ランプ取付け構造
【課題】車両上方からの衝突荷重が入力された際における衝突エネルギーの吸収性を確保しつつ、車両前後方向からの衝突荷重が入力された際におけるランプへの影響を抑制できるようにすることを目的とする。
【解決手段】ヘッドランプ10(ランプ)とラジエータサポート26(車体)とが結合される上側結合部23に脆弱部(結合解除手段)が設けられているので、車両上方からの衝突荷重が入力された際には、ヘッドランプ10の上部がラジエータサポート26から離脱する。ヘッドランプ10の下部とバンパリインフォースメント42(車体)とが結合される下側結合部40では、下部結合手段によりヘッドランプ10の下部とバンパリインフォースメント42との結合状態は維持される。一方、車両前後方向からの衝突荷重が入力された際には、下部結合手段によりヘッドランプ10とバンパリインフォースメント42との結合状態が解除される。
【解決手段】ヘッドランプ10(ランプ)とラジエータサポート26(車体)とが結合される上側結合部23に脆弱部(結合解除手段)が設けられているので、車両上方からの衝突荷重が入力された際には、ヘッドランプ10の上部がラジエータサポート26から離脱する。ヘッドランプ10の下部とバンパリインフォースメント42(車体)とが結合される下側結合部40では、下部結合手段によりヘッドランプ10の下部とバンパリインフォースメント42との結合状態は維持される。一方、車両前後方向からの衝突荷重が入力された際には、下部結合手段によりヘッドランプ10とバンパリインフォースメント42との結合状態が解除される。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ランプ取付け構造に関する。
【背景技術】
【0002】
自動車のヘッドランプの後方側上部を車体に別体ブラケットを介して固定し、該別体ブラケットが、車両上方からの衝撃に対して車体側とヘッドランプ側とに分離することで、ヘッドランプを、該ヘッドランプの前方側下部の取付け位置を中心として回転変位させて、衝撃力を緩和させる構造が開示されている(特許文献1参照)。
【特許文献1】特開2004−203288号公報
【特許文献2】特開2005−219545号公報
【特許文献3】実開平5−3051号公報
【特許文献4】発明協会公開技報公技番号2003−504453号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、上記した特許文献1に記載の従来例では、ヘッドランプの前方側下部が、ラジエータコアサポートサイドから突設されたヘッドランプステイにボルト及びナットにより固定されているため、車両が前面衝突した際には車両前方からの衝突荷重がヘッドランプステイからヘッドランプに伝わり易いと考えられる。
【0004】
本発明は、上記事実を考慮して、車両上方からの衝突荷重が入力された際における衝突エネルギーの吸収性を確保しつつ、車両前後方向からの衝突荷重が入力された際におけるランプへの影響を抑制できるようにすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
請求項1の発明は、車両の前後方向における端部に設けられたランプと、該ランプの上部と車体とが結合される上側結合部に設けられ、車両上方からの衝突荷重に対して前記ランプを前記車体から離脱させる結合解除手段と、前記ランプのうち車両前後方向において該ランプの重心より車両反中央側の下部と前記車体とが結合される下側結合部に設けられ、車両上方からの衝突荷重に対しては前記車体との結合状態を維持し、車両前後方向からの衝突荷重に対しては前記車体との結合状態を解除可能な下部結合手段と、を有することを特徴としている。
【0006】
請求項1に記載のランプ取付け構造では、ランプと車体とが結合される上側結合部に結合解除手段が設けられているので、車両上方からの衝突荷重が入力された際には、ランプの上部が車体から離脱する。一方、ランプの下部と車体とが結合される下側結合部には、該ランプと車体との結合状態を維持する下部結合手段が設けられており、車両上方からの衝突荷重が入力された場合でも、該下部結合手段によりランプの下部と車体との結合状態は維持される。ランプの重心は、下側結合部よりも、車両前後方向における車両中央側に位置しているので、ランプの上部が車体から離脱すると、該ランプは、下側結合部を中心として車両下方へ回転変位する。これにより、車両上方からの衝突荷重が入力された際における衝突エネルギーの吸収性を確保することができる。
【0007】
また車両前後方向からの衝突荷重が入力された際には、下部結合手段によりランプと車体との結合状態が解除されるので、衝突荷重が車体からランプへ伝達され難い。即ち、請求項1に記載のランプ取付け構造では、車両前後方向からの衝突荷重が入力された際におけるランプへの影響を抑制することが可能である。
【0008】
請求項2の発明は、請求項1に記載のランプ取付け構造において、前記下部結合手段として、前記ランプの前記車両反中央側の下部に設けられ、車両前後方向における車両中央側に開口した差込み部と、一端が車両前後方向における車両中央側から前記差込み部に差し込まれ、他端が前記ランプより車両下方の車体に固定されたランプ下部取付け部材と、を有することを特徴としている。
【0009】
請求項2に記載のランプ取付け構造では、ランプ下部取付け部材の一端がランプの下部の差込み部に車両前後方向における車両中央側から差し込まれ、該ランプ下部取付け部材の他端がランプより車両下方の車体に固定されているので、車両上方からの衝突荷重の入力によりランプが下側結合部を中心として車両下方へ回転変位する際に、該下側結合部におけるランプとランプ下部取付け部材との結合状態が維持される。これにより、ランプ下部取付け部材によるランプの支持状態が持続するため、該ランプの部位において衝突荷重の一部を受け持つことができる。
【0010】
また請求項2に記載のランプ取付け構造では、上記したように、ランプ下部取付け部材の一端がランプの下部の差込み部に車両前後方向における車両中央側から差し込まれているので、ランプ下部取付け部材の他端が固定されている車体に車両前後方向からの衝突荷重が入力された際には、該車体と共にランプ下部取付け部材が車両中央側に変位することで、該ランプ下部取付け部材の一端がランプの下部の差込み部から離脱する。これにより、ランプとランプ下部取付け部材との結合状態が解除されるので、衝突荷重が車体からランプ下部取付け部材を介してランプへ伝達されることを抑制することができる。
【0011】
請求項3の発明は、請求項2に記載のランプ取付け構造において、前記ランプ下部取付け部材は、金属製であることを特徴としている。
【0012】
請求項3に記載のランプ取付け構造では、ランプ下部取付け部材が金属製であるので、車両上方からの衝突荷重の入力によりランプが車両下方へ回転変位する際に、ランプ下部取付け部材自体が変形することで、衝突エネルギーを持続的に吸収することができる。
【0013】
請求項4の発明は、請求項2又は請求項3に記載のランプ取付け構造において、前記ランプ下部取付け部材の前記一端は、鉤爪状に形成されていることを特徴としている。
【0014】
