説明

ラソフォキシフェン及びその類縁体の製造方法

【課題】ラソフォキシフェン、ナフォキシジン、その類縁体の新規製造方法の提供。
【解決手段】特定のベンズアンデヒドを含む3成分カップリング反応を行い、式(4)で表わされる化合物を得る。これをハロゲン誘導炭素環形成反応に付す。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、選択的エストロゲン受容体モジュレーターとして知られるラソフォキシフェン、及びその類縁体の製造方法、並びに該製造方法において使用する新規、且つ有用な中間体及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
選択的エストロゲン受容体モジュレーター(SERM;selective estrogen receptor modulator)とは、臓器あるいは組織によりエストロゲン作用を発揮したり、あるいは発揮しなかったりする薬剤の総称であり、該薬剤は、例えば、子宮、乳腺などでは抗エストロゲン作用を有する一方、閉経後骨粗鬆症や血清コレステロール、心血管系等に対してはエストロゲン作用を発揮する。これら薬剤としては、例えばタモキシフェン、ラロキシフェン及びラソフォキシフェン等が挙げられるが、この中でラソフォキシフェンは、閉経後骨粗鬆症の予防、治療薬剤として、有望視され、現在、大規模な臨床試験が進められているものであり、このラソフォキシフェン;シス−6−フェニル−5−〔4−(2−ピロリジン−1−イルエトキシフェニル〕−5,6,7,8テトラヒドロナフタレン−2−オールの化学構造は以下に示される。
【0003】
【化1】

【0004】
このラソフォキシフェンの製造法としては、例えば、以下の2つの方法が挙げられる。
そのうちの一つは、2−ブロモ−5−メトキシ−トルエンを出発原料化合物とし、該原料化合物の臭素化により得られる1−ブロモ−2−ブロモメチル−4−メトキシ−ベンゼンを用いてエチルベンゾイルアセテートをアルキル化し、その後の脱カルボキシル化によって、3−(2−ブロモ−5−メトキシ−フェニル)−1−フェニル−プロパン−1−オンを得、さらに、これをケタール化して保護し、アルコキシベンゾイル基の導入反応、ジケトン化、チタン仲介McMurry型カップリング反応によるナフタレン環の形成、N−エチル−ピロリジノ測鎖の導入反応を順次行い、中間体であるシス−1−{2−[4−(6−メトキシ−2−フェニル−1,2,3,4−テトラヒドロナフタレン−1−イル)フェノキシ]−エチル}−ピロリジンを得、この後テトラヒドロナフタレン環上のメトキシ基の脱メチル化反応を行なって、ラソフォキシフェンを得るものである(特許文献1参照)。
【0005】
他の一つは、1,4−ジブロモベンゼンを出発原料とし、これに1−ヒドロキシエチル−ピロリジンと反応させて、1−〔2−(4−ブロモフェノキシ)エチル〕ピロリジンを得、さらに、これを有機セリウム試薬としたのち6−メトキシ−テトラロンと反応させて、1−{2−〔4−(6−メトキシ−3,4−ジヒドロナフタレン−1−イル)フェノキシ〕エチル}ピロリジン得る。この後、ジヒドロナフタレン環2位へのブロム基の導入、ブロム基のフェニル基置換、水素化反応及びメトキシ基の脱メチル化反応を経て、ラソフォキシフェンを得るものである(特許文献2参照)。
しかし、前者の方法は、出発原料化合物からラソフォキシフェンに至るまでの反応工程数が8工程もあり、効率的な方法とはいえない。
また、後者の方法は反応工程数が6工程であり、短いが、除去しにくい重金属触媒による低収率なカップリング反応が合成終盤にある点で医薬品原体を提供する上で不利である。
さらに、いずれの手段にしてもラソフォキシフェンの製造に特化しており、その製造工程上の中間生成物は、様々なラソフォキシフェン類縁体の製造用中間体としては不向きであった。
【0006】
【特許文献1】特開2000−327670号公報
【特許文献2】特表平10−503215号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の課題は、このような従来技術の問題点を解消することにあり、反応工程数が少なく、効率的で、しかも、実用上においても優れた、ラソフォキシフェンあるいはその類縁体の製造方法を提供するとともに、様々なラソフォキシフェン類縁体の効率的製造をも可能にする新規かつ有用な中間体を提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者等は、鋭意研究の結果、下記式(1)で表わされる化合物、同式(2)で示される化合物及び同式(3)で示される化合物を原料化合物として3成分カップリングを一工程で行なって得た同式(4)の化合物を中間体として使用することにより、ラソフォキシフェン及びその類縁体を、短い工程数で効率よく製造できるとともに、この製造工程中の中間生成物が、様々な種類のラソキシフェン類縁体を効率よく生産可能にし、しかも実用性にも優れていることを見いだし、本発明を完成させたものである。
【0009】
【化2】

(但し、式中、Rは、水素、アルキル基、アシル基、脂環式基又は芳香族基を表わし、Rは、水素、アルキル基、アシル基、脂環式基、芳香族基、ハロゲン、水酸基、アルキルオキシ基、アシルオキシ基、シアノ基及びニトロ基から選ばれた1種以上の置換基を表わし、nは1〜4の整数を表わす。)
【0010】
【化3】

