説明

ランプユニット、及び投射型画像表示装置

【課題】 放電ランプの電極に付着した水銀を水銀ブリッジが発生する前の状態で飛散除去する。
【解決手段】 放電ランプ12の消灯後、温度低下により発光管15のチャンバー部15cの空間15d内に封入された水銀Sが液化して電極16に付着する。放電ランプ12の消灯指示を受けてからの時間をタイマで計時し、計時した時間が45秒以上120秒未満である間に放電ランプ12の再点灯を行い、水銀ブリッジが発生する前の状態で電極16に付着した水銀を飛散させる。再点灯の後はファンによる冷却を継続させて発光管15の空間15dの内周面に水銀Sが付着しやすい状況を確保する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ランプ消灯後に電極に付着する水銀を効率的に除去できるようにしたランプユニット、及びそのランプユニットを適用した投射型画像表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、画像を表す光を投射してスクリーンに画像表示を行う投射型画像表示装置が存在する。投射型画像表示装置はスクリーンへの投射方式により2方式に分かれ、スクリーンの表側から投射を行うフロントプロジェクション方式の装置と、スクリーンの裏側から投射を行うリアプロジェクション方式の装置とがある。なお、リアプロジェクション方式の装置としては、筐体上部の前面にスクリーンを取り付けると共に筐体上部の背面側内部に反射ミラーを配置し、筐体下部から反射ミラーへ向けて光を投射する構成のリアプロジェクション・テレビジョン装置が周知である。
【0003】
上述した各方式の投射型画像表示装置は、光源を含むランプユニット、及び光源から発せられた光に基づき投射光を生成する光学ユニットを含んでいる。ランプユニットの光源は一般に、高輝度の画像を表示するためメタルハライドランプ及び高圧水銀ランプ等の放電ランプを有する。このような高輝度の放電ランプは石英ガラス製の発光管内に電極を対向配置すると共に発光管内の空間に水銀を封入している。発光管の対向電極を被うチャンバー部は点灯時に約1000℃にまで達することもあるため、投射型画像表示装置は冷却ファンを設け、放電ランプの消灯後も所定時間、冷却ランプの回転を続けて放電ランプを冷却することが多い。
【0004】
また、放電ランプに封入された水銀は、点灯時は気化しているが、消灯に伴い放電ランプが冷却されて液化し、発光管の空間内面及び電極に付着(凝結)し、場合によっては対向する電極間を繋ぐ水銀ブリッジに至ることもある。電極への水銀付着及び水銀ブリッジの発生は、放電ランプの点灯を阻害するため、水銀の付着(凝結)を防止して良好な点灯性の確保を図った装置が下記の特許文献1、2に開示されている。
【特許文献1】特開2002−289379号公報
【特許文献2】特開2004−39391号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に係る装置は、電極に水銀が凝結することを極力減少させるものなので、何らかの要因により電極に水銀を凝結すれば、凝結した水銀の除去には対処できないと云う問題がある。また、特許文献2に係る装置は、水銀の付着状況をコントロールするものなので、水銀の付着自体は生じるので、付着量によっては次回の点灯を良好にできないと云う問題がある。
【0006】
上述した問題に対しては、水銀の付着した電極の温度を高めて水銀を飛散させることが考えられる。電極の温度を高めるには放電ランプを再点灯させることで容易に行えるが、水銀を効率良く飛散除去するためには、水銀の気化温度(約360℃)及び放電ランプの冷却時間に対する温度低下の関係を考慮して再点灯の時期を決定する必要がある。
【0007】
図8は、ランプユニットに用いられる放電ランプの消灯後の冷却時間(クーリング時間)に対する放電ランプの温度低下特性を示したものであり、放電ランプの温度は発光管のチャンバー部の外周部(外表面)を測定したものである。なお、発光管内に配置される電極の方が、発光管を形成する石英ガラスより早く冷えるため、電極の温度は、図8の示す温度特性に対して左側へシフトした状況になると考えられる。
【0008】
図8のグラフより、水銀の気化温度(約360℃)に到達するクーリング時間は約75秒と判断でき、約75秒以降では封入された水銀の気化が随時進行する。よって、冷却開始後から120秒以上経過すれば発光管のチャンバー部は300℃を下回り、また、先行して温度が下降する電極では、120秒の時点で300℃より低いことは確実であるため、電極表面には多量の水銀が付着し、水銀ブリッジも発生しやすい状態となる。水銀ブリッジが発生すると、再点灯も容易ではなくなると共に再点灯に対して高電圧の印加が必要となるため、再点灯に対する電極及び点灯回路の負担が大きくなり、早期の電極損耗及び回路故障を招くと云う問題がある。