請求項4に記載のランプ取付け構造では、ランプ下部取付け部材の一端が鉤爪状に形成されているので、車両上方からの衝突荷重の入力によりランプが車両下方へ回転変位する際に、ランプ下部取付け部材の一端がランプの下部の差込み部から離脱し難い。このため、該ランプの部位において、衝突荷重の一部をより効率的に受け持つことができる。
【0015】
請求項5の発明は、請求項2から請求項4の何れか1項に記載のランプ取付け構造において、前記ランプ下部取付け部材の前記他端は、前記一端よりも車両前後方向における車両反中央側においてバンパリインフォースメントに固定されていることを特徴としている。
【0016】
請求項5に記載のランプ取付け構造では、ランプ下部取付け部材の他端が、一端よりも車両前後方向における車両反中央側においてバンパリインフォースメントに固定されているので、車両上方からの衝突荷重の入力によりランプが車両下方へ回転変位する際に、ランプ下部取付け部材がその他端を中心として変形し易い。このため、ランプの変位ストロークをより大きく確保することができる。
【0017】
これに加えて、請求項5に記載のランプ取付け構造では、車両前後方向からの衝突荷重がバンパリインフォースメントに入力された際に、ランプの下側結合部において、下部取付け部材の一端をランプの下部の差込み部からより早期に離脱させることができる。このため、ランプへの影響をより一層抑制することができる。
【発明の効果】
【0018】
以上説明したように、本発明に係る請求項1に記載のランプ取付け構造によれば、車両上方からの衝突荷重が入力された際における衝突エネルギーの吸収性を確保しつつ、車両前後方向からの衝突荷重が入力された際におけるランプへの影響を抑制できる、という優れた効果が得られる。
【0019】
請求項2に記載のランプ取付け構造によれば、車両上方からの衝突荷重の入力の際にランプの部位において衝突荷重の一部を受け持つことができ、また車両前後方向からの衝突荷重の入力の際に、該衝突荷重がランプへ伝達されることを抑制することができる、という優れた効果が得られる。
【0020】
請求項3に記載のランプ取付け構造によれば、衝突エネルギーを持続的に吸収するができる、という優れた効果が得られる。
【0021】
請求項4に記載のランプ取付け構造によれば、ランプの部位において、衝突荷重の一部をより効率的に受け持つことができる、という優れた効果が得られる。
【0022】
請求項5に記載のランプ取付け構造によれば、車両上方からの衝突荷重に対するランプの変位ストロークをより大きく確保することができると共に、車両前後方向からの衝突荷重の入力の際におけるランプへの影響をより一層抑制することができる、という優れた効果が得られる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づき説明する。図1において、本実施の形態に係るランプ取付け構造Sは、ランプの一例たるヘッドランプ10と、結合解除手段の一例たる脆弱部12(図2)と、下部結合手段としての差込み部14及びランプ下部取付け部材16とを有している。
【0024】
ヘッドランプ10は、車両18の前後方向における端部に設けられた前照灯であり、例えばロービーム用ランプ、ハイビーム用ランプ及びポジションランプ等(図示せず)が組み込まれたランプ本体20に、レンズ22を車両前方側から組み付けて構成されている。
【0025】
このヘッドランプ10は、上側結合部23において車体の一例たるラジエータサポート26と結合されている。この上側結合部23は、車両前後方向において、ヘッドランプ10の重心28より例えば車両後方側(車両中央側)に設けられている。図1,図7(A)に示されるように、上側結合部23では、ランプ本体20の上部に設けられたランプ上部ステー24が、ラジエータサポート26に対して、例えばボルト36及びナット38を用いて締結されている。
【0026】
図7(A)において、ランプ上部ステー24は、例えばランプ本体20の上部から車両上方に延びる縦壁部24Aと、該縦壁部24Aの上端からラジエータサポート26に沿って車両後方に延び該ラジエータサポート26の下面側に締結固定される横壁部24Bとを有している。図2に示されるように、縦壁部24A及び横壁部24Bは、剛性向上のため、例えば夫々断面U字形に構成されている。横壁部24Bには、ボルト36(図7(A))を通すための貫通孔24Cが設けられている。
【0027】
脆弱部12は、上側結合部23に設けられ、車両上方からの衝突荷重F1(図6)に対してヘッドランプ10をラジエータサポート26から離脱させるための部位であり、例えばランプ上部ステー24における縦壁部24Aの車幅方向両側に設けられた一対の切欠きとして構成されている。なお、脆弱部12の構成は、図示の形状には限られず、例えば縦壁部24Aを部分的に薄肉に構成してもよいし、貫通孔を設ける等してもよい。また脆弱部12を設ける位置はランプ上部ステー24の縦壁部24Aには限られず、横壁部24Bであってもよい。
【0028】
ラジエータサポート26の前端部には、例えばレンズ22の一部に被さる形状のボデー前部パネル30が設けられている。またラジエータサポート26の上方には、エンジンコンパートメントを覆うフロントフード32が設けられている。フロントフード32とボデー前部パネル30との間には、ウェザーストリップ34が配設されている。
【0029】
図1において、下部結合手段としての差込み部14及びランプ下部取付け部材16は、ヘッドランプ10のうち車両前後方向において該ヘッドランプ10の重心28より車両前方側(車両反中央側)の下部と、車体の一例たるバンパリインフォースメント42とが結合される下側結合部40に設けられている。
【0030】
図3に示されるように、差込み部14は、ヘッドランプ10の車両前後方向において該ヘッドランプ10の重心より車両前方側(車両反中央側)に位置する例えばレンズ22の下部に設けられ、車両後方側(車両前後方向における車両中央側)に開口している。この差込み部14は、車両上下方向に離間した上壁部14A及び下壁部14Bと、該上壁部14Aと下壁部14Bとを連結する前壁部14Cとにより、車両側面視で断面U字形に形成されている。なお、図3に示される例では、差込み部14は、例えば車幅方向の両側にも開口している。差込み部14の形状はこれに限られるものではなく、図4に示されるように、車幅方向の両側に横壁部14Dを設け、車両後方側のみが車両後方に開口するように構成してもよい。
【0031】
図3,図4,図8(A)に示されるように、ランプ本体20の下部前端には、車両上下方向に離間した上壁部44A及び下壁部44Bと、該上壁部44Aと下壁部44Bとを車両上下方向に連結する後壁部44Cとにより、車両側面視で車両前方側に開口する断面U字形の差込み部44が設けられている。この差込み部44は、レンズ22側の差込み部14の上壁部14Aに対して、該上壁部14Aを挟み込むように嵌め込まれている。
【0032】
差込み部44の下壁部44Bと差込み部14の下壁部14Bとの間には、ランプ下部取付け部材16の一端16Aが差し込まれている。図1に示されるように、ランプ下部取付け部材16は、例えば金属製の部材であり、一端16Aが車両後方側(車両前後方向における車両中央側)から差込み部14に差し込まれ、他端16Bがヘッドランプ10より車両下方のバンパリインフォースメント42に固定されている。
【0033】
