ラゲッジドア
【課題】アウタパネルを構成する樹脂部に発生する撓みを防止又は効果的に抑制できるラゲッジドアを得る。
【解決手段】本ラゲッジドア10では、鋼板等の金属板にプレス成形を施すことで形成されたインナパネル12の外周部にはフランジ部38が形成されており、このフランジ部38ではその厚さ方向に合成樹脂材を成形することで形成されたアウタパネル14の外周部の全域が対向している。アウタパネル14の外周部全域は対向するフランジ部38に当接した状態で固着され、これにより、アウタパネル14がインナパネル12に接合される。インナパネル12にはビード部等の剛性を補うための構造を形成できるため、インナパネル12自体剛性が高い。このインナパネル12にアウタパネル14の外周部全域を固着させて接合することで、アウタパネル14の剛性を高めて撓みの発生を防止又は効果的に抑制できる。
【解決手段】本ラゲッジドア10では、鋼板等の金属板にプレス成形を施すことで形成されたインナパネル12の外周部にはフランジ部38が形成されており、このフランジ部38ではその厚さ方向に合成樹脂材を成形することで形成されたアウタパネル14の外周部の全域が対向している。アウタパネル14の外周部全域は対向するフランジ部38に当接した状態で固着され、これにより、アウタパネル14がインナパネル12に接合される。インナパネル12にはビード部等の剛性を補うための構造を形成できるため、インナパネル12自体剛性が高い。このインナパネル12にアウタパネル14の外周部全域を固着させて接合することで、アウタパネル14の剛性を高めて撓みの発生を防止又は効果的に抑制できる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両に設けられたトランクルームの開口部を開閉するためのラゲッジドアに関する。
【背景技術】
【0002】
下記特許文献1に開示されたラゲッジドア(特許文献1ではトランクリッドと称している)では、金属製のインナパネルに接合された金属製のアウタパネルに合成樹脂材により形成されたフィニッシャが取り付けられている。このフィニッシャを取り付けるためにアウタパネルには段部が形成されており、この段部にフィニッシャの周縁が接着されて固定される。
【特許文献1】実開平5−58578号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
このように、フィニッシャがアウタパネルに接合される構成であることから、例えば、ラゲッジドアでトランクルームの開口を閉止するに際してラゲッジドアを車両の上方から押圧すると、フィニッシャのうち、厚さ方向が車両の上下方向を向く部分が撓んでしまう。
【0004】
本発明は上記事実を考慮して、アウタパネルを構成する樹脂部に発生する撓みを防止又は効果的に抑制できるラゲッジドアを得ることが目的である。
【課題を解決するための手段】
【0005】
請求項1に記載の本発明に係るラゲッジドアは、金属製のインナパネルと、合成樹脂材によって形成されると共に外周部の少なくとも一部が前記インナパネルに固着されて接合される樹脂部を有するアウタパネルと、を備えている。
【0006】
請求項1に記載の本発明に係るラゲッジドアでは、アウタパネルを構成する樹脂部はその外周部の少なくとも一部がインナパネルに接合される。
【0007】
ここで、車両走行中に気流が表面上を流れることや、見栄え(外観)等の観点などが重要視されるために、表面が全体的に滑らかな平面や湾曲面に形成されるアウタパネルに対し、インナパネルはビード等の剛性を補うための構造を設けることが容易である。このため、このように剛性を補い高めることができるインナパネルにアウタパネルを構成する樹脂部の外周部の一部又は全部が接合されることで、樹脂部は剛性が補われて高まったインナパネルに外周部の少なくとも一部が保持される。これにより、アウタパネルの樹脂部の剛性を高めることができ、外力による撓み等を防止又は効果的に抑制できる。
【0008】
なお、本発明においてアウタパネルは、その全体が樹脂部にて構成されていてもよいし、アウタパネルの一部が樹脂部で構成されていてもよい。
【0009】
請求項2に記載の本発明に係るラゲッジドアは、請求項1に記載の本発明において、前記アウタパネルのうち、車両に設けられたトランクルームの開口を閉止した閉止状態で、厚さ方向が車両の上下方向に対して交差する向きに沿う部分に前記樹脂部を適用することを特徴としている。
【0010】
請求項2に記載の本発明に係るラゲッジドアがトランクルームを閉止した状態で、アウタパネルを構成する樹脂部は、その厚さ方向が車両の上下方向に対して交差する向きに沿う。このため、トランクルームを閉止する際にアウタパネルに作用する車両上方からの荷重(外力)に対し、樹脂部自身が高い剛性を有している。これにより、このような荷重による樹脂部における撓みの発生を更に効果的に防止又は抑制できる。
【0011】
請求項3に記載の本発明に係るラゲッジドアは、請求項2に記載の本発明において、前記閉止状態で厚さ方向が前記車両の上下方向に沿うと共に、前記樹脂部の外周一部が固着されて接合される金属製のパネル上部を含めて前記アウタパネルを構成する、ことを特徴としている。
【0012】
請求項3に記載の本発明に係るラゲッジドアがトランクルームを閉止した状態でアウタパネルのうち厚さ方向が車両の上下方向に沿う部分は、金属製のパネル上部により構成される。このように、トランクルームを閉止する際にアウタパネルに作用する車両上方からの荷重(外力)が厚さ方向に作用する部分が合成樹脂材よりも高い剛性を有する金属製になることで、このような荷重によるアウタパネルでの撓みの発生を防止又は効果的に抑制できる。
【0013】
請求項4に記載の本発明に係るラゲッジドアは、請求項3に記載の本発明において、前記閉止状態で、前記車両の前後方向に沿った前記パネル上部の後端部から下方へ向けて延出されると共にランプハウスが取り付けられ、更に、前記樹脂部の外周一部が固着されて接合される延設部を備ることを特徴としている。
【0014】
請求項4に記載の本発明に係るラゲッジドアでは、金属製のパネル上部にランプハウスを取り付けるための延設部が形成される。ここで、合成樹脂材の成形に比べて金属の成形、特にプレス成形や絞り成形は高い寸法精度を有している。
【0015】
このため、金属製のパネル上部に延設部が形成されることで、ランプハウスとパネル上部との建て付け精度が向上する。しかも、この延設部にアウタパネルの樹脂部の外周一部が固着されて接合されるため、この樹脂部とランプハウスとの建て付け精度も向上する。
【0016】
請求項5に記載の本発明に係るラゲッジドアは、請求項1乃至請求項4の何れか1項に記載の本発明において、前記樹脂部の外周部に固着されて接合される金属製の固着部分の少なくとも一部は、車両に設けられたトランクルームの開口を閉止した閉止状態で、前記車両の上下方向に対して交差する向きに前記樹脂部の外周部と対向した状態で固着されることを特徴としている。
【0017】
請求項5に記載の本発明に係るラゲッジドアによれば、インナパネルのうちアウタパネルの樹脂部の外周部が固着される固着部分や、本発明が請求項3又は請求項4に従属するのであれば、パネル上部のうち樹脂部の外周部が固着される固着部分の少なくとも一部は、本ラゲッジドアがトランクルームを閉止した状態で、車両の上下方向に対して交差した向きに樹脂部の外周部と対向した状態で固着される。
【0018】
このため、トランクルームを閉止する際にラゲッジドアに作用する車両上方からの荷重等、車両上下方向に沿う荷重に対して剥離し難く、樹脂部の外周部との固着接合状態を長期に亘り良好に維持できる。
【0019】
請求項6に記載の本発明に係るラゲッジドアは、請求項1又は請求項2に記載の本発明において、前記樹脂部の外周部全域を前記インナパネルに固着させて接合することを特徴としている。
【0020】
請求項6に記載の本発明に係るラゲッジドアでは、アウタパネルを構成する樹脂部の外周部全域がインナパネルに接合され、これにより、樹脂部は外周部全体がインナパネルに強固に保持される。このため、アウタパネルの樹脂部の剛性を更に高めることができ、外力による撓み等を防止又は効果的に抑制できる。
【発明の効果】
【0021】
以上説明したように、請求項1に記載の本発明に係るラゲッジドアでは、アウタパネルを構成する樹脂部の剛性を高めて、外力による撓み等を防止又は効果的に抑制できる。
【0022】
請求項2に記載の本発明に係るラゲッジドアでは、車両上下方向の荷重に対する樹脂部自身の剛性が高いため、このような荷重による樹脂部における撓みの発生を更に効果的に防止又は抑制できる。
【0023】
請求項3に記載の本発明に係るラゲッジドアでは、アウタパネルのうち、車両上下方向の荷重が厚さ方向に作用する部分が金属製になることで、このような荷重によるアウタパネルでの撓みの発生を防止又は効果的に抑制できる。
