説明

リアクタ

【課題】改質反応の反応効率に優れ、大量の改質ガスを生成させることができることに加え、消費電力を低減でき、電極に対する負荷を軽減して電極の耐用時間を延長することも可能なリアクタを提供する。
【解決手段】被改質ガス2の導入口4及び改質ガス6の排出口8が形成された反応容器10と、反応容器10の内部空間に相対向するように配置された、プラズマを発生させる一対の電極12と、一対の電極12に対して電圧を印加する電源14と、被改質ガス2の改質反応を促進する触媒とを備え、一対の電極12の一方が線状電極32であるとともに、一対の電極12の他方は導電性セラミックスからなるハニカム電極34Aであり、触媒は、ハニカム電極34Aの隔壁に担持されており、ハニカム電極34Aのセル形成方向の長さLに対するハニカム電極34Aのセル開口端面の最大外径dの比率が0.50〜1.2の範囲内であるリアクタ1A。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一対の電極間に発生させたプラズマと、改質反応を促進させるための触媒とによって改質反応を進行させるリアクタに関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、クリーンなエネルギーとして水素が注目されている。そして、この水素を得るためのプロセスとしては、ガソリン、灯油、軽油等に含まれる炭化水素の改質反応が知られている。しかしながら、一般にガソリン等に含まれる炭化水素の改質反応には700〜900℃の高温が必要であるため、改質装置が大型化せざるを得ず、また、改質反応を進行させるためには、大きな起動エネルギーや長い起動時間を必要とするといった問題があった。そこで、一対の電極にパルス電圧等を印加してプラズマを発生させ、そのプラズマを利用して低温でかつ高効率に改質反応を行う技術が検討されている。
【0003】
例えば、一対の電極間にグロー放電を発生させ、そのグロー放電により生じたプラズマを利用して燃料を改質するプラズマ燃料変換器が提案されている(特許文献1参照)。
【0004】
また、被改質ガスとして、アルコールと水蒸気の混合ガスを用い、この混合ガス中でパルス放電を行ってプラズマを生じさせ、そのプラズマにより改質反応を行い、水素を発生させる方法及び装置が提案されている(特許文献2参照)。
【0005】
更にまた、コージェライト等の絶縁材料から構成されたハニカム構造体のセル内部に一対の電極を設け、セル内部で放電を行ってプラズマを生じさせ、そのプラズマにより改質反応を行う改質器が提案されている(特許文献4参照)。
【0006】
特許文献1〜3に記載のプラズマ燃料変換器等は従来法と比較すれば、低温、常圧の温和な条件の下、比較的低コストで炭化水素の改質を実施可能であるという利点がある。しかしながら、改質反応の反応効率としては未だ十分に満足できるものではなかった。
【0007】
そこで、プラズマを利用して改質反応を行う際に、改質反応を促進させるための触媒を併用する方法によって、改質反応を促進させ、改質反応の反応効率を向上させることが試みられている。その際、プラズマの作用と触媒の作用により改質反応が進行すると考えられている。
【0008】
例えば、炭化水素と水蒸気とを混合する混合ガス容器と、電源と、混合ガス容器中に内在する一対の電極を備え、特定のパルス周波数の電圧を一対の電圧に印加してプラズマを発生させ、そのプラズマにより水素への転化反応を行う炭化水素改質装置が提案されている(特許文献4参照)。そして、この特許文献5には、混合ガス容器内部に粒状の触媒を充填させることによって(いわゆるパックドベッド方式)、転化反応が促進されることが記載されている。
【0009】
また、反応器と、反応器内に対向するように配置された一対の針状電極と、電圧印加装置に加えて、粒状の酸化物触媒と、その酸化物触媒を反応器内で支持する触媒支持手段とを備えた燃料改質装置が提案されている(特許文献5参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特表2003−514166号公報
【特許文献2】特開2003−73103号公報
【特許文献3】特開2006−248847号公報
【特許文献4】特開2004−345879号公報
【特許文献5】特開2006−56748号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
特許文献4又は5に記載の炭化水素改質装置等は、放電により生じたプラズマを利用すること加えて、触媒を併用しているため、改質反応の促進、これに伴う改質反応の反応効率向上を期待することができる。
【0012】
しかしながら、特許文献4又は5に記載の炭化水素改質装置等は、触媒として粒状触媒を用いているため、触媒同士の接触は点接触となり、触媒間の熱伝達に劣る。従って、改質反応の起動性が低いという課題があった。また、パックドベッド方式を採用した場合には、反応器内に充填された粒状触媒の間隙を被改質ガスが通過することになり、被改質ガスの空間速度が数千h−1以下の範囲でしか使用することができない。即ち、被改質ガスを大量に流す場合には、被改質ガスの圧力損失が大きくなる。従って、被改質ガスの処理速度を高めることができず、大量の改質ガス(水素)を生成させることができないという課題があった。
【0013】
本発明は、前記課題に鑑みてなされたものであり、改質反応の反応効率に優れ、大量の改質ガスを生成させることができることに加え、消費電力を低減でき、電極に対する負荷を軽減して電極の耐用時間を延長することも可能なリアクタを提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明者らは、前記の従来技術の課題を解決するために鋭意検討した結果、プラズマを発生させる一対の電極の一方として、導電性セラミックスからなるハニカム形状の電極(ハニカム電極)を用いることとし、更に前記ハニカム電極の形状を精密に設計することによって、前記課題が解決されることに想到し、本発明を完成させた。具体的には、本発明により、以下のリアクタが提供される。