ランプ下部取付け部材16において、一端16Aと他端16Bとは、車両後方に向かうに従って車両斜め上方に延びる一般部16Cにより連結されている。この一般部16Cの後端に一端16Aが設けられ、該一般部16Cの前端に他端16Bが設けられている。
【0034】
補足すると、一般部16Cの後端からは、車両上方に後壁部16Dが延びており、該後壁部16Dの上端から車両前方に、一端16Aが板状に突出形成されている。これにより、一端16Aは、一般部16Cの後端部を車両上方側かつ車両前方側に折り返した鉤爪状に形成されている。
【0035】
ランプ下部取付け部材16の他端16Bは、バンパリインフォースメント42の後面に沿うように形成されている。この他端16Bには、バンパリインフォースメント42に対する締結用のボルト(図示せず)を通すための貫通孔16Eが設けられている。そしてランプ下部取付け部材16の他端16Bは、一端16Aよりも車両後方側(車両前後方向における車両反中央側)において、バンパリインフォースメント42の後面に固定されている。
【0036】
図6に示されるように、下部結合手段としての差込み部14及びランプ下部取付け部材16は、車両上方からの衝突荷重F1に対してはバンパリインフォースメント42とヘッドランプ10との結合状態を維持するように構成されている。また図10に示されるように、差込み部14及びランプ下部取付け部材16は、車両前方(車両前後方向)からの衝突荷重F2に対しては、ランプ下部取付け部材16の一端16Aが差込み部14から離脱することで、バンパリインフォースメント42とヘッドランプ10との結合状態を解除可能に構成されている。
【0037】
図1に示されるように、バンパリインフォースメント42の前面下部には、例えばウレタン樹脂等の衝撃吸収材46が取り付けられている。またヘッドランプ10におけるレンズ22の下部からバンパリインフォースメント42及び衝撃吸収材46等を覆うように、バンパカバー48が取り付けられている。
【0038】
なお、ランプ下部取付け部材16は、金属板を折曲げ成形したものであってもよく、また鋳造や鍛造により製造したものであってもよい。
【0039】
(作用)
本実施形態は、上記のように構成されており、以下その作用について説明する。図5において、本実施形態に係るランプ取付け構造Sでは、例えばヘッドランプ10の車両上方のフロントフード32に対して衝突体50が衝突し、該フロントフード32に対して車両上方からの衝突荷重F1が入力されると、該フロントフード32が変形してラジエータサポート26に当接し、該ラジエータサポート26とヘッドランプ10とが結合されている上側結合部23へ車両上方からの衝突荷重F1が伝達される。
【0040】
図2,図7(A)に示されるように、この上側結合部23におけるランプ上部ステー24の縦壁部24Aには、脆弱部12が設けられているので、図7(B)に示されるように、車両上方からの衝突荷重F1が入力されると、ランプ上部ステー24の縦壁部24Aが脆弱部12において折れ曲がると共に破断し、図6に示されるように、ヘッドランプ10の上部がラジエータサポート26から離脱する。ヘッドランプ10の重心28は、下側結合部40よりも、車両後方側(車両前後方向における車両中央側)に位置しているので、ヘッドランプ10の上部がラジエータサポート26から離脱すると、該ヘッドランプ10は、自重及び車両上方からの衝突荷重F1により、下側結合部40を中心として車両下方へ矢印A方向に回転変位する。このようにヘッドランプ10が回転変位することで、フロントフード32の変形ストロークを増加させて、衝突エネルギーの吸収性を確保することができる。
【0041】
一方、図8(A)に示されるように、ヘッドランプ10の下部とバンパリインフォースメント42とが結合される下側結合部40には、該ヘッドランプ10とバンパリインフォースメント42(図6)との結合状態を維持する下部結合手段として、差込み部14及びランプ下部取付け部材16が設けられており、車両上方からの衝突荷重F1が入力された場合でも、該差込み部14及びランプ下部取付け部材16によりヘッドランプ10の下部とバンパリインフォースメント42との結合状態は維持される。
【0042】
具体的には、図8(B)に示されるように、ランプ下部取付け部材16の一端16Aがヘッドランプ10の下部の差込み部14に車両後方側(車両前後方向における車両中央側)から差し込まれ、該ランプ下部取付け部材16の他端16Bがヘッドランプ10より車両下方のバンパリインフォースメント42に固定されているので、上記したように、ヘッドランプ10が下側結合部40を中心として車両下方へ矢印A方向に回転変位しようとしても、ランプ下部取付け部材16の一端16Aと、例えばレンズ22側の差込み部14の下壁部14B及びランプ本体20側の差込み部44の下壁部44Bとが夫々干渉することから、ランプ下部取付け部材16の一端16Aが差込み部14から容易に離脱することはない。
【0043】
言い換えれば、ランプ下部取付け部材16の一端16Aが鉤爪状に形成されているので、車両上方からの衝突荷重F1の入力によりヘッドランプ10が車両下方へ回転変位する際に、ランプ下部取付け部材16の一端16Aがヘッドランプ10の下部の差込み部14から離脱し難い。これにより、バンパリインフォースメント42及びランプ下部取付け部材16によるヘッドランプ10の支持状態が持続するため、該ヘッドランプ10の部位において衝突荷重F1の一部をより効率的に受け持つことができる。
【0044】
またランプ下部取付け部材16は、例えば金属製であるので、図9に示されるように、車両上方からの衝突荷重F1の入力によりヘッドランプ10が車両下方へ回転変位する際に、該ランプ下部取付け部材16自体が変形することで、衝突エネルギーを持続的に吸収することができる。言い換えれば、金属製のランプ下部取付け部材16を大変形させるためには、比較的大きな荷重が必要となるので、持続的なエネルギー吸収が可能となる。
【0045】
この際、本実施形態では、下側結合部40がヘッドランプ10の重心28よりも車両前方側(車両前後方向における車両反中央側)に位置しており、更にランプ下部取付け部材16の他端16Bが、下側結合部40に位置する一端16Aよりも更に車両前方側(車両前後方向における車両反中央側)においてバンパリインフォースメント42に固定されているので、車両上方からの衝突荷重F1の入力によりヘッドランプ10が車両下方へ回転変位する際に、下側結合部40に作用するモーメントが大きくなる。このため、金属製のランプ下部取付け部材16であっても、容易に変形させることができる。このため、ヘッドランプ10の変位ストローク、更にはフロントフード32の変形ストロークをより大きく確保することができる。
【0046】
次に、図10において、車両18に対して相手車両52等が前面衝突した際の作用について説明する。このような前面衝突が生じた場合、バンパカバー48及び衝撃吸収材46を介してバンパリインフォースメント42に車両前方(車両前後方向)からの衝突荷重F2が入力される。
【0047】
ここで、図11(A)に示されるように、下側結合部40においては、ランプ下部取付け部材16の一端16Aがヘッドランプ10の下部の差込み部14に車両後方側(車両前後方向における車両中央側)から差し込まれ、ランプ下部取付け部材16の他端16Bがバンパリインフォースメント42の後面に結合されているので、図10に示されるように、該バンパリインフォースメント42に車両前方(車両前後方向)からの衝突荷重F2が入力された際には、該バンパリインフォースメント42と共にランプ下部取付け部材16も車両後方側(車両中央側)に変位する。
