説明

リアクター環境条件の制御

本開示は、一般に化学、生物学、および/または生化学リアクターチップおよび/またはマイクロリアクターシステムなどの反応システム、ならびにそのようなシステムを構成および使用する方法に関する。一部の場合には、湿度制御物質は、有益に高速度のガス交換を提供するために利用される。湿度制御物質は、所定の場合には少なくとも適正かつ所定の実施形態では優れた、小さな容積を有するシステムのためのガス交換を提供するために使用できる。一部の場合には、本発明の開示する物質には、所定のポリマー、例えば、ポリ(アルキルアセチレン)などのポリ(アセチレン)が含まれる。ポリマーは、一部の例では、少なくとも部分的にハロゲン化(例えば、フッ素化)され得る。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願)
本出願は、Rodgersらによる「Control of Reactor Environmental Conditions」という発明の名称の2004年6月7日に出願された米国仮特許出願番号第60/577,985号(本明細書中に参照として援用される)の利益を主張する。
【0002】
(発明の分野)
本発明は、一般に化学、生物学、および/または生化学リアクターチップおよび/またはマイクロリアクターシステムなどの反応システムに関するが、特に、湿度制御物質を有する化学、生物学、および/または生化学リアクターチップに関する。
【背景技術】
【0003】
(背景)
化学的および/または生化学的反応の生成物を生成するために、多種多様な反応システムが公知である。触媒反応を含む化学プラント、生化学発酵槽、医薬品製造プラント、および他の多数のシステムは周知である。生化学的加工処理は、目的の物質を製造するために生きている微生物(例えば、細胞)の使用を含み得る。
【0004】
細胞は、様々な理由のために培養される。ますます多く、細胞はそれらが産生するタンパク質または他の貴重な物質のために培養されている。多くの細胞は、制御された環境などの特定条件を必要とする。栄養素の存在、酸素および/または二酸化炭素などの代謝ガス、湿度、ならびに温度などの他の因子は細胞増殖に影響を及ぼす可能性がある。細胞は増殖するための時間を必要とし、その間は好都合の条件が維持されなければならない。特定の細菌細胞を用いるなどの一部の場合には、細胞培養は早ければ24時間で成功を達成できる。特定の哺乳動物細胞などの他の場合には、培養に成功するには約30日間以上を必要とすることがある。
【0005】
代表的には、細胞培養は細胞増殖のために適合する上に必要な栄養素を含有する培地中で実施される。細胞は、一般には環境条件を制御できるインキュベーターなどの場所で培養される。インキュベーターのサイズは、伝統的には、少数の培養のための小型インキュベーター(例えば、約1立方フィート)から所望の環境条件を注意深く維持できる1部屋全体あるいは複数の部屋までの範囲に及ぶ。
【0006】
最近、本明細書中に参照として援用される2001年3月9日に出願されたJuryらによる“Microreactor”と題する2001年9月20日に特許文献1として公開された、国際特許出願PCT/US01/07679の中で記載されるように、細胞は極めて小規模(すなわち、およそ2、3mL以下)でも培養されているため、その結果、とりわけ、多くの培養を平行して実施できる。だが当該分野において理解されているように、そのように小規模システムでの細胞生存性および増殖のために適切な培養条件を提供かつ維持することは極めて困難な可能性がある。そのような小規模バイオリアクターを製造するために利用される代表的な材料は、例えば、栄養ガス(例えば、Oおよび/またはCO)に対する低透過性、培養培地の液体量の損失を引き起こす水蒸気に対する高透過性ならびに浸透圧および溶存物質濃度などにおける付随する有害な変化などのために、所望の培養条件を確立かつ維持するために理想的には適合していない。
【特許文献1】国際公開第01/68257号パンフレット
【発明の開示】
【課題を解決するための手段】
【0007】
(発明の要旨)
本開示には、化学、生物学、および/または生化学リアクターチップおよび/または湿度制御物質を有するマイクロリアクターシステムなどの反応システムの詳細が含まれている。一部の場合には、湿度制御物質は、選択されたガスについての有益に高速度のガス交換を提供する。湿度制御物質は、所定の場合には、小さな容積を有するシステムのために少なくとも適正なガス交換を提供するために使用できる。本発明の内容は、一部の場合には、相互に関係のある生成物、特定の問題についての代替解決策、ならびに/あるいは1つまたは複数のシステムおよび/または物品の複数の相違する使用を含んでいる。
【0008】
1セットの実施形態では、規定反応部位を含む基材、および該規定反応部位に隣接して配置された物質を備える装置が開示される。1つの実施形態では、その物質は、以下:
【0009】
【化17】

ここで、nは少なくとも1であり、そしてRおよびRは各々、独立して1個の原子を含む、構造を含むポリマーを含んでいる。所定の場合には、同時にRはメチルではなく、Rはトリメチルシリルではない。
【0010】
また別の実施形態では、その物質は、以下:
【0011】
【化18】

ここで、nは少なくとも1であり、そしてR、R、R、およびRは各々、独立して1個の原子を含む構造を含むポリマーを含んでいる。所定の場合には、同時にRはHではなく、RはHではなく、RはHではなく、そしてRはHでもなければ、以下:
【0012】
【化19】

ここで、mは0〜3を含むの整数である構造を有してもいない。
【0013】
さらにまた別の実施形態では、その物質は、以下:
【0014】
【化20】

ここで、nは少なくとも1であり、そしてR、R、R、およびRは各々、独立して水素、ハロゲン、または炭素含有部分である構造を含むポリマーを含んでいる。所定の場合には、R、R、R、またはRのうちの少なくとも1つは、例えば、フッ素などのハロゲンを含む炭素含有部分である。
【0015】
さらにまた別の実施形態では、その物質は、以下:
【0016】
【化21】

ここで、nは少なくとも1であり、そしてRおよびRは各々、独立して1個の原子を含む構造を含むポリマーを含んでいる。所定の場合には、RまたはRのうちの少なくとも1つは、例えば、フッ素などのハロゲンを含む炭素含有部分であり得る。
【0017】
一部の場合には、規定反応部位は、約1mL未満の容積を有することがある。特定の例では、基材は、規定反応部位内で少なくとも1個の生きている細胞を維持するように構成および配置することができる。所定の実施形態では、規定反応部位に隣接して配置された物質は、湿度制御物質を含んでいる。
【0018】
また別のセットの実施形態では、一連の方法が開示される。1セットの実施形態では、本方法は以下:
【0019】
【化22】

ここで、nは少なくとも1であり、そしてRおよびRは各々、独立して1個の原子を含む構造を含むポリマーを含んでいる物質の近位で少なくとも1個の生きている細胞を培養する工程を含んでいる。所定の場合には、同時にRはメチルではなく、Rはトリメチルシリルではない。
【0020】
また別のセットの実施形態では、本方法は以下:
【0021】
【化23】

ここで、nは少なくとも1であり、そしてR、R、R、およびRは各々、独立して1個の原子を含んでいる)を含むポリマーを含んでいる物質の近位で少なくとも1個の生きている細胞を培養する工程を含んでいる。一部の場合には、同時にRはHではなく、RはHではなく、RはHではなく、そしてRはHでもなければ、以下:
【0022】
【化24】

ここで、mは0〜3を含む整数である構造を有してもいない。
【0023】
さらにまた別のセットの実施形態では、本方法は以下:
【0024】
【化25】

ここで、nは少なくとも1であり、そしてR、R、R、およびRは各々、独立して水素、ハロゲン、または炭素含有部分である構造を含むポリマーを含んでいる物質の近位で少なくとも1個の生きている細胞を培養する工程を含んでいる。所定の場合には、R、R、R、またはRのうちの少なくとも1つは、例えば、フッ素などのハロゲンを含む炭素含有部分である。
【0025】
さらにまた別のセットの実施形態では、本方法は構造:
【0026】
【化26】

ここで、nは少なくとも1であり、そしてRおよびRは各々、独立して1個の原子を含んでいる構造を含むポリマーを含んでいる物質の近位で少なくとも1個の生きている細胞を培養する工程を含んでいる。所定の場合には、RまたはRのうちの少なくとも1つは、例えば、フッ素などのハロゲンを含む炭素含有部分である。
【0027】
一部の場合には、規定反応部位は、約1mL未満の容積を有し得る。特定の例では、基材は規定反応部位内で少なくとも1個の生きている細胞を維持するように構成および配置することができる。所定の実施形態では、規定反応部位に隣接して配置された物質は、湿度制御物質を含んでいる。
【0028】
さらに、例えば、本明細書に記載の任意の実施形態において記載したチップおよび/または反応システムを作製する方法も開示される。さらに、例えば、本明細書に記載の任意の実施形態において記載したチップおよび/または反応システムを使用する方法も開示される。さらに、例えば、本明細書に記載の任意の実施形態において記載したチップおよび/または反応システムを促進し、製造し、使用し、そして/または販売する方法も開示される。
【0029】
本発明のその他の利点および新規な特徴は、添付の図面を結び付けて考察すると、本発明の様々な非限定的実施形態についての以下の詳細な説明から明白になる。本明細書および本明細書中に参照として援用された文書が相反し、そして/または矛盾する開示を含む場合は、本明細書が優先される。本明細書中に参照として援用された2つ(またはそれ以上)の特許出願が相互に相反し、そして/または矛盾する開示を含んでいる場合は、後から出願された特許出願が優先される。
【0030】
以下では、略図であって縮尺で記載することは意図されていない添付の図面を参照しながら、本発明の非限定的実施形態について説明する。図面では、図示されている同一またはほぼ同一の構成要素は各々、代表的には単一の数字で表されている。当業者が本発明を理解するのに図示を必要としない場合は、明瞭にするために、各図面における全部の構成要素は表示されておらず、同様に図示した本発明の各実施形態の全部の構成要素は表示されていない。
【発明を実施するための最良の形態】
【0031】
(詳細な説明)
本開示は、一般に化学、生物学、および/または生化学リアクターチップおよび/またはマイクロリアクターシステムなどの反応システム、ならびにそのようなシステムを構成および使用する方法に関する。一部の場合には、湿度制御物質は、有益に高速度のガス交換を提供するために利用される。湿度制御物質は、所定の場合には少なくとも適正な、および所定の実施形態では優れた、小さな容積を有するシステムのためのガス交換を提供するために使用できる。一部の場合には、現在開示する物質には、所定のポリマー、例えば、ポリ(アルキルアセチレン)などのポリ(アセチレン)が含まれる。ポリマーは、一部の例えば、少なくとも部分的にハロゲン化(例えば、フッ素化)されていてよい。所定の実施形態では、チップおよび/または反応システムは、その中での細胞増殖を促進できるように構築されてよい。一部の実施形態では、チップは、1個または複数の反応部位を含むことができる。反応部位は、例えば、約1mL未満の容積を備えるように、極めて小さくてよい。所定の実施形態では、反応システムは、1つまたは複数のセンサー、アクチュエーター、プロセッサ、および/または制御システムを使用することによって、温度、圧力、CO濃度、O濃度、相対湿度、pHなどの、1個または複数の反応部位に関連する環境因子を検出し、測定し、そして/または制御することもできる。所定の実施形態では、本開示は、例えば、反応システムとともに使用するための、湿度および/またはガス制御を行う物質およびシステムを開示する。そのような材料は、高酸素透過性および/または低水蒸気透過性を有し得る。所定の実施形態では、開示した装置は、反応システムにおいて使用するために適合する光相互作用構成要素を使用できる。これらの構成要素は、導波管、光ファイバー、光源、光検出器、光学素子などを含むことができる。
【0032】
本発明を実施するために有用または有用な可能性がある、関連する以下の主題および/または開示している方法および/または装置および/または物質に関する本願と同一所有権者による以下の各々の出願は、本明細書中に参照として援用される:2000年11月7日に出願されたJuryらによる“Microreactor”と題する米国特許出願第09/707,852号;2001年9月20日にWO01/68257として公開されたJuryらによる“Microreactor”と題する2001年3月9日に出願された国際特許出願公開PCT/US01/07679;2003年4月24日に2003/0077817として公開されたZarurらによる“Microfermentor Device and 細胞 Based Screening Method”と題する2002年4月10日に出願された米国特許出願第10/119,917号;2004年3月25日に2004/0058437として公開されたRodgersらによる“Materials and Reactor Systems having Humidity and Gas Control”と題する2003年6月5日に出願された米国特許出願第10/457,049号;2004年3月25日に2004/0058407として公開されたMillerらによる“Reactor Systems Having a Light−Interacting Component”と題する2003年6月5日に出願された米国特許出願第10/457,015号;2004年7月8日に2004/0132166として公開されたMillerらによる“Determination and/or Control of Reactor Environmental Conditions”と題する2003年9月16日に出願された米国特許出願第10/664,046号;2005年2月3日に2005/0026134として公開されたMillerらによる“Systems and Methods for Control of pH and Other Reactor Environmental Conditions”と題する2003年9月16日に出願された米国特許出願第10/664,068号;2005年2月10日に2005/0032204として公開された Rodgersらによる“Microreactor Architecture and Methods”と題する2003年9月16日に出願された米国特許出願第10/664,067号;Rodgersらによる“Control of Reactor Environmental Conditions”と題する2004年6月7日に出願された米国特許出願第60/577,985号;2005年2月17日に2005/0037485として公開されたRodgersらによる“System and Method for Process Automation”と題する2004年6月7日に出願された米国特許出願第10/863,585号;2005年1月27日に2005/0019904として公開されたZarurらによる“Apparatus and Method for Manipulating Substrates”と題する2004年6月7日に出願された米国特許出願第10/863,584号;2005年2月3日に2005/0026273として公開されたZarurらによる“Reactor with Memory Component”と題する2004年6月7日に出願された米国特許出願第10/863,636号;Rodgersらによる“Gas Control in a Reactor”と題する2004年6月7日に出願された米国特許出願第60/577,977号;Johnsonらによる“Reactor Mixing”と題する2004年6月7日に出願された米国特許出願第60/577,986号;Zarurらによる“Rotatable Reactor Systems and Methods”と題する2004年8月27日に出願された米国特許出願第10/927,789号;およびMillerらによる“Inlet Channel Volume in a Reactor”と題する2004年9月14日に出願された米国特許出願第60/609,721号。
【0033】
所定の実施形態では、本開示は、その中のガスまたは湿度を制御できる、チップなどの装置に関する。一部の実施形態では、本明細書に開示した装置は、湿度制御装置をチップ、または例えば、化学的もしくは生化学的反応を実施し、そして/または細胞を培養するために使用される他の装置内へ受動的に組み込むことを可能にする。1つの実施形態では、湿度制御または維持は、任意で酸素透過性に比較して低い水透過性を備える湿度制御装置および/または被膜の形状で本装置に提供することができる。本明細書で使用する「湿度制御装置」は、酸素、二酸化炭素、および/または窒素などの所定のガスがチップ(または他の装置)に流入することを許容するが、チップ(または他の装置)内への水蒸気の通過は阻害する装置である。湿度制御装置は、チップ(または他の装置)内への少量の水蒸気の通過は許容する可能性があるが、上記に列挙したうちの1つまたは複数のガスのような少なくとも1つの他のガスほど多量の水蒸気がチップ内へ進入するのは許容しない。例には、膜および薄膜(例えば、2mm未満の厚さを有する薄膜)が含まれるが、それらに限定されない。一部の実施形態では、湿度制御装置は、チップもしくは他の装置の壁として、または反応基装置または反応部位の壁の内側のような壁の中に配置できる。他の実施形態では、湿度制御装置は、それが1個または複数の反応部位と流体連絡しているように配置されてよい。一部の実施形態では、チップ内の反応部位の各々は、湿度制御装置に隣接していてよいし、そして/または湿度制御装置と流体連絡していてよい。
【0034】
本明細書に開示した湿度制御装置は、それを通るガスの通過を最大化し、そして/または水蒸気の通過を最小限に抑えるように設計された湿度制御物質を含むことができる。湿度制御物質は、酸素および/または二酸化炭素などの所定の所望のガスの通過を許容できるが、他方では例えば、水蒸気などの他のガスの通過を阻害する。本明細書に開示した湿度制御物質は、チップ、反応システム、または他の装置における湿度制御装置として使用するために適切であり得る;しかし、限定されないが、これらの物質は酸素および/または他のガスの通過を許容しながら、水蒸気または他の特定のガスを閉じ込めたり閉め出したりしなければならない任意の場所に使用することができる。例えば、本明細書に開示した湿度制御物質は、温室または創傷被覆材において有用であり得る。
【0035】
1セットの実施形態では、湿度制御物質はポリマーを含んでいる。ポリマーは、例えば、ポリ(アセチレン)および/またはポリ(2−アルキルアセチレン)などのポリ(アルキルアセチレン)を含むことができる。ポリ(2−アルキルアセチレン)の例には、ポリ(2−ヘキシン)、ポリ(2−ヘプチン)、ポリ(2−オクチン)、ポリ(2−ノニン)、ポリ(2−デシン)、ポリ(2−ウンデシン)などが含まれるが、それらに限定されない。1つの実施形態では、ポリ(アセチレン)は、以下:
【0036】
【化27】

ここで、nは少なくとも1である。RおよびRは各々、独立して任意の原子および/または官能基、例えば、水素、ハロゲンもしくは擬ハロゲン、アルキル、アリール、アルキルアリール、アリールアルキル、環状基、水酸化物、アルコール、チオール、カルボン酸、シリルなどを含み得る構造を含んでいる。以下では、これらの一部について詳細に説明する。例えば、Rおよび/またはRは、各々が独立して水素、または例えば、プロピル、ペンチル、ヘキシル、ヘプチル、オクチル、ノニル、デシル、ウンデシルなどの直鎖状アルキルであってよい。所定の場合には、ポリ(アセチレン)は、ポリ(1−トリメチルシリル−1−プロピン)以外である。すなわち、同時にRはメチルではなく、Rはトリメチルシリルではない。所定の場合には、RおよびRはどちらもHではない。
【0037】
また別の実施形態では、ポリマーは、以下:
【0038】
【化28】

ここで、nは少なくとも1である。R、R、R、およびRは各々、例えば、上述したような任意の原子および/または官能基であり得る構造である。1つの特定の場合には、同時にRはHではなく、RはHではなく、RはHではなく、そしてRはHでもなければ、以下:
【0039】
【化29】

ここで、mは0〜3を含む整数である構造を有してもいない。
【0040】
一部の実施形態では、ポリマーは、例えば、フッ素のようにハロゲン化(すなわち、少なくとも1個のハロゲン原子を含む)されている。非限定的例には、フッ素化ポリ(アセチレン)、フッ素化ポリ(アルキルアセチレン)、塩素化ポリ(アセチレン)、塩素化ポリ(アルキルアセチレン)、フッ素化ポリ(アセチレン)および塩素化ポリ(アセチレン)、フッ素化ポリ(アルキルアセチレン)および塩素化ポリ(アルキルアセチレン)などが含まれる。ハロゲン化ポリマーは、例えば、フッ素化ポリマーの上昇した疎水性のために、例えば、湿度制御物質の水蒸気透過性を低下させるために有用であり得る。1個または複数のハロゲン原子を含んでいてよいポリ(2−アルキルアセチレン)の例には、ポリ(2−ヘキシン)、ポリ(2−ヘプチン)、ポリ(2−オクチン)、ポリ(2−ノニン)、ポリ(2−デシン)、ポリ(2−ウンデシン)などが含まれるが、それらに限定されない。1つの実施形態では、ポリマーは、以下:
【0041】
【化30】

ここで、nは少なくとも1であり、そしてR、R、R、またはRのうちの少なくとも1つはハロゲン(単独で、または例えば、炭素含有部分のような他の原子と結び付いて)、例えば、フッ素、塩素、臭素などを含んでいる。R、R、R、およびRは各々、独立して任意の原子および/または官能基、例えば、水素、ハロゲンもしくは擬ハロゲン、アルキル、アリール、アルキルアリール、アリールアルキル、環状基、水酸化物、アルコール、チオール、カルボン酸、シリルなどを含む構造である。一部の場合には、R、R、R、またはRのうちの1つまたは複数は、例えば、フッ素原子などのハロゲンで飽和され得る。
【0042】
1つの例として、R、R、R、およびRのうちの1つは構造:
【0043】
【化31】

ここで、mは0より大きいか0に等しい整数であり、この構造内の1個または複数の炭素原子はそれに結合した1個または複数のハロゲン原子を有している。すなわち、mが0であれば、この構造は次のようになり、
【0044】
【化32】

そしてA、A、A、A、A、A、A、A、またはAの少なくとも1つは、ハロゲン原子、例えば、フッ素、塩素、臭素などである。
【0045】
また別の実施形態では、ポリマーは、以下:
【0046】
【化33】

ここで、nは少なくとも1である。そしてRおよびRの各々は、独立して、RまたはRの少なくとも1つがハロゲン、またはハロゲン原子(単独で、または他の原子、例えば、炭素含有部分と結び付いて)、例えば、フッ素、塩素、臭素などを含む炭素含有部分であるような原子を含む構造である。RおよびRは、独立して任意の原子および/または官能基、例えば、水素、ハロゲンもしくは擬ハロゲン、アルキル、アリール、アルキルアリール、アリールアルキル、環状基、水酸化物、アルコール、チオール、カルボン酸、シリルなどを含んでいてよい。一部の場合には、R、R、R、またはRのうちの1つまたは複数は、例えば、フッ素原子などのハロゲンで飽和され得る。
【0047】
1つの実施形態では、RまたはRの少なくとも1つは、ケイ素原子を含んでいる。例えば、ポリマーは、以下:
【0048】
【化34】

ここで、R、R、R、またはRのうちの少なくとも1つは、ハロゲン、例えば、フッ素、塩素、臭素などを含む構造である。例えば、R、R、R、またはRは、フッ素などのハロゲン、ハロゲン化アルキルなどのハロゲンを含む炭素含有部分などであってよい。
【0049】
上述したポリマーの一部を形成するために有用なモノマーは、例えば、GFS Chemicals,Inc.(オハイオ州パウェル)、あるいはLancaster Synthesis,Inc.(ニューハンプシャー州ウィンダム)から市販で入手可能である。モノマーを重合するために適切な技術は当業者には公知であるか、または公知の技術に慣例的な改変を加える必要はなく、例えば、Pinnau I.ら、“Influence of Side−Chain Length on the Gas Permeation Properties of Poly(2−alkylacetylenes)”, Macromolecules,37(8):2823−2828,2004に記載されている。例えば、MoClおよび/またはPhSnを使用すると、上記に開示したポリマーを製造するために有用な所定の重合反応を触媒することができる。
【0050】
本明細書で使用する用語「ハロゲン」、または同等の「ハロゲン原子」には、化学の分野で使用される通常の意味が与えられている。ハロゲンは、フッ素、塩素、臭素、ヨウ素、およびアスタチンであり、任意の荷電状態および/または電子配置を有していてよい。一部の実施形態では、ポリマーは、フッ素、塩素、臭素、またはヨウ素を含む1個または複数のハロゲン原子を含んでいる。所定の場合には、ポリマーは、フッ素、塩素、および臭素;フッ素および塩素;塩素および臭素、または単一型のハロゲン原子を含んでいる。
【0051】
本明細書で使用する場合、「アルキル」には、有機化学の分野において使用される通常の意味が与えられている。本発明を実施するために有用なアルキル(すなわち、脂肪族)部分は、任意の広範囲の数の炭素原子、例えば、1〜25個の炭素原子、1〜20個の炭素原子、1〜15個の炭素原子、1〜10個の炭素原子、または1〜5個の炭素原子を含有していてよい。一部の場合には、アルキル部分は、少なくとも1個の炭素原子、少なくとも3個の炭素原子、少なくとも5個の炭素原子、または少なくとも10個の炭素原子を含有している;他の場合には、アルキル部分は多くとも10個の炭素原子、多くとも5個の炭素原子、または多くとも3個の炭素原子を含有する。
【0052】
アルキル部分内の炭素原子は、アルキル部分内の任意の配置で、例えば、直鎖状(すなわち、メチル、エチル、プロピル、ブチル、ペンチル、ヘキシル、ヘプチル、オクチル、ノニル、デシル、ウンデシルなどのn−アルキル)または分枝状,すなわち少なくとも3個の炭素原子(例えば、t−ブチル部分、イソプロピル部分もしくはイソブチル部分などのイソアルキル部分)に共有結合している少なくとも1個の炭素原子が存在する鎖として配置され得る。アルキル部分は、単結合だけを含有していてよいか、または例えば、アルケン、アルキン、アルカジエン、アルカジイン、アルケニンなどのその構造内に1つまたは複数の二重および/または三重結合を含有していてよい。一部の場合には、アルキル部分は炭素および水素原子しか含有していない;しかし他の場合には、アルキル部分は1つまたは複数の置換基も含有していてよく、すなわち非炭素および非水素部分がアルキル部分内に存在していてよい。例えば、所定の場合には、アルキル部分は置換基としてのハロゲン、アルコキシ部分(例えば、メトキシもしくはエトキシ)、アミン部分(例えば、第1級、第2級、または第3級アミン)、カルボニル(例えば、アルデヒドおよび/またはケトン)または水酸化物を含んでいる。アルキル部分内に2つ以上の置換基が存在する場合は、それらの置換基は各々同一であっても相違していてもよい。
【0053】
同様に、本明細書で使用する場合、「環状」部分には、有機化学の分野において使用される通常の定義が与えられている、すなわち、少なくとも1個の原子の環を含有する部分であり、そして2個以上の原子の環を含有し得る。すなわち、環状部分は、末端を有していない少なくとも1個の原子の鎖を有している。この鎖は、例えば、環内に配置された3、4、5、6、7、8、9、または10個以上の原子を有していてよい。一部の場合には、環状部分は多くとも10個の原子、多くとも8個の原子、または多くとも7個の原子の最大サイズを有している。一部の場合には、環状部分は炭素および水素原子だけを有し得る;しかし、他の場合には、原子は、炭素原子の他に、窒素原子、酸素原子、硫黄原子、ケイ素原子、または少なくとも2個の相違する原子へ共有結合できる他の任意の原子(すなわち、「複素環」部分)も含み得る。環状部分が2つ以上の環を含有する場合は、環は相互に対して任意の方向に配置することができる。例えば、環は縮合(すなわち、少なくとも2個の環は、例えば、二環式部分、三環式部分などにおけるように2個以上の原子を共有している)、スピロ(すなわち、2個の環は1個の原子だけを共有している)であってよく、1つの環は他方の環上の置換基であってよく、2つ以上の環はアルキル部分などを介して結合されていてよい。
【0054】
環状部分は、飽和環状部分(すなわち、シクロペンチル部分、シクロヘキシル部分、シクロヘプチル部分、シクロオクチル部分などの任意の二重もしくは三重結合を含有していない部分)または不飽和環状部分(すなわち、シクロアルケニル部分、シクロアルキニル部分、芳香族部分などの少なくとも1つの二重もしくは三重結合を含有する部分)であってよい。「芳香族」部分には、当技術分野において使用される通常の意味が与えられている、すなわち一部の電子が環の中で非局在化されている少なくとも1つの環を有する部分である。例えば、芳香族部分は、ベンゼン部分、ナフタレニル部分、アントラセニル部分、ピリジニル部分、フラニル部分などを含むことができる。同様に、「非芳香族」構造は、環状部分の芳香族性が存在していない構造である。例えば、非芳香族環状構造は、飽和環状構造、シクロペンテニル部分もしくはシクロヘキセニル部分などのシクロアルケニル部分、シクロオクチニル部分もしくはシクロデシニル部分などのシクロアルキニル部分であってよい。
【0055】
環状部分は、所定の場合には、例えば、環状部分内の環へ結合した1つまたは複数の置換基を含むことができる。置換基は、アルキル部分、例えば、フッ素などのハロゲン、アルコキシ、アミン、カルボニル、水酸化物などと結び付けて上記で説明したような任意の置換基であってよい。所定の場合には、環状部分上の置換基は、上記で説明したアルキル部分(それ自体が他の環状部分を含む1つまたは複数の置換基を含んでいてよい)であってよい。
【0056】
一部の場合には、湿度制御物質は、例えば、コポリマー、ポリマー混合物、少なくとも1つの層内に上述したポリマーを含む多層構造におけるように、上述したものに加えてモノマーまたはポリマーを含むことができる。湿度制御物質中に使用できるポリマーの非限定的例には、上述したポリマーに加えて、ポリテトラフルオロエチレン(例えば、TEFLON(登録商標)AFなどの、例えば、デラウェア州ウィルミントンに所在するDuPont社製のTEFLON(登録商標)の商標を付けて販売されている物質)もしくは所定の非晶質フルオロポリマーなどのポリフルオロ有機物質;ポリスチレン;ポリプロピレン(「PP」);ポリジメチルシロキサンなどのシリコーン;ポリスルホン;ポリカーボネート;ポリメチルアクリレートおよびポリメチルメタクリレートなどのアクリル樹脂;高密度ポリエチレン(「HDPE」)、低密度ポリエチレン(「LDPE」)、直鎖状低密度ポリエチレン(「LLDPE」)、超低密度ポリエチレン(「ULDPE」)などのポリエチレン;PET;ポリ塩化ビニル(「PVC」)物質;ナイロン;熱可塑性エラストマー;ポリ(1−トリメチルシリル−1−プロピン)(「PTMSP」);などが挙げられる。また別の例は、ポリ(4−メチルペンテン−l)またはポリ(4−メチル−1−ペンテン)もしくはポリ(4−メチル−2−ペンチン)(「PMP」):
【0057】
【化35】