【0009】
本発明は、斯かる問題に鑑みてなされたものであり、再点灯の時期の最適化を図ることにより、電極に付着した水銀を確実に飛散させて次回の点灯時に良好な点灯性を確保できるようにしたランプユニット、及び投射型画像表示装置を提供することを目的とする。
また、本発明は、再点灯の形態及び冷却ファンの回転制御を工夫すること、電極に付着した水銀を効率的に飛散可能にしたランプユニット、及び投射型画像表示装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するために本発明に係るランプユニットは、発光管内に一対の電極が対向配置してあり、該電極の対向箇所を被う空間内に水銀が封入してある放電ランプ、及び該放電ランプの点灯に係る制御を行う制御手段を備えるランプユニットにおいて、点灯中の前記放電ランプの消灯指示を受け付ける受付手段と、該受付手段が消灯指示を受け付けた場合、計時を開始する計時手段とを備え、前記制御手段は、前記受付手段が消灯指示を受け付けた場合、前記放電ランプを消灯する手段と、前記計時手段で計時した時間が45秒以上120秒未満である間に前記放電ランプを再点灯する手段とを備えることを特徴とする。
【0011】
本発明にあっては、放電ランプの消灯後、120秒が経過するまでに放電ランプの再点灯を行うので、対向する電極間に水銀ブリッジが発生する前の水銀を飛散させやすい状態で放電ランプを再点灯させることになり、電極に付着した水銀を容易に除去できる。また、放電ランプの再点灯を行う最も早時時期を45秒にすることで、電極の温度低下をくい止めて、水銀を付着させにくい状況にすることも可能になる。
【0012】
なお、再点灯の時期は、ランプユニットが用いる放電ランプの仕様及び特性等に応じて45秒以上120秒未満の間で設定することになり、水銀の気化温度並びに放電ランプに対する消灯後の冷却時間及び温度との関係を考慮すると、一般的には水銀がある程度液化した状態となる75秒以上100秒以下の間で再点灯を行うことが好適である。また、再点灯自体の時間は、水銀を確実に飛散できる時間が必要であるが、電極の温度上昇等を考慮して2秒以下、好ましくは1秒以下の時間で再点灯を行うことがよい。
【0013】
また、本発明に係るランプユニットは、発光管内に一対の電極が対向配置してあり、該電極の対向箇所を被う空間内に水銀が封入してある放電ランプ、及び該放電ランプの点灯に係る制御を行う制御手段を備えるランプユニットにおいて、前記放電ランプに係る温度を測定する温度測定手段と、点灯中の前記放電ランプの消灯指示を受け付ける受付手段とを備え、前記制御手段は、前記受付手段が消灯指示を受け付けた場合、前記放電ランプを消灯する手段と、前記温度測定手段が測定した温度に応じて前記放電ランプを再点灯する手段とを備えることを特徴とする。
【0014】
本発明にあっては、放電ランプの温度を温度測定手段により測定するので、消灯後の放電ランプの温度に合わせて再点灯の時期を特定でき、効率的に電極から水銀を飛散させることが可能となる。なお、放電ランプの温度の測定対象は、点灯により発生する光束の進行を妨げない観点から石英ガラス製の発光管の端部又は電極と導通して発光管の端部に封止されるモリブデン箔にすることが考えられ、測定対象に応じて再点灯を行う温度を決める必要がある。
【0015】
例えば、発光管の端部はチャンバー部に比べて温度上昇も低いので、チャンバー部との温度差を考慮して水銀がある程度液化したと考えられる温度で再点灯を行うように制御する。また、モリブデン箔は電極に導通しているため、電極の温度特性と略同等になるため、水銀の液化がある程度進行する約270℃から約330℃の温度範囲の間で再点灯を行うように制御することが好適である。
【0016】
さらに、本発明に係るランプユニットは、前記制御手段は、前記放電ランプを再点灯する場合、3kV以上13kV未満の電圧を前記放電ランプに印加することを特徴とする。
【0017】
本発明にあっては、再点灯時に印加する電圧値を、通常の点灯時の電圧値(13kV以上)より小さくすることで、電極及び点灯回路に係る負担を低減した上で電極に付着した水銀は飛散するようになり、放電ランプの再点灯に伴い電極及び点灯回路に過度の負担がかかることを防止できる。なお、再点灯及び水銀の飛散を確実に行うためには、上記電圧範囲(3kV以上13kV未満)の中で7kV以上13kV未満の電圧を印可することが好ましい。
