説明

ラミネート用粘着フィルムおよびレーザーマーキングラベル

【課題】 レーザーマーキングの際にマーキングに不具合があった際にも容易に貼り替えが可能であり、移送や使用の際にマーキング部分の欠損が生じにくく、印刷インキの選択性に優れたレーザーマーキングラベルを実現できるラミネート用粘着フィルム、およびこれら特性に優れたレーザーマーキングラベルを提供する。
【解決手段】 透明または半透明樹脂フィルムの片面に、レーザー発色性を有する発色剤を含有するレーザー発色性粘着剤層を有する粘着フィルムをラベルのオーバーラミネートとして使用することにより、ラベルが自由に選択できるようになり、レーザーマーキングの際にマーキングに不具合があった際にも容易に貼り替えが可能であり、移送や使用の際にマーキング部分の欠損が生じにくく、印刷インキの選択性に優れたレーザーマーキングラベルを実現できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ラベルにレーザー発色性を付与するラミネート用粘着フィルム、および、レーザーにより文字、画像等のマーキングが可能なレーザーマーキングラベルに関する。
【背景技術】
【0002】
飲食品や医薬品、あるいは電子部品等の表面に製造年月日や流通番号等を表記する方法としてレーザーにより印字や印画を行うレーザーマーキングが広く使用されている。レーザーマーキング法は、非接触で且つ簡便に印字が可能であり、完成した製品に直接印字できるため製品のロット番号の印字などに有用である。製品への印字は、偽造製品の防止や製造物責任法の要請等から、その重要性は近年ますます高まっている。特に、携帯電話、デジタルカメラ、ビデオカメラなどの身体に接触した状態で使用されるモバイル電子機器の充電式電池等の電子部品においては、ロット管理が重要である。
【0003】
このような電子機器へのマーキングとしては、製品の金属筐体やプラスチックケースに、レーザーで直接印字する方法が開示されている(例えば、特許文献1参照)。しかし、当該方法では、マーキングの際に印字ミスやかすれ等の不具合があった場合には修正が困難であり、製品自体に問題が無い場合でもマーキングに不具合があった製品を廃棄する必要が生じる問題があった。
【0004】
マーキングに不具合があった際にも容易に貼り替えできるものとして、レーザー印字可能な粘着テープが開示されている(例えば、特許文献2、3参照)。当該粘着テープは、基材と粘着剤層との間にインキ層を設け、基材側からのレーザー照射により基材とインキ層の一部を除去して印字する粘着テープであり、鮮明な印字が可能な粘着テープである。しかし、これら粘着テープは、最表層の基材やインキ層の破壊により印字するものであるため貼り付けた製品の移送時や長期に渡る使用状況においては、印字部が欠損するおそれがあった。また、当該ラベルに単にカバーフィルムを設けてもインキ層が好適に蒸散せず、カバーフィルムに膨れ等が発生する場合があった。
【0005】
また、光増感インキによる光増感層をニスによりコーティングしたレーザーマーキングラベル(例えば、特許文献4参照)が開示されているが、ニスは耐磨耗性に乏しく、特に開示されているような1〜1.8μm程度の薄いニスでは、印字部の欠損を防止するには充分ではなかった。また、印字される光増感層には光増感インキを必要とするため、印刷に使用できるインキが限られる問題や印刷コストが高い問題があった。
【0006】
【特許文献1】特開2005−186153
【特許文献2】特開2008−063520
【特許文献3】特開2006−321062
【特許文献4】特開平10−138642
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明が解決しようとする課題は、レーザーマーキングの際にマーキングに不具合があった際にも容易に貼り替えが可能であり、移送や使用の際にマーキング部分の欠損が生じにくく、印刷インキの選択性に優れたレーザーマーキングラベルを実現できるラミネート用粘着フィルム、およびこれら特性に優れたレーザーマーキングラベルを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明においては、透明または半透明樹脂フィルムの片面に、レーザー発色性を有する発色剤を含有するレーザー発色性粘着剤層を有する粘着フィルムをラベルのオーバーラミネートとして使用することにより、上記課題を解決できることを見出した。
【0009】
すなわち本発明は、オーバーラミネートに使用する粘着フィルムであって、透明または半透明樹脂フィルムの片面に、レーザー発色性を有する発色剤を含有するレーザー発色性粘着剤層を有するラミネート用粘着フィルムを提供することにある。
【0010】
また、レーザーによりマーキングが可能なレーザーマーキングラベルであって、樹脂基材の一方の面に印刷層と粘着剤層が積層され、樹脂基材の他方の面に上記ラミネート用粘着フィルムが積層されたレーザーマーキングラベルを提供するものである。
【0011】
また、本発明は上記の粘着フィルムが貼付されたモバイル電子機器の小型充電式電池を提供するものである。
【発明の効果】
【0012】
本発明のラミネート用粘着フィルムは、透明または半透明樹脂フィルムの片面に、レーザー発色性を有する発色剤を含有するレーザー発色性粘着剤層を有する粘着フィルムをラベルのオーバーラミネートとして使用することにより、ラベルが自由に選択できるようになり、レーザーマーキングの際にマーキングに不具合があった際にも容易に貼り替えが可能であり、移送や使用の際にマーキング部分の欠損が生じにくく、印刷インキの選択性に優れたレーザーマーキングラベルを実現できるようになる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
本発明のラミネート用粘着フィルムは、オーバーラミネートに使用する粘着フィルムであって、透明または半透明樹脂フィルムの片面に、レーザー発色性を有する発色剤を含有するレーザー発色性粘着剤層を有するものである。
【0014】
[透明樹脂フィルム]