である。
【0058】
PMPの例には、Mitsui Plastics社(ニューヨーク州ホワイトプレーンズ)によりTPX(商標)を付けて市販されているものが挙げられる。さらにまた別の例として、湿度制御物質には、ポリ(4−メチルヘキセン−l)、ポリ(4−メチルヘプテン−l)、ポリ(4−メチルオクテン−l)などが挙げられ得る。一部の場合には、これらの物質は共重合されてよいか、そして/または上述したポリマーと結び付けてポリマー混合物中にあってよい。
【0059】
一部の場合には、湿度制御物質中に使用されたポリマー(またはポリマーの混合物)は、そのポリマーが水を保持できるように、すなわち水蒸気がそのポリマーを通して容易に輸送され得ないように十分に疎水性であってよい。例えば、疎水性ポリマーを通る水の透過性は、約1,000(g・μm/m・日)、900(g・μm/m・日)、800(g・μm/m・日)、600(g・μm/m・日)以下であってよい。ポリマーを通る水の実際の透過性は、さらにまた相対湿度の関数であってよい。所定の実施形態では、湿度制御物質中に使用されるポリマーは、それを通る酸素の輸送を容易に可能にするために十分に開放している分子構造を有していてよい。
【0060】
また別のセットの実施形態では、湿度制御物質は、周囲条件下でそれを通る酸素の輸送を制限する構造をポリマーが容易に形成することを防止する嵩高い基を有するポリマーを含むことができる。本明細書で使用するポリマー上の「嵩高い基」は、周囲条件下で約250(cmSTP・mm/m・atm・日)より大きいそれを通る酸素の輸送を許容する結晶構造をポリマーが形成するために十分に大きい部分である。一部の場合には、酸素の輸送は、約500(cmSTP・mm/m・atm・日)超、約1,000(cmSTP・mm/m・atm・日)超、または約2,000(cmSTP・mm/m・atm・日)超であり得る。嵩高い基は、例えば、ポリマーの主鎖の一部および/または側鎖の一部であってよい。嵩高い側基の非限定的例には、シクロペンチル部分、イソプロピル部分、シクロヘキシル部分、フェニル部分、イソブチル部分、tert−ブチル部分、シクロヘプチル部分、トリメチルシリルもしくは他のトリアルキルシリル部分などを含有する基が挙げられる。一部の場合には、この部分はハロゲン化、例えば、上述したようにフッ素化、塩素化などされていてよい。1セットの実施形態では、ポリマーは、以下:
【0061】
【化36】

