説明

ラグ端子及び回路基板並びに電子モジュール

【課題】製造時の位置ずれを生じにくく、なおかつ半田付け時にネジ座部への半田の溢れを極力防止することの出来るラグ端子、及びこのラグ端子を用いた回路基板並びに電子モジュールを提供する。
【解決手段】 ネジ穴を有して平板により構成されるネジ座部と、前記ネジ座部から第1の仮想線方向に延在されるネック部とを備え、前記ネック部に少なくとも当該ネック部先端両側部に、前記第1の仮想線方向に直交する第2の仮想線方向にそれぞれ拡幅されて形成される拡幅部を有し、前記ネジ座部は、当該ネジ座部の厚み方向に突出する爪部を有するようラグ端子を構成し、電子モジュールの基板の孔部に前記爪部を挿入し、ランドパターンに対しては前記拡幅部を半田付けして実装する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、外部機器や導電性を有する筐体と螺合して電気的導通を行うラグ端子、及びこのラグ端子が取り付けられる回路基板並びに電子モジュールに関する。
【背景技術】
【0002】
回路基板を他の機器などにネジ止めし、このネジ止めによって回路基板を他の機器との電気的接続を図るという固定方法がよく知られている。このような固定方法において、回路基板のネジ穴に、孔部を有する所定の形状の端子を、互いの穴が一致するように合わせて半田付けし、それぞれの穴に挿通されたネジを用いて導通対象となる部材に螺合するためのラグ端子、と呼ばれるものが知られている。(例えば特許文献1 )
特許文献1に示されるラグ端子は、金属板からなり、ネジを貫通させるための開口が設けられたネジ座部と、このネジ座部から延出され先端に溶融半田を受け入れるための先端凹部が延出方向に沿った凹みとして設けられた第1延出部と、該第1延出部と平行状にネジ座部から延出され、第1延出部を間に置いて対置される2本の第2延出部とを備えている。そして第2延出部にはくびれが設けられている。
【0003】
このような特許文献1に示されるラグ端子は、プリント基板上のランドに、第1延出部、第2延出部がそれぞれ半田付けされて取り付けられ、回路基板のラグ端子側からラグ端子の開口にネジを挿通し、固定対象となる部材に螺合される。そして、第1延出部先端と第2延出部先端の半田付けにより、螺合時のネジの締付トルクにより生じるラグ端子の回転半径方向への力に抗し、螺合時にもラグ端子を回路基板からずれさせないような構造になっている。
【特許文献1】特開2005−339964号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
このようなラグ端子は、電子モジュール内の回路基板の製造ライン上において自動装着装置により装着される。特許文献1に示すラグ端子の場合、リフローを用いた半田付けが施されるが、クリーム半田を塗布した回路基板の装着面に対して、クリーム半田の表面張力のみを用いてほぼ平面で載置され、その後リフロー炉を経過するまでの間、表面張力のみにより姿勢が維持されることとなるので、振動や風などの外的要因による位置ずれを生じやすいという問題があった。さらに、第1延出部および第2延出部の先端にて半田付けがなされるが、第1延出部および第2延出部はネジ座部と直線的かつ同一平面にて繋がっているため、融解した半田が第1延出部および第2延出部の先端からネジ座部にまで伝い易い。半田がネジ座部上にまで至って固着すると、ネジ座部をネジ締めする際に、ネジ座部におけるネジ頭部の当接する領域が平面でなくなってしまい、ネジ頭部とネジ座部間に半田が残り、ネジ頭部のネジ座部への当接面積が少なくなってしまったり、ネジの挿通方向がネジ座部に対して垂直でなくなってしまったりして、規定のトルクで締め付けることが出来なくなったり、回路基板を破損してしまったりするなどの虞があった。
【0005】
本発明の目的は、製造時の位置ずれを生じにくく、なおかつ半田付け時にネジ座部への半田の溢れを極力防止することの出来るラグ端子、及びこのラグ端子を用いた回路基板並びに電子モジュールを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために本発明は、ネジ穴を有して平板により構成されるネジ座部と、ネジ座部から第1の仮想線方向に延在されるネック部とを備え、ネック部は少なくともネック部先端両側部に、第1の仮想線方向に直交する第2の仮想線方向にそれぞれ拡幅されて形成される拡幅部を有し、ネジ座部は、ネジ座部の厚み方向に突出する爪部を有することを特徴とする。
