説明

ランダム配向炭素フィブリルの巨視的集合体と有機ポリマーの三次元相互貫通網状組織

【課題】ポリマーと相互貫通された炭素フィブリルの網状組織に基づく分子複合体を製造する。
【解決手段】(a)多数のランダム配向炭素フィブリルの硬化した三次元巨視的集合体、および(b)ポリマーの相互貫通集団、から成る炭素フィブリルとポリマーの相互貫通網状組織。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は一般に炭素フィブリルとポリマーの相互貫通網状組織に関する。さらに具体的には、本発明はランダム配向炭素フィブリルの硬化した三次元巨視的集合体とポリマーの相互貫通集団から成る炭素フィブリルとポリマーの相互貫通網状組織に関する。さらに一層具体的には、本発明は多孔質の硬化した構造体を形成することおよびその中に有機ポリマーを形成することによりそのような相互貫通網状組織を作る方法に関する。
【背景技術】
【0002】
炭素フィブリルは500ナノメートル(nm)より小さい直径を有する曲がりくねった炭素析出物である。それらは多様な形で存在し、そして金属表面におけるいろいろな炭素含有ガスの接触分解により従来製造された。
【0003】
Tennent、米国特許第4,663,230号明細書、は連続的サーマルカーボン被覆のない、かつ実質上フィブリルの軸に平行する多重の黒鉛外層を有する炭素フィブリルを記載している。かくしてそれらはそれらのc−軸を有することを特徴とすることができよう。それらの軸は黒鉛の曲がった層の接線に対して垂直、すなわちそれらの円柱軸に対して実質上垂直である。それらは一般に0.1ミクロンより大きくない直径および少なくとも5の長さ対直径比を有する。それらは連続的サーマルカーボン被覆、すなわち、それらを製造するために使用される供給ガスの熱分解からもたらされる熱分解により析出した炭素、を実質上含まないことが望ましい。
【0004】
フィブリルは多種の用途において有用である。例えば、それらは繊維強化した網状組織構造体または混成網状組織構造体、すなわち、フィブリルに加えて連続繊維のような強化材を含む網状組織、における強化材として使用されることができる。
【0005】
近年において、分子複合体、すなわち、その中で剛性棒状ポリマーの個々の分子がより柔軟なマトリックスポリマーの中に分散されて相互に貫通する網状組織を形成している複合体、の形成において多大の関心が示されてきた。一般に、そのような複合体は慣用の複合体よりも実質上大きい応力に耐えることができるであろうと信じられている。なぜならば応力は相互貫通する分子系全体に分配されるであろうからである。また、そのような複合体は局在化した応力をより受けそうもないであろうし、そしてより高度の応力および/または破壊の前のひずみに耐えることができるであろう。
【0006】
米国特許出願第08/057,328号(1993年5月5日出願)[PCT US94/04879, WO 94/25268]、(参考としてここに引用される)はランダム配向炭素フィブリルの三次元巨視的集合体を形成する方法を開示している。概して、相容性ある液体中のフィブリル分散液が調製されてから、次にその液は除かれて低密度の多孔質のプラグまたはマットを形成する。ある好ましい方法において、低密度の多孔質のフィブリルプラグが、フィブリルを溶媒、例えば、n−ペンタン、の中に分散させることにより製造される。その際分散液は加圧容器の中に装填され、その容器は溶媒の臨界温度の上に加熱され、そして超臨界蒸気が容器から流れ出される。このようにして容器内部の形を有する固形プラグが得られる。
【0007】
米国特許出願第08/857,383号(1997年5月15日出願)(参考としてここに引用される)は炭素フィブリルを含む硬質の、多孔質炭素構造体を記載している。それらのフィブリルは互いにそれらの交点において結合または接着されている。結合は、繊維の表面を化学変性して結合を促進することにより、「接着」剤を添加することによりおよび/またはフィブリルを熱分解させて相互連結の諸点において融着または結合を引き起こすことにより、誘導されることができる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の第一の目的はポリマーと相互貫通された炭素フィブリルの網状組織に基づく分子複合体を製造することである。
