることで形成されるのが好ましい。
このようにすれば、EL素子を形成する工程において位置合わせマークを同時に形成することが可能になり、工程の増加を抑えることで生産性を向上することができるとともに、コストアップを抑えることがでできる。
また、EL材料を液滴吐出法で所定位置に配するようにすることで、工程をさらに簡略化することができる。
【0009】
また、前記ラインヘッドにおいては、前記位置合わせマークが、前記発光素子列を構成するEL素子とは別に形成されたダミーのEL素子にからなるのが好ましい。
このようにすれば、EL素子を形成する工程において位置合わせマークを同時に形成することが可能になり、工程の増加を抑えることで生産性を向上することができるとともに、コストアップを抑えることがでできる。
また、特にこのダミーのEL素子についても、発光をなすように配線をしておけば、位置合わせ時にこのダミーのEL素子の発光を利用することができる。
【0010】
本発明の画像形成装置は、露光手段として、前記のラインヘッドを備えたことを特徴としている。
この画像形成装置によれば、前述したように発光素子間での位置ずれが無く、さらに位置合わせマークと前記発光素子との間での位置ずれも無いラインヘッドを露光手段としているので、特にタンデム型のものであって、4つのラインヘッドを用いる場合にも、前記位置合わせマークを用いてそれぞれの相対位置を合わせることにより、各ラインヘッドの発光素子が前記位置合わせマークを基準に位置合わせされるようになり、したがって色ずれが防止される。また、ラインヘッドを一つしか用いないものの場合であっても、ラインヘッドを組み込む際、前記の位置合わせマークを用いることにより、このラインヘッドと結像レンズや感光ドラムとの間で位置合わせ(光軸合わせ)を容易にしかも精度良く行うことが可能になる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、本発明を詳しく説明する。
まず、本発明のラインヘッドについて説明する。図1は本発明のラインヘッドの一実施形態を模式的に示す図であり、図1中符号1はラインヘッドである。このラインヘッド1は、後述する画像形成装置の露光手段として用いられるもので、長細い矩形の素子基板2上に、複数の有機EL(エレクトロルミネセンス)素子3を配列してなる発光素子列3Aと、前記有機EL素子3を駆動させる駆動素子4からなる駆動素子群と、これら駆動素子4(駆動素子群)の駆動を制御する制御回路群5とを一体形成したものである。また、前記素子基板2上には、有機EL素子3を配列してなる発光素子列3Aの外側、すなわち列の先端側と後端側に、それぞれ位置合わせ用マーク6が形成されている。さらに、前記素子基板2上には、前記有機EL素子3を封止した状態で、接着剤によって封止基板(図示せず)が貼着されている。
【0012】
駆動素子4には電源線7、8が接続されており、これら電源線7、8を介して電源(図示せず)から駆動素子4に電圧が印加されるようになっている。これら駆動素子4(駆動素子群)、制御回路群5、電源線7、8により、駆動制御手段が構成されている。そして、このような構成のもとに有機EL素子3は、制御回路群5によって制御された駆動素子4により、その発光動作が制御されるようになっている。なお、
【0013】
ここで、ラインヘッド1における有機EL素子3や駆動素子4等の構成について、図2(a)、(b)を参照して説明する。
素子基板2としては、図2(a)に示すように、後述する発光層で発光した光を陰極(対向電極)50側から出射する、いわゆるトップエミッション型である場合には、この素子基板2の対向側である封止基板側から発光光を取り出す構成であるので、透明基板及び不透明基板のいずれも用いることができる。不透明基板としては、例えば、アルミナ等のセラミック、ステンレススチール等の金属シートに表面酸化などの絶縁処理を施したものの他に、熱硬化性樹脂、熱可塑性樹脂などが挙げられる。
【0014】
また、発光層で発光した光を画素電極23側から出射する、いわゆるボトムエミッション型である場合には、基板2側から発光光を取り出す構成であるので、基板2としては、透明あるいは半透明のものが採用される。例えば、ガラス、石英、樹脂(プラスチック、プラスチックフィルム)等が挙げられ、特にガラス基板が好適に用いられる。本実施形態ではボトムエミッション型が採用され、したがって素子基板2には透明なガラスが用いられるものとする。
【0015】
素子基板2上には、画素電極23に接続する駆動用TFT123(駆動素子4)などを含む回路部11が形成されており、その上に有機EL素子3が設けられている。有機EL素子3は、陽極として機能する画素電極23と、この画素電極23からの正孔を注入/輸送する正孔輸送層70と、有機EL物質からなる発光層60と、陰極50とが順に形成されたことによって構成されている。ここで、有機EL素子3および駆動用TFT123(駆動素子4)を図1に対応した模式図で示すと、図2(b)に示すようになる。図2(b)において、電源線7は駆動素子4のソース/ドレイン電極に接続し、電源線8は有機EL素子3の陰極50に接続している。
そして、このような構成のもとに有機EL素子3は、図2(a)に示すように、正孔輸送層70から注入された正孔と陰極50からの電子とが発光層60で結合することにより、発光をなすようになっている。
【0016】
陽極として機能する画素電極23は、特にボトムエミッション型である場合、透明導電材料によって形成され、具体的にはITOが好適に用いられる。
正孔輸送層70の形成材料としては、特に3,4−ポリエチレンジオシチオフェン/ポリスチレンスルフォン酸(PEDOT/PSS)の分散液、すなわち、分散媒としてのポリスチレンスルフォン酸に3,4−ポリエチレンジオキシチオフェンを分散させ、さらにこれを水に分散させた分散液が好適に用いられる。
なお、正孔輸送層70の形成材料としては、前記のものに限定されることなく種々のものが使用可能である。例えば、ポリスチレン、ポリピロール、ポリアニリン、ポリアセチレンやその誘導体などを、適宜な分散媒、例えば前記のポリスチレンスルフォン酸に分散させたものなどが使用可能である。
【0017】
発光層60を形成するための材料としては、蛍光あるいは燐光を発光することが可能な公知の発光材料が用いられる。なお、本実施形態では、例えば発光波長帯域が赤色に対応した発光層が採用されるが、もちろん、発光波長帯域が緑色や青色に対応した発光層を採用するようにしてもよい。
【0018】
発光層60の形成材料として具体的には、(ポリ)フルオレン誘導体(PF)、(ポリ)パラフェニレンビニレン誘導体(PPV)、ポリフェニレン誘導体(PP)、ポリパラフェニレン誘導体(PPP)、ポリビニルカルバゾール(PVK)、ポリチオフェン誘導体、ポリメチルフェニルシラン(PMPS)などのポリシラン系などが好適に用いられる。また、これらの高分子材料に、ペリレン系色素、クマリン系色素、ローダミン系色素などの高分子系材料や、ルブレン、ペリレン、9,10−ジフェニルアントラセン、テトラフェニルブタジエン、ナイルレッド、クマリン6、キナクリドン等の低分子材料をドープして用いることもできる。
【0019】
陰極50は、前記発光層60を覆って形成されたもので、例えばCaを厚さ20nm程度に形成し、その上にAlを厚さ200nm程度に形成して積層構造の電極とし、Alを反射層としても機能させたものである。
また、この陰極50上には接着層を介して封止基板(図示せず)が貼着されている。
【0020】
また、このような有機EL素子3の下方には、前述したように回路部11が設けられている。この回路部11は素子基板2上に形成されたものである。すなわち、素子基板2の表面にはSiO2を主体とする下地保護層281が下地として形成され、その上にはシリコン層241が形成されている。このシリコン層241の表面には、SiO2及び/又はSiNを主体とするゲート絶縁層282が形成されている。
【0021】
また、前記シリコン層241のうち、ゲート絶縁層282を挟んでゲート電極242と重なる領域がチャネル領域241aとされている。なお、このゲート電極242は、図示しない走査線の一部である。一方、シリコン層241を覆い、ゲート電極242を形成したゲート絶縁層282の表面には、SiO2を主体とする第1層間絶縁層283が形成されている。
【0022】
また、シリコン層241のうち、チャネル領域241aのソース側には、低濃度ソース領域241bおよび高濃度ソース領域241Sが設けられる一方、チャネル領域241aのドレイン側には低濃度ドレイン領域241cおよび高濃度ドレイン領域241Dが設けられて、いわゆるLDD(Light Doped Drain )構造となっている。これらのうち、高濃度ソース領域241Sは、ゲート絶縁層282と第1層間絶縁層283とにわたって開孔するコンタクトホール243aを介して、ソース電極243に接続されている。このソース電極243は、電源線(図示せず)の一部として構成されている。一方、高濃度ドレイン領域241Dは、ゲート絶縁層282と第1層間絶縁層283とにわたって開孔するコンタクトホール244aを介して、ソース電極243と同一層からなるドレイン電極244に接続されている。
【0023】
ソース電極243およびドレイン電極244が形成された第1層間絶縁層283の上層には、例えばアクリル系の樹脂成分を主体とする平坦化膜284が形成されている。この平坦化膜284は、アクリル系やポリイミド系等の、耐熱性絶縁性樹脂などによって形成されたもので、駆動用TFT123(駆動素子4)やソース電極243、ドレイン電極244などによる表面の凹凸をなくすために形成された公知のものである。
【0024】
そして、ITO等からなる画素電極23が、この平坦化膜284の表面上に形成されるとともに、該平坦化膜284に設けられたコンタクトホール23aを介してドレイン電極244に接続されている。すなわち、画素電極23は、ドレイン電極244を介して、シリコン層241の高濃度ドレイン領域241Dに接続されている。
【0025】
画素電極23が形成された平坦化膜284の表面は、画素電極23と、例えばSiO2などの親液性材料を主体とする親液性制御層25と、隔壁221とによって覆われている。そして、画素電極23上には、親液性制御層25に設けられた開口部25aおよび隔壁221に設けられた開口部221aの開口内部、すなわち画素領域に、前記の正孔輸送層70と発光層60とが画素電極23側からこの順で積層されている。
【0026】
また、このような構成からなるラインヘッド1において、前記位置合わせ用マーク6は、後述するようにラインヘッド1を露光手段として画像形成装置に組み込む際、例えばラインヘッド間での相対的な位置決めや、結像レンズや感光ドラムとの間で位置合わせ(光軸合わせ)を行うときに用いるものである。この位置合わせ用マーク6は、前記の有機EL素子3の形成材料や、駆動素子4(駆動用TFT)の形成材料、さらには駆動素子4に接続する配線等の材料によって形成されたものである。その形状や大きさについては、特に限定されることなく、任意の形状・大きさに形成される。なお、形状については、一般的に位置合わせマークとして用いられる、+形などが採用可能である。