【0024】
請求項4に記載の本発明に係るラゲッジドアでは、パネル上部及び樹脂部の各々とランプハウスとの建て付け精度を向上させることができる。
【0025】
請求項5に記載の本発明に係るラゲッジドアでは、車両上下方向に沿う荷重が作用しても樹脂部の外周部との固着部分が剥離し難く、樹脂部の外周部との固着接合状態を長期に亘り良好に維持できる。
【0026】
請求項6に記載の本発明に係るラゲッジドアは、アウタパネルを構成する樹脂部の更に剛性を高めて、外力による撓み等をより一層効果的に防止又は抑制できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0027】
<第1の実施の形態の構成>
図1には本発明の第1の実施の形態に係るラゲッジドア10を構成するインナパネル12が下方からの斜視図により示されており、図2にはラゲッジドア10を構成する樹脂部としてのアウタパネル14が上方からの斜視図により示されている。
【0028】
図1に示されるインナパネル12は、全体的に金属平板(一例としては、鋼板)をプレス成形して所望の形状に塑性変形させることにより形成されている。図1に示されるように、インナパネル12はパネル上部16を備えている。パネル上部16は、車両の後部に形成されたトランクルームの開口(図示省略)をラゲッジドア10が閉止した状態で、全体的な厚さ方向が車両の上下方向に沿うように形成されている。このパネル上部16の後端部からは連続してパネル湾曲部18が形成されている。
【0029】
このパネル湾曲部18はパネル上部16の長手方向(本ラゲッジドア10を車両に取り付けた場合の車両の左右方向)を軸方向とした軸周りに、パネル上部16の裏面側の所定位置を曲率中心として下方へ湾曲している。このパネル湾曲部18のパネル上部16とは反対側からは連続してパネル後部20が形成されている。パネル後部20は、上記のトランクルームの開口(図示省略)をラゲッジドア10が閉止した状態で、全体的な厚さ方向が車両の前後方向に沿うように形成されている。すなわち、全体的には、パネル上部16、パネル湾曲部18、パネル後部20により構成されているインナパネル12は、側面視で略L字形状に曲がった板状とされている。
【0030】
インナパネル12を構成するパネル上部16には左右一対のサービスホール22が形成されており、また、インナパネル12を構成するパネル後部20には左右一対のサービスホール24が形成されている。これらのサービスホール22、24が形成されていることで、ラゲッジドア10の軽量化が図られていると共に、インナパネル12とアウタパネル14とを接合した状態で、インナパネル12のアウタパネル14とは反対側からインナパネル12とアウタパネル14との間にアクセスでき、例えば、インナパネル12とアウタパネル14との間に配設された配線等のメンテナンスを行なえるようになっている。
【0031】
また、左側のサービスホール22、24と右側のサービスホール22、24との間ではインナパネル12にビード部26が形成されている。このビード部26は、インナパネル12とアウタパネル14とを接合した状態で、アウタパネル14の側へ向けて開口した断面凹形状にインナパネル12を形成する金属平板を塑性変形させることで形成されており、これにより、インナパネル12の厚さ方向等に沿った外力に対するインナパネル12の剛性が補われている。さらに、特に符号を付与した詳細な説明は省略するが、このビード部26以外にも、インナパネル12には適宜にビード部26のようなビード部が形成されており、予め想定された外力に対してインナパネル12が不要に変形しないようにインナパネル12の剛性が補われている。
【0032】
また、図1の一点鎖線の円Aで囲まれた部分を略車両左方から見た断面図である図3や、図1の一点鎖線の円Cで囲まれた部分を略車両前方から見た断面図である図5に示されるように、インナパネル12には縦壁部28が形成されている。縦壁部28はインナパネル12とアウタパネル14とを接合した状態でアウタパネル14とは反対側へ向けてインナパネル12の本体部分の外周部から屈曲するように形成されている。この縦壁部28からは連続して圧接部30が形成されている。この圧接部30はインナパネル12とアウタパネル14とを接合した状態で概ねアウタパネル14と対向する向きが厚さ方向とされた平板状とされている。例えば、図3や図5に示されるように、ラゲッジドア10がトランクルームの開口を閉止した際には、トランクルームの開口に沿って車体32の側に設けられたウエザストリップ34に圧接部30が圧接し、これにより、トランクルームの開口に沿って車体32とラゲッジドア10との間を封止する。
【0033】
図3や図5に示されるように、圧接部30の縦壁部28とは反対側からは連続して縦壁部36が形成されている。また、例えば、図1の一点鎖線の円Bで囲まれた部分を略車両左方から見た断面図である図4に示されるように、部位によってはパネル上部16やパネル湾曲部18、パネル後部20の外周部から直接(すなわち、縦壁部28や圧接部30を介さずに)縦壁部36が形成されている。縦壁部36はインナパネル12とアウタパネル14とを接合した状態でアウタパネル14の側へ向けて縦壁部36から屈曲するように形成されている。この縦壁部36の圧接部30とは反対側の端部からは連続してフランジ部38が形成されている。フランジ部38はインナパネル12とアウタパネル14とを接合した状態で、アウタパネル14の外周部近傍と対向するように形成されていると共に、アウタパネル14の外周部近傍との対向方向がフランジ部38の厚さ方向となるように形成されている。
【0034】
一方、図2に示されるアウタパネル14は、全体的に合成樹脂材を所望の形状に成形することにより形成されている。図2に示されるように、アウタパネル14はパネル上部42を備えている。パネル上部42はトランクルームの開口をラゲッジドア10が閉止した状態で、全体的な厚さ方向が車両の上下方向に沿うように形成されている。このパネル上部42の後端部からは連続してパネル湾曲部44が形成されている。
【0035】
このパネル湾曲部44はパネル上部42の長手方向(本ラゲッジドア10を車両に取り付けた場合の車両の左右方向)を軸方向とした軸周りに、パネル上部42の裏面側の所定位置を曲率中心として下方へ湾曲している。このパネル湾曲部44のパネル上部42とは反対側からは連続してパネル後部46が形成されている。パネル後部46は、上記のトランクルームの開口(図示省略)をラゲッジドア10が閉止した状態で、全体的な厚さ方向が車両の前後方向に沿うように形成されている。すなわち、全体的には、パネル上部42、パネル湾曲部44、パネル後部46により構成されているアウタパネル14は、側面視で略L字形状に曲がった板状とされている。
【0036】
また、アウタパネル14を構成するパネル後部46の略中央には略矩形の開口48が形成されている。さらに、パネル後部46の裏面には開口48の内周部に沿うように周壁50が形成されている。周壁50の開口48とは反対側の端部は底壁52により閉止されている。この周壁50と底壁52とで形成される有底筒状部はナンバープレート取付部54とされている。図2の一点鎖線Eで囲まれた部分を車両略左方から見た断面図である図7に示されるように、ボルト等によりナンバープレートを締結する部分に対応してインナパネル12のパネル後部20には固定部66が形成されている。この固定部66は、例えば、パネル後部20の一部を底壁52の側へ有底筒状に塑性変形させることで形成されており、この固定部66は底壁52の裏面に当接して底壁52に固着されて接合されている。ナンバープレートを固定するためのボルト等は、金属で形成されている固定部66にボルト等で締結固定されている。
【0037】
また、図2の一点鎖線Dで囲まれた部分を車両略左方から見た断面図である図6に示されるように、ナンバープレート取付部54を構成する周壁50にはランプソケット56が設けられている。このランプソケット56にはインナパネル12とアウタパネル14との接合状態でインナパネル12とアウタパネル14との間に配設された配線が接続され、ランプソケット56に装着された電球58を通電することができるようになっている。
【0038】
さらに、アウタパネル14のパネル湾曲部44の近傍では、上記のインナパネル12に支持体60が形成されている。この支持体60は基端部が溶接等によりインナパネル12に一体的に固着された一対の脚部62を備えている。これらの脚部62の先端側は当接部64により繋がっている。この当接部64はパネル上部42の裏面に一体的に固着されており、パネル湾曲部44の近傍でパネル上部42を裏面側から支持している。以上の構成のアウタパネル14はその外周部全域(全周)がフランジ部38に当接しており、アウタパネル14の外周部全域とフランジ部38との当接部分が一体的に固着され、インナパネル12とアウタパネル14とが接合されている。