ここで、各Rは、独立して、少なくとも1個の原子を含み、Bkは嵩高い基である、構造である。一部の場合には、各Rは、独立して水素、ハロゲン、またはアルキル基であってよい。一部の場合には、Bkはハロゲン化されている。例えば、Bkは、1個または複数のフッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子などを含んでいてよい。2個以上のハロゲン原子が存在する場合は、ハロゲン原子は同一であっても相違していてもよい。
【0062】
当然ながら、ポリマーは、本明細書に記載した特徴のいくつか、または全部を有している可能性があることが理解されるべきである。例えば、ポリマーは、ポリマーが水分を保持できるように十分な疎水性を有し、それでもそれを通る十分な酸素透過性を許容するために十分に開放した分子構造を有するポリマー混合物またはコポリマーであってよい。湿度制御物質が複数の層を含む場合には、それらの層の一部または全部は、一部の実施形態では各々が物質の混合物を含んでいてよい。例えば、1つの層は、1つの物質を重量で少なくとも50%を含み、残りは1つまたは複数の他の物質を含んでいてよい。また別の実施形態では、各層は本質的に単一物質からなる。
【0063】
1セットの実施形態では、湿度制御物質は、それを通るガスおよび/または水蒸気の通過を制御するために選択された膜もしくは薄膜の形状で含むことができ、そして/または製造することができる。1つの実施形態では、湿度制御装置は、1つまたは複数のガスの所望の透過性を有する膜もしくは薄膜である。膜もしくは薄膜は、一部の様式で1個または複数の反応部位へ影響を及ぼすことのできるチップ内の任意の場所に配置できる。例えば、膜もしくは薄膜は、それが1個または複数の反応部位の表面を規定するように配置することができる。
【0064】
1セットの実施形態では、本明細書に詳細に記載するように、膜もしくは薄膜は、例えば、複数の好気性呼吸細胞の細胞培養ができるようにそれを通る十分な酸素の輸送を許容しながら、約10μm超、一部の場合には約25μm超、一部の場合には約50μm超、一部の場合には約75μm超、一部の場合には、約100μm超、一部の場合には約150μm超、一部の場合には、約200μm超、一部の場合には約250μm超の厚さを有し得る。一部の場合には、約50μm超の厚さを有する膜もしくは薄膜は、例えば、チップまたは他の反応システムの製造中に特に有用であり得る。所定の実施形態では、膜は、約2mm未満、約1mm未満、約750μm未満、約500μm未満、約250μm未満、または約100μm未満の厚さを有し得る。
【0065】
一部の場合には、チップ、反応システム、もしくは他の装置の構造構成要素内へ湿度制御物質を組み込むこと、またはチップ、反応システム、もしくは他の装置の構造構成要素を湿度制御物質中に組み込むことが望ましい場合がある。湿度制御物質は、さらにまた湿度制御物質が支持体を提供もしくは補充することが意図されているか、またはそれ自体がさもなければ適正に支持されないであろう支持体層を含むこともできる。支持体層は、所望の支持体を提供する任意の1つまたは複数の物質を含むことができる。例えば、支持体層は、さもなければ透過性のために湿度制御物質中に含まれてよい層の1つを含んでいてよいか、または支持体層は、例えば、ガラス(例えば、ニューヨーク州コーニングに所在するCorning Glass社製のPYREX(登録商標)ガラス、またはインジウム/スズ被覆ガラス)、ラテックス、ケイ素などの様々な物質を含んでいてよい。支持体層は、湿度制御物質中の任意の場所に、例えば、外層もしくは中間層として配置することができ、そして1つまたは複数の精巧な層を保護するために役立つように配置することができる。一部の実施形態では、支持体層の使用は、反応部位、リアクター、またはチップの大部分、もしくはほぼ全部は湿度制御物質から構築され得る。好ましくは、支持体層は、湿度制御物質の透過性に有意には影響を及ぼさないか、または透過性における変化を湿度制御物質を設計する際に考慮に入れることができる。
【0066】
本発明のチップ、反応システム、または他の装置が、機能を損傷させるか、低下させるか、またはさもなければ湿度制御物質と反応する、もしくは劣化を引き起こす可能性がある反応物質などの物質とともに使用することが意図されている場合は、膜は保護層を含むことができる。保護層は、例えば、表面層として配置されてよいか、または湿度制御物質の感受性部分とそれに有害な影響を及ぼす可能性がある物質もしくは環境との間に挿入されてよい。例えば、保護層は、特に有害な物質がチップ内にある場合は湿度制御物質の内面上に、または特に有害な物質がチップの外側にある場合は湿度制御物質の外面上に配置されてよい。保護層は、さらにまた、それが保護機能を遂行できる限りは、他の層の間に配置されてもよい。好ましくは、保護層は、湿度制御物質の透過性に有意には影響を及ぼさない。一部の実施形態では、透過性における任意の変化は湿度制御物質を設計する際に考慮に入れることができる。
【0067】
非限定的実施例として、本発明の1つの実施形態による湿度制御装置を含むチップ140は図6Aに示されている。このチップは、反応部位142、入口144、出口146、および内壁148を含んでいる。内壁148は、湿度制御装置150によって一方の側面に規定されている。湿度制御装置150は、この実施形態では、第1層152および第2層154を有する膜を含んでいる。
【0068】
湿度制御装置を含むチップ140のまた別の実施形態は、図6Bに示されている。この実施形態では、湿度制御装置150は、反応部位142の壁を規定し、そして入口および出口の壁も規定する多層膜を含んでいる。主として所望の透過性を提供するために提供される第1層152および第2層154に加えて、この膜はさらに第1層152および第2層154の間に配置された支持体層156も含んでいる。透過性制御層および支持体層のための他の配列も可能である。この特定の実施例におけるチップ140においては、そこでの細胞増殖を促進するが入口144および出口146では促進しない、反応部位142の内壁148上に配置された細胞接着層158もまた提供されている。他の実施形態では、細胞接着層は、湿度制御装置150の表面を越えて、または全体に伸長できる。図6Aおよび6Bに示したチップ140の形状は例示するためだけに図示されており、特定の実施形態では多数の他の配列およびチップ形状が有用な可能性があることも理解されるべきである。
【0069】
1セットの実施形態では、所定の透過性および/または所定の透過度を有する湿度制御物質が選択される。本明細書で使用する物質の「透過性」には、当該分野において使用される通常の意味が与えられている。すなわち一般にガスが物質を通過する能力を説明する内因性特性である。これとは対照的に、本明細書中で使用される物質の「透過度」は、物質のサンプルを通るガス輸送の実際速度、すなわち外因性特性である。サンプル物質の透過度は、材料の面積もしくは厚さ、材料の内外の圧力差などの因子によって影響を受ける。
【0070】
酸素の制御は本明細書での例として使用されるが、その代わりに窒素もしくは二酸化炭素などの他のガスを上述した透過性で制御できるか、またはガスの組み合わせを制御できることを理解されたい。さらに、以下で詳述する細胞の例えば、酸素輸送の下限および水蒸気輸送の上限は代表的には他の用途、例えば、化学合成作業においては制御するのが好ましいことがあるが、他のパラメーター、例えば、酸素輸送の上限および水蒸気輸送の下限、または窒素もしくは二酸化炭素などの他のガスの下限および上限を制御するのが望ましいことがあることも理解されたい。
【0071】
本明細書に開示した湿度制御物質は、多種多様な反応および相互作用において使用することができる。反応の1つの例は、例えば、細胞培養を維持するため、入手できる細胞または細胞タイプの数を増加させるため、および/または所望の細胞生成物を生成するための細胞培養である。一部の場合には、湿度制御物質は、例えば、好気性呼吸細胞の細胞増殖を支持するためにそれを通過する拡散によって十分な酸素が進入するのを許容できる。所定の場合には、湿度制御物質は、微生物にとって高度に不透過性であってよく、そして例えば、他の細胞が汚染するのを防止することもできる。好ましくは、物質は低毒性を有する。
【0072】
本明細書に開示したチップ、反応システム、または他のシステムが細胞を培養する工程と結び付けて使用される実施形態では、培養される細胞および当業者には公知の他の要素に依存して、細胞培養は様々な長さの期間にわたって行われることがある。従って、チップの設計および湿度制御物質の性質は、培養期間に適合させることができる。例えば、チップもしくは湿度制御物質は、培養のために必要とされる時間にわたって所望の機能的特性を維持できるように設計することができ、そして湿度制御物質は好ましくは多数回にわたり再使用できるように設計される。様々な実施形態では、細胞培養は、24時間、48時間、1週間、2週間、4週間、6週間、3カ月間、1年間、継続的、または特定細胞培養のために必要とされる任意の他の時間にわたり実施することができる。
【0073】
一部の場合には、所定の細胞、例えば、好気性細胞を培養するために容認できる範囲に対応する1つまたは複数のガスに対する透過性および/または透過度を有する湿度制御物質が選択される。例えば、湿度制御物質は、特定細胞タイプの細胞培養を許容するために、十分に高い酸素に対する透過性および/または透過度、ならびに/あるいは十分に低い水蒸気に対する透過性および/または透過度を有していてよい。そのような透過性の例には、上述した透過性が含まれる。当業者は、特定の細胞および細胞株、ならびに微生物細胞、哺乳動物細胞、組織、組織操作構築物などのより大きな細胞群の培養に成功するために適切な所定物質の透過性の特定範囲を同定することができる。
【0074】
従って、1つの実施形態では、所定の細胞の酸素要件および湿度要件を同定する工程、細胞の酸素要件を満たすために十分に高い酸素透過性および細胞の湿度要件を満たすために十分に低い水蒸気透過性を有する物質を選択する工程と、およびそのような実施形態のためにチップ、反応システム、または反応部位を含む他の装置内で細胞を培養する工程を包含する。反応部位は、選択された物質から形成された少なくともその一部分を有する。
【0075】
一部の実施形態では、湿度制御物質は細胞接着を促進しないが、広範囲の親水性、細胞親和性、および/または生物保存能物質のいずれかであってよい細胞接着層を含むことができる(または細胞接着層を物質上に提供できる)。湿度制御物質上の細胞接着層のために適合し得る物質の例には、ポリフルオロ有機物質、ポリエステル、PDMS、ポリカーボネート、ポリスチレン、および酸化アルミニウムが挙げられるが、それらに限定されない。また別の例として、湿度制御物質は、例えば、RGDペプチド配列を用いて、細胞接着を促進する物質でコーティングされた層を含むことができる。一部の実施形態では、例えば、付着、結合、浸漬、または他の処理によって細胞接着層の表面を修飾するのが望ましいことがある。細胞接着を促進する代表的分子には、フィブロネクチン、ラミニン、アルブミン、またはコラーゲンなどが挙げられるが、それらに限定されない。物質が細胞接着層を含む場合は、細胞接着層は膜の内層または表面層として配置でき、チップの内層などと接することができる。好ましくは、細胞接着層は、湿度制御物質の透過性または透過度に顕著には影響を及ぼさない。一部の場合には、透過性または透過度における任意の変化は湿度制御物質の設計において考慮に入れることができる。
【0076】
湿度制御物質を形成するために使用される物質の一部、および一部の場合には、その層の一部は、例えば、上述したように、物質のガス透過性に基づいて選択することができる。当業者は、物質のガス透過性を決定する方法を認識している。1つの特定の方法として、公知の露出面積および厚さを有する物質(例えば、膜)のサンプルは、2つの区画内に配置することができ、そして1つの区画内にはガス(または液体)を配置できる。実験によって決定されたガス(または液体)がその物質を越えて他の区画へ拡散して適切な様式で検出するために要する時間は、標準的な周知の数学的輸送関係によって物質のガス(または液体)の透過性に関係付けることができる。(例えば、本明細書に開示した所定の装置の実施形態の製造および遂行に適用される所定のそのような数学的輸送関係の考察および適用については実施例4〜6を参照)。
【0077】
一部の実施形態では、湿度制御物質、またはその層もしくは部分の面積および厚さを使用すると、所望の程度の透過度および/または透過性を選択できる。1つの例として、水蒸気透過性が高い物質ほどより厚く作製することができるか、または湿度制御が所望である区域もしくは領域に達し、そして/または区域もしくは領域から離れる水蒸気の量を減少させるためにその面積を減少させることができる。一部の場合には、物質は、それが約10μm〜2mmの厚さであるように設計できる。この範囲内で、物質の複数の層または部分内の層の相対厚さは変動してもよい。
【0078】
1つの実施形態では、透過性の目標は、物質の2つの層または部分を結合することによって達成できる。これは、例えば、第1の高透過性の層、および第2の低透過性の層を含むことによって達成できる;他の実施形態では、多数の層もまた使用できる。相違する物質を結合し、それらの相対厚さを調整することによって、所望の酸素および水蒸気透過性を達成できる。湿度制御物質が2つの層または部分を含む1つの実施形態では、それらは同一または相違する物質のポリマーから形成することができる。例えば、湿度制御物質は、第1ポリマーもしくはコポリマーの重量で少なくとも約55%を含む第1層ならびに第1ポリマーもしくはコポリマーの重量で約45%以下を有する第2層を含むことができる。また別の例として、湿度制御物質は、第1ポリマーもしくはコポリマーの重量で少なくとも約60%、約70%、または約80%を含む第1層および第1ポリマーもしくはコポリマーの重量で約40%、約30%、または約20%以下を有する第2層を含むことができる。一部の実施形態では、第1ポリマーは約100%の第1層を含んでおり、本質的に第2層を全く含んでいないことがある。一部の場合には、第1層の少なくとも一部分は第2層と共重合させることができる。
【0079】
湿度制御物質が2つ以上の層を含む膜として構築されている場合は、2つ以上の層は、膜に十分な強度を提供する任意の様式で結合することができる。一部の場合には、2つ以上の層は十分に自己支持性であり、層を結合することが必要ではないことがあり、所望の場合にはそれらの間に空間が残されてよいことを意味する。他の実施形態では、膜を支持するために追加の層を使用できる。相互支持を提供するために2つ以上の層を結合することが所望である実施形態において、あるいは層を結合する容認可能な手段の例には、層を一緒に積層する工程、層を少なくとも部分的に混合する工程、および層を一緒に共重合する工程が含まれる。層を混合しなければならない場合は、各層を形成する樹脂は、膜を形成する前に部分的または完全に混合することができる。例えば、液体プレポリマーを混合し、次に硬化剤を添加することができるか、またはそれらの間に硬化剤を用いて2つの部分硬化層を結合して、層を一緒に硬化させることができる。
【0080】
一部の実施形態では、本明細書に開示した湿度制御物質は光線がそれらを通過するのを許容する。これは、光線が、例えば、光触媒反応などの反応を促進するか、細胞増殖もしくは植物の成長を促進するか、生化学的変化が発生するのを誘発するなどのために光線が重要である場合にこれらの材料を使用することを許容する。これらの物質は、湿度制御物質によって保護されている、または湿度制御領域の背部に配置されている反応部位などの領域の観察を許容することもできる。1つの実施形態では、湿度制御物質は透光性であり、そして一部の場合には、少なくとも実質的に透明性である。当業者は、様々な程度の透光性および透明性があること、そして特定の用途に基づいて所望の特性を選択できることを認識する。
【0081】
以下では、本発明の理解に役立つであろう様々な定義を提供する。以下の、図面の説明を含む、詳細な開示もまたこれらの定義とともに組み入れられる。以下の図面に示した構成要素は、一般に図1の層2と結び付けて使用できる。図1では、そして他の図面のすべてにおいて、反応部位の配列、反応部位の数、反応部位をアドレスするチャネルの配列、ポートなどは、本発明の全体に含まれる実施例として単に提供されていることを理解されたい。
【0082】
本明細書で使用する「化学、生物学、または生化学リアクターチップ」(さらに、同等に、単純に「チップ」とも呼ばれる)は、1つまたは複数のリアクターを含む統合製品である。「統合製品」は、単一ピースの材料、または相互に一体的に接続された構成要素の組立体を意味する。本明細書で使用する用語「一体的に接続された」は、2つ以上の物体に関する場合は、通常の使用の経過中には相互から分離されることがない、すなわち手動で分離できない物体を意味する;分離は少なくとも工具の使用、および/または構成要素の少なくとも1つに対する破損を引き起こすこと、例えば分解させる、剥離させる(接着剤、工具などを介して一緒に締め付けられた構成要素を分離する)ことを必要とする。
【0083】
チップは、全反応システム、例えば高スループットシステムを規定する大規模フレームワークに接続、または挿入することができる。このシステムは、主として、他のチップ、シャーシ、カートリッジ、カセット、および/または大規模機械または導管もしくはチャネルのセット、反応物質源、細胞タイプ、および/または栄養素、入口、出口、センサー、アクチュエーター、および/または制御装置によって規定できる。代表的には、チップは一般に、平坦もしくは平面状の物品(すなわち、他の寸法に比較して相当に小さい1つの寸法を有する)であってよい;しかし、一部の場合には、チップは非平面状の物品であってよい、例えば、チップは立方体の形状、湾曲平面、中実形もしくはブロック形などを有していてよい。
【0084】
本明細書で使用する「膜」は、代表的には寸法の1つが実質的に他の寸法より小さい形状を有する、露出している、または露出できる環境において少なくとも1つの物質が透過性である物質の薄いシートである。一部の場合には、膜は、一般に柔軟性または非剛性であってよい。1つの例として、膜は、およそ数mm、数cm以上の長さおよび幅、ならびに1mm未満、および一部の場合には、100μ未満、10μm未満、または1μ以下の厚さを備える長方形または円形物質であってよい。膜は反応部位および/またはリアクターの一部分を規定できる、または膜は反応部位を実質的に同一または相違している容積または寸法を有していてよい2つ以上の部分に分割するために使用できる。膜が透過性であり得る物質の非限定的例には、水、O、COなどが含まれる。1つの例として、膜は水の約1,000(g・μm/m・日)、900(g・μm/m・日)、800(g・μm/m・日)、600(g・μm/m・日)以下の透過性を有し得る;膜を通る水の実際の透過性はさらにまた一部の場合には相対湿度の関数であり得る。
【0085】
一部の膜は、少なくとも1つの種に関して膜が透過性であるが、しかし少なくとも1つの他の種に関しては容易に透過性ではないことを当業者が認識する半透過性膜であり得る。例えば、半透過性膜は酸素がそれを越えて透過することを許容するが、水蒸気が透過することは許容しない可能性があるか、または水蒸気がそれを越えて、しかし少なくとも酸素に対してよりも小さな程度である速度で透過することを許容する可能性がある。または、水がそれを越えて透過するのを許容するが、所定のイオンが透過するのを許容しない半透過性膜を選択することもできる。例えば、膜はカチオンには透過性であり、アニオンには実質的に不透過性であってよいか、またはアニオンには透過性であり、カチオンには実質的に不透過性であってよい(例えば、カチオン交換膜およびアニオン交換膜)。また別の例として、膜は約1キロダルトン超、10キロダルトン超、または100キロダルトン超の分子量を有する分子には実質的に不透過性であってよい。1つの実施形態では、膜は、細胞には不透過性であってよいが様々な選択された物質には透過性であるように選択できる;例えば、膜は、栄養素、タンパク質および細胞、老廃物などによって生成された他の分子には透過性であってよい。他の場合には、膜は、ガス不透過性であってよい。一部の膜は、特定の光線(例えば、赤外線、紫外線、または可視光線;膜を利用する装置が相互作用する波長の光線;他に特に記載していない場合は可視光線)には透明性であってよい。膜が実質的に透明性である場合は、50%以下の光線を吸収する、または他の実施形態では、本明細書でより完全に記載するように、光線の25%以下または10%以下を吸収する。一部の場合には、膜は半透過性および実質的に透明性の両方であってよい。膜は、1つの実施形態では、第2部分、例えば、リザーバーから細胞培養を支持するために構成および配置された反応部位を分割するために使用できる。例えば、反応部位は、3つの部分、4つの部分、または5つの部分に分割できる。例えば、反応部位は、第1細胞培養部分および第1細胞培養部分に隣接する第2細胞培養部分、ならびに一方は膜によって第1細胞培養部分から分離され、他方は膜によって第2細胞培養部分から分離される2つの追加のリザーバー部分に分割することができる。当然ながら、当業者は、本明細書に記載したように様々な数の細胞培養部分、リザーバー部分などを有する他の配置を設計することができるであろう。
【0086】
本明細書で使用する「実質的に透明性」の物質(例えば、膜)は、一部の場合にはその物質に入射した放射線の大半が変化せずにその物質を通過するように、そして一部の実施形態では少なくとも約75%、他の実施形態では少なくとも約80%、さらにまた他の実施形態では少なくとも約90%、さらにまた他の実施形態では少なくとも約95%、さらにまた他の実施形態では少なくとも約97%、およびさらにまた他の実施形態では少なくとも約99%の入射放射線が変化せずにその物質を通過できるように、電磁放射線を伝送できる物質である。所定の場合には、この物質は、例えば、上述したような反応部位内で発生する物理的、化学的、生化学的、および/または生物学的反応を促進および/または監視するために必要な程度まで、上述した波長範囲内の電磁放射線にとって少なくとも部分的に透明性である。他の実施形態では、この物質は反応部位内の細胞を監視し、観察し、促進し、そして/または制御するために必要な程度まで上述した波長範囲内で電磁放射線にとって透明性であり得る。一部の場合には、この物質は赤外線から紫外線(可視光線を含んでいる)範囲内、および特に約400nm〜410nmから約1,000nmの波長範囲の入射電磁放射線にとって実質的に透明性である。一部の場合には、この物質は約400nm〜410nmから約800nmの波長範囲内の電磁放射線にとって透明性であってよく、そして一部の実施形態では、この物質は約450nm〜700nmの波長の放射線にとって実質的に透明性であり得る。
【0087】
本明細書で使用する「リアクター」は、一緒に、反応部位での生物学的、化学的、および/または生化学的反応、相互作用、操作、または実験を含み、促進し、そして/または監視するために作動そ、そしてチップの一部であり得る反応部位、任意のチャンバー(反応チャンバーおよび補助チャンバーを含む)、チャネル、ポート、入口および/または出口(すなわち、反応部位へ、または反応部位から通じている)、センサー、アクチュエーター、プロセッサ、制御装置、膜などを含む構成要素の組み合わせである。例えば、チップは少なくとも5、少なくとも10、少なくとも20、少なくとも50、少なくとも100、少なくとも500、または少なくとも1,000個以上のリアクターを含むことができる。リアクターの例としては、化学もしくは生物学リアクターおよび細胞培養装置、ならびに本明細書中に参照として援用される2001年9月20日にWO01/68257として公開されたJuryらによる“Microreactor”と題する2001年3月9日に出願された国際特許出願PCT/US01/07679に記載されたリアクターが含まれる。リアクターは、1個または複数の反応部位または区画を含むことができる。リアクターは、例えば、細胞増殖、医薬品製造、化学合成、危険な化学薬品製造、薬物スクリーニング、物質スクリーニング、新薬開発、戦争試薬の化学的改善などの任意の化学的、生化学的、および/または生物学的目的に使用することができる。例えば、リアクターを使用すると、細胞または組織の極めて小規模の培養を促進することができる。1セットの実施形態では、本発明のリアクターは、例えば、およそ数十もしくは数百μmの寸法を備えるチャネルを含有する、数mm〜数cmのサイズのマトリックスまたは基質を含んでいる。目的の試薬は、これらのチャネルを通って、例えば、反応部位へ、または様々な反応部位間を流動させることができ、そして試薬は何らかの方法で混合または反応させることができる。そのような反応の生成物は、所定の場合にはリアクターまたはチップ内で回収し、分離し、そして処理することができる。
【0088】
本明細書で使用する「反応部位」は、リアクターの使用中に物理的、化学的、生化学的、および/または生物学的反応を生成させるために構成および配置されているリアクター内の部位であると規定されている。一部の場合には、リアクターまたはチップ内には2個以上の反応部位が存在することがあり、例えば、少なくとも1個の反応部位、少なくとも2個の反応部位、少なくとも3個の反応部位、少なくとも4個の反応部位、少なくとも5個の反応部位、少なくとも7個の反応部位、少なくとも10個の反応部位、少なくとも15個の反応部位、少なくとも20個の反応部位、少なくとも30個の反応部位、少なくとも40個の反応部位、少なくとも50個の反応部位、少なくとも100個の反応部位、少なくとも500個の反応部位、または少なくとも1,000個以上の反応部位がリアクターまたはチップ内に存在することがある。反応部位は、反応が生じ得る領域であると規定できる;例えば、リアクターはチャネル内、1つまたは複数の区画内、2つ以上のチャネルの交点で反応を誘発させるために構成および配置することができる。反応は、例えば、混合または分離プロセス、2つ以上の化学薬品間の反応、光活性化もしくは光阻害反応、生物学的プロセスなどであってよい。一部の実施形態では、反応は化学変化を導かない光線との相互作用を含むことがあり、例えば、光線の光子は反応部位と結び付いている物質によって吸収され、熱エネルギーに転換されるか、または蛍光として再放射されることがある。所定の実施形態では、反応部位はさらにまた1つまたは複数の細胞および/または組織を含むこともできる。従って、一部の場合には、反応部位は細胞をリアクター内に配置できる場所を取り囲んでいる領域、例えば、リアクター内の細胞親和性領域であると規定できる。
【0089】
一部の場合には、細胞を含有する反応部位は、反応部位が液体で完全に満たされていない場合は、ガスを含有する領域(例えば、「ガスヘッドスペース(gas head space)」)を含むことができる。ガスヘッドスペースは、一部の場合には、ガス透過性もしくは半透過性膜を使用することにより、反応部位から部分的に分離することができる。一部の場合には、ガスヘッドスペースは、温度および/または他の反応条件を監視するための様々なセンサーを含むことができる。
【0090】
本明細書に開示した装置の多数の実施形態および配置は、チップまたはリアクターを参照しながら記載しているが、当業者であれば、本明細書に開示した手段をその一方または両方に適用できることを理解する。例えば、チャネル配置は一方の文脈において説明されるが、その配置は他方の文脈において(または、代表的には両方:チップの一部であるリアクター)適用され得ることが理解されるべきである。本明細書の「チップ」または「リアクター」の定義の状況における配列の説明と矛盾しない限り、リアクターまたはチップの文脈において与えられる本明細書のすべての説明は他方の文脈に適用できると理解される。
【0091】
本明細書で使用する用語「決定する工程」は、一般に、例えば、定量的もしくは定性的な(例えば、反応部位内の)物質の測定および/または分析、あるいは物質の存在もしくは非存在の検出に関する。「決定する工程」は、さらにまた例えば、定量的もしくは定性的な、2つ以上の物質間の相互作用の測定および/または分析、または相互作用の存在もしくは不在の検出にも関する。「決定する工程」に適合する技術の例には、重量分析、熱量測定、圧力もしくは温度測定、赤外線、吸収、蛍光、紫外線/可視光線、FTIR(「フーリエ変換赤外分光法」)、またはラマン分光法などの分光法;重量分析技術;偏光解析法;圧電測定法;免疫測定;電気化学的測定;光学密度測定などの光学的測定;円偏光二色性;準電気的(quasielectric)光散乱法などの光散乱測定;旋光分析法;屈折率測定法;または比濁法を含む混濁度測定法が含まれるが、それらに限定されない。
【0092】
以下では本明細書に開示した所定の装置の代表的な特徴をより詳細に説明する。図1を参照すると、1つの実施形態によるチップの一部分が略図で示されている。図示された部分は一連の空間を含んでいる層2であり、層2が2つの層(図示されていない、図1の平面に対して上層および下層)の間に配置されている場合は、一連の閉鎖チャネルおよび反応部位を規定する。層2の中の全体の配置は、チップを形成するために構築され得る、他の図面を参照して以下の説明からより明白に理解される。
【0093】
図1は、6個の反応部位4(例えば、以下で説明する図3Aの反応部位125、または図4Aの反応部位112に類似する)を含む実施形態を表している。反応部位4は、所定の実施形態では、層2を規定する物質の比較的薄く、概して平面的な部分内で概して配置された細長い丸みを帯びた一連の長方形の空隙を規定することができる。反応部位4には、種を反応部位4へ送達するためのチャネル6および反応部位から種を除去するためのチャネル8を含む一連のチャネルによってアドレスすることができる。当然ながら、チャネルの任意の組み合わせを使用すると、反応部位から種を送達および/または除去することができる。例えば、チャネル8を使用すると反応部位へ種を送達することができ、他方チャネル6を使用すると種を除去することなどができる。図1においては線として示されているが、チャネル6および8は、他の層の上方および/または下方で被覆された場合は封鎖されたチャネルとなる層2内の空隙を規定すると理解できる。チャネル6および8の各々は、図1に示した実施形態では、ポート9によってアドレスされる。ポート9が入口チャネルに接続されている場合は、それは入口ポートを規定することができ、出口チャネルに流体接続されている場合は、それは出口ポートを規定することができる。図示した実施形態では、ポート9は、幅がチャネル6または8の幅より大きい空隙である。当業者は、ポート9にアクセスし、それらを利用して種をチャネル内に導入し、そして/またはそれらのポートによってアドレスされたチャネルから種を除去するための様々な技術を理解する。1つの例として、ポート9は、ポート9の少なくとも片側が、針がその物質を通して挿入されたり抜去されたりするとポートを介してチップ内へ導入されたり除去されたりする流体などの種にとって概して不透過性のシールを形成する物質の層(図示されていない)によって被覆された場合は、針(以下でより十分に説明する)によってアドレス可能な「セルフシール」ポートであってよい。
【0094】
さらに図1には、任意の入口チャネル、出口チャネル、またはチップの反応部位と流体接続または接続可能でないと示される一連のポート15が示されている。ポート15は、層2内の空隙によって規定することができ、これらを使用するとチップの様々な層間および/または環境外部からチップへの流体接続を促進することができる。1つの例として、層2が様々な層内の複数の反応部位を含む多層チップの一部を形成する場合は、1セットの反応部位または導管を含む層2の片側(必要に応じて1つまたは複数の中間層によって分離された)にまた別の層を提供することができ、そして同様に所望であれば中間層によって分離された層2の反対側にまた別の層を提供することができ、そしてポート15は層2の反対側のチップ層の反応部位および/または導管の間の流体接続のための通路もしくは経路を規定することができる。ポート15は、さらにまた膜、例えば半透過性膜によって反応部位から分離された反応部位4を規定する区画と整列している区画と連絡しているチャネルに接続することもできる。この方法では、流体は独立して、一方または両方が区画および/または反応部位を規定する、膜の片側にあるスペース内へ流入し、スペースから流出し、そして/または通過することができる。
【0095】
図1では、各反応部位4は、関連した流体接続(例えば、チャネル6およびチャネル8、ポート9およびポート15)と一緒に、点線によって示されるようなリアクター14を規定する。図1では、層2は、6つのそのようなリアクターを含有しており、各リアクターは実質的に同一形状を有する。他の実施形態では、リアクターは2個以上の反応部位、チャネル、ポートなどを含むことができる。さらに、チップ層は、実質的に同一形状を有していないリアクターを有していてもよい。
【0096】
さらに図1には、チップが、層2をチップの他の層へ固定するために、そして/または層2と望ましくは結合されている他の層および/または他のシステムとの配置を確実にするために使用できる一連の装置16が示されている。装置16は、スクリュー、ポスト、くぼみ(すなわち、他の層もしくは装置の対応する突起部に適合する)などを規定できる。当業者は、層を本明細書に開示した他の層および/またはチップあるいはこれらのような装置を使用する他の構成要素またはシステムへ固定するために広範な適切な技術を知っている。
【0097】
一部の実施形態では、チップまたはリアクターなどの装置の反応部位は、幾何学的な考慮によって規定できる。例えば、反応部位は、リアクター内の区画、チャネル、2つ以上のチャネルの交点、または何らかの(例えば、リアクターおよび/またはチップを規定できる基材内に形成またはエッチングする)方法で規定された他の場所として規定することができる。反応部位を規定する他の方法もまた可能である。一部の実施形態では、反応部位は、例えば、2種以上の流体の交点または結合(例えば、1つもしくは数個のチャネル内での)によって、または例えば、流体流れを拘束するための表面上の隆起もしくは隆線を用いて、表面上に流体を拘束することによって人工的に作製することができる。他の実施形態では、反応部位は電気、磁気、および/または光学システムを通して規定することができる。例えば、反応部位は、光線と流体チャネルとの交点として規定できる。
【0098】
反応部位の容積は、所定の実施形態では極めて小さくてよい。詳細には、反応部位は、様々な実施形態では、1リットル未満、約100mL未満、約10mL未満、約5mL未満、約3mL未満、約2mL未満、約1mL未満、約500μL未満、約300μL未満、約200μL未満、約100μL未満、約50μL未満、約30μL未満、約20μL未満または約10μL未満の容積を有していてよい。反応部位は、所定の場合には約5μL未満、または約1μL未満の容積を有していてもよい。反応部位は、任意の便宜的サイズおよび/または形状を有していてよい。また別のセットの実施形態では、反応部位は深さ500μm以下、深さ200μm以下、または深さ100μm以下の寸法を有していてよい。
【0099】
一部の場合には、反応部位には細胞が存在していてよい。チップまたはリアクターと結び付けられたセンサーは、所定の場合には、細胞の数、細胞の密度、細胞の状況もしくは健康状態、細胞のタイプ、細胞の生理機能などを決定することができる。所定の場合には、リアクターは、例えば、化学反応または生きている細胞を支持できるような方法で、反応部位と結び付いている1つまたは複数の環境因子を維持または制御することができる。1セットの実施形態では、センサーは、反応部位内の環境因子における適切な変化をアクチュエーターおよび/またはマイクロプロセッサに接続することができる。アクチュエーターは外部ポンプに接続することができるか、アクチュエーターはリザーバーからの物質の放出を引き起こすことができるか、またはアクチュエーターは反応部位を加熱するか、あるいはそのエネルギーに対して感受性であるタイプの細胞を選択的に殺滅するための音波または電磁エネルギーを生成することができる。リアクターは、1つまたは2個以上の反応部位、および反応部位と結び付けられた1つまたは2つ以上のセンサー、アクチュエーター、プロセッサ、および/または制御システムを含むことができる。本明細書に開示した任意の反応部位またはセンサー技術は、他の反応部位およびセンサーの任意の組み合わせとの組み合わせで提供され得ることが理解される。
【0100】
本明細書で使用する「チャネル」は、例えば、以下で詳述するように、詳細には1つの場所から他の場所へ、例えば、リアクターまたはチップの入口から反応部位へ、1つまたは複数の流体を輸送できるリアクターおよび/またはチップと結び付いている(反応部位内、反応部位に通じる、または反応部位から離れる)導管である。物質(例えば、流体、細胞、粒子など)は、チャネルを通って、継続的に、無作為に、間欠的等に流動することができる。チャネルは、閉鎖チャネル、または開放している、例えば、リアクターまたはリアクターを含有するチップを取り囲んでいる外部環境に開放しているチャネルであってよい。チャネルは、流体輸送に対する制御を促進できる特性、例えば、構造的特性(例えば、細長いくぼみ)、物理的/化学的特性(例えば、疎水性対親水性)および/またはチャネル内にあるときに流体に力(例えば、保持力)を発揮できる他の特性を含むことができる。チャネル内の流体は、部分的または完全にチャネルを満たすことができる。一部の場合には、流体は、何らかの方法で、例えば、表面張力(すなわち、流体が凹状もしくは凸状メニスカスなどのメニスカス内のチャネル内に保持されるように)を使用して、チャネル内またはチャネルの一部分の中に保持または閉じ込めることができる。チャネルは、流体輸送を可能にする任意の適切な断面形、例えば、四角形チャネル、環状チャネル、円形チャネル、長方形チャネル(例えば、任意の縦横比を有する)、三角形チャネル、不規則形チャネルなどを有していてよい。チャネルは、リアクターまたはチップ内の任意のサイズであってよい。例えば、チャネルは一部の場合には約1,000μm未満、他の場合には約500μm未満、他の場合には約400μm未満、他の場合には約300μm未満、他の場合には約200μm未満、さらに他の場合には約100μm未満、さらに他の場合には約50もしくは25μm未満の、チャネル内の流体の流動方向に垂直な最大寸法を有していてよい。一部の実施形態では、チャネルの寸法は、例えば、流体が細胞を含有する場合は、流体がチャネルを通して自由に流動できるように選択することができる。チャネルの寸法は、例えば、所定の場合には、チャネル内での流体の所定の体積もしくは線形流量を許容するように選択することもできる。1つの実施形態では、流体の流動方向に垂直な他の最大寸法の深さは、それにチャネルが流体連絡している反応部位の深さと類似であってよい。当然ながら、チャネルの数、チャネルの形状もしくは幾何学、およびチップ内のチャネルの配置は、当業者であれば決定することができる。
【0101】
本明細書に開示したチップなどの装置は、さらにまた1つまたは複数のリアクターおよび/または反応部位に向けて方向付けられた様々な任意の反応物質、生成物、および/または流体を受け入れ、そして/あるいは排出できる複数の入口および/または出口を含むことができる。一部の場合には、入口および/または出口は、化合物の無菌輸送を可能にする。複数の入口および/または出口の少なくとも一部分は、装置内の1個または複数の反応部位と流体連絡していてよい。一部の場合には、入口および/または出口は、以下で詳細に説明するように、1つまたは複数のセンサーをさらに含有していてよい。本質的に、装置またはチップは、1つまたは複数のリアクターおよび/または反応部位と流体連絡していてよい1〜数万個の任意の数の入口および/または出口を有していてよい。生物学的または生化学的反応などの所定の反応のためには、リアクターおよび/または反応部位には、5もしくは10個未満の入口および/または出口を提供することができる。一部の場合には、各リアクターは約25個の入口および/または出口、他の場合には約50個の入口および/または出口、さらに他の場合には約75個の入口および/または出口、またはさらに他の場合には約100個の入口および/または出口を有することができる。
【0102】
1つの例として、1つまたは複数のリアクターおよび/または反応部位に方向付けられた装置の入口および/または出口は、ガスもしくは液体などの流体のため、例えば、老廃物流、反応物質流、生成物流、不活性ガス流などのための入口および/または出口を含んでいてよい。一部の場合には、装置は、リアクターおよび/または反応部位に流入または流出する流体がその中で発生する可能性がある反応を実質的に阻害しないように構成および配置することができる。例えば、流体は反応部位内で発生する化学的、生化学的、および/または生物学的反応における反応の速度に影響を及ぼさずに、または反応部位内に存在する可能性がある細胞を阻害および/または崩壊させずに、反応部位内に流入し、そして/または流出することができる。入口および/または出口ガスの例には、CO、CO、酸素、水素、NO、NO、水蒸気、窒素、アンモニア、酢酸などを含むことができるが、それらに限定されない。また別の例として、入口および/または出口流体は、その中に含有される液体および/または他の物質、例えば、水、生理食塩水、細胞、細胞培養培地、血液もしくは他の生体流体、抗体、pH緩衝剤、溶媒、ホルモン、炭水化物、栄養素、成長因子、治療薬(もしくは疑似治療薬)、消泡剤(例えば、泡および気泡の生成を防止するため)、タンパク質、抗体などが含まれてよいが、それらに限定されない。入口および/または出口流体は、一部の場合には代謝産物を含むことができる。本明細書で使用する「代謝産物」は、細胞によって代謝され得る任意の分子である。例えば、代謝産物は炭水化物もしくは糖などのエネルギー源、例えば、グルコース、フルクトース、ガラクトース、デンプン、コーンシロップなどであってよいか、またはそれらを含んでいてよい。他の代表的代謝産物には、ホルモン、酵素、タンパク質、シグナルペプチド、アミノ酸などが含まれる。
【0103】
入口および/または出口は、当業者に公知の任意の適切な方法、例えば、装置内またはチップの基材層などの装置の一部分の中にパンチング、ドリリング、モールディング、ミリングなどをされた穴もしくは開口部によって装置内に形成することができる。一部の場合には、入口および/または出口は、例えば、エラストマー物質を用いてライニングすることができる。所定の実施形態では、入口および/または出口は、一部の場合には再使用可能なセルフシール物質を用いて構築されてよい。例えば、入口および/または出口は、入口および/または出口が遮光性であることを可能にする物質から構築することができる(すなわち、入口および/または出口は外部駆動力を適用せずに液体がその中を通過することは許容しないが、所定条件下でその物質に貫通できる針もしくは他の機械的装置の挿入は許容できる)。一部の場合には、針もしくは他の機械的装置を除去すると、物質はその液密特性を取り戻せる(すなわち、「セルフシール」物質)。本発明とともに使用するために適合するセルフシール物質の非限定的例には、例えば、ポリジメチルシロキサン(「PDMS」)などのポリマー、天然ゴム、HDPE、または調製物RTV 108、RTV 615、もしくはRTV 118(General Electric社製、ニューヨーク州ニューヨーク)などのシリコーン物質が含まれる。
【0104】
一部の実施形態では、本明細書に開示した装置は、極めて小さな要素、例えば、1ミリメートル未満もしくはマイクロ流体要素を含むことができる。例えば、一部の実施形態では、装置は、例えば、100mm以下、80m以下、50mm以下、または10mm以下の断面寸法を有する少なくとも1個の反応部位を含むことができる。一部の実施形態では、反応部位は、例えば、100mm以下、80mm以下、50mm以下、または10mm以下の最大断面を有していてよい。本明細書で使用する「断面」は、反応部位の2つの対向する境界間で測定した距離を意味しており、「最大断面」は、測定できる2つの対向する境界間の最大距離を意味する。他の実施形態では、反応部位の断面または最大断面は、5mm未満、2mm未満、1mm未満、500μm未満、300μm未満、100μm未満、10μm未満、または1μm以下であってよい。本明細書で使用する「マイクロ流体チップ」は、ミリメートル未満の断面を有する、すなわち1mm未満の断面を有する少なくとも1つの流体要素を含むチップである。1つの特定の非限定的例として、反応部位は、長さ80mm、幅10mm、および深さ5mmを備えて概して長方形を有していてよい。
【0105】
1個の反応部位は本明細書に記載した少量の流体を保持および/または反応させることができるが、本発明に結び付いた技術は、さらにまた拡張化および平行化も可能である。スループットに関して、1つのチップもしくは他の装置内、または複数のチップもしくは他の装置内の多数のリアクターおよび/または反応部位のアレイは、より大きな能力を生み出すために並列で構築することができる。例えば、複数のチップ(例えば、少なくとも約10個のチップ、少なくとも約30個のチップ、少なくとも約50個のチップ、少なくとも約75個のチップ、少なくとも約100個のチップ、少なくとも約200個のチップ、少なくとも約300個のチップ、少なくとも約500個のチップ、少なくとも約750個のチップ、または少なくとも約1,000個以上のチップ)は、例えば、チップを自動的に監視もしくは制御できるロボット工学の使用を通して、並列式で操作することができる。さらに、並列化によるスケールアップを用いて、代表的には実験室で実施される小規模の反応の生産能力を維持することによる利点を入手できる。多数の反応部位がチップのリアクター内および/または複数のチップ内に並列式で配列できることは所定の実施形態の特徴である。詳細には、所定の実施形態では、少なくとも5個の反応部位を並列式で作動するように構築することができ、または他の場合には少なくとも約7個、少なくとも約10個、少なくとも約30個、少なくとも約50個、少なくとも約100個、少なくとも約200個、少なくとも約500個、少なくとも約1,000個、少なくとも約5,000個、少なくとも約10,000個、少なくとも約50,000個、または約100,000個以上の反応部位さえ、例えば、高スループットシステム内で並列式で作動するように構築することができる。一部の場合には、反応部位の数は、所定量の種もしくは生成物を生成できるように、または所定量の反応物質を処理できるように選択することができる。所定の場合には、チップおよび/またはリアクターの並列化は、多数の化合物を同時にスクリーニングすること、または多数の相違する増殖条件および/または細胞株を同時に試験および/またはスクリーニングすることを可能にできる。当然ながら、リアクターまたはチップ内の反応部位の正確な場所および配置は、特定用途の相関的要素である。
【0106】
さらに、本明細書に記載した所定の実施形態は、最終的には1つまたは複数のリアクターおよび/またはチップの反応部位の出口に接続可能な収集チャンバーと結び付けて使用できるように構成できる。収集チャンバーは、10mLより多い、または一部の場合には100mLより多い容積を有していてよい。収集チャンバーは、他の場合には、100Lもしくは500Lより多い、または1L、2L、5L、もしくは10Lより多い容積を有していてよい。リアクターおよび/または反応部位が1つまたは複数のチップ内で並列式で配置される場合は大容量が適切なことがあり、例えば、複数のリアクターおよび/または反応部位が収集チャンバーへ生成物を送達することができる。
【0107】
一部の実施形態では、反応部位および/または反応部位と流体連絡しているチャネルには、能動性混合素子が含まれていない。これらの実施形態では、チップのリアクターは、混合が所望である場合は、好ましくは能動混合を行わずに、流体の混合物を混合および/または送達できるように、入口および/または出口を通して提供される流体内で乱流を誘発できるような方法で構築することができる。詳細には、リアクターおよび/または反応部位は、例えば、図2における混合装置42に示したように、混合するために流路を通して流体が流動するのを誘発する流体の流路における複数の障害物を含むことができる。これらの障害物は、本質的に任意の幾何学的配列、例えば、一連の柱から構成されてよい。本明細書で使用する「能動性混合素子」は、ブレード、スターラーなどの混合素子を規定することが意図されているが、これらは反応部位および/またはチャネル自体に対して可動性である、すなわち反応部位もしくはチャネルを規定するリアクターの部分に対して可動性である。
【0108】
所定の実施形態のチップは、チップがすべて一緒に積み重ねられた場合に規定方法で方向付けられる(例えば、すべてが同一方法で方向付けられる)ように、それらが他の類似のチップと規定の、事前に整列させた関係で積み重ねることができるように構成および配置することができる。チップが他の類似のチップと相互に積み重ねられるように設計される場合は、チップはしばしば、反応部位などのチップの少なくとも一部分が1つまたは複数の他のチップおよび/または他のチップ内の反応部位と流体連絡しているように、構成および配置することができる。この配置は、本明細書で考察するように、チップの並列化において利用されることがある。
【0109】
1セットの実施形態では、本明細書に開示したチップは、チップが、例えば、2002 SPS/ANSIで提案された標準に規定されたように、マイクロプレートに安定性で接続できるように構成および配置される(例えば、おおよそ127.76mm±0.50mm×85.48mm±0.50mmの寸法を有するマイクロプレート)。本明細書で使用する「安定性に接続された」は、2つの構成要素が、2つの構成要素が相互から分離するために特定の運動もしくは力が必要であるように接続されているシステムに関しており、すなわち2つの構成要素は無作為の振動もしくは移動(例えば、偶発的に構成要素に軽度に衝突すること)によって取り外すことはできない。これらの構成要素は、ペグ、スクリュー、スナップ式構成要素、くぼみと隆起などの接合セットによって安定性に接続することができる。「マイクロプレート」もまた、ときどきは「マイクロタイター」プレート、「マイクロウェル」プレート、または当該分野において公知の他の類似用語で呼ばれることもある。マイクロプレートは、任意の数のウェルを含むことができる。例えば、代表的には市販で使用されるように、マイクロプレートは、6ウェルマイクロプレート、24ウェルマイクロプレート、96ウェルマイクロプレート、384ウェルマイクロプレート、または1,536ウェルマイクロプレートであってよい。ウェルは、任意の適切な形状、例えば、円筒形または長方形であってよい。マイクロプレートは、例えば、所定の特殊な用途では、さらに他のウェルの数および/または他のウェルの形状もしくは立体配置も有していてよい。
【0110】
図3A〜3Cは、チップが他のチップおよび/またはマイクロプレートと安定性に接続されている場合は、チップの1個または複数の反応部位が化学的、生物学的、もしくは生化学的に連絡しているように配置もしくは配列されるように、あるいは他のチップの1個または複数の反応部位および/またはマイクロプレートの1つまたは複数のウェルと化学的、生物学的、もしくは生化学的に接続可能であるように、1個または複数の反応部位をチップと結び付けて配置できる1セットの実施形態を図示している。この文脈における「整列」は、また別の反応部位もしくはウェルに隣接する反応部位の側面の全面積が他の反応部位もしくはウェルを完全に覆うように、もしくはその逆である完全な整列、または反応部位の少なくとも一部分が隣接する反応部位もしくはウェルの少なくとも一部分を覆う部分配列を意味することができる。「化学的、生物学的、または生化学的に接続可能」は、反応部位が他の反応部位もしくはウェルと流体連絡している(すなわち、流体は一方から他方へ自由に流動できる);または他の部位もしくはウェルへ流体接続可能であるか(例えば、2つは穿刺もしくは破裂させることのできる壁もしくは他の構成要素によって、あるいは開口され得る2つに接続可能な導管のバルブによって、相互から分離される);または反応部位および他の部位もしくはウェルは、少なくとも一部の化学、生物学、もしくは生化学種が一方から他方へ、例えば、半透過性膜を越えて移動できるように配列されることを意味する。例として、チップは、チップがマイクロプレートと安定性に接続されている場合に6ウェルマイクロプレートの6個のウェルと整列されるように構成および配置されている6個の反応部位を有することができ、96個の反応部位を有するチップは、チップがマイクロプレートと安定性に接続されている場合に96ウェルマイクロプレートの96個のウェルと整列されるなどのように構成および配置することができる。当然ながら、一部の場合には、チップは、チップの単一反応部位が2つ以上のマイクロプレートウェルおよび/またはマイクロプレートウェル上の2個以上の他の反応部位と整列するように、および/または2つ以上のマイクロプレートウェルおよび/または2個以上の他の反応部位がチップの単一反応部位と整列するように構成および配置することができる。
【0111】
本明細書に開示したチップは、さらにまたチップの少なくとも1個の反応部位および/またはリアクターが、マイクロプレートの少なくとも1個のウェルにアドレスするために構成および配置された装置(例えば、マイクロプレートのウェルへ種を添加する、および/またはマイクロプレートのウェルから種を除去し、そして/またはマイクロプレートのウェル内の種を試験することができる装置)へ流体連絡するように、そして/または化学的、生物学的、または生化学的に接続可能であるように構成および配置することもできる。この配置では、この装置はチップの反応部位へ/チップの反応部位から種を添加および/または除去し、そして/または反応部位で種を試験することができる。この実施形態では、反応部位は、代表的にはマイクロプレートのウェルと整列させて配列される。
【0112】
図3Aおよび3Bを参照すると、チップ120を市販で入手できるマイクロプレート123と安定性に接続できる例が示されている。図3Aでは、チップ120は、チップ120がマイクロプレート123と安定性に接続されている場合は、チップ120の反応部位125の少なくとも一部はマイクロプレート123のウェル127の少なくとも一部と整列し、そして/または接続可能であるように配置することができる。同様に、図3Bでは、チップ120は、マイクロプレート23へ安定性に接続されている場合は、反応部位125の少なくとも一部はマイクロプレート123上のウェル127の少なくとも一部分と整列し、そして/または接続可能であるように構成および配置することができる。図3Cでは、チップ130、131、...132が、チップが相互に安定性に接続されているように構成および配置されているまた別の実施形態が示されている。一部の場合には、チップ130、131、....132は、相互に安定性に接続されている場合に、チップ130の反応部位135が他のチップ上の1個または複数の他の反応部位と,例えば、チップ131内の反応部位136、および/またはチップ132内の反応部位137と整列するように、構成および配置される。
【0113】
本明細書に開示したチップは、1セットの実施形態では実質的に液密性であってよい。本明細書で使用する「実質的に液密性のチップ」または「実質的に液密性のリアクター」は、各々、チップもしくはリアクターが水などの液体で満たされている場合は、チップが使用するために組み立てられた場合にチップもしくはリアクターの方向付けとは無関係に、液体がチップもしくはリアクターの規定された入口および/または出口を通してのみチップもしくはリアクターに流入または流出できるように構成および配置されているチップもしくはリアクターである。このセットの実施形態では、チップは、チップもしくはリアクターに水が満たされて入口および/または出口がシールされた場合に、チップもしくはリアクターが約100μL/日未満、約50μL/日未満、または約20μL/日未満の蒸発速度を有するように構成および配置される。所定の場合には、チップもしくはリアクターは、1日当たりゼロではないが測定できないほど少量の水の蒸発を示す。実質的に液密性のチップもしくはリアクターは、他の場合には、水のゼロの蒸発速度を有することができる。