(但し、式中、R’は、水素、アルキル基、アシル基、脂環式基、芳香族基、ハロゲン、水酸基、アルキルオキシ基、アシルオキシ基、シアノ基から選ばれた1種以上の置換基を表わし、Mは、珪素、ホウ素、スズ、亜鉛又はマグネシウムを表わし、Rは水素、アルキル基、アシル基、脂環式基、芳香族基、ハロゲン、水酸基、アルキルオキシ基、アシルオキシ基、シアノ基、ニトロ基から選ばれた1種以上の置換基を表わし、また、mは1〜5の整数を表わし、pは1〜4の整数を表わす。)
【0011】
【化4】

(但し、式中、Rは、水素、アルキル基、アシル基、脂環式基又は芳香族基を表わし、Rは水素、アルキル基、アシル基、脂環式基、芳香族基、ハロゲン、水酸基、アルキルオキシ基、アシルオキシ基から選ばれた1種以上の置換基を表わし、qは1〜3の整数を表わす。)
【0012】
【化5】

【0013】
すなわち、本発明は以下に示されるとおりである。
(1)「以下の工程を順次行なうことを特徴とするラソフォキシフェン又はナフォキシジン、若しくはこれらの類縁体の製造方法。
(a):下記式(1)、(2)及び(3)で表わされる化合物を、酸触媒の存在下反応させることにより式(4)で表わされる化合物又はその異性体混合物を生成させる工程、
【0014】
【化6】

(但し、式中、Rは、水素、アルキル基、アシル基、脂環式基又は芳香族基を表わし、Rは、水素、アルキル基、アシル基、脂環式基、芳香族基、ハロゲン、水酸基、アルキルオキシ基、アシルオキシ基、シアノ基及びニトロ基から選ばれた1種以上の置換基を表わし、nは1〜4の整数を表わす。)
【0015】
【化7】

(但し、式中、R’は、水素、アルキル基、アシル基、脂環式基、芳香族基、ハロゲン、水酸基、アルキルオキシ基、アシルオキシ基、シアノ基から選ばれた1種以上の置換基を表わし、Mは、珪素、ホウ素、スズ、亜鉛又はマグネシウムを表わし、Rは水素、アルキル基、アシル基、脂環式基、芳香族基、ハロゲン、水酸基、アルキルオキシ基、アシルオキシ基、シアノ基、ニトロ基から選ばれた1種以上の置換基を表わし、また、mは1〜5の整数を表わし、pは1〜4の整数を表わす。)
【0016】
【化8】

(但し、式中、Rは、水素、アルキル基、アシル基、脂環式基又は芳香族基を表わし、Rは水素、アルキル基、アシル基、脂環式基、芳香族基、ハロゲン、水酸基、アルキルオキシ基、アシルオキシ基から選ばれた1種以上の置換基を表わし、qは1〜3の整数を表わす。)
【0017】
【化9】


(b):式(4)で表わされる化合物又はその異性体混合物をハロゲン誘導炭素環形成反応により、以下の式(5)で表わされる化合物を得る工程、
【0018】
【化10】


(c):上記式(5)で表わされる化合物又はその異性体混合物を、アルコラート及び/又はアミン系塩基の存在下、脱ハロゲン化水素、二重結合の転位及びR基脱離反応を行なって以下の式(8)で表わされる化合物を得る工程、
【0019】
【化11】

(但し、式中R〜R、並びにn、m及びqは、それぞれ上記と同様である。)

(d):式(8)該化合物を1−ピロリジノエチル化することにより、ナフォキシジン又はその類縁体を得る工程、あるいは式(8)の化合物に対し水素添加した後、1−ピロリジノエチル化するか、又は1−ピロリジノエチル化後、水素添加し、次いでR基除去を行なってラソフォキシフェン又はその類縁体を得る工程。」

(2)「以下の工程を順次行なうことを特徴とする、式(5)で表わされる化合物又はその異性体混合物の製造方法。
(a):下記式(1)、(2)及び(3)で表わされる化合物を、酸触媒の存在下反応させることにより式(4)で表わされる化合物又はその異性体混合物を生成させる工程、
【0020】
【化12】

(但し、式中、Rは、水素、アルキル基、アシル基、脂環式基又は芳香族基を表わし、Rは、水素、アルキル基、アシル基、脂環式基、芳香族基、ハロゲン、水酸基、アルキルオキシ基、アシルオキシ基、シアノ基及びニトロ基から選ばれた1種以上の置換基を表わし、nは1〜4の整数を表わす。)
【0021】
【化13】

(但し、式中、R’は、水素、アルキル基、アシル基、脂環式基、芳香族基、ハロゲン、水酸基、アルキルオキシ基、アシルオキシ基、シアノ基から選ばれた1種以上の置換基を表わし、Mは、珪素、ホウ素、スズ、亜鉛又はマグネシウムを表わし、Rは水素、アルキル基、アシル基、脂環式基、芳香族基、ハロゲン、水酸基、アルキルオキシ基、アシルオキシ基、シアノ基、ニトロ基から選ばれた1種以上の置換基を表わし、また、mは1〜5の整数を表わし、pは1〜4の整数を表わす。)
【0022】
【化14】

