説明

ラテックス組成物およびラテックス組成物の製造方法

【課題】本発明の課題は、ホルマリン発生量が少なく、さらに塗布性、液安定性、液の保存安定性に優れたラテックス組成物、および該ラテックス組成物の製造方法を提供する事を目的とする。
【解決手段】ラテックスと、分子中に置換または無置換のアルキレンオキサイド基を有する界面活性剤、および酸化防止剤を含有する事を特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ラテックス組成物およびラテックス組成物の製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
ラテックスは、塗料、接着剤、紙加工剤、または繊維加工剤等として広く用いられており、その製造法として乳化重合法が多く用いられている。乳化重合法によって得られたラテックスは溶媒として水を用いるため、環境保全や作業安全性の観点から、工業的な重要性が高まってきている。このような背景から、 例えば塗料業界でも溶剤型塗料から水系エマルジョン型塗料への転換が急速に進められている。
【0003】
乳化重合法に用いられる乳化重合用乳化剤としては、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル等の非イオン性界面活性剤や、アルキルベンゼンスルホン酸塩、ポリオキシエチレンアルキル硫酸エステル塩、ポリオキシエチレンアルキルフェニル硫酸エステル塩、および高級脂肪酸塩等の陰イオン性界面活性剤が挙げられる。これらの乳化重合用乳化剤は、乳化重合を円滑に進め、凝集物の発生を抑えることが目的であるが、生成したラテックスや得られたポリマーの物性にも影響を与える重要なものである。
【0004】
上記記載の乳化重合用乳化剤の中でもアルキルフェノール等にエチレンオキサイド等のアルキレンオキサイドを付加した非イオン性界面活性剤又はこれを硫酸エステル化した陰イオン性界面活性剤は、凝集物の発生が少なく、重合安定性が良好である等の特徴を有するため、広範囲に使用されている(例えば、特許文献1、およびその中の引用文献参照。)。
【0005】
さらに、熱現像感光材料は、種々の素材とバインダーを含有する熱現像感光材料塗工用組成物を支持体上に塗工する事により製造されるものであり、熱現像感光材料塗工用組成物に含有されるバインダーとして、ゼラチンやポリビニルブチラールのようなポリマー類やラテックスが用いられている。この中でラテックスは、塗布性に優れ、かつ膜付き、膜割れ等の膜物性に優れた熱現像感光材料を得る為に有用なバインダーである(例えば、特許文献2,3参照。)。しかしながら、ラテックスを用いた熱現像感光材料塗工用組成物は液の機械的安定性に劣り、また経時によって熱現像感光材料の性能が変動するなど、さらなる性能の改良が求められている。
【特許文献1】特開2005−320504号公報
【特許文献2】特開2005−309381号公報
【特許文献3】特開2005−292419号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記の通り、アルキレンオキサイド基を有する界面活性剤はラテックスの安定性を向上させる上で有用である。アルキレンオキサイド基を有する界面活性剤を含有するラテックスは、ハロゲン化銀写真感光材料の種々の塗布層に用いられている。特に、熱現像感光材料においては、画像形成層、中間層、表面保護層、およびバック層等の多くの層に用いられている主要素材である。しかしながら、本発明者らによると、これらのアルキレンオキサイド基を有する界面活性剤を含有するラテックスはラテックス製造後、経過した後に感光材料の製造に用いると写真性能が変動する問題およびラテックスの安定性が劣化する問題を有することが判明した。さらなる本発明者らによる解析の結果、アルキレンオキサイド基を有する界面活性剤を含有するラテックスは、製造後経過するとアルキレンオキサイド基を有する界面活性剤の分解により微量のホルマリンを発生していることが明らかとなった。
従来より、ホルマリン系接着剤の熱圧成型後の製品から放出されるホルムアルデヒドは環境上問題視されており、そのためホルムアルデヒドの低減方法として、一般的には、ホルマリン系接着剤中の遊離ホルマリン量を少なくしたり(ホルマリン系接着剤においてフェノール、メラミン或いは尿素に対するホルムアルデヒドのモル比を小さくする)、ホルマリン系接着剤の配合時に、ホルマリンキャッチャー剤などを添加する方法などが実施されている。
【0007】
しかしながら、ラテックス中におけるアルキレンオキサイド基を有する界面活性剤の分解によるホルムアルデヒドの発生は従来知られておらず、新たな課題である。
【0008】
本発明の目的は、上記事情に鑑み、ホルマリン発生量が少なく、さらに塗布性、液安定性に優れたラテックス組成物を提供すること、および該ラテックス組成物の製造方法を提供する事を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の上記課題は、下記の手段により解決された。
【0010】
<1> ラテックスと、分子中に置換または無置換のアルキレンオキサイド基を有する界面活性剤、および酸化防止剤を含有する事を特徴とするラテックス組成物。
<2> 前記ラテックス組成物中にしめるラテックス固形分の濃度が10質量%〜50質量%である<1>に記載のラテックス組成物。
<3> 前記ラテックスの粒径が50nm〜200nmであることを特徴とする<1>または<2>に記載のラテックス組成物。
<4> 前記ラテックスのガラス転位温度が−10℃〜100℃である<1>〜<3>のいずれか1項に記載のラテックス組成物。
<5> 前記ラテックスが、アクリルラテックスであること特徴とする<1>〜<4>のいずれか1項に記載のラテックス組成物。
<6> 前記ラテックスが、下記一般式(M)で表されるモノマー成分を10質量%以上70質量%以下有するポリマーラテックスであることを特徴とする<1>〜<4>のいずれか1項に記載のラテックス組成物:
【0011】
【化1】

【0012】
(式中、R01およびR02は、各々独立に、水素原子、炭素数1〜6のアルキル基、ハロゲン原子、およびシアノ基より選ばれる基である。)。
<7> 前記一般式(M)のR01およびR02が共に水素原子、または一方が水素原子であり、他方がメチル基であることを特徴とする<6>に記載のラテックス組成物。
<8> 前記アルキレンオキサイド基を含有する界面活性剤をラテックス粒子固形分に対し、固形分として0.5質量%〜10質量%含有する<1>〜<7>のいずれか1項に記載のラテックス組成物。
<9> 前記アルキレンオキサイド基がエチレンオキサイド基である<1>〜<8>のいずれか1項に記載のラテックス組成物。
<10> 前記アルキレンオキサイド基を含有する界面活性剤の分子量が350〜2500である<1>〜<9>のいずれか1項に記載のラテックス組成物。
<11> 前記アルキレンオキシド基を繰り返し単位に有する界面活性剤が、下記一般式(NW)で表される化合物であること特徴とする<1>〜<10>のいずれか1項に記載のラテックス組成物:
【0013】
【化2】

【0014】
(式中、R15は炭素数が12〜30の炭化水素基を表し、Xは酸素原子を含む2価の連結基を表し、AOはエチキレンオキサイド基または2−プロピレンオキサイド基を表し、Yは水素原子、アニオン性基、もしくはその塩を表す。m6は3〜50の整数を表す。)。
<12> 前記アルキレンオキサイド基を含有する界面活性剤が非イオン性界面活性剤であることを特徴とする<1>〜<11>のいずれか1項に記載のラテックス組成物。
<13> 前記アルキレンオキサイド基を含有する非イオン性界面活性剤のHLB値が10〜18であることを特徴とする<12>に記載のラテックス組成物。
<14> 前記酸化防止剤がヒンダードフェノール化合物である<1>〜<13>のいずれか1項に記載のラテックス組成物。
<15> 前記ヒンダードフェノール化合物が、下記一般式(AOx)で表される化合物であること特徴とする<14>に記載のラテックス組成物:
【0015】
【化3】

【0016】
(一般式(AOx)において、R10及びR20は、各々独立に炭素数1〜20のアルキル基を表し、mは1〜5の整数を表す。Yは、mが1の時、水素原子又はベンゼン環に置換可能な置換基を表し、mが2〜5の時、m価の連結基を表す。)。
<16> 前記一般式(AOx)においてR10及びR20が2級または3級アルキル基であること特徴とする<15>に記載のラテックス組成物。
<17> 前記酸化防止剤をラテックス組成物に対し、50ppm〜500ppm含有する<1>〜<16>のいずれか1項に記載のラテックス組成物。
<18> 更にイオン性界面活性剤を含有する事を特徴とする<12>〜<17>のいずれか1項に記載のラテックス組成物。
<19> 前記イオン性界面活性剤と前記非イオン性界面活性剤の添加量比が質量比で5/1〜1/5である<18>に記載のラテックス組成物。
<20> 前記イオン性界面活性剤が下記一般式(AW)で表される化合物である事を特徴とする<18>または<19>に記載のラテックス組成物:
【0017】
【化4】

