説明

リザーバタンク接続用コネクタ、これを備えるマスタシリンダ、およびこのマスタシリンダを用いたブレーキ装置

【課題】ホース接続部と搬送用治具との干渉を抑制することのできるリザーバタンク接続用コネクタを提供する。
【解決手段】マスタシリンダに装着されるコネクタ本体と、コネクタ本体の長辺縁から突出して設けられ、かつリザーバタンクに接続されたホースが接続されるホース接続用管体6bと、コネクタ本体に設けられ、かつ搬送用治具によりコネクタ本体を支持する際に搬送用治具に干渉するのを抑制する干渉防止部である搬送アームガイド部6fとを有する。搬送用治具の搬送アーム18bが搬送アームガイド部6fに当接してコネクタ本体を支持したとき、搬送アームガイド部6fにより搬送アーム18bはホース接続用管体6bに干渉しない。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、油圧等の液圧を利用した液圧ブレーキ装置等の液圧作動装置に用いられ、マスタシリンダから離間して配設されかつ作動液を貯留するリザーバタンクを、このマスタシリンダにホースを介して接続するためのリザーバタンク接続用コネクタの技術分野、およびこれを備えるとともに液圧を発生するためのマスタシリンダ、およびこのマスタシリンダを用いたブレーキ装置の技術分野に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、自動車等の車両においては、液圧を利用した液圧作動装置として液圧ブレーキ装置を採用した車両がある。この液圧ブレーキ装置には、液圧を発生させるマスタシリンダが用いられているとともに、このマスタシリンダに供給する作動液を貯留するリザーバタンクが用いられている。
【0003】
このリザーバタンクおよびマスタシリンダを用いた従来の液圧ブレーキ装置として、マスタシリンダから離間して配設されたリザーバタンクをマスタシリンダにホースの一端が連結されるとともに、マスタシリンダに取り付けられた樹脂製のリザーバタンク接続用コネクタにホースの他端が連結された液圧ブレーキ装置が知られている(例えば、特許文献1参照)。なお、特許文献1には、リザーバタンク接続用コネクタはリザーバユニオンと表記されている。
【0004】
この特許文献1に記載のリザーバタンク接続用コネクタは、長手方向がマスタシリンダの軸方向となる長いほぼ扁平な本体と、本体の上面に一体に、この本体の長手方向と直交する側に本体の長辺縁から大きく突出して設けられるとともに、前述のホースの他端が連結されるL字状のホース連結用管体と、本体に一体に、本体の下面から下方に突出して設けられるとともに、マスタシリンダのボス部に直接連結されるシリンダ連結用管体とを有している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2004−243853号公報。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、リザーバタンク接続用コネクタをマスタシリンダに取り付けるために、従来、保管場所にあるリザーバタンク接続用コネクタを自動搬送ロボットの搬送アーム(搬送用治具)で把持してマスタシリンダの配置場所まで搬送することが行われている。自動搬送ロボットでリザーバタンク接続用コネクタを搬送する場合、リザーバタンク接続用コネクタを安定して搬送するとともにリザーバタンク接続用コネクタを水平状態にしてシリンダ連結用管体をマスタシリンダのボス部に対して傾かずバランスよくする必要がある。そのためには、自動搬送ロボットの搬送アームで本体の両側の長辺縁側を把持して搬送することが望ましい。
【0007】
しかしながら、特許文献1に記載のリザーバタンク接続用コネクタでは、L字状のホース連結用管体が本体の長辺縁から大きく突出している。このため、コネクタ搬送ロボットの搬送アームで把持して本体の長辺縁を把持しようとすると、この搬送アームがL字状のホース連結用管体に干渉(つまり、接触)する可能性が考えられる。搬送アームがホース
連結用管体に干渉すると、搬送アームの当接力で樹脂製のホース連結用管体に傷や打痕が生じたり、ホース連結用管体が白く濁る白化現象が生じたりすることが考えられる。
【0008】
しかも、特許文献1には、リザーバタンク接続用コネクタを搬送する際のL字状のホース連結用管体と搬送用治具との干渉について記載されていないばかりでなく、搬送用治具によるリザーバタンク接続用コネクタの搬送自体についてさえ、まったく記載されていない。すなわち、特許文献1に記載のリザーバタンク接続用コネクタでは、ホース連結用管体と搬送用治具との干渉についてはまったく考慮されていない。
