説明

リウマチ性関節炎および骨粗鬆症の治療のためのIL−20アンタゴニストの使用

本発明は、IL−20のアンタゴニストを投与することによるリウマチ性関節炎及び骨粗鬆症の予防または治療のための方法および組成物を特徴とする。当該IL−20アンタゴニストは、ヒトIL−20に結合して、そのレセプターとのIL−20の相互作用を遮断することができる、mAB 7E等の抗IL−20抗体であってもよい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の引用
本願は、2008年10月7日出願の米国特許出願第12/246,715号および2009年8月31日出願の米国仮特許出願第61/238,661号の利益を主張する。各出願は、参考で全体を本明細書中に引用する。
【0002】
発明の分野
本発明は、リウマチ性関節炎および骨粗鬆症の予防、当該疾患の発症の遅延または当該疾患の治療のためのIL−20アンタゴニストの使用に関する。
【背景技術】
【0003】
発明の背景
骨粗鬆症は、骨量の減少および骨組織の低下を特徴とする病気であり、これにより、骨が弱くなったり、脆くなったりする。正味の骨量の減少は、様々な要因、例えば、低レベルのエストロゲン、カルシウムやビタミンDの不適切な摂取、および炎症によって誘発されうる。骨吸収は、更年期後の骨粗鬆症の主要な病理学的因子である。骨粗鬆症は、骨格の脆弱性を引き起こし、骨折の危険性を増加する骨強度が損なわれた疾患である(Theill, LE, et al. (2002) Annu Rev Immunol 20:795-823; Boyle, WJ, et al. (2003) Nature 423;337-342)。更年期でのエストロゲン欠乏および男性でのアンドロゲン欠乏は双方とも、骨代謝回転の不安定な増加を引き起こし、この際、骨吸収が骨形成を上回る。比較的早い骨量の減少がおき、それに付随して骨微細構造の破壊が起こる(Simonet, WS, et al. (1997) Cell 89:309-319; McClung, M, (2007) Arthritis Res Ther 9 Suppl 1:S3)。ほとんどの場合、骨量の減少は、破骨細胞数の増加によってまたは過剰な破骨細胞活性によって起こる(Walsh, NC, et al. (2005) Immunol Rev 208:228-251)。破骨細胞は、酒石酸抵抗性酸ホスファターゼ(TRAP)およびカルシトニンレセプターを発現する多核巨細胞である。破骨細胞の形成は、2つの因子が必要である:マクロファージコロニー刺激因子(M−CSF)およびNF−κBリガンドのレセプター活性化因子(RANKL)(Takayanagi, H, et al. (2005) Immunol Rev 208:181-193; Ross, FP & Teitelbaum, SL, (2005) Immunol Rev 208:88-105)。M−CSFは、単球/マクロファージ前駆細胞の生存および増殖を媒介するが、初期には、間質線維芽細胞、骨芽細胞、及び活性化T細胞によって生産される。RANKは、RANKLの唯一のシグナル伝達レセプターであり、破骨細胞の発生及び活性化を誘導する(Suda, T, et al., (1999) Endocr Rev 20:345-357)。マウスでのいずれの遺伝子の欠損が重篤な骨粗鬆症(骨量の増加)および破骨細胞の消失を引き起こすという知見によって、RANKL−RANKシグナル伝達経路のインビボでの重要性が確認された(Kong, YY, et al, (1999) Nature 397:315-323; Li, J, et al, (2000) Proc Natl Acad Sci USA 97:1566-1571)。TNF−a、IL−Iβ、IL−15、IL−17、及びIL−23等の、様々な炎症性サイトカインが、破骨細胞前駆体の多核細胞化、または破骨細胞表現型へこれらのコミッタンスを誘導し、RANKLと相乗的に作用しうる(Feldmann, M, et al. (2001) Curr Dir Autoimmun 3:188-199; O' Gradaigh, D, et al. (2004) Ann Rheum Dis 63:354-359; Sato, K, et al, (2006) Exp Med 203:2673-2682; Ju, JH, et al, (2008) J Immunol 181:1507-1518)。
【0004】
多機能炎症性サイトカイン(pleiotropic inflammatory cytokine)IL−20は、IL−10群:IL−10、IL−19、IL−20、IL−22、IL−24、及びIL−26(Blumberg, H, et al, (2001) Cell 104:9-19; Pestka, S, et al., (2004) Annu Rev Immunol 22:929-979)の1つであるが、単球、上皮細胞、及び内皮細胞で発現する。IL−20は、IL−20R1/IL−20R2またはIL−R22R1/IL−20R2のいずれかのヘテロダイマーレセプター複合体を活性化することによって多数の細胞タイプに作用する(Dumoutier, L., et al., (2001) Immunol 167:3545-3549)。これは、乾癬(Blumberg, H, et al, (2001) Cell 104:9- 19; Sa, SM, et al., (2007) J Immunol 178:2229-2240; Wei, CC, et al., (2005) Clin Immunol 117:65-72)、リウマチ性関節炎(Hsu, YH, et al., (2006) Arthritis Rheum 54:2722-2733)、アテローム性動脈硬化症(Caligiuri, G, et al. (2006) Arterioscler Thromb Vase Biol 26:1929-1930; Chen, WY, et al. (2006) Arterioscler Thromb Vase Biol 26:2090-2095)、虚血性脳卒中(Chen, WY & Chang, MS, (2009) Immunol 182:5003-5012)、及び腎不全(Li, HH, et al., (2008) Genes Immun 9:395-404)等の、様々な炎症性疾患にかかわりがある。IL−20は、低酸素やIL−IβやLPS等の炎症性刺激によって調節される(Chen, WY & Chang, MS, (2009) Immunol 182:5003-5012; Otkjaer, K, et al., (2007) Invest Dermatol)。IL−20は、近年、血管形成が調節されることが報告された(Heuze- Vourc'h, N, et al., (2005) Biochem Biophys Res Commun 333:470-475; Hsieh, MY, et al., (2006) Genes Immun 7:234-242; Tritsaris, K, et al., (2007) Proc Natl Acad Sci USA 104:15364-15369)。実験によるリウマチ性関節炎では、IL−20は、滑膜線維芽細胞がMCP−1、IL−6、及びIL−8を分泌するのを誘導し、さらにこれは、炎症性サイトカインとして作用する(Hsu, YH, et al., (2006) Arthritis Rheum 54:2722-2733)。
【0005】
IL−20は、リウマチ性関節炎にかかわりがあることが示され、また、IL−20可溶性レセプターはIL−20を遮断することが示され、これによりコラーゲン誘導関節炎の重篤度を低減する(Hsu, YH, et al., (2006) Arthritis Rheum 54:2722-2733)。したがって、IL−20は、リウマチ性関節炎の進行中の促進因子である。しかしながら、骨吸収におけるIL−20の機能について、またはRANKL−RANKシグナル伝達が仲介する破骨細胞形成におけるIL−20の機能について、ほとんど知られていない。
【発明の概要】
【0006】
発明の要約
本発明は、有効量のIL−20アンタゴニストを個体に投与することを有する個体の骨粗鬆症の治療、骨粗鬆症の発症の遅延、または骨粗鬆症の予防方法を提供する。
【0007】
本発明また、有効量のIL−20アンタゴニストを有効量のTNFaアンタゴニスト(エタネルセプトポリペプチド等)と組み合わせて個体に投与することを有する個体のリウマチ性関節炎の治療、リウマチ性関節炎の発症の遅延、またはリウマチ性関節炎の予防方法を提供する。
【0008】
本明細書中に記載されるIL−20アンタゴニストは、骨粗鬆症またはリウマチ性関節炎を治療する、発症を遅延する、または予防するのに使用してもよい。実施形態によっては、IL−20アンタゴニストは、mAb 7E等の抗IL−20抗体またはこの機能的な等価物である。
【0009】
態様によっては、本発明は、リウマチ性関節炎または骨粗鬆症の治療の必要のある患者に有効量の抗IL−20抗体7Eを投与することによるリウマチ性関節炎または骨粗鬆症の治療方法を提供する。一例では、抗IL−20抗体7Eは、American Type Culture Collectionに受託番号 PTA−8687で寄託されたハイブリドーマ細胞系によって生産される、mAb 7Eの重鎖及び軽鎖の可変領域を含む抗体である。この抗体の例としては、以下に制限されないが、mAb 7E、この機能性断片(F(ab’)、Fabなど)、一本鎖抗体、またはキメラ抗体が挙げられる。他の例では、抗IL−20抗体7Eは、mAb 7Eのヒト化抗体である。
【0010】
上記方法において、患者に、有効量のエタネルセプトポリペプチドをさらに投与することが好ましい。一例では、エタネルセプトポリペプチドは、ヒト可溶性TNFレセプター(下記配列番号:5)およびヒトIgG1のFc成分を含む融合タンパク質(即ち、エタネルセプト)である。
【0011】
骨粗鬆症の治療を目的とするまたは骨粗鬆症の治療用薬剤の製造を目的とする抗IL−20抗体7Eの使用もまた本発明の範囲に含まれる。リウマチ性関節炎及び骨粗鬆症の治療を目的とするまたはこれらの治療用薬剤の製造を目的とする、好ましくはエタネルセプトポリペプチドと組み合わせた、抗IL−20抗体7Eの使用もまた本発明の範囲に含まれる。
【0012】
本発明の一以上の実施形態の詳細を下記説明に記載する。本発明の他の特徴または利点は、下記図面および様々な実施形態の詳細な説明から、ならびに添付の特許請求の範囲から明らかであろう。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】図1は、PBS、mIgG、mAb 7E、エタネルセプト、またはmAb 7E及びエタネルセプト双方で処置した健常ラットおよびコラーゲン誘発性関節炎ラットにおける重篤な後脚の腫れの発生率を示す図である。
【図2】図2は、mIgG、mAb 7E、エタネルセプト、またはmAb 7E及びエタネルセプト双方で処置した健常ラットにおけるおよびコラーゲン誘発性関節炎ラットにおけるTNF−a(パネルA)、IL−Iβ(パネルB)およびIL−20(パネルC)のレベルを示す多くの図である。
【図3】図3aは、IL−20の血清レベルがOVX−群のマウスではアップレギュレートされたが、mAb 7Eによる処置後のOVX−マウスではダウンレギュレートされたことを示す図である。*P<0.05(偽コントロールに比べて) #P<0.05(OVX−mlgGに比べて) 図3bは、以下の処置によるOVXをしてから2カ月後のマウスの右脛骨のミクロ−CT分析の代表的な図を示す:偽コントロールマウス(健常)、処置せずに卵巣摘出(OVX)マウス、及び17β−エストラジオールで処置した卵巣摘出マウス、OVX+mlgG、OVX+7E(3mg/kg)、またはOVX+7E(6mg/kg)。図3cは、各実験群の膝関節における骨ミネラル濃度を示す図である。値は、平均値±標準偏差である。
【図4】図4aは、破骨細胞の分化のための培養システムの概略図である。図4bは、腫瘍壊死因子(TNF)−a、mIgG、またはmAb 7Eを組み合わせたマクロファージコロニー刺激因子(M−CSF)及び可溶性NF−κB活性化受容体リガンド(NF-κB ligand receptor activator)(sRANKL)の処置に関する破骨細胞の代表的な酒石酸抵抗性酸性フォスファターゼ(TRAP)染色を示す。図4cは、1ウェル当たりのTRAP+破骨細胞の数を示す図である。図4dは、初期のmAb 7E処置に関する破骨細胞の分化培養システムの概略図である。図4eは、破骨細胞のTRAP染色を示す。図4fは、1ウェル当たりのTRAP+破骨細胞の数を示す図である。3回の独立した実験の代表的な結果が示される。
【図5】図5aは、MCSFを用いたあるいは用いない骨髄由来の造血幹細胞(HSC)におけるIL−20発現を示す図である。図5bは、RANKタンパク質IL−20で処置したHSCの表面発現のフローサイトメトリーによる分析を示す。アイソタイプは、アイソタイプ抗体のネガティブコントロールで染色した細胞を示す。図5cは、RANK mRNA発現がIL−20で予め処置した後のHSCでアップレギュレートしたことを示す図である。図5dは、mAb 7EがリアルタイムPCR(real time-PCR)によって測定した際のOC前駆細胞におけるIL−20で誘導されるRANK mRNA発現を阻害することを示す図である。
【図6】図6aは、RT−PCRによるMC3T3−E1骨芽細胞におけるIL−20及びそのレセプターの発現を示す。図6bは、MC3T3−E1細胞におけるIL−20及びそのレセプターの細胞染色を示す:赤(IL−20及びそのレセプター、AEC)、青(核)。図6cは、以下の特異的な抗体を用いて所定の期間IL−20と共にインキュベートした細胞のウエスタンブロット分析を示す:ホスホ−JNK(JNK)、ホスホ−ERK(ERK)、ホスホ−AKT(AKT)、ホスホ−p38(p38)、ホスホ−STAT3(STAT3)、及びβ−アクチン(β−アクチン)。図6dは、IL−20で処置したMC3T3−E1細胞におけるIL−17 mRNA発現のRT−PCR分析を示す。図6eは、リアルタイムPCRによって測定されたIL−20で処置したMC3T3−E1細胞におけるRANKL mRNA発現を示す図である。図6fは、IL−20で処置したMC3T3−E1細胞におけるRANKLタンパク質発現を示す図である。
【図7】図7は、mAb 7EがMC3T3−E1骨芽細胞におけるIL−20で誘導されるRANKL発現を阻害することを示す図である。3回の独立した実験の代表的な結果が示される。
【発明を実施するための形態】
【0014】
発明の詳細な説明
本発明は、IL−20が破骨前駆細胞へのRANK発現及び骨芽細胞へのRANKL発現を引き起こす新規な破骨細胞形成サイトカインであるという知見に基づくものである。IL−20のアンタゴニスト;例えば、IL−20に特異的なモノクローナル抗体mAb 7Eは、IL−20で誘導されるRANK及びRANKL発現を消失させた。これらの結果は、IL−20アンタゴニストが、インビボで破骨細胞の分化を阻害し、骨粗鬆症による骨量の減少から個体を保護するのに使用されうることを示した。本発明はまた、IL−20に特異的なモノクローナル抗体が単独でまたはエタネルセプトと組み合わせると、後肢の腫脹(thickness and swelling)を減らすことによる関節炎の重篤度を有意に下げ、さらにリウマチ性関節炎の動物モデルにおいて軟骨損傷及び骨量の減少を防止したという知見に基づく。
【0015】
本発明は、有効量のIL−20アンタゴニスト(抗IL−20抗体またはその抗原結合断片等)を投与することによる個体の骨粗鬆症の治療、骨粗鬆症の発症の遅延、または骨粗鬆症の予防方法を提供する。実施形態によっては、IL−20アンタゴニストは、骨粗鬆症の他の治療剤と組み合わせて投与される。実施形態によっては、骨粗鬆症は、更年期後の骨粗鬆症である。実施形態によっては、骨粗鬆症は、ホルモン欠乏に関連する。例えば、場合によっては、骨粗鬆症は、ホルモンアブレーション処置に関連する。ホルモンアブレーション処置の例としては、乳癌の処置および前立腺癌の処置がある。実施形態によっては、骨粗鬆症は、ステロイドで誘導されたまたはステロイドに関連する骨粗鬆症である。実施形態によっては、骨粗鬆症は、リウマチ性関節炎に関連する。
【0016】
本発明はまた、有効量のIL−20アンタゴニスト(抗IL−20抗体またはその抗原結合断片等)及び有効量のTNFaアンタゴニスト(エタネルセプトポリペプチド等)を投与することによる処置の必要のある個体のリウマチ性関節炎の治療、リウマチ性関節炎の発症の遅延、またはリウマチ性関節炎の予防方法を提供する。
【0017】
一般的な技術