【0007】
また、本発明はネック部の第1の仮想線方向に対する幅は、拡幅部の第2の仮想線方向に対する幅よりも広いことを特徴とする。
【0008】
さらに、拡幅部の周縁の少なくとも一部は、波形に形成されていることを特徴とする。
【0009】
また、爪部は、ネジ座部を折り曲げて形成され、爪部の折り曲げ面が爪部からネジ穴の中心点を結ぶ直線に対して直交するように設けられていることを特徴とする。
【0010】
さらに爪部は、ネック部を挟んだ対称位置にそれぞれ一対形成されていることを特徴とする。
【0011】
また、一対の爪部は、一方の爪部から前記ネジ穴の中心点に結ばれる直線と、他方の爪部からネジ穴の中心点に結ばれる直線とが、中心点にて直交する関係の位置に配されていることを特徴とする。
【0012】
また、一対の爪部は、第1の仮想線方向に直交し、かつネジ穴の中心点を通る第3の仮想線よりもネック部側にいずれもが配されていることを特徴とする。
【0013】
本発明の第2の観点においては、開口を有すると共に回路パターンが形成される基板と、 開口に対して重ねあわされるネジ穴を有して平板により構成されるネジ座部と、ネジ座部から第1の仮想線方向に延在されるネック部とを有するラグ端子と、を備え、ラグ端子は、ネック部先端両側部に、第1の仮想線方向に直交する第2の仮想線方向にそれぞれ拡幅されて形成される拡幅部と、ネジ座部は、ネジ座部の厚み方向に突出する爪部を有し、基板は、爪部が挿入される孔部と、回路パターンに接続されるとともに拡幅部の先端部が半田付けされるランドとを有することを特徴とする。
【0014】
また、孔部は、スルーホールによりランドと電気的に接続されていることを特徴とする。
【0015】
本発明の第3の観点においては、開口を有すると共に少なくともグランドラインを含む複数の回路パターンが形成され、前記回路パターンに半田付けされて電子部品の実装される基板と、開口に対して重ねあわされるネジ穴を有して平板により構成されるネジ座部と、ネジ座部から第1の仮想線方向に延在されるネック部とを有するラグ端子と、を備え、ラグ端子は、ネック部先端両側部に、第1の仮想線方向に直交する第2の仮想線方向にそれぞれ拡幅されて形成される拡幅部と、ネジ座部は、ネジ座部の厚み方向に突出する爪部を有し、基板は、爪部の挿入される孔部と、グランドラインに接続されるとともに拡幅部の先端部が半田付けされるランドと、を有し、ネジ座部および開口を外部アース体にネジにより共締めすることで、電子部品のグランドラインをアースすることを特徴とする。
【0016】
さらに、孔部は、スルーホールによりグランドラインと電気的に接続されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、製造時の位置ずれを生じにくく、なおかつ半田付け時にネジ座部への半田の溢れを極力防止することの出来るラグ端子、および回路パターンの接地をより確実なものとすることの出来る回路基板、並びにグランドパターンの接地を確実にすることの出来る電子モジュールを実現することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
図1 は、本発明の実施形態に係るラグ端子を実装する電子モジュールの一例として、通信モジュール500を示す斜視図である。通信モジュール500は、例えば電波を利用した無線通信を行うために、携帯電話機や自動車に組み込まれるものである。
【0019】
通信モジュール500は、基板501と、基板501に配置された種々の電子部品502と、通信モジュール500に信号を入力又は通信モジュール500から信号を出力するためのコネクタ503及び端子504と、アンテナ素子が接続されるアンテナ用端子505とを備えている。
【0020】
基板501は、例えば硬質の樹脂をベースとしたプリント配線基板により構成されており、紙面手前側の第1の実装面501aと、紙面奥手側の第2の実装面501bとを有しており、それぞれの間には回路パターンが形成されて互いに絶縁されている複数の層を含んで構成されている。そして、互いのパターンがスルーホールを用いて連絡・導通されている。また、基板501は、例えば矩形に形成されており、4隅には開口部511が開口している。
【0021】