本発明のラミネート用粘着フィルムに使用する樹脂フィルムはポリエチレンテレフタレート、ポリプロピレン、ポリエチレンなどの汎用的に入手できる透明樹脂フィルムが使用でき、必要に応じてシリカや炭酸カルシウムなどの不活性無機粒子を添加した艶消しにしたポリエチレンテレフタレートや高密度ポリエチレンを添加することによって艶消しにしたポリプロピレンなどの半透明樹脂フィルムを使用しても良い。より好ましくは、粘着剤層までレーザー光を通しやすく、表面強度が高い二軸延伸されたポリプロピレンやポリエチレンテレフタレートの透明樹脂フィルムである。樹脂フィルムの厚さは、表面の擦れに対して粘着剤層まで破壊されて印字が欠損しない厚さが望ましく、10〜30μmの厚さが望ましい。当該厚さの範囲であると、移送時や長期にわたる使用状況に際しても粘着剤層への外的衝撃が伝わりにくくなり、粘着剤層の変形が生じにくく、印字のゆがみや欠損を抑制できる。また、小型電子機器の電池パックの外装ラベルのような折れ曲がりが多い被着体へ貼付する場合に、フィルムの反発力によるオーバーラミネートの剥がれや、オーバーラミネートを施したラベルの剥がれが生じにくい。
【0015】
[レーザー発色性を有する発色剤]
本発明に使用するレーザー発色性を有する発色剤としては、レーザー光によって暗色、好ましくは黒色に変色する公知の発色剤を使用できる。当該発色剤としては、金属化合物を用いた無機粒子を主成分とする発色剤や、ロイコ染料等の発色成分とフェノールメチロール化合物等の顕色剤とを含有し、感熱によって黒色発色する反応系の発色剤などが例示でき、レーザー光に対して感度が高く、経時的な発色の安定性を有する発色剤として、金属化合物を用いた無機粒子を主成分とする発色剤を好ましく使用できる。中でも銅、モリブデン等の金属複合酸化物を用いた発色剤粒子や、キレート形成が可能な金属化合物を含有する無機粒子表面に、レーザー照射時の熱刺激によって黒色発色性が良好なアミノ基を有する炭化水素化合物を配位させた発色剤粒子を好適に使用できる。
【0016】
キレート形成能がある金属としては、銅、モリブデン、マンガン、鉄、マグネシウム、ニッケル等の金属種が好ましく、アミノ基への配位性が高い金属酸化物、水酸化物、アルコキシド等の金属化合物がとくに好ましい。金属化合物は単体もしくは二種の金属化合物を用いても良い。金属化合物を含有する無機粒子に使用する無機粒子としては、シリカ、酸化チタン、炭酸カルシウム、アルミナ等が好ましく、オーバーラミネート用粘着剤として使用するため、できうる限り着色しないシリカ、酸化チタン、アルミナの粒子がとくに好ましい。アミノ基を有する炭化水素化合物は、第一級アミン、第二級アミンが用いられる。これら発色剤を直接粘着剤へ添加して分散させても良いが、分散性を良くするため、より好ましくは添加する粘着剤と同じ樹脂系と混練して作成したマスターバッチの状態で、粘着剤へ添加する場合である。
【0017】
[レーザー発色性粘着剤層]
本発明に使用するレーザー発色性粘着剤層は、上記レーザー発色性を有する発色剤を含有する粘着剤層であり、レーザー発色性を有する発色剤を含有する粘着剤組成物から形成される層である。当該粘着剤層を形成する粘着剤組成物としては、公知のアクリル系、ゴム系、ビニルエーテル系、シリコーン系の粘着剤組成物中にレーザー発色剤を分散させた粘着剤組成物を使用することができる。それらの中でもレーザー発色剤を均一に分散しやすいアクリル系の粘着剤組成物を使用することが好ましい。特に、単量体成分として炭素数1〜14のアルキル基を有する(メタ)アクリル酸エステルを含有するアクリル系共重合体を主成分とするアクリル系粘着剤組成物が好ましい。例えば、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、n−プロピル(メタ)アクリレート、イソプロピル(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、n−ペンチル(メタ)アクリレート、n−ヘキシル(メタ)アクリレート、n−オクチル(メタ)アクリレート、イソオクチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、n−ノニル(メタ)アクリレート、イソノニル(メタ)アクリレート、n−デシル(メタ)アクリレート、n−ラウリル(メタ)アクリレート等であり、単独或いは2種以上を併用して用いることができる。中でも、n−ブチルアクリレート、2−エチルヘキシルアクリレート、又はそれらを併用した単量体を主成分とすることが好ましく、その使用量はアクリル系共重合体中の単量体成分量中の50〜99質量%であることが好ましく、95〜99%質量%であることがより好ましい。更に、レーザー発色剤を含有させた場合にも貼付時に好適なタック性を確保しやすいことから、ガラス転移温度(Tg)が低いn−ブチルアクリレートを主たる単量体成分として使用したアクリル系共重合体を含有する粘着剤組成物が好ましい。
【0018】
さらに、水酸基、カルボキシル基、アミノ基などの官能基を有するビニル系単量体を、アクリル系共重合体を形成するモノマー成分中の0.01〜15質量%となる範囲で添加するのが好ましい。例えば、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、アクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、無水マレイン酸、イタコン酸、クロトン酸、フマル酸、無水マレイン酸カルボキシプロピルアクリレート、ジメチルアミノエチルアクリルアミド、N−ビニルピロリドン、アクリロニトリル、N−ビニルカプロラクタム、アクリルアミド、スチレン、酢酸ビニル、N―メチロールアクリルアマイド、グリシジルメタクリレート等であり、これらを単独或いは2種以上を併用して使用することができる。中でも、カルボキシル基を含有したビニル系単量体を使用することが好ましく、アクリル酸、メタクリル酸、又はそれを併用した単量体を使用することがより好ましく、更に、その使用量はアクリル系共重合体を形成するモノマー成分中の0.5〜4.0質量%であることが好ましい。
【0019】
アクリル系共重合体は、溶液重合法、塊状重合法、懸濁重合法、乳化重合法、紫外線照射法、電子線照射法によって共重合させることにより得ることができる。中でも、レーザー発色剤を均一に分散させるため、トルエンや酢酸エチル等の有機溶剤を使用した溶液重合法が好ましい。
【0020】