【0039】
<第1の実施の形態の作用、効果>
次に、本実施の形態の作用並びに効果について説明する。
【0040】
以上の構成の本ラゲッジドア10では、アウタパネル14の全体が合成樹脂材により成形され、金属製のアウタパネルに樹脂製のパーツ(例えば、特許文献1における樹脂製のフィニッシャ)を設ける構成に比べて軽量化を図ることができ、しかも、部品点数を少なくできることから、部品コストや組み立てのコストを大幅に安価にできる。
【0041】
また、車両走行中に気流が表面上を流れることや、見栄え(外観)等の観点などからアウタパネル14は外表面が滑らかな平面や湾曲面に形成され、ビード部等の剛性を補うための構造を形成し難い。これに対して、インナパネル12は、アウタパネル14とは異なり、通常は車両の外側から見えることはない。しかも、トランクルームの開口をラゲッジドア10が閉止した状態では、インナパネル12の表面はトランクルームの内方側を向くことから、車両走行中に発生する気流に影響を与えない。
【0042】
したがって、インナパネル12は、ビード部26等、剛性を補うための構造を形成しても支障がない。このため、このように充分に剛性を補い、様々な向きからの外力に対抗しうるインナパネル12にアウタパネル14の外周部が固着されて接合されることにより、アウタパネル14の剛性を高めることができる。しかも、アウタパネル14の外周部全域をインナパネル12に固着させることでインナパネル12とアウタパネル14とを接合する構成であることから、インナパネル12とアウタパネル14との接合強度も強くなる。また、全体が合成樹脂材により形成されたアウタパネル14は、特許文献1に開示された従来構成とは異なり、樹脂製のパーツを組み付けるための切除部分をアウタパネル14に形成しなくてもよいため、アウタパネル14自体の剛性の低下を招くことがない。
【0043】
さらに、アウタパネル14はその外周部のみならず、パネル湾曲部44の近傍でパネル上部42の裏面に支持体60の当接部64が固着し、支持体60がパネル上部42の裏面側からパネル上部42を支持している。このため、インナパネル12の外周部から離間したパネル上部42のパネル湾曲部44の近傍部分でもアウタパネル14の剛性を向上でき、例えば、トランクルームの開口をラゲッジドア10が閉止した状態で、上方からアウタパネル14に外力が作用した場合でも、パネル上部42(アウタパネル14)が大きく撓んでしまうことを防止又は効果的に抑制できる。
【0044】
なお、本実施の形態は、アウタパネル14の外周部全域とフランジ部38との当接部分を一体的に固着した構成であったが、アウタパネル14は外周部の全域がフランジ部38に固着する構成でなくても、例えば、アウタパネル14は外周部のうち、所定間隔毎や予め定めた所定の部位のみをフランジ部38に固着させる構成であってもよい。
【0045】
<第2の実施の形態の構成>
次に、本発明のその他の実施の形態について説明する。なお、以下の各実施の形態を説明するにあたり、前記第1の実施の形態を含めて説明している実施の形態よりも前出の実施の形態と基本的に同一の部位に関しては、同一の符号を付与してその詳細な説明を省略する。
【0046】
図8には本発明の第2の実施の形態に係るラゲッジドア90を構成するアウタパネル92が上方からの斜視図により示されている。
【0047】
図8に示されるアウタパネル92はパネル金属部94を備えている。パネル金属部94は全体的に金属平板(一例としては、鋼板)をプレス成形して所望の形状に塑性変形させることにより形成されている。このパネル金属部94はパネル上部96とパネル湾曲部98とを備えている。
【0048】
パネル上部96は前記第1の実施の形態におけるアウタパネル14のパネル上部42に対応した部位で、パネル上部42が合成樹脂材により形成されているのに対し、パネル上部96は金属により形成されているが、パネル上部96の構造的な構成は基本的にパネル上部42と同じである。また、パネル湾曲部98は前記第1の実施の形態におけるアウタパネル14のパネル湾曲部44に対応した部位で、パネル湾曲部44が合成樹脂材により形成されているのに対し、パネル湾曲部98は金属により形成されているが、パネル湾曲部98の構造的な構成は基本的にパネル湾曲部44と同じである。
【0049】
このパネル金属部94のパネル上部96は幅方向に沿ったパネル上部96とは反対側の端部近傍(車両に取り付けられた状態では、車両前方側のパネル金属部94の端部近傍)と、長手方向両端部近傍(車両に取り付けられた状態では、車両左右方向両側のパネル金属部94の端部近傍)にヘム加工が施され、図3に対応した本実施の形態の断面図である図9や、図5に対応した本実施の形態の断面図である図10に示されるように、ヘム加工によりパネル上部96の幅方向に沿ったパネル上部96とは反対側の端部近傍と長手方向両端部とが裏面側へ折り返されることで形成されたヘム部100でインナパネル12の外周部のうち、パネル上部96の幅方向に沿ったパネル上部96とは反対側の端部近傍と長手方向両端部に対応した部分を挟み込む。これにより、パネル金属部94がインナパネル12に固定される。
【0050】
また、図8に示されるように、アウタパネル92は樹脂部としてのパネル樹脂部102を備えている。パネル樹脂部102は全体的に合成樹脂材を所望の形状に成形することにより形成されている。このパネル樹脂部102にはパネル上部42及びパネル湾曲部44が形成されていないが、パネル後部46が形成されている。また、パネル樹脂部102の外周部のうち、ラゲッジドア90がトランクルームの開口を閉止した状態で車両上方を向くパネル樹脂部102の幅方向一端部に対応して、上記のパネル金属部94には固着片104が設けられている。
【0051】
固着片104は厚さ方向がパネル上部96の厚さ方向に対して直交した向き(ラゲッジドア90がトランクルームの開口を閉止した状態では車両の前後方向)に沿った細幅板状で、パネル湾曲部98のパネル上部96とは反対側の端部から連続して形成されている。パネル樹脂部102とパネル上部96とを組み付ける際には、図6に対応した本実施の形態の断面図である図11や図7に対応した本実施の形態の断面図である図12に示されるように、パネル樹脂部102の幅方向一端部(上端部)近傍で固着片104の裏面側に固着片104が位置し、パネル樹脂部102及び固着片104の厚さ方向にパネル樹脂部102の幅方向一端部(上端部)の全域と固着片104とが対向して当接した状態で、パネル樹脂部102の幅方向一端部(上端部)の全域が固着片104に固着され、これにより、パネル樹脂部102とパネル金属部94とが一体的に接合される。
【0052】
図8の一点鎖線の円Fで囲まれた部分を略車両下方から見た断面図である図13にその一例が示されるように、パネル樹脂部102の外周部のうち、上記の幅方向一端部(上端部)を除いた部分は、インナパネル12の外周部に形成されたフランジ部38に当接しており、幅方向一端部(上端部)を除いたパネル樹脂部102の外周部全域とフランジ部38との当接部分が一体的に固着される。
【0053】
また、図11に示されるように、本ラゲッジドア90では、支持体60の他に支持体112が形成されている。支持体112は脚部114を備えている。脚部114はラゲッジドア90を車両に取り付けた際の車両の左右方向に沿って支持体60とはずれた位置で溶接等により基端部がインナパネル12に一体的に固定されている。脚部114は先端側がパネル湾曲部98のパネル上部96とは反対側の端部近傍へ向けて延ばされている。また、脚部114の基端側からの延出方向に対して直交する方向に脚部114を切った脚部114の断面形状は略L字形状とされている。この脚部114の先端部には当接部116が形成されている。当接部116はパネル湾曲部98のパネル上部96とは反対側の端部近傍でパネル上部96の裏面に当接しており、溶接等によりパネル上部96に一体的に固定されている。
【0054】
<第2の実施の形態の作用、効果>
次に、本実施の形態の作用並びに効果について説明する。
【0055】
以上の構成の本ラゲッジドア90では、前記第1の実施の形態におけるアウタパネル14のうち、パネル湾曲部44及びパネル後部46に対応する部分、すなわち、アウタパネル14のパネル上部42に対応する部分が金属製のパネル金属部94により構成される。このため、ラゲッジドア90ではパネル金属部94がパネル上部42に比べて高い剛性を有しており、パネル金属部94の厚さ方向一方の側(すなわち、ラゲッジドア90がトランクルームの開口を閉止した状態での車両上方側)からの外力で撓むことを防止又は効果的に抑制できる。
【0056】