【0114】
本明細書に開示したチップは、各々が1個または複数の反応部位を有する1つまたは複数のリアクターを有するチップを製造するための任意の適切な製造技術を用いて作製することができ、そしてチップは、少なくとも1個の反応部位を提供かつ規定するために必要な流体網(fluidic network)を支持することができる任意の物質または物質の組み合わせから構築することができる。所定の実施形態による所定のチップを作製するために利用できる超微細加工プロセスの非限定的例には、ウェットエッチング、化学蒸着、深反応性イオンエッチング、陽極ボンディング、射出成形、高温圧縮、およびLIGAが含まれる。例えば、チップは、シリコーンもしくは他の物質をエッチングもしくは成形する工程、例えば、標準リソグラフィー技術によって作製することができる。チップは、さらにまた超小型組み立てまたは微細機械加工、例えば、当業者に公知の立体リソグラフィー、レーザー化学三次元描画法、モジュラー組み立て法、レプリカ成形法、射出成形技術、ミリング技術などを使用して作製することもできる。チップは、例えば、以下で詳細に説明するように、基材(同一であっても相違していてもよい)上の複数の層をパターン化する工程によって、または様々な公知の迅速なプロトタイピングもしくはマスキング技術を用いる工程によって作製することもできる。チップを形成するために使用できる物質の例には、ポリマー、シリコーン、ガラス、金属、セラミック、無機物質、および/またはこれらの組み合わせが含まれる。この物質は、不透明性、半透明透光性、または透明性であってよく、そしてガス透過性、半透過性またはガス不透過性であってよい。一部の場合には、チップは、リアクター、反応部位および/またはチャネルを生成するためにエッチングできる物質から形成することができる。例えば、チップは、半導体、溶融石英、石英、または金属などの無機物質を含むことができる。半導体物質は、例えば、ケイ素、窒化ケイ素、ヒ化ガリウム、ヒ化インジウム、リン化ガリウム、リン化インジウム、窒化ガリウム、窒化インジウム、他の第III/V族化合物、第II/VI族化合物、第III/V化合物、第IV族化合物などの、例えば、3種以上の元素を有する化合物であってよいがそれらに限定されない。半導体物質は、さらにまたこれらおよび/または当該分野において知られている他の半導体物質の組み合わせから形成することもできる。一部の場合には、半導体物質は、例えば、リソグラフィーなどの公知のプロセスによってエッチングすることができる。所定の実施形態では、半導体物質は、例えば、一般に半導体産業によって製造されるように、ウエハーの形状を有していてよい。
【0115】
一部の実施形態では、本明細書に開示したチップは、ポリアクリレート、ポリメタクリレート、ポリカーボネート、ポリスチレン、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ塩化ビニル、ポリテトラフルオロエチレン、フッ化ポリマー、ポリジメチルシロキサンなどのシリコーン、ポリ塩化ビニリデン、ビス−ベンゾシクロブテン(「BCB」),ポリイミド、ポリイミドのフッ化誘導体などを含むがそれらに限定されないポリマーから形成されてよいか、または含んでいてよい。上述したものを含むポリマーを含有する組み合わせ、コポリマー、または混合物もまた使用できる。チップは、さらに複合物質、例えば、ポリマーと半導体物質の複合物から形成することもできる。
【0116】
一部の実施形態では、チップ、または少なくともその一部分は、チップが市販で入手できるマイクロプレート操作装置によって操作できるように十分に頑丈であるように、そして/またはチップが慣周的な使用後に変形させられないように剛性である。当業者であれば、特定チップが企図される使用のための他の仕様を満たしながら、この仕様を満たすチップ構造のための物質または物質の組み合わせを選択することができる。しかし他の実施形態では、チップは半剛性または柔軟性であってよい。
【0117】
所定の実施形態では、チップは、滅菌可能な物質を含んでいる。例えば、チップは、チップを使用または再使用する前に、その中の生物学的細胞(例えば、細菌)、ウイルスなどを殺滅、さもなければ不活化するための何らかの方法で滅菌可能である。例えば、チップは、化学薬品、放射線(例えば、紫外線および/または電離放射線を用いて)、熱処理などにより滅菌することができる。適切な滅菌技術およびプロトコールは、当該分野において公知である。例えば、1つの実施形態では、チップはオートクレーブ滅菌できる、すなわち、チップは、チップが滅菌後に実質的に変形しない、さもなければ使用不能にならないように、一般に使用されるオートクレーブ滅菌条件(例えば、しばしば少なくとも1気圧の圧力などの高圧力で、約100℃もしくは約120℃より高い温度への曝露)に抵抗できる物質から構成および配置される。滅菌技術の他の例には、オゾン、アルコール、フェノール、ハロゲン、重金属(例えば、硝酸銀)、界面活性剤、第4級アンモニウム部分、酸化エチレン、CO、アルデヒドなどへの曝露が含まれる。また別の実施形態では、チップは、例えば、短波長の電離放射線、例えば、γ線、電子線またはX線などの高強度放射線に抵抗することができる。一部の場合には、電離放射線は、核反応から、例えば、60Coまたは137Csの崩壊から生成することができる。
【0118】
1セットの実施形態では、チップの少なくとも一部分は、接着性物質を使用せずに作製できる。例えば、チップの少なくとも2つの構成要素(例えば、チップが多層構造である場合はチップの2つの層、チップの1つの層もしくは基材と膜、2つの膜、チップの製品とマイクロ流体システムの構成要素、など)は、接着性物質を使用せずに一緒に結び付けることができる。例えば、構成要素は、ヒートシール、超音波溶接、感圧性物質の適用によるなどの方法を用いることによって接続できる。1つの実施形態では、構成要素は機械的に適所に保持できる。例えば、スクリュー、ポスト、カンチレバー、接合くぼみなどを使用すると、チップ(またはその一部分)を機械的に一緒に保持することができる。他の実施形態では、チップの2つの構成要素は、ヒートシール法(例えば、チップの1つまたは複数の構成要素は、他の構成要素に結合される前に、その構成要素のガラス転位温度または溶融温度より高い温度へ加熱することができる)、または超音波溶接技術(例えば、、構成要素を少なくとも部分的に液化または軟化させることを許容できるように、音波エネルギーなどの振動エネルギーをチップの1つまたは複数の構成要素に適用できる)を含むがそれらに限定されない技術を用いて結合することができる。
【0119】
所定の実施形態では、チップの2つの構成要素は、ヒートシール法によって結び付けることができる。例えば、チップの1つまたは複数の構成要素は、構成要素のガラス転位温度または溶融温度(すなわち、その構成要素が軟化するか、または液化し始める温度)より高い温度へ加熱することができる。構成要素は、相互に接触させて配置し、ガラス転位温度または溶融温度より下へ冷却させることができ、したがって構成要素を一緒に結び付けることができる。
【0120】
所定の実施形態では、2つの構成要素は超音波溶接技術によって結び付けることができる。1つの例として、振動エネルギー(例えば、音波エネルギー)をチップの1つまたは複数の構成要素に適用できる。適用された振動エネルギーは、構成要素、または構成要素の少なくとも一部分が少なくとも部分的に液化または軟化することを引き起こす。構成要素はその後、一緒に配置できる。次に振動エネルギーを停止させると、これらの構成要素を一緒に結び付けることができる。一部の場合には、構成要素は、構成要素のエネルギーディレクター領域だけが振動エネルギーの影響下で液化できるように、振動エネルギーを構成要素の所定領域(「エネルギーディレクター」領域)内に集中できるように設計できる。例えば、振動エネルギーを構成要素に適用すると、エネルギーディレクターの少なくとも一部分が軟化または液化できるように、エネルギーの実質的分画をエネルギーディレクター領域に集中させることができる。軟化および/または液化領域は、次にチップの他の構成要素に接続されると、チップの2つの構成要素が一緒に結び付けられるように硬化することができる。
【0121】
また別のセットの実施形態では、チップの2つ以上の構成要素は、接着性物質を使用して結合できる。本明細書で使用する「接着性物質」には、当技術分野において使用される通常の意味が与えられている、すなわち2つの他の物質を一緒に結び付けるか、または結合できる補助物質である。本発明とともに使用するために適切な接着性物質の非限定的例には、感圧性シリコーン系接着剤、ネオプレンを基剤とする接着剤、およびラテックスを基剤とする接着剤などのシリコーン系接着剤が挙げられる。接着剤は、液体または例えば、粘弾性固体などの半固体物質としてチップの構成要素へ接着剤を適用することによって、任意の適切な方法を用いてチップの1つまたは複数の構成要素へ適用することができる。例えば、所定の実施形態では、接着剤は、転写テープ(例えば、テープが構成要素に適用されると、テープが構成要素から取り除かれたときに接着剤、または接着剤の少なくとも一部分が構成要素に付着したままになるように、それに付着した接着性物質を有するテープ)を用いて構成要素へ適用することができる。1セットの実施形態では、接着剤は感圧性接着剤であってよい。すなわち、物質は通常、または実質的には接着性ではないが、例えば、約6atmもしくは約13atm(約100psiもしくは約200psi)より高い圧力などの圧力の影響下では接着性、および/またはその接着強度を増加させる。感圧性接着剤の非限定的例には、AR Clad 7876(ペンシルベニア州グレンロックに所在するAdhesives Research,Inc.から入手できる)およびTrans−Sil Silicone PSA NT−1001(マサチューセッツ州ホールヨークに所在するDielectric Polymers社から入手できる)が挙げられる。
【0122】
所定の実施形態では、接着剤は溶媒結合系を用いてチップの少なくとも1つの構成要素へ適用できる。溶媒結合系では、チップの1つまたは複数の構成要素は溶媒蒸気が富裕な環境に配置される。すなわち、溶媒が適切な条件(例えば、圧力および/または温度が低下した場合)下で環境内に配置された構成要素へ凝縮できるように、構成要素が配置されている環境は溶媒で飽和もしくは超飽和している。構成要素は次に、一緒に環境と接触させ、例えば、環境(溶媒を含んでいる)が除去された場合に一緒に結び付けることができる。1つの特定の例として、本発明のチップの2つのポリカーボネート構成要素は、塩化メチレン環境内で一緒に結び付けることができる。例えば、溶媒、すなわち塩化メチレンなどの薄層を表面へ適用することができる。結合できる2つの表面は、次に結合を確実にするための圧力下で一緒に圧縮および/または締め付けることができる。
【0123】
一部の実施形態では、チップは、1個または複数の反応部位を、少なくとも一部には、上記で記載したように(すなわち、接着剤を用いて、または用いずに)一緒に締め付けた2つ以上の構成要素によって規定できるように構成および配置することができる。一部の場合には、反応部位は、反応部位を規定する1つまたは複数の表面に隣接する、さもなければ接触した任意の接着性物質を含んでいない可能性があり、そしてこれは例えば、接着剤がさもなければ反応部位で流体内に漏出する可能性がある場合には有益な可能性がある。当然ながら、接着剤は、チップ内のいずれかの場所、例えば、他の反応部位で使用することができる。同様に、所定の場合には、反応部位は、それが反応部位を規定する1つまたは複数の表面と隣接しているか、さもなければ接触したままになるように、反応部位を構築するために使用された接着性物質の少なくとも一部分がチップ内にとどまるように、接着性物質を用いて構築することができる。当然ながら、チップの他の構成要素は、上記で考察したように接着性物質を使用せずに構築することができる。
【0124】
ここで図2を参照すると、マイクロ流体チップ40の1つの例が図示されている。チップ40は、混合装置42、加熱/分散装置44、反応部位46、および分離装置48を備える、4種の一般的装置を備える。1つまたは複数のセンサー、プロセッサ、および/またはアクチュエーター(図示されていない)は、任意で、各々チップと感知または作動連絡させて含めることができる。本明細書で使用する「感知連絡」および「作動連絡」は、センサーまたはアクチュエーターが、各々、反応部位の環境および/または反応部位の内容物を決定および/または制御できるように任意の場所でチップと連絡させて配置されていることを意味する。センサーまたはアクチュエーターは、チップ内に含める、例えば、反応部位内に包埋するか、もしくは反応部位に一体的に接続する、チップ内もしくはチップ上に配置する、またはチップから遠く離れているが、反応部位内の因子を感知または作動させることができるように反応部位と物理的、電気的、および/または光学的に接続させて配置することができる。例えば、センサーはチップと任意の物理的接続を含んでいなくてよいが、反応部位に向けて方向付けられていて、その部位を通過しているか、または部位によって反射もしくは回折させられている赤外線、紫外線、または可視光線などの電磁放射線の相互作用の結果を検出できるように配置することができる。また別の例として、センサーはチップ上もしくはチップ内に配置することができ、そして導波管により反応部位へ光学的に接続されることによって反応部位で活性を感知することができる。チップは、同様に検出および作動を総合制御するためにネットワークもしくは制御システムへ直接的または間接的に接続することができる。感知および作動連絡は、反応部位および/または該部位の内容物の状態を感知できるように、反応部位がセンサーもしくはアクチュエーターと流体的、光学的もしくは視覚的、熱的、空気的、空気圧的、電気的などで連絡している場合にも提供することができる。1つの例として、センサーは出口の1つの下流に、またはセンサーから反応部位を分離している膜もしくは透明性カバーの背部に配置することができる。以下では感知および作動配列についての追加の考察を提供する。
【0125】
図4は、本明細書に開示したチップ装置のまた別の実施形態を示している。図4Aはチップ105の平面図を示し、図4Bは側面図を示している。この実施形態では、チップ105は3層の物質、つまり上層100(例示した実施形態では透明性である)、中間層115、および下層110から構成される。当然ながら、他の実施形態では、チップ105は、特定の用途に依存して、より多数またはより少数の物質(例えば、1層のみ含んでいる)を有していてよい。図4に示した実施形態では、中間層115は、以下で考察するように複数の規定反応部位を規定する1つまたは複数の空所112を有する。1つまたは複数のチャネル116、117は、さらにまた反応部位112と流体連絡している中間層115内に規定することもできる。一部の場合には、1つまたは複数のポート114、118は、例えば、上層100を通してチャネルへの外部からのアクセスを許容できる。
【0126】
上層100は、それにより部分的に反応部位112を規定できるように、中間層115を被覆する、または少なくとも部分的に被覆することができる。一部の場合には、上層100は、例えば、ガスもしくは液体物質が上層100を通して透過もしくは浸透することが許容される場合に、ガスもしくは液体にとって透過性であってよい。例えば、上層100は、それを通しての検出可能もしくは測定可能なガス輸送を可能にするために十分に薄くてよい、上述したポリ(アセチレン)製湿度制御物質などのポリマーから形成されてよい。一部の場合には、上層100を通してのガス輸送が可能であるが、他方上層100を通しての液体の輸送は一般に合理的な時間枠内では不可能である。所定の場合には、上層100は、例えば、反応を開始するため、またはプロセスを活性化するために光線が使用される実施形態では、実質的に透明性または透光性であってよい。一部の場合には、上層100は、ガス状pH調整剤が透過することを可能にするポリマーから形成されてよい。所定の場合には、上層100は、セルフシールである物質から形成されてよい。すなわち、この物質は固体物体によって貫通されてよいが、一般にそのような貫通後にその形状を回復する。例えば、上層100は、針などの機械的装置によって貫通できるが、針もしくは他の機械的装置が抜去されると密封するように閉鎖するエラストマー物質から形成することができる。
【0127】
中間層115は、図4に例示した実施形態では4つの空所を含むことができる。当然ながら、他の実施形態では、より多数または小数の空所が中間層115内に存在していてよい。図4に例示した実施形態では、中間層115内の空所は、上層100および下層110と一緒に、反応部位112を規定できる。図4の実施形態では、実質的に同一である4個の反応部位112が存在する;しかし他の実施形態では、より多数または小数の規定反応部位が存在していてよく、そしてこれらの反応部位は各々が同一であっても相違していてもよい。図示した実施形態では、各空所は実質的に同一であり、空所と連絡している2つの流体チャネル116、117を有する。当然ながら、他の実施形態では、チップ内を走るより多数または小数のチャネルが存在してよい。図4の実施形態では、流体チャネル116は層115内のポート118に接続されており、そして流体チャネル117は層115内のポート114に接続されている;他の実施形態では、当然ながら、流体チャネル116および118は、1個または複数の反応部位を相互に、1つまたは複数の流体ポートへ、および/またはチップ105内の1つまたは複数の他の構成要素へ流体接続することができる。ポート114および/または118は、一部の場合には流体または他の物質をチップへ導入する、またはチップから抜去するために使用できる。一部の実施形態では、反応部位112および/または1つまたは複数の流体チャネルを、例えばチップの1つまたは複数の層で、例えば、1つの層内だけで、2つの層間の接点で、3つの層などにまたがる空所内で規定することができる。
【0128】
ポート114および118は、1個または複数の反応部位112と流体連絡していてよい。ポート114および118は、一部の場合には、上層100を通して針もしくは他の機械的装置を挿入することによってアクセスすることができる。例えば、一部の場合には、上層100は貫通されてよいか、または上層100内の空間は、ポート114および/または118への外部からのアクセスを可能にする。一部の場合には、上層100は、一部の場合にはセルフシールであってよい、柔軟性またはエラストマー物質から構成されてよい。所定の場合には、上層100はポート114および/または118への直接的または間接的アクセスを可能にするその中に形成された通路を有していてよいか、またはポート114および/または118は、上層100内に形成されて層100内に規定されたチャネルを通してチャネル116および117へ接続されてよい。
【0129】
下層110は、図4に示したチップ105の底面を形成する。上述したように、下層110の部分は、所定の場合には、一部には反応部位112を規定することができる。一部の場合には、下層110は、チップ105に相当に剛性の構造的支持を与えることのできる比較的硬質もしくは剛性の物質から形成されてよい。当然ながら、他の実施形態では、下層110は、柔軟性もしくはエラストマー物質(すなわち、非剛性)から形成されてよい。一部の場合には、下層110は、その中に規定された1つまたは複数のチャネルおよび/またはその中に規定された1つまたは複数のポートを含有していてよい。一部の場合には、下層110(または上層100)などの反応部位の境界を規定する物質は、例えば、それらの物質が反応部位112に輸送させられるか、または近づけられる作用因子を生成するために何らかの方法で反応させられる場合には、塩および/または他の物質を含有していてよい。作用因子は、以前に考察した任意の作用因子、例えば、ガス、液体、酸、塩基、トレーサー化合物、低分子(例えば、約1,000Da未満〜1,500Daの分子量を備える分子)、薬物、タンパク質などであってよく、そして輸送は任意の適切なメカニズム、例えば、拡散(自然の、もしくは促進された)または浸出によって発生してよい。1つの実施形態では、作用因子は、例えば、電流または光線(例えば、レーザーを用いて)を使用して、外部から開始できる熱分解反応によって生成される。他の所定の場合には、下層110または上層100などの反応部位の境界を規定する物質は、反応部位112と流体接触していないが、作用因子が反応部位へ輸送されてよいか、または近づけられてよい場合には、リザーバーと反応部位との少なくとも1つの流体接続を作り出すことによって、1つまたは複数の作用因子のリザーバーを含有することができる。輸送は、外部から制御することができる、または一部の場合には、例えば、流体運動を方向付けるために電場もしくは磁場を使用して駆動することができる。当然ながら、さらに他の場合には、下層110および/または上層100は、任意の作用因子または他のリザーバーを含有していなくてもよい。
【0130】
本明細書に開示したチップおよびリアクターは広範囲の様々な立体配置を有していてよいことが理解されるべきである。例えば、チップは、単一物質から形成されてよいか、またはチップは2つ以上のタイプのリアクター、リザーバーおよび/または作用因子を含有していてよい。一部の場合には、チップは、チップ内の1個または複数の反応部位内で1つまたは複数の環境因子を変化させることのできる2つ以上のシステムを含有していてよい。例えば、チップは、密封されたリザーバーとpH非中性ガスがそれを越えて透過できない上層とを含有していてよい。
【0131】
本明細書に開示したチップは、例えば、センサーを用いて、リアクターの反応部位と関係付けられた1つまたは複数の環境条件を検出または決定できるように構成および配置することができる。一部の場合には、各反応部位は、独立して決定することができる。環境条件の検出は、例えば、反応部位内に配置できるか、または反応部位の近くに配置できる、すなわちセンサーが何らかの方法で反応部位と連絡しているように配置できるセンサーによって発生させることができる。一部の場合には、そのような検出はリアルタイムで行われてよい。センサーは、例えば、pHセンサー、光学センサー、酸素センサー、基質の濃度を検出できるセンサーなどであってよい。以下では、センサーの他の例について詳細に説明する。センサーは、包埋してチップと一体的に接続することができるか(例えば、反応部位などと流体連絡しているチャネルに反応部位の少なくとも一部分を規定する構成要素内で)、または一部の場合にはチップから離れていてよい(例えば、感知連絡内で)。同様に、センサーは所定の実施形態では反応部位に一体的に接続されていても、反応部位から離れていてもよい。
【0132】
本明細書で使用する「環境因子」または「環境条件」は、温度または圧力などの反応部位内および/または反応部位と関連している環境の(例えば、センサーによって)検出可能および/または測定可能な条件である。因子または条件は、反応部位内、および/または反応部位に近い場所で、反応部位内の環境条件が明らかになり、そして/または制御されるように、検出および/または測定することができる。例えば、、環境因子は反応部位内または反応部位と関連しているガスまたは溶存ガスの濃度であってよい。ガスは、例えば、酸素、窒素、水(すなわち、相対湿度)、COなどであってよい。環境因子は、一部の場合には物質の濃度であってよい。例えば、環境因子は、モル濃度、浸透圧モル濃度、塩分濃度、総イオン濃度、pH、色、光学密度などの総量であってよい。濃度は、反応部位内に存在する1つまたは複数の化合物の濃度、例えば、ナトリウム、カリウム、カルシウム、鉄、塩化物イオンなどのイオン濃度;またはタンパク質、脂質、もしくはグルコースなどの炭水化物源(例えば、糖)、グルタミン、ピルビン酸塩、アパタイト、アミノ酸もしくはオリゴペプチド、ビタミン、ホルモン、酵素、タンパク質、成長因子、血清などの生物活性化合物の濃度であってよい。一部の実施形態では、反応部位内の物質は、例えば、培地中で見いだされるような、または細胞からの老廃物として生成されるような1つまたは複数の代謝性インジケーターを含むことができる。細胞が存在する場合は、センサーは、全生存性、細胞密度、細胞運動性、細胞分化、細胞産生(例えば、タンパク質、脂質、低分子、薬物などの)などを決定するためのセンサーであってもよい。
【0133】
環境因子は、さらに流体の圧力、粘度、濁度、剪断率、攪拌度、または流量などの、反応部位内の流体の流体特性であってもよい。流体は、例えば、液体またはガスであってよい。1セットの実施形態では、環境因子は、例えば、反応部位内の流体もしくは他の物質の電気的状態、例えば、電荷、電流、電圧、電場の強さ、または抵抗もしくは導電性である。1セットの実施形態では、環境条件は温度または圧力である。所定の実施形態では、センサーは、レシオメトリックセンサー、すなわち例えば、測定値と対照シグナル、2つの測定値などの2つ(もしくは以上)のシグナル間の差または比率を決定できるセンサーであってよい。
【0134】
本明細書に開示した所定の装置の状況において有用または潜在的に有用なセンサーの非限定的例には、色素に基づく検出システム、親和性に基づく検出システム、微細加工された重量分析装置、CCDカメラ、光学検出器、光学顕微鏡システム、電気システム、熱電対およびサーミスター、圧センサーなどが含まれる。当業者は、他の適切なセンサーを同定できる。例えば、1セットの実施形態では、チップは、例えば、色素(または色素の組み合わせ)、蛍光分子などの1つまたは複数の環境因子に反応性の1つまたは複数の検出可能な化学物質を含むセンサーを含有していてよい。当業者であれば、特異的環境条件に感受性である1つまたは複数の色素、または蛍光もしくは色原性分子を選択できる。そのような色素、または蛍光もしくは色原性分子の非限定的例には、フェノールレッド、ブロモチモールブルー、クロロフェノールレッド、フルオレセイン、HPTS、5(6)−カルボキシ−2’,7’−ジメトキシフルオレセインSNARF、およびフェノタレイン(phenothalein)などのpH感受性色素;Fura−2およびIndo−1などのカルシウムに感受性の色素;6−メトキシ−N−(3−スルホプロピル)−キノリニム(quinolinim)およびルシゲニンなどの塩化物に感受性の色素;4−アミノ−5−メチルアミノ−2’,7’−ジフルオロフルオレセインなどの一酸化窒素に感受性の色素;トリス(4,4’−ジフェニル−2,2’−ビピリジン)塩化ルテニウム(II)五水和物などの溶存酸素に感受性の色素、溶存COに感受性の色素;BODIPY 530標識グリセロホスホエタノールアミンなどの脂肪酸に感受性の色素;4−アミノ−4’−ベンズアミドスチルベン−2−2’−ジスルホン酸(血清アルブミンに感受性)、X−GalもしくはNBT/BCIP(所定の酵素に感受性)、TbCl由来のTb3+(所定のカルシウム結合タンパク質に感受性)、BODIPY FLファラシジン(アクチンに感受性)、またはBOCILLIN FL(所定のペニシリン結合タンパク質に感受性)などのタンパク質に感受性の色素;グルコース、ラクトースもしくは他の構成要素に感受性の色素、またはプロテアーゼ、ラクターゼもしくは他の代謝副産物に感受性の色素、タンパク質、抗体、もしくはカルセインAM、臭化エチジウム、またはレサズリン(生存性に感受性)などの他の細胞産物に感受性の色素が含まれる。
【0135】
1つの実施形態では、色素もしくは蛍光分子は、チップ内の1つまたは複数の壁、例えば、反応部位を規定する1つまたは複数の壁の中に固定化されてよい。また別の実施形態では、色素もしくは蛍光分子は、例えば、反応部位と流体連絡している、チップ内に配置されたゲル内に固定化されてよい。さらにまた別の実施形態では、色素もしくは蛍光分子は、例えば、反応部位を通過させられる媒質中に溶解させられてよい。色素もしくは蛍光分子は、1つまたは複数の環境因子の数値および/または当該の他の変量に概して比例する反応を有することがある。反応は、例えば、蛍光シグナル、吸光度シグナル、波長または周波数などとして測定できる。チップ内のリアクターおよび/または反応部位は、光線送達および/または他の光相互作用構成要素と結合することができる。例えば、光相互作用構成要素は、色素、蛍光分子などから発生した光線(例えば、規定波長を有する)を検出および/または測定できる検出システムを含むことができる。
【0136】
センサーは、一部の場合には、チップの外部にあってよいか、または所定の場合にはチップ内へ微細加工されてもよい比色検出システムを含むことができる。1つの実施形態では、比色検出システムはチップの外部にあってよいが、例えば、光ファイバーまたはチップ内に包埋できる他の光相互作用構成要素を用いて、反応部位と光学的に結合することができる(例えば、以下で説明するシステムなど)。比色検出システムの1つの例として、色素もしくは蛍光分子が使用される場合は、比色検出システムは、反応部位内の1つまたは複数の環境因子における変化もしくは移動に反応した色素もしくは蛍光分子の周波数および/または強度における変化もしくは移動を検出することができる。1つの特定の例として、Ocean Optics Inc.(Dunedin F.O.)は、pHおよび溶存酸素濃度を測定するための光ファイバープローブおよび分光計を提供している。
【0137】
所定の実施形態では、任意の1つまたは複数の上述したチップは、チップ、または1個または複数の反応部位などのその一部分が、例えば制御システムを使用することにより、反応部位内の、もしくは反応部位と関連している環境条件内の変化に対応できるように、構成および配置することができる。一部の場合には、チップ内の各反応部位は、独立して何らかの方法で制御することができる。本明細書で使用する「制御システム」は、反応部位内の、もしくは反応部位と関連している1つまたは複数の環境因子を検出および/または測定できる、そして(例えば、所定値で環境条件を維持するために)反応部位内の、もしくは反応部位と関連している環境条件に対する対応または環境条件の変化を引き起こせる変化システムである。一部の場合には、制御システムは、リアルタイムで環境因子を制御できる。制御システムによって生成された応答は、所定の場合には環境因子に基づいていてよい。本明細書で使用する「能動型」制御システムは、環境条件の測定値に対する直接応答として反応部位と関連している環境因子における変化を引き起こすことのできるシステムである。能動型制御システムは、送達できるか、または反応から遊離され得る作用因子を提供できるが、この場合にはその作用因子は、反応部位と関連している条件を決定できるセンサーに反応して制御される。本明細書で使用する「受動型」制御システムは、環境条件の測定値を必要とせずに反応部位の環境条件を維持するか、またはその変化を引き起こすことのできるシステムである。受動型制御システムは、必ずしもセンサーまたは測定値に反応せずに反応部位内の環境因子を制御することができる。受動型制御システムは、能動型制御を行わずに作用因子が反応部位に流入したり流出したりするのを可能にする。例えば、受動型制御システムは、酸素膜、透水膜、および/または上述したような湿度制御膜を含むことができ、その場合に膜は、反応部位内の酸素および/または水蒸気含量を例えば、所定の規定限度内に維持することができる。制御システムは、反応部位内または反応部位と関連する1つまたは複数の条件を、任意の期間にわたり、一部の場合には例えば、1日間、1週間、30日間、60日間、90日間、1年間、または無期限に制御することができる。
【0138】
制御システムは、多数の制御素子、例えば、アクチュエーターへ、および任意でプロセッサへ機能的に接続されたセンサーを備えることができる。制御システムの1つまたは複数の構成要素は、反応部位を含有するチップへ一体的に接続されていてよいか、またはチップから離れていてよい。一部の場合には、制御システムは、チップに統合されている構成要素およびチップから離れている他の構成要素を含んでいる。これらの構成要素は、反応部位(例えば、反応部位の上流または下流など)内またはその近くにあってよい。当然ながら、一部の実施形態では、制御システムは、用途ならびに検出、測定および/または制御すべき環境因子に依存して、2つ以上のセンサー、プロセッサ、および/またはアクチュエーターを含むことができる。制御システムの1つの例は、図5に示されており、その場合にはセンサー52によって検出されるチップ105内の環境条件50が、適切なプロセッシングのためにプロセッサ54へ送信されるシグナル51へ変換される。プロセッサ54は、次にシグナル53を生成し、これはアクチュエーター56へ送信され、そこでこのシグナルは応答60へ変換される。一部の実施形態では、制御システムは、刺激または刺激における変化に反応して環境因子における極めて迅速な変化(例えば、5秒未満、1秒未満、100ミリ秒未満、10ミリ秒未満、または1ミリ秒未満の時間での温度またはpHなどの環境因子における検出可能な変化)を生成することができる。
【0139】
本明細書で使用する「プロセッサ」または「マイクロプロセッサ」は、例えば、数式または電子回路もしくはコンピューター回路を用いることによって、1つまたは複数のセンサーからのシグナルを受信する、シグナルを記憶し、そして/または1つまたは複数のアクチュエーターに対する1つまたは複数の応答へシグナルを変換できる任意の構成要素または装置である。1つの実施形態では、プロセッサは、エキスパートシステムであってよい。シグナルは、センサーによって決定される環境因子を示す任意の適切なシグナル、例えば、空気シグナル、電子シグナル、光シグナル、機械的シグナルなどであってよい。プロセッサ54は、シグナルへの応答を決定するために適切な任意の装置、例えば、機械装置または集積回路などの電子装置であってよい。プロセッサは、用途に依存して、反応部位またはチップに包埋したり一体的に接続されてよいか、または反応部位またはチップから離れていてもよい。1つの実施形態では、プロセッサは、例えば、センサーからの入力シグナルを受信して、そのシグナルをアクチュエーターのための適切なシグナルに変換できるプロセス制御アルゴリズムを用いてプログラミングされる。プロセッサ54内では、例えば、PID制御システム、フィードバックもしくはフィードフォーワードシステム、ファジー論理制御システムなどの任意の適切なアルゴリズムを使用できる。プロセッサは、例えば、アクチュエーターの操作によって、反応部位内の環境条件を制御するようにプログラミング、さもなければ設計することができる。
【0140】
例えば、所定の実施形態では、プロセッサ54は、例えば、その中での化学反応を促進するために、チップの規定反応部位内の一定の規定レベルで1つまたは複数の環境条件(例えば、温度または圧力)を維持することができる。所定の実施形態では、プロセッサ54は、規定パターンによって、または特定条件に応答して、チップの1つまたは複数の規定反応部位内の1つまたは複数の環境条件を変化させることができる;例えば、プロセッサは、アクチュエーターが所定速度で規定反応部位内のpHを上昇させることを誘導できるか、プロセッサは、アクチュエーターが特定温度もしくは他の環境条件に達すると規定反応部位のpHを変化させることを誘導できるか、またはプロセッサは、アクチュエーターが物質もしくは作用因子の規定反応部位内への流れを許容もしくは防止するか、または流量を増加または減少させることを誘導できる。一部の実施形態では、プロセッサ54は、規定反応部位内のいくつかの環境条件、例えば、少なくとも2つ、3つ、4つ、5つ、6つ、7つ以上の条件を、用途および制御の所望の程度に依存して、好ましくは同時またはほぼ同時に制御することができる。例えば、プロセッサ54は、1つまたは複数のセンサーおよび/または1つまたは複数のアクチュエーターと連絡していてよい。
【0141】
所定の実施形態では、プロセッサ54は、1個または複数の反応部位内の1つまたは複数の環境条件を維持するようにプログラミングもしくは設計することができる。例えば、、プロセッサ54は、3個の反応部位内、7個の反応部位内、10個の反応部位内などの1つまたは複数の環境条件を維持するようにプログラミングもしくは設計することができる。例えば、複数の反応部位が存在する場合は、1つのサブセットの反応部位が1つの温度で保持され、他方相違するサブセットの反応部位が相違する温度で保持されることがある。また別の例として、1つのサブセットの反応部位がそれに添加された第1化合物を有し、他方第2サブセットの反応部位がそれに添加された相違する化合物を有することがある。サブセットの組み合わせ、例えば、相違する化学物質、温度などを有する相違するサブセットもまた使用することができる。従って、多数の相違する環境条件を、1つのチップ内において相違する数値で同時に制御することができる。一部の場合には、反応部位を制御および監視するパターンは、適切な時期に、すなわち実験中に変化させることができる。従って、例えば、第1時点に適時に同時に監視および/または制御された2個の反応部位は、第2時点にも適時に個別に監視および/または制御することができる。制御および監視する工程は、事前に設定するか、自動化するか、または手動で決定することができる。
【0142】
1セットの実施形態では、プロセッサ54は、細胞(例えば、細菌もしくは哺乳動物細胞)の代謝または増殖を指示するために適切な条件を維持するようにプログラミングもしくは設計することができる。例えば、プロセッサ54は、チップの反応部位内の温度、相対湿度、圧力、酸素濃度、CO濃度、血清濃度、栄養素濃度、剪断速度、またはpHのうちの1つまたは複数を制御することができる。他の細胞増殖を指示するために適切な他の環境因子については以下で説明するが、上記でも記載されている。
【0143】
本明細書で使用する「アクチュエーター」は、1個または複数の反応部位内もしくはその近位、または1個または複数の反応部位と流体連絡している入口もしくは出口内の環境に影響を及ぼすことのできる装置である(例えば、図4Aにおけるチャネル116および117におけるように)。アクチュエーターは、反応部位またはチップから離れていてよいか、または一体的に接続されていてもよい。例えば、一部の実施形態では、アクチュエーターは、反応部位内もしくは反応部位外への物質もしくは作用因子、例えば、化学溶液、緩衝液(例えば、pH緩衝液)、COもしくはOなどのガス、栄養素溶液、生理食塩水、酸、塩基、炭素源、窒素源、阻害剤、プロモーター、ホルモン、成長因子、インデューサーなどを含有する溶液の流れを制御し、変化し、そして/または防止できる弁またはポンプ(微小弁またはマイクロポンプを含む)を含むことができる。輸送される物質は、特定の用途に依存する。一部の場合には、ポンプはチップの外部にあってよい。1つの例として、アクチュエーターは、COもしくはOが反応部位へ流入するのを許容する弁を選択的に開放できる。他の場合には、ポンプはチップの内部にあってよい。例えば、ポンプは、ピエゾ圧電式ポンプまたは機械的作動型ポンプ(例えば、圧力、電気刺激などによって作動させられる)であってよい。1つの実施形態では、ポンプは、チップ内の流体の流動を誘導できるチップ内のガスを生成することによって作動させられる;例として、ガスは、ガス生成反応を開始させるようにレーザー光線などの光線を反応物質に方向付けることによって生成できる、またはガスは電流を反応物質に付加することによって生成することができる(例えば、電流を水に付加するとガスを生成できる)。また別の例として、アクチュエーターは、必要に応じて反応部位との流体接続を作り出せるポンピングシステムを含むことができる。1つの特定の例は、ガス透過性表面を有するチップをインキュベーターもしくは他の密閉環境に配置することができ、そしてインキュベーターもしくは他の環境内の雰囲気は、それによって反応部位内の環境条件を制御できるように制御することができる。
【0144】
さらにまた別の例として、アクチュエーターは、熱交換器(例えば、図2に示されている)、抵抗加熱器またはペルティエ冷却器などの加熱素子または冷却素子を含むことができる。他の実施形態では、アクチュエーターは、安定した電流、または反応部位内の安定した電場勾配を維持する電気システムなどの電気システムを含むことができる。少なくとも2つの流体流れが反応部位に流入したり流出したりするさらにまた別の例えば、アクチュエーターは、2つの流体流れ間の流量の比率を制御できる弁またはポンプを含むことができる。例えば、アクチュエーターは、シグナルに応答して、反応部位内の入口流量を増加させ、出口流量を減少させるように作動できる。
【0145】
1セットの実施形態では、アクチュエーターは、電磁エネルギー源、熱源、機械エネルギー源、または超音波源などのエネルギー源を含むことができる。一部の実施形態では、電磁放射線は光学もしくは可視範囲内の波長もしくは周波数(例えば、約400nm〜約700nmの波長を有する)、赤外線波長(例えば、約300nm〜約700nmの波長を有する)、紫外線波長(例えば、約400nm〜約10nmの波長を有する)などを有していてよい。一部の場合には、光線は、例えば、約350nm〜約1,000nm、約300nm〜約500nm、約500nm〜約1nm、約400nm〜約700nm、約600nm〜約1,000nm、または約500nm〜約50nmの範囲の周波数範囲にわたってよい。他の場合には、光線は、例えば、市販レーザーによって一般に生成される周波数、または蛍光物質が励起される周波数である、単色性(すなわち、単一周波数または狭い周波数分布を有する)であってよい。例えば、周波数は、およそ366nm、405nm、436nm、546nm、578nm、457nm、488nm、514nm、532nm、543nm、594nm、633nm、568nm、または647nmに集まる周波数であってよい。単色光線は、狭い周波数分布を有している可能性がある。例えば、周波数の90%もしくは95%が平均周波数の±5nm以内または±3nm以内である可能性がある。所定の場合には、光線は偏光(例えば、直線偏光または円偏光)することができる、または光線の2つ以上の波長を例えば、連続的もしくは同時に使用することができる。一部の実施形態では、光相互作用構成要素が装置内の光線の波長を変化させることができる。
【0146】
所定の実施形態では、アクチュエーターは、好ましくは近くの、もしくは隣接する細胞に影響を及ぼすことなく、特定の細胞または細胞のタイプを選択的に殺滅もしくは不活化するように構成および配置することができる。例えば、アクチュエーターは、反応部位、または反応部位と流体連絡している入口または出口へ実質的に方向付けられたエネルギー源を含むことができる;センサーによって特定の細胞または細胞のタイプが検出されると、アクチュエーターは、例えば、細胞にエネルギーを方向付けることによって細胞を標的とし、細胞を殺滅する、さもなければ何らかの方法(例えば、複製を防止するために十分な程度にそのDNAを損傷させることによって)で細胞を不活化することができる。細胞に向けて標的を定められるエネルギーは、細胞を不活化できる任意のエネルギー、例えば、電磁もしくは電離放射線、超音波、または熱エネルギーであってよい。
【0147】
所定の実施形態では、チップは、環境因子に影響を及ぼすことのできる作用因子、または因子に影響を及ぼすことのできる作用因子の前駆物質を反応部位内またはその近位へ輸送することによって、反応部位と関連している環境因子を制御するように(すなわち、それが反応部位内の環境因子に影響を及ぼすように)構成および配置することができる。所定の場合には、反応部位への作用因子(または前駆物質)の送達の制御を使用すると、環境因子を制御することができる。
【0148】
所定の実施形態では、反応部位内の、もしくは反応部位と関連している環境因子は、例えば、液体もしくはガスなどの外部の、もしくは未滅菌作用因子のような作用因子へ反応部位を直接的に接触させずに変化および/または制御することができる。例えば、反応部位は、無菌性および/または単離が必要とされる生物学的状況において使用するために生物学的標本もしくは物質を含有していることがある;または、反応部位は、例えば、液体もしくはpH変化に感受性である反応、例えば、非湿性環境で実施されなければならない、作用因子と反応部位との直接接触が困難を提示する水感受性反応を含有することがある。
【0149】
所定の実施形態では、上記で考察したように、チップは、作用因子が反応部位へ透過する、または反応部位内へ拡散するのを許容するように構成および配置することができる。例えば、反応部位は、少なくとも一部には、それを通って作用因子が透過できるチップの壁または層などの構成要素によって規定することができる。作用因子は、その中の環境因子または湿度制御膜(例えば、上述したような)または作用因子がそれを越えて透過できる半透過性膜(例えば、作用因子に関して)の1つまたは複数を変化および/または制御することができる。一部の場合には、構成要素は、作用因子に関して化学的または物理的に不活性である。所定の場合には、作用因子の流れは構成要素の一方の側で発生することができる。一部の実施形態では、構成要素の一方の側での作用因子の流れは、例えば、作用因子と構成要素との接触時間を増加させるために、蛇行もしくは非直線状経路に沿って発生することができる。例えば、図2では、区画20が区画42からそれを通って作用因子が透過できる膜(図示されていない)によって分離されている場合は、作用因子の流れは、蛇行経路281に沿って発生することができる。
【0150】
所定の実施形態では、チップ内のどこかで生成された化学物質は、その中の環境因子を制御するために反応部位と相互作用させることができるか、またはチップ内またはチップの外部に貯蔵された作用因子が反応部位と接触する、さもなければ反応部位に影響を及ぼすことを許容する1つまたは複数の流体経路をチップ内に作製(例えば、開放)することができる。作用因子は、反応部位内の1つまたは複数の環境因子を変化および/または制御することができる任意の作用因子であってよい。例えば、作用因子は、以前に説明したようにpH非中性組成物またはpH調整剤であってよい。1つの例として、図4Aでは、チップ105は、作用因子が反応部位へ透過する、または反応部位内へ拡散するのを許容するように構成および配置することができる。例えば、反応部位は湿度制御物質(例えば、上述したとおり)、壁(例えば、規定反応部位112の壁)またはそれを通って作用因子が透過して反応部位に影響を及ぼせるチップの1つまたは複数の層(例えば、上層100)などの構成要素を含むことができる。また別の例として、作用因子が何らかの方法で透過できる構成要素には、作用因子がそれを越えて透過できる浸透圧膜または半透膜(作用因子に関して半透過性)などの膜を含むことができる、または膜によって規定できる。一部の場合には、構成要素は作用因子に関して化学的または物理的に不活性であってよい;例えば、構成要素は、構成要素を実質的に損傷させる、または変化させることなく酸性またはアルカリ性化合物がそれを越えて反応部位に透過することを許容できる。所定の場合には、作用因子の流れは構成要素の一方の側で発生することができる。一部の実施形態では、構成要素の一方の側での作用因子の流れは、例えば、作用因子と構成要素との接触時間を増加させるために、蛇行もしくは非直線状経路に沿って発生することができる。
【0151】
例えば、所定の実施形態では、チップは規定の反応部位および透過性上層を有していてよい。本実施例では、分注装置が用途に依存して所望の時間枠内、例えば数秒から数十秒間、数分間、または数時間内に反応部位に向かって透過して反応部位と相互作用できる作用因子を生成できるように、分注装置が反応部位の近くに配置されている。分注装置は、さらにまた1つまたは複数の化学物質源、例えば、ガスおよび/またはpH調整剤の1つまたは複数の供給源と接続することができる。例として、これらの供給源は酸供給源およびアルカリ供給源であってよく、これらの供給源は各々が酸供給源またはアルカリ供給源であってよく、1つの供給源は細胞培地の供給源、またはグルコースもしくは生理食塩水の供給源であってよい。
【0152】
1つの例として、反応部位内または反応部位と関連している環境因子がpHである場合は、作用因子は、その中のpHを制御するために反応部位へ送達もしくは輸送する、または近づけることのできるpH調整剤であってよい。本明細書で使用する「pH調整」剤は、反応部位内または反応部位と関連している環境のpHを変化させることのできる任意の作用因子、例えば、酸、塩基、または酸もしくは塩基を生成するために反応部位内または反応部位の近位で反応できる作用因子であってよい。一部の実施形態では、pH調整剤は、反応部位、および/またはチップの他の構成要素に対して不活性である。pH調整剤は、反応部位内または反応部位と関連している環境のpHを有意または測定可能な程度まで、必要とされる感受性および特定の用途に依存して、例えば、少なくとも0.1、0.2、0.3、0.4、0.5、0.8、1、2、または3以上のpH単位を変化させることができる。必要とされるpH感受性は、当業者であれば容易に決定できる。例えば、反応を開始させるためにpHの変化を必要とする化学プロセスは大きなpH変化を必要とすることがあるが、他方最適値に近い反応部位のpHを調節するプロセスはpHのより小さな変化に対する感受性を必要とすることがある。
【0153】
本明細書で使用する「酸」には、化学の分野において使用される通常の意味が与えられている。酸は、酸の強度に依存して、約6.99未満、5未満、4未満、3未満、または2未満pH単位のpHを有する可能性がある。同様に、「塩基」または「アルカリ」にも、化学の分野において使用される通常の意味が与えられている。塩基またはアルカリは、少なくとも約7.01、少なくとも約8、少なくとも約9、少なくとも約11、または少なくとも約12pH単位のpHを有する可能性がある。「非中性」または「pH非中性」の組成物は、酸性または塩基性いずれかの組成物である(すなわち、この組成物は、好ましくは少なくとも1もしくは2pH単位のように有意な量で7より大きいか小さいpHを有する)。pH非中性組成物は、固体、液体、または一部の場合にはガスであってよい。本明細書で使用する「ガス状」酸または塩基は、気相内にあるか、または概して揮発性(すなわち高い蒸気圧を有する)および容易に気相に流入する組成物である。例えば、ガス状酸または塩基は、少なくとも約300mmHg、少なくとも約400mmHg、少なくとも約500mmHg、少なくとも約600mmHg、または少なくとも約700mmHgの蒸気圧を有することがある。ガス状酸の非限定的例には、酢酸、ギ酸、プロピオン酸、ピルビン酸、乳酸、SO、CO、CO、NO、または酪酸が含まれる;ガス状塩基の非限定的例には、アンモニア、ホスフィン、またはアルシンが含まれる。
【0154】
一部の実施形態では、反応部位内の環境因子は、例えば、1つまたは複数の前駆物質から、チップ内で1つまたは複数の作用因子を生成することによって変化させることができる。これらの作用因子は、反応部位内の環境因子と相互作用できる、または何らかの方法で環境因子を変化させることができる。1つの実施形態では、作用因子は反応部位内で生成させることができる。また別の実施形態では、作用因子はチップ内のどこかで生成させ、何らかの方法、例えば、流体的に反応部位に向けて輸送することができる。例えば、化学物質をチップと関連している、または外部(例えば、リザーバー内におけるように)の様々な区画内で生成および/または保存し、例えば、チャネルもしくは他の流体接続を通して、または膜もしくは他の構成要素を越えて透過もしくは拡散させることによって、反応部位へ輸送することができる。1つの実施形態では、作用因子は反応部位に近い場所で生成できる。例えば、作用因子はそれを例えば、数秒間から数十秒間以内に反応部位へ容易に移動または輸送できる場所で生成できる。また別の実施形態では、作用因子は例えば、膜を通して、または区画と反応部位との液体連絡を防止する障壁を越えて反応部位へ輸送されるガスであってよいが、他方では非ガス生成物は反応部位へ流入することが防止される。所定の実施形態では、作用因子を生成する前駆物質の反応は外部で開始されてよい。例えば、レーザーなどの光源を前駆物質に適用できる、または電流もしくは熱などの他のエネルギー源を使用して前駆物質の反応を開始させることができる。さらにまた別の実施形態では、例えば、可逆的に、区画と反応部位との間の流体接続が作り出されてもよい。例えば、流体接続は、区画と反応部位とを分離している機械的弁もしくは微小機械的弁などの弁を開放することによって作り出すことができる。
【0155】
一部の場合には、例えば、前駆物質が分解または変性しないように、前駆物質が反応する能力を増強するため(例えば、触媒または酵素)、または前駆物質への入射エネルギーの吸収を増強するため、例えば、作用因子を生成する前駆物質の反応速度を上昇させるために、追加の化合物を前駆物質と結合することができる。一部の実施形態では、例えば、エネルギーの吸収を増強するために、暗色もしくは「黒色」物質などの入射電磁放射線を吸収できる物質を添加することができる。そのような物質の非限定的例には、石英、黒色ガラス、ケイ素、黒砂、カーボンブラックなどが含まれる。追加の化合物は、実質的に非反応性で、輸送可能(すなわち、チップの層または構成要素を通して輸送可能)な作用因子を生成できない、または追加の化合物は作用因子の生成もしくは反応部位と関連している環境因子の制御を妨害できない。
【0156】
所定の実施形態では、作用因子は、熱分解または変性反応のように、所定の温度で活性化される反応で生成できる。一部の場合には、作用因子を生成する反応は、前駆物質が例えば、少なくとも約200℃、300℃、400℃、または500℃の温度のように反応を活性化できる所定の温度に曝露させられると開始させることができる。反応を活性化するために必要な温度は、任意の適切な技術によって、例えば、前駆物質に光線エネルギー、熱、電気エネルギー(例えば、抵抗加熱)、発熱性化学反応などを曝露させると、前駆物質中で生成できる。
【0157】
一部の実施形態では、作用因子はそのように生成されたガス、例えば、O、CO、CO、NO、NO、HClなどであってよい。一部の場合には、作用因子生成反応は、1つまたは複数のガスおよび/または1つまたは複数の非ガス生成物を生成することがある。一部の場合には、ガス状作用因子はその後、反応部位内または反応部位の近くへ輸送されるが(例えば、膜を通して、もしくは障壁を越えて)、他方非ガス生成物(液体もしくは固体など)は何らかの方法で反応部位に流入するのが防止され得る。
【0158】
所定の場合には、作用因子はpH調整剤であってよい。一部の場合には、pH調整剤は、アンモニアなどの塩基であってよい。塩基は、前駆物質のアルカリ塩の熱分解反応を通してのような、アルカリ性物質を生成できる任意の適切な反応によって生成できる。例えば、アンモニアは、硝酸アンモニウム、炭酸アンモニウム、重炭酸アンモニウム、塩化アンモニウム、臭化アンモニウム、フッ化アンモニウムなどの前駆物質アンモニウム塩の熱分解を通して生成できる。他の場合には、pH調整剤は、酢酸またはギ酸などの酸であってよい。酸は、前駆物質の酸性塩の熱分解反応を通してのような、酸性物質を生成できる任意の適切な反応によって生成できる。例えば、酢酸は酢酸ナトリウム、酢酸カリウム、酢酸カルシウム、酢酸リチウム、酢酸マグネシウムの熱分解によって生成できる。同様に、ギ酸はギ酸ナトリウム、ギ酸カリウム、ギ酸カルシウム、ギ酸リチウム、ギ酸マグネシウムの熱分解によって生成できる。一部の場合には、pH調整剤は、酸または塩基ではないが、チップ内または反応部位内で酸または塩基に変換させることのできる形状にあってよい。例えば、pH調整剤は、チップ内または反応部位内で水と反応して酸または塩基を形成することができる。非限定的な例として、COなどのガスは水と反応して炭酸、例えば:
【0159】
【数1−1】

