説明

ラダー型フィルタ

【課題】本発明は携帯電話や無線LAN端末等に用いられるラダー型フィルタにおいて、横モードに起因するスプリアスの抑制と、ラダー型フィルタの小型化を両立することを目的とする。
【解決手段】この目的を達成するために、ラダー型フィルタ7は、圧電基板8の上に直列腕の弾性波共振器9,10と並列腕の弾性波共振器11,12とを梯子状に設け、弾性波共振器9〜12はそれぞれ、第1のバスバーから延伸した電極指と第2のバスバーから延伸した電極指とが交差してなる複数の電極指対を備えた櫛歯電極を有し、並列腕に設けた弾性波共振器11が有する櫛歯電極11aにおいて、第1のバスバーから延伸した電極指と第2のバスバーから延伸した電極指との電極交差幅Dは、櫛歯電極11aにより励振される弾性波の波長の23倍以上とした構成とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、携帯電話や無線LAN端末等に用いられるラダー型フィルタに関する。
【背景技術】
【0002】
図6に示すように、従来のラダー型フィルタ1は、圧電基板2の上に直列腕の弾性波共振器3、4と、並列腕の弾性波共振器5、6とを梯子状に並べて構成されていた。このラダー型フィルタ1において、弾性波共振器5は、櫛歯電極5aと櫛歯電極5bとを縦列に接続し、櫛歯電極5aの電極交差幅D1と櫛歯電極5bの電極交差幅D2とを異ならせることにより、横モードに起因する共振周波数の近傍のスプリアスを抑制していた。
【0003】
なお、この出願の発明に関する先行技術文献情報としては、例えば、特許文献1が知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】国際公開第2009/060594号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従来のラダー型フィルタ1において、弾性波共振器5の容量を確保するために櫛歯電極5aと櫛歯電極5bの電極指対の数を増やす必要があるため、櫛歯電極5a、5bは電極指対の配列方向に長くなっていた。この結果、ラダー型フィルタ1のサイズが大きくなっていた。特に、UMTS(Universal Mobile Telecommunications System)で定められたBand8などの低い周波数帯に用いられる場合には、電極指間の距離(ピッチ)を大きくする必要があるため、ラダー型フィルタ1のサイズは非常に大きくなっていた。
【0006】
そこで、本発明は、横モードに起因するスプリアスの抑制と、ラダー型フィルタの小型化を両立することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
そこで、本発明のラダー型フィルタは、圧電基板の上に複数の弾性波共振器を直列腕及び並列腕に梯子状に設け、複数の弾性波共振器はそれぞれ、第1のバスバーから延伸した電極指と第2のバスバーから延伸した電極指とが交差してなる複数の電極指対を備えた櫛歯電極を有し、並列腕に設けた弾性波共振器が有する櫛歯電極において、第1のバスバーから延伸した電極指と第2のバスバーから延伸した電極指との電極交差幅は、この櫛歯電極により励振される弾性波の波長の23倍以上とした構成とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明のラダー型フィルタは、横モードに起因するスプリアスの抑制と、ラダー型フィルタの小型化を両立することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】本発明の実施の形態におけるラダー型フィルタの構成を示す模式平面図
【図2A】本発明の実施の形態におけるラダー型フィルタについて、電極交差幅Dと電極指対の数とを変化させた場合の通過特性図
【図2B】図2Aに示した各通過特性図における、電極交差幅Dと電極指対の数との条件を示す図
【図3】本発明の実施の形態におけるラダー型フィルタの別の例の構成を示す模式平面図
【図4】本発明の実施の形態におけるラダー型フィルタのさらに別の例の構成を示す模式平面図
【図5A】本発明の実施の形態におけるラダー型フィルタに係る、並列腕の弾性波共振器の他の例の構成を示す模式平面図
【図5B】本発明の実施の形態におけるラダー型フィルタに係る、並列腕の弾性波共振器の他の例の構成を示す図5Aの5B線による断面図
【図5C】本発明の実施の形態におけるラダー型フィルタに係る、並列腕の弾性波共振器のさらに他の例の構成を示す断面図
【図6】従来のラダー型フィルタの構成を示す模式平面図
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の実施の形態を図面を参照しながら説明する。
【0011】
(実施の形態1)
図1は、本発明の実施の形態におけるラダー型フィルタ7の構成を示す模式平面図である。
【0012】