【0009】
本発明のさらなる目的は、分子複合体の利点、すなわち、優れた応力抵抗、ひび割れに対する抵抗および靭性、を有する炭素フィブリルと有機ポリマーの相互貫通する網状組織を創り出すことである。
【0010】
本発明のさらに一つのそして関係ある目的は、ランダム配向炭素フィブリルと有機ポリマーの硬化した三次元巨視的集合体を製造する方法を提供することである。
【0011】
本発明のさらにもう一つの目的は、種々の形態のフィブリルとある範囲の種々のポリマー物質とのそのような相互貫通する網状組織を提供すること、およびそのような網状組織を能率的なかつコスト効果のある方法で製造することである。
【0012】
本発明のなおさらにもう一つのそして関係ある目的は、多孔質の、硬化したフィブリル構造内でモノマーの、次に行われる、現場での、重合を最良に可能ならしめる工程により硬化した構造体を創り出すことである。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明のこれらのおよびその他の目的は、ランダム配向炭素フィブリルの硬化した三次元巨視的集合体とポリマーの相互貫通集団から成る、炭素フィブリルとポリマーの相互貫通網状組織により達成される。そのような相互貫通網状組織は、多数のランダム配向炭素フィブリルの硬化した三次元多孔質の巨視的集合体を形成すること、前記集合体の多孔質内部へ適当な触媒またはフリーラジカル開始剤と共に液または気相モノマーを導入すること、および前記モノマーを前記集合体の中で重合条件の下で重合を起こさせることにより得られることができる。
【発明を実施するための形態】
【0014】
定義
用語「フィブリル」は小さな直径を有する炭素フィブリルのことを言い、そしてフィブリル、ホイスカー、ナノチューブ、バッキィチューブなどを含む。
【0015】
用語「集合体」は個々のフィブリルの集団のすべての立体配置のことを言い、そして撚り合わされた並びにばらばらのフィブリルの具象体を含む。
【0016】
用語「巨視的」とは、その集合体が工業的または科学的目的を達成するために適当な何らかの大きさであり得ることを意味する。
【0017】
フィブリル
本発明に使用されるフィブリルは1000nm未満の、好ましくは約200nm未満の、さらに一層好ましくは100nm未満の、そして最も好ましくは50nm未満の、直径を有するものである。本発明の一実施態様によれば、3.5〜70nmの範囲内の直径を有する炭素フイブリルが硬質集合体を形成するために使用される。
【0018】
Tennetへの米国特許第4,663,230号明細書(参考としてここに引用されている)は、連続したサーマルカーボン被覆のない、そしてフィブリルの軸に実質上平行な多重規則性の黒鉛外層を有する炭素フィブリルを記載している。かくしてそれらはそれらのc−軸を有することを特徴とすることができよう。それらの軸は黒鉛の曲がった層の接線に対して垂直、すなわちそれらの円柱軸に対して実質上垂直である。それらは一般に100nmより大きくない直径および少なくとも5の長さ対直径比を有する。それらは連続的サーマルカーボン被覆、すなわち、それらを製造するために使用される供給ガスの熱分解からもたらされる熱分解により析出した炭素、を実質上含まないことが望ましい。Tennetの発明は比較的小さな直径、典型的には3.5〜70nm、のフィブリルおよび規則正しい、「成長した」黒鉛表面を入手する手段を提供する。より不完全な構造の、しかしまた熱分解炭素外層のないフィブリル炭素も育てられた。
【0019】
Tennetらへの米国特許第5,171,560号明細書(参考としてここに引用されている)は、サーマルカーボン被覆のないそしてフィブリル軸に実質上平行な黒鉛層を有する炭素フィブリルを記載している。そこでは前記の黒鉛層の前記フィブリル軸上への投影がフィブリル直径の少なくとも2倍の距離に広がっている。典型的には、そのようなフィブリルは本質的に円柱状の、実質上一定の直径を有する黒鉛のナノチューブであり、そしそのc−軸がその円柱軸に本質的に垂直である円柱状黒鉛シートを含む。それらは熱分解により析出した炭素を本質的に含まず、かつ100nm未満の直径および5より大きい長さ対直径比を有する。これらのフィブリルは本発明において一番関心のあるものである。