電子部品502は、例えばIC、キャパシタ、コンバータ、抵抗体である。電子部品502は基板501の第1の実装面501a及び第2の実装面501bに複数設けられ、基板501の多数の回路パターンにより互いに接続されて電子回路512を形成している。電子回路512は、高周波回路を含んでおり、電波を利用した無線通信を行うために、音声データ、画像データ等の各種データに対応する信号の変調及び復調を行う。例えば、電子回路512は、コネクタ503から入力された信号を変調してアンテナ用端子505に出力したり、アンテナ用端子505から入力された信号を復調してコネクタ503へ出力したりする。
【0022】
コネクタ503は、通信モジュール500が携帯電話機や自動車等に実装されたときに、他の電子モジュールと接続され、通信モジュール500と、他の電子モジュールとの間の信号の入出力を仲介するものである。コネクタ503は、他の電子モジュールに設けられた対となる不図示のコネクタと互いに嵌合することにより、当該対となるコネクタと電気的に接続されて、信号導通可能となる。コネクタ503は、例えば基板501の第1の実装面501aにおいて、他のコネクタと嵌合する方向が第1の実装面501aの向く方向になるように配置されている。
【0023】
端子504は、いわゆるテストポイントなどとも呼ばれ、コネクタ503からは出力されない電気信号の出力及び/又はコネクタ503からは電気信号を入力できない電子部品502への電気信号の入力を行うためのものであって、スルーホールにより、基板内部のそれぞれの回路パターンに導通されている。
【0024】
例えば、電子回路512が、一の電子部品502から他の電子部品502へ電気信号(情報)が出力され、その電気信号が当該他の電子部品502において処理されてコネクタ503へ出力されるように構成されている場合に、端子504は、前記一の電子部品502と前記他の電子部品502との回路パターン間に接続され、前記一の電子部品502からの信号を出力可能である。
【0025】
また、例えば、電子回路512には、メモリとしての電子部品502と、当該メモリの読み出し及び書き込みを行うプロセッサとしての電子部品502とが設けられ、プロセッサは、コネクタ503から入力された信号に基づくメモリへの書き込みは行わないが、端子504からの信号に基づくメモリへの書き込みは行う。つまり、コネクタ503からのメモリの更新よりも、高度な情報更新を行うことができる。
【0026】
そして端子504は、第1の実装面501aに複数設けられている。例えば、端子504は、コネクタ503に隣接してコネクタ503の長手方向に沿って複数列で配列されている(ただし、図1では、電子回路512を囲むシールド側壁に1〜2列が隠れており、2列のみ図示されている。)。端子504は、基板501の第1の実装面501aに形成された導電層により構成されており、第1の実装面501aの向く方向に円形に接触面を有している。端子504の接触面の面積は比較的小さく、例えば直径1mm以下である。
【0027】
アンテナ用端子505は、通信モジュール500が最終的な製品に組み込まれたときに、不図示の通信モジュール500外部のアンテナ素子と接続されるものである。アンテナ用端子505は、基板501の電子回路512とアンテナ素子との間の信号の入出力(送信信号・受信信号)を、公衆通信網に接続される基地局との間で仲介する。
【0028】
開口部511は、通信モジュール500の基板501の四隅にそれぞれ穿設されており、基板501を携帯電話機や自動車に組み込む際に、携帯電話機等の筐体等に設けられたボスや筐体等に締結されるネジなどが挿通されるものである。また、開口部511は、基板501を携帯電話機等の筐体に組み込む際に利用される位置決め孔でもある。そして、その近傍には孔部506が開口部511一つにつき二つずつ設けられている。なお、後の説明において、それぞれ個別に説明を要する場合は506a・506bという。また、開口部511および二つの孔部506の設けられる箇所の第2の実装面502b側には、それぞれ開口部511とほぼ同径のネジ穴101が形成されたラグ端子100が取り付けられている(図1では基板501左上隅に破線により一つのみ示す)。さらに基板501の第2の実装面502b側には開口部511および二つの孔部506の近傍にランドパターン507(図5参照)が設けられており、基板501の回路パターンのうちの基準電位を扱うグランドパターンに接続されている。二つの孔部506についてもそれぞれスルーホールを用いてグランドパターンに接続されている。そして、開口部511を、ラグ端子100が基板501のグランドパターンに半田付けされたのちに、ラグ端子100のネジ穴101越しにネジで止められることにより、ネジボスに施された導電塗料を経由してグランドパターンが接地される。
