説明

リサイクルPETペレットの製造方法、ペレット及びそれを用いた成形品

【課題】使用済みペットボトルから得られるリサイクルPETペレット及びそのペレットを主原材料とするリサイクル成形品を、効率的かつ低コストで製造することができると共に、耐衝撃性があり、含水率が低いペレットや成形品及びその製造方法を提供する。
【解決手段】キャップ付又はキャップ無しのリサイクルペットボトルをフレークにしたリサイクルPET(ポリエチレンテレフタレート)を主原料とした非PET材混合のプラスチック原料と、相溶化剤とを混合して供給1し、これを押出成形機2により混練するとともに押し出し成形し、この押し出し成形された溶融状態のプラスチック材料3を、当該プラスチック材料の融点以下の乾燥温度に設定された熱乾燥手段を備えたコンベア装置6を通して乾燥させ、その乾燥されたプラスチック成形品をカットしてペレット化する、又はこのペレットを用いて成形機11により再生成形品として成形することにより製造する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、使用済みペットボトルをフレーク化したリサイクルPET(ポリエチレンテレフタレート)を主原料としてペレット化したリサイクルPETペレットの製造方法、その製造方法により製作されたペレットを原材料として成形品を製作する再生成形品の製造方法及び当該方法により生産された再生成形品に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、ペットボトルをはじめとするプラスチック製品の使用は甚大であり、環境問題やエネルギー資源問題の観点からも、使用済みプラスチックス製品の回収、リユース、リサイクルを行うことは非常に重要な社会問題の一つである。しかしながら、プラスチックスのリサイクル方法には、マテリアルリサイクルやケミカルリサイクル、サーマルリサイクルなどがあるが、従来法では、いずれもリサイクル時の過度のエネルギー消費やリサイクル製品の物性低下などの問題があった。例えば、熱可塑性ポリマーであり、重縮合反応により生成されたポリマーのマテリアルリサイクルにおいては、リサイクル時の水分の影響により、力学物性が低下する問題があった。
【0003】
そこで、リサイクル製品の物性低下を防止するための対策が種々提案されている。例えば、リサイクルPET樹脂を原料とし、改質材を添加して成形する方法において、フレーク、ペレット等のリサイクルPET樹脂原料を加熱乾燥して成形する際に、改質材の融着現象(ブリッジ現象)を防止し、成形をスムーズに達成し得るものが提案されている(例えば、特許文献1)。この文献では、リサイクPETペレットを成形時の原材料として使用する際において、対策を施したものである。
【0004】
また、ペットボトル等のリサイクル製品の使用時に、その耐久性の対策を施したものも提案されている(例えば、特許文献2)。これは、使用済みペットボトルから得られるリサイクルPETを利用した暗渠管において、リサイクルPETを主素材として、耐薬品性を有する被覆材との組合せや、その際に相溶化剤を用いてアロイ化する等により、劣化し難い耐久性に優れたものを提供しようとするものである。
【0005】
また、2種類の高分子の共重合体を形成するための添加剤としての相溶化剤は、特に、種類が異なるリサイクルプラスチック材料をブレンドしてリサイクル成形品を製作する場合、不可欠なものとして注目されていた(非特許文献1)。
【0006】
一方、リサイクル、再処理を意識したペットボトルとして、特にキャップ部の形状に工夫を施したものも提案されている(例えば、特許文献3)。また、回収した使用済みペットボトルから、本体とキャップを、分離、分別するための装置に関するものも、種々提案されている(例えば、特許文献4,5)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2001−261880号公報
【特許文献2】特開2007−204954号公報
【特許文献3】特開2002−370760号公報
【特許文献4】特開2002−292630号公報
【特許文献5】特開2007−276258号公報
【非特許文献】
【0008】
【非特許文献1】「プラスチックの相溶化剤と開発技術―分類・評価・リサイクル―」,(株)シーエムシー出版,編集:秋山三郎 1999年5月発行
【非特許文献2】Markku Heino, Jouni Kirjava, et al., Journal of Applied PolymerScience, vol.65(1997)pp.241-249.