【0018】
(一般式(AW)中、RおよびRはそれぞれ独立に炭素数1〜10のアルキル基を表す。Xはアルキレン基またはアリーレン基を表す。Yはイオン性基を表す。m1は0〜50の整数を表す。n1は0〜4の整数を表す。t1は0または1を表す。)。
<21> 前記イオン性界面活性剤がアニオン性界面活性剤であることを特徴とする、<18>〜<20>のいずれか1項に記載のラテックス組成物。
<22> 前記一般式(AW)で表される化合物であって、Yがスルホン酸基、またはその塩であることを特徴とする<21>に記載のラテックス組成物。
<23> 前記一般式(AW)で表される化合物におけるYがスルホン酸基のアルカリ金属塩であることを特徴とする<22>に記載のラテックス組成物。
<24> キレート剤を含有する<1>〜<23>のいずれか1項に記載のラテックス組成物。
<25> 前記キレート剤をラテックス組成物に対し、50ppm〜500ppm含有する<24>に記載のラテックス組成物。
<26> 前記キレート剤がアミノカルボン酸化合物である<24>または<25>に記載のラテックス組成物。
<27> 前記キレート剤が分子内に4つのカルボキシ基を有するアミノカルボン酸化合物である<26>に記載のラテックス組成物。
<28> <1>〜<27>のいずれか1項に記載のラテックス組成物の製造方法であって、1)ラテックスを重合する工程と、2)該重合したラテックスに、アルキレンオキサイド基を有する界面活性剤および酸化防止剤を添加する工程を含むことを特徴とする前記ラテックス組成物の製造方法。
【0019】
本発明における「A〜B」の表現は範囲を表し、「A」が範囲の下限で「B」が範囲の上限を表すか、または「A」が範囲の上限で「B」が範囲の下限を表す。
【0020】
本発明におけるアルキレンオキサイド基の付加モル数とは、特に断りのない限り一山分布を持った付加モル数のピークの値を指しているものとし、また分子量について述べる場合は数平均分子量を指しているものとする。
【0021】
本発明におけるHLB値とは、有機概念図における無機性値を有機性値で割り、10を掛けたものを指す。有機概念図の詳細については、例えば「有機概念図基礎と応用」(三共出版、甲田善生)などに書かれている。
【0022】
本発明における表面カルボン酸量とは、ラテックス粒子固形分1g当たりのラテックス表面、分散媒中の残存モノマーおよび水溶性ポリマー成分中の酸の合計のモル数であり、 Journal og Colloid and Interface Science,vol.49(3),1974,p425−p432に記載されている電気伝導度滴定により求められる。
【発明の効果】
【0023】
本発明によれば、塗布性、液安定性および液保存安定性に優れ、ホルマリン発生が抑制されたラテックス組成物およびその製造方法が提供される。本発明により提供されるラテックス組成物は、特に、膜付き、折り曲げ脆性等の膜物性に優れ、更に優れた写真性を示すハロゲン化銀写真感光材料、特に熱現像感光材料に好適に用いられる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0024】
以下に本発明を詳細に説明する。
【0025】
(ポリマーラテックス)
本発明において、乳化重合の方法そのものについては、従来公知の方法に準じればよい。
【0026】
本発明におけるラテックスとしては、アクリル系ポリマー、ポリ(エステル)類、ゴム類(例えばSBR樹脂)、ポリ(ウレタン)類、ポリ(塩化ビニル)類、ポリ(酢酸ビニル)類、ポリ(塩化ビニリデン)類、またはポリ(オレフィン)類等の疎水性ポリマーを好ましく用いることができるが、アクリル系、またはゴム類がさらに好ましい。これらポリマーとしては直鎖のポリマーでも枝分かれしたポリマーでもまた架橋されたポリマーでもよいし、単一のモノマーが重合したいわゆるホモポリマーでもよいし、2種類以上のモノマーが重合したコポリマーでもよい。コポリマーの場合はランダムコポリマーでも、ブロックコポリマーでもよい。これらポリマーの分子量は数平均分子量で5,000以上1,000,000以下、好ましくは50,000以上300,000以下がよい。分子量が小さすぎるものは塗布膜の力学強度が不十分であり、大きすぎるものは成膜性が悪く好ましくない。
【0027】
本発明におけるポリマーラテックスとしては、分散安定性を向上させるため、イオン性基を有するモノマー成分を含むことが好ましい。なかでもアニオン性基を有するモノマー成分を含むことが好ましい。アニオン性基の具体例としてはカルボキシル基、スルホン酸基、リン酸基、およびそれらの塩等が挙げられるが、カルボキシル基を有することが塗布性の観点から好ましい。前記アニオン性基を有するモノマー成分の添加量に特に制限はないが、全モノマー成分に対し0.5質量%〜5質量%であることが好ましく、1質量%〜3質量%であることがより好ましい。
【0028】
前記カルボキシル基を含有する単量体の具体例としては、アクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸等のエチレン製不飽和モノカルボン酸;マレイン酸、フマル酸、イタコン酸等のエチレン製不飽和多価カルボン酸およびそれらの酸無水物;マレイン酸メチル、イタコン酸メチル等のエチレン性不飽和多価カルボン酸の部分エステル化物;等を挙げることができる。これらの単量体は、単独で用いても、2種以上を組み合わせて用いてもよいが、単独で用いる事が好ましい。また、アンモニア、トリエチルアミン、または水酸化ナトリウムなどの塩基で中和した塩の状態で使用する事ができる。
【0029】
前記カルボキシル基を含有する単量体を含むポリマーラテックスにおいて、表面カルボン酸の量は0.06meq/g〜0.7meq/gであることが好ましく、0.1meq/g〜0.6meq/gであることがより好ましく、0.2meq/g〜0.3meq/gであることが更に好ましい。
【0030】
本発明におけるラテックス組成物の固形分濃度は、好ましくは10質量%〜50質量%、より好ましくは15質量%〜45質量%、さらに好ましくは15質量%〜25質量%である。固形分濃度が低すぎると、塗布性に劣る傾向があり、逆に高すぎると、粘度が高くなりすぎて取扱いが困難である。
【0031】
本発明におけるラテックスの体積平均粒子径は、好ましくは50nm〜200nm、より好ましくは50nm〜150nm、さらに好ましくは80nm〜130nmである。この範囲よりも小さくなると、塗布性に劣る傾向がある。逆に大きすぎると、充分な成膜性を得る事が困難であり、好ましくない。
【0032】
本発明におけるラテックスを構成する共重合体のガラス転移温度は、特に限定されないが、好ましくは−10℃〜100℃である。より好ましくは30℃〜80℃であり、さらに好ましくは40℃〜60℃である。ガラス転移温度を上記範囲にする事により、膜物性に優れた熱現像感光材料が得られる。前記共重合体のガラス転移温度は、単量体混合物の組成を適宜選択する事により容易に調節できる。
【0033】
ラテックス組成物のpHに特に制限はないが、9以下であることが好ましく、7以下であることがさらに好ましく、5〜6の範囲内であることがより好ましい。
【0034】
本発明における界面活性剤を使用するポリマーラテックスの好ましい例は、アクリルラテックスおよびブタジエンラテックスやイソプレンラテックスなどのゴム系ラテックスである。
【0035】
具体的な化合物例を以下に示すが、本発明は以下の化合物に限定されるものではない。(組成比は質量%であり、MWは質量平均分子量である。)
【0036】
・P−1:MMA/BA/St/2−HEMA/AA=58/27/9/5/1(Mw=18万)
・P−2:MMA/2EHA/St/2−HEMA/AA=58/26/9/5/2(Mw=10万)
・P−3:MMA/2EHA/St/2−HEMA/MAA=59/26/9/5/1(Mw=9万)
・P−4:MMA/2EHA/2−HEMA/AA=59/34/5/2(Mw=9万)
・P−5:EA/MMA/MAA=50/34/16
・P−6:St/BA=64/36(Mw=10万)
・P−7:2−HEMA/MMA=70/30(Mw=9万)
・P−8:BA/t−BMA/MMA=40/10/50(Mw=9万)
・P−9:MMA/EHA=72/28(Mw=10万)
・P−10:MMA/BA=73/27(Mw=9万)
・P−11:MMA/EA=63/37(Mw=9万)
・P−12:MMA/MA=43/57(Mw=9万)
・P−13:MMA/Bu/IA=48/48/4
【0037】
上記構造の略号は以下のモノマーを表す。MMA;メチルメタクリレート、MA;メチルアクリレート、EA;エチルアクリレート、BA;ブチルアクリレート、t−BMA;tert−ブチルメタクリレート、2−HEMA;2−ヒドロキシエチルメタクリレート、MAA;メタクリル酸、2EHA;2−エチルヘキシルアクリレート、St;スチレン、Bu;ブタジエン、AA;アクリル酸、IA;イタコン酸、2−HEMA;2−ヒドロキシエチルメタクリレート。
【0038】
(分子中にアルキレンオキサイド基を有する界面活性剤)
本発明において用いられるアルキレンオキサイド基を有する界面活性剤の添加量は、ラテックス粒子固形分に対し、固形分として0.5質量%〜10質量%である事が好ましく、1質量%〜5質量%であることがより好ましく、2質量%〜3質量%であることがさらに好ましい。
【0039】
本発明におけるアルキレンオキサイド基を有する界面活性剤におけるアルキレンオキサイド付加モル数には特に制限はなく、単一の付加モル数でも分布を持っていても構わない。好ましくは単一の付加モル数、または付加モル数が一山分布である事が好ましく、一山分布である事がさらに好ましい。
【0040】
本発明におけるアルキレンオキサイド基を有する界面活性剤の分子量に特に制限はないが、350〜2500であることが好ましく、800〜2000であることがより好ましく、900〜1400であることがさらに好ましい。
【0041】
本発明におけるアルキレンオキサイド基を有する界面活性剤におけるアルキレンオキサイド基の種類に特に制限はないが、置換または無置換のエチレンオキサイド基であることが好ましい。置換基を有するエチレンオキサイド基の場合、置換基に特に制限はないが、炭化水素基、なかでもアルキル基が好ましく、炭素数1〜5のアルキル基がより好ましく、メチル基である事がさらに好ましい。置換数についても特に制限はないが、無置換または1置換である事が好ましく、無置換である事がより好ましい。
【0042】
本発明におけるアルキレンオキサイド基を有する界面活性剤における好ましい態様の一つは、下記一般式(W)で表される。
【0043】
一般式(W)において、R14は炭素数が12〜30の炭化水素基を表す。炭化水素基の構造に特に制限はないが、炭素数が12〜30のアルカントリイル基、炭素数が12〜30のアルケントリイル基、または炭素数が10〜25のアルキル基またはアリールアルキル基を有するアレーントリイル基であることが好ましい。
式中Xは2価の連結基を表す。連結基の種類に制限はないが、酸素原子を含む2価基であることが好ましく、アシル基もしくは酸素原子であることがさらに好ましく、酸素原子であることが特に好ましい。
式中Yは水素原子、アルキル基、アニオン性基、もしくはその塩を表す。アニオン性基の中でもスルホン酸基であることが好ましく、水素原子、またはスルホン酸基の塩であることが特に好ましい。
式中Zは連結手もしくは2価の連結基を表す。連結基の種類に制限はないが、アルキリデン基である事が好ましく、メチレン基であることがさらに好ましい。
式中AOはアルキレンオキサイド基を表す。アルキレンオキサイド基の種類に制限はないが、エチレンオキサイド基、または2−プロピレンオキサイド基であることが好ましく、エチレンオキサイド基であることが特に好ましい。
式中m6は3から50の整数を表す。m6は10〜40であることが好ましく、20〜30であることがさらに好ましい。さらに、アルキレンオキサイド部の質量が分子全体の質量の60質量%〜85質量%になるようなm6であることが好ましい。アルキレンオキサイド部の質量比が小さすぎると安定化効果が低下するため好ましくない。また、大きすぎると感材のかぶりが悪化する為に好ましくない。
式中pは0以上の整数を表す。pは10以下である事が好ましく、0、または1であることが特に好ましい。pが0である時、下記一般式(W)で表される界面活性剤を用いる事が特に好ましい。
【0044】
【化5】

【0045】
本発明におけるアルキレンオキサイド基を有する界面活性剤における、もう一つの好ましい態様は下記一般式(NW)で表される。
【0046】
一般式(NW)において、R15は炭素数12〜30のアルキル基、もしくはアルケニル基を表す。アルキル基およびアルケニル基は直鎖であることが好ましく、直鎖アルキル基であることがさらに好ましい。なかでもセチル基、ステアリル基、またはベヘニル基であることがさらに好ましく、セチル基であることが特に好ましい。
【0047】
【化6】