を生成できる。
【0160】
さらにまた別のセットの実施形態では、作用因子は反応部位と流体連絡していない区画内に存在していてよい;反応部位への作用因子の曝露がその中の環境因子を変化または制御するために所望である場合は、作用因子がその中へ流入できるか、さもなければ反応部位と相互作用できる流体経路が作り出されてよい。例えば、作り出される流体系路は新規経路、すなわち非先在経路、または以前には流体経路を含有していなかった領域内に作り出された経路であってよい;または作り出された流体経路は、流体連絡を防止するために変化させられている流体経路を以前に含有していた領域内に作り出されてもよい。一部の場合には、新規の経路は、反応部位を規定する層、膜、もしくは壁または反応部位と流体連絡しているチャネルなどの、チップの構成要素を除去するまたは損傷させることによってチップ内に作り出されてもよい。また別の例として、流体経路は、例えば、弁もしくはスイッチなどの所定の条件下で開放および/または修飾できる密閉式の先在する流体経路であってよい。1つの実施形態では、区画は密閉式区画、例えば、外部環境および/または反応部位にアクセスできない区画である。また別の実施形態では、区画は外部からアクセス可能であるが(すなわち、入口または出口を通して)、反応部位とは流体連絡していない。
【0161】
所定の本明細書に開示したチップは、反応部位から種を送達するため、または種を除去するための1つまたは複数の流体経路を含むことができる。一部の場合には、流体経路は、反応部位から区画を分離する、または反応部位と流体連絡している流体経路から区画を分離する構成要素(例えば、壁もしくは膜におけるように)を透過化もしくは損傷させることによってインサイチュー(チップの構築後、チップの拡大中および/またはチップの使用中)で作り出すことができる。例えば、本発明の所定の実施形態では、流体経路または流体連絡のための他の手段は、作用因子(および/または作用因子の前駆物質)を含有する区画を反応部位との流体連絡から分離するか、または区画をチャネルもしくは反応部位と流体連絡している他の流体経路から分離する。したがって区画と反応部位との間の流体接続を作り出す構成要素を透過化および/または損傷させる(可逆的または非可逆的)ことによって、流体経路または流体連絡のためのたの他の手段を作り出すことができる。例えば、構成要素は、化学物質の透過性を上昇させるために構成要素を加熱することによって、または構成要素が融解もしくは蒸発するのを誘発することによって透過化することができる。一部の場合には、構成要素の透過性は、1桁、2桁、または3桁以上増強することができる。所定の場合には、構成要素の透過性は、例えば、温度を低下させることによって、または非透過化剤を導入することによって、可逆性または少なくとも部分的可逆性であってよい。
【0162】
構成要素は、一部の場合には、反応部位との流体接続を作り出すために、反応、例えば、化学もしくは電気化学反応を通して損傷させるか、さもなければ変化もしくは透過化させることもできる。例えば、構成要素は、金、銀、銅などの、適切な電流を付加すると電気分解できる金属を含むことができる。さらにまた別の例として、構成要素は、例えば、反応性の種を用いて化学エッチングすることができる。
【0163】
所定の実施形態では、上記で考察した構成要素は、例えば、区画と反応部位との間に流体経路を作り出すために微細針を用いて構成要素に穴を開けることによって、機械的に変化および/または損傷させることができる。微細針または他の機械的装置は、チップ内にあってよい、または外部からであってもよい。1つの実施形態では、構成要素は可逆性ベースで変化させることができ、例えば、構成要素はセルフシールであってよく、そして/または再シール可能なエラストマー物質を含んでいてもよい。
【0164】
構成要素は、さらにまた一部の場合には機械的力もしくは化学薬品を使用せずに損傷させることもできる。例えば、それを損傷させるには表面にエネルギーを適用できる。一部の実施形態では、構成要素は、例えば、熱もしくは光線を使用して剥離できる。光線が使用される場合は、光線は一部の場合には表面へ導波管を通して導くことができる、または光線を表面へ直接的に適用できる。
【0165】
構成要素は、一部の実施形態では、流体経路の作製を増強できる物質を含むことができる。例として、強化物質は、光線もしくは他の形態のエネルギーの吸収を促進できるか、または化学反応もしくは輸送率を増加させることができる。例えば、1つの実施形態では、構成要素は、入射電磁放射線を吸収できる物質、すなわち石英、黒色ガラス、ケイ素、黒砂、カーボンブラックなどの暗色化もしくは「黒色」物質を含むことができる。他の例として、構成要素は、触媒、酵素、または透過増強剤を含むことができる。
【0166】
本明細書に開示したチップは、様々な他の構成要素を含むことができる。例えば、チップは、以下で詳細に説明するように、光源、流量計(例えば、ガスまたは液体の流体流量を測定するため)、集積回路などの回路、リザーバー(例えば、溶液のため)、微小機械的もしくはMEMS(「微小電子機械システム」)構成要素、微小弁、マイクロポンプなどの構成要素を含むことができる。構成要素は、半導体を作製するために使用される技術に類似する、標準微細加工において使用される技術などの技術を用いてチップ上で作製できる(例えば、Madou Fundamentals of Microfabrication, CRC Press, Boca Raton, FL 1997;およびMaluf, An Introduction of Micromechanical Systems Engineering, Artech House Boston, MA 2000を参照)。一部の実施形態では、少なくとも1つ、2つ、3つ以上の構成要素がチップへ一体的に接続されている。所定の実施形態では、構成要素の全部がチップへ一体的に接続されている。
【0167】
本発明とともに使用するために適切な構成要素の他の例には、チップ、リアクターおよび/または反応部位内での混合、チップ、リアクターおよび/または反応部位内での加熱、分離、および/または分散装置を増強するために流れの流路内に配置されるパイロン様閉塞物が含まれる。例えば、加熱装置が存在する場合は、加熱装置は、超小型の伝統的熱交換器であってよい。
【0168】
例えば、1セットの実施形態では、本明細書に開示した装置は、湿度を制御できる(例えば、上記で説明したように)および/または実質的に透明性であってよい膜などの膜を含むことができる。膜が存在する場合は、それはチップ内のリアクター内の任意の場所に配置できる。所定の実施形態では、膜は、それが1個または複数の反応部位の表面を規定し、そして/または反応部位を2つ以上の部分に分割するように配置されるが、それらの部分は同一または相違する寸法を有していてよい。例えば、図7Aでは、湿度制御装置および/または実質的に透明性であってよい膜410は、反応部位411の表面を規定する。図7Bでは、膜410は反応部位411の表面および反応部位412の表面を規定する。また別の例として、膜は、それがチップの1個または複数の反応部位と流体連絡しているように配置することができる。一部の場合には、膜は、第1反応部位を第2反応部位と流体接続する経路が膜を越えるように配置することができる。また別の実施形態では、膜は、それがチップの1個または複数の反応部位と流体連絡しているように配置することができる。一部の場合には、膜は、第1反応部位を第2反応部位と流体接続する経路が膜を越えるように配置することができる。例えば、図7Cおよび7Dでは、膜410は反応部位411または412の表面を規定しないが、反応部位411と反応部位412とを流体接続している少なくとも1つの経路が膜410を越えるように配置されている。
【0169】
1つの例として、1つの実施形態では、膜は、例えば、約0.03μmより大きく約5μ未満の数平均孔径を有する多孔性膜であってよい。他の実施形態では、膜の孔径は、約4μm未満、約3μm未満、約2μm未満、約1.5μm未満、約1.0μm未満、約0.75μm未満、約0.6μm未満、約0.5μm未満、約0.4μm未満、約0.3μm未満、約0.1μm未満、約0.07μ未満、ならびに他の実施形態では、約0.05μm未満であってよい。所定の場合には、孔径は0.03μmより大きいか、または0.08μmより大きい。一部の場合には、膜は、所定の細胞(例えば、細菌細胞、酵母細胞、哺乳動物細胞など)がそれを通過するのを防止するように選択できる。例えば、約0.2μmの孔径を備える膜は細菌細胞の通過を防止でき、そして約1μmの孔径を備える膜は哺乳動物細胞の通過を防止できる。所定の実施形態では、膜は、所定の分子、例えば、所定のサイズおよび/または電荷を有する微小分子の通過を防止または許容するように、すなわち電荷および/またはサイズ選択性の膜を選択できる。
【0170】
膜は、湿度制御装置として構成された場合は、上記で記載した物質から構築できる。上記で考察したようなこれらの、または他の実施形態では、膜は、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリスルホン、ポリカーボネート、ポリメチルメタクリレートなどのアクリル、ポリエチレン、ポリプロピレン、再生セルロース、ニトロセルロース、酸化アルミニウム、ガラス、繊維ガラスなどのポリマーまたは他の物質を含むことができる。所定の実施形態では、膜は、例えば、上述したように、実質的に透明性であってもよい。1つの実施形態では、膜は、例えば、Oxyphen U.S.A.,Inc.(ニューヨーク州ニューヨーク)によって製造されたROTRAC(登録商標)キャピラリー膜のような、2μm以下の孔径を有する実質的に透明性のポリエチレンテレフタレート膜である。
【0171】
1セットの実施形態では、チップは、その中で(例えば、反応部位内で)発生させることが意図された反応または相互作用を促進するように適応させた構造を含むことができる。例えば、チップが細胞培養のための1つまたは複数のバイオリアクターとして機能することが意図されている場合は、チップは、細胞増殖を改善または促進できる構造を含むことができる。例えば、一部の場合には、反応部位の表面は、細胞結合または接着を促進できる表面であってよいか、またはチップ内のリアクターおよび/または反応部位は細胞接着層を含む構造を含むことができ、それらには広範囲の親水性、細胞親和性、および/または生物親和性物質のいずれかを含むことができる。例として、表面は、広範囲の親水性、細胞親和性、および/または生物親和性物質のいずれか、例えば、露出したカルボン酸基、アルコール基、および/またはアミノ基を有する物質を用いてイオン化、被覆(例えば、支持体物質を用いて)および/または微細パターン化することができる。細胞接着層のために適合する物質の例には、ポリフルオロ有機物質、ポリエステル、PDMS、ポリカーボネート、ポリスチレン、および酸化アルミニウムが含まれるが、それらに限定されない。また別の例として、この構造は、細胞接着を促進する物質を用いて被覆した層、例えば、RGDペプチド配列を含むことができるか、または構造は、それが細胞接着を促進できるような方法で処理できる。例えば、表面は、表面が相当により親水性、細胞親和性および/または生物親和性になるように処理することができる。一部の実施形態では、例えば、付着、結合、浸漬、または他の処理によって細胞接着を促進する物質で細胞接着層の表面を修飾するのが望ましいことがある。細胞接着を促進する代表的物質には、フィブロネクチン、ラミニン、アルブミン、またはコラーゲンなどが含まれるが、それらに限定されない。他の実施形態では、例えば、所定のタイプの細菌もしくは足場非依存性細胞を使用する場合は、表面は疎水性、細胞非親和性、および/または生物非親和性物質から形成されてよいか、または表面はそれをより疎水性、細胞非親和性、および/または生物非親和性にするための何らかの方法で、例えば、脂肪族炭化水素および/または過フッ化炭化水素を用いることで処理することができる。
【0172】
一部の実施形態では、チップは、「光相互作用構成要素」、すなわち、例えば、光線を生成し、光線に反応し、光線の特性における変化を誘発し、光線を方向付け、光線を変化させるなどによって光線と相互作用する構成要素を含むことができる。本明細書で使用する「光相互作用構成要素」は、チップおよび/またはリアクター機能に関連する何らかの方法で、例えば、光線を生成し、光線に反応し、光線の特性における変化を誘発し、光線を方向付け、光線を変化させるなどによって、チップもしくはリアクター内のサンプルに影響を及ぼし、そして/またはサンプルについて何か(サンプルの存在、サンプルの特性など)を決定する方法で、光線と相互作用する構成要素である。1つの実施形態では、構成要素は、発光ダイオード(「LED」)またはレーザーなどのように光線を生成する。他の実施形態では、光相互作用構成要素は、光検出器または太陽電池セルなどの、光線に感受性、または光線に応答する構成要素であってよい。さらにまた別の実施形態では、光相互作用構成要素は、例えば、光線を集中もしくは視準するか、またはレンズにおけるように光線が発散するのを誘発し、または回折格子もしくはプリズムにおけるようにスペクトル的に光線を分散させるような何らかの方法で光線を操作するか、または変化させることができる。また別の実施形態では、光相互作用構成要素は、例えば、導波管または鏡におけるように、湾曲経路に沿って、または隅部の周囲で何らかの方法で光線を伝送する、もしくは方向を変更することができる。さらにまた別の実施形態では、光相互作用構成要素は、例えば、分極器もしくは干渉計におけるように、偏光度または周波数などの構成要素上の特性を変化させることができる。その他の装置、または装置の組み合わせもまた可能である。一般に、用語「光相互作用構成要素」は、空気、またはガラスもしくはプラスチックの平面(例えば、「窓」)などの有意な修飾、偏光、もしくは再方向付けを伴わずに受動的に光線を伝送する構成要素もしくは装置を含んでいない。用語「光相互作用構成要素」は、さらにまた一般に、不透光性物質に見いだされるような応答を伴わずに、本質的にすべての入射光線を受動的に吸収する構成要素も含んでいない。
【0173】
光相互作用構成要素がリアクターもしくはチップと結び付けて提供される実施形態では、それはリアクターもしくはチップ上または内の任意の場所に配置することができる。例えば、光相互作用構成要素は、反応部位内または反応部位に隣接して配置できる。一部の場合には、光相互作用構成要素は、概して例えば、反応部位の壁または表面として反応部位と一体的に接続されている。
【0174】
別の例として、光相互作用構成要素は、光相互作用構成要素に進入する光線の少なくとも一部分が反応部位と光学連絡しているように、本明細書に開示したチップ内のどこかに配置されてよいか、またはチップと一体的に接続されてよい。本明細書で使用する用語「光学連絡」は、一般に、可視光線などの電磁放射線の輸送を提供する任意の経路を意味する。光学連絡には、直接的な「照準線」連絡が含まれる。光学連絡は、例えば、レンズ、フィルター、光ファイバー、導波管、回折格子、鏡、ビームスプリッター、プリズムなどの光学装置の使用によって作製することもできる。一部の実施形態では、光相互作用構成要素は、2個以上の反応部位へ、または2個以上の反応部位から光線を方向付けることができる、または光相互作用構成要素は、2つ以上の光源から反応部位へ光線を方向付けることができる。所定の実施形態では、2つ以上の光相互作用構成要素が存在してよい。
【0175】
光相互作用構成要素は、一部の場合には導波管を含むことができる。本明細書で使用する用語「導波管」には、当技術分野における通常の意味が与えられており、光ファイバーを含むことができる。導波管は、一般に光線を受信してその光線の一部分を「照準線」連絡内ではない場所(導波管は照準線領域へ光線を伝送できるが)、例えば、実質的損失を伴わずに屈曲部、隅部、および類似の障害物の周囲へ誘導または伝送することができる。
【0176】
一部の実施形態では、導波管は、包埋されるか、または少なくとも部分的に、低い屈折率を有していてよい第2の「クラッディング」物質によって取り囲まれた物質の「コア」領域を含むことができる。コアは、任意の形状、例えば、物質のスラブ形、ストリップ形、または円筒形を有していてよい。
【0177】
導波管、または導波管の少なくとも一部分は、反応部位へ、または反応部位から光線を伝送できる任意の物質から作製されてよい。導波管は、実質的に透明性、または一部の場合には透光性であってよい。一部の実施形態では、導波管は、ケイ素をベースとする物質、例えば、ガラス、イオン注入ガラス、石英、ケイ素、酸化ケイ素、窒化ケイ素、炭化ケイ素、ポリシリコン、被覆ガラス、電導性ガラス、インジウムスズ酸化物ガラスなどから形成されてよい。他の実施形態では、導波管は、他の透明性または透光性の有機または無機物質を含むことができる。例えば、所定の実施形態では、導波管は、ポリアクリレート、ポリメタクリレート、ポリカーボネート、ポリスチレン、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリイミド、ポリフッ化ビニリデン、イオン交換ポリマー、および上記のフッ化誘導体を含むがそれらに限定されないポリマーを含んでいてよい。組み合わせ、混合物、またはコポリマーもまた可能である。
【0178】
所定の実施形態では、導波管またはその一部分は、高度に反射性の物質、例えば、銀またはアルミニウムで取り囲まれてよいか、またはコーティングされてよい。また別の実施形態では、導波管は、それが第1屈折率を有する中心物質(例えば、コア)、ならびに第2屈折率を有する周囲の物質(例えば、クラッディング)を含むように作成されてよい。クラッディングは、中心物質の屈折率より低い屈折率を有していてよい。さらにまた別の実施形態では、コアまたはクラッディングの屈折率は、断面を越えて変動してよい。1つの例として、コアは、屈折率が一般に中心近くで最高であるグレーデッド型光ファイバーであってよい。
【0179】
これらの条件下では、中心物質を通って移動する光線の実質的部分は、この屈折率の差の結果として内部反射されてよい(「総内部反射」)。導波管の一端に進入する電磁放射線は、コア−クラッディング境界で総内部反射の現象に起因する中心領域へ限定することができる。光線は、クラッディング物質もしくは他の周囲物質によって有意に吸収されずに、それが導波管の端部、または光線がそれから出ていく導波管の規定領域に到達するまでコアを通って輸送されてよい。中心物質を通って移動する光線は、有意な強度の消失を伴わずに、約10db/cmもしくは20db/cm未満の減衰係数で、隅部および他の障害物の周囲に方向付けられてよい。また別の実施形態では、導波管は2つ以上の中心物質または2つ以上の周囲物質を有していてよい。
【0180】
導波管の1つの例として、導波管を形成する中心物質および周囲物質の両方は、各々がガラスであってよい。また別の例として、導波管は、低い屈折率を備える物質が高い屈折率を備える物質を取り囲んでいるように、ポリマーおよびケイ素をベースとする物質から形成されてよい。さらにまた別の例として、導波管は、例えば、空気もしくは導波管より高い屈折率を有する、そこで導波管/空気または導波管/チップの界面で総内部反射が発生してよい状態を生じさせるようなチップの部分によって取り囲まれた単一物質から構築することができる。
【0181】
導波管は、例えば、ミリング、グラインディング、または機械加工(例えば、チップ基材内へのチャネルの切削もしくはエッチング、次に任意でシーラントを用いて、物質をチャネル内へ沈着させることによって)によるような、当業者に知られている任意の適切な技術によって構築することができる。導波管は、さらにまたチップ作製プロセス中に物質層を沈着させることによって形成することもできる。一部の場合には、沈着させられた物質は、周囲基材より高い屈折率を有していてよいため、したがって上述したように一般にコア−クラッディング構造を形成する。導波管は、さらにまた周囲物質に比較して屈折率を操作/変化させるような方法で、ガラスもしくはプラスチックなどのチップを形成する物質をレーザーエッチングする工程によって構築することもできる。一部の場合には、エッチングされた/エッチングされていない部分の屈折率は、コア−クラッディング構造を作製できるように制御することができる。
【0182】
一部の実施形態では、光相互作用構成要素は、光源であってよいか、または光源を含んでいてよい。光源は、反応部位と光学連絡している任意の光源であってよい。例えば、光源は、外部もしくは周囲光線、LEDにおいて作り出されるようなコヒーレント光線もしくは単色光線、または半導体レーザーもしくは量子井戸レーザーなどのレーザーであってよい。光源は、チップの一部として作製されたレーザーダイオード内のチップの一部分と一体的に接続されていてよい、または光源はチップから離れていて、それと一体的に接続されていないが、それでも反応部位との光学連絡を許容できるように配置されていてよい。光源は、単一波長もしくは実質的に単色の波長、または上述したように広範囲の波長を生成することができる。光源は、所定の実施形態では、化学反応または光子を生成する化学反応などの生物学的プロセス、例えば、GFP(「緑色蛍光タンパク質」)もしくはルシフェラーゼを含む反応において、または蛍光もしくは燐光を通して生成することもできる。例えば、入射電子、電流、摩擦、熱、化学的もしくは生物学的反応は、例えば、反応部位内に配置されたサンプル内、または反応部位と光学連絡しているチップ内に位置する反応中心から光線を生成するように適用できる。
【0183】
所定の場合には、光相互作用構成要素は、フィルター、例えば、低域フィルター、高域フィルター、ノッチフィルター、空間フィルター、波長選択フィルターなどを含むことができる。フィルターは、例えば、入射光線の一部分を実質的に減少もしくは排除することができる。例えば、フィルターは、約350nm未満または約1,000nmを超える波長を有する光線を排除または実質的に減少させることができる。また別の実施形態では、フィルターは、入射光線内の雑音を減少させるか、または入射光線の信号雑音比を増加させることができる。さらにまた別の実施形態では、フィルターは、入射光線を例えば、直線偏光または円偏光することができる。
【0184】
一部の実施形態では、光相互作用構成要素は、反応部位と光学連絡している光学素子を含むことができる。本明細書で使用する「光学素子」は、例えば、光線を集束もしくは照準するか、または光線が発散することを引き起こすことによって光学素子に入射もしくは射出する光線の経路を変化させることのできる任意の素子もしくは装置を意味する。例えば、光学素子は入射光線を単一点もしくは小さな領域へ集束させることができる、または光学素子は平行光線もしくは集束光線を形成するために発散光線を視準する、または方向変更することができる。用語「集束する」は、一般に1つの点もしくは小さな領域へ光線が収束することを引き起こす能力を意味する。用語「視準する」は、一般に、必ずしも1つの点もしくは小さな領域にではなく、例えば、光線が無限遠点で集束するように、光線の収束を増加させる能力を意味する。1つの例として、発散光線は、平行光線に視準することができる。所定の実施形態では、光学素子は、例えば、発散レンズ内におけるように、光線を分散させることができるか、または光線が発散するのを引き起こすことができる。他の実施形態では、光学素子は、例えば、ビームスプリッター、光学コーティング(例えば、二色性、反射防止性、または反射性コーティング)、光学格子、回折格子などであってよい。
【0185】
1セットの実施形態では、光学素子は、レンズであってよい。レンズは、収束レンズまたは発散レンズなどの任意のレンズであってよい。レンズは、例えば、メニスカス、平凸レンズ、平凹レンズ、両凸レンズ、両凹レンズ、フレネルレンズ、球面レンズ、非球面レンズ、バイナリーレンズなどであってよい。光学素子は、平面鏡、曲面鏡、放物面鏡などの鏡であってもよい。他の実施形態では、光学素子は、例えば、回折格子もしくはプリズムにおけるように、光線が発散するのを引き起こすことができる。
【0186】
所定の場合には、相違する屈折率を有する物質を使用できる。例えば、光線が導波管を通って光学素子に到達する実施形態では、光学素子は、導波管とは相違する屈折率を有する物質であってよい。一部の場合には、光学素子の屈折率は、導波管の屈折率とほぼ同じか、それより大きい。
【0187】
一部の場合には、光学素子として分布屈折率を有する物質(「GRIN」物質)を使用できる。GRIN物質は、GRIN物質に達する光線に固有の発散量を最小限に抑えることができる。例えば、素子の断面に沿って屈折率を変化させることによってレンズとして機能する、厚さが一様な物質を作製することができる。1つの実施形態では、GRIN物質は、発散光線を平行配列へ方向を変更させることができる。また別の実施形態では、GRIN物質は必ずしも一様な厚さを有しておらず、物質の分布屈折率と物質の形状との組み合わせを使用して光線を集束または視準させることができる。
【0188】
光相互作用構成要素は、一部の実施形態では、光センサーもしくは光検出器、光電子増倍管、太陽電池、アバランシェフォトダイオードなどのフォトダイオード、フォトダイオードアレイ、CCDチップ(「電荷結合デバイス」)などの、光線を電気へ変換できる構成要素を含むことができる。一部の場合には、構成要素は、例えば、発光(蛍光もしくは燐光を含んでいる)、吸光、散乱、光学密度、偏光測定、またはヒトの目を含む他の測定を通して、反応部位内の物質の状況もしくは状態を決定することができる。
【0189】
所定の場合には、光相互作用構成要素は、例えば、反応部位もしくは反応部位の近くに位置する細胞もしくは他の物質の一部分を画像描出するため、または細胞が表面に付着しているかどうかを決定するための、画像化目的に使用できる。
【0190】
一部の場合には、光相互作用構成要素を使用すると電気を生成できる。1つの実施形態では、太陽電池は、半導体物質を含む1つまたは複数の層を用いて、チップ内で一体的に生成することができる。
【0191】
一部の実施形態では、光線は、例えば、化学反応を活性化もしくは阻害するために、反応部位に方向付けることができる。例えば、反応は活性化のための光線の使用を必要とすることがある、または感光性酵素は酵素に光線を適用することによって阻害することができる。所定の実施形態では、反応部位に方向付けられた光線は、プローブもしくはシグナル源として使用できる。光線は、所定の実施形態では、例えば、反応部位に到達する光線が特異的波長、偏光、または強度を有するように、反応部位へ制御された方法で送達することができる。
【0192】
一部の実施形態では、反応部位から発生した光線の一部分を検出および分析することができる。反応部位から発生した光線は、反射もしくは屈折光線、例えば、上述したように反応部位に方向付けられた光線であってよいか、または光線は物理的手段を通して、例えば、蛍光もしくは燐光を通して生成されてもよい。所定の実施形態では、光線は、上述したように反応部位内で生成することができる。反応部位からの光線は、任意の適切な分析技術、例えば、赤外線分光法、FTIR(「フーリエ変換赤外線分光法」)、ラマン分光法、吸収分光法、蛍光分光法、光学密度、円偏光二色性、光散乱法、偏光分析法、屈折率測定法、濁度測定法、準弾性光散乱、または任意の他の適切な技術を使用して分析することができる。また別の実施形態では、反応部位のイメージングは、例えば、光学イメージング、または赤外線イメージングを用いて実施できる。
【0193】
一部の実施形態では、チップ内のリアクターおよび/または反応部位は、1つまたは複数のタイプの生きている細胞の増殖を例えば、同時に促進する環境を維持するために構成および配置することができる。一部の場合では、反応部位には、生きている組織、例えば、それから細胞が作り出される組織の中で見いだされる条件に類似する流量、酸素、栄養素分布などの条件を提供することができる。従って、チップは、バッチ培養システムによって提供される条件よりインビボに近い条件を提供することもできる。1個または複数の細胞が反応部位内で使用される実施形態では、細胞は、任意の細胞もしくは細胞タイプ、例えば、原核細胞または真核細胞であってよい。例えば、細胞は細菌もしくは他の単細胞生物、植物細胞、昆虫細胞、真菌細胞または動物細胞であってよい。細胞が単細胞生物である場合、細胞は、例えば、原生動物、トリパノソーマ、アメーバ、酵母細胞、藻類であってよい。細胞が動物細胞である場合は、細胞は、例えば、脊椎動物細胞(例えば、ミバエ由来の細胞)、魚細胞(例えば、ゼブラフィッシュ細胞)、両生類細胞(例えば、カエル細胞)、爬虫類細胞、トリ細胞、または霊長類細胞、ウシ細胞、ウマ細胞、ブタ細胞、ヤギ細胞、イヌ細胞、ネコ細胞、またはラットもしくはマウスなどの齧歯類由来の細胞などの哺乳動物細胞であってよい。細胞が多細胞生物由来である場合は、細胞は生物の任意の部分由来であってよい。例えば、細胞が動物由来である場合は、細胞は、心臓細胞、線維芽細胞、角化細胞、肝細胞、軟骨細胞、神経細胞、骨細胞、筋細胞、血球、内皮細胞、免疫細胞(例えば、T細胞、B細胞、マクロファージ、好中球、好塩基球、マスト細胞、好酸球)、幹細胞などであってよい。一部の場合には、細胞は遺伝子組み換え細胞であってよい。所定の実施形態では、細胞は、チャイニーズハムスター卵巣(「CHO」)細胞または3T3細胞であってよい。一部の実施形態では、2つ以上の細胞タイプ、例えば、線維芽細胞および幹細胞を同時に使用できる。所定の実施形態では、細胞単層、組織培養または細胞構築物(例えば、生きていない足場上に位置する細胞)などもまた反応部位において使用できる。特定の細胞タイプのために反応部位内において必要な精密な環境条件は、当業者であれば決定できる。
【0194】
一部の例では、細胞は例えば、ナノグラム、マイクログラム、ミリグラムまたはグラム以上の量で、当該の治療用および/または診断用の化学的または生物学的化合物を生成することができる。例えば、細胞はモノクローナル抗体、組み換えタンパク質などのタンパク質、アミノ酸、ホルモン、ビタミン、薬物もしくは医薬品、他の治療用分子、人工化学薬品、ポリマー、GFP(「緑色蛍光タンパク質」)もしくはルシフェラーゼなどのトレーサーなどの生成物を生成することができる。1セットの実施形態では、細胞は、新薬発見および/または新薬開発のために使用できる。例えば、細胞は細胞と相互作用することが推測される作用因子に曝露させることができる。そのような作用因子の非限定的例には、癌原性もしくは突然変異原性化合物、合成化合物、ホルモンもしくはホルモンアナログ、ビタミン、トレーサー、薬物もしくは医薬品、ウイルス、プリオン、細菌などが含まれる。例えば、1つの実施形態では、本発明は、モノクローナル抗体および/または他の当該の化合物の高スループットプロセッシングを可能にするための全自動細胞培養において使用できる。また別の実施形態では、本明細書に開示した装置および方法を使用すると、例えば、自己生存性、自己生成率などを決定するために、細胞、細胞タイプ、細胞増殖条件などをスクリーニングすることができる。一部の場合には、本明細書に開示した装置および方法は、高スループットスクリーニング技術において使用できる。例えば、本明細書に開示した装置および方法は、1つまたは複数の選択した化合物が、細胞増殖、細胞もしくは細胞タイプの正常もしくは異常な生物学的機能、タンパク質または細胞によって生成された他の作用因子の発現などを評価するために使用できる。本明細書に開示した装置および方法は、さらにまた様々な環境因子が細胞増殖、細胞の生物学的機能、細胞生成物の産生に及ぼす作用を調査するために使用できる。
【0195】
所定の場合には、チップ内のリアクターおよび/または反応部位は、反応部位内の生きている細胞との化学的もしくは生化学的反応を防止し、促進し、そして/または決定するため(例えば、もしあれば、薬物、ホルモン、ビタミン、抗生物質、酵素、抗体、タンパク質、炭水化物などの作用因子が生きている細胞に及ぼす作用を決定するため)に構成および配置することができる。例えば、細胞と相互作用することができると推測される1つまたは複数の作用因子は、細胞を含有するリアクターおよび/または反応部位へ添加することができ、そして本発明のシステムおよび方法を用いて、作用因子への細胞の反応を決定することができる。
【0196】
一部の場合には、細胞は感光性であってよい。例えば、細胞は光線刺激に応答する、または光合成性である植物細胞である。また別の実施形態では、光線は、感光性の哺乳動物細胞、または植物細胞などの細胞を増殖させるために使用できる。さらにまた別の実施形態では、細胞は、光線に引きつけられるか、または光線によってはねつけられる細菌であってよい。また別の実施形態では、細胞は、光受容体もしくは他の光線シグナル応答を有する動物細胞、例えば、桿体細胞もしくは円錐細胞であってよい。さらにまた別の実施形態では、細胞は、光受容体もしくは別の感光性分子、例えば、光線に曝露すると反応性実体を分解もしくは形成するか、または生物学的プロセスが発生するのを刺激する、遺伝子組み換え細胞であってよい。他の場合には、細胞は非感光性であってよい;細胞を分析するため、例えば、検出、イメージング、計数、形態学的分析または分光分析のために、チップに適用された光線を使用することができる。さらに他の場合には、光線は、例えば、直接的に、またはアポトーシス反応を誘導することによって、細胞を殺滅するために使用できる。
【0197】
一部の実施形態では、チップは、例えば、細胞が増殖かつ分割できるように、チップ内の細胞を代謝的に活性な状態で維持できるように構成および配置することができる。例えば、チップは、例えば、一連のプレート中で1つまたは複数の追加の表面を反応部位に添加できるように構築できるか、または基材に付着させたまま、細胞が分割できるように構築することができる。一部の場合には、チップは、例えば、チップの出口を通して、または任意でチップ内に存在する他の細胞を実質的に阻害することなく、反応部位からの表面の除去によって、細胞をチップから採取もしくは除去できるように構築することができる。チップは、任意の適切な期間にわたって、例えば、1日間、1週間、30日間、60日間、90日間、1年間、または一部の場合には無期限に細胞を代謝的に活性な状態で維持することができる。
【0198】
所定の実施形態では、上記のチップのいずれかは、任意でチップの使用説明書を含むキット内に包装することができる。すなわち、キットは、例えば、マイクロプレート、またはマイクロプレートを取り扱うために適合する装置とともに使用するための、チップの使用説明書を含むことができる。本明細書で使用する「取扱説明書」は、取扱説明書および/または販売促進の構成要素を規定することができ、代表的にはその上に書かれた、または本発明の包装と結び付けられた取扱説明書を含むことができる。取扱説明書は、チップの使用者が取扱説明書がチップと関連付けられなければならないことを明白に認識するような任意の方法で提供される任意の口頭もしくは電子式取扱説明書を含むことができる。さらに、キットは、特定の用途に依存して他の構成要素、例えば、容器、アダプター、シリンジ、ニードル、交換部品などを含むことができる。本明細書で使用する「販売促進された」は、教育、病院および他の臨床的指示、科学研究、新薬発見もしくは開発、学術研究、医薬品販売を含む製薬工業の活動、ならびに本発明と関連する任意の形状の文書、口頭および電子伝達を含む他の販売促進活動の方法を含む商業を営むすべての方法が含まれる。
【0199】
以下は、添付の特許請求の範囲によってのみ規定され、本発明の全範囲を例示するものではない。
【実施例】
【0200】
(実施例1)
本実施例では、概して図4Aに例示したような代表的チップを調製する。その中で結び付けられた流体チャネル、ポート、区画、その他の反応部位などを有する第1チップ層は、アクリルもしくはポリカーボネートのストックシートから射出成形または機械加工される。この第1層は、機械加工もしくは射出成形された平底プレート(同様にアクリルもしくはポリカーボネート)へ感圧シリコーン接着剤(誘電ポリマー)によって付着させられる。湿度制御層/膜を形成するための上述した1つまたは複数の物質を含む湿度制御膜もまた、感圧シリコーン接着剤によって第1層の上側に付着させられる。
【0201】
その中で結び付けられた流体チャネル、ポート、区画、他の反応部位を有する第2チップ層(上面を含む)は、PDMSを使用して型の中で鋳造される。この第2層は、第1チップ層と整列可能となるように作られる。第2層は第1チップ層内の区画と整列させられ、感圧シリコーン接着剤によって付着させると完成したチップを形成する。PDMS上面は隔膜として、もしくはそれ自体でセルフシール膜として機能できよう、または一部の場合には、感圧接着剤を使用してPDMSの追加の部分層をチップの入口または出口の上方に接着させることができる。
【0202】
(実施例2)
本実施例では、異なる物質からなる複数の層から形成された様々なチップを例示する。界面層を剛性細胞培養またはシール層へ固定するためには、含まれる物質に依存して様々な接着剤を使用できる。PDMSをポリカーボネートへ接着させるために使用できる1種の接着剤は、未硬化PDMSと混合された二部分系ウレタン/エポキシ接着剤である。剛性ポリカーボネート層を相互に接着するために使用する接着プロセスは、超音波溶接または加熱プレスのいずれかであってよい。本実施例では、反応部位は厚さ約200ミクロンであるように設計されており、おおよそ20μLの容積を有していた。
【0203】
反応部位240を有するチップ280が作製されている。図8Aに示したように、ポリカーボネート層244は、本発明の湿度制御物質242に取り付けられる。物質242内の間隙は、図8Aに示したように、チップが組み立てられると反応部位240を規定する。物質242は、ポリカーボネート層244へ取り付けられる。
【0204】
図8Bには類似のチップが示されている。この図では、反応部位240は、ポリカーボネートの薄い剛性の層である層245によって規定されている。層242および245の間にあるのは、湿度制御層/膜を形成するための上述した1つまたは複数の物質を含む湿度制御物質246である。チップ80の層244、245、246および242は、上述した接着プロセスを用いて結合させられる。
【0205】
(実施例3)
本実施例では、異なる物質からなる複数の層から形成された様々なチップを例示している。界面層を剛性細胞培養またはシール層へ固定するためには、含まれる物質に依存して様々な接着剤を使用できる。PDMSをポリカーボネートへ接着させるために使用できる1つの接着剤の例は、未硬化PDMSと混合された二部分系ウレタン/エポキシ接着剤である。剛性ポリカーボネート層を相互に接着するために使用する接着プロセスは、例えば、超音波溶接または加熱プレスであってよい。反応部位は、本実施例では、厚さ約200ミクロンであるように設計されており、おおよそ20μLの容積を有していた。
【0206】
図9Aおよび9Bに例示したチップの作製は、接着方法を含めて、実施例2に記載した作製に類似している。図9Aでは、リザーバー層248はポリカーボネートから作製され、本発明の湿度制御物質246とポリカーボネート層244との間に配置された。リザーバー層248は、本実施例ではリザーバーであった反応部位50を規定する間隙(すなわち、穴または部分的に空洞にされた空間)を有する。図9Aでは、反応部位240は、間隙界面層242によって規定される。
【0207】
図9Bでは、ポリカーボネート層248が反応部位250を規定するために使用される。さらに、湿度制御層/膜を形成するために上述した1つまたは複数の物質を含む湿度制御膜249は、ポリカーボネート層245(反応部位240を規定する)とポリカーボネート層248との間に使用される。
【0208】
(実施例4)
本実施例では、膜によってシールされたチップが作製されるが、その膜は、生きている細胞の培養を可能にするために高度に十分な酸素の透過性を有する、湿度制御層/膜を形成するために上述した1つまたは複数の物質から形成することができる。本実施例において必要とされる酸素の量は、存在する細胞の数および細胞の代謝のための酸素要件の関数である。これを下記の方程式1〜3に例示する:
【0209】
【数1−2】