(但し、式中、Rは、水素、アルキル基、アシル基、脂環式基又は芳香族基を表わし、Rは水素、アルキル基、アシル基、脂環式基、芳香族基、ハロゲン、水酸基、アルキルオキシ基、アシルオキシ基から選ばれた1種以上の置換基を表わし、qは1〜3の整数を表わす。)
【0023】
【化15】


(b):式(4)で表わされる化合物又はその異性体混合物をハロゲン誘導炭素環形成反応により、以下の式(5)で表わされる化合物又はその異性体混合物を得る工程、
【0024】
【化16】



(3)「下記式(5)で表わされる化合物又はその異性体混合物にアルコラート及び/又はアミン系塩基を作用させて、脱ハロゲン化水素、二重結合の転位及びR基脱離反応を行ない、式(8)で表わされる化合物を生成させることを特徴とする、下記式(8)の化合物の製造方法。
【0025】
【化17】

【0026】
【化18】

(但し、式中R〜R、並びにn、m及びqは、それぞれ上記と同様である。)」

(4)「下記式(8)の化合物を1−ピロリジノエチル化することを特徴とするナフォキシジン又はその類縁体の製造方法。
【0027】
【化19】

(但し、式中R〜R、並びにn、m及びqは、それぞれ上記と同様である。)」

(5)「下記式(8)の化合物に対し、水素添加後、1−ピロリジノエチル化するか、あるいは1−ピロリジノエチル化した後、水素添加し、次いで、R基除去を行なうことを特徴とする、ラソフォキシフェン又はその類縁体の製造方法。
【0028】
【化20】

(但し、式中R〜R、並びにn、m及びqは、それぞれ上記と同様である。)」

(6)「以下の、式(5)で表わされる化合物又はその異性体混合物。
【0029】
【化21】



(7)「以下の式(8)で表わされる化合物。
【0030】
【化22】

(但し、式中R〜R、並びにn、m及びqは、それぞれ上記と同様である。)」
【発明の効果】
【0031】
本発明は、前記式(1)で表わされる化合物、同式(2)で示される化合物及び同式(3)で示される化合物を原料化合物として3成分カップリングを一工程で行なって得た同式(4)の化合物をラソフォキシフェン及びその他類縁体の製造用中間体として利用することに特徴を有し、これにより、ラソフォキシフェン及びその他類縁体を、短い工程数で効率よく製造でき、しかも実用上にも優れた方法である。したがって、本発明によれば、選択的エストロゲン受容体モジュレーター(SERM;selective estrogen receptor modulator)として、特に閉経後骨粗鬆症等の治療薬として期待されるラソフォキシフェンあるいはその他類縁体を安価に且つ大量に供給に提供することを可能にするものである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0032】
ラソフォキシフェンの構造は、以下の式(20)に示される。
【0033】
【化23】

以下、これら本発明の製造方法における各工程について、図1を参照して説明する。
【0034】
製造方法(図1)
〔3成分カップリング工程〕
本発明においては、まず、上記式(1)で示される化合物、式(2)で表わされる化合物、及び式(3)で表わされる化合物を原料化合物として用いて、1段階で、式(4)で表わされる化合物を合成する。
式(1)で表される化合物として好ましいものは、例えば、4−アセトキシベンズアルデヒド、4−ビバロイルオキシベンズアルデヒド、4−プロパノイルオキシベンズアルデヒド、4−エトキシカルボニルオキシベンズアルデヒド、4−ベンジルオキシカルボニルオキシベンズアルデヒド、4−シリルオキシベンズアルデヒド等が挙げられる。また、式(2)で表わされる化合物として好ましいものは、例えば、トリメチルシンナミルシラン、トリブチルシンナミルスズ、ジメチルシンナミルホウ素等が挙げられる。
式(3)の化合物としては、例えば、2−メトキシシベンゼン、2−エトキシベンゼン2−ベンジルオキシベンゼン等が好ましい。
この反応工程においては、例えば、HfCl等のルイス酸あるいはプロトン酸等の酸触媒、及び共触媒としてトリメチルシリルトリフルオロメタンスルホネート(TMSOTf)等を使用する。触媒としては、上記TMSOTfの他トリメチルシリルクロリド等も使用でき、ルイス酸としては上記の他、Hf(OTf),TiCl,TiCl(OTf)等の第4属金属塩、AlCl,BCl,Sc(OTf)等の第3属金属塩、SnCl,Sn(OTf)等の第2属金属塩等が使用できる。またプロトン酸としては塩酸、硫酸、硝酸、臭化水素酸、トリフルオロ酢酸、トリフルオロメタンスルホン酸等も使用可能である。これらは一種単独で使用してもよく、また2種以上併用してもよい。また、反応温度は、0〜40℃であり、室温でもよい。反応時間は1〜10時間である。
【0035】
【化24】

【0036】
〔環化反応工程〕
次いで、上記工程で得られた異性体混合物を、N−クロロコハク酸イミド、N−ブロモコハク酸イミド、N−ヨードコハク酸イミド、I(Py)2BF4等のハロゲン化剤と、HBF、BF・OEt、CFSOH等の酸を用いて、エチレンエーテル、塩化メチレン等の溶媒の存在下で、ハロゲン誘導炭素環形成反応を行ない、式(5)で表わされる化合物の異性体混合物を得る。
【0037】
【化25】