【0009】
本発明はこのような事情に鑑みてなされたものであって、その目的は、ホース接続部と搬送用治具との干渉を抑制することのできるリザーバタンク接続用コネクタ、これを備えるマスタシリンダ、およびこのマスタシリンダを用いたブレーキ装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
前述の課題を解決するために、本発明のリザーバタンク接続用コネクタは、マスタシリンダに装着されるコネクタ本体と、前記コネクタ本体の縁から突出して設けられ、かつリザーバタンクに接続されたホースが接続されるホース接続部と、前記コネクタ本体に設けられ、かつ搬送用治具により前記コネクタ本体を支持する際に前記搬送用治具に干渉するのを抑制する干渉防止部とを少なくとも有することを特徴としている。
【0011】
また、本発明のリザーバタンク接続用コネクタは、前記コネクタ本体が矩形状またはほぼ矩形状に形成され、前記ホース接続部が前記コネクタ本体の上部から延設されかつ前記コネクタ本体の一側の長辺縁より外方に突出し、前記干渉防止部が前記一側の長辺縁に沿って設けられ、かつ前記搬送用治具の搬送アームをガイドする搬送アームガイド部であることを特徴としている。
【0012】
更に、本発明のリザーバタンク接続用コネクタは、前記搬送アームガイド部が、前記ホース接続部が突出する前記コネクタ本体の一側の長辺縁に沿って設けられ、かつ前記搬送用治具の第1の搬送アームをガイドする第1の搬送アームガイド部を有するとともに、前記ホース接続部が突出しない前記コネクタ本体の他側の長辺縁に沿って設けられ、かつ前記搬送用治具の前記第2の搬送アームをガイドする第2の搬送アームガイド部を有し、前記第1の搬送アームが傾斜面で形成された第1の支持面を有するとともに前記第2の搬送アームが傾斜面で形成された第2の支持面を有し、前記第1および第2の支持面の各傾斜面は全体にほぼV字状を形成し、前記第1の搬送アームガイド部は前記第1の支持面が当接される傾斜した第1の被支持面を有するとともに、前記第2の搬送アームガイド部は前記第2の支持面が当接される傾斜した第2の被支持面を有し、前記第1および第2の被支持面の各傾斜面は全体にほぼV字状を形成することを特徴としている。
【0013】
更に、本発明のリザーバタンク接続用コネクタは、前記第1の搬送アームガイド部が前記コネクタ本体の上部から突設され、かつ前記ホース接続部が突出する領域以外の前記一側の長辺縁に沿って分割して設けられることを特徴としている。
【0014】
また、本発明のマスタシリンダは、シリンダ本体と、前記シリンダ本体内に液密にかつ摺動可能に挿入されて液圧室を形成し、かつ作動時に前記液圧室に液圧を発生するピストンと、前記シリンダ本体に設けられ、かつ前記液圧室に常時連通する作動液供給孔と、前記作動液供給孔に装着されてリザーバタンクの作動液を前記作動液供給孔に供給するリザーバタンク接続用コネクタとを少なくとも有し、前記リザーバタンク接続用コネクタが、前述の本発明のリザーバタンク接続用コネクタのいずれか1つであることを特徴としている。
【0015】
更に、本発明のブレーキ装置は、作動液を貯留するリザーバタンクと、前記リザーバタンクにホースを介して接続されるリザーバタンク接続用コネクタを有し、かつ前記リザーバタンク内の作動液が前記ホースおよび前記リザーバタンク接続用コネクタを介して供給されるとともに作動時にブレーキ圧を発生するマスタシリンダと、前記マスタシリンダからの液圧で作動するブレーキシリンダとを少なくとも備え、前記マスタシリンダが前述の本発明のマスタシリンダであることを特徴としている。
【発明の効果】
【0016】
このように構成された本発明のリザーバタンク接続用コネクタによれば、このリザーバタンク接続用コネクタは、搬送用治具がコネクタ本体の縁から突出するホース接続部に干渉するのを抑制する干渉防止部を有している。したがって、リザーバタンク接続用コネクタの搬送時に、この干渉防止部により、搬送用治具がホース接続部に接触するのをより確実に抑制することが可能となる。これにより、搬送用治具の当接力でホース接続部に傷や打痕が生じるのを抑制することが可能となるとともに、ホース接続部とホースとの間のシール性が向上する。特に、コネクタ本体とホース接続部とを樹脂で一体成形してリザーバタンク接続用コネクタを形成した場合には、搬送用治具の当接力でホース接続部が白く濁る白化現象が生じるのを抑制することが可能となる。