【0020】
前記の黒鉛層の前記フィブリル軸上への投影がフィブリル直径の2倍未満の距離に広がっている場合には、断面において、黒鉛ナノファイバーの炭素平面はニシンの骨の外観を呈する。これらは魚骨フィブリルと名づけられている。Geusへの米国特許第4,855,091号明細書(参考としてここに引用されている)は、実質上熱分解被覆のない魚骨フィブリルの製造方法を提供している。これらのフィブリルもまた本発明の実施において有用である。
【0021】
酸化されたナノファイバーは硬い多孔質集合体を形成するために使用されることができよう。McCarthyらの米国特許出願番号第351,967号明細書(1989年5月15日出願)(参考としてここに引用されている)は、炭素フィブリルの表面を酸化させる方法を記載しており、その方法はフィブリルを硫酸(HSO)および塩素酸カリウム(KClO)を含む酸化剤とフィブリルの表面を酸化させるために十分な反応条件(例えば、時間、温度、および圧力)の下で接触させることを含む。McCarthyらの方法にしたがって酸化されたフィブリルは不均一に酸化される、すなわち、炭素原子がカルボキシル、アルデヒド、ケトン、フェノールおよびその他のカルボニル基の混合物により置換されている。フィブリルはまた硝酸による処理によって酸化されたことがある。国際特許出願第PCT/US94/10168号明細書は、官能基の混合物を含む酸化されたフィブリルの形成を開示している。
【0022】
出版された著作において、McCarthyおよびBening(Polymer Preprints ACS Div.of Polymer Chem.30(1)420(1990))は、その表面がいろいろな酸化された基を含むことを証明するために酸化されたフィブリルの誘導体を調製した。フィブリルはまた過酸化水素、塩素酸塩、硝酸およびその他の適当な試薬を使用して酸化されることもできよう。
【0023】
フィブリルはさらに、HochとMoyらによる、「官能基化されたフィブリル」と題された、米国特許出願番号第08/352,400号明細書(1995年12月8日出願)(参考としてここに引用されている)において説明されることができよう。
【0024】
前記の触媒により育成されたフィブリルと類似の形態の炭素フィブリルが高い温度の炭素アークの中で育成された(Iijima,Nature 354 56 1991、参考としてここに引用されている)。これらのアーク育成フィブリルは以前に触媒により育成されたTennetのフィブリルと同じ形態を有することは現在一般に受け入れられている。(Weaver,Science 265 1994、参考としてここに引用されている)。アーク育成フィブリルは本発明においてもまた有用である。
【0025】
前記のフィブリルはまた、「高表面積ナノフィブリル、その製造方法、その使用方法およびそれを含む製品」と題する米国仮出願番号第60/017,787号(CMS 事件整理番号第370077−3630号、参考としてここに引用されている)明細書に開示された高表面積フィブリルであることができよう。
【0026】
フィブリル凝集体および集合体
「未結合」先駆体フィブリルはばらばらの繊維、繊維の凝集体またはそれら両者の形をしていることがあり得るであろう。凝集体は、存在する場合、一般に鳥の巣の、櫛ですかれた糸または開かれた網の形態である。それらの凝集体が「もつれて」いればいるほど、もし高い空孔率が望まれるならば適当な組成を達成するためにますます多くの加工が必要となるであろう。これは、櫛ですかれた糸かまたは開かれた網の凝集体の選択が大多数の用途において最も好ましいことを意味する。しかし、鳥の巣凝集体は一般に十分であるだろう。
【0027】
フィブリルマットまたは集合体は従来水性または有機媒体内にフィブリルを分散させてから、次にそれらを濾過してマットまたは集合体を形成することにより製造された。