【0027】
また、特に本実施形態においては、素子基板2が透明のガラスからなっているため、位置合わせマーク6としては、非透明の材料によって形成するのが好ましい。具体的には、前記有機EL素子3の形成材料であるEL材料、すなわち発光層60や正孔注入層70の形成材料で形成するのが好ましい。また、これ以外にも、陰極50の材料となる金属(Al)や陰極50に接続する陰極電源配線(図示せず)の材料となる金属(Al)、さらには駆動素子4のゲート電極、ソース電極、ドレイン電極、またはこれに接続する配線用の金属(Al)によって形成するようにしてもよい。さらに、透明ではあっても、素子基板2を形成するガラスと透過率が異なるもの、好ましくはガラスより低いものであれば、これらの間での屈折等によって位置合わせマーク6を視認することが可能となる。なお、位置合わせマーク6の確認には、例えば光学顕微鏡等を用いることもできる。
【0028】
また、このような位置合わせマーク6については、特に反射率の低い材料からなっているのが好ましい。これは、ラインヘッド1によって露光を行うべく、有機EL素子3を発光させた際、その光が前記位置合わせマーク6で反射・散乱し、不要な漏れ光となってしまうことで露光精度が低下するのを防止するためである。このような理由からも、位置合わせマーク6については、EL材料によって形成するのが好ましい。
【0029】
なお、この位置合わせマーク6は、図3(a)に示すような透明な封止基板9を、図3(b)に示すように透明な封止接着剤を介して素子基板2上に貼着する場合に、封止基板9側に形成した位置合わせマーク10に重ね合わせるためのものとして利用することもできる。その場合に、透明な封止基板9を透して見える位置合わせマーク6(図1参照)、すなわち位置合わせマーク10と重ね合った位置合わせマーク6が、前述したようにラインヘッド1を露光手段として画像形成装置に組み込む際の、位置合わせマークとして機能するようになる。
【0030】
次に、このような構成のラインヘッド1の製造方法の一例を説明する。
まず、図4(a)に示すように、素子基板2の表面に、下地保護層281を形成する。次に、下地保護層281上に、ICVD法、プラズマCVD法などを用いてアモルファスシリコン層501を形成し、その後、レーザアニール法又は急速加熱法により結晶粒を成長させてポリシリコン層とする。
【0031】
次いで、図4(b)に示すように、ポリシリコン層をフォトリソグラフィ法によりパターニングし、島状のシリコン層241、251および261を形成する。これらのうちシリコン層241は、表示領域内に形成され、画素電極23に接続される駆動用TFT123を構成するものであり、シリコン層251、261は、走査線駆動回路80に含まれるPチャネル型およびNチャネル型のTFT(駆動回路用TFT)をそれぞれ構成するものである。
【0032】
次に、プラズマCVD法、熱酸化法などにより、シリコン層241、251および261、下地保護層281の全面に厚さが約30nm〜200nmのシリコン酸化膜からなるゲート絶縁層282を形成する。ここで、熱酸化法を利用してゲート絶縁層282を形成する際には、シリコン層241、251および261の結晶化も行い、これらのシリコン層をポリシリコン層とすることができる。
【0033】
また、シリコン層241、251および261にチャネルドープを行う場合には、例えば、このタイミングで約1×1012/cm2のドーズ量でボロンイオンを打ち込む。その結果、シリコン層241、251および261は、不純物濃度(活性化アニール後の不純物にて算出)が約1×1017/cm3の低濃度P型のシリコン層となる。
【0034】
次に、Pチャネル型TFT、Nチャネル型TFTのチャネル層の一部にイオン注入選択マスク502を形成し、この状態でリンイオンを約1×1015/cm2のドーズ量でイオン注入する。その結果、図4(c)に示すように、シリコン層241及び261中に高濃度ソース領域241Sおよび261S並びに高濃度ドレイン領域241Dおよび261Dが形成される。
【0035】
次に、ゲート絶縁層282の表面全体に、ドープドシリコンやシリサイド膜、あるいはアルミニウム膜等の金属膜からなるゲート電極形成用導電層を形成する。この導電層の厚さは概ね500nm程度である。その後、フォトリソグラフィー技術により、図4(d)に示すように、Pチャネル型の駆動回路用TFTを形成するゲート電極252、画素用TFTを形成するゲート電極242、Nチャネル型の駆動回路用TFTを形成するゲート電極262を形成する。また、駆動制御信号導通部(図示せず)、陰極電源配線の第1層121も同時に形成する。
【0036】
また、特にゲート電極252等をアルミニウム膜等の金属膜から形成する場合に、すなわち、この金属膜をフォトリソグラフィー技術でパターニングし、ゲート電極252等を形成する際に、本発明における位置合わせ用マーク6を、図1に示したように素子基板2の両端部に形成するようにしてもよい。
このようにフォトリソグラフィー技術によって位置合わせマーク6を形成すれば、この位置合わせマーク6をより精度良く形成することができ、しかもゲート電極252等の形成と同じ工程でパターニングを行うことができるので、工程を増やすことなく、したがって生産性を損なうことなく容易に位置合わせマーク6を形成することができる。
【0037】
続いて、ゲート電極242,252および262をマスクとして用い、シリコン層241,251および261に対してリンイオンを約4×1013/cm2 のドーズ量でイオン注入する。その結果、ゲート電極242,252および262に対してセルフアライン的に低濃度不純物が導入され、図4(d)に示すように、シリコン層241および261中に低濃度ソース領域241bおよび261b、並びに低濃度ドレイン領域241cおよび261cが形成される。また、シリコン層251中に低濃度不純物領域251Sおよび251Dが形成される。
【0038】
次に、図5(e)に示すように、Pチャネル型の駆動回路用TFT以外の部分を覆うイオン注入選択マスク503を形成する。このイオン注入選択マスク503を用いて、シリコン層251に対してボロンイオンを約1.5×1015/cm2のドーズ量でイオン注入する。結果として、Pチャネル型駆動回路用TFTを構成するゲート電極252もマスクとして機能するため、シリコン層251中にセルフアライン的に高濃度不純物がドープされる。したがって、低濃度不純物領域251Sおよび251Dはカウンタードープされ、P型チャネル型の駆動回路用TFTのソース領域およびドレイン領域となる。
【0039】
次いで、図5(f)に示すように、素子基板2の全面にわたって第1層間絶縁層283を形成するとともに、フォトリソグラフィ法を用いて該第1層間絶縁層283およびゲート絶縁層282をパターニングすることにより、各TFTのソース電極およびドレイン電極に対応する位置にコンタクトホールCを形成する。
【0040】
次に、図5(g)に示すように、第1層間絶縁層283を覆うように、アルミニウム、クロム、タンタルなどの金属からなる導電層504を形成する。この導電層504の厚さは概ね200nmないし800nm程度である。この後、導電層504のうち、各TFTのソース電極およびドレイン電極が形成されるべき領域240a、駆動電圧導通部が形成されるべき領域(図示せず)、陰極電源配線の第2層が形成されるべき領域122aを覆うようにパターニング用マスク505を形成するとともに、該導電層504をエッチングして、図6(h)に示すソース電極243、253、263、ドレイン電極244、254、264を形成する。
【0041】
なお、前述したようにゲート電極252等を形成する工程で位置合わせマーク6を形成するのに代えて、これらソース電極243、253、263やドレイン電極244、254、264を形成する際に、すなわち、導電膜をフォトリソグラフィー技術でパターニングする際に、本発明の位置合わせマーク6を形成するようにしてもよい。このようにしても、この位置合わせマーク6をより精度良く形成することができ、しかもソース電極243、253、263やドレイン電極244、254、264等の形成と同じ工程でパターニングを行うことができるので、工程を増やすことなく、したがって生産性を損なうことなく容易に位置合わせマーク6を形成することができる。
【0042】
次いで、図6(i)に示すように、これらが形成された第1層間絶縁層283を覆う平坦化膜284を、例えば感光性アクリル系樹脂などの高分子材料によって形成する。この平坦化膜284は、約1〜2μm程度の厚さに形成するのが好ましい。なお、SiNやSiO2によって平坦化膜284を形成するようにしてもよい。
【0043】
次いで、図6(j)に示すように、平坦化膜284のうち、駆動用TFTのドレイン電極244に対応する部分を露光・現像することにより除去してコンタクトホール23aを形成する。
その後、素子基板2の全面を覆うように画素電極23となる透明導電膜を、ITO等によって形成する。そして、この導電膜をパターニングすることにより、図7(k)に示すように、平坦化膜284のコンタクトホール23aを介してドレイン電極244と導通する画素電極23を形成する。
【0044】
なお、前述したようにゲート電極252やソース電極243等を形成する工程で位置合わせマーク6を形成するのに代えて、画素電極23を形成する際に、すなわち、ITO等からなる導電膜をフォトリソグラフィー技術でパターニングする際に、本発明の位置合わせマーク6を形成するようにしてもよい。
【0045】
次いで、図7(l)に示すように、画素電極23上、および平坦化膜284上に絶縁層である親液性制御層25を形成する。なお、画素電極23においては一部が開口する態様にて親液性制御層25を形成し、開口部25aにおいて画素電極23からの正孔移動が可能となるようにしておく。
次いで、図7(m)に示すように、親液性制御層25の所定位置、詳しくは画素領域を囲む位置に樹脂等によって隔壁221を形成する。
【0046】
次いで、素子基板2の表面に、親液性を示す領域と、撥液性を示す領域とを形成する。本実施形態においては、プラズマ処理によって各領域を形成するものする。具体的には、該プラズマ処理は、予備加熱工程と、隔壁221の表面および開口部221aの壁面ならびに画素電極23の電極面23c、親液性制御層25の表面をそれぞれ親液性にする親液化工程と、隔壁221の上面および開口部221aの壁面を撥液性にする撥液化工程と、冷却工程とで構成する。
【0047】
すなわち、基材(バンクなどを含む素子基板2)を所定温度、例えば70〜80℃程度に加熱し、次いで親液化工程として大気圧下で酸素を反応ガスとするプラズマ処理(O2プラズマ処理)を行う。次いで、撥液化工程として大気圧下で4フッ化メタンを反応ガスとするプラズマ処理(CF4プラズマ処理)を行い、その後、プラズマ処理のために加熱された基材を室温まで冷却することで、親液性および撥液性が所定箇所に付与されることとなる。