これらの方程式では、Pは透過性(代表的にはcmSTP・mm/m・atm・日の単位で測定される)、Aは面積(代表的にはmで測定される)、pinはチップ内の酸素分圧(代表的にはatmで測定される)、poutはチップ外の酸素分圧(代表的にはatmで測定される)、lは膜厚(代表的にはμmで測定される)、Vはチップの容積(代表的にはμLで測定される)、dは細胞培養区画の深さ(代表的にはμmで測定される)、nは細胞密度(代表的には細胞/mLで測定される)、およびrは1細胞当たりの比酸素必要量(代表的にはO/細胞・時間で測定される)である。
【0210】
方程式3は、増殖中の培養によって消費される酸素を被膜を通しての拡散によって入手できる酸素に一致させるマスバランスを表している。方程式1は、区画に接触している膜の横断面積に等しい細胞培養区画の容積を確定する。したがって再配列は、膜厚と区画の深さの関数としての所定の集団密度と代謝速度の細胞を維持するために必要とされる最小酸素透過性を表している方程式2を生じさせる。
【0211】
Pの数値は、一般に、ポリマーおよび透過性システムに依存し、本実施例では、酸素についてはケイ素に対する39,000(cmSTP・mm/m・atm・日)からエチレン酢酸ビニル(「EVA」)に対する0.01(cmSTP・mm/m・atm・日)まで変動した;pinは0.05atm〜0.2atmの間で変動し、poutは0.2atmであると推定された。膜厚lは、1μm〜2mmの間で変動した。Vは1mL未満に保持され、細胞培養深さdは30μm〜2mmの範囲に及んだ。細胞密度nは、本実施例では、哺乳動物細胞については10細胞s/mL〜10細胞s/mLであり、細菌については10細胞s/mL〜1011細胞s/mLであると推定された。1細胞当たりの比酸素必要量の範囲は、0.5×10−12〜5×10−12mol・O/細胞・時間であった。
【0212】
(実施例5)
本実施例は、本発明の1つの実施形態によって、膜によってシールされたチップの設計および作製において有用なkaおよび比交換係数の計算を例示している。バイオリアクターの液相内への酸素の質量移動を説明するためしばしば使用される1つの方程式は以下の(4):
【0213】
【数2】