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
前述のように、使用済みペットボトルのリサイクルに関連して、そのリサイクルプラスチックの再生成形品の品質改善等に向けた種々の対策や取り組みが行われているが、使用済みペットボトルの回収における現状は、原材料を可能な限り分別して使用するという観点から、PETにより製作されたペットボトル本体とPP(ポリプロピレン)等により製作されたボトルキャップとの分別を行わなければならず、その回収は、煩雑、かつ分別コスト、時間がかかるという問題があり、効率的なリサイクル方法とは言えなかった。このため、分別されずに回収した後、埋め立て処理されることもあり、回収後の用途等についても不明瞭であるため、消費者の環境問題およびリサイクルへの問題意識の関心が阻害されるという問題があった。
【0010】
本発明は、このような従来の問題を解決するものであり、使用済みペットボトルから得られるリサイクルPETペレット及びそのペレットを主原材料とするリサイクル成形品を効率的かつ低コストで製造することができると共に、その耐衝撃性があり、含水率が低いペレットや成形品及びその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は、前記課題を解決するために、リサイクルペットボトルをフレークにしたリサイクルPET(ポリエチレンテレフタレート)を主原料とした非PET材混合のプラスチック原料と、相溶化剤とを混合して供給し、これを押出成形機により混練するとともに押し出し成形し、この押し出し成形された溶融状態のプラスチック材料を、当該プラスチック材料の融点以下の乾燥温度に設定された熱乾燥手段を備えたコンベア装置を通して乾燥させ、その乾燥されたプラスチック成形品をカットしてペレット化することによりリサイクルPETペレットを製造するものである。
【0012】
また、第2の課題解決手段は、前記フレークにしたリサイクルPETを主原料とするプラスチック原料に、非PET材であるリサイクルペットボトルのボトルキャップを含んでリサイクルPETペレットを製造するものである。
【0013】
また、第3の課題解決手段は、前記フレークにしたリサイクルPETとして、ボトルキャップを取り外したPETを用い、このリサイクルPETに非PET材を混合して、非PET材混合のプラスチック原料とし、リサイクルPETペレットを製造するものである。
【0014】
また、第4の課題解決手段は、前記非PET材として、PP(ポリプロピレン)を用いて、リサイクルPETペレットを製造するものである。
【0015】
また、第5の課題解決手段は、前記非PET材混合のプラスチック原料に対し、相溶化剤を、少なくとも1phr以上添加して、リサイクルPETペレットを製造するものである。
【0016】
また、第6の課題解決手段は、前記相溶化剤として、極性基および非極性基を併せ持つブロック共重合体を使用することを要旨とする。
【0017】
また、第7の課題解決手段は、以上のリサイクルPETペレットの製造方法に基づいて製造されたリサイクルPETペレットである。
【0018】
また、第8の課題解決手段は、キャップ付リサイクルペットボトルをフレークにしたリサイクルPETを主原料とした非PET材混合のプラスチック原料と、相溶化剤とを混合して供給し、これを押出成形機により混練するとともに押し出し成形し、この押し出し成形された溶融状態のプラスチック材料を、当該プラスチック材料の融点以下の乾燥温度に設定された熱乾燥手段を備えたコンベア装置を通して乾燥させ、その乾燥されたプラスチック成形品をカットしてペレット化し、更に、当該リサイクルPETペレットを原材料として、単独又は他のペレット原材料とブレンドし、成形機によって所定の再生製品に成形することにより、リサイクルPETに基づいて製作された再生成形品の製造方法である。
【0019】
また、第9の課題解決手段は、手段8に記載の製造方法に基づいて製造されたリサイクルPETに基づいて製作された再生成形品である。
【発明の効果】
【0020】
前述したように本発明のリサイクルPETペレットの製造方法は、使用済みペットボトルをフレーク化したものをペレット化するに際し、PET単独ではなく、非PET材を混合してプラスチック原料とすることができるため、使用済みペットボトルの回収時には非PET材であるボトルキャップを取り外す必要がないので、その分別に関する時間やコストが必要でなく効率的な回収が可能となる。
【0021】