【0048】
なお、このCF4プラズマ処理においては、画素電極23の電極面23cおよび親液性制御層25についても多少の影響を受けるが、画素電極23の材料であるITOおよび親液性制御層25の構成材料であるSiO2、TiO2などはフッ素に対する親和性に乏しいため、親液化工程で付与された水酸基がフッ素基で置換されることがなく、親液性が保たれる。
【0049】
次いで、正孔輸送層形成工程によって正孔輸送層70を形成する。この正孔輸送層形成工程では、液滴吐出法として、特にインクジェット法が好適に採用される。すなわち、このインクジェット法により、正孔輸送層形成材料を電極面23c上に選択的に配し、これを塗布する。その後、乾燥処理および熱処理を行い、電極23上に正孔輸送層70を形成する。正孔輸送層70の形成材料としては、例えば前記のPEDOT:PSSをイソプロピルアルコールなどの極性溶媒に溶解させたものが用いられる。
【0050】
ここで、このインクジェット法による正孔輸送層70の形成にあたっては、まず、インクジェットヘッド(図示略)に正孔輸送層形成材料を充填し、インクジェットヘッドの吐出ノズルを親液性制御層25に形成された前記開口部25a内に位置する電極面23cに対向させ、インクジェットヘッドと基材(素子基板2)とを相対移動させながら、吐出ノズルから1滴当たりの液量が制御された液滴を電極面23cに吐出する。次に、吐出後の液滴を乾燥処理し、正孔輸送層材料に含まれる分散媒や溶媒を蒸発させることにより、正孔輸送層70を形成する。
【0051】
このとき、吐出ノズルから吐出された液滴は、親液性処理がなされた電極面23c上にて広がり、親液性制御層25の開口部25a内に満たされる。その一方で、撥液処理された隔壁221の上面では、液滴がはじかれて付着しない。したがって、液滴が所定の吐出位置からずれて、液滴の一部が隔壁221の表面にかかったとしても、該表面が液滴で濡れることがなく、弾かれた液滴が親液性制御層25の開口部25a内に引き込まれる。
なお、この正孔輸送層形成工程以降では、各種の形成材料や形成した要素の酸化・吸湿を防止すべく、窒素雰囲気、アルゴン雰囲気などの不活性ガス雰囲気で行うことが好ましい。
【0052】
次いで、図8(n)に示すように、発光層形成工程による発光層60の形成を行う。発光層形成工程では、前記の正孔輸送層70の形成と同様に、液滴吐出法であるインクジェット法が好適に採用される。すなわち、インクジェット法により、発光層形成材料を正孔輸送層70上に吐出し、その後、乾燥処理および熱処理を行うことにより、隔壁221に形成された開口部221a内、すなわち画素領域上に発光層60を形成する。
【0053】
なお、前述したようにゲート電極252やソース電極243等や画素電極23を形成する工程で位置合わせマーク6を形成するのに代えて、EL材料をインクジェット法(液滴吐出法)で塗布することにより正孔輸送層70や発光層60を形成する際に、これらEL材料によって本発明の位置合わせマーク6を形成するようにしてもよい。
このようにすれば、正孔輸送層70や発光層60を形成する工程において位置合わせマーク6を同時に形成することができ、したがって工程の増加を抑えることで生産性を向上することができるとともに、コストアップを抑えることがでできる。また、EL材料を液滴吐出法で所定位置に配するようにすることで、工程を簡略化することができる。
【0054】
次いで、図8(o)に示すように、陰極層形成工程によって陰極50を形成する。この陰極50については、EL素子を効率よく発光させるため、電子注入層と導電層のような積層構造を採用するのが一般的であり、例えばアルミニウムなどの金属材料が使用可能である。なお、この陰極50の形成では、前記正孔輸送層70や発光層6の形成とは異なり、蒸着法やスパッタ法等で行うため、画素領域にのみ選択的に形成材料を配するのでなく、素子基板2のほぼ全面に形成材料が設けられることになる。そこで、本実施形態では、素子基板2と図示しないメタルマスクを位置合わせして蒸着法やスパッタ法で陰極50を成膜することにより、図8(o)に示したように基板周辺部に陰極50が形成されないようにする。
【0055】
その後、図8(p)に示すように、封止工程によって封止基板9を接着する。この封止工程では、透明な封止基板9と素子基板2との間に、透明な接着剤40を塗布し、気泡が入らないようにして封止基板9と素子基板2とを貼り合わせる。このとき、前述したように封止基板9に予め位置合わせマーク10(図3(a)参照)を形成しておき、この位置合わせマーク10を素子基板2側の位置合わせマーク6に重ね合わせることにより、素子基板2に対する封止基板9の位置決めを行うことができる。
【0056】
なお、本発明のラインヘッドは、前記実施形態に限定されることなく、本発明の要旨を逸脱しない限り種々の変更が可能である。例えば、図9に示すように前記位置合わせマーク6を、前記発光素子列3Aを構成する有機EL素子3とは別に形成されたダミーの有機EL素子によって形成するようにしてもよい。
その場合に、これらダミーの有機EL素子(位置合わせマーク6)については、例えばその配線を電源線に直接接続することにより、駆動素子4によって制御する発光素子列3Aの有機EL素子3とは別に、その発光制御を行うようにしてもよい。
【0057】
このようにすれば、有機EL素子3を形成する工程において位置合わせマーク6を同時に形成することができ、したがって工程の増加を抑えることで生産性を向上することができるとともに、コストアップを抑えることがでできる。
また、位置合わせ時に、このダミーの有機EL素子(位置合わせマーク6)の発光を利用することができることから、位置合わせをより容易にすることができる。すなわち、この位置合わせマーク6を利用して光学的な位置合わせを行う際、特に照明光が届きにくいような場合に、前記ダミーの有機EL素子を発光させることで照明光なしに位置あわせを行うことができる。
【0058】
また、前記実施形態では本発明のEL素子を、発光層を有機材料で形成する有機EL素子3によって構成したが、本発明はこれに限定されることなく、発光層を無機材料で形成する無機EL素子によって構成してもよい。また、駆動制御手段を構成する構成要素、即ち駆動素子4、制御回路群5、電源線7、8等の総てがEL素子と一体成形されている必要はなく、例えば制御回路群5を外付けの回路構成としても良く、更に他の例としては駆動素子4と制御回路群5の機能を有する単結晶シリコンによる集積回路を外付けにしても良い。この場合、図2(b)のGNDの電源線8がEL素子と一体形成されることになる。
【0059】
次に、本発明のラインヘッド1が設けられる画像形成装置について説明する。図10は、本発明の画像形成装置の第1の実施形態を示す図であり、図1中符号80は画像形成装置である。この画像形成装置80は、本発明のラインヘッドの一例となる有機ELアレイラインヘッド101K、101C、101M、101Yを、対応する同様な構成である4個の感光体ドラム(像担持体)41K、41C、41M、41Yの露光装置にそれぞれ配置したもので、タンデム方式のものとして構成されたものである。
【0060】
この画像形成装置80は、駆動ローラ91と従動ローラ92とテンションローラ93とを備え、これら各ローラに中間転写ベルト90を、図10中矢印方向(反時計方向)に循環駆動するよう張架したものである。この中間転写ベルト90に対して、感光体41K、41C、41M、41Yが所定間隔で配置されている。これら感光体41K、41C、41M、41Yは、その外周面が像担持体としての感光層となっている。
【0061】
ここで、前記符号中のK、C、M、Yは、それぞれ黒、シアン、マゼンタ、イエローを意味し、それぞれ黒、シアン、マゼンタ、イエロー用の感光体であることを示している。なお、これら符号(K、C、M、Y)の意味は、他の部材についても同様である。感光体41K、41C、41M、41Yは、中間転写ベルト90の駆動と同期して、図10中矢印方向(時計方向)に回転駆動するようになっている。
【0062】
各感光体41(K、C、M、Y)の周囲には、それぞれ感光体41(K、C、M、Y)の外周面を一様に帯電させる帯電手段(コロナ帯電器)42(K、C、M、Y)と、この帯電手段42(K、C、M、Y)によって一様に帯電させられた外周面を感光体41(K、C、M、Y)の回転に同期して順次ライン走査する本発明の有機ELアレイラインヘッド101(K、C、M、Y)とが設けられている。
【0063】
また、この有機ELアレイラインヘッド101(K、C、M、Y)で形成された静電潜像に現像剤であるトナーを付与して可視像(トナー像)とする現像装置44(K、C、M、Y)と、この現像装置44(K、C、M、Y)で現像されたトナー像を一次転写対象である中間転写ベルト90に順次転写する転写手段としての一次転写ローラ45(K、C、M、Y)と、転写された後に感光体41(K、C、M、Y)の表面に残留しているトナーを除去するクリーニング手段としてのクリーニング装置46(K、C、M、Y)とが設けられている。
【0064】
ここで、各有機ELアレイラインヘッド101(K、C、M、Y)は、それぞれのアレイ方向が感光体ドラム41(K、C、M、Y)の母線に沿うように設置されている。そして、各有機ELアレイラインヘッド101(K、C、M、Y)の発光エネルギーピーク波長と、感光体41(K、C、M、Y)の感度ピーク波長とが略一致するように設定されている。
【0065】
現像装置44(K、C、M、Y)は、例えば、現像剤として非磁性一成分トナーを用いるもので、その一成分現像剤を例えば供給ローラで現像ローラへ搬送し、現像ローラ表面に付着した現像剤の膜厚を規制ブレードで規制し、その現像ローラを感光体41(K、C、M、Y)に接触させあるいは押圧せしめることにより、感光体41(K、C、M、Y)の電位レベルに応じて現像剤を付着させ、トナー像として現像するものである。
【0066】
このような4色の単色トナー像形成ステーションにより形成された黒、シアン、マゼンタ、イエローの各トナー像は、一次転写ローラ45(K、C、M、Y)に印加される一次転写バイアスによって中間転写ベルト90上に順次一次転写される。そして、中間転写ベルト90上で順次重ね合わされてフルカラーとなったトナー像は、二次転写ローラ66において用紙等の記録媒体Pに二次転写され、さらに定着部である定着ローラ対61を通ることで記録媒体P上に定着され、その後、排紙ローラ対62によって装置上部に形成された排紙トレイ68上に排出される。
【0067】
なお、図10中の符号63は多数枚の記録媒体Pが積層保持されている給紙カセット、64は給紙カセット63から記録媒体Pを一枚ずつ給送するピックアップローラ、65は二次転写ローラ66の二次転写部への記録媒体Pの供給タイミングを規定するゲートローラ対、66は中間転写ベルト90との間で二次転写部を形成する二次転写手段としての二次転写ローラ、67は二次転写後に中間転写ベルト90の表面に残留しているトナーを除去するクリーニング手段としてのクリーニングブレードである。