この反応温度は−78〜0℃である。
この異性体混合物は、上記式(5)で表わされる化合物の混合物であるが、具体的には以下の式(11)〜(14)で表わされる化合物のそれぞれのエナンチオマーを含む合計8種の化合物の混合物である。
【0038】
【化26】

【0039】
【化27】

【0040】
【化28】

【0041】
【化29】

(但し、式(11)〜(14)における、R、R、R、n、m及びqは、上記と同様)
【0042】
〔アシル基除去、ヨウ素除去工程〕
上記工程で得られた異性体混合物は、それぞれの化合物を、分離或いは分離することなく、t−ブチラート、メチラート、エチラート等のアルコラート、あるいは該アルコラートとDBU、DBN、DABCO等のアミン系塩基を作用させて、脱ハロゲン化水素、二重結合の転位及びR基脱離反応を行なうことにより式(8)の化合物が得られる。これらの反応は順次行っても良いが、同時に行うこともできる。
これらの反応中DBU等のアミン系塩基を用いる場合においては、下記式(10)で表わされる化合物を含む中間生成物が生成するが、本工程においてはこの中間生成物を特に分離しなくても良く、1つの反応容器で上記複数の反応工程を進めることができる。反応温度は0〜80℃であり、好ましくは室温〜50℃である。
【0043】
【化30】

【0044】
【化31】

(但し、R、R、R、n、m及びqは、上記と同様)
【0045】
〔ラソフォキシフェン及びナフォキシジン製造工程〕
上記式(8)の化合物は、水素添加、側鎖導入及びアルキル基の除去を順次行なうことにより、式(20)で示されるラソフォキシフェンが得られるが、側鎖導入後、水素添加し、次いでアルキル基の除去を行ってもよい。この場合、側鎖導入によりナフォキシジン又はその類縁体を経由することになる。
【0046】
【化32】

上記水素添加は、Pd(OH)、Pd炭素、Pd黒、白金黒、塩化ロジウム錯体等の金属触媒の存在下常圧から500KPa程度の加圧下に行ない、側鎖導入は塩基存在下、臭化ピロリジノエチルまたは塩化ピロリジノエチルを反応させるか、ジエチルアゾジカルボキシレート、ジイソプロピルアゾジカルボキシラート等のアゾ系試薬とトリフェニルホスフフィン、キノン等の還元剤の存在下、1−(2−ヒドロキシエチル)ピロリジンと反応させることにより行なう。また、アルキル基の除去は、BBr、47%HBr、HBr−酢酸等の強酸を作用させることにより行なう。
【0047】
また、上記式(8)の化合物中、Rがメチル基の場合、上記と同様にして側鎖導入することにより、以下の式(21)で表わされるナフォキシジンを得ることができる。なお、Rが他のアルキル基の場合、ナフォキシジン類縁体が得られる。
【0048】
【化33】

【実施例】
【0049】
以下に、本発明の実施例を示すが、本発明は、特にこれにより限定されるものではない。なお、以下の実施例において、実施例2〜4は、中間体の異性体混合物と分離することなく、反応せしめた例を示し、実施例5〜6は、該異性体混合物の単一化合物を用いて反応せしめた例を示す。
<実施例1>(三成分連結反応によるトリアリールブテン骨格の構築)
1−(4−メトキシフェニル)−2−フェニル−1−(4−ピバロイルオキシフェニル)−3−ブテン
【0050】
【化34】

アルゴン雰囲気下、塩化ハフニウム(39.2mg、0.122mmol)をアニソール(3、0.02mL)に懸濁し、氷冷下、4−(ピバロイルオキシ)ベンズアルデヒド(1、25mg、0.121mmol)とトリメチルシンナミルシラン(2、46.7mg、0.245mmol)のアニソール溶液(0.22mL)をゆっくり滴下した。室温で一夜攪拌した後、反応混合物に飽和重曹水(5mL)を注いで激しく攪拌し、ジエチルエーテル(10mL)を加えて抽出した。さらにジエチルエーテル(10mL)で2回抽出し、有機層を集合して、飽和塩化ナトリウム水溶液(5mL)で洗浄し、無水硫酸マグネシウムで乾燥した後、これを濃縮した。残渣を薄層クロマトグラフィー(ヘキサン・塩化メチレン・ジエチルエーテル 4:1:1)で精製すると、無色の油状物として標題化合物が得られた(37.7mg、収率75%、シン・アンチ混合物)。

H NMR(CDCl、テトラメチルシラン)δ(ppm):1.20および1.26(s、9H)、3.59および3.70(s、3H)、4.01(dd、1H、J=7.8、11.3Hz)、4.19(d、1H、11.3Hz)、4.7−4.9(m、2H)、5.8−5.9(m、1H)、6.6−7.3(m、13H).
赤外吸収スペクトル(液膜法)cm−1: 2974、1749、1610、1511、1462、1252、1203、1167、1120、1032、753、700.
質量スペクトル m/e:計算値(C28H30O3+H)+として415.23、実験値415.23.
【0051】
<実施例2>(環化反応によるテトラヒドロナフタレン骨格の構築)
【0052】
【化35】