【0028】
硬化した集合体はフィブリルを接着剤、例えば、糖、グリセリン、ポリ酸化エチレン、ポリエチレングリコール、ポリアクリルアミドまたはポリアクリル酸、と共に、または、炭化できる樹脂、例えばフェノール樹脂、と共に、混練機の中でよく混合することにより、そして次に押し出しまたはペレット化してから熱分解することにより製造される。硬化した集合体はまた流体、例えば、二酸化炭素、アセトン、またはC−Cアルカンまたはアルケンのような溶媒の中でフィブリルのゲルまたはペーストを形成し、そのゲルまたはペーストをその媒体の臨界温度より上の温度に加熱し、超臨界流体を除去してから、最後に得られた多孔質マットまたはプラグを、その中で加工が行われた容器から取り出すことにより製造されたことがある。例えば、前記に引用された「ランダム配向炭素フィブリルの三次元巨視的集合体およびそれを含む複合体」と題する米国特許出願番号第08/057,328号明細書および「剛性多孔質炭素構造体、その製造方法、使用方法およびそれを含む製品」と題する米国特許出願番号第08/857,383号明細書を参照されたい。
【0029】
硬質集合体内におけるモノマーの重合
ランダム配向フィブリルの硬化した三次元巨視的集合体とポリマーの相互貫通する網状組織は、モノマーを適当な触媒と共に硬化した集合体の中へ導入して、適当な条件下に重合を起こさせることにより形成されることができる。モノマーは液または気相中にあってもよい。適当なモノマーの例はビニル化合物、すなわち、末端二重結合を有する化合物、例えば、スチレン、置換されたスチレン、メチルメタクリレート、アルファオレフィン、置換されたアルファオレフィンなど、を含む。モノマーは、フリーラジカル機構によるかまたはチーグラー−ナッタ触媒反応によるかいずれかにより重合されることができるすべての化合物であることができる。触媒の配置および重合の速度は、大部分のポリマーをフィブリル網状組織の外側の端に形成させることを避けるために当業者により調整されなければならない。そのような場合には、多孔質集合体の内部は空隙を有するであろうし、そしてその複合体は不均一になり、したがって不満足なものになるであろう。従って、均等にかつ完全に触媒を集合体の内部全体に分配することが好ましい。
【0030】
フィブリルはフリーラジカルトラップを有するものであり、そして酸化されたフィブリルはさらに多くのフリーラジカルトラップを有するものであるので、したがってそれらのフリーラジカルトラップの数を減少させるために、そして特に意図された重合がフリーラジカルに基づく場合には、硬化した集合体を処理することが有利である。そのような機構は本発明の方法において、開始剤はモノマーが導入される前にフィブリル網状組織全体に分配されることができるから、そして重合は温度変化により均一に誘発されることができるので、有益である。
【0031】
例えばTiClおよびZrCl(Cp)より誘導されるもののようなチーグラー−ナッタ触媒はまたフィブリル上に吸着されることができるので、したがって集合体の全体にわたり、例えば、ポリプロピレンの、重合反応を均一に触媒することができる。スチレンはフリーラジカル開始およびチーグラー触媒反応のいずれによっても、その場で、重合されることができる。スチレンはその低いコストの故に、またそれは通例として脆いマトリックスを形成するが、炭素フィブリルにより強靭にされることができるので、適当なモノマーでる。
【0032】
プロピレン、最も低いコストのモノマー、は硬化した集合体の中に分布されたチーグラー触媒により重合されることができ、そして他のポリオレフィンに比較してその高い融点、硬さ、剛性および靭性のために有用である、イソタクチック(結晶性)ポリプロピレンに重合されることができる。
【0033】
(実施例)
例 I
硝酸を使用するカルボン酸官能基化されたフィブリルの製造