【0018】
さらにまた、本発明に係るランプユニットは、前記制御手段は、前記放電ランプの再点灯を複数回行うことを特徴とする。
【0019】
本発明にあっては、再点灯を複数回行うので、電極に対する水銀除去を一段と確実に行える。再点灯を複数行う形態としては数秒又は数十秒単位で時間をあけて再点灯することが考えられる。例えば、再点灯を2回行う場合では、1回目の再点灯で電極の温度低下の進行を防止し、電極へ水銀が付着しにくい状況を確保して電極への水銀付着量を抑制し、2回目の再点灯により付着した水銀を飛散させることで、電極への水銀付着を大幅に低減して良好な点灯特性を確保できる。なお、複数の再点灯を行う形態としては、点滅的に再点灯を行うことも可能である。
【0020】
また、本発明に係る投射型画像表示装置は、前記発明のいずれか1つに記載のランプユニットと、該ランプユニットの放電ランプから発せられた光に基づいて画像を表す投射光を生成する投射光生成部と、前記ランプユニットの放電ランプの冷却を行う冷却ファンと、該冷却ファンの回転を制御する回転制御手段とを備え、前記回転制御手段は、前記放電ランプの再点灯が終了して所定の時間が経過したときに、前記冷却ファンの回転を停止することを特徴とする。
【0021】
本発明にあっては、放電ランプの再点灯が終了してから一定の基準となる時間が経過するまで冷却ファンの回転を継続させるので、放電ランプの発光管の温度は所定の温度特性に従って低下続けることになり、温度が下がる発光管内面に水銀をより多く付着させられる。その結果、放電ランプに温度低下により、液化した総水銀量における発光管内面に付着する割合を増加させて、相対的に電極に付着する水銀量を抑制できる。
【発明の効果】
【0022】
本発明にあっては、放電ランプの消灯後、45秒以上120秒未満の範囲内の時間が経過するまでに放電ランプの再点灯を行うので、電極に付着した水銀を容易に除去できる。
また、本発明にあっては、放電ランプの温度を温度測定手段により測定するので、消灯後の放電ランプの温度に合わせて再点灯の時期を特定でき、より水銀を飛散させやすい時期に再点灯を行って電極から水銀を除去できる。
【0023】
さらに、本発明にあっては、再点灯時に印加する電圧値を、通常の点灯時の電圧値より小さくするので、再点灯を行っても電極及び点灯回路に過度の負担がかかることを防止できる。
さらにまた、本発明にあっては、再点灯を複数回行うので、確実に電極から水銀を除去できる。
【0024】
また、本発明にあっては、放電ランプの再点灯が終了してから一定の基準となる時間が経過するまで冷却ファンの回転を継続させるので、温度が下がる発光管内面に水銀をより多く付着させて、電極への水銀付着量を低減できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0025】
図1は、本発明の第1実施形態に係る投射型画像表示装置(フロントプロジェクション方式のプロジェクタ)1の内部構成を示すブロック図である。投射型画像表示装置1は、ボックス状の筐体2の内部に光学系の部分及び制御系の部分を設けている。
【0026】
投射型画像表示装置1は光学系の部分として、放電ランプ12を凹状のリフレクタ11で取り囲む構成の光源10に対向してカラーホイール3を配置すると共に、光源10から発せられる光線の進行方向順にロッドレンズ4、コンデンサレンズ5、TIRプリズム6、反射ミラー7、DMD(Digital Micromirror Device:登録商標。以下同様)8、及び投影レンズ9を設けている。カラーホイール3からDMD8までの部分は、光源10の光に基づき画像を表す投射光を生成する投射光生成部(光学ユニット)としてユニット化されている。なお、画像に係る変調光を生成する変調光生成素子(ライトバルブ)には、DMD8以外にも液晶等の表示パネルを用いることが可能である。
【0027】
投射型画像表示装置1の制御系の部分としては、制御部20が設けられている。制御部20は、装置全体の各種制御を行うシステムコントロールユニット21、システムコントロールユニット21の制御に従い光源10の点灯制御を行うバラストユニット22、及びシステムコントロールユニット21の制御に従いDMD8での画像光の生成処理等を行うフォーマッタユニット23を有する。システムコントロールユニット21は、筐体2に設けられた操作部25及びリモコン受光部26と接続されており、操作部25又はリモートコントロール装置27の各種キー・ボタンがユーザにより操作されることで、ユーザの操作指示をシステムコントロールユニット21が受け付けるようにしている。