【0015】
[1] 被改質ガスの導入口及び改質ガスの排出口が形成された反応容器と、前記反応容器の内部空間に相対向するように配置された、プラズマを発生させる一対の電極と、前記一対の電極に対して電圧を印加する電源と、前記被改質ガスの改質反応を促進する触媒とを備え、前記一対の電極の一方が線状電極であるとともに、前記一対の電極の他方は導電性セラミックスからなり、隔壁によってガスの流路となる複数のセルが区画形成されたハニカム電極であり、前記触媒は、前記ハニカム電極の前記隔壁に担持されており、前記ハニカム電極のセル密度が、4〜192セル/cmの範囲内であるとともに、前記ハニカム電極のセル形成方向の長さに対する前記ハニカム電極のセル開口端面の最大外径の比率が0.50〜1.2の範囲内であるリアクタ。
【0016】
[2] 前記ハニカム電極が、炭化珪素を含む導電性セラミックスからなるものである前記[1]に記載のリアクタ。
【0017】
[3] 前記ハニカム電極は、その密度が0.5〜4.0g/cmのものである前記[1]又は[2]に記載のリアクタ。
【0018】
[4] 前記ハニカム電極は、その熱伝導率が10〜300W/mKのものである前記[1]〜[3]のいずれかに記載のリアクタ。
【0019】
[5] 前記電源が、静電誘導型サイリスタを用いた高電圧パルス電源である前記[1]〜[4]のいずれかに記載のリアクタ。
【発明の効果】
【0020】
本発明のリアクタは、改質反応の反応効率に優れ、大量の改質ガスを生成させることができることに加え、消費電力を低減でき、電極に対する負荷を軽減して電極の耐用時間を延長することも可能である。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1A】本発明のリアクタの一の実施形態を示す模式図である。
【図1B】図1Aに示すリアクタを構成するハニカム電極を示す斜視図である。
【図2】本発明のリアクタの構成部材となるハニカム電極の一の実施形態を示す斜視図である。
【図3】本発明のリアクタの構成部材となるハニカム電極の別の実施形態を示す斜視図である。
【図4A】比較例1のリアクタの実施形態を示す模式図である。
【図4B】図4Aに示すリアクタを構成するハニカム電極を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明のリアクタを実施するための形態について説明する。但し、本発明はその発明特定事項を備えるリアクタを広く包含するものであり、以下の実施形態に限定されるものではない。
【0023】
[1]本発明のリアクタの特徴:
本発明のリアクタは、図1Aに示すリアクタ1Aのように、一対の電極12の一方が線状電極32であるとともに、一対の電極12の他方は導電性セラミックスからなり、隔壁によってガスの流路となる複数のセルが区画形成されたハニカム電極34Aであり、触媒は、ハニカム電極34Aの隔壁に担持されており、ハニカム電極34Aのセル密度が、4〜192セル/cmの範囲内であるとともに、ハニカム電極34Aのセル形成方向の長さに対するハニカム電極34Aのセル開口端面の最大外径の比率が0.50〜1.2の範囲内である点に特徴がある。
【0024】
このように、一対の電極12の一方をハニカム電極34Aとすることにより、針状電極や平板状電極と比較して、放電の際の熱劣化が少なく、電極12の耐久性を向上させることができる。従って、長期間にわたって安定的に改質ガスを供給することが要求される車載用燃料改質器等の用途にも好適に用いることができる。
【0025】
また、一対の電極12の一方をハニカム電極34Aとすると、電圧はハニカム電極34全体に印加され、放電が行われる領域が拡大される。これにより、針状電極や平板状電極と比較して、反応領域を広げることができ、改質反応の起動性や反応効率が向上し、ひいては、反応容器10の内径を大きくしても改質反応の反応効率を向上させることが可能となる。
【0026】
更に、ハニカム電極34Aは隔壁を有するハニカム構造であるために触媒が担持し易い。従って、改質反応を促進する触媒を担持させることで、被改質ガス2との改質反応を進行させ易くすることができる。これにより、プラズマの作用と触媒の作用の相乗効果により、高効率で改質反応を進行させることができる。
【0027】
そして、ハニカム電極34Aの隔壁に触媒を担持させることにより、パックドベッド方式で粒状触媒を充填した場合と比較して、ガスの流路となるセルが確保されているため、被改質ガス2が反応容器10内を通過し易くなる。これにより、空間速度が数万〜数十万h−1の範囲で(即ち、高い処理速度で)、被改質ガス2を処理することが可能となる。
【0028】
更にまた、触媒をハニカム電極34Aの隔壁に担持した場合、パックドベッド方式で粒状触媒を充填した場合と比較して、触媒同士の熱伝達が迅速となり、改質反応の起動性も向上する。従って、被改質ガス2の処理速度・処理量を大幅に向上させることができ、大量の改質ガス6を生成させることが可能となる。これにより、例えば、内燃機関のエンジンスタート時の触媒早期活性化(コールドスタート用途)にも使用することが可能となる。
【0029】
また、図1Bに示すように、ハニカム電極34Aのセル16A形成方向の長さLに対するセル16A開口端面の最大外径dの比率を所定の範囲内とすることで、ハニカム電極34がセル16A形成方向に向かって奥行きの長い形状となり、ハニカム電極34Aのセル16Aも長くなる。従って、被改質ガス2とセル16Aの隔壁に担持された触媒との接触時間(即ち、反応時間)が延長され、触媒の効果により、また、セル16A内で発生する反応熱の増大によって、改質反応が更に促進される。即ち、プラズマの作用と触媒の作用の相乗効果により、改質反応の反応効率が向上する。
【0030】
一方、図4Aに示すリアクタ100のようにハニカム電極34の形状を奥行きの短い形状とした場合には、被改質ガス2とセルの隔壁に担持された触媒との接触時間(即ち、反応時間)が短く、触媒の効果を十分に享受できない場合がある。また、セル内で発生する反応熱を利用する前に改質ガス6がハニカム電極34のセルを通過してしまうおそれがあり、改質反応の促進効果が不十分となる場合がある。