また、アウタパネル92はパネル樹脂部102が樹脂製であるが、前記第1の実施の形態におけるアウタパネル14で言えばパネル樹脂部102はパネル後部46を構成している。このため、ラゲッジドア90がトランクルームの開口を閉止した状態ではパネル樹脂部102の厚さ方向が車両の前後方向に沿うため、パネル樹脂部102は車両上方側からの外力に対して高い剛性を有する。このため、パネル樹脂部102を含めてアウタパネル92が車両上方側からの外力で撓むことを防止又は効果的に抑制できる。
【0057】
さらに、パネル樹脂部102とパネル金属部94との接合部分は、ラゲッジドア90がトランクルームの開口を閉止した状態で、車両の前後方向にパネル樹脂部102と固着片104とが対向した部分である。このため、車両上方からの荷重がせん断するようにパネル樹脂部102とパネル金属部94との接合部分に作用する。しかも、上記のように、車両上方からの荷重ではパネル樹脂部102が撓み難いため、パネル樹脂部102とパネル金属部94との接合部分が極めて剥離し難く、長期に亘りパネル樹脂部102とパネル金属部94との接合状態を維持できる。
【0058】
また、ラゲッジドア90がトランクルームの開口を閉止した際に、厚さ方向が概ね車両の前後方向に沿うパネル樹脂部102の全体が合成樹脂材により形成される。このため、例えば、トランクルームの開口を閉止した状態で厚さ方向が車両の前後方向に沿うパネル後部を含めてアウタパネル全体を鋼板等の金属板により形成し、金属製のパネル後部に樹脂製のパーツ(例えば、特許文献1における樹脂製のフィニッシャ)を設ける構成に比べて軽量化を図ることができる。
【0059】
さらに、樹脂製のパネル樹脂部102は幅方向一端部全域がパネル金属部94の固着片104に固着され、この幅方向一端部を除いたパネル樹脂部102の外周部の全域がインナパネル12のフランジ部38に固着される。すなわち、パネル樹脂部102の外周部は、ラゲッジドア90のうち金属により形成された部分に固着されて接合される。このため、パネル樹脂部102の剛性を高い状態で維持できる。
【0060】
また、パネル金属部94の外周部のうち、ヘム加工が施されず、インナパネル12に直接固定されないパネル湾曲部98のパネル上部96とは反対側の端部は、支持体112により裏面側から支持される。これにより、パネル金属部94、ひいては、アウタパネル92の撓みを更に効果的に防止又は抑制できる。
【0061】
<第3の実施の形態の構成>
次に、本発明の第3の実施の形態について説明する。
【0062】
図14には本実施の形態に係るラゲッジドア160を構成するアウタパネル162が上方からの斜視図により示されている。
【0063】
この図に示されるアウタパネル162はパネル金属部164を備えている。パネル金属部164は全体的に金属平板(一例としては、鋼板)をプレス成形して所望の形状に塑性変形させることにより形成されており、更に、パネル上部96とパネル湾曲部98とを備えている点で前記第2の実施の形態におけるパネル金属部94と基本的に構成が同じである。但し、パネル金属部94とは異なりパネル金属部164は延設部としての延設片166を備えている。延設片166はラゲッジドア160が車両に取り付けられた状態での車両の左右方向に沿ったパネル湾曲部98の両側でパネル湾曲部98のパネル上部96とは反対側の端部から概ねパネル上部96の厚さ方向に沿うように延出されている。
【0064】
これらの延設片166には矩形の開口168が形成されている。延設片166及びその近傍部分を略車両左方から見た断面図である図15に示されるように、開口168にはカップ形状のランプハウス170が貫通した状態で配置され、ランプハウス170の開口端に形成されたフランジ部172が延設片166に固定されることで、ラゲッジドア160にランプハウス170が取り付けられる構成になっている。
【0065】
一方、図14に示されるように、本ラゲッジドア160は樹脂部としてのパネル樹脂部174を備えている。パネル樹脂部174は全体的に合成樹脂材を所望の形状に成形することにより形成され、パネル上部42及びパネル湾曲部44が形成されていないがパネル後部46が形成されている等、基本的には前記第2の実施の形態におけるパネル樹脂部102と同じ構成である。
【0066】
しかしながら、パネル樹脂部174では、パネル後部46に切除部176が形成されている。切除部176は上記の延設片166の各々に対応して形成されており、パネル金属部164とパネル樹脂部174とが接合された状態では切除部176に延設片166が入り込む。また、各切除部176からは縦壁部178が延設片166の側へ向けて延出されている。図14及び図15に示されるように、この縦壁部178の延設片166側の端部には厚さ方向に延設片166と対向する板状の固着部180が形成されている。固着部180は延設片166に当接した状態で延設片166に固着される。
【0067】
<第3の実施の形態の作用、効果>
次に、本実施の形態の作用並びに効果について説明する。
【0068】
以上の構成の本ラゲッジドア160は延設片166及び切除部176を設けた点以外は基本的に前記第2の実施の形態に係るラゲッジドア90と構成が同じであることから、本ラゲッジドア160は、基本的にラゲッジドア90と同様の作用を奏し、基本的にラゲッジドア90と同様の効果を得ることができる。
【0069】
また、上記のように、本ラゲッジドア160は、樹脂成形に比べて寸法精度等が高い金属プレス成形により形成されたアウタパネル162にランプハウス170を取り付けるための延設片166を形成した。このため、延設片166の寸法精度等が高く、したがって、パネル金属部164とランプハウス170との建て付け精度を向上できる。しかも、この0066にパネル樹脂部174側の固着部180が固着されることから、パネル樹脂部174とランプハウス170との建て付け精度を向上できる。
【図面の簡単な説明】
【0070】
【図1】本発明の第1の実施の形態に係るラゲッジドアを構成するインナパネルを下方から見た斜視図である。
【図2】本発明の第1の実施の形態に係るラゲッジドアを構成するアウタパネルを下方から見た斜視図である。
【図3】図1の一点鎖線の円Aで囲まれた部分を略車両左方から見た断面図である。
【図4】図1の一点鎖線の円Bで囲まれた部分を略車両左方から見た断面図である。
【図5】図1の一点鎖線の円Cで囲まれた部分を略車両前方から見た断面図である。
【図6】図2の一点鎖線Dで囲まれた部分を車両略左方から見た断面図
【図7】図2の一点鎖線Eで囲まれた部分を車両略左方から見た断面図
【図8】本発明の第2の実施の形態に係るラゲッジドアを構成するアウタパネルを下方から見た斜視図である。
【図9】図3に対応した本実施の形態に係るラゲッジドアの断面図である。
【図10】図5に対応した本実施の形態に係るラゲッジドアの断面図である。
【図11】図6に対応した本実施の形態に係るラゲッジドアの断面図である。
【図12】図7に対応した本実施の形態に係るラゲッジドアの断面図である。
【図13】図8の一点鎖線の円Fで囲まれた部分を略車両下方から見た断面図である。
【図14】本発明の第3の実施の形態に係るラゲッジドアを構成するアウタパネルを下方から見た斜視図である。
【図15】延設部及びその近傍部分を略車両左方から見た断面図である。
【符号の説明】
【0071】
10 ラゲッジドア
12 インナパネル
14 アウタパネル(樹脂部)
90 ラゲッジドア
92 アウタパネル
96 パネル上部
102 パネル樹脂部(樹脂部)
160 ラゲッジドア
166 延設片(延設部)
170 ランプハウス
174 パネル樹脂部(樹脂部)
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両に設けられたトランクルームの開口部を開閉するためのラゲッジドアに関する。
【背景技術】
【0002】
下記特許文献1に開示されたラゲッジドア(特許文献1ではトランクリッドと称している)では、金属製のインナパネルに接合された金属製のアウタパネルに合成樹脂材により形成されたフィニッシャが取り付けられている。このフィニッシャを取り付けるためにアウタパネルには段部が形成されており、この段部にフィニッシャの周縁が接着されて固定される。
【特許文献1】実開平5−58578号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
このように、フィニッシャがアウタパネルに接合される構成であることから、例えば、ラゲッジドアでトランクルームの開口を閉止するに際してラゲッジドアを車両の上方から押圧すると、フィニッシャのうち、厚さ方向が車両の上下方向を向く部分が撓んでしまう。
【0004】
本発明は上記事実を考慮して、アウタパネルを構成する樹脂部に発生する撓みを防止又は効果的に抑制できるラゲッジドアを得ることが目的である。