【0029】
図2から図4は、ラグ端子100を示す図である。まず、ラグ端子100の概略を説明する。ラグ端子100は、ネジ穴101の設けられるネジ座部P、ネジ座部Pの一部から図4のL1(第1の仮想線)に沿う方向に延在されるネック部Q、さらにネック部Qの先端(ネジ座部Pの反対側)にて、図4のL2(第2の仮想線)方向、すなわちネック部の幅方向の両側(図2、図4における左右方向)に拡幅される拡幅部Rの3つの部位にて構成される。なお、図4のL1とL2とは互いに直交する方向であることが好ましいが、拡幅部Rの拡幅方向としてはL1を中心として左右対称であれば良いため、L2がL1との交差する点にて折れ曲がる折れ線で構成され、L1に対する角度がそれぞれで均等であれば良い。
【0030】
次に、ラグ端子100の細部の説明を行う。拡幅部Rは、拡幅方向(L2)に対する幅として幅Xを有しており、拡幅部Rの周縁はN1からN4に示されるように複数の凹凸が連続形成される波形状に形成されている。また、拡幅部Rの両先端部を102a・102bとし、N2とN4との間の領域には直線部が設けられている。
【0031】
また、ネック部Qの幅Yは、拡幅部Rの拡幅方向(L2方向)に対する幅Xよりも幅広く構成されている。また、ネジ座部Pは、ネジ穴101の中心点Cよりも拡幅部R側においてラグ端子100の厚み方向(図3における紙面手前−奥方向)に突出する爪部103a・103bがネジ座部P端部から伸ばされて折り曲げることにより形成されている。つまり、ラグ端子100は1枚の板金によりネジ座部P、ネック部Q、拡幅部R、さらに爪部103a・103bが、打ち抜き・折り曲げなどにより一体に形成されている。また、爪部103a・103bは、第1の方向L1に直交し、かつネジ穴101の中心点Cを通る第3の仮想線L3よりもネック部Q側にいずれもが配されており、それぞれの位置関係はネック部Qを挟んで互いに対称となる位置に形成されている。
【0032】
次に爪部103a・103bの構成について説明を行う。爪部103a・103bはそれぞれ、ネジ座部Pに設けられるが、それぞれの位置関係は、ネジ穴101の中心Cから等しい距離に設けられる。さらに、中心Cと爪部103a・103bそれぞれを結ぶ仮想直線をL4、L5とすると、互いに直交する位置に配置されている。また、図4に示す、爪部103a・103bのネジ座部Pに対する折り曲げ線であるL6・L7は、先のL4・L5に対して直交している。つまり、中心Cを中心として爪部103a・103bを通る円の接線方向にて折り曲げを行う。すなわち折り曲げにより形成される折り曲げ面は、爪部103a・103bからネジ穴の中心点Cを結ぶ直線に対して直交するように設けられている。
【0033】
次に、通信モジュール500の基板501を製造するラインにおける、基板501に対してラグ端子100を取り付ける際の説明を図5(a)および(b)を用いて行う。
【0034】
図5(a)に示すように、基板501の第2の面501bの四隅には、開口部511および孔部506a・506b、さらにランドパターン507a・507bがそれぞれ設けられている。前述したように少なくともランドパターン507a・507bはグランドパターンと導通しており、好ましくは孔部506a・506bもグランドパターンと導通していることが好ましい。
【0035】
まず、基板501の第2の面501b側に電子部品を実装する際に、それぞれのランドにクリーム半田を塗布する。このときにランドパターン507a・507bにも不図示のクリーム半田が塗布される。
【0036】
そして、ラグ端子100を、その爪部103a・103bがそれぞれ孔部506a・506bに挿入されるように第2の面501bに載置する。なお、爪部103a・103bの折り曲げ線上の幅は、孔部506a・506bの内側の直径に略一致するよう構成されており、挿入されると半田が硬化していなくとも基板501に対するラグ端子100の位置が固定される。また、このとき、ランドパターン507a・507b上にて、未硬化状態のクリーム半田に拡幅部Rの先端部102a・102bが浸る状態となる。