ビス(ピリジン)ヨードニウム テトラフルオロボレート(65.8mg、0.177mmol)を塩化メチレン(3.4mL)に懸濁し、ドライアイスアセトン浴で−78℃に冷却した。これに1−(4−メトキシフェニル)−2−フェニル−1−(4−ピバロイルオキシフェニル)−3−ブテン(4、56.0mg、0.135mmol)の塩化メチレン(1.8mL)溶液を加え、さらに三臭化ホウ素ジエチルエーテル錯体(0.015mL、0.118mmol)を三回にわけて添加した。その後、−78℃で1時間攪拌した後、飽和塩化アンモニウム水溶液(5mL)を加えて反応を停止し、室温に戻した後ジエチルエーテル(10mL)で三回抽出した。有機層を集合して飽和塩化ナトリウム水溶液(10mL)で洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥し、濃縮した。残渣を薄層クロマトグラフィーで精製すると、微黄色油状物として標題化合物が得られた(51.6mg、収率71%)。

H NMR(CDCl、テトラメチルシラン)δ(ppm):1.32、1.35および1.32(s、9H)、3.3(m、1H)、3.7−3.9(m、5H)、4.2(d、1H,J=10.6Hz)、4.7−4.8(m、1H)、6.6−7.2(m、12H).

赤外吸収スペクトル(液膜法)cm−1: 2972、1751、1610、1510、1503、1122、1031.
質量スペクトル m/e:計算値(C28H29IO3+H)+として541.12、実験値541.12.
【0053】
<実施例3>(脱ハロゲン化水素反応によるジヒドロナフタレン骨格の構築)
7−メトキシ−3−フェニル−4−(4−ピバロイルオキシフェニル)−3,4−ジヒドロナフタレン(6)
【0054】
【化36】

2−ヨード−7−メトキシ−3−フェニル−4−(4−ピバロイルオキシフェニル)−1,2,3,4−テトラヒドロナフタレン(5、39.4mg、0.0729mmol)をトルエン(1.5mL)に溶解し、1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデセン−7(DBU、0.035mL、0.234mmol)を加えて、80℃で15分加熱攪拌した。放冷後、氷冷下で飽和塩化アンモニウム水溶液(10mL)を加え、激しく攪拌し、次にエーテル(10mL)を加えて抽出した。さらに二度エーテル(10mL)で抽出し、有機層を集合して飽和塩化ナトリウム水溶液で洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥した後、これを濃縮した。残渣を薄層クロマトグラフィー(ベンゼン・ヘキサン 10:1)で精製すると、無色油状物として標題化合物(6、22.7mg)が得られた(収率75%)。

H NMR(CDCl、テトラメチルシラン)δ(ppm):1.34および1.36(s、9H)、3.76および3.80(s、3H)、3.84(dd、1H、J=4.2、7.5Hz)、4.17(d、1H、J=7.5Hz)、5.98(dd、1H、4.2、9.6Hz)、6.6−7.2(m、12H).
【0055】
<実施例4>
4−(4−ヒドロキシフェニル)−7−メトキシ−3−フェニル−1,2−ジヒドロナフタレン(7)
【0056】
【化37】

(二重結合の転位反応)
第三級ブトキシカリウム(40.3mg、0.359mmol)のジメチルスルホキシド(0.6mL)溶液に、7−メトキシ−3−フェニル−4−(4−ピバロイルオキシフェニル)−3,4−ジヒドロナフタレン(6, 29.3mg、0.0710mmol)のジメチルスルホキシド(0.8mL)溶液を加え、室温で一昼夜攪拌した。反応混合物に飽和塩化アンモニウム水溶液(10mL)を加えよく攪拌した後、ジエチルエーテル(10mL)で3回抽出した。有機層を集合し、飽和塩化ナトリウム水溶液(10mL)で洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥した後、これを濃縮した。残渣を薄層クロマトグラフィー(トルエン・酢酸エチル 10:1)で精製すると、標題化合物(7、16.0mg)が得られた(収率69%)。

H NMR(CDCl、テトラメチルシラン)δ(ppm):2.91(ddd、2H)、2.75(ddd、2H)、3.79(s、3H)、6.6−7.2(m、12H).
【0057】
<実施例5>(環化反応によるテトラヒドロナフタレン骨格の構築)
【0058】
【化38】


ビス(ピリジン)ヨードニウムテトラフルオロボレート(57.1mg、0.154mmol)を塩化メチレン(3.4mL)に懸濁し、ドライアイスアセトン浴で−78℃に冷却した。これに1−(4−メトキシフェニル)−2−フェニル−1−(4−ピバロイルオキシフェニル)−3−ブテン(4、56.0mg、0.135mmol)の塩化メチレン(2mL)溶液を加え、これに三臭化ホウ素ジエチルエーテル錯体(0.015mL、0.118mmol)を三回に分けて添加した。−78℃で2時間攪拌した後、飽和塩化アンモニウム水溶液を加えて反応を停止した。これにジエチルエーテルを加えて三回抽出し、有機層を集合して飽和塩化ナトリウム水溶液で洗浄後、無水硫酸ナトリウムで乾燥し、これを濃縮した。残渣を薄層クロマトグラフィー(トルエン)で精製すると2つの成分が得られ、薄層クロマトグラフ上Rf値の小さい化合物は、ラソフォキシフェンやナフォキシジンの前駆体として好適な化合物5’(29.9mg、収率41%)であり、Rf値の大きいものは化合物15(20.0mg、収率27%)であった(環化収率68%)。
【0059】
2−ヨード−7−メトキシ−3−フェニル−4−(4−ピバロイルオキシフェニル)−1,2,3,4−テトラヒドロナフタレン(5’)、無定形固体