このように、図10の画像形成装置は、露光手段(書き込み手段)としてELアレイラインヘッド101(K、C、M、Y)を用いているので、例えばレーザ走査光学系を用いた場合に比べ、装置の小型化を図ることができる。
【0068】
次に、本発明に係る画像形成装置の第2の実施の形態について説明する。図11は画像形成装置の縦断側面図である。図11において、画像形成装置160には主要構成部材として、ロータリ構成の現像装置161、像担持体として機能する感光体ドラム165、前記ラインヘッド(有機ELアレイヘッド)が設けられてなる像書込手段(露光手段)167、中間転写ベルト169、用紙搬送路174、定着器の加熱ローラ172、給紙トレイ178が設けられている。
【0069】
現像装置161は、現像ロータリ161aが軸161bを中心として矢印A方向に回転するよう構成されたものである。現像ロータリ161aの内部は4分割されており、それぞれイエロー(Y)、シアン(C)、マゼンタ(M)、ブラック(K)の4色の像形成ユニットが設けられている。162a〜162dは、前記4色の各像形成ユニットに配置されており、矢印B方向に回転する現像ローラ、163a〜163dは、矢印C方向に回転するトナ−供給ローラである。また、164a〜164dはトナーを所定の厚さに規制する規制ブレードである。
【0070】
図11中符号165は、前記のように像担持体として機能する感光体ドラム、166は一次転写部材、168は帯電器である。また、167は本発明における露光手段となる像書込手段であり、本発明の有機ELラインヘッドを備えてなるものである。感光体ドラム165は、図示を省略した駆動モータ、例えばステップモータにより、現像ローラ162aとは逆の方向となる矢印D方向に回転駆動されるようになっている。なお、像書込手段167を構成する有機ELラインヘッドは、これと結像レンズ(図示せず)や感光ドラム165との間で位置合わせ(光軸合わせ)がなされた状態に配設されている。
【0071】
中間転写ベルト169は、駆動ローラ170aと従動ローラ170bとの間に張架されたものである。駆動ローラ170aは、前記感光体ドラム165の駆動モータに連結されたもので、中間転写ベルト169に動力を伝達するようになっている。すなわち、該駆動モータの駆動により、中間転写ベルト169の駆動ローラ170aは感光体ドラム165とは逆の方向となる矢印E方向に回動するようになっている。
【0072】
用紙搬送路174には、複数の搬送ローラと排紙ローラ対176などが設けられており、用紙が搬送されるようになっている。中間転写ベルト169に担持されている片面の画像(トナー像)が、二次転写ローラ171の位置で用紙の片面に転写されるようになっている。二次転写ローラ171は、クラッチによって中間転写ベルト169に離当接されるようになっており、クラッチオンで中間転写ベルト169に当接され、用紙に画像が転写されるようになっている。
【0073】
上記のようにして画像が転写された用紙は、次に、定着ヒータHを有する定着器で定着処理がなされる。定着器には、加熱ローラ172、加圧ローラ173が設けられている。定着処理後の用紙は、排紙ローラ対176に引き込まれて矢印F方向に進行する。この状態から排紙ローラ対176が逆方向に回転すると、用紙は方向を反転して両面プリント用搬送路175を矢印G方向に進行する。177は電装品ボックス、178は用紙を収納する給紙トレイ、179は給紙トレイ178の出口に設けられているピックアップローラである。
【0074】
用紙搬送路において、搬送ローラを駆動する駆動モータとしては、例えば低速のブラシレスモータが用いられている。また、中間転写ベルト169については、色ずれ補正などが必要となるためステップモータが用いられている。これらの各モータは、図示を省略した制御手段からの信号によって制御されるようになっている。
【0075】
図11に示した状態で、イエロー(Y)の静電潜像が感光体ドラム165に形成され、現像ローラ162aに高電圧が印加されることにより、感光体ドラム165にはイエローの画像が形成される。イエローの裏側および表側の画像がすべて中間転写ベルト169に担持されると、現像ロータリ161aが矢印A方向に90度回転する。
【0076】
中間転写ベルト169は1回転して感光体ドラム165の位置に戻る。次に、シアン(C)の2面の画像が感光体ドラム165に形成され、この画像が中間転写ベルト169に担持されているイエローの画像に重ねて担持される。以下、同様にして現像ロータリ161の90度回転、中間転写ベルト169への画像担持後の1回転処理が繰り返される。
【0077】
4色のカラー画像担持には中間転写ベルト169は4回転して、その後さらに回転位置が制御されて二次転写ローラ171の位置で用紙に画像を転写する。給紙トレー178から給紙された用紙を搬送路174で搬送し、二次転写ローラ171の位置で用紙の片面に前記カラー画像を転写する。片面に画像が転写された用紙は前記のように排紙ローラ対176で反転されて、搬送径路で待機している。その後、用紙は適宜のタイミングで二次転写ローラ171の位置に搬送されて、他面に前記カラー画像が転写される。ハウジング180には、排気ファン181が設けられている。
【0078】
このような図10、図11に示した画像形成装置80、160においては、図1に示したような本発明のラインヘッド(有機ELアレイヘッド)が露光手段として備えられている。
したがって、これら画像形成装置80、160にあっては、前述したように発光素子間での位置ずれが無く、さらに位置合わせマークと前記発光素子との間での位置ずれも無いラインヘッドを露光手段としているので、特に図10に示したタンデム型の画像形成装置80において、4つのラインヘッドを用いる場合にも、前記位置合わせマークを用いてそれぞれの相対位置を合わせることにより、色ずれを確実に防止することができる。
【0079】
また、図11に示したようにラインヘッドを一つしか用いない画像形成装置160の場合であっても、ラインヘッドを組み込む際、前記の位置合わせマークを用いることにより、このラインヘッドと結像レンズや感光ドラムとの間で位置合わせ(光軸合わせ)を容易にしかも精度良く行うことができる。
なお、本発明のラインヘッドを備えた画像形成装置は前記実施形態に限定されることなく、種々の変形が可能である。
【図面の簡単な説明】
【0080】
【図1】本発明のラインヘッドの一実施形態を示す模式図である。
【図2】(a)はラインヘッドの要部側断面図、(b)は模式図である。
【図3】(a)は封止基板の平面図、(b)はラインヘッドの側面図である。
【図4】有機EL装置の製造方法を工程順に説明する断面図である。
【図5】図4に続く工程を説明するための断面図である。
【図6】図5に続く工程を説明するための断面図である。
【図7】図6に続く工程を説明するための断面図である。
【図8】図7に続く工程を説明するための断面図である。
【図9】本発明のラインヘッドの他の実施形態を示す模式図である。
【図10】本発明の画像形成装置の第1の実施形態を示す概略構成図である。
【図11】本発明の画像形成装置の第2の実施形態を示す概略構成図である。
【符号の説明】
【0081】
1…ラインヘッド、2…素子基板、3…有機EL素子、3A…発光素子列、
4…駆動素子、6…位置合わせマーク、10…位置合わせマーク、
80、160…画像形成装置
【技術分野】
【0001】
本発明は、画像形成装置において露光手段として用いられるラインヘッドと、これを備えた画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、高速高画質のプリンタ(画像形成装置)として、一般にレーザプリンタと呼ばれるレーザスキャナ方式のものが知られている。ところが、近年では高速高画質化が益々要求されるとともに、プリンタ自体の小型化も要求されるようになってきている。
このような要求に応えるものとして、LEDプリンタヘッドを使用したタンデム型のカラー電子写真プリンタが提供されている。このプリンターでは、レーザプリンタで用いられているポリゴンミラーのような回転機構部が無いため、さらなる高速化や小型化が可能になっている。
【0003】
しかしながら、このLEDプリンタヘッドは、支持基板上に複数のLEDチップアレイを固着したものであり、したがって固着したLEDチップアレイ間で位置ずれが生ずるおそれがある。特にタンデム型のカラー電子写真プリンタでは、通常前記のLEDプリンタヘッドを4つ使用するが、これらLEDプリンタヘッドに前記の位置ずれがある場合、結果的に色ずれを生じてしまうといった問題がある。
【0004】
このような背景のもとに、記録した画像から画像ずれを検知する検知手段を備え、この検知手段で得られたデータを基にして修正を加えるようにした、カラー画像形成装置が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【特許文献1】特開平10−104909号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、このように画像ずれを検知する検知手段を備えるのでは、装置が複雑化してコスト高を招いてしまい、さらに小型化を妨げる一因にもなってしまう。
本発明は前記事情に鑑みてなされたもので、その目的とするところは、画像形成装置の複雑化や大型化を招くことなく、例えばタンデム型の場合における色ずれを防止したラインヘッドと、これを備えた画像形成装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明のラインヘッドは、素子基板上に、複数のEL素子を配列してなる発光素子列と、前記EL素子を駆動させる駆動制御手段の少なくとも一部とを一体形成したラインヘッドであって、前記素子基板上に、位置合わせ用マークを形成したことを特徴としている。
このラインヘッドによれば、素子基板上に直接発光素子列を形成しているので、支持基板上にチップアレイを固着する場合と異なり発光素子間での位置ずれが無く、さらに、素子基板上に位置合わせマークも直接形成されているので、該位置合わせマークと前記発光素子との間での位置ずれも無い。したがって、特にタンデム型のカラー画像形成装置において4つのラインヘッドを用いる場合にも、前記位置合わせマークを用いてそれぞれの相対位置を合わせることにより、各ラインヘッドの発光素子が前記位置合わせマークを基準に位置合わせされるようになり、したがって色ずれが防止される。また、ラインヘッドを一つしか用いない場合であっても、通常はこれを画像形成装置に組み込む際、結像レンズや感光ドラムとの間で位置合わせ(光軸合わせ)を行う必要があるが、その場合にも、前記の位置合わせマークを用いることで、容易にしかも精度良く位置あわせを行うことが可能になる。
【0007】
また、前記ラインヘッドにおいては、前記位置合わせマークが、フォトリソグラフィー技術によって形成されてなるのが好ましい。