【0048】
すると、図11(B)に示されるように、ランプ下部取付け部材16の一端16Aが、ヘッドランプ10の下部の差込み部14から矢印R方向に離脱する。これにより、下側結合部40におけるヘッドランプ10とランプ下部取付け部材16との結合状態が解除されるので、車両前方(車両前後方向)からの衝突荷重F2がバンパリインフォースメント42からランプ下部取付け部材16を介してヘッドランプ10へ伝達されることを抑制することができる。即ち、本実施形態では、車両前方(車両前後方向)からの衝突荷重F2が入力された際におけるヘッドランプ10への影響を抑制することが可能である。
【0049】
これに加えて、本実施形態では、ランプ下部取付け部材16の他端16Bが、一端16Aよりも車両前方側(車両前後方向における車両反中央側)においてバンパリインフォースメントに固定されているので、車両前方(車両前後方向)からの衝突荷重F2がバンパリインフォースメント42に入力された際に、ヘッドランプ10の下側結合部40において、下部取付け部材の一端16Aをヘッドランプ10の下部の差込み部14からより早期に離脱させることができる。このため、ヘッドランプ10への影響をより一層抑制することができる。
【0050】
なお、車両上下方向におけるランプ下部取付け部材16の一端16Aと他端16Bとの高さ位置の差は、できるだけ小さいことが望ましい。車両前方(車両前後方向)からの衝突荷重F2によるモーメントが小さくなるので、一端16Aと差込み部14とのこじれ等の可能性を低減でき、該一端16Aを差込み部14からより安定的に離脱させることができるからである。
【0051】
上記したように、本実施形態に係るランプ取付け構造Sによれば、車両上方からの衝突荷重F1が入力された際における衝突エネルギーの吸収性を確保しつつ、車両前方(車両前後方向)からの衝突荷重F2が入力された際におけるヘッドランプ10への影響を抑制することが可能である。
【0052】
なお上記実施形態においては、ランプの一例としてヘッドランプ10を挙げたが、これに限られず、例えばリヤコンビネーションランプにも適用可能である。また結合解除手段の一例として脆弱部12を挙げたが、これに限られず、車両上方からの衝突荷重F1が入力された際に、ヘッドランプ10を車体から離脱させることができる構成であれば、どのような手段を用いてもよい。
【0053】
更に、ヘッドランプ10の上部が結合される車体の一例として、ラジエータサポート26を挙げたが、これはラジエータサポート26に限られるものではなく、ヘッドランプ10の上部を結合するのに適した車体部分であれば、他の部位であってもよい。
【0054】
またヘッドランプ10の下部が結合される車体の一例として、バンパリインフォースメント42を挙げたが、これはバンパリインフォースメント42に限られるものではない。ランプ下部取付け部材16の一端16Aを下側結合部40における差込み部14からより早期に離脱させる観点から、該差込み部14よりも車両前方に配置されている車体部位であることが望ましい。本発明をリヤコンビネーションランプに適用する場合には、リヤバンパリインフォースメント(図示せず)が好適である。
【0055】
更に、ランプ下部取付け部材16を金属製であるものとしたが、ランプ下部取付け部材16の材質はこれに限られるものではなく、合成樹脂等を用いてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0056】
【図1】ランプ取付け構造を示す断面図である。
【図2】ランプ上部ステーの縦壁部に設けられた脆弱部を示す拡大斜視図である。
【図3】下側結合部におけるヘッドランプのレンズ及びランプ本体と、該レンズの下部に設けられた差込み部と、ランプ下部取付け部材とを示す分解斜視図である。
【図4】図3における差込み部の変形例を示す分解斜視図である。
【図5】フロントフードに衝突体が衝突して、車両上方からの衝突荷重が入力され、上側結合部におけるランプ上部ステーが脆弱部において折れ曲げっている状態を示す断面図である。
【図6】ランプ上部ステーの変形が脆弱部において破断し、ヘッドランプが下側結合部を中心として車両下方へ回転変位した状態を示す断面図である。
【図7】(A)通常時の上側結合部の構成を示す、図1の部分拡大断面図である。(B)ランプ上部ステーの変形が脆弱部において破断した状態を示す、図6の部分拡大断面図である。
【図8】(A)通常時の下側結合部の構成を示す、図1の部分拡大断面図である。(B)ヘッドランプが回転変位しても差込み部からランプ下部取付け部材の一端が離脱しない状態を示す、図6の部分拡大断面図である。
【図9】車両上方からの衝突荷重に対し、ランプ下部取付け部材自体が変形することで、衝突エネルギーを持続的に吸収している状態を示す断面図である。
【図10】相手車両等が車両に前面衝突して、車両前方(車両前後方向)からの衝突荷重が入力された際に、バンパリインフォースメントと共にランプ下部取付け部材が車両後方側(車両中央側)に変位することで、該ランプ下部取付け部材の一端が差込み部から離脱した状態を示す断面図である。
【図11】(A)通常時の下側結合部の構成を示す、図1の部分拡大断面図である。(B)ランプ下部取付け部材の一端が差込み部から離脱した状態を示す、図10の拡大断面図である。
【符号の説明】
【0057】
10 ヘッドランプ(ランプ)
12 脆弱部(結合解除手段)
14 差込み部(下部結合手段)
16 ランプ下部取付け部材(下部結合手段)
16A 一端
16B 他端
18 車両
23 上側結合部
24 ランプ上部ステー
26 ラジエータサポート(車体)
28 重心
40 下側結合部
42 バンパリインフォースメント(車体)
F1 車両上方からの衝突荷重
F2 車両前方からの衝突荷重(車両前後方向からの衝突荷重)
S ランプ取付け構造
【技術分野】
【0001】
本発明は、ランプ取付け構造に関する。
【背景技術】
【0002】
自動車のヘッドランプの後方側上部を車体に別体ブラケットを介して固定し、該別体ブラケットが、車両上方からの衝撃に対して車体側とヘッドランプ側とに分離することで、ヘッドランプを、該ヘッドランプの前方側下部の取付け位置を中心として回転変位させて、衝撃力を緩和させる構造が開示されている(特許文献1参照)。
【特許文献1】特開2004−203288号公報
【特許文献2】特開2005−219545号公報
【特許文献3】実開平5−3051号公報
【特許文献4】発明協会公開技報公技番号2003−504453号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、上記した特許文献1に記載の従来例では、ヘッドランプの前方側下部が、ラジエータコアサポートサイドから突設されたヘッドランプステイにボルト及びナットにより固定されているため、車両が前面衝突した際には車両前方からの衝突荷重がヘッドランプステイからヘッドランプに伝わり易いと考えられる。
【0004】