また、この製造方法では、リサイクルPETを主原料とした混合プラスチック原料を相溶化剤と共に混練するので、種類が異なる非PET材混合のプラスチック原料にもかかわらず、混練された成形品は、耐衝撃性、強度、接着性の改質等に優れたリサイクルPETペレットが得られる。
【0022】
また、混練し成形して乾燥する段階で、押し出し成形された溶融状態のプラスチック材料を、当該プラスチック材料の融点以下の乾燥温度に設定された熱乾燥手段を備えたコンベア装置を通して乾燥させることにより、徐冷により乾燥させることができ、その結果製作されたリサイクルPETペレットは、ポリマーの結晶化度が上がり、含水率が低い、品質が安定したリサイクルPETペレットとなる。
【0023】
また、前記非PET材を混合したプラスチック原料は、ペットボトルのボトルキャップを取り外したPET材のみのリサイクルPET材の場合でも、他のPP等の非PET材と混合することにより、同様の効果を得ることができる。
【0024】
また、このリサイクルPETペレットを使用し、製品に対応して単独又は他のペレット原材料とブレンドし、成形機によって所定の再生製品に成形することにより、含水率が低い、耐衝撃性、強度、接着性の改質等に優れた成形品が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】本発明製造方法の実施のための製造工程図
【図2】従来製造方法の実施のための製造工程図
【図3】ペレット内部構造を説明するためのイメージ図で、(a)図は本実施例を示すイメージ図、(b)図は従来例を示すイメージ図
【図4】実施例と従来例におけるペレットの含水率と乾燥時間の関係を示す特性図
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、図1に基づいて、本発明におけるリサイクルPETペレットの製造方法の実施の形態の概要について、説明する。
【0027】
図1は、本発明製造方法の実施形態を説明するための概略を示す製造工程図である。図において、1は原料の供給機であり、リサイクルペットボトルをフレークにしたリサイクルPETを主原料とした非PET材混合のプラスチック原料と、相溶化剤とを混合して供給する。2は成形機であり、供給機1で混合して供給されたプラスチック原料を混練すると共に押し出し成形する。この押出成形機2より押し出し成形された溶融状態のプラスチック材料3は、次工程のアニーリングベルトコンベア4とヒートファン5を有する徐冷乾燥工程のコンベア装置6の中に搬送され、ここで溶融状態のプラスチック材料3は徐冷されて、このコンベア装置6の出口までに乾燥される。ここで乾燥されたプラスチック材料3は、次工程のペレット化工程である粉砕機7で所定の大きさにカッティングされることにより、リサイクルPETペレットとして製造される。
【0028】
そして、以上のようにして製作されたリサイクルPETペレットは、搬送手段8により、ブレンド工程9において、目的とする最終成形品の形態や物性に応じて、他のプラスチック材料ペレットとブレンドされ、成形直前の乾燥工程であるピッコロ乾燥機10による乾燥の後、超高速射出成形機11によって所定の形状に成形され、使用済みペットボトルを利用した再生成形品として搬出12される。
【0029】
前述の供給機1に供給される非PET材混合のプラスチック原料は、後述する相溶化剤との混合を条件として、非PET材であるリサイクルペットボトルのボトルキャップを混合したままフレーク化したものを含むものである。一般に、使用されているペットボトルの本体はPETを材料として形成されているが、ペットボトルキャップはPP(ポリプロピレン)等の非PET材であるため、使用済みペットボトルをリサイクルする際には、純度を高めるための原材料の分別の観点から、通常は、ボトルキャップはボトル本体から取り外して回収され、個別のプラスチック材料としてペレット化して利用されている。本実施形態では、後述する実施例の実験結果に基づき、このペットボトルのボトルキャップをボトル本体のPETと分離することなくそのまま回収してフレーク化したものを、PETを主原料とした非PET材混合のプラスチック原料として利用可能としたものである。
【0030】
ここで、現在、一般に使用されているペットボトルのボトルキャップは、重量比で示すと、PET本体に対する割合が、5〜10%である(これは、キャップの大きさがほぼ一定であるものに対して、本体は、メーカや種類によって大きさが異なるものや厚みが異なるものがあるため、必ずしも一定ではない。)。従って、本実施形態では、使用済みペットボトルのキャップを取り外した純粋な本体のみのPETと、PP等の非PET材との混合であっても、その割合が、PETの95〜90%に対して、非PET材が5〜10%であれば同等の物性を有するものとして利用することができる。すなわち、本実施形態における非PET材混合のプラスチック原料は、使用済みペットボトルのボトルキャップを本体のPETと分離することなくそのまま回収してフレーク化したものと、使用済みペットボトルのキャップを取り外した純粋な本体のみのPETにPP等の非PET材を混合したものを含む。