本発明の実施は、特記しない限り、分子生物学(組換技術を含む)、微生物学、細胞生物学、生化学及び免疫学の公知技術を使用するであろうし、これらは当該分野に含まれる。このような技術は、Molecular Cloning: A Laboratory Manual, second edition (Sambrook, et al., 1989) Cold Spring Harbor Press; Oligonucleotide Synthesis (MJ. Gait, ed., 1984); Methods in Molecular Biology, Humana Press; Cell Biology: A Laboratory Notebook (J.E. Cellis, ed., 1998) Academic Press; Animal Cell Culture (R.I. Freshney, ed., 1987); Introduction to Cell and Tissue Culture (J.P. Mather and P.E. Roberts, 1998) Plenum Press; Cell and Tissue Culture: Laboratory Procedures (A. Doyle, J.B. Griffiths, and D.G. Newell, eds., 1993-8) J. Wiley and Sons; Methods in Enzymology (Academic Press, Inc.); Handbook of Experimental Immunology (D.M. Weir and CC. Blackwell, eds.); Gene Transfer Vectorsfor Mammalian Cells (J.M. Miller and M.P. Calos, eds., 1987); Current Protocols in Molecular Biology (F.M. Ausubel, et al., eds., 1987); PCR: The Polymerase Chain Reaction, (Mullis, et al, eds., 1994); Current Protocols in Immunology (J.E. Coligan et al., eds., 1991); Short Protocols in Molecular Biology (Wiley and Sons, 1999); Immunobiology (CA. Janeway and P. Travers, 1997); Antibodies (P. Finch, 1997); Antibodies: a practical approach (D. Catty., ed., IRL Press, 1988-1989); Monoclonal antibodies: a practical approach (P. Shepherd and C. Dean, eds., Oxford University Press, 2000); Using antibodies: a laboratory manual (E. Harlow and D. Lane (Cold Spring Harbor Laboratory Press, 1999); The Antibodies (M. Zanetti and J.D. Capra, eds., Harwood Academic Publishers, 1995)等の、文献に十分に説明される。
【0018】
定義
「抗体」(複数形でも同じ意味に使用される)は、免疫グロブリン分子の可変領域中に位置する、少なくとも一の抗原認識部位を介して、炭水化物、ポリヌクレオチド、脂質、ポリペプチド等の、ターゲットに特異的に結合できる免疫グロブリン分子である。本明細書中で使用される、当該ことばは、完全なポリクローナル抗体またはモノクローナル抗体のみでなく、その断片(FAB、FAB’、F(AB’)2、Fv)、一本鎖(ScFv)、その変異体、dAb(抗体ドメイン; Ward、et. AL, 1989, Nature, 341:544-546を参照)、抗体タンパク質を含む融合タンパク質、ヒト化抗体、キメラ抗体、二特異性抗体(diabody)、線状抗体(linear antibody)、一本鎖抗体、多特異的抗体(例えば、二重特異性抗体)及び所望の特異性を有する抗原認識部位を有する免疫グロブリン分子の他の修飾構造をも包含する。抗体はIgG、IgA、またはIgM(またはこれらのサブクラス)等の、いずれのクラスの抗体を包含し、また、抗体は特定のクラスである必要はない。重鎖の定常領域の抗体アミノ酸配列によっては、免疫グロブリンは別のクラスであってもよい。IgA、IgD、IgE、IgG、及びIgMの免疫グロブリンの5つの主要なクラスがあり、これらのうち幾つかはサブクラス(アイソタイプ)、例えば、IgG1、IgG2、IgG3、IgG4、IgA1及びIgA2にさらに分かれてもよい。様々なクラスの免疫グロブリンに相当する重鎖の定常領域は、それぞれ、アルファ、デルタ、イプシロン、ガンマ、及びミューと呼ばれる。様々なクラスの免疫グロブリンのサブユニット構造及び3次元構造は既知である。
【0019】
「モノクローナル抗体」は、均質な抗体集団であり、モノクローナル抗体は抗原の選択的な結合に関与するアミノ酸(天然のおよび非天然の)から構成される。モノクローナル抗体の集団は、非常に特異的であり、単一の抗原部位に対する。「モノクローナル抗体」ということばは、完全なモノクローナル抗体や完全長のモノクローナル抗体のみでなく、その断片(FAB、FAB’、F(AB’)2、Fv)、一本鎖(ScFv)、その変異体、抗体タンパク質を含む融合タンパク質、ヒト化モノクローナル抗体、キメラモノクローナル抗体、及び所望の特異性を有する抗原認識部位を含み、抗原への結合能を有する免疫グロブリン分子の他の修飾構造をも包含する。モノクローナル抗体の、抗体源または作製される方法(例えば、ハイブリドーマ、ファージ選択、組換発現、形質転換動物など)は限定されるものではない。このことばは、全体の免疫グロブリンおよび「抗体」の定義で上記したような断片などを包含する。モノクローナル抗体は様々な種、例えば、マウス及びヒト由来であってもよい。
【0020】
ヒト化抗体は、非ヒト免疫グロブリン由来の最小限の配列を有する特定のキメラ免疫グロブリン、免疫グロブリン鎖、またはその断片(Fv、Fab、Fab’、F(ab’)または抗体の他の抗原結合配列)である非ヒト(例えば、マウス)抗体の形態を意味する。大部分では、ヒト化抗体は、レシピエントの相補性決定領域(CDR)由来の残基が、所望の特異性、親和性、及び能力を有するマウス、ラット、またはウサギ等の非ヒト種(ドナー抗体)のCDR由来の残基によって置換されるヒト免疫グロブリン(レシピエント抗体)である。場合によっては、ヒト免疫グロブリンのFvフレームワーク領域(FR)残基が相当する非ヒト残基で置換される。さらに、ヒト化抗体は、レシピエント抗体にもまたは挿入されたCDR若しくはフレームワーク配列にも見当たらないが、さらに精製し抗体性能を最適化するのにかかわりのある残基を有していてもよい。通常、ヒト化抗体は、実質的にすべての、少なくとも1つの、通常2つの、可変領域を有し、この際、すべてのまたは実質的にすべてのCDR領域が非ヒト免疫グロブリンのものに対応し、また、すべてのまたは実質的にすべてのFR領域がヒト免疫グロブリンの共通配列のものである。ヒト化抗体は、必要であれば、免疫グロブリンの定常領域またはドメイン(Fc)、具体的にはヒト免疫グロブリンのもの、の少なくとも一部を有しているであろう。抗体は、WO 99/58572に記載されるのと同様にして修飾された領域を有していてもよい。他の形態のヒト化抗体は、元の抗体に関して変更される1以上のCDR(1、2、3、4、5、6)を有し、これらはまた、元の抗体由来の1以上のCDR由来である1以上のCDRと称される。
【0021】
「キメラ」抗体は、第一の種由来の可変領域または可変領域の一部および第二の種由来の定常領域を有する抗体を意味する。具体的には、これらのキメラ抗体では、双方の軽鎖及び重鎖の可変領域は1つの種の哺乳動物由来の抗体の可変領域を模倣し、定常部分は他の種由来の抗体における配列に相同性を有する。実施形態によっては、アミノ酸修飾が可変領域および/または定常領域でなされていてもよい。
【0022】
ターゲットまたはエピトープに「特異的に結合する」または「結合する」(本明細書では同様の意味で使用される)抗体またはポリペプチドは、当該分野においてよく理解されることばであり、このような特異的な結合を測定する方法もまた当該分野において既知である。別のターゲットに対してよりも、特定のターゲットと、より頻繁に、より迅速に、より長い期間および/またはより高い親和性で反応するまたは結合する場合には、その分子は「特異的な結合性」を有するといわれる。他の物質に結合するよりも、より高い親和性(affinity)、親和性(avidity)で、より迅速におよび/またはより長い期間、結合する場合には、その抗体またはポリペプチドはターゲットに「特異的に結合する」。例えば、IL−20エピトープに特異的にまたは優先的に結合する抗体は、他のIL−20エピトープまたはIL−20以外のエピトープに結合するよりも、より高い親和性(affinity)、親和性(avidity)で、より迅速におよび/またはより長い期間、このIL−20エピトープに結合す抗体である。例えば、第一のターゲットに特異的に結合する抗体(または部分)は第二のターゲットに特異的にまたは優先的に結合してもよいし結合しなくてもよいこともまた、この定義を読むことによって理解される。このように、「特異的に結合する」または「優先的に結合する」は、必ずしも排他的な結合を必要としない(ただし、排他的な結合を包含できる)。通常、ただし必ずしもではないが、結合への言及は優先的な結合を意味する。
【0023】
本明細書中で使用される、「IL−20」ということばは、インターロイキン−20およびIL−20の活性の少なくとも一部を保持するその変異体を意味する。本明細書中で使用される、IL−20は、ヒト、イヌ、ネコ、ウマ、またはウシ等の、天然の配列IL−20のすべての哺乳動物種を包含する。
【0024】
「IL−20レセプター」は、IL−20によって結合するまたはIL−20によって活性化される1以上のポリペプチドを意味する。場合によっては、IL−20は、IL−20R1及びIL−20R2によって形成される複合体に結合する。他の場合では、IL−20は、IL−20R2及びIL−22R1によって形成される複合体に結合する。このように、IL−20レセプターは、以下に制限されないが、ヒト、イヌ、ネコ、ウマ、霊長類、またはウシ等の、いずれかの哺乳動物種のIL−20R1、IL−20R2およびIL−22R1を包含する。ヒトIL−20レセプターの例としては、hIL−20R1(GenBank Accession No. NM_014432.2)、hIL−20R2(GenBank Accession No. NM_144717.2)及びhIL−22R1(NM_181309.1)が挙げられる。ヒトILレセプターの配列は、例えば、米国特許第6,610,286号;第7,122,632号;第7,393,684号;及び第7,537,761号;ならびに米国特許出願公開第2006/0263850 A1号;第2006/0263851 A1号;第2008/0247945 A1号、及び第2009/0074661 A1号に記載されている。
【0025】
「IL−20アンタゴニスト」は、レセプター結合および/またはIL−20への細胞応答の誘発等の、IL−20シグナル伝達に仲介される下流経路などの、IL−20生物学的活性を遮断する、抑制するまたは低減する(有意にを含む)分子を意味する。「アンタゴニスト」ということばは、生物学的作用の特異的なメカニズムを包含せず、直接的または間接的なに限らずすべての可能性のあるIL−20との薬理学的、生理学的、及び生化学的相互作用を表現上包含するとみなされる。IL−20アンタゴニストの例としては、以下に制限されないが、抗IL−20抗体またはその断片、IL−20に対するアンチセンス分子(IL−20をコード化する核酸に対するアンチセンス分子を含む)、IL−20核酸に対する低分子干渉RNA(siRNA)、IL−20核酸に対するミクロRNA(microRNA)、IL−20阻害化合物が挙げられる。本発明を目的として、「アンタゴニスト」ということばは、IL−20それ自体、IL−20の生物学的活性(以下に制限されないが、いずれかの態様の骨粗鬆症の仲介能を含む)、または生物学的活性の結果が実質的に0になる、低減される、または大きく中和されるすべての前記したことば、タイトルならびに機能的な状態及び特性を包含する。実施形態によっては、IL−20アンタゴニストは、IL−20に結合して、IL−20レセプター複合体形成を防止する。他の実施形態では、IL−20アンタゴニストは、IL−20合成および/または生産(放出)を阻害するまたは低減する。IL−20アンタゴニストのタイプの例は本明細書に記載される。
【0026】
本明細書中で使用される、「抗IL−20抗体」は、IL−20に結合して、IL−20の生物学的活性および/またはIL−20シグナル伝達に仲介される下流経路を阻害できる抗体を意味する。
【0027】
「抗IL−20抗体7E」ということばは、モノクローナル抗体mAb 7E及びその機能的な変異体を意味する。mAb 7Eは、American Type Culture Collection, 10801 University Boulevard, Manassas, VA 20110-2209, U.S.A.に、受託番号:PTA−8687で寄託されるハイブリドーマ細胞系によって生産される。このハイブリドーマ細胞系は、本出願で米国特許で特許登録されると取消不能の形で制限/条件なく公衆に公開されるであろうし、寄託日から少なくとも30年間、本特許の法的効力のある期間または最も最近の日付から5年間ATCCに維持されるであろう。
【0028】
mAb 7Eの「機能的な等価物」は、(1)ヒトIL−20に特異的に結合し、および(2)mAb 7Eのもの(配列番号:1のヌクレオチド配列によってコード化され、配列番号:2として下記に示される)と少なくとも70%(例えば、80%、90%、または95%)一致する重鎖可変領域(VH)及びmAb 7Eのもの(配列番号:3のヌクレオチド配列によってコード化され、配列番号:4として下記に示される)と少なくとも70%(例えば、80%、90%、または95%)一致する軽鎖可変領域(LH)を含む抗体である。米国特許出願第11/763,812号を参照。
【0029】
本明細書中で使用される、2つのアミノ酸配列の「%相同性」は、Karlin and Altschul, Proc, Natl. Acad. ScL USA 5873- 5877, 1993に記載されるように修飾される、Karlin and Altschul, Proc, Natl. Acad. ScL USA 87:2264- 2268, 1990に記載のアルゴリズムを用いて測定される。このようなアルゴリズムは、Altschul et al, J. MoI. Biol. 215:403-410, 1990のNBLAST及びXBLASTプログラムに入れられる。BLASTタンパク質検索は、XBLASTプログラム、スコア=50、ワード長=3を用いて行われ、参照ポリペプチドに相同するアミノ酸配列が得られる。比較目的でギャップトアライメント(gapped alighment)を得るために、Altschul et al., Nucleic Acids Res. 25:3389-3402, 1997に記載されるようなGapped BLASTを用いる。BLAST及びGapped BLASTプログラムを使用する場合には、各プログラムのデフォルトパラメーター(例えば、XBLAST及びNBLAST)を使用する。www.ncbi.nlm.nih.govを参照。
【0030】
mAb 7Eの機能的な等価物は、酵素消化によって生じるその断片、例えば、FabまたはF(ab’)2がありうる。また、mAb 7EのVH及びVL領域を含む遺伝的に操作された抗体であってもよい。このような抗体の例としては、以下に制限されないが、mAb 7EのVH及びVLがリンカー(例えば、ペプチドリンカー)を介して共有結合的に融合する1本鎖抗体、及びmAb 7EのVH及びVLがそれぞれヒトIgGの重鎖及び軽鎖の定常領域と結合するマウス−ヒトキメラ抗体が挙げられる。
【0031】
機能的な等価物はまたヒト化抗体であってもよい。「ヒト化抗体」ということばは、そのVH及びVLのフレーム領域(FR)ならびに存在する場合には定常領域がヒト抗体のFR及び定常領域と置換される、非ヒト抗体を意味する。さらに、mAb 7Eの機能的な等価物は、VHまたVLのいずれかのFR中に突然変異を導入することによって得られてもよい。抗体の相補性決定領域(CDR)がその抗原特異性を決定することは既知である。したがって、FRにおける突然変異は、一般的に、抗体の特異性に影響を及ぼさないであろう。抗体のCDR及びFRは、そのVH及びVLのアミノ酸配列に基づいて決定されうる。www.bioinf.org.uk/absを参照。本明細書中に記載される機能的な等価物の結合特異性は、既知の方法、例えば、ELISAまたはウエスタンブロット分析を用いて試験されうる。
【0032】
モノクローナル抗体mAb 7Eおよびその機能的な等価物は、公知の方法により、例えば、上記ハイブリドーマ細胞から分泌される抗体を精製することによって、または遺伝子操作によって調製できる。
【0033】
本明細書中で使用される、「治療(treating)」ということばは、当該疾患、当該疾患の症状、または当該疾患にかかりやすい体質を治療する(cure)、治す(heal)、緩和する(alleviate)、軽減する(relieve)、変える(alter)、修正する(remedy)、改善する(ameliorate)、改良する(improve)、または作用することを目的として、1以上の活性剤を含む組成物を、リウマチ性関節炎若しくは骨粗鬆症、いずれかの疾患の症状、または当該疾患にかかりやすい体質を有する、患者に適用するまたは投与することを意味する。
【0034】
本明細書中で使用される「有効量」とは、単独でまたは1以上の他の活性剤と組み合わせて、患者に治療効果を奏するのに必要な各活性剤の量を意味する。有効量は、当業者に認識されるように、投与経路、賦形剤の使用、及び他の活性剤との併用によって異なる。
【0035】
本明細書中で使用される、疾患(骨粗鬆症またはリウマチ性関節炎等)の発症を「遅延させる(delaying)」ということばは、当該疾患の進行を延ばす(defer)、妨げる(hinder)、遅らせる(slow)、妨害する(retard)、安定化させる(stabilize)、および/または延期させる(postpone)ことを意味する。この遅延は、病歴および/または治療される個体によって、期間の長さが異なってもよい。当業者には明らかなように、十分なまたは有意な遅延は、実際には、その個体が当該疾患を発症しないという点で、予防を包含する。症状の発症を「遅延させる」方法は、当該方法を使用しない場合と比べて、所定の期間その症状を発症する可能性を低減するおよび/または所定の期間その症状の程度を低減する方法である。このような比較は、具体的には、統計学的に有意な結果を得るのに十分多数の患者を用いた、臨床研究に基づくものである。