本発明は、上記事実を考慮して、車両上方からの衝突荷重が入力された際における衝突エネルギーの吸収性を確保しつつ、車両前後方向からの衝突荷重が入力された際におけるランプへの影響を抑制できるようにすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
請求項1の発明は、車両の前後方向における端部に設けられたランプと、該ランプの上部と車体とが結合される上側結合部に設けられ、車両上方からの衝突荷重に対して前記ランプを前記車体から離脱させる結合解除手段と、前記ランプのうち車両前後方向において該ランプの重心より車両反中央側の下部と前記車体とが結合される下側結合部に設けられ、車両上方からの衝突荷重に対しては前記車体との結合状態を維持し、車両前後方向からの衝突荷重に対しては前記車体との結合状態を解除可能な下部結合手段と、を有することを特徴としている。
【0006】
請求項1に記載のランプ取付け構造では、ランプと車体とが結合される上側結合部に結合解除手段が設けられているので、車両上方からの衝突荷重が入力された際には、ランプの上部が車体から離脱する。一方、ランプの下部と車体とが結合される下側結合部には、該ランプと車体との結合状態を維持する下部結合手段が設けられており、車両上方からの衝突荷重が入力された場合でも、該下部結合手段によりランプの下部と車体との結合状態は維持される。ランプの重心は、下側結合部よりも、車両前後方向における車両中央側に位置しているので、ランプの上部が車体から離脱すると、該ランプは、下側結合部を中心として車両下方へ回転変位する。これにより、車両上方からの衝突荷重が入力された際における衝突エネルギーの吸収性を確保することができる。
【0007】
また車両前後方向からの衝突荷重が入力された際には、下部結合手段によりランプと車体との結合状態が解除されるので、衝突荷重が車体からランプへ伝達され難い。即ち、請求項1に記載のランプ取付け構造では、車両前後方向からの衝突荷重が入力された際におけるランプへの影響を抑制することが可能である。
【0008】
請求項2の発明は、請求項1に記載のランプ取付け構造において、前記下部結合手段として、前記ランプの前記車両反中央側の下部に設けられ、車両前後方向における車両中央側に開口した差込み部と、一端が車両前後方向における車両中央側から前記差込み部に差し込まれ、他端が前記ランプより車両下方の車体に固定されたランプ下部取付け部材と、を有することを特徴としている。
【0009】
請求項2に記載のランプ取付け構造では、ランプ下部取付け部材の一端がランプの下部の差込み部に車両前後方向における車両中央側から差し込まれ、該ランプ下部取付け部材の他端がランプより車両下方の車体に固定されているので、車両上方からの衝突荷重の入力によりランプが下側結合部を中心として車両下方へ回転変位する際に、該下側結合部におけるランプとランプ下部取付け部材との結合状態が維持される。これにより、ランプ下部取付け部材によるランプの支持状態が持続するため、該ランプの部位において衝突荷重の一部を受け持つことができる。
【0010】
また請求項2に記載のランプ取付け構造では、上記したように、ランプ下部取付け部材の一端がランプの下部の差込み部に車両前後方向における車両中央側から差し込まれているので、ランプ下部取付け部材の他端が固定されている車体に車両前後方向からの衝突荷重が入力された際には、該車体と共にランプ下部取付け部材が車両中央側に変位することで、該ランプ下部取付け部材の一端がランプの下部の差込み部から離脱する。これにより、ランプとランプ下部取付け部材との結合状態が解除されるので、衝突荷重が車体からランプ下部取付け部材を介してランプへ伝達されることを抑制することができる。
【0011】
請求項3の発明は、請求項2に記載のランプ取付け構造において、前記ランプ下部取付け部材は、金属製であることを特徴としている。
【0012】
請求項3に記載のランプ取付け構造では、ランプ下部取付け部材が金属製であるので、車両上方からの衝突荷重の入力によりランプが車両下方へ回転変位する際に、ランプ下部取付け部材自体が変形することで、衝突エネルギーを持続的に吸収することができる。
【0013】
請求項4の発明は、請求項2又は請求項3に記載のランプ取付け構造において、前記ランプ下部取付け部材の前記一端は、鉤爪状に形成されていることを特徴としている。
【0014】
請求項4に記載のランプ取付け構造では、ランプ下部取付け部材の一端が鉤爪状に形成されているので、車両上方からの衝突荷重の入力によりランプが車両下方へ回転変位する際に、ランプ下部取付け部材の一端がランプの下部の差込み部から離脱し難い。このため、該ランプの部位において、衝突荷重の一部をより効率的に受け持つことができる。
【0015】
請求項5の発明は、請求項2から請求項4の何れか1項に記載のランプ取付け構造において、前記ランプ下部取付け部材の前記他端は、前記一端よりも車両前後方向における車両反中央側においてバンパリインフォースメントに固定されていることを特徴としている。
【0016】
請求項5に記載のランプ取付け構造では、ランプ下部取付け部材の他端が、一端よりも車両前後方向における車両反中央側においてバンパリインフォースメントに固定されているので、車両上方からの衝突荷重の入力によりランプが車両下方へ回転変位する際に、ランプ下部取付け部材がその他端を中心として変形し易い。このため、ランプの変位ストロークをより大きく確保することができる。
【0017】
これに加えて、請求項5に記載のランプ取付け構造では、車両前後方向からの衝突荷重がバンパリインフォースメントに入力された際に、ランプの下側結合部において、下部取付け部材の一端をランプの下部の差込み部からより早期に離脱させることができる。このため、ランプへの影響をより一層抑制することができる。
【発明の効果】
【0018】
以上説明したように、本発明に係る請求項1に記載のランプ取付け構造によれば、車両上方からの衝突荷重が入力された際における衝突エネルギーの吸収性を確保しつつ、車両前後方向からの衝突荷重が入力された際におけるランプへの影響を抑制できる、という優れた効果が得られる。
【0019】
請求項2に記載のランプ取付け構造によれば、車両上方からの衝突荷重の入力の際にランプの部位において衝突荷重の一部を受け持つことができ、また車両前後方向からの衝突荷重の入力の際に、該衝突荷重がランプへ伝達されることを抑制することができる、という優れた効果が得られる。
【0020】
請求項3に記載のランプ取付け構造によれば、衝突エネルギーを持続的に吸収するができる、という優れた効果が得られる。
【0021】
請求項4に記載のランプ取付け構造によれば、ランプの部位において、衝突荷重の一部をより効率的に受け持つことができる、という優れた効果が得られる。
【0022】
請求項5に記載のランプ取付け構造によれば、車両上方からの衝突荷重に対するランプの変位ストロークをより大きく確保することができると共に、車両前後方向からの衝突荷重の入力の際におけるランプへの影響をより一層抑制することができる、という優れた効果が得られる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づき説明する。図1において、本実施の形態に係るランプ取付け構造Sは、ランプの一例たるヘッドランプ10と、結合解除手段の一例たる脆弱部12(図2)と、下部結合手段としての差込み部14及びランプ下部取付け部材16とを有している。