図1に示したように、ラダー型フィルタ7は、圧電基板8の上に、直列腕の弾性波共振器9,10と、並列腕の弾性波共振器11,12とを梯子状に並べて構成されている。弾性波共振器9,10,11,12はそれぞれ、櫛歯電極9a,10a,11a,12aを有している。
【0013】
櫛歯電極9a〜12aはそれぞれ、第1のバスバー13,23,33,43から延伸した電極指14,24,34,44と、第2のバスバー15,25,35,45から延伸した電極指16,26,36,46とが交差してなる、複数の電極指対を備えている。なお、櫛歯電極9a〜12aはそれぞれ、両端に反射器17,18,27,28,37,38,47,48を備えていてもよい。両端に反射器17,18,27,28,37,38,47,48を備えた場合には、弾性波を櫛歯電極9a〜12aそれぞれの内部に閉じ込める効果が増大し、櫛歯電極9a〜12aそれぞれのQ値を高めることができる。
【0014】
以下、本実施の形態におけるラダー型フィルタ7を構成する各構成要素について詳述する。
【0015】
圧電基板8は、板厚100〜350μm程度の単結晶圧電基板からなる。圧電基板8は、例えば、水晶、タンタル酸リチウム系、ニオブ酸リチウム系、又はニオブ酸カリウム系の基板である。
【0016】
なお、以下においては、圧電基板8としてニオブ酸リチウム系の基板を用いた場合について説明する。これにより、電気機械結合係数を大きくすることができ、通過帯域が広いフィルタを構成することができる。
【0017】
なお、圧電基板8として、カット角が−15°〜+35°の範囲のYカットX伝搬のニオブ酸リチウム基板を用いることにより、電気機械係数をさらに大きくすることができる。以下の説明においては、カット角が5°回転YカットX伝搬のニオブ酸リチウム基板を用いる。
【0018】
櫛歯電極9a〜12aは、膜厚が0.1〜0.5μm程度の電極である。櫛歯電極9a〜12aは、例えば、アルミニウム、銅、銀、金、チタン、タングステン、白金、クロム、ニッケルおよびモリブデンのうち、少なくとも一種からなる単体金属、これらを主成分とする合金、または、これらの金属が積層されて構成されている。櫛歯電極9a〜12aは、圧電基板8の上に、例えば、スパッタリングまたは蒸着によって形成されている。
【0019】
ここで、並列腕の弾性波共振器11が有する櫛歯電極11aについて、詳細に説明する。櫛歯電極11aにおいては、第1のバスバー33から延伸した電極指34と第2のバスバー35から延伸した電極指36との電極交差幅Dを、櫛歯電極11aにより励振される弾性波の波長の23倍以上としている。
【0020】
本実施の形態においては、ラダー型フィルタ7をUMTSで定められたBand8の送信フィルタ(通過帯域は880MHz−915MHz)として用いている。圧電基板8としてニオブ酸リチウムを用いた場合、電極指34と電極指36との間の距離(ピッチ)を約2.17μmとすることにより、櫛歯電極11aにより励振される弾性波の波長λは約4.34μmとなり、櫛歯電極11aの共振周波数を約880MHzとすることができる。
【0021】
本実施の形態においては、櫛歯電極11aの電極交差幅Dを約100μmとして、弾性波の波長λ(約4.34μm)の約23倍としている。
【0022】
図2Aは、本発明の実施の形態におけるラダー型フィルタ7について、電極交差幅Dと電極指対の数とを変化させた場合の通過特性図である。図2Aにおいて、横軸は周波数を表し、縦軸はアドミタンスを表している。
【0023】
また、図2Bは、図2Aに示した各通過特性図における、電極交差幅Dと電極指対の数との条件を示す図である。
【0024】
図2Bに示したように、通過特性(a)は、櫛歯電極11aの電極交差幅Dを50μm(λの12倍)とし、電極指対の数を150とした場合の通過特性である。
【0025】
通過特性(b)は、櫛歯電極11aの電極交差幅Dを75μm(λの17倍)とし、電極指対の数を100とした場合の通過特性である。
【0026】
通過特性(c)は、櫛歯電極11aの電極交差幅Dを100μm(λの23倍)とし、電極指対の数を75とした場合の通過特性である。
【0027】
通過特性(d)は、櫛歯電極11aの電極交差幅Dを150μm(λの35倍)とし、電極指対の数を50とした場合の通過特性である。
【0028】
通過特性(e)は、櫛歯電極11aの電極交差幅Dを200μm(λの46倍)とし、電極指対の数を32.5とした場合の通過特性である。
【0029】
なお、通過特性(a)〜(e)は、それぞれ、櫛歯電極11aの容量が同じになるように、電極交差幅D及び電極指対の数を設定した場合の通過特性を示している。通過特性(a),(b)は、電極交差幅Dが弾性波の波長λの23倍未満である場合の通過特性を示しており、通過特性(c),(d),(e)は、電極交差幅Dが弾性波の波長λの23倍以上である場合の通過特性を示している。
【0030】