(式中、dm/dtは酸素の質量流量であり、kは相境界での移動係数であり、移動は対流と拡散の混合である)である。この方程式では、aはm−1の単位での比交換表面であり、物理的には総表面が液体の容積当たりのガス交換気泡の総表面であると解釈することができる。濃度駆動力は、(C−C)によって表されるが、このときCは相境界の液側の平衡ガス濃度を表し、Cは液体中のガス相種のバルク濃度を表す。液相の容積はVによって表される。
【0214】
酸素流量は、方程式5:
【0215】
【数3】

(式中、Aはガス交換のための相境界の表面積、IIはg・mm/(m・atm・日)での膜の透過性、および(P−P)は、分圧に比した膜の下流もしくは湿潤側の分圧P、膜の上流もしくは乾燥側のPとして表される大気圧中の濃度駆動力である)に示したような細胞培養チャンバーの壁を通しての拡散によって決定される。
【0216】
ヘンリーの法則の定数としてのHを用いてガス溶解度にヘンリーの法則を適用して(方程式6)、CをPへ関連付け、方程式5において置換し、方程式4および5を同等に設定し、両方の方程式をA(容器断面積)で割ると、方程式7:
【0217】
【数4】

(式中、dは容器の深さであり、PおよびPの用語はそれらのヘンリーの法則の関係に置き換えられている)が生じる。両辺を(C−C)で割ると濃度の用語が無効になり、Kaは物質の特性および形状だけの関数になる:
【0218】
【数5】

温度によって指定されるHの所定値については、Kaは、膜厚l、区画の深さd、または膜の物質、したがって透過性を変化させることによって大きくも小さくもすることができる。
【0219】
特定の非限定的例として、ポリジメチルシロキサンを用いて37℃についてヘンリーの法則の定数を評価すると次のようになる:
【0220】
【数6】

39,000のPDMS透過性(cmSTPmm/m・atm・日)を置換し、区画の深さおよび膜厚をmmで表すと次のようになる:
【0221】
【数7】

cmSTPをモルへ変換すると次のようになる:
【0222】
【数8】

従って:
【0223】
【数9】

このため:
【0224】
【数10】

(式中、lおよびdは、本実施例のPDMSシステムについてはmmで示されている)。
【0225】
(実施例6)
本実施例では、1つの実施形態による、反応部位を有するチップ内の溶存酸素レベルの計算および制御を例示する。バイオリアクターの液相上の酸素平衡は、以下の方程式13として示される:
【0226】
【数11】

定数としての反応部位の容積Vを考慮に入れると、酸素濃度Cの経時的変化率は、反応部位の壁を通しての拡散によって入手できる酸素の供給(方程式の右辺の第1項)および生きている細胞による酸素の取り込み(方程式の右端の項)だけの関数である。反応部位の壁を通る拡散流量は、交換のために利用できる面積であるA、膜物質の透過性II、および膜を越える酸素の濃度駆動力(P−P)に比例している(式中、Pは外部酸素分圧、およびPは被膜の下流上または湿潤側の分圧である)。透過性は、膜厚lに反比例している。酸素取り込みは、細胞集団密度ρ(細胞数(細胞s)/容積)と比細胞消費速度Rおよび反応部位容積Vの積として表される。
【0227】
酸素レベルが安定性数値で維持されなければならない場合は、この系は、酸素取込み速度が反応部位の壁を通しての拡散によって到達する酸素流量と平衡する定常状態に達するはずである。すなわち、導関数は0に設定される。さらに、方程式13の調査は、A、II、l、およびVがチップ構築の物質または形状の全パラメーターであり、したがって本実施例では定数として取り扱えることを示している。そこで、本実施例によると、比細胞酸素取込み速度Rおよび細胞集団ρは、PとPとの差に影響を及ぼす唯一の時間依存性パラメーターである。コントロールスキームとしてモデルを作製すると、Pは制御された変量として、Pは操作された変量として処理することができ、そしてそれらの間の関係もしくは利得は、1セットの定数パラメーターA、P、l、V、および弱い時間依存性項Rおよびρによってほとんどが指示されるオフセットを備える統一性である。
【0228】
この関係を強調するために方程式13を再配列すると、交換面積Aが本実施例の反応部位の断面積の2倍であることを留意した後に、以下の方程式14が得られる。PをPatmによって正規化すると、方程式15:
【0229】
【数12】

に示した大気圧のフラクションとしての酸素レベルの表示を可能にする(式中、dは、反応部位の容積を断面積によって割った結果として生じる反応部位の深さである)。
【0230】
以下の表1は、数種のチップ設計についての細胞密度の関数(dlの数値)としての%DOを表している。Rは、本実施例では0.5pmol/細胞/時である比酸素消費速度の代表的数値であると仮定されている。本実施例での桁推定量として、細胞培養反応部位内のDOは細胞培養反応部位内での1mL当たりの各100万個の細胞についての外部設定点より5.9%下方である。
【0231】
【表1】

同一分析は増殖細胞によって反応部位内で生成される二酸化炭素のレベルに適用でき、これはバッファー系がCOを吸収もしくは放出することによって酸化する可能性がある重炭酸イオンを含む可能性があるという事実を説明している。
【0232】
以下は、表1を作成するために使用した計算の例である。
【0233】
【数13】