【0024】
ヘッドランプ10は、車両18の前後方向における端部に設けられた前照灯であり、例えばロービーム用ランプ、ハイビーム用ランプ及びポジションランプ等(図示せず)が組み込まれたランプ本体20に、レンズ22を車両前方側から組み付けて構成されている。
【0025】
このヘッドランプ10は、上側結合部23において車体の一例たるラジエータサポート26と結合されている。この上側結合部23は、車両前後方向において、ヘッドランプ10の重心28より例えば車両後方側(車両中央側)に設けられている。図1,図7(A)に示されるように、上側結合部23では、ランプ本体20の上部に設けられたランプ上部ステー24が、ラジエータサポート26に対して、例えばボルト36及びナット38を用いて締結されている。
【0026】
図7(A)において、ランプ上部ステー24は、例えばランプ本体20の上部から車両上方に延びる縦壁部24Aと、該縦壁部24Aの上端からラジエータサポート26に沿って車両後方に延び該ラジエータサポート26の下面側に締結固定される横壁部24Bとを有している。図2に示されるように、縦壁部24A及び横壁部24Bは、剛性向上のため、例えば夫々断面U字形に構成されている。横壁部24Bには、ボルト36(図7(A))を通すための貫通孔24Cが設けられている。
【0027】
脆弱部12は、上側結合部23に設けられ、車両上方からの衝突荷重F1(図6)に対してヘッドランプ10をラジエータサポート26から離脱させるための部位であり、例えばランプ上部ステー24における縦壁部24Aの車幅方向両側に設けられた一対の切欠きとして構成されている。なお、脆弱部12の構成は、図示の形状には限られず、例えば縦壁部24Aを部分的に薄肉に構成してもよいし、貫通孔を設ける等してもよい。また脆弱部12を設ける位置はランプ上部ステー24の縦壁部24Aには限られず、横壁部24Bであってもよい。
【0028】
ラジエータサポート26の前端部には、例えばレンズ22の一部に被さる形状のボデー前部パネル30が設けられている。またラジエータサポート26の上方には、エンジンコンパートメントを覆うフロントフード32が設けられている。フロントフード32とボデー前部パネル30との間には、ウェザーストリップ34が配設されている。
【0029】
図1において、下部結合手段としての差込み部14及びランプ下部取付け部材16は、ヘッドランプ10のうち車両前後方向において該ヘッドランプ10の重心28より車両前方側(車両反中央側)の下部と、車体の一例たるバンパリインフォースメント42とが結合される下側結合部40に設けられている。
【0030】
図3に示されるように、差込み部14は、ヘッドランプ10の車両前後方向において該ヘッドランプ10の重心より車両前方側(車両反中央側)に位置する例えばレンズ22の下部に設けられ、車両後方側(車両前後方向における車両中央側)に開口している。この差込み部14は、車両上下方向に離間した上壁部14A及び下壁部14Bと、該上壁部14Aと下壁部14Bとを連結する前壁部14Cとにより、車両側面視で断面U字形に形成されている。なお、図3に示される例では、差込み部14は、例えば車幅方向の両側にも開口している。差込み部14の形状はこれに限られるものではなく、図4に示されるように、車幅方向の両側に横壁部14Dを設け、車両後方側のみが車両後方に開口するように構成してもよい。
【0031】
図3,図4,図8(A)に示されるように、ランプ本体20の下部前端には、車両上下方向に離間した上壁部44A及び下壁部44Bと、該上壁部44Aと下壁部44Bとを車両上下方向に連結する後壁部44Cとにより、車両側面視で車両前方側に開口する断面U字形の差込み部44が設けられている。この差込み部44は、レンズ22側の差込み部14の上壁部14Aに対して、該上壁部14Aを挟み込むように嵌め込まれている。
【0032】
差込み部44の下壁部44Bと差込み部14の下壁部14Bとの間には、ランプ下部取付け部材16の一端16Aが差し込まれている。図1に示されるように、ランプ下部取付け部材16は、例えば金属製の部材であり、一端16Aが車両後方側(車両前後方向における車両中央側)から差込み部14に差し込まれ、他端16Bがヘッドランプ10より車両下方のバンパリインフォースメント42に固定されている。
【0033】
ランプ下部取付け部材16において、一端16Aと他端16Bとは、車両後方に向かうに従って車両斜め上方に延びる一般部16Cにより連結されている。この一般部16Cの後端に一端16Aが設けられ、該一般部16Cの前端に他端16Bが設けられている。
【0034】
補足すると、一般部16Cの後端からは、車両上方に後壁部16Dが延びており、該後壁部16Dの上端から車両前方に、一端16Aが板状に突出形成されている。これにより、一端16Aは、一般部16Cの後端部を車両上方側かつ車両前方側に折り返した鉤爪状に形成されている。
【0035】
ランプ下部取付け部材16の他端16Bは、バンパリインフォースメント42の後面に沿うように形成されている。この他端16Bには、バンパリインフォースメント42に対する締結用のボルト(図示せず)を通すための貫通孔16Eが設けられている。そしてランプ下部取付け部材16の他端16Bは、一端16Aよりも車両後方側(車両前後方向における車両反中央側)において、バンパリインフォースメント42の後面に固定されている。
【0036】
図6に示されるように、下部結合手段としての差込み部14及びランプ下部取付け部材16は、車両上方からの衝突荷重F1に対してはバンパリインフォースメント42とヘッドランプ10との結合状態を維持するように構成されている。また図10に示されるように、差込み部14及びランプ下部取付け部材16は、車両前方(車両前後方向)からの衝突荷重F2に対しては、ランプ下部取付け部材16の一端16Aが差込み部14から離脱することで、バンパリインフォースメント42とヘッドランプ10との結合状態を解除可能に構成されている。
【0037】
図1に示されるように、バンパリインフォースメント42の前面下部には、例えばウレタン樹脂等の衝撃吸収材46が取り付けられている。またヘッドランプ10におけるレンズ22の下部からバンパリインフォースメント42及び衝撃吸収材46等を覆うように、バンパカバー48が取り付けられている。
【0038】
なお、ランプ下部取付け部材16は、金属板を折曲げ成形したものであってもよく、また鋳造や鍛造により製造したものであってもよい。
【0039】
(作用)
本実施形態は、上記のように構成されており、以下その作用について説明する。図5において、本実施形態に係るランプ取付け構造Sでは、例えばヘッドランプ10の車両上方のフロントフード32に対して衝突体50が衝突し、該フロントフード32に対して車両上方からの衝突荷重F1が入力されると、該フロントフード32が変形してラジエータサポート26に当接し、該ラジエータサポート26とヘッドランプ10とが結合されている上側結合部23へ車両上方からの衝突荷重F1が伝達される。
【0040】