【0048】
《一般式(W)で表される界面活性剤の具体例》
【0049】
【化7】

【0050】
【化8】

【0051】
【化9】

【0052】
《一般式(NW)で表される界面活性剤の具体例》
【0053】
【化10】

【0054】
本発明におけるアルキレンオキサイド基を有する界面活性剤はイオン性であっても、非イオン性であっても良いが、アニオン性、またはノニオン性であることが好ましく、ノニオン性であることがより好ましい。
【0055】
本発明におけるアルキレンオキサイド基を有する界面活性剤がノニオン性である場合、そのHLB値は10〜18である事が好ましく、12〜16である事がより好ましく、13〜15である事が更に好ましい。
【0056】
[酸化防止剤]
本発明の鹸化液は酸化防止剤を含有することが好ましい。酸化防止剤としては、無機化合物及び有機化合物のどちらも好ましく用いることができるが、有機化合物であることが好ましい。
無機化合物としては亜硫酸塩(例えば、亜硫酸ナトリウム、亜硫酸カリウム、または亜硫酸アンモニウムなど)、重亜硫酸塩(例えば、重亜硫酸アンモニウム、重亜硫酸ナトリウム、または重亜硫酸カリウムなど)、メタ重亜硫酸塩(例えば、メタ重亜硫酸カリウム、メタ重亜硫酸ナトリウム、またはメタ重亜硫酸アンモニウムなど)等の亜硫酸イオン放出化合物が好ましい。
【0057】
本発明に用いられる酸化防止剤は、有機化合物としては特に制限は無く、メルカプト基含有化合物、チオエーテル基含有化合物のような含硫黄化合物;アミン類のような含窒素化合物;亜リン酸エステル類のような含リン化合物;フェノール類;ハイドロキノン類;トコフェロール類;アスコルビン酸類;レダクトン類;セザモール類など、酸素と極めて反応性が高い化合物等が挙げられる。また、ヒドロキサム酸誘導体(例えば、特開平11−109576号公報に記載の化合物)、カルボニル基に隣接して、両端がアミノ基もしくはヒドロキシル基が置換した二重結合を有す環状ケトン類(例えば、特開平11−327094号公報に記載の化合物で、特に一般式(S1)で表されるもので、段落番号0036〜0071に記載の化合物が好ましい。)、スルホ置換のカテコール(例えば、特開平11−143011号に記載の化合物)やハイドロキノン類(例えば、4,5−ジヒドロキシ−1,3−ベンゼンジスルホン酸、2,5−ジヒドロキシ−1,4−ベンゼンジスルホン酸、3,4−ジヒドロキシベンゼンスルホン酸、2,3−ジヒドロキシベンゼンスルホン酸、2,5−ジヒドロキシベンゼンスルホン酸、3,4,5−トリヒドロキシベンゼンスルホン酸およびこれらの塩など)、特開平11−102045号に記載の一般式(I)〜(III)で表される還元剤などの写真感光材料におけるレドックス化合物も好ましく使用される
【0058】
これらの化合物は、(1)炭素ラジカル捕捉剤、(2)パーオキシラジカルに対する水素ラジカル供与能を有する一次酸化防止剤、および、(3)パーオキサイドに対する還元作用を有する二次酸化防止剤等に分ける事ができる。本発明においては一次酸化防止剤を用いることが好ましい。
【0059】
本発明において「パーオキシラジカルに対する水素ラジカル供与能を有する一次酸化防止剤」とは、パーオキシラジカルによって速やかに引き抜かれる水素原子を分子内に少なくとも1つ以上有する化合物であり、水酸基あるいは1級または2級のアミノ基によって置換された芳香族化合物であることが好ましく、より好ましくは、オルト位にアルキル基を有するフェノール誘導体あるいはジアリールアミン誘導体である。ポリアリレートなどアミン系酸化防止剤の求核性が問題になる場合にはフェノール系酸化防止剤が好ましい。
【0060】
上記フェノール系酸化防止剤としては、アルキル化モノフェノール類、アルキルチオメチルフェノール類、ヒドロキノンおよびアルキル化ヒドロキノン類、トコフェロール類、ヒドロキシル化チオジフェニルエーテル類、アルキリデンビスフェノール類、O−,N−およびS−ベンジル化合物類、ヒドロキシベンジル化マロネート類、芳香族ヒドロキシベンジル化合物類、トリアジン化合物類、ベンジルホスホネート類、アシルアミノフェノール類、β−(3,5−ジ−第三ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオン酸のエステル類、β−(5−ジ−第三ブチル−4−ヒドロキシ−3−メチルフェニル)プロピオン酸のエステル類、β−(3,5−ジシクロヘキシル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオン酸のエステル類、3,5−ジ−第三ブチル−4−ヒドロキシフェニル酢酸のエステル類、及びβ−(3,5−ジ−第三ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオン酸のアミド類、などが挙げられる。
【0061】
具体的には、上記アルキル化モノフェノール類としては、例えば、2,6−ジ−第三ブチル−4−メチルフェノール、2−第三ブチル−4,6−ジメテルフェノール、2,6−ジ−第三ブチル−4−エチルフェノール、2,6−ジ−第三ブチル−4−n−ブチルフェノール、2,6−ジ−第三ブチル−4−イソブチルフェノール、2,6−ジシクロペンチル−4−メチルフェノール、2−(α−メチルシクロへキシル)−4,6−ジメチルフェノール、2,6−ジオクタデシル−4−メチルフェノール、2,4,6−トリシクロヘキシルフェノール、2,6−ジ−第三ブチル−4−メトキシメチルフェノール、線形または側鎖において分岐したノニルフェノール(例えば、2,6−ジ−ノニル−4−メチルフェノール)、2,4−ジメチル−6−(1’−メチルウンデシ−1’−イル)フェノール、2,4−ジメチル−6−(1’−メチルヘプタデシ−1’−イル)フェノール、2,4−ジメチル−6−(1’−メチルトリデシ−1’−イル)フェノールおよびそれらの混合物等が挙げられる。
【0062】
上記アルキルチオメチルフェノール類としては、例えば、2,4−ジオクチルチオメチル−6−第三ブチルフェノール、2,4−ジオクテルチオメチル−6−メチルフェノール、2,4−ジオクテルチオメチル−6−エチルフェノール、及び2,6−ジ−ドデシルチオメチル−4−ノニルフェノール等が挙げられる。
【0063】
上記ヒドロキノンおよびアルキル化ヒドロキノン類としては、例えば、2,6−ジ−第三ブチル−4−メトキシフェノール、2,5−ジ−第三ブチルヒドロキノン、2,5−ジ−第三アミルヒドロキノン、2,6−ジフェニル−4−オクタデシルオキシフェノール、2,6−ジ−第三ブチルヒドロキノン、2,5−ジ−第三ブチル−4−ヒドロキシアニソール、3,5−ジ−第三ブチル−4−ヒドロキシアニソール、3,5−ジ−第三ブチル−4−ヒドロキシフェニルステアレート、及びビス(3,5−ジ−第三ブチル−4−ヒドロキシフェニル)アジペート等が挙げられる。
【0064】
上記トコフェロール類としては、例えば、α−トコフェロール、β−トコフェロール、γ−トコフェロール、δ−トコフェロールおよびそれらの混合物(ビタミンE)等が挙げられる。
【0065】
上記ヒドロキシル化チオジフェニルエーテル類としては、例えば、2,2’−チオビス(6−第三ブチル−4−メチルフェノール)、2,2’−チオビス(4−オクチルフェノール)、4,4’−チオビス(6−第三ブチル−3−メチルフェノール)、4,4−チオビス(6−第三ブチル−2−メチルフェノール)、4,4’−チオビス(3,6−ジ−第二アミルフェノール)、及び4,4’−ビス(2,6−ジメチル−4−ヒドロキシフェニル)ジスルフィド等が挙げられる。
【0066】
上記アルキリデンビスフェノール類としては、例えば、2,2’−メチレンビス(6−第三ブチル−4−メチルフェノール)、2,2’−メチレンビス(6−第三ブチル−4−エチルフェノール)、2,2’−メチレンビス[4−メチル−6−(α−メチルシクロへキシル)フェノール]、2,2’−メチレンビス(4−メチル−6−シクロへキシルフェノール)、2,2’−メチレンビス(6−ノニル−4−メチルフェノール)、2,2’−メチレンビス(4,6−ジ−第三ブチルフェノール)、2,2’−エチリデンビス(4,6−ジ−第三ブチルフェノール)、2,2’−エチリデンビス(6−第三ブチル−4−イソブチルフェノール)、2,2’−メテレンビス[6−(α−メチルベンジル)−4−ノニルフエノール]、2,2’−メチレンビス[6−(α,α−ジメチルベンジル)−4−ノニルフェノール]、4,4’−メチレンビス(2,6−ジ−第三ブチルフェノール)、4,4’−メチレンビス(6−第三ブチル−2−メチルフェノール)、1,1−ビス(5−第三ブチル−4−ヒドロキシ−2−メチルフェニル)ブタン、2,6−ビス(3−第三ブチル−5−メチル−2−ヒドロキシベンジル)−4−メチルフェノール、1,1,3−トリス(5−第三ブチル−4−ヒドロキシ−2−メチルフェニル)ブタン、1,1−ビス(5−第三ブチル−4−ヒドロキシ−2−メチルフェニル)−3−n−ドデシルメルカプトブタン、エチレングリコールビス[3,3−ビス(3’−第三ブチル−4’−ヒドロキシフェニル)ブチレート]、ビス(3−第三ブチル−4−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)ジシクロペンタジエン、ビス[2−(3’−第三ブチル−2’−ヒドロキシ−5’−メチルベンジル)−6−第三ブチル−4−メチルフェニル]テレフタレート、1,1−ビス(3,5−ジメチル−2−ヒドロキシフェニル)ブタン、2,2−ビス(3,5−ジ−第三ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(5−第三ブチル−4−ヒドロキシ−2−メチルフェニル)−4−n−ドデシルメルカプトブタン、及び1,1,5,5−テトラキス(5−第三ブチル−4−ヒドロキシ−2−メチルフェニル)ペンタン等が挙げられる。
【0067】
上記O−、N−およびS−ベンジル化合物類としては、例えば、3,5,3’5’−テトラ−第三ブチル−4,4’−ジヒドロキシジベンジルエーテル、オクタデシル−4−ヒドロキシ−3,5−ジメチルベンジルメルカプトアセテート、トリデシル−4−ヒドロキシ−3,5−ジ−第三ブチルベンジルメルカプトアセテート、トリス(3,5−ジ−第三ブチル−4−ヒドロキシベンジル)アミン、ビス(4−第三ブチル−3−ヒドロキシ−2,6−ジメチルベンジル)ジチオテレフタレート、ビス(3,5−ジ−第三ブチル−4−ヒドロキシベンジル)スルフィド、及びイソオクチル−3,5−ジ−第三ブチル−4−ヒドロキシベンジルメルカプトアセテート等が挙げられる。
【0068】
上記ヒドロキシベンジル化マロネート類としては、例えば、ジオクタデシル−2,2−ビス(3,5−ジ−第三ブチル−2−ヒドロキンベンジル)マロネート、ジオクタデシル−2−(3−第三ブチル−4−ヒドロキシ−5−メチルベンジル)マロネート、ジドデシルメルカプトエチル−2,2−ビス(3,5−ジ−第三ブチル−4−ヒドロキシベンジル)マロネート、及びビス[4−(1,1,3,3−テトラメチルブチル)フェニル]−2,2−ビス(3,5−ジ−第三ブチル−4−ヒドロキシベンジル)マロネート等が挙げられる。
【0069】
上記芳香族ヒドロキシベンジル化合物類としては、例えば、1,3,5−トリス(3,5−ジ−第三ブチル−4−ヒドロキシベンジル)−2,4,6−トリメチルベンゼン、1,4−ビス(3,5−ジ−第三ブチル−4−ヒドロキシベンジル)−2,3,5,6−テトラメチルベンゼン、及び2,4,6−トリス(3,5−ジ−第三ブチル−4−ヒドロキシベンジル)フェノール等が挙げられる。
【0070】
上記トリアジン化合物類としては、例えば、2,4−ビス(オクチルメルカプトナ−6−(3,5−ジ−第三ブチル−4−ヒドロキシアニリノ)−1,3,5−トリアジン、2−オクチルメルカプト−4,6−ビス(8,5−ジ−第三ブチル−4−ヒドロキシアニリノ)−1,3,5−トリアジン、2−オクチルメルカプト−4,6−ビス(3,5−ジ−第三ブチル−4−ヒドロキシフェノキシ)−1,3,5−トリアジン、2,4,6−トリス(3,5−ジ−第三ブチル−4−ヒドロキシフェノキシ)−1,2,3−トリアジン、1,3,5−トリス(3,5−ジ−第三ブチル−4−ヒドロキシベンジル)イソシアヌレート、1,3,5−トリス(4−第三ブチル−3−ヒドロキシ−2,6−ジメチルベンジル)イソシアヌレート、2,4,6−トリス(3,5−ジ−第三ブチル−4−ヒドロキシフェニルエチル)−1,3,5−トリアジン、1,3,5−トリス(3,5−ジ−第三ブチル−4−ヒドロキシフェニルプロピオニル)へキサヒドロ−1,3,5−トリアジン、及び1,3,5−トリス(3,5−ジシクロヘキシル−4−ヒドロキシベンジル)イソシアヌレート等が挙げられる。
【0071】
ベンジルホスホネート類としては、例えば、ジメチル−2,5−ジ−第三ブチル−4−ヒドロキシベンジルホスホネート、ジエチル−3,5−ジ−第三ブチル−4−ヒドロキシベンジルホスホネート、ジオクタデシルー3,5−ジ−第三ブチル−4−ヒドロキシベンジルホスホネート、ジオクタデシル−5−第三ブチル−4−ヒドロキシ−3−メチルベンジルホスホネート、及び3,5−ジ−第三ブチル−4−ヒドロキシベンジルホスホン酸のモノエチルエステルのカルシウム塩等が挙げられる。
【0072】
上記アシルアミノフェノール類としては、例えば、4−ヒドロキシラウラニリド、4−ヒドロキシステアラニリド、及びオクチルN−(3,5−ジ−第三ブチル−4−ヒドロキシフェニル)カルバメート等が挙げられる。
【0073】
上記β−(3,5−ジ−第三ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオン酸のエステル類としては、一価または多価アルコールとのエステル類が挙げられる。上記一価または多価アルコールの例としては、メタノール、エタノール、n−オクタノール、i−オクタノール、オクタデカノール、1,6−ヘキサンジオール、1,9−ノナンジオール、エチレングリコール、1,2−プロパンジオール、ネオペンチルグリコール、チオジエチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ペンタエリトリトール、トリス(ヒドロキシエチル)イソシアヌレート、N,N’−ビス(ヒドロキシエテル)オキサミド、3−チアウンデカノール、3−チアペンタデカノール、トリメチルヘキサンジオール、トリメチロールプロパン、及び4−ヒドロキシメチル−1−ホスファ−2,6,7−トリオキサビシクロ[2.2.2]オクタン等が挙げられる。
【0074】
上記β−(5−第三ブチル−4−ヒドロキシ−3−メチルフェニル)プロピオン酸のエステル類としては、一価または多価アルコールとのエステル類が挙げられる。上記一価または多価アルコールの例としては、メタノール、エタノール、n−オクタノール、i−オクタノール、オクタデカノール、1,6−ヘキサンジオール、1,9−ノナンジオール、エチレングリコール、1,2−プロパンジオール、ネオペンチルグリコール、チオジエチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ペンタエリトリトール、トリス(ヒドロキシエチル)イソシアヌレート、N,N’−ビス(ヒドロキシエテル)オキサミド、3−チアウンデカノール、3−チアペンタデカノール、トリメチルヘキサンジオール、トリメチロールプロパン、及び4−ヒドロキシメチル−1−ホスファ−2,6,7−トリオキサビシクロ[2.2.2]オクタン等が挙げられる。
【0075】
上記β−(3,5−ジシクロヘキシル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオン酸のエステル類としては、一価または多価アルコールとのエステル類が挙げられる。上記一価または多価アルコールの例としては、メタノール、エタノール、オクタノール、オクタデカノール、1,6−ヘキサンジオール、1,9−ノナンジオール、エチレングリコール、1,2−プロパンジオール、ネオペンチルグリコール、チオジエチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ペンタエリトリトール、トリス(ヒドロキシエチル)イソシアヌレート、N,N’−ビス(ヒドロキシエテル)オキサミド、3−チアウンデカノール、3−チアペンタデカノール、トリメチルヘキサンジオール、トリメチロールプロパン、及び4−ヒドロキシメチル−1−ホスファ−2,6,7−トリオキサビシクロ[2.2.2]オクタン等が挙げられる。
【0076】
上記3,5−ジ−第三ブチル−4−ヒドロキシフェニル酢酸のエステル類としては、一価または多価アルコールとのエステル類が挙げられる。上記一価または多価アルコールの例としては、メタノール、エタノール、オタクノール、オクタデカノール、1,6−ヘキサンジオール、1,9−ノナンジオール、エチレングリコール、1,2−プロパンジオール、ネオペンチルグリコール、チオジエチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ペンタエリトリトール、トリス(ヒドロキシエチル)イソシアヌレート、N,N’−ビス(ヒドロキシエテル)オキサミド、3−チアウンデカノール、3−チアペンタデカノール、トリメチルヘキサンジオール、トリメチロールプロパン、及び4−ヒドロキシメチル−1−ホスファ−2,6,7−トリオキサビシクロ[2.2.2]オクタン等が挙げられる。
【0077】
上記β−(3’5−ジ−第三ブチル−4−ヒドロキシフェニル)−プロピオン酸のアミド類としては、例えば、N,N’−ビス(3,5−ジ−第三ブチル−4−ヒドロキシフェニルプロピオニル)ヘキサメチレンジアミン、N,N’−ビス(3,5−ジ−第三ブチル−4−ヒドロキシフェニルプロピオニル)トリメチレンジアミン、N,N’−ビス(3,5−ジ−第三ブチル−4−ヒドロキシフェニルプロピオニル)ヒドラジン、N)N’−ビス[2−(3−[3,5−ジ−第三ブチル−4−ヒドロキシフェニル]プロピオニルオキシ)エチル]オキサミド(ユニロイヤル社によって供給されるナウガード(R)XL−1)等が挙げられる。
【0078】
さらに、好ましいフェノール類として、下記一般式(AOx)で表される化合物が挙げられる。
【0079】
【化11】

【0080】
一般式(AOx)において、R10及びR20は、各々独立に炭素数1〜20のアルキル基を表し、mは1〜5の整数を表す。Yは、mが1の時は水素原子又はベンゼン環に置換可能な置換基を表し、mが2〜5の時はm価の連結基を表す。好ましくは、R10が2級または3級アルキル基である。
【0081】
1)R10、R20
10及びR20は各々独立に置換又は無置換の炭素数1〜20のアルキル基である。R10は好ましくは、2級または3級アルキル基である。アルキル基の置換基は特に限定されることはないが、好ましくは、アリール基、ヒドロキシ基、アルコキシ基、アリールオキシ基、アルキルチオ基、アリールチオ基、アシルアミノ基、スルホンアミド基、スルホニル基、ホスホリル基、アシル基、カルバモイル基、エステル基、ウレイド基、ウレタン基、及びハロゲン原子等が挙げられる。
10及びR20は、具体的にはメチル基、イソプロピル基、t−ブチル基、t−アミル基、t−オクチル基、シクロヘキシル基、シクロペンチル基、1−メチルシクロヘキシル基、及び1−メチルシクロプロピル基などが挙げられる。R10としてより好ましくは炭素数1〜8の2級または3級アルキル基で、その中でもイソプロピル基、t−ブチル基、t−アミル基、1−メチルシクロヘキシル基が更に好ましく、t−ブチル基が最も好ましい。
【0082】
2)Y
はmが1の時、水素原子又はベンゼン環に置換可能な置換基であり、ベンゼン環に置換可能な基としては、好ましくはアルキル基、アリール基、ハロゲン原子、アルコキシ基、及びアシルアミノ基が挙げられる。好ましくは、炭素数1〜20のアルキル基であり、具体的にはメチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、イソプロピル基、t−ブチル基、t−アミル基、シクロヘキシル基、1−メチルシクロヘキシル基、ベンジル基、メトキシメチル基、及びメトキシエチル基などが挙げられる。より好ましくはメチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、又はt−ブチル基であり、特に好ましくはメチル基、エチル基である。
はmが2〜5の時、m価の連結基を表す。連結基に特に制限はないが、アルキルジイル基、−R−CONH−R−NHCO−R−、−R−COO−R−OCO−R−などが好ましい。なお、RおよびRはそれぞれ独立に、連結手、もしくはアルキルジイル基をあらわす。
【0083】
また、アミン類としては、ヒンダードアミン系化合物が好ましく用いられる。このようなヒンダードアミン系化合物としては、例えば、サノールLS−770、サノールLS−765、サノールLS−622LD、キマソープ944(以上、三共(株)製)、CYASORB UV−3346(以上、サンケミカル(株)製)、ノックラック224、ノックラックCD、Uvasil299−299LM(以上、大内新興化学工業社製)、MARK LA−63、MARK RKLA−68(以上、旭電化工業社製)、TINUVIN144、TINUVIN123、TINUVIN312(以上、チバ・スペシャリティーケミカル社製)、その他、ヒンダードアミン構造を有するオリゴマータイプおよびポリマータイプの化合物等が挙げられる。
さらに、好ましいアミン類としては一般式(HA)で表される化合物が挙げられる。
【0084】
【化12】

【0085】
ここで、R、R、R、及びRは、おのおの独立に水素原子、またはアルキル基(分岐、環状構造でもよく、また不飽和結合を有していてもよい)を表す。Rは、水素原子、アルキル基、アルケニル基、フェニル基、水酸基、スルホニル基、スルフィニル基、アシル基、または、ニトロラジカルを表す。Dは、置換基を有してもよい、5員〜7員環を形成するのに必要な非金属原子群を表す。
【0086】
本発明において「炭素ラジカル捕捉剤」とは、炭素ラジカルが速やかに付加反応しうる基(例えば2重結合、3重結合等の不飽和基)を有し、かつ炭素ラジカル付加後に重合等の後続反応が起こらない安定な生成物を与える化合物を意味する。
上記炭素ラジカル捕捉剤としては分子内に速やかに炭素ラジカルと反応する基((メタ)アクリロイル基、アリール基等の不飽和基)およびフェ−ノール等のラジカル重合禁止能を有する基を併せ持つ化合物が有用であり、特に下記一般式(1)で表わされるフェノール化合物が好ましい。
【0087】
本発明において「パーオキサイドに対する還元作用を有する二次酸化防止剤」とは、パーオキサイドを速やかに還元して水酸基に変換する還元剤を意味する。
パーオキサイドに対する還元能を有する二次酸化防止剤としては硫黄系酸化防止剤、またはリン系酸化防止剤が好ましい。
上記硫黄系酸化防止剤としては下記一般式(8)で表わされるチオエーテル系化合物が好ましい。
【0088】
【化13】