【0028】
また、投射型画像表示装置1の筐体2には、制御部20の冷却用の第1ファン28a、光源10の冷却用の第2ファン28b、及び筐体2内の空気の排気用の第3ファン28cが設けられている。なお、筐体2の隅には電源ユニット24が設けられており、この電源ユニット24は商用電源と接続されて、操作部25又はリモートコントロール装置27におけるユーザの電源オン・オフ操作に基づき装置内の各部へ給電を行い、給電の形態として最小限の給電となるスタンバイ状態と通常給電状態とを適宜切り替える。
【0029】
次に、制御部20のシステムコントロールユニット21に関係する具体的な制御内容を説明する。先ず、操作部25又はリモートコントロール装置27でユーザが電源オンの操作を行った場合、システムコントロールユニット21は操作部25又はリモコン受光部26から電源オン信号を受け付けてバラストユニット22へ点灯指示信号を出力すると共に、回転制御手段として各ファン28a〜28cへファン駆動信号を出力する。なお、システムコントロールユニット21は、ユーザが電源オフの操作を行うまで、ファン駆動信号を所定の時間継続して出力する。
【0030】
その後、操作部25又はリモートコントロール装置27でユーザが画像ソースの選択等の操作を行うことで、システムコントロール部21は操作部25又はリモコン受光部26から画像ソース選択信号等を受け付け、受け付けた各種信号に応じた画像を表示できるようにフォーマッタユニット23へ所定の制御信号を出力する。なお、フォーマッタユニット23は、このような制御信号を受け付けることで、所定の色調で画像の変調光を生成するように光学ユニットのカラーホイール3の回転及びDMD8のミラー素子の制御を行う。
【0031】
また、操作部25又はリモートコントロール装置27でユーザが電源オフの操作を行った場合、システムコントロールユニット21は操作部25又はリモコン受光部26から電源オフ信号を受け付けてバラストユニット22へ消灯指示信号を出力すると共に、電源オフ信号を受け付けてから所定のクーリング時間の経過後にファン駆動信号の出力を停止する。
【0032】
図2は、投射型画像表示装置1に適用されているランプユニット30の構成を示しており、ランプユニット30は光学系に属する光源10、及び制御系に属するバラストユニット22が接続されて一つのユニットになったものである。
【0033】
本実施形態の光源10は防爆仕様であり、内部に放電ランプ12を配置したリフレクタ11の開口11cを閉鎖するように円板状の防爆ガラス13を取り付けている。リフレクタ11は、凹状の外周部11aの内周側を反射面にしており、開口11cの反対側となる部分にフランジ部11bを突設し、フランジ部11bの内部に放電ランプ12を装着するための穴部11dを設けている。なお、リフレクタ11は外周部11aの一部に放電ランプ12のリード線d2を外部に引き出すために孔部11eを穿設している。
【0034】
リフレクタ11のフランジ部11b内に装着される放電ランプ12には、本実施形態では超高圧水銀ランプを適用している。放電ランプ12は、両端部15a、15bを封止した石英ガラス製である棒状の発光管15の中央付近の内部に一対の電極(タングステン電極)16、17を対向配置している。また、発光管15は各電極16、17の対向箇所を被うように拡径した球状のチャンバー部15cを形成し、チャンバー部15cの内部の空間15dに水銀及び希ガスを所定量封入している。
【0035】
なお、放電ランプ12は、点灯性を高めるために発光管15にトリガー巻線14を取り付けており、トリガー巻線14は、チャンバー部15cの近傍を周回する環状部14bから発光管15に沿わす延出部14aを設け、延出部14aの端部をリード線d2に接続させている。
【0036】
さらに、放電ランプ12は、発光管15の両端部15a、15bにモリブデン箔18a、18bを設けており、各モリブデン箔18a、18bは一対の電極16、17にそれぞれ導通接続されている。各モリブデン箔18a、18bからはリード線d1、d2が延出し、各リード線d1、d2はバラストユニット22の負端子22d、正端子22cに夫々接続されている。この接続により一方の電極16が負極側になり、他方の電極17は正極側になる。
【0037】