さらに粘着剤層の凝集力を上げ、粘着力又は再剥離性を向上させるために、架橋剤を添加することが好ましい。架橋剤としては、例えば、イソシアネート系架橋剤、エポキシ系架橋剤、キレート系架橋剤等が挙げられる。中でも、レーザー発色剤が分散されていても架橋反応性が高い、イソシアネート系架橋剤が好ましい。また、粘着力を向上させるため、公知の粘着付与樹脂を使用することもできる。
【0021】
本発明のラミネート用粘着フィルム粘着剤層中の発色剤含有量は、乾燥後の粘着剤中に10〜60質量%であることが好ましい。より好ましくは20〜40質量%である。この含有範囲にあると、レーザーマーキングした際の黒色発色性が良好であり、ラミネートした後の耐剥がれ性とを両立しやすくなる。
【0022】
本発明のレーザー発色性を有する発色剤を含有する粘着剤組成物を厚さ400μmの膜状に成型し、温度23±2℃、相対湿度50±5%雰囲気中で、300mm/分で引っ張った際の引っ張り破断伸度は200〜1500%、引っ張り破断強度は0.4〜1.0MPaが好ましく、400〜800%、0.4〜0.8MPaがより好ましい。レーザー発色性粘着剤組成物の引っ張り強伸度がこの範囲にあると、レーザーマーキングラベルを形成した際、当該ラベルの加工時の打ち抜きやカス取り作業において、最上部にあるラミネート用粘着剤層がラベル表面へ伸びてラベル表面の汚れや付着が発生しにくく、ラベル表面へラミネートした際の粘着剤層のなじみがよく、表面の凹凸が見えにくい。
【0023】
溶媒を含んだ粘着剤層中への発色剤の分散は、アクリル系共重合体に発色剤を添加した後、公知の攪拌機によって混合され、均一に粘着剤中に分散される。分散機としては、プロペラミキサー、スタティックミキサー、Hi−Fミキサーなどが挙げられる。
【0024】
[ラミネート用粘着フィルム]
本発明のラミネート用粘着フィルムは、上記樹脂フィルムの片面に上記レーザー発色性粘着剤層が積層された粘着フィルムである。従来のレーザー印字可能なラベルにおいては、インキ層のレーザー照射部位のインキを蒸散させて書き込みを行うものであったため、レーザー印字を行う部分の最表層には、レーザー蒸散可能な印刷層を設けなければならないという制限が生じる。更に、完全なレーザー蒸散には至らず、印刷層の燃え残りが発生する場合、モバイル電子機器の充電式電池等に燃え残りが付着し、モバイル電子機器の汚れや誤動作を誘発する可能性がある。これに対し本発明のラミネート用粘着フィルムは、ラベル自体の印刷は制限を受けないため、インキの選択性が多く、各種意匠性の付与に極めて優位性が高い。更に、印字部の欠損の防止に際しても、インキ層の蒸散によるラミネート層の膨れや、不鮮明な印字等の問題を生じることがない。更に、モバイル電子機器の充電式電池等を作成しているメーカー等においては、印刷済みのラベルを充電式電池本体に貼り付けて電池パックとし、当該電池パックに印字する工程を有する場合があるが、印字に不具合があった際にもラミネート用粘着フィルムやこれを使用したレーザーマーキングラベルを貼り替えれば良いため、電池パックの筐体に直接レーザー印字する場合に比べ、コストの低減を図ることができる。
【0025】
本発明のラミネート用粘着フィルムの厚さは、ラベルの印刷層を保護できる厚さが必要でありながら、モバイル電子機器の携帯性向上には電池パックの薄型化が求められており、粘着ラベル表面に貼付される、樹脂フィルムとレーザー発色性粘着剤層から構成されるラミネート用粘着フィルムの厚さも薄いことが好ましいことから、13〜60μmの範囲であることが好ましく、30〜40μmであることが好ましい。
【0026】
また、樹脂フィルムの厚さは、表面の擦れに対して粘着剤層まで破壊されて印字が欠損しない厚さが望ましく、10〜30μmの厚さが望ましい。当該厚さの範囲であると、移送時や長期にわたる使用状況に際しても粘着剤層への外的衝撃が伝わりにくくなり、粘着剤層の変形が生じにくく、印字のゆがみや欠損を抑制できる。また、小型電子機器のパック電池の外装ラベルのような折れ曲がりが多い被着体へ貼付する場合に、フィルムの反発力によるラミネートの剥がれや、ラミネートを施したラベルの剥がれが生じにくい。
【0027】
レーザー発色性粘着剤層の好ましい厚さは、3〜30μm、好ましくは10〜20μmである。粘着剤層の厚さが30μm以下であるとレーザーマーキングラベルを形成した際に当該ラベルの加工時の打ち抜き、カス取り作業の際に粘着剤層の伸びが生じず、ラベルの周りに付着しないため、ラベル表面の汚れやロール状に粘着ラベルを巻いた際のブロッキングが発生しにくい。
【0028】
本発明のラミネート用粘着フィルムは、二軸延伸ポリプロピレンフィルム20μmを基材に用いた場合に、温度23±2℃、相対湿度50±5%の雰囲気中で、ラベル表面に対する300mm/分の引っ張り速度での180°ピール接着力が、3〜13N/25mmの範囲であることが好ましく、5〜10N/25mmであることがより好ましい。接着力がこの範囲にあると、レーザーマーキングラベルを折り曲げて電池パック等へ貼付した際、自然にラベルの表面からラミネート用粘着フィルムの剥がれや浮きが生じにくく、ラベルへの印字で不具合があった際にラミネート用粘着フィルムの貼り直しが容易となる。
【0029】
本発明のラミネート用粘着フィルムの引っ張り弾性率は、同雰囲気下で0.4〜4.5GPaの範囲が好ましく、1.0〜2.5GPaの範囲がより好ましい。引っ張り弾性率がこの範囲にあると、レーザーマーキングラベルを折り曲げて電池パック等へ貼付した際、ラミネート用粘着フィルムおよびレーザーマーキングラベルの剥がれや浮きが生じにくく、外的衝撃からのラベル表面の保護として十分な強度が得られる。
【0030】
本発明のラミネート用粘着フィルムの全光線透過率は、剥離ライナーを除去した状態で70%以上が好ましく、85%以上がさらに好ましい。全光線透過率がこの範囲にあると、ラベルにラミネートした状態で、ラベルに印刷された文字や模様、レーザーマーキングによって発色した文字や模様が視認しやすい。
【0031】