【0089】
上記一般式(8)中、RおよびRは、置換基を表す。該置換基としては、好ましくはアルキル基、CHCHCOR(Rは炭素10〜20のアルキル基)であり、さらに好ましくは、CHCHCOR(Rは炭素10〜20アルキル基)であり、特に好ましくは、CHCHCOR(Rは炭素12〜18のアルキル基)である。また、RおよびRは、二価以上の有機基もしくは単結合などを介し、一方の骨格のR、Rと連結することができ、上記硫黄系酸化防止剤が、一般式(8)の骨格を一分子中に複数存在する化合物であってもよい。
【0090】
チオエーテル基含有化合物としては、例えば、アンチオックスL、アンチオックスM、アンチオックスS(それぞれ日本油脂社製)、ArbestabDTDTP(Robinson社製)、3,3’−チオジプロピオン酸、及びフェニルチオ酢酸等が挙げられる。
【0091】
上記リン系酸化防止剤としては、下記一般式(9)で表わされる化合物が好ましい。
【0092】
【化14】

【0093】
上記一般式(9)中、R〜Rは、それぞれ独立して置換基を表す。Rは、好ましくはアルキル基、アリール基であり、さらに好ましくは、炭素数6〜20のアリール基であり、特に好ましくは、フェニル基である。また、R、Rは、好ましくはアルキル基、アリール基、アルコキシ基、またはアリールオキシ基であり、さらに好ましくは、アリール基、アルコキシ基、またはアリールオキシ基であり、特に好ましくは、アリールオキシ基である。また、上記リン系酸化防止剤は、一般式(9)の部分構造が一分子中に複数存在する化合物であってもよい。
【0094】
本発明に用いられる酸化防止剤は、水分散物中で充分な効果をえるため、極性溶媒に比較的可溶なものを用いる事が好ましい。30℃において、水、またはメタノールに10質量%以上溶解するものを用いる事が好ましく、20質量%以上溶解するものを用いる事がさらに好ましい。
【0095】
本発明に用いられる酸化防止剤は、1種類を用いても良いし、2種以上の化合物を組み合わせて用いても良い。
【0096】
本発明に用いられる酸化防止剤は、ラテックス組成物の全量に対して10ppm〜500ppm添加するのが好ましく、より好ましくは50ppm〜200ppm、さらに好ましくは80ppm〜120ppmである。過剰な酸化防止剤の添加は写真性能に悪影響をおよぼすため好ましくない。
【0097】
以下に、本発明に用いられる酸化防止剤の具体例を挙げるが、本発明はこれらの化合物に限定される訳ではない。
【0098】
【化15】

【0099】
【化16】

【0100】
【化17】

【0101】
【化18】

【0102】
上記のほか本発明に用いることができる酸化防止剤としては、ヨーロッパ公開特許第223739号公報、同309401号公報、同309402号公報、同310551号公報、同第310552号公報、同第459416号公報、ドイツ公開特許第3435443号公報、特開昭54−48535号公報、同60−107384号公報、同60−107383号公報、同60−125470号公報、同60−125471号公報、同60−125472号公報、同60−287485号公報、同60−287486号公報、同60−287487号公報、同60−287488号公報、同61−160287号公報、同61−185483号公報、同61−211079号公報、同62−146678号公報、同62−146680号公報、同62−146679号公報、同62−282885号公報、同62−262047号公報、同63−051174号公報、同63−89877号公報、同63−88380号公報、同66−88381号公報、同63−113536号公報、
【0103】
同63−163351号公報、同63−203372号公報、同63−224989号公報、同63−251282号公報、同63−267594号公報、同63−182484号公報、特開平1−239282号公報、特開平2−262654号公報、同2−71262号公報、同3−121449号公報、同4−291685号公報、同4−291684号公報、同5−61166号公報、同5−119449号公報、同5−188687号公報、同5−188686号公報、同5−110490号公報、同5−1108437号公報、同5−170361号公報、特公昭48−43295号公報、同48−33212号公報、米国特許第4814262号、同第4980275号公報等に記載のものが挙げられる。
【0104】
具体的には、6−エトキシ−1−フェニル−2,2,4−トリメチル−1,2−ジヒドロキノリン、6−エトキシ−1−オクチル−2,2,4−トリメチル−1,2−ジヒドロキノリン、6−エトキシ−1−フェニル−2,2,4−トリメチル−1,2,3,4−テトラヒドロキノリン、6−エトキシ−1−オクチル−2,2,4−トリメチル−1,2,3,4,−テトラヒドロキノリン、シクロヘキサン酸ニッケル、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−2−エチルヘキサン、2−メチル−4−メトキシ−ジフェニルアミン、及び1−メチル−2−フェニルインドール等が挙げられる。
【0105】
(その他の界面活性剤)
本発明のラテックス組成物には、本発明におけるアルキレンオキサイド基を含有する界面活性剤の他にも、界面活性剤を含有させる事ができる。これらの界面活性剤は乳化重合時に添加しても、重合が完了した後に添加しても良い。
【0106】
本発明における界面活性剤は、1種類でも複数の化合物を併用してもよいが、安定性向上の観点から複数の化合物を併用する事が好ましい。少なくとも1種のイオン性の界面活性剤と少なくとも1種のノニオン性の界面活性剤を併用する事がより好ましく、アニオン性の界面活性剤とノニオン性の界面活性剤を併用する事がさらに好ましく、一般式(NW)で表される群から選ばれる1種類以上のノニオン性界面活性剤とアニオン性界面活性剤を併用する事が特に好ましい。
【0107】
イオン性界面活性剤と非イオン性界面活性剤を併用する場合、イオン性界面活性剤の全固形分質量と非イオン性界面活性剤の全固形分質量の比(イオン性/非イオン性)が1/5〜5/1であることが好ましく、1/2〜4/1であることがより好ましく、1/1〜3/1であることがさらに好ましい。
【0108】
イオン性界面活性剤がアルキレンオキサイド基を含まない場合、その添加量に特に制限はないが、ラテックス粒子固形分に対し、固形分として0.5質量%〜5質量%である事が好ましく、0.8質量%〜3質量%であることがより好ましく、1質量%〜2質量%であることがさらに好ましい。
【0109】
本発明で用いられるイオン性界面活性剤に特に制限はないが、下記一般式(AW)で表される化合物であることが好ましい。
【0110】
【化19】

【0111】
一般式(AW)中、RおよびRはそれぞれ独立に炭素原子数1〜10のアルキル基を表し、RおよびRは直鎖状であることが好ましく、RとRの炭素数の和が5〜17であることが好ましく、8〜14であることがより好ましく、10〜12であることがさらに好ましい。
また、RとRの炭素数の差が7以上あることが好ましく、7〜9であることが特に好ましい。このアルキル基の具体例としては、メチル基、エチル基、ブチル基、オクチル基、及びデシル基等が挙げられる。
【0112】
はアルキレン基またはアリーレン基を表すが、メチレン基またはフェニレン基であることが好ましい。
は水素原子、炭素数1〜18のアルキル基、または−SOMを表す。Rは水素原子または−SOMであることが好ましく、水素原子であることが最も好ましい。Mで表される対イオンとしてはアルカリ金属(リチウム、ナトリウム、カリウム、およびセシウム)イオン、アンモニウム、テトラメチルアンモニウム、テトラブチルアンモニウム、及びメチルピリジニウムなどが挙げられるが、好ましくはリチウム、ナトリウム、カリウム、又はアンモニウムである。
【0113】
はイオン性基を表す。イオン性基の具体例としてはアンモニオ基、ピリジニオ基、キノリニオ基、イソキノリニオ基、イミダゾリオ基などのカチオン性基、スルホン酸基、リン酸基、カルボキシ基などのアニオン性基、およびこれらの塩が挙げられる。イオン性基としてはカチオン性基、アニオン性基のいずれでも構わないが、アニオン性基であることが好ましく、スルホン酸基またはその塩であることがより好ましい。
【0114】
前記アニオン性基の塩において、対イオンは金属イオン、4級アンモニウムイオンなどが挙げられるが、金属イオンであることが好ましく、アルカリ金属イオンであることがより好ましく、Naイオンであることがさらに好ましい。
【0115】
m1は0〜50の整数を表し、0〜10であることが好ましく、0〜5であることが更に好ましい。n1は0〜4の整数を表し、0または1であることが好ましい。t1は0または1を表し、0である事が好ましい。
【0116】
以下に本発明におけるアルキレンオキサイド基を有する界面活性剤とともに用いることの出来る界面活性剤の具体例を示すが、これらに限定されるものではない。
【0117】
【化20】

【0118】
【化21】

【0119】
【化22】

【0120】
(キレート剤)
本発明のラテックス組成物にはキレート剤を添加する事も好ましい。キレート剤は、鉄イオンなど金属イオンやカルシウムイオンなどのアルカリ土類金属イオンなどの多価イオンを配位(キレート)できる化合物であり、特公平6−8956号、米国特許5053322号、特開平4−73645号、特開平4−127145号、特開平4−247073号、特開平4−305572号、特開平6−11805号、特開平5−173312号、特開平5−66527号、特開平5−158195号、特開平6−118580号、特開平6−110168号、特 開平6−161054号、特開平6−175299号、特開平6−214352号、特開平7−114161号、特開平7−114154号、特開平7− 120894号、特開平7−199433号、特開平7−306504号、特開平9−43792号、特開平8−314090号、特開平10−182571 号、特開平10−182570号、特開平11−190892号に記載の化合物を用いることができる。
【0121】
前記キレート剤としては、無機キレート化合物(トリポリリン酸ナトリウム、ヘキサメタリン酸ナトリウム、またはテトラポリリン酸ナトリウム等)、アミノポリカル ボン酸系キレート化合物(ニトリロトリ三酢酸、エチレンジアミン四酢酸等)、有機ホスホン酸系キレート化合物(Research Disclosure18170号、特開昭52−102726号、同53−42730号、同56−97347号、同54−121127号、同55−4024号、同55−4025号、同55−29883号、同55−126241号、同55−65955号、同55−65956号、同57−179843 号、同54−61125号、及び西独特許1045373号などに記載の化合物)、ポリフェノール系キレート剤、ポリアミン系キレート化合物などが好ましく、EDTAやNTAのような、アミノポリカルボン酸とその部分塩類、酒石酸、クエン酸などのような、オキシカルボン酸とその部分塩類、グルタミン酸、アスパラギン酸などの、モノアミノジカルボン酸とその部分塩類、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、またはマレイン酸のような、脂肪族ポリカルボン酸とその部分塩類などがより好ましく、 アミノポリカルボン酸誘導体が特に好ましい。
【0122】
上記キレート剤のうち、有機ホスホン酸系キレート剤は、分子内に2以上のホスホン酸基を有する化合物である。分子内に2以上のホスホン酸基を有する化合物は特にCa、Mg等に対するキレート性が高いと考えられる。「2以上のホスホン酸基を有する化合物」の具体例として、以下の式(I)、(II)、(III)で示される有機ホスホン酸及びその塩類がある。
【0123】
【化23】