H NMR(CDCl、テトラメチルシラン)δ(ppm):7.2−6.5(m、12H、Ph)、4.68(dt、1H、J=5.1、11.7Hz、2−H)、4.13(d、1H,J=10.5Hz、4−H)、3.76(dd、1H、J=11.7、16.2Hz、1−Htrans)、3.67(s、3H、OCH)、3.65(dd、1H、J=5.1、16.2Hz、1−Hcis)、3.21(dd、1H、J=10.5、11.7Hz、3−H)、m、1H)、1.23(s、9H、C(CH).

赤外吸収スペクトル(KBr)cm−1:2971、1750、1610、1503、1271、1119、1032.
質量スペクトルm/e:計算値(C2829IO+Na)として563.11、実験値563.11.
【0060】
2−ヨード−4−(4−メトキシフェニル)−3−フェニル−7−ピバロイルオキシ−1,2,3,4−テトラヒドロナフタレン(15)無色油状

H NMR(CDCl、テトラメチルシラン)δ(ppm):7.3−6.6(m、1H、Ph)、4.77(ddd、1H、J=5.1、11.7、12.0Hz、2−H)、4.19(d、1H,J=10.2Hz、4−H)、3.87(dd、1H、J=11.7、15.9Hz、1−H trans)、3.75(dd、1H、J=5.1、15.9Hz、1−Hcis)、3.72(s、3H、OCH3)、3.32(dd、1H、J=10.2、12.0Hz、3−H)、1.35(s、9H、C(CH3)3).

赤外吸収スペクトル(液膜法)cm−1:2972、1750、1603、1571、1504、1266、1202、1119、1032.
質量スペクトルm/e:計算値(C2829IO+Na)+として563.11、実験値563.11.
【0061】
<実施例6>(脱ハロゲン化水素による二重結合形成反応と生成する二重結合の転位を同時に行った例)
4−(4−ヒドロキシフェニル)−7−メトキシ−3−フェニル−1,2−ジヒドロナフタレン(ナフォキシジンおよびラソフォキシフェンの共通中間体:7)
【0062】
【化39】


アルゴン雰囲気下、0.5mol/Lカリウム−t−ブトキシド・ジメチルスルホキシド溶液(1.10mL、0.55mmol)を2−ヨード−7−メトキシ−3−フェニル−4−(4−ピバロイルオキシフェニル)−1,2,3,4−テトラヒドロナフタレン(5’、74.4mg,0.138mmol)に加えて溶かし、得られた濃紫色溶液を90℃で1時間加熱攪拌した。その後、反応混合物を氷冷して、これに飽和塩化アンモニウム水溶液(7mL)を加え、よく攪拌した後、ヘキサン/ジエチルエーテル(1:1)混合液(4mL)で4回抽出した。有機層を集合し、無水硫酸ナトリウムで乾燥した後、これを濃縮した。残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(ヘキサン/酢酸エチル4:1)で精製すると、実施例4と同一の標題化合物(7)が得られた(41.1mg、収率89%)。
なお、ジメチルスルホキシドは使用前に予めよく脱気したものを用いた。
【0063】
<実施例7>
7−メトキシ−3−フェニル−4−[4−(2−ピロリジン−1−イルエトキシ)]フェニル−1,2−ジヒドロナフタレン(ナフォキシジン:21)
【0064】
【化40】


アルゴン雰囲気下、4−(4−ヒドロキシフェニル)−7−メトキシ−3−フェニル−1,2−ジヒドロナフタレン(7、31.7mg,0.0965mmol)をN,N−ジメチルホルムアミド(1mL)に溶かし、これに室温で60%水素化ナトリウム(13.4mg、0.335mmol)を加えて20分攪拌した。
この混合物に塩化ピロリジノエチル塩酸塩(33.4mg、0.196mmol)を加えて、50℃で11時間攪拌した。その後反応混合物を氷冷して、飽和塩化アンモニウム溶液を注いで反応を停止し、酢酸エチルで4回抽出した。有機層を集合して無水硫酸ナトリウムで乾燥し、これを濃縮し、残渣を薄層クロマトグラフィー(ヘキサン/酢酸エチル/濃アンモニア水7:3:1)で精製すると淡黄色油状物質として標題化合物(21:ナフォキシジン)が得られた(33.5mg、収率82%)。

H NMR(CDCl、テトラメチルシラン)δ(ppm):7.2−6.5(m、12H、Ph)、4.18(t、2H、J=3.6Hz、OCH)、3.80(s、3H、OCH)、3.04(t、2H、J=3.6Hz、NCH)、2.94(m、2H、1−H)、2.84(m、4H,ピロリジン2−H)、2.77(m、2H,2−H)、1.90(m、4H、ピロリジン3−H).