本発明のラミネート用粘着フィルムの製造は、転写法等の公知の方法で行われる。粘着剤の塗工装置には公知の装置が使用でき、例えば、ナイフコーター、コンマコーター、グラビアコーター、ロールコーター等が挙げられる。塗工装置にて、固形分20〜60質量%に調整された粘着剤を剥離ライナーに塗工する。剥離ライナーには公知のものが使用でき、例えば、ポリエチレンラミネート紙、グラシン紙、クレーコート紙、ポリエステルフィルム、ポリプロピレンフィルム等にシリコーン化合物の剥離層を形成したものが好適に使用できる。剥離ライナーまたは基材フィルム上に塗工され熱風乾燥された粘着剤をもう一方の基材と貼り合わせて巻き取ることにより作成される。
【0032】
[レーザーマーキングラベル]
本発明のラミネート用粘着フィルムを使用したレーザーマーキングラベルの好適な構成としては、樹脂基材の一方の面に隠蔽層と粘着剤層が積層され、樹脂基材の他方の面に上記ラミネート用粘着フィルムが積層されたレーザーマーキングラベル(図1)を例示できる。
【0033】
(樹脂基材)
本発明のラミネート用粘着フィルムが積層される樹脂基材として、粘着フィルムの基材として使用される樹脂基材を適宜使用でき、ポリエチレンテレフタレートフィルム、ポリオレフィンフィルム、ポリスチレンフィルムなどが好ましく例示できる。樹脂基材は高隠蔽性を得やすい着色樹脂基材が好ましく、白色樹脂基材がより好ましい。白色樹脂基材として、白色着色剤を含有させた樹脂基材を使用でき、具体的には白色着色剤を含有する白色ポリエチレンテレフタレートフィルム、白色ポリオレフィンフィルム、白色ポリスチレンフィルム等が挙げられる。添加する白色着色剤としては特に限定はなく、二酸化チタン、硫酸バリウム、炭酸カルシウム、シリカ、タルク、クレー等の公的に用いられる白色着色剤を使用できる。白色の着色方法として、白色着色剤の添加だけでなく、ポリエチレンテレフタレートフィルムにポリメチルペンテン等のポリエステル樹脂と非相溶な樹脂を添加するなどした後、二軸延伸を行い、内部に微細な気泡を形成させる方法を併用するなどしても良い。また、樹脂基材表面上に、紫外線硬化型インキを使用する凸版印刷や熱転写印刷等の印刷方式によって印刷する場合には、樹脂基材表面にインキを密着させるためのアンカーコート層を設けても良い。
【0034】
アンカーコート層は、インキ受理性樹脂および分散媒からなるコート剤を樹脂基材の片面に塗工し、乾燥することによって形成される。インキ受理性樹脂としては、公知のポリエステル樹脂、アクリル樹脂、ポリビニルアルコール樹脂、ポリウレタン樹脂、ニトロセルロース等を使用することができる。分散媒には樹脂基材を溶解しないものを選択する。コート剤には性能を阻害しない範囲で、必要に応じて帯電防止剤、紫外線吸収剤等を添加しても良い。コート剤の配合は、インキ受理性樹脂20〜30質量部、分散媒は60〜70質量部、ブロッキング防止剤1〜5質量部が好ましい。コート剤の塗工量は0.5〜3.0g/mが好ましく、より好ましくは1.0〜2.0g/mである。
【0035】
樹脂基材へのコート剤の塗工方法は公知の方法で行われる。例えば、ナイフコーター、グラビアコーター、ロールコーター等を使用して塗工することができる。好ましくは、グラビアコーターである。
【0036】
(隠蔽層)
本発明のレーザーマーキングラベルに使用する隠蔽層は、隠蔽性を確保できるものであれば特に制限されず、黒色の着色剤を含有する黒色層や、金属薄膜層などが好ましい。特に高隠蔽性を確保できることから黒色層であることが好ましい。
【0037】
黒色層は、隠蔽性を確保できるものであれば特に制限されないが、層形成が容易であることから黒色の着色剤を含有する黒色インキ層であることが好ましく、高隠蔽性を確保できることからカーボンブラックを含有する黒色インキであることがより好ましい。黒色着色剤の含有率はとくに限定は無いが、50重量%以上であると、貼付した筐体表面の模様を見えなくするための黒色層の層厚を薄くでき、黒色インキ塗布後の乾燥性も良好であるため、ロール状に巻いた後にブロッキングが発生しにくい。また、カーボンブラックが70重量%以下であると耐擦過性が良好であり、黒インキの塗工工程及び粘着剤の塗工工程で脱落しにくい。したがって、カーボンブラックが50〜70重量%含有する黒色インキであることが好ましく、60〜70重量%含有することがより好ましい。黒色着色剤を担持するバインダー樹脂としては公知の樹脂が適用でき、アクリル樹脂、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合樹脂、ウレタン樹脂、ニトロセルロース樹脂等の単体物あるいは混合物を使用できる。より好ましくは樹脂基材との密着性に優れるイソシアネート系架橋剤によって架橋できる樹脂であり、ビニルアルコールを共重合した塩化ビニル−酢酸ビニル共重合樹脂である。さらに好ましくは、ハロゲン成分を含まないポリウレタン樹脂である。ハロゲン成分を含まないため、粘着ラベルを焼却する際に、環境負荷となるハロゲン系ガスの発生を防止することができる。ポリウレタン樹脂は、ジイソシアナート化合物とポリオール化合物及び低分子量の鎖伸長剤等の縮重合反応より得られた、分子内にウレタン結合を多数持った柔軟性、弾性に富む樹脂が好適に使用される。黒色インキ層の厚さは1.0〜5.0μmが好ましく、3.0〜5.0μmがより好ましい。
【0038】
金属薄膜層は、隠蔽性を確保できるものであれば特に制限されないが、金属蒸着層又は金属を含有するインキ層が好ましい。金属の種類としては、特に限定されないが、アルミニウム又は銀が好ましく、経済性に優れるアルミ蒸着がより好ましい。金属蒸着層の形成方法は、特に限定されないが、真空蒸着法、スパッタリング法、イオンプレーティング法、イオンビーム法などが挙げられる。金属蒸着層の厚さは、特に限定されないが、0.05〜0.1μmが通常の厚さである。又、樹脂フィルムと金属蒸着層の密着性を向上させる目的で、樹脂フィルム表面にコロナ放電処理やプラズマ処理を施したり、樹脂基材と金属薄膜層の間に樹脂層を設けることが好ましい。樹脂層としては、セルロース/ポリウレタン系、セルロース/ポリウレタン系、ポリエステル系、又はポリエステル/メラミン系樹脂が特に好ましい。金属蒸着層の耐熱性、安全性を付与するための各種保護層を設けたり、粘着剤との密着性を向上させる目的で各種アンカーコート層を設けても良い。
【0039】