【0036】
疾患(骨粗鬆症またはリウマチ性関節炎等)の「発症」または「進行」とは、当該疾患の最初の症状および/または次の進行を意味する。当該疾患の発症は、当該分野において既知の標準的な臨床技術を用いて検出及び評価可能である。しかしながら、発症はまた、検出不可能な進行をも意味する。本発明を目的として、発症または進行は、症状の生物学的な経過(biological course)を意味する。「発症」は、発生(occurrence)、再発(recurrence)、及び発病(onset)を包含する。本明細書中で使用される、骨粗鬆症の「発病(onset)」または「発生(occurrence)」ということばは、初期の発病および/または再発を包含する。
【0037】
本明細書中で使用される、「薬剤(agent)」ということばは、生物学的、薬学的、または化学的化合物を意味する。以下に制限されないが、単一若しくは複合の有機若しくは無機分子、ペプチド、タンパク質、オリゴヌクレオチド、抗体、抗体誘導体、抗体断片、ビタミン誘導体、炭水化物、毒素、または化学療法化合物が挙げられる。様々な化合物は、合成された、例えば、小分子及びオリゴマー(例えば、オリゴペプチド及びオリゴヌクレオチド)、および様々なコア構造に基づいた合成有機化合物でありうる。さらに、様々な天然源により、植物または動物抽出物等の、スクリーニング用の化合物が提供されてもよい。本発明の薬剤の構造特性に制限されないことは、当業者が容易に認識できる。
【0038】
本明細書中で使用される、「一緒に投与(co-administration)」または「と組み合わせて投与(administration in conjunction with)」ということばは、同時に投与および/または異なる時期の投与を包含する。一緒に投与はまた、一緒に処方(co-formulation)としての一緒に投与(即ち、IL−20アンタゴニスト及び薬剤が同じ組成物中に存在する)または別の組成物としての投与を包含する。本明細書中で使用される、一緒に投与は、薬剤及びIL−20アンタゴニストを個体に、同時におよび/または別々に投与する状況を包含することを意味する。さらに本明細書中で使用されるが、IL−20アンタゴニスト及び薬剤を、異なる投与頻度または間隔で投与してもよいと解される。例えば、抗IL−20抗体は週に一度投与し、薬剤はそれ以上の頻度で投与してもよい。IL−20アンタゴニスト及び薬剤を、同じ投与経路または異なる投与経路を用いて投与してもよい。
【0039】
「個体(individual)」または「患者(subject)」は、哺乳動物、より好ましくはヒトである。哺乳動物としては、以下に制限されないが、家畜、競技用動物(sport animal)、ペット、霊長類、ウマ、イヌ、ネコ、マウス及びラットが挙げられる。
【0040】
本明細書中に記載されるすべての方法について、IL−20アンタゴニストへの言及はまた、1以上のこれらの薬剤を含む組成物を包含する。これらの組成物は、当該分野において既知の、緩衝剤等の製薬上許容できる賦形剤(担体)などの、適当な賦形剤をさらに含んでもよい。本発明は、単独でまたは他の公知の治療方法と組み合わせて使用できる。
【0041】
本明細書中で使用され、また、添付の特許請求の範囲において、「a」、「an」、及び「the」は、明らかに単数であると示さない限り複数を包含する。例えば、an「antibody(抗体)」への言及は、モル量等の、1〜多数の抗体を言及するものであり、当業者により既知の等価物などを包含する。
【0042】
本明細書中に記載される本発明の態様および変更は、態様および変更から「構成される」および「実質的に構成される」ことを包含するものと、解される。
【0043】
IL−20アンタゴニスト
本発明は、骨粗鬆症及びリウマチ性関節炎を治療する、発症を遅延させるおよび/または予防する必要のある個体(ヒトおよび非ヒト哺乳動物双方)における骨粗鬆症及びリウマチ性関節炎を治療する、発症を遅延させるおよび/または予防するのに有用である。
【0044】
本発明の方法は、IL−20アンタゴニストを使用するが、IL−20アンタゴニストは、IL−20へのレセプター結合および/またはIL−20への細胞応答の誘発等の、IL−20シグナル伝達によって仲介される下流経路などの、IL−20生物学的活性を(有意にを包含する)遮断する、抑制するまたは減少させる分子を意味する。IL−20の例としては、ヒトIL−20がある。実施形態によっては、IL−20は、IL−20の天然の変異体(native variant)を包含する。ヒトIL−20のアミノ酸配列(配列番号:6)は下記のとおりである:
【0045】
【化1】

【0046】
IL−20アンタゴニストの例としては、以下に制限されないが、抗IL−20抗体またはその断片、IL−20に対するアンチセンス分子(IL−20をコード化する核酸に対するアンチセンス分子を含む)、IL−20核酸に対する低分子干渉RNA(siRNA)、IL−20核酸に対するミクロRNA、IL−20阻害化合物、及びIL−20レセプターの細胞外部分を含むポリペプチドが挙げられる。本発明を目的として、「アンタゴニスト」ということばは、IL−20それ自体、IL−20生物学的活性(以下に制限されないが、いずれかの態様の骨粗鬆症、炎症性疾患の仲介能を含む)、または生物学的活性の結果が実質的に0になる、低減される、または大きく中和されるすべての前記したことば、タイトルならびに機能的な状態及び特性を包含する。実施形態によっては、IL−20アンタゴニストは、IL−20に結合して、IL−20が1以上のレセプターと複合体を形成するのを防止する。他の実施形態では、IL−20アンタゴニストは、IL−20合成および/または生産(放出)を阻害するまたは低減する。したがって、実施形態によっては、IL−20アンタゴニストは、IL−20に結合する(IL−20と物理的に相互作用する)。実施形態によっては、IL−20アンタゴニストは、IL−20に結合するポリペプチドである。実施形態によっては、IL−20アンタゴニストは、ペプチドまたは修飾ペプチド(Fcドメインに融合する可溶性レセプター IL−20R1、IL−20R2および/またはIL−22R1等のIL−20結合ペプチドなど)である。例えば、米国特許第6,610,286号;第7,189,394号;第7,364,732号;第7,393,684号;及び第7,537,761号;ならびに米国特許出願公開第2006/0263850 Al号;第2006/0263851 Al号;第2008/0171041Al号;及び第2008/0233115 Al号を参照。他の実施形態では、IL−20アンタゴニストは、抗IL−20抗体である。さらに他の実施形態では、抗IL−20抗体は、ヒト化されている。実施形態によっては、抗IL−20抗体は、抗体mAb 7E(本明細書に記載されるような)またはmAb 7Eの機能的な等価物である。他の実施形態では、抗IL−20抗体は、抗体mAb 7Eの1以上のCDR(mAb 7E由来の1、2、3、4、5、または実施形態によっては、6すべてのCDR)を含む。他の実施形態では、抗体はヒト抗体である。さらに他の実施形態では、抗IL−20抗体は、重鎖可変領域のアミノ酸配列(配列番号:2)および/または軽鎖可変領域のアミノ酸配列(配列番号:4)を有する。さらに他の実施形態では、抗体は、免疫学的に不活性である、例えば、補体仲介性溶解(complement mediated lysis)を引き起こさない、または抗体依存−細胞媒介細胞傷害(antibody-dependent cell mediated cytotoxicity)(ADCC)を刺激しない定常領域など、修飾された定常領域を有している。他の実施形態では、定常領域は、Eur. J. Immunol. (1999) 29:2613-2624;PCT出願第PCT/GB99/01441号;および/またはUK特許出願第9809951.8号に記載されるようにして修飾される。他の実施形態では、IL−20アンタゴニストは、IL−20合成および/または放出を阻害(低減)する。
【0047】
mAb 7Eの重鎖可変領域のヌクレオチド配列(配列番号:1)およびアミノ酸配列(配列番号:2)は下記のとおりである:
【0048】
【化2】

【0049】
mAb 7Eの軽鎖可変領域のヌクレオチド配列(配列番号:3)およびアミノ酸配列(配列番号:4)は下記のとおりである:
【0050】
【化3】

【0051】
抗IL−20抗体
本発明の実施形態によっては、IL−20アンタゴニストは、抗IL−20抗体を含む。抗IL−20抗体は、当該分野において既知であり、例えば、米国特許第7,435,800号;第7,115,714号;第7,119,175号;第7,151,166号;及び第7,393,684号;及びPCT公開 WO 2007/081465号;WO 99/27103号;WO 2004/085475号;及びWO 2005052000号を参照。
【0052】
他の実施形態では、抗IL−20抗体は、抗体mAb 7Eの1以上のCDR(mAb 7Eの1、2、3、4、5、または実施形態によっては、6すべてのCDR)を含む。実施形態によっては、抗IL−20抗体は、ATCC No.PTA−8587を有する細胞系またはその子孫によって生産されるmAb 7Eの重鎖由来の3つのCDRおよび/または軽鎖由来の3つのCDRを有する。実施形態によっては、抗IL−20抗体は、配列番号:2に示されるアミノ酸由来の3つの重鎖CDRおよび/または配列番号:4に示されるアミノ酸由来の3つの軽鎖CDRを有する。
【0053】
CDR領域の決定は当該分野において既知である。CDRは、Kabat、Chothia、またはKabat及びChothiaの組み合わせでもよい。CDRを決定する技術は少なくとも2種ある:(1)種をまたぐ配列の可変性(cross-species sequence variability)に基づく方法(即ち、Kabat et al. Sequences of Proteins of Immunological Interest, (5th ed., 1991, National Institutes of Health, Bethesda MD));および(2)抗原−抗体複合体の結晶学的な研究に基づく方法(Chothia et al. (1989) Nature 342:877; Al-lazikani et al (1997) J. Molec. Biol. 273:927-948))。本明細書に使用される、CDRは、いずれかの方法によってまたは双方の方法の組み合わせによって定義されるCDRであってもよい。
【0054】
本発明に使用できる抗体は、モノクローナル抗体、ポリクローナル抗体、抗体断片(例えば、Fab、Fab’、F(ab’)2、Fv、Fc等)、キメラ抗体、二重特異性抗体、異種結合性(heteroconjugate)抗体、一本鎖(ScFv)、これらの変異体、抗体部分を有する融合タンパク質、ヒト化抗体、及び抗体のグリコシル化変異体、抗体のアミノ酸配列変異体、及び共有結合により修飾される抗体(covalently modified antibodies)等の、所定の特異性を有する抗原認識部位を有する免疫グロブリン分子の他の修飾された構造体を包含しうる。抗体は、マウス、ラット、ヒト、または他の源(キメラまたはヒト化抗体を包含する)であってもよい。本発明を目的として、抗体は、IL−20および/またはIL−20シグナル伝達機能によって仲介される下流経路を阻害するようにして、IL−20と反応する。一実施形態では、抗体は、ヒト抗体、ヒト化抗体またはヒトIL−20で1以上のエピトープを認識するキメラ抗体である。実施形態によっては、抗IL−20抗体は、抗体mAb 7Eと同じヒトIL−20でのエピトープに結合する。他の実施形態では、抗体は、免疫学的に不活性である、例えば、補体仲介性溶解(complement mediated lysis)を引き起こさない、または抗体依存−細胞媒介細胞傷害(antibody-dependent cell mediated cytotoxicity)(ADCC)を刺激しない定常領域など、修飾された定常領域を有している。ADCC活性は、米国特許第5,500,362号に開示される方法を用いて評価できる。他の実施形態では、定常領域は、Eur. J. Immunol. (1999) 29:2613-2624;PCT出願第PCT/GB99/01441号;および/またはUK特許出願第9809951.8号に記載されるのと同様にして修飾される。
【0055】
抗IL−20抗体のIL−20(ヒトIL−20等)への結合親和性は、約100nM、約50nM、約10nM、約1nM、約500pM、約100pM、または約50pM未満で約2pM以上であってもよい。結合親和性はKまたは解離定数として表すことができ、結合親和性の増加は、Kの低下に相当する。IL−20への抗体の結合親和性の測定方法の一つとして、抗体の単機能性のFab断片の結合親和性を測定することによるものがある。単機能性のFab断片を得るために、抗体(例えば、IgG)をパパインで切断するまたは組換で発現させてもよい。抗体の抗IL−20 Fab断片の親和性は、表面プラズモン共鳴(BlAcore3000(商標) surface plasmon resonance (SPR) system, BIAcore, INC, Piscaway NJ)によって測定できる。反応会合率(kinetic association rates)(kon)および反応解離率(kinetic association rates)(koff)(通常、25℃で測定)を得る;さらに平衡解離定数(K)値をkon/koffとして算出する。
【0056】
実施形態によっては、抗体は、ヒトIL−20に結合し、他の哺乳動物種由来のIL−20とは有意に結合しない。実施形態によっては、抗体は、ヒトIL−20および他の哺乳動物種由来の1以上のIL−20と結合する。さらに他の実施形態では、抗体は、IL−20と結合するが、他のサイトカイン(関連するサイトカイン IL−10、IL−17A、IL−19、IL−22、IL−24及びIL−26等)と有意には交差反応しない。抗体によって結合したエピトープは、連続していても不連続であってもよい。一実施形態では、抗体は、抗体mAb 7Eと同じヒトIL−20エピトープに実質的に結合する。
【0057】
抗IL−20抗体は既知の方法によって作製されうる。例えば、IL−20を阻害する抗体は、IL−20の全長のまたは一部の配列を免疫原として用いた免疫処置によって作製されうる。宿主動物の免疫処置のルート及びスケジュールは、さらに本明細書に記載されるようにして、抗体の刺激及び生産について確立された公知の技術に沿って行われる。マウス、ヒト化及びヒト抗体の一般的な技術は当該分野において既知であり、本明細書に記載される。
【0058】
ヒトを含む哺乳動物患者またはそれ由来の抗体生産細胞を、ヒト等の哺乳動物、ハイブリドーマ細胞系の生産の基礎として機能するように操作できると、解される。具体的には、本明細書に記載されるようにしてなど、宿主動物の腹腔内に、筋肉内に、経口的に、皮下に、足底内に(intraplantar)、および/または皮内に、一定量の免疫原を接種する。
【0059】
ハイブリドーマは、Kohler, B. and Milstein, C. (1975) Nature 256:495-497のまたはBuck, D. W., et al., In Vitro, 18:377-381 (1982)によって修飾されるような一般的な体細胞ハイブリダイゼーション技術を用いてリンパ球及び不死化ミエローマ細胞から調製できる。以下に制限されないが、X63−Ag8.653及びSaIk Institute, Cell Distribution Center, San Diego, Calif., USAのもの等の、使用できるミエローマ系がハイブリダイゼーションに使用されうる。通常、技術は、ポリエチレングリコール等の融合誘起剤(fusogen)を用いて、当業者に既知の電気的手段によってミエローマ細胞及びリンパ様細胞を融合することを含む。融合後、細胞を融合培地から分離し、ヒポキサンチン−アミノプテリン−チミジン(HAT)培地等の、所定の成長培地で生育させ、ハイブリッド形成していない親細胞を除去する。血清を含むまたは含まない、本明細書に記載されるいずれかの培地を、モノクローナル抗体を分泌するハイブリドーマを培養するのに使用できる。他の別の細胞融合技術としては、EBV不死化B細胞を用いて、本発明の抗IL−20モノクローナル抗体を生産してもよい。ハイブリドーマを展開し、必要であればサブクローニングし、さらに上清について、公知の免疫アッセイ方法(例えば、ラジオイムノアッセイ、酵素イムノアッセイ、または蛍光イムノアッセイ)によって抗免疫原活性を評価する。
【0060】
抗原の源として使用されうるハイブリドーマは、すべての派生細胞、IL−20に特異的なモノクローナル抗体を産生する親ハイブリドーマの子孫細胞、またはその一部を包含する。
【0061】
このような抗体を産生するハイブリドーマは、既知の方法を用いてインビトロでまたはインビボで生育されうる。必要であれば、硫酸アンモニウム沈殿、ゲル電気泳動、透析、クロマトグラフィー、及び限外濾過等の公知の免疫グロブリン精製方法によって、モノクローナル抗体を培地または体液から単離してもよい。例えば、固相に結合した免疫原から作製された吸着剤に調製物を流し、免疫原から所望の抗体を溶出または放出することによって、存在する場合には望ましくない活性を除去してもよい。二官能性物質または誘導体化剤、例えば、マレイミドベンゾイルスルホスクシンイミドエステル(maleimidobenzoyl sulfosuccinimide ester)(システイン残基を介して結合)、N−ヒドロキシスクシンイミド(リジン残基を介して)、グルタルアルデヒド、無水コハク酸、SOCl2、またはR1N=C=NR(この際、R及びR1は異なるアルキル基である)を用いて、ヒトIL−20、または免疫処置する種において免疫原性であるタンパク質、例えば、キーホールリンペットヘモシアニン、血清アルブミン、ウシチログロブリン、または大豆トリプシン阻害剤、に接合させたターゲットアミノ酸配列を含む断片で、宿主動物を免疫処置すると、抗体集団(例えば、モノクローナル抗体)が得られる。