【0017】
また、コネクタ本体の上部が矩形状またはほぼ矩形状に形成されるとともに、一対の搬送アームガイド部がそれぞれ対応する両側の長辺縁に沿って設けられて搬送用治具の一対の搬送アームをガイドする。したがって、両搬送アームの支持面が両長辺縁の搬送アームガイド部の被支持面を支持することにより、リザーバタンク接続用コネクタを安定して搬送することができる。
【0018】
更に、搬送アームが一対の第1および第2の搬送アームからなり、また搬送アームガイド部が、それぞれ対応する第1および第2の搬送アームをガイドする一対の第1および第2の搬送アームガイド部からなる。また、第1および第2の搬送アームは、それぞれ全体にほぼV字状を形成する第1および第2の支持面を有するとともに、第1および第2の搬送アームガイド部は、それぞれ全体にほぼV字状を形成する第1および第2の被支持面を有する。そして、第1および第2の支持面が、それぞれ対応する第1および第2の被支持面に当接して支持する。したがって、第1および第2の支持面がそれぞれ第1および第2の被支持面に当接支持した状態で、リザーバタンク接続用コネクタを、搬送用治具の中心に対してセンタリングして水平に保持することが可能となる。
【0019】
更に、ホース接続部がコネクタ本体の上部から延設されかつコネクタ本体の一側の長辺縁より外方に突出されている。また、第1および第2の搬送アームガイド部がコネクタ本体の上部から突設され、かつホース接続部が突出する領域以外の一側の長辺縁に沿って分割して設けられる。すなわち、ホース接続部が突出する領域の長辺縁には、上方に突出する第1の搬送アームガイド部は設けられない。したがって、ホース接続部を低くしてより長辺縁に接近させることが可能となる。これにより、コネクタ本体の長辺縁に上方に突出する第1の搬送アームガイド部を設けても、ホース接続部の高さを低く抑えることが可能であるとともに、ホース接続部の高さを低くしても、第1の搬送アームガイド部により第1の搬送アームとホース接続部との干渉を抑制することができる。このようにして、ホース接続部の高さを低くしつつ、第1の搬送アームとホース接続部との干渉を抑制することのできるリザーバタンク接続用コネクタを実現することができる。
【0020】
更に、リザーバタンクに接続されたホースが接続されるホース接続部の位置が低くなることから、ホースの接続位置をより下げることができる。これにより、ホースのレイアウトが容易となり、ホースの取り回し性を良好にすることができる。
更に、搬送アームガイド部が、ホース接続部が突出する領域の長辺縁を除いて分割して設けられることから、ホース接続部を拡張することが可能となる。
【0021】
更に、搬送アームガイド部を上方に突設させることで、リザーバタンク接続用コネクタのコネクタ本体の平板状の上部を薄肉にすることが可能となる。これにより、リザーバタンク接続用コネクタの樹脂成形の際の収縮時に曲がり変形等の変形がし難い。特に、コネクタ本体の上部の周縁に周壁を下方に突出させてコネクタ本体を直方体状に形成することで、樹脂成形時の収縮による変形を効果的に抑制することができる。
【0022】
更に、搬送アームガイド部が分割して設けられることから、コネクタ本体またはホース接続部に設けられるとともにホース接続部に嵌合されるホースの先端を位置決めするホースストッパーの位置設定が容易となる。
【0023】
また、本発明のリザーバタンク接続用コネクタを備えるマスタシリンダによれば、リザーバタンク接続用コネクタの高さを抑制できることから、リザーバタンク接続用コネクタを装着した状態のマスタシリンダを小型コンパクトに形成できる。これにより、設置スペースが制限されるエンジンルーム内の他の部品とマスタシリンダとの干渉を抑制できる。したがって、その分、マスタシリンダの配置の自由度を高くできる。
一方、本発明のマスタシリンダを備えるブレーキ装置によれば、マスタシリンダの配置の自由度を高くできることから、ブレーキ液圧配管の取り回し自由度を向上できる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】本発明に係る本発明に係るリザーバタンク接続用コネクタの実施の形態の一例を備える液圧ブレーキ装置を模式的に示す図である。
【図2】リザーバタンク接続用コネクタが装着されたマスタシリンダを示し、(a)は正面図、(b)は平面図、(c)は左側面図である。
【図3】図2(b)におけるIII−III線に沿う断面図である。