一方、バラストユニット22(制御手段に相当)は、光源コントロール部(制御マイコン)22a、及び電源ユニット24(図1参照)と接続されたイグナイター高圧発生回路部22bを有する。光源コントロール部22aは図1のシステムコントロールユニット21から各種信号を受け付け、受け付けた信号に基づきイグナイター高圧発生回路部22bの出力電圧形態を制御する。なお、イグナイター高圧発生回路部22bは、光源10の放電ランプ12の電極間に電圧印加を行い、光源コントロール部22aの制御に基づき印加する電圧値を0kVから通常点灯時の約13kVの範囲で可変する。
【0038】
光源コントロール部22aは、内部にROM29a、RAM29b、及びタイマ29cを有する。ROM29aには光源コントロール部22aの制御処理内容を規定したプログラムが予め記憶されており、RAM29bは光源コントロール部22aが行う処理内容を一時的に記憶する。また、タイマ29cは光源コントロール部22aの処理に従い所定の経過時間を計時する。
【0039】
ROM29aに記憶されているプログラムは、先ず、システムコントロールユニット21から出力される点灯指示信号を光源コントロール部22aが受け付けると、光源10の放電ランプ12を点灯させるために、光源コントロール部22aがイグナイター高圧発生回路部22bへ光源点灯信号を出力することを規定している。なお、イグナイター高圧発生回路部22bは、光源点灯信号を受け付けている間、放電ランプ12の電極16、17に13kVの電圧を印可する。
【0040】
また、ROM29aのプログラムは、放電ランプ12の点灯中に、システムコントロールユニット21から出力される消灯指示信号を光源コントロール部22aが受け付けると、光源10の放電ランプ12を消灯させるために、イグナイター高圧発生回路部22bへの光源点灯信号の出力を光源コントロール部22aが停止することを規定すると共に、消灯指示信号の受け付けに合わせて光源コントロール部22aのタイマ29cで計時を開始することを規定している。
【0041】
さらにまた、ROM29aのプログラムは、タイマ29cが所定時間(本実施形態では90秒)を計時したときに、光源コントロール部22aが再点灯用の光源点灯信号を1秒間、イグナイター高圧発生回路部22bへ出力することを規定している。イグナイター高圧発生回路部22bは再点灯用の光源点灯信号を受け付けている間、放電ランプ12の電極16、17に7kVの電圧を印可する。
【0042】
図4のタイムチャートは、上述した光源コントロール部22aの光源点灯信号、及び図1に示す制御部20のシステムコントロールユニット21のファン駆動信号の出力形態を時間Tの進行に合わせた時系列で示したものである。各信号の出力形態を時系列順に説明すると、ユーザによる電源オン操作に応じて、光源コントロール部22aは光源点灯信号の出力を開始すると共に、システムコントロールユニット21はファン駆動信号の出力を開始する。
【0043】
次に、ユーザに電源オフ操作に連動して、光源コントロール部22aは光源点灯信号の出力を停止する一方、システムコントロールユニット21はファン駆動信号の出力を継続し、電源オフ後に光源10の放電ランプを冷却するクーリング時間(本実施形態では100秒)に入る。クーリング時間に入ると、放電ランプ12が冷却されることで放電ランプ12の温度が低下し、気化していた水銀の液化が始まる。
【0044】
図3(a)は、クーリング時間に入ってからの放電ランプ12の発光管15の内部状態を示し、詳しくは、発光管15のチャンバー部15c内の空間15dで対向する電極16、17の中で、陰極側となる電極16の端部16aに液化した水銀Sが付着した状況を示している。このように電極16の端部16aに水銀Sが付着するのは、電極16の方が、発光管15を形成する石英ガラスより早く温度が下がるためであり、温度の下がった電極16の端部16aの周辺に存在した水銀Sが冷やされて液化し、端部16aに付着するものと思われる。
【0045】
なお、本発明の発明者は、多数の実験を行った結果、ランプユニット30、光源10、及び放電ランプ12等の仕様及び特性に応じて陽極側の電極にのみ水銀が付着する場合、陰極側の電極にのみ水銀が付着する場合(図3(a)に示す場合)、陽極及び陰極の両方の電極に水銀が付着する場合があることを確認している。
【0046】
図4のタイムチャートに戻り説明を続けると、タイマ29cの計時した時間t1が90秒になったとき、光源コントロール部22aは再点灯用の光源点灯信号を時間t2(1秒)の間、出力する。このように再点灯用の光源点灯信号が出力されることで、放電ランプ12の電極16、17に通常の点灯電圧値より低い7kVの電圧が印加されて、放電ランプ12は再点灯する。