【課題を解決するための手段】
【0005】
請求項1に記載の本発明に係るラゲッジドアは、金属製のインナパネルと、合成樹脂材によって形成されると共に外周部の少なくとも一部が前記インナパネルに固着されて接合される樹脂部を有するアウタパネルと、を備えている。
【0006】
請求項1に記載の本発明に係るラゲッジドアでは、アウタパネルを構成する樹脂部はその外周部の少なくとも一部がインナパネルに接合される。
【0007】
ここで、車両走行中に気流が表面上を流れることや、見栄え(外観)等の観点などが重要視されるために、表面が全体的に滑らかな平面や湾曲面に形成されるアウタパネルに対し、インナパネルはビード等の剛性を補うための構造を設けることが容易である。このため、このように剛性を補い高めることができるインナパネルにアウタパネルを構成する樹脂部の外周部の一部又は全部が接合されることで、樹脂部は剛性が補われて高まったインナパネルに外周部の少なくとも一部が保持される。これにより、アウタパネルの樹脂部の剛性を高めることができ、外力による撓み等を防止又は効果的に抑制できる。
【0008】
なお、本発明においてアウタパネルは、その全体が樹脂部にて構成されていてもよいし、アウタパネルの一部が樹脂部で構成されていてもよい。
【0009】
請求項2に記載の本発明に係るラゲッジドアは、請求項1に記載の本発明において、前記アウタパネルのうち、車両に設けられたトランクルームの開口を閉止した閉止状態で、厚さ方向が車両の上下方向に対して交差する向きに沿う部分に前記樹脂部を適用することを特徴としている。
【0010】
請求項2に記載の本発明に係るラゲッジドアがトランクルームを閉止した状態で、アウタパネルを構成する樹脂部は、その厚さ方向が車両の上下方向に対して交差する向きに沿う。このため、トランクルームを閉止する際にアウタパネルに作用する車両上方からの荷重(外力)に対し、樹脂部自身が高い剛性を有している。これにより、このような荷重による樹脂部における撓みの発生を更に効果的に防止又は抑制できる。
【0011】
請求項3に記載の本発明に係るラゲッジドアは、請求項2に記載の本発明において、前記閉止状態で厚さ方向が前記車両の上下方向に沿うと共に、前記樹脂部の外周一部が固着されて接合される金属製のパネル上部を含めて前記アウタパネルを構成する、ことを特徴としている。
【0012】
請求項3に記載の本発明に係るラゲッジドアがトランクルームを閉止した状態でアウタパネルのうち厚さ方向が車両の上下方向に沿う部分は、金属製のパネル上部により構成される。このように、トランクルームを閉止する際にアウタパネルに作用する車両上方からの荷重(外力)が厚さ方向に作用する部分が合成樹脂材よりも高い剛性を有する金属製になることで、このような荷重によるアウタパネルでの撓みの発生を防止又は効果的に抑制できる。
【0013】
請求項4に記載の本発明に係るラゲッジドアは、請求項3に記載の本発明において、前記閉止状態で、前記車両の前後方向に沿った前記パネル上部の後端部から下方へ向けて延出されると共にランプハウスが取り付けられ、更に、前記樹脂部の外周一部が固着されて接合される延設部を備ることを特徴としている。
【0014】
請求項4に記載の本発明に係るラゲッジドアでは、金属製のパネル上部にランプハウスを取り付けるための延設部が形成される。ここで、合成樹脂材の成形に比べて金属の成形、特にプレス成形や絞り成形は高い寸法精度を有している。
【0015】
このため、金属製のパネル上部に延設部が形成されることで、ランプハウスとパネル上部との建て付け精度が向上する。しかも、この延設部にアウタパネルの樹脂部の外周一部が固着されて接合されるため、この樹脂部とランプハウスとの建て付け精度も向上する。
【0016】
請求項5に記載の本発明に係るラゲッジドアは、請求項1乃至請求項4の何れか1項に記載の本発明において、前記樹脂部の外周部に固着されて接合される金属製の固着部分の少なくとも一部は、車両に設けられたトランクルームの開口を閉止した閉止状態で、前記車両の上下方向に対して交差する向きに前記樹脂部の外周部と対向した状態で固着されることを特徴としている。
【0017】
請求項5に記載の本発明に係るラゲッジドアによれば、インナパネルのうちアウタパネルの樹脂部の外周部が固着される固着部分や、本発明が請求項3又は請求項4に従属するのであれば、パネル上部のうち樹脂部の外周部が固着される固着部分の少なくとも一部は、本ラゲッジドアがトランクルームを閉止した状態で、車両の上下方向に対して交差した向きに樹脂部の外周部と対向した状態で固着される。
【0018】
このため、トランクルームを閉止する際にラゲッジドアに作用する車両上方からの荷重等、車両上下方向に沿う荷重に対して剥離し難く、樹脂部の外周部との固着接合状態を長期に亘り良好に維持できる。
【0019】
請求項6に記載の本発明に係るラゲッジドアは、請求項1又は請求項2に記載の本発明において、前記樹脂部の外周部全域を前記インナパネルに固着させて接合することを特徴としている。
【0020】
請求項6に記載の本発明に係るラゲッジドアでは、アウタパネルを構成する樹脂部の外周部全域がインナパネルに接合され、これにより、樹脂部は外周部全体がインナパネルに強固に保持される。このため、アウタパネルの樹脂部の剛性を更に高めることができ、外力による撓み等を防止又は効果的に抑制できる。
【発明の効果】
【0021】
以上説明したように、請求項1に記載の本発明に係るラゲッジドアでは、アウタパネルを構成する樹脂部の剛性を高めて、外力による撓み等を防止又は効果的に抑制できる。
【0022】
請求項2に記載の本発明に係るラゲッジドアでは、車両上下方向の荷重に対する樹脂部自身の剛性が高いため、このような荷重による樹脂部における撓みの発生を更に効果的に防止又は抑制できる。
【0023】
請求項3に記載の本発明に係るラゲッジドアでは、アウタパネルのうち、車両上下方向の荷重が厚さ方向に作用する部分が金属製になることで、このような荷重によるアウタパネルでの撓みの発生を防止又は効果的に抑制できる。
【0024】
請求項4に記載の本発明に係るラゲッジドアでは、パネル上部及び樹脂部の各々とランプハウスとの建て付け精度を向上させることができる。
【0025】
請求項5に記載の本発明に係るラゲッジドアでは、車両上下方向に沿う荷重が作用しても樹脂部の外周部との固着部分が剥離し難く、樹脂部の外周部との固着接合状態を長期に亘り良好に維持できる。
【0026】
請求項6に記載の本発明に係るラゲッジドアは、アウタパネルを構成する樹脂部の更に剛性を高めて、外力による撓み等をより一層効果的に防止又は抑制できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0027】
<第1の実施の形態の構成>
図1には本発明の第1の実施の形態に係るラゲッジドア10を構成するインナパネル12が下方からの斜視図により示されており、図2にはラゲッジドア10を構成する樹脂部としてのアウタパネル14が上方からの斜視図により示されている。
【0028】
図1に示されるインナパネル12は、全体的に金属平板(一例としては、鋼板)をプレス成形して所望の形状に塑性変形させることにより形成されている。図1に示されるように、インナパネル12はパネル上部16を備えている。パネル上部16は、車両の後部に形成されたトランクルームの開口(図示省略)をラゲッジドア10が閉止した状態で、全体的な厚さ方向が車両の上下方向に沿うように形成されている。このパネル上部16の後端部からは連続してパネル湾曲部18が形成されている。
【0029】
このパネル湾曲部18はパネル上部16の長手方向(本ラゲッジドア10を車両に取り付けた場合の車両の左右方向)を軸方向とした軸周りに、パネル上部16の裏面側の所定位置を曲率中心として下方へ湾曲している。このパネル湾曲部18のパネル上部16とは反対側からは連続してパネル後部20が形成されている。パネル後部20は、上記のトランクルームの開口(図示省略)をラゲッジドア10が閉止した状態で、全体的な厚さ方向が車両の前後方向に沿うように形成されている。すなわち、全体的には、パネル上部16、パネル湾曲部18、パネル後部20により構成されているインナパネル12は、側面視で略L字形状に曲がった板状とされている。
【0030】
インナパネル12を構成するパネル上部16には左右一対のサービスホール22が形成されており、また、インナパネル12を構成するパネル後部20には左右一対のサービスホール24が形成されている。これらのサービスホール22、24が形成されていることで、ラゲッジドア10の軽量化が図られていると共に、インナパネル12とアウタパネル14とを接合した状態で、インナパネル12のアウタパネル14とは反対側からインナパネル12とアウタパネル14との間にアクセスでき、例えば、インナパネル12とアウタパネル14との間に配設された配線等のメンテナンスを行なえるようになっている。