【0037】
そして、この状態にて他の電子部品もマウンタにより実装された後にリフロー炉へ基板501が導かれ、半田が融解して後に冷えて硬化する。これにより図5(b)に示すようにランドパターン507a・507bと先端部102a・102bが互いに半田付けされる。
【0038】
以上のような要領により、基板501へのラグ端子100の実装が行われる。そして、通信モジュール500は、アース体として、金属製の筐体や他の電子モジュールのアース部分に対して導電材料にて形成されたネジによりラグ端子100のネジ穴101越しに基板501が螺合される。これにより、基板501のグランドパターンは、ランドパターン507、ラグ端子100、ネジを介して外部のアース体に対して接続・接地されることとなる。
【0039】
ところで、爪部103a・103bは、折り曲げ線L6、L7にて単に折り曲げるだけではなく、曲げ位置の内側に対して部分加圧処理を行うことが好ましい。部分加圧処理をしない場合、爪部103aの折り曲げ箇所の内側は、図6(a)のM1に示すように緩やかなカーブが形成されてしまう場合もあり、図7のように孔部506aに爪部103aが差し込まれたときに孔部506aの縁にて浮いてしまう場合がある。これに対し、部分加圧処理を施しておくことにより、図6(b)に示すように曲げ位置の内側がM2のように直角を形成できるため、基板501に対して爪部103aの根元が浮くことなく、ラグ端子100全体を密着させることが出来る。
【0040】
また、電子機器500は、ネジ穴101に導電性を有するネジが挿入され、ネジ座部Pと基板501の開口部511とを他の電子機器や金属製の筐体などに対して共締めされることとなるが、そのときにネジ座部Pに対してネジの頭部などが当接したままネジが回転されると、ネジ座部Pに対してネジの回転トルクが伝達されてしまう。つまりネジによる共締め時に基板501に対してネジ座部Pが回転方向にずれる力が働くこととなる。そのため、爪部103a・103bは、図4にて説明したように、互いの折り曲げ角度が直角になるよう構成することが好ましい。一般的に、平板構成される部材において、応力に抗する力は折り曲げ線方向が最も強いため、爪部103a・103bは互いに直交する向きのベクトルの抗力を有することが出来る。つまり互いに直交する成分の抗力が得られる。
【0041】
特に図4で示す構成の場合には、ネジの回転により生じる円方向のモーメントに対する接線方向へ生じるベクトルに対する抗力を大きくとることが出来る。すなわち、仮に図8(a)のように互いに直交しない方向で折り曲げて爪部を形成した場合、破線にて示す方向のネジの回転により生じる力のベクトルはそれぞれの爪部において実線矢印にて示す方向に生じるが、この場合、それぞれの爪部における力の向きは点線矢印にて示すように、平板状の爪部においては抗力の強い折り曲げ線方向のベクトルだけではなく、抗力の弱い爪部の平板厚み方向への力を受けることとなってしまう。
【0042】
これに対して、図4に示した構成の場合は図8(b)に示すごとく、ネジにより生じる回転モーメント(実線矢印の示すベクトル成分)がそれぞれの爪部における折り曲げ線方向に一致し、爪部の平板厚み方向へのベクトル成分がほとんど生じない。よって、図8(a)に示す例の場合に比して図8(b)に示す例の場合の方が回転モーメントに対する抗力を非常に大きくとることが出来る。これにより、ネジによる共締めを行う際、拡幅部Rの先端部102a・102bによる半田接合との間で回転モーメントを分散させることが出来るため、基板501に対するラグ端子100のずれをより生じにくくすることが出来る。
【0043】
ラグ端子100のネジ座部Pにラグ端子100の厚み方向(図3における紙面手前−奥方向)に突出する爪部103a・103bが形成されることにより、基板501に対するラグ端子100の位置決めが容易となり、風や振動のために半田付け前後でもラグ端子100の位置が変化するということを無くすことができる。
【0044】