赤外吸収スペクトル(液膜法)cm−1:3031、2936、1669、1606、1568、1508、1241、1174、1037.
質量スペクトルm/e:計算値(C2931NO+H)として426.24、実験値426.24.
【0065】
<実施例8>
7−メトキシ−3−フェニル−4−[4−(2−(ピロリジン−1−イル)エトキシ)]フェニル−1,2,3,4−テトラヒドロナフタレン(16)
【0066】
【化41】


耐圧容器中、7−メトキシ−3−フェニル−4−[4−(2−(ピロリジン−1−イル)エトキシ)]フェニル−1,2−ジヒドロナフタレン(21、36.0mg,0.0846mmol)をエタノール(3mL)に溶解し、水酸化パラジウム炭素(36.0mg)を加えて水素を容器に満たし、密閉して50℃、0.25MPaで22時間攪拌した。その後、触媒をセライト層を通過させることで濾過分離し、濾層を酢酸エチルで洗浄し、有機層を集合して濃縮すると標題化合物(16)が無色油状物として得られた(25.2mg、収率70%)。

H NMR(CDCl、テトラメチルシラン)δ(ppm):7.2−6.6(m、8H、Ph)、6.55(d、2H、J=8.7Hz、Ph)、6.31(d、2H、J=8.7Hz、Ph)、4.24(d、1H、J=5.1Hz、4−H)、4.00(t、2H、J=6.0Hz、OCH)、3.82(s、3H、OCH)、3.36(ddd、1H、J=2.1、5.1、12.9Hz、3−H)、3.06(m、2H、1−H)、2.85(t、2H、J=6.0Hz、NCH)、2.7−2.5(m、4H、ピロリジン2−H)、2.19(m、1H、2−H)、1.80(m、1H、2−H)、1.7−1.8(m、4H、ピロリジン3−H).

赤外吸収スペクトル(液膜法)cm−1:2932、1608、1506、1460、1240、1178、1155、1038、823.
質量スペクトルm/e:計算値(C2933NO+H)として428.26、実験値428.26.
Cameronらは、公表特許公報(特表平10−503215)において上記の塩酸塩化合物について記述している。上記H−NMRおよび質量スペクトルは、Cameronらが報告している塩酸塩のものとよい相関を示している。
【0067】
<実施例9>
7−ヒドロキシ−3−フェニル−4−[4−(2−ピロリジン−1−イルエトキシ)]フェニル−1,2,3,4−テトラヒドロナフタレン(20:ラソフォキシフェン)
【0068】
【化42】


7−メトキシ−3−フェニル−4−[4−(2−ピロリジン−1−イルエトキシ)]フェニル−1,2,3,4−テトラヒドロナフタレン(16、10.1mg、0.0236mmol)を塩化メチレン(0.6mL)に溶解し、−78℃に冷却してから1mol/L三臭化ホウ素・塩化メチレン溶液(120μL、0.12mmol)をゆっくり滴下した。その後、−23℃に昇温して1時間保持し、更に0℃で2時間反応させた。その後、飽和重曹水溶液を加えて反応を停止し、塩化メチレンを加えて抽出した。更に、酢酸エチルで3回抽出した後有機層を集合し、無水硫酸ナトリウムで乾燥し、濃縮した。残渣を薄層クロマトグラフィー(塩ヘキサン・酢酸エチル・濃アンモニア水3:6:1)で精製するとラソフォキシフェン(20)が微黄色油状物として得られた(7.4mg、収率76%)。

H NMR(CDCl、テトラメチルシラン)δ(ppm):7.1−6.4(m、8H、Ph)、6.27(d、2H、J=8.7Hz、Ph)、6.16(d、2H、J=8.7Hz、Ph)、4.10(d、1H、J=4.8Hz、4−H)、3.91(t、2H、J=4.2Hz、OCH)、3.24(dd、1H、J=4.8、11.4Hz、3−H)、3.0−2.6(m、8H、1−H、NCH、ピロリジン2−H)、2.00(m、1H、2−H)、1.8(m、4H、ピロリジン3−H)、1.65(m、1H、2−H).

赤外吸収スペクトル(液膜法)cm−1:3471、2928、2873、1668、1506、1455、1177、1035、823、757.
質量スペクトルm/e:計算値(C2831NO+H)として414.24、実験値414.24.
上記スペクトルは、Cameronらが公表特許公報(特表平10−503215)で記述しているものとよい一致を示している。
【図面の簡単な説明】
【0069】
【図1】本発明のラソキシフェン及びナフォキシジンの製造方法の概略を示す図である。
【図2】本発明の実施例1〜9の反応工程の概略を示す図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
以下の工程を順次行なうことを特徴とするラソフォキシフェン又はナフォキシジン、若しくはこれらの類縁体の製造方法。
(a):下記式(1)、(2)及び(3)で表わされる化合物を、酸触媒の存在下反応させることにより式(4)で表わされる化合物又はその異性体混合物を生成させる工程、
【化1】

(但し、式中、Rは、水素、アルキル基、アシル基、脂環式基又は芳香族基を表わし、Rは、水素、アルキル基、アシル基、脂環式基、芳香族基、ハロゲン、水酸基、アルキルオキシ基、アシルオキシ基、シアノ基及びニトロ基から選ばれた1種以上の置換基を表わし、nは1〜4の整数を表わす。)
【化2】