【図4】リザーバタンク接続用コネクタを示し、(a)は正面図、(b)は平面図、(c)は左側面図、(d)は(b)におけるIVD−IVD線に沿う断面図、(e)は(b)におけるIVE−IVE線に沿う断面図である。
【図5】搬送アームとホース接続用管体との干渉の抑制を説明し、(a)は搬送アームの挿入時の状態を示す図、(b)は搬送アームによりリザーバタンク接続用コネクタを持ち上げた状態を示す図である。
【図6】搬送用治具を示し、(a)は正面図、(b)は平面図、(c)は右側面図、(d)は(c)におけるVID部の拡大図、(e)はIVE部の拡大図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、図面を用いて、本発明を実施するための形態について説明する。
図1は本発明に係るリザーバタンク接続用コネクタの実施の形態の一例を備えるブレーキ装置を、模式的に示す図である。
図1に示すように、この例の液圧ブレーキ装置1は、基本的には従来公知の一般的な2系統の液圧ブレーキ装置と同じである。すなわち、液圧ブレーキ装置1は、ブレーキペダル2、倍力装置3、タンデムマスタシリンダ4、リザーバタンク5、リザーバタンク接続用コネクタ6、2系統のブレーキ液供給配管であるホース7,8、2系統のブレーキシリ
ンダ9,10、および2系統のブレーキ液圧配管11,12を備えている。
【0026】
リザーバタンク5はタンデムマスタシリンダ4から離間して配設されるとともに、リザーバタンク接続用コネクタ6はタンデムマスタシリンダ4に装着される。リザーバタンク5とリザーバタンク接続用コネクタ6とは、各ホース7,8を介して互いに接続される。
そして、リザーバタンク5内の作動液であるブレーキ液が2系統のホース7,8およびリ
ザーバタンク接続用コネクタ6を介してタンデムマスタシリンダ4のプライマリ液圧室4bおよびセカンダリ液圧室4dにそれぞれ供給される。タンデムマスタシリンダ4に供給されたブレーキ液は、更に2系統のブレーキ液圧配管11,12を介してそれぞれ各系統
のブレーキシリンダ9,10に供給される。
【0027】
運転者がブレーキペダル2を踏み込むと、倍力装置3が作動してペダル踏力を所定のサーボ比で倍力して出力する。この倍力装置3の出力でタンデムマスタシリンダ4のシリンダ本体のプライマリピストン4aが作動してプライマリ液圧室4bのブレーキ液を一方の系統のブレーキシリンダ9にブレーキ液圧配管11を介して送給する。また、セカンダリピストン4cが作動してセカンダリ液圧室4dのブレーキ液を他方の系統のブレーキシリンダ10にブレーキ液圧配管12を介して送給する。各ブレーキ系統のロスストロークが消滅すると、タンデムマスタシリンダ4が液圧を発生する。このタンデムマスタシリンダ4の液圧が各ブレーキシリンダ9,10に伝達され、各ブレーキシリンダ9,10がブレーキ力を発生して、各系統の車輪13,14にブレーキがかけられる。
【0028】
図2(a)ないし(c)、および図3に示すように、この例のリザーバタンク接続用コネクタ6は、タンデムマスタシリンダ4の上方に装着される。図4(a)ないし(c)に示すようにこのリザーバタンク接続用コネクタ6は、矩形またはほぼ矩形状のコネクタ本体6a、このコネクタ本体6aの平板状の上部6a1にこの上部6a1を貫通してそれぞれ所定間隔を置いて固定されたL字状管からなる一対のホース接続用管体6b,6c、一対
の取付ボス部6d,6e、およびコネクタ本体6aの上部6a1の長辺縁に延設された一対の搬送アームガイド部6f,6gを有している。コネクタ本体6aのほぼ矩形状は、一対
の長辺縁が直線状でありさえすればよく、短辺縁が必ずしも直線状である必要はなく円弧等の湾曲線状である場合も含む。
【0029】
L字状の一対のホース接続用管体6b,6cは、それぞれ、コネクタ本体6aの一方の
長辺縁6a2から大きく突出するニップル状のホース接続部6b1,6c1と、図3に示すマスタシリンダ4のブレーキ液供給用ボス部4eのブレーキ液供給孔4f,4g内に配置さ
れるマスタシリンダ側接続部6b2,6c2とを有する。ホース接続部6b1,6c1には、それぞれ、一端がリザーバタンク5に接続されたホース7,8の他端が接続される。また、
図3に示すようにマスタシリンダ側接続部6b2,6c2は、それぞれ、シール部材15,16を介してマスタシリンダ4のブレーキ液供給孔4f,4g内に液密に嵌合されるととも
に、リザーバタンク接続用コネクタ6はブレーキ液供給用ボス部4eに支持される。なお、各ブレーキ液供給孔4f,4gは、それぞれ、マスタシリンダ4の非作動時にプライマ