また、拡幅部Rが、ネック部Qの延在される方向に対して直交する方向にて拡幅し、その拡幅先端部の両側102a・102bにて半田付けされるため、ネジ回転方向に生じるモーメントから見たとき、その回転円に対する接線方向に連続して半田付けされる箇所が生じることとなり、極力少ない半田にて強力な回転に対する抗力を得ることが出来る。加えて爪部103a・103bにて回転モーメントを分散させてさらに回転に伴うずれに対する抗力を得ることが出来る。さらに、半田付けする箇所である先端部102a・102bがいずれもネジ座部Pとはネック部Qにより直接隣接しないように形成されているため、先端部102a・102bとネジ座部Pとの距離を長く取ることが出来、リフロー時に融解した半田は、先端部102a・102bから直角にネック部Qを回り込まなければならないためネジ座部Pにまで至りにくい。よって、ネジ座部P上、あるいはネジ座部Pと基板501との間に回りこんで固着することを防止することとなり、ネジ座部Pの表裏面に異物(半田)が付着することがないために、表裏面を平らとすることが出来る。
【0045】
すなわち、次のようなトラブルを回避することが出来る。
【0046】
(1)ネジ頭部とネジ座部Pとの間に半田が残っていた場合にネジ座部Pに対しネジを締めた際に、ネジ頭部のネジ座部Pへの当接面積が少なくなってしまうため、ネジ頭部の回転規制力が当接面積の多い場合に比べて弱くなり、振動などによる緩みが生じやすくなったり、そもそもネジ頭部の当接面積が不安定なことから締め付け時の規定のトルクを安定的に満たすことも難しくなったりする。
【0047】
(2)一般的にネジは、ネジ頭部の被螺合物への対向面とネジの挿通方向は直交しているため、基板501の第1の実装面501aおよびラグ端子100のネジ座部Pは、開口部511の貫通方向や不図示のアース体の雌ネジの深さ方向と直交して形成されている。しかしながらネジ座部の表面に半田が溢れて固着した場合には、ネジ締め時にネジ頭部とネジ座部Pとの間に半田による凹凸が生じ、ネジ頭部の被螺合物対抗面が半田に当接する。半田がネジ穴101の全周に均等に付着していれば問題ないが一部にのみ付着していた場合にはネジ穴101周縁面に傾斜が形成されてしまう。この状態でネジを締め込むと、ネジ被螺合物対抗面がこの半田により形成される傾斜面に一致しようとする方向(挿通方向に対して一致しない方向)の想定外のベクトルが生じる。しかしながらネジの挿通方向(雌ネジの深さ方向)は規定されているため、ネジ頭部が半田の傾斜に面で当接するまで強く締め付けると、想定外のベクトルにより開口部511の一部に偏った力が加わり破損したり、ネジ座部Pの半田付着部のみに集中的に力が加わって凹んだり、さらにはアース体の雌ネジが割れたりする問題が生じる場合がある。この状態はネジ座部Pと基板501の第1の実装面501aとの間に半田が入り込んで固着した場合にも同様に生じる可能性がある。
【0048】
また、ネック部Qの幅Yは、拡幅部Rの拡幅方向(L2方向)に対する幅Xよりも幅広く構成されていることにより、拡幅部Rの先端部の半田が融解してラグ端子100表面を表面張力により伝う際に、拡幅部Rの幅Xよりもネック部Qの幅Yの方が広いために毛細管現象を生じにくく、ネジ座部Pにまで融解半田が至る可能性をより低めることが出来る。すなわち幅Yが幅Xに対して充分に広ければ、ネック部Qにて表面張力が弱まるため、ネジ座部Pの領域にまで半田が至りにくく、ネジ座部Pにて半田が固着することを防ぐことが出来る。
【0049】
ところで、二つの異物を半田付けする際の固着力について図9にて説明する。図9(a)は、基板501上のランドパターン507に先端部102aを半田付けする際の半田の状態を斜線領域にて示す概略図である。ラグ端子100に、基板501に対してスライドする方向の力が加わるとき、抵抗するために有効に働く半田は破線円S1にて示される領域である。つまり、実線円S2にて示す境界線を挟んで隣接する先端部102aの側面部分とランドパターン507の上面との間に裾野状に盛られる半田にて、先端部102aの側面部分がランドパターン507の上面部を移動しないよう規制することが出来る。すなわち、この半田付けされる異物間の境界線の長さに応じて抗力を大きくすることが出来ると言える。本発明によるラグ端子100は、ランドパターン507(ランドパターン507a)に半田付けされる際には、図9(b)に示すように拡幅部Rの先端部102(先端部102a)の周縁を波形状に形成しているため、境界線は点線Tのようにやはり波形状に長い距離がなされる。よって、半田付けされる部分の周縁を直線にて形成する場合に比べて、図9(a)における破線円S1に示される半田領域を少しでも長くとることが出来るため、ラグ端子100のずれに対する抗力を大きくすることが出来る。