【0031】
次に、供給機1に非PET材混合のプラスチック原料と共に供給される相溶化剤は、PET材とPP等非PET材との共重合体を形成するために添加されるもので、PET材に混合される非PET材の種類に適合した相溶化剤を使用する必要がある。これは、ペットボトルの種類(特にボトルキャップの原材料等)や、純粋PET材に混合される非PET材の種類等により、高分子共重合体を形成する状態が異なるため、最も適合する特性を有する相溶化剤を選択すればよい。
【0032】
ここで、PET材とPP材との混合の場合、相溶化剤は、好ましくは例えばスチレン(Aとする)とエチレンブチレン(Bとする)の様なA−B−A型のブロック共重合体で、
主成分がPET、副成分がPPの場合 → A:極性基、B:非極性基
主成分がPP、副成分がPETの場合 → A:非極性基、B:極性基
で、かつ、AとBの比重(Aは両末端の合計)がA<Bとなる様なブロックポリマーを利用すれば、PET材にPP材を混入したリサイクルペレット、またはPP材にPET材を混入したリサイクルペレットが、製造できる。これは、一般的に極性の異なる分子同士は均一に分散・混合しない性質を示すが、極性基と非極性基を併せ持つブロックポリマーを導入することにより、PET材とPP材との間で界面活性効果を発揮するためである。(非特許文献2参考)
【0033】
また、コンベア装置6による徐冷乾燥工程は、溶融状態のプラスチック材料3が徐冷されて、このコンベア装置6の出口までに乾燥されるようにしているが、ここで、乾燥温度は、この工程における熱でプラスチック材料3が融解しない温度、すなわち融点以下の温度であり、コンベア通過時間は、入口で溶融状態のプラスチック材料3が十分に乾燥されるのに必要な時間を要するものであれば良い。本実施形態におけるこの工程は、図2に示す従来のように溶融状態のプラスチック材料3aを水槽13で急激に冷却して固化するのに対して、溶融状態のプラスチック材料3をコンベア装置6で徐冷により乾燥して固化するものであり、この徐例により固化する徐冷乾燥工程により含水率が低いリサイクルPETペレットとすることができるものである。
【0034】
ここで、本実施形態で製作されたペレットの含水率が少なくなる理由について説明する。一般的に、熱可塑性プラスチックには、「結晶性」と「非晶性」の2種類があるが、これは合成方法にはよらず、ポリマーの分子構造に依存するものであり、PETは結晶性ポリマーである。この結晶性ポリマーの結晶化は、溶融状態から冷却されて固体状態へと変わる過程に生成され、その冷却過程における環境が結晶化度に大きく影響する。すなわち、冷却過程において、溶融状態から急激に冷却して固化させると結晶性ポリマーの結晶化度が低下し、溶融状態からゆっくり冷却して固化させると結晶性ポリマーの結晶化度が上がる。結晶性ポリマーの結晶していない部分は「非晶状態」であり、結晶化度が低いと密度が低くなり、分子鎖間などから大気中の水分を吸収しやすく、成形後のペレット等の含水率が高くなり、結晶化度が高いと密度が高くなり含水率が低くなる。
【0035】
また、この結晶の密度の違いは、前述した相溶化剤の有無も関係しており、この密度の違いによるペレット内部構造について、そのイメージ図として図3(a)(b)に示す。ここでは、非PET材としてPPを用いた場合の例であり、同図において、(a)図は本実施形態により製作されたペレットの内部構造をイメージ図として示し、(b)図は従来の方法により製作されたペレットの内部構造をイメージ図として示す。(a)図では、主原料のPET内部において、PPと相溶化剤が存在し、当該相溶化剤のPPに対する界面活性効果によりPPが微粒子を形成して均一に分散した状態となっているが、(b)図ではPPの粒子が大きく不均一となっている。また、図から明らかなように、(a)図では表面近傍においてPPと相溶化剤の微粒子が緻密に並んで結晶化度が高い層を形成しているが、(b)図ではPPが全体として不均一となっている。このため、(a)図では毛管現象による水分の浸透圧効果を防ぐ効果があり、含水率が増えるのを抑え、(b)図では毛管現象による水分の浸透により容易に含水率が増える。
【0036】