秤量されたフィブリル試料を、頭上攪拌機と水凝縮器を装備した丸底多頚の刻み目付き反応フラスコの中に適当な強度の硝酸と共にスラリー化した。一定した攪拌をしながら、温度を調整して反応を特定の時間行った。酸強度に関わらず、温度が70℃を超えた後短時間で褐色の蒸気が発生した。反応の後、スラリーを砕いた氷の上に注いでから、DI水(脱イオン水)で希釈した。そのスラリーを濾過してから、過剰の酸をソックスレー抽出器中で、貯槽を数時間毎に新鮮なDI水で置換しながら、スラリー化された試料がDI水からpHの変化を与えないようになるまで、洗うことにより除いた。そのフィブリルを100℃において5″真空で一晩中乾燥させた。フィブリルの一部を秤量して、標準の0.100NのNaOHと反応させてから、カルボン酸含量を0.100NのHClで逆滴定することにより測定した。表面酸素含量をXPSにより測定した。水中分散度を0.1重量%でワーリングブレンダー中において高速で2分間混合することにより試験した。それらの結果が下の表Iに要約されている。
【0034】
【表1】

【0035】
例 II
硬化した低密度多孔質フィブリルプラグの製造
十分に分散されたフィブリルのペーストからの超臨界液の除去が低密度の成形品を製造するために使用される。前記例1からのn−ペンタン中フィブリル0.5%分散液50ccを、圧力の緩慢な放出を可能にするニードルバルブを装備している少しく大容量の圧力容器に仕込む。その容器がペンタンの臨界温度(Tc=196.6゜)の上に熱せられた後、ニードルバルブを僅かに開いて超臨界のペンタンを約1時間にわたって流し出す。
【0036】
その結果得られるフィブリルの固形プラグは、前記の容器内部の形を有しており、0.997%の細孔容積率に相当する、0.005g/ccの密度を有する。抵抗率は等方性で、約20オーム/cmである。
【0037】
そのプレフォームはアルゴン中で650℃に1時間加熱することにより硬化される。またはその代わりにプレフォームは空気中で300℃に1時間加熱することにより硬化される。
【0038】
例 III
硬化した低密度多孔質フィブリルプラグの製造
0.333gのレゾルシノール(Aldrich)を5.3ccの水に溶解する。0.491gのホルムアルデヒド溶液(水中37%、Aldrich)を加えた後、その溶液を8.879gのフィブリルスラリー(5.8%)と完全に混合する。7.4ccの0.2M NaCOを添加後、その混合物をガラス小びんに移す。封をされた小びんをオーブンの中に80℃で4日間置く。形成されたゲルを水で洗う。最後に、ゲル中の水をアセトンと交換する。
【0039】
ゲルの中の超臨界アセトンが除去された後、生成物をアルゴンの下に400℃で2時間、800℃で4時間、および1200℃で4時間、加熱してレゾルシノール−ホルムアルデヒドポリマーを炭化させることができよう。
【0040】
例 IV
硬化した低密度多孔質フィブリルプラグの製造
よく分散されたフィブリルペーストからの超臨界液の除去が低密度成形体を製造するために用いられる。接着剤としてフェノールホルムアルデヒド/PEG/グリセリンの混合物を含む50ccの「作りたて」フィブリルのn−ペンタン中0.5%分散液を、圧力の緩慢な放出を可能にするニードルバルブを装備している少しく大容量の圧力容器に仕込む。その容器がペンタンの臨界温度(Tc=196.6゜)の上に熱せられた後、ニードルバルブを僅かに開いて超臨界のペンタンを約1時間にわたって流し出す。
【0041】
その結果得られるフィブリルの固形プラグは、前記の容器内部の形を有しており、空気乾燥されてから350℃に加熱されてPEG/グリセリンを除き、そしてフエノール樹脂を熱分解する。そのプラグは0.997%の細孔容積率に相当する、0.005g/ccの密度を有する。
【0042】
例 V
例II、IIIおよびIVに記載のように製造された多孔質プレフォームをアルミニウム管中で99.99%(高純度)の水素を使用して800−1400℃において水素化してから、アルゴン下で室温に冷却させる。
【0043】
それらのプレフォームはスチレンモノマー/過酸化ベンゾイルの混合物により浸透される。プレフォームは次に80゜に1時間加熱されてスチレンモノマーを重合させる。固体のポリスチレン/フィブリル網状組織が得られる。
【0044】
例 VI