隠蔽層として黒色層を設けた場合、レーザーマーキングを行った後で印刷面の表示を読み取りやすくするため、樹脂基材と黒色層の間もしくは黒色層の反対面の樹脂基材上に白色層を設けて、オーバーラミネート貼付面から見た際の白色性を向上させても良い。白色層は白色着色剤によって着色された白インキにより形成された層である。白色着色剤としては前記白色樹脂基材に使用したものを使用することができる。インキへの白色着色剤の添加量は特に限定は無いが、40〜70質量%が好ましく、より好ましくは50〜60質量%である。白色着色剤を担持するバインダー樹脂としては公知の樹脂が適用でき、アクリル樹脂、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合樹脂、ウレタン樹脂、ニトロセルロース樹脂等の単体物あるいは混合物を使用できる。より好ましくは白色合成樹脂フィルムとの密着性に優れるイソシアネート系架橋剤によって架橋できる樹脂であり、ビニルアルコールを共重合した塩化ビニル−酢酸ビニル共重合樹脂である。さらに好ましくは、黒インキと同様、ハロゲン成分を含まないポリウレタン樹脂である。白色インキ層の厚さは1.0〜5.0μmが好ましく、3.0〜5.0μmがより好ましい。
【0040】
隠蔽層としての黒色層に黒色インキを使用する場合には、樹脂基材への黒色インキの塗工は公知の方法で行われる。例えば、ナイフコーター、グラビアコーター、ロールコーター等を使用して塗工することができる。好ましくは、グラビアコーターである。塗工する際には、一度に所定厚さのインキを塗工すると乾燥が不十分となりロール状に巻いた後にブロッキングが発生しやすい。そのため、インキを数回に分けて重ね塗りして規定厚さにすることが好ましい。白色度を向上させるために樹脂基材に白色インキ層を形成する場合にも同様の塗工方法により層形成が可能である。隠蔽層としての金属薄膜層にアルミ蒸着を使用する場合には、樹脂基材へのアルミ蒸着は公知の方法で行われる。例えば、真空蒸着法、スパッタリング法、イオンプレーティング法、イオンビーム法などで蒸着層を形成することができる。樹脂基材と蒸着層の十分な密着性を得るには、樹脂基材の表面にコロナ放電処理やプラズマ処理を施したり、樹脂基材と蒸着層の間にアンカーコート用の樹脂層を設けることが好ましい。また、アルミ蒸着層の保護や、粘着剤との密着性を向上させるために各種アンカーコート層を設けても良い。
【0041】
(粘着剤層)
本発明のレーザーマーキングラベルの粘着剤層に使用する粘着剤組成物としては、上記のラミネート用粘着フィルムに使用する粘着剤組成物同様、公知のアクリル系、ゴム系、ビニルエーテル系、シリコーン系の粘着剤組成物を使用することができる。それらの中でもアクリル系共重合体を主成分とするアクリル系粘着剤組成物が好ましい。アクリル系共重合体としては、単量体成分として炭素数1〜14のアルキル基を有する(メタ)アクリル酸エステルを含有するアクリル系共重合体が好ましい。例えば、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、n−プロピル(メタ)アクリレート、イソプロピル(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、n−ペンチル(メタ)アクリレート、n−ヘキシル(メタ)アクリレート、n−オクチル(メタ)アクリレート、イソオクチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、n−ノニル(メタ)アクリレート、イソノニル(メタ)アクリレート、n−デシル(メタ)アクリレート、n−ラウリル(メタ)アクリレート等であり、単独或いは2種以上を併用して用いることができる。中でも、n−ブチルアクリレート、2−エチルヘキシルアクリレート、又はそれらを併用した単量体を主成分とすることが好ましく、その使用量はアクリル系共重合体中の単量体成分量中の50〜99質量%であることが好ましく、95〜99%質量%であることがより好ましい。
【0042】
さらに、側鎖に水酸基、カルボキシル基、アミノ基などの官能基を有するビニル系単量体を、アクリル系共重合体を形成するモノマー成分中の0.01〜15質量%の範囲で添加するのが好ましい。例えば、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、アクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、無水マレイン酸、イタコン酸、クロトン酸、フマル酸、無水マレイン酸カルボキシプロピルアクリレート、ジメチルアミノエチルアクリルアミド、N−ビニルピロリドン、アクリロニトリル、N−ビニルカプロラクタム、アクリルアミド、スチレン、酢酸ビニル、N―メチロールアクリルアマイド、グリシジルメタクリレート等であり、これらを単独或いは2種以上を併用して使用することができる。中でも、カルボキシル基を含有したビニル系単量体を使用することが好ましく、アクリル酸、メタクリル酸、又はそれを併用した単量体を使用することがより好ましく、更に、その使用量は0.5〜4.0質量%であることが好ましい。
【0043】
アクリル系共重合体は、溶液重合法、塊状重合法、懸濁重合法、乳化重合法、紫外線照射法、電子線照射法によって共重合させることにより得ることができる。
【0044】
さらに粘着剤の凝集力を上げ、粘着力又は再剥離性を向上させるために、架橋剤を添加することが好ましい。架橋剤としては、例えば、イソシアネート系架橋剤、エポキシ系架橋剤、キレート系架橋剤等が挙げられる。
【0045】
乾燥後の粘着剤層の好ましい厚さは、3〜30μm、好ましくは10〜20μmである。粘着剤層の厚さが30μm以下であると印刷ラベル加工時の打ち抜き、カス取り作業の際に粘着剤の伸びが生じず、粘着ラベルの周りに付着しないため、粘着ラベル表面の汚れやロール状に粘着ラベルを巻いた際のブロッキングが発生しにくい。
【0046】
(剥離ライナー)
レーザーマーキングラベルの粘着剤層表面には剥離ライナーが設けられていても良く、当該剥離ライナーとしては、従来公知のものを用いることができる。例えば、上質紙、クラフト紙、グラシン紙及びクルパック紙のいずれかの上にポリエチレンをラミネートし、その上に離型処理を施したものや、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエチレンテレフタレート(PET)等の合成樹脂フィルム上に離型処理を施したもの等が挙げられる。これらの中でも、生産性、貼り作業性の点から、上質紙、クラフト紙、グラシン紙及びクルパック紙のいずれかの上にポリエチレンをラミネートし、その上に離型処理を施したものが好ましい。離型処理としては、従来公知のシリコーン処理、長鎖アルキル処理及びフッ素処理等を挙げることができるが、シリコーン処理が好ましい。