リ液圧室4bおよびセカンダリ液圧室4dに連通するようにされている。
【0030】
一対の取付ボス部6d,6eは、互いに同軸上に設けられるとともに、接続ピン17に
よりブレーキ液供給用ボス部4eに接続される。更に、図4(d)に示すようにコネクタ本体6aの上部6a1の両側の短辺縁には、それぞれ、支持部6h,6iが下方に向けて立設されている。これらの支持部6h,6iはマスタシリンダ4のブレーキ液供給用ボス部
4eに当接可能とされている。
【0031】
各搬送アームガイド部6f,6gは、いずれもそれらの長手方向と直交する方向の横断
面がほぼ平行四辺形に形成されている。その場合、一方の搬送アームガイド部6fは、一対のホース接続用管体6b,6cのホース接続部6b1,6c1が突出する一方の側の長辺縁6a2に配設されるとともに、他方の搬送アームガイド部6gは、一方の長辺縁6a2と反対の他方の側の長辺縁6a3に配設される。更に、一方の搬送アームガイド部6fは、ホ
ース接続部6b1,6c1が突出する長辺縁6a2の領域(部分)6j,6kには設けられな
く、長辺縁6a2に沿って断続的に分割して設けられている。また、他方の搬送アームガ
イド部6gは、長辺縁6a3の全体にわたってこの長辺縁6a3に沿って連続的に設けられ
ている。
【0032】
図5(a)および(b)に示すように、各搬送アームガイド部6f,6gは、コネクタ
本体6aの上部6a1の上面から上方に突設されている。そして、一方の搬送アームガイ
ド部6fは一方の長辺縁6a2より外方(図5(a)において右方)に突出しているとと
もに、その突出端6f1と長辺縁6a2との間に平面状の傾斜面からなる被支持面6f2
有している。また、他方の搬送アームガイド部6gは他方の長辺縁6a3より外方(図5
(a)において左方)に突出しているとともに、その突出端6g1と長辺縁6a3との間に平面状の傾斜面からなる被支持面6g2を有している。各搬送アームガイド部6f,6gは、それらの横断面形状が同じ大きさに形成されるとともに互いに対称に配設される。
【0033】
図6(a)ないし(c)に示すように、リザーバタンク接続用コネクタ6を搬送するための搬送用治具18は、図示しない自動搬送ロボットに取り付けられる取付部18aと、互いに並行して延設される一対の細長い搬送アーム18b,18cとを有する。一対の搬
送アーム18b,18cは互いに所定間隔を置いて取付部18aの両端面から突設されて
おり、搬送用治具18は正面視L字状(平面視コ字状)に形成されている。
【0034】
各搬送アーム18b,18cは、それらの長手方向の横断面が6角形に形成されている
。図6(d)に示すように一方の搬送アーム18bは、その内側上端に傾斜面からなる支持面18b1を有している。この支持面18b1の水平に対する傾斜角は、搬送アームガイド部6fの被支持面6f2の水平に対する傾斜角と等しくまたはほぼ等しく設定されてい
る。また、図6(e)に示すように他方の搬送アーム18cは、その内側上端に傾斜面からなる支持面18c1を有している。この支持面18c1の水平に対する傾斜角も、搬送アームガイド部6gの被支持面6g2の水平に対する傾斜角と等しくまたはほぼ等しく設定
されている。そして、各搬送アーム18b,18cはそれらの横断面形状が同じ大きさに
形成されるとともに、互いに対称に配設される。したがって、両支持面18b1,18c1
および両被支持面6f2,6g2は、それらの傾斜面によって全体的にほぼV字を描くよう
にされている。
【0035】
そして、搬送用治具18がリザーバタンク接続用コネクタ6を搬送するにあたっては、図5(a)に二点鎖線で示すように各搬送アーム18b,18cが、それぞれ搬送アーム
ガイド部6fの被支持面6f2および搬送アームガイド部6gの被支持面6g2の下方に部分的に進入可能となっている。更に、各搬送アーム18b,18cの各支持面18b1,1
8c1が、それぞれ各搬送アームガイド部6f,6gの各被支持面6f2,6g2に当接可能
となっている。
【0036】
図5(b)に二点鎖線で示すように一方の支持面18b1が被支持面6f2に当接した状態では、一方の搬送アーム18bの上面18b2と長辺縁6a2から突出したホースシール接続部6b2のホースシール部6b3の下面との間に所定の隙間αが生じて、搬送アーム18bが一方のホース接続用管体6bに干渉(つまり、接触)しないようにされている。なお、図5(a)および(b)に図示しないが、支持面18b1が被支持面6f2に当接した状態では、同様に、搬送アーム18bの上面18b2と他方のホース接続用管体6cのホ