以上のことから、本実施形態では、原材料に相溶化剤を混合することと、熱乾燥手段を備えたコンベア装置を通して乾燥させることとの相乗効果により、製造されたリサイクルPETペレットは、非PET材(PP)が均一かつ緻密に分散した状態で充填されていると共に、表面近傍に結晶化度が高い層を形成していることがわかる。この結果、この方法により製作されたリサイクルPETペレットは、徐冷によりそれ自体が含水率が低いものであるばかりでなく、その後の水分の浸透も少なく含水率を増やさないものとなり、このペレットを利用して成形される再生成形品の含水率も低いものである。従って、この方法により得られたペレット及び再生成形品は含水率による物性の低下を防止できるものである。
【0037】
また、以上の内容から、本実施形態に用いられる基材としては、結晶性のポリマーであることが好ましく、上記乾燥工程において、熱化学反応を生じないものが好ましく、基材の持つ結晶化度の大きさの違いには依存しない。
【0038】
以上のように、本実施形態によれば、製造されたリサイクルPETペレット及び当該ペレットにより(単独又は他の種類のペレットとブレンドして)製作した成形品は、含水率が低く、吸水性も低いので、特に水を含みやすい環境下で使用されるような成形品、例えば、傘のキャップ、洗面器やバケツ、多湿環境で使用されるフック、食事用の箸等々の成形品に利用して有効である。
【実施例1】
【0039】
以上、本発明製造方法の実施形態について説明したが、次に、その具体的な実施例について説明する。以下、原材料から製作した成形品と、その成形品を試験片として行った力学試験方法及びその結果について説明する。
【0040】
まず、試験片としての成形品の製作について、その原材料、製造方法について説明する。本実施例で用いたリサイクルPETは、使用済みPETボトルのフレークである。また、フレークは、使用前に不純物を最小限にするために洗浄し、乾燥させた。ボトルキャップはボトル本体から取り外し、全て廃棄されるため、キャップからPP原料を得ることができない。そこで、リサイクルPPの代わりに、3種類のグレードのPPを使用した。各グレードは次の通りである。
【0041】
PP1:J700GP(MI=8, Mw=3.1x105)(H:高分子量PP)
PP2:J900GP(MI=13, Mw=2.3x105)(M:中分子量PP)
PP3:J3000GP(MI=30, Mw=1.9x105)(L:低分子量PP)
【0042】
これらPPは株式会社プライムポリマーから購入し、リサイクルPETと混練し、使用した。リサイクルPET/PP比は、95/5と、90/10で行った。これは、実際のPETボトルとボトルキャップの重量比に基づいて設定した。また、相溶化剤として、極性基変性スチレン・(エチレン・ブチレン)・スチレントリブロック共重合体(以下、SEBSと記す)を使用し、添加量は1phr、3phr、5phrおよび7phrとした。(phr:樹脂100%に対しての添加量)また参照サンプルとして、相溶化剤なしのブレンド試料も製作した。
【0043】
そして、前述した実施の形態で説明した図1に示す製造工程に基づいて、ダンベル試験片を成形品として製作した。
【0044】
まず、ブレンドを行う前に、リサイクルPETを120℃、5時間、除湿乾燥機中で乾燥させた。そして、リサイクルPETとPPをドライブレンドして、その後、供給機1を介して、押出成形機2に供給し、スクリュー温度265〜290℃、スクリュー回転速度30m/minに設定した、一軸スクリュー押出機(SRV−P500、日本油機社製)を使って混練した。押出された溶融状態のプラスチック材料3は、ペレット化前にコンベア装置6を通して徐冷乾燥さ、粉砕機7でペレット化した。その後、粉砕機7で製作されたペレットは、80℃、5時間、ピッコロ乾燥機(五和工業社製)10を用いて乾燥させた。そして、射出成形機11として50トン射出成形機(PO YUEN Machinery FTD)を用いて、ダンベル試験片を製作した。ここで、本実施例で使用した金型は、長さ175mm、中央部幅10mm、厚さ3mmのダンベル形状キャビティーのものを使用し、ゲージ長さは115mmであった。また、射出成形樹脂温度、金型温度、射出速度はそれぞれ270℃、30℃、100mm/sであった。
【0045】
前述の実施例で製作された射出成形品としてのダンベル試験片の引張試験は、万能試験機(Instron 4466, INSTRON USA)を用いて、ASTM D638に従って、引張速度50mm/minで行った。この試験では、ノッチ有り・無し試験片のIzod衝撃強度を測定するために東洋精機社製、DG−1Bを用いてIzod衝撃試験を行ったが、ダンベル試験片から、10×6×3mmのサイズに切り出して使用した。ノッチ深さは2mm、ノッチ角度は45度に設定した。また試験は5サンプル以上で行い、衝撃強度を平均して算出した。