【0031】
また、左側のサービスホール22、24と右側のサービスホール22、24との間ではインナパネル12にビード部26が形成されている。このビード部26は、インナパネル12とアウタパネル14とを接合した状態で、アウタパネル14の側へ向けて開口した断面凹形状にインナパネル12を形成する金属平板を塑性変形させることで形成されており、これにより、インナパネル12の厚さ方向等に沿った外力に対するインナパネル12の剛性が補われている。さらに、特に符号を付与した詳細な説明は省略するが、このビード部26以外にも、インナパネル12には適宜にビード部26のようなビード部が形成されており、予め想定された外力に対してインナパネル12が不要に変形しないようにインナパネル12の剛性が補われている。
【0032】
また、図1の一点鎖線の円Aで囲まれた部分を略車両左方から見た断面図である図3や、図1の一点鎖線の円Cで囲まれた部分を略車両前方から見た断面図である図5に示されるように、インナパネル12には縦壁部28が形成されている。縦壁部28はインナパネル12とアウタパネル14とを接合した状態でアウタパネル14とは反対側へ向けてインナパネル12の本体部分の外周部から屈曲するように形成されている。この縦壁部28からは連続して圧接部30が形成されている。この圧接部30はインナパネル12とアウタパネル14とを接合した状態で概ねアウタパネル14と対向する向きが厚さ方向とされた平板状とされている。例えば、図3や図5に示されるように、ラゲッジドア10がトランクルームの開口を閉止した際には、トランクルームの開口に沿って車体32の側に設けられたウエザストリップ34に圧接部30が圧接し、これにより、トランクルームの開口に沿って車体32とラゲッジドア10との間を封止する。
【0033】
図3や図5に示されるように、圧接部30の縦壁部28とは反対側からは連続して縦壁部36が形成されている。また、例えば、図1の一点鎖線の円Bで囲まれた部分を略車両左方から見た断面図である図4に示されるように、部位によってはパネル上部16やパネル湾曲部18、パネル後部20の外周部から直接(すなわち、縦壁部28や圧接部30を介さずに)縦壁部36が形成されている。縦壁部36はインナパネル12とアウタパネル14とを接合した状態でアウタパネル14の側へ向けて縦壁部36から屈曲するように形成されている。この縦壁部36の圧接部30とは反対側の端部からは連続してフランジ部38が形成されている。フランジ部38はインナパネル12とアウタパネル14とを接合した状態で、アウタパネル14の外周部近傍と対向するように形成されていると共に、アウタパネル14の外周部近傍との対向方向がフランジ部38の厚さ方向となるように形成されている。
【0034】
一方、図2に示されるアウタパネル14は、全体的に合成樹脂材を所望の形状に成形することにより形成されている。図2に示されるように、アウタパネル14はパネル上部42を備えている。パネル上部42はトランクルームの開口をラゲッジドア10が閉止した状態で、全体的な厚さ方向が車両の上下方向に沿うように形成されている。このパネル上部42の後端部からは連続してパネル湾曲部44が形成されている。
【0035】
このパネル湾曲部44はパネル上部42の長手方向(本ラゲッジドア10を車両に取り付けた場合の車両の左右方向)を軸方向とした軸周りに、パネル上部42の裏面側の所定位置を曲率中心として下方へ湾曲している。このパネル湾曲部44のパネル上部42とは反対側からは連続してパネル後部46が形成されている。パネル後部46は、上記のトランクルームの開口(図示省略)をラゲッジドア10が閉止した状態で、全体的な厚さ方向が車両の前後方向に沿うように形成されている。すなわち、全体的には、パネル上部42、パネル湾曲部44、パネル後部46により構成されているアウタパネル14は、側面視で略L字形状に曲がった板状とされている。
【0036】
また、アウタパネル14を構成するパネル後部46の略中央には略矩形の開口48が形成されている。さらに、パネル後部46の裏面には開口48の内周部に沿うように周壁50が形成されている。周壁50の開口48とは反対側の端部は底壁52により閉止されている。この周壁50と底壁52とで形成される有底筒状部はナンバープレート取付部54とされている。図2の一点鎖線Eで囲まれた部分を車両略左方から見た断面図である図7に示されるように、ボルト等によりナンバープレートを締結する部分に対応してインナパネル12のパネル後部20には固定部66が形成されている。この固定部66は、例えば、パネル後部20の一部を底壁52の側へ有底筒状に塑性変形させることで形成されており、この固定部66は底壁52の裏面に当接して底壁52に固着されて接合されている。ナンバープレートを固定するためのボルト等は、金属で形成されている固定部66にボルト等で締結固定されている。
【0037】
また、図2の一点鎖線Dで囲まれた部分を車両略左方から見た断面図である図6に示されるように、ナンバープレート取付部54を構成する周壁50にはランプソケット56が設けられている。このランプソケット56にはインナパネル12とアウタパネル14との接合状態でインナパネル12とアウタパネル14との間に配設された配線が接続され、ランプソケット56に装着された電球58を通電することができるようになっている。
【0038】
さらに、アウタパネル14のパネル湾曲部44の近傍では、上記のインナパネル12に支持体60が形成されている。この支持体60は基端部が溶接等によりインナパネル12に一体的に固着された一対の脚部62を備えている。これらの脚部62の先端側は当接部64により繋がっている。この当接部64はパネル上部42の裏面に一体的に固着されており、パネル湾曲部44の近傍でパネル上部42を裏面側から支持している。以上の構成のアウタパネル14はその外周部全域(全周)がフランジ部38に当接しており、アウタパネル14の外周部全域とフランジ部38との当接部分が一体的に固着され、インナパネル12とアウタパネル14とが接合されている。
【0039】
<第1の実施の形態の作用、効果>
次に、本実施の形態の作用並びに効果について説明する。
【0040】
以上の構成の本ラゲッジドア10では、アウタパネル14の全体が合成樹脂材により成形され、金属製のアウタパネルに樹脂製のパーツ(例えば、特許文献1における樹脂製のフィニッシャ)を設ける構成に比べて軽量化を図ることができ、しかも、部品点数を少なくできることから、部品コストや組み立てのコストを大幅に安価にできる。
【0041】
また、車両走行中に気流が表面上を流れることや、見栄え(外観)等の観点などからアウタパネル14は外表面が滑らかな平面や湾曲面に形成され、ビード部等の剛性を補うための構造を形成し難い。これに対して、インナパネル12は、アウタパネル14とは異なり、通常は車両の外側から見えることはない。しかも、トランクルームの開口をラゲッジドア10が閉止した状態では、インナパネル12の表面はトランクルームの内方側を向くことから、車両走行中に発生する気流に影響を与えない。
【0042】
したがって、インナパネル12は、ビード部26等、剛性を補うための構造を形成しても支障がない。このため、このように充分に剛性を補い、様々な向きからの外力に対抗しうるインナパネル12にアウタパネル14の外周部が固着されて接合されることにより、アウタパネル14の剛性を高めることができる。しかも、アウタパネル14の外周部全域をインナパネル12に固着させることでインナパネル12とアウタパネル14とを接合する構成であることから、インナパネル12とアウタパネル14との接合強度も強くなる。また、全体が合成樹脂材により形成されたアウタパネル14は、特許文献1に開示された従来構成とは異なり、樹脂製のパーツを組み付けるための切除部分をアウタパネル14に形成しなくてもよいため、アウタパネル14自体の剛性の低下を招くことがない。
【0043】
さらに、アウタパネル14はその外周部のみならず、パネル湾曲部44の近傍でパネル上部42の裏面に支持体60の当接部64が固着し、支持体60がパネル上部42の裏面側からパネル上部42を支持している。このため、インナパネル12の外周部から離間したパネル上部42のパネル湾曲部44の近傍部分でもアウタパネル14の剛性を向上でき、例えば、トランクルームの開口をラゲッジドア10が閉止した状態で、上方からアウタパネル14に外力が作用した場合でも、パネル上部42(アウタパネル14)が大きく撓んでしまうことを防止又は効果的に抑制できる。
【0044】