このようにすれば、位置合わせマークをより精度良く形成することが可能になるとともに、EL素子や駆動素子の構成要素の形成をフォトリソグラフィー技術で行う際、前記構成要素用の材料によって同じ工程で位置合わせマークを形成することが可能になる。
【0008】
また、前記ラインヘッドにおいては、前記位置合わせマークが、EL材料によって形成されてなるのが好ましく、その場合に、このEL材料は液滴吐出法によって所定位置に配されることで形成されるのが好ましい。
このようにすれば、EL素子を形成する工程において位置合わせマークを同時に形成することが可能になり、工程の増加を抑えることで生産性を向上することができるとともに、コストアップを抑えることがでできる。
また、EL材料を液滴吐出法で所定位置に配するようにすることで、工程をさらに簡略化することができる。
【0009】
また、前記ラインヘッドにおいては、前記位置合わせマークが、前記発光素子列を構成するEL素子とは別に形成されたダミーのEL素子にからなるのが好ましい。
このようにすれば、EL素子を形成する工程において位置合わせマークを同時に形成することが可能になり、工程の増加を抑えることで生産性を向上することができるとともに、コストアップを抑えることがでできる。
また、特にこのダミーのEL素子についても、発光をなすように配線をしておけば、位置合わせ時にこのダミーのEL素子の発光を利用することができる。
【0010】
本発明の画像形成装置は、露光手段として、前記のラインヘッドを備えたことを特徴としている。
この画像形成装置によれば、前述したように発光素子間での位置ずれが無く、さらに位置合わせマークと前記発光素子との間での位置ずれも無いラインヘッドを露光手段としているので、特にタンデム型のものであって、4つのラインヘッドを用いる場合にも、前記位置合わせマークを用いてそれぞれの相対位置を合わせることにより、各ラインヘッドの発光素子が前記位置合わせマークを基準に位置合わせされるようになり、したがって色ずれが防止される。また、ラインヘッドを一つしか用いないものの場合であっても、ラインヘッドを組み込む際、前記の位置合わせマークを用いることにより、このラインヘッドと結像レンズや感光ドラムとの間で位置合わせ(光軸合わせ)を容易にしかも精度良く行うことが可能になる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、本発明を詳しく説明する。
まず、本発明のラインヘッドについて説明する。図1は本発明のラインヘッドの一実施形態を模式的に示す図であり、図1中符号1はラインヘッドである。このラインヘッド1は、後述する画像形成装置の露光手段として用いられるもので、長細い矩形の素子基板2上に、複数の有機EL(エレクトロルミネセンス)素子3を配列してなる発光素子列3Aと、前記有機EL素子3を駆動させる駆動素子4からなる駆動素子群と、これら駆動素子4(駆動素子群)の駆動を制御する制御回路群5とを一体形成したものである。また、前記素子基板2上には、有機EL素子3を配列してなる発光素子列3Aの外側、すなわち列の先端側と後端側に、それぞれ位置合わせ用マーク6が形成されている。さらに、前記素子基板2上には、前記有機EL素子3を封止した状態で、接着剤によって封止基板(図示せず)が貼着されている。
【0012】
駆動素子4には電源線7、8が接続されており、これら電源線7、8を介して電源(図示せず)から駆動素子4に電圧が印加されるようになっている。これら駆動素子4(駆動素子群)、制御回路群5、電源線7、8により、駆動制御手段が構成されている。そして、このような構成のもとに有機EL素子3は、制御回路群5によって制御された駆動素子4により、その発光動作が制御されるようになっている。なお、
【0013】
ここで、ラインヘッド1における有機EL素子3や駆動素子4等の構成について、図2(a)、(b)を参照して説明する。
素子基板2としては、図2(a)に示すように、後述する発光層で発光した光を陰極(対向電極)50側から出射する、いわゆるトップエミッション型である場合には、この素子基板2の対向側である封止基板側から発光光を取り出す構成であるので、透明基板及び不透明基板のいずれも用いることができる。不透明基板としては、例えば、アルミナ等のセラミック、ステンレススチール等の金属シートに表面酸化などの絶縁処理を施したものの他に、熱硬化性樹脂、熱可塑性樹脂などが挙げられる。
【0014】
また、発光層で発光した光を画素電極23側から出射する、いわゆるボトムエミッション型である場合には、基板2側から発光光を取り出す構成であるので、基板2としては、透明あるいは半透明のものが採用される。例えば、ガラス、石英、樹脂(プラスチック、プラスチックフィルム)等が挙げられ、特にガラス基板が好適に用いられる。本実施形態ではボトムエミッション型が採用され、したがって素子基板2には透明なガラスが用いられるものとする。
【0015】
素子基板2上には、画素電極23に接続する駆動用TFT123(駆動素子4)などを含む回路部11が形成されており、その上に有機EL素子3が設けられている。有機EL素子3は、陽極として機能する画素電極23と、この画素電極23からの正孔を注入/輸送する正孔輸送層70と、有機EL物質からなる発光層60と、陰極50とが順に形成されたことによって構成されている。ここで、有機EL素子3および駆動用TFT123(駆動素子4)を図1に対応した模式図で示すと、図2(b)に示すようになる。図2(b)において、電源線7は駆動素子4のソース/ドレイン電極に接続し、電源線8は有機EL素子3の陰極50に接続している。
そして、このような構成のもとに有機EL素子3は、図2(a)に示すように、正孔輸送層70から注入された正孔と陰極50からの電子とが発光層60で結合することにより、発光をなすようになっている。
【0016】
陽極として機能する画素電極23は、特にボトムエミッション型である場合、透明導電材料によって形成され、具体的にはITOが好適に用いられる。
正孔輸送層70の形成材料としては、特に3,4−ポリエチレンジオシチオフェン/ポリスチレンスルフォン酸(PEDOT/PSS)の分散液、すなわち、分散媒としてのポリスチレンスルフォン酸に3,4−ポリエチレンジオキシチオフェンを分散させ、さらにこれを水に分散させた分散液が好適に用いられる。
なお、正孔輸送層70の形成材料としては、前記のものに限定されることなく種々のものが使用可能である。例えば、ポリスチレン、ポリピロール、ポリアニリン、ポリアセチレンやその誘導体などを、適宜な分散媒、例えば前記のポリスチレンスルフォン酸に分散させたものなどが使用可能である。
【0017】
発光層60を形成するための材料としては、蛍光あるいは燐光を発光することが可能な公知の発光材料が用いられる。なお、本実施形態では、例えば発光波長帯域が赤色に対応した発光層が採用されるが、もちろん、発光波長帯域が緑色や青色に対応した発光層を採用するようにしてもよい。
【0018】
発光層60の形成材料として具体的には、(ポリ)フルオレン誘導体(PF)、(ポリ)パラフェニレンビニレン誘導体(PPV)、ポリフェニレン誘導体(PP)、ポリパラフェニレン誘導体(PPP)、ポリビニルカルバゾール(PVK)、ポリチオフェン誘導体、ポリメチルフェニルシラン(PMPS)などのポリシラン系などが好適に用いられる。また、これらの高分子材料に、ペリレン系色素、クマリン系色素、ローダミン系色素などの高分子系材料や、ルブレン、ペリレン、9,10−ジフェニルアントラセン、テトラフェニルブタジエン、ナイルレッド、クマリン6、キナクリドン等の低分子材料をドープして用いることもできる。
【0019】
陰極50は、前記発光層60を覆って形成されたもので、例えばCaを厚さ20nm程度に形成し、その上にAlを厚さ200nm程度に形成して積層構造の電極とし、Alを反射層としても機能させたものである。
また、この陰極50上には接着層を介して封止基板(図示せず)が貼着されている。
【0020】
また、このような有機EL素子3の下方には、前述したように回路部11が設けられている。この回路部11は素子基板2上に形成されたものである。すなわち、素子基板2の表面にはSiO2を主体とする下地保護層281が下地として形成され、その上にはシリコン層241が形成されている。このシリコン層241の表面には、SiO2及び/又はSiNを主体とするゲート絶縁層282が形成されている。
【0021】
また、前記シリコン層241のうち、ゲート絶縁層282を挟んでゲート電極242と重なる領域がチャネル領域241aとされている。なお、このゲート電極242は、図示しない走査線の一部である。一方、シリコン層241を覆い、ゲート電極242を形成したゲート絶縁層282の表面には、SiO2を主体とする第1層間絶縁層283が形成されている。
【0022】
また、シリコン層241のうち、チャネル領域241aのソース側には、低濃度ソース領域241bおよび高濃度ソース領域241Sが設けられる一方、チャネル領域241aのドレイン側には低濃度ドレイン領域241cおよび高濃度ドレイン領域241Dが設けられて、いわゆるLDD(Light Doped Drain )構造となっている。これらのうち、高濃度ソース領域241Sは、ゲート絶縁層282と第1層間絶縁層283とにわたって開孔するコンタクトホール243aを介して、ソース電極243に接続されている。このソース電極243は、電源線(図示せず)の一部として構成されている。一方、高濃度ドレイン領域241Dは、ゲート絶縁層282と第1層間絶縁層283とにわたって開孔するコンタクトホール244aを介して、ソース電極243と同一層からなるドレイン電極244に接続されている。
【0023】
ソース電極243およびドレイン電極244が形成された第1層間絶縁層283の上層には、例えばアクリル系の樹脂成分を主体とする平坦化膜284が形成されている。この平坦化膜284は、アクリル系やポリイミド系等の、耐熱性絶縁性樹脂などによって形成されたもので、駆動用TFT123(駆動素子4)やソース電極243、ドレイン電極244などによる表面の凹凸をなくすために形成された公知のものである。
【0024】
そして、ITO等からなる画素電極23が、この平坦化膜284の表面上に形成されるとともに、該平坦化膜284に設けられたコンタクトホール23aを介してドレイン電極244に接続されている。すなわち、画素電極23は、ドレイン電極244を介して、シリコン層241の高濃度ドレイン領域241Dに接続されている。
【0025】
画素電極23が形成された平坦化膜284の表面は、画素電極23と、例えばSiO2などの親液性材料を主体とする親液性制御層25と、隔壁221とによって覆われている。そして、画素電極23上には、親液性制御層25に設けられた開口部25aおよび隔壁221に設けられた開口部221aの開口内部、すなわち画素領域に、前記の正孔輸送層70と発光層60とが画素電極23側からこの順で積層されている。
【0026】