【0046】
次に、表1に基づき、前述の力学試験結果について説明する。表中のデータ系列は5列あるが、第1列は「A1〜A5」及び「B1〜B5」の「サンプル」、第2列は各サンプルの「リサイクルPETの重量比」、第3列は各サンプルの「PPの重量比」、第4列は各サンプルの「相溶化剤の添加量」、第5列はIzod衝撃試験を行った結果の破壊衝撃エネルギーを示している。ここで、リサイクルPETとPP、および相溶化剤との配合比は、たとえば、サンプルA1〜A5の場合、リサイクルPET=95グラムに対して、PP=5グラム混合し、相溶化剤を添加なし(0),1,3,5,7phr添加したサンプルであることを示している。また、サンプルB1〜B5の場合、リサイクルPET=90グラムに対して、PPを=10グラム混合し、相溶化剤を添加なし(0),1,3,5,7phr添加したサンプルであることを示している。また、第5列に示すIzod衝撃試験を行った結果の衝撃エネルギーの値は、この数値が大きい方が、強い衝撃に耐えられるということを示し、逆に値が小さいほど衝撃を与えた際に壊れやすいということを示しており、この表中の「NB」は破壊しないということを示している。なお、本試験では、ノッチ有り・無しについて行ったが、PETとPP及び相溶化剤を混合した成形品では、ノッチありのサンプルでは、Izod衝撃強度に差が見られなかった。表1ではノッチなしのデータのみ記載している。
【0047】
【表1】

【0048】
この表1から、前述した実施例に基づいて製作された成形品サンプルは、相溶化剤をPETとPPの材料に3phr以上添加することによって、製作したサンプル試験片が破壊しなくなったということがわかる。また、相溶化剤を1phrのみ添加した場合においても、添加していない場合と比較して、Izod衝撃値が大きくなっていることがわかる。すなわち、本実施例で用いた相溶化剤を、PETおよびPPと共にブレンドすることにより、衝撃特性を飛躍的に向上させることが可能であることがわかる。また、PETとPPの重量比を異ならせたサンプル「A1〜A5」と「B1〜B5」においても、相溶化剤を3phr以上添加する場合、特に差がないことがわかる。
【0049】
次に、図4に基づき、前述の実施例により製作されたリサイクルPETペレットの含水率について説明する。
【0050】
縦軸にサンプルペレット中に含まれる水分量(重量%:100グラムのサンプル中、何グラム含まれているかであり、例えば0.2ならば100グラム中0.2グラムの水分が含まれていることを示している。)、横軸にペレットサンプルの乾燥機での乾燥時間を取り、乾燥時間の増加に伴う含水率の変化を表している。図では、本実施例で製作したリサイクルPETペレットを「□」(本実施サンプル)、一般的な製造工程で製作したリサイクルPETペレットを「■」(従来サンプル)で示している。
【0051】
本実施例で製作したサンプルも従来例で製作したサンプルも、乾燥時間の増加に伴って、ペレット中の含水率が低下していることがわかる。また、乾燥なし(0min:ペレット製作後1週間経過後)においても、本実施例で製作したリサイクルPETペレットの含水率は、一般的な製法と比較して、約半分の0.11%であることがわかる。これより本実施例における製法では含水率が低いため、リサイクルPET製品を成形(製作)する際に、原材料中に含まれる水分によって成形品の物性低下を生じにくくさせる、すなわち物性向上につながる。
【0052】
以上、具体的な実施例に基づき製作されたペレットに基づき成形された試験片の試験結果から、前述した実施の形態で説明した作用効果が裏付けられた。
【0053】
そして、実施例の結果から明らかなことは、リサイクルPETに対するPPの重量比が5%でも10%でも大きな差異は無く、また、相溶化剤の添加の混合比については好ましくは3phr以上、従来品と単純比較すれば1phr以上あればその効果が得られるというものである。
【0054】
実際の使用済みペットボトルについて着目した場合、ボトルキャップの大きさが同じで、ボトル本体は大きさと厚みが異なるものがあるので、その回収されたペットボトルの種類や大小の量によって、ボトルキャップ付のペットボトルをフレーク化した場合、そのリサイクルPETを主原料とした非PET材混合のプラスチック原料におけるPPの重量比が特定はできないが、ペットボトルの現状を考慮に入れた場合、その重量比は、ほぼ5%〜10%に入り、前述のように、その作用効果に差異はない。