【0031】
更に、ハニカム電極を前記のような奥行きの長い形状とすると、プラズマ発生領域42を小さくしても改質反応の反応効率を維持することができるため、線状電極32−ハニカム電極34間に印加する電圧を小さくすることが可能となる。従って、改質反応で消費する電力を低減することができるとともに、ハニカム電極34と線状電極32に対する負荷が軽減され、その分、ハニカム電極34と線状電極32の耐用時間も延長される。
【0032】
更にまた、ハニカム電極を前記のような奥行きの長い形状とすると、ハニカム電極のセルを区画する隔壁に、セルの長手方向に向かって種類の異なる触媒を順次担持させることも可能となる。これにより、セル流路の途中で改質反応の種類を変更し、2段階以上の改質反応を行うことも可能である。
【0033】
[2]リアクタの構成部材:
本発明のリアクタの構成部材としては、図1Aに示すリアクタ1Aのように、ハニカム電極34、線状電極32、触媒、反応容器10、電源14等を挙げることができる。
【0034】
[2−1]ハニカム電極:
本発明のリアクタは、図1Aに示すように反応容器10の内部空間に、相対向するように一対の電極12が配置されており、この一対の電極12に電圧を印加させることによってプラズマを発生させるものである。そして、本発明のリアクタにおいては、図1A及び図1Bに示すようにその一方の電極をハニカム電極34としている。本明細書にいう「ハニカム電極」とは、導電性セラミックスからなり、隔壁によってガスの流路となる複数のセルが区画形成されたハニカム構造の電極を意味する。
【0035】
ハニカム電極の構造は、隔壁によってガスの流路となる複数のセルが区画形成された、所謂ハニカム構造体であればよい。例えば、セル形状(セル形成方向と直交する方向に切断した際の断面形状)は、円形、楕円形、三角形、四角形、六角形、その他の多角形等の中から所望の形状を適宜選択すればよい。
【0036】
本発明のリアクタにおいては、ハニカム電極の外形(全体形状)を、ハニカム電極のセル形成方向の長さに対するハニカム電極のセル開口端面の最大外径の比率が0.50〜1.2の範囲内となるように形成する。これにより、被改質ガスと触媒との接触時間(即ち、反応時間)を延長させることができ、触媒の効果により、また、セル内で発生する反応熱の増大によって、改質反応が更に促進される。即ち、改質反応の反応効率が向上するという効果が得られる。前記効果をより確実に得るためには、前記比率を0.50〜1.0の範囲内とすることが更に好ましい。
【0037】
ハニカム電極のセル形成方向の長さは、25〜60mmであることが好ましく、30〜60mmであることが更に好ましい。25mmより短いと、被改質ガスと触媒との接触時間が短く、被改質ガスに含まれる炭化水素の大部分が改質されないまま反応容器から流出してしまう場合がある。一方、60mmより長いと、被改質ガスと触媒との接触時間は延長されるものの、被改質ガスがハニカム電極のセルを通過する際の圧力損失が大きくなり、被改質ガスを処理する際の空間速度が低下するおそれがある。また、ハニカム電極の末端側まで反応熱が行き渡らず、ハニカム電極の温度上昇による反応効率向上の効果を得られない場合がある。
【0038】
ハニカム電極のセル開口端面の最大外径は、25〜35mmであることが好ましく、27〜33mmであることが更に好ましい。25mmより短いと、圧力損失が増加するおそれがある。一方、35mmより長いと、プラズマを発生させるための電力が大量に必要となることに加え、ハニカム電極が溶損する場合がある。
【0039】
なお、本明細書にいう「最大外径」とは、ハニカム電極のセル開口端面の外周上の2点間を結ぶ直線のうち最も長い直線の長さを意味するものとする。例えば、ハニカム電極のセル開口端面の形状が円形である場合、「最大外径」はその円の直径の長さに等しく、矩形状である場合、「最大外径」はその矩形の対角線の長さに等しい。
【0040】
本発明においては、ハニカム電極のセル密度(即ち、単位断面積当たりのセルの数)を4〜192セル/cm(25〜1200セル/平方インチ)の範囲内とする。セル密度が4セル/cm(25セル/平方インチ)より低くなると、セル内で発生する反応熱を利用する前に改質ガスがハニカム電極のセルを通過してしまい、被改質ガスとセルの隔壁に担持された触媒との接触時間(即ち、反応時間)が短くなる場合がある。従って、触媒の効果を十分に享受できず、改質反応の促進効果が不十分となってしまうおそれがある。
【0041】
一方、セル密度が192セル/cm(1200セル/平方インチ)を超えると、被改質ガスと触媒との接触時間は延長されるものの、被改質ガスがハニカム電極のセルを通過する際の圧力損失が大きくなり、被改質ガスを処理する際の空間速度が低下する場合がある。また、ハニカム電極の末端側まで反応熱が行き渡らず、ハニカム電極の温度上昇による反応効率向上の効果を得られないおそれがある。
【0042】
本発明のリアクタのように、ハニカム電極を奥行きの長い形状とした場合、その奥行きの長さによっては圧力損失が増加するおそれもある。この場合にはハニカム電極のセル密度を低くすることで、圧力損失を減少させることができる。逆に、ハニカム電極を奥行きの短い形状とした場合でも、ハニカム電極のセル密度を高くすることで、被改質ガスとセルの隔壁に担持された触媒との接触時間(即ち、反応時間)を延長することができ、触媒の効果を十分に享受することができる。
【0043】
また、隔壁の厚さ(壁厚)についても、目的に応じて適宜設計すればよく、特に制限はない。例えば、炭化水素の改質による水素生成に用いる場合には、壁厚を50μm〜2mmとすることが好ましく、60〜500μmとすることが更に好ましい。壁厚を50μm未満とすると、機械的強度が低下して衝撃や温度変化による熱応力によって破損することがある。一方、2mmを超えると、ハニカム電極に占めるセル容積の割合が低くなり、被改質ガスが透過する際の圧力損失が大きくなり過ぎるおそれがある。