図2Aに示した、通過特性(a),(b)においては、共振周波数frと反共振周波数faの間において、横モードに起因するスプリアスSが発生している。この結果、アドミタンスはそれぞれ約−47dB,−49dBとなっている。一方、通過特性(c),(d),(e)においては、通過特性(a),(b)と比べて、十分にスプリアスが抑制されており、アドミタンスはそれぞれ約−52dB、−56dB、−53dBとなっている。
【0031】
図2Aに示したように、櫛歯電極11aの電極交差幅Dを大きくするに従って、相対的に横モードに起因するスプリアスが小さくなっている。横モードに起因するスプリアスは、第1のバスバー33と第2のバスバー35との間、特に両電極指34,36の交差領域において、横モードの定在波が発生することにより生じる。しかしながら、電極交差幅Dを大きくするに従って、横モードの高調波が増加するため、横モードスプリアスが分散する。この結果、低次の横モードスプリアスのエネルギーが減少し、共振周波数frと反共振周波数faとの間に発生するスプリアスが小さくなっているものと考えられる。
【0032】
このように、並列腕の弾性波共振器11において、櫛歯電極11aの電極交差幅Dを弾性波の波長λの23倍以上とすることにより、横モードに起因するスプリアスを抑制することができる。このように、本実施の形態のラダー型フィルタ7においては、電極交差幅Dを、弾性波の波長λよりも大きくしているので共振器抵抗が高まるが、電極交差幅Dを弾性波の波長λの23倍以上とする弾性波共振器を並列腕の弾性波共振器11とすることで、横モードに起因するスプリアスを抑制して、挿入損失の増大を防止することができる。
【0033】
また、本実施の形態のラダー型フィルタ7においては、電極指対の数を増やす必要がないため、小型化が可能である。
【0034】
さらに、直列腕の弾性波共振器9,10における櫛歯電極9a,10aの電極交差幅Da,Dbのうち、少なくとも一方を、弾性波の波長λの23倍未満とすることが望ましい。これにより、直列腕の弾性波共振器9,10の電極指対の数を多く確保することができ、この結果、共振器抵抗が抑制され、ラダー型フィルタ7の挿入損失を低減することができる。
【0035】
本実施の形態のラダー型フィルタ7は、1GHz未満の通過帯域を使用する通信システムにおいて特に効果的である。櫛歯電極9a〜12aにおける電極指間の距離(ピッチ)は波長に略比例する。このため、1GHz未満の通過帯域を使用する通信システムにおいては、電極指間のピッチを約2μm以上とする必要がある。
【0036】
また、ラダー型フィルタ7を構成する櫛歯電極9a〜12aのインピーダンスは、容量Cと周波数との積に略反比例するため、櫛歯電極のインピーダンスを一定としたときに、周波数が低くなるほど、電極指対の数を増やして櫛歯電極9a〜12aの容量を大きくする必要がある。このため、図6に示した従来のラダー型フィルタ1のように、櫛歯電極5a,5bを縦列に接続した場合には、電極指の配列方向の幅が非常に大きくなってしまう。例えば、通過帯域が2GHzの場合と比較すると、1GHzの場合には、櫛歯電極の電極指の配列方向の幅が約4倍となる。
【0037】
一方、本実施の形態のラダー型フィルタ7によれば、電極指34,36の配列方向の幅を大きくせずに、横モードに起因するスプリアスを抑制することができる。従って、周波数が低くなるほど本発明の小型化効果が顕著となるので、本実施の形態のラダー型フィルタ7は、通過帯域が1GHz未満のシステムにおいて、特に有用である。
【0038】
次に、本実施の形態におけるラダー型フィルタ7の別の構成例について説明する。
【0039】
図3は、本発明の実施の形態におけるラダー型フィルタの、別の例の構成を示す模式平面図である。
【0040】
図3に示したように、ラダー型フィルタ57は、図1に示したラダー型フィルタ7と比較して、直列腕の弾性波共振器59の構成が異なる。
【0041】
ラダー型フィルタ57の直列腕の弾性波共振器59は、櫛歯電極59bと櫛歯電極59cとを縦列に接続し、櫛歯電極59bの電極交差幅D3と櫛歯電極59cの電極交差幅D4とを異ならせた構成である。
【0042】
ラダー型フィルタ57においても、並列腕の弾性波共振器11,12および直列腕の弾性波共振器10の構成は、図1に示したラダー型フィルタ7と共通している。
【0043】
この構成により、弾性波共振器59を用いたラダー型フィルタ57においても、前述した並列腕の弾性波共振器11を含んでいるので、横モードに起因するスプリアスを抑圧することができる。
【0044】
図3に示したラダー型フィルタ57のように、その直列腕に設けられる弾性波共振器59において、複数の櫛歯電極59b,59cを縦列に接続し、それぞれの電極交差幅D3,D4を異ならせる構成とすることにより、耐電力性を実現しながら、横モードに起因するスプリアスを抑圧することができる。
【0045】