【0055】
また、前述の実施例では、使用済みペットボトルの不純物を最小限にしたリサイクルPETと、別途、準備したPPとを原材料としているので、当然こととして、ボトルキャップを取り外したリサイクルPETと非PET材との混合であっても、本発明は含むものである。
【産業上の利用可能性】
【0056】
PETを主原料として製作された使用済みペットボトルを回収して再利用する際に、そのボトルキャップがPET材と異なるプラスチック材料であるPP等により製作されていたとしても、分別することなくフレーク化したリサイクルPETを主原料として、これをペレット化するリサイクルPETペレットの製造方法や、その製造方法により製作されたペレットを原材料として成形品を製作する再生成形品の製造方法、及び当該方法により生産された再生成形品等に利用でき、使用済みペットボトルの種類や大小、非PET材を使用したボトルキャップの材料に限定されることなく、利用可能である。
【符号の説明】
【0057】
1 原料の供給機
2 成形機
3 溶融状態のプラスチック材料3
4 アニーリングベルトコンベア
5 ヒートファン
6 コンベア装置
7 粉砕機
8 搬送手段
9 ブレンド工程
10 ピッコロ乾燥機
11 超高速射出成形機


【特許請求の範囲】
【請求項1】
リサイクルペットボトルをフレークにしたリサイクルPET(ポリエチレンテレフタレート)を主原料とした非PET材混合のプラスチック原料と、相溶化剤とを混合して供給し、これを押出成形機により混練するとともに押し出し成形し、この押し出し成形された溶融状態のプラスチック材料を、当該プラスチック材料の融点以下の乾燥温度に設定された熱乾燥手段を備えたコンベア装置を通して乾燥させ、その乾燥されたプラスチック成形品をカットしてペレット化することにより製造することを特徴とするリサイクルPETペレットの製造方法。
【請求項2】
前記フレークにしたリサイクルPETを主原料とするプラスチック原料に、非PET材であるリサイクルペットボトルのボトルキャップを含むことを特徴とする請求項1に記載のリサイクルPETペレットの製造方法。
【請求項3】
前記フレークにしたリサイクルPETは、ボトルキャップを取り外したPETであり、このリサイクルPETに非PET材を混合して、非PET材混合のプラスチック原料としたことを特徴とする請求項1に記載のリサイクルPETペレットの製造方法。
【請求項4】
前記非PET材は、PP(ポリプロピレン)であることを特徴とする請求項3に記載のリサイクルPETペレットの製造方法。
【請求項5】
前記非PET材混合のプラスチック原料に対し、相溶化剤を、少なくとも1phr以上添加することを特徴とする請求項1〜4に記載のリサイクルPETペレットの製造方法。
【請求項6】
前記相溶化剤は、極性基および非極性基を併せ持つブロック共重合体を使用することを特徴とする請求項1〜4に記載のリサイクルPETペレットの製造方法。
【請求項7】
請求項1〜6に記載のリサイクルPETペレットの製造方法に基づいて製造されたリサイクルPETペレット。
【請求項8】
キャップ付リサイクルペットボトルをフレークにしたリサイクルPETを主原料とした非PET材混合のプラスチック原料と、相溶化剤とを混合して供給し、これを押出成形機により混練するとともに押し出し成形し、この押し出し成形された溶融状態のプラスチック材料を、当該プラスチック材料の融点以下の乾燥温度に設定された熱乾燥手段を備えたコンベア装置を通して乾燥させ、その乾燥されたプラスチック成型品をカットしてペレット化し、
更に、当該リサイクルPETペレットを原材料として、単独又は他のペレット原材料とブレンドし、成形機によって所定の再生製品に成形することを特徴とするリサイクルPETに基づいて製作された再生成形品の製造方法。
【請求項9】
請求項8に記載の製造方法に基づいて製造されたリサイクルPETに基づいて製作された再生成形品。


【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図4】
image rotate

【図3】
image rotate


【公開番号】特開2011−6521(P2011−6521A)
【公開日】平成23年1月13日(2011.1.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−149223(P2009−149223)
【出願日】平成21年6月23日(2009.6.23)
【出願人】(509140412)株式会社S−company (2)
【Fターム(参考)】