【0047】
(特性)
本発明のレーザーマーキングラベルの隠蔽率は98%以上が好ましく、99%以上がより好ましい。隠蔽率は、粘着ラベルを隠蔽率試験紙の白色面および黒色面に貼付し、JIS−Z−8722に規定される色の測定方法で、白色面および黒色面に貼付した粘着ラベルの三刺激値のうち明るさを示すY値をそれぞれ測定し、測定したY値を次式に当てはめ、隠蔽率を測定する。隠蔽率(%)=(黒色面に貼付したラベルのY値/白色面に貼付したラベルのY値)×100%。隠蔽率がこの範囲にあると、電池パック等の模様が透けてラベル表面から見えることが無い。また、レーザーマーキングラベルのフィルム面から見た場合の白色性は、JIS−Z−8722に規定される色測定方法の三刺激値XYZのうち、明るさを示すY値とJIS−Z−8715で規定される白色度指数Wで規定される。本発明のレーザーマーキングラベルの白色性は特に限定されるものではないが、Y値は40以上が好ましく、60以上がより好ましい。白色度指数Wは70以上が好ましく、75以上がより好ましい。Y値が40以上であり、白色度指数が70以上であると黒色の印刷や印字を行った場合に印字面の表示が読みとりやすい。
【0048】
本発明のレーザーマーキングラベルは、温度23±2℃、相対湿度50±5%の雰囲気中で、化学的あるいは物理的な表面処理を施していない平滑なポリプロピレン板に、幅25mmの本発明のレーザーマーキングラベルを接着させ1時間放置した後、その粘着ラベルの基材端部(遊び部分)に0.98Nの定荷重を試験板から90度方向に載荷し、30分間放置した時の粘着ラベルの剥がれ距離が、10mm以下であることが好ましく、5mm以下がより好ましい。剥がれた距離がこの範囲にあると、ラベルが被着体から剥がれにくく、長時間にわたり高い接着性を有する。特に、貼付面積が小さい電池パック等の被着体に、折れを生じる貼付形態で貼り付けた場合でも、被着体からの剥がれが生じにくい。
【0049】
本発明のレーザーマーキングラベルの引張弾性率は2.0〜4.5GPaが好ましく、3.0〜4.5GPaがより好ましい。ラベルの引っ張り弾性率がこの範囲にあると、10〜30μmの薄い白色樹脂基材を用いても、オートラベラーでの自動貼付においてラベルの頭出しが容易であり、弾性が高すぎて電池パック等の小さな被着体からラベルが剥がれにくい。
【0050】
上記のとおり本発明のラミネート用粘着フィルムを使用したレーザーマーキングラベルは、樹脂基材の一方の面に隠蔽層と粘着剤層が積層され、樹脂基材の他方の面に透明または半透明の樹脂フィルムの片面に、レーザー発色性を有する発色剤を含有するレーザー発色性粘着剤層を有するラミネート用粘着フィルムが積層された構成である。隠蔽層を有する白色樹脂基材を使用しているため、ラミネート下地の模様を表面に透過せず、表面から見てレーザーマーキングされた黒色の表示文字が鮮明に見える。また、ラベルへの印字が可能であるため、マーキングの際に印字ミスやかすれ等の不具合があった場合には修正が可能であり、マーキングされた文字が表面のラミネートフィルムによって移送中の摩擦等の外的衝撃から保護される利点を有する。とくにロット管理が必要で、アルミセルの地合がラベルを通して表面に見えない方が好ましい携帯電話等の小型電子機器用電池パックの外装に貼り付けられる表示ラベルとして有用に使用できる。
【0051】
レーザーマーキングに使用するレーザー光は、ルビーレーザーやYAGレーザー等の固体レーザー、炭酸ガスレーザーやヘリウムネオンガスレーザー等のガスレーザー等が挙げられる。イッテルビウム添加のファイバ内でレーザー増幅するFAYb方式でも良い。中でも、パック電池の生産工程ラインをそのまま利用できる点で、電池パックの金属製外装缶へのレーザーマーキングにも使用されているYAGレーザー光の波長1064nmが最も好ましい。
【実施例】
【0052】
以下に実施例および比較例により本発明をより具体的に説明するが、本発明はこれらに何ら限定されるものではない。なお、実施例中の「部」、「%」とあるのは、特に断りがない限り質量基準を示す。
【0053】
(1)レーザー発色剤の調製
[レーザー発色剤A]
酸化銅(II)を28%担持したシリカ粒子「SC−1」(堺化学工業社製)3.0部、ベンジルアミン(和光純薬社製)3.0部をトルエン80部に添加し、ジルコニアビーズを分散材としてペイントシェイカーを用いて約5時間分散し、沈殿物をろ過後、トルエンでリスラリー洗浄を行い、110℃で減圧乾燥させレーザー発色剤Aを2.8部得た。
【0054】
[レーザー発色剤B]
【0055】
酸化銅(II)24部、三酸化モリブデン(VI)29部(ともに和光純薬社製)、シリカ粒子(富士サイシリア社製)100部を混合し、小型粉砕機にて乾式混合した。混合粉体を電気炉にて700℃の温度にて焼成した。焼成粉体を乳鉢にて解粉し、レーザー発色剤Bを得た。
【0056】
(2)粘着剤の合成
[粘着剤A]
攪拌機、寒流冷却器、温度計、滴下漏斗および窒素ガス導入口を備えた反応容器に、n−ブチルアクリレート92.8部、酢酸ビニル5部、アクリル酸2部、2−ヒドロキシエチルアクリレート0.2部と重合触媒としてアゾビスイソブチロニトリル(AIBN)0.2部を酢酸エチル100部に溶解し、80℃で8時間重合して、質量平均分子量60万のアクリル共重合体溶液を得た。さらに、前記アクリル共重合体溶液の固形分100部に対し、石油樹脂系粘着付与樹脂(三井化学社製「FTR−6100」)を15部、ロジンエステル系粘着付与樹脂(荒川化学工業社製「ペンセルA」)を5部添加し、酢酸エチルを加えて均一に混合して固形分45%の粘着剤主剤溶液aを得た。粘着剤主剤溶液aを攪拌しながら、粘着剤主剤溶液aの100部に対し、前記レーザー発色剤Aを10部添加し、20分間攪拌した。得られた前記の粘着剤組成物の溶液100部(固形分55%)へ、イソシアネート系架橋剤(DIC社製「バーノックNC−40」)を1.8部添加し、15分間攪拌して粘着剤Aを得た。
【0057】
[粘着剤B]