【0124】
式(I)中、R、R及びRはそれぞれ水素原子又は下記式で表される。
【0125】
【化24】

【0126】
式中M及びMはそれぞれ水素原子、Na、NH又はKを表す。但しR、R及びRのうち少なくとも2つは該基を表す。
【0127】
【化25】

【0128】
式(II)中、M及びMはそれぞれ水素原子、Na、NH又はKを表す。
【0129】
【化26】

【0130】
式(III)中、R、R、R、R及びRはそれぞれ水素原子又は下記式で表される。
【0131】
【化27】

【0132】
式中、qは1〜4の整数を表し、M及びMはそれぞれ水素原子、Na、NH又はKを表す。但しR、R、R、R及びRのうち少なくとも2つは該基を表し、mは1〜4の整数を表し、m’は1〜4の整数を表し、nは0又は1〜4の整数を表す。
【0133】
上記式(I)で示される化合物の具体例としてアミノトリ(メチレンホスホン酸)及びその塩類があり、市販品として例えば日本モンサント(株)製DQ2000(アミノトリ(メチレンホスホン酸))、DQ2006(アミノトリ(メチレンホスホン酸)・5Na塩)などがある。
【0134】
上記式(II)で示される化合物は1−ヒドロキシエタン−1,1−ジホスホン酸及びその塩類であり、市販品として例えば日本モンサント(株)製DQ2010(1−ヒドロキシエタン−1,1−ジホスホン酸)、DQ2016(1−ヒドロキシエタン−1,1−ジホスホン酸)・4Na塩)などがある。
【0135】
上記式(III)で示される化合物として、エチレンジアミンテトラ(メチレンホスホン酸)、ヘキサメチレンジアミンテトラ(メチレンホスホン酸)、ジエチレントリアミンペンタ(メチレンホスホン酸)及びそれらの塩類などがある。それらの市販品として例えば日本モンサント(株)製DQ2041(エチレンジアミンテトラ(メチレンホスホン酸))、DQ2042(エチレンジアミンテトラ(メチレンホスホン酸)・5NH塩)、DQ2044(エチレンジアミンテトラ(メチレンホスホン酸)・5K塩)、DQ2051(ヘキサメチレンジアミンテトラ(メチレンホスホン酸))、DQ2052(ヘキサメチレンジアミンテトラ(メチレンホスホン酸)・6NH塩)、DQ2054(ヘキサメチレンジアミンテトラ(メチレンホスホン酸)・6K塩)、DQ2060(ジエチレントリアミンペンタ(メチレンホスホン酸))、DQ2066(ジエチレントリアミンペンタ(メチレンホスホン酸)・5Na塩)などがある。
【0136】
前記アミノポリカルボン酸誘導体の好ましい例としては、「EDTA(−コンプレキサンの化学−)」(南江堂、1977年)の付表の化合物があげられ、またこれら化合物のカルボキシル基の一部がナトリウムやカリウムなどのアルカリ金属塩やアンモニウム塩など置換されてもよい。好ましいアミノカルボン酸誘導体としては、イミノ二酢酸、N−メチルイミノ二酢酸、N−(2−アミノエチル)イミノ二酢酸、N−(カルバモイルメチル)イミノ二酢酸、ニトリロ三酢酸、エチレンジアミン−N,N’−二酢酸、エチレンジアミン−N,N’−ジ−α−プロピオン酸、エチレンジアミン−N,N’−ジ−β−プロピオン酸、N,N’−エチレン−ビス(α−o−ヒドロキシフェニル)グリシン、N,N’−ジ(2−ヒドロキシベンジル)エチレンジアミン−N,N’−二酢酸、エチレンジアミン−N,N’−二酢酸−N,N’−ジアセトヒドロキサム酸、N−ヒドロキシエチルエチレンジアミン−N,N’,N’−三酢酸、エチレンジアミン−N,N,N’,N’−四酢酸、1,2−プロピレンジアミン−N,N,N’,N’−四酢酸、d,l−2,3−ジアミノブタン−N,N,N’,N’−四酢酸、meso−2,3−ジアミノブタン−N,N,N’,N’−四酢酸、1−フェニルエチレンジアミン−N,N,N’,N’−四酢酸、d,l−1,2−ジフェニルエチレンジアミン−N,N,N’,N’−四酢酸、1,4−ジアミノブタン−N,N,N’,N’−四酢酸、trans−シクロブタン−1,2−ジアミン−N,N,N’,N’−四酢酸、trans−シクロペンタン−1,2−ジアミン−N,N,N’,N’−四酢酸、trans−シクロヘキサン−1,2−ジアミン−N,N,N’,N’−四酢酸、cis−シクロヘキサン−1,2−ジアミン−N,N,N’,N’−四酢酸、シクロヘキサン−1,3−ジアミン−N,N,N’,N’−四酢酸、シクロヘキサン−1,4−ジアミン−N,N,N’,N’−四酢酸、o−フェニレンジアミン−N,N,N’,N’−四酢酸、cis−1,4−ジアミノブテン−N,N,N’,N’−四酢酸、trans−1,4−ジアミノブテン−N,N,N’,N’−四酢酸、α,α’−ジアミノ−o−キシレン−N,N,N’,N’−四酢酸、2−ヒドロキシ−1,3−プロパンジアミン−N,N,N’,N’−四酢酸、2,2’−オキシ−ビス(エチルイミノ二酢酸)、2,2’−エチレンジオキシ−ビス(エチルイミノ二酢酸)、エチレンジアミン−N,N’−二酢酸−N,N’−ジ−α−プロピオン酸、エチレンジアミン−N,N’−二酢酸−N,N’−ジ−β−プロピオン酸、エチレンジアミン−N,N,N’,N’−テトラプロピオン酸、ジエチレントリアミン−N,N,N’,N”,N’’’、N−五酢酸、トリエチレンテトラミン−N,N,N’,N”,N’’’,N’’’−六酢酸、1,2,3−トリアミノプロパン−N,N,N’,N”,N’’’,N’’’−六酢酸があげられ、またこれら化合物のカルボキシル基の一部がナトリウムやカリウムなどのアルカリ金属塩やアンモニウム塩など置換されたものもあげることができる。なかでも、四酢酸型のキレート剤が好ましく、エチレンジアミンーN,N,N’,N’−四酢酸が特に好ましい。
【0137】
キレート剤の添加量に特に制限はないが、ラテックス組成物に対し50ppm〜500ppm添加する事が好ましく、90ppm〜300ppm添加する事がより好ましく、180ppm〜250ppm添加する事が更に好ましい。
【0138】
(ラテックス組成物の製造方法)
本発明のラテックス組成物は、以下に示す本発明のラテックス組成物の製造方法の一の実施の形態により製造する事ができる。
【0139】
本発明のラテックス組成物の製造方法は、従来公知の方法により重合されたラテックス(A)に対し、酸化防止剤およびアルキレンオキサイド基を有する界面活性剤を含んでなる組成物(B)を添加する事により調製するものである。
【0140】
前記組成物(B)の形態に特に制限はなく、固体状であっても、溶融液、溶液、または分散液などであってもよいが、溶液、または分散液であることが好ましく、溶液であることが更に好ましい。前記組成物(B)が溶液、または分散液である時、溶媒、または分散媒は前記ラテックス(A)と均一相を作るものならば特に制限はないが、低級アルコール、水、またはそれらの混合物が好ましく、水と低級アルコールの混合物がより好ましく、水とメタノールの混合物であることが更に好ましい。
【0141】
前記水と低級アルコールの混合物を溶媒、または分散媒として用いる場合、水と低級アルコールの比率は質量比で1/99〜20/80である事が好ましく、3/97〜12/90である事がより好ましく、5/95〜7/93である事がさらに好ましい。
【0142】
組成物(B)は、前記酸化防止剤およびアルキレンオキサイド基を有する界面活性剤以外に、その他の界面活性剤、キレート剤、防腐剤、紫外線吸収剤、老化防止剤、またはpH調整剤などを含んでいても良い。
【0143】
(熱現像感光材料塗工用組成物)
本発明の熱現像感光材料塗工用組成物の一の実施の形態は、上記本発明のラテックス組成物と水溶性ポリマーを含むバインダーを含有する熱現像感光材料塗工用組成物である。
【0144】
本実施の形態の熱現像感光材料塗工用組成物に含有されるバインダーは、本発明のラテックス組成物および水溶性ポリマーを含有する。水溶性ポリマーとしては、にかわ、カゼイン、ゼラチン、卵白などの動物性蛋白質由来の親水性ポリマー、天然高分子(多糖類系、微生物系、動物系)、半合成高分子(セルロース系、デンプン系、またはアルギン酸系)および合成高分子(ビニル系、その他)などが挙げられる。これらの中でも、ゼラチン、およびポリビニルアルコールが好ましく、ゼラチンがより好ましい。
【0145】
上記塗工用組成物中のバインダーにおける、本発明のラテックス組成物と水溶性ポリマーの比率に特に制限はないが、ラテックス組成物/水溶性ポリマーの固形分の質量比が20/80〜96/4の範囲であることが好ましい。この範囲よりもラテックス組成物が少ないと、膜強度に劣るため好ましくなく、逆にこの範囲よりも多いと、膜付きが悪化するため好ましくない。
【0146】
上記塗工用組成物に含有されるラテックス組成物と水溶性ポリマーの固形分は、熱現像感光材料塗工用組成物の固形分に対して、50質量%以上であることが好ましく、70質量%以上であることがより好ましく、90質量%以上であることがさらに好ましい。
【0147】
本発明の塗工用組成物には、上記ラテックス組成物および水溶性ポリマー以外に、染料、顔料分散物、増粘剤、硬膜剤、色調剤、現像促進剤、かぶり抑制剤、還元剤、カプラ−分散物、ハロゲン化銀など一般に使用されている種々の写真用素材を任意に配合する事ができる。ラテックス組成物、水溶性ポリマー、その他添加剤を含む熱現像感光材料塗工用組成物の固形分濃度は15質量%〜35質量%が好ましい。
【0148】
(熱現像感光材料)
本発明の熱現像感光材料の一の実施の形態は、支持体と、支持体上に少なくとも1層の画像形成層を有する熱現像感光材料であって、前記熱現像感光材料の少なくとも1層の塗工液に、上述した本発明の熱現像感光材料塗工用組成物を塗工液として使用するものである。
【0149】
上記熱現像感光材料は、画像形成層のほかに、表面保護層、中間層、バリア層、導電層、バック層など様々な非画像形成層を有しても良い。本発明の塗工液は、いずれの層に用いてもよいが、非画像形成層に用いる事が好ましく、中間層、または表面保護層に用いる事がより好ましい。
【実施例】
【0150】
以下、本発明を実施例によって具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0151】
実施例1
(アクリルラテックス−1の合成)
攪拌機、還流冷却器を備えた反応器に蒸留水500g、メチルメタクリレート204g、ブチルアクリレート90g、アクリル酸6g、乳化剤−130g、APS2.25g、NaOH1.66gを加え,窒素雰囲気下で6時間70℃に加熱して反応を完結させ、重合体を得た。質量平均分子量は3.1×10であった。
【0152】
(アクリルラテックス−2の合成)
アクリルラテックス−1の合成で用いた乳化剤−1を乳化剤−230gに置き換えた以外はアクリルラテックス−1と同様にして、アクリルラテックス−2を合成した。
【0153】
(比較例1の調製)
このようにして得られたアクリルラテックス−1に対し、蒸留水165gを添加し、全体の固形分濃度を33質量%とした。
【0154】
(比較例2の調製)
アクリルラテックス−1に対し、エマレックス125(日本エマルジョン製、C1632O(CHCHO)25H)3.3g、蒸留水162gを添加したものを比較例2とした。
【0155】
(実施例3〜15の調製)
アクリルラテックス−1に対し、下表に記載の添加物を加えたものを実施例3〜15とした。
【0156】
(比較例16の調製)
アクリルラテックス−2に対し、蒸留水165gを添加し、比較例16とした。
【0157】
(実施例17の調製)
アクリルラテックス−2に対し、AO−1 0.18g、蒸留水165gを添加し実施例17とした。
【0158】
(性能の評価)
1)ラテックスの機械安定性試験
各ラテックスを、荷重10kg、回転数1,000rpm、シェア時間5分間の条件でマーロン試験(JIS K6392−1995)を行い、凝集物の重量を測定し、下式により凝集物の発生率を算出した。
凝集物の発生率(ppm)=(凝集物/初期固形分)×1,000,000
【0159】
2)ホルマリン揮散量の測定
JIS A6922に準じてラテックスからのホルマリン揮散量を定量した。内径100mmのペトリ皿3枚に各ラテックスを130g/mとなるように添加し、10分間乾燥したものを試料とした。大きさ240mmのデシケーターの底部に300mLの蒸留水を入れた直径12cm、高さ6cmの結晶皿を置き、その上に金網をしいて試料を静置した。その後25℃で24時間放置して、放散ホルムアルデヒドを蒸留水に吸収させて、アセチルアセトン法により放散量を測定した。
【0160】
【化28】

【0161】
【表1】

【0162】
(評価結果)
各ラテックスについての評価結果を表1に示した。表1に記載の通り、本発明に記載の乳化剤および酸化防止剤を用いたラテックス組成物は、高い機械的安定性を維持しながらホルマリンの揮散量が抑制されることが明らかになった。
【0163】
実施例2
(スチレンイソプレンラテックス TP−1の合成)
ガスモノマー反応装置(耐圧硝子工業(株)製TAS−2J型)の重合釜に蒸留水1500g添加し、90℃で3時間加熱し、重合釜のステンレス表面やステンレス製撹拌装置の部材に不動態皮膜を形成させる。この処理を行った重合釜に、窒素ガスを1時間バブリングした蒸留水582.28g、界面活性剤(パイオニンA−43−S(竹本油脂(株)製))9.49g、1mol/LのNaOHを19.56g、エチレンジアミン4酢酸4ナトリウム塩0.20g、スチレン314.99g、イソプレン190.87g、アクリル酸10.43g、tert−ドデシルメルカプタン2.09gを入れ、反応容器を密閉し撹拌速度225rpmで撹拌し、内温65℃まで昇温した。ここに過硫酸アンモニウム2.61gを水40mLに溶解した液を添加し、そのまま6時間撹拌した。この時点での重合転化率は固形分測定から90%であった。ここで、アクリル酸5.22gを水46.98gに溶解した液を添加し、続いて水10gを添加し、過硫酸アンモニウム1.30gを水50.7mLに溶解した液をさらに添加した。添加後、90℃に昇温して3時間撹拌し、反応終了後、内温が室温になるまで下げた後、1mol/LのNaOHとNHOHを用いてNaイオン:NHイオン=1:5.3(モル比)になるように添加処理し、pH8.4に調整した。その後、孔径1.0μmのポリプロピレン製フィルターにてろ過を行い、ゴミ等の異物を除去して収納し、イソプレンラテックスTP−1を1248g得た。イオンクロマトグラフィーによりハロゲンイオンを測定したところ、塩化物イオン濃度3ppmであった。高速液体クロマトグラフィーによりキレート剤の濃度を測定した結果、142ppmであった。
【0164】
(比較例201の調製)
このようにして得られたTP−1に対し、蒸留水317gを添加し、全体の固形分濃度を33質量%とし比較例201とした。
【0165】
(比較例202の調製)
TP−1に対し、W−2−1 5.2g、蒸留水312gを添加したものを比較例202とした。
【0166】
(実施例203の調製)
TP−1に対し、W−2−1 5.2g、AO−1 0.27g、蒸留水162gを添加したものを実施例203とした。
【0167】
(性能の評価)
実施例1と同様にして、各ラテックスの機械的安定性、およびホルマリン揮散量を測定した結果を表2に示した。
【0168】
【表2】