また、このような構成からなるラインヘッド1において、前記位置合わせ用マーク6は、後述するようにラインヘッド1を露光手段として画像形成装置に組み込む際、例えばラインヘッド間での相対的な位置決めや、結像レンズや感光ドラムとの間で位置合わせ(光軸合わせ)を行うときに用いるものである。この位置合わせ用マーク6は、前記の有機EL素子3の形成材料や、駆動素子4(駆動用TFT)の形成材料、さらには駆動素子4に接続する配線等の材料によって形成されたものである。その形状や大きさについては、特に限定されることなく、任意の形状・大きさに形成される。なお、形状については、一般的に位置合わせマークとして用いられる、+形などが採用可能である。
【0027】
また、特に本実施形態においては、素子基板2が透明のガラスからなっているため、位置合わせマーク6としては、非透明の材料によって形成するのが好ましい。具体的には、前記有機EL素子3の形成材料であるEL材料、すなわち発光層60や正孔注入層70の形成材料で形成するのが好ましい。また、これ以外にも、陰極50の材料となる金属(Al)や陰極50に接続する陰極電源配線(図示せず)の材料となる金属(Al)、さらには駆動素子4のゲート電極、ソース電極、ドレイン電極、またはこれに接続する配線用の金属(Al)によって形成するようにしてもよい。さらに、透明ではあっても、素子基板2を形成するガラスと透過率が異なるもの、好ましくはガラスより低いものであれば、これらの間での屈折等によって位置合わせマーク6を視認することが可能となる。なお、位置合わせマーク6の確認には、例えば光学顕微鏡等を用いることもできる。
【0028】
また、このような位置合わせマーク6については、特に反射率の低い材料からなっているのが好ましい。これは、ラインヘッド1によって露光を行うべく、有機EL素子3を発光させた際、その光が前記位置合わせマーク6で反射・散乱し、不要な漏れ光となってしまうことで露光精度が低下するのを防止するためである。このような理由からも、位置合わせマーク6については、EL材料によって形成するのが好ましい。
【0029】
なお、この位置合わせマーク6は、図3(a)に示すような透明な封止基板9を、図3(b)に示すように透明な封止接着剤を介して素子基板2上に貼着する場合に、封止基板9側に形成した位置合わせマーク10に重ね合わせるためのものとして利用することもできる。その場合に、透明な封止基板9を透して見える位置合わせマーク6(図1参照)、すなわち位置合わせマーク10と重ね合った位置合わせマーク6が、前述したようにラインヘッド1を露光手段として画像形成装置に組み込む際の、位置合わせマークとして機能するようになる。
【0030】
次に、このような構成のラインヘッド1の製造方法の一例を説明する。
まず、図4(a)に示すように、素子基板2の表面に、下地保護層281を形成する。次に、下地保護層281上に、ICVD法、プラズマCVD法などを用いてアモルファスシリコン層501を形成し、その後、レーザアニール法又は急速加熱法により結晶粒を成長させてポリシリコン層とする。
【0031】
次いで、図4(b)に示すように、ポリシリコン層をフォトリソグラフィ法によりパターニングし、島状のシリコン層241、251および261を形成する。これらのうちシリコン層241は、表示領域内に形成され、画素電極23に接続される駆動用TFT123を構成するものであり、シリコン層251、261は、走査線駆動回路80に含まれるPチャネル型およびNチャネル型のTFT(駆動回路用TFT)をそれぞれ構成するものである。
【0032】
次に、プラズマCVD法、熱酸化法などにより、シリコン層241、251および261、下地保護層281の全面に厚さが約30nm〜200nmのシリコン酸化膜からなるゲート絶縁層282を形成する。ここで、熱酸化法を利用してゲート絶縁層282を形成する際には、シリコン層241、251および261の結晶化も行い、これらのシリコン層をポリシリコン層とすることができる。
【0033】
また、シリコン層241、251および261にチャネルドープを行う場合には、例えば、このタイミングで約1×1012/cm2のドーズ量でボロンイオンを打ち込む。その結果、シリコン層241、251および261は、不純物濃度(活性化アニール後の不純物にて算出)が約1×1017/cm3の低濃度P型のシリコン層となる。
【0034】
次に、Pチャネル型TFT、Nチャネル型TFTのチャネル層の一部にイオン注入選択マスク502を形成し、この状態でリンイオンを約1×1015/cm2のドーズ量でイオン注入する。その結果、図4(c)に示すように、シリコン層241及び261中に高濃度ソース領域241Sおよび261S並びに高濃度ドレイン領域241Dおよび261Dが形成される。
【0035】
次に、ゲート絶縁層282の表面全体に、ドープドシリコンやシリサイド膜、あるいはアルミニウム膜等の金属膜からなるゲート電極形成用導電層を形成する。この導電層の厚さは概ね500nm程度である。その後、フォトリソグラフィー技術により、図4(d)に示すように、Pチャネル型の駆動回路用TFTを形成するゲート電極252、画素用TFTを形成するゲート電極242、Nチャネル型の駆動回路用TFTを形成するゲート電極262を形成する。また、駆動制御信号導通部(図示せず)、陰極電源配線の第1層121も同時に形成する。
【0036】
また、特にゲート電極252等をアルミニウム膜等の金属膜から形成する場合に、すなわち、この金属膜をフォトリソグラフィー技術でパターニングし、ゲート電極252等を形成する際に、本発明における位置合わせ用マーク6を、図1に示したように素子基板2の両端部に形成するようにしてもよい。
このようにフォトリソグラフィー技術によって位置合わせマーク6を形成すれば、この位置合わせマーク6をより精度良く形成することができ、しかもゲート電極252等の形成と同じ工程でパターニングを行うことができるので、工程を増やすことなく、したがって生産性を損なうことなく容易に位置合わせマーク6を形成することができる。
【0037】
続いて、ゲート電極242,252および262をマスクとして用い、シリコン層241,251および261に対してリンイオンを約4×1013/cm2 のドーズ量でイオン注入する。その結果、ゲート電極242,252および262に対してセルフアライン的に低濃度不純物が導入され、図4(d)に示すように、シリコン層241および261中に低濃度ソース領域241bおよび261b、並びに低濃度ドレイン領域241cおよび261cが形成される。また、シリコン層251中に低濃度不純物領域251Sおよび251Dが形成される。
【0038】
次に、図5(e)に示すように、Pチャネル型の駆動回路用TFT以外の部分を覆うイオン注入選択マスク503を形成する。このイオン注入選択マスク503を用いて、シリコン層251に対してボロンイオンを約1.5×1015/cm2のドーズ量でイオン注入する。結果として、Pチャネル型駆動回路用TFTを構成するゲート電極252もマスクとして機能するため、シリコン層251中にセルフアライン的に高濃度不純物がドープされる。したがって、低濃度不純物領域251Sおよび251Dはカウンタードープされ、P型チャネル型の駆動回路用TFTのソース領域およびドレイン領域となる。
【0039】
次いで、図5(f)に示すように、素子基板2の全面にわたって第1層間絶縁層283を形成するとともに、フォトリソグラフィ法を用いて該第1層間絶縁層283およびゲート絶縁層282をパターニングすることにより、各TFTのソース電極およびドレイン電極に対応する位置にコンタクトホールCを形成する。
【0040】
次に、図5(g)に示すように、第1層間絶縁層283を覆うように、アルミニウム、クロム、タンタルなどの金属からなる導電層504を形成する。この導電層504の厚さは概ね200nmないし800nm程度である。この後、導電層504のうち、各TFTのソース電極およびドレイン電極が形成されるべき領域240a、駆動電圧導通部が形成されるべき領域(図示せず)、陰極電源配線の第2層が形成されるべき領域122aを覆うようにパターニング用マスク505を形成するとともに、該導電層504をエッチングして、図6(h)に示すソース電極243、253、263、ドレイン電極244、254、264を形成する。
【0041】
なお、前述したようにゲート電極252等を形成する工程で位置合わせマーク6を形成するのに代えて、これらソース電極243、253、263やドレイン電極244、254、264を形成する際に、すなわち、導電膜をフォトリソグラフィー技術でパターニングする際に、本発明の位置合わせマーク6を形成するようにしてもよい。このようにしても、この位置合わせマーク6をより精度良く形成することができ、しかもソース電極243、253、263やドレイン電極244、254、264等の形成と同じ工程でパターニングを行うことができるので、工程を増やすことなく、したがって生産性を損なうことなく容易に位置合わせマーク6を形成することができる。
【0042】
次いで、図6(i)に示すように、これらが形成された第1層間絶縁層283を覆う平坦化膜284を、例えば感光性アクリル系樹脂などの高分子材料によって形成する。この平坦化膜284は、約1〜2μm程度の厚さに形成するのが好ましい。なお、SiNやSiO2によって平坦化膜284を形成するようにしてもよい。
【0043】
次いで、図6(j)に示すように、平坦化膜284のうち、駆動用TFTのドレイン電極244に対応する部分を露光・現像することにより除去してコンタクトホール23aを形成する。
その後、素子基板2の全面を覆うように画素電極23となる透明導電膜を、ITO等によって形成する。そして、この導電膜をパターニングすることにより、図7(k)に示すように、平坦化膜284のコンタクトホール23aを介してドレイン電極244と導通する画素電極23を形成する。
【0044】
なお、前述したようにゲート電極252やソース電極243等を形成する工程で位置合わせマーク6を形成するのに代えて、画素電極23を形成する際に、すなわち、ITO等からなる導電膜をフォトリソグラフィー技術でパターニングする際に、本発明の位置合わせマーク6を形成するようにしてもよい。
【0045】
次いで、図7(l)に示すように、画素電極23上、および平坦化膜284上に絶縁層である親液性制御層25を形成する。なお、画素電極23においては一部が開口する態様にて親液性制御層25を形成し、開口部25aにおいて画素電極23からの正孔移動が可能となるようにしておく。
次いで、図7(m)に示すように、親液性制御層25の所定位置、詳しくは画素領域を囲む位置に樹脂等によって隔壁221を形成する。
【0046】
次いで、素子基板2の表面に、親液性を示す領域と、撥液性を示す領域とを形成する。本実施形態においては、プラズマ処理によって各領域を形成するものする。具体的には、該プラズマ処理は、予備加熱工程と、隔壁221の表面および開口部221aの壁面ならびに画素電極23の電極面23c、親液性制御層25の表面をそれぞれ親液性にする親液化工程と、隔壁221の上面および開口部221aの壁面を撥液性にする撥液化工程と、冷却工程とで構成する。