なお、本実施の形態は、アウタパネル14の外周部全域とフランジ部38との当接部分を一体的に固着した構成であったが、アウタパネル14は外周部の全域がフランジ部38に固着する構成でなくても、例えば、アウタパネル14は外周部のうち、所定間隔毎や予め定めた所定の部位のみをフランジ部38に固着させる構成であってもよい。
【0045】
<第2の実施の形態の構成>
次に、本発明のその他の実施の形態について説明する。なお、以下の各実施の形態を説明するにあたり、前記第1の実施の形態を含めて説明している実施の形態よりも前出の実施の形態と基本的に同一の部位に関しては、同一の符号を付与してその詳細な説明を省略する。
【0046】
図8には本発明の第2の実施の形態に係るラゲッジドア90を構成するアウタパネル92が上方からの斜視図により示されている。
【0047】
図8に示されるアウタパネル92はパネル金属部94を備えている。パネル金属部94は全体的に金属平板(一例としては、鋼板)をプレス成形して所望の形状に塑性変形させることにより形成されている。このパネル金属部94はパネル上部96とパネル湾曲部98とを備えている。
【0048】
パネル上部96は前記第1の実施の形態におけるアウタパネル14のパネル上部42に対応した部位で、パネル上部42が合成樹脂材により形成されているのに対し、パネル上部96は金属により形成されているが、パネル上部96の構造的な構成は基本的にパネル上部42と同じである。また、パネル湾曲部98は前記第1の実施の形態におけるアウタパネル14のパネル湾曲部44に対応した部位で、パネル湾曲部44が合成樹脂材により形成されているのに対し、パネル湾曲部98は金属により形成されているが、パネル湾曲部98の構造的な構成は基本的にパネル湾曲部44と同じである。
【0049】
このパネル金属部94のパネル上部96は幅方向に沿ったパネル上部96とは反対側の端部近傍(車両に取り付けられた状態では、車両前方側のパネル金属部94の端部近傍)と、長手方向両端部近傍(車両に取り付けられた状態では、車両左右方向両側のパネル金属部94の端部近傍)にヘム加工が施され、図3に対応した本実施の形態の断面図である図9や、図5に対応した本実施の形態の断面図である図10に示されるように、ヘム加工によりパネル上部96の幅方向に沿ったパネル上部96とは反対側の端部近傍と長手方向両端部とが裏面側へ折り返されることで形成されたヘム部100でインナパネル12の外周部のうち、パネル上部96の幅方向に沿ったパネル上部96とは反対側の端部近傍と長手方向両端部に対応した部分を挟み込む。これにより、パネル金属部94がインナパネル12に固定される。
【0050】
また、図8に示されるように、アウタパネル92は樹脂部としてのパネル樹脂部102を備えている。パネル樹脂部102は全体的に合成樹脂材を所望の形状に成形することにより形成されている。このパネル樹脂部102にはパネル上部42及びパネル湾曲部44が形成されていないが、パネル後部46が形成されている。また、パネル樹脂部102の外周部のうち、ラゲッジドア90がトランクルームの開口を閉止した状態で車両上方を向くパネル樹脂部102の幅方向一端部に対応して、上記のパネル金属部94には固着片104が設けられている。
【0051】
固着片104は厚さ方向がパネル上部96の厚さ方向に対して直交した向き(ラゲッジドア90がトランクルームの開口を閉止した状態では車両の前後方向)に沿った細幅板状で、パネル湾曲部98のパネル上部96とは反対側の端部から連続して形成されている。パネル樹脂部102とパネル上部96とを組み付ける際には、図6に対応した本実施の形態の断面図である図11や図7に対応した本実施の形態の断面図である図12に示されるように、パネル樹脂部102の幅方向一端部(上端部)近傍で固着片104の裏面側に固着片104が位置し、パネル樹脂部102及び固着片104の厚さ方向にパネル樹脂部102の幅方向一端部(上端部)の全域と固着片104とが対向して当接した状態で、パネル樹脂部102の幅方向一端部(上端部)の全域が固着片104に固着され、これにより、パネル樹脂部102とパネル金属部94とが一体的に接合される。
【0052】
図8の一点鎖線の円Fで囲まれた部分を略車両下方から見た断面図である図13にその一例が示されるように、パネル樹脂部102の外周部のうち、上記の幅方向一端部(上端部)を除いた部分は、インナパネル12の外周部に形成されたフランジ部38に当接しており、幅方向一端部(上端部)を除いたパネル樹脂部102の外周部全域とフランジ部38との当接部分が一体的に固着される。
【0053】
また、図11に示されるように、本ラゲッジドア90では、支持体60の他に支持体112が形成されている。支持体112は脚部114を備えている。脚部114はラゲッジドア90を車両に取り付けた際の車両の左右方向に沿って支持体60とはずれた位置で溶接等により基端部がインナパネル12に一体的に固定されている。脚部114は先端側がパネル湾曲部98のパネル上部96とは反対側の端部近傍へ向けて延ばされている。また、脚部114の基端側からの延出方向に対して直交する方向に脚部114を切った脚部114の断面形状は略L字形状とされている。この脚部114の先端部には当接部116が形成されている。当接部116はパネル湾曲部98のパネル上部96とは反対側の端部近傍でパネル上部96の裏面に当接しており、溶接等によりパネル上部96に一体的に固定されている。
【0054】
<第2の実施の形態の作用、効果>
次に、本実施の形態の作用並びに効果について説明する。
【0055】
以上の構成の本ラゲッジドア90では、前記第1の実施の形態におけるアウタパネル14のうち、パネル湾曲部44及びパネル後部46に対応する部分、すなわち、アウタパネル14のパネル上部42に対応する部分が金属製のパネル金属部94により構成される。このため、ラゲッジドア90ではパネル金属部94がパネル上部42に比べて高い剛性を有しており、パネル金属部94の厚さ方向一方の側(すなわち、ラゲッジドア90がトランクルームの開口を閉止した状態での車両上方側)からの外力で撓むことを防止又は効果的に抑制できる。
【0056】
また、アウタパネル92はパネル樹脂部102が樹脂製であるが、前記第1の実施の形態におけるアウタパネル14で言えばパネル樹脂部102はパネル後部46を構成している。このため、ラゲッジドア90がトランクルームの開口を閉止した状態ではパネル樹脂部102の厚さ方向が車両の前後方向に沿うため、パネル樹脂部102は車両上方側からの外力に対して高い剛性を有する。このため、パネル樹脂部102を含めてアウタパネル92が車両上方側からの外力で撓むことを防止又は効果的に抑制できる。
【0057】
さらに、パネル樹脂部102とパネル金属部94との接合部分は、ラゲッジドア90がトランクルームの開口を閉止した状態で、車両の前後方向にパネル樹脂部102と固着片104とが対向した部分である。このため、車両上方からの荷重がせん断するようにパネル樹脂部102とパネル金属部94との接合部分に作用する。しかも、上記のように、車両上方からの荷重ではパネル樹脂部102が撓み難いため、パネル樹脂部102とパネル金属部94との接合部分が極めて剥離し難く、長期に亘りパネル樹脂部102とパネル金属部94との接合状態を維持できる。
【0058】
また、ラゲッジドア90がトランクルームの開口を閉止した際に、厚さ方向が概ね車両の前後方向に沿うパネル樹脂部102の全体が合成樹脂材により形成される。このため、例えば、トランクルームの開口を閉止した状態で厚さ方向が車両の前後方向に沿うパネル後部を含めてアウタパネル全体を鋼板等の金属板により形成し、金属製のパネル後部に樹脂製のパーツ(例えば、特許文献1における樹脂製のフィニッシャ)を設ける構成に比べて軽量化を図ることができる。
【0059】
さらに、樹脂製のパネル樹脂部102は幅方向一端部全域がパネル金属部94の固着片104に固着され、この幅方向一端部を除いたパネル樹脂部102の外周部の全域がインナパネル12のフランジ部38に固着される。すなわち、パネル樹脂部102の外周部は、ラゲッジドア90のうち金属により形成された部分に固着されて接合される。このため、パネル樹脂部102の剛性を高い状態で維持できる。
【0060】
また、パネル金属部94の外周部のうち、ヘム加工が施されず、インナパネル12に直接固定されないパネル湾曲部98のパネル上部96とは反対側の端部は、支持体112により裏面側から支持される。これにより、パネル金属部94、ひいては、アウタパネル92の撓みを更に効果的に防止又は抑制できる。
【0061】
<第3の実施の形態の構成>
次に、本発明の第3の実施の形態について説明する。
【0062】
図14には本実施の形態に係るラゲッジドア160を構成するアウタパネル162が上方からの斜視図により示されている。
【0063】