【0169】
実施例3
(PET支持体の作製)
1)製膜
テレフタル酸とエチレングリコ−ルを用い、常法に従い固有粘度IV=0.66(フェノ−ル/テトラクロルエタン=6/4(質量比)中25℃で測定)のPETを得た。これをペレット化した後130℃で4時間乾燥し、300℃で溶融後T型ダイから押し出して急冷し、未延伸フィルムを作製した。
【0170】
これを、周速の異なるロ−ルを用い3.3倍に縦延伸、ついでテンタ−で4.5倍に横延伸を実施した。この時の温度はそれぞれ、110℃、130℃であった。この後、240℃で20秒間熱固定後これと同じ温度で横方向に4%緩和した。この後テンタ−のチャック部をスリットした後、両端にナ−ル加工を行い、4kg/cmで巻き取り、厚み175μmのロ−ルを得た。
【0171】
2)表面コロナ放電処理
ピラー社製ソリッドステートコロナ放電処理機6KVAモデルを用い、支持体の両面を室温下において20m/分で処理した。この時の電流、電圧の読み取り値から、支持体には0.375kV・A・分/mの処理がなされていることがわかった。この時の処理周波数は9.6kHz、電極と誘電体ロ−ルのギャップクリアランスは1.6mmであった。
【0172】
3)下塗り
処方a(画像形成層側下塗り層用)
高松油脂(株)製ペスレジンA−520(30質量%溶液)46.8g
東洋紡績(株)製バイロナールMD−1200 10.4g
ポリエチレングリコールモノノニルフェニルエーテル
(平均エチレンオキシド数=8.5)1質量%溶液 11.0g
綜研化学(株)製MP−1000(PMMAポリマー微粒子、平均粒径0.4μm)
0.91g
蒸留水 931mL
【0173】
処方b(バック面第1層用)
スチレン−ブタジエン共重合体ラテックス 130.8g
(固形分40質量%、スチレン/ブタジエン質量比=68/32)
2,4−ジクロロ−6−ヒドロキシ−S−トリアジンナトリウム塩(8質量%水溶液)
5.2g
ラウリルベンゼンスルホン酸ナトリウムの1質量%水溶液 10mL
ポリスチレン粒子分散物(平均粒子径2μm、20質量%)0.5g
蒸留水 854mL
【0174】
処方c(バック面側第2層用)
SnO/SbO(9/1質量比、平均粒径0.5μm、17質量%分散物)
84g
ゼラチン 7.9g
信越化学工業(株)製メトローズTC−5(2質量%水溶液)10g
ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウムの1質量%水溶液 10mL
NaOH(1質量%) 7g
プロキセル(アビシア社製) 0.5g
蒸留水 881mL
【0175】
上記厚さ175μmの2軸延伸ポリエチレンテレフタレート支持体の両面それぞれに、上記コロナ放電処理を施した後、片面(画像形成層面)に上記下塗り塗布液処方aをワイヤーバーでウエット塗布量が6.6mL/m(片面当たり)になるように塗布して180℃で5分間乾燥し、ついでこの裏面(バック面)に上記下塗り塗布液処方bをワイヤーバーでウエット塗布量が5.7mL/mになるように塗布して180℃で5分間乾燥し、更に裏面(バック面)に上記下塗り塗布液処方cをワイヤーバーでウエット塗布量が8.4mL/mになるように塗布して180℃で6分間乾燥して下塗り支持体を作製した。
【0176】
(バック層)
1)バック層塗布液の調製
(塩基プレカーサーの固体微粒子分散液(a)の調製)
塩基プレカーサー化合物1を、2.5kg、及び界面活性剤(商品名:デモールN、花王(株)製)300g、ジフェニルスルホン800g、ベンゾイソチアゾリノンナトリウム塩1.0g及び蒸留水を加えて総量を8.0kgに合わせて混合し、混合液を横型サンドミル(UVM−2:アイメックス(株)製)を用いてビーズ分散した。分散方法は、混合液を平均直径0.5mmのジルコニアビーズを充填したUVM−2にダイアフラムポンプで送液し、内圧50hPa以上の状態で、所望の平均粒径が得られるまで分散した。
分散物は、分光吸収測定を行って該分散物の分光吸収における450nmにおける吸光度と650nmにおける吸光度の比(D450/D650)が3.0まで分散した。得られた分散物は、塩基プレカーサーの濃度で25質量%となるように蒸留水で希釈し、ごみ取りのためにろ過(平均細孔径:3μmのポリプロピレン製フィルター)を行って実用に供した。
【0177】
2)染料固体微粒子分散液の調製
シアニン染料−1を6.0kg及びp−ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム3.0kg、花王(株)製界面活性剤デモールSNB0.6kg、及び消泡剤(商品名:サーフィノール104E、日信化学(株)製)0.15kgを蒸留水と混合して、総液量を60kgとした。混合液を横型サンドミル(UVM−2:アイメックス(株)製)を用いて、0.5mmのジルコニアビーズで分散した。
分散物は、分光吸収測定を行って該分散物の分光吸収における650nmにおける吸光度と750nmにおける吸光度の比(D650/D750)が5.0以上であるところまで分散した。得られた分散物は、シアニン染料の濃度で、6質量%となるように蒸留水で希釈し、ごみ取りのためにフィルターろ過(平均細孔径:1μm)を行って実用に供した。
【0178】
3)ハレーション防止層塗布液の調製
容器を40℃に保温し、等電点6.6のゼラチン(ニッピ(株)製ABAゼラチン)37g、ベンゾイソチアゾリノン0.1g、水を加えてゼラチンを溶解させた。さらに上記染料固体微粒子分散液36g、上記塩基プレカーサーの固体微粒子分散液(a)を73g、ポリスチレンスルホン酸ナトリウム3質量%水溶液43mL、SBRラテックス(スチレン/ブタジエン/アクリル酸共重合体;質量比68.3/28.7/3.0)10質量%液82gを混合し、完成液量773mLのハレーション防止層塗布液とした。完成液のpH値は、6.3であった。
【0179】
4)バック面保護層塗布液の調製
容器を40℃に保温し、等電点4.8のゼラチン(宮城化学工業(株)製PZゼラチン)43g、ベンゾイソチアゾリノン0.21g、水を加えてゼラチンを溶解させた。さらに1mol/Lの酢酸ナトリウム水溶液8.1mL、単分散ポリ(エチレングリコールジメタクリレート−コ−メチルメタクリレート)微粒子(平均粒子サイズ7.7μm、粒径標準偏差0.3μm)0.93g、流動パラフィンの10質量%乳化物を5g、ヘキサイソステアリン酸ジペンタエリスリットの10質量%乳化物を10g、スルホコハク酸ジ(2−エチルヘキシル)ナトリウム塩5質量%水溶液10mL、ポリスチレンスルホン酸ナトリウム3質量%水溶液17mL、フッ素系界面活性剤(F−1)2質量%溶液を2.4mL、フッ素系界面活性剤(F−2)2質量%溶液を2.4mL、エチルアクリレート/アクリル酸共重合体(共重合質量比96.4/3.6)ラテックス20質量%液30mLを混合した。塗布直前にN,N−エチレンビス(ビニルスルホンアセトアミド)4質量%水溶液50mLを混合し、完成液量855mLのバック面保護層塗布液とした。完成液のpH値は6.2であった。
【0180】
5)バック層の塗布
上記下塗り支持体のバック面側に、ハレーション防止層塗布液をゼラチン塗布量が0.54g/mとなるように、またバック面保護層塗布液をゼラチン塗布量が1.85g/mとなるように同時重層塗布し、乾燥し、バック層を作製した。
【0181】
(画像形成層、中間層、及び表面保護層)
1.塗布用材料の準備
1)ハロゲン化銀乳剤
《ハロゲン化銀乳剤1の調製》
蒸留水1421mLに1質量%臭化カリウム溶液3.1mLを加え、さらに0.5mol/L濃度の硫酸を3.5mL、フタル化ゼラチン31.7gを添加した液をステンレス製反応壺中で攪拌しながら、30℃に液温を保ち、硝酸銀22.22gに蒸留水を加え95.4mLに希釈した溶液Aと臭化カリウム15.3gとヨウ化カリウム0.8gを蒸留水にて容量97.4mLに希釈した溶液Bを一定流量で45秒間かけて全量添加した。その後、3.5質量%の過酸化水素水溶液を10mL添加し、さらにベンゾイミダゾールの10質量%水溶液を10.8mL添加した。さらに、硝酸銀51.86gに蒸留水を加えて317.5mLに希釈した溶液Cと臭化カリウム44.2gとヨウ化カリウム2.2gを蒸留水にて容量400mLに希釈した溶液Dを、溶液Cは一定流量で20分間かけて全量添加し、溶液DはpAgを8.1に維持しながらコントロールドダブルジェット法で添加した。銀1モル当たり1×10−4モルになるよう六塩化イリジウム(III)酸カリウム塩を溶液C及び溶液Dを添加しはじめてから10分後に全量添加した。また、溶液Cの添加終了の5秒後に六シアン化鉄(II)カリウム水溶液を銀1モル当たり3×10−4モル全量添加した。0.5mol/L濃度の硫酸を用いてpHを3.8に調整し、攪拌を止め、沈降/脱塩/水洗工程をおこなった。1mol/L濃度の水酸化ナトリウムを用いてpH5.9に調整し、pAg8.0のハロゲン化銀分散物を作製した。
【0182】
上記ハロゲン化銀分散物を攪拌しながら38℃に維持して、0.34質量%の1,2−ベンゾイソチアゾリン−3−オンのメタノール溶液を5mL加え、40分後に47℃に昇温した。昇温の20分後にベンゼンチオスルホン酸ナトリウムをメタノール溶液で銀1モルに対して7.6×10−5モル加え、さらに5分後にテルル増感剤Cをメタノール溶液で銀1モル当たり2.9×10−4モル加えて91分間熟成した。その後、分光増感色素Aと増感色素Bのモル比で3:1のメタノール溶液を銀1モル当たり増感色素AとBの合計として1.2×10−3モル加え、1分後にN,N’−ジヒドロキシ−N”−ジエチルメラミンの0.8質量%メタノール溶液1.3mLを加え、さらに4分後に、5−メチル−2−メルカプトベンゾイミダゾールをメタノール溶液で銀1モル当たり4.8×10−3モル、1−フェニル−2−ヘプチル−5−メルカプト−1,3,4−トリアゾールをメタノール溶液で銀1モルに対して5.4×10−3モル及び1−(3−メチルウレイドフェニル)−5−メルカプトテトラゾールを水溶液で銀1モルに対して8.5×10−3モル添加して、ハロゲン化銀乳剤1を作製した。
【0183】
調製できたハロゲン化銀乳剤中の粒子は、平均球相当径0.042μm、球相当径の変動係数20%のヨウドを均一に3.5モル%含むヨウ臭化銀粒子であった。粒子サイズ等は、電子顕微鏡を用い1000個の粒子の平均から求めた。この粒子の{100}面比率は、クベルカムンク法を用いて80%と求められた。
【0184】
《ハロゲン化銀乳剤2の調製》
ハロゲン化銀乳剤1の調製において、粒子形成時の液温30℃を47℃に変更し、溶液Bは臭化カリウム15.9gを蒸留水にて容量97.4mLに希釈することに変更し、溶液Dは臭化カリウム45.8gを蒸留水にて容量400mLに希釈することに変更し、溶液Cの添加時間を30分にして、六シアノ鉄(II)カリウムを除去した以外は同様にして、ハロゲン化銀乳剤2の調製を行った。ハロゲン化銀乳剤1と同様に沈殿/脱塩/水洗/分散を行った。更に、テルル増感剤Cの添加量を銀1モル当たり1.1×10−4モル、分光増感色素Aと分光増感色素Bのモル比で3:1のメタノール溶液の添加量を銀1モル当たり増感色素Aと増感色素Bの合計として7.0×10−4モル、1−フェニル−2−ヘプチル−5−メルカプト−1,3,4−トリアゾールを銀1モルに対して3.3×10−3モル及び1−(3−メチルウレイドフェニル)−5−メルカプトテトラゾールを銀1モルに対して4.7×10−3モル添加に変えた以外は乳剤1と同様にして分光増感、化学増感及び5−メチル−2−メルカプトベンゾイミダゾール、1−フェニル−2−ヘプチル−5−メルカプト−1,3,4−トリアゾールの添加を行い、ハロゲン化銀乳剤2を得た。ハロゲン化銀乳剤2の乳剤粒子は、平均球相当径0.080μm、球相当径の変動係数20%の純臭化銀立方体粒子であった。
【0185】
《ハロゲン化銀乳剤3の調製》
ハロゲン化銀乳剤1の調製において、粒子形成時の液温30℃を27℃に変更する以外は同様にして、ハロゲン化銀乳剤3の調製を行った。また、ハロゲン化銀乳剤1と同様に沈殿/脱塩/水洗/分散を行った。分光増感色素Aと分光増感色素Bのモル比で1:1を固体分散物(ゼラチン水溶液)として添加量を銀1モル当たり増感色素Aと増感色素Bの合計として6×10−3モル、テルル増感剤Cの添加量を銀1モル当たり5.2×10−4モルに変え、テルル増感剤の添加3分後に臭化金酸を銀1モル当たり5×10−4モルとチオシアン酸カリウムを銀1モルあたり2×10−3モルを添加したこと以外は乳剤1と同様にして、ハロゲン化銀乳剤3を得た。ハロゲン化銀乳剤3の乳剤粒子は、平均球相当径0.034μm、球相当径の変動係数20%のヨウドを均一に3.5モル%含むヨウ臭化銀粒子であった。
【0186】
《塗布液用混合乳剤Aの調製》
ハロゲン化銀乳剤1を70質量%、ハロゲン化銀乳剤2を15質量%、ハロゲン化銀乳剤3を15質量%溶解し、ベンゾチアゾリウムヨーダイドを1質量%水溶液にて銀1モル当たり7×10−3モル添加した。
さらに1電子酸化されて生成する1電子酸化体が1電子若しくはそれ以上の電子を放出し得る化合物1,2,3をそれぞれハロゲン化銀の銀1モル当たり2×10−3モルになる量を添加した。
吸着基と還元基を有する吸着性レドックス化合物1,2をそれぞれハロゲン化銀1モルあたり5×10−3モルになる量を添加した。
さらに塗布液用混合乳剤1kgあたりハロゲン化銀の含有量が銀として38.2gとなるように加水した。塗布液用混合乳剤1kgあたり0.34gとなるように1−(3−メチルウレイドフェニル)−5−メルカプトテトラゾールを添加した。
【0187】
2)脂肪酸銀分散物の調製
<再結晶ベヘン酸の調製>
ヘンケル社製ベヘン酸(製品名Edenor C22−85R)100kgを、1200kgのイソプロピルアルコールにまぜ、50℃で溶解し、10μmのフィルターで濾過した後、30℃まで、冷却し、再結晶を行った。再結晶をする際の、冷却スピードは、3℃/時間にコントロールした。得られた結晶を遠心濾過し、100kgのイソプルピルアルコールでかけ洗いを実施した後、乾燥を行った。得られた結晶をエステル化してGC−FID測定をしたところ、ベヘン酸含有率は96モル%、それ以外にリグノセリン酸が2モル%、アラキジン酸が2モル%、エルカ酸0.001モル%含まれていた。
【0188】
<脂肪酸銀分散物の調製>
再結晶ベヘン酸88kg、蒸留水422L、5mol/L濃度のNaOH水溶液49.2L、t−ブチルアルコール120Lを混合し、75℃にて1時間攪拌し反応させ、ベヘン酸ナトリウム溶液Bを得た。別に、硝酸銀40.4kgの水溶液206.2L(pH4.0)を用意し、10℃にて保温した。635Lの蒸留水と30Lのt−ブチルアルコールを入れた反応容器を30℃に保温し、十分に撹拌しながら先のベヘン酸ナトリウム溶液Bの全量と硝酸銀水溶液の全量を流量一定でそれぞれ93分15秒と90分かけて添加した。
このとき、硝酸銀水溶液添加開始後11分間は硝酸銀水溶液のみが添加されるようにし、そのあとベヘン酸ナトリウム溶液Bを添加開始し、硝酸銀水溶液の添加終了後14分15秒間はベヘン酸ナトリウム溶液Bのみが添加されるようにした。
このとき、反応容器内の温度は30℃とし、液温度が一定になるように外温コントロールした。また、ベヘン酸ナトリウム溶液Bの添加系の配管は、2重管の外側に温水を循環させる事により保温し、添加ノズル先端の出口の液温度が75℃になるよう調製した。
また、硝酸銀水溶液の添加系の配管は、2重管の外側に冷水を循環させることにより保温した。ベヘン酸ナトリウム溶液Bの添加位置と硝酸銀水溶液の添加位置は撹拌軸を中心として対称的な配置とし、また反応液に接触しないような高さに調製した。
【0189】
ベヘン酸ナトリウム溶液Bを添加終了後、そのままの温度で20分間撹拌放置し、30分かけて35℃に昇温し、その後210分熟成を行った。熟成終了後直ちに、遠心濾過で固形分を濾別し、固形分を濾過水の伝導度が30μS/cmになるまで水洗した。こうして脂肪酸銀塩を得た。得られた固形分は、乾燥させないでウエットケーキとして保管した。
得られた脂肪酸銀粒子の形態を電子顕微鏡撮影により評価したところ、平均値でa=0.21μm、b=0.4μm、c=0.4μm、平均アスペクト比2.1、球相当径の変動係数11%の結晶であった(a,b,cは本文の規定)。
【0190】
乾燥固形分260kg相当のウエットケーキに対し、ポリビニルアルコール(商品名:PVA−217)19.3kg及び水を添加し、全体量を1000kgとしてからディゾルバー羽根でスラリー化し、更にパイプラインミキサー(みづほ工業製:PM−10型)で予備分散した。
【0191】
次に予備分散済みの原液を分散機(商品名:マイクロフルイダイザーM−610、マイクロフルイデックス・インターナショナル・コーポレーション製、Z型インタラクションチャンバー使用)の圧力を1150kg/cmに調節して、三回処理し、ベヘン酸銀分散物を得た。冷却操作は蛇管式熱交換器をインタラクションチャンバーの前後に各々装着し、冷媒の温度を調節することで18℃の分散温度に設定した。
【0192】
3)還元剤分散物の調製
《還元剤−1分散物の調製》
還元剤−1(2,2’−メチレンビス−(4−エチル−6−tert−ブチルフェノール))10kgと変性ポリビニルアルコール(クラレ(株)製、ポバールMP203)の10質量%水溶液16kgに、水10kgを添加して、良く混合してスラリーとした。このスラリーをダイアフラムポンプで送液し、平均直径0.5mmのジルコニアビーズを充填した横型サンドミル(UVM−2:アイメックス(株)製)にて3時間分散したのち、ベンゾイソチアゾリノンナトリウム塩0.2gと水を加えて還元剤の濃度が25質量%になるように調整した。この分散液を60℃で5時間加熱処理し、還元剤−1分散物を得た。
こうして得た還元剤分散物に含まれる還元剤粒子はメジアン径0.40μm、最大粒子径1.4μm以下であった。得られた還元剤分散物は孔径3.0μmのポリプロピレン製フィルターにてろ過を行い、ゴミ等の異物を除去して収納した。
【0193】
《還元剤−2分散物の調製》
還元剤−2(6,6’−ジ−t−ブチル−4,4’−ジメチル−2,2’−ブチリデンジフェノール)10kgと変性ポリビニルアルコール(クラレ(株)製、ポバールMP203)の10質量%水溶液16kgに、水10kgを添加して、良く混合してスラリーとした。このスラリーをダイアフラムポンプで送液し、平均直径0.5mmのジルコニアビーズを充填した横型サンドミル(UVM−2:アイメックス(株)製)にて3時間30分分散したのち、ベンゾイソチアゾリノンナトリウム塩0.2gと水を加えて還元剤の濃度が25質量%になるように調整した。この分散液を40℃で1時間加熱した後、引き続いてさらに80℃で1時間加熱処理し、還元剤−2分散物を得た。こうして得た還元剤分散物に含まれる還元剤粒子はメジアン径0.50μm、最大粒子径1.6μm以下であった。得られた還元剤分散物は孔径3.0μmのポリプロピレン製フィルターにてろ過を行い、ゴミ等の異物を除去して収納した。
【0194】
4)水素結合性化合物−1分散物の調製
水素結合性化合物−1(トリ(4−t−ブチルフェニル)ホスフィンオキシド)10kgと変性ポリビニルアルコール(クラレ(株)製、ポバールMP203)の10質量%水溶液16kgに、水10kgを添加して、良く混合してスラリーとした。このスラリーをダイアフラムポンプで送液し、平均直径0.5mmのジルコニアビーズを充填した横型サンドミル(UVM−2:アイメックス(株)製)にて4時間分散したのち、ベンゾイソチアゾリノンナトリウム塩0.2gと水を加えて水素結合性化合物の濃度が25質量%になるように調整した。この分散液を40℃で1時間加熱した後、引き続いてさらに80℃で1時間加温し、水素結合性化合物−1分散物を得た。こうして得た水素結合性化合物分散物に含まれる水素結合性化合物粒子はメジアン径0.45μm、最大粒子径1.3μm以下であった。得られた水素結合性化合物分散物は孔径3.0μmのポリプロピレン製フィルターにてろ過を行い、ゴミ等の異物を除去して収納した。
【0195】
5)現像促進剤−1分散物の調製
現像促進剤−1を10kgと変性ポリビニルアルコール(クラレ(株)製、ポバールMP203)の10質量%水溶液20kgに、水10kgを添加して、良く混合してスラリーとした。このスラリーをダイアフラムポンプで送液し、平均直径0.5mmのジルコニアビーズを充填した横型サンドミル(UVM−2:アイメックス(株)製)にて3時間30分分散したのち、ベンゾイソチアゾリノンナトリウム塩0.2gと水を加えて現像促進剤の濃度が20質量%になるように調整し、現像促進剤−1分散物を得た。こうして得た現像促進剤分散物に含まれる現像促進剤粒子はメジアン径0.48μm、最大粒子径1.4μm以下であった。得られた現像促進剤分散物は孔径3.0μmのポリプロピレン製フィルターにてろ過を行い、ゴミ等の異物を除去して収納した。
【0196】
6)現像促進剤−2及び色調調整剤−1の分散物調製
現像促進剤−2及び色調調整剤−1の固体分散物についても現像促進剤−1と同様の方法により分散し、それぞれ20質量%、15質量%の分散液を得た。
【0197】
7)ポリハロゲン化合物の調製
《有機ポリハロゲン化合物−1分散物の調製》
有機ポリハロゲン化合物−1(トリブロモメタンスルホニルベンゼン)10kgと変性ポリビニルアルコール(クラレ(株)製ポバールMP203)の20質量%水溶液10kgと、トリイソプロピルナフタレンスルホン酸ナトリウムの20質量%水溶液0.4kgと、水14kgを添加して、良く混合してスラリーとした。このスラリーをダイアフラムポンプで送液し、平均直径0.5mmのジルコニアビーズを充填した横型サンドミル(UVM−2:アイメックス(株)製)にて5時間分散したのち、ベンゾイソチアゾリノンナトリウム塩0.2gと水を加えて有機ポリハロゲン化合物の濃度が26質量%になるように調整し、有機ポリハロゲン化合物−1分散物を得た。こうして得たポリハロゲン化合物分散物に含まれる有機ポリハロゲン化合物粒子はメジアン径0.41μm、最大粒子径2.0μm以下であった。得られた有機ポリハロゲン化合物分散物は孔径10.0μmのポリプロピレン製フィルターにてろ過を行い、ゴミ等の異物を除去して収納した。
【0198】
《有機ポリハロゲン化合物−2分散物の調製》
有機ポリハロゲン化合物−2(N−ブチル−3−トリブロモメタンスルホニルベンゾアミド)10kgと変性ポリビニルアルコール(クラレ(株)製ポバールMP203)の10質量%水溶液20kgと、トリイソプロピルナフタレンスルホン酸ナトリウムの20質量%水溶液0.4kgを添加して、良く混合してスラリーとした。このスラリーをダイアフラムポンプで送液し、平均直径0.5mmのジルコニアビーズを充填した横型サンドミル(UVM−2:アイメックス(株)製)にて5時間分散したのち、ベンゾイソチアゾリノンナトリウム塩0.2gと水を加えて有機ポリハロゲン化合物の濃度が30質量%になるように調整した。この分散液を40℃で5時間加温し、有機ポリハロゲン化合物−2分散物を得た。こうして得たポリハロゲン化合物分散物に含まれる有機ポリハロゲン化合物粒子はメジアン径0.40μm、最大粒子径1.3μm以下であった。得られた有機ポリハロゲン化合物分散物は孔径3.0μmのポリプロピレン製フィルターにてろ過を行い、ゴミ等の異物を除去して収納した。
【0199】
8)フタラジン化合物−1溶液の調製
8kgのクラレ(株)製変性ポリビニルアルコールMP203を水174.57kgに溶解し、次いでトリイソプロピルナフタレンスルホン酸ナトリウムの20質量%水溶液3.15kgとフタラジン化合物−1(6−イソプロピルフタラジン)の70質量%水溶液14.28kgを添加し、フタラジン化合物−1の5質量%溶液を調製した。
【0200】
9)メルカプト化合物の調製
《メルカプト化合物−1水溶液の調製》
メルカプト化合物−1(1−(3−スルホフェニル)−5−メルカプトテトラゾールナトリウム塩)7gを水993gに溶解し、0.7質量%の水溶液とした。
【0201】
《メルカプト化合物−2水溶液の調製》
メルカプト化合物−2(1−(3−メチルウレイドフェニル)−5−メルカプトテトラゾール)20gを水980gに溶解し、2.0質量%の水溶液とした。
【0202】
10)顔料−1分散物の調製
C.I.Pigment Blue 60を64gと花王(株)製デモールNを6.4gに水250gを添加し良く混合してスラリーとした。平均直径0.5mmのジルコニアビーズ800gを用意してスラリーと一緒にベッセルに入れ、分散機(1/4Gサンドグラインダーミル:アイメックス(株)製)にて25時間分散し、水を加えて顔料の濃度が5質量%になるように調整して顔料−1分散物を得た。こうして得た顔料分散物に含まれる顔料粒子は平均粒径0.21μmであった。
【0203】
11)SBRラテックス液の調製
SBRラテックス(TP−1)は以下により調製した。
ガスモノマー反応装置(耐圧硝子工業(株)製TAS−2J型)の重合釜に、蒸留水287g、界面活性剤(パイオニンA−43−S(竹本油脂(株)製):固形分48.5質量%)7.73g、1mol/L、NaOH14.06mL、エチレンジアミン4酢酸4ナトリウム塩0.15g、スチレン255g、アクリル酸11.25g、tert−ドデシルメルカプタン3.0gを入れ、反応容器を密閉し撹拌速度200rpmで撹拌した。真空ポンプで脱気し窒素ガス置換を数回繰返した後に、1,3−ブタジエン108.75gを圧入して内温60℃まで昇温した。ここに過硫酸アンモニウム1.875gを水50mLに溶解した液を添加し、そのまま5時間撹拌した。さらに90℃に昇温して3時間撹拌し、反応終了後内温が室温になるまで下げた後、1mol/LのNaOHとNHOHを用いてNaイオン:NHイオン=1:5.3(モル比)になるように添加処理し、pH8.4に調整した。その後、孔径1.0μmのポリプロピレン製フィルターにてろ過を行い、ゴミ等の異物を除去して収納し、SBRラテックスTP−1を774.7g得た。イオンクロマトグラフィーによりハロゲンイオンを測定したところ、塩化物イオン濃度3ppmであった。高速液体クロマトグラフィーによりキレート剤の濃度を測定した結果、145ppmであった。
【0204】
上記ラテックスは平均粒径90nm、Tg=17℃、固形分濃度44質量%、25℃60%RHにおける平衡含水率0.6質量%、イオン伝導度4.80mS/cm(イオン伝導度の測定は東亜電波工業(株)製伝導度計CM−30S使用し25℃にて測定)であった。
【0205】
12)イソプレンラテックス液の調製
イソプレンラテックス(TP−2)は以下により調製した。
ガスモノマー反応装置(耐圧硝子工業(株)製TAS−2J型)の重合釜に蒸留水1500g添加し、90℃で3時間加熱し、重合釜のステンレス表面やステンレス製撹拌装置の部材に不動態皮膜を形成させる。この処理を行った重合釜に、窒素ガスを1時間バブリングした蒸留水582.28g、界面活性剤(パイオニンA−43−S(竹本油脂(株)製))9.49g、1mol/LのNaOHを19.56g、エチレンジアミン4酢酸4ナトリウム塩0.20g、スチレン314.99g、イソプレン190.87g、アクリル酸10.43g、tert−ドデシルメルカプタン2.09gを入れ、反応容器を密閉し撹拌速度225rpmで撹拌し、内温65℃まで昇温した。ここに過硫酸アンモニウム2.61gを水40mLに溶解した液を添加し、そのまま6時間撹拌した。この時点でのは重合転化率は固形分測定から90%であった。ここで、アクリル酸5.22gを水46.98gに溶解した液を添加し、続いて水10gを添加し、過硫酸アンモニウム1.30gを水50.7mLに溶解した液をさらに添加した。添加後、90℃に昇温して3時間撹拌し、反応終了後、内温が室温になるまで下げた後、1mol/LのNaOHとNHOHを用いてNaイオン:NHイオン=1:5.3(モル比)になるように添加処理し、pH8.4に調整した。その後、孔径1.0μmのポリプロピレン製フィルターにてろ過を行い、ゴミ等の異物を除去して収納し、イソプレンラテックスTP−1を1248g得た。イオンクロマトグラフィーによりハロゲンイオンを測定したところ、塩化物イオン濃度3ppmであった。高速液体クロマトグラフィーによりキレート剤の濃度を測定した結果、142ppmであった。
【0206】
上記ラテックスは平均粒径113nm、Tg=15℃、固形分濃度41.3質量%、25℃60%RHにおける平衡含水率0.4質量%、イオン伝導度5.23mS/cm(イオン伝導度の測定は東亜電波工業(株)製伝導度計CM−30S使用し25℃にて測定)であった。
【0207】
13)アクリルラテックスAの調製
<アクリルラテックスA−1の調製>
ネオペレックスG−15(花王(株)製)69.6g、およびキレスト2D1.03gを水で500gに希釈し後添加液を調製した。
メチルメタクリレート/スチレン/ブチルアクリレート/ヒドロキシエチルメタクリレート/アクリル酸共重合ラテックス(共重合質量比57/8/28/5/2。20.5質量%、粒径110nm、pH=5.3)4600gに対し、前記後添加液500gを添加しアクリルラテックスAを調製した。
【0208】
<アクリルラテックスA−2〜A−25の調製>
前記後添加液に対し、一般式(W)で表される界面活性剤、および酸化防止剤を表1のように添加した以外はアクリルラテックスA−1と同様にしてA−2〜A−25を調製した。この際、酸化防止剤は7質量%MeOH溶液として添加した。
【0209】
ラテックスA−1〜A−25を調製した後、室温で3ヶ月間保存した。得られたラテックスをそれぞれアクリルラテックスB−1〜B−25とした。
【0210】
【表3】