なお、ラダー型フィルタ57において、直列腕の弾性波共振器59と、並列腕の弾性波共振器11とは隣接して設けられている。図3に示したように、櫛歯電極59bと櫛歯電極59cとを縦列に接続して弾性波共振器59を構成した場合には、櫛歯電極59b及び櫛歯電極59cの電極指対の数が増えるため、弾性波共振器59のサイズが大きくなる。
【0046】
この場合においても、隣接する並列腕の弾性波共振器11における横モードに起因するスプリアスを抑圧する手段として、電極交差幅Dを弾性波の波長λの23倍以上とする構成を採用することが望ましい。すなわち、弾性波共振器59における櫛歯電極59bおよび櫛歯電極59cを、隣接する弾性波共振器11が有する櫛歯電極11aと比べて、電極指対の数が多く、かつ、電極交差幅D3,D4を、電極交差幅Dよりも小さい構成とすることが望ましい。
【0047】
この構成により、隣接する弾性波共振器59と弾性波共振器11とにおいて、共に電極指対の数が増加することを防げるので、耐電力性を確保しつつ、横モードに起因するスプリアスを抑制し、さらに小型なラダー型フィルタ57を得ることができる。
【0048】
ここで、本実施の形態におけるラダー型フィルタのさらに別の例について説明する。
【0049】
図4は、本発明の実施の形態におけるラダー型フィルタのさらに別の例の構成を示す模式平面図である。図4に示したように、ラダー型フィルタ67においては、図3に示したラダー型フィルタ57と比較して、直列腕の弾性波共振器60および並列腕の弾性波共振器62の構成が異なる。弾性波共振器60においては、櫛歯電極60bと櫛歯電極60cとを縦列に接続し、櫛歯電極60bの電極交差幅D5と櫛歯電極60cの電極交差幅D6とを異ならせている。ラダー型フィルタ67における直列腕の弾性波共振器59および並列腕の弾性波共振器11の構成は、図3に示したラダー型フィルタ57と共通している。
【0050】
このとき、図4に示したように、ラダー型フィルタ67における、並列腕の弾性波共振器62の櫛歯電極62aの電極交差幅D7を、弾性波共振器11と同様に弾性波の波長λの23倍以上としてもよい。この構成により、さらに横モードに起因するスプリアスの抑圧と小型化を両立したラダー型フィルタを実現することができる。
【0051】
なお、上述したラダー型フィルタ7,57,67において、各弾性波共振器の上面に誘電体膜を有する構成としてもよい。ここでは、並列腕の弾性波共振器11を例として説明する。
【0052】
図5Aは、本発明の実施の形態におけるラダー型フィルタに係る、並列腕の弾性波共振器の他の例の構成を示す模式平面図である。また、図5Bは、本発明の実施の形態におけるラダー型フィルタに係る、並列腕の弾性波共振器の他の例の構成を示す断面図である。図5Aに示したように、弾性波共振器61において、櫛歯電極11a、反射器37,38の構成は、図1に示したラダー型フィルタ7の弾性波共振器11と共通している。弾性波共振器61においては、圧電基板8の上に、電極指34と電極指36とが交差する交差領域C1を覆うように、誘電体膜24を設けている。
【0053】
また、図5Bに示したように、誘電体膜24は、圧電基板8上に、少なくとも交差領域C1を覆うように設けられている。本実施の形態においては、電極指34,36の膜厚を3440Å(波長で規格化した規格化膜厚は8%)、誘電体膜24の膜厚を15000Å(規格化膜厚は35%)としている。このように、電極指34,36の膜厚よりも、誘電体膜24の膜厚を厚くすることにより、櫛歯電極11aの共振周波数付近に現れる不要なレイリー波に起因するスプリアスをも抑制することができる。
【0054】
このように、櫛歯電極11aにおいて、圧電基板8の上に、電極指34と電極指36とが交差する交差領域C1を覆うように誘電体膜24を設けた場合には、誘電体膜24の両端部が横モードの波の境界となるため、誘電体膜24の幅C2の間に横モードの定在波が生じる。したがって、図5Aおよび図5Bに示した弾性波共振器61の構成においては、誘電体膜24の幅C2を櫛歯電極11aにより励振される弾性波の波長λの23倍以上とすることにより、横モードに起因するスプリアスを抑圧することができる。また、交差領域C1の幅と誘電体膜24の幅C2とを同一としてもよい。この構成により、横モード波に起因するスプリアスをより効果的に抑制することができる。
【0055】
図5Cは、本発明の実施の形態におけるラダー型フィルタに係る、並列腕の弾性波共振器のさらに他の例の構成を示す断面図である。図5Cに示したように、弾性波共振器62の誘電体膜24における第1のバスバー33および第2のバスバー35と対向する側面24a,24bを高さ方向に傾斜を有するテーパー状としてもよい。側面24a,24bのいずれかをこのようなテーパー形状とすることにより、第1のバスバー33と第2のバスバー35との間に発生する横モードの定在波の波長を高さ方向で異ならせることができる。これにより、横モードに起因するスプリアスを効果的に分散させることができる。