【0044】
本発明のリアクタにおいては、ハニカム電極の最外周セルの両端開口部を目封止することが好ましい。これによりハニカム電極の最外周セルの部分が断熱層となり、セル内で発生する反応熱を有効に利用することができるようになる。また、セルの隔壁に担持された触媒を早期に活性化することができる。従って、改質反応の反応効率がより一層向上する。このような構成は、車載用途で用いる際にコールドスタート時(エンジン冷間始動)の導入ガス温度を上昇させ易く、触媒を早期活性化させ易い点において好ましい。
【0045】
なお、「最外周セル」とは、多段多列に形成された複数のセルのうち、ハニカム電極の外周面に隣接するように配置されたセルを意味する。従って、最外周セルとハニカム電極の外周面との間には他のセルが存在しないことになる。また、「目封止」とは、セルの両開口端部をセラミックスラリーやペースト等により目詰めし、セルを閉塞させることを意味する。
【0046】
ハニカム電極を構成する「導電性セラミックス」としては炭化珪素が好ましい。但し、ハニカム電極が導電性を有する限り、必ずしも電極全体が炭化珪素で構成されている必要はない。即ち、本発明のリアクタにおいては、ハニカム電極が炭化珪素を含む導電性セラミックスからなるものであることが好ましい。この場合、ハニカム電極中の炭化珪素の含有率は、導電性の低下を抑制するという理由から、50質量%以上であることが好ましく、60質量%以上であることが更に好ましい。
【0047】
また、ハニカム電極は、気孔率30〜60%の多孔体であることが好ましく、40〜50%の多孔体であることが更に好ましい。30%未満であると、セラミックス粒子間の空隙での微小放電の効果が少なくなるおそれがある。一方、60%超では隔壁の強度不足等の不具合を生じるおそれがある。
【0048】
ハニカム電極は、その密度が0.5〜4.0g/cmの多孔体であることが好ましく、1.0〜3.0g/cmの多孔体であることが更に好ましい。0.5g/cm未満であると、ハニカム電極自体の強度が不十分となり、衝撃を受けると破損するおそれがある。一方、4.0g/cmを超えると、製造時において加工が困難となり、製造コストが上昇するおそれがある。
【0049】
ハニカム電極は、導電性を確保する観点から、その電気抵抗は180℃で3.5Vの電圧印加の時に2Ω以下のものが好ましく、0.3Ω以下のものが更に好ましい。このような電気抵抗とするためには、導電性セラミックスとして炭化珪素を用い、これに金属珪素を混合する、或いは炭化珪素と金属珪素を複合化する等の処理をすることが好ましい。
【0050】
なお、ここにいう「電気抵抗」とは、ハニカム電極のガスが流れる方向(セル形成方向)に沿って、長さ3.3cm、断面積1.1cm(ガスの流れ方向に垂直な断面の断面積)の直方体を切り出し、180℃の温度条件下、直流電源による定電流4端子法にて電圧端子間2.3cmで測定した値を意味するものとする。
【0051】
ハニカム電極は、担持触媒の活性化という観点から、その熱伝導率が5〜300W/mKのものが好ましく、10〜200W/mKのものが更に好ましく、20〜100W/mKのものが特に好ましい。熱伝導率を5W/mK未満とすると、担持触媒の活性化に時間を要するおそれがある。一方、300W/mKを超えると、外部への放熱が大きくなり、担持触媒が十分に活性化しないおそれがある。このような熱伝導率を有する導電性セラミックスとしては、例えば、炭化珪素、窒化珪素、窒化アルミニウム等を挙げることができる。
【0052】
ハニカム電極は、線状電極側端面と線状電極との電極間距離が1〜30mmとなるように配置されていることが好ましく、5〜10mmとなるように配置されていることが更に好ましい。電極間距離を1mm未満とすると、電界集中が起こり易く、これを起点として短絡し易くなることがある。また、電極間でプラズマ放電するものの、炭化水素の改質反応に伴う水素生成量が少なくなる場合がある。一方、30mmを超えると、プラズマ放電が安定し難くなり、プラズマの発生効率が低下することがある。
【0053】
[2−2]線状電極:
本発明のリアクタは、図1Aに示すように、一対の電極12のうち、ハニカム電極34Aと対になる電極を線状電極32としている。本明細書にいう「線状電極」とは、一方向に突出する線状又は面状の電極を意味し、これらが折れ曲がった形状の電極も含むものとする。例えば、針状電極、棒状電極、平板状(短冊状)電極等の直線的な形状の他、L字型等の折れ曲がった形状等を挙げることができる。線状電極は少なくとも1本配置する。
【0054】
線状電極の長さは、リアクタのサイズを小さくするという理由から、3〜50mmであることが好ましく、5〜30mmであることが更に好ましい。長さを3mm未満とすると、リアクタの製造時に、線状電極のハンドリングが不安定になり、線状電極の固定が困難となるおそれがある。一方、50mmを超えると、流動する被改質ガスとの接触により線状電極が曲がり易くなるおそれがある。
【0055】
また、線状電極が針状又は棒状である場合、その外径は0.1〜5mmであることが好ましく、0.5〜3mmであることが更に好ましい。外径を0.1mm未満とすると、流動する被改質ガスとの接触により線状電極が曲がり易くなり、プラズマ放電が不安定になるおそれがある。一方、5mmを超えると、プラズマ放電が制御し難くなるおそれがある。
【0056】
線状電極は導電性を確保する観点から、導電性が高い材質、具体的には、金属、合金、導電性セラミックス等によって構成されていることが好ましい。導電性の高い金属としては、ステンレス、ニッケル、銅、アルミニウム、鉄等を、導電性の高い合金としては、アルミニウム−銅合金、チタン合金、インコネル(商品名)等を、導電性セラミックスとしては、炭化珪素等を、その他の材質としては、炭素等を挙げることができる。中でも、インコネル(商品名)等の耐腐食性が高い導電性材料を用いることが好ましい。
【0057】
[2−3]触媒:
本発明のリアクタは、被改質ガスの改質反応を促進する触媒を備えており、この触媒はハニカム電極の隔壁に担持されている。