すなわち、拡幅部Rの周縁はN1からN4に示されるように複数の凹凸が連続形成される波形状に形成されているため、先端部102a・102bがリフローにより半田付けされる際に、基板501のランドパターン507a・bとの間の境界線を長くとることが出来、固着力を高めることが出来る。また、拡幅部Rの両先端部を102a・102bとし、N2とN4との間の領域に直線部を設けておくことにより、ラグ端子100を自動実装機にて基板501上にマウントした後に、画像認識装置により実装位置の確認を行う際、被実装部品に直線部分が多く設けられていると基準位置を特定しやすいため、正確な実装位置との比較精度を高くすることが出来、不良品の発見精度を高めることも出来る。
【0050】
また、爪部103a・103bが、ネジ穴101の中心点Cとの間で結ばれる直線に対して直交する線にて前記ネジ座部の一部を折り曲げて形成されるため、ネジが締め付けられる際のラグ端子100のずれが生じにくくなる。
【0051】
さらに、ネック部Qを挟み、対称となる位置に爪部103a・103bそれぞれ形成されているため、基板501に対するネジ穴101および拡幅部Rの位置決めがより容易に行えるようになる。
【0052】
さらに、爪部103a・103bは、爪部103aからネジ穴101の中心点Cに結ばれる直線と、爪部103bからネジ穴101の中心点Cに結ばれる直線とが、中心点Cにて直交する関係の位置に配されることにより、ラグ端子100のサイズを大きくすること無く、ネジ回転時における回転トルクへの抗力を極力大きくとることが出来る。さらに、基板501が鋭角に形成されていた場合などにおいても孔部506a・506bを大きく離すことなく設けることが出来るため、ラグ端子100を基板501の極力隅に配置するような実装位置の自由度が高まり、よりスペースを有効に使うことが出来る。
【0053】
また、爪部103a・103bは、第1の方向L1に直交かつネジ穴101の中心点Cを通る第3の仮想線L3よりもネック部Q側にいずれもが配されるため、基板501の極力隅に配置することが出来、設計上の自由度を高めることが出来る。
【0054】
さらに、孔部506aおよび506bがスルーホールによりグランドパターンに電気的に接続されていれば、孔部506a・506bと爪部103a・103bとが嵌合すると互いに電気的な接続がなされるため、孔部506a・506bにおいてもラグ端子100はグランドパターンに接続されるようになり、ランドパターン507a・507bのみによる電気的接続に比べて電気的容量が増加し、ネジを用いた接地時の安定性をより高めることもできる。
【0055】
以上のように構成することにより、本発明によれば、製造時の位置ずれを生じにくく、なおかつ半田付け時にネジ座部への半田の溢れを極力防止することの出来るラグ端子、および回路パターンの接地をより確実なものとすることの出来る回路基板、並びにグランドパターンの接地を確実にすることの出来る電子モジュールを実現することができる。
【0056】
なお、本発明は上述した実施形態に限定されず、種々の態様で実施してよい。
【0057】
例えば、爪部として103a・103bの二つを設ける例を示したが、二つに限定されることは無く、一つ、あるいは三つ以上であっても位置決めに有用に働くため、半田の量が少なくとも実装時におけるラグ端子100の基板501に対する位置が安定する。
【0058】
また、ネジ穴101や開口部511として円孔を示したが、円孔でなくとも例えばC字状に一部の欠ける形状の開口や、多角形にて構成される開口などであってもよい。この場合、中心Cは、挿通されるネジの回転軸の中心であることが好ましい。
【図面の簡単な説明】
【0059】
【図1】本発明の一実施形態の通信モジュールを示す外観斜視図。
【図2】本発明のラグ端子を示す正面図。
【図3】図2のラグ端子をそれぞれ異なる角度で示す斜視図。
【図4】図2のラグ端子の各構成の位置関係を示す正面図。
【図5】本発明のラグ端子の実装を基板の裏面側から示した図。
【図6】爪部と孔部の関係を示した断面図。
【図7】爪部と孔部の関係を異なる角度から示した斜視図。
【図8】二つの爪部の折り曲げ角度とネジ回転モーメントとの関係を示す図。
【図9】ランドパターンに先端部を半田付けする際の半田の状態を示す図。
【符号の説明】
【0060】
100・・・ラグ端子
101・・・ネジ穴
102a、102b・・・先端部