この図に示されるアウタパネル162はパネル金属部164を備えている。パネル金属部164は全体的に金属平板(一例としては、鋼板)をプレス成形して所望の形状に塑性変形させることにより形成されており、更に、パネル上部96とパネル湾曲部98とを備えている点で前記第2の実施の形態におけるパネル金属部94と基本的に構成が同じである。但し、パネル金属部94とは異なりパネル金属部164は延設部としての延設片166を備えている。延設片166はラゲッジドア160が車両に取り付けられた状態での車両の左右方向に沿ったパネル湾曲部98の両側でパネル湾曲部98のパネル上部96とは反対側の端部から概ねパネル上部96の厚さ方向に沿うように延出されている。
【0064】
これらの延設片166には矩形の開口168が形成されている。延設片166及びその近傍部分を略車両左方から見た断面図である図15に示されるように、開口168にはカップ形状のランプハウス170が貫通した状態で配置され、ランプハウス170の開口端に形成されたフランジ部172が延設片166に固定されることで、ラゲッジドア160にランプハウス170が取り付けられる構成になっている。
【0065】
一方、図14に示されるように、本ラゲッジドア160は樹脂部としてのパネル樹脂部174を備えている。パネル樹脂部174は全体的に合成樹脂材を所望の形状に成形することにより形成され、パネル上部42及びパネル湾曲部44が形成されていないがパネル後部46が形成されている等、基本的には前記第2の実施の形態におけるパネル樹脂部102と同じ構成である。
【0066】
しかしながら、パネル樹脂部174では、パネル後部46に切除部176が形成されている。切除部176は上記の延設片166の各々に対応して形成されており、パネル金属部164とパネル樹脂部174とが接合された状態では切除部176に延設片166が入り込む。また、各切除部176からは縦壁部178が延設片166の側へ向けて延出されている。図14及び図15に示されるように、この縦壁部178の延設片166側の端部には厚さ方向に延設片166と対向する板状の固着部180が形成されている。固着部180は延設片166に当接した状態で延設片166に固着される。
【0067】
<第3の実施の形態の作用、効果>
次に、本実施の形態の作用並びに効果について説明する。
【0068】
以上の構成の本ラゲッジドア160は延設片166及び切除部176を設けた点以外は基本的に前記第2の実施の形態に係るラゲッジドア90と構成が同じであることから、本ラゲッジドア160は、基本的にラゲッジドア90と同様の作用を奏し、基本的にラゲッジドア90と同様の効果を得ることができる。
【0069】
また、上記のように、本ラゲッジドア160は、樹脂成形に比べて寸法精度等が高い金属プレス成形により形成されたアウタパネル162にランプハウス170を取り付けるための延設片166を形成した。このため、延設片166の寸法精度等が高く、したがって、パネル金属部164とランプハウス170との建て付け精度を向上できる。しかも、この0066にパネル樹脂部174側の固着部180が固着されることから、パネル樹脂部174とランプハウス170との建て付け精度を向上できる。
【図面の簡単な説明】
【0070】
【図1】本発明の第1の実施の形態に係るラゲッジドアを構成するインナパネルを下方から見た斜視図である。
【図2】本発明の第1の実施の形態に係るラゲッジドアを構成するアウタパネルを下方から見た斜視図である。
【図3】図1の一点鎖線の円Aで囲まれた部分を略車両左方から見た断面図である。
【図4】図1の一点鎖線の円Bで囲まれた部分を略車両左方から見た断面図である。
【図5】図1の一点鎖線の円Cで囲まれた部分を略車両前方から見た断面図である。
【図6】図2の一点鎖線Dで囲まれた部分を車両略左方から見た断面図
【図7】図2の一点鎖線Eで囲まれた部分を車両略左方から見た断面図
【図8】本発明の第2の実施の形態に係るラゲッジドアを構成するアウタパネルを下方から見た斜視図である。
【図9】図3に対応した本実施の形態に係るラゲッジドアの断面図である。
【図10】図5に対応した本実施の形態に係るラゲッジドアの断面図である。
【図11】図6に対応した本実施の形態に係るラゲッジドアの断面図である。
【図12】図7に対応した本実施の形態に係るラゲッジドアの断面図である。
【図13】図8の一点鎖線の円Fで囲まれた部分を略車両下方から見た断面図である。
【図14】本発明の第3の実施の形態に係るラゲッジドアを構成するアウタパネルを下方から見た斜視図である。
【図15】延設部及びその近傍部分を略車両左方から見た断面図である。
【符号の説明】
【0071】
10 ラゲッジドア
12 インナパネル
14 アウタパネル(樹脂部)
90 ラゲッジドア
92 アウタパネル
96 パネル上部
102 パネル樹脂部(樹脂部)
160 ラゲッジドア
166 延設片(延設部)
170 ランプハウス
174 パネル樹脂部(樹脂部)
【特許請求の範囲】
【請求項1】
金属製のインナパネルと、
合成樹脂材によって形成されると共に外周部の少なくとも一部が前記インナパネルに固着されて接合される樹脂部を有するアウタパネルと、
を備えるラゲッジドア。
【請求項2】
前記アウタパネルのうち、車両に設けられたトランクルームの開口を閉止した閉止状態で、厚さ方向が車両の上下方向に対して交差する向きに沿う部分に前記樹脂部を適用することを特徴とする請求項1に記載のラゲッジドア。
【請求項3】
前記閉止状態で厚さ方向が前記車両の上下方向に沿うと共に、前記樹脂部の外周一部が固着されて接合される金属製のパネル上部を含めて前記アウタパネルを構成する、
ことを特徴とする請求項2に記載のラゲッジドア。
【請求項4】
前記閉止状態で、前記車両の前後方向に沿った前記パネル上部の後端部から下方へ向けて延出されると共にランプハウスが取り付けられ、更に、前記樹脂部の外周一部が固着されて接合される延設部を備えることを特徴とする請求項3に記載のラゲッジドア。
【請求項5】
前記樹脂部の外周部に固着されて接合される金属製の固着部分の少なくとも一部は、車両に設けられたトランクルームの開口を閉止した閉止状態で、前記車両の上下方向に対して交差する向きに前記樹脂部の外周部と対向した状態で固着されることを特徴とする請求項1乃至請求項4の何れか1項に記載のラゲッジドア。
【請求項6】
前記樹脂部の外周部全域を前記インナパネルに固着させて接合することを特徴とする請求項1又は請求項2に記載のラゲッジドア。
【請求項1】
金属製のインナパネルと、
合成樹脂材によって形成されると共に外周部の少なくとも一部が前記インナパネルに固着されて接合される樹脂部を有するアウタパネルと、
を備えるラゲッジドア。
【請求項2】
前記アウタパネルのうち、車両に設けられたトランクルームの開口を閉止した閉止状態で、厚さ方向が車両の上下方向に対して交差する向きに沿う部分に前記樹脂部を適用することを特徴とする請求項1に記載のラゲッジドア。
【請求項3】
前記閉止状態で厚さ方向が前記車両の上下方向に沿うと共に、前記樹脂部の外周一部が固着されて接合される金属製のパネル上部を含めて前記アウタパネルを構成する、
ことを特徴とする請求項2に記載のラゲッジドア。
【請求項4】
前記閉止状態で、前記車両の前後方向に沿った前記パネル上部の後端部から下方へ向けて延出されると共にランプハウスが取り付けられ、更に、前記樹脂部の外周一部が固着されて接合される延設部を備えることを特徴とする請求項3に記載のラゲッジドア。
【請求項5】
前記樹脂部の外周部に固着されて接合される金属製の固着部分の少なくとも一部は、車両に設けられたトランクルームの開口を閉止した閉止状態で、前記車両の上下方向に対して交差する向きに前記樹脂部の外周部と対向した状態で固着されることを特徴とする請求項1乃至請求項4の何れか1項に記載のラゲッジドア。
【請求項6】
前記樹脂部の外周部全域を前記インナパネルに固着させて接合することを特徴とする請求項1又は請求項2に記載のラゲッジドア。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【公開番号】特開2008−184104(P2008−184104A)
【公開日】平成20年8月14日(2008.8.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−20810(P2007−20810)
【出願日】平成19年1月31日(2007.1.31)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成20年8月14日(2008.8.14)
【国際特許分類】
【出願日】平成19年1月31日(2007.1.31)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】
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