ρのベースライン値は10細胞s/mmであり、Rのベースライン値は0.5×10−12mol/細胞/時である。そこで次のようになる:
【0234】
【数14】

酸素取込みのために使用される文献の数値は:0.05〜5pmol/細胞/時、0.4pmol/細胞/時、0.3pmol/細胞/時、0.018〜0.036pmol/細胞/時、および0.1pmol/細胞/時である。
【0235】
本明細書では本発明の数種の実施形態について記載かつ例示してきたが、当業者であれば、本明細書に記載した機能を実施し、そして/または結果および/または1つまたは複数の利点を入手するための様々な他の手段および/または構造を構想することができる。そして、そのような変更および/または改変の各々は、本発明の範囲内に含まれると見なされる。より一般的には、当業者は、本明細書に記載した全パラメーター、寸法、物質、および立体配置が代表的であり、実際のパラメーター、寸法、物質、および/または立体配置が、本発明の教示が使用される特定の用途に依存することを容易に理解する。当業者は、慣例の実験器具・装置を用いて本明細書に記載した本発明の特定の実施形態に対する多数の同等物を理解し、または確実にできる。このため、上記の実施形態は例示するためにだけ提示されていること、そして添付の特許請求の範囲およびその同等物の範囲内で、本発明はさもなければ詳細に記載かつ特許請求されたように実践できることが理解される。本発明は、本明細書に記載した各々の個別の特徴、システム、製品、物質、キット、および/または方法に向けられる。さらに、2つ以上のそのような特徴、システム、製品、物質、キット、および/または方法の任意の組み合わせは、そのような特徴、システム、製品、物質、キット、および/または方法が相互に矛盾していなければ、本発明の範囲内に含まれる。
【0236】
本明細書に規定かつ使用したすべての定義は、辞書の定義、参照して組み込まれる文書内の定義、および/または規定された用語の通常の意味に優先されると理解されたい。
【0237】
本明細書および特許請求の範囲において本明細書で使用される不定冠詞「1つの」(「a」および「an」)は、他に明白に指示されない限り、「少なくとも1つ」を意味すると理解される。
【0238】
明細書および特許請求の範囲で使用する語句「および/または」は、要素の「いずれか、または両方」を意味する、つまり、一部の場合には結び付けて存在し、他の場合には択一的に存在する要素を意味すると理解されるべきである。他の要素は、詳細に同定された要素に関連しても、関連しなくても、任意で「および/または」節によって詳細に同定された要素以外として存在してよい。従って、非限定的例として、「Aおよび/またはB」との言及は、「含む」などの制限のない言語と結び付けて使用される場合は、1つの実施形態ではAだけ(任意でB以外の要素を含んでいる);他の実施形態ではBだけ(任意でA以外の要素をふくむ);さらにまた別の実施形態では、AおよびBの両方(任意で他の要素を含んでいる);などを意味することができる。
【0239】
本明細書および特許請求の範囲において使用する「または」は、上記に規定した「および/または」と同一の意味を有すると理解されるべきである。例えば、リスト内の項目を分離する場合は、「または」または「および/または」は、包括的であると解釈すべきである。すなわち、少なくとも1つを含むが、さらに2つ以上の要素の数もしくはリスト、および、任意で、追加の列挙されていない項目を含むと解釈される。これとは反対に「唯一の」もしくは「正確に1つの」などの明白に指示された唯一という用語、または特許請求の範囲において使用された場合の「〜からなる」は、正確に1つの要素または要素の数もしくはリストを含むことを意味するであろう。一般に、本明細書で使用する用語「または」は、「いずれか」、「1つの」、「1つだけの」、または「正確に1つの」などの排他的な用語が先行する場合に排他的選択肢(すなわち、「一方もしくは他方であって両方ではない」)を指示すると解釈されなければならない。「本質的に〜からなる」は、特許請求の範囲で使用された場合は、特許法の分野において使用される通常の意味を有する。
【0240】
本明細書および特許請求の範囲で使用する、1つまたは複数の要素のリストに関連する語句「少なくとも1つ」は、要素のリスト内の任意の1つまたは複数の要素から選択された少なくとも1つの要素を意味するが、必ずしも要素のリスト内に詳細に列挙された各々および全部の要素の少なくとも1つを含むのもではなく、要素のリスト内の要素の任意の組み合わせを排除しないと理解される。この定義はさらに、語句「少なくとも1つの」が言及している要素のリスト内に詳細に同定された要素以外の他の要素が、詳細に同定された要素に関連していても関連していなくても、任意で存在してよいことも許容する。従って、非限定的例として、「AおよびBの少なくとも1つ」(または、同等に、「AまたはBの少なくとも1つ」、または同等に「Aおよび/またはBの少なくとも1つ」は、1つの実施形態では、Bが存在せずに任意で2つ以上を含む少なくとも1つのAを含む(および任意でB以外の要素を含んでいる);別の実施形態では、Aが存在せずに任意で2つ以上を含む少なくとも1つのBを含む(および任意でA以外の要素を含んでいる);さらにまた別の実施形態では、任意で2つ以上を含む少なくとも1つのA、および任意で2つ以上を含む少なくとも1つのBを含む(および任意で他の要素を含んでいる)ことなどを意味する。
【0241】
さらに、そうでないことを明白に指示しない限り、2つ以上の工程を含む本明細書に請求した任意の方法では、方法に含まれる工程の順序は、必ずしも本方法の工程が列挙されている順序には限定されない。特許請求の範囲ならびに上記の明細書では、「含む」、「包含する」、「持っている」、「有する」、「含有する」、「伴っている」、「保持する」などのすべての移行句は、制限がない、すなわち含んでいるがそれらに限定されないことを意味すると理解されたい。「〜からなる」および「本質的に〜からなる」という語句だけは、各々米国特許商標庁の特許審査手続きマニュアルのセクション2111.03に規定されているように、指定もしくは半指定移行語句である。
【図面の簡単な説明】
【0242】
【図1】本発明の1つの実施形態による、複数の反応部位を含むマイクロ流体チップの一部分の略図である。
【図2】拡大図で示した、混合、加熱/分散、反応、および分離装置を含む、本発明と一緒に使用するためのマイクロ流体チップの1つの例である。
【図3A】本発明のチップの様々な積み重ね可能な配列を示した図である。
【図3B】本発明のチップの様々な積み重ね可能な配列を示した図である。
【図3C】本発明のチップの様々な積み重ね可能な配列を示した図である。
【図4A】本発明の1つの実施形態による、複数の層を有し、複数の反応部位を含むチップデバイスを示した図である。
【図4B】本発明の1つの実施形態による、複数の層を有し、複数の反応部位を含むチップデバイスを示した図である。
【図5】本発明の制御システムの1例のブロック図である。
【図6A】本発明の所定の実施形態の断面図である。
【図6B】本発明の所定の実施形態の断面図である。
【図7A】様々な反応部位と流体連絡している、本発明の所定の膜を示した図である。
【図7B】様々な反応部位と流体連絡している、本発明の所定の膜を示した図である。
【図7C】様々な反応部位と流体連絡している、本発明の所定の膜を示した図である。
【図7D】様々な反応部位と流体連絡している、本発明の所定の膜を示した図である。
【図8A】本発明の1つの実施形態による様々なチップの部分の拡大図である。
【図8B】本発明の1つの実施形態による様々なチップの部分の拡大図である。
【図9A】本発明のまた別の実施形態による様々なチップの部分の拡大図である。
【図9B】本発明のまた別の実施形態による様々なチップの部分の拡大図である。
【図10】本発明のさらにまた別の実施形態によるチップの一部分の拡大図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
約2mL未満の容積を有する規定反応部位を含む基材;および
該規定反応部位に隣接して配置された物質であって、以下:
【化1】

ここで、nは少なくとも1であり、そしてRおよびRの各々は、同時にRがメチルではなくRがトリメチルシリルではないように、独立して1個の原子を含む、構造を含むポリマーを含む物質を備える、装置。
【請求項2】
前記規定反応部位が約1mL未満の容積を有する、請求項1に記載の装置。
【請求項3】
前記基材が少なくとも2つの規定反応部位を含む、請求項1に記載の装置。
【請求項4】
前記少なくとも2つの規定反応部位が相互に流体連絡していない、請求項1に記載の装置。
【請求項5】
前記が少なくとも6つの規定反応部位を含む、請求項1に記載の装置。
【請求項6】
前記基材が、前記規定反応部位内で少なくとも1個の生きている細胞を維持するように構成および配置されている、請求項1に記載の装置。
【請求項7】
前記基材が、前記規定反応部位内で少なくとも1個の生きている哺乳動物細胞を維持するように構成および配置されている、請求項6に記載の装置。
【請求項8】
前記物質が湿度制御物質である、請求項1に記載の装置。
【請求項9】
前記物質が該規定反応部位の壁の中に配置されている、請求項1に記載の装置。
【請求項10】
前記物質が膜を含む、請求項1に記載の装置。
【請求項11】
前記膜が透明性または実質的に透明性である、請求項1に記載の装置。
【請求項12】
前記膜が厚さ10μm〜2mmである、請求項1に記載の装置。
【請求項13】
前記物質が細胞接着層を含む、請求項1に記載の装置。
【請求項14】
がアルキルである、請求項1に記載の装置。
【請求項15】
がメチルである、請求項1に記載の装置。
【請求項16】
がアルキルである、請求項1に記載の装置。
【請求項17】
が直鎖状アルキルである、請求項1に記載の装置。
【請求項18】
がメチルである、請求項1に記載の装置。
【請求項19】
がエチルである、請求項1に記載の装置。
【請求項20】
がプロピルである、請求項1に記載の装置。
【請求項21】
がブチルである、請求項1に記載の装置。
【請求項22】
がペンチルである、請求項1に記載の装置。
【請求項23】
がヘキシルである、請求項1に記載の装置。
【請求項24】
がヘプチルである、請求項1に記載の装置。
【請求項25】
がオクチルである、請求項1に記載の装置。
【請求項26】
前記規定反応部位とガス連絡しているガスヘッドスペースをさらに含む、請求項1に記載の装置。
【請求項27】
前記ガスヘッドスペースが膜によって前記規定反応部位から分離されている、請求項26に記載の装置。
【請求項28】
各々が前記規定反応部位と流体連絡している入口ポート、出口ポート、および少なくとも1つのマイクロ流体チャネルをさらに備える、請求項1に記載の装置。
【請求項29】
前記入口および出口ポートの部分を規定するセルフシールのエラストマー物質をさらに含む、請求項28に記載の装置。
【請求項30】
前記入口および出口ポートがどちらも前記基材の第1側からアクセス可能である、請求項28に記載の装置。
【請求項31】
前記規定反応部位が前記基材内の空隙によって規定される、請求項1に記載の装置。
【請求項32】
接着層が前記物質を前記基材へ結合する、請求項31に記載の装置。
【請求項33】
前記接着層が感圧接着剤を含む、請求項32に記載の装置。
【請求項34】
約2mL未満の容積を有する規定反応部位を含む基材;および
該規定反応部位に隣接して配置された物質であって、以下:
【化2】

ここで、nは少なくとも1であり、そしてR、R、R、およびRの各々は、同時にRはHではなく、RはHではなく、RはHではなく、そしてRはHでもなければ、以下:
【化3】

ここで、mは0〜3を含む整数である構造を有してもいない、構造を含むポリマーを含む物質を備える、装置。
【請求項35】
前記規定反応部位が約1mL未満の容積を有する、請求項34に記載の装置。
【請求項36】
前記基材が少なくとも2つの規定反応部位を含む、請求項34に記載の装置。
【請求項37】
前記基材が少なくとも6つの規定反応部位を含む、請求項34に記載の装置。
【請求項38】
前記基材が、前記規定反応部位内で少なくとも1個の生きている細胞を維持するように構成および配置されている、請求項34に記載の装置。
【請求項39】
前記基材が、前記規定反応部位内で少なくとも1個の生きている哺乳動物細胞を維持するように構成および配置されている、請求項38に記載の装置。
【請求項40】
前記物質が湿度制御物質である、請求項34に記載の装置。
【請求項41】
前記物質が前記規定反応部位の壁の中に配置されている、請求項34に記載の装置。
【請求項42】
前記物質が膜を含む、請求項34に記載の装置。
【請求項43】
前記膜が透明性または実質的に透明性である、請求項34に記載の装置。
【請求項44】
前記膜が厚さ10μm〜2mmである、請求項34に記載の装置。
【請求項45】
前記物質が細胞接着層を含む、請求項34に記載の装置。
【請求項46】
がアルキルである、請求項34に記載の装置。
【請求項47】
が直鎖状アルキルである、請求項34に記載の装置。
【請求項48】
がメチルである、請求項34に記載の装置。
【請求項49】
がエチルである、請求項34に記載の装置。
【請求項50】
がプロピルである、請求項34に記載の装置。
【請求項51】
がブチルである、請求項34に記載の装置。
【請求項52】
がペンチルである、請求項34に記載の装置。
【請求項53】
がヘキシルである、請求項34に記載の装置。
【請求項54】
がヘプチルである、請求項34に記載の装置。
【請求項55】
がオクチルである、請求項34に記載の装置。
【請求項56】
が水素である、請求項34に記載の装置。
【請求項57】
が水素である、請求項34に記載の装置。
【請求項58】
約2mL未満の容積を有する該規定反応部位内で少なくとも1個の生きている細胞を培養する工程であって、該細胞に近接する物質が、以下:
【化4】

ここで、nは少なくとも1であり、そしてRおよびRの各々は、同時にRがメチルではなく、Rがトリメチルシリルではないように、独立して1個の原子を含む、構造を含むポリマーを含む、工程を包含する、方法。
【請求項59】
前記規定反応部位が約1mL未満の容積を有する、請求項58に記載の方法。
【請求項60】
前記基材が、前記規定反応部位内で少なくとも1個の生きている細胞を維持するように構成および配置されている、請求項58に記載の方法。
【請求項61】
前記基材が、前記規定反応部位内で少なくとも1個の生きている哺乳動物細胞を維持するように構成および配置されている、請求項60に記載の方法。
【請求項62】
前記物質が湿度制御物質である、請求項58に記載の方法。
【請求項63】
前記物質が前記規定反応部位の壁の中に配置されている、請求項58に記載の方法。
【請求項64】
前記物質が膜を含む、請求項58に記載の方法。
【請求項65】
前記膜が透明性または実質的に透明性である、請求項58に記載の方法。
【請求項66】
前記膜が厚さ10μm〜2mmである、請求項58に記載の方法。
【請求項67】
前記物質が細胞接着層を含む、請求項58に記載の方法。
【請求項68】
前記細胞を少なくとも24時間培養する工程を包含する、請求項58に記載の方法。
【請求項69】
がアルキルである、請求項58に記載の方法。
【請求項70】
がメチルである、請求項58に記載の方法。
【請求項71】
がアルキルである、請求項58に記載の方法。
【請求項72】
が直鎖状アルキルである、請求項58に記載の方法。
【請求項73】
がメチルである、請求項58に記載の方法。
【請求項74】
がエチルである、請求項58に記載の方法。
【請求項75】
がプロピルである、請求項58に記載の方法。
【請求項76】
がブチルである、請求項58に記載の方法。
【請求項77】
がペンチルである、請求項58に記載の方法。
【請求項78】
がヘキシルである、請求項58に記載の方法。
【請求項79】
がヘプチルである、請求項58に記載の方法。
【請求項80】
がオクチルである、請求項58に記載の方法。
【請求項81】
約2mL未満の容積を有する規定反応部位内で少なくとも1個の生きている細胞を培養する工程であって、該細胞に近接する物質が、以下:
【化5】

ここで、nは少なくとも1であり、そしてR、R、R、およびRの各々は、同時にRはHではなく、RはHではなく、RはHではなく、そしてRはHでもなければ、以下:
【化6】

ここで、mは0〜3を含む整数である構造を有してもいないように、1個の原子を独立して含む、構造を含むポリマーを含む、工程を包含する、方法。
【請求項82】
前記規定反応部位が約1mL未満の容積を有する、請求項81に記載の方法。
【請求項83】
前記基材が、前記規定反応部位内で少なくとも1個の生きている細胞を維持するように構成および配置されている、請求項81に記載の方法。
【請求項84】
前記基材が、前記規定反応部位内で少なくとも1個の生きている哺乳動物細胞を維持するように構成および配置されている、請求項83に記載の方法。
【請求項85】
前記物質が湿度制御物質である、請求項81に記載の方法。
【請求項86】
前記物質が前記規定反応部位の壁の中に配置されている、請求項81に記載の方法。
【請求項87】
前記物質が膜を含む、請求項81に記載の方法。
【請求項88】
前記膜が透明性または実質的に透明性である、請求項81に記載の方法。
【請求項89】
前記膜が厚さ10μm〜2mmである、請求項81に記載の方法。
【請求項90】
前記物質が細胞接着層を含む、請求項81に記載の方法。
【請求項91】
前記細胞を少なくとも24時間培養する工程を包含する、請求項81に記載の方法。
【請求項92】
がアルキルである、請求項81に記載の方法。
【請求項93】
が直鎖状アルキルである、請求項81に記載の方法。
【請求項94】
がメチルである、請求項81に記載の方法。
【請求項95】
がエチルである、請求項81に記載の方法。
【請求項96】
がプロピルである、請求項81に記載の方法。
【請求項97】
がブチルである、請求項81に記載の方法。
【請求項98】
がペンチルである、請求項81に記載の方法。
【請求項99】
がヘキシルである、請求項81に記載の方法。
【請求項100】
がヘプチルである、請求項81に記載の方法。
【請求項101】
がオクチルである、請求項81に記載の方法。
【請求項102】
が水素である、請求項81に記載の方法。
【請求項103】
が水素である、請求項81に記載の方法。
【請求項104】
約2mL未満の容積を有する規定反応部位を含む基材;および
該規定反応部位に隣接して配置された物質であって、以下:
【化7】

ここで、nは少なくとも1であり、そしてR、R、R、およびRは各々、R、R、R、またはRのうちの少なくとも1つがハロゲンを含む炭素含有部分であるように、独立して水素、ハロゲン、または炭素含有部分である、構造を含むポリマーを含む物質を備える、装置。
【請求項105】
前記規定反応部位が約1mL未満の容積を有する、請求項104に記載の装置。
【請求項106】
前記基材が少なくとも2つの規定反応部位を含む、請求項104に記載の装置。
【請求項107】
前記基材が少なくとも6つの規定反応部位を含む、請求項104に記載の装置。
【請求項108】
前記基材が、前記規定反応部位内で少なくとも1個の生きている細胞を維持するように構成および配置されている、請求項104に記載の装置。
【請求項109】
前記基材が、前記規定反応部位内で少なくとも1個の生きている哺乳動物細胞を維持するように構成および配置されている、請求項94に記載の装置。
【請求項110】
前記物質が湿度制御物質である、請求項104に記載の装置。
【請求項111】
前記物質が前記規定反応部位の壁の中に配置されている、請求項104に記載の装置。
【請求項112】
前記物質が膜を含む、請求項104に記載の装置。
【請求項113】
前記膜が透明性または実質的に透明性である、請求項104に記載の装置。
【請求項114】
前記膜が厚さ10μm〜2mmである、請求項104に記載の装置。
【請求項115】
前記物質が細胞接着層を含む、請求項104に記載の装置。
【請求項116】
、R、R、またはRのうちの少なくとも1つは、フッ素を含む炭素含有部分である、請求項104に記載の装置。
【請求項117】
およびRの各々が水素である、請求項104に記載の装置。
【請求項118】
、RおよびRの各々が水素である、請求項104に記載の装置。
【請求項119】
がハロゲン化アルキルである、請求項104に記載の装置。
【請求項120】
が少なくとも1個のハロゲン原子を含む、請求項104に記載の装置。
【請求項121】
がフッ素化アルキルである、請求項104に記載の装置。
【請求項122】
が少なくとも1個のフッ素原子を含む、請求項104に記載の装置。
【請求項123】
が少なくとも2個のフッ素原子を含む、請求項122に記載の装置。
【請求項124】
が構造:
【化8】

ここで、mは0より大きいか0である整数であり、このとき該構造内の1個または複数の炭素原子はそれに結合したハロゲン原子を有する構造を含む、請求項104に記載の装置。
【請求項125】
前記1個または複数の炭素原子に結合した少なくとも1個のハロゲン原子がフッ素である、請求項104に記載の装置。
【請求項126】
前記構造内の1個または複数の炭素原子がそれに結合した少なくとも2個のフッ素原子を有する、請求項125に記載の装置。
【請求項127】
が以下:
【化9】

ここで、A、A、A、A、A、A、A、A、およびAが独立して、A、A、A、A、A、A、A、A、またはAのうちの少なくとも1つがハロゲンであるように、水素、ハロゲン、または炭素含有部分である構造を含む、請求項104に記載の装置。
【請求項128】
前記A、A、A、A、A、A、A、A、またはAのうちの少なくとも1つがフッ素である、請求項127に記載の装置。
【請求項129】
前記A、A、A、A、A、A、A、A、またはAのうちの少なくとも2つが各々フッ素である、請求項128に記載の装置。
【請求項130】
約2mL未満の容積を有する規定反応部位内で少なくとも1個の生きている細胞を培養する工程であって、該細胞に近接する物質が、以下:
【化10】

ここで、nは少なくとも1であり、そしてR、R、R、およびRは各々、R、R、R、またはRのうちの少なくとも1つがハロゲンを含む炭素含有部分であるように、独立して水素、ハロゲン、または炭素含有部分である、構造を含むポリマーを含む、工程を包含する、方法。
【請求項131】
前記規定反応部位が約1mL未満の容積を有する、請求項130に記載の方法。
【請求項132】
前記基材が、前記規定反応部位内で少なくとも1個の生きている細胞を維持するように構成および配置されている、請求項130に記載の方法。
【請求項133】
前記基材が、該規定反応部位内で少なくとも1個の生きている哺乳動物細胞を維持するように構成および配置されている、請求項132に記載の方法。
【請求項134】
前記物質が湿度制御物質である、請求項130に記載の方法。
【請求項135】
前記物質が前記規定反応部位の壁の中に配置されている、請求項130に記載の方法。
【請求項136】
前記物質が膜を含む、請求項130に記載の方法。
【請求項137】
前記膜が透明性または実質的に透明性である、請求項130に記載の方法。
【請求項138】
前記膜が厚さ10μm〜2mmである、請求項130に記載の方法。
【請求項139】
前記物質が細胞接着層を含む、請求項130に記載の方法。
【請求項140】
前記細胞を少なくとも24時間培養する工程を包含する、請求項130に記載の方法。
【請求項141】
、R、R、またはRのうちの少なくとも1つは、フッ素を含む炭素含有部分である、請求項130に記載の方法。
【請求項142】
およびRの各々が水素である、請求項130に記載の方法。
【請求項143】
、RおよびRの各々が水素である、請求項130に記載の方法。
【請求項144】
がハロゲン化アルキルである、請求項130に記載の方法。
【請求項145】
が少なくとも1個のハロゲン原子を含む、請求項130に記載の装置。
【請求項146】
がフッ素化アルキルである、請求項130に記載の方法。
【請求項147】
が少なくとも1個のフッ素原子を含む、請求項130に記載の装置。
【請求項148】
が少なくとも2個のフッ素原子を含む、請求項147に記載の方法。
【請求項149】
が以下:
【化11】

ここで、mは0より大きいか0である整数であり、このとき該構造内の1個または複数の炭素原子はそれに結合したフッ素原子を有する構造を含む、請求項130に記載の方法。
【請求項150】
前記1個または複数の炭素原子に結合した少なくとも1個のハロゲン原子がフッ素である、請求項149に記載の方法。
【請求項151】
前記構造内の1個または複数の炭素原子がそれに結合した少なくとも2個のフッ素原子を有する、請求項150に記載の方法。
【請求項152】
が以下:
【化12】

ここで、A、A、A、A、A、A、A、A、およびAが独立して、A、A、A、A、A、A、A、A、またはAのうちの少なくとも1つがハロゲンであるように、水素、ハロゲン、または炭素含有部分である構造を含む、請求項130に記載の方法。
【請求項153】
前記A、A、A、A、A、A、A、A、またはAのうちの少なくとも1つがフッ素である、請求項152に記載の方法。
【請求項154】
前記A、A、A、A、A、A、A、A、またはAのうちの少なくとも2つが各々フッ素である、請求項153に記載の方法。
【請求項155】
約2mL未満の容積を有する規定反応部位を含む基材;および
該規定反応部位に隣接して配置された物質であって、以下:
【化13】

ここで、nは少なくとも1であり、そしてRおよびRは各々、独立してRまたはRのうちの少なくとも1つがハロゲンを含む炭素含有部分であるように原子を含む、構造を含むポリマーを含む物質、を備える装置。
【請求項156】
前記規定反応部位が約1mL未満の容積を有する、請求項155に記載の装置。
【請求項157】
前記基材が少なくとも2つの規定反応部位を含む、請求項155に記載の装置。
【請求項158】
前記基材が少なくとも6つの規定反応部位を含む、請求項155に記載の装置。
【請求項159】
前記基材が、前記規定反応部位内で少なくとも1個の生きている細胞を維持するように構成および配置されている、請求項155に記載の装置。
【請求項160】
前記基材が、前記規定反応部位内で少なくとも1個の生きている哺乳動物細胞を維持するように構成および配置されている、請求項159に記載の装置。
【請求項161】
前記物質が湿度制御物質である、請求項155に記載の装置。
【請求項162】
前記物質が該規定反応部位の壁の中に配置されている、請求項155に記載の装置。
【請求項163】
前記物質が膜を含む、請求項155に記載の装置。
【請求項164】
前記膜が透明性または実質的に透明性である、請求項155に記載の装置。
【請求項165】
前記膜が厚さ10μm〜2mmである、請求項155に記載の装置。
【請求項166】
該物質が細胞接着層を含む、請求項155に記載の装置。
【請求項167】
またはRのうちの少なくとも1つは、フッ素を含む炭素含有部分である、請求項155に記載の装置。
【請求項168】
がアルキルである、請求項155に記載の装置。
【請求項169】
がハロゲン化アルキルである、請求項155に記載の装置。
【請求項170】
がフッ素化アルキルである、請求項155に記載の装置。
【請求項171】
がメチルである、請求項155に記載の装置。
【請求項172】
がケイ素を含む、請求項155に記載の装置。
【請求項173】
前記ポリマーが以下:
【化14】

ここで、R、R、R、およびRの各々が独立して、R、R、R、またはRのうちの少なくとも1つがハロゲンを含むように1個の原子を含む構造を含む、請求項155に記載の装置。
【請求項174】
、R、またはRのうちの少なくとも1つは、フッ素を含む炭素含有部分である、請求項173に記載の装置。
【請求項175】
、R、およびRの各々がフッ素を含む、請求項173に記載の装置。
【請求項176】
約2mL未満の容積を有する規定反応部位内で少なくとも1個の生きている細胞を培養する工程であって、該細胞に近接する物質が、以下:
【化15】

ここで、nは少なくとも1であり、そしてRおよびRは各々、独立してRまたはRのうちの少なくとも1つがハロゲンを含む炭素含有部分であるように1個の原子を含む、構造を含むポリマーを含む、工程を包含する方法。
【請求項177】
前記規定反応部位が約1mL未満の容積を有する、請求項176に記載の方法。
【請求項178】
前記基材が、前記規定反応部位内で少なくとも1個の生きている細胞を維持するように構成および配置されている、請求項176に記載の方法。
【請求項179】
前記基材が、前記規定反応部位内で少なくとも1個の生きている哺乳動物細胞を維持するように構成および配置されている、請求項178に記載の方法。
【請求項180】
前記物質が湿度制御物質である、請求項176に記載の方法。
【請求項181】
前記物質が前記規定反応部位の壁の中に配置されている、請求項176に記載の方法。
【請求項182】
前記物質が膜を含む、請求項176に記載の方法。
【請求項183】
前記膜が透明性または実質的に透明性である、請求項176に記載の方法。
【請求項184】
前記膜が厚さ10μm〜2mmである、請求項176に記載の方法。
【請求項185】
前記物質が細胞接着層を含む、請求項176に記載の方法。
【請求項186】
前記細胞を少なくとも24時間培養する工程を包含する、請求項176に記載の方法。
【請求項187】
前記基材が少なくとも2つの規定反応部位を含む、請求項176に記載の方法。
【請求項188】
前記基材が少なくとも6つの規定反応部位を含む、請求項176に記載の方法。
【請求項189】
前記基材が少なくとも7つの規定反応部位を含む、請求項176に記載の方法。
【請求項190】
またはRのうちの少なくとも1つは、フッ素を含む炭素含有部分である、請求項176に記載の方法。
【請求項191】
がアルキルである、請求項176に記載の方法。
【請求項192】
がハロゲン化アルキルである、請求項176に記載の方法。
【請求項193】
がフッ素化アルキルである、請求項176に記載の方法。
【請求項194】
がメチルである、請求項176に記載の方法。
【請求項195】
がケイ素を含む、請求項176に記載の方法。
【請求項196】
が以下:
【化16】

ここで、R、R、R、またはRは各々、R、R、R、またはRのうちの少なくとも1つがハロゲンを含む炭素含有部分であるように独立して1個の原子を含む構造を含む、請求項176に記載の方法。
【請求項197】
、R、またはRのうちの少なくとも1つは、フッ素を含む炭素含有部分である、請求項196に記載の方法。
【請求項198】
、R、またはRの各々がフッ素を含む、請求項196に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3A】
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【図3B】
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【図3C】
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【図4A】
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【図4B】
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【図5】
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【図6A】
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【図6B】
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【図7A】
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【図7B】
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【図7C】
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【図7D】
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【図8A】
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【図8B】
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【図9A】
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【図9B】
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【図10】
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【公表番号】特表2008−504845(P2008−504845A)
【公表日】平成20年2月21日(2008.2.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−527634(P2007−527634)
【出願日】平成17年6月7日(2005.6.7)
【国際出願番号】PCT/US2005/019914
【国際公開番号】WO2005/120698
【国際公開日】平成17年12月22日(2005.12.22)
【出願人】(505446253)バイオプロセッサーズ コーポレイション (5)
【Fターム(参考)】