【0058】
触媒は、前記触媒作用を有する物質であれば特に制限なく使用することができる。例えば、貴金属(白金、ロジウム、パラジウム、ルテニウム、インジウム、銀、金等)、アルミニウム、ニッケル、ジルコニウム、チタン、セリウム、コバルト、マンガン、亜鉛、銅、スズ、鉄、ニオブ、マグネシウム、ランタン、サマリウム、ビスマス、及びバリウムからなる群より選択された少なくとも一種の元素を含有する物質を挙げることができる。前記元素を含有する物質としては、金属単体、金属酸化物、それ以外の化合物(塩化物、硫酸塩等)等の各種形態が含まれる。これらの物質は一種を単独で用いてもよいし、二種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0059】
触媒の担持量としては、0.05〜70g/Lであることが好ましく、0.1〜40g/Lであることが更に好ましい。担持量を0.05g/L未満とすると、触媒作用が発現し難いおそれがある。一方、70g/Lを超えると、リアクタの製造コストが上昇するおそれがある。
【0060】
触媒は担体微粒子に担持された触媒コート微粒子の状態でハニカム電極の隔壁に担持されていることが好ましい。このような形態は、被改質ガスの触媒に対する反応効率を高めるという利点がある。担体微粒子としては、例えば、セラミックス粉末を用いることができる。セラミックスの種類は特に限定されないが、例えば、金属酸化物、特にシリカ、アルミナ、チタニア、ジルコニア、セリア、ゼオライト、モルデナイト、シリカアルミナ、金属シリケート、コージェライト等の粉末を好適に用いることができる。これらのセラミックスは一種を単独で用いてもよいし、二種以上を組み合わせて用いてもよい。このような触媒コート微粒子をハニカム電極の隔壁にコーティングすることにより、担持させることができる。
【0061】
これらの粉末の平均粒子径は0.01〜50μmであることが好ましく、0.1〜20μmであることが更に好ましい。平均粒子径を0.01μm未満とすると、触媒が担体微粒子の表面に担持され難くなるおそれがある。一方、50μmを超えると、触媒コート微粒子がハニカム電極から剥離し易くなるおそれがある。
【0062】
担体微粒子に対する触媒の質量比率は、0.1〜20質量%であることが好ましく、1〜10質量%であることが更に好ましい。触媒の質量比率を0.1質量%未満とすると、改質反応が進行し難いおそれがある。一方、20質量%を超えると、触媒が均一に分散されずに互いに凝集し易くなるために、担体微粒子に均一に担持され難くなる。従って、20質量%を超える量の触媒を加えても、その量に見合った触媒添加効果を得られず、改質反応が促進されないおそれがある。
【0063】
触媒コート微粒子は、例えば、担体微粒子となるセラミックス粉末に触媒成分を含む水溶液を含浸させた後、乾燥し、焼成することにより得ることができる。この触媒コート微粒子に分散媒(水等)、その他の添加剤を加えてコーティング液(スラリー)を調製し、このスラリーをハニカム電極の隔壁にコーティングすることによって、ハニカム電極の隔壁に触媒を担持することができる。
【0064】
[2−4]反応容器:
本発明のリアクタは、図1Aに示すように被改質ガス2の導入口4及び改質ガス6の排出口8が形成された反応容器10を備えている。反応容器は、被改質ガスの導入口及び改質ガスの排出口が形成された中空の構造体である。ガスを通過させる必要から中空形状であることが必要であるが、形状について他の制限はなく、例えば、円筒状、角筒状等の構造のものを用いることができる。反応容器の最大内径についても特に制限はなく、リアクタの用途により適宜サイズを決定すればよい。
【0065】
また、反応容器を構成する材質は特に限定されないが、加工性が良好な金属(例えば、ステンレス等)で構成することが好ましい。但し、短絡を防止するため、反応容器内の電極の設置部分等については絶縁性材料により構成することが好ましい(例えば、ハニカム電極支持体等)。
【0066】
[2−5]ハニカム電極支持体:
本発明のリアクタにおいては、金属製反応容器との間の短絡を防止する等の理由から、ハニカム電極は絶縁性材料からなるハニカム電極支持体を介して反応容器内部に設置することが好ましい。より具体的には、図1Aに示すリアクタ1Aのように、絶縁性材料からなり、ハニカム電極34Aを挟んで相対向するように配置された、ハニカム電極34Aを支持固定する一対のハニカム電極支持体36Aを備えていることが好ましい。
【0067】
ハニカム電極支持体を構成する絶縁性材料としては、セラミックスを好適に用いることができる。例えば、アルミナ、ジルコニア、窒化珪素、窒化アルミニウム、サイアロン、ムライト、シリカ、コーディエライト等を用いることが好ましい。これらのセラミックスは1種を単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0068】
図1Aに示すように、ハニカム電極支持体36Aは、ハニカム電極34を二方向から挟み込んで支持固定できるように、ハニカム電極34を挟んで相対向するように配置されることが多い。図1Aに示すリアクタ1Aはハニカム電極支持体36Aを左右一対備えており、その一対のハニカム電極支持体36Aによってハニカム電極34を左右両方向から挟み込んで支持固定した例である。
【0069】
[2−6]電源:
電源とは、図1Aに示すように一対の電極12(線状電極32、ハニカム電極34)に対して電圧を印加する電源14である。電源の種類は特に限定されないが、周期的に電圧を加えられるパルス電源を用いることが好ましい。中でも、(a)ピーク電圧が1kV以上で、かつ1秒当たりのパルス数が1以上のパルス波形、(b)ピーク電圧が1kV以上で、かつ周波数が1以上の交流電圧波形、(c)電圧が1kV以上の直流波形、又は、(d)これらの2種以上を重畳してなる電圧波形、を供給することができる電源であることが好ましい。そして、ピーク電圧が1〜20kVの電源であることが好ましく、ピーク電圧が5〜10kVの電源を用いることが更に好ましい。