【0211】
2.塗布液の調製
1)画像形成層塗布液の調製
上記で得た脂肪酸銀分散物1000gに、水、顔料−1分散物、有機ポリハロゲン化合物−1分散物、有機ポリハロゲン化合物−2分散物、フタラジン化合物−1溶液、SBRラテックス(TP−1)液、イソプレンラテックス(TP−2)液、還元剤−1分散物、還元剤−2分散物、水素結合性化合物−1分散物、現像促進剤−1分散物、現像促進剤−2分散物、色調調整剤−1分散物、メルカプト化合物−1、および水溶液メルカプト化合物−2水溶液を順次添加し、塗布直前にハロゲン化銀混合乳剤140gを添加して良く混合した画像形成層塗布液をそのままコーティングダイへ送液した。
上記画像形成層塗布液の粘度は東京計器のB型粘度計で測定して、40℃(No.1ローター、60rpm)で35[mPa・s]であった。
Haake社製RheoStress RS150を使用した38℃での塗布液の粘度は剪断速度が0.1、1、10、100、1000[1/秒]においてそれぞれ38、49、48、34、25[mPa・s]であった。
【0212】
塗布液中のジルコニウム量は銀1gあたり0.30mgであった。
【0213】
2)中間層塗布液の調製
ポリビニルアルコールPVA−205(クラレ(株)製)1000g、顔料−1分散物163g、青色染料化合物−1(日本化薬(株)製:カヤフェクトターコイズRNリキッド150)18.5質量%水溶液33g、スルホコハク酸ジ(2−エチルヘキシル)ナトリウム塩5質量%水溶液27mL、アクリルラテックス(表4、5に示す)を4200mLにエアロゾールOT(アメリカンサイアナミド社製)の5質量%水溶液を27mL、フタル酸二アンモニウム塩の20質量%水溶液を135mL、総量10000gになるように水を加え、pHが7.5になるようにNaOHで調整して中間層塗布液とした。
【0214】
3)表面保護層第1層塗布液の調製
イナートゼラチン100g、ベンゾイソチアゾリノン10mgを水840mLに溶解し、アクリルラテックス(表4、5に示す)を180g、フタル酸の15質量%メタノール溶液を46mL、スルホコハク酸ジ(2−エチルヘキシル)ナトリウム塩の5質量%水溶液を5.4mLを加えて混合し、塗布直前に4質量%のクロムみょうばん40mLを混合した。
【0215】
4)表面保護層第2層塗布液の調製
イナートゼラチン100g、ベンゾイソチアゾリノン10mgを水800mLに溶解し、流動パラフィンの10質量%乳化物を10g、ヘキサイソステアリン酸ジペンタエリスリットの10質量%乳化物を30g、アクリルラテックス(表4、5に示す)を180g、フタル酸15質量%メタノール溶液40mL、フッ素系界面活性剤(F−1)の1質量%溶液を5.5mL、フッ素系界面活性剤(F−2)の1質量%水溶液を5.5mL、スルホコハク酸ジ(2−エチルヘキシル)ナトリウム塩の5質量%水溶液を28mL、ポリメチルメタクリレート微粒子(平均粒径0.7μm、体積加重平均の分布30%)4g、およびポリメチルメタクリレート微粒子(平均粒径3.6μm、体積加重平均の分布60%)21gを混合した。
【0216】
3.熱現像感光材料の作製
1)熱現像感光材料−1〜50の作製
バック面と反対の面に下塗り面から画像形成層、中間層、表面保護層第1層、表面保護層第2層の順番でスライドビード塗布方式にて同時重層塗布し、熱現像感光材料の試料を作製した。
中間層塗布液の塗布量は8.9mL/m、表面保護層第2層塗布液の塗布量は26.1mL/m、表面保護層第2層塗布液の塗布量は8.3mL/mであった。
画像形成層の各化合物の塗布量(g/m)は以下の通りである。
【0217】
脂肪酸銀 5.42
顔料(C.I.Pigment Blue 60) 0.036
ポリハロゲン化合物−1 0.14
ポリハロゲン化合物−2 0.28
フタラジン化合物−1 0.18
SBRラテックス(TP−1) 2.83
イソプレンラテックス(TP−2) 6.60
還元剤−1 0.40
還元剤−2 0.40
水素結合性化合物−1 0.116
現像促進剤−1 0.01
現像促進剤−2 0.02
メルカプト化合物−1 0.002
メルカプト化合物−2 0.012
ハロゲン化銀(Agとして) 0.10
【0218】
塗布乾燥条件は以下のとおりである。
塗布はスピード180m/minで行い、コーティングダイ先端と支持体との間隙を0.10mm〜0.30mmとし、減圧室の圧力を大気圧に対して196Pa〜882Pa低く設定した。支持体は塗布前にイオン風にて除電した。
引き続くチリングゾーンにて、乾球温度10℃〜20℃の風にて塗布液を冷却した後、無接触型搬送して、つるまき式無接触型乾燥装置にて、乾球温度23℃〜45℃、湿球温度15℃〜21℃の乾燥風で乾燥させた。
乾燥後、25℃で湿度40%RH〜60%RHで調湿した後、膜面を70℃〜90℃になるように加熱した。加熱後、膜面を25℃まで冷却した。
作製された熱現像感光材料のマット度はベック平滑度で画像形成層面側が550秒、バック面が130秒であった。また、画像形成層面側の膜面のpHを測定したところ6.0であった。
【0219】
【表4】