図2,図7(A)に示されるように、この上側結合部23におけるランプ上部ステー24の縦壁部24Aには、脆弱部12が設けられているので、図7(B)に示されるように、車両上方からの衝突荷重F1が入力されると、ランプ上部ステー24の縦壁部24Aが脆弱部12において折れ曲がると共に破断し、図6に示されるように、ヘッドランプ10の上部がラジエータサポート26から離脱する。ヘッドランプ10の重心28は、下側結合部40よりも、車両後方側(車両前後方向における車両中央側)に位置しているので、ヘッドランプ10の上部がラジエータサポート26から離脱すると、該ヘッドランプ10は、自重及び車両上方からの衝突荷重F1により、下側結合部40を中心として車両下方へ矢印A方向に回転変位する。このようにヘッドランプ10が回転変位することで、フロントフード32の変形ストロークを増加させて、衝突エネルギーの吸収性を確保することができる。
【0041】
一方、図8(A)に示されるように、ヘッドランプ10の下部とバンパリインフォースメント42とが結合される下側結合部40には、該ヘッドランプ10とバンパリインフォースメント42(図6)との結合状態を維持する下部結合手段として、差込み部14及びランプ下部取付け部材16が設けられており、車両上方からの衝突荷重F1が入力された場合でも、該差込み部14及びランプ下部取付け部材16によりヘッドランプ10の下部とバンパリインフォースメント42との結合状態は維持される。
【0042】
具体的には、図8(B)に示されるように、ランプ下部取付け部材16の一端16Aがヘッドランプ10の下部の差込み部14に車両後方側(車両前後方向における車両中央側)から差し込まれ、該ランプ下部取付け部材16の他端16Bがヘッドランプ10より車両下方のバンパリインフォースメント42に固定されているので、上記したように、ヘッドランプ10が下側結合部40を中心として車両下方へ矢印A方向に回転変位しようとしても、ランプ下部取付け部材16の一端16Aと、例えばレンズ22側の差込み部14の下壁部14B及びランプ本体20側の差込み部44の下壁部44Bとが夫々干渉することから、ランプ下部取付け部材16の一端16Aが差込み部14から容易に離脱することはない。
【0043】
言い換えれば、ランプ下部取付け部材16の一端16Aが鉤爪状に形成されているので、車両上方からの衝突荷重F1の入力によりヘッドランプ10が車両下方へ回転変位する際に、ランプ下部取付け部材16の一端16Aがヘッドランプ10の下部の差込み部14から離脱し難い。これにより、バンパリインフォースメント42及びランプ下部取付け部材16によるヘッドランプ10の支持状態が持続するため、該ヘッドランプ10の部位において衝突荷重F1の一部をより効率的に受け持つことができる。
【0044】
またランプ下部取付け部材16は、例えば金属製であるので、図9に示されるように、車両上方からの衝突荷重F1の入力によりヘッドランプ10が車両下方へ回転変位する際に、該ランプ下部取付け部材16自体が変形することで、衝突エネルギーを持続的に吸収することができる。言い換えれば、金属製のランプ下部取付け部材16を大変形させるためには、比較的大きな荷重が必要となるので、持続的なエネルギー吸収が可能となる。
【0045】
この際、本実施形態では、下側結合部40がヘッドランプ10の重心28よりも車両前方側(車両前後方向における車両反中央側)に位置しており、更にランプ下部取付け部材16の他端16Bが、下側結合部40に位置する一端16Aよりも更に車両前方側(車両前後方向における車両反中央側)においてバンパリインフォースメント42に固定されているので、車両上方からの衝突荷重F1の入力によりヘッドランプ10が車両下方へ回転変位する際に、下側結合部40に作用するモーメントが大きくなる。このため、金属製のランプ下部取付け部材16であっても、容易に変形させることができる。このため、ヘッドランプ10の変位ストローク、更にはフロントフード32の変形ストロークをより大きく確保することができる。
【0046】
次に、図10において、車両18に対して相手車両52等が前面衝突した際の作用について説明する。このような前面衝突が生じた場合、バンパカバー48及び衝撃吸収材46を介してバンパリインフォースメント42に車両前方(車両前後方向)からの衝突荷重F2が入力される。
【0047】
ここで、図11(A)に示されるように、下側結合部40においては、ランプ下部取付け部材16の一端16Aがヘッドランプ10の下部の差込み部14に車両後方側(車両前後方向における車両中央側)から差し込まれ、ランプ下部取付け部材16の他端16Bがバンパリインフォースメント42の後面に結合されているので、図10に示されるように、該バンパリインフォースメント42に車両前方(車両前後方向)からの衝突荷重F2が入力された際には、該バンパリインフォースメント42と共にランプ下部取付け部材16も車両後方側(車両中央側)に変位する。
【0048】
すると、図11(B)に示されるように、ランプ下部取付け部材16の一端16Aが、ヘッドランプ10の下部の差込み部14から矢印R方向に離脱する。これにより、下側結合部40におけるヘッドランプ10とランプ下部取付け部材16との結合状態が解除されるので、車両前方(車両前後方向)からの衝突荷重F2がバンパリインフォースメント42からランプ下部取付け部材16を介してヘッドランプ10へ伝達されることを抑制することができる。即ち、本実施形態では、車両前方(車両前後方向)からの衝突荷重F2が入力された際におけるヘッドランプ10への影響を抑制することが可能である。
【0049】
これに加えて、本実施形態では、ランプ下部取付け部材16の他端16Bが、一端16Aよりも車両前方側(車両前後方向における車両反中央側)においてバンパリインフォースメントに固定されているので、車両前方(車両前後方向)からの衝突荷重F2がバンパリインフォースメント42に入力された際に、ヘッドランプ10の下側結合部40において、下部取付け部材の一端16Aをヘッドランプ10の下部の差込み部14からより早期に離脱させることができる。このため、ヘッドランプ10への影響をより一層抑制することができる。
【0050】
なお、車両上下方向におけるランプ下部取付け部材16の一端16Aと他端16Bとの高さ位置の差は、できるだけ小さいことが望ましい。車両前方(車両前後方向)からの衝突荷重F2によるモーメントが小さくなるので、一端16Aと差込み部14とのこじれ等の可能性を低減でき、該一端16Aを差込み部14からより安定的に離脱させることができるからである。
【0051】
上記したように、本実施形態に係るランプ取付け構造Sによれば、車両上方からの衝突荷重F1が入力された際における衝突エネルギーの吸収性を確保しつつ、車両前方(車両前後方向)からの衝突荷重F2が入力された際におけるヘッドランプ10への影響を抑制することが可能である。
【0052】
なお上記実施形態においては、ランプの一例としてヘッドランプ10を挙げたが、これに限られず、例えばリヤコンビネーションランプにも適用可能である。また結合解除手段の一例として脆弱部12を挙げたが、これに限られず、車両上方からの衝突荷重F1が入力された際に、ヘッドランプ10を車体から離脱させることができる構成であれば、どのような手段を用いてもよい。
【0053】
更に、ヘッドランプ10の上部が結合される車体の一例として、ラジエータサポート26を挙げたが、これはラジエータサポート26に限られるものではなく、ヘッドランプ10の上部を結合するのに適した車体部分であれば、他の部位であってもよい。