【0070】
このような電源としては、例えば、スイッチング素子として静電誘導型サイリスタ(SIサイリスタ)又はMOS−FETを用いた高電圧パルス電源等を挙げることができる。中でも、使用条件が広いという理由から、スイッチング素子としてSIサイリスタを用いた高電圧パルス電源(例えば、日本ガイシ社製)を用いることが好ましい。なお、「MOS−FET」とは、電界効果トランジスタ(FET)のうち、ゲート電極が金属(Metal)−半導体酸化物(Oxide)−半導体(Semiconductor)の3層構造になっているタイプのものを意味する。
【0071】
[3]製造方法:
本発明のリアクタは、例えば以下のようにして製造することができる。従来公知の押出成形法により、ハニカム電極となるハニカム構造体を得る。具体的には、セラミックス粉末を含む坏土を所望の形状に押し出した後、乾燥し、焼成することによって、ハニカム電極となるハニカム構造体を得る。この際、ハニカム構造体を得るための原料セラミックスとしては導電性材料の炭化珪素等を用いる。反応容器については、従来公知の金属加工法により、管状(筒状)の反応容器を形成すればよい。この際、反応容器を得るための金属材料としてはステンレス等の加工容易な金属材料を用いることが好ましい。
【0072】
前記のように得られたハニカム構造体には、その隔壁に触媒を担持させる。予め、担体微粒子となるセラミックス粉末に触媒成分を含む水溶液を含浸させた後、乾燥し、焼成することにより触媒コート微粒子得る。この触媒コート微粒子に分散媒(水等)、その他の添加剤を加えてコーティング液(スラリー)を調製し、このスラリーをハニカム構造体の隔壁にコーティングした後、乾燥し、焼成することによって、ハニカム構造体の隔壁に触媒を担持させる。
【0073】
なお、本発明のリアクタに用いるハニカム電極はセル形成方向の長さに対するセル開口端面の最大外径の比率を所定の範囲内とする必要がある。具体的には、焼成時の収縮を考慮し、焼成後の形状が前記比率を満たすように押し出し成形を行うか、ハニカム構造体を焼成した後に前記比率を満たす形状となるように切り出す等の方法により得ることができる。
【0074】
前記のように得られたハニカム構造体(即ちハニカム電極)を、アルミナ等の絶縁性材料からなるハニカム電極支持体を介して反応容器の内部空間に設置する。ハニカム電極は線状電極と相対向するように所定の距離だけ離隔させて配置する。最後に、ハニカム電極及び線状電極を電源と電気的に接続することにより、リアクタを構成することができる。
【0075】
[4]使用方法:
本発明のリアクタは、改質反応、特に、炭化水素系化合物やアルコール類を被改質ガスとし、水素含有改質ガスを得る改質反応に好適に用いることができる。
【0076】
「炭化水素系化合物」としては、例えば、メタン、プロパン、ブタン、ヘプタン、ヘキサン等の軽質炭化水素、イソオクタン、ガソリン、灯油、ナフサ、軽油等の石油系炭化水素等を挙げることができる。「アルコール類」としては、例えば、メタノール、エタノール、1−プロパノール、2−プロパノール、1−ブタノール等を挙げることができる。これらの被改質ガスは、1種を単独で、また、2種以上を混合して用いることができる。
【0077】
改質の方法についても特に限定されるものではない。例えば、酸素を用いる部分改質、水を用いる水蒸気改質、酸素、水を用いるオートサーマル等のいずれの方法にも用いることができる。
【0078】
改質反応は、本発明のリアクタを用い、被改質ガスを反応容器の内部空間に導入し、電源から電極に対して、(a)ピーク電圧が1kV以上で、かつ1秒当たりのパルス数が1以上のパルス波形、(b)ピーク電圧が1kV以上で、かつ周波数が1以上の交流電圧波形、(c)電圧が1kV以上の直流波形、及び、(d)これらの2種以上を重畳してなる電圧波形のうちの一種の電圧波形を有するパルス電圧を印加することにより行うことができる。
【実施例】
【0079】
本発明のリアクタについて、実施例を示して更に具体的に説明する。但し、本発明のリアクタは、その発明特定事項を備えたリアクタを全て包含するものであり、以下の実施例に限定されるものではない。
【0080】
[リアクタの作製]
まず、以下のようにして、リアクタを作製した。
【0081】
(実施例1)
図1Aに示すようなリアクタ1Aを作製した。反応容器10としては、厚さ5mmのステンレス板からなり、縦40mm×横50mm×長さ90mmの四角筒状体を用いた。この反応容器10の内部にアルミナからなるハニカム電極支持体36Aを付設し、そのハニカム電極支持体36Aに炭化珪素からなるハニカム電極34Aを支持固定させた。同様に、アルミナからなる絶縁体に線状電極32を設置した。
【0082】
図1Bに示すようにハニカム電極34Aとしては、炭化珪素(含有率75質量%)からなり、隔壁によってガスの流路となる複数のセル16Aが区画形成されたハニカム構造体を用いた。ハニカム構造体としては、エンジン排ガス等に含有される粒子状物質を捕集するための炭化珪素製ディーゼルパティキュレートフィルタ(商品名:SiC−DPF、日本ガイシ社製)を縦20mm×横22mm×長さ60mmの直方体形状にカットして使用した。このハニカム構造体のセル開口端面の形状は矩形状であり、セル開口端面の最大外径は30mm(前記矩形の対角線長さ)であった。即ち、セル16A形成方向の長さLに対するセル16A開口端面の最大外径dの比率(表中、「最大外径/長さ比」と記す。)は0.50であった。なお、このハニカム構造体のセル形状は1mm×1mmの正方形状、セル密度は48セル/cmであった。
【0083】
また、前記SiC−DPFから、ガスが流れる方向に沿って、長さ3.3cm、断面積1.1cm(ガスの流れ方向に垂直な断面の断面積)の直方体を切り出し、180℃の温度条件下、直流電源による定電流4端子法にて電圧端子間2.3cmで測定した電気抵抗は0.2Ωであった。更に、熱伝導率は100W/mKであった。
【0084】