【0220】
【表5】

【0221】
以下に本発明の実施例で用いた化合物の化学構造を示す。
【0222】
【化29】

【0223】
【化30】

【0224】
【化31】

【0225】
【化32】

【0226】
4.性能の評価
1)準備
得られた試料は半切サイズ(43cm長×35cm幅)に切断し、25℃50%RHの環境下で以下の包装材料に包装し、2週間常温下で保管した後、以下の評価を行った。
<包装材料>
PET10μm/PE12μm/アルミ箔9μm/Ny15μm/カーボン3質量%を含むポリエチレン50μmを積層したラミネートフィルム:
酸素透過率:0.02mL/atm・m・25℃・day;
水分透過率:0.10g/atm・m・25℃・day。
【0227】
2)熱現像感光材料の露光・現像
各試料を富士メディカル(株)ドライレーザーイメージャーDRYPIX7000(最大50mW(IIIB)出力の660nm半導体レーザー搭載)にて露光および熱現像(107℃−121℃−121℃に設定した3枚のパネルヒータで合計14秒)し、得られた画像の評価を濃度計により行った。
3)写真性能の評価
かぶり:未露光部の濃度をかぶりとした。
感度:画像濃度1.0を得るのに必要な露光量の逆数を感度として、1に対する相対値で表した。
【0228】
4)塗布面状の評価
得られた試料各50mを目視により100μm以上のサイズのブツの発生個数を調べた。
【0229】
5)生保存安定性の評価
得られた試料を25℃40%RHの環境下で前述の包装材料に包装したのち、50℃の環境に7日間保管した。この試料を用いて標準試料と同様の写真性評価を行い、標準試料との変化の大きさを表4と表5に示した。
【0230】
6)評価結果
得られた結果を表4と表5に示した。本発明の界面活性剤を使用した熱現像感光材料はブツが少なく、良好な塗布面状であった。それに対して、比較の試料では塗布表面に異物によるブツおよび塗布スジが発生した。さらに、比較の試料は保存後のラテックスを用いた試料では生保存中にかぶりが増大したが、本発明による試料は、ラテックスが経時した後であっても塗布面状に優れ、生保存中のかぶりの増大が少なく、感度変動も少なく、保存安定性の改良効果が顕著であった。
【0231】
実施例4
1.試料の作製
画像形成層のポリマーラテックスTP−2を実施例1のアクリルラテックスと同様、室温で3ヶ月保管したものをポリマーラテックスTP−2Bとした。また、表6に示したようにポリマーラテックスTP−2に対し、界面活性剤および酸化防止剤を添加したラテックスを調製したのち、室温で3ヶ月保管しTP−3〜5とした。実施例1の試料1において、画像形成層のポリマーラテックスを表7に示すポリマーラテックスに変更して、試料201〜204を作製した。
【0232】
【表6】

【0233】
【表7】

【0234】
2.性能評価
実施例1と同様に評価した結果を表8に示した。
その結果、実施例1におけると同様に試料204は1と同様の塗布面状、および生保存安定性が維持され、ラテックスの保管による性能低下が改良される好ましい結果を示した。
【0235】
【表8】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
ラテックスと、分子中に置換または無置換のアルキレンオキサイド基を有する界面活性剤、および酸化防止剤を含有する事を特徴とするラテックス組成物。
【請求項2】
前記ラテックス組成物中に占めるラテックス固形分の濃度が10質量%〜50質量%である請求項1に記載のラテックス組成物。
【請求項3】
前記ラテックスの粒径が50nm〜200nmであることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載のラテックス組成物。
【請求項4】
前記ラテックスのガラス転位温度が−10℃〜100℃である請求項1〜請求項3のいずれか1項に記載のラテックス組成物。
【請求項5】
前記ラテックスが、アクリルラテックスであること特徴とする請求項1〜請求項4のいずれか1項に記載のラテックス組成物。
【請求項6】
前記ラテックスが、下記一般式(M)で表されるモノマー成分を10質量%以上70質量%以下有するポリマーラテックスであることを特徴とする請求項1〜請求項4のいずれか1項に記載のラテックス組成物:
【化1】

(式中、R01およびR02は、各々独立に、水素原子、炭素数1〜6のアルキル基、ハロゲン原子、およびシアノ基より選ばれる基である。)。
【請求項7】
前記一般式(M)におけるR01およびR02が共に水素原子、または一方が水素原子であり、他方がメチル基であることを特徴とする請求項6に記載のラテックス組成物。
【請求項8】
前記アルキレンオキサイド基を含有する界面活性剤をラテックス固形分に対し、固形分として0.5質量%〜10質量%含有する請求項1〜請求項7のいずれか1項に記載のラテックス組成物。
【請求項9】
前記アルキレンオキサイド基がエチレンオキサイド基である請求項1〜請求項8のいずれか1項に記載のラテックス組成物。
【請求項10】
前記アルキレンオキサイド基を含有する界面活性剤の分子量が350〜2500である請求項1〜請求項9のいずれか1項に記載のラテックス組成物。
【請求項11】
前記アルキレンオキサイド基を有する界面活性剤が、下記一般式(NW)で表される化合物であること特徴とする請求項1〜請求項10のいずれか1項に記載のラテックス組成物:
【化2】


(式中、R15は炭素数が12〜30の炭化水素基を表し、Xは酸素原子を含む2価の連結基を表し、AOはエチキレンオキサイド基または2−プロピレンオキサイド基を表し、Yは水素原子、アニオン性基、もしくはその塩を表す。m6は3〜50の整数を表す。)。
【請求項12】
前記アルキレンオキサイド基を含有する界面活性剤が非イオン性界面活性剤であることを特徴とする請求項1〜請求項11のいずれか1項に記載のラテックス組成物。
【請求項13】
前記アルキレンオキサイド基を含有する非イオン性界面活性剤のHLB値が10〜18であることを特徴とする請求項12に記載のラテックス組成物。
【請求項14】
前記酸化防止剤がヒンダードフェノール化合物である請求項1〜請求項13のいずれか1項に記載のラテックス組成物。
【請求項15】
前記ヒンダードフェノール化合物が、下記一般式(AOx)で表される化合物であること特徴とする請求項14に記載のラテックス組成物:
【化3】


(一般式(AOx)において、R10及びR20は、各々独立に炭素数1〜20のアルキル基を表し、mは1〜5の整数を表す。Yは、mが1の時、水素原子又はベンゼン環に置換可能な置換基を表し、mが2〜5の時、m価の連結基を表す。)。
【請求項16】
前記一般式(AOx)においてR10及びR20が2級または3級アルキル基であること特徴とする請求項15に記載のラテックス組成物。
【請求項17】
前記酸化防止剤をラテックス組成物に対し、50ppm〜500ppm含有する請求項1〜請求項16のいずれか1項に記載のラテックス組成物。
【請求項18】
更にイオン性界面活性剤を含有する事を特徴とする請求項12〜請求項17のいずれか1項に記載のラテックス組成物。
【請求項19】
前記イオン性界面活性剤と前記非イオン性界面活性剤の添加量比が質量比で5/1〜1/5である請求項18に記載のラテックス組成物。
【請求項20】
前記イオン性界面活性剤が下記一般式(AW)で表される化合物である事を特徴とする請求項18または請求項19に記載のラテックス組成物:
【化4】


(一般式(AW)中、RおよびRはそれぞれ独立に炭素数1〜10のアルキル基を表す。Xはアルキレン基またはアリーレン基を表す。Yはイオン性基を表す。m1は0〜50の整数を表す。n1は0〜4の整数を表す。t1は0または1を表す。)。
【請求項21】
前記イオン性界面活性剤がアニオン性界面活性剤であることを特徴とする、請求項18〜請求項20のいずれか1項に記載のラテックス組成物。
【請求項22】
前記アニオン性界面活性剤が、前記一般式(AW)で表される化合物であって、Yがスルホン酸基、またはその塩であることを特徴とする請求項21に記載のラテックス組成物。
【請求項23】
前記一般式(AW)で表される化合物におけるYが、スルホン酸基のアルカリ金属塩であることを特徴とする請求項22に記載のラテックス組成物。
【請求項24】
キレート剤を含有する請求項1〜請求項23のいずれか1項に記載のラテックス組成物。
【請求項25】
前記キレート剤をラテックス組成物に対し、50ppm〜500ppm含有する請求項24に記載のラテックス組成物。
【請求項26】
前記キレート剤がアミノカルボン酸化合物である請求項24または請求項25に記載のラテックス組成物。
【請求項27】
前記キレート剤が分子内に4つのカルボキシ基を有するアミノカルボン酸化合物である請求項26に記載のラテックス組成物。
【請求項28】
請求項1〜請求項27のいずれか1項に記載のラテックス組成物の製造方法であって、1)ラテックスを重合する工程と、2)該重合したラテックスに、アルキレンオキサイド基を有する界面活性剤および酸化防止剤を添加する工程を含むことを特徴とする前記ラテックス組成物の製造方法。

【公開番号】特開2008−101121(P2008−101121A)
【公開日】平成20年5月1日(2008.5.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−284991(P2006−284991)
【出願日】平成18年10月19日(2006.10.19)
【出願人】(306037311)富士フイルム株式会社 (25,513)
【Fターム(参考)】