【0047】
図3(b)は、再点灯後の発光管15の内部状態を示したものである。再点灯により電極16の温度が再度上昇し、電極16に付着していた水銀Sは端部16aから飛ばされて、空間15dの内周面に飛び散った状態で付着する。これにより、電極16に付着していた水銀Sが除去される。なお、本実施形態では、電極16、17を繋ぐ水銀ブリッジが形成される前の状態である電源オフ操作が行われてから90秒後に再点灯を行うため、通常の点灯より低い電圧値(7kV)で再点灯を行うことができ、また、再点灯による電極及びイグナイター高圧発生回路部22bの負担も低減されている。
【0048】
図4のタイムチャートに再度戻り、再点灯用の光源点灯信号の出力後もクーリング時間は続き、再点灯後から時間tc(基準時間に相当。本実施形態では9秒)が経過してから、システムコントロールユニット21は、ファン駆動信号の出力を停止する。このように再点灯後も各ファン28a〜28cの回転を時間tcの間、行うことにより、継続して放電ランプ12の発光管15を冷却でき、再点灯により温度の上昇した電極16、17と、発光管15のチャンバー部15cとの温度差を縮めて、チャンバー部15cの空間15dの内面に液化した水銀Sが付着しやすい状況を形成し、再点灯後の電極16に水銀Sが再度付着しにくいようにしている。
【0049】
図5に示すフローチャートは、上述した投射型画像表示装置1の再点灯に係る一連の処理を整理したものである。先ず、投射型画像表示装置1は、ユーザからの電源オンの操作が有るか否かを制御部20で判断しており(S1)、電源オンの操作が無い場合(S1:NO)、電源オンの操作待ちとなる。また、電源オンの操作があった場合(S1:YES)、制御部20は光源10の放電ランプ12の点灯、画像の表示等に係る処理を実行する(S2)。
【0050】
点灯、表示等の処理を実行した状況で、次に制御部20はユーザからの電源オフの操作が有るか否かを判断し(S3)、電源オフの操作が無い場合(S3:NO)、点灯、表示等の処理実行の段階(S2)へ戻り、点灯、表示等の処理を継続する。また、電源オフの操作があった場合(S3:YES)、制御部20は光源10を消灯する処理を実行すると共に、消灯後のクーリング処理を実行する(S4)。それから、制御部20のバラストユニット22は、光源コントロール部22aでタイマ29cの計時により所定の時間t1が経過したか否かを判断し(S5)、時間t1が経過していない場合(S5:NO)、経過待ちとなり、時間t1が経過した場合(S5:YES)、制御部20は放電ランプ12を再点灯させる(S6)。
【0051】
最後に、制御部20は、再点灯を消灯し、それから基準時間tcの経過後にクーリング処理を終了させる(S7)。本実施形態に係る投射型画像表示装置1及びランプユニット30は、上述した処理形態で放電ランプ12の再点灯を行うので、電極16、17に付着した水銀Sを除去して、時間の点灯に対して良好な点灯性を確保できる。
【0052】
なお、本発明は上述した形態以外に各種変形例が存在する。先ず、本発明は、フロントプロジェクション方式の投射型画像表示装置1以外に、リアプロジェクション方式の投射型画像表示装置及びランプユニットにも勿論適用可能である。また、光源10の放電ランプ12には、超高圧水銀ランプ以外にメタルハライドランプも適用できる。さらに、本発明は、陽極側電極にのみ水銀が付着する放電ランプ、陰極側電極にのみ水銀が付着する放電ランプ、陽極及び陰極の両方の電極に水銀が付着する放電ランプのいずれにも適用可能である。さらにまた、放電ランプにはDC点灯型とAC点灯型があるが、本発明の構成及び処理は、どちらのランプにも適用可能ある。
【0053】
また、図4に示す消灯後に再点灯するための時間t1は、90秒に限定されるものではなく、時間t1と時間t2の合計時間(t1+t2)が45秒以上120秒未満の範囲に収まる時間をROM29aに記憶されるプログラムに設定することが可能である。上述した時間範囲(45秒以上120秒未満)の中から設定する時間は、適用される放電ランプ12の特性等及び水銀の気化温度を考慮して決めることが重要であり、通常用いられる放電ランプ12の特性に合わせるには、約75秒以上100秒以下の範囲で時間を特定することが好適である。
【0054】
なお、再点灯までの時間t1によって、消灯後のクーリング時間も変更を要するときがあり、一般には再点灯の終了後の時間tc(図4参照)が2秒以上20秒以下の範囲に収まるようにクーリング時間を設定することが、発光管15の内面により多くの水銀を付着させる観点から好ましい。