このハニカム構造体にはセルを区画する隔壁に触媒を担持した。予め、担体微粒子となるアルミナ粉末(比表面積107m/g)に触媒成分ロジウムを含む硝酸ロジウム(III)(Rh(NO)水溶液を含浸させた後、120℃で乾燥し、大気中550℃で3時間焼成することにより触媒コート微粒子を得た。アルミナに対するロジウムの質量比率は、0.5質量%であった。
【0085】
この触媒コート微粒子に分散媒(水)、アルミナゾルを加え、硝酸水溶液でpHを4に調整してコーティング液(スラリー)を得た。ハニカム電極をこのスラリーに浸漬させることにより、隔壁をコーティングした後、120℃で乾燥し、窒素雰囲気中550℃で1時間焼成することによって、ハニカム電極の隔壁に触媒を担持した。ハニカム電極に担持したロジウム量は1.5(g/L)であった。
【0086】
線状電極32としては、ステンレスからなり、長さ10mm、外径0.5mmφの棒状体を使用した。ハニカム電極34は線状電極32との電極間距離が5mmとなるように配置した。なお、このリアクタ1Aでは、線状電極32を正極とした。
【0087】
なお、図1Aに示すようにハニカム電極支持体36Aはハニカム電極34Aの外周面に当接するように構成した。
【0088】
電源14としては、SIサイリスタをスイッチング素子とする高電圧パルス電源(日本ガイシ社製)を用いた。電源14は、線状電極32(正極)及びハニカム電極34(負極)に電気的に接続した。
【0089】
(実施例2〜4、比較例1〜2)
ハニカム電極の最大外径/長さ比を変更したことを除いては、実施例1と同様にして、リアクタを構成した。具体的には、表1に示すように端面形状(縦20mm、横22mm、最大外径30mm)及びセル密度(48セル/cm)を変えることなく、長さのみを変更したハニカム電極を用い、リアクタを構成した。実施例1〜4及び比較例1〜2のリアクタにより、ハニカム電極の最大外径/長さ比が改質反応の反応効率に与える影響を確認した。
【0090】
図2に実施例2のリアクタで用いるハニカム電極34Bを示した。このハニカム電極34Bは縦20mm×横22mm×長さ40mmの直方体形状であり、セル形成方向の長さLに対するセル開口端面の最大外径dの比率は0.75であった。
【0091】
また、図4Aに比較例2のリアクタを示すとともに、図4Bに比較例2のリアクタで用いるハニカム電極34を示した。このハニカム電極34は縦20mm×横22mm×長さ20mmの直方体形状であり、セル16形成方向の長さLに対するセル16開口端面の最大外径dの比率は1.5であった。
【0092】
【表1】

【0093】
(実施例5〜7、比較例3〜4)
ハニカム電極のセル密度を変更したことを除いては、実施例2と同様にして、リアクタを構成した。具体的には、表2に示すように端面形状(縦20mm、横22mm)、長さ(25mm)及び最大外径/長さ比(1.2)を変えることなく、セル密度のみを変更したハニカム電極を用い、リアクタを構成した。実施例4〜7及び比較例3〜4のリアクタにより、ハニカム電極のセル密度が改質反応の反応効率に与える影響を確認した。
【0094】
図3に実施例6のリアクタで用いるハニカム電極34Cを示した。このハニカム電極34Cは縦20mm×横22mm×長さ25mmの直方体形状であり、セル形成方向の長さLに対するセル開口端面の最大外径dの比率は1.2であった。また、セル密度は28セル/cm(175セル/平方インチ)であった。
【0095】
【表2】

【0096】
[炭化水素の改質試験]
実施例及び比較例のリアクタを用い、炭化水素の改質試験を行った。具体的には、下記式(1)に示すペンタデカン(C1532)の部分酸化反応を行った。被改質ガスは、窒素ガス中にペンタデカン(C1532)が2000ppm、酸素が15000ppm含まれる組成とした。被改質ガスの調製は、高圧マイクロフィーダー(商品名:JP−H型、古江サイエンス社製)を使用して、所定量のペンタデカンを注入する方法で行った。ペンタデカンは配管内に設置した平板ヒータで気化させた後、導入した。
1532+7.5O→16H+15CO :(1)
【0097】
前記被改質ガスをリアクタに供給し、改質反応(部分酸化)を行った。繰返し周期3kHz、ピーク電圧3kVの条件で、電源から一対の電極に対してパルス電圧を印加した。この際の投入電力量は50Wであった。また、反応容器の内部における被改質ガスの空間速度(SV)は、ハニカム電極のセル内において、いずれも8万h−1となるように調整した。
【0098】
改質反応により得られた改質ガスについて水素量を測定した。水素量の測定は、TCD(熱伝導検出器)を備えたガスクロマトグラフィー(GC、ジーエルサイエンス(株)製GC3200、キャリヤーガスにアルゴンガス使用)を用いて行った。この水素量と、前記式(1)から反応で消費されたペンタデカン量を算出し、下記式(2)により水素生成率を算出した。水素生成率が30質量%以上であれば「極めて良好/◎」、25質量%以上、30質量%未満であれば「良好/○」、25質量%未満であれば「不良/×」として評価した。その結果を表1に示す。
水素生成率(質量%)=改質ガス中の水素量から算出されるペンタデカン量/被改質ガス中のペンタデカン量×100 :(2)
【0099】
実施例1〜4のリアクタは、比較例1〜2のリアクタと比較して高い水素生成率を示した。これらの結果から、ハニカム電極を奥行きの長い形状とすることで、触媒との接触時間(即ち、反応時間)が増加し、これによって発生する反応熱も多くなるため、改質反応が進行し易くなり、より効率的に改質ガスを得られると考えられた。即ち、比較例1〜2とプラズマ発生に投入した電力は同じであるにも拘わらず、効率的に改質ガス(水素)を得ることができた。
【0100】
一方、比較例1のリアクタは、ハニカム電極のセル方向長さを長くしたにも拘わらず、水素生成率が低下した。これは、比較例1のリアクタにおいては、被改質ガスと触媒との接触時間は延長されるものの、被改質ガスがハニカム電極のセルを通過する際の圧力損失が大きくなり、被改質ガスを処理する際の空間速度が低下したものと考えられた。また、ハニカム電極の末端側まで反応熱が行き渡らず、ハニカム電極の温度上昇による反応効率向上の効果を得られなかったものと考えられた。