ースシール部6c3の下面との間にも所定の隙間αが生じて、搬送アーム18bが他方の
ホース接続用管体6cに干渉しないようにされている。すなわち、一方の搬送アームガイド部6fは搬送アーム18bの被支持部と機能するとともに、搬送アーム18bと各ホース接続用管体6b,6cとの干渉を防止する干渉防止部としても機能する。
【0037】
また、両支持面18b1,18c1および両被支持面6f2,6g2がいずれも前述のように全体的にV字を描くように傾斜面とされていることから、両支持面18b1,18c1がそ
れぞれ対応する被支持面6f2,6g2に当接した状態では、リザーバタンク接続用コネク
タ6は、搬送用治具18の長手方向と直交する方向(図6(b)において上下方向)の中心にセンタリングされて水平に保持される。
【0038】
このように構成されたこの例のリザーバタンク接続用コネクタ6においては、自動搬送ロボットによりリザーバタンク接続用コネクタ6の保管場所からタンデムマスタシリンダ4への組付け場所まで搬送される。このとき、図4(b)に示すように自動搬送ロボットの搬送用治具18の各搬送アーム18b,18cがリザーバタンク接続用コネクタ6の長
手方向で前方からβ方向に移動されて、図5(a)に示すようにそれぞれ搬送アームガイド部6fの被支持面6f2および搬送アームガイド部6gの被支持面6g2の下方に挿入される。この搬送アーム18b,18cの挿入運動時には、各搬送アーム18b,18cの各支持面18b1,18c1と各搬送アームガイド部6f,6gの各被支持面6f2,6g2との
間には所定の間隙(ガタ)が生じるようになっている。したがって、一方の搬送アーム1
8bは各ホース接続用管体6b,6cに干渉しない。
【0039】
次いで、搬送用治具18が上昇されて、各搬送アーム18b,18cの各支持面18b1,18c1が、それぞれ各搬送アームガイド部6f,6gの各被支持面6f2,6g2に面接触またはほぼ面接触で当接する。このとき、一方の搬送アームガイド部6fは、リザーバタンク接続用コネクタ6に対する搬送アーム18bの相対上昇移動を阻止するので、一方の搬送アーム18bが上昇しても、各支持面18b1,18c1と各被支持面6f2,6g2との間に間隙αが生じ、各ホース接続用管体6b,6cに干渉しない。更に、搬送用治具18
が上昇されることにより、両搬送アーム18b,18cでリザーバタンク接続用コネクタ
6を保管場所から持ち上げる。このとき、リザーバタンク接続用コネクタ6の各被支持面6f2,6g2と両搬送アーム18b,18cの各支持面18b1,18c1とが、全体的にV
字状を描くように傾斜しているので、リザーバタンク接続用コネクタ6は、搬送用治具18の長手方向と直交する方向の中心に対してセンタリングされかつ水平にまたはほぼ水平に安定して持ち上げられる。
【0040】
そして、図2(b)に示すように自動搬送ロボットはリザーバタンク接続用コネクタ6をタンデムマスタシリンダ4への組付け場所まで搬送する。自動搬送ロボットによるリザーバタンク接続用コネクタ6の搬送中も、リザーバタンク接続用コネクタ6は安定して搬送されるとともに、水平状態にされて各マスタシリンダ側接続部6b2,6c2がそれぞれ
マスタシリンダ4のボス部4eのブレーキ液供給孔4f,4gに対して傾かずバランスよ
く搬送される。
【0041】
この例のリザーバタンク接続用コネクタ6によれば、搬送用治具18の搬送アーム18bと各ホース接続用管体6b,6cとの干渉を防止する干渉防止部としての搬送アームガ
イド部6fを有している。したがって、リザーバタンク接続用コネクタ6の搬送時に、この搬送アームガイド部6fにより、搬送アーム18bが各ホース接続用管体6b,6cの
ホースシール部6b3,6c3に接触するのをより確実に抑制することが可能となる。これ
により、搬送アーム18bの当接力で樹脂製の各ホース接続用管体6b,6cに傷や打痕
が生じるのを抑制することが可能となるとともに、各ホース接続用管体6b,6cが白く
濁る白化現象が生じるのを抑制することが可能となる。
【0042】
また、コネクタ本体6aの上部6a1が矩形状またはほぼ矩形状に形成されるとともに
、一対の搬送アームガイド部6f,6gがそれぞれ対応する両側の長辺縁6a2,6a3に沿って設けられて搬送用治具18の一対の搬送アーム18b,18cをガイドする。したが
って、両搬送アーム18b,18cの支持面18b1,18c1が両長辺縁6a2,6a3の搬
送アームガイド部6f,6gの被支持面6f2,6g2を支持することにより、リザーバタンク接続用コネクタ4を安定して搬送することができる。