前記レーザー発色剤Aの代わりにレーザー発色剤Bを用いたこと以外は、粘着剤Aと同様にして粘着剤Bを得た。
【0058】
[粘着剤C]
前記レーザー発色剤Aを添加しないこと以外は、粘着剤Aと同様にして固形分45%の粘着剤Cを得た。
【0059】
(3)ラミネート粘着フィルムの調製
[ラミネート粘着フィルムA]
ポリエチレン樹脂20g/mを片面に溶融押し出しラミネートしたグラシン紙のポリエチレンラミネート側表面にシリコーン化合物の剥離層を形成した剥離ライナーに、粘着剤Aを塗工して90℃で90秒間乾燥し厚さ15μmの粘着剤層を形成した。片面艶消しOPPフィルム25μm「MAM−430」(王子特殊製紙社製)と粘着剤層とを貼り合わせることにより、ラミネート粘着フィルムAを作製し、得られた粘着フィルムは40℃で2日間養生した。
【0060】
[ラミネート粘着フィルムB]
粘着剤Bを用いること以外はラミネート粘着フィルムAと同様にして、ラミネート粘着フィルムBを作製した。
【0061】
[ラミネート粘着フィルムC]
粘着剤Aと貼り合わせる透明フィルムとして、両面艶OPPフィルム20μm「FOR」(フタムラ化学社製)を使用したこと以外は、ラミネート粘着フィルムAと同様にしてラミネート粘着フィルムCを作製した。
【0062】
[ラミネート粘着フィルムD]
粘着剤Aと貼りあわせる半透明フィルムとして、艶消しPETフィルム26μm「E130」(三菱樹脂社製)を使用したこと以外は、ラミネート粘着フィルムAと同様にしてラミネート粘着フィルムDを作製した。
【0063】
[ラミネート粘着フィルムE]
粘着剤Cを用いること以外はラミネート粘着フィルムAと同様にして、ラミネート粘着フィルムEを作製した。
【0064】
(4)白色樹脂基材の調製
[白色樹脂基材]
押出機に、180℃4時間真空乾燥した平均粒径0.25μmの二酸化チタン18質量%を含有するポリエチレンテレフタレート共重合体を290℃で溶融押出し、このシートを表面温度20℃の鏡面冷却ドラム上でキャストして未延伸シートとした。このシートを90℃に加熱されたロール群で予熱し、95℃で長手方向に3.5倍延伸した。その後、シート端部をクリップで把持して105℃に加熱されたテンター内に導き予熱後、連続的に110℃の雰囲気中で幅方向に4.2倍延伸した。更に連続的に225℃の雰囲気中で8秒間の熱処理を行い、厚さ10μmの白色樹脂基材を得た。得られた白色樹脂基材を500mm×500mmの大きさに断裁し、70℃雰囲気下、無加重状態で48時間の長時間熱処理をし、白色樹脂基材Hを得た。
【0065】
(5)黒インキの調製
塩化ビニル−酢酸ビニル共重合樹脂をバインダーとする墨色インキ「パナシアCVL−SP R805墨」(DIC社製)100部、イソシアネート系架橋剤「CVLハードナーNo.10」(DIC社製)4部、希釈剤「ダイレジューサーVNo.20」(DIC社製)35部を添加して黒インキを調製した。
【0066】
(6)白インキの調製
塩化ビニル−酢酸ビニル共重合樹脂をバインダーとする白色インキ「パナシアCVL−SP 709白」(DIC社製)100部、イソシアネート系架橋剤「CVLハードナーNo.10」(DIC社製)2部、希釈剤「ダイレジューサーVNo.20」(DIC社製)35部を添加して白インキを調製した。
【0067】
(7)隠蔽基材の作製
白色樹脂基材Hの片面の濡れ指数が500μN/cmになるようコロナ処理し、コロナ処理した面に乾燥後の塗工量が4.0g/mになるようグラビアコーターにて白インキを塗布した。さらに白インキ層の上に乾燥後の塗工量が2.0g/mになるようグラビアコーターにて黒インキを塗布し、隠蔽基材を得た。
【0068】
(8)隠蔽ラベルの作製
(実施例1)
ポリエチレン樹脂20g/mを片面に溶融押し出しラミネートしたグラシン紙のポリエチレンラミネート側表面にシリコーン化合物の剥離層を形成した剥離ライナーに、粘着剤Cを塗工して90℃で90秒間乾燥し厚さ20μmの粘着剤層を形成した。隠蔽基材の黒色層と粘着剤層とを貼り合わせることにより、粘着フィルムを作製し、得られた粘着フィルムは40℃で2日間養生した。得られた粘着フィルムの白色表面側にラミネート粘着フィルムAを貼付し、レーザーマーキング用粘着ラベルAを得た。
【0069】
(実施例2)
ラミネート粘着フィルムBを使用した以外は、実施例1と同様にして実施例2のレーザーマーキング用粘着ラベルBを作製した。
【0070】
(実施例3)
ラミネート粘着フィルムCを使用した以外は、実施例1と同様にして実施例3のレーザーマーキング用粘着ラベルCを作製した。
【0071】
(実施例4)
ラミネート粘着フィルムDを使用した以外は、実施例1と同様にして実施例4のレーザーマーキング用粘着ラベルDを作製した。
【0072】
(比較例1)
ラミネート粘着フィルムEを使用した以外は、実施例1と同様にして比較例1の粘着ラベルEを作製した。
【0073】
(比較例2)
ラミネート粘着フィルムを使用せず、隠蔽基材の表面へUV硬化性インキ「ダイキュアRT−V墨」(DIC社製)を2μmの厚さで全面に渡って印刷したこと以外は、実施例1と同様にして比較例2の粘着ラベルFを作製した。
【0074】
(比較例3)
隠蔽基材の表面へUV硬化性インキ「ダイキュアRT−V墨」(DIC社製)を2μmの厚さで全面に渡って印刷し、その表面にラミネート粘着フィルムEを貼付したこと以外は、実施例1と同様にして比較例3の粘着ラベルGを作製した。
【0075】
(ラミネート用粘着剤組成物の引張破断強度と破断伸度)
PETフィルム50μm上に、シリコーン化合物の剥離層を形成した剥離ライナーへ粘着剤A〜Cを塗布し、90℃で90秒間乾燥し乾燥重量15g/mの粘着剤組成物を形成した。同様に塗布して作製した粘着剤組成物と貼り合わせを重ねることにより、剥離ライナー間に挟まれた厚さ400μmの粘着剤組成物を作製した。幅10mm、長さ70mmの試験片を準備し、23℃・50%RHの環境で、300mm/分の引っ張り速度にて引張破断強度と引張破断伸度を測定した。測定機器として、エー・アンド・ディ社製テンシロン万能試験機「RTA−100」を使用し、つかみ具間距離30mm、つかみ部分長さ上下各20mmとした。
【0076】
(ラミネート用粘着フィルムの接着力)