(但し、式中、R’は、水素、アルキル基、アシル基、脂環式基、芳香族基、ハロゲン、水酸基、アルキルオキシ基、アシルオキシ基、シアノ基から選ばれた1種以上の置換基を表わし、Mは、珪素、ホウ素、スズ、亜鉛又はマグネシウムを表わし、Rは水素、アルキル基、アシル基、脂環式基、芳香族基、ハロゲン、水酸基、アルキルオキシ基、アシルオキシ基、シアノ基、ニトロ基から選ばれた1種以上の置換基を表わし、また、mは1〜5の整数を表わし、pは1〜4の整数を表わす。)
【化3】

(但し、式中、Rは、水素、アルキル基、アシル基、脂環式基又は芳香族基を表わし、Rは水素、アルキル基、アシル基、脂環式基、芳香族基、ハロゲン、水酸基、アルキルオキシ基、アシルオキシ基から選ばれた1種以上の置換基を表わし、qは1〜3の整数を表わす。)
【化4】


(b):式(4)で表わされる化合物又はその異性体混合物をハロゲン誘導炭素環形成反応により、以下の式(5)で表わされる化合物を得る工程、
【化5】


(c):上記式(5)で表わされる化合物又はその異性体混合物を、アルコラート及び/又はアミン系塩基の存在下、脱ハロゲン化水素、二重結合の転位及びR基脱離反応を行なって以下の式(8)で表わされる化合物を得る工程、
【化6】

(但し、式中R〜R、並びにn、m及びqは、それぞれ上記と同様である。)

(d):式(8)該化合物を1−ピロリジノエチル化することにより、ナフォキシジン又はその類縁体を得る工程、あるいは式(8)の化合物に対し水素添加した後、1−ピロリジノエチル化するか、又は1−ピロリジノエチル化後、水素添加し、次いでR基除去を行なってラソフォキシフェン又はその類縁体を得る工程。
【請求項2】
以下の工程を順次行なうことを特徴とする、式(5)で表わされる化合物又はその異性体混合物の製造方法。
(a):下記式(1)、(2)及び(3)で表わされる化合物を、酸触媒の存在下反応させることにより式(4)で表わされる化合物又はその異性体混合物を生成させる工程、
【化7】

(但し、式中、Rは、水素、アルキル基、アシル基、脂環式基又は芳香族基を表わし、Rは、水素、アルキル基、アシル基、脂環式基、芳香族基、ハロゲン、水酸基、アルキルオキシ基、アシルオキシ基、シアノ基及びニトロ基から選ばれた1種以上の置換基を表わし、nは1〜4の整数を表わす。)
【化8】

(但し、式中、R’は、水素、アルキル基、アシル基、脂環式基、芳香族基、ハロゲン、水酸基、アルキルオキシ基、アシルオキシ基、シアノ基から選ばれた1種以上の置換基を表わし、Mは、珪素、ホウ素、スズ、亜鉛又はマグネシウムを表わし、Rは水素、アルキル基、アシル基、脂環式基、芳香族基、ハロゲン、水酸基、アルキルオキシ基、アシルオキシ基、シアノ基、ニトロ基から選ばれた1種以上の置換基を表わし、また、mは1〜5の整数を表わし、pは1〜4の整数を表わす。)
【化9】

(但し、式中、Rは、水素、アルキル基、アシル基、脂環式基又は芳香族基を表わし、Rは水素、アルキル基、アシル基、脂環式基、芳香族基、ハロゲン、水酸基、アルキルオキシ基、アシルオキシ基から選ばれた1種以上の置換基を表わし、qは1〜3の整数を表わす。)
【化10】


(b):式(4)で表わされる化合物又はその異性体混合物をハロゲン誘導炭素環形成反応により、以下の式(5)で表わされる化合物又はその異性体混合物を得る工程、
【化11】

【請求項3】
下記式(5)で表わされる化合物又はその異性体混合物にアルコラート及び/又はアミン系塩基を作用させて、脱ハロゲン化水素、二重結合の転位及びR基脱離反応を行ない、式(8)で表わされる化合物を生成させることを特徴とする、下記式(8)の化合物の製造方法。
【化12】

【化13】

(但し、式中R〜R、並びにn、m及びqは、それぞれ上記と同様である。)
【請求項4】
下記式(8)の化合物を1−ピロリジノエチル化することを特徴とするナフォキシジン又はその類縁体の製造方法。
【化14】

【請求項5】
下記式(8)の化合物に対し、水素添加後、1−ピロリジノエチル化するか、あるいは1−ピロリジノエチル化した後、水素添加し、次いで、R基除去を行なうことを特徴とする、ラソフォキシフェン又はその類縁体の製造方法。
【化15】

(但し、式中R〜R、並びにn、m及びqは、それぞれ上記と同様である。)
【請求項6】
以下の、式(5)で表わされる化合物又はその異性体混合物。
【化16】

【請求項7】
以下の式(8)で表わされる化合物。
【化17】

(但し、式中R〜R、並びにn、m及びqは、それぞれ上記と同様である。)

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2007−224016(P2007−224016A)
【公開日】平成19年9月6日(2007.9.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−1114(P2007−1114)
【出願日】平成19年1月9日(2007.1.9)
【出願人】(803000115)学校法人東京理科大学 (545)
【Fターム(参考)】