【0047】
すなわち、基材(バンクなどを含む素子基板2)を所定温度、例えば70〜80℃程度に加熱し、次いで親液化工程として大気圧下で酸素を反応ガスとするプラズマ処理(O2プラズマ処理)を行う。次いで、撥液化工程として大気圧下で4フッ化メタンを反応ガスとするプラズマ処理(CF4プラズマ処理)を行い、その後、プラズマ処理のために加熱された基材を室温まで冷却することで、親液性および撥液性が所定箇所に付与されることとなる。
【0048】
なお、このCF4プラズマ処理においては、画素電極23の電極面23cおよび親液性制御層25についても多少の影響を受けるが、画素電極23の材料であるITOおよび親液性制御層25の構成材料であるSiO2、TiO2などはフッ素に対する親和性に乏しいため、親液化工程で付与された水酸基がフッ素基で置換されることがなく、親液性が保たれる。
【0049】
次いで、正孔輸送層形成工程によって正孔輸送層70を形成する。この正孔輸送層形成工程では、液滴吐出法として、特にインクジェット法が好適に採用される。すなわち、このインクジェット法により、正孔輸送層形成材料を電極面23c上に選択的に配し、これを塗布する。その後、乾燥処理および熱処理を行い、電極23上に正孔輸送層70を形成する。正孔輸送層70の形成材料としては、例えば前記のPEDOT:PSSをイソプロピルアルコールなどの極性溶媒に溶解させたものが用いられる。
【0050】
ここで、このインクジェット法による正孔輸送層70の形成にあたっては、まず、インクジェットヘッド(図示略)に正孔輸送層形成材料を充填し、インクジェットヘッドの吐出ノズルを親液性制御層25に形成された前記開口部25a内に位置する電極面23cに対向させ、インクジェットヘッドと基材(素子基板2)とを相対移動させながら、吐出ノズルから1滴当たりの液量が制御された液滴を電極面23cに吐出する。次に、吐出後の液滴を乾燥処理し、正孔輸送層材料に含まれる分散媒や溶媒を蒸発させることにより、正孔輸送層70を形成する。
【0051】
このとき、吐出ノズルから吐出された液滴は、親液性処理がなされた電極面23c上にて広がり、親液性制御層25の開口部25a内に満たされる。その一方で、撥液処理された隔壁221の上面では、液滴がはじかれて付着しない。したがって、液滴が所定の吐出位置からずれて、液滴の一部が隔壁221の表面にかかったとしても、該表面が液滴で濡れることがなく、弾かれた液滴が親液性制御層25の開口部25a内に引き込まれる。
なお、この正孔輸送層形成工程以降では、各種の形成材料や形成した要素の酸化・吸湿を防止すべく、窒素雰囲気、アルゴン雰囲気などの不活性ガス雰囲気で行うことが好ましい。
【0052】
次いで、図8(n)に示すように、発光層形成工程による発光層60の形成を行う。発光層形成工程では、前記の正孔輸送層70の形成と同様に、液滴吐出法であるインクジェット法が好適に採用される。すなわち、インクジェット法により、発光層形成材料を正孔輸送層70上に吐出し、その後、乾燥処理および熱処理を行うことにより、隔壁221に形成された開口部221a内、すなわち画素領域上に発光層60を形成する。
【0053】
なお、前述したようにゲート電極252やソース電極243等や画素電極23を形成する工程で位置合わせマーク6を形成するのに代えて、EL材料をインクジェット法(液滴吐出法)で塗布することにより正孔輸送層70や発光層60を形成する際に、これらEL材料によって本発明の位置合わせマーク6を形成するようにしてもよい。
このようにすれば、正孔輸送層70や発光層60を形成する工程において位置合わせマーク6を同時に形成することができ、したがって工程の増加を抑えることで生産性を向上することができるとともに、コストアップを抑えることがでできる。また、EL材料を液滴吐出法で所定位置に配するようにすることで、工程を簡略化することができる。
【0054】
次いで、図8(o)に示すように、陰極層形成工程によって陰極50を形成する。この陰極50については、EL素子を効率よく発光させるため、電子注入層と導電層のような積層構造を採用するのが一般的であり、例えばアルミニウムなどの金属材料が使用可能である。なお、この陰極50の形成では、前記正孔輸送層70や発光層6の形成とは異なり、蒸着法やスパッタ法等で行うため、画素領域にのみ選択的に形成材料を配するのでなく、素子基板2のほぼ全面に形成材料が設けられることになる。そこで、本実施形態では、素子基板2と図示しないメタルマスクを位置合わせして蒸着法やスパッタ法で陰極50を成膜することにより、図8(o)に示したように基板周辺部に陰極50が形成されないようにする。
【0055】
その後、図8(p)に示すように、封止工程によって封止基板9を接着する。この封止工程では、透明な封止基板9と素子基板2との間に、透明な接着剤40を塗布し、気泡が入らないようにして封止基板9と素子基板2とを貼り合わせる。このとき、前述したように封止基板9に予め位置合わせマーク10(図3(a)参照)を形成しておき、この位置合わせマーク10を素子基板2側の位置合わせマーク6に重ね合わせることにより、素子基板2に対する封止基板9の位置決めを行うことができる。
【0056】
なお、本発明のラインヘッドは、前記実施形態に限定されることなく、本発明の要旨を逸脱しない限り種々の変更が可能である。例えば、図9に示すように前記位置合わせマーク6を、前記発光素子列3Aを構成する有機EL素子3とは別に形成されたダミーの有機EL素子によって形成するようにしてもよい。
その場合に、これらダミーの有機EL素子(位置合わせマーク6)については、例えばその配線を電源線に直接接続することにより、駆動素子4によって制御する発光素子列3Aの有機EL素子3とは別に、その発光制御を行うようにしてもよい。
【0057】
このようにすれば、有機EL素子3を形成する工程において位置合わせマーク6を同時に形成することができ、したがって工程の増加を抑えることで生産性を向上することができるとともに、コストアップを抑えることがでできる。
また、位置合わせ時に、このダミーの有機EL素子(位置合わせマーク6)の発光を利用することができることから、位置合わせをより容易にすることができる。すなわち、この位置合わせマーク6を利用して光学的な位置合わせを行う際、特に照明光が届きにくいような場合に、前記ダミーの有機EL素子を発光させることで照明光なしに位置あわせを行うことができる。
【0058】
また、前記実施形態では本発明のEL素子を、発光層を有機材料で形成する有機EL素子3によって構成したが、本発明はこれに限定されることなく、発光層を無機材料で形成する無機EL素子によって構成してもよい。また、駆動制御手段を構成する構成要素、即ち駆動素子4、制御回路群5、電源線7、8等の総てがEL素子と一体成形されている必要はなく、例えば制御回路群5を外付けの回路構成としても良く、更に他の例としては駆動素子4と制御回路群5の機能を有する単結晶シリコンによる集積回路を外付けにしても良い。この場合、図2(b)のGNDの電源線8がEL素子と一体形成されることになる。
【0059】
次に、本発明のラインヘッド1が設けられる画像形成装置について説明する。図10は、本発明の画像形成装置の第1の実施形態を示す図であり、図1中符号80は画像形成装置である。この画像形成装置80は、本発明のラインヘッドの一例となる有機ELアレイラインヘッド101K、101C、101M、101Yを、対応する同様な構成である4個の感光体ドラム(像担持体)41K、41C、41M、41Yの露光装置にそれぞれ配置したもので、タンデム方式のものとして構成されたものである。
【0060】
この画像形成装置80は、駆動ローラ91と従動ローラ92とテンションローラ93とを備え、これら各ローラに中間転写ベルト90を、図10中矢印方向(反時計方向)に循環駆動するよう張架したものである。この中間転写ベルト90に対して、感光体41K、41C、41M、41Yが所定間隔で配置されている。これら感光体41K、41C、41M、41Yは、その外周面が像担持体としての感光層となっている。
【0061】
ここで、前記符号中のK、C、M、Yは、それぞれ黒、シアン、マゼンタ、イエローを意味し、それぞれ黒、シアン、マゼンタ、イエロー用の感光体であることを示している。なお、これら符号(K、C、M、Y)の意味は、他の部材についても同様である。感光体41K、41C、41M、41Yは、中間転写ベルト90の駆動と同期して、図10中矢印方向(時計方向)に回転駆動するようになっている。
【0062】
各感光体41(K、C、M、Y)の周囲には、それぞれ感光体41(K、C、M、Y)の外周面を一様に帯電させる帯電手段(コロナ帯電器)42(K、C、M、Y)と、この帯電手段42(K、C、M、Y)によって一様に帯電させられた外周面を感光体41(K、C、M、Y)の回転に同期して順次ライン走査する本発明の有機ELアレイラインヘッド101(K、C、M、Y)とが設けられている。
【0063】
また、この有機ELアレイラインヘッド101(K、C、M、Y)で形成された静電潜像に現像剤であるトナーを付与して可視像(トナー像)とする現像装置44(K、C、M、Y)と、この現像装置44(K、C、M、Y)で現像されたトナー像を一次転写対象である中間転写ベルト90に順次転写する転写手段としての一次転写ローラ45(K、C、M、Y)と、転写された後に感光体41(K、C、M、Y)の表面に残留しているトナーを除去するクリーニング手段としてのクリーニング装置46(K、C、M、Y)とが設けられている。
【0064】
ここで、各有機ELアレイラインヘッド101(K、C、M、Y)は、それぞれのアレイ方向が感光体ドラム41(K、C、M、Y)の母線に沿うように設置されている。そして、各有機ELアレイラインヘッド101(K、C、M、Y)の発光エネルギーピーク波長と、感光体41(K、C、M、Y)の感度ピーク波長とが略一致するように設定されている。
【0065】
現像装置44(K、C、M、Y)は、例えば、現像剤として非磁性一成分トナーを用いるもので、その一成分現像剤を例えば供給ローラで現像ローラへ搬送し、現像ローラ表面に付着した現像剤の膜厚を規制ブレードで規制し、その現像ローラを感光体41(K、C、M、Y)に接触させあるいは押圧せしめることにより、感光体41(K、C、M、Y)の電位レベルに応じて現像剤を付着させ、トナー像として現像するものである。
【0066】
このような4色の単色トナー像形成ステーションにより形成された黒、シアン、マゼンタ、イエローの各トナー像は、一次転写ローラ45(K、C、M、Y)に印加される一次転写バイアスによって中間転写ベルト90上に順次一次転写される。そして、中間転写ベルト90上で順次重ね合わされてフルカラーとなったトナー像は、二次転写ローラ66において用紙等の記録媒体Pに二次転写され、さらに定着部である定着ローラ対61を通ることで記録媒体P上に定着され、その後、排紙ローラ対62によって装置上部に形成された排紙トレイ68上に排出される。