【0062】
必要であれば、(例えば、ハイブリドーマによって生産された)有益な抗IL−20抗体(モノクローナル抗体またはポリクローナル抗体)の配列を決定した後、ポリヌクレオチド配列を発現または繁殖のためにベクターにクローニングしてもよい。有益な抗体をコード化する配列を宿主細胞中にベクターの形で維持した後、宿主細胞を拡張して、将来使用するために凍結してもよい。または、ポリヌクレオチド配列を遺伝子操作に用いて、抗体を「ヒト化する」または抗体の親和性若しくは他の特性を向上させてもよい。例えば、抗体を臨床試験やヒトへの治療に使用する場合には、免疫応答を防ぐために、定常領域をよりヒトに似せた定常領域になるように操作してもよい。IL−20へより高い親和性及びより高いIL−20阻害能を得るために、抗体の配列を遺伝的に操作することが好ましい。IL−20への結合能は維持させつつ、1以上のポリヌクレオチドの変更を抗IL−20抗体に行うことは当業者には明らかであろう。
【0063】
「ヒト化」抗体は、通常、実質的に非ヒト種の免疫グロブリン由来である抗原結合部位ならびにヒト免疫グロブリンの構造および/または配列に基づいた分子の残りの免疫グロブリン構造を有する分子を意味する。抗原結合部位は、定常領域に融合した完全な可変領域または可変領域の適当なフレームワーク領域にグラフトした相補性決定領域(CDR)のみのいずれかを有する。抗原結合部位は、野生型であってもあるいは1以上のアミノ酸置換によって修飾、例えば、ヒト免疫グロブリンにより密接に似るように修飾されてもよい。ヒト化抗体の形態によっては、すべてのCDR配列を保存する(例えば、マウス抗体のすべての6個のCDRを含むヒト化マウス抗体)。ヒト化抗体の他の形態としては、元の抗体に対して変更される1以上のCDR(1、2、3、4、5、6)を有する。場合によっては、ヒト免疫グロブリンのフレームワーク(FR)残基または他の残基が対応する非ヒト残基で置換される。さらに、ヒト化抗体は、レシピエント抗体またはドナー抗体中では見つからない残基を有していてもよい。ヒト化はまた、親和性成熟をも包含する。
【0064】
さらに別の形態では、完全なヒト抗体は、特定のヒト免疫グロブリンタンパク質を発現するように予め操作された市販のマウスを用いることによって得てもよい。また、より望ましい(例えば、完全なヒト抗体)またはより強い免疫応答をするように設計される形質転換動物をヒト化またはヒト抗体を得るのに使用してもよい。このような技術の例としては、Amgen, Inc. (Fremont, CA)製のXenomouse(登録商標)ならびにMedarex, Inc. (Princeton, NJ) 製のHuMAb-Mouse(登録商標)及びTC Mouse(商標)がある。他の別の形態では、抗体は、ファージディスプレイ技術によって組み換えられてもよい。例えば、米国特許第5,565,332号;第5,580,717号;第5,733,743号;及び第6,265,150号;ならびにWinter et al, (1994) Annu. Rev. Immunol. 12:433-455を参照。または、ファージディスプレイ技術(McCafferty et al., (1990) Nature 348:552-553)を用いて、未免疫処置のドナーの免疫グロブリン可変(V)領域遺伝子レパートリーから、インビトロでヒト抗体及び抗体断片を生産してもよい。
【0065】
モノクローナル抗体をコード化するDNAは容易に単離され、公知の方法を(例えば、モノクローナル抗体の重鎖及び軽鎖をコード化する遺伝子に特異的に結合できるオリゴヌクレオチドプローブを使用することによって)その配列を決定する。ハイブリドーマ細胞は、このようなDNAの好ましい源としての機能を果たす。単離されたら、そのDNAを1以上の発現ベクター中にいれ、次に他の形では免疫グロブリンタンパク質を生産しない大腸菌(E. coli cell)細胞、サルのCOS細胞、チャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞、またはミエローマ細胞等の宿主細胞にトランスフェクトして、組換宿主細胞中にモノクローナル抗体を合成してもよい。例えば、PCT公開第WO 87/04462号を参照。また、このDNAは、例えば、Morrison et al., (1984) Proc. Nat. Acad. Sci. 81:6851に記載されるように、相同性のあるマウスの配列の代わりにヒトの重鎖及び軽鎖の定常領域のコーディング配列を使用することによって、または非免疫グロブリンポリペプチドのコーディング配列の全部または一部を免疫グロブリンのコーディング配列に結合することによって、修飾されてもよい。そのように、本明細書中の抗IL−20モノクローナル抗体の結合特異性を有する「キメラ」または「ハイブリッド」抗体が調製される。
【0066】
当該分野において既知の方法を用いて、抗IL−20抗体の特性を明らかにしてもよい。例えば、一つの方法として、結合するエピトープを同定する、すなわち「エピトープマッピング」がある。例えば、Chapter 11 of Harlow and Lane, Using Antibodies, a Laboratory Manual, Cold Spring Harbor Laboratory Press, Cold Spring Harbor, New York, 1999に記載されるような、抗原−抗体複合体の結晶構造を解く、競合アッセイ、遺伝子断片発現アッセイ、及び合成ペプチドを用いたアッセイ等の、タンパク質上のエピトープの位置をマッピングし、その特性を明らかにする多くの方法が当該分野において知られている。別の例では、エピトープマッピングを用いて、抗IL−20抗体が結合する配列を決定してもよい。エピトープは、鎖状のエピトープ、即ち、1本鎖のアミノ酸に含まれても、または必ずしも1本鎖(一次構造の鎖状配列)中に含まれないアミノ酸の3次元相互作用によって形成される立体配座エピトープであってもよい。様々な長さ(例えば、少なくとも4〜6アミノ酸長)のペプチドが単離または合成(例えば、組換により)でき、これを抗IL−20抗体を用いた結合活性に使用してもよい。他の例では、抗IL−20抗体が結合するエピトープを、IL−20由来の重複ペプチドを使用し、抗IL−20抗体による結合を測定することによる合成スクリーニングで決定してもよい。遺伝子断片発現アッセイによると、IL−20をコード化するオープンリーディングフレームをランダムにまたは特定の遺伝的構造によって断片化し、IL−20の発現断片と試験される抗体との反応性を測定する。遺伝子断片は、例えば、PCRによって生産された後、放射性アミノ酸の存在下で、インビトロでタンパク質に転写、翻訳されてもよい。次に、放射性標識されたIL−20断片への抗体の結合性を、免疫沈降及びゲル電気泳動によって測定する。また、ファージ粒子の表面に表示するランダムなペプチド配列の大きなライブラリー(ファージライブラリー)を用いることによって、特定のエピトープを同定してもよい。または、重複ペプチド断片の特定のライブラリーについて、簡易結合アッセイで試験抗体への結合性を試験してもよい。さらなる例では、抗原結合ドメインの突然変異誘発、ドメイン交換実験及びアラニンスキャンニング突然変異誘発を行って、エピトープ結合性に要求される、十分なおよび/または必要な残基を同定してもよい。例えば、IL−20ポリペプチドの様々な断片を密接に関連するが抗原的には異なるタンパク質(ニューロトロフィンタンパク質群の他のもの等)に置換(交換)した変異IL−20を用いて、ドメイン交換実験を行ってもよい。変異IL−20への抗体の結合性を評価することによって、特定のIL−20断片の抗体結合への重要性が評価できる。
【0067】
実施形態によっては、本明細書に記載される抗体は、mAb 7Eによって認識されるIL−20エピトープに結合する。実施形態によっては、本明細書に記載される抗体は、mAb 7EのIL−20ポリペプチド(ヒトIL−20等)への結合と競合するまたは当該結合を有意に阻害する。実施形態によっては、本明細書に記載される抗体は、IL−20ポリペプチドへの結合のための抗体mAb 7Eの重鎖可変領域および/またはmAb 7Eの軽鎖可変領域を有する抗体と競合する。
【0068】
抗IL−20抗体の特性を明らかにするのに使用できるさらなる他の方法としては、同じ抗原、即ち、IL−20の様々な断片に結合することが知られている他の抗体を用いた競合アッセイを使用して、抗IL−20抗体が他の抗体としての同じエピトープに結合するかを決定することがある。競合アッセイは、当業者には既知である。競合アッセイは、2つの抗体が同一の若しくは立体的に重複するエピトープを認識することによって同じエピトープに結合するか否かまたは1つの抗体が他の抗体の抗原への結合を競合的に阻害するか否かを決定するのに、使用できる。これらのアッセイは当該分野において既知である。具体的には、ヒトIL−20へのmAb 7Eの結合が、競合抗体の量を増やしながらインキュベートすると、少なくとも約50%、少なくとも約60%、少なくとも約70%、少なくとも約80%、または少なくとも約90%ほど減少する。抗体が結合するものへのマッピングに使用されてもよい他の方法は、Morris (1996) "Epitope Mapping Protocols," in Methods in Molecular Biology v. 66 (Humana Press, Totowa, NJ)に提供される。
【0069】
他のIL−20アンタゴニスト
抗IL−20抗体以外の他のIL−20アンタゴニストを使用してもよい。本発明の実施形態によっては、IL−20アンタゴニストは、機能的なIL−20の発現を遮断または低減できる少なくとも1のアンチセンス分子を有する。IL−20のヌクレオチド配列は知られており、公衆に利用可能なデータベースで容易に利用できる。例えば、Genbank 受託番号 NM 018724.3及びNP 061194.2を参照。他のポリヌクレオチドと交差反応せずに、IL−20 mRNAに特異的に結合するであろうアンチセンスオリゴヌクレオチド分子を調製することは一般的である。ターゲッティングの具体的な部位としては、以下に制限されないが、開始コドン、5’調節領域、コーディング配列及び3’非翻訳領域が挙げられる。実施形態によっては、オリゴヌクレオチドは、約10〜100ヌクレオチド長、約15〜50ヌクレオチド長、約18〜25ヌクレオチド長、またはそれ以上である。オリゴヌクレオチドは、例えば、ホスホロチオエート結合および当該分野において既知である2’−O糖修飾等の骨格修飾を有していてもよい。
【0070】
または、IL−20発現および/または放出は、遺伝子ノックダウン、モルホリノオリゴヌクレオチド、低分子干渉RNA(siRNAまたはRNAi)、ミクロRNAまたはリボザイム、当該分野において既知の方法を用いて、低減できる。
【0071】
他の実施形態では、IL−20アンタゴニストは、少なくとも1のIL−20阻害化合物を含む。本明細書中で使用される、「IL−20阻害化合物」とは、IL−20の生物学的活性を直接または間接的に減少させる、阻害する、中和する、または消失させる抗IL−20抗体以外の化合物を意味する。IL−20阻害化合物は、下記特性の1以上を発揮すべきである:(a)IL−20に結合し、IL−20の生物学的活性および/またはIL−20シグナル伝達機能によって仲介される下流経路を阻害する;(b)骨粗鬆症またはリウマチ性関節炎のいずれかの態様を予防する、改善する、または治療する;(c)IL−20レセプター活性化を遮断または低減する;(d)IL−20のクリアランスを増加する;(e)IL−20合成、生産または放出を阻害(低減)する。当業者は、小分子であるIL−20阻害化合物を調製できる。
【0072】
実施形態によっては、IL−20阻害化合物は、IL−20レセプターには結合できるがシグナル伝達は誘発できないIL−20変異体である。実施形態によっては、IL−20阻害化合物は、野生型のIL−20のIL−20レセプターへの結合を遮断することによりIL−20シグナル伝達を防止するIL−20変異体である。
【0073】
実施形態によっては、IL−20阻害化合物は、小分子を含み、小分子は、100〜20,000ダルトン、500〜15,000ダルトン、または1000〜10,000ダルトンのいずれかの分子量を有することができる。小分子のライブラリーは、市販される。小分子は、吸入、腹腔内、静脈内、筋肉内、皮下、鞘内、脳室内、経口、腸内、非経口、鼻腔内、または皮内等の、当該分野において既知の手段を用いて投与できる。通常、本発明に係るIL−20アゴニストが小分子である際には、1〜3回またはそれ以上の投与に分けて0.1〜300mg/kg 患者の体重の割合で投与されるであろう。一般的な体重の成人患者では、1回の投与当たり1mg〜5gが投与されうる。
【0074】
実施形態によっては、IL−20アンタゴニストは、IL−20レセプター(IL−20 R1、IL−20R2、またはIL−22R1等)の細胞外部分(細胞外ドメイン等)を有するポリペプチドを含み、この際、ポリペプチドは、IL−20に特異的に結合し、1以上のIL−20レセプターとの相互作用を遮断する。実施形態によっては、IL−20レセプターの細胞外部分は、免疫グロブリン(Ig)分子(ヒト免疫グロブリン等)の重鎖または軽鎖の定常領域の全部または一部などの、定常領域ポリペプチドに融合される。実施形態によっては、重鎖の定常領域は、CH1ドメイン、CH2ドメイン及びCH1ドメインをCH2ドメインと連結するヒンジ配列から構成される。実施形態によっては、軽鎖の定常領域は、CLドメインから構成される。実施形態によっては、レセプターの細胞外部分は、抗体のFcドメインに融合される。実施形態によっては、ポリペプチドアンタゴニストは、ダイマー(ホモダイマーまたはヘテロダイマー等)である。細胞外ドメイン及び可溶性レセプターの例は、PCT WO 01/46232に記載される。
【0075】
IL−20アンタゴニストの同定
抗IL−20抗体及び他のIL−20アンタゴニストは、IL−20の生物学的活性の減少、改善、または中和を検出および/または測定する、当該分野において既知の方法を用いて同定できるまたはその特性が明らかにできる。例えば、ELISAタイプのアッセイが、IL−20カスケードを介して活性化されるタンパク質のリン酸化反応を測定することによるIL−20が仲介するキナーゼ活性化の定性的または定量的な測定に適している場合がある。例としては、JNK、ERK、AKT、p38、STAT3及びTRAF6がある。
【0076】
IL−20アンタゴニストはまた、候補薬剤をIL−20と共にインキュベートし、下記特性の1以上をモニターすることによって同定できる:(a)IL−20に結合し、IL−20の生物学的活性および/またはIL−20シグナル伝達機能によって仲介される下流経路を阻害する;(b)骨粗鬆症またはリウマチ性関節炎のいずれかの態様を予防する、改善する、または治療する;(c)IL−20レセプター活性化を遮断または低減する;(d)IL−20のクリアランスを増加する;(e)IL−20合成、生産または放出を阻害(低減)する。実施形態によっては、IL−20アンタゴニストは、候補薬剤をIL−20と共にインキュベートし、IL−20の結合ならびにそれに付随するIL−20の生物学的活性の減少または中和をモニターすることによって同定される。結合アッセイは、精製IL−20ポリペプチドを用いて、またはIL−20ポリペプチドを天然に発現する若しくはトランスフェクトによりIL−20ポリペプチドを発現する細胞を用いて行われうる。一実施形態では、結合アッセイは、IL−20結合に関する既知のIL−20アンタゴニストとの候補抗体の競合能を評価する、競合結合アッセイである。このアッセイは、ELISA形式等の、様々な形式で行われる。他の実施形態では、IL−20アンタゴニストは、候補薬剤をIL−20とインキュベートし、それに付随するIL−20R1/IL−20R2複合体形成またはIL−20R2/IL−22R1複合体形成の阻害をモニターすることによって同定される。初期同定後は、候補抗IL−20アンタゴニストの活性をさらに確認し、ターゲットとされる生物学的活性を試験することが知られている、バイオアッセイによって精製してもよい。または、バイオアッセイを用いて、候補物質を直接スクリーニングしてもよい。
【0077】
下記例により、候補IL−20アンタゴニストをスクリーニングするのに使用できる多くのアッセイが提供される。バイオアッセイとしては、以下に制限されないが、HUVEC細胞の増殖のためのMTT(3−(4,5−ジメチルチアゾール−2−イル)−2,5−ジフェニルテトラゾリウムブロミド)アッセイ;例えば、TRAP染色によって測定されるような、破骨細胞の分化に関する候補薬剤の分析;候補IL−20アンタゴニストの存在下での細胞へのIL−20の競合的結合を測定するフローサイトメトリー;および腎臓上皮細胞でのIL−20により誘導されるアポトーシスの阻害が挙げられる。加えて、IL−20の発現を直接測定するまたはTNF−a、MCP−1、IL−1β、IL−6及びVEGF等のIL−20によってアップレギュレートされる遺伝子の発現を測定するのに使用できるRT−PCRまたはリアルタイムPCR。
【0078】
本発明の方法に使用される組成物