【0055】
さらに、再点灯時に印加する電圧は7kV以外にも、3kV以上13kV未満の範囲内の電圧値を設定でき、特に9kV以下の電圧を設定した場合は、電極16、17及びイグナイター高圧発生回路部22bの電圧印加に係る負担を低減できる。なお、3kV未満の電圧では、確実な再点灯を保証できないため、下限としては3kV以上、より再点灯を確実にするためには、4.5kV以上の電圧を印可することが好適である。さらにまた、再点灯を行う時間t2は1秒に限定されるものではなく、1秒未満の再点灯時間(例えば、0.5秒)でも付着した水銀を飛散させることが可能である。
【0056】
図6(a)は再点灯に係る変形例のタイムチャートを示す。この変形例では、電源オフの操作後に複数回の再点灯を行うことが特徴である。このような複数回の再点灯を行うために、光源コントロール部22aは、電源オフ操作に連動して光源点灯信号の出力を停止してから時間t3が経過したときに1回目の再点灯用の光源点灯信号を時間t4の間だけ出力し、1回目の再点灯用の光源点灯信号の出力停止後から時間t5が経過したときに2回目の再点灯用の光源点灯信号を時間t2の間だけ出力する。この際、時間t3、時間t4、時間t5の合計時間は、図4のタイムチャートにおける時間t1と一致するようにし、時間t3は45秒以上を確保する。
【0057】
図6(a)のように2回の再点灯を行うことで、1回目の再点灯で電極16、17の温度低下を防止し、電極16、17の周囲の温度が水銀の気化温度以上になるようにして、水銀が付着しにくい状態にすると共に、それでも付着した水銀を2回目の再点灯で飛散除去することになる。なお、各時間t2〜t5の具体的な時間としては、時間t2に1秒、時間t3に45秒、時間t4に1秒、時間t5に45秒と云う設定が考えられる。なお、このような再点灯形態においては、再点灯の回数は2回以外にも、3回以上の回数を設定してもよい。
【0058】
図6(b)は再点灯に係る別の変形例のタイムチャートを示し、この変形例では、再点灯の時間t2の間に、短い時間t11の間隔をあけて短時間t10、t12で2回の再点灯を点滅的に行うものである。このような点滅的な再点灯によっても、水銀付着の防止を図れる。なお、図6(a)又は図6(b)に示すような再点灯を行うためには、ROM29aに記憶されるプログラムを各タイムチャートに合わせて規定し、タイマ29cに適宜計時を行わせて複数回の再点灯を行うことになる。
【0059】
図7(a)は、本発明の第2実施形態に係る投射型画像表示装置のランプユニットに用いられる光源を示す。第2実施形態の主要な構成は第1実施形態と同様であるため、共通する構成部分については第1実施形態と同じ符号を用いて以下、本発明の第2実施形態を説明する。第2実施形態の光源10は、リフレクタ11に装着された放電ランプ12を構成する発光管15の一方の端部15aの温度を測定するために、温度センサ40を設けたことが特徴である。
【0060】
温度センサ40は、先端の測温部40aが発光管15の端部15aの周面に当接するように設けられており、測定した温度を伝えるために光源コントロール部22aに接続されている。また、光源コントロール部22aは、ROM29aに記憶されるプログラムの内容が第1実施形態と相異しており、放電ランプ12の消灯後に再点灯を行う時期を温度センサ40から伝えられる温度により特定している。具体的には、温度センサ40から伝えられた温度が100℃に下がった場合、再点灯用の光源点灯信号を光源コントロール部22aは時間t1(図4参照)、出力するように規定されている。なお、第2実施形態は、上述した以外の構成及び処理は第1実施形態と同様であるため、説明を省略する。
【0061】
よって、第2実施形態では、放電ランプ12の温度低下状況に合わせて再点灯が行われるので、水銀ブリッジが形成される前の水銀付着状態で水銀の飛散除去を行える。なお、第2実施形態でも第1実施形態に係る各種変形例を同様に適用でき、特に複数回の再点灯を行う場合は、タイマ29cの併用又は各再点灯ごとに温度を設定して適宜再点灯を行うようにする。また、再点灯を行う温度は100℃に限定されるものではなく、放電ランプ12の仕様及び特性に合わせて約80℃以上約150℃以下の範囲で温度を設定できる。
【0062】
図7(b)は第2実施形態の変形例を示し、この変形例では、温度センサ40の測温部40aが放電ランプ12を構成する発光管15の一方の端部15aに設けられたモリブデン箔18aに当接するように温度センサ40が設けられていることが特徴である。よって、本変形例では、電極16と導通するモリブデン箔18aの温度を温度センサ40が測定することになり、発光管15内に配置される電極16の温度に近似した温度測定が可能となり、一段と水銀の付着状況に適した再点灯が可能になる。