【0067】
なお、図10中の符号63は多数枚の記録媒体Pが積層保持されている給紙カセット、64は給紙カセット63から記録媒体Pを一枚ずつ給送するピックアップローラ、65は二次転写ローラ66の二次転写部への記録媒体Pの供給タイミングを規定するゲートローラ対、66は中間転写ベルト90との間で二次転写部を形成する二次転写手段としての二次転写ローラ、67は二次転写後に中間転写ベルト90の表面に残留しているトナーを除去するクリーニング手段としてのクリーニングブレードである。
このように、図10の画像形成装置は、露光手段(書き込み手段)としてELアレイラインヘッド101(K、C、M、Y)を用いているので、例えばレーザ走査光学系を用いた場合に比べ、装置の小型化を図ることができる。
【0068】
次に、本発明に係る画像形成装置の第2の実施の形態について説明する。図11は画像形成装置の縦断側面図である。図11において、画像形成装置160には主要構成部材として、ロータリ構成の現像装置161、像担持体として機能する感光体ドラム165、前記ラインヘッド(有機ELアレイヘッド)が設けられてなる像書込手段(露光手段)167、中間転写ベルト169、用紙搬送路174、定着器の加熱ローラ172、給紙トレイ178が設けられている。
【0069】
現像装置161は、現像ロータリ161aが軸161bを中心として矢印A方向に回転するよう構成されたものである。現像ロータリ161aの内部は4分割されており、それぞれイエロー(Y)、シアン(C)、マゼンタ(M)、ブラック(K)の4色の像形成ユニットが設けられている。162a〜162dは、前記4色の各像形成ユニットに配置されており、矢印B方向に回転する現像ローラ、163a〜163dは、矢印C方向に回転するトナ−供給ローラである。また、164a〜164dはトナーを所定の厚さに規制する規制ブレードである。
【0070】
図11中符号165は、前記のように像担持体として機能する感光体ドラム、166は一次転写部材、168は帯電器である。また、167は本発明における露光手段となる像書込手段であり、本発明の有機ELラインヘッドを備えてなるものである。感光体ドラム165は、図示を省略した駆動モータ、例えばステップモータにより、現像ローラ162aとは逆の方向となる矢印D方向に回転駆動されるようになっている。なお、像書込手段167を構成する有機ELラインヘッドは、これと結像レンズ(図示せず)や感光ドラム165との間で位置合わせ(光軸合わせ)がなされた状態に配設されている。
【0071】
中間転写ベルト169は、駆動ローラ170aと従動ローラ170bとの間に張架されたものである。駆動ローラ170aは、前記感光体ドラム165の駆動モータに連結されたもので、中間転写ベルト169に動力を伝達するようになっている。すなわち、該駆動モータの駆動により、中間転写ベルト169の駆動ローラ170aは感光体ドラム165とは逆の方向となる矢印E方向に回動するようになっている。
【0072】
用紙搬送路174には、複数の搬送ローラと排紙ローラ対176などが設けられており、用紙が搬送されるようになっている。中間転写ベルト169に担持されている片面の画像(トナー像)が、二次転写ローラ171の位置で用紙の片面に転写されるようになっている。二次転写ローラ171は、クラッチによって中間転写ベルト169に離当接されるようになっており、クラッチオンで中間転写ベルト169に当接され、用紙に画像が転写されるようになっている。
【0073】
上記のようにして画像が転写された用紙は、次に、定着ヒータHを有する定着器で定着処理がなされる。定着器には、加熱ローラ172、加圧ローラ173が設けられている。定着処理後の用紙は、排紙ローラ対176に引き込まれて矢印F方向に進行する。この状態から排紙ローラ対176が逆方向に回転すると、用紙は方向を反転して両面プリント用搬送路175を矢印G方向に進行する。177は電装品ボックス、178は用紙を収納する給紙トレイ、179は給紙トレイ178の出口に設けられているピックアップローラである。
【0074】
用紙搬送路において、搬送ローラを駆動する駆動モータとしては、例えば低速のブラシレスモータが用いられている。また、中間転写ベルト169については、色ずれ補正などが必要となるためステップモータが用いられている。これらの各モータは、図示を省略した制御手段からの信号によって制御されるようになっている。
【0075】
図11に示した状態で、イエロー(Y)の静電潜像が感光体ドラム165に形成され、現像ローラ162aに高電圧が印加されることにより、感光体ドラム165にはイエローの画像が形成される。イエローの裏側および表側の画像がすべて中間転写ベルト169に担持されると、現像ロータリ161aが矢印A方向に90度回転する。
【0076】
中間転写ベルト169は1回転して感光体ドラム165の位置に戻る。次に、シアン(C)の2面の画像が感光体ドラム165に形成され、この画像が中間転写ベルト169に担持されているイエローの画像に重ねて担持される。以下、同様にして現像ロータリ161の90度回転、中間転写ベルト169への画像担持後の1回転処理が繰り返される。
【0077】
4色のカラー画像担持には中間転写ベルト169は4回転して、その後さらに回転位置が制御されて二次転写ローラ171の位置で用紙に画像を転写する。給紙トレー178から給紙された用紙を搬送路174で搬送し、二次転写ローラ171の位置で用紙の片面に前記カラー画像を転写する。片面に画像が転写された用紙は前記のように排紙ローラ対176で反転されて、搬送径路で待機している。その後、用紙は適宜のタイミングで二次転写ローラ171の位置に搬送されて、他面に前記カラー画像が転写される。ハウジング180には、排気ファン181が設けられている。
【0078】
このような図10、図11に示した画像形成装置80、160においては、図1に示したような本発明のラインヘッド(有機ELアレイヘッド)が露光手段として備えられている。
したがって、これら画像形成装置80、160にあっては、前述したように発光素子間での位置ずれが無く、さらに位置合わせマークと前記発光素子との間での位置ずれも無いラインヘッドを露光手段としているので、特に図10に示したタンデム型の画像形成装置80において、4つのラインヘッドを用いる場合にも、前記位置合わせマークを用いてそれぞれの相対位置を合わせることにより、色ずれを確実に防止することができる。
【0079】
また、図11に示したようにラインヘッドを一つしか用いない画像形成装置160の場合であっても、ラインヘッドを組み込む際、前記の位置合わせマークを用いることにより、このラインヘッドと結像レンズや感光ドラムとの間で位置合わせ(光軸合わせ)を容易にしかも精度良く行うことができる。
なお、本発明のラインヘッドを備えた画像形成装置は前記実施形態に限定されることなく、種々の変形が可能である。
【図面の簡単な説明】
【0080】
【図1】本発明のラインヘッドの一実施形態を示す模式図である。
【図2】(a)はラインヘッドの要部側断面図、(b)は模式図である。
【図3】(a)は封止基板の平面図、(b)はラインヘッドの側面図である。
【図4】有機EL装置の製造方法を工程順に説明する断面図である。
【図5】図4に続く工程を説明するための断面図である。
【図6】図5に続く工程を説明するための断面図である。
【図7】図6に続く工程を説明するための断面図である。
【図8】図7に続く工程を説明するための断面図である。
【図9】本発明のラインヘッドの他の実施形態を示す模式図である。
【図10】本発明の画像形成装置の第1の実施形態を示す概略構成図である。
【図11】本発明の画像形成装置の第2の実施形態を示す概略構成図である。
【符号の説明】
【0081】
1…ラインヘッド、2…素子基板、3…有機EL素子、3A…発光素子列、
4…駆動素子、6…位置合わせマーク、10…位置合わせマーク、
80、160…画像形成装置
【特許請求の範囲】
【請求項1】
素子基板上に、複数のEL素子を配列してなる発光素子列と、前記EL素子を駆動させる駆動制御手段の少なくとも一部とを一体形成したラインヘッドであって、
前記素子基板上に、位置合わせ用マークを形成したことを特徴とするラインヘッド。
【請求項2】
前記位置合わせマークが、フォトリソグラフィー技術によって形成されてなることを特徴とする請求項1記載のラインヘッド。
【請求項3】
前記位置合わせマークが、EL材料によって形成されてなることを特徴とする請求項1記載のラインヘッド。
【請求項4】
前記位置合わせマークが、液滴吐出法によってEL材料が所定位置に配されたことで形成されたことを特徴とする請求項3記載のラインヘッド。
【請求項5】
前記位置合わせマークが、前記発光素子列を構成するEL素子とは別に形成されたダミーのEL素子にからなることを特徴とする請求項1記載のラインヘッド。
【請求項6】
露光手段として、請求項1〜5のいずれか一項に記載のラインヘッドを備えたことを特徴とする画像形成装置。
【請求項1】
素子基板上に、複数のEL素子を配列してなる発光素子列と、前記EL素子を駆動させる駆動制御手段の少なくとも一部とを一体形成したラインヘッドであって、
前記素子基板上に、位置合わせ用マークを形成したことを特徴とするラインヘッド。
【請求項2】
前記位置合わせマークが、フォトリソグラフィー技術によって形成されてなることを特徴とする請求項1記載のラインヘッド。
【請求項3】
前記位置合わせマークが、EL材料によって形成されてなることを特徴とする請求項1記載のラインヘッド。
【請求項4】
前記位置合わせマークが、液滴吐出法によってEL材料が所定位置に配されたことで形成されたことを特徴とする請求項3記載のラインヘッド。
【請求項5】
前記位置合わせマークが、前記発光素子列を構成するEL素子とは別に形成されたダミーのEL素子にからなることを特徴とする請求項1記載のラインヘッド。
【請求項6】
露光手段として、請求項1〜5のいずれか一項に記載のラインヘッドを備えたことを特徴とする画像形成装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2006−27197(P2006−27197A)
【公開日】平成18年2月2日(2006.2.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−212614(P2004−212614)
【出願日】平成16年7月21日(2004.7.21)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成18年2月2日(2006.2.2)
【国際特許分類】
【出願日】平成16年7月21日(2004.7.21)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】
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