本発明の方法に使用される組成物は、有効量の1以上のIL−20アンタゴニスト(抗IL−20抗体等)を含み、実施形態によっては、製薬上許容できる賦形剤をさらに含む。実施形態によっては、本組成物は、本明細書に記載される方法のいずれかに使用される。IL−20アンタゴニストの例は本明細書に記載される。本組成物は、1超のIL−20アンタゴニストを含んでもよい。例えば、組成物は、1超のあるクラスのIL−20アンタゴニストのもの(例えば、IL−20の異なるエピトープを認識する抗IL−20抗体の混合物)、さらには異なるクラスのIL−20アンタゴニスト(例えば、抗IL−20抗体及びIL−20阻害化合物)を含んでもよい。他の具体的な組成物としては、同じエピトープを認識する1超の抗IL−20抗体、IL−20の異なるエピトープに結合する抗IL−20抗体の異なる種、または異なるIL−20阻害化合物を含むものがある。
【0079】
本発明に使用される組成物は、凍結乾燥製剤または水溶液の形態の、製薬上許容できる担体、賦形剤、または安定化剤(Remington: The Science and Practice of Pharmacy 20th Ed. (2000) Lippincott Williams and Wilkins, Ed. K. E. Hoover.)をさらに含んでもよい。許容できる担体、賦形剤、または安定化剤は使用される投与量及び濃度でレシピエントに無毒であり、リン酸塩、クエン酸塩、及び他の有機酸等の緩衝剤;アスコルビン酸及びメチオニン等の抗酸化剤;保存剤(例えば、塩化オクタデシルジメチルベンジルアンモニウム;塩化ヘキサメトニウム;塩化ベンズアルコニウム;塩化ベンズトニウム;フェノール、ブチルアルコールまたはベンジルアルコール;メチルパラベンまたはプロピルパラベン等のアルキルパラベン;カテコール;レゾルシノール;シクロヘキサノール:3−ペンタノール;およびm−クレゾール);低分子量(約10残基未満の)ポリペプチド;血清アルブミン、ゼラチン、または免疫グロブリン等の、タンパク質;ポリビニルピロリドン等の親水性ポリマー;グリシン、グルタミン、アスパラギン、ヒスチジン、アルギニン、またはリジン等のアミノ酸;グルコース、マンノース、またはデキストリン等の、単糖類、二糖類、および他の炭水化物;EDTA等のキレート化剤;スクロース、マンニトール、トレハロースまたはソルビトール等の糖類;ナトリウム等の塩を形成するカウンターイオン;金属錯体(例えば、Zn−タンパク質錯体);ならびに/あるいは、TWEEN(商標)、PLURONICS(商標)、またはポリエチレングリコール(PEG)等の非イオン性界面活性剤が挙げられる。製薬上許容できる賦形剤は本明細書にさらに記載される。
【0080】
リウマチ性関節炎または骨粗鬆症を治療するのに使用される際には、本明細書に記載される抗体を、必要であればエタネルセプトポリペプチドと組み合わせて、製薬上許容できる担体と混合して、薬剤組成物を形成できる。「許容できる」とは、担体が、組成物の活性成分と混合可能であり(及び好ましくは、活性成分を安定化でき)、治療される患者に有害でないものでなければならないという意味である。適当な担体としては、微結晶セルロース、マンニトール、グルコース、脱脂粉末、ポリビニルピロリドン、及びスターチ、またはこれらの組み合わせがある。
【0081】
医薬の分野における当業者に既知の、公知の方法を用いて、治療される疾患のタイプまたは疾患の部位に応じて、患者に抗IL−20抗体含有薬剤組成物を投与できる。リウマチ性関節炎を治療するために、抗体含有組成物を注射により滑膜関節に直接デリバリーしてもよい。この組成物はまた、他の公知の経路、例えば、皮下を介して投与されてもよい。加えて、1、3、または6カ月の蓄積注射可能なまたは生分解可能な材料及び方法を用いるなどの注射可能な蓄積投与経路を介して患者に投与してもよい。
【0082】
注射可能な組成物は、植物油、ジメチルラクトアミド、ジメチルホルムアミド、乳酸エチル、炭酸エチル、ミリスチン酸イソプロピル、エタノール、及びポチオール水(グリセロール、プロピレングリコール、液状ポリエチレングリコール等)などの様々な担体を含んでもよい。静脈内注射用では、ドリップ方法によって水溶性抗体を投与してもよく、これにより抗体及び薬理学的に許容できる賦形剤を含む製剤を輸注する。薬理学的に許容できる賦形剤としては、例えば、5%デキストロース、0.9%生理食塩水、リンガー溶液または他の適当な賦形剤がある。筋肉内調製物、例えば、適当な可溶性塩形態の抗体の滅菌製剤を、注射用水、0.9%生理食塩水、または5%グルコース溶液等の製薬上の賦形剤中に溶解、投与してもよい。
【0083】
本用途に提供される方法を実施するにあたって、上記薬剤組成物は、経口で、非経口で、吸入スプレーによって、局所的に、直腸内に、鼻腔内に、口腔に、経膣的にまたは移植されたリザーバーを介して投与されうる。本明細書中に使用される「非経口」ということばは、皮下、皮内、静脈内、筋肉内、関節内、動脈内、滑液嚢内、胸骨内、髄腔内、病巣内、及び頭蓋内注射または輸注技術を包含する。
【0084】
滅菌注射用組成物、例えば、滅菌注射用水性または油性懸濁液は、適当な分散剤または湿潤化剤(Tween(登録商標)80等)及び懸濁化剤を用いて当該分野において既知の技術に従って処方できる。滅菌注射用組成物はまた、無毒な非経口投与に許容できる希釈剤または溶剤における滅菌注射用溶液または懸濁液、例えば、1,3−ブタンジオールにおける溶液であってもよい。マンニトール、水、リンガー溶液及び等張塩化ナトリウム溶液が、使用できる許容できるベヒクル及び溶剤に含まれる。加えて、滅菌した固定油が、溶剤または懸濁媒体(例えば、合成モノ−またはジ−グリセリド)として従来使用される。オレイン酸等の脂肪酸及びそのグリセリド誘導体が注射剤の調製に使用でき、同様にして、特にポリオキシエチレン化形態の、オリーブ油またはヒマシ油等の天然の製薬上許容できる油もまた使用できる。これらの油溶液または懸濁液はまた、長鎖アルコール希釈剤若しくは分散剤、またはカルボキシメチルセルロース若しくは同様の分散剤を含んでもよい。Tween若しくはSpan等の他の一般的に使用される界面活性剤または製薬上許容できる固体、液体、または他の投与形態の製造に一般的に使用される他の同様の乳化剤またはバイオアベイラビリティ促進剤もまた、製剤目的で使用できる。
【0085】
経口投与用組成物は、以下に制限されないが、カプセル、錠剤、エマルジョンならびに水性懸濁液、分散液及び溶液等の、経口投与に許容できる投与形態でありうる。経口で使用される錠剤の場合には、一般的に使用される担体としては、ラクトース及びコーンスターチがある。ステアリン酸マグネシウム等の潤滑剤もまた一般的に添加される。カプセル形態の経口投与では、使用できる希釈剤としては、ラクトース及び乾燥コーンスターチがある。水性懸濁液またはエマルジョンを経口で投与する際には、活性成分を乳化剤または懸濁化剤と組み合わせた油相中に懸濁または溶解してもよい。必要であれば、特定の甘味料、芳香剤、または着色剤を添加してもよい。鼻腔内エアロゾルまたは吸入用組成物は、製剤処方の分野で既知の技術にしたがって調製できる。また、オキサジアゾール化合物を含む組成物を直腸投与用の坐剤の形態で投与してもよい。
【0086】
IL−20アンタゴニスト及びその組成物はまた、薬剤の有効性を促進するおよび/または補足するように作用する他の薬剤と組み合わせて使用してもよい。
【0087】
IL−20アンタゴニストの投与および治療の評価
本発明は、個体の骨粗鬆症の治療、発症の遅延、または予防方法を提供する。上記したように、IL−20は、破骨細胞の発達及び活性化における上流のRANKL−RANKシグナル伝達化スケートに作用する破骨細胞形成サイトカインである。IL−20の過剰発現は、破骨細胞の分化を刺激することにより、骨粗鬆症に関連する骨損傷の修復能を減少させる可能性がある。
【0088】
骨粗鬆症を発達させる危険性を増大させる因子は数多く存在する。例えば、骨粗鬆症は、更年期後に起こる低エストロゲンレベルと関連する。低エストロゲンレベルはまた、双方の卵巣を初期に外科的に除去した結果でも起こる。加えて、卵巣への化学療法の有毒な結果、化学療法が初期の更年期をもたらす場合がある。実施例に示されるように、IL−20アンタゴニストは、卵巣摘出したマウスにおける骨粗鬆症効果を改善した。ゆえに、本明細書に記載されるIL−20アンタゴニストは、有効量のIL−20アンタゴニストを投与することによって、更年期後の個体の骨粗鬆症を治療する、発症を遅延する、または予防するのに使用されうる。
【0089】
骨粗鬆はまた、ホルモンアブレーション処置からも生じる。前立腺癌及び乳癌双方で、患者はホルモンアブレーション治療を受けることが一般的である;例えば、前立腺癌の場合にはアンドロゲンおよび乳癌の場合にはエストロゲン、これにより、骨量の減少及び骨折の危険性の増加を引き起こしうる。ゆえに、本明細書に記載されるIL−20アンタゴニストは、有効量のIL−20アンタゴニストを投与することによって、ホルモンアブレーション治療を受けた個体の骨粗鬆症を治療する、発症を遅延する、または予防するのに使用されうる。
【0090】
以下に制限されないが、リウマチ性関節炎及び慢性の肝臓疾患等の疾患による慢性の炎症により、骨損傷が引き起こされる場合がある。実施例に示されるように、IL−20アンタゴニストは、リウマチ性関節のラットモデルにおける骨損傷を軽減した。ゆえに、本明細書に記載されるIL−20アンタゴニストは、有効量のIL−20アンタゴニストを投与することによって、慢性の炎症症状を有する個体の骨粗鬆症を治療する、発症を遅延する、または予防するのに使用されうる。
【0091】
IL−20アンタゴニストは、適当な経路を介して個体に投与されうる。例えば、IL−20アンタゴニストは、経口で、静脈内に、舌下に、皮下に、動脈内に、滑液内に、嚢内に(intravescicular)(膀胱を介するなど)、筋肉内に、心腔内に、胸郭内に、腹腔内に、脳室内に、舌下に、吸入によって、坐剤によって、及び経皮的に投与できる。IL−20アンタゴニストは、経口で、例えば、当業者に認識される方法によって調製される、錠剤、トローチ、カプセル、エリキシル剤、懸濁液、シロップ、ウエハース、棒付きキャンディー、チューイングガムなどの形態で投与されてもよい。本明細書中の実施例は本発明を制限するものではなく、使用できる技術を詳細に説明するためのものであることは、当業者には明らかであるべきである。
【0092】
したがって、実施形態によっては、抗IL−20抗体等の、IL−20アンタゴニストは、静脈内投与、例えば、ボーラスとしてまたは一定期間にわたる連続輸注による、筋肉内、腹腔内、脳脊髄内、皮下、関節内、滑液内、鞘内、経口、吸入若しくは局所経路によるなど、既知の方法に従って個体に投与される。ジェット噴霧器や超音波ネブライザー等の、液状製剤用の市販のネブライザーが投与に使用できる。液状製剤を直接噴霧してもよく、凍結乾燥粉末を再構成(reconstitution)後噴霧してもよい。または、IL−20アンタゴニストは、フッ化炭素や定量吸入器を用いてエアロゾル化されてもよく、または凍結乾燥し粉砕された粉末として吸入されてもよい。
【0093】
一実施形態では、IL−20アンタゴニスは、部位特異的またはターゲットされた局所的なデリバリー技術を介して投与される。部位特異的またはターゲットされた局所的なデリバリー技術の例としては、IL−20アンタゴニストの様々な移植可能なデポー源または注入カテーテル、留置カテーテル、または針付きカテーテル等の、局所デリバリーカテーテル(local delivery catheter)、合成グラフト、外膜覆い(adventitial wrap)、シャント及びステントまたは他の移植可能なデバイス、部位特異的な担体、直接注射、または直接塗布がある。例えば、PCT公開第WO 00/53211号及び米国特許第5,981,568号を参照。
【0094】
IL−20アンタゴニスト(抗IL−20抗体等)の様々な製剤が投与のために使用されうる。実施形態によっては、IL−20アンタゴニストはそのまま投与されてもよい。実施形態によっては、IL−20アンタゴニストは、抗IL−20抗体を含み、製薬上許容できる賦形剤を含む製剤などの、様々な製剤に含まれうる。製薬上許容できる賦形剤は、当該分野において既知であり、薬理学的に有効な物質の投与を容易にする比較的不活性な物質である。例えば、賦形剤は、形態若しくは堅さ(consistency)を付与し、または希釈剤として作用する。適当な賦形剤としては、以下に制限されないが、安定化剤、湿潤化剤及び乳化剤、浸透圧を変えるための塩、封入剤、緩衝剤、及び皮膚浸透促進剤が挙げられる。非経口及び経口薬剤デリバリー用製剤に加えて、賦形剤は、Remington, The Science and Practice of Pharmacy 20th Ed. Mack Publishing (2000)に記載される。
【0095】
実施形態によっては、これらの薬剤は、注射(例えば、腹腔内、静脈内、皮下、筋肉内等)による投与を目的として処方される。したがって、これらの薬剤は、生理食塩水、リンガー溶液、デキストロース溶液等の製薬上許容できるベヒクルと組み合わせてもよい。特定の投与レジメ、即ち、投与量、タイミング及び繰り返しは、特定の個体及びその個体の医療歴によって異なるであろう。
【0096】
抗IL−20抗体は、注射(例えば、腹腔内、静脈内、皮下、筋肉内等)によるなど、適当な方法を用いて投与されうる。抗IL−20抗体はまた、本明細書に記載されるように、吸入により投与されてもよい。通常、抗IL−20抗体の投与では、初期の候補投与量は約2mg/kgでありうる。本発明を目的として、具体的な1日あたりの投与量は、上記した因子によって、おおよそ、0.1μg/kg〜3μg/kg〜30μg/kg〜300μg/kg〜3mg/kg、〜30mg/kg〜100mg/kgまたはそれ以上のいずれかの範囲でありうる。症状に応じた、数日またはそれ以上にわたる繰り返し投与では、治療は、症状の所望の抑制が起こるまでまたは十分な治療効果が達成され、骨粗鬆症またはリウマチ性関節炎を抑えるまで、維持される。具体的な投与レジメは、約2mg/kgの初期投与量、次に約1mg/kgの1週間当たりの維持投与量の抗IL−20抗体、または次に約1mg/kgの隔週の維持投与量を投与することを有する。しかしながら、医師が達成したいと望む薬物動態減衰のパターンに応じて、他の投与レジメを使用してもよい。例えば、1週間あたり1〜4回の投与が考えられる。実施形態によっては、約3μg/mg〜約2mg/kg(約3μg/mg、約10μg/mg、約30μg/mg、約100μg/mg、約300μg/mg、約1mg/kg、及び約2mg/kg等)の範囲の投与量を使用してもよい。実施形態によっては、投与頻度は、毎週、2週間毎に、4週間毎に、5週間毎に、6週間毎に、7週間毎に、8週間毎に、9週間毎に、または10週間毎に、1回;または月に、2カ月毎に、3カ月毎に、またはそれ以上で1回である。この治療の進捗は、公知の技術及びアッセイによって簡単にモニターされる。投与レジメ(使用されるIL−20アンタゴニストを含む)は経時的に変化してもよい。
【0097】
通常、抗体でない場合には、IL−20アンタゴニストは、(実施形態によっては)1〜3回に分けて患者の体重1kg当たり約0.1〜300mgの割合で、または本明細書中に開示されるのと同様にして、投与してもよい。実施形態によっては、一般的な体重の成人患者では、約0.3〜5.00mg/kgの範囲の投与量で投与されてもよい。特定の投与レジメ、即ち、投与量、タイミング及び繰り返しは、特定の個体及びその個体の医療歴、さらには個々の薬剤の性質(薬剤の半減期、及び当該分野において既知の他の考察等)によって異なるであろう。
【0098】
本発明を目的として、IL−20アンタゴニストの適切な投与量は、使用されるIL−20アンタゴニスト(またはその組成物)、治療される骨粗鬆症またはリウマチ性関節炎のタイプ及び重篤度、薬剤が予防または治療目的で投与されるかどうか、以前の治療法、患者の病歴や薬剤への応答性、ならびに主治医の裁量によって異なるであろう。具体的には、臨床医は、所望の結果を達成する投与量に達するまで、抗IL−20抗体等の、IL−20アンタゴニストを投与するであろう。
【0099】
半減期等の、経験的考察により、通常、投与量が決定されるであろう。例えば、抗体の半減期を延長し、抗体が宿主の免疫系による攻撃を受けるのを防止するために、ヒト化抗体または完全なヒト抗体等の、ヒトの免疫系に適合する抗体を使用してもよい。投与頻度は、治療期間にわたって決定、調節されてもよく、通常、しかし、必ずしもではないが、骨粗鬆症の治療および/または抑制および/または改善および/または遅延に基づくものである。または、抗IL−20抗体の持続連続放出製剤が適切である場合がある。持続放出を達成するための様々な製剤及びデバイスは当該分野において既知である。
【0100】
一実施形態では、IL−20アンタゴニストの投与量は、IL−20アンタゴニスト(抗体等)を予め1回以上投与された個体で経験的に決定されてもよい。個体は、IL−20アンタゴニスト、例えば、抗IL−20抗体の投与量を増加させて投与してもよい。IL−20アンタゴニストの薬効を評価するために、骨粗鬆症の指標(骨ミネラル濃度)またはリウマチ性関節炎の指標(関節の腫れ、痛み、凝り、及び組織の破壊等)に従ってもよい。
【0101】
本発明の方法によるIL−20アンタゴニストの投与は、例えば、レシピエントの生理学的な症状、投与の目的が治療または予防であるかどうか、及び医師に知られている他の因子によって、連続であってもまたは断続的であってもよい。(例えば、IL−20アンタゴニストが抗IL−20抗体である場合の)IL−20アンタゴニストの投与は、例えば、骨粗鬆症またはリウマチ性関節炎の発症する前、間若しくは後のいずれかに、事前に選択された期間にわたって連続していてもよく、または一連に間隔をあけた投与であってもよい。
【0102】
実施形態によっては、1超の、抗体等のIL−20アンタゴニストが存在してもよい。これらのアンタゴニストは、同一であってもまたは相互に異なるものであってもよい。少なくとも1種の、少なくとも2種の、少なくとも3種の、少なくとも4種の、少なくとも5種の異なるIL−20アンタゴニストが存在してもよい。通常、これらのIL−20アンタゴニストは、相互に悪影響を及ぼさない補体活性を有する。IL−20アンタゴニストはまた、薬剤の有効性を促進するおよび/または補足するように作用する他の薬剤と組み合わせて使用してもよい。