【0054】
またヘッドランプ10の下部が結合される車体の一例として、バンパリインフォースメント42を挙げたが、これはバンパリインフォースメント42に限られるものではない。ランプ下部取付け部材16の一端16Aを下側結合部40における差込み部14からより早期に離脱させる観点から、該差込み部14よりも車両前方に配置されている車体部位であることが望ましい。本発明をリヤコンビネーションランプに適用する場合には、リヤバンパリインフォースメント(図示せず)が好適である。
【0055】
更に、ランプ下部取付け部材16を金属製であるものとしたが、ランプ下部取付け部材16の材質はこれに限られるものではなく、合成樹脂等を用いてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0056】
【図1】ランプ取付け構造を示す断面図である。
【図2】ランプ上部ステーの縦壁部に設けられた脆弱部を示す拡大斜視図である。
【図3】下側結合部におけるヘッドランプのレンズ及びランプ本体と、該レンズの下部に設けられた差込み部と、ランプ下部取付け部材とを示す分解斜視図である。
【図4】図3における差込み部の変形例を示す分解斜視図である。
【図5】フロントフードに衝突体が衝突して、車両上方からの衝突荷重が入力され、上側結合部におけるランプ上部ステーが脆弱部において折れ曲げっている状態を示す断面図である。
【図6】ランプ上部ステーの変形が脆弱部において破断し、ヘッドランプが下側結合部を中心として車両下方へ回転変位した状態を示す断面図である。
【図7】(A)通常時の上側結合部の構成を示す、図1の部分拡大断面図である。(B)ランプ上部ステーの変形が脆弱部において破断した状態を示す、図6の部分拡大断面図である。
【図8】(A)通常時の下側結合部の構成を示す、図1の部分拡大断面図である。(B)ヘッドランプが回転変位しても差込み部からランプ下部取付け部材の一端が離脱しない状態を示す、図6の部分拡大断面図である。
【図9】車両上方からの衝突荷重に対し、ランプ下部取付け部材自体が変形することで、衝突エネルギーを持続的に吸収している状態を示す断面図である。
【図10】相手車両等が車両に前面衝突して、車両前方(車両前後方向)からの衝突荷重が入力された際に、バンパリインフォースメントと共にランプ下部取付け部材が車両後方側(車両中央側)に変位することで、該ランプ下部取付け部材の一端が差込み部から離脱した状態を示す断面図である。
【図11】(A)通常時の下側結合部の構成を示す、図1の部分拡大断面図である。(B)ランプ下部取付け部材の一端が差込み部から離脱した状態を示す、図10の拡大断面図である。
【符号の説明】
【0057】
10 ヘッドランプ(ランプ)
12 脆弱部(結合解除手段)
14 差込み部(下部結合手段)
16 ランプ下部取付け部材(下部結合手段)
16A 一端
16B 他端
18 車両
23 上側結合部
24 ランプ上部ステー
26 ラジエータサポート(車体)
28 重心
40 下側結合部
42 バンパリインフォースメント(車体)
F1 車両上方からの衝突荷重
F2 車両前方からの衝突荷重(車両前後方向からの衝突荷重)
S ランプ取付け構造
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両の前後方向における端部に設けられたランプと、
該ランプの上部と車体とが結合される上側結合部に設けられ、車両上方からの衝突荷重に対して前記ランプを前記車体から離脱させる結合解除手段と、
前記ランプのうち車両前後方向において該ランプの重心より車両反中央側の下部と前記車体とが結合される下側結合部に設けられ、車両上方からの衝突荷重に対しては前記車体との結合状態を維持し、車両前後方向からの衝突荷重に対しては前記車体との結合状態を解除可能な下部結合手段と、
を有することを特徴とするランプ取付け構造。
【請求項2】
前記下部結合手段として、
前記ランプの前記車両反中央側の下部に設けられ、車両前後方向における車両中央側に開口した差込み部と、
一端が車両前後方向における車両中央側から前記差込み部に差し込まれ、他端が前記ランプより車両下方の車体に固定されたランプ下部取付け部材と、
を有することを特徴とする請求項1に記載のランプ取付け構造。
【請求項3】
前記ランプ下部取付け部材は、金属製であることを特徴とする請求項2に記載のランプ取付け構造。
【請求項4】
前記ランプ下部取付け部材の前記一端は、鉤爪状に形成されていることを特徴とする請求項2又は請求項3に記載のランプ取付け構造。
【請求項5】
前記ランプ下部取付け部材の前記他端は、前記一端よりも車両前後方向における車両反中央側においてバンパリインフォースメントに固定されていることを特徴とする請求項2から請求項4の何れか1項に記載のランプ取付け構造。
【請求項1】
車両の前後方向における端部に設けられたランプと、
該ランプの上部と車体とが結合される上側結合部に設けられ、車両上方からの衝突荷重に対して前記ランプを前記車体から離脱させる結合解除手段と、
前記ランプのうち車両前後方向において該ランプの重心より車両反中央側の下部と前記車体とが結合される下側結合部に設けられ、車両上方からの衝突荷重に対しては前記車体との結合状態を維持し、車両前後方向からの衝突荷重に対しては前記車体との結合状態を解除可能な下部結合手段と、
を有することを特徴とするランプ取付け構造。
【請求項2】
前記下部結合手段として、
前記ランプの前記車両反中央側の下部に設けられ、車両前後方向における車両中央側に開口した差込み部と、
一端が車両前後方向における車両中央側から前記差込み部に差し込まれ、他端が前記ランプより車両下方の車体に固定されたランプ下部取付け部材と、
を有することを特徴とする請求項1に記載のランプ取付け構造。
【請求項3】
前記ランプ下部取付け部材は、金属製であることを特徴とする請求項2に記載のランプ取付け構造。
【請求項4】
前記ランプ下部取付け部材の前記一端は、鉤爪状に形成されていることを特徴とする請求項2又は請求項3に記載のランプ取付け構造。
【請求項5】
前記ランプ下部取付け部材の前記他端は、前記一端よりも車両前後方向における車両反中央側においてバンパリインフォースメントに固定されていることを特徴とする請求項2から請求項4の何れか1項に記載のランプ取付け構造。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2009−78689(P2009−78689A)
【公開日】平成21年4月16日(2009.4.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−249244(P2007−249244)
【出願日】平成19年9月26日(2007.9.26)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成21年4月16日(2009.4.16)
【国際特許分類】
【出願日】平成19年9月26日(2007.9.26)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】
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