【0101】
また、比較例2のリアクタは、ハニカム電極の形状を奥行きの短い形状としたために、被改質ガスとセルの隔壁に担持された触媒との接触時間(即ち、反応時間)が短く、触媒の効果を十分に享受できないものと考えられた。即ち、セル内で発生する反応熱を利用する前に改質ガスがハニカム電極のセルを通過してしまい、改質反応の促進効果が不十分となったものと考えられた。
【0102】
実施例1〜4及び比較例1〜2の結果から、ハニカム電極のセル形成方向の長さに対するハニカム電極のセル開口端面の幅の比率が0.50〜1.2の範囲内であることが好ましいことが確認された。
【0103】
実施例4〜7のリアクタは、比較例3〜4のリアクタと比較して高い水素生成率を示した。これは、ハニカム電極のセル形成方向の長さに対するハニカム電極のセル開口端面の最大外径を適切な範囲内とすることに加え、ハニカム電極のセル密度を適切な範囲内に設定することが重要であることを示している。これらの結果から、ハニカム電極が最大外径/長さ比及びセル密度の双方について所定の範囲を満たすことによって、プラズマ作用と触媒作用の相乗効果により、改質反応が効率的に進行するとともに、ハニカム電極の末端側まで反応熱が行き渡り、ハニカム電極の温度上昇による反応効率向上の効果も得られたものと考えられた。
【0104】
一方、比較例3のリアクタは、ハニカム電極のセル密度を低くしたために、被改質ガスとセルの隔壁に担持された触媒との接触時間(即ち、反応時間)が短く、触媒の効果を十分に享受できないものと考えられた。また、セル内で発生する反応熱を利用する前に改質ガスがハニカム電極のセルを通過してしまい、改質反応の促進効果が不十分となったものと考えられた。
【0105】
また、比較例4のリアクタは、ハニカム電極のセル密度を高くしたにも拘わらず、水素生成率が低下した。これは、比較例4のリアクタにおいては、被改質ガスと触媒との接触時間は延長されるものの、被改質ガスがハニカム電極のセルを通過する際の圧力損失が大きくなり、被改質ガスを処理する際の空間速度が低下したものと考えられた。また、ハニカム電極の末端側まで反応熱が行き渡らず、ハニカム電極の温度上昇による反応効率向上の効果を得られなかったものと考えられた。
【0106】
実施例4〜7及び比較例3〜4の結果から、ハニカム電極のセル密度が4〜192セル/cmの範囲内であることが好ましいことが確認された。
【0107】
なお、本実施例では部分酸化の例を示したが、酸素、水を用いるオートサーマル等の他の改質方法でも従来のリアクタと比較して高い水素生成率を示す結果が得られた。即ち、本発明のリアクタは、各種改質方法に適用することが可能であると言える。
【産業上の利用可能性】
【0108】
本発明のリアクタは、炭化水素系化合物やアルコール類の改質反応、特に水素生成反応に好適に用いることができる。そして、長期間にわたって安定的に大量の改質ガスを供給することができるので、車載用燃料改質器等の用途にも好適に用いることができる。
【符号の説明】
【0109】
1A,100:リアクタ、2:被改質ガス、4:導入口、6:改質ガス、8:排出口、10:反応容器、12:電極、14:電源、16:セル、32:線状電極、34,34A,34B,34C:ハニカム電極、36,36A:ハニカム電極支持体、42:プラズマ発生領域。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被改質ガスの導入口及び改質ガスの排出口が形成された反応容器と、前記反応容器の内部空間に相対向するように配置された、プラズマを発生させる一対の電極と、前記一対の電極に対して電圧を印加する電源と、前記被改質ガスの改質反応を促進する触媒とを備え、
前記一対の電極の一方が線状電極であるとともに、
前記一対の電極の他方は導電性セラミックスからなり、隔壁によってガスの流路となる複数のセルが区画形成されたハニカム電極であり、
前記触媒は、前記ハニカム電極の前記隔壁に担持されており、
前記ハニカム電極のセル密度が、4〜192セル/cmの範囲内であるとともに、前記ハニカム電極のセル形成方向の長さに対する前記ハニカム電極のセル開口端面の最大外径の比率が0.50〜1.2の範囲内であるリアクタ。
【請求項2】
前記ハニカム電極が、炭化珪素を含む導電性セラミックスからなるものである請求項1に記載のリアクタ。
【請求項3】
前記ハニカム電極は、その密度が0.5〜4.0g/cmのものである請求項1又は2に記載のリアクタ。
【請求項4】
前記ハニカム電極は、その熱伝導率が10〜300W/mKのものである請求項1〜3のいずれか一項に記載のリアクタ。
【請求項5】
前記電源が、静電誘導型サイリスタを用いた高電圧パルス電源である請求項1〜4のいずれか一項に記載のリアクタ。

【図1A】
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【図1B】
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【図2】
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【図3】
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【図4A】
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【図4B】
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【公開番号】特開2010−221164(P2010−221164A)
【公開日】平成22年10月7日(2010.10.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−73024(P2009−73024)
【出願日】平成21年3月25日(2009.3.25)
【出願人】(000004064)日本碍子株式会社 (2,325)
【Fターム(参考)】