【0103】
実施形態によっては、IL−20アンタゴニストは、他の薬剤と組み合わせて投与される。実施形態によっては、上記他の薬剤は、リウマチ性関節炎の治療または改善のための薬剤である。抗リウマチ性関節炎薬剤の例としては、TNFaアンタゴニスト、例えば、TNFに結合してTNFレセプターへのTNFの結合に反映してTNF活性を阻害するポリペプチドがある。TNFaアンタゴニストの例としては、エタネルセプト(ENBREL(登録商標))ならびにインフリキシマブ(REMICADE(登録商標))及びアダリムマブ(HUMIRA(登録商標))等の抗TNFa抗体がある。一例では、エタネルセプトポリペプチドは、ヒト可溶性TNFレセプター(配列番号:5、下記に示す)及びヒトIgG1(即ち、エタネルセプト)のFc成分を含む融合タンパク質である。実施形態によっては、他の薬剤は、骨粗鬆症の治療または改善のための薬剤である。抗骨粗鬆症薬剤の例としては、アレンドロネート、イバンドロネート、リセドロネート、ゾレドロン酸、カルシトニン、エストロゲン、選択的エストロゲン受容体調節因子、ラロキシフェン、副甲状腺ホルモン、及びテリパラチドがある。
【0104】
ヒト可溶性TNFレセプターのアミノ酸配列(配列番号:5)
【0105】
【化4】

【0106】
本発明の実施形態によっては、IL−20アンタゴニスト;例えば、mAb 7Eまたはその誘導体を、リウマチ性関節炎または骨粗鬆症の治療を目的として、エタネルセプトポリペプチドと組み合わせて使用してもよい。「エタネルセプトポリペプチド」ということばは、腫瘍壊死因子(TNF)の可溶性レセプター及び免疫グロブリンのFc成分を含む融合タンパク質を意味する。一例では、TNF可溶性レセプターは、下記に示される配列番号:5のアミノ酸配列を有するヒト可溶性TNFレセプターおよびその機能的な等価物、即ち、配列番号:5に少なくとも85%(例えば、90%、95%、または98%)一致するアミノ酸配列を有し、ヒトTNFに結合できるポリペプチドである。エタネルセプトポリペプチドは、公知の組換技術によって作製できる。
【0107】
本発明に従って使用されるIL−20アンタゴニスト(抗体等)の治療用製剤は、凍結乾燥製剤または水溶液の形態で、所望の純度を有する抗体を必要であれば製薬上許容できる担体、賦形剤または安定化剤(Remington, The Science and Practice of Pharmacy 20th Ed. Mack Publishing (2000))と混合することによって、貯蔵用として調製される。許容できる、担体、賦形剤、または安定化剤は、使用される投与量及び濃度でレシピエントに無害であり、リン酸塩、クエン酸塩、及び他の有機酸等の緩衝剤;塩化ナトリウム等の塩;アスコルビン酸及びメチオニン等の抗酸化剤;保存剤(例えば、塩化オクタデシルジメチルベンジルアンモニウム;塩化ヘキサメトニウム;塩化ベンズアルコニウム;塩化ベンズトニウム;フェノール、ブチルアルコールまたはベンジルアルコール;メチルパラベンまたはプロピルパラベン等のアルキルパラベン;カテコール;レゾルシノール;シクロヘキサノール:3−ペンタノール;およびm−クレゾール);低分子量(約10残基未満の)ポリペプチド;血清アルブミン、ゼラチン、または免疫グロブリン等の、タンパク質;ポリビニルピロリドン等の親水性ポリマー;グリシン、グルタミン、アスパラギン、ヒスチジン、アルギニン、またはリジン等のアミノ酸;グルコース、マンノース、またはデキストリン等の、単糖類、二糖類、および他の炭水化物;EDTA等のキレート化剤;スクロース、マンニトール、トレハロースまたはソルビトール等の糖類;ナトリウム等の塩を形成するカウンターイオン;金属錯体(例えば、Zn−タンパク質錯体);ならびに/あるいは、TWEEN(商標)、PLURONICS(商標)、またはポリエチレングリコール(PEG)等の非イオン性界面活性剤が挙げられる。
【0108】
IL−20アンタゴニスト(抗体等)を含むリポソームは、Epstein, et al., Proc. Natl. Acad. ScL USA 82:3688 (1985);Hwang, et al., Proc. Natl Acad. ScL USA 77:4030 (1980);及び米国特許第4,485,045号及び第4,544,545号に記載されるなどの、当該分野において既知の方法によって調製される。循環時間が向上したリポソームは、米国特許第5,013,556号に開示される。特に有用なリポソームは、ホスファチジルコリン、コレステロール及びPEG由来のホスファチジルエタノールアミン(PEG−PE)を含む脂質組成物を用いた逆相蒸発法(reverse phase evaporation method)によって得られる。リポソームを所定の孔径を有するフィルターで押し出すことにより、所定の直径を有するリポソームが得られる。
【0109】
活性成分はまた、例えば、コアセルベーション技術によってまたは界面重合によって調製されるマイクロカプセル、例えば、コロイドドラッグデリバリーシステム(例えば、リポソーム、アルブミン小球体、ミクロエマルジョン、ナノ粒子及びナノカプセル)におけるまたはマイクロエマルジョンにおける、それぞれ、ヒドロキシメチルセルロースまたはゼラチン−マイクロカプセル及びポリ(メチルメタクリレート)マイクロカプセル中に封入されてもよい。このような技術は、Remington, The Science and Practice of Pharmacy 20th Ed. Mack Publishing (2000)に開示される。
【0110】
徐放性製剤を調製してもよい。徐放性製剤の適当な例としては、抗体を含む固体疎水性ポリマーの半透性マトリックスがあり、このマトリックスは成形製品、例えば、フィルム、またはマイクロカプセルの形態を有する。徐放性マトリックスの例としては、ポリエステル、ヒドロゲル(例えば、ポリ(2−ヒドロキシエチル−メタクリレート)、またはポリ(ビニルアルコール)、ポリラクチド(米国特許第3,773,919号)、L−グルタミン酸及び7エチル−L−グルタメートの共重合体、非分解性エチレン−酢酸ビニル、LUPRON DEPOT(商標)(乳酸−グリコール酸共重合体及び酢酸ロイプロリドから構成される注射用マイクロスフェア)等の分解性乳酸−グリコール酸共重合体、イソ酪酸酢酸スクロース(sucrose acetate isobutyrate)、及びポリ−D−(−)3−ヒドロキシ酪酸がある。
【0111】
インビボ投与に使用される製剤は、滅菌されていなければならない。これは、例えば、滅菌濾過膜による濾過によって容易に達成される。治療用抗IL−20抗体組成物は、通常、滅菌アクセスポートを有する容器、例えば、静脈注射用の溶液バックまたは皮下注射針で穴のあくストッパーを有するバイアル瓶中に入れられる。
【0112】
本発明に係る組成物は、経口、非経口若しくは直腸投与、または吸入(inhalation)若しくは吹送(insufflation)による投与を目的とした、錠剤、ピル、カプセル、粉末、顆粒、溶液若しくは懸濁液、または坐剤等の、単位投薬形態(unit dosage form)であってもよい。
【0113】
錠剤等の固体組成物を調製するには、主要な活性成分を、製薬上の担体、例えば、コーンスターチ、ラクトース、スクロース、ソルビトール、タルク、ステアリン酸、ステアリン酸マグネシウム、第二リン酸カルシウムまたはゴム等の、公知の錠剤化成分、および他の製薬上の希釈剤、例えば、水と混合して、本発明の化合物、またはその無毒な製薬上許容できる塩の均質な混合物を含む固体の予備処方組成物を形成する。これらの予備処方組成物が均質であるとは、組成物が錠剤、ピル及びカプセル等の等しく有効な単位投薬形態となるように容易に分割できるように、活性成分が組成物にわたって等しく分散していることを意味する。次に、この予備処方組成物を、本発明の活性成分を0.1〜約500mg含む上記タイプの単位投薬形態に分割する。新規な組成物の錠剤またはピルは、被覆されてもまたはより長期間の作用を可能にする投薬形態が得られるように調合されてもよい。例えば、錠剤またはピルは、内側投薬成分及び外側投薬成分を有し、この際、後者は前者を包むような形態である。これらの2成分は、胃内での分解には耐性があり、内側成分が十二指腸でそのまま通過できるまたは遅延して放出されるような腸溶層で分離されていてもよい。様々な材料が、このような腸溶層若しくは被覆に使用でき、このような材料としては、多数のポリマー酸ならびにポリマー酸とセラック、セチルアルコール及び酢酸セルロース等の材料との混合物がある。
【0114】
適当な界面活性剤としては、特に、ポリオキシエチレンソルビタン(例えば、Tween(商標) 20、40、60、80または85)及び他のソルビタン(例えば、Span(商標) 20、40、60、80または85)等の、非イオン性物質がある。界面活性剤を含む組成物は、簡便には、0.05〜5%の界面活性剤を含み、0.1〜2.5%であってもよい。必要であれば、他の成分、例えば、マンニトールまたは他の製薬上許容できるベヒクルを添加してもよいと、理解されるであろう。
【0115】
適当なエマルジョンは、Intralipid(商標)、Liposyn(商標)、Infonutrol(商標)、Lipofundin(商標)及びLipiphysan(商標)等の、市販の脂肪エマルジョンを用いて調製されてもよい。活性成分は、予め混合されたエマルジョン組成物中に溶解されてもまたは油(例えば、大豆油、サフラワー油、綿実油、ゴマ油、トウモロコシ油または扁桃油)中に溶解されてもよく、エマルジョンはリン脂質(例えば、卵リン脂質、大豆リン脂質または大豆レシチン)及び水と混合すると形成される。他の成分、例えば、グリセロールまたはグルコース、を添加して、エマルジョンの等張性を調節してもよい。適当なエマルジョンは、具体的には、20%以下、例えば、5〜20%の油を含むであろう。脂肪エマルジョンは、0.1〜1.0nm、特に0.1〜0.5nmの脂肪小滴を含んでもよく、5.5〜8.0の範囲のpHを有してもよい。
【0116】
エマルジョン組成物は、IL−20アンタゴニストをIntralipid(商標)またはその成分(大豆油、卵リン脂質、グリセロール及び水)と混合することによって調製されるものであってもよい。
【0117】
吸入(inhalation)若しくは吹送(insufflation)用の組成物は、製薬上許容できる水性溶剤若しくは有機溶剤における溶液及び懸濁液、またはこれらの混合物、ならびに粉末を含む。液状または固体組成物は、上記したような適当な製薬上許容できる賦形剤を含んでもよい。実施形態によっては、組成物は、局所的なまたは全身的な効果を目的として経口または鼻腔内呼吸器(nasal respiratory)経路によって投与される。好ましくは滅菌した製薬上許容できる溶剤における組成物は、気体を用いることによって噴霧されてもよい。噴霧溶液は、噴霧デバイスから直接吸い込まれてもよいし、または噴霧デバイスはフェイス・マスク、テントまたは間欠的な陽圧呼吸機(intermittent positive pressure breathing machine)に取り付けられてもよい。溶液、懸濁液または粉末組成物は、適当に製剤をデリバリーするデバイスから、好ましくは経口または鼻腔内に、投与されてもよい。
【0118】
治療の有効性は、当該分野において既知の方法によって評価できる。
【0119】
アンチセンスポリヌクレオチド、発現ベクター、またはサブゲノムポリヌクレオチドを含む治療用組成物のターゲットデリバリー(targeted delivery)もまた使用できる。レセプターが仲介するDNAデリバリー技術は、例えば、Findeis et al, Trends Biotechnol. (1993) 11:202; Chiou et al, Gene Therapeutics: Methods And Applications Of Direct Gene Transfer (J.A. Wolff, ed.) (1994); Wu et al, J. Biol. Chem. (1988) 263:621; Wu et al, J. Biol. Chem. (1994) 269:542; Zenke et al, Proc. Natl. Acad. ScL USA (1990) 87:3655; Wu et al, J. Biol. Chem. (1991) 266:338に記載される。ポリヌクレオチドを含む治療用組成物は、遺伝子治療プロトコルで局所投与されることを目的として、約100ng〜約200mgのDNA量で投与される。実施形態によっては、約500ng〜約50mg、約1μg〜約2mg、約5μg〜約500μg、および約20μg〜約100μgのDNAまたはそれ以上の濃度範囲が遺伝子治療プロトコル中に使用されうる。本発明の治療用ポリヌクレオチド及びポリペプチドは、遺伝子デリバリーベヒクルを用いてデリバリーされうる。遺伝子デリバリーベヒクルは、ウィルス由来であってもあるいは非ウィルス由来であってもよい(通常、Jolly, Cancer Gene Therapy (1994) 1:51; Kimura, Human Gene Therapy (1994) 5:845; Connelly, Human Gene Therapy (1995) 1:185; and Kaplitt, Nature Genetics (1994) 6:148を参照)。このようなコーディング配列の発現は、内因性の哺乳動物または異種のプロモーターおよび/またはエンハンサーを用いて誘導されうる。コーディング配列の発現は、構成性(constitutive)であってもまたは調節されてもよい。
【0120】
所望のポリヌクレオチドのデリバリーおよび所望の細胞での発現用のウィルス由来のベクターは、当該分野において既知である。具体的なウィルス由来のベクターとしては、以下に制限されないが、組換レトロウィルス(例えば、PCT公開 WO 90/07936;WO 94/03622;WO 93/25698;WO 93/25234;WO 93/11230;WO 93/10218;WO 91/02805;米国特許第5,219,740号及び第4,777,127号;英国特許第2,200,651号;ならびに欧州特許第0 345 242号を参照)、アルファウィルス由来のベクター(例えば、シンドビス ウィルスベクター(Sindbis virus vector)、セムリキ森林熱ウィルス(Semliki forest virus)(ATCC VR−67;ATCC VR−1247)、ロスリバーウィルス(Ross River virus)(ATCC VR−373;ATCC VR−1246)及びベネズエラウマ脳炎ウィルス(Venezuelan equine encephalitis virus)(ATCC VR−923;ATCC VR−1250;ATCC VR 1249;ATCC VR− 532))、ならびにアデノ随伴ウィルス(adeno-associated virus)(AAV)ベクター(例えば、PCT公開 WO 94/12649、WO 93/03769;WO 93/19191;WO 94/28938;WO 95/11984及びWO 95/00655を参照)が挙げられる。Curiel, Hum. Gene Ther. (1992) 3:147に記載されるような死滅アデノウィルスに連結したDNAの投与もまた使用できる。
【0121】
非ウィルス由来のデリバリーベヒクルおよび方法もまた使用でき、以下に制限されないが、死滅アデノウィルス単独に連結されるまたは連結されないポリカチオン縮合DNA(polycationic condensed DNA)(例えば、Curiel, Hum. Gene Ther. (1992) 3:147を参照);リガンド連結DNA(ligand-linked DNA)(例えば、Wu, J. Biol. Chem. (1989) 264:16985を参照);真核細胞デリバリーベヒクル細胞(eukaryotic cell delivery vehicles cells)(例えば、米国特許第5,814,482号;PCT公開 WO 95/07994;WO 96/17072;WO 95/30763;及びWO 97/42338を参照)ならびに核酸電荷中和(nucleic charge neutralization)または細胞膜との融合が挙げられる。裸のDNAを使用してもよい。具体的な裸のDNAの導入方法は、PCT公開 WO 90/11092及び米国特許第5,580,859号に記載される。遺伝子デリバリーベヒクルとして作用するリポソームは、米国特許第5,422,120号;PCT公開 WO 95/13796;WO 94/23697;WO 91/14445;および欧州特許第0524968号に記載される。さらなる方法は、Philip, MoI. Cell Biol. (1994) 14:241 1に、およびWoffendin, Proc. Natl. Acad. Sci (1994) 91:1581に記載される。
【0122】
また、発現ベクターを本明細書に記載されるタンパク質系のIL−20アンタゴニスト(例えば、抗IL−20抗体、イムノアドヘシン(immunoadhesin)等)のいずれかの直接発現に使用してもよいことは明らかである。例えば、IL−20および/またはIL−20生物学的活性を遮断(一部から完全な遮断を含む)することが可能である他のIL−20レセプター断片は当該分野において既知である。
【0123】
キット