【0043】
更に、各ホース接続用管体6b,6cがコネクタ本体4の上部4a1から延設されかつコネクタ本体4の一側の長辺縁6a2より外方に突出されている。その場合、各ホース接続
用管体6b,6cが外方に突出する側の搬送アームガイド部6fは、各ホース接続用管体
6b,6cが突出する場所を含む領域6j,6kを除く長辺縁6a2にのみ、分割しかつ上
方に突出して設ける。したがって、各ホース接続用管体6b,6cが突出する領域6j,6kの長辺縁6a2には、上方に突出する搬送アームガイド部6fは設けられない。したが
って、各ホースシール部6b3,6c3を低くしてより長辺縁6a2に接近させることが可能となる。これにより、コネクタ本体6aの長辺縁6a2に上方に突出する搬送アームガイ
ド部6fを設けても、各ホース接続用管体6b,6cの高さを低く抑えることが可能であ
るとともに、各ホース接続用管体6b,6cの高さを低くしても、搬送アームガイド部6
fの被支持面6f2で搬送アーム18bと各ホースシール部6b3,6c3との干渉を抑制することができる。このようにして、各ホース接続用管体6b,6cの高さを低くしつつ、
搬送アーム18bと各ホースシール部6b3,6c3との干渉を抑制することのできるリザ
ーバタンク接続用コネクタ6を実現することができる。
【0044】
更に、各ホースシール部6b3,6c3の位置が低くなることから、ホース7,8の接続位置をより下げることができる。これにより、各ホース7,8のレイアウトが容易となり、
各ホース7,8の取り回し性を良好にすることができる。
【0045】
更に、搬送アームガイド部6fが各ホース接続用管体6b,6cが突出する領域6j,6kの長辺縁6a2を除いて分割して設けられることから、各ホース接続用管体6b,6cの各ホースシール部6b3,6c3を拡張することが可能となる。
【0046】
更に、各搬送アームガイド部6f,6gを上方に突設させることで、リザーバタンク接
続用コネクタ6のコネクタ本体6aの平板状の上部6a1を薄肉にすることが可能となる
。これにより、リザーバタンク接続用コネクタ6の樹脂成形の際の収縮時に曲がり変形等の変形がし難い。特に、上部6a1の周縁に周壁を下方に突出させてコネクタ本体6aを
直方体状に形成しているので、樹脂成形時の収縮による変形を効果的に抑制することができる。
【0047】
更に、搬送アームガイド部6fが分割して設けられることから、コネクタ本体6aまたは各ホース接続用管体6b,6cに設けられるとともに各ホースシール部6b3,6c3に嵌合される各ホース7,8の先端を位置決めするホースストッパー(不図示)の位置設定が
容易となる。
【0048】
更に、両支持面18b1,18c1および両被支持面6f2,6g2がいずれも前述のように傾斜面とされているので、両支持面18b1,18c1がそれぞれ対応する被支持面6f2,
6g2に当接した状態で、リザーバタンク接続用コネクタ6を、搬送用治具18の中心に
対して前述のようにセンタリングして水平に保持することが可能となる。
【0049】
また、この例のリザーバタンク接続用コネクタ6を備えるタンデムマスタシリンダ4によれば、リザーバタンク接続用コネクタ6の高さを抑制できることから、リザーバタンク接続用コネクタ6を装着した状態のタンデムマスタシリンダ4を小型コンパクトに形成できる。これにより、設置スペースが制限されるエンジンルーム内の他の部品とタンデムマスタシリンダ4との干渉を抑制できる。したがって、その分、タンデムマスタシリンダ4の配置の自由度を高くできる。
【0050】
一方、この例のタンデムマスタシリンダ4を備えるブレーキ装置1によれば、タンデムマスタシリンダ4の配置の自由度を高くできることから、2系統のブレーキ液圧配管11,12の取り回し自由度を向上できる。
なお、本発明は、前述の各例に限定されることはなく、特許請求の範囲に記載された事項の範囲内で、種々の設計変更が可能である。
【産業上の利用可能性】
【0051】
本発明に係るリザーバタンク接続用コネクタは、作動液を貯留するリザーバタンクをホースによりマスタシリンダに接続するためのリザーバタンク接続用コネクタに好適に利用することができる。
また、本発明に係るリザーバタンク接続用コネクタを備えるマスタシリンダは、油圧等の液圧を利用した液圧ブレーキ装置等の液圧作動装置に用いられ、液圧を発生するためのマスタシリンダに好適に利用することができる。
更に、本発明に係るブレーキ装置は、マスタシリンダを用いた液圧ブレーキ装置に好適に利用することができる。