例II、IIIまたはIVに記載のように製造されたプレフォームを磁気攪拌棒を内蔵するセラムで蓋締めされた(serum−capped)耐圧壜の中に置く。その壜を排気してから乾燥窒素で数回満たす。次にそれを0℃に冷やしてから窒素を散布するが、その窒素はプレフォームのグラム当たり約0.01gmのTiClを含むセラムで蓋締めされた壜を、すべてのTiClが蒸発されてしまうまで、通過している。フィブリルを内蔵する壜をそれから、すべてのTiClが蒸発されてしまうまで、50℃に保った。そのフィブリルを内蔵する壜をそれから50℃に1時間保って、フィブリル上にTiClを分布させる。トリエチルアルミニウムをプレフォームのグラム当たり約0.03gmの量に同様にして導入する。
【0045】
25℃にある前記の壜に、エチレンを大気圧で流し込む。強い発熱は、エチレンが重合していることを示す。黒色のフィブリルは灰色に変わり、それからほとんど白色になる。重合は、プレフォームのグラム当たり約150gmのポリエチレンが形成されてしまうまで、続けられる。フィブリルとポリエチレンの相互貫通網状組織が得られる。
【0046】
例 VII
1ミリモルのメチルアロモキサン(alomoxane)と10マイクロモルのビスシクロペンタジエニル二塩化ジルコニウムのベンゼン中の混合物を調製してから、例II、IIIまたはIVに従って製造された硬化したプレフォームに初期湿潤度まで加える。そのシステムをベンゼンの凝固点の下まで冷却させてから、ベンゼンを昇華により除去する。その処理されたプレフォームをドライアイスの温度にもたらしてから、100psiにおいて液体プロピレンで浸透させる。そのシステムを重合が始まるまで徐々に暖めてから、その温度に1時間保持する。フィブリルとポリプロピレンの相互貫通網状組織が得られる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)多数のランダム配向炭素フィブリルの硬化した三次元巨視的集合体、および
(b)ポリマーの相互貫通集団、から成る炭素フィブリルとポリマーの相互貫通網状組織。
【請求項2】
(a)多数のランダム配向炭素フィブリルの硬化した三次元巨視的集合体にして、前記フィブリルは本質的に一定の直径を有する本質的に円柱状であり、その円柱軸に本質的に垂直なc−軸を有し、そして熱分解により析出した炭素を本質的に含まずかつ約3.5と70ナノメートルの間の直径を有する前記の三次元巨視的集合体、および
(b)有機ポリマーの相互貫通集団、
から成る炭素フィブリルとポリマーの相互貫通網状組織。
【請求項3】
(a)多数のランダム配向炭素フィブリルの硬化した、三次元多孔質の巨視的集合体を形成する、および
(b)前記集合体内部へ前記集合体と共に重合触媒または開始剤と共に液または気相モノマーを導入する、および
(c)前記モノマーを前記集合体の中で重合を起こさせる、
上記の各工程を包含する炭素フィブリルとポリマーの相互貫通網状組織を製造する方法。
【請求項4】
(a)多数のランダム配向炭素フィブリルの硬化した、三次元多孔質の巨視的集合体を形成する工程において、前記フィブリルは本質的に一定の直径を有する本質的に円柱状であり、その円柱軸に本質的に垂直なc−軸を有し、そして熱分解により析出した炭素を本質的に含まずかつ約3.5と70ナノメートルの間の直径を有する、前記の三次元巨視的集合体である前記の工程、
(b)前記集合体の多孔質内部へチーグラー触媒またはフリーラジカル開始剤と共に液または気相の有機モノマーを導入する、および
(c)前記モノマーを前記集合体の中で重合条件の下で重合を起こさせる、
上記の各工程を包含する炭素フィブリルとポリマーの相互貫通網状組織を製造する方法。

【公開番号】特開2009−167412(P2009−167412A)
【公開日】平成21年7月30日(2009.7.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−3426(P2009−3426)
【出願日】平成21年1月9日(2009.1.9)
【分割の表示】特願2000−519135(P2000−519135)の分割
【原出願日】平成10年10月16日(1998.10.16)
【出願人】(593169485)ハイピリオン カタリシス インターナショナル インコーポレイテッド (17)
【Fターム(参考)】