本発明はまた、本方法に使用されるキットをも提供する。本発明のキットは、IL−20アンタゴニスト(本明細書中に記載される抗体mAb 7Eまたはその誘導体等の、抗体など)を含む1以上の容器を有し、および実施形態によっては、本明細書中に記載される本発明の方法のいずれかに従って使用される指示書をさらに有する。実施形態によっては、IL−20アンタゴニストは、本明細書中に記載されるいずれかのIL−20アンタゴニストである。他の実施形態では、キットは、抗IL−20抗体以外のIL−20アンタゴニストを含む。実施形態によっては、キットは、抗IL−20抗体(本明細書中に記載される抗体mAb 7E等)を含む。他の実施形態では、キットは、抗体mAb 7Eの1以上のCDR(mAb 7Eの1、2、3、4、5、または実施形態によっては、6全てのCDR)を含む抗IL−20抗体を含む。実施形態によっては、含まれる指示書には、本明細書に記載されるいずれかの方法に従って骨粗鬆症またはリウマチ性関節炎を治療する、発症を遅延させるまたは予防するためのIL−20アンタゴニストの投与が記載されている。キットには、個体が骨粗鬆症またはリウマチ性関節炎を有しているか否かに基づいて治療に適する個体を選択することがさらに記載されてもよい。さらに他の実施形態では、指示書には、骨粗鬆症またはリウマチ性関節炎の危険性のある個体へのIL−20アンタゴニストの投与が記載される。
【0124】
IL−20アンタゴニストの使用に関する指示書は、通常、所望の治療のための投与量、投与スケジュール、及び投与経路に関する情報を含む。容器は、単位投与、バルクパッケージ(例えば、複数回投与用パッケージ)またはサブユニット投与を包含しうる。本発明のキットに供給される指示書は、一般的には、ラベルまたは容器の同封物(package insert)(例えば、キット中に含まれる紙シート)に書かれた指示書であるが、コンピュータが読取可能な指示書(例えば、磁気記憶ディスクまたは光学式記憶ディスクで行われる指示書)もまた許容できる。
【0125】
ラベルまたは容器の同封物には、組成物が骨粗鬆症を治療する、発症を遅延させるおよび/または予防するために使用されることが記載される。指示書は本明細書に記載されるいずれかの方法を実施するにあたって使用されうる。
【0126】
本発明のキットは、適当なパッケージに入れられる。適当なパッケージとしては、以下に制限されないが、バイアル瓶、ボトル、ジャー、フレキシブル包装(例えば、密閉マイラー(Mylar)樹脂製またはプラスチック製バッグ)などが挙げられる。吸入器、鼻腔内投与デバイス(例えば、アトマイザー)またはミニポンプ等の輸注デバイスなどの、特定のデバイスと組み合わせて使用されるパッケージもまた包含される。キットは、滅菌アクセスポートを有していてもよい(例えば、容器が静脈注射用の溶液バックまたは皮下注射針で穴のあくストッパーを有するバイアル瓶であってもよい)。また、容器が、滅菌アクセスポートを有していてもよい(例えば、容器が静脈注射用の溶液バックまたは皮下注射針で穴のあくストッパーを有するバイアル瓶であってもよい)。組成物中の少なくとも1の活性剤が、抗IL−20抗体等の、IL−20アンタゴニストである。容器は、TNFaアンタゴニストまたは骨粗鬆症の治療のための他の薬剤などの、第二の製薬上活性のある薬剤をさらに含んでもよい。
【0127】
キットは、必要であれば、緩衝剤等の別の成分および説明書き(interpretive information)を提供するものであってもよい。一般的に、キットは、容器および容器に添付されたまたは容器に付随したラベルまたは容器の同封物(package insert)を含む。
【0128】
実施形態によっては、本発明は、上記キットの内容物を含む製造物品を提供する。実施形態によっては、キットは、骨粗鬆症またはリウマチ性関節炎の治療への使用を示す情報付でIL−20アンタゴニスト(抗IL−20抗体等)を含む。
【0129】
さらに説明がなくとも、当業者は、上記記載に基づいて、十分に本発明を利用できると考えられる。したがって、下記特定の実施例は、単に詳細に説明するためのものであり、本発明のいかなる残りの開示を制限するものではないと、解される。明細書に列挙されるすべての公報、文献、特許及び特許出願は、参考で全体を本明細書中に引用される。
【実施例】
【0130】
実施例1 モノクローナル抗体7E(mAb 7E)によるリウマチ性関節炎の治療
コラーゲン誘導関節炎(CIA)を有するラットは、ヒトリウマチ性関節炎を研究するためのよく開発された動物モデルである。このモデルを本研究に用いて、mAb 7Eによるこの疾患の治療の有効性を試験した。
【0131】
CIAを、以下のようにして8週齢のオスのSprague-Dawleyラットで誘導した。完全フロインドアジュバント、4mg/mlの熱殺菌されたヒト型結核菌(Mycobacterium tuberculosis)(Arthrogen-CIA; Chondrex, Redmond, WA)、およびウシタイプIIコラーゲン(CII;0.05M酢酸に溶解される2mg/ml)を1:1:1(v/v/v)の割合で含む200μlエマルジョンを(背に)皮下注射することによって、ラットを初期免疫処置した。8日後、ラットの尾根に上記したエマルジョンを100μl皮下注射して、免疫反応を高めた。初期免疫処置から11〜13日の間で、CIAがこれらのラットに観察された。
【0132】
下記4グループのラット(n=5)について本研究を行った:グループ(1):健常なラット;グループ(2):CIA発症から1週目にPBSを皮下(s.c.)投与した、上記したような、CIAラット;グループ(3):CIA発症から1週目にmAb 7E(3mg/kg)を皮下(s.c.)投与した、CIAラット;およびグループ(4):CIA発症から1週目にエタネルセプト(Enebrel(登録商標);Wyeth, USA, 3mg/kg)を皮下(s.c.)投与した、CIAラット。各処置ラットの後脚の厚みをキャリパーで測定した。本研究で得られた全ての生の結果について、統計ソフトウェアPrism 4.0; GraphPad Software, San Diego, CA, USAを用いて統計学的に分析した。クラスカル・ワリス検定(Kruskal-Wallis test)を用いて、後脚の厚みを比較した。P値<0.05は有意差ありと考えた。スチューデントのt検定(Student's t-test)または一元配置分散分析(ANOVA)を用いて、有意差を評価した。統計学的有意差を、P<0.05で設定した。
【0133】
下記表1に示されるように、mAb 7Eは、CIAラットにおいて後脚の厚みを有意に減少させ(p<0.05)、その有効性は市販の抗リウマチ性関節炎薬である、エタネルセプトのもの(Mihara et ah, Br J Pharmacol., 2008, 154: 153- 164を参照)に近かった。この結果から、エタネルセプトと同様、mAb 7Eもまたリウマチ性関節炎の治療に有効であることが示される。
【0134】
【表1】

【0135】
次に、mAb 7Eの滑膜組織の炎症性メディエータレベルの低減効果を以下にようにして試験した。処置CIAラットの膝関節周辺の滑膜組織を単離し、PBS溶液中に懸濁した。次に、この組織を均質化し、4℃で3000rpmで10分間遠心し、得られた上清を80℃で貯蔵して、分析の準備を行った。TNF−a、IL−Iβ(TNF−a及びIL−Iβキット;R&D Systems, Minneapolis, MN)、及びIL−20(IL−20キット;PeproTech Asia/CytoLab, Rehovot, Israel)のレベルを、製造社の指示に従ってサンドイッチELISAアッセイを用いて評価した。これら全ての炎症性メディエータがCIAラットで評価されることは、当該分野において既知である。
【0136】
得られた結果から、mAb 7E及びエタネルセプトは、mIgGに比べて、TNF−a、IL−Iβ、及びIL−20のレベルを有意に減少させたことが示される。より詳細には、mIgGで処置したCIAラットでは、滑膜組織におけるTNF−a、IL−Iβ、及びIL−20のレベルは、健常なコントロールラットの滑膜組織における値に比べて非常に高いものの、これらはmAb 7Eまたはエタネルセプトで処置されたCIAラットでは有意に減少した。
【0137】
実施例2 mAb 7Eおよびエタネルセプト双方によるリウマチ性関節炎の治療
CIAを実施例1に記載される方法に従ってラットで誘導した。このCIAラットをランダムに5グループ(各グループでn=9)に分け、CIA発症後週に3回、以下のように処置した:グループ1:PBS;グループ2:Chemicon International, Inc., Temecula, CA, USAから得られた、マウスIgG;グループ3:エタネルセプト(6mg/kg、皮下);グループ4:mAb 7E(6mg/kg、皮下);およびグループ5:mAb 7E(3mg/kg、皮下)及びエタネルセプト(3mg/kg、皮下)。まず、各処置ラットの後脚の厚さを上記実施例1に記載の方法に従って試験した。mAb 7E及びエタネルセプトを合わせて処置したものは、mAb 7E及びエタネルセプトを個々に処置したものに比べて後脚の厚さの低減効果が有意に高かった。
【0138】
次に、ラットの各後脚におけるCIAの重篤度を、Hsu et al.(Arthritis Rheum. 2006, 54:2722-2733)に記載される方法に従って、モニター、採点した。通常、ラットの重篤度のスコアが3より高いと、そのラットは後脚に重篤な腫れがあると考えられる。クラスカル・ワリス検定(Kruskal-Wallis test)を適用して、異なるグループから得られた重篤度スコアを比較して、その結果が統計学的に有意であるか否かを評価した。下記表2に示されるように、mAb 7E及びエタネルセプト双方で処置したラットの平均重篤度スコアは、mAb 7E単独でまたはエタネルセプト単独で処置したラットより非常に低かった。これらの結果は統計学的に有意差があった(P<0.05)。
【0139】
【表2】

【0140】
次に、重篤な後脚の腫れの存在を各処置CIAラットで試験し、結果を図1に示した。予想されなかったことに、mAb 7E及びエタネルセプトで個々に処置したCIAラットでの重篤な腫れの発生率は、それぞれ、100%から22%及び100から33%に減少したものの、mAb 7E及びエタネルセプト双方で処置したCIAラットでの重篤な腫れの発生率は100%から6%にまで減少した。これらの結果は、フィッシャーの直接確率検定(Fisher's exact test)を用いて分析すると統計学的に有意差があり、これから、mAb 7E及びエタネルセプトを合わせて処置したものは、mAb 7E及びエタネルセプトを個々に処置したものに比べて非常により有効であることが示される。
【0141】
加えて、処置されたCIAラットの骨損傷の重篤度を、放射線による画像(radio imaging)によりウシコラーゲンで初期免疫処置してから25日後に試験した。重篤な骨損傷がPBS及びmIgGで処置されたCIAラット(即ち、グループ1及びグループ2のラット)の後脚の関節で観察された。驚くべきことに、局所的な足首の骨損傷の重篤度は、mAb 7E、エタネルセプト、またはこれらの組み合わせで処置されたCIAラット(即ち、グループ3〜5のラット)では比較的軽かった。グループ1及び2のラットとグループ3〜5のラットとの相違は、統計学的に有意であった(P<0.01〜0.05)。これらの結果から、mAb 7Eは、エタネルセプトと同じくらい効果的にCIAラットで骨損傷を軽減し、mAb 7E及びエタネルセプトを組み合わせた処置は相当する個々の処置に比べてかなりより有効であったことがさらに確認される。
【0142】
さらに、高解像度で少量X線スキャナー(high resolution, low-dose X-ray scanner)を備えた1076マイクロCT−40システム(1076 microCT-40 system)(Skyscan, Aartselaar, Belgium)を用いた、マイクロコンピュータによるトモグラフィー解析(microcomputed tomographic analysis)を行って、mAb 7E単独及びmAb 7Eとエタネルセプトとの組み合わせによるCIAラットでの骨破壊の保護効果を評価した。スキャナーのX線管を、0.5−mmの厚みのフィルターを通して48kVの光子エネルギー、200μAの電流、及び1180msの暴露時間で操作した。画像の画素サイズは17.20μmであり、スキャン時間はおおよそ15分であった。スキャンした画像の復元を再構築した(standardized reconstruction)後、ソフトウェア(CTAn; Skyscan)を用いて、各脛骨サンプルのデータセットの再見本をとり、同様にして各サンプルを配向した(orient)。閾値等の条件を全分析にわたって一致させた。骨ミネラル濃度、3次元の骨特性パラメーターを、50枚の連続したスライスで分析した。結果をmIgGコントロールに対する値の割合(%)(percentage versus value)として算出した。
【0143】
PBS及びmIgGで処置されたCIAラットから得られた脛骨は、健常なコントロールで見出される損傷のない関節に比べて明らかな骨損傷を示した。mAb 7Eで処置されたCIAラットは、mIgGで処置されたラットに比べて骨量の減少の軽減を示した。mAb 7E及びエタネルセプト双方で処置されたラットでは、骨量の減少が、mAb 7Eまたはエタネルセプト単独で処置したラットに比べてより重篤でなかった。
【0144】
疾患の重篤度を評価する定量的なパラメーターである、骨ミネラル濃度を、上記したのと同様にして各処置CIAラットで測定した。CIAラットでのmAb 7E処置は、mIgGで処置したCIAラットに比べて骨量の減少を有意に阻害した(P<0.05)。保護効果は、mAb 7E及びエタネルセプト双方で処置したCIAラットで劇的に増加した(P<0.01)。マイクロCT結果は、足首の関節からの放射線によるデータを支持するものであった。これらの結果から、mAb 7Eは、関節炎の重篤度を低減するのみならず、骨量の減少を阻害するという証拠が得られた。
【0145】
最後に、TNF−a、IL−Iβ、及びIL−20の発現レベルを、mAb 7E及びエタネルセプト双方で処置したCIAラットで試験したところ、得られた結果から、これらのサイトカインは有意に減少したことが示された。図2を参照。IL−6の発現もまた、mAb 7E、エタネルセプト、ならびにmAb 7E及びエタネルセプト双方で処置後に減少した。
【0146】
要約すると、上記結果から、mAb 7Eは、関節炎の重篤度を低減し、骨量の減少を阻害することによってCIAを処置するのに有効であることが示される。また、これらの結果から、mAb 7E及びエタネルセプトの合わせた効果は、mAb 7Eまたはエタネルセプト個々の効果に比べて有意に高いことも示される。
【0147】
実施例3 mAb 7Eの骨粗鬆症の治療
14週齢のメスのBALB/Cマウス(Laboratory Animal Center, National Cheng Kung University, Tainan, Taiwan)を、到着したら環境が制御された実験室で飼育し、4日間慣れさせた。動物を、温度/湿度が制御された部屋(20〜25℃及び40〜45%)でポリカーボネート製のケージ(1ケージ当たり3匹)に割り当てた。明:暗サイクルを、12時間明所:12時間暗所とし、餌及び水を自由に摂取できるよう供給した。動物を、ペントバルビタール(50mg/kg体重;Sigma-Aldrich, St. Louis, MO)を用いた通常の麻酔下で背部の卵巣を摘出した(OVX)または偽で手術した(偽コントロール)。偽コントロールでは、左右の卵巣を暴露した後、除かずに皮膚を縫合して閉じた。マウスをOVXまたはコントロール外科手術してから1週間回復させた後、6グループにランダムに分けた:グループ1:偽コントロール(n=5);グループ2:さらに処置を行わないOVXマウス(n=5);グループ3:17β−エストラジオール(Sigma- Aldrich, St. Louis, MO, 10μg/kg/日、n=6)で処置したOVXマウス;グループ4:mIgG(Chemicon International, Inc., Temecula, CA, USA, 3mg/kg/3日、n=7)で処置したOVXマウス;グループ5:mAb 7E(3mg/kg/3日、n=5)で処置したOVXマウス;およびグループ6:mAb 7E(6mg/kg/3日、n=5)で処置したOVXマウス。ポジティブコントロールとして使用した17β−エストラジオール処置の投与量は、OVXマウスを処置するのに有効であることが知られている従来のプロトコルに基づくものである。Cano et al, Osteoporos Int. 2008 Jun;19(6):793-800を参照。
【0148】
全てのグループのマウスを2カ月後剖検した。各マウスの脛骨を無菌的に集め、洗浄して付着した軟組織を除き、3.7%ホルマリンを満たした管に沈めた。次に、上記実施例2に記載の方法に従って、マイクロコンピュータによるトモグラフィー解析および骨ミネラル濃度分析を行った。
【0149】
IL−20の血清レベルはOVXグループではアップレギュレートしたが、mAb 7Eで処置したOVXマウスではダウンレギュレートした(図3a)。マウス脛骨の骨ミネラル濃度のマイクロCTスキャンから、グループ2及び3(未処置またはmIgGで処置)の骨損傷のレベルがグループ4〜6(3mg/kg mAb 7E、6mg/kg mAb 7E、及び17β−エストラジオールで処置)のものに比べてかなり大きいことが示され、これから、17β−エストラジオールと同様、mAb 7EもOVXマウスでの骨の減少を低減したことが示される(図3b)。さらに、mAb 7Eで処置された及び17β−エストラジオールで処置されたOVXマウスでの骨ミネラル濃度は、偽コントロール及びmIgGで処置したマウスに比べてかなり高かった(図3b)。骨密度の統計学的に有意な(mIgGコントロールに比べてP<0.05)容量に応答した増加がこれらのマウスで観察された(図3c)。総合すると、これらの結果から、mAb 7Eは、骨量の減少を低減することによって骨粗鬆症を治療するのに有効であることが示される。
【0150】
実施例4 IL−20抗体 mAb 7Eは破骨細胞の分化を阻害する