25mm幅、100mm長さにカットした粘着ラベルA〜Gを0.5mm厚さのアルミ板へ貼付し、温度23±2℃、相対湿度50±5%の雰囲気中で、ラミネート用粘着フィルムのみを白色樹脂基材の表面から300mm/分の引っ張り速度で180°方向へ引っ張り、180°ピール接着力を測定した。測定機器として、エー・アンド・ディ社製テンシロン万能試験機「RTA−100」を使用した。
【0077】
(全光線透過率)
剥離ライナーを剥がした状態で、得られたラミネート用粘着フィルムA〜Eを、反射・透過率計「HR−100」(村上色彩技術研究所社製)を用いて、JIS−K−7136に規定される試験方法にてD65光源における全光線透過率%を測定した。
【0078】
(レーザーマーキング試験)
得られた粘着ラベルA〜F表面に、FAYb方式レーザー「LPV−10U」(SUNX社製)を用いて、波長1064nm、平均出力3.6Wのパルス発振レーザー光にてマーキングを行い、マーキングの鮮明性を目視判断した。非常に鮮明に印字でき、ラミネート粘着フィルムの膨れが無いものを「○」、非常に鮮明に印字できるが、燃え残りが発生するものを「△」、鮮明に印字できないか、鮮明に印字できてもラミネートの膨れが発生するものを「×」で示した。
【0079】
(耐摩耗性試験)
学振型磨耗堅牢度試験機「AB−301」(テスター産業社製)により、レーザーマーキングされた粘着ラベルA〜F表面を取り付け、スチールウール#0000にて5Nの荷重で20往復表面を摩擦し、マーキングの脱落が無いものを「○」、マーキングの脱落があるものを「×」で示した。
【0080】
(粘着剤のはみ出し性)
粘着ラベルの印刷加工後の粘着剤はみ出し性を調べるため、幅100mmの粘着ラベルをシール印刷加工機(OPM−W150、恩田製作所社製)にて、上記粘着ラベルを80mm幅×50mm長さの形状にハーフカットした後、カス取りを行い、5kgの張力でロール形状に巻き取った。23℃、50%の環境下に1日間放置した後、粘着ラベルを繰り出してブロッキングの有無を評価した。
【0081】
(隠蔽率)
レーザーマーキングを施していない粘着ラベルを、隠蔽率試験紙(日本テストパネル工業社製)の白色面および黒色面に貼付し、JIS−Z−8722に規定される色の測定方法で、白色面および黒色面に貼付した粘着ラベルの三刺激値のうち明るさを示すY値をそれぞれ測定した。測色光沢計「CM−3500d」(ミノルタ社製)を使用し、2度視野における標準光Cについて測定した。測定したY値を下記式に当てはめ、隠蔽率を測定した。
隠蔽率(%)=(黒色面に貼付したラベルのY値/白色面に貼付したラベルのY値)
×100%
【0082】
(白色度)
レーザーマーキングを施していない粘着ラベルを隠蔽率試験紙(日本テストパネル工業社製)の白色面に貼付し、JIS−Z−8722に規定される色測定方法の三刺激値XYZのうち、明るさを示すY値を測定した。また、Y値、色度座標x値、y値の測定値から、JIS−Z−8715で規定される白色度指数Wを算出した。測色光沢計「CM−3500d」(ミノルタ社製)を使用し、2度視野における標準光Cについて測定した。測定したY値、x値、y値を下記式に当てはめ、白色度指数を測定した。
白色度指数W=Y値+800(0.3127―x値)+1700(0.3290−y値)
【0083】
(定荷重剥離距離)
温度23±2℃、相対湿度50±5%の雰囲気中で、化学的あるいは物理的な表面処理を施していない平滑なポリプロピレン板に、幅25mmの本発明のレーザーマーキングラベルを接着させ1時間放置した後、その粘着ラベルの基材端部(遊び部分)に0.98Nの定荷重を試験板から90度方向に載荷し、30分間放置した時の粘着ラベルの剥がれた距離を測定した。
【0084】
実施例および比較例の評価結果を表1に示す。
【0085】
【表1】

【0086】
表1から明らかなように、実施例1〜3の本発明のラミネート用粘着フィルムを使用したレーザーマーキングラベルは、蒸散に必要な全面印刷をラベル表面に施すことなくレーザーマーキングが可能で、表面摩擦に対して印字が脱落することがなく、レーザーマーキングの際に燃え残りが発生することがない。
【図面の簡単な説明】
【0087】
【図1】本発明のラミネート用粘着フィルムを使用したレーザーマーキングラベルの一例である。
【符号の説明】
【0088】
1 透明樹脂フィルム
2 レーザー発色性粘着剤層
3 ラミネート用粘着フィルム
4 樹脂基材
5 隠蔽層
6 粘着剤層
7 剥離ライナー

【特許請求の範囲】
【請求項1】
オーバーラミネートに使用する粘着フィルムであって、透明または半透明樹脂フィルムの片面に、レーザー発色性を有する発色剤を含有するレーザー発色性粘着剤層を有することを特徴とするラミネート用粘着フィルム。
【請求項2】
前記レーザー発色性を有する発色剤が、アミノ基を含有する炭化水素化合物で処理されたキレート金属を表面に有する無機粒子であることを特徴とするラミネート用粘着フィルム。
【請求項3】
前記粘着剤層が、前記レーザー発色性を有する発色剤を10〜60質量%含有したアクリル系粘着剤組成物からなる粘着剤層であるレーザーマーキング用粘着フィルム。
【請求項4】
レーザーによりマーキングが可能なレーザーマーキングラベルであって、
樹脂基材の一方の面に隠蔽層と粘着剤層が積層され、樹脂基材の他方の面に請求項1〜3のいずれかに記載のラミネート用粘着フィルムが積層されていることを特徴とするレーザーマーキングラベル。
【請求項5】
前記樹脂基材が白色樹脂基材であり、前記隠蔽層が黒色インキ層または金属薄膜層が積層された隠蔽層である請求項4に記載のレーザーマーキングラベル。
【請求項6】
小型電子機器のパック電池の外装に貼り付けられる請求項4又は5に記載のレーザーマーキングラベル。

【図1】
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【公開番号】特開2009−286864(P2009−286864A)
【公開日】平成21年12月10日(2009.12.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−139356(P2008−139356)
【出願日】平成20年5月28日(2008.5.28)
【出願人】(000002886)DIC株式会社 (2,597)
【Fターム(参考)】