【0056】
なお、図5Bに示した弾性波共振器61、および、図5Cに示した弾性波共振器62における誘電体膜24としては、二酸化ケイ素(SiO2)のように、圧電基板8とは逆の周波数温度特性を有する媒質を用いることが望ましい。この構成により、ラダー型フィルタの周波数温度特性を向上することができる。
【0057】
誘電体膜24は、圧電基板8の上に、少なくとも電極指34と電極指36とが交差する交差領域C1を覆うように、例えば、スパッタリング、蒸着またはCVD法により形成される。なお、誘電体膜24の上面を、電極指34,36の上部が凸形状となるように、凹凸を有する形状としてもよい。この構成により、レイリーモードに起因するスプリアスを効果的に抑圧することができる。
【産業上の利用可能性】
【0058】
本発明のラダー型フィルタは、横モードに起因するスプリアスの抑制と、ラダー型フィルタの小型化を両立することができるので、携帯電話や無線LAN端末等において有用である。
【符号の説明】
【0059】
7 ラダー型フィルタ
8 圧電基板
9〜12 弾性波共振器
9a,10a 櫛歯電極
11a,12a 櫛歯電極
13 第1のバスバー
14 電極指
15 第2のバスバー
16 電極指
17,18 反射器
24 誘電体膜

【特許請求の範囲】
【請求項1】
圧電基板の上に、複数の弾性波共振器を直列腕および並列腕に梯子状に設けたラダー型フィルタであって、
前記複数の弾性波共振器はそれぞれ櫛歯電極を備え、前記櫛歯電極は、第1のバスバーから延伸した電極指と第2のバスバーから延伸した電極指とが交差してなる複数の電極指対を有し、
前記並列腕に設けた弾性波共振器が有する前記櫛歯電極において、前記第1のバスバーから延伸した電極指と、前記第2のバスバーから延伸した電極指との電極交差幅を、前記櫛歯電極により励振される弾性波の波長の23倍以上としたラダー型フィルタ。
【請求項2】
前記直列腕に設けた弾性波共振器が備える前記櫛歯電極において、前記第1のバスバーから延伸した前記電極指と前記第2のバスバーから延伸した前記電極指との電極交差幅を、前記櫛歯電極により励振される弾性波の波長の23倍未満とした請求項1に記載のラダー型フィルタ。
【請求項3】
前記並列腕に設けた弾性波共振器と隣接する、前記直列腕に設けた弾性波共振器は、前記並列腕に設けた弾性波共振器が備える前記櫛歯電極と比べて、前記複数の電極指対の数が多く、かつ、電極交差幅の小さい複数の前記櫛歯電極を縦列接続してなる請求項1に記載のラダー型フィルタ。
【請求項4】
前記並列腕に設けた弾性波共振器が備える前記櫛歯電極において、前記第1のバスバーから延伸した複数の前記電極指と前記第2のバスバーから延伸した複数の前記電極指とが交差する交差領域の上部に誘電体膜を設け、
前記誘電体膜の幅を、前記並列腕に設けた弾性波共振器が備える前記櫛歯電極により励振される弾性波の波長の23倍以上とした請求項1に記載のラダー型フィルタ。
【請求項5】
前記誘電体膜における、前記第1のバスバーと対向する側面および前記第2のバスバーと対向する側面のうち、少なくとも一方が、高さ方向に傾斜を有する請求項4に記載のラダー型フィルタ。

【図1】
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【図2A】
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【図2B】
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【図3】
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【図4】
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【図5A】
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【図5B】
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【図5C】
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【図6】
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【公開番号】特開2011−205625(P2011−205625A)
【公開日】平成23年10月13日(2011.10.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−41352(P2011−41352)
【出願日】平成23年2月28日(2011.2.28)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】