骨形成は、骨芽細胞と破骨細胞とのクロストークによって密に調節される。不安定な破骨細胞形成により、骨粗鬆症及びリウマチ性関節炎で骨量の減少が引き起こされる(Takayanagi, H, et al. (2005) Immunol Rev 208:181-193; Ross, FP and Teitelbaum, SL (2005) Immunol Rev 208:88-105)。ゆえに、我々は、mAb 7Eが破骨細胞の分化を阻害することによってOVXマウスの骨量の減少を保護するか否かを決定したかった。
【0151】
骨髄細胞(BMC)を、マウスの脛骨から調製し、12時間(37℃/5% CO2)でインキュベートした。その後、非付着細胞を集め、24ウェルプレートに播種し(2×10細胞/ウェル)、30ng/ml 組換マウスマクロファージコロニー刺激因子(M−CSF)(PreproTech)を補足した同じ培地で培養した。48時間後、M−CSFにより誘導されたBMCを、実験が終了するまで、マウスM−CSF(40ng/ml)及びsRANKL(100ng/ml)(PreproTech)と一緒に培養した。mAb 7Eの効果を試験するために、MCSFで誘導されるBMCを、実験が終了するまで、M−CSF及びsRANKLを含むa−MEM中で、IL−20(200ng/ml)、mAb 7E(2μg/ml)、mIgG(2μg/ml)で処置した。
【0152】
mAb 7Eによる初期処置のために、BMCを12時間培養した。非付着細胞を24ウェルプレートに播種し(2×10細胞/ウェル)、mAb 7E(2μg/ml)またはコントロールmIgG(2μg/ml)を含むa−MEMで培養した後、M−CSF(40ng/ml)を添加した。40時間後、mAb 7E処置を終了し、細胞を血清を含まない培養培地で洗浄した後、実験終了までa−MEM(40ng/ml)及びsRANKL(100ng/ml)中でインキュベートした。破骨細胞の数を計測するために、細胞をアセトンで固定し、酸性ホスファターゼキット(Sigma-Aldrich)を用いてTRAPについて染色した。
【0153】
破骨前駆細胞を骨髄由来の造血幹細胞(HSC)から調製し、M−CSF及び可溶性(s)RANKLを培養物に添加して、OCの分化を誘導した。2種の培養プロトコルを用いて、初期及び後期の破骨細胞形成におけるOC分化へのIL−20抗体mAb 7Eの効果を分析した(図4)。48時間後、M−CSFで誘導された骨髄マクロファージを、実験終了まで、マウスM−CSF(40ng/ml)及びsRANKL(100ng/ml)と共に培養した。TRAP染色を用いて、分化した破骨細胞の数を定量した。mAb 7E(2μg/ml)の存在下では、TRAP+破骨細胞の数は、アイソタイプコントロールに比べて有意に(P<0.01)低かった(図4b及び4c)。mAb 7Eの存在下では、OCは検出されなかった。mAb 7Eが初期または後期でOCの分化に影響を与えるかどうかを明らかにするために、骨髄細胞をmAb 7EまたはmIgGと1時間予めインキュベートした後、M−CSFをさらに48時間加えた。細胞を集め、mAb 7E抗体を含まずにM−CSF及びsRANKLを含む培地で3日間培養した(図4d)。mAb 7Eとの初期インキュベーションは、破骨細胞の分化を有効に阻害した(mIgGコントロールに比べてP<0.01)(図4e及び4f)。ゆえに、IL−20抗体は、初期及び後期双方の破骨細胞の分化を遮断した。
【0154】
さらに、IL−20は、リウマチ性関節炎のCIAラットモデルの滑膜線維芽細胞におけるTNFa及びRANKLは誘導したが、健常なラットの滑膜線維芽細胞での発現は誘導しなかった。
【0155】
実施例5 M−CSFはHSCにおけるIL−20をアップレギュレートした
IL−20抗体 mAb 7Eは、骨髄由来のHSC由来の破骨細胞の分化を遮断した(図4)。HSCがIL−20を培養培地に分泌する可能性を試験するために、48時間M−CSFと予め培養、処置した骨髄由来のHSCにおけるIL−20の発現を調べた。リアルタイムPCR(RT−PCR)から、IL−20 mRNAはコントロールに比べてM−CSFで処置したHSCでより高いことが示され(図5a)、これは、IL−20がM−CSF刺激に応答して内因的に分泌された証拠である。RT−PCRでは、蛍光検出システム(DNA Engine Opticon 2; Bio-Rad)を用いたSYBR Green I(Bio-Rad)化学。蛍光−及び時間−に依存したシグナル生成を製造社のソフトウェアを用いて評価した。
【0156】
IL−20レセプターもまた、M−CSFで誘導されるOC前駆細胞で発現した。これらの結果から、IL−20がHSCで誘導される破骨前駆細胞にオートクリン作用することが示唆された。
【0157】
実施例6 骨髄細胞のM−CSFで誘導されるOC前駆細胞でのIL−20で誘導されるRANK発現
RANKL−RANKシグナルは破骨細胞の分化で重要である(Wada, T et al. (2006) Trends Mol Med 12:17-25)。RANKは、破骨細胞の表面で発現する。IL−20がRANKL−RANKシグナル伝達を向上することによって破骨細胞の分化を増加させるかどうかを調べるために、RANK発現を骨髄細胞のM−CSFで誘導されるOC前駆細胞で分析した。細胞をスクラッピングによって集め、0.5mg/ml 抗マウスRANK抗体(eBioscience)またはアイソタイプコントロール抗体と30分間インキュベートし、フルオレセインイソチオシアネート(FITC)と共役した二次抗体とインキュベートした後、フローサイトメーター(flow cytometer)(FACSCalibur; BD Biosciences)を用いて分析した。この際、2000個の事象を各サンプルで得た。
【0158】
フローサイトメトリー分析により、IL−20で処置されたM−CSFで誘導されるOC前駆細胞では、RANKタンパク質(図5b)及びRNAK mRNA(図5c)の表面発現が破骨前駆細胞でアップレギュレートしたことが示された。
【0159】
破骨細胞の分化へのmAb 7Eの阻害効果と一致して、mAb 7E処置はRANK転写物の発現(図5d)及びRANKタンパク質の表面発現双方を阻害した。M−CSFで誘導されるBMCを、M−CSF(50ng/ml)及びsRANKL(100ng/ml)を含むa−MEM中で所定の濃度のIL−20、mIgG、mAb7E、またはIL−20及びmAb 7E双方と共に、24時間培養した。RANK生産をアッセイするために、細胞をIL−20(200ng/ml)で刺激し、トリプシン処理した後、上記したのと同様にして、フローサイトメトリー分析のためにRANK(eBioscience)に対するPEと共役した抗体で染色した。これらの結果は、IL−20がRANK発現を増加させることにより破骨細胞形成サイトカインとして破骨前駆細胞に作用する証拠である。
【0160】
実施例7 IL−20は骨芽細胞をターゲットとし、RANKL発現をアップレギュレートした
骨芽細胞におけるRANKL発現の増加はまた、破骨細胞形成のカギとなる因子である(Jordan, WJ et al. (2005) Eur J Immunol 35:1576-1582)。RT−PCR分析(図6a)及び細胞化学染色(図6b)を用いて、骨芽細胞におけるIL−20の機能を明らかにした。双方のインビトロアッセイにより、IL−20及びその3つのレセプターサブユニットがMC3T3−E1骨芽細胞中で発現することが示された。幾つかのシグナル伝達タンパク質のリン酸化パターンを評価するために、MC3T3−E1細胞を、所定の時間、マウスのIL−20(200ng/ml)(R&DSystems, Minneapolis, MN, USA)で刺激した。ウエスタンブロッティングを、製造社の指示を用いてリン酸化ERK、AKT、STAT3、p38、及びJNK(Cell Signaling Technology)に特異的な抗体を用いて行った。図4cに示されるように、JNK、ERK、AKT、及びp38はIL−20で処理されたMC3T3−E1骨芽細胞でリン酸化されたことから、IL−20が骨芽細胞中で内因的に発現し、オートクリンで上記細胞中のシグナル伝達を引き起こすというより明らかな証拠が得られた。Th17がRAの誘導及び進行で重要であることが近年報告された。Thl7がRAの発症にかかわりがあることはIL−17で刺激される破骨細胞形成によるものである(Kotake, S, et al. (1999) . Clin. Invest. 103:1345-1352)。IL−17の転写物は、IL−20で処理したMC3T3−E1骨芽細胞でより高かった(図6d)。IL−20が骨芽細胞でRANKL発現を誘導することにより破骨細胞形成に寄与するか否かを決定するために、MC3T3−E1細胞をIL−20と共に培養し、リアルタイムPCR及びフローサイトメトリーを用いてRANKL発現を分析した。RANKL発現は、未処置コントロールでよりも、IL−20で処置した細胞で時間に依存してより高く、処置してから6時間でピークになった(図6e)。RANKLタンパク質の表面発現もまた、IL−20で処置したMC3T3−E1細胞でより高かった(図6f)。IL−20は、Thl7細胞に作用し、RANKLの放出を誘導した。さらに、IL−20及びIL−17は、よりRANKL発現を相乗的に誘導し、さらに、破骨細胞の分化を向上し、骨侵食を引き起こす。
【0161】
実施例8 IL−20抗体は骨芽細胞でのIL−20で誘導されるRANKL発現を阻害した
上記したように、RANKL発現は、未処置MC3T3−E1細胞でよりも、IL−20で処置した細胞でより高かった(図6e及び6f)。IL−20抗体 mAb 7EがIL−20で誘導されるRANKL発現を阻害することを確認するために、細胞をIL−20及びmAb 7Eで同時に処置した。リアルタイムPCRから、同時処置した細胞ではRANKL転写物は検出されないことが示された(図7)。これらの結果から、IL−20が骨芽細胞でのRANKL発現に対して上流のアクチベーター(upstream activator)であり、mAb 7EがIL−20で誘導されるRANKL発現を阻害することが示された。これらの結果から、IL−20が、インビトロで、骨芽細胞でのRANKLの上流のインデューサー(upstream inducer)であり、破骨細胞形成を促進するという強固な証拠が得られた。
【0162】
他の実施形態
本明細書に開示されるすべての態様は、いずれの組み合わせで併合されてもよい。本明細書に開示される各態様は、同じ、等価の、または同様の目的を果たす別の態様に置換されてもよい。ゆえに、特記されない限り、開示される各態様は、一連の等価のまたは同様の態様の一例にすぎない。
【0163】
前記発明を明確に理解するために詳細に説明することによっておよび実施例によっていくばくか詳細に説明してきたが、説明及び実施例によって本発明の範囲が制限されるおのではないと解されるべきである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
個体に有効量のIL−20アンタゴニストを投与することを有する、個体の骨粗鬆症の治療、骨粗鬆症の発症の遅延、または骨粗鬆症の予防方法。
【請求項2】
前記IL−20アンタゴニストは、IL−20またはその抗原結合断片に特異的に結合する抗体である、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記抗体またはその抗原結合断片は、ヒトIL−20(配列番号:6)に特異的に結合する、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記抗体またはその抗原結合断片は、ATCC No.PTA−8587を有するハイブリドーマによって発現される抗体の、軽鎖由来の3つの相補性決定領域および重鎖由来の3つの相補性決定領域を有する、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記抗体は、ヒト化抗体である、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記抗体は、キメラ抗体である、請求項4に記載の方法。
【請求項7】
前記キメラ抗体は、ATCC No.PTA−8587を有する細胞系によって生産される抗体由来の重鎖および軽鎖の可変領域配列を有する、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記抗体は、ヒト抗体由来の重鎖の定常領域配列および軽鎖の定常領域配列を有する、請求項6または7に記載の方法。
【請求項9】
前記抗体は、ATCC No.PTA−8587を有する細胞系によって生産される抗体由来の重鎖可変領域配列を有する、請求項3に記載の方法。
【請求項10】
前記抗体は、ATCC No.PTA−8587を有する細胞系によって生産される抗体由来の軽鎖可変領域配列を有する、請求項3に記載の方法。
【請求項11】
前記抗原結合断片は、Fab、Fab’、F(ab’)およびFvからなる群より選択され;また、前記抗原結合断片は、ATCC No.PTA−8587を有する細胞系によって生産される抗体の結合特異性を保持する、請求項4に記載の方法。
【請求項12】
前記IL−20アンタゴニストは、IL−20R1、IL−20R2またはIL−22R1の細胞外ドメインを有するポリペプチドであり、前記ポリペプチドは、前記IL−20に特異的に結合する、請求項1に記載の方法。
【請求項13】
前記IL−20アンタゴニストは、前記IL−20の発現を特異的に阻害するsiRNA、アンチセンスRNA、またはミクロRNA(microRNA)である、請求項1に記載の方法。
【請求項14】
前記骨粗鬆症は、炎症性疾患に関連する、請求項1に記載の方法。
【請求項15】
前記炎症性疾患は、リウマチ性関節炎である、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
前記骨粗鬆症は、エストロゲン欠乏に関連する、請求項1に記載の方法。
【請求項17】
前記エストロゲン欠乏は、更年期障害に関連する、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
前記骨粗鬆症は、アンドロゲン欠乏に関連する、請求項1に記載の方法。
【請求項19】
前記IL−20アンタゴニストは、他の治療剤と組み合わせて投与される、請求項1に記載の方法。
【請求項20】
前記治療剤は、TNFaアンタゴニストである、請求項19に記載の方法。
【請求項21】
前記TNFアンタゴニストは、エタネルセプトポリペプチド、インフリキシマブおよびアダリムマブからなる群より選択される、請求項20に記載の方法。
【請求項22】
前記エタネルセプトポリペプチドは、ヒト可溶性TNFレセプターおよびヒト免疫グロブリンG1のFc成分を含む融合タンパク質である、請求項21に記載の方法。
【請求項23】
IL−20アンタゴニストを含む、骨粗鬆症の治療、骨粗鬆症の発症の遅延、または骨粗鬆症の予防のためのキット。
【請求項24】
骨粗鬆症の治療、骨粗鬆症の発症の遅延、または骨粗鬆症の予防のためにIL−20アンタゴニストを使用するための指示書をさらに有する、請求項23に記載のキット。
【請求項25】
リウマチ性関節炎の治療が必要な患者に有効量のIL−20アンタゴニストおよび有効量のTNFaアンタゴニストを投与することを有する、リウマチ性関節炎の治療方法。
【請求項26】
前記IL−20アンタゴニストは、抗IL−20抗体である、請求項25に記載の方法。
【請求項27】
前記抗IL−20抗体は、American Type Culture Collectionに受託番号 PTA−8687で寄託されたハイブリドーマ細胞系によって生産されるmAb 7Eである、請求項26に記載の方法。
【請求項28】
前記抗IL−20抗体は、American Type Culture Collectionに受託番号 PTA−8687で寄託されたハイブリドーマ細胞系によって生産されるmAb 7Eの機能的な等価物である、請求項25に記載の方法。
【請求項29】
前記抗IL−20抗体は、American Type Culture Collectionに受託番号 PTA−8687で寄託されたハイブリドーマ細胞系によって生産されるmAb 7EのVおよびV領域を含む抗体である、請求項28に記載の方法。
【請求項30】
前記抗IL−20抗体は、1本鎖抗体またはキメラ抗体である、請求項28に記載の方法。
【請求項31】
前記抗IL−20抗体は、mAb 7Eのヒト化抗体である、請求項28に記載の方法。
【請求項32】
前記TNFaアンタゴニストは、エタネルセプトポリペプチド、インフリキシマブおよびアダリムマブからなる群より選択される、請求項25に記載の方法。
【請求項33】
前記エタネルセプトポリペプチドは、ヒト可溶性TNFレセプターおよびヒト免疫グロブリンG1のFc成分を含む融合タンパク質である、請求項32に記載の方法。
【請求項34】
前記抗IL−20アンタゴニストは、American Type Culture Collectionに受託番号 PTA−8687で寄託されたハイブリドーマ細胞系によって生産されるmAb 7EのVおよびV領域を含む抗体またはその機能的な等価物である、請求項33に記載の方法。
【請求項35】
前記抗IL−20抗体は、mAb 7Eのヒト化抗体である、請求項34に記載の方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate


【公表番号】特表2012−505227(P2012−505227A)
【公表日】平成24年3月1日(2012.3.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−531146(P2011−531146)
【出願日】平成21年10月7日(2009.10.7)
【国際出願番号】PCT/US2009/059865
【国際公開番号】WO2010/042634
【国際公開日】平成22年4月15日(2010.4.15)
【出願人】(510229072)ナショナル チェン クン ユニバーシティ (2)
【Fターム(参考)】