【0063】
この変形例のように温度センサ40を設けた場合、ROM29aに記憶されるプログラムは、再点灯を行う温度として放電ランプ12の仕様及び特性に合わせて約270℃から約330℃の範囲の温度を設定し、特に、310℃前後の温度を設定した場合、水銀ブリッジの発生前で確実に水銀を飛散除去できる。
【図面の簡単な説明】
【0064】
【図1】本発明の第1実施形態に係る投射型画像表示装置の内部構成を示すブロック図である。
【図2】第1実施形態のランプユニットを示す概略図である。
【図3】(a)は電極に水銀が付着した状態を示す要部拡大図、(b)は電極から水銀を飛散させた状態を示す要部拡大図である。
【図4】再点灯及びクーリング時間の関係を示すタイムチャートである。
【図5】再点灯に係る一連の処理を示すフローチャートである。
【図6】(a)は変形例の再点灯に係るタイムチャートであり、(b)は別の変形例に係るタイムチャートである。
【図7】(a)は、第2実施形態に係る光源の概略断面図、(b)は第2実施形態の変形例に係る光源の概略断面図である。
【図8】クーリング時間における放電ランプの温度低下特性を示すグラフである。
【符号の説明】
【0065】
1 投射型画像表示装置
10 光源
12 放電ランプ
15 発光管
15c チャンバー部
16、17 電極
18a、18b モリブデン箔
20 制御部
21 システムコントロールユニット
22 バラストユニット
22a 光源コントロール部
22b イグナイター高圧発生回路部
24 電源ユニット
28a〜28c 第1〜第3ファン
29a ROM
29b RAM
29c タイマ
40 温度センサ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
発光管内に一対の電極が対向配置してあり、該電極の対向箇所を被う空間内に水銀が封入してある放電ランプ、及び該放電ランプの点灯に係る制御を行う制御手段を備えるランプユニットにおいて、
点灯中の前記放電ランプの消灯指示を受け付ける受付手段と、
該受付手段が消灯指示を受け付けた場合、計時を開始する計時手段と
を備え、
前記制御手段は、前記受付手段が消灯指示を受け付けた場合、前記放電ランプを消灯する手段と、前記計時手段で計時した時間が45秒以上120秒未満である間に前記放電ランプを再点灯する手段と
を備えることを特徴とするランプユニット。
【請求項2】
発光管内に一対の電極が対向配置してあり、該電極の対向箇所を被う空間内に水銀が封入してある放電ランプ、及び該放電ランプの点灯に係る制御を行う制御手段を備えるランプユニットにおいて、
前記放電ランプに係る温度を測定する温度測定手段と、
点灯中の前記放電ランプの消灯指示を受け付ける受付手段と
を備え、
前記制御手段は、前記受付手段が消灯指示を受け付けた場合、前記放電ランプを消灯する手段と、前記温度測定手段が測定した温度に応じて前記放電ランプを再点灯する手段と
を備えることを特徴とするランプユニット。
【請求項3】
前記制御手段は、前記放電ランプを再点灯する場合、3kV以上13kV未満の電圧を前記放電ランプに印加する請求項1又は請求項2に記載のランプユニット。
【請求項4】
前記制御手段は、前記放電ランプの再点灯を複数回行う請求項1乃至請求項3のいずれか1つに記載のランプユニット。
【請求項5】
前記請求項1乃至請求項4のいずれか1つに記載のランプユニットと、
該ランプユニットの放電ランプから発せられた光に基づいて画像を表す投射光を生成する投射光生成部と、
前記ランプユニットの放電ランプの冷却を行う冷却ファンと、
該冷却ファンの回転を制御する回転制御手段と
を備え、
前記回転制御手段は、前記放電ランプの再点灯が終了して所定の時間が経過したときに、前記冷却ファンの回転を停止することを特徴とする投射型画像表示装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2006−210280(P2006−210280A)
【公開日】平成18年8月10日(2006.8.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−24156(P2005−24156)
【出願日】平成17年1月31日(2005.1.31)
【出願人】(000005049)シャープ株式会社 (33,933)
【Fターム(参考)】