【符号の説明】
【0052】
1…液圧ブレーキ装置、2…ブレーキペダル、3…倍力装置、4…タンデムマスタシリンダ、4e…ブレーキ液供給用ボス部、5…リザーバタンク、6…リザーバタンク接続用コネクタ、6a…コネクタ本体、6a1…上部、6a2,6a3…長辺縁、6b,6c…ホース
接続用管体、6b1,6c1…ホース接続部、6b2,6c2…マスタシリンダ側接続部、6b3,6c3…ホースシール部、6f,6g…搬送アームガイド部、6f2,6g2…被支持面、
7,8…ホース、9,10…ブレーキシリンダ、11,12…ブレーキ液圧配管、15,16…シール部材、18…搬送用治具、18b,18c…搬送アーム、18b1,18c1…支持面、α…隙間

【特許請求の範囲】
【請求項1】
マスタシリンダに装着されるコネクタ本体と、
前記コネクタ本体の縁から突出して設けられ、かつリザーバタンクに接続されたホースが接続されるホース接続部と、
前記コネクタ本体に設けられ、かつ搬送用治具により前記コネクタ本体を支持する際に前記搬送用治具に干渉するのを抑制する干渉防止部と、
を少なくとも有することを特徴とするリザーバタンク接続用コネクタ。
【請求項2】
前記コネクタ本体は矩形状またはほぼ矩形状に形成され、
前記ホース接続部は前記コネクタ本体の上部から延設されかつ前記コネクタ本体の一側の長辺縁より外方に突出し、
前記干渉防止部は前記一側の長辺縁に沿って設けられ、かつ前記搬送用治具の搬送アームをガイドする搬送アームガイド部であることを特徴とする請求項1に記載のリザーバタンク接続用コネクタ。
【請求項3】
前記搬送アームガイド部は、前記ホース接続部が突出する前記コネクタ本体の一側の長辺縁に沿って設けられ、かつ前記搬送用治具の第1の搬送アームをガイドする第1の搬送アームガイド部を有するとともに、前記ホース接続部が突出しない前記コネクタ本体の他側の長辺縁に沿って設けられ、かつ前記搬送用治具の前記第2の搬送アームをガイドする第2の搬送アームガイド部を有し、前記第1の搬送アームが傾斜面で形成された第1の支持面を有するとともに前記第2の搬送アームが傾斜面で形成された第2の支持面を有し、前記第1および第2の支持面の各傾斜面は全体にほぼV字状を形成し、前記第1の搬送アームガイド部は前記第1の支持面が当接される傾斜した第1の被支持面を有するとともに、前記第2の搬送アームガイド部は前記第2の支持面が当接される傾斜した第2の被支持面を有し、前記第1および第2の被支持面の各傾斜面は全体にほぼV字状を形成することを特徴とする請求項2に記載のリザーバタンク接続用コネクタ。
【請求項4】
前記第1および第2の搬送アームガイド部は前記コネクタ本体の上部から突設され、かつ前記ホース接続部が突出する領域以外の前記一側の長辺縁に沿って分割して設けられることを特徴とする請求項3に記載のリザーバタンク接続用コネクタ。
【請求項5】
シリンダ本体と、
前記シリンダ本体内に液密にかつ摺動可能に挿入されて液圧室を形成し、かつ作動時に前記液圧室に液圧を発生するピストンと、
前記シリンダ本体に設けられ、かつ前記液圧室に常時連通する作動液供給孔と、
前記作動液供給孔に装着されてリザーバタンクの作動液を前記作動液供給孔に供給するリザーバタンク接続用コネクタと、
を少なくとも有し、
前記リザーバタンク接続用コネクタは、請求項1ないし4のいずれか1に記載のリザーバタンク接続用コネクタであることを特徴とするマスタシリンダ。
【請求項6】
作動液を貯留するリザーバタンクと、
前記リザーバタンクにホースを介して接続されるリザーバタンク接続用コネクタを有し、かつ前記リザーバタンク内の作動液が前記ホースおよび前記リザーバタンク接続用コネクタを介して供給されるとともに作動時にブレーキ圧を発生するマスタシリンダと、
前記マスタシリンダからの液圧で作動するブレーキシリンダと、
を少なくとも備え、
前記マスタシリンダが請求項5に記載のマスタシリンダであることを特徴とするブレーキ装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2011−79456(P2011−79456A)
【公開日】平成23年4月21日(2011.4.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−234298(P2009−234298)
【出願日】平成21年10月8日(2009.10.8)
【出願人】(000003333)ボッシュ株式会社 (510)
【Fターム(参考)】