103a、103b・・・爪部
P・・・ネジ座部
Q・・・ネック部
R・・・拡幅部
500・・・通信モジュール
501・・・基板
506a、506b・・・孔部
507a、507b・・・ランドパターン

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ネジ穴を有して平板により構成されるネジ座部と、前記ネジ座部から第1の仮想線方向に延在されるネック部とを備え、
前記ネック部は、少なくとも当該ネック部先端両側部に、前記第1の仮想線方向に直交する第2の仮想線方向にそれぞれ拡幅されて形成される拡幅部を有し、
前記ネジ座部は、当該ネジ座部の厚み方向に突出する爪部を有することを特徴とするラグ端子。
【請求項2】
前記ネック部の前記第1の仮想線方向に対する幅は、前記拡幅部の前記第2の仮想線方向に対する幅よりも広いことを特徴とする請求項1に記載のラグ端子。
【請求項3】
前記拡幅部の周縁の少なくとも一部は、波形に形成されていることを特徴とする請求項1または2に記載のラグ端子。
【請求項4】
前記爪部は、前記ネジ座部を折り曲げて形成され、前記爪部の折り曲げ面が前記爪部から前記ネジ穴の中心点を結ぶ直線に対して直交するように設けられていることを特徴とする請求項1から3のいずれか一項記載のラグ端子。
【請求項5】
前記爪部は、前記ネック部を挟んだ対称位置に一対形成されていることを特徴とする請求項1から4のいずれか一項に記載のラグ端子。
【請求項6】
前記一対の爪部は、一方の爪部から前記ネジ穴の中心点に結ばれる直線と、他方の爪部から前記ネジ穴の中心点に結ばれる直線とが、前記中心点にて直交する関係の位置に配されていることを特徴とする請求項5に記載のラグ端子。
【請求項7】
前記一対の爪部は、前記第1の仮想線方向に直交し、かつ前記ネジ穴の中心点を通る第3の仮想線よりも前記ネック部側に配されていることを特徴とする請求項5または6に記載のラグ端子。
【請求項8】
開口を有すると共に回路パターンが形成される基板と、
前記開口に対して重ねあわされるネジ穴を有して平板により構成されるネジ座部と、当該ネジ座部から第1の仮想線方向に延在されるネック部とを有するラグ端子と、を備え、
前記ラグ端子は、
前記ネック部先端両側部に、前記第1の仮想線方向に直交する第2の仮想線方向にそれぞれ拡幅されて形成される拡幅部と、
前記ネジ座部は、当該ネジ座部の厚み方向に突出する爪部を有し、
前記基板は、
前記爪部が挿入される孔部と、
前記回路パターンに接続されるとともに前記拡幅部の先端部が半田付けされるランドと、を有する
ことを特徴とする回路基板。
【請求項9】
前記孔部は、スルーホールにより前記ランドと電気的に接続されていることを特徴とする請求項8に記載の回路基板。
【請求項10】
開口を有すると共に少なくともグランドラインを含む複数の回路パターンが形成され、前記回路パターンに半田付けされて電子部品の実装される基板と、
前記開口に対して重ねあわされるネジ穴を有して平板により構成されるネジ座部と、当該ネジ座部から第1の仮想線方向に延在されるネック部とを有するラグ端子と、を備え、
前記ラグ端子は、
前記ネック部先端両側部に、前記第1の仮想線方向に直交する第2の仮想線方向にそれぞれ拡幅されて形成される拡幅部と、
前記ネジ座部は、当該ネジ座部の厚み方向に突出する爪部を有し、
前記基板は、
前記爪部の挿入される孔部と、
前記グランドラインに接続されるとともに前記拡幅部の先端部が半田付けされるランドと、を有し、
前記ネジ座部および前記開口を外部アース体にネジにより共締めすることで、前記電子部品のグランドラインをアースする
ことを特徴とする電子モジュール。
【請求項11】
前記孔部は、スルーホールにより前記グランドラインと電気的に接続されていることを特徴とする請求項10に記載の電子モジュール。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2007−317624(P2007−317624A)
【公開日】平成19年12月6日(2007.12.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−148832(P2006−148832)
【出願日】平成18年5月29日(2006.5.29)
【出願人】(000006633)京セラ株式会社 (13,660)
【Fターム(参考)】